孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ東部情勢  完全には止まない戦闘 財政逼迫のウクライナ事情 親ロシア・トランプ政権誕生で?

2017-01-31 22:58:13 | 欧州情勢

(軍用装備品店「ミリタリスト」で、同店オリジナルのウクライナ製戦闘ベスト(左)とイギリス製のものを見せる店長のアレクサンドルさん【1月6日 朝日】)

昨年末から戦闘激化
ウクライナ東部における政府軍と親ロシア派と戦闘は、2015年2月にベラルーシのミンスクで、ウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領の間で「ミンスク合意」が調印され、一応は停戦状態にはありますが、完全に戦闘が止んだ訳でもなく、ときおり戦闘が激化することがあります。

昨年夏にも戦闘が再燃し、2016年8月4日ブログ“ウクライナ東部  戦闘・犠牲者が増加 欧米・ロシアも停戦合意順守を求めているものの・・・”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160804でも取り上げました。

その後はしばらく落ち着いていましたが、昨年12月中旬から、また戦闘が激しくなっているようです。

****ウクライナ東部で戦闘激化、政府軍と親ロシア派****
ウクライナ東部で1月29日から30日にかけて政府軍と親ロシア派の間で戦闘が起き、これまでに兵士計7人が死亡した。
 
ウクライナでは2014年、分離独立を目指す親ロシア派とこれを阻止しようとする政府軍が正面から衝突、ウクライナ内戦が発生した。  
 
内戦は2015年、ドイツなどの仲介でミンスク和平合意が成立。停戦が続いていたが、昨年12月中旬に戦闘が再開され、年を越して激化の様相を呈していた。
 
事態を重く見たウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は30日、ベルリンでアンゲラ・メルケル独首相と会談した。【1月31日 ロイター】
******************

****東部で戦闘、兵士7人死亡=ウクライナ****
ウクライナ東部で29日から30日にかけ、政府軍と親ロシア派の戦闘が起き、政府軍によると、これまでに兵士計7人が死亡した。一方、親ロ派のメディアは30日、政府軍の攻撃で市民2人が死亡したと伝えた。
 
ドネツク州アウデエフカで激しい戦闘が起きているもようだ。政府軍は30日、フェイスブックに「アウデエフカ周辺は緊迫している。敵は30日朝も迫撃砲などで攻撃を続けていた」と書き込んだ。

一方、親ロ派のメディアは、政府軍が停戦合意に違反して攻撃していると非難した。【1月31日 時事】
********************

互いに相手の停戦合意違反を非難するのはシリアなどと同様で、どちらに責任があるのかは定かではありません。

一方で親ロシア派支配地域との“密売”も
上記のようにウクライナ東部では戦闘が断続的に続いていますが、親ロシア派とウクライナ側の間の“密売”も行われているようです。

****ウクライナ政府支持派、親ロシア派支配地域への線路を封鎖****
ウクライナで27日、政府を支持する活動家らが、ウクライナ東部の分離独立を求める親ロシア派との交易に抗議し、親ロシア派支配地域に通じる線路を封鎖した。政府支持派の報道担当者が明らかにした。
 
同報道担当者によると、元政府側民兵数十人と議員らが、親ロシア派が支配する東部ルガンスク州に通じる主要な線路を封鎖した。数日内に道路も封鎖する計画だという。
 
2014年に東部ドンバス地方で政府軍と親ロシア派の戦闘が始まって以来、双方で合わせて1万人近くが命を落としている。昨年12月末に「無期限」の停戦が宣言されたが戦闘は完全には収まっていない。
 
ウクライナ政府は2015年に親ロシア派支配地域との交易をほぼ全面的に禁止したが密売が横行。同地域からの石炭の購入だけは合法とした。
 
ルガンスク州知事によると、政府支持派は石炭をウクライナ政府支配地域に運ぶ予定だった列車を止めたという。
同知事は、冬の盛りにこのような行動を取ることは「この国のエネルギー安全保障をおびやかす」「燃料供給が再開されなければ、ウクライナ中部と西部の火力発電所の燃料が切れるだろう」と警鐘を鳴らした。【1月28日 AFP】
******************

ウクライナの腐敗・汚職の深刻さはかねてより指摘されているところですから、親ロシア派支配地域との間の“密売”が横行しているというの想像に難くないところです。

ただ、列車を止めた“元政府側民兵数十人と議員”というのも、単なる“義憤”ではなく、おそらくなんらかの政治的思惑があってのことではないかとも推測されます。

ウクライナの政治情勢については、親ロシア派が分離し、結果的に親欧米派でまとまりやすくなったことや、戦闘によって求心力も高まったことで“以前と比べて大きな落ち着きを見せている”との評価もあるようです。【1月10日「ウクライナなう!」http://ukrainenow.net/ukraine-politics/ より】

“以前と比べて”というのは、“オレンジ革命”の時期や、ヤヌコビッチ大統領が亡命を余儀なくされたような激しい対立があった時期に比べれば・・・・の話でしょう。ポロシェンコ政権が順調に統治を進めている・・・という話は聞きません。ジョージア(グルジア)前大統領で、ウクライナ南部オデッサ州の知事を務めるサーカシビリ氏が腐敗・汚職の蔓延を理由に辞意を表明するなどの混乱の話なら聞きますが・・・・。

「ウクライナなう!」も、“以前と比べて大きな落ち着きを見せています”としつつも、“しかしながら、現在行われている様々な改革がうまくいかず、経済の低迷が続いたり、EUやNATOへの加盟プロセスが滞ったとすると、再び国内に混乱が生まれる恐れがあります。”とも。

EUにはウクライナ支援への倦怠感も
そのEU加盟について停滞感が強まっていることは、昨年8月4日ブログでも取り上げたところです。

****ウクライナのEU統合、英離脱で暗雲 域内に倦怠感 「遠心力」抑えるのに手一杯****
英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたあおりを受け、ウクライナのポロシェンコ政権が旗印としてきたEUとの統合路線に暗雲が立ちこめてきた。

EU内にウクライナを支援することへの倦(けん)怠(たい)感が出ていたのに加え、EUが今や内部の「遠心力」を抑えるのに手一杯のためだ。

EUのウクライナに対するビザ(査証)廃止の見通しは遠のき、ウクライナ国民自身にもEU統合路線への失望が芽生えつつある。
 
ウクライナ政界では英国の投票を受け、最高会議(議会)の欧州統合問題副委員長が「展望のなさ」を理由に職を辞するなど、波紋が広がった。ポロシェンコ政権にとって英国の離脱決定は、オランダの国民投票で4月、EUとウクライナの自由貿易を柱とする「連合協定」の批准に「ノー」が突きつけられたのに続く打撃となった。
 
英国の投票後、EU首脳会議に合わせて行われたポロシェンコ大統領とEU首脳の会合は成果に乏しく、「象徴的成果」になると期待されていたビザ廃止に関する合意も見送られた。
 
ウクライナの政治学者、スピリドノフ氏は「貧しいウクライナを統合すれば、(労働移民の問題などで)EUの社会状況がさらに悪化する。ただでさえEU統合路線は幻想的だったが、英国の投票後は、EUの役人がいっそうウクライナを警戒している」と話す。
 
ウクライナで2014年、大規模デモによる親露派政権の崩壊を受けて発足したポロシェンコ政権にとって、EU統合路線は最大の公約であり、よりどころだった。EUも、ウクライナ東部に軍事介入したロシアに経済制裁を発動し、ポロシェンコ政権を後押しした。
 
しかし、EUでは、ウクライナ東部紛争をめぐる15年2月の和平合意が履行されないことへのいらだちが出ている。ロシア側もさることながら、ウクライナが合意に盛られた改憲などを実行していないことに厳しい視線が向けられつつある。
 
ウクライナの国内総生産(GDP)は14年の前年比6・6%減に続いて15年も同9・9%減で、EUとの連合協定の恩恵は見えてこない。

前出のスピリドノフ氏は「国民は欧州統合の話題に疲れている」とし、一部の親欧派政党が方向転換を図る可能性があると語る。東部紛争の政権側元義勇兵など、民族派勢力が力を増している現状もある。【2016年7月11日 産経】
*****************

オランダの国民投票で昨年4月、EUとウクライナの自由貿易を柱とする「連合協定」の批准が否決されたことを受けて、EUはウクライナに対する財政的・軍事的防衛義務を負わないことを明確化することで合意しています。

厳しい財政・経済状況 兵士の装備も自前や支援者寄付で
ウクライナ経済に関しては、下記のようなニュースも。

****ウクライナ、最大手銀行を国有化 不良債権問題の拡大回避****
ウクライナ政府は17日、深刻な不良債権問題が取り沙汰されていた同国最大の銀行プリバトバンクを国有化すると発表した。問題が広がって金融システムが崩壊するのを回避する狙いだ。(中略)
 
国際通貨基金(IMF)はウクライナに対して、持続的な成長のために不透明な金融部門の整理と安定化を求めており、今回の措置はそれに合致したものとなった。
 
プリバトバンクは政治的に強い影響力を持つ富豪のイーゴリ・コロモイスキー氏が保有。ペトロ・ポロシェンコ大統領は汚職との闘いで同氏を早い段階から標的としていた。【12月19日 AFP】
******************

ウクライナ財政が破たん寸前状態にあることは以前も取り上げたことがありますが、上記のような最大手銀行(ウクライナの預金残高の3分の1を保有)国有化が話題になるところを見ると、相変わらずの“綱渡り”状態にあるように思えます。政治絡みの面もあるようにも。

そんなウクライナ政府には親ロシア派との戦闘を維持する資金的余裕もなく、政府軍兵士の装備や医薬品は“自己負担”あるいは“支援組織からの寄付”で調達する・・・という状況のようです。

****前線部隊、装備買わないと ウクライナ****
2014年に始まったウクライナと親ロシア派武装勢力の紛争は、いまも続く忘れられた「戦争」だ。
 
ウクライナ東部ドネツク州ボルナバハ近郊。ミンスク合意によって戦闘はやんでいるが、ウクライナ陸軍第30機械化旅団はなお、約800メートル先の親ロシア派部隊とにらみ合っている。
 
前線にある旅団の地下作戦室を訪れた。そこには5人の下士官がいた。気になったのは彼らの足元。バラバラの色のブーツだった。
 
「俺のはウクライナ製だが、あいつのはカナダ。ほかのやつはドイツかな」
下士官はそういった。さらに部屋の中を見渡すと、5台のパソコンもどれも違うメーカーだった。
 
「実は、パソコンも、冷蔵庫も、ここにあるのは何でも、民間の支援者や団体に寄付してもらったものばかりなんだよ」
 
作戦室の隣の医務室に入った。女性看護兵が医薬品の棚を指さし、「7割が民間の寄付。政府からは3割だけ」と冷たく言う。

実戦の真っ最中にもかかわらず、ウクライナ政府は前線部隊に十分な装備や物資を提供できていない。この戦線を支えているのは民間からの支援だった。
     *
首都キエフの支援者の一人、カテリナ・ビコレンコバさん(37)は「14年以来、戦闘服、質のいいブーツ、応急医療セット、医薬品などを旅団に提供してきた」と振り返る。支援総額は日本円ですでに300万円以上。

ソーシャルメディアなどを通じて寄付を呼びかけ、街の小売店などから様々な物資を少量ずつ買い、前線の兵士たちの要望に応じて直接届ける。
 
前線の兵士たちを支援する動きは企業などにも広がっている。
キエフのスーパーマーケットに、軍用装備品チェーン店「ミリタリスト」があった。アレクサンドル店長(26)によると、05年の創業以来、警備員や治安機関員らが主な顧客だった。ところが、14年にロシアがウクライナ南部のクリミア半島を併合すると一変した。
 
志願兵や支援者らが前線の兵士のために物資を大量に購入し始めた。売り上げは一気に倍増し、その後も高止まりしているという。アレクサンドルさんは「軍から支給される装備は質が悪い」と理由を挙げる。
 
この需要に目をつけたこのチェーンは衣料を中心に自社生産を開始した。
「これが、自社工場のウクライナ製、隣は英国製」と兵士用ベストを見せてくれた。丁寧な仕立てで品質に違いはなさそうだった。ベスト腹部のポケットに防弾プレートを入れれば、防弾チョッキになる基本機能は同じ。だが、ウクライナ製はメッシュ構造を採用し、夏の猛暑の中でも戦えるよう工夫されている。

 ■ベンチャー参入、密輸も横行
この「戦争」は、皮肉にも起業を生んでいる。キエフの「愛国者の武器庫」もその一つ。古びた倉庫の扉を開けて中に入ると、ここで製造された防弾チョッキが山積みになっていた。(中略)
 
仲間とこの事業を本格的に立ち上げたのは、ロシアによるクリミア併合後の14年6月。前年末からヤヌコビッチ大統領打倒の運動を支持するうちに、安価な防弾チョッキが必要だと気づいた。ネットで製造方法を調べ、材料を買い集め、アパートで仲間と製造を始めた。(中略)
 
ウクライナ東部で戦闘が激化するにつれ需要は増え、現在の倉庫に移転。最盛期には、約20人が1日20時間働いた。装甲車にも使われるスウェーデン製の特殊鋼板を切断し、特殊ゴムなどを貼りつけて防弾プレートを製造。狙撃されたときの衝撃を散らすためのクッション材を中にいれたチョッキを、200ドル超で販売したら即完売した。14年夏には1日に約1千着売れたことも。
 
「武器庫」前には購入希望者が何時間も並び続け、「毎日100件以上」の問い合わせの電話があった。
 
電話の主は、東部の戦場に息子を送り出す母親や志願兵ら。政府が招集した6万人から12万人ともいわれる新兵に十分な装備を提供できないことは国民の間ですぐに常識になった。
 
兵士を支援する団体の関係者は「米国から戦闘服やブーツを輸入するときに、暗視スコープなどの物資を紛れ込ませている」と明かした。暗視スコープは3千ドルから4千ドルはする。これらの物資が正規の税関手続きを経ずに戦場へ大量に流入している。
 
米ロ対立まで生んだウクライナ危機の前線はこうした闇市のような軍用装備品市場に支えられていた。【1月6日 朝日】
*******************

なんとも興味深い話ではありますが、支援組織からの寄付や、民兵に依存していることは、戦闘に関して政府がコントロールできない状況をも生みます。

ロシアとの関係改善に前のめりなトランプ政権誕生で
昨年12月にEUは「ウクライナ東部の停戦合意が依然として順守されていない」として対ロシア制裁を延長、アメリカ・オバマ政権はロシア制裁を強化しました。

ウクライナ情勢の今後については、親ロシア的なトランプ政権の対応が注目されます。ウクライナ・ポロシェンコ政権は、これまでのようにアメリカの支援をあてにできない情勢にもなりつつあります。

トランプ米大統領は就任直前に、ロシアに対する制裁解除と引き換えに、核兵器の削減協定を結ぶ可能性を示唆したことが話題になりました。

そのほかにも、トランプ氏が関与した話ではありませんが、クリミアとコソボの“取引”といった話も出ているとか。

****ロシアはコソボと引き換えにクリミアを獲得するか?****
西側メディアのコラムニストで討論クラブ「ヴァルダイ」のメンバーでもあるメリー・デジェフスキー氏は、ロシアは米国との新たな関係を構築する文脈でコソボの独立を承認することができるはずだと考えている。(中略)

専門家らも「米国はロシアのクリミアを承認し、ロシアはコソボの独立に同意する」というシナリオを議論している。

ロシア戦略研究所所長顧問のイーゴリ・プシェニチニコフ氏は「スプートニク」のインタビューで、ロシアがコソボを承認するのは不可能だと述べ、少なくともプーチン大統領のもとでは不可能だとし、「ロシアにはクリミアがロシアであるために米国の支持は必要ない」と語った。(中略)

クリミアは住民投票の結果、自主的にロシアの一部となった。一方コソボは米国やEUの支援を受けて一方的にセルビアから分離した。【1月26日 SPUTNIK】
*****************

