孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴ東部で続く「戦争兵器としての集団レイプ」 問われる国連PKOの在り方

2010-08-31 23:16:52 | 国際情勢

(昨年8月 東部コンゴを訪問して現地女性の歓迎を受けるクリントン米国務長官(背中)
“flickr”より By U.S. Department of State http://www.flickr.com/photos/statephotos/3814090310/# )

【「世界最大の紛争」または「アフリカ大戦」】
アフリカ中央部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)における紛争、その後の「不安定な平和」については、これまでも取り上げたことがあります。

隣国ルワンダでのフツ系住民によるツチ系住民の大虐殺で50~80万人が犠牲になったのが1994年。
ルワンダではツチ系の反政府勢力が政権を握り、現在のカガメ大統領のもとで飛躍的な経済成長を遂げています。
(対立を克服したとして国際的に評価の高いカガメ大統領ですが、野党を弾圧して独裁的になっているのでは・・・という批判も一部にはあります。)

ツチ系勢力による政権獲得によって、報復を恐れたフツ系住民が大量に隣国ザイール共和国(現在:コンゴ民主共和国)に逃げんこんだことによって、今度はザイールで内戦が勃発することになります。
このコンゴ紛争による死亡者数は540万人といわれ、「世界最大の紛争」とも呼ばれています。
また、第二次紛争ではザイールの地下資源に対する周辺国の思惑もあって、周辺各国が参戦し「アフリカ大戦」とも呼ばれています。

****世界最大の紛争*****
1996-1997年 第一次紛争
大虐殺の後、ザイール共和国(現在:コンゴ民主共和国)に逃げた多くのフツ族が難民になりました。その中に反政府軍がいました。ルワンダ政府は、ザイールにいる反政府軍の活動に制圧をかけました。その時、アンゴラ共和国やウガンダ共和国、ブルンジ共和国各国にとってもザイールにそれぞれの反政府軍がいたため、ルワンダと手を組み、参戦しました。結果、ザイールが敗北し、新しい政権がザイール共和国から「コンゴ民主共和国」に改名しました。
1998-2003年 第二次紛争(アフリカ大戦)
再びルワンダが中心となり、コンゴ民主共和国への侵攻を開始しました。しかしコンゴ民主共和国政府は、アンゴラやジンバブエなど周辺数カ国から、軍事支援を得て大きな大戦へと発展しました。そのため、今度はルワンダやウガンダからの攻撃を抑えることができました。その後、膠着状態が続き2002~2003年に包括的な和平合意がされました。
2003-現在
2003年までに周辺国軍が撤退完了し、暫定政府が設立されました。2006年には総選挙が行われ、現職のジョセフ・カビラ大統領が当選しました。一方で、イトゥリ州と北キヴ州を中心に地方レベルの紛争が続きます。そのため、不安定な「平和」になっています。

この紛争は新聞などでは、「内戦」と呼ばれています。しかし実際は、「直接軍事投入8カ国」、「間接的関与11カ国以上(例:お金や武器の投入)」、「他国から複数の反政府勢力が活動している(「国境なき武装勢力」)」が現状です。また国際連合の調査の結果、20カ国以上(ヨーロッパ、アメリカなど)からの企業が紛争と関連したビジネスに関与していることが分かりました。NGOによる調査結果からは、アメリカ・中国・ロシア・南アフリカなどからの弾丸が発見されています。以上より、アフリカ大陸の多くの国々が参戦している国際紛争、政府と政府を倒そうとする反政府勢力の「国」をめぐる紛争、国や政府とは関係なく、資源や権力などをめぐる武装勢力同士の戦いであるローカル紛争があり、コンゴ民主共和国の紛争は一つの紛争ではないといえます。
またこの紛争の人道被害ですが、死亡(540万人)原因が軍による被害はたった6%です。残りの94%は、病気や飢えの非暴力です。紛争では一般市民が狙われます。その狙われた人々が逃げる場所には、食べ物や水、保健サービスなどはないため、飢えや病気にかかることがあげられます。また、地域によっては約70%の女性が性的暴力をうけています。(社会貢献・国際協力入門講座 
http://panasonic.co.jp/cca/welfare/ryukoku_kouza/series_1/index_8.htmlより)
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【「鬼畜の行い」】
現在、特に問題となっているのが、今も東部で活動を続けるフツ系武装勢力によるものともされる集団レイプです。
****戦争兵器としての強姦が続くコンゴ*****
◆女性に対する暴力で、家族だけでなくコミュニティの心をも破壊するというおぞましい軍事行動
内戦が続くコンゴ東部の村では先月のある週末、性的暴力による襲撃で少なくとも179人の女性が反政府武装勢力に乱暴された。国連が8月23日に明らかにした。被害女性の大半は、子供や家族が見ている目の前で、1度に2人から6人の男に強姦されたと、あるNGO(非政府組織)はニューヨーク・タイムズ紙に語っている。
コンゴの東部一帯では、被害者だけでなく家族やコミュニティの心を破壊し、意気を沮喪させる武器として強姦が使われてきた。約1年前には、その中心地であるゴマをヒラリー・クリントン米国務長官自らが、警備責任者の反対を押し切って訪問した。

◆PKO部隊の基地のすぐそばで
クリントンは、妊娠中に暴行されて流産してしまった女性の話を聞いて涙した。クリントンはこうした暴力を「鬼畜の行い」と強く非難し、被害者救済のために1700万ドルの支援を発表した。吐き気をもよおす今回の残虐行為に関しても、彼女が非難声明を出してくれるといいのだが。
低所得層のための調査報道に力を入れる米インナーシティプレスは、国連の責任を問う。国連はコンゴで市民を保護するための平和維持活動(PKO)に年間10億ドルを費やしている。だが今回の集団レイプは、PKO部隊の基地からわずか30キロの場所で行われたという。24日には国連安保理も召集されたが、コンゴの強姦という戦争兵器についてはとうとう取り上げられなかった。【8月25日 Newsweek】
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09年のコンゴ訪問時で“涙した”クリントン長官ですが、現地の性暴力に関する公開討論会では、「約束の安売りはしたくありません。名刺を渡すためだけにここを訪れたわけではないけれど、わたしが『魔法のつえ』を持っているわけではないことも、事実です」と、アメリカの力での解決が困難なことを吐露。これまでのアフリカ訪問国で自分とバラク・オバマ米大統領が繰り返してきたメッセージ――自分たちの運命を司っているのは結局自分たちである――を繰り返したとのことです。【09年8月12日 AFPより】

コンゴ東部における集団レイプについては、08年当時、国連報告をもとに英国the economist誌が記事を書いていますが、その要旨を翻訳したものがhttp://anond.hatelabo.jp/20080509024354 に記されています。
いささか気分が悪くなるような内容ですので、ここにはコピーしませんが“政府の軍隊や反政府組織のリーダーはレイプをたいした攻撃とは見なしておらず、なんの手も打っていない。「戦闘員はヴァージンをレイプすれば無敵になれると信じている」と言われている。”とのことです。

【何の対応もしなかったMONUSCO】
上記Newsweek記事では国連安保理がこの犯罪行為を取り上げなかったとしていますが、26日の安保理の特別会議で断罪されています。
****国連安保理、大規模レイプに法の裁き求める コンゴ民主共和国*****
26日に行われた国連安全保障理事会の特別会議は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)で7月から8月にかけて、女性や子ども約200人が被害を受けた大規模なレイプを非難、関与した者を探し法の裁きを受けさせるよう同国に強く求めた。
23日に国連が発表した報告によると、隣国ルワンダのフツ族反政府勢力が流入しているコンゴ民主共和国東部北キブ州ルブンギの村落周辺で、7月30日から8月3日の間に起きた集団レイプの被害者は女性や子ども、少なくとも179人に上るという。

■国連PKO・コンゴ安定化団の対応の遅れに非難集中
26日の米紙ニューヨーク・タイムズは、集団レイプが発生した時期、近くに駐留していた国連平和維持活動(PKO)の国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)は、ルワンダの反政府勢力が村落を占拠していることをつかんでいながら、早く介入しなかったのは何故かと糾弾した。
米仏の呼びかけで開かれた同日の安保理特別会議でも、出席国からMONUSCOの対応の遅れを非難する声が相次いだ。議長国を務めるロシアのビタリー・チュルキン国連大使は会議後、コンゴ民主共和国政府に「一連の襲撃について速やかに調査し、実行者を裁判にかける」よう要請する声明を発表した。また国連PKO最大の2万人を派遣していながら何の対応もしなかったMONUSCOについて「機能すべきように機能しなかった」と批判した。

■ルワンダ反政府勢力が関与か
国連の潘基文(パン・キムン)事務総長の報道官は、94年のルワンダ大虐殺以降に国境を越えて逃れ、コンゴ民主共和国東部を活動拠点としているルワンダ解放民主軍(FDLR)と民兵組織マイマイ(Mai-Mai)が村落を襲撃した際に、集団レイプが起きたと非難している。一方、FDLRは集団レイプへの関与を否定している。
ルワンダの少数民族ツチを中心に約80万人が殺害された16年前のルワンダ大虐殺に関わったとして、ルワンダ政府に訴えられているFDLRは、ツチ主導の勢力がルワンダの政権を掌握する前にコンゴ民主共和国東部へ逃れた。以降、この地域では、政府軍であるコンゴ民主共和国軍(FARDC、政府軍)まで含む幅広い武装集団による住民襲撃やレイプが数多く報告されている。

■毎日14件のレイプが発生
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年に入り最初の3か月間だけで少なくとも1244人の女性がレイプの被害に遭っている。毎日14件のレイプが発生している計算になる。【8月30日 AFP】
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ルワンダの大虐殺でも国連PKOはこれを放置し、多くの犠牲者を見殺しにしたとの評価があります。
今回のコンゴ東部の集団レイプも、PKO部隊の基地からわずか30キロの場所で行われています。
集団レイプを犯した当事者が断罪されるべきは当然ですが、米紙ニューヨーク・タイムズが糾弾しているように、国連PKOの在り方が問われています。

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ミャンマー  立候補届け出締め切る 周到に準備進める軍政側

2010-08-30 22:58:51 | 国際情勢

(今年5月にスリランカ・コロンボで行われたミャンマー軍政批判のデモ こうした海外での活動は各地で行われていますが、肝心の国内での活動は軍政によって厳しく制約されています。海外の抗議行動などは軍政にとっては痛くもかゆくもないものでしょう。何らかの影響力を持つためには、やはりどんな議会であっても、そこに一定の勢力を持つ必要があるように思えるのですが。“flickr”より By Burma Partnership
http://www.flickr.com/photos/burmapartnership/4643857883/)

【軍政批判禁止】
ミャンマーで行われる11月総選挙は、予想されたこととはいえ、民主化勢力には厳しい展開になりそうです。
****ビルマ 正当性のかけらもない 11月総選挙の茶番****
ビルマ(ミャンマー)の総選挙11月7日に実施されることが決まった。90年に行われた前回の総選挙で敗北を喫した軍事政権は、そこで学んだ教訓に基づいて、今回はより効果的に「管理」するつもりのようだ。

