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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

きしみが目立つ最近の日米関係 日本側のアメリへの信頼感は過去最低

2025-07-01 23:35:04 | 日本
(【6月29日 読売】)

【いつまでも曖昧な“コウモリ”ではいられない】
下記はアメリカと中国の対立が激化するに伴い、米中両国と“良い関係”を維持することが難しくなった韓国に関するものですが、東アジア、東南アジアなど多くの国に該当する話でしょう。

****いつまでも曖昧な“コウモリ”ではいられない…アメリカか中国か、韓国の「外交安保の座標」はどこに****
「我々も我々なりに(外交安保の座標を)定めるのが望ましい。アメリカが“3時”の方向を期待し、中国が“9時”の方向を要求するなら、韓国は基本的に“1時半”の方向で対応する国であることを認識させるべきである。すでに日本・オーストラリア・インドは“3時”から“12時”の間でそれぞれ異なる方向を取っている。してはならないのは、“3時”と“9時”の間を行ったり来たりすることだ」

李在明(イ・ジェミョン)大統領の「国益中心・実用外交」公約を設計した外交ブレーンであるウィ・ソンラク国家安保室長は、2020年に自ら出版した著書『韓国外交アップグレード提言』の中でこのように強調した。

アメリカ・中国・日本・ロシアなど主要周辺国との国際関係が複雑に絡み合う中で、韓国が独自の外交的座標を定められなければ、四方からの圧力だけを受けることになりかねないという指摘だ。

こうした主張は、韓国外交がこれまで確固たる方向性を持たず、その場しのぎでイベントに対応してきたという問題意識から出ている。代表的には「THAAD配備」や米中貿易戦争のように、主要国間で激しく対立する状況で積極的な対応をためらい、“ブレる”外交スタンスを国際社会に印象づけてしまった、ということだ。

では、現在の李在明大統領の「外交安保の座標」は、時計の何時を指しているのだろうか。
6月22日、李在明大統領がNATO(北大西洋条約機構)首脳会議への最終的な不参加を決定したことで、その座標があいまいになったとの指摘が出ている。NATO加盟32カ国という自由陣営の中核国家に対して、大統領就任初期から不明確なメッセージを発した形になったからだ。

ウィ・ソンラク国家安保室長が大統領の代わりに出席したものの、前政権では3年連続で大統領が出席していた外交的一貫性を考慮すると、加盟国の間に疑問が残る可能性もある。また、世界的に安保の重要性が増すなか、韓国の防衛産業セールス外交の好機を逃したとの惜しむ声もある。

こうした状況の中、イランとイスラエルの戦争によって国際秩序に「力の論理」が強まるほど、強国が自国の外交路線を押し付ける相反する圧力も一層激しくなるとみられる。目下、米韓関係だけでも、関税や防衛費分担といった積み残された課題についての協議や請求が控えている。

一方で、アメリカによるイラン攻撃に影響を受けた北朝鮮・中国・ロシアの結束が強まり、権威主義陣営による圧迫も本格化するとの見通しもある。

李在明大統領のNATO欠席で止まった「外交の一貫性」
6月17日(現地時間)、李大統領がカナダ・カルガリーで開催されたG7(主要7カ国)首脳会議のスケジュールをこなし、帰国した段階では、NATO首脳会議への出席が既定路線と見られていた。

前政権が3年連続で参加してきた会議を欠席すれば、外交的一貫性の観点から国際社会に誤ったメッセージを与える可能性があるからだ。しかも李在明大統領は、G7会議にて日本の石破茂首相をはじめとする9カ国の首脳と会談をこなし、実用外交の初舞台を無難に務めたことで、内外に好印象を与えるチャンスにもなっていた。

特に、G7でドナルド・トランプ米大統領が早期帰国したため、米韓首脳会談が流れたこともあり、NATO首脳会議への出席が外交的に正当化されるという声は大きかった。関税や防衛費など山積する米韓間の外交懸案を動かすためには、トランプ大統領と初対面の会談を行うことが急務だったためだ。大統領室もこうした理由で、NATO首脳会議への出席を積極的に検討していたとされる。

しかし、アメリカがイランの核施設に対する先制攻撃を行い、中東情勢の不確実性が増すと、状況は急変した。
大統領室は「国内外の複数の懸案と中東情勢の不確実性」を理由に不参加を決めたが、トランプ大統領との会談が成果を上げられるか不透明になった点も判断に大きく影響したとみられている。

トランプ大統領自身のNATO出席が不確実だったうえ、出席しても主要議題の中で通商問題の比重が下がれば、実利は乏しいと見なしたのだ。

大統領室の不参加決定をめぐって、政界では意見が分かれた。
野党「国民の力」の外交統一委員らは、「アメリカによるイラン核施設への精密攻撃とそれに伴う中東地域の緊張の高まり、そして李在明大統領のNATO首脳会議不参加決定によって、韓国は重大な外交的試練に直面している」と述べ、「今回の不参加によって、韓国がアメリカ同盟国の中で最も弱い輪と見なされ、むしろ中国やロシアからの強圧外交の対象になるのでは」と懸念を示した。

一方、与党「共に民主党」は「李在明大統領のNATO不参加は、内乱による混乱も収束しないなかで中東戦争まで重なった複合危機を考慮した苦悩の末の決定だった」とし、「韓米同盟の重要性や関税交渉など両国間の懸案の緊急性は理解しているが、NATOに行ったからといってすべてが解決するわけではないのでは」と反論した。

特に韓国・日本・オーストラリア・ニュージーランドという、NATOに招待されたインド太平洋4カ国(IP4)のうち、ニュージーランドの首脳のみが出席したという点から、「特別問題視することではない」との見方も多い。

日本の石破茂首相とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も、李在明大統領と同様に中東情勢の不透明さを考慮して閣僚を代理出席させた。さらに、トランプ大統領がIP4との特別会合に出席しないことを最終決定したため、仮に李大統領が出席していても、トランプ大統領と会談するのは難しかったという見方も現実的だ。

「戦略的曖昧さ」の韓国…迫る“選択の時”
ただし、これらIP4諸国は従来から韓国に比べて明確な外交方向性を持っていたという点で、単純に同列で比較するのは難しいという指摘が多い。

例えば日本は、早くから中国をけん制する日米外交戦略として「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を強く支持し、多国間安保協力体であるクアッド(QUAD)を結成するなど、新冷戦以後の明確な路線を構築してきたとの評価が支配的だ。

経済面では、中国への輸出依存を徐々に減らしつつ、アメリカとの関税問題では実利を優先し、さまざまな交渉カードを提示している。日本の外交座標は“1時半”方向、つまりアメリカ寄りの立場に位置していると言える。

オーストラリアも2021年に米英との三国安保パートナーシップ「AUKUS」を結成し、インド太平洋地域における中国の影響力拡大をけん制する基本的座標を確立している。今年4月には中国がアメリカとの関税戦争への共同対応を求めたが、オーストラリアは対中経済依存の縮小という名分を掲げ、一定の距離を置く姿勢を示した。

これに対して韓国は、政権ごとに外交路線が頻繁に変わってきたため、戦略的な曖昧さがより大きいという評価を受けている。

特に米ホワイトハウスは、李在明大統領当選直後、「米韓同盟は鉄壁のように維持される」としながらも、「中国の干渉を懸念する」と述べた。これは李在明政権が実用外交を掲げる中で提示してきた「安米経中(安保はアメリカ、経済は中国)」や「両手外交」がやや不明瞭であることを間接的に指摘した発言と解釈されている。

こうした点は、ウィ・ソンラク国家安保室長が長年懸念を表明してきた部分でもある。
彼は著書で「韓国には、周辺主要国間の対立構図の中で、韓国が進むべき道を積極的に模索しようという意識が乏しい。むしろそれを避けて現状に安住しようとする傾向が強い」とし、「米中間で困難が生じると、曖昧にふるまった。選択が避けられなくなると、その時その時の圧力の度合いに応じて便宜的に対応することが多かった」と記している。

NATO首脳会議に大統領の代理で出席したウィ・ソンラク室長自身が、その「場当たり的対応」と「戦略的曖昧さ」を最も警戒していたわけだ。

韓国の外交安保の時計において、「避けられない選択の時」は遠くないと見られる。
6月25日(現地時間)、NATO各国がトランプ大統領の圧力により、2035年までに防衛費をGDPの5%水準にまで引き上げることで合意したことで、次なる要求の矛先がアジアに向けられる可能性が高まっている。今年の韓国の防衛費はGDP比2.32%(約61兆ウォン=約6兆1000億円)水準であり、NATO並みの5%を要求された場合、年間約130兆ウォン(約13兆円)規模の国防支出が必要となる。

ジョセフ・ユン駐韓米大使代行は6月24日のあるセミナーで、防衛費分担特別協定(SMA)に関連して「建設費、人件費、軍需費の3部門から成っているが、他の費用もどのように分担するか議論する必要がある」と述べた。「他の費用」が何を意味するかは明らかにされなかったが、アメリカの戦略兵器展開費用なども韓国が分担する可能性があるという観測が出ている。

また中国・ロシアなど権威主義陣営の圧力も、一層激しくなるとの見方がある。アメリカによるイラン核施設への空爆は、アメリカがいつでも地域紛争に介入しうるという警告のメッセージとも解釈されており、中国・ロシア・北朝鮮にとっては脅威として受け止められるだろう。

そしてその余波は、地政学的要衝である朝鮮半島にも直接的に及ぶ可能性がある。
実際、習近平中国国家主席は7月に開催されるBRICS首脳会議に、2009年の発足以来、初めて欠席を決定した。これは最近、あからさまに親米路線を取っているインドなどに対する牽制メッセージだという見方も出ている。

中国・北朝鮮という微妙な関係国と同時に向き合わなければならない李在明政権にとって、外交的座標の設定にかかる負担はますます大きくなっている。

イスラエル・ライヒマン大学の中国・中東専門家ゲダリヤ・アフターマンは、ワシントン・ポストに、「トランプ大統領が実際に武力を用いてイランに介入したことは、アメリカが中国の台湾侵攻に対しても軍事的に対応する可能性がある、という懸念を植え付けたのではないか」と述べた。【6月28日 サーチコリア】
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【「避けられない選択の時」は遠くないのは日本も韓国と同じ 軋みが目立つ最近の日米関係】
米中対立のはざまで、どちらに組するのか迷うアジア諸国は多く、韓国だけの話ではありませんし、これまでアメリカとの強固な同盟関係を大前提とされてきた日本についても、トランプ政権になってからはに日米関係の軋みが目立ちます。

上記記事の「韓国」「李在明大統領」を「日本」「石破首相」に読み替えても、そのまま通用するものが多いようにも思えます。

****米国「国防費GDP比5%に引き上げを」 韓国含むアジア同盟国に要求***
米国防総省のパーネル報道官は19日(米東部時間)、韓国を含むアジアの同盟国も国内総生産(GDP)の5%を目安とする国防費を支出しなければならないとする新たな基準を提示した。(中略)

米国は現在、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対しGDPの5%を国防費として支出するよう求める新たなガイドラインを設けているが、これを韓国や日本などアジアの同盟国にも一律に適用する立場を示したことになる。

(中略)パーネル氏は「中国の莫大な軍事力増強と北朝鮮の持続的な核・ミサイル開発を考慮すると、アジア太平洋の同盟国が欧州の防衛費の支出ペース・水準に合わせるため迅速に動くのは常識」と強調。米国が新たに要求する国防支出の増額が「アジア太平洋の同盟国の安全保障利益に符合する」と主張した。【6月20日 聯合ニュース】
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****【日米亀裂】石破首相、安全保障会合を電撃キャンセル!米の防衛費「3.5%要求」に激怒か****
日本が米国と予定していた外務・防衛閣僚会合「2プラス2」を突如キャンセルしたと、フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が21日(現地時間)報じた。日本は通常、米国の要求に忠実に従うことで知られている。米国が日本に国内総生産(GDP)の3.5%まで防衛費を増額するよう求めたことで、日本国内の反発が高まり、会合がキャンセルされた。

当初、米国はGDPの3%を防衛費として支出するよう要求していたが、今回これを3.5%に引き上げた。米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国にはGDPの5%を防衛費として支出するよう求めており、韓国にも最近5%の支出を迫り始めた。

FT紙は情報筋の話として、中谷元防衛相と岩屋毅外相が7月1日に米ワシントンでマルコ・ルビオ米国務長官、ピート・ヘグセス米国防長官と安全保障会合を開催する予定だった日程をキャンセルしたと伝えた。いわゆる「2プラス2」会合のキャンセルを米国側に通知したとされている。

FT紙によると、米国防総省ナンバー3のジョン・ルード次官(政策担当)が最近、日本にGDPの3%から3.5%への防衛費支出の増額を要求し、日本政府の怒りを買ったという。日本はすでに、ドナルド・トランプ米大統領が4月から日本に相互関税を課すなど、貿易交渉で強硬姿勢を取ったことに不満を抱いていた。

ある政府の高官は、7月1日の「2プラス2」会合のキャンセルは、来月20日に予定される参議院選挙とも関連があると述べた。与党自民党の苦戦が予想される中、有権者に屈辱的な姿を見せかねないことも、会合をキャンセルした背景の一つだという。

日本専門家で元米政府高官のクリストファー・ジョンストン氏は、日本が「2プラス2」会合を「非常に重視していた」と指摘し、これは「日米同盟の強固さを示す政治的に貴重な機会」だからだと説明した。ジョンストン氏は、しかし今回の会合キャンセルを選挙後に延期したことは、日本側が日米関係の現状と展望に深刻な不満を抱いていることを示唆していると分析した。【6月23日 望月博樹氏 江南タイムズ】
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****同盟と「法の支配」の板挟みに イラン攻撃巡り一時苦慮―日本政府****
米国によるイラン攻撃を巡り、日本政府は一時ジレンマに陥った。数日前にイランを攻撃したイスラエルを日本政府は「強く非難」。米国にも強い姿勢で臨まなければ「ダブルスタンダード」の指摘を受ける恐れの一方、批判すれば同盟関係を損なう懸念があった。

今回は米国に一定の理解を示す見解をまとめ、何とか乗り切った日本政府だが、トランプ米政権を相手に今後も対応に苦慮する場面が増えそうだ。

石破首相「早期沈静化」訴え 米攻撃の賛否示さず
国連憲章は武力攻撃を受けた国が自衛権を行使するケースなどを除いて、武力行使を原則禁じている。イスラエルが13日にイランの核施設や軍事施設を「先制攻撃」したことを受け、日本政府は「法の支配」を重視する立場から「(イスラエルの)行動を強く非難する」と直ちに表明した。

日本政府の立場は先進7カ国(G7)の他のメンバー国と比べても厳しいものだった。中国などの威圧的な動きをかねて「力による一方的な現状変更の試み」と批判してきたことも背景にあった。

しかし、米国が22日にイラン攻撃に踏み切ると、日本政府は対応に窮することになった。米国は「集団的自衛権の行使」と主張したが、「国際法的に難しい論点がある」(外務省関係者)のは否めなかった。さりとて、国際法上の根拠に乏しいと疑問を公に呈すれば、トランプ大統領を遠ざけ、関係悪化を招く可能性もあった。

23日になってようやくひねり出したのが「イランの核兵器保有を阻止する決意を示したものと承知する」(外相談話)とのライン。支持も批判もせず、理解を示す内容だった。外務省幹部は「同盟国の米国に『国際法上の懸念がある』などとは到底言えない」と苦しさをにじませた。

石破茂首相は23日の記者会見で、攻撃の法的評価を問われ、「国際法の観点から議論があることは承知している」としつつ「わが国は直接の当事者ではない。確定的な評価は困難だ」と言葉を濁した。

トランプ氏はデンマーク領グリーンランドの領有に意欲を見せるなど、国際法を重視しているとは言い難く、日本政府は今後も「法の支配」とのはざまで頭を悩ませることになりそうだ。【6月26日 時事】
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一方で、関税交渉は自動車を主戦場に日米の利害が相反し、トランプ大統領は日本にとって農家保護から「敏感」な政治問題である米輸入にも不満を強めています。

****トランプ氏、日本の自動車貿易「不公平」=関税25%、通告を示唆―対米交渉の打開に暗雲***
トランプ米大統領は29日放送された米FOXニュースのインタビューで、日本との自動車貿易に関し「不公平だ」と述べ、改めて不満をあらわにした。

日本に対し「自動車には25%の関税がかかるという書簡を送ることができる」と明言した。日本は米政権が課している日本車への25%の追加関税見直しを求めて交渉を続けているが、先行きに暗雲が垂れ込めている。

トランプ氏は「日本は大量の原油を受け入れることができる。他にも多くのものを買える」と主張。対日貿易赤字の削減へ、米国製品の輸入拡大を要求した。

さらに、米国車の対日輸出が少ない一方、米国は日本車を多く輸入していると指摘。「大きな(対日貿易)赤字を抱えている。そのことを日本に説明し、彼らは理解している」と語った。

トランプ氏は各国に関税率を通知する書簡を送ると明らかにしていた。インタビューでは「わたしは書簡を送る。それで貿易交渉は終わりだ」と協議打ち切りを示唆。「(各国とは)会う必要がない」と言い切った。【6月30日 時事】
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****トランプ大統領「われわれのコメ受け取られない」 日本の輸入に不満「手紙を送るだけ」***
トランプ米大統領は6月30日、自身の交流サイト(SNS)への投稿で「日本はわれわれのコメを受け取らない。深刻なコメ不足なのにだ」と日本のコメ輸入を巡って不満を表明した。29日に放送された米メディアで、日本の自動車貿易が不公平だと答えたばかりで、関税交渉が本格化している日本に揺さぶりをかける狙いとみられる。

トランプ氏は投稿で日本に対し「手紙を送るだけだ」とも書き込んだ。詳細には触れていないが、自動車に関しては25%の追加関税がかかるという内容の手紙を送るとしており、日本側が重視する自動車分野で譲歩しない姿勢を改めて示した可能性がある。

トランプ氏はこれまでも「日本はコメを売ってほしくないので700%の関税を課している」との持論を展開し、日本の市場が閉鎖的だと繰り返し批判している。【7月1日 産経】
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米鉄鋼大手USスチールと日本製鉄のパートナーシップ承認でも紆余曲折があったことも周知のところ。
そうした最近の日米間の軋み、さらに言えば、トランプ大統領の政治姿勢への日本側の不信感もあって・・・・

****米国「信頼する」22%…読売世論調査****
読売新聞社が27~29日に実施した全国世論調査で、米国を「信頼している」との回答は、「大いに」の3%と「多少は」の19%を合わせて計22%だった。「信頼している」は、トランプ氏が大統領選で返り咲きを果たした直後に実施した昨年11月の日米共同世論調査の34%から12ポイント減少した。「信頼していない」は「あまり」46%と「全く」22%の計68%(昨年日米調査55%)。

同じ質問をした日米調査で、比較できる2000年以降「信頼している」が最低だったのは、18年の第1次トランプ政権下の30%。当時もトランプ氏が自動車など対日貿易赤字の是正を強く求めていた。

今回それも下回ったのは、トランプ政権の高関税政策だけではなく、中東情勢やロシアのウクライナ侵略に対するトランプ氏の言動なども影響しているとみられる。【6月29日 読売】
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日中関係も問題は多い状況ですが、上記のような国際状況を受けて、中国側には一方的に日本を刺激しないようにとの配慮も垣間見えます。中国の税関総署は6月29日、東京電力福島第一原発の処理水放出を機に禁止していた日本産水産物の輸入について、「一部を再開する」と発表しました。
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トランプ政権、日本のコメ関税を批判 不透明なコメ高騰の背景 アメリカでは「卵」が高騰

2025-03-14 00:55:25 | 日本

(【3月12日Bloomberg】)

