孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

オーストラリア  中国との関係悪化が続く中で、国内総選挙で重みをもつ華人票の行方

2019-05-13 22:08:11 | オセアニア

(華人有権者に中国語で話す野党・労働党のジェニファー・ヤン候補(左から3人目)【513日 朝日】)

 

【一触即発のイラン近海でサウジ・UAE船舶への破壊工作?】

今日の話題に入る前に、昨日とりあげたイラン・アメリカをめぐる緊張に関連する“奇妙な”“きな臭い”ニュースが今日報じられていますので、その件だけ少し。

 

****サウジ石油タンカー2隻、UAE沖で「妨害行為」受け損傷****

サウジアラビアの石油タンカー2隻が、アラブ首長国連邦沖で「妨害行為」を受けて損傷したと、国営サウジ通信が13日、エネルギー相の話として報じた。

 

SPAによると、ハリド・ビン・アブドルアジズ・ファリハエネルギー産業鉱物資源相が、「サウジの石油タンカー2隻が、アラビア湾(ペルシャ湾)を横断中にUAEの排他的経済水域内のフジャイラ首長国沖で妨害行為の標的となった」と述べたという。

 

UAE政府は前日12日にも、船籍の異なる商船4隻がフジャイラ沖で妨害行為の標的になったと発表していた。

 

ファリハ氏は、妨害行為による死傷者はおらず、石油の流出もないが、「2隻の船体が大きく損傷した」と述べた。うち1隻は米市場向けの原油を積み込むために、サウジの海上石油ターミナルに向かっていたとされる。

 

UAEは行為主体には言及していないものの、「商船や民間船への妨害行為に及び、乗客乗員の安全と生命を脅かすのは深刻な事態だ」と警告している。

 

同域では、「イランの脅威」があると訴える米国が、複数のB52戦略爆撃機を配置するなど、軍事的プレゼンスを拡大してきており、両国間の緊張が高まっている。

 

先週にはイランが、2015年に主要国との間で締結し、昨年米国が離脱した核合意の一部を履行しないと発表。その2日後に米国防総省はイランの脅威を理由に、輸送揚陸艦と地対空ミサイルシステム「パトリオット」を派遣すると明らかにした。 【513日 AFP】

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イラン側の動向については“イラン外務省の報道官は、12日に起きたサウジの石油タンカーへの攻撃への懸念を示し、捜査を求めた。イラン学生通信(ISNA)によると、同報道官は、こうした事件は海上輸送の安全にマイナスの影響を及ぼしていると指摘し、地域を不安定にするような策略に対して警戒するよう近隣諸国に伝えた。”【513日 ロイター】とのことで、関与を否定しています。

 

サウジ、UAE両政府とも、誰に襲われたのかという肝心の点については言及していません。

 

一体何が起きたのか?(あるいは起きていないのか?) 皆目わかりません。

わかりませんが、アメリカが原子力空母や戦略爆撃機、輸送揚陸艦、「パトリオット」を派遣するなど、一触即発の地域での話ですから「わからない」では済まされない話でもあります。

 

イランの革命防衛隊などの反米強硬派が動いたのか? 

“イラン国内では米との対決姿勢を強める保守強硬派が勢いを増しているようだ。イランのメディアによると、同国の裁判所は12日までに、米との間で「ハイレベルの取り組み」が必要だ−などと対米交渉を促した改革派の週刊誌「セダ」の発行禁止を命令した。”【513日 産経】といった動きもあります。

 

あるいは、どこかの国が事を起こすために謀略的な情報を流しているのか・・・。

 

サウジアラビアも、カショギ氏殺害事件に見るように、イラン以上に人権とか民主主義とは縁遠い国です。

アメリカ大統領は周囲の意見を聞くことなく、国内支持層受けしか考えず、後先考えず直感で行動し、後でなんとでも説明するような人物です。

 

昨日ブログでも触れたような“第二のトンキン湾事件”のようなことがなければいいのですが。

 

【国際政治的には中国との対立が続くオーストラリア】

でもって、今日はオーストラリアの話。

 

経済的にはオーストラリアは日本同様、あるいは日本以上に中国に“依存”する関係にあります。

 