ビルマは62年から軍紋下にある。88年に学生による民圭化運動が起きたことを受け、軍事政権は90年に政党を結成して総選挙を実施した。野党候補の脅迫・逮捕などを行ったが、結局は自宅軟禁されていたアウン・サン・スー・チー率いる国民民主連盟(NLD)が地滑り的勝利を収めた。だが軍事政権は選挙結果を無効とし、スー・
チーは今も軟禁されている。

軍事政権は08年、新憲法を強引に成立させた。新憲法には、議会の総議席の4分の1を軍部が指名するといった条項が含まれている。
一方で、野党には以前にも増して厳しい規制を課している。11月の総選挙の立候補者は、少なくとも1週間前には選挙活動を行う許可を得なければならない。スローガンを叫んだり、旗を掲げることは禁止。演説では軍事政権を批判したり、「治安に悪影響を及ぼして」はならない。
政権運営に適任なはずの公務員や僧侶は立候補できない。過去に有罪が確定した者(その多くは政治犯)は、軍事政権から特別な許可がない限り立候補できない。各政党は、政党登録に当たって少なくとも1000人分の党員名簿を提出しなければならない。
野党・連邦民主党のピョー・ミン・テイン議長は8月上旬、総選単が公平なものになり得ないとして辞任した。スー・チーのNLDは既に総選挙のボイコットを決め、解党している。

軍事政権のやり方では、総選挙を正当に見せ掛けることさえできない。それでもASEAN(東南アジア諸国連合)加盟各国や中国などにとっては、大した問題ではないだろう。彼らは民主的に選ばれてもいない軍事政権を受け入れている。だが欧米諸国は違う。今後も当分はビルマヘの制裁を解除しないはずだ。
アメリカ政府は先日、ビルマ軍事政権が犯した戦争犯罪や人道に対する罪についての国連の調査を支持する意向を表明した。調査の結果は、11月の総選挙の結果と同じくらい予想どおりのものとなるだろう。【9月1日号 Newsweek】
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【ASEAN 「歓迎する」】
内政不干渉を前提することでかろうじての一体性を保っているASEANのミャンマーに対する及び腰の対応には、私自身も不満ではありますが、「大した問題ではないだろう」とまで言われると若干弁護もしたくなります。
遠く離れた欧米と同じ域内の国では対応にも差がでることもあろうかと思われます。
ただ、ASEAN議長国ベトナムの発言などをみると、「まあ、“大した問題ではないだろう”と言われても仕方ないかな・・・」という感も。

****ASEAN:議長国ベトナム、ミャンマーの総選挙を歓迎****
東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のベトナムは17日、加盟国ミャンマーが11月7日に総選挙を実施すると発表したことについて、「歓迎する」とする声明を発表した。
声明は「自由、公正で誰もが参加する総選挙実施の重要性」を強調したものの、民主化運動指導者、アウンサンスーチーさんの軟禁解除や選挙参加には触れず、また「選挙への協力の用意」は表明したものの、7月の外相会議で提案した選挙監視団派遣については具体的に言及しなかった。【8月18日 毎日】
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大体、ベトナム自身が共産党の一党独裁国家ですから、ミャンマー軍政を批判する理由もないのでしょう。
なお、ベトナムでは、最高指導者である共産党書記長について、これまでの密室討議ではなく、党大会代議員の投票による選挙で決める方式の導入を検討しているとも伝えられています。党内の「民主化」要求の高まりを受けた動きだそうです。【7月31日 共同】
「民主化」については、そういう段階・事情の国々を含むASEANですので、ミャンマーへの対応も限界があります。

【立候補者数でも翼賛政党が圧倒】
ミャンマーでは総選挙に向けて候補者の立候補届け出が締め切られましたが、数の面だけ見ても、圧倒的に軍政を背景にした翼賛組織が優位な情勢です。

****ミャンマー:選挙立候補1000人以上か 届け出締め切り*****
ミャンマーで11月7日に実施される20年ぶりの総選挙で、選挙管理委員会は30日、各政党からの立候補者名簿の届け出を締め切った。選管は候補者の人数などを明らかにしていないが、軍事政権が選挙に向けて創設した翼賛政党「連邦団結発展党」(USDP)は、上下院と地方議会選に合わせて1000人以上の立候補を届け出たとみられる。
 一方、前回90年の選挙で圧勝した民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん率いる「国民民主連盟」(NLD)から分派して選挙に参加する「国民民主勢力」(NDF)は約140人、別の野党勢力「民主党」は約60人にとどまったとみられる。選管は今後、届け出書類を審査して候補者を確定する。【8月30日 毎日】
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“選管は今後、届け出書類を審査して候補者を確定する”ということなので、民主化勢力は今後さらに排除される可能性もあるのでは?

軍政側は、軍幹部を翼賛政党「連邦団結発展党」(USDP)から立候補させ、軍人枠以外の残り4分の3の議席においても、これを支配する目論見です。
****ミャンマー軍政、最高幹部ら退役 総選挙出馬に向け準備*****
ミャンマー(ビルマ)の情報筋によると、軍事政権序列3位のトゥラ・シュエ・マン大将と5位のティン・アウン・ミン・ウー大将が27日、軍を退役した。今年4月に4位のテイン・セイン首相が退役したのに続く軍人事で、選挙への立候補などに向けた動きとみられる。
これで軍政のほとんどの最高幹部が軍を離れたことになる。11月7日の総選挙に向けて、軍の政治活動が本格化してきた。
これまで退役した軍幹部らの多くが、テイン・セイン首相が党首を務める軍政直系の政党「連邦団結発展党」(USDP)に関与することは確実。首相は近く内閣総辞職して選挙管理内閣を発足させ、選挙に専念するとされており、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんら影響力のある民主化勢力不在の総選挙で確実に勝てるように態勢固めに出た形だ。【8月28日 朝日】
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【スー・チーさん 「NLD支持者は他党に投票しなくてもいい」】
こうした実質的に軍政正当化につながる総選挙を否定したアウン・サン・スー・チーさんは、NLDから分派して選挙に参加する「国民民主勢力」(NDF)を含め、民主化勢力を支援しない方針のようです。

****ミャンマー総選挙 民主化勢力、苦境に スー・チー氏、支持消極的*****
11月7日に行われるミャンマー総選挙の立候補者名簿の提出が30日に締め切られる。議席を独占する狙いで軍政幹部がそろって軍を離れ、軍の影響力を残したまま「民政」への移行を進めるのに対し、民主化を掲げる野党各党は候補者や資金集めが難航。民主化勢力内での足並みの乱れも表面化しており、議席獲得は厳しい状況だ。軍政与党の圧勝が確実視される。

ミャンマー軍政筋は29日、軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長が軍最高司令官の地位を降り、後任にトゥラ・ミン・アウン軍務局長が就いたことを明らかにした。ただ、タン・シュエ氏はSPDC議長にとどまり同国トップの地位は変わらない。選挙後には、新設される国防安全保障評議会(NDSC)の議長に就任し、軍、政府をすべて統括するとみられる。
すでにテイン・セイン首相以下、閣僚はすべて軍籍を離れ、文民となって選挙への出馬を決めている。これは、新憲法では議席の25%を軍人に割り当てているが、元軍人は含まれないため、軍人と、文民となった元軍人とで議席を独占することが狙いだ。

一方、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんは、解党した国民民主連盟(NLD)以外の政党支持に消極的とされ、NLDに代わる新党の国民民主勢力(NDF)をはじめ、反軍政を掲げる各党は苦戦を強いられている。
今回の選挙は下院・人民議会330、上院・国民議会168、地方議会689の計1187議席を争うが、投票日の発表から届け出まで半月足らずだったこともあり、候補者探しは難航。NDFの立候補予定者は国会、地方議会を含め約100人だけだ。平均年収に匹敵する1人500米ドル(約4万3千円)の供託金集めも容易ではない。
NDFは選挙が迫れば、スー・チーさんから支持を得られるものと予想し、金銭面でもNLD支持者からの支援を期待していた。しかし、スー・チーさんの側近のニャン・ウイン氏は25日、自宅軟禁中のスー・チーさんが「NLD支持者は他党に投票しなくてもいい」と発言したと述べた。
今回登録した42政党のうち民主派勢力はNDFのほかミャンマー民主党(DP)や連邦民主党(UDP)などにすぎない。各党は候補者が競合しないよう選挙協力を進める考えだが、民主化勢力は厳しい状況におかれている。【8月30日 産経】
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軍政を実質的に維持するための「茶番」と言ってしまえばそうなのですが、ただ、今後ミャンマーの政治に関与していくためには、この枠組みのなかで一定の勢力を持つしかありません。
解党を選択し、政党としての活動もできなくなったNLD、およびスー・チーさんに、どのような展望があるのでしょうか。

議会で民主化勢力が一定の勢力を得ることができれば、次の展開もありうるのでは・・・と思っていたのですが、軍政側の徹底した選挙準備、厳しい選挙参加・活動の制約、スー・チーさんの非協力などで、軍政側の圧勝に終わりそうな気配です。

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ミャンマーに広がる「すしブーム」と、日本の外国人労働者

2010-08-29 19:57:54 | 世相

(ミャンマー・ヤンゴンの「すし屋台」 “flickr”より By wagaung
http://www.flickr.com/photos/wagaung/3594914123/)

【“求人がなくなった日本からの生き残りのための帰郷”】
ベトナム中部ホイアン・フエの旅行から、今日、上海・福岡経由で帰国しました。
鹿児島の片田舎に暮らしており、東京に出る機会は最近まったくと言っていいぐらいありません。
せいぜい、海外へ旅行が成田発着になった場合に、数年に1度立ち寄るというか、通過するぐらいでしょうか。
そのため、久しぶりに見る東京の光景は、旅行の目的地の海外より物珍しかったりもします。

数年前、そんなことで立ち寄った東京で驚いたのは、回転すしとか小さな食べ物屋さんとか、あちこちでたどたどしい日本語で働いているアジア出身の若い人を目にしたことです。
そういう形で働くアジア人労働者が増えているという話は聞いていましたが、「へえ・・・・」って感じでした。

****ミャンマー、すしブーム 板前は日本で修業、味付け工夫*****
ミャンマー(ビルマ)ですしブームが起きている。最大都市ヤンゴンには在留邦人は500人ほどしかいないが、すし店のオープンが続き、確認できるだけで10店を超えた。スーパーにも回転ずしコーナーができ、持ち帰りずしも並ぶ。日本人めあてではなく、世界的なすし人気が到達したかたちだ。握るのは、日本のすしブームを支えたミャンマー人職人たち。