最後の一文は、ロシア側メディアらしい、ロシア側の“建前”です。
まあ、そんなに簡単にはいかないでしょうが、こういう話が出ることは、ロシアとの関係を重視し、“取引”が大好きなトランプ大統領誕生ならでは・・・という感も。
コメント (10)

干ばつの危機も迫るソマリア 難民受け入れを停止したアメリカ

2017-01-30 23:00:52 | アメリカ

(ソマリア北東部プントランドのダハル近郊の枯れ果てた土地で、死んだヤギを見つめる少年(2016年12月15日撮影)【1月30日 AFP】)

ソマリア 戦乱に加えて干ばつの危機
東アフリカの「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置するソマリアでは、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派アルシャバーブが、アフリカ連合(AU)軍や軍事侵攻した隣国ケニア・エチオピア軍などの攻勢で首都モガディシオを含む都市部からは駆逐されましたが、未だ地方を拠点に政府や軍などへの攻撃を続けています。

****ソマリア首都でホテル襲撃、28人死亡 過激派が犯行声明*****
ソマリアの首都モガディシオ(Mogadishu)で25日、国会議事堂付近にある人気ホテルが武装集団の襲撃を受け、28人が死亡、43人が負傷した。地元救急当局が明らかにした。国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派組織アルシャバーブ(Al Shabaab)が犯行声明を出した。

事件では最初に、爆発物を積んだ車がホテルの門に突っ込み爆発。治安当局筋によると、続いて少なくとも4人の武装集団が敷地内に侵入し、警備員との銃撃戦になった。だが、武装集団は宿泊客が滞在する本館に到達する前に射殺されたという。死者28人には射殺された襲撃犯は含まれていない。
 
救急隊員らやジャーナリストらが現場に駆け付けた後、2度目の大爆発が起き、ソマリア・ジャーナリスト全国連合(NUSOJ)によると記者7人が軽傷を負った。
 
負傷者には、肩と脚を負傷したAFPのカメラマンと、AP通信のカメラマン、中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(Al-Jazeera)の記者が含まれている。【1月26日 AFP】
********************

ソマリアの住民を苦しめるのは、こうしたイスラム過激派との紛争・衝突だけではありません。
もともと天候頼みの生産力の低い農業・牧畜に依拠している地域ですので、雨不足などの気象条件で容易に干ばつ・飢餓の危機が襲い掛かります。戦闘状態の混乱は、この危機を加速させます。

ソマリアを含む「アフリカの角」は、2011年にも「過去60年間で最悪」とも言われる飢饉に襲われましたが、このときは、当時まだ広く国土を支配していたアルシャバーブが国際支援を拒否し、そのことが住民のアルシャバーブからの離反を招いたとも言われています。

今年もまた、非常に危険な状況にあるようです。

****アフリカの角、1700万人が飢餓に直面 雨不足で深刻な干ばつ****
国連食糧農業機関(FAO)は29日、アフリカ東部の「アフリカの角」地域について、過去数週間ほとんど雨が降っていない上、今後2か月も降雨が見込まれないため、1700万人余りが飢餓に直面していると警鐘を鳴らした。
 
FAOの声明によると、昨年10~12月に雨不足となって以来、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、ソマリア、南スーダン、スーダン、ウガンダは深刻な干ばつに見舞われている。
 
FAOのマリア・ヘレナ・セメド事務局次長は「この地域の干ばつの状況は極めて気がかりだ。特にひどいのがソマリアのほぼ全土だが、被害はエチオピアの南部や南東部、ケニア北部にも及んでいる」指摘。「今こそ行動する時だ」と訴えている。
 
さらにセメド氏は、現在の干ばつの影響があるのに加え「次に雨が降るまで少なくとも8週間を要し、次の本格的な収穫が7月以降になることから、この地域では多数の人が食料不足に陥る危険にさらされている」と警告している。【1月30日 AFP】
********************

こうした紛争と飢饉から逃れて、人々は難民となります。

2016年6月にUNHCR本部が発表したGlobal Trends 2015(年間統計報告書)によると、1600万人以上が国外での難民生活を余儀なくされていますが、出身国別では、シリア(490万人)、アフガニスタン(270万人)、ソマリア(110万人)の上位3か国で全難民の54%を占めています。

一昨年、昨年と欧州に押し寄せる難民の問題が欧州社会・政治を揺るがしていますが、全難民の86%、1390万人が発展途上国で避難生活を送っています。

その受入国で見ると、トルコが最も多く(250万人)、パキスタン(160万人)、レバノン(110万人)、イラン(97万9400人)、エチオピア(73万6100人)、ヨルダン(66万4100人)と続いています。

UNHCRは2015年、各国に13万4000人の難民の第三国定住を要請。各国の政府統計によると、各国は10万7100人の第三国定住を許可しました。第三国定住では、アメリカが最も多くの難民を受け入れています(6万6500人)。【以上、UNHCRホームページより】

国内外に批判が広がるトランプ“大統領令”】
ソマリア難民を含め、第三国定住という形で難民に門戸を開いてきたアメリカですが、トランプ新大統領の“大統領令”で大きく舵を切りつつあることは広く報じられているとおりです。

アメリカ国内の空港での混乱、ニューヨーク州、バージニア、ワシントン、マサチューセッツ州の連邦地裁が、ビザ(査証)などの滞在資格を持つ入国者の送還禁止を命じて大統領令の効力を一部停止する判断を下したことなどが報じられています。

国際的にも批判が強まっており、かねてよりアメリカに対する独自性をアピールすることが多いフランス・オランド大統領は28日のトランプ米大統領との電話会談で、「難民保護の原則を守らなければ、民主主義を守ることはできない」と批判しています。

また、ドイツのメルケル首相は、やはり28日に行ったトランプ米大統領との電話協議で、テロとの戦いは難民やイスラム教徒の多い中東・アフリカ諸国の市民の入国を制限する理由にはならないとして、トランプ氏が署名した大統領令に懸念を表明しています。

カナダのトルドー首相は28日、ツイッターで「迫害、恐怖、戦争を逃れようとしている人たちへ。信仰にかかわらず、カナダの人はあなたたちを歓迎する。多様性は私たちの力だ」と発信、さらに、「カナダへようこそ」との説明をつけて、自身がひざまずいて少女と話している様子の写真(2015年にシリアから到着した難民を出迎えた時の写真)も発信して、直接のトランプ批判は避けながらも、自国の価値観を主張しています。

トランプ大統領との最初の首脳会談を実現して、EU離脱後の米英の“特別な関係”に期待するイギリス・メイ首相は「米国の難民政策は米国の責任」と述べ、直接トランプ氏を批判することを避けていましたが、イギリス国内の批判の高まりで、“英首相報道官は「われわれはこのような手法には同意できないし、採用しない」とした上で「英国民にも影響が出るならば米政府に問題提起する」と述べた”【1月29日 共同】との軌道修正を余儀なくされています。

更に、トランプ大統領訪英招請にも批判が。

****トランプ氏訪問中止を要求=英で対米批判強まる****
難民・移民を規制する米大統領令で多くの拘束者が出ていることから、年内に予定されるトランプ大統領の公式訪英招請を取りやめるよう求める声が英国内で強まっている。
 
訪英はエリザベス女王による国賓待遇の招請で、先週の米英首脳会談の席でメイ首相が伝え、トランプ氏が承諾した。
 
しかし、大統領令による混乱拡大を受けて、訪英への反対論が噴出した。最大野党・労働党のコービン党首は29日のTVインタビューで「(招請は)全く間違っている」と断言。

野党・自由民主党のファロン党首も「この恥ずべき入国禁止措置が中止されるまで訪英を保留するべきだ」と批判した。ネット上では、トランプ氏訪英に合わせて「史上最大の抗議デモ」を決行する動きが広がっている。
 
一方、英議会のウェブサイトに提出されたトランプ氏の招請阻止を求める請願には、30日午前(日本時間同日夕)までに審議対象基準の10万人をはるかに超える100万人以上が署名した。
 
BBC放送によると、こうした事態に首相官邸筋は「米国は極めて重要な同盟国であり、長期的に考えなくてはならない」と述べ、中止要請を事実上拒否。王室はノーコメントの立場だ。【1月30日 時事】 
*********************

トランプ支持派としては、チェコのイリ・オブチャーチェク大統領報道官が28日、米国民の安全を重視した措置だとして称賛しています。同報道官はツイッターに「トランプ米大統領は国を守ろうとしており、国民の安全を懸念している。まさに欧州連合(EU)のエリートたちが実行しないことだ」「チェコ国民の安全は優先事項だ。今や米国にわれわれの味方がいる」とも投稿しています。【1月29日 AFPより】

紛争に苦しむ弱小国を狙い撃ちにしたような“卑劣さ”も
個人的には、難民保護の観点からも、イスラム社会の憎悪を煽り、イスラム過激派に絶好の口実を与えるという意味で対テロ対策としても、賢明な方策とは思いません。

また、90日間入国が禁止された6か国の選定に関して、サウジアラビア・トルコ・パキスタン・エジプトなどテロが頻発する、あるいは過去のテロ関与が疑われている“大国”をはずし、紛争に苦しむ弱小国を狙い撃ちにしたような“卑劣さ”も感じます。

****弱小のイスラム諸国を狙い撃ち、米入国制限はISの思うツボ****
難民受け入れの凍結やイスラム7カ国からの入国禁止を決めたトランプ大統領の大統領令は米国だけではなく世界各地で大混乱を引き起こしている。

入国禁止の対象となった国はイランを除き“いじめやすい弱小国”が中心。テロの脅威を減らすどころか、米国を憎悪したイスラム教徒を過激派に追いやる効果しかない。

ビジネス展開国を回避か
トランプ大統領が27日署名した大統領令のポイントは3つ。1点目は全ての国からの難民の受け入れを120日間凍結、2点目はシリアからの難民は無期限停止、3点目は、イラン、イラク、リビア、イエメン、スーダン、ソマリアの6カ国の市民の入国を90日間禁止する、というもの。
 
この大統領令によって米国行き航空機の搭乗を拒まれたり、米国への入国を拒否された人々は29日までに約300人に上り、米国だけではなく、世界各地の空港などで混乱が拡大した。

米国の永住権や正式なビザを持っている人たちも多く含まれている。たまたま旅行や葬儀に出席するために出国している間に大統領令が発効し、戻れなくなった人たちも多い。
 
こうした混乱の中、米国内の人権団体がニューヨークのケネディ国際空港へ到着後に拘束されたイラク人の難民2人を支援して提訴。連邦地裁が合法的滞在資格を持つ人を強制送還しないよう米政府に命じたが、難民入国を認めるという判断は明確に示しておらず、混乱が収まる兆しはない。
 
この大統領令に対し、入国禁止を名指しされた当該国は強く反発。イラン政府は「イスラム世界に対する侮辱だ」として、イランに渡航する米国民の入国禁止措置を検討する方針を表明した。

イラク議会外交委員会も政府に報復措置を取るよう求めたほか、独仏外相やトルコの首相もトランプ氏を批判するなどイスラム世界を中心に全世界で反米感情が拡大しつつある。
 
標的にされた7カ国のうち地域大国のイランはトランプ氏が選挙期間中からテロ支援国として非難し、核合意の破棄にまで言及していた。しかし他の6カ国は政情不安や内戦下にある国々で、単に「イスラム教徒の入国禁止」という選挙公約を実現するためにだけ選ばれたことが濃厚。

なぜイラクが対象国なのか? 疑問の声も
2001年の米同時多発テロ(9・11)以降、これら7カ国からの移民や、その両親が7カ国出身である者のテロで米市民が死亡したケースはない。特にイラクはトランプ政権が最優先課題とするIS壊滅のために戦っている国であり、米識者からもイラクが対象国に入っていることに疑問が出ている。
 
9・11の主犯グループはサウジアラビア人だったが、サウジは対象ではない。また、エジプトはトランプ政権が過激派と指名しているモスレム同胞団の根拠地だが、エジプトも入っていない。
サウジは米国にとって重要な石油大国、エジプトはこれまたアラブの盟主として米国の同盟国の1つであり、双方とも地域大国であることが対象国から除外された理由だろう。
 
さらに大きな疑問がある。トランプ氏が事業展開していたトルコやインドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)なども一切、対象国に含まれていない点だ。

テロが頻発しているパキスタンやアフガニスタンも含まれていない。
 
テロリストの入国を阻止する目的というなら、まず欧州各国を対象にしなければならない。パリやブリュッセルで相次いだテロ事件で明らかなように、フランスやベルギー国籍のイスラム教徒が犯行グループに多く含まれているからだ。こうしたことからも、今回の入国禁止対象国の選定が合理性のないことが分かる。
 
しかし対象国に入らなかったイスラム教国が喜んでいると考えるとすれば、大きな間違いだ。「イスラム世界には、イスラム教徒としての誇りをトランプに傷付けられたという思いが強い。水面下で反米感情が一気に高まっている」(ベイルート筋)。

IS攻撃にも悪影響必至
反米感情の高まりはトランプ政権のIS壊滅という目標の実現を困難なものにするだろう。今後のISとの戦いには、イラクやシリア、リビアなどとの軍事協力が欠かせないが、今回のトランプ氏の大統領令を侮辱と受け取れば、地元勢力が米国離れをしかねないからだ。
 
トランプ大統領は国防総省に対し、IS壊滅計画を30日以内にまとめるよう指示したばかりだ。計画の中には、米軍事顧問団や特殊部隊の増強、地元勢力との連携強化、前線指揮官への権限委譲などが含まれると見られており、「この時期にイラクなどを怒らせるのは最悪」(同)で、対IS作戦がつまずきかねない。
 
トランプ大統領のこうしたイスラム教徒いじめは、実はISがなによりも望んでいたことだ。米国から拒否され、絶望感や憎悪を抱いたイスラム教徒がISに加わる可能性が高まるからだ。

ISのテロの目的の1つは、キリスト教徒世界にイスラム教徒嫌いをまん延させ、イスラム教徒を追い込んで過激化させることである。トランプ氏はISの思うツボにはまったのかもしれない。【1月30日 WEDGE】
********************

トランプ氏が批判に対し前言を翻し、その場しのぎの弁明をするのはいつものことですが、今回も「メディアが誤った報道をしているが、イスラム教徒の入国禁止ではないことを明確にしておく」「米国は誇り高い移民の国だ。抑圧から逃れる人々に思いやりを見せ続ける」と、これまでの反イスラム・反移民の姿勢を打ち消すような弁明に努めています。

****米入国禁止、内外で抗議拡大=トランプ氏異例の釈明―「テロとの戦いに悪影響」も****
・・・・「米国は誇りある移民の国だ。抑圧から逃れて来る人々に慈悲を示し続ける」。トランプ大統領は29日に発表した声明で、テロリストの入国阻止が最優先だと持論を繰り返しながらも、「移民の国」の精神を忘れたわけではないと釈明した。
 
声明では移民・難民に寛容だったオバマ前大統領と自身を比較し、「私の政策はオバマ氏が2011年にイラク難民への査証(ビザ)発給を6カ月間禁じたのと同じだ」と主張。対象となったイランやスーダンなど7カ国について、「オバマ政権がテロの源と指定した国だ」と力説した。

一方で「90日たてば全ての国にビザを再び発給する」と約束。「私たちは米国の自由と安全を守る。メディアはそれを知っているのに報じない」と報道にも批判の矛先を向けた。
 
長々と「言い訳」を余儀なくされたのは、大統領令への批判が強まり続けているからだ。29日も全米で抗議デモが行われ、15州などの司法長官が「違憲だ」と宣言。大統領令を覆そうと意気込む民主党だけでなく共和党内にも懸念が広がった。
 