【トランプ政権 日本のコメ関税を批判 コメ価格高騰の折、関税なしなら安価なカリフォルニア米流入も】
個人的には賛成しがたい政策を乱発しているアメリカ・トランプ政権ですが、ひとつだけ、感情的には「いいんじゃない。やれば」って思ってしまうのが(食糧安保の問題に立ち入ればいろいろな話があるのでしょうが)日本のコメ輸入に関する関税撤廃を求めるもの。

*****「日本は700%の関税課している」ホワイトハウス報道官が日本のコメ関税を批判 撤廃ならカリフォルニア産カルローズ米5kgが1295円に…農家に深刻打撃か****
米・ホワイトハウスで11日、報道官が日本はアメリカに不利な貿易を行っているとして、コメへの関税を批判した。

実際の関税率は約200%で、撤廃されればアメリカ産米が安くなるが、消費者の選択変更や業務用での使用拡大など予測され、日本の農家への影響が懸念される。

ホワイトハウス報道官がアメリカ産米への関税率に言及
11日、アメリカ・ホワイトハウスの報道官が会見で、日本の食卓に関わる注目の発言をした。狙われたのは、日本が輸入米に掛けている関税だ。

12日のテーマは、「関税戦争でカリフォルニア米が安く?ソレってどうなの?」だ。
アメリカのレビット報道官はワシントンで11日、EU(ヨーロッパ連合)、インド、日本に対し、アメリカに不利な貿易を行っていると発言した。

日本がアメリカ産のコメに課している関税について、このように批判した。
レビット報道官:日本はコメに700%の関税を課しているのを見てください。
そのうえで、トランプ大統領が進める関税戦争の対象になる可能性を示唆した。

実際に日本は700%も関税を掛けているのか。農水省によれば、2001年ごろのWTO(世界貿易機関)の貿易自由化の交渉で、当時のコメの国際価格に基づき、税率に換算すると778%だという。

しかし、政策研究大学院大学の川崎研一教授は、現在の実行関税率は204.3%だと試算している。日本が義務として輸入している年間約77万トンのコメを除き、国産のコメの価格に影響を与えないよう、1kgあたり341円の関税を掛けている。

では、もしも日本がアメリカ産のコメに掛けている関税がなくなれば、アメリカのコメはどのくらい安くなるのだろうか。

例えば、5kgで3000円のカリフォルニア産のカルローズ米の場合、1705円の関税がかかっている。つまり関税がなければ、計算上は3000円から1705円を引いた、1295円で売られることになるはずだ。

コメの価格が高騰している中でこの値段は魅力的だが、カルローズ米がスーパーで売っていたら買うか、街の人に聞いた。(中略)

コメの関税撤廃なら国産農家へ深刻な打撃
(中略)注目が集まるカルローズ米だが、国産のコメと比較して少し細長く、食感はパラパラとしているものの、味はほぼ同じといわれる。

実際、カルローズ米の味はどうなのか、五つ星お米マイスターの澁谷梨絵さんに聞いた。
五つ星お米マイスター・澁谷梨絵さん: 日本のコメに比べるとちょっと粒が大きめ。味わいはあっさりしている感じ。日本のコメはすごくもちもち、しっかり粘り気のある食感だが、(カルローズ米は)粘り気が少なめであっさり。さらっと食べられるようなコメ。カルローズ米は牛丼やカレーなど汁気のあるものや、チャーハンやピラフなどにも合うといわれている。

一方で、関税が撤廃されると、日本の農家への打撃は大きいと澁谷さんは言う。
五つ星お米マイスター・澁谷梨絵さん: 農家を守るためにも、国産のコメを食べてほしいのが前提だが、業務用では(カルローズ米が)より活用されていく可能性はある。景気も厳しい中で、「カルローズ食べられるしいいかな」と思って食べることも発生してくるので、(日本の農家にとって)かなり深刻だと思う。

今後、コメの関税という聖域は撤廃されるのか、注目が集まっている。(「イット!」3月12日放送より)【3月13日 FNNプライムオンライン】
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“日本はこれまでの国際交渉の結果、年間およそ77万トンを「ミニマムアクセス米」として政府が関税をかけずに義務的に輸入しています。

この枠組みで日本は2023年度、アメリカ、タイ、オーストラリア、中国などからコメを輸入していて、このうちアメリカからは最も多い34万トン余りを輸入しました。ミニマムアクセスの枠で輸入したコメは日本政府が管理し、多くは加工用や家畜のエサ、海外への食料援助などとして使われています。

一方、この枠外で輸入する場合には国産のコメの価格に影響を与えないよう、1キロあたり341円の高い関税をかけています。”【3月12日 NHK】

街の人の意見はいろいろあるようですが、私は味がどうこうと言うタイプではないので、そんなにまずくないのであれば躊躇なく安いアメリカ輸入米を購入します。(カリフォルニア米は以前から味の点で日本のコメに遜色ないと高い評価があります)

以前は安いコメなら5kgで2000以下で変えたものが、今はそうした格安米は消え、5kgで4000円近く。商品棚の前で立ち尽くしてしまいます。

【よくわからないコメ高騰の背景 備蓄米放出も値下がりには至らない? はっきりしているのは政府の無策】
どうしてこんな状態になっているのか。去年段階では新米が出回れば下がると政府は説明し、備蓄米放出を拒否していましたが、新米が出ても上がる一方。

ようやく備蓄米放出に踏み切ったものの、その効果は期待できないとも言われています。

****「消えたコメ」の謎は解けず、価格高騰が消費者や政策翻弄-備蓄米放出****
食卓の主役であるコメの値上がりが止まらない。供給不足の原因が不明のまま、コメ価格高騰の影響は家計だけでなく日本銀行の金融政策にも波及している。政府は今週、コメ需給逼迫(ひっぱく)の緩和に向け、備蓄米の放出を開始した。
  
コメ価格は、昨年夏ごろから上昇が続いている。秋の収穫量は前年を上回ったため、コメ不足はすぐに緩和されるとみられていたが、今年に入って価格はさらに高騰。政府は備蓄米の放出を余儀なくされ、10日から入札を実施した。3月下旬にもスーパーなどの店頭で販売される見通しだ。不作や災害などの緊急時以外の流通円滑化目的での放出は初めて。

日本のコメ流通の仕組みは複雑で、生産者は一般的に「集荷業者」と呼ばれる仲介業者にコメを渡し、その業者が卸売業者に割り当て、卸売業者が小売店やレストランに販売している。2024年に収穫されたコメは前年比で約18万トン増加したにもかかわらず、集荷業者が集めたコメは今年1月末時点で同23万トン少なかった。農林水産省は、この「消えたコメ」の所在を明確には説明できていない。

「(コメは)間違いなくある」。江藤拓農林水産相は2月21日の記者会見でそう述べ、「どこかに隠れてしまって足りないということはあるが、総量として足りないという認識はない」との見解を示した。

価格高騰は、昨年8月に政府が南海トラフ地震発生の可能性について臨時情報を発表してから加速した。23年産のコメが高温による不作で既に供給が薄い中でパニック買いが起こり、臨時情報の呼びかけが終了した後も価格は下がらなかった。

コメの店頭価格は、2月24日の週に5キログラム当たり平均3952円と、前年比で95%上昇した。価格高騰を受け、コンビニエンスストア大手、セブン-イレブン・ジャパンも1月におにぎりや弁当など一部米飯商品を値上げした。

こうした物価の高止まりが続けば、2%の「物価安定の目標」を掲げる日銀に追加利上げを促す要因になる。日銀は1月の金融政策決定会合後に公表した展望リポートで、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)について、前回の見通しと比べて24年度と25年度の見通しがコメ価格上昇などの影響で上振れていると説明している。

「家庭ではコメの購入頻度は高いため、日銀はコメ価格の上昇を無視できない」と、SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人上級研究員は分析する。

消費者の不満
コメの流通は以前、集荷業者を中心に規制されていたが、04年の食糧法改正で計画流通制度が廃止され、流通と販売が原則自由化された。最近SNS上では、農作地帯を車で駆け巡り、直接コメを買い占めているグループについての情報などが飛び交っている。

「誰かが悪意を持って暗躍しているわけではない」と滋賀県のコメ農家、家倉敬和氏は言う。「投機的な狙いでコメをストックしている中間業者もいるかもしれないが、それを誰も責められない。ビジネスとして当然のことだ」と述べた。

物価高騰に対する消費者の不満の高まりは、自由民主党が過半数を割り込んだ24年10月の衆議院選挙にも影響を及ぼした可能性がある。政府は今年2月、コメ価格の安定に向け備蓄米の放出を決定した。

しかし、消費者の不満は収まらない。東京都内のあるスーパーでは、コメの棚は依然として半分も埋まっておらず、「1家族1袋まで」と書かれたはり紙が貼り付けられていた。
「最近コメは買っていない、高過ぎる」。買い物に訪れた尾関豊さんは、食パンをエコバッグに詰めながら「高騰は政権のせいだ」と話した。コメが店頭に並んだら購入を検討するという。

価格競争
20トン以上を取り扱う集荷業者は届け出制で、コメの移動は政府に報告しなければならない。最も規模が大きく、市場流通量の約半分を占めるのが農業協同組合(JA)。その他にも数百社の仲介業者が存在するが、多くは長年にわたって同じ取引関係を持つ小規模な地元企業だ。

栃木県で農業法人の代表を務める海老原秀正氏によると、集荷業者間の競争は激化している。小規模な業者は、通常JAよりも300-500円高い価格で、玄米60キロを買い取っていた。しかし上乗せ額は今、3000-4000円にまで上昇しているという。

それだけコメが逼迫していて、仕入れ値が高くても売り先があるのだろうと海老原氏は言う。今回の高騰を受け、農家による自主流通がより盛んになると予想。「その方が良い競争が生まれる」との見方を示す。

政府が発表する収穫量に疑念を抱く農家や集荷業者もいる。天候が温暖であれば理論上の収穫量は増えるが、昨年の夏は記録的な猛暑で、多くの生産地で収穫量が減少した可能性が高いとの見方もある。

岡山県でコメ農家を営む高田正人氏は、「誰がコメを隠しているか分からないが、作況指数が実際はもっと低いのではないかと思っている」とし、「高温障害の影響は必ず受けているだろう」と述べた。

進む農業離れ
約100万トンを保有している政府は、「消えた」とされるコメの不足分を補うため、計21万トンの備蓄米を放出する計画だ。

農業市場研究を専門とする東北大学の冬木勝仁教授は、たとえ追加供給があっても価格は下がらない可能性があると指摘する。完全価格指定で小売りや外食に売るべきだったとし、集荷業者を対象とした入札の実施について、政府の方針が反映されやすいところに放出するのだろうと分析する。

コメは日本人の主食であるにもかかわらず、稲作は衰退の一途をたどっている。農水省によると、日本のコメ農家の平均年齢は約71歳で、個人農家の数は15年から5年間で25%減少した。コメの収穫量自体も減少傾向にある。

酒造大手、白鶴酒造の水谷仁生産本部長は、コメ農家の経営は過酷だと指摘。時給は低く、休日も働く農家もあると聞いたことがあると言う。「日本の農業は高齢化が進み、農業離れが進んでいる」とし、「農業をやめる人が今後さらに増えていくと供給が追い付かなくなり、長期的に値上げ傾向は続くだろう」と述べた。【3月12日Bloomberg】
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****米の価格を釣り上げているのは一体誰なのか…政府のコメ政策はもはや破綻!経済誌元編集長が指摘する備蓄米放出の乏しい効果****
備蓄米がついに放出された。スーパーによっては税込みで5キロ5000円を超すような状況にもなっている。日本人の食事に欠かせない米の大騒動になぜ政府はここまで放置したのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説する。

備蓄米放出したら本当に米の価格は下がるのか
日経新聞電子版(3月7日)が<コメ価格、備蓄米放出で「先高観後退」 農家・卸に業界調査>との見出しで、「備蓄米の放出で値上がりは止まる」との見立てを紹介しているが、発表された資料(米取引関係者の判断に関する調査結果、令和7年2月分。公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が発表)を確認する限り、筆者にはそのようには思えない。

実際に、この記事のコメントととして、大泉一貫・宮城大学名誉教授が<結論は、政府の備蓄米放出で米価が下がることはない><業界の見通し通りになれば、政府のコメ政策は一歩づつ破綻に近づいていっているということになる>と指摘していて、筆者もこの点について、完全に同意するものである。いや、筆者はさらに「政府のコメ政策はもはや破綻している」と悲観的な評価をしている。以下、説明していこう。

現在、米の価格が上がり続けている。政府は「備蓄米を放出すれば価格は下がる」と繰り返し説明しているが、それが本当に効果を持つのか、実態データを見ると疑問が残る。

米穀安定供給確保支援機構(米穀機構)が発表した最新のデータでは、「コメの価格がこれ以上上がらないかもしれない」という見方が増えたが、「価格が下がる」という明確な兆しは見られていない。価格の上昇が止まるかもしれない、という程度の変化であり、「政府の施策で価格が下がる」という見方はデータ上で確認できない。

米の値段が決まる大きな理由のひとつに、「どれくらいの人が米を食べるか(需要)」と「どれくらいの米が市場に出回るか(供給)」のバランスがある。このバランスが変わると、米の価格も上がったり下がったりする。米穀安定供給確保支援機構(米穀機構)は、このバランスを数値で表す「需給DI」という指標を出している。これは、米の売り手や関係者に「今、米の流れがスムーズかどうか」を聞いて作られたものだ。

最新の調査では、現在の需給DIは89で、前の月より2ポイント上がった。(中略)
この数字が高いほど、「市場に出回る米が少ない=米が足りていない」と考える人が多いことを意味する。つまり、今は米の供給が少なくなり、売り手が「米が足りない状態が続いている」と感じているということだ。

次の3か月の見通しを示す需給DIは72で、前の月から10ポイント下がった。この数字だけ見ると、「米が増えて価格が下がる」と思うかもしれないが、そういう意味ではない。この場合の「72」は、「これ以上米が足りなくなることはないかもしれない」という程度の意味であり、「米が一気に増えて価格が下がる」という話ではない。

政府は「備蓄米を放出すれば、米が市場に増えて流れがスムーズになり、価格が下がる」と説明している。しかし、実際のデータを見ると、価格DIや需給DIの数値が大きく下がる気配はない。市場の関係者が「今後、米の値段はどうなるか」と考えているかを示すデータがあるのに、「価格が下がる」との明確な兆候は見られない。

これはつまり、政府がやっている備蓄米の放出が、米の値段を下げるほどの効果を持っていないということを示している。(中略)
農業の自由化に後ろ向きな自民・農水省
筆者は、今、台湾の食料事情についての取材を進めているところであるが、はっきり言って、日本食チェーンで食べる米は、日本産のお米より美味しくない。早く日本産米をアジアを中心とする世界へ運ぶべきだし、農水省と自民党はその手伝いをするべきなのである。

世界中で、特に台湾で大きく広がっていく日本食において、日本産米が輸出されれば確実に高い値段がつくのは間違いない。ちなみに、台湾と日本を比較すると、今や台湾の方が物価が高いと感じるときがある。すなわち、お米は多少高くても絶対売れる。

それにもかかわらず、農水省と自民党は、農業の自由化に後ろ向きで、何も考えずに、減反政策を続け、輸入もさせないが、輸出もさせないという鎖国政策をずっと続けている。

とにかく自由にお米を農家に多めに作らせておけば、平時には輸出できて農家の収入が増え、有事には国内向けに回せば、安定供給につながるのである。

答えがわかっていてできないのは、単に何も考えていないからだ。昨日やっていたことを今日やり、明日もやる。昨日やっていないことは今日やらない。明日もやらない。(中略)

もはや日本のお米政策は崩壊しているのである。農水省と自民党は解体的出直しをしなくては、日本の大事な稲作文化と日本人の食事が崩壊してしまうのだ。さすがに危機感を持つべきだ。【3月13日 みんかぶマガジン】
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安全保障の観点から国内のコメ作りを守って自給率を維持しないといけない・・・といった議論もあろうかとは思いますが、それを言うなら消費者に負担を強いる今の高値状態を何とかしてから言えよ・・・という感も。

【高値でコメ需要のさらなる減少も】
今回の高値を喜んでいる生産者サイドも少なくないと思いますが、こうした状況が続けばコメに対する需要も更に減少し、コメ作りの環境はますます苦しくなるようにも思えます。

****コメ価格高騰で消費変化 イオントップバリュ 土谷美津子社長*****
足元では「トップバリュ」の販売が非常に好調だ。年明けは過去最高レベルの伸びを見せており、先行き不透明な経済情勢も反映したものと捉えている。加えて、コメの価格高騰で消費に大きな変化が起こっている。

「トップバリュ」では総菜パンの売れ行きが絶好調。ウインナーパンや焼そばロールなどで、炭水化物をコメ以外の食品から摂る意識の高まりを感じる。冷凍のパスタやうどんもよく売れている。(後略)【3月12日 食品新聞】
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【アメリカでは卵の高騰止まらず 1個150円】
一方、アメリカで価格が高騰しているのが「卵」

“元々、インフレ基調の中で「鳥インフルエンザ」が発生。大量の殺処分で卵の供給量が大幅に減ったため、この1年で価格はおよそ2倍に跳ね上がりました。”【3月13日 TBS NEWS DIG】ということで、“通常の箱売りは12個で11ドル(およそ1600円)。「高すぎて買えない」という客の要望に応え、“小分け販売”も始めました。3個で3ドル、1個当たりの価格はおよそ150円です。”【同上】とも。

食い物の恨みは政権を揺るがします。
大統領選挙期間中「自分ならすぐに食料品の価格を下げられる」とアピールしていたトランプ大統領は「バイデンは『卵』の価格を制御不能にした。コントロール不能な状態だ」と前政権に責任を負わす構えです。
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日本の1人あたり名目GDP「一人負け」状態 その割には比較的穏やかな社会?

