孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・新疆ウイグル自治区  暴動から2年、続く緊張、相次ぐ事件

2011-07-31 20:39:13 | 中国

(18日に警察署襲撃事件が起きたホータンの市場 旅心がそそられますが、情勢は不安定なようです。 “flickr”より By preston.rhea http://www.flickr.com/photos/prestonrhea/5016411033/ )

建国以来、最大規模の暴動
チベットや内モンゴルと並ぶ中国の民族紛争の火種のひとつが、新疆ウイグル自治区のウイグル族です。

ウイグル族については、“トルコ系の民族で多くがイスラム教を信仰する。人口は約840万人で、中国の少数民族の中では5番目に多い。大半は新疆ウイグル自治区に住むが、カザフスタンなどの周辺国にも居住する。18世紀に清朝の支配下に入り、1930~40年代に独立の動きが相次いだ。49年の新中国建国とともに統合され、55年に新疆ウイグル自治区が置かれた。同自治区は中国全土の6分の1に相当し、天然資源や希少金属が豊富とされる。”【09年7月6日 毎日】とのことです。

09年6月下旬に中国広東省韶関市の玩具工場で、新疆から出稼ぎ中のウイグル族労働者が漢族に襲われて2人が死亡、漢族を含む118人が負傷する事件が発生。
この事件に対する当局への不満が爆発する形で、同年7月に新疆ウイグル自治区のウルムチなどでウイグル族住民の大規模な暴動、漢族との衝突が起きてから2年が経過しました。

このときの暴動では、当局発表でも200人近く(その4分の3ほどは漢族)が死亡、約1700人が負傷。暴動後、2000人以上のウイグル族が連行され、30人以上に死刑判決が言い渡されており、中国当局が発生を認めた少数民族の暴動としては、1949年の建国以来、最大規模のものとなりました。
死者数については、世界の亡命ウイグル族を組織する「世界ウイグル会議」は「最大3000人」としています。

中国当局側は「国外から指揮と扇動を受け、国内の組織が実行した計画的、組織的な暴力犯罪」と、「世界ウイグル会議」の関与を指摘しています。「世界ウイグル会議」は強く関与を否定しています。
いずれにしても、現地におけるウイグル族と漢族の経済格差、ウイグル族への差別、一方、漢族からすれば、行き過ぎたウイグル族優遇策・・・そうした不満が暴動の背景にあります。

監視カメラ、密告
中国当局は、集中的な経済支援策をとると同時に、厳しい住民監視も続けています。
****死傷者2千人 ウルムチ暴動から2年 緩まぬウイグル族監視****
中国新疆ウイグル自治区で死傷者約2千人を出した2009年夏のウルムチ暴動から、5日で2年がたった。表面上は平穏を取り戻しているものの、当局は依然としてウイグル族監視の手を緩めていない。(中略)

自治区の観光業は昨年7月以降、回復傾向にある。自治区幹部によると、昨年、自治区を訪れた中国人観光客は3千万人。外国人観光客も100万人を超え、外貨収入は3億ドル(約240億円)に達したという。
しかし、自治区幹部は昨年の新疆経済工作会議の席上、「不安全、不穏定、不確定な要素は依然として存在する」と認めている。

当局は、中東・北アフリカで広がる政変を“警告”と受けとめている。19省市が自治区内の個別の都市を支援するプロジェクトに約43億元(約540億円)を投じ、少数民族の就業、教育、医療、居住環境の改善などを進めている。一方で、6万台まで増やすともいわれた市内各所の監視カメラが、ウイグル族の動向に目を光らせている。

中国外務省の洪磊報道官は5日の定例記者会見で「新疆では現在、各民族がかつてない権利、人権を享受している。依然として貧困が主要矛盾であり、分裂勢力も活動を続けている。これが(自治区政府の)新疆での仕事を決める。発展と安定の促進を中心に進めていかなければならない」などと述べ、アメとムチを使い分ける当局の施策を正当化した。【7月6日 産経】
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住民監視体制については、いたるところに設置された監視カメラのほか、密告も奨励されています。
****ウイグル自治区、密告ピリピリ「暴動の話するな****
中国新疆ウイグル自治区のウルムチで2009年7月に発生し、多数の死傷者を出した「ウイグル暴動」から2年余り。
暴動発生当時は数万人の武装警察に加え、軍まで投入された市内中心部は平静と活気を取り戻していた。しかし、市内のいたるところに設置された監視カメラは次々にフラッシュを光らせ、2年前にはいなかった監視員の姿があちこちで目につく。住民同士の“密告”も奨励されているといい、笑顔の陰には、ピリピリした緊張感が漂っていた。

「誰が聞いているか分からない。ここでそんな話はしないでくれ」。ウルムチ市内のバザールで値引き交渉のついでに2年前の暴動についてたずねると、カーペットを売っていたウイグル族住民の商店主(40)はピシャリと話をさえぎって表情を硬くした。
周囲にはウイグル族以外は見あたらなかったが、別の男性は「ウイグル族同士の密告がごく普通になったからだ」と説明した。(中略)

市内には警察の派出所が増え、住民の言動を記録する監視カメラもおよそ4万台設置された。(中略)
ウルムチ市の北部に漢民族、南部にウイグル族という居住エリアの分断もますます進んだ。石油など豊富な地下資源のある新疆ウイグル自治区だが、経済的な恩恵のほとんどは当局と漢民族が享受。ウイグル族には回ってこない。

一方、民族融和を掲げる自治区政府は就職支援などウイグル族への優遇策を打ち出している。
なかでも「反体制的な言動を当局に報告したウイグル族住民には優先的に職が与えられている」(漢族のタクシー運転手)という。市内の監視員の中にはウイグル族の姿も目立っており、ウイグル族同士の相互不信を映す光景となっていた。【7月16日 産経】
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【「美しい顔を見せ、美しい髪をなびかせよう」】
こうした緊張が続くなかで、7月18日には新疆ウイグル自治区ホータンで群衆が警察署を襲撃する事件が起きています。下記AFP記事は、ウイグル族20人が死亡したとの情報も報じていますが、真相はよくわかりません。

****新疆ウイグル自治区で衝突、20人死亡か****
中国北西部、新疆ウイグル自治区の亡命者団体は19日、同自治区で18日に警官隊とデモ隊の衝突があり、ウイグル人20人が犠牲になったと発表した。
中国国営通信は、この衝突を「テロリスト」の攻撃と呼び、群衆がホータンの警察署を襲撃し、警官1人を含む4人が死亡したと報じた。また報道によると、襲撃者らはさらに、にぎわった市場のそばにある警察署に放火したという。

一方、ウイグルの活動家は、一般のウイグル人による怒りの爆発だったと主張し、中国当局が情報を遮断しようとしていると非難。ドイツを拠点とする「世界ウイグル会議(WUC)」は、同自治区の情報筋の話として、治安部隊が14人を撲殺し、6人を射殺したと発表した。(後略)【7月20日 AFP】
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このホータンの事件は、イスラム教徒の女性が黒いベールなどを着用することを地元政府が禁じたことが、引き金の一つだったとの報道もあります。

****新疆の警察襲撃「女性の黒いベール禁止引き金****
中国の新疆ウイグル自治区ホータンの警察署が襲撃された事件で、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは22日、イスラム教徒の女性が黒いベールなどを着用することを地元政府が禁じたことが、引き金の一つだったと報じた。

目撃者は同紙に対し、警察を襲撃したのは20~35歳くらいのウイグル族の男たちだったと証言。女性が頭にまとう黒いベールや、頭から足元までを覆う黒い服の着用を禁じられたことに抗議していたという。

これに対し、地元政府当局者は同紙に、数カ月前からこうした衣装の着用を控えるよう求めていることを認めた。「宗教過激派に影響されやすく、武器も隠しやすいうえ、治安に悪影響を及ぼす」と説明。「美しい顔を見せ、美しい髪をなびかせよう」という標語を使っていたという。治安当局は事件を「平和的なデモではなく組織的なテロ」とする立場を崩していない。

新疆では、学校や公的機関などでは女性のベール着用が認められておらず、断食中のイスラム教徒にも食事や水をとるよう求めるなどしており、宗教を無視した当局の行為にウイグル族など少数民族の不満が高まっていた。【7月22日 朝日】
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更に、昨日30日には、カシュガルで2人組がトラックを奪って人ごみに突進した後、車を降りて刃物で路上にいた7人を殺害する事件が起きています。

****運転手殺害し突っ込む、通行人に刃物…ウイグル****
新華社電によると、中国新疆ウイグル自治区カシュガルで7月30日深夜、2人組がトラックを乗っ取り、運転手を刃物で殺害後、運転して通行人に突っ込んだ。
さらに刃物を振り回して通行人に切りつけ、運転手を含めて7人が死亡、28人が負傷した。2人組のうち1人は取り押さえられたが、もう1人は死亡した。

また、31日夕には同市内で爆発があり、警官を含む3人が死亡、10人以上が負傷した。刃物で襲われた死傷者がいるとの目撃証言もある。容疑者4人が射殺され、4人が拘束、4人が逃走中という。公安当局が背景を調べている。

同自治区では7月18日、ホータンの警察派出所が襲撃され、人質ら計4人が死亡、容疑者14人が射殺される事件が起きた。中国当局は「組織的なテロ」と批判していた。
香港の人権団体・中国人権民主化運動ニュースセンターは、乗っ取りの2人組はウイグル族で、ホータン事件の報復の可能性があるとしている。【7月31日 読売】
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この事件については、民族対立絡みなのかなどの詳細はまだ不明です。

中国の歴史は、漢族と北方騎馬民族や西域部族との対立・抗争の歴史であり、現在のウイグル族などの民族対立もその一環と言えます。
中国にとっては“分離独立”という選択肢はありませんので、なんとか懐柔して緊張を和らげるしかありません。
そのためには、経済的格差是正の施策だけでなく、自治権の見直し、ホータンの“ベール”に見られるように、各民族の文化的価値観の尊重という側面も必要に思われます。
しかし、文化的価値観尊重、差別解消は単に政府施策だけでなく、国民ひとりひとりの心の内にある問題でもありますので、その是正は非常に困難です。


コメント

中国  高速鉄道事故を巡るメディアの当局批判と、当局の言論統制

2011-07-30 21:33:25 | 中国

(事故現場を見守る住民 “flickr”より By M.I.C Gadget  http://www.flickr.com/photos/micgadget/5974553260/ )

【「人の不幸をあざ笑うような報道」との反発も
中国の高速鉄道事故については、日本でも多くのメディアが連日大々的に取り上げています。
事故原因の“人災的”要素、事故後の証拠隠滅を疑わせるような対応、安全管理に対する基本的姿勢の問題、不十分な救助活動、遺族の原因追究を求める抗議など、論点は多々あります。

そうした問題については、改めてここで取り上げることもないかと思いますし、日本における事故報道について、下記のような中国側の見方もあります。

****<高速鉄道脱線事故>各国メディアも大注目、日本では「大躍進」と嘲笑も―中国紙****
2011年7月25日、中国共産党機関紙・人民日報系の国際情報紙「環球時報」は、浙江省温州市で発生した高速列車追突・脱線事故は各国メディアも高い関心を示しており、特に日本では人の不幸をあざ笑うような報道もあったと伝えた。以下はその内容。