市中心部の繁華街チャイナタウンの一角にある「正田寿司(ずし)」は1月に開店。4人掛けのテーブルが6卓並ぶ店は、常ににぎわっている。
この店を知るヤンゴン在住の日本人はほとんどいない。経営者のマウンさん(46)は「うちは地元客を相手にする店。味付けをミャンマー人向けにしているから日本人には合わないんじゃないかな」と流暢(りゅうちょう)な日本語で説明した。
2002年に帰国するまで東京都内などのすし店で15年ほど働いた。「正田」は、当時の店内での日本名だ。帰国後、店を開く準備を兼ねて車での移動販売を始めた。「ミャンマー人は新しい物好きだからはやると思った。ただ、すしになじみがないから、直接やりとりしながら味を調整した」。地元米を使うしゃりは甘め。巻物が好まれ、マヨネーズも使う。数貫入った1皿が1千チャット(約90円)。めんが1杯200~300チャット程度だから、安くはない。
すしブームの先駆けとなったのは、4年前に開店した「サムライ寿司」。本格的な握りで、日本人をはじめ外国人の間でまず人気に火がついた。2年後に姉妹店をオープン。計100席以上の大規模店だが人気は衰えない。客の半数がミャンマー人だ。
経営者のテイ・アウン・ジョーさん(42)も1989年から2回、計12年間日本に滞在。ほとんどの期間、渋谷や新宿などのチェーンすし店で働いた。皿洗い、飯炊きから始まり、ネタの仕込み、握り、揚げ物や煮物など一通りの技術を学んだ。「親方によく怒鳴られた。1日12時間働きづめ。アパートでシャワーを浴びながら、涙を流したこともあった」
生魚を食べる習慣のないミャンマーで苦労したのがネタの仕入れだったが、バングラデシュ国境に近く、新鮮な魚が手に入りやすい港町シットウェまでバスに10時間揺られて、仕入れ先を開拓した。2店で9人いる板前のうち、5人が日本でのすし店勤め経験者だ。

ミャンマー人のすし職人が生まれたのは90年代の日本。当時をよく知る在日ミャンマー人によると、このころの日本は、安価な回転ずしが定着したところにグルメ志向も取り込んだすしチェーンが人気を呼んで店舗が急増、人手不足が起きた。
すし店員需要を底支えしたのがミャンマー人ら賃金の安い外国人労働者。91年に来日し、すし店で15年間働いたという東京在住のミャンマー人男性(38)は「1日12時間働いて月給30万円。我々の間では人気の職だった」と話す。日本人3人分の給料でミャンマー人4人を雇えた。他の飲食店より総じて修業が厳しく、「がまん強いミャンマー人」に向いていたとも言われる。この男性が働いた店は、すし職人10人中4人が日本人、6人がミャンマー人だった。
現在、すし店数は頭打ちとなり、職人需要も峠を越した。ヤンゴンでのすしブームは、日本で身につけた技術を生かす故郷での「独立」であり、同時に、求人がなくなった日本からの生き残りのための帰郷でもある。
ただ、在日ミャンマー人のなかには軍事政権に抵抗して民主化運動に身を投じたために故郷に戻れない者も少なくない。その場合は、シンガポールなどのすし店を目指すケースもあるという。【8月28日 朝日】
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日本の外国人労働者への需要が、母国での日本食文化の展開につながったという訳ですが、こういう外国人労働者の頑張りには本当に頭が下がります。
今の彼らの成功はそうした頑張りがあってのことですが、一方で苦労を厭い、安逸に流れる日本が経済・社会的に停滞するのもやむを得ないところでしょう。

【多発する過労死】
そうは言っても、日本における外国人労働者の境遇については、人身売買的に低賃金で彼らを酷使しているという話もよく耳にします。
****外国人実習制度は「人身売買」、弁護士が強く非難*****
外国人研修生問題弁護士連絡会事務局長の安孫子理良弁護士は22日、外国人技能実習・研修制度で来日し過労死したと思われる実習生が数十人に上ると訴え、同制度は「人身売買の一種」だと強く非難した。
日本政府は非熟練労働者の入国をほとんど認めないが、バブル崩壊後の1993年に開始した外国人研修制度の下、技能研修の名目で、低賃金で働く何万人もの外国人研修生を受け入れてきた。多くは中国、インドネシア、フィリピンなどからの研修生だ。

日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見した安孫子弁護士は、研修制度は発展途上国出身の研修生への技術移転を通じた国際貢献を目的に掲げているが、実態とは大きな差があると指摘し、「制度は安い労働力を提供するシステムにすぎない」と糾弾した。
同制度をめぐっては訓練生の虐待などが取りざたされているが、安孫子弁護士によると、2008年度だけで過去最高の35人のアジア人研修生が死亡した。同制度を監督する国際研修協力機構(JITCO)による前年の発表では、この35人のうち16人が脳・心臓疾患、5人が労務事故で死亡、1人が自殺となっている。
安孫子弁護士はまた、翌09年度に死亡した研修生は27人で、脳・心臓疾患が9人、自殺者は3人だったと説明した。

■外国人実習生の過労死に7月、初の労災認定
労働基準監督署はこの7月に初めて、同制度による外国人実習生を過労死として労災認定する方針を固めた。
対象となるのは、中国人実習生として茨城県の金属加工会社で勤務していた中国江蘇省出身の蒋暁東(Jiang Xiao Dong)さん(当時31)が08年6月に心不全で死亡した件。死亡する前月の残業時間は100時間を超えていた。また遺族代理人である安孫子弁護士によると、07年11月のタイムカードには1か月の勤務時間が350時間と記録されていた。

■闇ブローカー介在、返済のため過労に

同弁護士いわく、外国人実習生の多くは研修制度への登録手続きと日本への渡航準備を本国の闇ブローカーに依頼し、数年分の賃金にも匹敵する法外な手数料を支払っている。こうした手数料によって実習生たちは喉頸(のどくび)を押さえられた状態にあり、「これは一種の人身売買だと思う」と同弁護士は激しく非難した。
ともに会見した中国人研修生の李青智(Li Quing Zhi)さん(34)は、07年に日本料理を学ぶため来日したが、実際はある建具製造会社で最低賃金で雑用をさせられたと証言した。1か月間、150時間分の残業代未払いで働いた後、繰り返し抗議すると解雇され、行き場を失った。中国に妻と2人の子どもを残してきた李さんは「当然の支払いを受けずには中国へ帰国できない」と訴えた。
国連人権理事会のホルヘ・ブスタマンテ特別報告者(移民人権問題担当)は4月、日本の外国人技能実習制度について警告を発している。【7月23日 AFP】
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本国の「闇ブローカー」に加え、先日は日本の外国人労働者受け入れ団体役員の不正収入も問題になっていました。
「人身売買」的な現状は論外ですが、ただ、こうした存在がなくなり誰でも簡単に日本に来ることができるとなれば、今とは比較にならないほどの外国人が日本に来ることを希望するようにもなるでしょう。
単に低賃金労働者の安易な獲得といった視点ではない、社会・文化的にどうやれば彼らを受け入れることができるのかという熟慮と社会的コンセサスが必要な問題です。

【第三国定住 来日へ】
以前から話が進んでいたミャンマー難民の第三国定住が、ようやく来日の運びになるようです。
*****研修終え日本定住へ=ミャンマー難民5家族―タイ*****
ミャンマーから逃れた難民が暮らすタイ北部のメラ難民キャンプで27日、日本への移住が決まった少数民族カレン族の5家族が1カ月間の研修を終えた。健康診断などを経て、9月28日に来日する。
他国に逃れた難民に新たな定住先を提供する「第三国定住」と呼ばれる制度で、日本への移住は初めて。日本政府は3年間で90人を受け入れるとしており、初年度は27人となった。
研修では日本語のほか、日本で生活する上で必要となる知識を学んだ。最終日のこの日も約4時間にわたり、ひらがなの書き取りや日常会話、習字などの授業を受けた。
5家族は日本到着後、さらに6カ月間、日本語などの研修を受け、自立して生活する能力を身に付ける。【8月27日 時事】
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移住する家族にとっていい結果なってほしいのはもちろんですが、移民問題に対する日本側の熟慮検討の契機になってもらいたいものです。


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イスラム、ヒンドゥー社会における寡婦対策

2010-08-28 17:46:40 | 世相


(戦火で大勢の女性が夫を失うアフガニスタン その寡婦の生活は厳しいものがあります “flkrf”より By quikdra
http://www.flickr.com/photos/22870504@N06/2196129937/)

【クウェート 第2婦人を国家支援】
石油の恵みで「ゆりかごから墓場まで」の福祉制度を持つクウェートで、第2婦人まで補助金の対象になるとか。
男性としては、ちょっと気をそそられるニュースです。

****「2人目の妻を迎える男性に国が支援を」、法案提出 クウェート*****
2010年08月27日 14:14 発信地:クウェート市/クウェート
4人までの妻帯が認められているイスラム教国クウェートの国民議会(国会)で25日、2人目の妻を迎える男性を国が支援する法案が提出された。

同法案を提出したファイサル・ドゥワイサン(Faisal al-Duwaisan)議員は「社会問題となっている単身女性の増加に対処するとともに、伴侶を失った後に新しい家庭をもちたいという男女の力にもなりたい」としている。支援対象は寡婦や離婚した女性、または40歳以上で結婚経験のない女性と結婚する場合となっている。
1人目の妻が健在で離婚していない場合は、2人目の妻を迎えるにあたって夫となる男性は、1人目の妻の許可を書面で得ることを条件とする。法案は議会委員会での審議を経て本会議に上程され、承認されれば成立する。
クウェートは現在、1人目の妻を迎える男性に4000クウェート・ディナール(約120万円)の「結婚支度金」を支給している。その半分は返済の必要がない給付金で、残りは少額ずつ分割返済する無利子の貸し付けだ。

石油輸出国機構(OPEC)第5位の産油国であるクウェートは、多額の補助金を支出して「ゆりかごから墓場まで」式の手厚い福祉を提供しており、国民は教育と医療を無料で受けられる。【8月27日 AFP】
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イスラム社会における寡婦や離婚女性の立場は厳しいものがありますので、その問題の緩和に向けた対策なのでしょうが、結婚を前提とせず女性自身への補助金対策を強化すればいいものを・・・と思ってしまいます。(すでにそういう制度があるのかどうかは知りませんが)
更に言えば、イスラム社会における女性の地位に関する改善に取り組むべきなのも言うまでもないことです。

【イラン 一夫多妻容易化を否定】
一夫多妻制については、イスラム社会でも地域差が大きいようです。
****イラン議会、一夫多妻制を容易にする条項改定案を否決*****
イラン国会の司法委員会は8日、複数の妻を持つための手続きを容易にする「家族保護法(Family Protection Bill)」の条項改定案を否決し、廃案とした。改定案には、有力聖職者や女性人権団体から抗議の声が挙がっていた。国営Iran News Networkが伝えた。
否決された2案のうち第23項の改定案は、「既婚男性が結婚を希望する場合は、複数の妻を養う経済力があること、複数の妻を平等に扱う意志があることを示し、司法当局から許可証受け取るだけでよい」という内容だった。現行の法律では、2番目以降の結婚には「第一夫人の同意」を求めている。
また、結婚持参金、つまり夫から妻に約束され、婚姻中・離婚時にかかわらずいつでも妻が要求できる金銭または財産への課税を義務付けようとした第25項の改定案も否決された。
イラン司法当局によると、2つの条項の改定は政府が推進したものだという。