2024-12-26 22:56:46 | 日本

(【12月23日 日経】)

【1人あたり名目GDPは「日本の一人負け」状態】
「失われた20年、更に30年」・・・今更の話ではありますが、冒頭グラフ、実に劇的な変化を示しています。
わずか十数年前まで、日本の1人あたり名目国内総生産(GDP)はアメリカ・ドイツと同水準でした。それが今ではアメリカの約4割、ドイツの6割程度に。一方で2倍ほどの差があった韓国にも抜かれ・・・24年に台湾にも抜かれる見通しだとか。まさに「日本の一人負け」状態。

「ジャパン アズ ナンバーワン」なんて言葉が飛び交った時代を知る者としては感慨深いものがあります。
もちろん、このようなランキング、1人あたりGDPといった経済指標にどれほどの意味があるのか・・・という考えもあるでしょう。

ただ、時代の変化についていけていない日本の労働生産性の低さ、更に進む社会の高齢化を考えると、日本の将来は厳しいものがあるようにも思えます。

****1人あたり名目GDPで日本22位、韓国に逆転許す 22年****
内閣府が23日に発表した国民経済計算の年次推計によると、豊かさの目安となる日本の2023年の1人あたり名目国内総生産(GDP)は3万3849ドルだった。

韓国に抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位に後退した。円安に加え、高齢化による成長力低下や労働生産性の低さが足かせとなっている。

22年の3万4112ドルから減った。韓国がGDPを遡及改定した影響で数値が上振れし、22年、23年と日本を上回った。韓国の23年の数値は3万5563ドルだった。韓国と日本の1人あたり名目GDPが逆転するのは比較可能な1980年以降で初めて。

OECD加盟国38カ国中で比較しても22、23年は22位と、1980年以降最も低い順位だった。主要7カ国(G7)ではイタリアの3万9003ドルを下回り、2年連続で最下位だった。

名目GDPの総額は23年に4兆2137億ドル。世界のGDPに占める比率は4%で、25.9%の米国、16.8%の中国、4.3%のドイツに続いた。ドイツの23年の名目GDP総額は4兆5257億ドルで、初めて日本と逆転した。

名目GDPはモノやサービスの価格変動を含めた指標で、国・地域の経済活動の大きさを示す。日本経済の実力は円ベースのGDPで示す一方、ドル建ての国際比較は各国の「国力」の指標となる。

主な要因は為替だ。内閣府は今回の試算で、為替レートの前提を1ドル=140.5円に置いた。24年も1〜11月平均では1ドル=151.3円となっており、為替によるGDP押し下げはさらに拡大する可能性が高い。日本経済研究センターの試算では、日本は1人あたり名目GDPで24年に台湾にも抜かれる見通しだ。

円安に加えて、労働生産性の低さを指摘する向きもある。日本生産性本部によると、23年の日本の時間あたり労働生産性は56.8ドルで、OECD加盟国中29位と下位だ。「本質的な問題は日本の労働生産性が韓台に大きく後れを取っていることだ」(日経センター)といい、デジタルトランスフォーメーション(DX)やリスキリング推進が必要だとの声がある。

日本はすでに世帯の半数以上が65歳以上がいる世帯で、賃上げなど企業側の努力だけでは成長に限界があるとの声もある。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「今後5年間でバブル世代が一斉に60歳以上になる。シニアの労働供給を絞る現在の制度設計を変えなくては、家計所得向上に向けた根本的な解決にはならない」と指摘する。【12月23日 日経】
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****日本経済の栄光は過去? 1人当たり名目GDPで台湾にも抜かれる可能性、その背景とは―華字メディア****
華字メディアの日本華僑報は23日、「日本人の1人当たり名目国内総生産(GDP)が台湾に抜かれるかもしれない背景」と題する記事を掲載した。

記事は、「最近、日本経済研究センターが発表した予測が、静かな湖面に投じられた1粒の石のように波紋を広げた」とし、同センターが2024年に日本の1人当たり名目GDPが台湾に抜かれる可能性があると試算したことに言及。
「これは経済地図の描き換えというだけでなく、世界経済のトレンドに対する深い反省を促している」と論じた。

その上で、「日本はかつてアジアのリーダーとして、その卓越した技術、強力な製造力、深い文化的背景で、世界の舞台で輝いていた。しかし、時が流れ、2022年には韓国がひっそりと1人当たり名目GDPで日本を超え新たな高みに達した。

人々はこれを一時的なものだろうと自己を慰める感情を抱いたかもしれないが、24年には台湾が日本を超えると予想される中で、日本経済の栄光は本当に過去のものになったのかという疑問が浮かび上がる」とした。

そして、「円安は諸刃の剣のように、貿易においては一時的に輸出競争力を高める一方、国内経済の購買力を弱めている。そして、ドル高はまるで抗いがたい潮流のように、世界の通貨構造の再編を促している。この為替の争いの中で日本は最適なバランスを見つけることができなかったようだ。円は24年初から11月まで約10%下落し、1人当たりGDPを引き下げる重要な要素となった」と論じた。

また、さらに深い原因として「日本経済の長期的な低成長」を挙げ、「自動車の認証不正問題と物価上昇という二重の圧力は、まるで二つの大きな山のように、すでに疲弊した日本経済にさらなる追い打ちをかけた」と指摘。

「24年の日本の実質成長率はマイナスが予想され、それはアジア太平洋地域の18カ国・地域の中で特に際立っており、まるで時代に取り残され、隅っこにいるかのようだ」と評した。

記事は、「経済の盛衰は決して単独で存在する現象ではなく、その背後には産業構造、イノベーション能力、労働生産性など複数の要素が隠されている」と言及。

「日本経済研究センターの試算は、20年に日本の労働生産性が韓国や台湾に大きく遅れていたという残酷な事実を明らかにしている。これは単なる数字の比較であるだけでなく、発展モデル、政策の方向性と社会活力の直接的な反映でもある。デジタルトランスフォーメーションとスキルリストラの流れの中で、日本がチャンスをつかみ、自己救済を実現できるかどうかは、差し迫った課題となっている」と指摘した。

そして、「日本の1人当たり名目GDPが台湾に抜かれる可能性は、単なる二つの経済圏間の競争にとどまらず、世界経済の構造変化に対する警鐘でもある。この変動の多い時代において、誰もが永遠に頂点に立ち続けることはできない。絶え間ない革新と改革を恐れずに行うことだけが、この激しい競争の中で不敗の地位を築くことができる唯一の方法だ」とし、「日本にとってこれは自らを再評価し、新たな成長点を見つけるきっかけになるかもしれない。そして、いかにしてグローバル化の大波の中でチャンスをとらえ、挑戦し、自らの経済の物語を描くか。これはすべての国に共通の課題である」と結んだ。【12月24日 レコードチャイナ】
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【日本は何を間違えたのか?】
当然の疑問として、「日本は何を間違えたのか?」「この状況から抜け出すのはどうすればいいのか?」という話になりますが(第1の疑問)、それについてはここ10年、20年、山ほどの議論がなされているところで、かつ、何も変化していないところでもあります。

ひとつの考え方としては、昨日ブログでも取り上げた、かつて日本同様の経済衰退を経験しているアルゼンチンのミレイ大統領のように、衰退の原因は政府の規制にあるとして、自由主義的改革を断行するという考えもあるでしょう。その妥当性は別にして。

全く別の視点もあるでしょう。山ほどある議論のなかで、(その妥当性を判断できる見識は私にはありませんので)ここ数日目にしたものということだけで選べば、以下のような指摘も。

****日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落*****
<海外生産への転換や現地法人の買収を進めて国内の産業が空洞化すれば、日本のGDPが損なわれることは分かっていた>

(中略)このようにGDPが低迷しているのには、様々な原因がありますが、一番の要因は財界、つまり日本の主要な企業が余りにも国内を軽視していることが挙げられます。例えば、最近大きな話題となっている経済ニュースに関して考えてみても、国内経済とは直接関係のない話がほとんどです。

自動車の主要な市場も生産拠点も海外
例えば、日産を台湾企業の鴻海が買うのか、それともホンダと経営統合するのかというニュースもそうです。このニュースの背景にあるのは世界的な動きである自動車のEV化と、AV(自動運転)化です。(中略)

EVになると、複雑な内燃機関から自由になり、ギアなども簡素化されるため、主要な部品は大きな単位に組み上がったモジュールという半完成品になっていきます。このモジュールにおいて標準化を進めてシェアを獲得すると、市場の過半を制覇できる可能性があります。

このモジュール生産については、仮にホンダ=日産連合ができても、鴻海が日産を買っても日本は生産拠点にはならないと思います。ロボットを稼働させる電力の問題に加えて、英語のオペレーションに対応するロボットのオペレーターに適当な人材の層が厚くないからです。

更に、現在の日産もホンダも主要な市場は海外、そして主要な生産拠点も海外となっています。そしてデザインやマーケティング、AI関連の研究開発の拠点も海外に流出しつつあります。つまり、もうこの2社は日本のGDPに寄与する部分は僅かであり、今回の再編がどうなっても同じことなのです。

日鉄のUSスチール買収については、アメリカ政府による政治的判断で却下されそうだなどと報じられています。まるで、日鉄が買えないと日本が困るような報道です。ですが、考えてみれば日鉄グループとしては、海外の生産拠点や販路を取り込むだけですから、これも日本のGDPにはほとんど関係はありません。

例えば飲料や食品メーカーは、日本国内の人口減少を前提に海外市場を開拓してきました。その中で、日本の企業がスコットランドの伝統的なウィスキー醸造所を買ったり、醤油の製造企業が大規模な海外生産を始めたりして既に長い年月が経っています。

また鉄道車両の製造企業が、海外の車両を受注するというのも増えてきました。経済新聞などでそうしたニュースを見ると、日本の読者は何となく誇らしい思いを抱くかもしれませんが、こうした話も日本のGDPとは関係ありません。

鉄道車両の場合は特に公益性が強いので、最先端の高速鉄道の一部を除いては基本的に受注の条件に現地生産が義務付けられるからです。そして鉄道車両にしても、醤油にしても、仮に海外の現地法人の収益から日本の本社がロイヤリティーを徴収するとしても、帳簿上の数字だけで、キャッシュは海外に再投資されることがほとんどです。また、仮に大きな利益が出て配当するにしても、株主の多くは海外ですから配当金の国内還流も部分的に過ぎません。

衰退トレンドが定着してしまった日本経済
もちろん、財界も経産省も「これでいい」とは思っていないと思います。また、財界としても、各企業が生き残るためにしてきたことではあるものの、「こんなはずではなかった」と思っているはずです。

1980年代後半からの40年近く、多くの日本企業はこうした現地生産や海外法人の買収を続けてきました。円高対策であり、現地の雇用を保証しないと市場に入れてもらえないからでしたが、こうした過度の空洞化を進めれば国内のGDPが失われることは分かっていたはずです。

ですが、結果的に国内のGDPは大きく損なわれ、韓国にも抜かれ、それでも怒ったり悔しがったりする声は限られています。そこには2つの要因があると思います。

1つは、製造業を海外に出した場合に、本来であれば国内はより付加価値の高い知的産業にシフトするべきです。ですが、日本の場合は分厚い言語の壁があり、文明の成り立ちや教育の方法が、グローバルな先進産業とはミスマッチを起こす中で、改革を先送りし続けました。その結果、国内経済においては衰退トレンドが定着したのだと思います。

もう1つは、高学歴な人口の多くは多国籍企業に就職していることが多く、空洞化しても海外からの収益で潤うからです。つまり、海外で売上が立つ企業の場合は、円安も加わる中で「史上最高の収益」や「大幅な賃上げ」が可能になり、GDP低迷の「痛み」を感じないのです。

その一方で、GDPの低下はダイレクトに国内経済に影響を与えています。何よりも貧困の問題はその結果であると思います。可視化できる部分、できない部分のいずれにおいても、経済衰退の痛みは全国に様々な影響を与えています。

では、日本はアメリカのトランプ政権のように自由貿易を否定して、改めて経済鎖国を行えば国内経済を復活させることができるのかというと、それは違います。

国内市場は人口減で縮小を加速させています。またエネルギーと食糧については、輸入に頼る部分が大きいので、弱くなる円を支えるためにも輸出で稼ぐことからは逃れられません。輸出で稼ぐというのは、海外で作って売るのではなく、国内で作って海外に売るという意味です。そうでなくてはフルでGDPには貢献しないのです。

そうではあるのですが、今となっては、製造業では中国やアジア諸国に生産性という点で対抗できていません。また知的付加価値を求める新産業においては、欧米やアジアの一部の国には現時点では全く勝ち目がないのも事実です。つまり、日本という文明の弱みを克服し、中進国型の教育を改革しないと、このままでは衰退が加速するだけです。

とにかく、1人あたりGDPで負け続けていること、この事実を直視して、そこに悔しさと危機感を抱くこと、これが何よりも第一歩だと思います。その上で、相当な覚悟で改革に踏み出すこと、新しい年にはそうした議論は避けられないと思います。【12月25日 冷泉彰彦氏 Newsweek】
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一方で、「日本経済の凋落」といった議論を「マゾ的思考」と戒める見方も

****来年に向けて日本人の一番の薬は「マゾ的思考」をやめること****
<日本で騒ぐほどドイツ経済もインド経済も順風満帆ではない>
今年もビッグニュースの連続だった。やれドイツが、そしてインドが日本をGDPで抜いていく──とか。しかしいま点検してみると、トランプ再選を除けば、「それほど大したことではなかった」ものがほとんどだ。

問題は、メディアがその点検をせずにおくものだから、われわれの頭には最初の大げさな見出しが実際に起きたこととして頭に刷り込まれてしまうことだ。例えば、「ドイツが日本をGDPで抜いた」「インドが2025年、日本をGDPで抜く」という先走った報道が、「日本は沈む一方」という日本人のマゾ的な諦めをますます強固なものにしてしまう。

IMFは23年10月の世界経済見通しで、「23年はドイツのGDPが日本を抜いて世界3位になるだろう」と予測した。これは、ドイツより日本で騒がれた。ドイツ人にしてみれば、ドイツが低成長とインフレに苦しんでいるときにIMFは何を言う、という気持ちだっただろう。(中略)

円はこの1年ほど、「円キャリートレード」(低金利の円を借りて高金利のドルなどを仕入れ、これで高利を得て儲けるやり方)で、過度な円安を仕掛けられた。これからドル、ユーロ双方に対して円が値上がりすれば、ドル換算のGDPで日本はドイツを再び抜くだろう。

インドへの海外投資は急落傾向
だからといって、昨今の西欧メディアのように、ドイツ経済を古い製造業立国モデルにしがみつき、ITやAI化に立ち遅れた「欧州の病人」と揶揄するのは行きすぎだ。実態はそれほど悪くない。

世界でトップシェアの製品を作る中小企業の数は世界最多。IT部門ではシーメンス、SAP、ボッシュ、半導体でもパワー半導体で世界首位のインフィニオンを擁しているし、台湾のTSMCはドイツに生産拠点を建設している。

もう1つ。「3年内には日本やドイツを抜いて世界3位」になるといわれたインド経済も、21年以降は成長率を落としている。インドがその歴史の中で積み重ねてきた、癒着・腐敗した利権構造や中国以上の所得格差、クモの巣のような規制などを改めることができていないからだ。

既得権構造を破ることのできるのは巨大な外国資本で、1990年代後半からの中国は外資に優遇措置を与えることでこれを実現したのだが、インドでは政治にそれだけの力がない。

だから、「中国に代わる輸出産業立地先」と言われながら、外国企業による直接投資は20年をピークに急落傾向にある。われわれが「インド経済は希望の星」という言葉に裏切られるのは、最近20年間でももう3回目だ。

日本は逆で、「駄目と言われていたが、案外すごい」の口。人口が減るからもう駄目だと自ら思い込んでいるが、人口が減れば通勤も楽になるし、これまでより優れた利益率の高いものを売っていけば、GDPも落ちない。

それに、これまで蓄積した富は利子を生む。それも合わせて日本経済はそれなりの成長を続けていけるのだ。来年に向けての一番の薬は、マゾ的思考をやめることだろう。【12月14日 河東哲夫氏 Newsweek】
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個人的には河東氏のように楽観的にはなかなかなれないところも・・・これまでより優れた利益率の高いものを売っていけば、GDPも落ちない・・・どうやって?

個人的には、あまりにも周囲を忖度し、安心・安全を過度に気にかけ、リスク・失敗を恐れて何もしない・・・そんな社会の在り様が現在の経済状態に関係しているようにも思えます。

【「一人負け」状態にもかかわらず、比較的安定して穏やかな日本社会 なぜ?】
ただ、冒頭グラフが示すような劇的な国際変化が起きている割には日本国内は非常に静か・・・と言うか、淡々としている・・・と言うか。 普通、グラフが示すような「一人負け」状態で国民生活が苦しくなれば、社会は騒然とし、政治は混乱すると思われますが、日本の現状はそんな感じでもない。なぜ?・・・これが第2の疑問。

もちろん、個々に見れば生活に困窮している人は大勢います。でも社会全体で見ると「騒然」とか「混乱」といった状況でもなそう。

1人当たりGDPみたいな経済指標ではあらわすことができない「何か」があって、それが日本社会を安定させているのか?

経済的な要因としては公的債務の増加が、経済の実態と個人の生活のギャップの埋め合わせをしていると考えられるかも。国(中央政府)の借金である国債の発行残高は約1000兆円、地方政府の借金である地方債の発行残高は約200兆円、国と地方を合わせるとその総額は約1200兆円に達します。

この膨大な公的債務が「大問題」なのか「気にする必要はない」のかどうかは、これも議論が分かれるところです。

あるいは、経済以外の移民が少ないとか、治安が良いといったことが社会の安定に寄与しているという考えもあるのかも。

あるいは、日本社会は「カネを求める」煩悩から解放された穏やかな境地に達したのか? それなら素晴らしいことですが、あまりそのような感じもしませんが・・・
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長崎原爆の日 記念式典にイスラエルを招かず ロシアと同列に抗議して欧米各国の大使欠席

2024-08-07 22:03:41 | 日本

(9日の原爆の日に開かれる平和祈念式典のリハーサルが、長崎市の平和公園で行われました。【8月7日 日テレNEWS NNN】)

【ガザ 戦闘がやむ兆しなく、連日の学校・病院空爆】
ハマスが殺害されたハニヤ氏の後任に強硬派のシンワール氏を選んだことがニュースになっていますが、パレスチナ・ガザ地区の状況は変わらず、戦闘が止む兆しはありません。

自らの政治生命延命のためにも戦闘を続けたいイスラエル・ネタニヤフ首相、強硬派のシンワール氏のハマス最高幹部選任で停戦協議の先行きは悲観的です。

****ガザ地区戦闘開始10か月 死者3万9653人に 戦闘がやむ兆しなし****
ガザ地区でイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって、7日で10か月となります。ハマスの最高幹部が訪問先のイランで殺害されたことを受け、イランなどが報復の構えを示す一方、イスラエルは対抗措置を行う姿勢で、地域の緊張が続いています。

ガザ地区でイスラエルとの戦闘を続けるハマスのハニーヤ最高幹部が先月31日、訪問先のイランで殺害されたことを受けて、イランはイスラエルによる攻撃だとして報復する構えで、イランが支援する武装組織も報復に加わる可能性が指摘されています。

殺害から1週間となる7日にはイランの呼びかけでOIC=イスラム協力機構の外相級の緊急会合が開かれることになっていて、イランとしてはイスラム諸国からの理解と支持を得たい考えです。

また、イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織、ヒズボラの最高指導者ナスララ師は6日「われわれは強力で効果的な報復を行う」と述べて、報復を行う姿勢を強調しました。

イスラエルの北部では、6日もヒズボラによる無人機攻撃があり、地元メディアは市民や兵士など19人がけがをしたと伝えるなど、緊張が続いています。

イスラエルのガラント国防相は5日に続いて6日も空軍の部隊を視察し「日を追うごとにわれわれは防衛態勢を強化し、攻撃能力も高めている」と述べ対抗措置を行う姿勢を示し、イラン側を改めてけん制しました。

一方、ガザ地区ではイスラエルとハマスの戦闘が始まって7日で10か月となりますが、イスラエル軍は南部ハンユニスなどで攻勢を強めていて、戦闘がやむ兆しはありません。

ガザ地区の保健当局は6日、これまでの死者が3万9653人にのぼったとしていて、犠牲者が増え続けています。

ハマス ガザ地区トップの指導者をハニーヤ最高幹部の後任に
イスラム組織ハマスは6日、ガザ地区のトップのヤヒヤ・シンワル指導者を、殺害されたハニーヤ最高幹部の後任として政治局長に選んだと発表しました。

イスラエル軍はシンワル指導者を去年10月のハマスによる大規模な奇襲攻撃の首謀者だとして非難し、ハマスの壊滅に向けた殺害のターゲットとしています。

シンワル指導者がハマスの政治部門のトップとなったことでイスラエルとの停戦交渉への影響も注目され、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは交渉のプロセスが複雑化し、交渉が長引く可能性があると指摘しています。【8月7日 NHK】
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イスラエル軍はハマスの「司令センター」になっていると主張して連日学校や病院を攻撃しており、子供を含む民間人の犠牲者が増加しています。

****学校空爆で子供含む17人死亡=イスラエル、また民間施設標的―ガザ****
パレスチナ自治区ガザ北部ガザ市で3日、イスラエル軍が学校を空爆した。パレスチナ通信はこれに関し、少なくとも子供ら17人が死亡したと伝えた。学校は市民の避難先になっていたという。イスラエルとイスラム組織ハマスの交戦が続く中、民間施設に対するイスラエルの攻撃が相次いでいる。