“中国は2000年代から、鉄鉱石や石炭などへの需要で資源ブームをけん引し、豪経済の成長を下支えしてきた。2000年に1453億豪ドル(約112千億円)だった豪州のモノとサービスの輸出は17年には3866億豪ドルまで拡大。中国への輸出は68億豪ドルから1159億豪ドルと17倍に跳ね上がり、今や輸出の3割が中国向けだ。”【17日 日経】

 

(余談になりますが、“3月分の景気動向指数の基調判断について、内閣府は13日、これまでの「下方への局面変化」から「悪化」に引き下げた。景気が後退している可能性がより高いことを示しており、「悪化」の判断は2013年1月以来、6年2カ月ぶり。中国経済の減速が大きく影響した。”【513日 朝日】ということで、日本やオーストラリアにとって、米中間の対立・中国経済減速は大きな影響があります。経済だけでなく、消費税引き上げや衆参同時選挙など政治的アジェンダにも)

 

そうした中国との強い経済的関係の一方で、政治的には昨年ぐらいから急速に悪化・対立が目立っています。

 

****豪中関係、急速な悪化 ****
豪で規制法案、中国反発「貿易面の影響も」

 

オーストラリアと中国の関係悪化が深刻だ。豪州にとって中国は最大の貿易相手国だが、野党議員のスキャンダルなどをきっかけに反中感情が噴出。ターンブル政権は投資や政治献金を通じて影響力を広げる中国の動きを抑え込む対策を打ち出す。

 

中国側は反発しており、経済的な報復措置に訴える懸念が出ている。21日の外相会談でも沈静化の兆しは見えなかった。(中略)

 

豪州は6月末までに中国の影響力排除を念頭にした「重要インフラ保安法」を施行する。港湾やガス、電力への海外からの投資について「安全保障上のリスクがある」とみなせば、担当相がリスク軽減措置命令を出せるとの内容だ。3月末の法案審議はわずか45分で、野党も目立った反対意見を出さなかった。

 

昨年末には外国団体からの政治献金を禁止する改正選挙法案や、公職経験者が海外の団体に雇用された場合に公表を義務づける「外国影響力透明化法案」を議会に提出した。いずれも豪州での中国の影響力拡大を抑える意図が色濃い。

 

当初は親中派と見られていたターンブル首相が態度を変えたのは2017年後半だ。野党議員が中国人から資金援助をうけ、南シナ海問題で中国寄りの発言をしていたことが判明した。「中国による内政干渉」と豪州世論が猛反発したのがきっかけとなった。

 

ターンブル氏は「中国人民は立ち上がった」という毛沢東の言葉をもじり「オーストラリア人民は立ち上がった」とまで発言。1年以内にある総選挙をにらみ国内世論への配慮もにじむ。

 

一方、中国の成競業・駐豪大使は4月、豪メディアの取材で「昨年後半から中国に無責任かつ否定的な発言が目立つようになった」とターンブル政権を批判。「(貿易で)望ましくない影響が出るかもしれない」と豪州産品への輸入規制を示唆した。関連は不明だが豪ワイン最大手のトレジャリー・ワイン・エステーツは5月、中国向け輸出の一部に手続きの遅れが出ていると発表した。

 

オーストラリアの対中警戒は長年くすぶり続けている問題である。16年には米軍が巡回駐留する北部の要衝、ダーウィンの港を長期賃借する中国企業「嵐橋集団」の顧問に豪元閣僚が就いたことが発覚。中国からの投資マネーが豪州の近年の住宅価格高騰の一因ともされ、世論の硬化に拍車をかける。

 

ただ豪産業界からは緊張緩和を求める声が出ている。豪鉄鉱石大手、フォーテスキュー・メタルズ・グループのアンドリュー・フォレスト会長は「分断や狂信を招き、尊敬を失う行為」と政府を批判した。5月中旬には貿易関係への悪影響回避をめぐり、ターンブル氏が年内に中国を訪問するとの報道も出た。

 