(中略)中国高速鉄道計画に最も敏感に反応しているのは日本だ。アジアの大国に対して抱く自然な競争心、そして高速鉄道技術をめぐる両国間のもめ事がその背景にある。米紙ロサンゼルス・タイムズは16日付で北京・上海間の高速鉄道が開通後頻繁に故障していることについて、「日本メディアを喜ばせていることは間違いない」と報じたが、23、24日の日本の報道はまさにその通りだった。

その内容は、「中国の威信をかけて建設した世界最速の高速鉄道で死亡事故が発生。政権に衝撃」「日本では考えられない事故」「日本の鉄道関係者に戸惑いと驚き」といったものから、毛沢東元主席が1950年代に大量の餓死者を出した農工業の増産政策を引き合いに出し、「大躍進」現象と揶揄するメディアまであった。【7月25日 Record China】
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日本の報道が“人の不幸をあざ笑うような報道”とは思いませんが、ただ、日頃中国に政治・経済的に押されている鬱憤をはらすような、「それ見たことか・・・」といった中国バッシングのように思われる部分があれば、見苦しくならないように気をつけるのもよろしいかと思います。

中国共産党:事故の独自報道自粛を求める通達
きょう取り上げるのは事故を巡る中国におけるメディアの対応、それを統制・管理しようとする当局側の動きです。
事故前から、鳴り物入りで開業した北京・上海間の高速鉄道ではトラブルが相次ぎ、中国国内でも批判が出ていました。これに対し、国営メディアの新華社通信は「陰で笑っているのは誰なのか、あなた方も想像できるだろう」と、日本などのライバルを意識して、国民に忍耐と寛容を求める社説を掲載していました。

****中国高速鉄道、相次ぐ大規模遅延 国営メディアが「忍耐」呼びかけ****
前月30日に開業したばかりの北京と上海を結ぶ高速鉄道で、大規模な遅延が相次いで発生している問題で、中国国営新華社通信は13日、国民に忍耐と寛容を求める社説を掲載した。

北京の交通管理局によると、10日、停電により10便以上に約90分間の遅延が生じた。12日には、同様の理由で29便が遅延。13日には上海発北京行きの列車が江蘇省の駅で故障し、2時間以上の遅延が発生した。
開業から10日余りで大規模遅延が相次いで発生したことで、ネット上にはおびただしい数の批判が書き込まれ、国内メディアも批判記事を展開している。

こうした状況を受け、新華社の社説は次のようにいさめている。「高速鉄道をすぐに疑問視し、故障や事故が起きるたびに大げさに書きたてて注目を集めることは、高速鉄道に自信がないことを示すことになる。それは国益を損なうことでもある。陰で笑っているのは誰なのか、あなた方も想像できるだろう」。最後の文言は、中国の高速鉄道に対抗する海外のライバル会社を指しているのは明白だ。【7月14日 AFP】
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事故の大惨事を発端に噴き出した批判は、当局の思惑を超えて、報道現場やインターネットで広がりを見せました。

****高速鉄道事故、報道現場やネットで批判噴出****
中国浙江省温州の高速鉄道事故を巡って、胡錦濤政権は国内メディアの報道規制を一段と強化しているが、今回の大惨事を発端に噴き出した批判は、報道現場やインターネットで抑えきれないほどに広がりつつある。

事故現場では25日、脱線車両の撤去などを終えて運行が再開。国営の中央テレビも正午のニュースのトップで伝え、復旧ぶりを大々的に宣伝した。しかし、北京の中国紙記者は「復旧を急ぎ過ぎている。政府はきちんと調査を行う気があるのか」と疑問を呈する。

胡政権は事故発生翌日の24日、国内の新聞各紙に対し、今回の事故の独自報道自粛を求める通達を出した。だが、一部の中国紙は25日、事故の原因究明や責任追及を求める社説や評論を掲載し、当局の通達に反発する動きも出ているようだ。【7月25日 読売】
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上記記事にもあるように、こうした批判的なメディア報道を抑制すべく、中国共産党中央宣伝部は格メディアに対し、独自報道を控えて国営新華社通信の記事を使うように、また、プラス面のニュースを中心に報道するように、国内メディアに通知しています。

****中国高速鉄道事故 「プラス面のみ報道を」メディアに通達****
取材合戦過熱、責任追及を懸念
中国で新聞やテレビなどを管轄する共産党中央宣伝部が25日、国内の各メディアに対し浙江省温州市で起きた高速鉄道事故について、「政府の懸命な人命救助や市民による自発的な献血活動など、プラス面のニュースを中心に報道するように」という趣旨の通達を出したことが分かった。中国のメディア関係者が産経新聞に明らかにした。報道合戦が過熱し、政府の責任を追及する世論が高まることを懸念したためとみられる。

同関係者によると、通達は各省・市の宣伝部を通じて各メディアに伝えられた。「高速鉄道の技術問題について論評しない」「事故原因の分析については政府の発表内容と一致すること」「インターネット上の情報や書き込みを転電しない」などの注意事項が含まれているという。中国ではこれまで、大きな事故が発生した際、各メディアは独自に取材せず、国営新華社通信が配信した原稿をそのまま使用することが多かった。

しかし今回の事故は、中国版新幹線が北京-上海間で開通した直後というタイミングで起き、国民の関心も高い。このため事故が発生すると、宣伝部の指示を待たずに、全国から計100社以上の新聞、テレビ、ネットメディアが現場に記者を派遣、激しい取材合戦を繰り広げてきた。

北京紙「新京報」「京華時報」などの一般紙は連日、数ページの特集を組み、事故の詳細や原因分析などを報道。その中には、鉄道省など政府の責任を暗に指摘する内容もみられた。また、各メディアで死者数のばらつきがあったのも、記者たちが独自取材をしていたためともいえる。

政府の宣伝機関と位置付けられているはずの中国メディアが、国家権力と“対峙(たいじ)”する場面もあった。鉄道省の24日の記者会見で、中国人記者が同省高官に対し「現場の救出活動が終了した後で、生存者が見つかったというのはどういうことなのか」と、当局のずさんな救出活動について厳しい質問を浴びせていた。

共産党宣伝部の通達を受けて、報道合戦は沈静化するとみられるが、「一時的におとなしくするだけ。今後も(独自報道は)繰り返されるだろう」と指摘する中国メディア関係者もいる。【7月26日 産経】
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【「ガス抜き」】
その後も、中国各紙は批判的な「独自報道」を止めていませんが、「批判は鉄道省に集中している」とのことで、共産党政権や一党独裁批判に直接つながらないように“ガス抜き”との見方もあるようです。

****批判は鉄道省に集中・・・当局「ガス抜き」狙う****
中国浙江省温州での高速鉄道事故で、中国各紙が、「独自報道」を禁じる当局の指示に抵抗して、事故処理の不手際や情報公開の不十分さを批判する論評を連日掲載している。
当局も「ガス抜き」として、一定の批判は容認する考えだが、共産党政権や一党独裁批判に直接つながる報道は断じて許さず、締め付けを強める構えだ。

「北京青年報」は27日、現場で壊して埋めた車両を掘り返したことについて、「事故原因の細部を知るのに役立つはずのものが破壊されてしまったかもしれない。事故の真相究明は一段と難しくなった」と非難。「21世紀経済報道」も、「中国の鉄道は『独立王国』だった」と批判、日本の国鉄民営化も例に挙げて鉄道省の改革を訴えた。

だが、関係者は「批判は鉄道省に集中している」と指摘する。実際、遺族の一部が高速鉄道の温州南駅で抗議行動を起こし、真相究明を求めて政府批判を繰り広げているが、中国各紙はこれを黙殺している。【7月27日 読売】
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言論統制の締め付け
そうしたなかで、当局批判を試みるメディアと、これを統制・管理しようする当局側のせめぎ合いをつたえるニュースが、いくつか報じられています。

****<高速鉄道脱線事故>看板アナが当局批判、国営テレビ番組が放送停止か―中国****
2011年7月27日、中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の追突脱線事故を受け、激しい当局批判を展開した中国中央テレビ(CCTV)の看板キャスター、白岩松(バイ・イエンソン)氏の番組が放送停止処分を受けた疑いが広がっている。米華字サイト・多維新聞が伝えた。

白氏は25日、生放送の報道番組「新聞1+1」で、中国鉄道部の王勇平(ワン・ヨンピン)報道官が「中国の高速鉄道技術は先進的で、基準を満たしている」と言った言葉に対し、「では、運行管理も先進的なのか?監督体制は?人命尊重は?細かい部分まですべて先進的だと言えるのか?」と激しく批判。さらに、中国の高速鉄道の現状を指し、「健康な人に対して、例えば40歳の人の心肺機能が20歳のようだと褒めるだろう。だが、これが知的障害だったら…健康だと言えるだろうか?」と疑問を呈した。

この鋭い指摘に対する視聴者の反響は大きかった。ネットユーザーも「マスコミの人間が言うべきことを言ってくれた」と大絶賛。だが、世論への影響を懸念したCCTVの上層部が同番組の放送停止を決定したとの噂がすぐにネット上に流れた。放送翌日の26日には急きょ別の番組に差し替えられたことで、噂はさらにエスカレート。一方で、内部事情を良く知る人物は「噂はデマ」だとマスコミに語っている。【7月29日 Record China】
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****言論統制が本格化、中国紙に紙面差し替え命令****
23日に中国浙江省温州で起きた高速鉄道事故で、30日付の一部中国紙が紙面の大幅差し替えを命じられたことがわかった。
前日の29日は初七日にあたり、大規模な追悼行事が行われたが、共産党中央宣伝部が世論を刺激して政府批判が高まることを警戒し、本格的な言論統制に乗り出したものとみられる。【7月30日 読売】
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****鉄道省批判の中国国営TV局制作者、停職処分に****
香港紙「東方日報」は30日、中国浙江省温州で起きた高速鉄道事故で、鉄道省を批判した中国国営中央テレビの報道番組制作者、王青雷氏が停職処分になったと伝えた。

王氏の担当番組のキャスターは26日、高速鉄道について「安全でないなら、これほどの速度が必要か」と発言。鉄道省が事故車両を埋めた問題も指摘していた。
また、王氏はミニブログに「強権を恐れずに誤りを批判する記者が一人でもいれば、その国はまだ良心がある」と書き込み、多くのネットユーザーの支持を得ているという。【7月30日 読売】
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日本的常識で言えば、マスメディアの健全な政府批判は民主主義にとって不可欠なもの(弊害も多々あるでしょうが)ということになりますが、政治体制の全く異なる中国でどこまで当局批判が許容されるのか、こうした批判を辞さない姿勢が他の問題でも今後さらに強まるのか・・・興味がもたれるところです。
コメント

ソマリア  深刻化する飢餓 武装勢力の壁に苦しむ支援活動

2011-07-29 21:02:05 | ソマリア

(イスラム系の支援組織「Muslim Aid」による支援物資配布の様子 7月11日 ソマリア・モガディシオ “flickr”より By Muslim Aid Serving Humanity http://www.flickr.com/photos/muslimaiduk/5935953461/ )