AFP通信などによると、イスラエル軍も学校を攻撃したことを認め、敷地内にハマスの「司令センター」や武器製造施設があったと主張した。ハマスは否定している。【8月4日 時事】 
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****イスラエル軍「ハマスの司令センター」と主張、ガザの学校や病院など空爆…住民ら40人以上死亡****
ロイター通信は4日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザの学校や病院などを同日空爆し、避難していた住民ら40人以上が死亡したと報じた。

報道によると、中心都市ガザ市にある2か所の学校が攻撃され、少なくとも30人が死亡した。軍は、学校がイスラム主義組織ハマスの「司令センター」になっていると主張したが、ハマスは否定している。

ガザ中部の病院への爆撃では敷地内の避難民テントに直撃し、5人が死亡、18人が負傷した。ガザ北部では難民キャンプが空爆され、11人が死亡したという。ガザ保健当局によると、昨年10月の戦闘開始以来、死者数は約3万9600人に上る。【8月5日 読売】
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住民を人間の盾とするハマスも卑劣ですが、それを容赦なく爆撃するイスラエルも・・・

【長崎 イスラエルを招かず 「政治化」を問題視する欧米各国は大使欠席】
こうしたガザ地区の状況は、日本の長崎原爆の日にも影響。
長崎市が9日の「原爆の日」に開く平和祈念式典に、イスラエルを招かなかったことに対し、日本以外の先進7カ国(G7)の駐日大使が欠席する方針となっています。

****G7各国駐日大使、長崎平和式典を異例の欠席へ イスラエル〝排除〟を問題視****
長崎市が9日の「原爆の日」に開く平和祈念式典に、日本以外の先進7カ国(G7)の駐日大使が欠席する方針であることが7日、長崎市などへの取材で分かった。

各国は代理を出席させるが、大使が一斉に欠席するのは異例。長崎市は、イスラム原理主義組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルの式典への招待を見送っており、各国は式典を「政治化するものだ」などと問題視している。

長崎市への取材によると、同市はウクライナに侵略したロシアと、その同盟国のベラルーシと同様、イスラエルを式典に招かなかった。

不招待の理由について「式典を平穏かつ厳粛な雰囲気のもとで開催できないリスクがあると判断した。イスラエルに招待状を発出するか判断を保留していたが、情勢に変化がなかった」としている。

同市によると、6カ国は公使や総領事ら代理を派遣する。

在福岡米領事館は7日、式典に同館のアシーケ首席領事が出席すると発表した。米大使館関係者によると、エマニュエル大使は「(原爆で)亡くなられた方を悼む目的の式典を政治化されたくない」との理由で欠席を決めたという。エマニュエル氏は9日は東京・増上寺で営まれる原爆死没者の追悼会に出席する予定。

在日フランス大使館も産経新聞の取材に対し、セトン大使が出席しないと表明。「中東での状況は主権国家に対するロシアの侵略戦争と比較することはできない」と言及し、イスラエルを招待しない決定は「遺憾だ」と指摘した。

カナダ大使館もマッケイ駐日大使が欠席する理由として、「式典に招待しないことは、イスラエルをロシアやベラルーシと同様に扱うものだ」とコメントした。ドイツ、イタリアの大使館からは回答が得られなかった。

日本を除くG7各国の駐日大使らは7月19日付で、イスラエルの招待を求める連名での書簡を長崎市の鈴木史朗市長宛てに送っていたことも判明。書簡では、式典にイスラエルを招待しないことに「懸念を共有」し、イスラエルをロシア、ベラルーシと同列に扱うことは「誤解を招く」と指摘した。【8月7日 産経】
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イギリスのロングボトム大使は記者団に対し、「ウクライナという独立国に侵略したロシアやベラルーシと違い、イスラエルは自衛権を行使している。同様の扱いをしては誤解を招く」との考えを示していますが、自衛権だろうが何だろうが、やっていることは同じ。

逃げ場を失った避難民が身を寄せる学校・病院も容赦なく爆撃される状況に、原爆の被害を経験した長崎市民が当時の悲惨な状況を重ね合わせ、納得できない思いを抱くことは「政治的」というより「自然」なものでしょう。

ガザの状況に「自衛権」の主張で目を覆うことの方が「政治的」と言えます。(大使が欠席する各国も、現在のガザの状況を良しとしている訳ではありませんが)

あまり自己主張をすることが少ないとされる日本ですが、長崎が原爆被害者の立場から戦争の悲惨さに思いを寄せ、それを発信することはよいことだ思います。

日本政府は「誰を招待するかは主催者である長崎市において判断されることであり、政府としてコメントする立場にない」(林官房長官)とのスタンス。

ガザの状況への踏み込んだ発言も欲しいところですが、欧米諸国との関係を考えるとこのあたりが限界なのでしょう。せめて長崎の思いの足を引っ張ることがなければ。

なお、イスラエルは広島には招かれて大使が出席しています。
また、ロシアは広島・長崎の両方に招かれていません。

****広島・長崎は「偽善」=核の威嚇「臆測」と反発―ロシア大使****
ロシアのノズドレフ駐日大使は6日のタス通信のインタビューで、広島と長崎の原爆の日の式典にロシアを招待しなかった両市の判断を「偽善」と批判し、遺憾の意を示した。

岸田文雄首相が広島市の平和記念式典のあいさつで言及した「ロシアによる核の威嚇」も「臆測」だと反発した。【8月6日 時事】 
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格差社会  世界と日本の現況

2024-01-15 22:09:17 | 日本

(【2023年8月23日 島澤諭氏 YAHOO!ニュース】日本のジニ係数の推移)

【世界で最も裕福な5人の総資産が2020年比で2倍超の8690億ドルに増えた一方、全世界で50億人が以前より貧しくなった】
自分とはまったく縁もない世界で最も裕福な方々の話。

どのくらい資産をお持ちなのか・・・こういう方々は自社株など価値が大きく増減する資産を多くお持ちですので、調査地点によって異なりますが【2023年7月25日 Forbes】によれば・・・

トップは電気自動車(EV)大手テスラを率いるイーロン・マスク氏で2407億ドル(約34兆円)
次いで、フランスの高級ブランドグループ、モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)の会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるアルノー氏が2349億ドル。

3位はアマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏で、保有資産額は1519億ドル。
4~7位は上位から順に、オラクル創業者のラリー・エリソン氏(1481億ドル)、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏(1206億ドル)、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットCEO(1173億ドル)、マイクロソフトのスティーブ・バルマー前CEO(1049億ドル)・・・だそうです。

34兆円・・・想像もつきません。
他人の懐具合を云々しても仕方ないとは言えますが、一方で日々の生活にも困る者、更には飢餓に直面している者も世界には多数(「多数」という言葉では不十分なくらい大勢)いる現実を考えると、すっきりしないものも感じます。

もちろん、こういう富裕層の積極的経済活動によって経済全体が活性化し、結果的に皆が少しずつ豊かになる・・・という話(本当に現実がそうなっているのかは定かではありませんが)はありますが、それでも・・・

国連報告によれば、2022年、世界人口の約29.6%、24億人に相当する人びとに食料への安定したアクセスがなく、中等度または重度の食料不安に陥っていました。

****飢餓人口2019年と比較して1億2200万人増加 複数の危機が要因で =国連報告書****
飢餓に直面している人口は2019年に6億1,300万人であったのに対し、現在は約7億3,500万人に増加していると最新の調査が明らかにしました。

国連の5つの専門機関が共同で本日公開した、最新の「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」報告書によると、新型コロナウイルス流行や度重なる気候危機、ウクライナでの戦争を含む各地での紛争の影響で、世界で飢餓に直面している人口は、2019年以降、約1億2200万人増加しました。

もしこの傾向が続けば、2030年までに持続可能な開発目標「飢餓をゼロに」は達成できないだろうと、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、世界食糧計画(WFP)は警告しています。

飢餓との闘いへの警鐘
2023年のSOFI報告書によると、2022年に飢餓に直面した人は6億9100万人から7億8300万人で、その中間値は7億3500万人でした。この数は、新型コロナウイルスの流行前の2019年と比較して1億2200万人増加しています。

2021年から2022年にかけて世界全体の飢餓人口は安定したものの、世界には食料危機が深刻化している地域が多くあります。アジアとラテンアメリカでは飢餓が減少した一方、西アジア、カリブ諸国、そしてアフリカの全地域で、2022年も飢餓は増加し続けました。アフリカは依然として最も深刻な影響を受けている地域で、5人に1人が飢餓に直面しています。これは世界平均の2倍以上です。

「希望の光がないわけではなく、2030年の栄養目標達成に向けて前進している地域もあります。しかし、全体としては、持続可能な開発目標を達成を目指すには、今すぐ集中した世界的な取り組みが必要です。私たちは紛争から気候変動に至るまで、食料不安の要因となる危機やショックに対するレジリエンス(強靭性)を構築しなければなりません」と国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏はニューヨークの国連本部で行われた報告発表会のビデオメッセージで述べました。 

(中略)報告書の序文で次のように述べています。「2030年までに飢餓をゼロにするという持続可能な開発の達成は、間違いなく困難な課題です。実際、2030年においても6億人近くが飢餓に直面していると予測されています。食料不安と栄養不良の主な要因となっているものは私たちの“ニューノーマル”であり、持続可能な開発目標2の達成のためには、私たちはアグリフードシステムを変革し、それらを活用する努力を倍増させる以外に選択肢はありません。」

飢餓を超えて
食料安全保障と栄養の状況は、2022年も厳しいものでした。報告書によると、世界人口の約29.6%、24億人に相当する人びとに食料への安定したアクセスがなく、中等度または重度の食料不安に陥っていました。このうち、約9億人が深刻な食料不安に直面していました。

また、健康的な食生活へのアクセスは世界中で悪化しています。2021年には、世界の31億人以上(世界人口の42%)が健康的な食事に手が届きませんでした。この数は、2019年に比べて1億3400万人増加しています。

何百万人もの5歳以下の子どもたちが栄養不良に苦しんでいます。2022年、1億4,800万人の5歳以下の子ども(22.3%)が発育阻害に陥っており、4,500万人(6.8%)が消耗症、3,700万人(5.6%)が体重過多でした。

生後6ヵ月未満の乳児の完全母乳率は48%となり、2025年の目標に近づいています。しかし、2030年までに栄養不良に終止符を打つという目標を達成するためには、より一層の努力が必要です。(後略)【2023 年7月12日 WFP】
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どうも現実は改善というより悪化しているように見えます。
冒頭の富裕層を再び引き合いにだすと・・・

****富裕層上位5人の資産が20年比2倍超、抑制必要 NGOが報告書****
オックスファムは15日公表の報告書で、世界で最も裕福な5人の総資産が2020年比で2倍超の8690億ドルに増えた一方、全世界で50億人が以前より貧しくなったと指摘し、各国政府に富の集中是正策を講じるよう呼びかけた。

報告書は15日開幕の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に合わせて発表。世界の企業上位10社のうち、富裕層が経営者あるいは主要株主の企業が7社を占めているとした。

各国政府に対し、独占企業の解体や超過利潤および過剰な富への課税導入、社員持ち株制度など株主による支配に代わる制度の推進によって、企業の権力を抑制するよう呼びかけた。

最も裕福な5人は米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンCEOのベルナール・アルノー氏、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、米オラクルの共同創業者ラリー・エリソン氏、著名投資家ウォーレン・バフェット氏で、インフレ調整後の資産が大きく増えた。

一方、過去2年間で8億人近い労働者の賃金の伸びがインフレ率に追いつかず、年間で労働者1人当たり平均25日分の所得が失われたと指摘した。【1月15日 ロイター】
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【日本 実質賃金19カ月連続マイナス】
“労働者の賃金の伸びがインフレ率に追いつかず・・・”
周知のように日本もこの状況が続いています。

****10月実質賃金2.3%減少、物価上昇で19カ月連続マイナス 残業減も響く=毎月勤労統計****
厚生労働省が(12月)8日に公表した10月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比2.3%減少し、19カ月連続のマイナスとなった。物価上昇に賃金の伸びが追いついていない状態が続いている。製造業の残業減なども響いた。賃上げ効果などでマイナス幅は9月の2.9%から縮小した。

労働者1人当たり平均の名目賃金を示す現金給与総額は、前年比1.5%増の27万9172円。9月は0.6%増だった。

一方、消費者物価指数は前年比3.9%上昇と9月の3.6%からプラス幅が拡大し、実質賃金は前年比マイナスとなった。

現金給与総額のうち、所定内給与は前年比1.4%増(9月は同1.0%増)の25万2825円と伸びが拡大した。春闘による賃上げの影響が寄与した。

一方、所定外給与は同0.1%減(9月は同0.5%減)の1万9466円と2カ月連続のマイナスだった。10月は所定外労働時間が前年比1.8%減少しており、厚労省は製造業などの残業時間減少が影響したとみている。【12月8日 ロイター】
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一般的に賃金は物価上昇の後追いになるので、物価上昇時の当初は実質賃金はマイナスになる傾向がありますが、やがて物価上昇に賃金上昇が追いついてプラスになるはず・・・ですが、19カ月連続マイナスというのは、物価上昇が収まらないせいか、名目賃金の引上げが不十分なのか・・・。

【高齢化進行でジニ係数増加も、年金給付などの再分配で格差状況維持 若年層では世代内格差拡大も】
「寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患う」
論語のなかで孔子が政治の要諦について語ったことばですが、これは為政者の心得を表したもの。
一方で、国民の側からしても、やはり「均(ひと)しからざるを患う」というのが人間心理でしょう。

かつて、日本は世界でも「平等」な国、格差が少ない国として高く評価されていましたが、ジニ係数拡大など、最近は様相がやや異なるような報道も。

****世帯間の所得格差 過去最大の平成26年に次ぐ水準に 厚生労働省****
厚生労働省は、おととし行った所得格差の調査結果を発表し、公的年金などを除いた世帯間の所得の格差は過去最大だった平成26年の調査に次ぐ水準であることがわかりました。

厚生労働省は、公的年金などの社会保障や税による再分配で所得の格差がどの程度改善されているのか明らかにするため、おおむね3年に1度「所得再分配調査」を行っています。

おととし令和3年は7月から8月にかけて調査を行い、全国のおよそ3300世帯から回答を得ました。

その結果、世帯間の所得の格差を表す「ジニ係数」と呼ばれる指標は0.5700でした。

「ジニ係数」は「0」から「1」までの間で表され「1」に近づくほど所得格差が大きいことを示すもので、格差が過去最大だった平成26年の0.5704に次ぐ水準となりました。

一方、公的年金などの社会保障や税による再分配をしたあとの「ジニ係数」は0.3813となり、再分配により格差が33.1%改善されているということです。

また、今回の調査で、公的年金などを除いた1世帯当たりの年間の平均所得は423万4000円でしたが、公的年金などによる再分配をしたあとの平均所得は504万2000円だったということです。

厚生労働省は「高齢化が進むと一般的にジニ係数が悪化するが、年金などの受給で改善されている。社会保障が十分機能していると言えるのではないか」と話しています。【2023年8月22日 NHK】
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確かに、再分配をしたあとの「ジニ係数」は、さほど大きく悪化はしていません。
ただ、年金などの受給で改善されている・・・・とは言っても、「日本は先進7か国で米国、英国に次いで所得格差が大きい国です」【2023年12月4日 yomiDr.】とも。

なお、再分配の仕組みは、再分配給付額約190万円のうち、年金が6割を占めるというように、高齢者に手厚いようにみえますが、給付には児童手当や奨学金の一部、出産手当金、育児休業給付金などもあり、若者も再分配の恩恵を受けている・・・そうです。【同上より】

年金などの再分配については、いつまで今のレベルを維持できるのか・・・という問題もありますし、世代間の政治的意見対立を招くことにもなります。

格差については、若者と高齢者という世代間格差がよく取り上げられますが、若者について、世代内の格差も拡大しているとの指摘も。

****少子化問題に影を落とす若年層の経済状況****
(中略)
2│世代内格差の拡大
第二に、若年層、と一括りにできるほど、現在の若年層の経済状況は似通ってはいない点も指摘できるだろう。若い世代における経済状況の世代内格差は拡大傾向にある。そのため、貧しい若年層はかつてよりも経済的に厳しい状況に置かれていることが想定される。

格差の度合いを測るための指標としては、ジニ係数が広く用いられている。(中略)

厚生労働省の調査から各世代内における所得(当初所得)のジニ係数の推移を確認すると、中高年世代はジニ係数が小さくなる傾向がみられる世代が多いのに対し、30代が世帯主である世帯のジニ係数は、大きくなっている。これは、30代における労働所得の格差が大きくなっている、すなわち世代内格差が広がっていることを意味している。

格差の拡大という点においては、非正規雇用労働者の賃金が低いことが、依然として大きな課題であり続けている。正社員・正職員と比較して、非正規雇用に当たる正社員・正職員以外の労働者の賃金は、男女いずれの場合も低い水準に留まっている。

それに加えて、非正規雇用労働者の賃金カーブはほぼ横ばいに推移していることから、労働者にとって、将来賃金が上昇するだろうとの期待感も乏しいものとなってしまう。結果として、労働者の抱く将来への経済的な不安は大きくなってしまう。
もっとも、将来の賃金上昇期待が乏しく、将来の経済不安を抱えているのは非正規雇用労働者に限った話ではないかもしれない。

前述の図表4の通り、確かに20代においては男女ともに実質賃金水準は上昇傾向にある。しかし、他の年代を確認すると、女性については社会進出が進んだこともあり全年代で上昇傾向が見られるものの、男性の実質賃金水準は中高年世代のほとんどで低下しているのが現状だ。(後略)【2023年11月02日 坂田 紘野氏 ニッセイ基礎研究所】
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日本の現況・将来については、どうも明るい話題が少ないです。
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人口変化・経済動向で「日本は鉱山のカナリア」 長期停滞の一方で「うまくやっている」という見方も

2024-01-03 23:43:24 | 日本

(日米の1人当たりGDPと生産年齢人口1人当たりGDPの累積変化率 【1月2日 WSJ】)

【激変する将来の東アジアの人口】
日本の少子化は深刻ですが、いつも取り上げるように韓国は更に深刻と言うか、驚異的。

****韓国の合計出生率「0.7」過去最低の水準 47か月連続の人口減少****
韓国で少子化が止まりません。1人の女性が生涯に出産する子どもの数を示す「合計出生率」は今年の第3四半期に「0.7」となり、過去最低の水準です。

韓国統計庁によりますと、今年7月〜9月期の合計出生率は前の期に続き「0.7」となり、過去最低の水準に留まりました。特に、9月に生まれた子どもの数は1万8700人余りと、前の年より14.6%減少しました。

韓国では年末に向けて生まれる子どもの数が減少する傾向があるということで、第4四半期には合計出生率が初めて0.6台にまで低下する可能性が指摘されています。

合計出生率が1を下回るのは、OECD加盟国の中では韓国だけで、これで人口は47か月連続で減少しています。【2023年11月29日 TBS NEWS DIG】
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日本・韓国だけでなく中国も・・・ということで、東アジア全体に少子化が急速に進行しています。このことは将来の経済にも大きく影響してきます。

****韓国が「世界で最も老いた国」になり、中国の人口は半数になる…将来性が危うい「東アジア」の未来***
国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。(中略)

外国の人口変化も頭に入れた経営戦略を
国内需要が急速に減っていく日本は、いずれ海外に打開策を求めざるを得なくなる。(中略)