豪州は米国との関係もギクシャクしたままだ。ターンブル氏は17年初め、最初の電話協議でトランプ米大統領と決裂。5月の首脳会談でトランプ氏は「(決裂は)偽ニュース」と良好な関係を演出したが、会談に大幅に遅刻し「豪州を冷遇」との報道も出た。中国との摩擦に加え、米国との間に吹くすきま風も懸念となっている。【2018522日 日経】

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モリソン首相に代わった現在でも、南シナ海問題や米中間の5G・ファーウェイをめぐる対立などでオーストラリアはアメリカに与する形で中国との対立が続いています。

 

****中国、豪からの石炭輸入禁止 両国関係の悪化背景か ****

中国の税関当局が東北部にある遼寧省大連など5つの港で、オーストラリアからの石炭輸入を無期限の禁止にしたことが明らかになった。ロイター通信が伝えた。

 

豪州にとって中国は石炭の主要な輸出先で、今回の措置は豪経済への一定の影響が避けられそうにない。(中略)

 

豪政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)に対し、次世代高速通信「5G」への参入を事実上禁止している。また、豪州での多額の政治献金で知られる中国人実業家の永住権を取り消すなど両国関係の緊張が高まっており、今回の措置は中国による豪政府への圧力との見方もある。(後略)【221日 日経】

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****豪政府、中国人富豪の居住権剥奪 内政干渉対策に本腰****

オーストラリア政府が、中国による内政干渉に警戒を強めている。

 

経済交流の活発化を受け、豪州国内には中国から大勢のビジネスマンや留学生が流入したが、中国共産党がこれらの中国系住民を使い、政治的圧力を豪州に加え続けているためだ。モリソン政権は、中国を念頭に整備した反スパイ法なども使い、厳格な対応を粛々と進めている。

 

豪ABC放送(電子版)によれば、豪州政府が8日までに、同国内で事業を拡大しながら、巨額の政治献金を行っていた中国人の黄向墨氏の居住権を剥奪したと伝えた。中国共産党とつながって「内政干渉」を行い、スパイ活動の疑惑があったという。(中略)

 

豪州では、中国でのビジネス経験があり、「親中派」ともされたターンブル前首相が、黄氏ら国内の中国人実業家らによる内政干渉疑惑の持ち上がりを受け、対中強硬姿勢に転換。連邦議会は、外国からの政治献金を禁止する改正選挙法を可決させ、外国からのスパイ活動などを阻止するための法律も成立させた。

 

後継のモリソン首相も、ビジネスを名目にした中国によるスパイ活動の防止に向け、本腰を入れ始めた形だ。

 

豪州政府の一連の措置について、黄氏はメディアに対し「偏見に満ちた根拠のない臆測に基づいた措置だ」と批判している。【28日 産経】

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【国内総選挙で存在感を増す華人票の行方】

国際的な中国との関係という点では、上記のような緊張がありますが、一方で、「移民の国」オーストラリアは人口の5%ほどが華人という国です。

 

おりしも、オーストラリアは18日に総選挙が行われます。

 

****豪、6年ぶり政権交代の公算 18日総選挙、与党も追い上げ****

18日のオーストラリア総選挙まで1週間を切った。

 

最大野党労働党が優勢で、約6年ぶりの政権交代の公算が高まっている。

モリソン首相が率いる自由党主導の与党保守連合(自由党、国民党)も追い上げているが、政権奪還した2013年以降、自由党の内紛から首相が2回交代したことに有権者は冷ややかな目を向ける。

 

「強い経済を継続させる政策を持つ(保守連合)政権か、弱体化させるであろう労働党かの選択だ」。モリソン氏は現政権が昨年、若年層向けに10万以上の雇用を創出し、失業率も下がったとして経済運営の実績を強調するが、景気には減速感が出ている。【511日 共同】

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“景気には減速感が出ている”のも、恐らく米中対立・中国経済減速が大きく影響しているでしょう。

 

二大政党が得票を争う形になると、華人票の行方が存在感を増します。

 

****豪州、華人票を狙え 首相ら中国語で発信/華人対決の選挙区も 総選挙***

18日に投開票されるオーストラリアの総選挙で、各党が華人(中華系)の支持獲得に躍起になっている。

 

人口約2500万人の豪州で、華人は年々増えて現在約120万人。移民が多い大都市部では当落を左右する存在になっている。メルボルンでは「華人対決」の選挙区も現れた。

 