【「1000万人が餓死しかねない」】
7月11日ブログ「東アフリカ 過去60年で最悪の干ばつ、避難先で餓死者」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110711
7月22日ブログ「ソマリア 南部2地域に飢餓宣言、今行動しないと地域拡大の恐れ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110722
に続いて、アフリカ東部・ソマリアの飢饉の話題です。

過去60年で最悪の干ばつに襲われている東アフリカですが、内戦で実質的無政府状態が続くソマリアの混乱は特に厳しく、過去20年間のアフリカで最悪の食糧危機に苦しむソマリア南部2地域に、国連は“飢餓”を宣言しています。
食料危機は、アフリカ北東部一帯に広がっており、国連は「1000万人が餓死しかねない」と警告しています。

****ソマリア大飢饉 370万人、生命の危機****
飢えから逃れ、戦乱の首都へ 干ばつのソマリア南部

20年以上内戦が続くソマリアの首都モガディシオは頻繁に銃声が響き、廃虚同然の建物が並ぶ。だが、こんな街に助けを求めに来る人が絶えない。深刻な干ばつによる飢饉(ききん)に苦しむ同国南部の人々だ。

モガディシオのバナディル母子病院を記者が訪ねると、2週間前に運ばれたムハンマド君(2)がいた。12キロあった体重はいま5キロ。350キロ離れた村から一緒に来たという父フセインさん(30)が嘆いた。
「村には4年間も雨が降らない。ヤギ200頭は売ったり死んだりで、いなくなった。家族皆が飢え、この子の異状に気づくのが遅れた。10日間歩いて首都に着き、救急車に助けてもらった」

病院によると、ムハンマド君と同様、重度の栄養失調で約250人の子どもたちが入院している。だが、薬や食糧が足りず、毎日2、3人が亡くなっているという。
ソマリア南部は暫定政府と対立する武装勢力が実効支配し、救援物資は届かない。人々は危険を顧みず、首都や周辺国に向かわざるを得ない。国連によると住民370万人の生命が危機に直面している。
国連機関などは、ソマリアを含む東アフリカ一帯が過去60年で最悪の干ばつに見舞われ、1200万人以上が支援を必要としていると訴えている。【7月27日 朝日】
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【「国民は家にこもって雨を待つのだ」】
緊急の国際支援が必要なソマリアですが、暫定政府と対立する武装組織の支配地域のため、救援活動も困難を極めているようです。
今朝のTVニュースでも、モガディシオかどこかの倉庫にうず高く積まれて支援食糧が放映されていました。国際支援が不十分な点もありますが、全く物資がない訳ではなく、住民に届けられないのが一番の問題となっています。

“国連が20日、飢饉が起きていると宣言したバクール地方とシェベリ川下流地方は、イスラム過激派組織アルシャバブが実効支配している。アルシャバブは2010年初頭、外国の支援団体に対し2年間の活動禁止令を出し、WFPもソマリアからの撤退を余儀なくされていた。
今月になって、アルシャバブは深刻な干ばつに苦しんでいる人民を助けたいとして活動禁止令の解除を発表し、支援を要請。これを受け、各支援団体はソマリアでの支援活動再開を検討していたが、暫定政府に任命されたばかりの女性・家族問題担当相が21日、アルシャバブに誘拐される事件が発生。武装勢力支配地域での支援再開の難しさが浮き彫りになった。” 【7月22日 AFP】

“南部を実効支配するイスラム武装勢力シャバブは、人々の困窮に向き合おうとしていない。広報担当ラゲ氏は20日の記者会見で、「国民は家にこもって雨を待つのだ。外国人のやっている難民キャンプには行ってはならん」。ラゲ氏は「スパイ活動」として2009年から禁じている国連や欧米系NGOの援助活動も、改めて禁止を通告した。深刻な飢饉を招いたのは、こうしたシャバブの強硬姿勢にあるのは間違いない。” 【7月27日 朝日】
「国民は家にこもって雨を待つのだ」とは、狂気としか言いようがありません。

動き出した支援活動
そうした困難な状況で、赤十字国際委員会や国連世界食糧計画(WFP)の支援活動が行われています。
****ソマリア干ばつ、武装勢力支配の一部地域に食糧援助****
赤十字国際委員会(ICRC)は24日、干ばつの直撃を受けたソマリア南部の武装勢力支配地域の1つゲド州バルデラに、食糧400トンを届けたと発表した。支援活動への妨害はなかったという。

ゲド州は、国連が飢饉宣言を出したバクール地方とシェベリ川下流地方に隣接しており、ともにイスラム過激派組織アッシャバーブが実行支配している。ICRC主導による住民への直接の食糧投下は2009年以来で、今後、追加の投下を予定しているという。【7月25日 AFP】
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****飢饉発生のソマリアへ、子供向け栄養食品を空輸 WFP****
国連世界食糧計画(WFP)は27日、干ばつによる被害が深刻なソマリアへの緊急食糧支援を開始した。首都モガディシオへ、栄養失調に陥っている数千人の子供向けにピーナッツ・ペースト10トン分を空輸した。
「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸北東部では、過去60年で最悪の干ばつが発生。ソマリアでの被害は最も深刻で、約1200万人が飢餓の危機にさらされている。
WFPのスポークスマンによると、栄養強化のためのピーナッツ・ペーストを毎月100トン、3万5000人の子供に供給する計画で、今回の空輸はその第1弾だという。【7月28日 AFP】
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予断を許さない状況
この飢饉が武装勢力の力を弱めており、和平実現の好機が生まれているとの見方もあります。
****干ばつ・戦闘、続く苦しみ 弱る武装勢力「和平の好機」 ソマリア飢饉****
・・・・一方、飢饉によってシャバブが弱体化し、和平の好機が生まれているとの皮肉な指摘もある。
07年から台頭してきたシャバブの勢いは、ここ数カ月間弱まり、かつてモガディシオでも6割を支配したが、今では3割程度に過ぎない。
「シャバブの資金源の一つは地元住民から徴収する『税金』だが、近年の干ばつで激減した。略奪を始めており、士気も落ちた。今後の戦略をめぐる内部分裂もある。結果的に和平実現の機運が到来している」。暫定政府の治安関係者は、そうした見方を示した。(後略)【7月27日 朝日】
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しかし、ことはそう簡単ではなさそうで、暫定政府・アフリカ連合ソマリア・ミッションとアッシャバーブとの交戦も伝えられており、予断を許さない状況です。

****飢饉のソマリア、首都で政府軍と反政府勢力が交戦****
飢饉に陥っているソマリアの首都モガディシオで28日、緊急援助物資の供給ルートを確保しようとする暫定政府とアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の合同部隊と、イスラム過激派組織アッシャバーブとの間で戦闘が起きた。5時間にわたる戦闘で武装勢力10人と暫定政府軍兵士2人が死亡したほか、合同部隊の兵士2人と民間人27人が負傷した。

ソマリアを含む「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸北東部は記録的な大干ばつに見舞われ、1200万人あまりが飢餓の危機にさらされている。ソマリアでは、干ばつと絶え間ない紛争により、全人口1000万人のおよそ半数が支援を必要としている状況だ。

国連は今月、ソマリア南部に21世紀初の飢饉の発生を宣言。首都モガディシオでも数千人の子どもたちが飢えに苦しんでおり、国連世界食糧計画(WFP)が27日に緊急食糧支援を行ったばかり。【7月29日 AFP】
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英BBCによると、今回の作戦で暫定政府側がアルシャバブ支配地域の一部を制圧した模様で、WFPは今後、1カ月当たり100トンを目標に供給を続けるとのことです。
しかし、“ しかし、今月末ごろにはイスラム教の断食月(ラマダン)が始まり、宗教心が高揚することから、アルシャバブが反転攻勢に出る可能性も指摘されており、切迫した状態が続きそうだ。”とも報じられています。【7月29日 毎日より】

【「どこへそうした資金が流れたのか、何も分からない」】
ソマリアのアフメド暫定政府大統領は、アルシャバブと和平交渉を断固拒否する姿勢を崩していません。
****武装組織が支援阻止」アフメド・ソマリア暫定大統領****
干ばつにより飢饉(ききん)が起きているソマリアのアフメド暫定政府大統領が、朝日新聞のインタビューに応じた。飢饉は同国南部で深刻だが、この地域を実効支配するイスラム武装組織シャバブが支援活動を阻止しているとして、「シャバブのせいで被害が拡大している」と批判した。主なやりとりは次の通り。

 ――飢饉の理由は。
「干ばつはソマリアのほかの地域や、ケニアなどでも起きているが、問題は、シャバブや(シャバブと関係が深い国際テロ組織)アルカイダが支援活動を阻止している点にある。彼らがそうした地域を支配しているため、飢饉が深刻化しているのだ」

 ――暫定政府としての対策は。
「いくつかの避難民キャンプを作った。食糧や居住地を提供し、病気の拡大も防ごうとしている。外国からの送金の円滑化も進めている」

 ――内戦が20年以上続いている。飢饉を契機として、シャバブと和平交渉する考えはないのか。
「彼らも飢饉で苦しんでいる。だが、シャバブやアルカイダの目的は、ソマリアだけでなく世界を対象にしたテロ活動にある。交渉は絶対にしない」

 ――治安の問題もあり、首都モガディシオでは、外国の援助団体の姿がないが。
「それが問題だ。多くの資金がソマリアの飢饉のために使われたと言われているが、我々はその成果を見ていない。どこへそうした資金が流れたのか、何も分からない。ケニアを拠点にしている国連のソマリア関係事務所がモガディシオへ移り、生産的な仕事ができるよう望んでいる」【7月28日 朝日】
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“どこへそうした資金が流れたのか、何も分からない”というのが現実です。
反政府武装組織か、政府側か、あるいはNGOか・・・物資も資金もどこかに消え、戦闘に逃げ惑い飢えに苦しむ住民が残される・・・悲惨な現実です。
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パキスタン  新任の若き女性外相、インドとの外相会議に臨む

2011-07-28 21:11:34 | アフガン・パキスタン

(史上最年少の外相に就任にしたパキスタン・カル外相(写真は08年) 美しい方ですが、相当にセレブで、困難な状態にあるパキスタン経済の“financial adviser”の役職にあった人物でもあります。 “flickr”より By nahl http://www.flickr.com/photos/naqvi/2579109061/

国際社会にアピールするには十分な容姿と経歴
パキスタンでは、5か月間空席になっていた外相ポストに、ヒナ・ラッバーニ・カル外務担当相(34)が昇格し、同国初の女性外相が誕生しました。同国史上最年少の外相でもあります。
パキスタンの外交は実質的には軍が掌握していると言われていますが、若く容姿も端麗な彼女の就任は、男性優位社会のパキスタンにおいて女性の権利にも配慮が払われていることを国際的にアピールする狙いもあると見られています。

なお、年齢については、下記産経記事は33歳としています。77年1月19日生まれとの情報もありますので、それが正しければ、現在34歳です。どちらでもいいことですが。

カル外相は、2003年に当時の政権与党パキスタン・イスラム教徒連盟( PML –Q)から下院議員 に当選しましたが、08年には、再選のための公認がPML – Qから得られず(あるいは、彼女の方から離れたのか?)、現与党のパキスタン人民党 ( PPP )に席を移して再選されています。政治的野心・嗅覚(あるいは“志・情熱”?)もなかなかのもののようです。