また、イランの影響下にあるイラクのイスラム教シーア派勢力からは対米報復を求める声が出ている。スーダンやイエメンは相次ぎ「不満の意」を表明した。
 
トランプ大統領は29日、この問題に関するコメントを私用のツイッターだけで5回投稿。強気の大統領にしては珍しく焦りをのぞかせたが、批判はやまない。

ワシントン・ポスト紙は、大統領が主張する前政権のビザ発給禁止の事実は確認できないとし、声明内容を「安直」と指摘した。【1月30日 時事】 
*******************

白人至上主義のバノン氏が権力中枢へ
こうしたドサクサの中で、憂慮すべき人事も進んでいます。

****トランプ政権の黒幕で白人至上主義のバノンが大統領令で国防の中枢に****
<選挙戦中から恐れられていたことだが、いよいよトランプ政権の極右、バノン首席戦略間の暴走が始まったかもしれない。選挙の洗礼も議会の審査も受けていない男が安全保障の最高意思決定機関NSCの常任メンバーにとり立てられて、我慢も限界だという声が上がっている>

イスラム教徒が多数派の中東・アフリカの7カ国の国民の入国を一時禁止し、内戦から逃れるシリア難民の受け入れを無期限停止する──こんな出来すぎた大統領令を、ドナルド・トランプが一人で考えられたはずはない、と信じる人は少なくない。トランプ米大統領でなければ一体誰の仕業か。多くが黒幕と疑い、何としても暴走を止めたいと思っている男が、スティーブン・バノン大統領上級顧問兼首席戦略官だ。

大統領令が出た翌日の土曜、「バノン大統領を阻止せよ(#StopPresidentBannon)」のハッシュタグがツイッターで拡散された。やり玉に上がったバノンは、右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。米政治情報サイトのポリティコによると、バノンはスティーブン・ミラー大統領補佐官と組んで、関係官庁にほとんど相談もなく、大統領令の草案を作成したという。

バノンはプロパガンダの黒幕だ。権力を守るためなら、今後も手当り次第に政治的な火種を利用するだろう。(中略)

土曜にトランプが署名したもう1つの大統領令によって、そのバノンの米政府内におけるバノンの地位はますます強力なものになった。バノンは、安全保障の最高意思決定機関である米国家安全保障会議(NSC)で閣僚級委員会の常任メンバーに引き上げられた。

代わりに情報機関を統括する国家情報長官や、米軍のトップである統合参謀本部議長を常任から非常任に格下げした。これにより、彼らが委員会に出席するのは彼らの専門知識に関わる懸案事項について議論する場合に限られることになった。

ブライトバートの頃のバノンは悪意に満ちた論調で知られ、人種差別主義者や白人ナショナリストに肩入れしすぎだと、しばしば非難を受けてきた。そんな人物が選挙の洗礼や議会の審査を受けることなく、ホワイトハウスから国防の中枢へと、絶大な権力を握るポストに上りつめていく光景を目の当たりにして、多くの人は我慢も限界だと考えている。(後略)【1月30日 Newsweek】
*******************
コメント

チベット  開発に伴う民族格差 相変わらずの宗教干渉 中国の逆鱗に触れたモンゴル

2017-01-29 22:10:39 | 中国

(ラサ空港の外で来訪者を迎える歴代の中国首脳らが描かれたポスター。この5人を写した写真がチベットのいたるところで見られた【1月29日 CNN】)

伝統的生活様式が消滅 成長の恩恵に民族格差も
中国にとって“チベット問題”は、台湾問題・「一つの中国」原則、新疆ウイグル自治区での「東トルキスタン独立運動問題」、南シナ海問題(九段線・南海諸島)、尖閣諸島問題と並んで“核心的利益”として、“譲ることの出来ない最重要の事柄”とされています。

そのチベットの状況に関する記事は最近はそれほど多くはありませんが、CNNの取材リポートが目につきましたので。

ひところに比べると、中国への抗議を示す“焼身自殺”なども少なくはなってきていると思われ、それなりに落ち着いているのかもしれませんが、チベット関連の情報が多くないのは、中国当局が厳しい取材・情報規制を行っているからでもあります。

CNN取材は、現状について“抗議活動は再燃する一歩手前”とも。

****緊張高まるチベット――10年ぶりの現地取材で見えたもの****
・・・・こうした朝の静寂とは裏腹に、チベットは激動の歴史を経てきた。北京の共産党政府は1951年からチベットを掌握。中国の統治に対する反乱が59年に挫折した後、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世はインドに逃れた。

残ったチベット族の間では抵抗感情がくすぶり、時には大規模な蜂起に発展した。活動家らによれば、2009年3月以降、140人以上が抗議の焼身を行ったという。

中国政府はチベットのこうした側面を部外者に見せたがらない。中国政府はすべての外国人旅行者に対し入境許可証の携帯を義務づけているほか、時には数週間にわたり入境を禁止することもある。記者の訪問はめったに許可されない。

だが昨年9月初旬、CNNなど少数の報道陣は5日間にわたり自治区に招かれた。CNN取材班がチベット訪問を許可されるのは2006年以降で初めて。一方、孤立国家と言われることが多い北朝鮮には同時期に十数回にわたり訪問している。

滞在中は政府の世話役による監視の目が始終光っていた。議論を招きそうな場所には近づけず、踏み込んだ質問もできない。

チベット自治区のペンパ・タシ副主席と会見した際は、難しい質問も投げかけることができればと思っていた。だが、チベットの誰もが幸せで満足していると同氏が80分間にわたり一方的に話すなか、取材班は黙って聞き続けることを余儀なくされた。

インドとの国境沿いにあるニンティでは仏教僧院を訪問したいと要請したが、近くに僧院はないとの答えだった。だが少し検索しただけでも、僧院の写真を掲載した中国国営メディアの2週間前の記事が出てきた。

チベットの日常生活を追っている人々にとっては、抗議活動は再燃する一歩手前だ。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの東アジア担当責任者、ニコラス・ベクリン氏は「チベットは、政治的・宗教的な抑圧が最も厳しい中国の地域のひとつだ」と指摘する。

緊張の主な要因となっているのは漢族の流入をめぐる懸念だ。研究者によると、1964年にチベットにいた漢族はわずか3万9500人。人口の3%以下だった。2010年の国勢調査では、漢族の数は24万5000人となっている。

これは人口の10%以下だが、漢族の商人らは主にラサに住み、多くのビジネスを支配しているほか高給の仕事を独占。チベット族の怒りを強める結果となった。

中国政府はチベットを変革するため、インフラなどを中心に多額の投資を行ってきた。取材では、ラサとニンティをつなぐ多車線の新高速道路が建設されているのを目撃した。取材班は泥だらけの、穴の開いた道路を小型バスで進んだが、高速道路が完成すれれば、9時間の移動時間が半分になるという。

多くのチベット族は依然として極めて貧しく、こうした改善を歓迎している。ただ、負の側面もある。伝統的な遊牧民の生活様式が消滅しつつあるのだ。チベット族は漢族ほど成長の恩恵に浴していないとの不満の声も上がっている。

ラサでのある午後、取材班は昼休みの間に政府の世話役を後に残し、滞在先のホテルからそう遠くない裏通りに入っていった。

そこで会ったのは、1度も学校に通ったことがないと語るチベット族の29歳の労働者だ。男性は以前より収入は増えたとしつつも、漢族の同僚に比べると少ないと不満を漏らした。全く同じ仕事やっている場合でも、チベット族の給料は漢族の3分の2だという。

これはチベット族が直面するジレンマの一例だ。そこでは中国政府の統治をめぐる不満と今より楽な暮らしを求める思いが交錯している。

チベットを訪れる中国人観光客が増加するなか、多くのチベット族は自分たちの文化が脅かされているとも感じている。国営メディアによると、去年の観光客数は1700万人と10年前に比べ急増した。当局者によれば、2020年までには3500万人に増加する見込みだという。

ニンティでは世話役から新たに建設された村に案内された。チベット風の外観を持った店舗やレストランが配置される見通しで、近く観光地としてオープンすることが予想されている。村を建設したのは中国企業。入居する店舗の大半も中国系となる見込みだ。

この場所には長年、チベット族の居住地があったが、村民たちは強制移住させられたという。当局者によれば、村人たちも望めば菓子や茶の販売が許される見通しだという。

CNN取材班は、政府の補助金で小さな農場を改修して観光客用のゲストハウスにした女性にも話を聞いた。政府の世話役が取材班の背後を歩き回り、女性の答えをメモに取っていた。

経済開発や漢族の流入がチベット文化に負の影響を及ぼしていると思うかとの質問に対し、 女性は気まずそうな笑みを浮かべるばかりで、分からないと答えた。

この女性のように言葉が少なくなるのはチベットではごく普通のことだ。活動家らによれば、反政府的な発言をすればすぐに取り調べを受けるか、収監される可能性もある。

アムネスティ・インターナショナルのベクリン氏は、最大400人のチベット族が12年以降、宗教の自由の欠如や経済的な不平等に抗議して拘束されたと指摘。「平和的な方法ですら抗議の声を上げる場所が一切ない点は、今後もチベット社会に深い怒りを植え付けていくだろう」と述べる。【1月29日 CNN】
********************

徹底した宗教活動への干渉も】
中国がチベット地区の開発に取り組んでいるのは事実ですが、それが必ずしもチベット住民の生活向上につながっておらず、漢族との格差を助長する形にもなっているところが問題です。

また、急速な漢族の人的・資金的流入で、伝統的文化が軽視・破壊されることへの不満も強く存在します。

中国当局が住民不満の背景にあると考えるチベット仏教に対しては、徹底した統制・監視が行われています。

****チベット、繁栄とその陰 08年騒乱後、観光開発急進 漢族流入、高級ホテル続々****
海外メディアの自由な取材が認められていない中国チベット自治区を(2016年9月)9~14日、中国外務省が企画した取材ツアーに参加して訪れた。

観光客が10年前の約10倍に急増し、大規模な観光開発やインフラ整備が急ピッチで進んでいた。しかし、漢族の流入や、当局による宗教活動の締め付けなどに不安を募らせるチベット族の視線は複雑だ。
 
「チベットでは天地がひっくり返るような変化が起きた。わずか数十年で、千年以上の道のりを飛び越える奇跡がつくられた」
 
標高3650メートルの区都ラサ郊外。10日夜、「第3回中国チベット観光文化国際博覧会」の開幕式でロサンギェンツェン自治区主席は誇らしげに述べた。
 
巨大な会場では、530企業がチベットの伝統工芸品や医薬品などを展示。1週間の期間中、国内外の観光業者や政府関係者らを含む約20万人が来場した。地元報道によると、博覧会を機に合意した投資案件はチベットとネパールを結ぶ航空会社設立など140件、総額約1千億元(約1・5兆円)を超えたとしている。
 
昨年自治区を訪れた観光客は約2100万人で、2006年の約251万人から約10倍に急増。20年には3500万人を誘致する計画で、自治区の人口の10倍を超える計算だ。06年に青海省西寧とラサを結ぶ鉄道が開通したことや航空便の増加などが背景にある。

 ■「安定には経済」
チベット族による大規模な騒乱が起きた後の08年8月に記者がラサを訪れた時は、市中心部でも壁が焼け焦げ、ガラスが割れたままの建物が残っていた。至る所で武装警察が巡回するなど緊張感が漂っていた。

現在は騒乱の痕跡は消え、チベット仏教の聖地ジョカン寺や歴代ダライ・ラマが居住した世界遺産ポタラ宮の周辺で、大勢の漢族観光客らが散策していた。
 
政府は分離独立運動が続いてきたチベットを安定させるため、地元経済の発展を最重要視する。習近平(シーチンピン)国家主席は昨年のチベット問題に関する重要会議で「国を治めるには必ず国境地帯を治めなければならず、国境地帯を治めるにはまずチベットを安定させなければならない」と指摘した。
 
市内には、インターコンチネンタル、シャングリラなど国際高級ホテルチェーンも開業。四川省などから来た漢族が経営する飲食店や商店も目立つ。寺院の周辺を除けば、中国の他の都市と見た目は変わらない。
 
四川省成都から来て4月に料理店を開いた50代の女性店主は「ラサは観光客が増えて飲食店の需要も高い」と期待する。

 ■高速道路開通へ
海外記者団は12日、ラサから自治区東部ニンティにバスで移動した。高い山の谷間を進む国道沿いに工事現場が延々と続き、クレーン車などの重機がうなりをあげていた。

13年に着工したラサ―ニンティ間の409キロを結ぶ高速道路工事だ。来年に開通予定で投資額は約380億元。21年までに両市を鉄道で結ぶ計画も進む。北京や成都と結ぶ高速道路建設計画もある。
 
ニンティはインドと隣接し、国境をめぐる係争地域を含む敏感な土地。しかし、美しい山並みや渓谷などの観光資源が豊富で、各地で大規模開発が進む。広東省の政府機関や民間企業などが約33億元を投じてチベット族の集落をリゾート地として開発した「魯朗国際観光小鎮」では、チベットの伝統建築を模した真新しい町ができていた。
 
周辺の村では民宿経営にくら替えするチベット農民が多く、68戸のうち39戸が民宿を営む。当局の案内で、21の客室を持つ民宿を経営するピンツォさん(68)に話を聞いた。

小麦や野菜を栽培する農家だった98年までの年収は1千~2千元(現在のレートで約1万5千~3万円)。現在は年2千人以上の客を受け入れ、20万~30万元の年収があるという。

十数年前に共産党員になったピンツォさんは、当局者が見守る前で、「チベットが中国軍に解放されるまで道も電気もなかった。農業の時は食べるものにも事欠いた。今の政策に賛成だ」と話した。

 ■現地民族、宗教抑圧に反感
当局主導で進む開発を、地元のチベット族たちはどう受け止めているのか。本音を聞きたくて、当局側が設定した取材の合間に単独でラサの中心市街地を歩いてみた。

表通りの飲食店や商店の多くは漢族が経営していた。民族構成を示すデータは見当たらなかったが、ラサ市内に限れば、漢族が年々増えてきて、今では人口の半数を超えたと住民は口をそろえる。
 
飲食店を営むチベット族女性は「大きな商売をしているのは漢族が多い。チベット族は生活費を稼ぐ程度の小商いばかり」とこぼす。20代の男子学生は「都市部のチベット族はまだしも、大半の農民や遊牧民は貧しいままだ」と話す。
 
同自治区政府によると、域内総生産(GDP)は20年以上も連続で10%以上の伸びを続けている。ただ、その経済発展の果実を、多くのチベット族が実感できていない様子も浮かぶ。
 
また、多くのチベット族が反感を抱くのが、当局による宗教活動への干渉だ。中国政府は、インドに亡命したチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世を分離独立を目指す「分裂主義者」として敵視している。
 
ジョカン寺周辺で知り合ったチベット僧は「08年の騒乱後、寺院の管理が格段に厳しくなり、地方の僧が修行などでラサの寺院に滞在することは許されなくなった」と話す。寺院間の連絡を絶ち、抗議運動が広がるのを防ぐ目的ではないかという。寺院内には密告者がいて本音を話せないとも語った。彼は数分話した後、周囲を見回し、緊張した表情で立ち去った。
 
路地裏で、同自治区東部から親類を訪ねてきた40代の僧とも話ができた。「みなダライ・ラマを慕っている。インドで会いたいが、我々には旅券が与えられず、国外に出られない」(後略)【2016年9月22日05時00分 朝日】
********************

チベット現状の評価には、多様な見方も
中国が“見せたがっている”チベットについては、以下のようにも。

****日本の記者団がチベット訪問、イメージとの差に驚く―中国メディア****
中華全国新聞工作者協会の招きで、日本のメディア代表団は胸を膨らませてミステリアスな西蔵(チベット)自治区の地に足を踏み入れた。

産業構造の転換や志の高い発展コンセプト、民族文化の効果的な継承、漢族とチベット族の平和な共存など、これら新たな変化は日本の記者の考え方を一新させた。中国記協網が伝えた。