イランは、イスラム教国ではあるが、一夫多妻制はほとんど根付いていない制度で、多くの国民から嫌悪されてもおり、条項改定案は国内で激しい反発を招いた。
特に女性たちは、改革派・保守派を問わず、「裕福な男性たちが第2夫人を持つようになり、家族の基盤と尊厳が脅かされるようになる」と非難していた。2003年にノーベル平和賞を受賞したシリン・エバディ(Shirin Ebadi)氏は、改定条項は「道徳の退廃」を招くとして、前週国会を訪れ、否決するよう要請していた。【08年9月9日 AFP】
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【ネパール 寡婦・離婚女性対策に女性団体が反対】
女性の権利に問題があるのはイスラム社会に限った話ではなく、ヒンドゥー社会においても同様です。
かつて、ネパールで政権を握ったマオイストの目玉政策として、寡婦や低位カーストと結婚した男性に補助金を与える施策がありました。

*****ネパール「離婚女性と結婚で支給金」…女性団体怒る*****
ネパール政府が、夫を亡くしたり、離婚した女性と結婚する男性に5万ネパール・ルピー(約6万2500円)を支給する案を発表したところ、女性団体などが「侮辱的だ」と猛反発している。
(09年8月)10日には、首都カトマンズで数千人が繰り出す抗議デモが行われ、女性たちは、「私たちに勝手に値段を付けるな」などと叫んだ。
男性への支給案を7月に発表した政府は、「一度結婚した女性が不当にさげすまれ、容易に再婚出来ないネパール社会の実情を少しでも改善するための措置」と説明している。だが、女性団体は、「男たちがカネ目当てに夫を亡くした女性に近寄っては、支給を受けたら捨て去る。そんな弊害は目に見えている」と撤回を求めている。【09年8月12日 読売】
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女性団体は「結婚を押し付けることは寡婦に対する人権侵害であり、金で再婚を促すことはダウリー(持参金)制度を強化させる」と、政府案を批判していました。
最高裁はその後、同制度の実施延期命令を出しています。

人権・女性の権利の主張は正論ではありますが、その一方で、現実に今日・明日の暮らしに困っている女性たちの境遇をどうするのかという視点も忘れずに対応すべき問題でもあります。

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トラブルを招く国際河川  インドのダム放流でパキスタン洪水被害拡大

2010-08-27 21:22:39 | 国際情勢

(インドからパキスタンへ流れるサトルジ川 “flickr”より By Somesh Kumar
http://www.flickr.com/photos/someshk/4434285377/# )

【「義援金と引き換えに洪水被害を悪化させた」】
パキスタンの洪水被害に関して、犬猿の仲であるインドからの義捐金受け取りが微妙な雰囲気のなかで決まったというニュースは先日取り上げたばかりです。

****パキスタン:インドの義援金 受け入れへ*****
パキスタンのクレシ外相は20日、同国の洪水被害に対しインドが表明した義援金500万ドル(約4億2600万円)について、パキスタン政府が受け取ることを決めたことを明らかにした。AP通信などが伝えた。
インド側は義援金の提供を13日に伝えており、パキスタン政府は受諾を決めるまで約1週間かけた。被災者が1500万人を超えた洪水被害のさなかにもかかわらず、カシミール地方の領有権争いなどを抱える両国関係の複雑さを示した。
ニューヨークを訪問中のクレシ外相は、インドのテレビに対し「パキスタンは非常にありがたく思っている」と語った。
インドのシン首相は、19日にパキスタンのギラニ首相へ電話し、洪水被害の救助活動を支援する用意があることも伝えている。【8月21日 毎日】
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その後日談とも言うべきニュースがありました。
*****インド:洪水のパキスタンに義援金 直後にダム放流*****
インドが、大洪水に見舞われたパキスタンに救援金500万ドル(約4億2500万円)の供与を表明し、パキスタン外相が受け入れを表明した直後、インドがパキスタンへ流れる河川の大規模ダムを放流。パキスタン側で「通報義務を怠った放流で、義援金と引き換えに洪水被害を悪化させた」と報じられ、騒動に発展している。

パキスタンの保守系英字紙ネーションは23日、「インドの不誠実な意図」と題する社説を掲載。「(インドは)500万ドルの見返りにパキスタン政府に通報することなくダムを放流した」と批判。パキスタン側で多くの住民が避難を強いられたと指摘し、米訪問中の20日に救援金受け入れを表明したクレシ外相を「現実を知らない」とこき下ろした。
一方、インド西部パンジャブ州当局者は取材にサトゥルジ川にあるダムの放流を認め、「決壊の危険が高まったため21日から放流を開始した」と明らかにした。放流量は25日までに計約6800万立方メートルに達し、かんがい運河を通じてラビ川にも流入。これら下流域のインド領内でも「13の村で洪水被害が起きた」と語った。
パキスタンを流れる大規模河川のほとんどがインドから流入しているため、両国は60年、河川ごとに取水権などを取り決めた「インダス水条約」を締結している。今回放流されたサトゥルジ川はインドに取水権がある。
しかし、大雨でダム決壊の恐れなどが高まって放流が必要になった場合、インドはパキスタンに24時間前に通報するよう規定している。
これに対し、インド外務省広報担当者は取材に「(外務省として)放流の事実は把握していない」述べた。パキスタン外務省は「(義援金の)受け取りの最終決定はまだ」としており、義援金と放流を巡る問題は両国関係を一層こじれさせる恐れがある。
義援金は13日、インド政府が支給を表明し、20日にパキスタン外相が受諾を表明した。印パ関係の改善を狙ったケリー米上院議員の働きかけがあったとされている。【8月26日 毎日】
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事実関係はよくわかりません。インド中央政府がパキスタン側に被害が及ぶ事態を把握していたとは思えませんが、「ダム決壊の危機」という非常事態において、現地当局の対応にパキスタンへの配慮を欠いた対応があった可能性もあります。
せっかくの義捐金が、「義援金と引き換えに洪水被害を悪化させた」といったに火をつけるような結果なったのは残念なことです。

【「中国が水という武器を手にした」】
複数の国を流れる国際河川は、とかくトラブルの種になります。
今回はダムの放水の問題でしたが、今後の国際間の最大の問題のひとつになることが予測されているのが水資源の利用に関する問題です。
中国を源流として東南アジア各国を流れるメコン川の水利用に関する中国と下流国の対立、アフリカの大河、ナイル川をめぐるエジプト・スーダンと上流国の対立について、これまでも取り上げたことがあります。

同様の問題が新興国の両雄、中国とインドの間にもあります。
****アジア、水争奪戦 中国のダム開発、流域国との火種に******
国境をまたぐアジアの大河で、新たな対立の火種が生まれようとしている。
チベットからインド、バングラデシュに流れるブラマプトラ川。「上流で中国がダムを建設中」とインド紙が1面トップで報じたのは、昨年10月のことだ。人工衛星で着工が確認されたのだ。

中国側は、5基のダム建設計画が進んでいることを認め、電力需要の増加に対応する水力発電用のダムで、常時放水するため下流域に影響はないと説明した。
しかし、中国側の思惑次第で水量をコントロールされてしまうのではないか、とインド側は懸念を募らせる。1962年に、国境紛争で戦った両国。インド国内の研究者からは「中国が水という武器を手にした」という論調さえ出てきた。

懸念はダムにとどまらない。インドのエネルギー資源研究所の水問題担当、アショク・ジェトリー部長は「中国はブラマプトラ川の水を、自国へ引き込もうとしているのではないか」と話す。
彼が指摘するのは、中国政府が進める「南水北調」計画。水資源の豊かな中国南部の水を、水不足の北部に送る大事業だ。現状では国内河川から取水する計画だが、国際河川からも取水する案がくすぶる。そうなれば根こそぎ水資源が奪われる、とインド側は恐れている。

英国国防省の2007年の報告書も「水問題は、軍事行動や人口移動を誘発する可能性を高める。中国がブラマプトラ川の流れを変えようとすれば、リスクは大きい」とこの問題を取り上げている。
中国外務省は「中国は責任ある国家だ。他国の利益は損なわない」とインドの懸念を否定している。
中印は、雨期に水利情報を交換する覚書を結んでいるが、インド外務省のゴータム・バンバワレ東アジア局長は「今後は中国との(開発問題を協議する)河川協定が必要になる」と語る。(後略)

アジアには世界人口の6割が暮らすが、地球上で利用できる水資源の36%しかない。今後の経済発展や地球温暖化の進行で、水不足はいっそう深刻化するだろう。水問題は、アジアの安全保障の課題になりつつある。【8月15日 朝日】
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「中国は責任ある国家だ。他国の利益は損なわない」・・・・そうであってたいところですが、南シナ海での影響力拡大の動き、メコン川やブラマプトラ川をめぐる動きなど、自国利益優先しか念頭にないのでは・・・との懸念も感じます。

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ベトナム  中国・アメリカ・日本との関係今昔

2010-08-26 20:08:55 | 国際情勢

(8月22日 ホイアン 浴衣姿ではしゃぐベトナムの女の子)

【日本人町と日本橋】
日曜日からベトナム中部のホイアンを観光しています。ホイアンの街を歩いているとこの地と外国の関係が窺える場所がいくつもあります。
日本との関係で言えば、この地には16から17世紀頃にはアユタヤやマニラと並んで日本人町がつくられていました。ホイアンの代表的な観光スポットのひとつに、当時の日本人町と対岸をつなぐ通称「日本橋」があります。
今も残る古い建物にも日本建築の影響が見られるとか。

また、東南アジア地域の常として、華僑とのつながりを物語るものも多く、福建省、潮州、広州などの同郷人の集会所「会館」が散在しています。

ホイアン郊外のチャンパ王国(マレー系海洋民族による国家で、ベトナム中部で2世紀から19世紀の長い期間勢力を保つ)の遺跡「ミーソン遺跡」は、ベトナム戦争の際のアメリカ軍による爆撃の爪あとを残しています。また、遺跡の彫像の多くが旧宗主国フランスによって持ち去られ、その傷跡も痛々しいものがあります。

【「後悔することになる」】
時代は下って現代。
ベトナムは隣の大国・中国と同じく共産党一党独裁の国で、経済的にも同じような開放政策で成果をあげていますが、隣国の仲が悪いのは古今東西の常で、ベトナム・中国の関係も歴史的には侵略と抵抗の歴史です。
ベトナムのカンボジア侵攻の際には、中越間で戦火を交えたこともありました。近年は首脳の相互訪問などで関係修復が進んでいましたが、南シナ海への権益拡大を目指す中国の脅威を感じてベトナムは対抗的に旧敵アメリカと接近、これに中国が反応するなど、微妙な対立が見られます。