非常に裕福で特権的な政治家一族の出身ですが、そのあたりは政治家が一種の家業となっているパキスタンにおいてはよくある話で、故ブット前首相も同様です。
“financial adviser”の役職にありましたが、結果としてパキスタン経済は非常に困難な状態にあります。経済的専門知識については“?”ですが、日本でも財務大臣が必ずしも経済的知識がある訳でもありませんから・・・。

****お飾り”か、新風か パキスタン初の女性外相・33歳カル氏****
27日にニューデリーで行われた印パ外相会談で、46歳年上のインドのクリシュナ外相(79)との会談に臨んだパキスタンの新女性外相カル氏(33)に注目が集まっている。パキスタン外交は実質、軍が掌握している状況だが、カル氏はパキスタン外交を国際社会にアピールするには十分な容姿と経歴を備えており、対外的には潜在性の高さをにじませている。

初の女性外相に就任したカル氏は、パキスタン最大の東部パンジャブ州ムザファルガー地区出身で、同地区の州知事、州首相などを輩出してきた有力政治家の一員。名門のラホール経営大学を卒業後、米国の大学院でホテル経営学を学んだが、2003年の総選挙で当選したのをきっかけに政界入りした。

政権のカル氏登用の狙いははっきりしない。だが、パキスタンが男性優位社会で、女性の権利が守られないとの国際社会のイメージを変える狙いがあるとみられている。
カル氏の外相就任について国内の反応はさまざまだ。「外交を仕切る軍が了承したのだろうが、所詮、意思決定は軍にあり彼女は“お飾り”だ」(外交専門家)との声が上がる一方、好意的な意見も少なくない。
大使経験者のザファル・ヒラリ氏は、「パキスタンの外交は、1958年の軍事政権樹立以降変わっていない。カル氏の外相就任を契機に進化させるべきだ」と擁護している。【7月28日 産経】
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【「協力関係の新時代」・・・?】
カル外相は、先週インドネシアで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議でヒラリー・クリントン米国務長官と顔を合わせ、今週は上記記事にもある宿敵インドとの1年ぶりの外相会議に臨んでいます。

****インドとパキスタン、1年ぶり外相会談****
2011年07月28日 07:57 発信地:ニューデリー/インド
インドのS・M・クリシュナ(S.M. Krishna)外相とパキスタンのヒナ・ラッバーニ・カル外相は27日、インドの首都ニューデリーで会談した。停滞している和平プロセスの進展を目指したもので、両国の外相会談は1年ぶり。

クリシュナ外相は会談後、両国の関係は「正常な方向に」戻ったと述べ、今回の会談を評価。カル外相は「協力関係の新時代」と表現した。
会談後の共同声明では、テロ対策や貿易促進、和平のための対話継続における両国の包括的な取り組みの構想がうたわれたものの、こうした楽観的なムードを裏付ける実質的な合意はほとんどみられなかった。

インドは、2008年のムンバイ同時襲撃事件をめぐり、パキスタンを拠点とする組織による犯行だと非難し、パキスタンとの対話を中断していた。【7月28日 AFP】
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“インドのクリシュナ外相は会談後、記者団に「両国関係は正しい方向へ向かっている」と強調した。カル外相も「新しい世代は過去とはかなり違う両国関係を目にすることになる」と関係改善に自信を見せた”【7月27日 朝日】とのことですが、“ただ、目新しい合意内容は少なく、共同声明の中で、カシミールの停戦ラインを挟んだ交易を週4回に倍増し、観光客や巡礼者の渡航を容認することに言及した程度だった”【同上】とも。

長年の対立がある両国関係ですから、急に実効ある友好関係・・・というのは無理な話でしょう。
核保有国でもある両国の“危険な関係”が、久しぶりの外相会議で少しでも和らぐならば意義もあることです。

蘇る?ムシャラフ前大統領
一方、以前から政界復帰への意欲が報じられているムシャラフ前大統領ですが、次回総選挙への立候補を表明しています。
ムシャラフ氏は、ザルダリ大統領の妻で、政敵だったブット元首相が暗殺された事件で逮捕状が出ています。
政権末期の国民からの支持はさんざんだった同氏ですが、本当に復帰の芽があるのでしょうか?

****パキスタン:ムシャラフ前大統領 13年総選挙出馬の意向****
米CNNテレビ(電子版)などによると、パキスタンのムシャラフ前大統領は21日、米ワシントンのシンクタンクで講演し、2013年の総選挙に立候補する意向を表明した。来年3月に帰国して、本格的な準備に入る。ムシャラフ氏は08年8月の大統領辞任後、ロンドンに滞在。昨年10月に新党の設立を発表し、政界復帰に向けた準備を進めていた。

ムシャラフ氏は講演で、米軍部隊による国際テロ組織アルカイダのビンラディン容疑者殺害に関連し、米国内で指摘されているパキスタン軍部とアルカイダとの関係について「そんな事実はない」と全面否定した。
ムシャラフ氏は陸軍参謀長だった99年にクーデターで政権を奪い、01年には大統領に就任。だが01年の米同時多発テロで始まった米国の「対テロ」戦争に協力したことから、多くの国民が反発。07年のイスラム礼拝所「ラル・マスジッド」の弾圧で多数の死者を出したことで政治危機に陥り、国会の反発も受けて辞任に追い込まれた。

また07年12月にザルダリ大統領の妻で、政敵だったブット元首相が暗殺された事件を巡って、暗殺計画の情報を事前に知りながら、適切な警備態勢を取らなかった疑いがあるとして、同国の裁判所から逮捕状が出ている。しかし、ムシャラフ氏を支持するイスラム政党が政権与党との関係を改善するなど、帰国へ向けた政治的環境も改善されつつある。【7月22日 毎日】
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パレスチナ自治政府  9月の国連総会でパレスチナ国家承認決議案の採択を求める動き

2011-07-27 21:35:12 | パレスチナ

(6月15日 イスラエル側の入植地拡張を阻止しようとするパレスチナ人活動家 By palestinalibre.org http://www.flickr.com/photos/palestinalibre/5864344573/in/photostream/ )

イスラエル:「一方的な行動は和平をもたらさない」】
北アフリカ・中東のアラブ民主化の動きの影に隠れ、あまり目立った動きがないパレスチナですが、パレスチナ自治政府はイスラエルとの和平交渉に進展が図れないと見切りをつける形で、9月の国連総会でパレスチナ国家を承認する決議案の採択を求める方向で動いています。
一方、イスラエルはこうしたパレスチナ自治政府の方針に、“一方的な行動”と反発を強めています。

両者の国連大使を安保理に招いての協議も平行線をたどっています。
****パレスチナとイスラエル、安保理で応酬 国家承認めぐり****
国連安全保障理事会は26日、和平交渉が暗礁に乗り上げているイスラエルとパレスチナ自治政府の国連大使を招き、中東和平問題について協議した。今年9月の国連総会で国家承認の決議案採択を目指すパレスチナに対し、イスラエルが反発。主張は平行線をたどった。

パレスチナのマンスール大使は「国連による国家承認は、和平への道のりを傷つけるものではない」と主張。イスラエルによるパレスチナ占領が始まった1967年の第3次中東戦争までの境界線を基本に国境線を定め、パレスチナが国家承認後に国連に加盟できれば「両国の共存はより不可避となる」と訴えた。
これに対し、イスラエルのプロソル大使は「(パレスチナの)一方的な行動は和平をもたらさない」と批判した。【7月27日 朝日】
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パレスチナ:「国際社会の総意」という既成事実を積み上げを狙う
国連総会での国家承認には3分の2以上の賛成票が必要ですが、パレスチナ自治政府側は強い自信を示しています。ただ、国連加盟には安保理の承認が必要で、これについてはアメリカが拒否権を発動すると見られています。

****パレスチナ:国連総会決議採択に自信 国家承認で高官****
パレスチナ自治政府のマンスール国連代表(大使に相当)は、9月の国連総会でパレスチナ国家を承認する決議案の採択を求める方針について、賛意を示す国は現在約120で「近く130を超える」のは確実だと述べ、採択に必要な3分の2(128)以上の賛成票獲得に強い自信を示した。共同通信のインタビューに答えた。

国連への正式加盟を申請した場合、加盟承認には事前に国連安全保障理事会の勧告が必要だが、常任理事国の米国が拒否権行使を強く示唆している。
この点について、マンスール氏は「他にも多くの選択肢がある」と強調、パレスチナが「組織」として得ている国連オブザーバー資格を、「国家」に格上げする決議案を提出することも「選択肢の一つだ」と述べた。オブザーバー資格枠の変更には、安保理の勧告は必要ないとされる。

国連総会決議は、安保理の決定が関与しない限り法的拘束力がない「政治メッセージ」となるが、パレスチナは「国際社会の総意」という既成事実を積み上げ、悲願の国家樹立につなげたい考え。【7月9日 毎日】
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アラブ連盟は14日、カタールの首都ドーハで中東和平問題に関する会合を開き、パレスチナ自治政府が目指している9月の国連総会での国連加盟承認に向けて国連安全保障理事会などへの働きかけを強めていくことを決めています。

見通しがたたない和平交渉再開
こうしたパレスチナ自治政府側の“一方的な行動”を望まないアメリカが、自治政府をイスラレルとの和平交渉に引き戻すためには、これまで以上にイスラエルに圧力を行使する必要がありますが、アメリカは来年11月のアメリカ大統領選が近付くにつれ、よりイスラエル寄りになるとの観測もあります。

現実問題としては、イスラエルの強硬姿勢は変化なく、和平交渉への糸口は見つかっていません。

****イスラエルが入植住宅入札へ、和平交渉遠のく*****
イスラエル政府は18日、占領地ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地2か所で、入植者用住宅計336戸の建設に向け入札を行うと発表した。
住宅・建設省報道官によると、1年以内に着工し、3年以内に完成する見通しだという。

昨秋から中断している和平交渉の再開条件として、パレスチナ側は入植凍結を求めており、入札決定に反発するのは必至。イスラエルが入植を続ける方針を鮮明にしたことで、欧米が求める交渉再開は一層、見通せなくなった。【7月18日 読売】
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ミャンマー  スー・チーさんと政権側、軟禁解除後初めての“対話” 欧米・日本、軟化の兆しも

2011-07-26 20:04:01 | ミャンマー

(7月7日 訪問先ニャンウーで住民の歓迎を受けるスー・チーさん By SAUNG WIN HLAING  http://www.flickr.com/photos/65443286@N08/5951677677/ )

演説や政治的活動とみなされかねない行動を避ける
ミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんは、今月、前年11月に自宅軟禁を解除されてから初めてヤンゴンを離れて次男キム・アリス氏とともに、中部の古都バガンや近郊の村々を4日間かけて訪問しました。
その行く先々で大勢の歓迎する人びとの輪に囲まれたと報じられています。

“地方遊説”となれば当局による再度の拘束も危惧されていましたが、“旅行中のスー・チーさんには私服警官の監視が付いていたが、妨害などは一切なく、穏やかな旅路となった。これは、スー・チーさんが演説や政治的活動とみなされかねない行動を徹底的に避けたためだ。”【7月8日 AFP】ということで、無事に旅行は終了しました。