(中略)運送会社のドライバーは漢族で、社長はチベット族、ホテルの社長はチベット族で、スタッフは漢族、こういうパターンも多い。TBSの記者・守田哲深さんは、「漢族とチベット族が深く交流するようになり、互いの依存度も日に日に強くなっている」と感じたという。

代表団は、ラサ市当雄県寧中郷曲才村に住むチベット族の巴魯さんと仁青旺姆さんの家に泊まり、その生活を体験したり、チベット族文化の継承や漢族とチベット族の平和な共存などについて話をしたりした。日本の記者は、「現地取材でたくさんの新たな発見をした。格差はどの国にもあるものだが、チベットでは民族が原因の格差がない」と驚いた様子だった。(中略)

川原田団長は、「これまで、チベットのことは主に日本のメディアが伝えることしか知らなかった。報道の焦点は主に、漢族とチベット族の格差や民族紛争、デリケートな問題などに集中している。その一方で、チベットの経済や社会の発展、民族の団結などに関する報道はほとんどない。

今回の訪問で、私たちが自分の目ではっきり見たものは、チベット族の生活や教育水準が向上していることや現代化されたインフラなどで、今後の報道の視野を広げる助けとなる」との見方を示した。【2016年10月16日 Record China】
******************

“日本の記者は、「チベットでは民族が原因の格差がない」と驚いた様子だった”・・・まあ、取材旅行を許可された側にも、いろんな事情があるのでしょう。

中国当局主導の投資・改革などで、“負の側面”だけではなく、住民生活が大きく変化しつつあるという点は、チベット問題を考えるうえでは留意すべきでしょう。

ダライ・ラマ14世の訪問を受け入れたモンゴルを力でねじ伏せた中国
チベット問題を象徴するのがチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の存在ですが、ダライ・ラマ14世の訪問を受け入れた国は中国から徹底した報復を受けます。

最近、その標的になったのがモンゴル。
昨年11月末に5年ぶり、9度目の訪問を受け入れましたが、“中国側は11月下旬に開催するはずだった両国の議会間の定期会議やモンゴルのフレルスフ副首相らの訪中受け入れや、12月上旬に予定していた外相の訪中受け入れを取り消した。中国とロシア、モンゴルの3カ国で12月に締結する予定だった道路輸送協定も見送りになった。”【2016年12月4日 Record China】

更には“モンゴルから輸入する鉱物に高関税を課し、決まっていた元借款を凍結するなど厳しい制裁”【1月14日 Newsweek】

“モンゴルは中国から何回も侵攻された歴史があり、国民の対中感情は複雑。2005年には「ダヤル・モンゴル運動(汎モンゴル運動)」と名乗る団体が中国系のスーパーやホテルを襲撃する事件を起こしている。”【12月4日 Record China】というモンゴルですが、やはり中国側の圧力は相当にこたえたようです。

“モンゴル駐インド大使が最近、インド外務省に書簡を送ったという。中国の習近平政権によるモンゴルへの制裁を解除するよう、モディ首相から働き掛けてほしいとの内容らしい。”【1月14日 Newsweek】といった動きもあましたが、結局、モンゴル側が「遺憾の意」を表明して関係改善に向かうことになったようです。

****中国、モンゴルと関係修復へ=ダライ・ラマ訪問で冷え込み****
中国外務省によると、王毅外相は24日、モンゴルのムンフオリギル外相と電話協議し、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世による昨年11月のモンゴル訪問で冷え込んだ両国関係を修復する方針で一致した。王外相は「モンゴル側は深く反省し、今後、ダライの訪問を許可しないことを明言した」と述べた。
 
中国はダライ・ラマのモンゴル訪問に強く反発し、モンゴルとの経済協力協議を凍結するなど対抗措置を取っていた。ムンフオリギル外相は今回の問題が両国関係に否定的な影響を及ぼしたことに「遺憾の意」を表明。「『一つの中国』政策を断固支持する」と述べ、関係改善を訴えた。【1月24日 時事】 
******************

中国にとって“核心的利益”というのは分かりますが、「モンゴル側は深く反省し」云々とか、「モンゴルがこの教訓を肝に銘じたことを願う」【1月25日 ロイター】といった尊大な対応が、いつまでたっても、どんなに中国が力をつけても、中国が海外から「大国」としての敬意を受けない所以でもあります。

もっとも、国連対応に関して、「アメリカを支持する国は支援するが、支持しない国は1つ1つ名前を挙げて相応の対応をしていく」(アメリカのヘイリー国連大使)【1月28日 NHK】といった発言を聞くと、中国だけの話ではないようです。
コメント

アメリカ  ウソを“もう一つの事実”と強弁する“トランプ流政治”の危うさ

2017-01-28 22:24:08 | アメリカ

(就任式観衆に関する“ウソ”を“alternative facts”(もう一つの事実)と言い放ち、肩にかかった髪を払いのけるコンウェイ大統領顧問【NBC】 その仕草の裏にあるのは自信か、挑戦的闘志か、あるいはうしろめたさ・不安か?)

【「今はトランプ大統領がいる。彼がお前たち全員を追い出すだろう」】
****トランプ大統領に言及しイスラム教徒女性に暴行****
アメリカ・ニューヨークの空港で、利用客の男がイスラム教徒の女性従業員を蹴りつけたうえ、「トランプ大統領がお前たちを追い出すだろう」などと差別的な言葉を浴びせる事件があり、トランプ大統領がイスラム教徒が多く暮らす一部の国の人たちの入国を一時停止するなどとした大統領令に署名する中、イスラム教徒への差別意識が高まることへの懸念が広がっています。

ニューヨークの司法当局などによりますと、ニューヨークにあるケネディ国際空港の利用客の待合室で25日、会社経営者の男がイスラム教徒の女性が身に着けるスカーフをかぶった従業員の女性に対し、暴言を浴びせたうえで蹴りつけました。

男は、さらに、逃げようとする女性に対して「今はトランプ大統領がいる。彼がお前たち全員を追い出すだろう」などと叫んだということです。

男は警察に逮捕され、差別に基づく犯罪=ヘイトクライムに関連した暴行などの容疑で訴追されました。

アメリカでは、27日、トランプ大統領がテロ対策としてイスラム教徒が多く暮らす一部の国の人たちの入国を一時停止する措置を盛り込んだ大統領令に署名しました。

大統領令について、イスラム教徒で作る団体は「テロ対策でなく、反イスラム主義を勢いづけるものだ」などと批判していて、アメリカ国内でイスラム教徒への差別意識が高まることへの懸念が広がっています。【1月28日 NHK】
*******************

また、“イスラム人権団体によると、西部コロラド州オーロラでも26日、内戦などで世界各地から逃れて来た難民の支援施設で、「おまえたち難民全員を吹き飛ばす」と書かれたメモが2枚見つかり、警察がヘイトクライムの疑いで捜査している。”【1月28日 毎日】とも。

【“alternative facts”(もう一つの事実)・・・なんじゃそりゃ?!】
アメリカ・トランプ大統領はショットガンかマシンガンのごとく、連日“大統領令”を撃ちまくっています。

その内容は、TPP離脱、オバマケア見直し、人工妊娠中絶を支援している外国の非政府組織(NGO)への政府の補助金交付禁止、メキシコ国境の壁建設など不法移民対策強化、テロ対策強化のためシリア難民を含むすべての国からの難民の受け入れの一時停止及びテロが起きている一部の国を対象にした入国一時停止等々。

今後も、国連などへの拠出金削減、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱などが準備されているとか。

どれも非常に重要な案件で、アメリカ国内だけでなく、関係国・周辺国・世界情勢にも影響するものですが、あまりのラッシュぶりに、メディアなどもひとつひとつ詳しく取り上げていられないほどです。

まあ、そのあたりも“トランプ流”の政治手法なのでしょう。どうせ批判は出るだろうから、一気にまとめてやってしまえ・・・公約実現に取り組んでいることを支持者にも強烈にアピールできる・・・。

確かに、これまでのオバマ政治を全否定する連日の対応は非常に強烈で、個人的には批判も多々ある内容ながら、現実が一気に塗り替えられていく様をただ眺めるしかない無力感も感じてしまいます。

そうした“トランプ流政治手法”のなかでも、ひときわ印象的だったのは“alternative facts”(もう一つの事実)という言葉です。

例の就任式観衆に関するやり取りでコンウェイ大統領顧問が言い放った言葉です。

就任式の観衆の数はオバマ前大統領の時よりも少なかった」と報じられたことに対し、初登場のスパイサー報道官は「過去最大の人出だった」と断言。

明らかに事実と異なるこうした発言に関し、NBCの報道番組で「どうして報道官にすぐにわかるウソ(falsehoods)をつかせたのか?」と執拗に追及する司会者に対し、コンウェイ大統領顧問が「Don’t be so overly dramatic about it, Chuck. You’re saying it’s a falsehood, and they’re giving Sean Spicer, our press secretary, gave alternative facts to that.」(そんなに大袈裟にしないで、チャック。あなたは“ウソ”と言うけど、スパイサー報道官は“alternative facts”を示しただけよ。)

そう言い放つと肩にかかった髪を払いのけるコンウェイ大統領顧問の仕草・表情が実に印象的でした。
政治家やタレントの仕草に関する精神分析的コメントがよく行われます。通常は「そんなことが言えるかね・・・」と懐疑的に聞いていますが、このときのコンウェイ大統領顧問の仕草・表情に関する精神分析的コメントは是非聞いてみたいものです。

コンウェイ大統領顧問は10代の頃から夏になるとブルーベリー農場で働いており、16歳のときにはニュージャージー・ブルーベリー・プリンセス・コンテストで優勝したとった経歴もあるようですが、大統領選挙では選挙対策本部長を務め、選挙中には「トランプ氏の調教師」と呼ばれた女性です。

いわば今の“トランプ現象”あるいは“トランプ劇場”を作り出した功労者の一人です。
また、大統領選挙に勝利した初の女性選挙対策本部長です。

“alternative facts”という言葉も、追及をかわすためにとっさに出てきた言葉ではなく、選挙期間中の基本戦略として常に彼女とトランプ氏の頭の中にあったものでしょう。
“どんなウソでも押し通せば、事実として大衆は受け入れる・・・・”

就任式観衆の数は非常に些細なことです。しかし、それをウソで塗り替えてしまうという言動は尋常ではありません。

“元米大統領顧問のデービッド・アクセルロッド氏は「事の大きさからすれば聴衆の数はささいなことだ」とツイッターに投稿した。「(大統領が)それに執着している事実はささいではない」”【1月23日 AFP】

“alternative facts”・・・ウソも強弁すれば“事実”となるという“トランプ流”認識でしょうか。
この“ウソ”に関するトランプ氏及びその周辺の認識が、非常に特異で、また厄介でもあります。

****ウソを恥じないトランプ政権に、日本はどう対応するべきか****
<80年代の感覚で日本批判を続けるトランプがやっかいなのは、「劇場型パフォーマンス」のためには平然とウソをつくところ>

・・・・(中略)そんなわけで「論破するのは簡単」なのですが、ここに困った問題が横たわっているのです。それは「ファクト」が通用する相手ではないということです。

トランプ政権の構造は、選挙戦の時からそうですが「劇場型パフォーマンス」を重視しています。それは敵を作ってその敵を叩くことで、支持者を扇動して自分の政治的な求心力にするという手法です。
 
この「劇場型」というのは、別に21世紀の政治には珍しいものではありません。小泉政権だって、オバマ政権だって、みんな一種の劇場型です。

ところが、トランプ政権が特殊なのは「オルタナティブ・ファクト」つまり「もう一つの事実」、要するに「ウソ」を平気で口にするということです。
 
どんなに事実とは反していても、ある政治的な「敵と味方の対決劇」として求心力に使えるのなら、「ウソも方便」どころか「大きなウソは真実になる」という種類の悪質な扇動を行い、しかもまったく恥じていないのです。
 
この手法は、さすがに大統領に就任したら自粛すると思っていたのですが、就任後も確信犯的に使用しているのですからタチが悪いと言えます。

例えば、23日にトランプ大統領は、議会指導者との面談を行いましたが、そこで「ヒラリー候補が自分より単純な得票数合計で上回ったのは不法移民の票が入ったからだ」と述べています。各州の選管は有権者の確認には様々な努力をしているので不法移民が投票できる州はありません。真っ赤なウソです。ですが、民主党を敵視するという政治的な「劇」にあたってはどうでもいいのです。
 
さらに、「20日の就任式の群衆は史上最高」だという、これまた平然とウソを言って、大統領と同じように報道官もウソに基づく主張を続けたばかりか、補佐官(コンウェイ大統領顧問)に至っては「もう一つの真実だ」と述べて居直っていました。
 
ですから、日本の通商姿勢に関しても、「80年代の貿易戦争を記憶している比較的高齢の支持者」に対して、「憎い日本を懲罰するとカッコいい」という「政治劇」を演じている中で、「敵味方の果たし合い」を面白く見せるには「事実などどうでもいい」ということになるのでしょう。
 
これは大変に危険な相手です。その「ウソを平気で」という姿勢に対して、こちら側が「真面目に怒ってしまう」と、余計に相手の思うつぼで、どこまで行っても対立は解消しないばかりか、対立を相手は政治的求心力の拡大に利用してくるのですから、まったく落とし所が見えなくなってしまいます。(後略)【1月24日 冷泉彰彦氏 Newsweek】
*********************

【「自由の女神が泣いている」】
「真面目に怒ってしまう」と、余計に相手の思うつぼ・・・ということで、どう対応していいのかわかりません。
とりあえず、“メキシコ国境の壁”と“難民受け入れ停止”という、冒頭記事のような排他的風潮を助長している施策に関する批判的な反応をいくつか。

****自由の女神が泣いている」=難民規制のトランプ氏に批判―米****
トランプ米大統領がシリア難民の無期限受け入れ停止などを命じる大統領令に署名したことに対し、米国では「移民の国」の価値観に反すると非難する声が相次いでいる。

米メディアによると、民主党のチャック・シューマー上院院内総務は「自由の女神が泣いている。移民を歓迎する伝統が踏みにじられた」と強い言葉で大統領を批判した。
 
民主党のベン・カーディン上院議員も「冷酷な大統領令は米国の核心的な価値と伝統を損ない、国の安全保障を脅かす」と訴えている。関係国やイスラム教徒の間で反発が広がれば、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦やテロ対策に悪影響が出かねないと懸念も広がり始めた。
 
米自由人権協会のアンソニー・ロメロ代表は、大統領が導入すると表明した「究極の入国審査手続き」について「イスラム教徒差別の間接的表現だ」と非難。宗教差別を禁じた合衆国憲法に違反すると強調した。
 
27日はくしくも第2次大戦中のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)犠牲者を追悼する国際記念日。ユダヤ人団体「Jストリート」のジェレミー・ベンアミ会長は「大統領令は恐ろしい記憶を呼び覚ます。米国は第2次大戦前もナチスの迫害から逃げようとするユダヤ人に避難先を提供せず、多くが命を落とした」と指摘する。
 
米国のイスラム教徒人権団体の間では、連邦政府を提訴しようという動きも出ている。【1月28日 時事】 
******************

****マララさん「胸張り裂けそう」=トランプ氏の難民制限に懸念―米****
ノーベル平和賞受賞者の女性教育活動家マララ・ユスフザイさん(19)は米時間27日、トランプ米大統領がシリア難民などの受け入れを停止する大統領令に署名したことを受け、「戦乱から逃れる子供や両親への扉を閉ざした。胸が張り裂けそうだ」と懸念する声明を発表した。
 
マララさんは、「罪なきシリア難民の子供が差別の標的になった」と批判。「世界が不安定な中で、最も無防備な子供や家族に背を向けないでほしい」と大統領に訴えた。【1月28日 時事】 
******************

****トランプ氏に「壁造るな」 分断の歴史持つベルリン市長呼び掛け****
かつて壁によって長らく街が分断されていたドイツの首都ベルリンの市長が27日、メキシコとの国境に巨大な壁を建設しようとしている米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に対し「壁を造ってはならない」との助言を送った。
 