****ベトナム:米と国防次官級協議 南シナ海巡り中国けん制も*****
ベトナムと米国は17日、ハノイで95年の国交正常化後、最高レベルの防衛対話となる国防次官級協議を開催した。かつて米国と戦い南北統一を果たしたベトナムは、急速に米国との軍事協力を推進。中国とは南シナ海の領有権問題で対立し、歴史的にも警戒感が強いだけに、中国封じ込め姿勢を強めるオバマ米政権の思惑を巧みに利用しているとみられる。

「両国間の防衛協力強化へ向けた歴史的なステップだ」
ベトナムのグエン・チ・ビン国防次官と協議に臨んだ米国のシャー国防副次官補は、対話を高く評価した。
両国は南シナ海情勢について協議し、国際法に基づいた平和的解決の必要性で一致。また、人道支援や災害救援などでの協力で合意した。AFP通信によると、シャー副次官補は「中国軍が近代化を図っているとの見方で一致した」と述べた。
両国間では今月上旬、国交正常化15年の祝賀行事の一環として、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が、ベトナム戦争時に米軍の一大拠点となった中部ダナン沖合の南シナ海に到着。ベトナム政府や軍の幹部らが空母に乗り込み、軍事協力強化をアピールしたばかり。

中国は今年3月、南シナ海について初めて、領土保全に関する「核心的利益」と表明。中国政府の同海域の権益獲得に臨む強い姿勢の表れと受け止められた。
中国の南進圧力に抵抗してきた長い歴史を持つベトナムが、これを深刻な脅威ととらえたのは明らかで、ベトナムを議長国に7月、ハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議では、東アジアサミットに来年から米国とロシアを参加させる方針が決まった。
米空母のベトナム訪問に関し中国は「米越両国がそれぞれを利用して中国をけん制しようとすれば、後悔することになる」(楊毅・中国海軍少将)と強い調子で警告。ベトナムにとっては中国との経済関係は自国の経済成長に欠かせないものでもあり、ビン次官は17日の防衛協議後、「協力強化は他国の利益を侵害するものではない」とも強調している。【8月18日 毎日】
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ベトナムの抱える対中国問題と戦略については、下記のようにも報じられています。
*****3つの問題 3つの戦略*****
ベトナムにとって、対中関係には3つの大きな問題がある。第1は貿易問題だ。中国はベトナムが輸出に成功するとただちに貿易障壁を設けるのに対し、ベトナムは障壁を設けないため国内で不満が募っている。
第2の問題は、メコン川上流部(中国名・瀾滄江)のダム開発だ。中国は、南西部の雲南省内のメコン川上流で巨大なダムと水力発電所を建設している。ここ数年、メコン川下流のベトナム、タイ、ラオス、カンボジアでは水位が下がり、水不足が生じている。
第3は、南シナ海の領有権問題だ。石油や天然ガス資源があるとみられ、戦略的にも重要なスプラトリー(中国名・南沙)諸島とパラセル(同・西沙)諸島をめぐり、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を争っている。
中国がいなければ、国連海洋法条約に基づいて、それぞれに近接する大陸棚を「排他的経済水域(EEZ)」として分割することもできる。しかし、中国はベトナムがEEZを主張する海域で探査契約を結ばないよう、国際石油企業に警告し続けている。

ベトナムは3つの戦略で中国に対抗しようとしている。
第1は、抑止力の強化だ。ベトナムは、ロシアに6隻のディーゼル型潜水艦と数十機の新鋭戦闘機を、カナダに哨戒機を注文している。一方、ベトナム防衛当局者は、中国側と友好的な対話を通じて、衝突を避けるための信頼を醸成しようとしている。
第2は、ASEANや国連など、多国間機構の活用だ。ベトナムはスプラトリー諸島などの領有権について、まずASEAN域内で話し合い、共同で中国に対処するよう提案している。
ASEANと中国は2002年、「南シナ海における関係諸国行動宣言」に署名。すべての関係国が行動を自制し、領有権問題の解決に軍事力を行使しないことを誓った。しかし、中国は04年、懸案のASEANと自由貿易協定を結ぶと、領有権問題は2国間で話し合うと主張するようになり、ベトナムの戦略はうまくいっていない。
第3は、米国との関係緊密化による牽制(けんせい)だ。米国は南シナ海の領有権問題に巻き込まれないよう警戒しつつ、ベトナムとの防衛対話を積み上げている。
ゲーツ米国防長官は6月、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、南シナ海で合法的に活動する米国やその他の国の企業への「脅し」に米政府は反対すると述べ、中国に対する挑発ともとれる発言をした。【7月21日 オックスフォード・アナリティカ】
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【原発受注に各国参戦】
日本とは先述のようにつながりの深いエリアです。
街に浴衣姿のベトナムの女の子達が大勢いて「何事か?」と思ったのですが、21日から23日に催されていた「日越文化交流 ホイアン日本祭」というイベントの一環だったようです。イベントは全国放送のTVニュースなどでも紹介されるような盛大なものでしたが、23日午後は台風接近で土砂降りの悪天候。残念ながら多くの催しが中止になったのではないでしょうか。

原発売込みで直嶋正行経済産業相もベトナムを訪れていたようですが、こちらは現地のTVでは気付きませんでした。
*****ベトナム首相と会談=原発受注で直嶋経産相******
直嶋正行経済産業相は25日、ベトナムで計画中の原子力発電所の建設受注を目指し、同国のグエン・タン・ズン首相と首相府で会談した。ズン首相は受注に向けた日本の提案に対し、「真剣かつ前向きに検討していきたい」と述べた。
 直嶋経産相は官民一体の取り組みをアピールした上で、「10月に予定されている日越首脳会合で何らか進展させたい」と期待感を示した。
 会談には東京電力、東芝、三菱重工業、日立製作所など民間8社のトップも同席。官民一体で原発の建設受注だけでなく、運営についても保守を含めた長期的な視点で取り組んでいることをアピール。ズン首相は原子力協力協定をめぐる両国による現在の予備交渉について、「正式な協定締結に向け(事務方に)意見交換させていきたい」と述べた。【8月25日 時事】
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新幹線売り込みでは、日本側も懸念していた資金面で、ベトナム国会が政府の建設計画を否決する異例の展開となって今後に持ち越されています。
原発についてもベトナム政府は意欲的で、国会から慎重論が出ています。
****ベトナム、2030年までに原発13基建設*****
ベトナム政府は、2030年までに原子力発電所を8カ所(13基)で建設する方針を明らかにした。経済成長に伴って首都ハノイでも電力不足が深刻化しており、同年までに原発で、電力需要の10%にあたる1万5千~1万6千メガワットの発電を目指す。
ベトナムでは現在、南部ニントアン省で原発2基を建設する計画が進行中で、ロシアの協力で2020年の運転開始を目指している。当初は同年に4基の運転を始める予定だったが、国会審議で慎重論が出て、2基を先行して建設することになった。新たな政府の方針も、具体化の過程で変更される可能性がある。【6月23日 朝日】
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先行するロシアのあとを追って、欧米・日本勢の受注合戦が激化しています。
中国をけん制してベトナムに接近するアメリカは、以前も取り上げたように、ベトナムのウラン濃縮を容認しても原子力協定を進める意向と報じられています。
****ウラン濃縮容認か 核不拡散「二重基準」批判も 米、ベトナムと原子力協定交渉*****
米国が核燃料や原子力発電技術での協力を促進する協定締結に向け、ベトナムとの交渉を進めている。ベトナムは今後20年以内に原子力発電所を13基建設する計画で、協定締結はこうした事業への米国企業の参入に道を開く。
ただ、協定ではベトナム独自のウラン濃縮を例外的に容認する可能性があり、核不拡散に関する「二重基準」の批判を招く危険性もはらんでいる。ウラン濃縮容認の場合、核問題で米欧から非難されているイランが反発するのも不可避だ。(中略)
ベトナムは今年6月、原発建設計画を発表し、中国や日本企業などの高い関心を引きつけた。米国では複合企業のゼネラル・エレクトリックや建設大手ベクテルが参入に興味を示しており、協定締結はこうした企業の後押しにつながる。
一方、米メディアによると、ベトナムがウラン濃縮の放棄を受け入れる可能性は低く、米国も黙認する姿勢に傾いているとされる。
だが、米国はすでに原子力協定を結んだアラブ首長国連邦や交渉中のヨルダンには核不拡散を理由に濃縮放棄を求めており、ベトナムの特別扱いはオバマ政権の核不拡散戦略に影を落とすことになりかねない。【8月8日 産経】
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アメリカも「国益」のためには、「二重基準」もいとわないようです。

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パキスタン洪水支援  出遅れたパキスタン政府を尻目に力をいれる国・勢力の思惑

2010-08-25 18:41:11 | 国際情勢

(被災住民の救援にあたる米軍  “flickr”より  By The U.S. Army
http://www.flickr.com/photos/soldiersmediacenter/4885278634/)

【「水が引いても農地が地雷原・・・」】
パキスタンでは7月28日ごろの北部の大雨で国土を南北に貫くインダス川が氾濫。
地元メディアの推計では死者2000人超とも言われており、被災者は2000万人を超えています。
最大の産業である農業被害も30億ドル(2500億円)を超える見通しで、「冬の飢饉(ききん)」への恐れも広がっています。【8月25日 毎日より】

そんなパキスタン洪水被害について、物騒な・・・と言うか、被災者にとっては“踏んだり蹴ったり”の事態が広がっているようです。
****パキスタン:洪水1カ月 地雷や爆弾が河川に大量流出*****
建国史上最悪の洪水被害から1カ月となるパキスタン北西部で、国軍と戦闘を続ける武装勢力が埋設したとみられる地雷や手製爆弾、砲弾がはんらんした河川に大量に流出した。米国主導の「対テロ」戦が続く同国だが、大半の国民には地雷被害を回避する知識はない。水害によって拡散した地雷は、遅れている救援活動をさらに遅らせ、水が引いても新たな「戦争被害」を招く恐れがある。

洪水被害が深刻なカイバル・パクトゥンクワ州の警察によると、インダス川が決壊した州南部デライスマイルハーンで9日、土砂に埋もれていた物体に男児3人が触れた途端、爆発した。3人は手の指を失うなどの大けがをした。
数日前にも同じ地域で60歳代の女性が水の引いた畑を歩いている時に突然爆発。足を切断するなどした。
いずれも地雷被害とみられ、パキスタンで医療活動を続ける赤十字国際委員会(ICRC)は、「流れついた地雷で流域の人々の命が危険にさらされている」と警告。地雷被害が「洪水の2次被害」として急浮上した。