その後、スー・チーさんは19日、ヤンゴンで、父の故アウン・サン将軍を追悼する式典に出席しています。
国民が「建国の父」と慕う将軍の命日に催される式典へのスー・チーさんの参加は9年ぶりで、支持者ら約2千人も式典後に集まりました。

****スーチーさん、9年ぶり父の追悼式典に 支持者2千人も****
・・・・支持者らが大規模に行動するのは、昨年11月のスー・チーさんの軟禁解除直後の演説以来。スー・チーさんの政治活動を禁じる政府との緊張が高まる可能性がある。

スー・チーさんは同日午前にアウン・サン廟(びょう)で開かれた政府主催の追悼式典に参加した後、自身が率いる民主化勢力「国民民主連盟(NLD)」本部で支持者らとともに独自の式典を開催。午後にアウン・サン廟に車で再訪する際、支持者らも徒歩で続いた。スー・チーさんは静かに祈りをささげただけで、演説はしなかった。支持者の一人は「指示を受けたわけではなく、みんな自発的についていっただけだ」と話した。 【7月19日 朝日】
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一連の行動でスー・チーさん側が自制していることもあって、今のところ当局との関係は小康状態を保っていますが、スー・チーさん側も当局側も今後に向けての“様子見”ということでしょう。

会談後、硬い表情のスー・チーさん
インドネシア・バリ島で開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)との会議に出席したクリントン米国務長官は22日、ミャンマー政府に対し、「2000人以上の政治犯を無条件で釈放するべきだ」と要求するとともに、スー・チーさんを含む野党勢力や少数民族との「意味のある対話」などを求め、応じなければ「今まで通りの道をたどることになる」と警告しました。

こうしたアメリカの働きかけもあってか、25日には、自宅軟禁を解かれて以来初めての、スー・チーさんと政府側の“対話”が行われました。

****スー・チーさん、ミャンマー政府と会談 軟禁解除後初めて****
ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんは25日、新政権のアウン・チー労働相とヤンゴンの迎賓館で1時間あまりにわたって会談した。数々の問題が指摘されながらも昨年11月の選挙で軍事政権に代わる新政権が誕生し、スー・チーさんが自宅軟禁を解かれて以来、スー・チーさんが政府側と対話を持ったのは初めて。
数日前には米国が、ミャンマー政府に対し民主化に向けた具体的な進展を示すよう求めていた。

スー・チーさんとアウン・チー労働相は会談後、迎賓館前でそろって記者会見に臨み、同労働相は「これは、将来に進む多くのステップの1つだ」と語った。
また同労働相は、会談の内容は法と秩序や、国民の利益を目的とした緊張緩和におよんだとの内容の共同声明を読み上げた。共同声明は、会談を前向きなものと評価しており、両者は再度、会談することで合意したという。
一方、スー・チーさんは、「会談の結果が、国にとって良いものとなると期待している」と言葉少なに語った。【7月26日 AFP】
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自宅軟禁を解かれて大分時間が経過していますが、ようやく“対話”が実現したのは、民主化へ向けた柔軟姿勢を国際社会にアピールする政権側の狙いとともに、11月の総選挙を無難に乗り越え“民政移管”を実現した政権側の自信の表れでもあるでしょう。

アウン・チー労働相は07年、スー・チーさんとの対話窓口となる「連絡担当相」に任命され、自宅軟禁されていたスー・チーさんと計9回会談している人物ですが、今回の会談では、改めてスー・チーさんに政治活動の自粛を求めた可能性が指摘されています。

「何を議論し実行するにせよ、国益を考える」とも語ったスー・チーさんですが、約1時間20分の会談の雰囲気は会談後の記者会見の写真によくあらわれています。
にこやかに記者に手を振りスピーチするアウン・チー労働相に対し、少し距離を置いて立つスー・チーさんは腕を前に組み、硬い表情です。両者の握手などもなかったそうです。

【「透明性を確保し、国民のためになる支援である必要がある」】
政権側はスー・チーさんとの“対話”などの柔軟姿勢を示すことで、欧米が続ける経済制裁の解除へ、局面打開をめざしたとも見られています。
欧米諸国、日本も新政権の対応を見定めながら、柔軟な対応も織り交ぜた軌道修正を図っていると報じられています。

****対ミャンマー、対話もじわり 日米欧 距離感探る****
欧米諸国がミャンマー(ビルマ)との距離感を模索している。20年ぶりの総選挙を経て形式的に民政移管した3月の新政権発足後の情勢変化を見定めつつ、これまでの経済制裁に柔軟な対応も織り交ぜ始めた。日本も欧米の動きを見つつ、軌道修正を図る。

米政府はインドネシア・バリ島ヌサドゥアで22日に主催する初の「メコン下流域フレンズ(友好国)閣僚会議」にミャンマーを招いた。従来のビルマ呼称に加え、「ビルマ/ミャンマー」の表記も容認。また在ミャンマー臨時代理大使の大使への格上げも検討中だ。キャンベル国務次官補は「以前の軍事政権との決別を期待する」と話す。

オバマ政権発足後の2009年9月に直接対話に踏み切った米国は、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの総選挙からの排除に強い失望を表明してきたが、対話は閉ざしていない。議会で追加経済制裁を訴えてきた共和党の重鎮、マケイン上院議員も6月、約15年ぶりにミャンマーを訪問。関係改善を語るなど、対話の環境に変化が生まれつつある。

欧州連合(EU)は4月、対ミャンマーの輸入や直接投資の禁止など経済制裁を1年間延長する一方、外相らに対するビザ発給停止や資産凍結を解除することで制裁を一部緩和。6月に代表団を率いてミャンマーを訪れたロバート・クーパー欧州対外活動庁顧問は「(ミャンマーの)変化の可能性はとても大きい」と語り、制裁解除も視野に入れた姿勢を示した。

日本も政策変更を表明。03年のスー・チーさんの拘束以降、人道支援などに限定してきたODA(政府の途上国援助)を、スー・チーさん解放と新政権発足を受け、農業や医療・保健分野などにも拡大させることを検討している。松本剛明外相は21日の日本メコン外相会議で「総選挙の実施や民政移管は不十分ではあるが一歩前進。流れを後押しするために協力を強化していきたい」と述べた。

元々日本は、制裁を重視する欧米諸国とは異なり、援助などを通じた「関与」で民主化を促そうとしてきた。中国からの対ミャンマー援助や投資が増える中「このままでは中国の影響力が強まるだけだ」(外務省幹部)との懸念もある。

6月下旬にミャンマーを訪問し、新政権高官やスー・チーさんと会談した菊田真紀子外務政務官は「スー・チーさんから『透明性を確保し、国民のためになる支援である必要がある』という話があった。新政権の民主化への努力が見えるかなどを見極めて、実施を判断する」と話した。【7月22日 朝日】
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日本側が検討している新規ODAは、〈1〉結核やマラリアの予防接種や妊産婦への医療支援〈2〉海外留学を含む人材育成支援〈3〉塩害に強い苗木や農機具の供与――などが想定されています。
歴史的経緯でミャンマーとは深い繋がりを持つ日本ですが、中国との援助競争だけでなく、「透明性を確保し、国民のためになる支援」を期待します。

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ノルウェー  「反イスラム、移民排斥」を主張する連続テロ容疑者と欧州社会の右傾化の流れ

2011-07-25 22:00:53 | 欧州情勢

(ノルウェー・オスロの街かど ノルウェーでは、イスラム系を中心にした難民は4万人、難民申請者は1万2千人にのぼるとか “flickr”より By oezguer http://www.flickr.com/photos/oezguer/2735783951/

【「ノルウェーは男女平等の国だが、異なる考えを持つ移民を受け入れることはできない」】
ノルウェーで22日に起きた連続テロ、特に、若者500人がサマーキャンプに集う逃げ場のない小島で、狂気に駆られた一人の男が約1時間半にわたって銃を乱射し続け、85人もの死者を出した南部ウトヤ島の銃乱射事件は衝撃的でした。

逮捕されたアンネシュ・ベーリング・ブレイビク容疑者(32)は、約10年の歳月をかけて書き足された1500ページ以上に及ぶ「宣言」をインターネット上に公開していました。そのなかで、殺人を「十字軍」になぞらえ、自らを「モンスター」と呼んでいます。

いつの時代、どこの社会にも狂気の「モンスター」は存在しますが、問題はそうした「モンスター」が個人的資質によって突然変異的に表れるのか、あるいは「モンスター」を生みだすような社会的土壌があるのか・・・という点です。

右翼過激思想に傾倒し、自ら「キリスト教原理主義者」とするブレイビク容疑者は、「宣言」のなかで、22日の犯行について、数世紀に及ぶイスラムによるヨーロッパの植民地化を終わらせるため、それに必要な革命を起こすために準備した「先制攻撃だ」と記しているそうです。

こうした「反イスラム、移民排斥」の考えは、欧州全土に広がる同様の流れと軌を一にするもので、欧州社会全体の右傾化の流れが彼の狂気を増長・先鋭化させていったことが想像されます。

****ノルウェー連続テロ 警官姿、若者集めて乱射 「平和の国」に移民排斥の影****
・・・・湖に飛び込んで逃げる若者を容赦なく撃ち殺した同容疑者は警察の取り調べに熱心に自分の思想信条を語っており、警察は「右翼思想を持ったキリスト教原理主義者だ」と発表した。しかし、これまでのところ同容疑者の宗教的背景は明らかになっていない。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」に掲載された写真や、英思想家J・S・ミルの警句を借用した「信念を持った1人の人間は利益にしか関心を持たない10万人に匹敵する」との書き込みからは自己陶酔的傾向もうかがえる。
                 ◇   ◇
ノルウェーでは今年に入って右翼過激派が増えたといわれるが、中心的指導者は見当たらず、その活動が深刻な社会問題になっている様子もない。
一方、イスラム系を中心にした難民は4万人、難民申請者は1万2千人にのぼる。これに対し、議会第2党の進歩党が「ノルウェーは男女平等の国だが、異なる考えを持つ移民を受け入れることはできない」と反移民政策を唱えるなど、ノルウェー社会とイスラム系移民社会の溝が目立ち始めている。
警察は「それが動機につながるかわからないが、容疑者には極右と反イスラムの政治的特徴がある」と分析している。
                 ◇   ◇
欧州は労働力不足を解消するためイスラム系移民を積極的に受け入れてきたが、2008年の金融・経済危機で失業率が上昇。財政状態も悪化して「出生率の高いイスラム系移民に失業保険や年金を奪われる」との不安が広がっている。
こうした不安をあおる形でイスラム系移民排斥を唱える極右政党がオランダやフランスで台頭。人権意識が高い北欧でも極右のデンマーク国民党が政権に影響力を行使するようになり、スウェーデンでは昨年の総選挙で、民族衣装ブルカをまとったイスラム系女性が年金受給に殺到する映像を作ったスウェーデン民主党が20議席を獲得し、初の国政進出を果たしている。【7月24日 産経】
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極右勢力が唱える移民排斥は失業にあえぐ市民の不満の受け皿にもなっている
ノルウェーのストルテンベルグ首相は23日の会見で「他国に比べ、ノルウェーの極右過激派の問題は大きくはない」と述べ、今回の連続テロが、09年にはソマリアなどから欧州で3番目に多い1万7200件の難民申請があったように、「開かれた社会」を自任してきたノルウェーの意表をついた事件だったことを言外ににじませています。