東・東南アジアの将来性は危うい
日本のメーカーや商社などには、これまで「東アジア・東南アジア」に進出してきた企業が少なくないが、このエリアの国々には今世紀半ばにかけて日本と同じくマーケットが高齢化しながら縮小するところが増えてくる。経済成長性に陰りが出てくる国が多くなるだろう。

2050年までに起きる世界人口の変化の最大の特徴は、「中央・南アジア」の人口が「東アジア・東南アジア」を抜き、「サハラ砂漠以南のアフリカ」が遜色ない規模にまで拡大する3大エリア時代になるということだ。人口の軸が今世紀中に西へ、西へと少しずつ移動していくのである。

社会発展の度合いは国ごとに異なるのでそのまま国際マーケットのニーズの変化を意味するわけではないが、人口の軸が西に移動していくにつれて日本においてはあまり馴染みのなかった国々との交流の必要性が増すことは間違いない。

激変する韓国・中国
一方、近隣国はどうかといえば、東アジア諸国は世界で最も激変する地区だ。これから少子高齢化が深刻になるためである。

韓国の合計特殊出生率はこの数年「1.0」にも及ばぬ超低水準を推移しているが、韓国統計庁によれば、2021年は0.81にまで下がった。この結果、総人口は2022年の5162万人から2070年には3765万人へと27.1%も減少するという。2070年の高齢化率は46.4%となって生産年齢人口(46.1%)をも上回る。「世界で最も老いた国」になる見通しだ。

中国の変化も著しい。中国の統計データは政府に都合よく改ざんされることが多いとされるが、国連の推計によれば、合計特殊出生率は日本より低く2022年は1.18だ。中国も韓国と同じく危機的状況にある。国連は2030年には1.27、2040年には1.34、2050年には1.39になるとして将来人口を計算している。

日本貿易振興機構(JETRO)が「世界人口推計2022」を基に今後の中国を展望しているが、総人口は(中略)2030年に14億1561万人、2040年は13億7756万人とカーブを急にしながら減っていく。2100年には7億7000万人ほどになる見込みだ。一方のインドは、2063年の16億9698万人まで増え続けると推計している。

中国の将来人口については、国連の推計とは別に中国国内の学者もさまざまな試算を行っているが、衝撃的なのは西安交通大学の研究チームの予測だ。

香港紙が伝えたところによれば、合計特殊出生率を1.0として推計した結果、2050年の総人口は7億人台にまで減るというのだ。2022年は1.18であり、荒唐無稽な予測とは言えない。

本当に30年も経たないうちに総人口が半減近い水準になったならば、中国社会は混乱に陥り、経済低迷は避けられない。【1月3日 河合雅司氏 現代ビジネス】
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何十年後に人口が半減・・・というのは、「何も対策をとらず、今の出生率がずっと続けば」という前提ですから、実際の動きはまた別物でしょう。

であるにしても、日本・中国・韓国など東アジア(台湾・香港・シンガポールも日本より低い出生率です)が相当に厳しい状況にあるのは間違いないでしょう。

【日本 長期的な経済低迷は事実ではあるが、見方によっては「結構うまくやっている」面も】
こうした人口動態を基盤にして、日本経済はここ20年、30年低迷を続け、将来は更に厳しいと見られており、そうした「日本の凋落」を伝える記事は枚挙にいとまがありません。下記は年末のブログでも取り上げた記事です。

****日本の1人当たりGDPがG7最下位に、OECD加盟国中でも過去最低順位に―台湾メディア****
2023年12月26日、台湾メディア・信伝媒は、日本の1人当たり国内総生産(GDP)が先進7カ国(G7)中で最下位になったことを報じた。

記事は、内閣府が25日に22年の1人当たり名目GDP(ドル建て)が3万4064ドルだったと発表したことを紹介。G7中で最も少なく、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中でも21位と比較可能な1980年以降で最も低い順位になったとした。また、日本のGDPが世界に占める割合も2021年の5.1%から4.2%に減少したと伝えた。

そして、日本の1人当たりGDPは台湾の3万2625ドル、韓国の3万2423ドル、中国の1万2732ドルと周辺のアジア諸国・地域に比べると依然として高いものの、米国の7万6291ドルをはじめ、欧米の先進国に比べるとはるかに少なかったと指摘。

日本がG7の中で最下位になるのは08年以来のことで、大幅な円安と日本の経済地位の後退が大きく影響しているとの見方を紹介した。

また、日本の22年の名目GDPは4兆2600億ドルで世界3位をキープしたものの、米国の25兆4400億ドル、中国の17兆9600億ドルに大きく水を開けられたとし、国際通貨基金(IMF)の予測によると23年にはドイツに抜かれて世界3大経済大国の座から転落する見込みだと伝えている。【12月27日 レコードチャイナ】
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これは厳然たる事実であり、直視する必要がありますが、「豊かさ」「暮らしやすさ」は必ずしも「1人当たりGDP」では表せないものもあることは、12月27日ブログ“英米で急騰する家賃 増加するホームレス”でも取り上げました。

今日はまだ正月ということであまり辛辣なものはやめて、「日本は結構うまくやっている」といった日本にとってやや安心するような記事を。

****日本の経済成長率はG7トップ、この指標なら****
総人口の代わりに生産年齢に注目すると、日本は先進7カ国の下位から1位に浮上する

経済の規模を人口で割った「1人当たり国内総生産(GDP)」は経済学の授業で真っ先に出会う統計の一つだ。生活水準や経済的な豊かさを国同士や経時的に比較するときに頼りになるデータである。

しかし世界の高齢化が進むにつれて、1人当たりGDPの有用性は低下しつつある。理由は単純で、GDPが1年間に生産された全てのモノとサービスの市場価値だからだ。労働人口から外れた人はほとんどの場合、もはやGDPに貢献していない。

1人当たりGDPは「ますます誤った印象を与える指標」。経済学者のヘスース・フェルナンデス=ビジャベルデ(ペンシルベニア大学)、グスタボ・ベンチュラ(アリゾナ州立大学)、ウェン・ヤオ(中国・清華大学)の各氏は新たな論文でそう主張している。彼らが1人当たりGDPの代わりに注目するよう提案しているのが生産年齢人口1人当たりGDPだ。

生産年齢人口1人当たりGDPは1人当たりGDPにちょっと手を加えただけのように思えるかもしれないが、今後ますます有用性が高まる可能性がある指標だ。「高齢化と出生率の低下という非常に大きな経済的変化が今後50~80年の間に世界経済を一変させることになる」(フェルナンデス=ビジャベルデ氏)からだ。

それを最もよく表しているのが日本だ。日本は経済停滞の典型的な例として取り上げられることが多く、「日本化」は弱々しい成長を指す、戒めと軽蔑が込められた婉曲表現となった。日本を表すのに、硬直化、デフレ、停滞、瀕死(ひんし)といった表現が使われてきた。

1990年から2019年の期間で見ると、日本のGDPの年間成長率は1%未満で、米国の約2.5%を大きく下回った。1人当たりGDPの成長率では日本が0.8%と停滞したのに対し、米国は1.5%だった。

「日本は鉱山のカナリア」
しかし生産年齢人口1人当たりGDPでは両国の差はほとんどなくなり、同じ期間の成長率は日本が1.44%、米国は1.56%だった。それどころか、1998年から2019年までで見ると、日本の成長率のほうがわずかに高かった。

世界金融危機の最中だった2008年から新型コロナウイルス禍直前の2019年までの期間では、生産年齢人口1人当たりGDPの成長率は先進7カ国(G7)で日本が最も高かった。

日本の経験は今後、世界の他の国にとって今よりもはるかに重要な意味を持つようになるだろう。日本の人口減少が始まったのは2010年だが、15歳から64歳までの生産年齢人口はさらに早い1990年代前半から減り始めた。

「日本は鉱山のカナリアだった。日本は出生率が最も大きく低下し、それが最も早く起きた」とフェルナンデス=ビジャベルデ氏は言う。「しかし現在の日本はその他の人々の未来の姿だ」

国連のデータによると、2023年現在、イタリア、スペイン、タイの出生率は日本と同水準で、中国と韓国はさらに低い。ブラジル、チリ、ドイツ、ギリシャ、ポルトガルは日本をほんのわずかに上回っている。

70カ国以上で出生率が人口置換水準を下回っている。言い換えれば、1人の女性が生涯に産むと予想される子どもの数が人口規模の維持に必要な2.1人未満だということだ。

昨年末、世界人口は80億人に達したが、非常に多くの国で人口成長率がゼロに向かっており、人口はピークに近づいている。一部の人口統計学者は、世界人口が90億人に達することはなく、現在は縮小への転換期にあると主張している。

1人当たりGDPはそれでも今後も子どもや退職者が利用できる資源を測るのに役立つだろう。退職者人口に対する生産年齢人口の比率が下がる中で、退職者は財政にとってますます大きな脅威になりつつある。

しかし多くの国では総人口の減少が始まる数十年前に生産年齢人口が減り始める。この期間は生産年齢人口1人当たりGDPは経済活動の指標として特に有用だろう。

労働者は生産性が下がったり、競争に後れを取ったり、経営の失敗で苦労したりしているのだろうか。それとも単に人数が減っているのだろうか。

生産年齢人口で見たGDPから分かるのは、欧米の経済学者が日本化を懸念しているにもかかわらず、日本は素人目にも明らかにうまくやっていることだ。瀕死とされた経済成長が30年間続いても、日本はまだ明らかに富裕国で、生活水準は高い。国民が長寿であるという事実は国が崩壊していないことを確実に示している。

だからといって日本経済が文句のつけようがないというわけではない。より優れた金融政策が実施されていれば経済の活性化にもっと貢献していた可能性があるし、政府債務をどう管理するかについても答えは出ていない。

より多くの国で生産年齢人口が減少へ
ほとんどの主要国は今後、日本と同じ道をたどり、移民で補わない限り労働力の伸びは鈍化してやがて縮小に転じるだろう。 2040年代に働いている成人は既に生まれており、われわれはこの予測にかなり自信を持っていい。

一応言っておくと、米国は一部の国ほど成長率が大幅に低下することはなさそうだ。フェルナンデス=ビジャベルデ、ヤオ、リー・オハニアン(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の各氏は関連の論文で、中国の経済成長率が今後20年以内に米国の成長率を下回ると予想している。生産年齢人口の減少ペースが中国のほうが速いことが主な理由だという。

ただ日本が示すように、悲惨な状況になるとは限らない。 「人口の高齢化は対処が可能だ」とフェルナンデス=ビジャベルデ氏は言う。「人々は見通しを改める必要がある」【1月2日 WSJ】
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「日本は素人目にも明らかにうまくやっている」結果として、下記のような評価も。

****30年間経済成長していない日本が1人当たりGDP4万ドルをキープ、これは失敗なのか?―中国経済学者****
2023年10月23日、中国の有名な経済学者・馬光遠(マー・グアンユアン)氏が中国のSNS微博(ウェイボー)に、「日本経済は30年成長していないのに1人当たり国内総生産(GDP)が4万ドルを保っているのは成功か失敗か」と題した評論動画を掲載した。

動画の中で馬氏は「多くの人が日本経済の失われた30年について、人類の経済発展史上の失敗例だと認識しているが、自分は逆の認識だ」とし、30年もの間、経済が成長しない一方で、1人当たりのGDPが4万ドル(約600万円)前後をキープしていることに言及。その背景には産業の高い競争力があり、特に半導体製造設備や光学材料の強みを持つ日本は半導体の産業チェーンで替えのきかない地位を築いているとした。

そして、「経済が30年も発展していないのに国民の所得が高く、産業の競争力が強いというのは失敗例か、成功例か。高齢化などのさまざまな圧力を抱えながらどれだけの国が同じことをできるのか。こんなことができるのは日本だけだ」とし、日本の「失われた30年」はむしろ成功例、実現すべき目標として見るべきだと論じている。(

この件について、中国のネットユーザーは「それだけ安定しているということは、当然成功に入るだろう」「あれだけ大きなバブルが崩壊しながら、国民の所得が30年間大きく変わらなかったというだけで簡単じゃないと思う」「30年経済が停滞した日本に、われわれは今だに追いつけていない」「1人当たりGDPが日本の3分の1に満たない状況なのに、日本みたいになることを心配している」「われわれが仮に4万ドルに到達したとしても、汚職官僚が3万8000ドルぐらい持っていく」

「でも、日本はこの30年で技術が進歩したか?政治的な独立を勝ち取ったか?」「この先30年がどうなるかを見てみよう」といった感想を残している。【2023年10月24日 レコードチャイナ】
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「生産年齢人口1人当たりGDP」がどういう意味を持つのか・・・それに関する知識を持ち合わせていないので、とりあえず、こういう評価もあるということで。

【それでも不安な日本の将来】
いずれにせよ日本経済の長期的停滞は厳然たる事実ですが、単に「1人当たりGDP」の相対的低下だけでなく、将来に向けて厳しい感じがするのが、世界の趨勢であるデジタル化への対応の遅れです。

****台湾のデジタル競争力は世界9位、首位米国、韓国6位、過去最低32位の日本****
スイスの研究機関が11月末に発表した「2023年の世界デジタル競争力ランキング」で台湾は世界64カ国・地域中9位だった。首位は米国。東アジア地域では韓国が6位で最も高く、日本は32位と2017年の調査開始以来、過去最低となった。(中略)

東アジア地域では韓国の6位に続き、10位に香港、19位に中国が入った。前年の29位から3ランクを落とした日本は人材不足や科学技術力の低下などが響き、東アジアでは独り負けの構図が鮮明になった。(後略)【12月9日 レコードチャイナ】
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個人的な印象としては、「安心・安全」に固執し、失敗するリスクを回避し、リスクが伴う新しいものに消極的・・・日本社会のそんな側面が「失われた20年・30年」の根底にあると感じています。
・・・・不幸な地震・事故が相次ぐ最悪のスタートとなった正月ですので、耳ざわりの良くない話はこのくらいにして、また別機会に。


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日本  子供が「奢侈品」になった現状で際立つ一人親世帯の相対的貧困 非正規雇用増加の婚姻への影響

2023-10-21 23:35:34 | 日本

(【10月11日 Newsweek】)

【東京都の子育て世帯の年収 1000万以上が最も多く4割】
「子育てにはおカネがかかる」というのは今更の常識ですが、そうした傾向は次第に強まり、特に東京のような地域では年収1000万円ぐらいないと子育ては難しい・・・といった状況にもなっているようです。

****今や東京の30代子育て世帯の4割が年収1000万円以上*****
<結婚・出産の経済的ハードルが上がり、中間層の収入レベルでは子どもを持つことが困難になってきている>

昔は、子どもを産むのは働き手の確保という意味合いがあり、低収入層ほど子どもが多い「貧乏人の子だくさん」と言われたりしていた。だが今はそうではなく、子どもはカネのかかる存在だ。20歳過ぎまで何らかの学校教育を受けさせることが一般的になっており、かつ幼少期から各種の習い事をさせる同調圧力も強くなっている。

「子ども1人育てるのに1000万円、2000万円」という試算も聞くが、子どもはすっかり奢侈品になってしまったかのようだ。

それは、子育てをしている世帯の年収分布からうかがえる。総務省の『就業構造基本調査』に、夫婦と子の世帯の年収分布が出ているが、2007年と2022年の数値を対比すると<表1>のようになる(親が30代の世帯)。

30代の子育て世帯は、この15年間で349万世帯から231万世帯に減少した。3割以上も減っていて、未婚化・少子化の傾向がはっきりと表れている。

だが目を凝らして見ると、減少率が大きいのは低収入層や中間層であることが分かる。年収300万円台の世帯は、50万世帯から13万世帯へと4分の1に減った。その代わり、年収800万円以上の層は増えていて、1000万円以上の世帯は1.6倍に膨れ上がっている。

2022年で最も多いのは年収500万円台で、次に多いのは600万円台と1000万円以上の層だ。日本全体が貧しくなっているのとは裏腹に、子育て世帯の年収は上がっている。共稼ぎの増加によるものだろうが、300~500万円台といった中間層では結婚・出産が容易ではなくなっていることもある。

結婚・出産の階層的閉鎖性が強くなっているのではないか。教育費の上昇や増税に加え、学生時代に借りた奨学金の返済義務がある人も増えている。そこそこの経済力がなければ、結婚・出産に踏み切れないのは当然だ。

以上は全国のデータだが、大都市の東京に限ると変化はより大きい。<図1>は、東京都の子育て世帯の年収分布をグラフにしたものだ。世帯数が大きく異なる全国と比較するため、全数を100とした%の形にしている。

東京といえども、15年前は中間層が多かったが、今では年収1000万以上が最も多く4割を占めている。「東京で共稼ぎなら年収1000万円は普通では」という声もあるかもしれないが、15年間でここまで変わるとは驚きだ。

現在の東京の子育て世帯(親30代)では、年収600万未満は2割にも満たない。中間的な収入では、結婚や出産が難しくなりつつあるのか。上述の言葉を繰り返すが、結婚・出産の階層的閉鎖性の強まりだ。子育て世帯で最も多いのは、年収1000万以上。こういう時代が来ることを、20年前に予期できただろうか。

結婚・出産の経済的ハードルが上がり、もはや自然なライフイベントではなくなりつつある。少子化が進むわけだ。教育費の上昇、増税、奨学金の返済......。今の親世代には、以前にはなかった負担がのしかかるようになっている。

「共稼ぎをしてしのげばいい」と突き放すのは簡単だ。国としては「政策の貧困」を自覚し、これから家庭を持とうとする世代の負担軽減に取り組むべきだ。<資料:総務省『就業構造基本調査』>【10月5日 舞田敏彦氏(教育社会学者) Newsweek】
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【世界的にも劣悪な日本の一人親世帯の相対的貧困率】
共稼ぎで、片方が正規雇用・・・そうした“恵まれた”条件が満たされれば出産・子育ても可能であるが、逆にそうした条件を満足できない場合、子育ては「チャイルド・ペナルティー」「子育て罰」とも言うべき厳しい現実を突きつけられます。

****日本の一人親世帯の相対的貧困率は「貧困大国」アメリカよりも大きい****
<両親がいる世帯を前提とした日本の育児の諸制度はもう限界を迎えている>

先週掲載した記事(上記)で、東京の子育て世帯の4割が年収1000万以上であることを明らかにした。生活費や教育費が上がるなか、結婚・出産は自然なライフイベントではなくなりつつある。子を産んで育てることの経済的ハードルは、一昔前と比べて上がっている。

先週の記事は夫婦と子の世帯のデータによるものだが、最近では一人親世帯も増えている。離婚率が高い都市部は特にそうで、東京では6~17歳の8人に1人が1人親世帯で暮らしている(『国勢調査』2020年)。

よく言われることだが、一人親世帯(多くが母子世帯)の生活はとりわけ苦しい。年収を二人親世帯と比べると愕然とする。東京都内23区のデータで、夫婦と子の世帯と母子世帯の年収分布をグラフにすると<図1>(冒頭)のようになる。

分布の違いが一目瞭然だ。二人親世帯では年収1000万以上が突き抜けて多く、全体の半分を占めている。しかし一人親世帯は分布が下の方にかたより、最も多いのは200万円台だ。中央値(median)を出すと2人親世帯が1000万円、1人親世帯が250万円と4倍もの差がある。

子育て世帯全体の年収が上がるなか、一人親世帯は低いままに留め置かれている。子育て世帯の中での格差という問題に注意しなければならない。大都市圏においては特にそうだ。

年収レベルが高い東京では、一人親世帯の劣勢が際立つ。周囲が習い事だ、海外旅行だなどと言うなか、自分はそれを我慢しなければならない。会話にも交りにくい。一人親世帯の子が抱く「相対的剥奪感」は相当なものだろう。