地雷は、米国の圧力を受けたパキスタンが武装勢力掃討作戦を始めた02年以降、武装勢力側がアフガニスタン国境の支配域周辺に埋めたとみられ、推定数万個。インドと領有権を争う北部カシミールの境界付近にも大量の地雷が埋まっているとされる。
デライスマイルハーンで相次いだ爆発は、河川を通って地雷が運ばれてきたことを証明しており、同州政府の救援当局者は「水が引いても農地が地雷原になっているかもしれない。これは戦争の弊害だ」と訴えた。

こうした中、ザルダリ大統領が深刻な被害が出ているさなかに欧州を外遊したこともあり、政府の救援活動の遅れは国民の反政府感情を決定的にし、05年のパキスタン地震の時に多くの国民が寄付した政府の「災害被災者救援基金」には今回、寄付者がいない状態となっている。半面、掃討作戦の即時中止と対話解決を求めるイスラム勢力の基金には寄付が集まっており、被災者への炊き出しなどを通じて影響力を高めている。【8月25日 毎日】
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「水が引いても農地が地雷原・・・」とは、不幸は弱者を狙い撃ちにするもののようです。

【アメリカ・イスラム勢力の援助合戦】
この災害を、住民支持拡大のための戦略的一環として位置づけ、救援活動に力を入れているのが、上記記事にもあるイスラム勢力と米軍です。

****パキスタン:洪水援助、目立つ米国 イメージ改善狙う*****
パキスタンを襲った大雨洪水被害への国際社会の支援が遅れる中、米国の積極さが目立っている。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、これまで各国が表明・拠出した支援額は計約1.5億ドル(約129億円)。米国の支援額は14日の発表で7600万ドルに達し、半分近くを占める。テロ対策のパートナーながら国民の反米感情が強いパキスタンに対し、積極支援で米国のイメージを改善させたいとの狙いもありそうだ。
OCHAは被災者を1400万人超と推測。だが、国際協力団体によると、国際社会が表明・拠出した支援額(発生から10日後)は、05年のパキスタン大地震=2.9億ドル、今年のハイチ大地震=16.6億ドルに大きく及ばず、反応の鈍さが目立つ。

米国は今回、支援金の支出だけでなく、被災者4000人を救助し、食糧や毛布などの救援物資約180トン分を届けた。19機の米軍のヘリコプターが機動力を発揮している。
AP通信によると、米軍の活動中心地の一つは、武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)の勢力圏である北西部。パキスタン軍が昨年、掃討作戦を実施したばかりの地域だ。米国は、洪水被害に伴うパキスタン経済と国軍の疲弊が、治安悪化につながりかねないとの懸念を抱いている。ゲーツ国防長官は12日、「オバマ大統領からは、最大限の支援をするように頼まれている」と語った。【8月15日 毎日】
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【まく立ち回る国軍】
もうひとつ、うまく立ち回っているのがパキスタン国軍のようです。
****今のキヤニに怖いものは何もないだろう。パキスタン洪水救援で勢いづく軍部****
政府の被災者対策が遅れるなか、陸軍参謀長が強力なリーダーシップで支持を急拡大している
63年前にイギリスから独立して以来、パキスタン軍は約半分の期間この国を支配してきた。7月末に約600万人が被災する大洪水が発生してから、その軍部がまた権力を握ったのかと国民が錯覚するような事態が続いている。
連日テレビのニュース番組が流すのは、アシュファク・キヤニ陸軍参謀長が洪水被災者の元を訪れ、孤立した山間部の村々に軍のヘリコプターで食料や水を落とし、救援活動を行う場面だ。

その一方で、文民政府の高官の姿はほとんど目にしない。国土の5分の1が浸水した被災地をザルダリ大統領が訪れたのは、発生から2週間以上たってからだった。
洪水発生直後、ザルダリは側近の助言を無視して予定どおりフランスとイギリスへの外遊に出発。訪問先にはフランス・ノルマンディー地方のシャトーも含まれていた。その行動は国民に無関心と冷淡さの表れと受け止められ、「(被災者のため)他国の支援を集めようとした」という見え透いた言い訳を信じる者はいない。

文民政府よりずっと手際がよかったのがイスラム過激派組織だ。その救援チームは05年にカシミール地方で起きた大地震のときと同じように、今回も迅速な救援活動を行った。
だが今回政治的に最もうまく立ち回ったのは何といってもパキスタン軍だろう。キヤニが参謀長に就任した3年前、パキスタン軍は陸軍参謀長を兼任していたムシャラフ前大統領による長期支配によって大いに信頼を損ね、針のむしろ状態だった。
国民議会の野党議員アヤズ・アミルによれば、キヤニのリーダーシップで軍への支持が大幅に改善しており、キヤニが「間もなく他を圧倒し、政府をも手中に収めるのは形式的な手続きを待つばかり」な状態だという。
47年以来4回起きた軍事クーデターが新たに勃発する可能性は恐らくない。だが災害救援と復興支援によって軍の役割はさらに拡大しそうだ。その結果、キヤニは国内で最も信頼の置ける指導者として国民に強い印象を与えることになる。ザルダリ「死に体」政権の決定にキヤニの承認が必要になる可能性もある。
今のキヤニに怖いものは何もないだろう。【8月18日 Newsweek】
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どのニュースもザルダリ大統領の対応がお粗末だったという点では共通しています。

【宿敵インドも、日本も】
パキスタンの「宿敵」インドも義捐金を提供していますが、パキスタン政府の受入決定に1週間かかったとか。
*****パキスタン:インドの義援金 受け入れへ*****
パキスタンのクレシ外相は20日、同国の洪水被害に対しインドが表明した義援金500万ドル(約4億2600万円)について、パキスタン政府が受け取ることを決めたことを明らかにした。AP通信などが伝えた。
インド側は義援金の提供を13日に伝えており、パキスタン政府は受諾を決めるまで約1週間かけた。被災者が1500万人を超えた洪水被害のさなかにもかかわらず、カシミール地方の領有権争いなどを抱える両国関係の複雑さを示した。
ニューヨークを訪問中のクレシ外相は、インドのテレビに対し「パキスタンは非常にありがたく思っている」と語った。
インドのシン首相は、19日にパキスタンのギラニ首相へ電話し、洪水被害の救助活動を支援する用意があることも伝えている。【8月21日 毎日】
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安全面での懸念の割に自衛隊の存在感を示す効果が薄いことからスーダン住民投票支援を断った日本・防衛省ですが、パキスタンには自衛隊ヘリを派遣しています。場所は比較的安定している中部のようです。
*****自衛隊ヘリ部隊に派遣命令…パキスタン洪水*****
北沢防衛相は20日、深刻な洪水被害に見舞われたパキスタンを支援するため、国際緊急援助隊派遣法に基づき、自衛隊のヘリコプター部隊に派遣命令を出した。
ヘリの輸送や後方支援にあたる部隊も含め、計500人規模となる。第1陣約50人が21日午前、福岡空港から民間機で出国し、現地で受け入れ準備に当たる。
現地の活動には、陸上自衛隊の多用途ヘリUH1と大型輸送ヘリCH47を3機ずつ使う。
活動は、パキスタン中部パンジャブ州ムルタンのパキスタン軍航空基地を拠点に、半径約200キロ・メートルの範囲で、救援物資の輸送や負傷者の搬送などを行う予定。派遣期間は約1か月を想定している。防衛省はムルタンの治安状況について「比較的安定している。現時点で、差し迫った脅威の情報はない」としている。【8月20日 読売】
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各国・各勢力、それぞれの思惑ですが、最終的に被災住民の救済・支援につながれば結構な話です。

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中東和平 直接交渉開始へ 困難な条件クリア

2010-08-24 23:22:49 | 国際情勢

09年9月22日 ネタニヤフ首相(背中)、アッバス議長(右)、オバマ大統領の三者会談
このときはオバマ大統領は中東和平交渉の再開を強く促しましたが、焦点のユダヤ人入植地の建設凍結問題などで具体的な進展はなく、交渉再開の見通しは立たないまま終わりました。“flickr”より By The White House
http://www.flickr.com/photos/whitehouse/3994560770/)

【「1年以内の解決」を目指す】
イスラエルが希望していたパレスチナとの中東和平の直接交渉が、アメリカの後押しもあって、9月からワシントンで行われることになりました。
****中東和平:直接交渉開始を発表…米国務長官****
中東和平に関し、クリントン米国務長官は20日に記者会見し、イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナのアッバス自治政府議長による直接交渉を9月2日、ワシントンで開始すると正式発表した。長官はイスラエル、パレスチナの2国家共存に向け、国境や入植地などすべての最終地位問題の「1年以内の解決」を目指す方針を明らかにした。
交渉にはエジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王も参加する。中東和平の直接交渉は、イスラエルによる08年12月のパレスチナ自治区ガザ地区攻撃を機に中断しており、今回はそれ以来の再開となる。
長官は会見で、交渉進展には今後も障害があるとの見通しを示す一方で、「中東地域の持続的な和平のため、歩みを止めないように求める」と語った。

パレスチナとイスラエルも交渉開始に合意したとし、その理由について、仲介役のミッチェル中東特使は「直接交渉を通じてのみ問題が解決できることを双方の指導者が認識した」と述べた。
また米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連で構成する中東和平4者協議も20日、直接交渉開始を支持する声明を発表した。声明は1年以内の合意を期待するとともに、「1967年に始まった(イスラエルによる)占領状態を終結させ、独立した民主的なパレスチナ国家の誕生につながる」ことを求めた。【8月21日 毎日】
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「直接交渉を通じてのみ問題が解決できることを双方の指導者が認識した」・・・・では、アメリカが行ってきた間接交渉はなんだったのか?
パレスチナ側はこれまで、入植凍結や国境画定の原則などパレスチナ側が求めてきた交渉の前提条件が受け入れられる「保証」が明確ではないとして、直接交渉には消極的でしたが、“中間選挙を控えるオバマ米大統領がユダヤ系有権者に配慮する形でイスラエルの求める直接交渉を後押し。パレスチナの後ろ盾のアラブ連盟も交渉開始を支持したことから、アッバス議長は直接交渉を受け入れざるを得ない立場に追い込まれた。”【8月21日 時事】といった状況です。

アラブ連盟が交渉開始を支持したのは、オバマ大統領がアッバス議長あての書簡で直接交渉に関する一連の「保証」を行ったためとされていますが、「保証」の中身がよくわかりません。
中間選挙を前にユダヤ系有権者に顔が向いているアメリカが、パレスチナを納得させるような「保証」を実行できるようにも思えませんが。