ただ、欧州全体では「反イスラム、移民排斥」の流れが顕著に認められ、ノルウェーにおいてもイスラム系移民の増大とともに、文化的・経済的軋轢が大きくなっていたのではないかとも思われます。

****ノルウェーテロ:「寛容な社会」憎悪か*****
「平和の国」ノルウェーを襲った22日の連続テロ事件は、当初はイスラム過激派の犯行を疑う見方もあった。だが、逮捕されたのは逆に欧州で増加するイスラム系移民に反発する極右思想の青年だった。

◇容疑者は極右青年
ノルウェーからの報道によると、警察当局に逮捕されたのはアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)。インターネットへの投稿や地元メディアの報道から浮かび上がる人物像は、移民に寛容な北欧型の「開かれた社会」に反発を増幅させていった姿だ。自らを「愛国主義者」などと評し、その言動には自己陶酔の世界さえ垣間見える。
(中略)

◇移民排斥論、欧州で台頭
欧州諸国では近年、長引く経済の低迷で社会や政治が右傾化している。背景にあるのは、移民排斥の思想だ。
移民は70年代、発展を支える「労働力」として歓迎された。だが、経済が失速すると、安い賃金で働く移民は欧州白人の職を奪う「重荷」に変貌した。極右勢力が唱える移民排斥は失業にあえぐ市民の不満の受け皿にもなっている。

欧州連合(EU)の統計によると全加盟27カ国で08年、中東やアフリカ系など計380万人の移民を受け入れた。この流入が加盟国の人口増につながり、労働力人口を支えた。欧州社会の発展・維持に移民は「不可欠」だ。

問題は、欧州が移民をいわば「出稼ぎ労働者」として受け入れてきたことだ。だが、移民は生活の場を欧州に移して定住するようになった。母国から家族を呼び寄せ、独自のコミュニティーを形成するに連れて文化的、宗教的な摩擦が顕在化。経済の悪化やイスラム過激派によるテロなどが追い打ちをかけ、キリスト教を伝統とする欧州社会とイスラム系移民の摩擦や移民排斥論に結びついた。

反移民のうねりは「寛容」が伝統の北欧とて例外ではない。4月のフィンランド総選挙では民族主義政党が議席を6倍に増やした。キャメロン英首相やメルケル独首相も最近、自国の多文化主義を「失敗」と言及した。
また、オランダでは6月末、動物愛護を名目に、食肉処理する家畜を事前に失神させることを義務付ける法案が、賛成多数で下院を通過した。イスラム教やユダヤ教では、意識のある家畜を処理しなければならず、「移民排斥につながる」と両教徒は反発している。【7月24日 毎日】
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【「文化面での保守主義を持つ」理想の国、日本
ブレイビク容疑者はイスラム批判のインターネットサイトに熱心に投稿しては「現在の政策は社会主義と資本主義の争いではなく、愛国主義と国際主義の戦いだ」などと主張しています。
投稿の一つでは、日本と韓国について「多文化主義を拒否している国」と言及。日本などを反移民、非多文化社会の模範のようにたたえています。

****ノルウェーテロ容疑者、「理想の国」日本や韓国****
アンネシュ・ブレイビック容疑者は、22日の犯行直前にインターネットに投稿した「マニフェスト」の中で、「文化面での保守主義を持つ」理想の国として、日本や韓国を挙げていた。イスラム系移民が少ないため、だという。
また、「いま、最も会ってみたい人々」としてローマ法王とロシアのプーチン首相を挙げた。「次に会ってみたい人々」としては日本の麻生太郎・元首相など4人を挙げた。【7月25日 読売】
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狂気の「モンスター」に日本を“理想の国”として称賛されては、困惑します。
ただ、実際のところ移民を殆んど受け入れていないことも事実です。
大震災でも「フクシマ」でも揺るがない社会の安定性は、そうした閉鎖性によって維持されている社会の等質性に大きく依存していると思われますが、少子高齢化・人口減少が進行するなかでそうした閉鎖性を今後も維持できるのか、あるいは、本来どうあるべきなのかという議論が今後必要とされています。

イスラム教徒に対する誤った理解
なお、今回欧米メディアが当初、イスラム過激派の犯行を疑う報道を繰り広げたことに対してイスラム圏で反発が出ています。

****ノルウェーテロ:イスラム圏で西側報道に反発*****
・・・・ノルウェーはアフガニスタンに派兵しており、国際テロ組織アルカイダなどが批判してきた。英BBCや米ニューヨーク・タイムズ(電子版)などの主要メディアは、連続テロの発生から数時間の間は「イスラム過激派犯行説」をほのめかす報道ぶりだった。(中略)

しかし、逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)は反イスラム的な傾向のあるキリスト教原理主義者とされる。簡易ブログ「ツイッター」では容疑者逮捕後、「西側の報道はイスラム非難に偏向している」といったイスラム圏からの書き込みが目立った。
エジプトのイスラム過激派専門家、ムニール・アディーブ氏は「今回の事件報道は西側諸国にイスラム教徒に対する誤った理解があることを示した」と述べた。【7月23日 毎日】
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中国  「アモイ事件」主犯中国送還に見る国内権力闘争の一端

2011-07-24 20:03:05 | 中国

(7月11日 カナダ・バンクーバー 「アモイ事件」(遠華密輸事件)主犯格の頼昌星氏(右) 中国で何を語るのか?何を黙するのか? “flickr”より By elin2010075 http://www.flickr.com/photos/65157513@N02/5937625816/

証言次第では、江沢民氏に近い幹部の今後に影響する可能性
改革・開放が進む中国経済に対し、中国の政治体制は事実上の共産党一党支配のもとで、外部の人間には窺い知れないものがあります。
90年代後半の大規模密輸・汚職事件である“アモイ事件”の主犯格の頼昌星氏がカナダから中国へ送還されるというニュースも、中国国内政治と大きく関わっているようです。

****アモイ事件:密輸・汚職の主犯格、12年ぶり中国送還*****
中国建国以来最大の密輸・汚職事件とされる「アモイ事件」の主犯格で、99年から逃亡先のカナダに滞在していた民間会社「遠華集団」の頼昌星(らい・しょうせい)元社長が23日、12年ぶりに中国に送還された。事件の関係者には現中国指導部の家族が含まれる可能性もあり、送還後本人の口から汚職の真相が語られれば、来年秋に控える党大会の人事にも影響が出そうだ。

中国外務省によると、カナダの裁判所がこのほど、中国への送還を猶予するよう求めてきた頼氏の要求を棄却する判断を示した。馬朝旭報道局長は22日、「裁判所の決定を歓迎する」との談話を発表した。国営新華社通信(英語版)によると、頼氏は23日午後に北京首都国際空港に到着し、中国の公安当局者は頼氏を逮捕したことを明らかにした。

福建省党委書記だった共産党政治局常務委員でナンバー4の賈慶林・人民政治協商会議主席の夫人らが事件に関与したが、江沢民前国家主席がかばったと香港メディアが過去に報道。頼氏は裁判を受けるとみられ、証言次第では、江氏に近い幹部の今後に影響する可能性がある。【7月23日 毎日】
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【「事件は朱鎔基が作り出したもの」頼氏主張
「アモイ事件」(遠華密輸事件)の概要については、以下のとおりです。
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遠華密輸事件(えんかみつゆじけん)は1996年から1999年にかけて、頼昌星を総裁とする遠華電子有限公司という貿易会社が、約800億元の関税を脱税したとされている事件。建国以来最大規模とされているが、これらは全て「公式見解」であり、実態は謎である。

事件捜査の指揮をしていた李紀周・中華人民共和国公安部副部長を筆頭に、劉豊、張宗緒・アモイ市党委副書記、アモイ税関長、アモイ副市長などアモイ市指導部多数が密輸と収賄などで逮捕され、死刑判決などを受けたものの、外相、副総理などを歴任した姫鵬飛の息子で解放軍総参謀部第二部部長だった姫勝徳(少将)は無期懲役となるなど、多分に政治的決着が図られた。

軍と事件との関与が暴露することで、引退していたとはいえ軍内部に影響力を保持していた劉華清や張震(共に中央軍事委員会副主席)の影響力を殺ぎ、軍隊経験が無く甘く見られていた江沢民の軍掌握に利用されたとの指摘もある。

しかし、事件当時福建省党委書記だった賈慶林と、その妻(福建省外国貿易局党書記)で、遠華集団の理事を務めていた林幼芳も関わっていたという疑惑が浮上し、同じく汚職事件で解任された陳希同から北京市党委書記の座を与えられた賈は再選が危ぶまれていた。江沢民の追及が甘くなったのはこのためと言われる。

主犯と目され、事件発覚後家族と共に300億元を持ってカナダに逃亡した頼は、マスメディアを通じて政府、軍高官に賄賂を送っていたことなどは事実ではなく、自分は江沢民、李鵬、朱鎔基らの権力闘争の犠牲者であり、そもそもこの事件は朱鎔基が作り出したものだという主張をしている。

死刑制度を廃止したカナダは、再三にわたる中国の送還要求を人道的理由を盾に拒み続けている。このため江沢民は「死刑にはしない」との人治主義的発言もしている。これは、かつて華国鋒が文革の主犯として逮捕された江青に対して同様の発言をしたように、同事件だけでなく中国の司法が独立していないことを露呈させている。(後略)【ウィキペディア】
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主犯の頼昌星氏は香港に移民後、不動産売買で巨額の資金を得てアモイに戻り、貿易会社「遠華集団公司」を設立。地元政府、税関、公安当局高官、軍人らに高額の賄賂を贈りながら中央政府幹部まで買収し、人民解放軍の艦船に密輸船を保護・先導させて堂々と石油、たばこ、自動車など530億元とも1千億元とも言われる物資を海外から密輸していたとされていますが、上記のように、頼被告は“そもそもこの事件は朱鎔基が作り出したものだ”と国内政治の権力闘争が背景にあることを主張、事件そのものからして謎が多くあります。

当時の江沢民政権は、政権中枢を揺るがしかねない事態を避けるため、政権中枢の関与は執行猶予付き死刑判決を受けた李紀周・元公安次官以外は公表されないまま封印されたとも言われています。

胡錦濤派が頼氏の供述をカードとして使い、上海閥の動きを牽制・・・
今回の中国送還決定は、権力中枢で胡錦濤派と対抗する江沢民率いる上海閥の影響力低下が原因とも指摘されていますが、事件には江沢民前国家主席側近の関与も取りざたされているため、今後の政権中枢人事に影響することが考えられます。なお、江沢民前国家主席については、最近健康悪化から死亡説も流れたばかりです。

****巨額密輸「主犯」 中国送還へ 党幹部と親交、政局に波紋****
1999年からカナダに逃亡中で、中国建国以降最大の密輸・汚職事件の主犯とされる頼昌星氏が月内にも中国に送還される見通しとなった。
共産党政権中央と太いパイプを持っていたとされる元企業経営者の頼氏が裁判の中で、事件当時に複数の共産党指導者と癒着関係があったことを証言することも予想される。頼氏の帰国は、次期指導者人事を決める党大会を来年秋に控える中国の政局に大きな影響を与える可能性がある。(中略)
 