国際的に見ても、日本は一人親世帯に貧困が集中する度合いが高い国だ。2020年の子どもの相対的貧困率(年収が中央値の半分に満たない世帯で暮らす子の割合)をみると、全世帯では13.1%だが、一人親世帯に限ると43.3%にもなる。その差は35.2ポイント。<表1>は、この差分が大きい順に43の国を並べ、上位10位と下位10位を抽出したものだ。

日本は、全世帯と一人親世帯の差分が韓国に次いで大きい。一人親世帯の貧困率は、貧困大国と言われるアメリカよりも高くなっている。

日本では、両親がいる世帯を前提として育児の諸制度が成り立っているため、一人親世帯は困難な状況に陥りやすい。預け先の不足により、幼い子がいるシングルマザーがフルタイム就業をするのは難しい。さらに大きいのは養育費の不払いだ。国が立て替え、不払いの親から税金と一緒に強制聴取する仕組みを導入するべきだろう。

時代とともに結婚・出産の階層的閉鎖性が強まり、かつ子育て世帯のなかでの格差も大きくなりつつある。育児や教育の費用負担を、個々の家庭(私)に委ねるやり方の限界に他ならない。<資料:総務省『就業構造基本調査』(2022年)、OECD「Family Database」>【10月11日 舞田敏彦氏(教育社会学者) Newsweek】
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こうした一人親世帯に課される「チャイルド・ペナルティー」「子育て罰」を目にすれば、多くの女性が出産・子育てに慎重・消極的になるのも当然かも。

【少子化で最先端を行く韓国との共通土壌】
“日本は、全世帯と一人親世帯の(相対的貧困率)差分が韓国に次いで大きい”・・・このあたりが、伝統的価値観を前提にした社会・政治の在り方と現実のズレという少子化に苦しむ両国に共通する土壌のようにも見えます。

****2022年の合計特殊出生率0.78の背景(韓国)****
若年層の社会問題に迫る

韓国では、2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数、暫定値)が0.78と、1970年以降で過去最低となり、OECD加盟国の中でも最下位だった。

深刻な少子化の背景には、若年層の婚姻・出生率の著しい低下が挙げられる。若者が結婚や出産を望まない要因として、就職難や都市部の地価高騰、多大な教育費負担といった経済的要因や、韓国独自の文化・価値観などが挙げられることが多い。さらに、近年では女性の社会進出も関係していると考えられる。(中略)

若年層の結婚・出産意欲減退の背景
(中略)
韓国の出生率が低下している理由として、以下の要因が挙げられる。

まず、韓国では結婚が出産の前提になっていることだ。
政府系シンクタンクの韓国保険社会研究院が2021年に行った「家族と出産に関わる調査」によると、19~49歳の未婚の男性と女性に「現在交際中の異性がいるか」と調査した結果、男性の27.5%、女性の30%が「現在交際中の異性がいる」と回答した。異性交際をしている人が男女ともに3割程度と少ないわけだ。

韓国独自の伝統的価値観(儒教思想など)では、結婚があってこその出産であり、事実婚は一般的ではないため、結婚する男女の減少によって出産率も低下していることがうかがえる。実際、出生数は婚姻件数の動きと相関していると考えられる。

一方、例えばフランスでは事実婚(パートナー婚)が主流で、出生に占める非嫡出子の割合が61.0%に達しており、韓国とは対照的だ。ただし、10年前の韓国では事実婚をする人は全体の1%だったが、現在は2%を占めている。10年で約2倍になった事実には着目する必要がある。

韓国独自の文化も、出生率低下の理由に挙げられる。結婚挨拶の負担は依然として存在し、男性が女性の実家を訪れる際に、職業は何か、家は購入できるのか問われる。しかし、近年の都市部の地価高騰のため家を買えず、結婚自体を断念する若年層が増えている。

若年層で結婚するためには家を建てることが最低限の準備として認識されている。(中略)しかし、文在寅(ムン・ジェイン)前政権時の、ソウル市など都市部を中心とする大幅な地価高騰により、若年層の大半が家を購入できない状況下に置かれている。

新生児の出生性比(女児100人に対する男児の数)も、出生率低下の要因の1つと考えられる。韓国の出生性比は1970年代から継続して上昇しており、男児が圧倒的に多くなっている。30年近くも出生性比がアンバランスで女性が少ないため、男性にとって結婚の競争率が一段と高くなった。

男性の負担が増す一方で、不安定な経済的基盤も若年層の結婚意識の減退につながっていると考えられる。1997年のアジア通貨危機以降、終身雇用制度などが崩壊し、2008年にはリーマン・ショックが起こり、非正規職が増えた。

2020年からは新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染症拡大によって労働需要が減少した。韓国青少年政策研究院が行った「2020年 青年の社会・経済実態および政策方案研究」(注4)によると、就業情勢の悪化により、全体の3.4%が引きこもりになった。

新型コロナが落ち着いた2022年以降、雇用情勢は量的にやや改善したが、質的にはあまり改善していない。韓国社会は住みにくい状況となり、恋愛や結婚に対する前向きな考えが後退し、出生率が急低下した。

地方からソウル首都圏への人口移動という社会問題も、出生率低下の主要要因だ。ソウル市は人口面で高密度空間であり、教育、就業環境、情報などが全て集約化され整っているが、高密度空間は少子化が進みやすい。

ドイツのような連邦国家は、教育水準の平準化や情報などが分散されやすいが、韓国などの中央集権の色彩が濃い国家は都市に情報が集約化される。ゆえに韓国では地方の出生率が比較的高いにもかかわらず、上京する人が過半数を占めるため、少子化が進んでいる。

現に、韓国の統計庁が発表した「2022年 出生および死亡統計」によると、ソウル市の合計特殊出生率が0.59だったのに対し、韓国南西部に位置する全羅南道霊光郡は1.81と比較的高い。また、高密度空間は物価が高く、生活費用もかさむため、職場と住居の距離が遠ざかり、生活の質が落ちる傾向がある。所得水準は必ずしも物価に比例して変化するわけではないため、家族を構成することが非常に難しくなったといえる。

さらに、出生率が近年急激に低下した背景として、女性の社会的地位の向上による人々の認識の変化も考えられる。

韓国では大学進学率が2022年で71.9%と、OECD加盟国でもトップを誇る。性別比では男性が70.0%、女性が73.8%と、女性の割合がやや高い。「男性は働き、女性は家で家事をする」という根強い儒教思想が浸透していた韓国社会に変化が起きていることがうかがえる。

高学歴の人が増えたことにより、結婚や家族を成すことと1人で生きていくことの意義など、自身で決定する生活判断能力が昔より高くなっているといえよう。

また、前述したように、物価は高騰しているが所得の変化がない、もしくは減っているため、独身の方が楽という考え方が若年層に広がっている。現に、家族を成すことが標準的なモデルではないと、男性、女性ともに考えるようになった。最近は、経済的な要因よりも結婚をしないことがトレンドとなりつつあり、文化的側面でも変化が起こっている。

女性の経済的活動の推進によって、「子供が先か、自身の人生が先か」という言葉が国内で広がっており、子供を産むこと自体が大きな負担となっている。女性が産休や育休を取ることによって賃金を稼ぐ期間が減ってしまうためだ。

また、金大中(キム・デジュン)政権時の2000年代初頭に女性部(現・女性家族部)が発足してから、女性の地位を向上させるために数多くの施策や事業を行ってきた。しかし、行き過ぎた男女意識や過度なフェミニズムにより、近年では男性側が反発し、男女対立が深刻化した。例えば、若い男性の間では、なぜ男性だけが兵役で軍隊に行かねばならないのか、女性を優遇しているのではないかという声が多数寄せられている。【5月15日 益森 有祐実氏 JETRO】
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伝統的価値観の問題に加え、非正規雇用の増加、女性の社会的地位の向上による意識変化など、日本にも共通する現象でしょう。

【非正規雇用増加がもたらした結婚減少・少子化】
出産・子育てというと女性が着目されますが、男性についても、非正規雇用で経済が安定しない状態では結婚へ踏み切れない、結果的に少子化に・・・という現象が見られます。

****30代前半の非正規男性で結婚しているのは2割のみ****
少子化問題は経済問題でもある。

データを見る限りでは、現在の少子化を招いた原因として、経済も非常に大きい要素を占めている。
男性の場合、正社員(30~34歳)の既婚率は約60%だが、非正規社員の既婚率は約20%である(「令和4年版 少子化社会対策白書」)。

非正規社員の男性のうち、結婚している人が2割しかいないということは、事実上、非正規社員の男性は結婚が困難、ということである。 これは何を意味するか?

ジェンダーをめぐる認識が急速に変化しているとはいえ、男性はやはりある程度の安定した収入がなくては結婚できない、という考え方は根強い。だから派遣社員などでは、なかなか結婚できないのである。

つまり、「派遣社員が増えれば増えるだけ、未婚男性が増え少子化も加速する」ということである。

男性の非正規雇用が激増している
そして、日本では近年、男性の非正規雇用が急激に増加している。

図表3は、パートタイム労働者のうち男性に絞って主要先進国と比較したものである。これを見ると日本の男性のパートタイム労働者はこの15年で激増しているのがわかる。

もちろん、パートタイム労働者だけではなく、非正規雇用に枠を広げると、その人数は非常に多くなる。

現在、日本では働く人の約4割が非正規雇用である。その中で男性は、700万人近くもいる。20年前よりも倍増したのだ。つまり、結婚できない男性がこの20年間で300万人以上も増加したようなものである。

現在の日本は、世界に例を見ないようなスピードで少子高齢化が進んでいる。このままでは、日本が衰退していくのは目に見えている。

どんなに経済成長をしたって、子どもの数が減っていけば、国力が減退するのは避けられない。(後略)【8月29日 大村 大次郎氏(ビジネスライター) 「なぜ日本は子育て世代にダメージのある政策ばかり講じてきたのか…世界最速で高齢化が進む本当の理由」PRESIDENT Online】
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経済にとって非正規雇用増加が不可避ということであれば、非正規雇用でも正規雇用とそん色のない待遇が受けられるような雇用条件・政府施策の配慮が必要でしょう。それでは非正規雇用を増やすメリットがないということであれば、企業の便益を重視して国家の衰退を甘受するか・・・という問題にも。
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EV(電気自動車)普及の流れは世界で加速 取り残された日本自動車産業の「落日」

2023-05-08 22:52:09 | 日本

(今年の上海モーターショー【4月19日 日経ビジネス】 BYDの新車でしょうか 車に関心がない私としては美しい女性の方に目が行ってしまいますが・・・そんなことを言っている状況ではないようです)

【EV普及を「バイ・アメリカン」で進める米政府 影が薄い日本車】
世界的に自動車販売の中心はアメリカと中国。
その「中心地」での自動車ショーの中心は、やはり電気自動車、EV。そして日本の影は薄く・・・

****NY自動車ショーが開幕 EV脚光も日本勢の新型車なく****
米国の主要な自動車ショーである「ニューヨーク国際自動車ショー」が開幕した。7日から始まった一般公開は16日まで続く。電気自動車(EV)の普及拡大が見込まれるなか、米韓勢がEVの新型モデルを出す展開となったが、日本車メーカーでEV関連の新型車を出した企業はなかった。

見本市では、韓国・現代自動車グループや欧州ステランティス傘下の米国ブランド「ラム」がEVの新型モデルを披露した。ラムのモデルは、米国で人気のあるピックアップトラックのEVだ。米フォード・モーターなどライバルの車に対抗する。

一方、日本車で新たなEV関連の出展はなかった。SUBARU(スバル)が多目的スポーツ車(SUV)のオフロード仕様車の新型を公表したが、EVではない。

自動車情報の米ケリー・ブルー・ブックによると、2022年に米国のEV販売台数は21年比66%増の約80万9000台となったが、日本メーカーのシェアはあわせて2%に満たない。車種別で販売台数が1万台を超えているのは日産自動車「リーフ」だけだ。

米国ではバイデン米政権がEV販売補助金の支援対象を北米生産車に限り、米国メーカー優遇との批判が出た。米政権の政策に修正を求めた点では日欧韓とも共通だが、そのうち韓国勢は現代自グループがシェア7%。欧州勢も独フォルクスワーゲンだけで2%超で、日本メーカーすべてのシェアを上回る。

日本勢はシェアだけでなく、EVの北米生産でも欧韓にも後れを取っている。

米国でも、自動車ショーは新型車の発表が少なくなった。車両を展示するだけにとどめるメーカーが多く、米ゼネラル・モーターズなど米主要メーカーも今回は新型車を出していない。ただEVに関しては新型モデルを出すメーカーがあり、日本車の勢いのなさが目立っている。【4月9日 日経】
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アメリカのEV販売補助金は、単にEV普及対策だけでなく、あからさまにアメリカ産を優遇する「バイ・アメリカン」施策でもあります。

****米国企業だけが「EV補助金」…韓国の現代自動車も、日本の日産も除外****
アラバマ工場で生産する現代自動車の車は、バッテリーが中国製で除外
米政府が「インフレ抑制法」(IRA)に基づき最大7500ドルを支給する補助金支給対象の電気自動車(EV)車種は、全て米国メーカーのものだけが選ばれた。

韓国の現代・起亜自動車はもちろん、補助金支給対象だった日本とドイツのメーカーのEVも除外された。(中略)

現代・起亜自動車のEV車種は予想通り一つも補助金支給対象にならなかった。現代自動車が米アラバマ工場で今年3月から生産するGV70は、最終生産地が北米という条件は満たしたが、バッテリーが中国製という理由で選ばれなかった。

過去の基準では補助金支給対象だった日本の日産やドイツのフォルクスワーゲンの一部のEV車種をはじめ10車種は、新しい基準適用によって補助金を受けられなくなった。  

インフレ抑制法の詳細指針は、北米で最終生産されたEVのうち、今年の場合、バッテリーが北米で製造・組み立てられた部品を50%以上使っていれば3750ドルを支給するようにした。

バッテリーの主要な鉱物は米国または米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国で採掘・加工したものを40%以上使っていれば3750ドルの補助金がもらえる。両方の条件を満たせば7500ドルが支給される。

消費者価格が乗用車は5万5千ドル以下、SUV、バン、ピックアップトラックは8万ドル以下でなければ補助金の対象にならない。  

今回の補助金支給対象選定で、米国メーカーのEVは米国市場で相当な優位につくことになった。(後略)【4月18日 the hankyoreh】
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アメリカは今後も、EV販売補助金に加えて排ガス規制の面でもEV普及を加速させる方針です。

****バイデン政権が新たな排ガス規制案を公表 2030年に新車販売の6割をEVに****
アメリカのバイデン政権は、自動車の新たな排ガス規制案を発表しました。EV=電気自動車の販売をより加速させる内容です。

アメリカ環境保護局が12日に発表した新たな排ガスの規制案は2027年から2032年にかけてつくられる車が対象で、CO2=二酸化炭素の排出量基準を毎年、段階的に厳しくしていきます。

2032年型の乗用車は、2026年型と比べてCO2排出量を56%削減する必要があります。

バイデン政権は2030年に新車販売の5割をEVなどの電動車とする目標を掲げていますが、今回の規制案によってEVの普及が加速し、2030年にはEVが新車販売の6割を占めるとみています。

規制案は企業や環境団体などから意見を公募した後、決定されます。【4月13日 TBS NEWS DIG】
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【世界最大の自動車市場・中国も“EV一色” EVだけで、日本の新車販売台数を上回るEV大国へ】
もうひとつの「中心地」中国も“EV一色”という状況です。
14年連続、世界最大の自動車市場を維持する中国は販売台数の25%以上がEVなど新エネルギー車、いまやEVだけで、日本の新車販売台数を上回るEV大国となっています。

****上海モーターショーはEV“一色” 中国「BYD」のスポーツカーに注目****
世界の電気自動車市場をリードする中国では18日午後から上海モーターショーが始まっています。

(高橋大作記者報告)
東京ドーム8個分という非常に広い会場に1500台の新車が並べられた最大規模な展示会ですが、なかでも注目を集めているのが中国国内EV市場、急成長したBYDです。

去年、中国では2680万台の自動車が販売され、14年連続、世界最大の自動車市場を維持しました。

去年販売された車のうち25%以上が電気自動車などの新エネルギー車で、モーターショーの会場では国内外のメーカーが新型のEV車を発表するなど、しのぎを削っています。

中国勢主導で急速に電気自動車の普及が進むなか、中国政府は去年末、一定の役割を終えたとして新型エネルギー車に対する国内での補助金を打ち切りました。

中国メディアは電気自動車の競争はこれからもっと激しさを増し、多くの新興メーカーは淘汰(とうた)されるだろう、代わりに生き残ったメーカーだけが成長する「EVの新時代が始まるであろう」と報じています。【4月18日 テレ朝news】
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これまでEVの問題点とされていた走行距離について、各社とも改善を続けており、メーカーによっては、1回の充電で1千キロ超を続けて走れるものも出てきたとか。新興EVメーカーのEVは10分間の充電で最大300キロ走れるとのこと。

専用ステーションでの電池交換というアプローチも進められています。

【EVの予想を超える普及スピードに日本メーカー“ようやく”覚醒 遅れを取り戻せるのか?】
アメリカにしろ、中国にしろ、影が薄い日本車・・・・日本国内でも普及が進んでいない状況ですから当然と言えば当然ですが。

****中国のEV化のスピードに衝撃受けた日系メーカー、軒並み覚醒―中国メディア****
2023年4月29日、経済観察報は、中国での電気自動車(EV)が予想を超えるスピードで普及していることで、日本の自動車メーカーが「集団覚醒」したと報じた。

記事は、これまで電動化に向けた動きが遅かった日本メーカーが、先日開催された上海モーターショー期間中に突然覚醒したとし、トヨタ、ホンダ、日産がそれぞれ明確なEV化計画を立て、なおかつ中国市場を超重要市場に位置づけたと伝えた。

そして、トヨタが26年までにEV販売台数150万台を実現し、日産も26年までに中国市場でEV7車種を出して30年までに中国市場でのEV比率を80%にまで高め、ホンダに至っては35年までに新車販売におけるEV比率を100%にする計画を発表するとともに、各社の幹部の発言からもEV化への強い意志がうかがえるようになったと紹介している。

その上で、日本メーカーの姿勢が大きく変わった最大の要因が、中国のEV普及ペースが予想を完全に上回ったことだと指摘。

19年には120万6000台だった中国国内のEV販売が3年後の22年には5倍以上の688万7000台にまで増える
一方で、化石燃料を主体としている日本メーカーの22年の販売台数は前年比10.3%減の409万2000台に留まっており、EVを発展させなければ日本メーカーは中国市場での業績を維持できなくなっているとした。

世界的な脱炭素社会に向けた取り組みの中で、日本メーカーもカーボンニュートラル推進の必要に迫られているという要因もあると解説した。

また、日本メーカーは近頃、EVへのモデルチェンジを加速するための人事変更を相次いで行ったとも伝え、トヨタでは佐藤恒治新社長が就任直後にEV販売を26年までに60倍まで増やす計画を打ち出し、ホンダも4月1日に電動事業開発本部を立ち上げて中国本部長だった井上勝史氏が本部長に就任したと紹介している。

さらに、EV事業では「後発」となる日本メーカーは中国での研究開発や提携を加速しているとも紹介。

トヨタは中国を柱とするインテリジェント化、電動化研究開発体系の構築を目指し、今後は中国での製品について開発や生産の多くを現地のエンジニアや合弁会社に委ねる姿勢を示し、日産も中国国内のパートナーを通じて中国市場への理解を深めるとともにソフトウェア分野の提携を展開し、ホンダも多くの製品の開発権限を中国のパートナーに付与すると伝えた。【5月2日 レコードチャイナ】
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「今頃“覚醒”かよ!!」というのが正直な感想。
日本メーカーは、当分EVは普及しないという確信があったから、これまでEVに本格的に取り組んでこなかったのでは? その判断は間違っていたのか? 今頃ようやく間違いに気付いたのか?