【双方譲る気配なし】
*****直接交渉を受け入れ=入植継続なら中止と警告―パレスチナ******
パレスチナ解放機構(PLO)は20日夜、同自治区ラマラで幹部会合を開き、中東和平の間接交渉から直接交渉への移行受け入れを決定した。イスラエル側は既に歓迎の意向を表明しており、中東和平は1年8カ月ぶりに本格的交渉が再開する。
ただ、アリカットPLO交渉局長は会合後、記者団に「イスラエルが、9月末の入植凍結期限後に入植活動を再開すれば、直接交渉を続けることはできない」と警告した。
イスラエルのネタニヤフ首相は、先月下旬のモラティノス・スペイン外相との会談で、9月末以降は凍結を継続しない意向を示しており、入植問題が交渉進展を阻害する火種として依然残っている。【8月21日 時事】
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一方のイスラエル側も今のところは譲歩の姿勢は見せていません。
*****難民帰還権放棄、和平合意の原則に イスラエル首相表明*****
イスラエルのネタニヤフ首相は22日、9月初旬に再開するパレスチナとの直接和平交渉について、パレスチナ難民の帰還権放棄などを和平合意の原則とする方針を改めて示した。
ネタニヤフ氏は、同日の閣議で直接交渉に臨む政府の方針を確認。和平合意の原則として(1)イスラエルの安全保障の確保(2)パレスチナ側がイスラエルを「ユダヤ人国家」として認めること(3)パレスチナ国家の非武装化、を掲げた。(2)は、イスラエル建国に伴い発生したパレスチナ難民が、現在、イスラエル領になっている故郷に戻ることを同国が拒否するもので、パレスチナ側は反発している。
一方、パレスチナのマアン通信によると、アッバス自治政府議長は同日、中東和平を仲介する米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の各首脳に書簡を送り、「入植と和平は、決して両立しない」と指摘。イスラエルが占領地ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植を続けた場合、交渉を打ち切る方針を伝えた。
イスラエルは米国の要請で昨年11月から西岸での新規入植住宅の建設を停止しているが、9月下旬にその期限が迫っている。ネタニヤフ政権内の右派は期限延長を認めない姿勢を示しており、ネタニヤフ氏の対応が注目される。
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イスラエル、パレスチナ双方が、相手が容易にのめない条件を主張しあっています。
交渉前なので・・・と言えばそうなのでしょうが、始める前から合意の期待が殆どもてない展開です。
聞こえてくるのは、交渉打ち切りの話ばかりです。

*****PLO:直接交渉打ち切りも 入植地の住宅建設凍結を要求*****
中東和平交渉でパレスチナ解放機構(PLO)の実務責任者、エラカト交渉局長が23日、ヨルダン川西岸ラマラで記者会見した。イスラエルがユダヤ人入植地の住宅建設を完全に凍結しなければ、「(9月2日に始まる)直接交渉は打ち切られる」と警告した。これに対しイスラエルの首相府は反論する声明を発表し、交渉は入り口から危うさを露呈している。

国際社会が違法だとみなしている占領地での入植住宅建設を巡っては、イスラエルが9月26日を期限に、ヨルダン川西岸での部分的な「凍結」を実施している。67年に占領・併合した東エルサレムでの建設や入植者の自然増に応じた建設は、凍結の対象としていない。エラカト局長は会見で、従来通り、東エルサレムなどを含む完全な凍結を求めた。さらに「26日以降に建設が許可されるならば、それは(イスラエルの)ネタニヤフ首相が交渉を打ち切ったという意味だ」と断言した。
イスラエル首相府はこの会見を受け、声明で「イスラエルは直接交渉の開始にあたり、前提条件を一切設けない」として、建設凍結の延長を打ち出すことを拒否。ネタニヤフ首相は同声明で「(西岸の)非武装化と治安維持が和平で重要だ」と強調した。
イスラエル・メディアによると、同国の右派連立政権では主要閣僚が建設凍結の延長に強く反対。「部分凍結」案を推す閣僚もいるという。【8月24日 毎日】
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【右派ネタニヤフ首相だからできることも・・・】
9月2日に交渉を開始して、9月26日にイスラエルが「凍結」延期を認めず、交渉打ち切り。双方は国内・内部向けに主張を貫いたことをアピールしておしまい・・・というのでは茶番です。
直接交渉とは言いながら、合意に向けてアメリカがイスラエルをどこまで説得できるかが重要なポイントですが、右派連立政権のネタニヤフ首相ですので難しいところです。
ただ、極右政党を含む右派連立政権だからこそ、保守派反対をおさえて妥協することも可能・・・という見方もできます。保守派の批判にさらされる左派政権では妥協は国内的に困難です。
アメリカの中国との国交成立も、反共と見られていたニクソンだからこそできたということもありますので。

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総選挙後の新政権樹立に難航 イラク、ベルギー・オランダ、そしてオーストラリア

2010-08-23 19:47:35 | 国際情勢

(6月24日に新首相に就任したギラード・オーストラリア首相 超短命首相の可能性も “flickr”より By MystifyMe Concert Photography™ http://www.flickr.com/photos/mystifyme07/4882403004/

【嵐のホイアン】
今、旅行でベトナム中部のホイアンにいます。
今日は朝から雨が降り出しそうな天気。「晴れて暑いよりは歩きやすくていいか・・・」と思っていたのですが、昼前あたりから土砂降りに。さすがに観光どころではなくなってホテルに戻り、何気に言葉のわからないTVをながめていると、台風の進路予想図が。ネットで気象庁の台風情報をみると、なんとホイアンのすぐ近くに台風5号が接近中です。

激しい雨で道路は川のようになっており、たて付けの悪い安宿の窓の上からはポタポタと雨しずくが。窓の近くは水浸し状態。ホテルからは部屋替えの提案もありましたが、広くて眺めがいい今の部屋のままで今晩の台風通過を乗り切ることにしました。カーテンをはずし、モップを借りました。弱い台風のようですが、どうなることやら・・・。
外にも出かけられない状態なので、ブログ更新で時間をすごすことに。
今日は旧暦14日の満月で、本来ならホイアンの旧市街はランタンの明かりで彩られるはずだったのですが・・・。

【イラク、これから協議 首相は?】
緩和休題。
治安悪化も懸念されるなか、3月の総選挙から5カ月以上経過しながら新政権ができないイラクの連立協議に関するニュースが目に入ったので、「やっと新政権ができるのか・・・」と一瞬錯覚したのですが、これから協議にはいる
ことに同意したというもので、相変わらず見通しがたたない状況には変わりないようです。

****イラク:アラウィ元首相 連立協議再開に同意*****
ロイター通信によると、イラクのアラウィ元首相は16日に中断したマリキ首相の政治会派「法治国家連合(SLC)」との連立協議再開に同意した。アラウィ氏の会派「イラク国民運動(イラキヤ)」の幹部が20日明らかにした。しかし、交渉の行方は不透明なままで、3月の総選挙から5カ月以上経過しながら新政権発足の見通しは立っていない。
両会派の幹部によると、SLCは19日に連立内閣と政治行政改革に対する新提案を行っており、これを受けてアラウィ氏が再開を決断した模様だ。
イラキヤは、マリキ首相のテレビインタビューでの発言を「宗派間対立をあおるもの」と批判し連立交渉を中断している。
交渉の最大の焦点は首相人事。続投を狙うマリキ首相と、総選挙で第1党となったイラキヤを率いるアラウィ氏の間で、どちらが首班になるかの調整が難航しているとみられる。

イラクでは最近、政治的空白をついて治安の不安定化を狙ったとみられるテロや攻撃が続いている。17日には新兵募集施設の自爆テロで60人以上が死亡。同事件では国際テロ組織アルカイダ系の団体「イラク・イスラム国(ISI)」が過激派系ウェブサイトで20日、犯行声明を出した。【8月21日 毎日】
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まあ、新政権樹立に向けて一歩前進ではありますが、“交渉の最大の焦点は首相人事”ということですから、当分はまとまりそうにないとも思えます。
政治空白の生む社会不安・治安悪化を考えると、1日も早い政治安定が望まれるのですが・・・。

【過激政党躍進で組閣難航】
選挙後の新政権成立が難航しているのはイラクだけではありません。
****ベルギー・オランダ:「内閣不在」2カ月 連立協議長引き*****
欧州連合(EU、加盟27カ国)の古参、ベルギーとオランダで6月の総選挙以来、新政権発足に向けた連立協議が長引き、事実上の「内閣不在状態」が2カ月以上続いている。北部オランダ語圏と南部フランス語圏が対立するベルギーでは国家予算の分配を巡り南北間の調整が難航中だ。オランダでは中道右派の連立政権発足に向け、極右政党の閣外協力の是非が焦点に浮上している。

ベルギーで連立協議をけん引しているのは総選挙で勝利したフランス語圏社会党のディ・ルポ党首(59)。オランダ語圏の分離・独立を掲げる民族主義派政党・新フラームス同盟が躍進した総選挙結果を踏まえ、各党党首との協議で両言語圏の権限を大幅に強化する構想を提示した。
構想によれば、福祉、税制、司法などの政策権限が連邦政府から両言語圏に移譲され、国家予算の言語圏政府への割り当ては現在の39%から49%に拡大する。これに対し、新フラームス同盟のデ・ウェーフェル党首(39)らオランダ語系政党は(1)社会保障費負担などを通じてオランダ語圏からフランス語圏への「持ち出し」となっている財政不均衡の是正(2)首都ブリュッセルに対するオランダ語圏の影響力強化--を求め、フランス語系政党の反発を招いている。

一方、オランダでは自由民主党、キリスト教民主勢力の中道右派2党と極右政党・自由党の3党首が7月末、「中道右派2党の少数連立政権を作り、自由党が閣外協力で政権を支える」方針で合意、連立協議を開始した。首相候補は、財政再建策の一環としてEUへの拠出金半減を公約に掲げた自由民主党のルッテ党首(43)。
 オランダで少数内閣ができれば第二次大戦後初めて。しかし、21日付オランダ紙トラウによると、イスラム系移民の排斥を主張する自由党の閣外協力にキリスト教民主勢力の2議員が反対しており、連立政権の発足に黄信号がともる可能性があるという。

両国では今回に限らず、近年、総選挙後の連立協議の長期化が恒例となっている。背景には「EUの強大化に伴い、加盟国中央政府の役割が相対的に低下している」(外交筋)事情がある。このため、ベルギーでは南北両言語圏の発言力が強まり、オランダではEUから距離を置こうとする政治的な動きが広がっている。【8月23日 毎日】
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ベルギーのオランダ語圏の分離・独立を掲げる民族主義派政党・新フラームス同盟にしても、オランダの極右政党・自由党にしても、民意を反映しての躍進とは言え、かなり過激な主張をベースにしているため他の政党が連立を組みにくいという事情があって、連立協議が難しくなっています。
そういう従来は“過激”と見られていた意見が、国民の間で一定に支持を広げつつあるという点に注目すべきなのかも。

【「ハング・パーラメント」】
ベルギーのような、もともと連立を前提にした国だけでなく、イギリスのような二大政党制で選挙の勝ち負けが新政権にストレートに反映するはずの国でも、このところ「ハング・パーラメント」(中ぶらりん議会)といった事態が出現しています。
イギリスに続いてオーストラリアの総選挙も微妙な結果となったようです。