トランプ氏は今週、大統領選での公約通り、全長約3200キロに及ぶメキシコとの国境に設置する壁の設計と建設を開始するよう高官らに指示した。
 
これに対して、東西冷戦(Cold War)時代の1961~1989年まで「ベルリンの壁」によって分断された歴史を持つ同市のミヒャエル・ミュラー市長は、「1つの国が新たな壁を築こうと計画しているのを傍観することはできない」との考えを声明で発表。
 
社会民主党(SPD)のミュラー市長は冷戦時代の欧州の「鉄のカーテン」による分断にも触れ、「私たちベルリン市民ほど、大陸全体が鉄条網とコンクリート(の壁)で分断されることでどれだけの苦しみがもたらされるかを知っている者はいない」と主張し、21世紀に入った今、「私たちが自由を得たことについて多大な恩がある米国の人々に私たちの歴史的経験が無視されるのであれば、それを受け入れることなど到底できない」と述べている。
 
さらに同市長は朝鮮半島やキプロス島の分断を例に挙げ、「こうした孤立と排除の誤った道をたどるべきではない」とトランプ氏に呼び掛け、1987年にベルリンの壁付近で当時の米大統領ロナルド・レーガン氏がソ連大統領だったミハイル・ゴルバチョフ氏に対して「この壁を取り壊せ!」と要請する有名な演説を行ったことを引き合いに出し、「親愛なる大統領、この壁を造ってはならない!」とメッセージを送っている。【1月28日 AFP】
********************

****壁をつくる時でない」=トランプ氏を批判-イラン大統領****
AFP通信によると、イランのロウハニ大統領は28日、首都テヘランで行われた会合で「国家間に壁をつくる時ではない」と述べ、トランプ米大統領を批判した。
 
ロウハニ大統領は「(1989年に)ベルリンの壁が崩壊したことを忘れている。国家間に壁があろうと、取り除かなければならない」と述べた。【1月28日 時事】
******************

****メキシコへの投資こそ移民防ぐ最善の壁=大富豪スリム氏****
メキシコの大富豪カルロス・スリム氏は27日、メキシコは一丸となってトランプ米大統領との交渉にあたる政府を支援する用意があるとの考えを示した。

同氏は記者会見で「米国内の状況はメキシコにとって非常に良好」で、米経済の成長拡大を目指すトランプ氏の政策は、メキシコ経済や米国で働くメキシコ人労働者にとっても追い風になると強調した。

またメキシコに投資して雇用機会を増やすことが、移民を防ぐ最善の壁になると主張した。【1月28日 ロイター】
*******************

実際、メキシコ経済が好調な現在はメキシコから流入する人数より、アメリカからメキシコに戻る人数の方が多かったように思います。不法移民の主流はメキシコではなく中米になっていたようにも。

残念ながら、こうした声もトランプ氏には全く届かない(聞く気がない)のが現実です。

「トランプ氏のような体格の人物は、気分が上下しやすいタイプが多い。今は就任直後で高揚状態にあり、3、4カ月たたないと冷静にならない」(ヒガノクリニックの院長で精神科医の日向野春総氏)【1月28日 夕刊フジ】

そんな“ハイ”な状態で、世界を混乱させる施策を推し進められても困るのですが・・・・。
コメント

リビア  過激派掃討が一定に進展 分裂状態の“統合”に向けた動きも

2017-01-27 22:11:28 | 北アフリカ

(シルトでの衝突(2016年11月撮影)。【1月27日 AFP】)

【「統一政府」部隊、ようやくIS拠点のシルトを制圧
北アフリカ・リビア情勢について“超簡単”に言えば、カダフィ政権崩壊後、西のイスラム主義主導のトリポリ政府と東の世俗主義主導のトブルク政府が対立していましたが、国連仲介で一応は大統領評議会がつくられ、「統一政府」への権限移譲が図られました。

その結果、西では一応権限移譲が進んでいるものの、東のトブルク政府側は未だ「統一政府」を承認せず、二つの政府が並立する形になっています。
また、西についても、民兵組織のなかには「統一政府」に従わない勢力もあるようです。(従って、現在ある政府は“二つ”なのか、西も含めて“三つ”なのかも定かではありません)

****************
リビアでは11年の内戦でカダフィ政権が崩壊し、反カダフィ派による内紛が続く。

大統領評議会は首都トリポリ近辺を支配しているだけで、統一政府樹立交渉は停滞。東部ではカダフィ氏の側近だったハリファ・ハフタル将軍傘下の民兵が油田地帯などに実効支配を広げ、評議会と対立する。

西部トリポリでも今月、評議会の部隊と反評議会派の民兵が衝突するなど、政情不安が続いている。【2016年12月6日 毎日】
****************

リビアでは二つだか三つだかの政府、部族を背景にした非常に多くの民兵組織のほかに、ISなどイスラム過激派も勢力拡大を狙っていましたが、「統一政府」主導の部隊が、ISの拠点都市シルトをようやく攻略したと報じられています。

****リビアのISに打撃 最後の主要拠点、政府側が奪還****
リビア統一政府側の部隊は5日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に掌握されていた中部の沿岸都市シルトを完全制圧したことを明らかにした。数か月にわたり同市で抗戦を続けていたISにとって、大きな打撃となった。

国連(UN)が支持する統一政府側の部隊の報道官はAFPに対し、「われわれの部隊がシルトを完全制圧」し、「ダーイシュ(Daesh、ISのアラビア語名の略称)の完全崩壊を確認した」と伝えた。
 
シルトは、ISがリビア内で掌握していた最後の主要拠点だった。その奪還作戦では、政府側部隊の数百人が犠牲になった。IS側の死者数は不明。
 
今年8月には米軍が空爆による支援を開始し、今月1日までに戦闘機や無人機、ヘリコプターによる470回の攻撃を実施した。【12月6日 AFP】
*******************

「統一政府」部隊のシルト制圧については、2016年8月23日ブログ“リビア カダフィ政権崩壊から5年 IS拠点シルトを“ほぼ”制圧 進まない「統一政府」樹立”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160823でも取り上げました。

そのときの“ほぼ”制圧から今回の“完全制圧”まで、3か月以上を要しています。
IS側の抵抗の激しさもあるでしょうが、「統一政府」部隊の実力にも疑問が生じます。

シルトが陥落してもISが一掃された訳ではなく、各地に“散った”ということのようです。

****************
シルトに対する攻撃は5月に始まり、政府側で死者600、負傷者3000を出したとのことですが、ISの方では何人が殺され、どの程度が逃げ延び、どこへのがれたかは不明(少し前に、シルトが陥落すると、ISが周辺お国に拡散し、却って北アフリカの治安が不安定になるとの記事があったかと思う)【2016年12月6日 「中東の窓」】
****************

アメリカ ステルス爆撃機でISキャンプを空爆
その残存するIS戦闘員に対し、1月18日、アメリカが2機のステルス戦略爆撃機B2をアメリカ本土から出撃させて徹底した空爆を行うという“異例の作戦”が行われています。

****米ステルス爆撃機、リビアでIS戦闘員80人超殺害 異例の空爆作戦****
アシュトン・カーター米国防長官は19日、リビアにあるイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の複数の訓練キャンプを米軍が空爆し、IS戦闘員80人以上を殺害したと発表した。死者の中には、欧州での攻撃を企図していた者らも含まれていたという。

国防総省は、2機のステルス戦略爆撃機B2を米中西部ミズーリ州の基地から出動させ、34時間かけて北アフリカ入りさせるという、極めて異例の作戦に踏み切った。

コウモリのような形状が特徴的な同機が前回リビアに派遣されたのは2011年。この作戦は、同国で長期の独裁体制を敷いていたムアマル・カダフィ大佐の失脚につながった。
 
18日に実施されたこの大規模な空爆では、B2爆撃機2機に加え、複数の無人攻撃機「リーパー」が合わせて約100個の爆弾をISの訓練キャンプに投下。死亡した戦闘員の数よりも多い爆弾が使用された計算になる。
 
標的となったキャンプは、中部の沿岸都市シルトから約45キロ南西に位置する。シルトはカダフィ大佐の出身地で、リビアで勢力拡大を狙ったISが一時拠点としていた場所でもある。【1月20日 AFP】
****************

突然のごとくアメリカが、しかもステルス爆撃機を米本土から飛ばして空爆・・・一体何事か?と思ってしまいす。
そもそも、IS攻撃に“ステルス”がどれほどの意味があるのでしょうか?(ISがレーダー監視設備を持っているとも思えませんが・・・・周辺国からのISへの情報を警戒したのでしょうか?)

シリア空爆でロシアがいろんな兵器を“披露”した(武器輸出のための“広告”にもなるようですが)ように、アメリカもB2の存在をアピールしたということでしょうか?

アメリカ側は、ベルリンのトラックテロの犯人と連絡を取っていた者(複数)が滞在しているとの情報があり、ISが新たな欧州でのテロを計画していた・・・・と説明しているようです。

トブルク政府はベンガジのイスラム過激派を攻撃
一方、東のトブルク政府の方は、ベンガジのイスラム過激派を攻撃しているようです。

****過激派との戦闘(リビア*****
・・・・もう一つの戦闘は、トブルク政府軍(haftar将軍)が、同じく19日から、ベンガジの過激派に対する攻撃を行っていることです。

ベンガジでは、過激派を中心に地方勢力が革命評議会なる組織を作り、これをhaftar将軍指揮下のリビア軍が長いこと攻撃していて、トブルク政府によれば、その大部分は奪還したとのことですが、まだ過激派の支配するポケットが残っていて、これを攻撃している由

過激派にはアルカイダに近いansdar al sahria とIS要因が含まれている由【1月20日 「中東の窓」】
****************

【“エジプト・カイロで「統一政府」代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍が対談する”との報道
「統一政府」部隊、米軍、そしてトブルク政府軍がそれぞれ“邪魔者”イスラム過激派を攻撃・制圧したことで、政府間の統一交渉の舞台も整ってきた・・・とも言えます。

そんななかで、“エジプト・カイロで「統一政府(トリポリ)」代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍が対談する”という情報が報じられています。

****リビア状況進展セラジ・ハフタル会談近い*****
リビアの混乱状況が、鎮静化の兆しを見せている。先にリビア軍が、シルテ市をIS(ISIL)の手から解放したが、次いでベンガジ市の解放が近いようだ。リビア軍がベンガジ市に立てこもる、アルカーイダ系テロ組織や、IS(ISIL)と戦闘を展開しているが、大分リビア軍の支配地区が、拡大しているようだ。

合わせて、カイロでリビアの統一政府(トリポリ)代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍が、対談することが、予定されている。この対談は、セラジ首相とハフタル将軍が、直接二人きりで行う場面もある、と報じられている。

この会議に先立ち、チュニジアのバージー大統領がカイロを訪問し、二国間関係に加え、アフリカ首脳会議でリビアの問題を、話しあうことで意見交換を、行っている。

なお、セラジ首相とハフタル将軍との話し合いには、エジプトとロシアの後ろ盾がある、ということだ。ロシアとすれば、アスタナで開催された、シリアの和平会議が、ほぼ成功したことに合わせ、リビアの問題解決も成功させたい、ということであろう。

こうなると、ロシアはシリアに次いで、リビアに軍事基地を、持つことになろうし、中東での発言力も拡大し、アラブ各国との関係も、進展するということになろう。それは、アメリカの民主党や軍産複合体にとっては、不愉快な動きということになろう。【1月27日 佐々木 良昭氏 「中東TODAY]】
*******************

ロシアの関与については上記記事以上のことは知りませんが、リビアに隣接するエジプト、チュニジア、アルジェリア3国の和平に向けた動きと連動しているようです。

シリア同様、アメリカ抜きで事態が進展する・・・という話でしょうか。

少ない情報 リビアでの取材の困難さ
とにかく、リビアに関しては情報が少なく、書いていてもよくわからないことが多々あります。

情報が少ないのは、いついまでたっても分裂状態がおさまらず、世界の関心がもはやリビアから離れてしまっているということもありますが、非常に多くの勢力が跋扈するリビアにおいて取材することが難しいということもあります。

****AFP記者コラム】分裂と混迷のリビアから続ける報道****
今リビアから報道するということは、控えめに言っても難題だ。敵対し合う2つの政府が国内の異なる場所に樹立されている。何十もある武装組織が、それぞれの縄張りで幅を利かせている。

これらのいずれかが世界に何かを発信しようとするときには、ソーシャルメディア、主にフェイスブック(Facebook)を活用する。だがこれらの発表が、実際に起こっていることを本当に反映していると確信することは決してできない。

そのせいで混乱が生じることもある。特にここでは国民の大半がフェイスブックからニュースを得ているのだからなおさらだ。
 
私が毎日最初にしなければならないことの一つは、こちらとあちらの政府、さらにこちらとあちらの民兵組織のそれぞれについて、その日の担当者を特定することだ。連絡先はころころ変わる。幹部や広報担当者もしかりだ。
 
おまけに国家は二分されている。国際社会が後ろ盾となっている政府は西部に位置する首都トリポリにあり、一方、元リビア軍将官ハリファ・ハフタル(Khalifa Haftar)氏と近隣諸国の支持を受ける政府は東部を拠点としている。

両政府がそれぞれ独自の通信機関を抱えているが、名称はどちらも「国営リビア通信(LANA)」だ。両方のLANAがそれぞれの政府の声明文を発表し、さらに相手側の信頼性をおとしめようとする。
 
よって私の仕事には困難が付きまとう。例えば、東部の政府がトリポリで起きた衝突の死者数を公表したとする。トリポリの政府からはまだ衝突に関する発表さえない。その場合、私は東部政府の発表をうのみにして良いのだろうか? 
 