事件の発生当時、福建省トップの党委書記は賈慶林氏。同省ナンバー2の省長は賀国強氏だった。いずれも江沢民国家主席(当時)の側近で、頼氏と親密な関係にあるとされ、密輸を黙認していたとの説もあった。2人はその後、江氏に抜擢(ばってき)され中央入りし、現在は共産党最高指導部の政治局常務委員会でそれぞれナンバー4とナンバー8の指導者にまで出世した。

逃亡から約12年、頼氏の中国送還決定は、政権内で抵抗していた上海閥の影響力低下が原因とも指摘される。問題に詳しい中国筋は「胡錦濤派が頼氏の供述をカードとして使い、党大会人事などで上海閥の動きを牽制(けんせい)することができる」と話している。【7月23日 産経】
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日本でも疑獄事件は多々あり、その真相はわからないものですが、少なくとも政治家につては選挙というフィルターがあります。(ときに“みそぎ”として利用されることもありますが・・・)
また、野党による公の場での追及やメディアの報道もあります。(どこまで真実に迫れているかは別にして)
選挙も野党もメディア報道もない中国では、いよいよ密室のなかで陰湿な権力闘争が繰り広げられているようです。
今回「アモイ事件」顛末など、内幕暴露本でも出ればさぞかし面白いのでしょうが。

なお、中国は12年間にわたり引き渡しを求めてきていましたが、送還されれば死刑の可能性もあると頼氏が申し立て、これまで送還は猶予されていました。
今回、カナダ市民権・移民省(CIC)は送還されれば拷問されるなどの訴えは憶測に過ぎないと結論づけ、また、中国側は拷問・虐待しないことを保証するとの政府外交書簡を提出したそうです。
裁判所をこれを認め、頼被告の送還猶予申請を棄却しましました。【7月23日 Record Chinaより】
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アメリカ  財政赤字削減協議が決裂 迫るデフォルトのタイムリミット

2011-07-23 21:00:07 | アメリカ

(国全体と1世帯当たりの債務負担を表す“national debt clock”  残高は今年5月に上限の14.3兆ドルに達しています。 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/5950103329/

【「我々が切羽詰まっていることは明らかだ」】
欧州でもギリシャ救済をめぐり、その対策に民間金融機関への負担を課す内容が含まれており、実質的な債務不履行(デフォルト)にあたると判断される可能性があることが話題になっていますが、アメリカも目下、デフォルト“騒動”のさなかにあります。

アメリカでは政府の借り入れ上限は議会が定めていますが、すでにこの限度額まで借り入れが膨らみ、限度額を引き上げないとアメリカ政府は新たな借り入れができなくなる恐れがあるというものです。
万一、そんな事態になれば米国債の利払いなどができず、アメリカは債務不履行(デフォルト)に陥ることになり、世界経済全体も大混乱に陥ることにもなります。

*****米債務上限問題、交渉大詰め 大統領権限で緊急策も****
「ボールは大統領側のコートにある。米国の債務不履行(デフォルト)を回避するには、歳出削減で我々と協力する必要がある」
米共和党のベイナー下院議長は21日の記者会見でオバマ大統領側の譲歩を求めた。一方で政権側は共和党に、富裕層の優遇税制の廃止などを通じた増収策に応じるよう呼びかける。政権と与野党が取り組む債務上限引き上げ問題は、出口の模索が続く。

米国では政府の借り入れ上限は議会が定めている。2001年以降でみても議会は10度の引き上げに応じたが、昨秋に状況が一変。野党・共和党が下院で多数を握ったからだ。残高は今年5月に上限の14.3兆ドルに達し、引き上げの前提となる財政赤字の削減を巡り、折り合えないままだ。

期限は8月2日。それまでに上限を引き上げないと米政府は新たな借り入れができなくなる。世界の金融市場で安全資産の代表格、米国債の利払いなどができず、デフォルトに陥る。
市場の混乱は必至だ。国債が売られて値段が下がり、金利は上昇。減速する米景気に冷や水となる。株は売られ、為替も乱高下しかねない。連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は「金融災難が起こる可能性がある」とし、リーマン・ショックのような事態になると警告する。

米株式市場は、この問題での対立が深まれば相場が下がり、解決に向かう観測が出れば値を上げる神経質な展開が続く。オバマ大統領は「政治的駆け引きばかり続ければ、市場はすぐに反対方向に動き始める」と警戒を強める。

米政府高官は21日夜、朝日新聞の取材に「(今後10年で)最大3兆ドルの(財政赤字を削減する)案を協議している」と、政権と議会側が最終調整に入っていることを明かした。だが、共和党の一部にはなお異論もあり、合意できない場合に備え、大統領の権限で債務上限を引き上げる緊急策の準備も続けているという。

時計の針は刻々と進む。
政権側は、8月2日までに上限を引き上げるには、法案作成と議会の通過手続きに1週間程度はかかると計算。7月22日が合意の「実質的な期限」との立場をとってきた。
21日のホワイトハウスでの会見では「すでにその期限は明日ではないか」との質問が記者から飛ぶと、カーニー大統領報道官は「(合意してから)対策をとるのに何日必要かは議会が決めること。22日は何の期限でもない」と打ち消しに躍起だった。
ただ、こう付け加えた。「我々が切羽詰まっていることは明らかだ」【7月23日 朝日】
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債務上限の引き上げに焦点を絞った緊急対策に移行
8月2日までに上限を引き上げるには“7月22日が合意の「実質的な期限」”と言われていましたが、すでにその期限を過ぎました。そして、大統領と共和党の間で行われていた、債務限度額引き上げの前提としての財政赤字を削減する交渉は決裂しました。

****米、3兆ドル規模の赤字削減協議が決裂 大統領が会見*****
米債務上限引き上げ問題を巡り、オバマ米大統領は22日夕、ホワイトハウスで緊急会見し、米財政赤字削減を巡る与野党協議で、10年で3兆ドルの削減を目指していた大規模対策協議が決裂したと発表した。米政権は今後、債務上限の引き上げに焦点を絞った緊急対策に移行することになりそうだ。【7月23日 朝日】
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今後検討されている“債務上限の引き上げに焦点を絞った緊急対策”については、“ロイター通信は20日、包括合意に時間を要する場合、共和党の一部が提案していた債務上限を短期間引き上げる措置を「大統領が受け入れる方針」と報じた。これまで大統領は短期の引き上げには拒否権を行使する考えを示していたが、「時間切れになりつつあることを認め、数日間の引き上げを受け入れる構え」としている。”【7月22日 産経】ということで、時間稼ぎの緊急避難策のようです。

【“ティーパーティー”議員の抵抗
これまでの展開は大統領と共和党の8月2日を睨んだ“チキンレース”の様相ですが、「どうせ、どこかで手を打つのだろう。まさか、このままデフォルトに突入するなんて馬鹿なことはないだろう」「死刑執行は直前で回避されるだろう」・・・というのが大方の見方でした。実際、どこかで折り合うのでしょうが、予想以上にもつれています。

交渉がここまでもつれているのは、財政赤字削減策について、大統領が求める高額所得者と企業への増税を共和党側が認めないことにあり、その背景には、共和党内に“小さな政府”原理主義者とも言える“ティーパーティー”議員が多く存在し、共和党側が身動きができない状況があります。

更に言えば、世論の“受け”を狙ったパフォーマンスと政治的駆け引きが良識に先行する、政治の機能低下現象とも。日本だけではないようだ・・・と、変に安心する面もありますが。
次期大統領選挙に向けて、共和党の統治能力には疑問の声も強くなっています。
混乱が拡大すれば、大統領の責任も問われます。

米国債、格下げの動きも
****米連邦債務上限引き上げ、期限迫る 大統領は緊急交渉求める****
米下院共和党が、14兆3000億ドル(約1120兆円)の米連邦債務の上限引き上げをめぐるバラク・オバマ大統領との交渉のドアを閉じたことを受け、ある米政府高官は、米国が債務削減に本気に取り組まなければ、米国債の格下げも現実味を帯びると語った。

米連邦債務を3兆~3兆5000億ドル(約236兆~275兆円)削減する10年計画が交渉の焦点になっていたが、共和党のジョン・ベイナー下院議長は下院議員に宛てた書簡の中で、オバマ大統領が高額所得者と企業への増税を主張を変えなかったため、交渉から離脱すると述べた。

ある米政府高官は匿名を条件に、巨額の米連邦債務は大きな問題だと指摘し、債務上限の引き上げの失敗ではなく、米国が債務削減に向けた本格的な行動をとらないことを理由として、米国債が格下げされるという現実的な見通しがある、と語った。
格付け会社のスタンダード&プアーズとムーディーズ・インベスターズ・サービスは、8月2日までに連邦債務の上限を引き上げることで与野党が合意に達しなければ、米国債を格下げする可能性があると発表している。

オバマ大統領はベイナー氏の交渉離脱の決断を批判し、8月2日の期限までに残された時間は少ないとして、23日午前11時(日本時間24日午前零時)にホワイトハウスで緊急交渉を行うよう有力議員らに求めた。【7月23日 AFP】
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「ぎりぎりのタイミングで『死刑執行』を免れると高をくくるのは危険だ」「合意が実現しても、アメリカの評判に付いた傷は取り返しがつかないかもしれない。誰もが現状を注視しており、信用がすべての今の時代に(米国債を大量保有する)中国の信用を失いかねない」(大ワシントン圏商工会議所のジェームズ・ディネガー所長兼CEO)との発言もあります。

最大の債権者中国も、アメリカのデフォルト“騒動”を苦々しく注視しているところですが、米国債を大量に抱えている点では日本も同様です。
馬鹿げた“チキンレース”は早く止めて、良識を示してもらいたいものです。
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ソマリア  南部2地域に飢餓宣言、今行動しないと地域拡大の恐れ

2011-07-22 21:00:41 | ソマリア

(著名な写真家James Nachtwayの作品 前回1992年のソマリアでの飢餓の際、死んだ息子を埋葬する母親 “flickr”より By Photo Tractatus  http://www.flickr.com/photos/photo-tractatus/4698209537/ )

過去20年間のアフリカで最悪の食糧危機
東アフリカの干ばつについては、7月11日ブログ「東アフリカ 過去60年で最悪の干ばつ、避難先で餓死者」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110711)で取り上げましたが、情況は芳しくないようです。
国連はソマリア南部2地域に「飢餓」を宣言しました。

****ソマリア南部2地域に飢餓宣言、国連****
国連は20日、ソマリア南部の反政府勢力が制圧している2地域で、飢餓が発生していると宣言した。最大で35万人が、過去20年間のアフリカで最悪の食糧危機の影響を受けている。
ソマリアを含む「アフリカの角」と呼ばれる地域全体では、干ばつの被害を受けた人は1000万人を超えている。

国連人道問題調整部(OCHA)によると、国連が飢餓を宣言したのはソマリア南部のバクール地方とシェベリ川下流(地方。どちらも国際テロ組織アルカイダの影響を受けた反政府イスラム武装勢力アッシャバブの支配下にある。
関係者らは、緊急に対策をとらなければ、飢餓地域は拡大する恐れがあると警告している。【7月20日 AFP】
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1991年以来、内戦がほとんど絶え間なく続き、実質的に無政府状態のソマリアは、これまでもたびたび干ばつに見舞われています。そのため、国民の4人に1人が国内避難民または国外への難民になっていると推定されています。