ガソリン車で技術的優位を誇っていただけに、そこに固執し、新しい流れへの対応がとれてこなかった・・・素人目にはそのように映ります。「技術革新」が起きるとき、旧技術でのトップ企業がまだ低レベルの新技術を見下し、結果的に革新の波から“取り残される”というのはよくある話です。 驕り・傲慢の結果でしょう。

もちろん自動車メーカーだけの問題ではなく、充電施設など使用環境の整備を怠ってきた政府を含めての問題でしょうが。

覚醒したとのことですが、遅れを取り戻せるのか?

****EV急伸する中国市場、落日の日本勢は販売台数3割減 EV出遅れのツケ大きく価格競争でも「最大の敗者」****
世界最大の自動車市場、中国での日本車メーカーの販売減少が深刻だ。急速な電気自動車(EV)シフトにさらされ、日本勢の中国での乗用車販売台数は2023年1─3月累計で前年同期から3割以上落ち込んだ。ガソリン車でブランド力を維持してきた日本勢は苦戦し、三菱自動車はガソリン車の現地生産停止にまで追い込まれた。

日本勢は巻き返しを図るが、EVの普及スピードを読み誤ったツケは大きく、収益力のあるEV開発で、かつての地位を取り戻せるか見通せない。

S&Pグローバル・モビリティの西本正敏プリンシパルリサーチアナリストは、世界第2位の自動車市場である米国でも政府がEVの普及を進めようとしており、日本勢は「米国でも中国と同じように苦戦を強いられる可能性がある」とみている。世界2大自動車市場でシェアを失うことは日本勢にとって「非常にリスクだ」と指摘する。

ロイターが分析した各社発表と業界団体のデータによると、日本勢の今年1─3月の中国の新車販売台数は前年同期比32%減った。トヨタ自動車(高級車ブランド「レクサス」を含む)が14.5%減だったほか、日産自動車が約45%減、ホンダが38%減と大きく落とした。マツダ(約66%減)と三菱自(約58%減)は半分以下になった。

デンソーの松井靖経営役員は4月27日の決算会見で、取引先の日本車メーカーの中国での販売状況は「足元の計画に対して落ちている。計画の6割くらいのところもある。新車の在庫が多くなっている」と説明。別の部品メーカー幹部も「トヨタ、ホンダ、日産全てが計画割れで、問題になっている」と話した。(中略)

価格競争でも敗者に
中国では今年に入り、EVの値引き合戦が繰り広げられている。テスラが1月に値下げしたのを機に、中国勢、欧州勢、日本勢が追随。テスラは需要拡大を受けて値上げにも転じているが、それでも1月の水準を下回っている。

中国・上海を拠点とするコンサルタント会社オートモビリティのビル・ルッソCEO(最高経営責任者)は「価格競争の最大の敗者は今のところ日本勢だ」と指摘。「EVがより手頃になればなるほど、外国車ブランドの購買層にとってEVはより魅力的になる」とし、日本勢にとって「不吉な前兆がみられる」と語った。

S&Pグローバル・モビリティの西本氏は、特に中国の若年層は「ハードウエアの品質や耐久性ではなく、エンタテインメントなどのソフトウエアを重視してEVを購入している」といい、日本勢の中国でのシェア回復には「中国の顧客ニーズにあったEVの開発・投入が非常に重要だ」と話す。

トヨタの佐藤恒治社長は4月21日の合同取材会で、価格の問題は「普及を考える時には大事なファクター(要因)だが、まず今やらなければいけないのはEVとしての基本性能をしっかりつくり込み、その上で特に知能化に対して付加価値を実現していくこと」と述べた。

EVの出遅れを指摘する声は「『トヨタもっとがんばれ』という声だと受け止めている」と認識。販売台数では他社に遅れているが、二酸化炭素(CO2)削減の点では「むしろ先を走っている」とし、「しっかり中国市場に向き合いEVを加速していきたい」と語った。

ホンダの三部敏宏社長も4月26日の合同取材会で、ソフトウエアや自動運転などの分野で「中国勢は相当、先を行っている」と認めた。「このままでいいとは考えていない。反撃する」と述べた。詳細はまだ話せないとしつつも、ホンダもソフトウエアなどの分野で「十分戦える」として「中国勢とは違う攻め口」で必ず形勢を逆転させるとしている。【5月3日 Newsweek】
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【日本車の「牙城」“だった”東南アジアでもEV普及の流れ】
単に、中国市場やアメリカ市場だけでなく、日本車が約9割を占めるという日本自動車の「牙城」、インドネシアでも中韓メーカーが先行するEVの販売台数が急拡大しており、日本メーカーは対応できずにいます。

インドネシアのEV市場は2021年の685台から2022年は1万327台と15倍になっていますが、そのほとんどを中韓メーカーが占めており、日系メーカーはトヨタと日産の合計で21年は計95台、22年は計203台と微々たる数字になっています。

インドネシアにおけるEV加速には政府の後押しも。
インドネシアはEV電池の材料となるニッケルの産出国で、インドネシア政府はそれを生かしてEV生産のハブになる構想を持っています。また、ガソリンなどの燃料の輸入に投じる多額の国家予算を減らしたいという思惑も。

そのため、日本メーカーはハイブリッド車の技術的優位性を主張しても、インドネシア政府のEV優先は今後更に加速すると思われます。

EVに主軸を移した対応はタイ、マレーシアなど他の東南アジア諸国でも同様です。そしてEV販売が増えると、そのほとんどが中韓メーカーということで、日本メーカーの影は日本車の「牙城」東南アジア市場でも薄くなることが予想されます。

欧州が脱炭素でEVを推し進める方針なのは言ううまでもないところ。(ドイツのごり押しで「合成燃料」容認といった話はありましたが、EV化の基本線は変わらないでしょう)

【10年後、20年後、一体何が日本経済を支えるのだろうか?】
かつて世界市場を席巻した日本の家電製品は今や見る影もありません。

日本は自動車でもガソリン車・ハイブリッド車に拘ってガラパゴス化するのか・・・。

私自身は車はおろか普通免許さえ持っていませんので(原付のみ)、EV自体には全く関心がありません。ただ、これまで日本経済を支えてきた日本自動車産業の「落日」が予想もされるとなると、「10年後、20年後、一体何が日本経済を支えるのだろうか?」と不安になります。
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電気自動車(EV)普及の加速化 “出遅れ”が目立つ日本

2022-12-04 22:58:41 | 日本
(ロールスロイスは10月18日、ブランド初のEVとなる大型ボディの2ドアクーペ『スペクター』を欧州で発表した。【10月19日 Response】)

【加速するEV化の流れ あのロールスロイスも】
私個人は自動車の普通免許は持っておらず、原付しか乗りません。ですから、車そのものに関しては人並みの知識も関心もありません。 ただ、日本経済を牽引してきたのが自動車産業であることから、日本自動車産業の今後は気になります。

自動車の主流が化石燃料から電気自動車に急速に変化していることは今更の話ですが、そうした流れに日本は対応できているのだろうか・・・という素朴な疑問が。

****EU、内燃エンジン新車販売の35年以降実質禁止で合意****
欧州連合(EU)は27日、内燃エンジン乗用車の新車販売を2035年以降実質的に禁止する法整備で合意した。

EU加盟各国代表と欧州議会、欧州委員会は一連の協議で、自動車メーカーに対して35年までに二酸化酸素(CO2)排出量の100%削減達成を義務化することで意見が一致。また30年以降に販売される新車には、適用するCO2排出量削減率を現行の21年比37.5%よりずっと高い同55%に定める。

内燃エンジンで走るバンの新車も、CO2を21年比で30年までに50%、35年までに100%減らす必要があるとした。

年間生産台数が1万台未満の小規模メーカーについては、排出量ゼロの達成が36年まで猶予される。

欧州議会メンバーとして協議を主導してきたヤン・フイテマ氏は「合意は自動車の運転者にとって朗報だ。排出量ゼロの新車は価格が下がって手に入りやすくなり、誰にとってもより身近な存在になる」と述べた。

欧州委で気候変動問題を担当するフランス・ティメルマンス上級副委員長は、合意は業界と消費者に強いシグナルを送ることになると指摘。「欧州は移動交通手段の排出量ゼロに移行する事態を積極的に受け入れつつある」と述べた。【10月28日 ロイター】
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日本企業が得意としているハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)も対象になります。

EUだけでなく、イギリスも30年までにガソリンとディーゼル車の新車を販売禁止にする予定で、35年にはHVも対象とします。米カリフォルニア州も35年までに排ガスを出す新車の販売を禁止する方針を示しています。

こうした流れの中で生き残るために、あのロールスロイスさえもがEVに。

****英・高級車メーカー ロールスロイス 初の電気自動車を公開****
イギリスの高級車メーカー、ロールスロイス初の電気自動車が公開されました。
18日、報道陣に公開されたのは、ロールスロイス初の電気自動車「スペクター」です。

ロールスロイスは、「スペクター」を高級車初の電気自動車だとアピールしていて、内装には、夜空に浮かぶ星をイメージしたというイルミネーションもちりばめられています。

ロールスロイスは、「スペクター」を皮切りに、2030年までに全ての製品を電気自動車にする方針です。

ロールスロイス・エトヴェシュCEO「電動化がブランドにとって最適だと10年以上前から考えていました。日本のお客様にとって素晴らしい体験になると思います」

「スペクター」の日本での販売価格はおよそ4000万円を想定していて、来年後半にも市場に出る予定です。【10月19日 日テレNEWS】
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EVと言えばイーロン・マスクCEOのテスラですが、今日のニュースではEVトラックも手がけているようです。

****テスラ EVトラックの納車開始 1回の充電で800km走行****
アメリカの電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は、1回の充電でおよそ800km走るトラックの納車を始めたと発表した。

マスクCEO「トラック『セミ』を納車できることに、とても興奮している」
1日、テスラのマスクCEOは、アメリカでEVトラック「セミ」の納車を始めたと発表した。
最初の納入先は、飲料などを扱うペプシコだという。

テスラによると、およそ37トンの荷物を積んだ状態で、1回の充電でおよそ800kmを走行できるという。
マスク氏は、アメリカでのトラックからの排出ガスは、自動車全体のおよそ2割を占めるとして、気候変動対策や、沿道に住む人の健康被害や騒音解消に役立つと強調している。【12月4日 FNNプライムオンライン】
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【EVで目立つ日本の“出遅れ”】
一方で、日本企業のEVへの取り組みはあまり活発でないようなイメージがあります。

****EVシェア、中国や欧州20%超 民間調査、日本「出遅れ」****
各国に拠点を置く民間調査機関ブルームバーグNEFは17日、中国や欧州では電気自動車(EV)の販売台数ベースでのシェアが2022年上半期に20%超となったと発表した。

エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に合わせ、世界のエコカー販売に関する調査結果を公表した。日本は2%に過ぎず、インドやオーストラリアなどと共に「出遅れ」組に分類した。

ただ、日本はEVの購入補助制度の効果によりシェア拡大の可能性もあると分析した。

22年上半期の世界のEV販売台数は約430万台と、前年同期比で約7割増えた。【11月17日 共同】
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購入補助制度もさることながら、日本でEVを普及させるための課題としていつも指摘されるのが充電施設の問題。

****「日本は技術で勝負し、普通充電器を増やすべき」 電気自動車の普及が遅れる日本の課題を自動車評論家が指摘****
自動車評論家の国沢光宏が11月25日(金)、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』に出演。電気自動車の普及が遅れる日本の課題を指摘した。

国沢は、日本で電気自動車の普及が遅れる原因について「ヨーロッパは真剣に、そして急速に化石燃料を使わない方向に動いている。この流れに文句を言ってもしょうがない。日本は技術で負けなければいいだけ。むしろ積極的に取り組んでいくべき」と語った。

続けて「日本の課題は充電器の普及。ヨーロッパに行くと、至る所に200Vの普通充電器がある。アメリカでは空港に行くと200Vの普通充電器がズラリと並んでいる。一方、日本の羽田空港には5つしかなかった。考えられないくらい、やる気がない印象」と指摘した。

また、トヨタ自動車の新型プリウスが、HVとPHEVで販売される事について国沢は「皆さん勘違いしているのは、電気自動車の時代に最終的に移行するのは2050年。電気自動車の環境は整っていなくて、まだ移行期。これから10年、15年は、燃費のいいハイブリッド、PHEVの新型プリウスは大きな役割を果たすと思う。それに新型のデザインは国内だけでなく、世界的にも評判がいい」と期待感を示した。【11月25日 ニッポン放送NEWS ONLINE】
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“まだ移行期”なのはそうなんでしょうが、ただ、その時期に“本気”にならないと取り返しがつかないことにもなんるのでは・・・と危惧しています。それが“勘違い”なのかどうか・・・

お隣の韓国では・・・。

****韓国・ソウル市内のEV充電器3万5千基突破 2年前の4倍以上に****
韓国のソウル市は7日、同市内に設置された電気自動車(EV)の充電器が3万5000基を超えたと発表した。

9月までに設置された充電器は累計3万5216基で、2020年末の8387基の4.2倍に増えた。充電器1基当たりの市内のEV台数は約1.5台。

タイプ別では駐車場、ガソリンスタンドなど生活・交通拠点の急速充電器が2171基、職場など公衆利用施設の緩速充電器が1万4848基、マンション・一戸建てなど住宅のコンセント型充電器が1万8197基となっている。

ソウル市は今年から、市民による充電器設置場所の提案を受け付けている。市民の利便性向上のため、通行量の多い大通りなどに街灯型充電器30基、アクセスしやすい液化石油ガス(LPG)スタンド9カ所に急速充電器9基を設置する計画だ。

兪連植(ユ・ヨンシク)ソウル市気候環境本部長は「26年のEVシェア10%時代の実現に向け先回りして充電器を設置し、街灯型など多様な充電器の設置を拡大するなど充電環境の質を改善する方策を検討している」として、市民の需要に合わせて充電インフラを拡大するよう努力すると述べた。【11月7日 聯合ニュース】
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EVの本場中国ではもちろん。“EV大国の中国、充電施設でも電池技術でも欧米を引き離し中―香港・亜洲週刊”【10月16日 レコードチャイナ】

こういう技術は日進月歩でしょう。「技術的に環境が整っておらず・・・」と言っていたら、あっという間に・・・

****EVの充電が10分でできる新技術誕生―中国メディア****
2022年10月17日、中国メディア・環球網は、10分間で充電が完了する新たな電気自動車(EV)バッテリー充電技術が誕生したと海外メディアが報じたことを紹介する記事を掲載した。

記事は、EVのバッテリー充電時間を10分に短縮する新たな技術が開発され、学術誌「ネイチャー」で発表されたと紹介。新技術ではバッテリーに非常に薄いニッケル箔を添加することでバッテリーの温度と反応性を調節可能とし、あらゆるタイプのEVバッテリーでも10分間の急速充電がほぼ可能であると伝えた。(後略)【10月18日 レコードチャイナ】
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日本の対応が遅れているのでは・・・という疑問は、私のような車に無知な人間だけでなく、国際的評価ともなっているように見えます。

****日系車が神の域から転落―中国メディア****
2022年10月30日、中国メディアの界面は、かつて中国市場を席巻した日系車が「神域」から転落したとする記事を掲載した。

記事は、かつて「化石燃料車の販売チャンピオン」との誉れを受けていた日系車が現在は業界再編の荒波に直面していると紹介。トヨタが大幅な値下げに踏み切って苦境を乗り越えようとしているものの、市場全体を見渡すと日系車は「販売数も価格も下落する」という厳しい状態にあると伝えた。

そして、日系車の現状を招いた要因として3つの点を挙げている。

まずは、化石燃料車に固執したことを挙げ、1980年代から先行者の優位性をもって中国市場に参入して高い評判を獲得してきた日本のメーカーが「どうして自ら快適な場所を捨て、損を出してまで未知の新エネルギー市場に積極的に乗り出そうとするだろうか」とし、化石燃料車で不動の地位を築いてきたことでかえって新しい分野への動き出しが鈍ってしまったとの見方を示した。

次に挙げたのは、中国ブランド車の台頭だ。中国で日系車が売れたのは価格面、経済性の優位性があったからであり、現在の中国ブランド車も同様にその優れたコストパフォーマンスで合弁ブランドが占拠してきた市場を蚕食していると説明。「日系車が中国で成功した道を中国ブランドが学び、そして追い越した」と評した。

3つ目は、時代の主役が新エネルギー車に切り替わったこととし、化石燃料車の時代には日系車が主役で模倣と追い上げの目標とされていたものの、新エネ車の時代になって主役が新勢力や既存企業の新エネ車ブランドへと交代し、かつて日本を追いかけていた存在が業界をリードするようになったとしている。

記事はその上で「BYDや新興勢力をはじめとする新エネ車ブランドがすでに、技術的な強みと戦略によって化石燃料車からの世代交代を実現しようとしている。十数年に及ぶ新エネ車補助政策のアシストが今、花開き、実を結ぼうとしている。日系車の神域からの転落は、化石燃料車時代の終わりが来たことを示すものと言えるだろう。自動車産業は全面的に電動化の時代に入ったのだ」と主張した。【11月3日 レコードチャイナ】
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EVは化石燃料車に比べて技術的なハードルが格段に低く、異業種で参入が容易なのが特徴です。

****自動運転も・・・中国のIT大手「百度」が新EV発表 異業種含めた開発競争が本格化****
中国のIT大手、百度(バイドゥ)などが開発した量産型の電気自動車が発表されました。電気自動車への異業種の参入と競争が本格化しています。

中国のIT大手・百度と自動車大手の吉利が手がけた電気自動車「ROBO-01(ロボワン)」。
1回の充電で600キロ走行でき、百度のAI=人工知能の技術を生かして音声認識によりドアを開けることもできるほか、運転席にはレバーなどが無い設計になっています。価格は39万9800元、日本円にしておよそ800万円。

すでに予約販売が始まり1000台が売れていて、来年、納車予定だということです。

百度は、すでに北京などで無人タクシーの自動運転を実用化していますが、今回発表された車にも高速道路や市街地での一定程度の自動運転機能がついているということです。

電気自動車や自動運転車をめぐっては中国では「ファーウェイ」や「シャオミ」など、ITや家電企業といった異業種からの参入が相次ぎ、アメリカのIT大手グーグルも自動運転車の開発を進めるなど、業種を超えた世界的競争が本格化しています。【10月28日 TBS NEWS DIG】
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自動運転技術については、まだまだ実用化に難しい問題が多いと思いますが、EVの方は今後流れが加速するでしょう。もちろん日本企業も手をこまねいている訳でもないでしょう。

****トヨタ、中国BYDと開発の新型EVを発売 現地向けに****
トヨタ自動車は24日、電気自動車(EV)専用ブランドの新型車「bZ3」を近く中国で発売すると発表した。中国のEV大手、比亜迪(BYD)との共同開発で、トヨタとしては初のセダン型となる。EVの販売が盛んな中国で品ぞろえを広げて、顧客の開拓を急ぐ。価格、詳細な発売時期、生産台数の目標などは未定としている。

トヨタは2021年、EV専用の新ブランド「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」を立ち上げ、その第1弾としてSUBARU(スバル)と共同開発した多目的スポーツ車(SUV)の「bZ4X」を世界で発売した。今回のbZ3はbZ4Xに続く第2弾だ。

bZ3の生産と販売はトヨタの中国合弁会社「一汽トヨタ」が担う。中国の天津にある工場で生産し、現地向けに販売する。1度の充電で走行できる航続距離は「最長600キロメートルを超える」(トヨタ)としており、bZ4Xと同程度となる。