真の状況を見極めるため、複数の情報筋(5~6つあるのが理想)を確保するようにしている。そうして初めて、情報を外に出すことができる。

私が仕事をするのは大抵夜だ。リビア人は就寝するのも起きるのも非常に遅い。だから情報の大半は夜入ってくる。だから事件が起こって現場に向かおうとすると厄介なことになる。全土に無数の検問所があり、犯罪率は異常に高く、誰の慈悲を乞わざるを得なくなるか知る由もない。
 
リビア人にとって、ニュースの主な入手源はソーシャルメディアだ。ここでは誰もが携帯電話を持っている。だがインターネットにアクセスできるからといって、十分に情報を得ていることを意味するわけではない。当局者らは、あるメディアに対して発した声明を、その直後に別のメディアに否定してみせることもままある。

■真実とうそ、そのはざまにある何もかも
真実とうそ、そしてそのはざまにあるありとあらゆる情報──とにかく全てがフェイスブックに投稿される。
ネットへのアクセスが遮断されれば、この国の状況はましになるのではという気さえすることもある。そうすれば人々はうわさにもアクセスしなくなる。そもそも出回っている情報の約9割がうわさ話なのだ。(中略)
 
国の治安部隊の不在も事態を複雑にしている。国連(UN)とトリポリの政府は、政府機関や大使館の警護に当たる「大統領警備隊」なる組織の創設を検討している。
 
どこかで何かが起きた場合に情報を得るには、その区域を牛耳っている民兵組織を通す必要がある。ただし民兵組織は支配地域内の秩序維持という名目で政府から財政支援を受けているため、自分たちの縄張り内で衝突が発生した場合を除き、毎度口を開いてくれるとは限らない。

現場で直接情報収拾に当たってみることももちろん可能だが、外国人にとっては危険を伴う。私のようにチュニジア出身で、リビア国内でも同姓が見つかる「近場の外国人」でもそうだ。民兵組織の支配地域は常に変化し、検問所は林立し、スパイ容疑をかけられることも珍しくない。
 
こういうジグソーパズルのような状況の中で働くには、一定のノウハウが必要だ。例えばシルトでは、帳面よりもカメラで仕事をした方が良い。地元民兵らは私が鉛筆を出して何をしているのかといぶかしみ、スパイに違いないと断定されてしまう。
 
それはムアマル・カダフィ政権下でも同じだった。カメラを持っていたおかげで危機的状況を回避できたこともあった(ジャーナリストならばカメラを持っているはずだと思われたようだった)。ところが首都トリポリでは真逆だ。どんな場合でもカメラを取り出してはいけない。
 
首都には首都ならではの難しさがある。表立って取材して良い時と、用心すべき時をわきまえなければならない。市内に民兵組織がいくつあるのか、またそれぞれの支配地域はどこなのか、誰も正確には把握していない。

数十の組織が存在し、複数のグループを取り仕切る上部組織が少なくとも5つあるのは間違いない。だが厳密にはいくつあるのか、答えられる人間はいない。その点、地方都市は1つまたは2つの地元部族を主とする民兵組織が取り仕切っているので分かりやすい。(中略)

犯罪率は極端に高く、とりわけ外国人が狙われる。リビア人は大半が武装しているため、泥棒も地元住民の家に侵入する危険は冒さない。ロケット発射装置を備え付けてある家に入ってしまうかもしれないのだから…。(中略)

2011年のリビアでは、記者はどこへ行っても歓迎された。だがそれはもう遠い昔の話だ。今は私が話す相手の多くが、私のことをフランス政府のスパイだと思い込んでいる。
 
苦労しているのは私だけではない。記者仲間の多くがこの国を去っていった。停電や電話回線の遮断のせいで、仕事環境はますます厳しくなっている。
 
私が最も恐れているのは空港の閉鎖だ。民兵組織が統制しているため、急いで出国したい時に問題になりかねない。ある意味、今のリビアは何もかもが偶然的だったカダフィ時代と変わらない。しかも今はそこに、治安上の混乱が加わっている。
 
民兵組織は、地元の「有力者ら」からなるどちらかの政府から資金を得ている。中には密航に関わって金もうけをしている民兵組織もある。

彼らは沿岸警備を担うが同時に、欧州行きを切望する移民らがひしめく船の出航も管理している。時には密航あっせん業者を阻止し、自分たちの「仕事」を続けるためとして政府に金銭を要求することもある。

一方でリビアは素晴らしい国でもある。優美な景観に恵まれ、生活のリズムはゆったりしており、古代ローマ時代にさかのぼる遺物の保存状態も良い。

この国の最大の問題は、国よりも地方、地方よりも部族が優先されることにある。おのおのに強烈な独立心があるため、国の一致団結を保つ集合体が生まれにくいのだ。【1月27日 AFP】
******************

リビア人と区別がつかないチュニジア出身記者でも上記のように取材には苦労していますので、欧米系記者が動ける余地は殆どないでしょう。

そうした情報不足のなかでの前出“統一政府代表のセラジ首相と、トブルク政府のハフタル将軍の会談”報道ですが、ぜひとも実現し、事態進展に寄与することを望みます。
コメント

オランダ 「自由と寛容」の国での反移民感情の高まり

2017-01-26 22:31:31 | 欧州情勢

(独西部コブレンツの集会で21日、国旗が振られる中、登壇した欧州の右翼政党の党首ら 中央金髪男性がオランダ「自由党」のウィルダース党首 前列左端女性がペトリ「ドイツのための選択肢」党首、その横がフランスのルペン「国民戦線」党首 【1月23日 朝日】)

EU崩壊に向けた「リードシープ(先導羊)」となる可能性
昨年決まったイギリスEU離脱に関する交渉が本格的に始まる今年は、EUにとってはその存在が維持されるのか、あるいは否定され崩壊に向かうのか・・・重要な1年になります。

それは単にEUという組織の問題ではなく、世界の政治動向を決定するものでもあります。
アメリカのトランプ政権誕生に加え、EUが崩壊・機能不全に陥ることになると、「自国第一」のポピュリズム・あるいは極右的排外主義が世界政治の主導権を握り、一方で中国・ロシアもその影響力拡大に手段を選ばない・・・・という、むき出しの自己中心主義・不寛容が世界を覆い、弱肉強食の世界ともなります。

そこにあっては、人権とか民主主義といったものは殆ど顧みられることもありません。
「自国第一」の国家間のせめぎあいは、武力衝突の危険性をも高めます。

そうした「悪夢」に向かう重要な年にあって、特に4月から5月に行われるフランス大統領選挙と、9月のドイツ総選挙が決定的な意味を持つことは再三取り上げてきましたが、それに先立って3月に行われるオランダの総選挙も“オランダが(羊の群れを先導する)鈴付き羊となる可能性”と言う点で非常に重要です。

ドイツのガブリエル経済相は26日、「欧州の敵(ポピュリスト)が再びオランダまたはフランスで成果を上げれば、われわれはEU崩壊の可能性という脅威に直面することになる」と警告しています。【1月26日 ロイターより】

ドイツにとっては、自国選挙の前にオランダ・フランスで流れができてしまうと非常に苦しいものがあります。

フランスでは極右ルペン氏を抑えると思われている保守派フィヨン氏に、夫人の不正給与疑惑が出ています。

オランダでは、ウィルダース氏率いる極右政党が世論調査ではトップに立っており、オランダがEU崩壊に向けた「リードシープ(先導羊)」となる可能性が高まっています。

****オランダ総選挙、欧州極右に吉と出るか****
3月の選挙で欧州各国の先導役になる可能性も

今もネット上で売買される有名な1962年の航空会社のポスターは「慎重で時間厳守のオランダ人」の「信頼性」をうたっている。オランダは落ち着いた寛容さや親ビジネスでも定評があり、調和の取れた合理性というイメージの国だ。
 
しかし不合理さの時代を迎え、それが現実にかき消されつつある。3月15日に行われるオランダ総選挙に向け、世論調査では一貫してヘルト・ウィルダース党首率いる極右政党「自由党」がリードを保っている。
 
人種差別をあおったとして先月有罪判決を受けたウィルダース氏は、反イスラム・反移民・反欧州連合(EU)を掲げ、マリーヌ・ルペン党首率いるフランスの極右「国民戦線」やドイツの新興政党「ドイツのための選択肢(AfD)」とともに欧州極右勢力の一端を担う。両党はそれぞれ5月7日、9月24日の国政選挙でカギを握る存在に浮上している。
 
最多の議席を得ることで必ずしもウィルダース氏が政権の座に就くわけではないが、EU発足以来の加盟国でトップの支持を獲得すれば、他国の極右政党がそれぞれの選挙戦でまともさをアピールしやすくなるだろう。

特に不透明な政治状況の下で再選を目指すアンゲラ・メルケル独首相はぎょっとするはずだ。ウラジーミル・プーチン露大統領は欧米諸国、さらには西側という概念に亀裂を生じさせることへの自信を深め、ドナルド・トランプ米新大統領は欧州が結束しようが解体しようが米国には関係ないという考えを一段と強めるだろう。
 
2017年に欧州で続く重要な選挙を前に、米新大統領は欧州の不安定さに拍車をかけている。米国の状況を「殺戮(さつりく)」と呼ぶトランプ流の誇張表現は、欧州の極右勢力が自国で否定的主張を大げさに訴えるための正当性と推進力を与えるからだ。

「途方もない負の影響」
トランプ氏の就任演説でのアルマゲドン(終末の大決戦)風の論調は、オランダ人のアイデンティティーがイスラム教の重圧を受けて消滅の危機にあるというウィルダース氏の主張を強化することになった。(中略)
 
オランダの新たな不合理さには強力な政治的前例がいくつかある。
直近の例では、昨年行われたEUとウクライナの「連合協定」の是非を問うオランダの国民投票で「反対」票が上回った。(中略)

ウィルダース氏は結果的に自らが訴える基本的テーマの2つを結びつける好機を得た。EUへの懐疑論と、高潔さとはき違えたオランダの寛容さはもうやめるべきだという主張だ。
 
本人たちは隠したがるが、ウィルダース氏とルペン党首にはEU離脱という共通見解を超える大きな違いがある。(中略)
ウィルダース氏の方がより終末論者に近い。21日、AfDの呼びかけでドイツに極右指導者が集結した際、ルペン党首の隣に着席したウィルダース氏は、2017年が「イスラム化を容認する」政治家から欧州を「解放する」年になると予言した。

断崖に向かう欧州の先頭に
先週の世論調査を集計すると、同氏が率いる自由党は2位につける与党・自由民主党(VVD)を2~6議席リードする。これは政権を奪取するのに十分な差ではなく、投票結果をもとに他の政党が連立政権を樹立することも考えられる。(中略)

ルッテ首相は実際、23日に相手の縄張りに踏み込む行為に出た。(中略)
 
しかし今のオランダの有権者はそんなことに目もくれず、政治のルールを守ることは報われない美徳となりつつあるため、オランダが(羊の群れを先導する)鈴付き羊となる可能性はある。
 
身のすくむような断崖に向かう「欧州」という羊の群れの、文字通り「リードシープ(先導羊)」となるのだろうか。【1月25日 WSJ】
*****************

首相が移民批判の意見広告
上記記事で、ルッテ首相が“相手の縄張りに踏み込む行為に出た”と言っているのは、排外的な主張のウィルダース氏に支持者が「流れている」状況で、政権与党自身が移民に対する厳しい姿勢を示すことで、この「流れ」を止めようとするものです。

****<オランダ>首相が主要紙に意見広告 移民批判示唆で波紋****
反移民を旗印に政権批判を繰り広げる極右の自由党への支持が広がるオランダで、ルッテ首相が「普通に振る舞え。さもなければ国を出ろ」と訴える意見広告が主要紙に掲載され、波紋を呼んでいる。

オランダの価値観に従わない移民系住民への批判を示唆する内容で、3月に下院選を控えて極右勢力支持層の取り込みを狙ったものとみられる。
 
意見広告は23日付のアルヘメン・ダフブラット紙などに掲載された。ルッテ氏はこの中で「自由のためだけに我が国に来た人々がそれを乱用して問題を起こしている」と指摘。同性愛者や短いスカートの女性が非難されているとの例を挙げて、「この国を根本的に否定する人は出て行った方がいいという考えはとても理解できる」と述べた。同性愛や女性に抑圧的な一部のイスラム教徒系移民を示唆して批判する内容だ。(中略)
 
自由党のウィルダース党首は意見広告を受けて「国民をだますのはやめろ。我々の自由と安全、文化を奪ったのはあなただ」と反論するビデオをユーチューブに投稿した。【1月24日 毎日】
*******************

選挙結果がどうなるかにかかわらず、移民に対してはすでに厳しい姿勢が強化されつつあります。

対移民感情変化の背景には、“社会参加”を前提する方向への福祉制度の変化、“コミュニケーション能力”を求める産業構造の変化
「自由と寛容」を重んじる国という従来のオランダのイメージと、現在の極右・自由党の台頭、首相の厳しい意見広告といった現実が、結びつきにくいところがあります。

『反転する福祉国家ーオランダモデルの光と影』の著者、水島治郎氏(千葉大学法経学部教授)は、オランダの経済・福祉制度・対移民政策の変遷について、以下のように語っています。

****オランダの光と影:寛容と排除は何によってもたらされたか?****
・・・・ところでオランダモデルにより活況を見たオランダですが、以前は「オランダ病」と言われ、福祉の手厚さが財政負担を生んで、経済は低迷していたそうですね。
(水島)1970年代に整備された福祉制度は非常に手厚くて、たとえば会社員がスキーで骨を折って働けなくなったとしたら、それで2、3年休んでも給料の80%は保証されていました。
ところが1970年代のオイルショックで企業業績が悪化し、失業率が高まりました。(中略)1980年代に入ると、さすがにこれでは支えきれないという事態になりました。

日本だと、激しいバッシングが起きて生活保護給付額を引き下げるような話になりましたが、オランダではどうやって労働市場から出た人にもう一度働いてもらうかというときに、鞭だけではどうにもならないという議論になり、公的事業による職業紹介サービスや職業訓練を保証する施策が行われました。1990年代にそういうことをやったおかげで、経済が上向きになったのです。

失業しても悠々暮らせたときのオランダの産業構造にはどういう特色があったのですか?
(水島)1970年代後半から1980年代前半は製造業からサービス業への転換時期でした。社会福祉に充てられた潤沢な資金は、北海油田という天然ガスのあがりのおかげでした。それがオイルショックでダメージを受け、造船業をはじめとする製造業が打撃を受け、サービス業への転換が起きた際、手厚い福祉給付が重荷になり始めたというわけです。

オランダは小国なので対応が早く、そのため労働組合もパートタイム労働や女性の登用を促進し、企業側もサービス業に対する重点化を行いました。グローバル化を迎えたときは大国より小国のほうが身動きがとりやすいのです。

(中略)オランダは政労使の協議もあって迅速に制度を変えられるし、そのため安楽死や売買春の自由、同性間の婚姻が90年代に合法化されました。それも小国らしい機敏さゆえのことでしょう。

それらも他国では論争を呼ぶ議題ですが、国民的な合意が得られたのでしょうか?
(水島)キリスト教系の信者のコアな人からは批判はありますが、都市が国の中心であるので都市的な文化が強い。そのため個人の自由を重んじる傾向が強いので、賛成が多数を占めていると言えます。

都市的な個人の自由の尊重が国レベルでもあるということでしょうか。その寛容さが以前は移民に対しても同様にあったわけですね?
(水島)はい。ヨーロッパでは少子化は日本より早く訪れ、第二次大戦後の経済発展期にすでに国内労働力は不足していました。日本は農村の余った労働力が都市に流入することで十分足りました。だから大都市の近郊に多数建てられた公団住宅は、まさにそのような労働力の受け皿だったわけです。

ところがヨーロッパでは国内では労働力を確保できず、オランダでは1950年代から旧植民地や地中海地域から大量に労働者を受け入れ、工業労働に従事させました。そのときにはオランダ語が話せるかどうかは問われない。ただ若くて元気があればそれでよかったし、モロッコやトルコのイスラム教徒でも問題なかった。いずれ帰るからそれで問題ないと思っていたのです。

家族を呼び寄せるとか婚姻の相手を招くとか考えていなかった?
(水島)そうですね。トルコやモロッコでは仕事がありませんから、故国に戻るよりもオランダに留まることを選んだのは当然でしょう。労働力が足りていないところに人が移動するのが普通ですから。日本人が戦前、アメリカやブラジルに大量に移民したのと同じです。

移民でも福祉は手厚く保障されたのですか?
(水島)オランダの社会保障は国民であることが要件ではありません。住民として認められていたら社会福祉を受ける権利があります。だから移民たちが1970年代の産業構造の転換で失業したのなら、出身国へ帰るよりもオランダで暮らすことを選ぶし、子供が生まれたら社会保障を受けながら生活をしていくことが合理的な選択でした。

国民であることが要件ではないとしたら、オランダ社会のメンバーシップとはどう考えられているのでしょう?
(水島)1980年代はリベラルな時代でトルコ、モロッコ系が定住して次世代が生まれてきた時代では、多文化主義を掲げていました。さまざまな文化の共存を理想とする流れがありました。それが1990年代に入り変わりました。福祉改革により仕事職業を探す努力をしないと生活保護や福祉給付がもらえなくなったのです。

そこで質問に答えるとしたら、「なんらかの形で社会に参加するという意思を見せた人」ということになるでしょうか。そういう努力をする人に恩恵としての福祉を与えるというわけです。

こうした変化の背景には「移民たちは一方的にオランダ社会に依存しているだけではないか」という批判があります。「彼らはトルコ語やアラビア語を話し、集住地区を形成し、オランダ社会に溶けこまないし寄与しない」。福祉政策の変化が彼らの見方にも影響を与え始めました。