“現在、危機的な状態に陥っている人はソマリアの人口の半分に当たる370万人で、その数は今年の初めの240万人から、35%の増加となっています。また、危機的な状況にある人々の7割は、ソマリア南部に住んでいます。ソマリア南部では55万4000人の子ども、つまり、3人に1人が栄養失調となっています”【国連UNHCR協会ホームページ】

なお、国連の「飢饉」宣言は、(1)20%以上の世帯が極端な食糧不足に直面している (2)急性栄養失調の状態にある子どもが30%を超える (3)1日につき粗死亡率(Crude Mortality Rate)が1万人中2人に達する。(注:大多数の途上国では1万人に対して0.5人)という3点を基準に行われています。
ソマリア南部の一部ではすでに、栄養失調率は50%を超えていると伝えられています。

今回のソマリアの飢餓については、“エチオピア(2001年)、スーダン(1998年)、ソマリア(1991)年と同様レベル、またはそれを超えるレベルの飢饉と言われています。しかし、地域的な広がりとその深刻さを考えると、このたびの飢饉は1991年以来最悪の状態と言えます” 【国連UNHCR協会ホームページ】とのことです。

【「国連の飢饉宣言は世界に対する緊急の警鐘だ」】
国連のソマリア人道調整官マーク・ボーデン氏は、「いま行動を起こさなければ、農作物の不作と感染症の流行によって、飢饉は2カ月以内にソマリア南部の8つの地域すべてに拡大するだろう」と警告しています。

****帰ってきたソマリア飢饉、驚愕の死亡率****
国連は支援団体が安全に活動できるようイスラム過激派と対話中だが、アメリカの対テロ法が支援を阻む

国連は7月20日、21世紀初となる飢饉の発生を宣言した。場所はソマリア南部の2地域。深刻な干ばつと内戦、食料価格の高騰が相まって、多くの人が飢えに苦しんでおり、死亡した人も数万人に上る。

国連のソマリア人道調整官マーク・ボーデンによれば、飢饉宣言が出された南部のバクールとシェベリ川下流地域の現状は、国連による飢饉の定義以上に深刻で、ソマリアの人口の半数に相当する370万人が危機的状況にある。しかも、飢饉は今後さらに拡大し、ソマリアやエチオピアなどを含む「アフリカの角」の一帯では、干ばつ被害に苦しむ1100万人をめぐる状況は今後さらに悪化するという。

「いま行動を起こさなければ、農作物の不作と感染症の流行によって、飢饉は2カ月以内にソマリア南部の8つの地域すべてに拡大するだろう」と、ボーデンは語った。そして、雨季の10月に雨が降ったとしても、次の収穫があるとされる今年末までは状況が改善する見込みはない、と付け加えた。

繰り返される90年代初頭の悲劇
子供の急性栄養失調率が30%を超え、1日に1万人に2人が死亡している場合に、国連は飢饉を宣言する。ソマリア南部の一部ではすでに、栄養失調率は50%を超え、死亡率も国連が定める条件の3倍以上。「衝撃的な数字だ」と語るボーデンは、飢饉対策として今後2カ月間だけで3億ドルの援助が必要だと訴えた。
 
「国連の飢饉宣言は世界に対する緊急の警鐘だ」と、イギリスを拠点とする救援支援団体オックスファムの広報官アルン・マクドナルドは言う。「危機は数カ月前から始まっていたが、諸外国の篤志家や各国政府の反応は遅く、不十分だ。救助資金はまだ8億ドルも不足している」
ヒラリー・クリントン米国務長官は、ソマリア及び、毎日推定3500人のソマリア人難民が流入しているエチオピアやケニアに対して、2800万ドルの追加支援を行うと表明した。

ソマリアでは、90年代初頭にも飢饉で20万人以上が死亡した過去がある。「現在の(栄養失調)率は、91〜92年と似たような水準だ」と、ボーデンは言う。「今回の飢饉は過去20年間のソマリアで最も深刻な事態だ」
90年代初頭の危機の際には、アメリカは国連平和維持部隊の一部としてソマリアに介入。米軍ヘリ「ブラックホーク」が首都モガディシュで撃墜され、米兵18人が殺害されるという不名誉な事件につながった。

ソマリアは今も混乱状態にある。政府は十分に機能しておらず、国際社会の支援を受けた暫定政権と、アルカイダとつながりがある過激派組織アルシャバブの衝突が続いている。
飢饉が宣言された2つの地域はどちらも、アルシャバブの支配下にある。アルシャバブは09年後半以降、占領地域内に西側諸国の救援団体が立ち入るのを禁じてきた。今月になって禁止を解除したが、事態はすでに悪化していた。【7月21日 Newsweek】
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【「いかなる武装組織にも支援物資は渡さない」】
上記記事にもあるように、支援活動を阻んでいるのが、過激派組織アルシャバブによる実効支配の現実です。

****ソマリア飢饉、支援に「武装勢力支配」の壁****
国連世界食糧計画(WFP)と米国際開発局(USAID)は21日、国連が飢饉を宣言したソマリア南部2地域について、支援物資が必要とする人々に確実に届くことが確認され次第、食糧支援を開始すると表明した。
国連食糧農業機関(FAO)によると、ソマリアではここ数か月で飢餓による死者が数万人に上っている。

国連が20日、飢饉が起きていると宣言したバクール地方とシェベリ川下流地方は、イスラム過激派組織アルシャバブが実効支配している。アルシャバブは2010年初頭、外国の支援団体に対し2年間の活動禁止令を出し、WFPもソマリアからの撤退を余儀なくされていた。

今月になって、アルシャバブは深刻な干ばつに苦しんでいる人民を助けたいとして活動禁止令の解除を発表し、支援を要請。これを受け、各支援団体はソマリアでの支援活動再開を検討していたが、暫定政府に任命されたばかりの女性・家族問題担当相が21日、アルシャバブに誘拐される事件が発生。武装勢力支配地域での支援再開の難しさが浮き彫りになった。
USAIDのラジブ・シャー長官は21日、「彼ら(アルシャバブ)が約束をきちんと守るかをまずは注視したい」と述べた。

またWFPは同日、まず首都モガディシオに緊急支援物資を空輸し、南部地域へと支援を拡大する計画を発表。広報のグレッグ・バロウ氏はAFPに対し、「いかなる武装組織にも支援物資は渡さない」と述べ、現在、支援物質を送り届ける方法についてほかの国連組織と協議中だと説明した。

なお、国連児童基金(ユニセフ)は前週、アルシャバブ支配下にあるバイドアに初めて支援物質を空輸した。地元組織との緊密な連携のもと、物資が必要な人々に届いているかも監視されたため、支障なく行われたという。【7月22日 AFP】
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海賊対策にとどまらず東アフリカ・中東地域に広く関与する視野を
ソマリアは“海賊問題”が国際的関心事となっており、日本を含む各国が海賊対策の艦船等を派遣していますが、海賊問題の根幹にはソマリア本土の無政府状態・混乱があること、その陸上の問題に手をつけない限り海賊問題の解決もないことは国際的に共通の認識となっています。

P3C哨戒機2機、護衛艦2隻を派遣している日本は、ソマリアに近いジブチに新活動拠点(基地)を設けて海賊問題対応にあたっています。

****ソマリア海賊対策、手詰まり 自衛隊はジブチに新拠点****
アフリカ・ソマリア沖の海賊対策強化のため、自衛隊がジブチに新活動拠点(基地)を設けたことは、同国政府だけでなく同国に駐留する米仏両軍にも歓迎されている。しかし問題解決までの道のりは依然、遠い。根源的原因であるソマリアの無政府状態に収束のめどが立たないからだ。日本は「出口戦略」のないまま、複雑な地域問題への関与を深めたと言える。(中略)

海賊の襲撃は、自衛隊などが警戒監視、護衛活動を展開するアデン湾の長さ約900キロの「回廊」では減っている。しかし「そこから追い出された分がアラビア海やケニアの沖に拡散している。『いたちごっこ』の感がある」(日本船主協会会長の芦田氏)。
国際海事局(IMB)によると、ソマリアの海賊による襲撃の件数は、2008年の111件から09年には217件とほぼ倍増し、昨年も219件と高水準が続いている。

米議会調査局(CRS)の報告書は「海賊行為の増加は、戦乱が続くソマリアの不安定と法の支配の不在の結果だ」と分析する。自衛隊のほか、欧米諸国、中国、インドなどもアデン湾に艦艇や哨戒機を派遣しているが、「(問題解決の)答えは陸上にある」(カスパール駐ジブチ仏軍司令官)というのが関係各国の共通認識だ。

ユスフ外相は(1)ソマリアの暫定連邦政府(TFG)への支援(2)国連平和維持活動(PKO)部隊の派遣(3)身代金の送金・洗浄ルートの断絶、などが必要だと説く。各国が陸上部隊を派遣することが前提となるが、1993年に兵士18人を戦闘で失った苦い経験を持つ米国は否定的だ。
結局、「海賊は減らない。むしろ増え続ける」(ユスフ氏)というのが、地元の見方だ。米国も、ソマリア問題の解決には「1世代はかかる」(フランケン・「アフリカの角」連合統合任務部隊司令官)と見ている。

■役割拡大、他国から期待
日本政府は開所式の翌日、P3C哨戒機2機、護衛艦2隻という現在の態勢のまま、自衛隊の派遣をさらに1年延長することを閣議決定した。
しかし、芦田氏は「海上警備の広域化」を求め、補給艦の追加派遣を要望している。海上自衛隊は「その余裕はない」という立場で、「脅威の拡散」に対応する態勢はできそうにない。
いずれにしろ、日本は事実上の「基地」までつくって海賊問題に本格的に関与する姿勢を示した以上、簡単に撤退するわけにはいかなくなった。

新美潤・駐ジブチ日本大使も「撤収する『大義』は当面見つからないのが実情だ。問題解決の即効薬も万能薬もない現状では『根治療法』として対ソマリア支援を行いつつ息の長い努力を続けていくしかない」と話す。
さらに「問題が長期化する可能性が高いことを考えれば、自衛隊の海賊対処活動を強化・拡充することには慎重な判断が必要だ」と指摘。「出口」が見えない現状では自衛隊の役割拡大に乗り出すべきではないとの考えを示した。

一方、米軍のフランケン司令官は「特定地域に限定して活動を考えることが許される時代はすでに過去のものとなった。日本の国民も今回開設した基地を考えるにあたって、そういう視野をもった方が良いかもしれない」と語り、日本が単に海賊対策にとどまらず東アフリカ・中東地域に広く関与することに期待感を示した。ユスフ外相も、独立間もない南スーダンへの自衛隊派遣について「それは良いことだ」と歓迎する考えを明らかにした。【7月18日 朝日】
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“撤収する『大義』”を探しているような日本政府ですが、“日本が単に海賊対策にとどまらず東アフリカ・中東地域に広く関与する”方向で、前向きに見るべきではないでしょうか。
もちろん、アメリカですらしり込みしているソマリアへの即時のPKOなどは現実的には困難でしょうが、今回の飢餓対応にジブチの新基地活用は図れないものでしょうか。

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