トヨタは中国でガソリン車のほかにハイブリッド車(HV)にも注力してきた一方、EVの販売はまだわずかだ。中国での新車販売台数は21年に過去最高の194万台に達したが、このうちEVは約5千台にとどまった。

トヨタは30年に、EVだけで年350万台の世界販売を目指している。もともと21年5月、30年には世界で燃料電池車やEVを年200万台販売すると表明していた。だが、中国を筆頭にEV需要が急拡大しているとして、EV販売台数の計画を引き上げた経緯がある。(中略)

トヨタは車載電池に30年までに2兆円を投じる方針を示すなど、EVの基幹部品である電池の確保にも力を入れる。22年8月末には日米で電池の増産に最大で約7300億円を投じるとも発表しており、CATLやBYDなどとの提携関係を生かした電池の確保も急ぐ。

トヨタは21年に初めての量産型EVとしてbZ4Xを発表。ただ、急旋回などで脱輪の恐れがあるとして22年6月に国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届け出ていた。10月には原因を特定して対策を実施、生産も再開している。【10月24日 日経】
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中国のEV大手BYDが1~6月に世界で販売したEVは約32万台で、米テスラに次ぐ2位。

【携帯電話・家電製品に続いて自動車もガラパゴス化?】
“トヨタはもともと強みがあるハイブリッド車だけでなく、EVや燃料電池車を「全方位」で開発し、国や地域の事情にあわせて環境規制や市場の変化に対応しようとしてきた。ただ、次世代車として市場で本命視されているEVはテスラや中国勢が先行し、トヨタは追う立場になっている。”【日系メディア】

トヨタは「多様化した社会には多様化した解決策が必要」(トヨタの豊田章男社長)とのことで、水素を燃やして走る水素エンジン車にも力を入れています。
“トヨタ水素エンジン車がデモ走行 世界ラリーで脱炭素を披露”【11月12日 共同】

“トヨタは水素エネルギーこそ未来の形であり、電気自動車やハイブリッド車は過渡的な製品だと考えている”【10月7日 レコードチャイナ】とか。

水素を使う技術は、水素エンジン車以外に燃料電池車(FCV)もあります。トヨタの「MIRAI」など。

水素エンジン車は水素エンジンを搭載した自動車です。 エンジンの燃焼室で水素を燃焼し、その爆発力で動力を得ます。 通常のガソリン車でいうガソリンが水素で置き換わったのが水素エンジン車といえるでしょう。 
これに対し、燃料電池車(FCV)の場合、水素は燃料電池の発電のために使用されます。

FCV最大の問題は水素ステーションの整備。中国はそのインフラ整備にも力を入れているとか。

****中国で燃料電池車産業発展の布石が着々と進む―中国メディア”****
(中略)国家エネルギー局のデータによれば今年6月末現在で全国に270カ所を超える水素ステーションが設置されており、設置数で世界の40%を占めていると紹介。それでも燃料電池車を急速に普及させるにはなおも水素補給能力が不足しているとし、北京市、上海市、広東省の各地方政府が助成金を出すなど水素ステーション建設の促進を率先して行っていると伝えた。【10月26日 レコードチャイナ】
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一連の情報からは自動車の新たな時代に向けた日本の企業・政府の“本気度”の低さが感じられ、化石燃料で世界をリードした日本の自動車産業は、その技術的優位性が故に新たな技術への適応が遅れて“ガラパゴス化”するのでは・・・という懸念が拭えません。

1年前のTVドラマ「日本沈没」では、日本人移民を外国に受入れてもらうための切り札がトヨタをイメージした自動車企業の移転でしたが、10年後、20年後、その「切り札」が残っているのか?

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日中国交正常化50周年 今のナーバスな状況 時代を動かした熱意 中国残留孤児の問題

2022-09-24 22:27:54 | 日本
(日中国交正常化交渉に臨む田中角栄首相と周恩来首相【2015年7月29日 DIAMONDonline】)

【政治情勢とコロナでナーバスな雰囲気のなか、50周年記念イベント開催】
今月29日に日中国交正常化から50周年を迎えるということで、その関連ニュースがいくつか報じられています。

****日中行事ウルトラマンショー中止 コロナ対策が困難と説明****
北京のショッピングモールで24日に始まった日中国交正常化50周年の記念イベントで、在中国の日系企業が中心となり計画していたウルトラマンのショーが中止となった。中国側が求める新型コロナウイルス対策への対応が難しいためだと説明している。

当初は、ウルトラマンと怪獣がメインステージで約10分のパフォーマンスを繰り広げる計画で、24日に2回、25日に1回予定していた。イベント関係者はショーが「争いを想起させる」ため中止になったと話していたが、説明を変えた。
 
イベントの実行委員会は、ウルトラマンのグッズをプレゼントする抽選会に変更した。【9月24日 共同】
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記事にあるように、当初は中止理由として「争いを想起させる」と説明されていました。
なぜ理由が変わったのか・・・よくわかりませんが、別報道によれば、音楽パフォーマンスで予定していた「剣の舞」のビデオ上映も「争いを想起させる」という理由で変更が求められたとか。

少なくとも、50周年を迎えて“お祭りムード”と言うことではなく、台湾問題で日米と中国の対立が強く意識される雰囲気のもとで、ナーバスな感じがうかがえます。

微妙な政治情勢で、中国当局の開催許可が出たのは今月に入ってからのこととか。
“8月下旬、新型コロナに感染した岸田文雄首相に習近平国家主席が見舞いの電報を送ったことで、「日中関係を落ち着かせ、コントロールしようとする中国指導部のシグナル」(日中外交筋)との受け止めが広がった。”【日系メディア】とのこと。 岸田首相のコロナ感染も無駄ではなかったようです。

上記のように“ナーバス”な雰囲気ではありますが、10年前は尖閣国有化に反発する反日デモで記念行事どころではなかっただけに、今回記念イベント開催が実現しただけでも素直に喜びたい・・・という関係者の本音も。

****在中日系企業団体が北京で日中50年記念イベント****
在中国の日系企業などは24日、北京市中心部のショッピングモールで日中国交正常化50年の記念イベントを開いた。

現地の中国人に日本文化に興味を持ってもらうことを狙っており、垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国日本大使は開幕式で「時間がかかっても、国民レベルでの相互理解を通じて信頼を醸成していくことが、日中関係打開の王道であると信じている」と強調した。

中国に進出する日系企業の団体である中国日本商会などがつくる「日中国交正常化50周年記念事業在中国実行委員会」と、中国外務省傘下の中国公共外交協会が共催した。開催に当たっては、中国で事業を行う日系を中心とした企業から協賛金を募って約600万元(約1億2千万円)が集まった。

開幕式で、中国日本商会の池添洋一会長は「新型コロナウイルスの影響などでイベントの準備は困難に直面したが、日中双方の関係者が協力することで困難を克服して開幕を迎えることができた」とあいさつした。

開幕式には、中国側から中国外務省の劉勁松(りゅう・けいしょう)アジア局長や、中日友好協会常務副会長の程永華(てい・えいか)前駐日大使らが出席した。

イベントは25日までの2日間。会場には、ホンダの電気自動車(EV)など日本の商品を展示しているほか、日中両国の料理を組み合わせた創作料理の紹介なども実施。

24日には会場前に行列ができ、モールの上階から会場を興味深そうにのぞき込む親子連れらの姿も目立った。同日午前には会場で安全検査を実施していたが、午後には検査をなくして自由に入場できるようにした。

イベント開催にあたっては、日中関係の難しさが影を落とした面がある。中国公共外交協会との共催は、今月に入りようやく決まったという。また、音楽のパフォーマンスで予定していた「剣の舞」のビデオ上映は中国側に変更を求められた。「争いを想起させる」という理由だったといい、関係者は「コロナ対策と政治的な要素に関して、中国側はかなり神経をとがらせている」と指摘する。

垂大使は24日、産経新聞などの取材に対し、日中関係に関して「民間による役割は非常に重要で大きい」と指摘。その上で「中国にいれば『両国関係の基礎は民間にある』とよく耳にするが、そのことを実感するのは難しい。両国の政治関係が悪化した場合、真っ先に影響を受けるのは民間の往来や交流、活動だ」と懸念した。【9月24日 産経】
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【李克強首相 日本の経団連の会長らとオンライン会談】
50周年を前に、李克強首相は日本の経団連の会長らとオンラインで会談し、関係拡大を訴えています。

****中国首相 経団連と会談 日中関係の発展と中国への投資拡大訴え****
中国の李克強首相は日本の経団連の会長らとオンラインで会談し、両国関係の長期的な発展や中国への投資の拡大などを訴えました。

国営の中央テレビによりますと、22日に経団連の十倉会長らとオンラインで会談した中国の李克強首相は、「あと数日で国交正常化50周年を迎える。中日は互いの発展を客観的かつ理性的に見つめ、中日関係が長く安定的に続くよう推進しなければならない」と訴えました。

その上で、「互いに尊重して相違点を適切に処理し、平和な外部環境と安定した周辺環境を守り、中日と地域国家が共に発展することを望む」と述べました。

また、新型コロナの感染拡大やウクライナ情勢などを念頭に、「今年は予想を上回る要因の影響で中国経済の下押し圧力が強まっているが全体的には回復基調だ」と強調。

「市場化、法治化された国際ビジネス環境を構築して透明で予測可能な監督管理ルールを明確にし、知的財産権を厳格に保護する」として、中国市場に積極的に投資するよう呼びかけました。

さらに李首相は、両国の協力関係拡大のため、RCEPの有効活用や適切な新型コロナ対策を行うという前提のもと、日本との直行便を増やす考えも示しました。【9月22日 TBS NEWS DIG】
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【お膳立てがない異例の交渉 政治家の熱意が時代を動かす】
日中国交正常化当時のエピソードで、久しぶりに田中眞紀子氏もメディア登場。

****50年前の日中国交正常化 田中角栄・周恩来会談 娘の眞紀子氏が披露****
毒を盛られるかもしれないから、眞紀子は連れて行けない。50年前に日中国交正常化を実現させた田中角栄元総理。当時の“命がけの覚悟”のエピソードを、娘の眞紀子氏が披露しました。

田中角栄元総理の長女・眞紀子氏は、22日に都内で開かれた日中国交正常化50周年を祝うレセプションであいさつ。東西冷戦の真最中に中国へと渡った父親の思いを紹介しました。

「夢は眞紀子を連れて世界の要人に会わせることだ」と語っていた角栄氏。ただこの時は、「中国は駄目だ」と言われたといいます。「あれ、約束が違う」と思う眞紀子氏に、角栄氏は。

「これは命がけだ。相手があるし、中国は数千万の人たちが日本によって殺されている。お父さんが行って、毒を盛られるかも、切られるかもしれない。お父さんは議員なんか辞めても死ぬ覚悟で本当に行くんだ。誰かがやらなきゃいけないんだ。眞紀子は一人っ子だから、2人で殺されたり毒を盛られたら、ご先祖に申し訳ない。将来、お前たちの社会が自由に笑顔で交流できる時代を作るためだ」と語ったといいます。

また、角栄氏は交渉相手だった当時の中国の首相・周恩来氏を高く評価していたといいます。

「世界の要人、あらゆる国の人と会ったけれど、周恩来は最高だったと。素晴らしかったと言っていました。私は2人とも本当に英明な政治家であったと思うし、肝胆相照らす(関係だった)」

眞紀子氏は、角栄氏から聞いた首脳会談のエピソードも披露。

周恩来氏は角栄氏に対し、「あなたが命をかけて来てくれたのはわかっているけれど、何千万の中国国民のほとんどは、あなたの訪中を歓迎していませんよと。その前提で交渉しましょう」と切り出したということです。そんな周恩来氏について、角栄氏は「あれだけのこと、事実をスパッと言うんだと、気に入ったね」と振り返っていたといいます。

この日行われた国交正常化50周年のレセプションには、中国の孔鉉佑大使ら300人以上が出席したということです。

孔大使は「歴史のバトンはわれわれの手に渡され、中日関係の今後の発展の重任は我々の肩にかかっています」と強調。両国が交わした政治文書の精神を堅持し、「一層成熟し安定した、健全かつ強靱な姿で、中日関係の次の50年を迎えるようにしなければなりません」と訴えました。

福田康夫元総理は、国交正常化50周年の機会に、先人の思いを思い出し、実現するためにどうしたらいいか、相談し合いながら順調な歩みを続けたい、とあいさつ。「これからの中国は、国際社会の中で安定した平和な勢力であるということ。これを私はこの際お願い申し上げたい」と呼びかけました。
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当時、中国側は毛沢東主席と周恩来首相 日本側は田中角栄首相と大平正芳外相。

“毒を盛られるかも、切られるか”はともかく、田中・大平の日本外交には台本のない交渉に政治生命をかけてガチで臨み、相手との信頼関係を築き、将来に向けて時代を動かそうという“熱意”が感じられました。
昨今の日本外交、あるいは日本の政治家の言動からはあまり感じられないものです。

****中国の覇権主義、大平外相が予言 「低姿勢、50年後変わる」―日中国交正常化****
1972年9月29日、日本と中国は国交正常化を果たした。日本側は首相の田中角栄と外相の大平正芳が主導。日中共同声明をめぐる交渉は一時難航したものの、中国側は総じて融和的な姿勢を取った。だが、その中でも大平は、覇権主義的な動きを強める現在の中国の姿を予言していた。(肩書は当時、敬称略)

◇見切り発車
「中国は低姿勢だったが、50年たったら態度はガラッと変わる。大きく経済発展して日本を見下すようになるよ」。9月29日の共同声明調印式を終え、中国から帰国する日本航空特別機の中で、大平は娘婿でもある秘書官の森田一(88、後に運輸相)にこう語り掛けた。

日本は52年に中華民国(台湾)と日華平和条約を締結して以降、台湾と良好な関係を維持してきた。しかし、71年7月に米大統領ニクソンが自身の訪中計画を電撃的に発表した「ニクソン・ショック」を契機に、中国との国交正常化へ大きくかじを切る。

72年7月の自民党総裁選を制した田中は、首相就任後初の記者会見で「日中関係正常化の機は熟した」と宣言。中国首相の周恩来からは直後に訪中招請が届いた。だが、「決断と実行」の田中がこの時ばかりは「これで失敗したら辞任だ」と迷いを見せたという。

当時、自民党内には親台派の議員も多かった。当初は外務省も法眼晋作事務次官をはじめ日中交渉に反対していた。

田中の長女真紀子(78、元外相)によると、「(中国から)戦争の損害賠償を言われたら日本の財政なんて吹っ飛ぶぞ」と懸念していた田中は、中国側の賠償放棄の意向が漏れ伝わると、「これだ」と腹を決めた。「誰かがやらなきゃ片付かない問題だ。見切り発車するしかない」。

◇「大学出が考えろ」
田中と大平は9月25日に北京に乗り込み、周らとの会談に臨んだ。外交当局のお膳立てがない異例の交渉。森田によれば、最も難航したのは戦争の終結をめぐる書きぶりだった。

日中共同声明調印をもって戦争状態終結だと主張する中国側。日華条約締結時に終結したとしている日本の立場とは相いれなかった。

交渉が行き詰まった26日夜。先行きを悲観する訪中団の重苦しい雰囲気を変えたのは、高等小学校卒を売りにしていた田中の一言だった。

「お前ら大学出は全然だめだなあ」。「じゃあ、どうすりゃいいんですか」と尋ねる大平に、「大学出たやつらが考えるんだ」。これで場は和み、大平は「戦争終結は表現の問題で解決できる」とひらめいたという。

結局、戦争終結の時期は明確にせず、日中の「不正常な状態」は「共同声明が発出される日に終了する」と表現することで決着。北京入りから5日目、調印にこぎつけた。

◇超大国の影
一連の交渉を間近で見た森田の脳裏には、中国側の腰の低さが焼き付いていた。周は戦争の損害賠償放棄を宣言し、日米安全保障条約を事実上容認。「経済力で中国は20世紀末になっても日本のレベルに到達できない」と持ち上げた。

中国側は事前に田中の食の好みを調べ上げ、訪中団をもてなした。真紀子は後に、周夫人のトウ穎超から、夜型だった周が田中の首相就任後、田中に合わせて朝型の生活習慣に変えたと聞かされた。「中国はそれほど真剣だった」と振り返る。

森田も当時、「なぜ中国はこんなに譲るのか」と疑問に思っていた。背景にあったのは、当時の超大国ソ連と中国の対立激化。大きく譲歩してでも対日関係を早期に正常化させた方が得策だという「高度な判断」があったと回想する。

「軍事大国には決してなりたくない」「私たちが台湾を武力で解放することはない」。周は田中との会談でこう語っていた。

それから半世紀。中国は日本を抜いて世界第2の経済大国となり、軍事面でも台頭した。今や米国と世界規模で覇権を争い、東アジアは「発火点」となる危険をはらむ。

そんな中国に今後どう向き合うべきか、森田に尋ねた。「だんだん中国との付き合いは難しくなるよと、当時、大平と話した。大平もどうしたらいいか答えが出ないまま、死んじゃった」。【9月24日 時事】
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【中国と日本の狭間で翻弄されてきた中国残留孤児】
50年を経過した日中関係では、政治・経済・文化以外にも多くの側面が。なかには取り残されたような“陰”の面も。

****日中国交正常化50年 “認定”されず中国に…「自分は一体何者」 2世は支援受けられず 残留孤児…それぞれの今****
29日、日中国交正常化から50年を迎えます。中国と日本の狭間で翻弄されてきた中国残留孤児の今を取材しました。

中国東北部・ハルビンで妻と暮らす白凱躍(はくがいやく)さん。白さんは、残留孤児の認定をめぐり翻弄される人生を送ってきました。

白さん「実の親すらも知らない。無駄に人生を生きてしまった」
中国残留孤児は戦後、旧満州などに取り残された日本人の子どものことで、日中国交正常化を機に本格的な調査が始まりました。

これまでに残留孤児と認定されたのは2818人。しかし、白さんは、「証拠が足りない」との理由から、認定されていません。

白さんが出生を知ったのは35歳で養父の仕事を継ごうとしたときでした。
白さん「養父から“君は私が拾った 日本人の残された子どもだ。将来日本に帰るかもしれないから 仕事を継がせても無駄になるかも”と」

白さん「(事実を知ったとき)農場で号泣したよ」
このとき、養父から渡されたのは1歳ほどで拾われたときに自分がくるまれていた服です。実の両親との唯一のつながり。内側に記された「日本語」が、両親が日本人である“証し”ではないかと寝るときも枕元に置いています。

白さん「日本は自分が日本人だと認めてくれない。中国も中国人だと扱ってくれない。自分は一体何者なんだ」

一方で、日本に帰国しても苦しむ人々がいます。
岐阜県に住む佐藤龍雄さん。親が残留孤児と認定され、1984年に帰国した“残留孤児2世”です。

68歳になった今でも日本での生活になじめず生活相談などを受けています。自宅での妻との会話は「中国語」。今も中国での生活に思いを馳せるといいます。

佐藤さん「(最初は)私は日本に戻りたくなかった。でも父が家族バラバラではだめだと」
職を転々とした佐藤さん。去年、体調を崩して仕事を辞め、今は、貯金をとり崩して生活しています。

佐藤さん「1984年のときは日本語の勉強の制度もなくて、国から(支援も)なくて」
残留孤児1世に対しては年金の支給などはありますが、佐藤さんのような2世への国の支援はありません。
佐藤さん「2世の人はみんな困っている。みんな苦しい」

国交正常化を機に調査が始まった中国残留孤児。50年がたった今もそれぞれがもがき続けています。【9月24日 日テレNEWS】
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