求められる労働に参加しない集団が異物に見え始めた?
(水島)かつては住民として何年も住んでいるというだけでよかったのですが、1990年代以降、オランダ社会に対する理解やコミュニケーション能力が求められるようになり、2000年になると試験が行われるようになりました。文化、言語とその背後にある宗教が実は社会のメンバーシップとなる大きな条件になっていったのです。

移民排除の施策は、ヨーロッパ各地で見られるネオナチの動きと関連しているのですか?
(水島)それだけでは言い尽くせないところがこの問題の難しいところです。たんなるゼノフォビア(外国人嫌い)でもない。もちろん背景にあるのでしょうが、1960年代は外国人労働者を歓迎していたように、ゼノフォビアが現れるかどうかは、状況に依存するのであって、直接的に結びついているとは言えません。なぜゼノフォビアが力を持ちえたかを説明しないといけない。

外国人排除や移民批判といえば、オランダの政策転換は、いわゆる排外主義から来る暴力的なものをイメージしがちですが、そういうのでもないのです。いまのオランダの反移民政党制度は、良くも悪くもクリーンなところがありで、だからこそ問題でもあります。

つまり、彼らはデモクラシーを否定するわけではない。彼らの主張はこうです。
「ヨーロッパの培ってきた啓蒙主義的な価値や民主主義、人権を守るべきある。しかし、これを脅かすのがイスラムだ。彼らは政教分離を認めない。男尊女卑で女性にスカーフを強いる。同性愛の権利を認めない。こんなイスラムを認めていいのか」。これにはネオナチに対して「冗談ではない」と反対していた人も頷いてしまう。

これが現在浮上しているヨーロッパのポピュリズムや既成政党の反移民的スタンスの背景にあります。それが怖いところであり手強いところなのは、中道的な政党は既にこういった主張を事実上ほとんど共有しているからです。

移民に際してのテストといい、一見すると普遍的な価値観を軸にしたものだけに反論しにくいですね。
(水島)結局、オランダ以外の国も真似をして導入しています。試験そのものは難しくないけれど、移民の抑制効果が大きいものがありました。

抑制したいということは、すでに労働力は足りているのですか?
(水島)いまなお先進国では、労働力の確保は重要な問題です。しかし、そのために外国人労働者を積極的に受け入れるとすれば、それは先端的な産業やファッション、IT、メディア、アート、建築といった分野に限ってです。つまり多国籍企業や先端産業の労働者の受け入れには積極的です。

けれども、そういった特別な能力をもっていない人との間に明確な選別があります。一定の収入が見込める人は審査を簡素化していますが、それ以外は引き伸ばしています。あきらかな労働市場戦略があります。イスラム世界からの移民は基本的に難しいでしょう。

かつては宗教も言語も問われなかった。いまそれが重視されているとは、産業構造の変換が関係してそうですね。
(水島)工業労働では言語も宗教もほとんど関係なかったけれど、サービス業やケア労働金融といった常にコミュニケーションを取りながら働く形態になると、そこが問題になってきます。コミュニケーション能力があって、しかもヨーロッパの作法をわきまえている必要があるのです。(中略)

いずれにせよコミュニケーションが重要視され始めたのはポスト工業社会の象徴と言えます。(後略)【1月25日 MAMMO.TV】
********************

手厚い福祉制度に便乗しているように見える移民への反感は、福祉政策の変化、産業構造の変化、“コミュニケーション能力”という必要とされる労働力の変化とも関連しているようです。

なお、極右・自由党の台頭に見られる移民排斥的傾向の一方で、オランダ社会には難民保護への細やかな配慮も存在します。

****オランダ政府、LGBTの難民向けアプリ配信開始****
オランダ政府は、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の難民が、自らの権利や健康状態、身の安全に関する情報を簡単に調べることができる新しい携帯電話用アプリ「レインボー・レフュジーNL」の配信を開始した。
 
イェット・ブッセマーカー教育・文化・科学相は23日の声明で「例えばオランダでは(LGBTに対する)差別について苦情を申し立てることができることを、多くの難民は知らない」と述べた。
 
米アップルの「iTunes(アイチューンズ)」でダウンロードできるこのアプリでは、LGBTの難民の権利、オランダでの難民申請の方法、支援機関の案内、健康状態や身の安全に関する情報を、英語、フランス語、アラビア語、ペルシャ語で調べることが可能だ。(中略)

オランダ議会は昨年3月、LGBTの難民向けの特別な避難施設を提供について可決した。LGBTの難民が殺しの脅迫を受ける、服を燃やされる、ベッドが排せつ物や腐った食べ物で汚されるなどの問題が発生していた。

オランダは世界で初めて同性婚を合法化している。ブッセマーカー教育・文化・科学相は「ここ(オランダ)で罰せられるのは同性愛ではなく、差別だ」と述べた。【1月24日 AFP】
********************

どんな社会でも多面的構造を持っていますので、ひとつの視点からの単純化には注意する必要があります。
コメント

エジプト  テロの頻発と物価上昇・経済混乱 シシ人気に陰りも

2017-01-25 23:19:42 | 北アフリカ

(エジプトの首都カイロのスーク(市場)で果物や野菜を買い求める客ら。牛肉より安価なラクダ肉を宣伝する横断幕(右上)もあった=2017年1月19日、秋山信一撮影 【1月24日 毎日】)

シナイ半島でも、カイロでも、そして南部でも
私事ですが、3月末から4月初めにかけて、エジプト観光を予定しています。

10年ほど前にカイロからも近いピラミッドとか、白砂漠(日本ではあまりメジャーではありませんが、単なる砂漠だけでなく、なかなか風変わりな風景が楽しめます)などを観光しましたので、今回は、ナイル川をさかのぼって、ルクソールやアスワン・アブシンベルを中心にしたスケジュールを考えています。

いつもの一人旅ですので、現地での移動手段などを日本人が経営する現地旅行会社に手配を依頼しているのですが、“現地発ツアー”の形でセットされたものは時間的にタイトで(早朝3時ホテル出発とか・・・)、“詰め込みすぎ”の間があったので、一部は個人的にオーダーする形に。

アスワンハイダムで有名なアスワンから、有名な神殿のあるアブシンベルへの移動についても、「ガイドブックで見るとバスもあるみたいなので、個人で移動します。」と相談したところ、「バスの時刻については把握できないので、バスステーションへの送迎等も手配できません。安全も保証できません。“現地発ツアー”を利用しない場合は、通常、専用車の“コンボイ”を組んで、警察車両が付き添う形で移動します。」との回答。

“コンボイを組んで警察のガード付き”というのは大袈裟な・・・と思って、改めて地図を確認すると、アブシンベルは殆どスーダン国境も近いエリアです。

エジプトの治安については、北東部シナイ半島でイスラム過激派が跋扈しており、テロも頻発していることは承知してますが、南部のスーダン国境付近というのも、何があっても不思議ではなさそう。

現地発ツアーが“早朝3時ホテル出発”なんてスケジュールになっているのも、深夜の暗闇の中を車をぶっ飛ばして、テロなどの危険を避けようとの狙いもあるのでしょうか・・・・。

素直に、現地旅行会社の勧める“専用車のコンボイを組んで警察のガード付き”をお願いすることにしました。

シナイ半島については、“いつものように”治安当局を狙ったテロが起きています。

****シナイ半島の検問所で爆発、警官ら9人死亡****
エジプトのメディアによると、同国東部のシナイ半島北部にある検問所で9日、車の爆発と銃撃があり、少なくとも警官ら9人が死亡、市民を含む18人が負傷した。
 
爆発したのは数日前に盗まれた清掃車で、大量の爆発物が積まれていた。爆発の後に武装グループが警官らを銃撃した。
 
犯行声明は出ていないが、シナイ半島ではイスラム過激派組織「イスラム国」の関連組織が軍や警察へのテロ攻撃を繰り返している。【1月9日 読売】
********************

なお、首都カイロでも昨年末に大規模テロが起きています。

****教会でテロ、25人死亡=イスラム過激派の犯行か―カイロ****
エジプトの首都カイロ中心部にあるキリスト教の一派、コプト教の教会で11日午前(日本時間同日午後)、爆弾テロとみられる爆発があり、保健省によると少なくとも25人が死亡、49人が負傷した。
 
殺害の手口から、過激派組織「イスラム国」(IS)などイスラム過激派による犯行の可能性がある。11日はイスラム教の預言者ムハンマドの生誕を記念する祝日だった。在エジプト日本大使館によると、事件に日本人が巻き込まれたとの情報はない。
 
教会はコプト教大聖堂の付近にあり、爆発があった際、日曜ミサのため多くの信徒が集まっていた。地元メディアは「死者の多くは女性だった」と報じている。
 
コプト教徒はエジプトの人口の約10%を占める少数派。たびたび過激派の標的になってきたが、これほどの犠牲者が出るのは最近では異例だ。【2016年12月11日 時事】 
********************

コプト教会があるエリアというのは、前回旅行の際に散策したエリアです。
上記カイロのテロについては、ISが「神のため、十字軍(キリスト教徒)の集まりの中で爆弾の付いたベルトを爆発させた」との犯行声明を出しています。

で、今回私が行く予定の南部は・・・というと、南部でもテロが起きています。それも、つい最近です。

****銃撃で警官8人死亡=エジプト****
エジプト南部の砂漠地帯で16日、武装集団が検問所を襲撃し、警官8人が死亡した。内務省が明らかにした。反撃で武装集団側の2人も殺害されたが、実行犯の一部が逃走した可能性もあり、治安当局が行方を追っている。【1月17日 時事】 
*****************

事件が起きたのは、スーダン国境だけでなくリビア国境も近い南西部にあたり、アブシンベルとはだいぶ距離はありそうです。(たぶん・・・・)

要するに、首都カイロだろうが、シナイ半島だろうが、南部砂漠地帯だろうが、今のエジプトはどこでもテロの危険がある・・・ということです。

ロシア航空機墜落事故や相次ぐテロで、エジプトを訪れる観光客は大幅に減少し、観光業を基幹産業とするエジプト経済にとって大きな問題となっています。

観光客が減少しているので、ホテル代や移動費用も安くなるかも・・・なんてことも考えたのですが、そういう問題ではなさそうです。

通貨下落による輸入品価格上昇 シシ大統領の人気にも陰りが
今回のエジプト旅行手配でやや困惑しているのはホテルの支払い。
ホテルについては、現地旅行会社手配ではなく、個人でネットのホテル検索サイトから予約しました。

通常、こういうサイトを利用すると、支払いはクレジットカードで決済することが多いのですが、エジプトのホテルは“現地で現地通貨で支払い”という形が多いようです。

予約サイトの金額は日本円で表示されています。“現地通貨”で支払いという話になると、その時々のレートで換算する話になるのでしょうが、そのレートは誰がどういうルールで決めるのか?

エジプトという国は、日本のように“外国人観光客に親切な国”というよりは、多くの国々同様、“外国人観光客からは取れるだけふんだくる”といった国です。ホテルが“適切な”レートを提示してくれるのでしょうか?

ホテル検索サイトに確認しても、現地通貨支払なのか、米ドル支払なのかはっきりしない様子。現地確認したところ、やはり現地通貨で・・・という話になっています。「だったら、現地通貨建ての予約価格を教えて」と、一応は聞いてはありますが・・・。予約確認書にその金額が表示されないのも不思議な話です。

現地で“おかしいな・・・”と思っても、言葉の面で交渉・喧嘩するのも難しいので、どうなるのか不安です。

実は、エジプトは財政危機にあり、IMFの指導によって昨年11月から変動相場制に切り替わったばかりです。
そういう事情もあるので、ホテルでの“レート”交渉はてこずるかも。

まあ、私の個人的不安は別にしても、変動相場制移行でエジプトポンドが大幅に下落し、輸入品価格が上昇し、これまでの物価上昇に更に拍車がかかっているという大きな問題にもなっています。

****<エジプト>革命6年 物価上昇加速で民衆の不満蓄積*****
エジプトで民主化要求運動「アラブの春」による革命時に大規模なデモが始まって25日で6年を迎える。民衆は「自由、パン(経済立て直し)、社会正義(不正廃絶)」を叫んで独裁政権を打倒したが、昨年後半から物価上昇が加速し不満が高まっている。シシ政権は強権的で、自由や社会正義の実現も程遠い。
 
「牛肉は高くて買わない。砂糖も半年で3倍に値上がりした」。カイロの主婦、ライラ・サイードさん(48)はため息をつく。

牛肉は1キロ130エジプトポンド(約780円)と数年前の倍だ。近所の市場ではより安価なラクダ肉が人気。紅茶にたっぷり砂糖を入れて飲む習慣があるだけに砂糖の価格高騰は井戸端会議でも不満の種だ。
 
国際通貨基金(IMF)によると、2007〜11年の物価上昇は10%超。革命の一因となったとも言われる。革命後の12〜13年は10%以下だが、シシ氏が大統領に就任した14年以降は10%を超えた。
 
通貨ポンドも下落。革命後の混乱で外国からの観光客や投資が減少し財政赤字が膨らんだ。政府は、輸入に頼る食品や医薬品の価格上昇を防ぐため、事実上の固定相場制を採用し、IMFに財政支援をあおいだ。
 
だがIMFは投資家らの信用を得るため変動相場制への移行を要求。政府は昨年11月に変動相場制を導入し対ドルレートは約2カ月半で1ドル=約9ポンドから約19ポンドに暴落した。物価上昇は続き昨年12月は前年比25%超だ。
 
一方、シシ大統領の人気には影が差している。民間調査機関バシーラセンターの調査では、シシ氏の政権運営に「満足」な人は昨年5月に91%だったが同10月には68%に急落。不満の理由の74%は物価高だった。「明日大統領選があればシシ氏に投票する」と回答した割合も、81%から59%に落ちた。
 
シシ政権は政権に批判的な勢力を弾圧、メディア規制も復活した。腐敗体質は革命前と同様だ。カイロ大学のハッサン・ナファ教授(政治学)は「国民の我慢にも限度がある。18年の次期大統領選までに新たな政治的動きが出てくる可能性がある」と分析している。【1月24日 毎日】
********************

軍部出身のシシ大統領は、クーデターによる権力奪取やその強権的政治手法に関して、アメリカ・オバマ政権や人権団体などからは批判されてきましたが、国内的にはムバラク政権崩壊以来の混乱を鎮めてくれる・・・ということで高い人気がありました。

しかし、今後の物価情勢次第では、その人気にも陰りが・・・という話です。

支持率低下に関しては、以下のようにも

**************
エジプト政府に近いと目されるNGOのbaseeraセンターの行った世論調査(先月電話で1515名を対象に行った由)では、シーシ大統領の支持率が一貫して下がっている。
彼は現在でも最も望ましい政治家とされてはいるが、その支持率は2014年の54%から、2015年の35%と、更に2016年では25%と一貫して下がってきている。【1月5日 「中東の窓」】
***************

もっとも、“シシ大統領に代る政治家も今のところはいない”という状況のようです。

旅行には米ドルを多めに持参するのがいいかも。ホテル支払いも米ドルの方が歓迎されるかも。

通貨下落・輸入品価格上昇による一番深刻な影響を受けているのが医薬品のようです。
製薬会社は薬の原料の9割を輸入に頼っているため医薬品の値段が急騰。シシ大統領は“半年たてば状況よくなる”と語っているようですが。

****エジプトの薬危機****
エジプトでは、通貨のフロート等から諸物価が値上がりしたり、必需品が姿を消すという、深刻な状況が生じていますが、この問題をの直撃を受けたのは医薬品の分野のようです。

12日付のal arabiaya netは、エジプト国民は医薬品の価格が15~26%引き上げられると予想していると報じるとともに、重要な薬品が薬局の棚から姿を消し、闇市場では手に入るが、薬局での購入価格の100%以上の価格をつけているとして、特に慢性病患者や所得の低い階層にしわ寄せが行っていると報じていました。

しかるに16日付の同ネットは、その日12日に保険大臣が声明を発して、薬品の製造業者及び輸入者と合意に達したが、その薬品の種類は3000に上ると発表したよし。

さらに保健省内の薬局組合に対して、474の製造者からの新価格が提示された由。

これに対して、薬局組合はこの通知を不満として、部分的ストライキを15日から1週間行うこととしていたが、当局が彼らの不満にこたえないのであれば(何が具体的不満かの説明はない!)、2月1日から全面的に薬局を閉鎖することもありうるとしている由。

これに対して大統領府が介入してきて、大統領は価格引き上げが29%にもなるとの報道を否定し、また価格監視の体制を整えると約した由。

al arabiya が聞いて回ったところでは、大部分のエジプト人は、医薬品は市場の価格変動に任せられるべきではなく、政府は十分な薬品が適正な価格で、国民に提供されるべきであると考えている由。

シーシは先日の大新聞の編集長たちとの会見で、エジプト政府は3年前から政府としての製薬工場を建設中で、工場は6月30日に完成予定で、工場はエジプト国民に対して十分や薬品を提供するであろうと約束した由(後略)【1月17日 「中東の窓」】
*********************

今日ののTVニュースでも、この医薬品問題を取り上げていました。
価格が上がって医薬品が手に入らなくなった一般市民の間で、伝統的なハーブ(一種の漢方薬みたいなものでしょう。正確には生薬ですが)が大人気だそうです。

旅行には、薬も忘れずに用意した方がよさそうです。

治安の不安にしても、経済の混乱にしても、旅行中にそういう問題に触れる機会があればむしろ上出来なのでしょうが(もちろん、テロに巻き込まれるのは論外ですが)、実際のところは単なる観光旅行ですから、観光地めぐりに終始するのでしょう。
コメント

NATOの対ロシア戦略の要ポーランドの民主主義逸脱 必ずしもロシア脅威論だけではない欧州

2017-01-24 22:29:14 | 欧州情勢

(ポーランドの議事堂前で、議場占拠の翌日に行われた野党支持者らによる反政府デモ(2016年12月17日撮影)【2016年12月18日 AFP】 掲げられた“KACZO”という言葉、よくわかりませんがアヒル、更には実力者カチンスキー氏(Kaczyński)に関連した言葉でしょうか?)