****オーストラリア:与野党が多数派工作 総選挙過半数割れ*****
21日投開票されたオーストラリア下院(定数150)の総選挙は、ギラード首相(48)の与党・労働党とアボット自由党党首(52)率いる野党・保守連合(自由党、国民党)のいずれも過半数割れが確実となり、両陣営は22日、政権獲得に向け多数派工作を始めた。

選挙管理委員会によると、開票率78.13%の時点で、党派別の獲得議席は労働党70、保守連合72、緑の党1、無所属2。全議席の確定には、郵便投票の集計などを待つ必要があり、さらに数日かかる見通し。豪公共放送ABC(電子版)は、最終的な獲得議席数を労働党72、保守連合73、緑の党1、無所属4と予想している。
単独過半数に届かない2大政党陣営にとって、政権獲得を目指すには緑の党や無所属議員の取り込みがカギとなる。ギラード首相は選挙から一夜明けた22日、これらの議員との間で政策協議を始めたことを明らかにし、「誠意を持って話し合い、効果的な合意による政権を作りたい」と首相続投に意欲を見せた。アボット党首も同日、無所属議員らとの接触を認め、「過半数に届かない労働党政権は慢性的に分裂し、機能不全になる」と政権交代を訴えた。
左派の緑の党から当選したバント氏は同日、「労働党に傾いている」とコメント。一方、当選が確実な無所属4人のうち3人は元国民党の保守系議員で、保守連合が協力の取り付けに成功すれば3年ぶりの政権奪取に道が開ける。ただ、交渉の結果次第では、2大政党いずれかによる議会少数政権となる可能性も残されている。【8月22日 毎日】
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なお、緑の党は今回、補選以外で初めて下院で1議席を獲得しましたが、同時に実施された上院選(定数76、改選議席40)でも6議席を獲得して躍進、非改選分と合わせて現有5議席から9議席となる見通しです。
緑の党は強力な気候変動対策を主張しており、労働党の環境政策に不満を持つ支持層の票を大量に獲得したとみられており、予算や法案の否決権を持つ上院で同党がキャスチングボートを握る可能性が高まっていると報じられています。【8月22日 読売より】

各国それぞれに事情があっての状況ですが、民主主義は何かと手間隙のかかるものです。

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米露の思惑一致で、イランの原子力発電所への核燃料搬入開始

2010-08-22 21:20:08 | 国際情勢

(07年の建設段階のブシェール原発 “flickr”より By kana_ratnam
http://www.flickr.com/photos/kana_ratnam/1763480430/)

【アメリカ、ロシアと取引】
ロシアによって建設が進められてきたイランのブシェール原子力発電所への核燃料搬入が始まり、イラン初の原発稼働がまもなく始まるようです。

ブシェール原子力発電所は、1974年、パーレビ国王体制下でイラン初の原子力発電所としてドイツ企業が建設を開始しましたが、79年のイラン革命を受け、開発が中断。
その後、95年にイランとロシアの間で建設協力の合意がなされて建設が再開されましたが、強く反対するアメリカと建設を急ぎたいイランを天秤にかけるロシアは何かと理由をつけて先延ばしにする形で、当初の2000年代前半の完成が見込みが大幅に遅れていました。

国際関係の波に翻弄されてきた同原発ですが、ここにきての稼動へのゴーサインは、対イラン制裁へのロシアの協力を取り付けたいアメリカとイランとの関係を修復したいロシアの間で思惑が一致したことがあるようです。

*****イラン:米露思惑一致で前進 初の原発稼働******
イラン南部のブシェール原発への核燃料搬入が始まり、イラン初の原発稼働が目前に迫った。建設に協力するロシアの意向と、対露関係を重視した米国の姿勢転換があり、大国による思惑の一致が原発計画のゴーサインにつながった。一方で、同原発はイランへの対抗を強めるイスラエルを刺激するなど、今後の火種になる可能性もある。

「西側諸国による圧力、制裁にもかかわらず、我々は象徴的な核の平和利用のスタートを見届けることができる」。イランのサレヒ原子力庁長官は21日、核燃料搬入にあたり、国際社会に翻弄(ほんろう)され続けた同原発の経緯に触れた。(中略)
同原発稼働に難色を示してきた米国だが、今年6月、対イラン制裁決議を急ぐため、ロシアに決議への協力を要請。ロシアが協力に応じれば同原発支援を容認するとして取引した可能性がある。

またロシアは米国の意向を受けてイランへの対空ミサイルシステム「S300」の納入も現在延期しており、イラン側が不満を強めている。原発稼働で、制裁決議賛成で生じたイランとの亀裂の修復につなげる狙いは明らかで、大国の思惑の一致が原発稼働につながったといえる。

一方、ブシェール原発をめぐっては、イランの核開発計画に強く反発するイスラエルの動向も注目された。イスラエルはイラクのオシラク原子炉を稼働直前の81年6月に爆撃。ブシェール原発の稼働前にも施設攻撃があるのではとの観測も流れた。原発稼働によって核兵器関連の技術の蓄積が進むとの見方もあり、イスラエルが今後も神経をとがらせる恐れもある。【8月21日 毎日】
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【ロシアの思惑】
従来から関係の深かったイランとの関係を、アメリカに対し“イランカード”として使ってきたロシア側の思惑については、次のとおりです。
****イラン・ブシェール原発稼働へ 露したたか 利権と影響力両立*****
・・・・ロシアの狙いは、イランとの関係を修復してこの国への影響力を強め、同時にロシアが国策として進める原発ビジネスで利権を確保することにある。対イラン追加制裁で圧力を強める米欧が反発しないことも織り込み済みだ。

露外交筋は「イラン問題を含め、核不拡散に関する米露の基本的立場は一致している」と強調する。ただ、米欧が「圧力」路線に傾くのに対し、ロシアはイランへの関与と影響力を強めることで「聞く耳を持たせる」(専門家)アプローチを重視する。
ロシアは6月、国連安全保障理事会による4度目のイラン制裁決議に賛成してイランとの関係を悪化させた。さまざまな口実で延期してきたブシェール原発の稼働に踏み切るのも、イランに“あめ”を与えて対イラン政策を立て直すためだ。

ロシアは2007年末、国策原子力統合企業「ロスアトム」を設立し、新興国を中心に原発の受注攻勢をかける。「原発への核燃料供給を保証し、使用済み核燃料は引き取る」というのがロシアの売り込み方だ。
この“核燃料リース方式”をイランにも適用することで、ロシアは米欧が抱く軍事転用懸念を封じながら原発利権を拡大できる。「ブシェール原発は国際原子力機関(IAEA)の監督下にあり、問題が生じてもロシアの責任ではない。いざとなれば核燃料供給をやめればよい」(専門家)との見立てもある。

もっとも、イランがロシアの思惑通り、核兵器開発放棄に向かうかは全く不明だ。テヘランからの報道によると、イラン原子力庁次官は14日、ブシェール原発の稼働にもかかわらず、自前のウラン濃縮活動は継続する考えを示した。ブシェール原発で発電が始まる来年初頭までには、なお曲折も予想される。【8月15日 産経】
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【懸念されるイスラエルの動向】
アメリカ、ロシアと並んでイランの原発に並々なぬ関心を持っている国がもうひとつ、イスラエルです。
イランの核開発を阻止したいイスラエルは、ブシェール原発についても、これを爆撃するのでは・・・との懸念が持たれています。

こうしたイスラエルの核施設攻撃にイランも警戒感を強めています。
*****原発攻撃は「国際犯罪」=イスラエル・米をけん制―イラン高官*****
イランのサレヒ原子力庁長官は17日、国営通信に対し、21日に稼働するイラン初のブシェール原子力発電所に対する攻撃は「国際的な犯罪だ」と述べ、対イラン攻撃も辞さない構えのイスラエルなどをけん制した。
サレヒ長官は「攻撃の結果は世界的な影響をもたらすため国際的な犯罪だ」と語った。米国連大使を務めたボルトン氏は先に、原発の稼働開始後の攻撃は放射能をまき散らす恐れがあり、イスラエルに残された攻撃可能な日数はわずかだと述べていた。 
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“残された攻撃可能な日数はわずか”というのも物騒な話ですが、イラク・アフガニスタンで手一杯のアメリカはイラン攻撃にはやるイスラエルをなだめたいところです。
****米国:「イラン核開発に1年以上」イスラエルに伝達*****
オバマ米政権がイスラエル政府に対し、イランが核兵器を開発するのに1年以上かかるとの見方を、証拠を添えて伝達していたことが分かった。20日付の米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。米側には、イスラエルによるイラン先制攻撃を抑止する思惑があるとみられる。
ホワイトハウスで大量破壊兵器・安全保障・軍備管理担当の調整官を務めるゲーリー・セイモア氏は「核兵器開発にだいたい1年以上かかるとみている。1年というのは長い」と同紙に証言した。
同紙はウラン濃縮作業で問題が生じて作業が遅れているとしたが、詳細は不明とした。イスラエル側は分析に同調しつつ、未発見のウラン濃縮施設が存在する疑念を指摘した。
匿名の米政府当局者は、イランが武器転用可能なウラン濃縮に成功しても国際機関が「数週間以内」に発見し、イランに対して軍事力を行使すべきかどうか判断する時間があると述べた。
報道によると、米政府は、イラン政府内部でただちに核弾頭をつくるべきかどうか、意見対立があるとみている。こうした分析は策定中のイラン核兵器開発に関する国家情報評価(NIE)に盛り込まれる。【8月21日 毎日】
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イランはウラン濃縮を続ける意向を明らかにしています。
****イラン、新たなウラン濃縮施設の11年建設を表明*****
イランが、新たなウラン濃縮施設の建設を来年初頭に開始することを明らかにした。イラン国営テレビのウェブサイトが15日夜、アリ・アクバル・サレヒ原子力庁長官の発言として伝えた。
新たに建設予定のウラン濃縮施設10か所の候補地の選定が完了し、「施設のうちの1か所」の建設を2011年初頭にも開始するという。イランはすでに中部ナタンツの主要核施設でウラン濃縮を行っているほか、テヘラン南西部のフォルドの山間部に2つ目の濃縮施設を建造中。イランの核開発をめぐっては国連が6月9日、4回目となる追加制裁決議を採択したほか、米欧などが独自の追加制裁を発表したばかり。
サレヒ長官は、3つ目となる新たなウラン施設の建設予定地は明らかにしなかったが、空爆の標的にできない場所だと先に述べている。【8月16日 AFP】
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イランのアフマディネジャド大統領もアメリカとの破局は避けたい模様ですが、国内保守派の強硬論もあって、なかなか妥協が難しい情勢です。
イスラエルはシリアの核施設も攻撃した「実績」がありますが、イランの場合はシリアのように穏便にはすまないのではないでしょうか。イランはもし攻撃を受ければ、国家の面子をかけて反撃を行うのでは・・・。そうなれば中東情勢は一気に混乱し、日本にも「油断」の悪夢が再び襲います。

関係国が振り上げたこぶしをなかなかおろせず、チキンレースを続ける先にそうした破局が訪れることのないように、冷静な判断を望みたいものです。

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