台湾系VS.香港系

8日朝、メルボルン東部の下院チズム選挙区。公民館でマージャンを楽しむ華人の高齢者たちの前に、最大野党・労働党のグループがやって来た。「政権を獲得したら、この地区に華人向けの高齢者福祉施設をつくる」という公約の発表の場にここを選んだのだ。

 

「華人の地域での貢献に感謝しています。華人の高齢者が母語に戻れる場所があるべきです」。チズム選挙区に立候補した労働党のジェニファー・ヤン氏(42)が党幹部の言葉を中国語に訳すと、華人のお年寄りが拍手をして喜んだ。ヤン氏は台湾出身。地元市議や市長をへて、今回は国政に挑んでいる。

 

労働党は日程を地元の中国語メディアに伝えており、報道陣にも華人が目立った。公約発表後も、ヤン氏は中国語であいさつを繰り返した。「私は華人の声をくみ取れる。同時にこの地域に長年住み、公衆衛生や教育など地域の問題を熟知している。選挙区民全員の代表になれます」

 

チズム選挙区の期日前投票所の前では、連日、「最後のお願い」をする女性がいる。与党・自由党から立候補した香港出身のグラディス・リウ氏(55)。8日昼も「私はグラディス。自由党の候補者です」と一人一人に声をかけていた。

 

チズム選挙区には9人が立候補しているが、事実上、ヤン氏とリウ氏の戦いになっている。両氏が参加した4月14日の公開討論会は、英語と中国語が飛び交う舌戦になった。

 

チズム選挙区には漢字で表記された店の看板が並ぶ。2016年の国勢調査によると、同選挙区の住民約16万4千人のうち華人は4万1千人で約2割を占める。ヤン氏かリウ氏のどちらが勝っても、豪州で初めて華人女性の下院議員が誕生することになる。リウ氏は「歴史的なこと」とその意義を強調する。

 

ヤン氏とリウ氏の接戦を選挙区の住民はどう見ているのか。中国・上海出身の新聞店主カトリーヌ・ルーさん(45)は「私たちの声を政治に伝えられる」と歓迎する。期日前投票に訪れた白人のグラハム・バウンドさん(70)は「2人とも豪州国民だ。アジア系が多い地区だから、彼らの代表が必要だ」と語った。

 

「竹の天井」破る?

豪州の16年の国勢調査によると、アジアや中東アフリカなどの「非欧州系」の人口は21%。だが、民間シンクタンク「パーキャピタ」によると、上下両院議員の非欧州系の割合(18年)は6%にすぎない。

 

豪州で「竹の天井」と呼ばれるアジア系の出世を阻む状況は政界にもあり、下院チズム選挙区はそこに風穴を開ける可能性があると期待されている。

 

豪州では欧州系が多数派を占める選挙区が大半で、非欧州系は各党の候補者選びで落とされるケースも目立つ。ただ、各党は候補者が欧州系の選挙区でも、非欧州系の主要グループである華人の支持獲得には全力を傾けている。接戦になれば、華人の得票が勝敗を決める可能性が高いからだ。

 

「私は莫里森(モリソン)。自由党党首です」。モリソン首相は今年2月から華人が使う無料通信アプリのWeChat(微信)で中国語での発信を始め、「多様な文化を受け入れる社会の推進」などの政策をアピールしている。チズム選挙区など華人が多い大都市部の選挙区をまわり、同党候補を応援している。

 

これに対抗し、労働党のショーテン党首も今年3月にWeChat上で質問を受け付け、中国語で回答した。また、今月1日には中国語が堪能な同党のラッド元首相が中国語で政策を訴える動画もWeChatに投稿した。

 

だが、政治家がWeChatを使うことについて、安全保障の専門家からは「WeChatは中国当局が厳しく管理しており、アカウントは監視されている可能性が高い」(豪マッコリー大のベン・シュリエ教授)と懸念する声も出ている。【513日 朝日】

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首相や野党党首が中国語で国内華人にアピールする・・・という、国際的な中国との関係とはまた別の世界が国内的にはあるようで、興味深く思われた次第です。

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