ポーランド:裁判所やメディアに対する統制を強める「法と正義」政権
東欧ポーランドでは一昨年10月の総選挙で、愛国主義的な理念を掲げる保守派「法と正義」が中道右派の「市民プラットフォーム」から政権を奪還していますが、政権与党「法と正義」は人気取り的な公約バラマキと言う点で、昨日取り上げた“ポピュリズム”的な色彩も濃い政党です。

単に“公約バラマキ”なら日本でも珍しくありませんが、その強権的体質は欧米的な“民主主義”とはやや異質のものがあります。

そうしたことから、昨年から国内的には政治対立が表面化しています。

****27年ぶり大規模デモ、抑圧政治に怒れるポーランド国民****
欧州各国で、ポピュリズム勢力はかつてない高支持率を得ている。5月のオーストリア大統領選挙で勝利目前だった極右政党しかり、国民投票で欧州連合(EU)離脱へと英国を導いた前ロンドン市長のボリス・ジョンソンもしかり。

昨年10月、ポーランド総選挙で議席の過半数を獲得した保守派の「法と正義」(PIS)もまた同様だ。8年間続いた中道右派の市民プラットフォーム(PO)の政治に嫌気が差した国民が変化を求めてPISに投票したのだが、その代償は大きかった。

ポピュリズム政策で支持集めるも・・・・
PO政権は都会に住む高学歴、高所得者に支持者が多かった。そこで、前政権は低所得者の支持を得ようと富裕層に保持者の多かった任意の個人年金を基礎年金に統合し、積立額の一部の財源化を図ったため、PO支持者が見せしめにPISに投票、もしくは無投票という行動に出たのだ。
 
PISは選挙公約に「年金支給年齢の引き下げ」「高齢者への無料薬支給」「税金控除額引き上げ」をはじめ、大衆不満をすべて解決するかのようなポピュリズム政策を掲げた。
 
公約目玉の「子供がいる家庭への現金支給」。国内経済へのカンフル剤と期待されたが施行数ヶ月で目立った効果は出ていない。しかし、これは前政権の慎重な経済政策の結果、国の予算としてプールされたもの。専門家達はこのばらまき政策はすぐに国の財政が持たなくなると警告している。

また、出生数が激減しているこの国で年金受給年齢の引き下げ計画は現実を無視した暴走にすらみえる。このような財政計画の粗雑さに、国内の実業家、外国資本家は投資を躊躇し、国債価格も下げる結果となった。

“最後のとりで”を崩しにかかった政権
議席の過半数を占める現政権は法案を議会通過させることが可能だ。拒否権を行使できる大統領も現政権の息がかかる。最後のとりでは憲法だ。

ポーランドには憲法裁判所がある。法律の合憲性チェックと人権を保障する機関なのだが、PISは政権の座に就くと大統領をまきこみ、自党の息のかかった裁判官を同機関にねじこもうとした。
 
この一幕で国民の怒りは絶頂に達した。昨年10月には1989年の共産党政権崩壊以来初めて、「民主主義」を求めてデモ行進が行われた。この動きは一気に広がり、既に何度も全国規模で行われている。

しかし、「法による民主主義のための欧州委員会」からの勧告も無視され、ねじこみは強行された。現政権は、どの裁判結果が有効か、無効かを国会が決定できるようにしたのだ。
 
このような恐怖政治を思わせる法案がどんどん可決されている。最近では「反テロ法案」の名の下、国は個人メールなどの閲覧が可能となった。閲覧の合法性をチェックする機関はない。

また、右派の支持者を手中に収めたい現政権は、民族主義色の強い集会や外国人排斥行為に非常に寛容な態度を示している。全欧州で問題となっている中東の難民受け入れ問題からポーランド社会の中でも反多文化共生主義が浸透。それを政治的に利用している状態だ。
 
対メディアでは、国営放送のリベラル寄りとされるキャスターを次々に降板、もしくは解雇している。その結果、政権に都合のいい報道ばかりが流れることとなり、国営報道番組の視聴率は急降下した。
 
前選挙でPISに投票したことを悔恨する人々は多い。昨年から断続的に続いている反政府デモもその表れだ。
しかし国民の中には、現政権を熱狂的に支持する層がある。このような一部の国民だけの支持を受け、現政権は国際社会でどこまで迷走を続けるのだろうか。【2016年8月14日 WEDGE】
*******************

EUの行政を担う欧州委員会は昨年1月、ポーランドのメディアや憲法裁判所の統制強化について、EUが基本原則に掲げる「法の支配」に違反する可能性があるとして、予備的調査を始めることを決定しましたが、「法と正義」の強硬路線は変わっておらず、政治混乱も拡大しています。

****野党議員が議場占拠、議事堂前で新たなデモ ポーランド****
ポーランドの政治危機がこの週末、新たな段階に入った。首都ワルシャワでは17日、数千人が新たな抗議デモを行い、ポーランド国旗を振り、エアホーン(空気警音器)を鳴らして、「ポーランドの破壊をやめろ!」と叫んだ。

デモ参加者らは厳重な警備が敷かれた議事堂に向かって行進。愛国主義的な理念を掲げる与党「法と正義(PiS)」と、議会報道の規制強化をはじめとする政策に怒りの声を上げた。
 
同国では人工妊娠中絶法の引き締めから憲法裁判所の意思決定に関する規則の変更に至るさまざまな政策が論争を呼び、政治危機を引き起こしている。
 
議会報道の規制強化への野党の怒りは16日に頂点に達し、議員数十人が議事堂の本会議場を占拠。野党の姿勢を支持する数千人が議事堂前でデモ行進した。
 
審議は中断を余儀なくされたが、数時間後に別の部屋で再開され、2017年の予算案は可決された。野党は採決は違法だと批判したが、定足数は満たしていた。
 
与党の報道規制案は、議会の記者席に入る人数を1社当たり2人に制限し、記者席からの写真や動画の撮影を禁じる内容。実施されれば報道機関は欠席した議員の代わりにするなどの規則違反を犯した議員を撮影できなくなる。
 
与党は規制案を議員と記者双方にとって快適な労働環境を目指すものだとしている。与党のアルカディウシュ・ムラルチク議員は以前、「それ(報道規制案)は透明性を損なうことを意図したものでは断じてない」と述べていた。
 
主要野党各党は17日、予算案の議決について調査を求めていくと発表。一方で議場を占拠した数十人の議員は、来週まで議場にとどまるとしている。
 
元ポーランド首相である欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(EU大統領)はワルシャワで開催された式典で、「憲法の原則や価値観はもちろん、人々も」尊重するようポーランド政府に呼び掛けた。
 
約1年前に「法と正義」が政権について以来この闘いは続いているが、最新の世論調査によると与党の支持率は約35%となっており、主要野党2党の支持率合わせた数字を上回っている。

政府が支持されている一因として、最重要プロジェクトの子ども手当プログラムが挙げられる。このプログラムでは第2子以降の子ども1人につき毎月500ズロチ(約1万4000円)が支給される。【2016年12月18日 AFP】
*******************

“子ども手当プログラム”は冒頭記事では“施行数ヶ月で目立った効果は出ていない”とのことでしたが、少なくとも“政治的”には一定のバラマキ効果を出しているようです(今後の財政問題は別にして)。

地政学的に重要な”ポーランドの民主主義逸脱にどう向き合うべきか
2016年8月14日の冒頭記事ではポーランドの民主主義からの逸脱を厳しく批判していた【WEDGE】ですが、昨今のロシアとの関係で厳しさを増す欧州情勢を配慮して考えが変わったのか、同じようにポーランドを批判した12月21日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説に対して「西側の尺度で測るのは適当ではない」と以下のような記事も。(言うことがコロコロ変わるのは私も同じですので、そのことをとやかく言うつもりもありませんが)

****再注目すべきポーランドの重要度****
・・・・ポーランド国内では、政権の政策に反対する大規模なデモが発生しています。また欧州委員会のTimmermans第一副委員長は、「法と正義の党」の動きは「ポーランドにおける法の支配への重大な挑戦」であると厳しく非難しています。

西側の尺度で測るのは適当ではない
確かに「法と正義の党」政権の動きは懸念されますが、ポーランドはかつて共産主義から民主主義への移行の優等生だったとはいえ、民主主義の経験はそんなに長くありません。

民主主義の旗印を高く掲げるニューヨーク・タイムズ紙から見れば、ポーランド政治の危機と映るのは当然でしょうが、西側の尺度で測るのは必ずしも適当とは思われません。
 
ポーランドの重要性は、地政学的なものです。「法と正義の党」が従来の移民政策に批判的であることが指摘されますが、従来の移民政策に批判的なのはポーランドに限りません。また、ポーランド人自身、EUの多くの国に移住している人が多く、本気で移民政策を変更しようとするとは考えられません。
 
ポーランドは輸出の75%を、輸入の60%をEUに頼っていて、EUのメンバーであることはポーランドに大きな利益をもたらしています。

またポーランドは歴史的にロシアに対する警戒心が強いうえに、最近のプーチンの動きに神経をとがらせています。NATOのメンバーであることはポーランドの安全保障の根幹です。

一昨年7月NATOはワルシャワで開催された首脳会議で、軍事的圧力を強めるロシアに対する抑止力の強化策として、2017年よりバルト3国とポーランドに4000人規模の多国籍部隊を展開することを決定し、ポーランドはこれを歓迎しました。
 
ポーランドは、内政面で懸念すべき動きはあるものの、EUとNATOのメンバーであることに死活的利益を見出していることは明らかであり、ポーランド情勢はこの重要性を踏まえて判断すべきです。【1月24日 WEDGE】
******************

なお、12月21日付のニューヨーク・タイムズ紙社説は、前出のような「法と正義」によるポーランドの政治情勢を批判して以下のように論じています。

******************
1980年代のポーランドの反共運動の英雄であったワレサが言うように、独裁主義はポーランドにとどまらず欧州、米国と、広く民主主義に対する重大な脅威である。

いずれの場合も大衆主義の指導者たちは、彼らの主張は「国民」の意思を表すとの口実の下に、反対する個人、組織、法律を全く無視する。このような考えが20世紀の恐ろしい独裁政治を生んだのであり、今日それは他人ごとではなくなってきている。
*******************

恐らく、ニューヨーク・タイムズ紙社説の念頭にあるのはポーランドだけの話ではなく、欧州全体でみられる極右・ポピュリズム勢力の台頭、そして足元アメリカにおけるトランプ政権の誕生という流れがあってのことでしょう。

これに対し、【WEDGE】は、「そうは言っても、民主化要求でポーランドが混乱すれば、ロシア・プーチン大統領が喜ぶだけではないか」という懸念を“地政学的重要性”として論じたものです。

アラブの民主化を要求した「アラブの春」がチュニジア以外ではうまく機能せず、シリア・リビア・イエメン・エジプトなどの中東混乱を招いていることも念頭にあってのことでしょう。

なかなか一概にどうこう言えるものでもなく、ケースバイケース、程度問題で判断するしかないでしょう。
随分日和った言い様なので、敢えて踏み込めば、アラブと異なり、ポーランドには中道右派の「市民プラットフォーム」など、“西側的な”民主化の受け皿がありますので、ロシアを意識した“地政学的重要性”から「法と正義」の“民主主義逸脱”を容認する必要はないのでは・・・と考えます。

欧州のロシア対応には多様性も 親ロシア政権 南欧の温度差 そして「プーチンの有益な愚か者たち」】
で、その“地政学的重要性”というか、欧州とロシアの緊張関係ですが、2016年11月14日ブログ“欧州 NATOとロシアの対立 一部東欧にはロシア回帰も これから続く欧州の枠組みを決める選挙”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161114でも取り上げたように、必ずしもロシアと対立する動きだけでなく、モルドバやブルガリアでの親ロシアの大統領誕生のような“ロシアへの回帰”も見られます。

中東欧とロシアの関係の深さを考えれば、当然の動きでもあるでしょう。

また、前回ブログでは触れませんでしたが、西欧のなかでもロシアに対しては温度差があり、イタリアなどはロシア・プーチン大統領にかなり宥和的です。

***伊外相、ロシア加えた「G8」復活呼びかけ トランプ氏に配慮か***
イタリアのアルファノ外相は17日、ロシアは重要な国際的パートナーだとして、現在、先進7カ国(G7)で開催している首脳会議をロシアを加えたG8へと戻すことを検討すべきだとの考えを示した。

アルファノ外相は良好な米ロ関係を歓迎する考えも示しており、ロシアとの関係改善を目指すトランプ次期米大統領に配慮したとみられる。(中略)

アルファノ外相は「責任を持った人であれば誰でも(悪化している)米ロ関係の改善を願うに違いない」と強調。ロシアは「エネルギー供給において信頼に足るパートナーであると同時に、国際的なテロリズムとの戦いにおいても極めて有用なパートナーだ」と持ち上げた。

トランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)に関し「時代遅れだ」との見方を示し、欧州諸国に波紋を巻き起こしている。

アルファノ外相はこのことに関し、NATOは依然、ロシアのある東側を向いた冷戦時代の戦略に立脚したままだが、最近の脅威は南からやってきていると指摘。西側諸国は「南を視野に入れた防衛システム」を検討すべきだと述べた。【1月18日 ロイター】
*******************

更に付け加えれば、欧州で台頭する反EU勢力はロシアと密接につながっています。

****反EUの指導者たちが続々とプーチン支持を表明****
17年春に予定されているフランス大統領選で、反EU、移民排斥を唱える極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が勝利すれば、第二次世界大戦後、米国と欧州が積み上げてきた自由と民主主義の価値は完全に吹き飛んでしまうだろう。
 
保護主義と孤立主義が世界を覆い始めるなか、独りほくそ笑んでいるのはプーチンだ。
 
「英国の離脱が引き金になり、EUが崩壊して一つひとつの国民国家に逆戻りすることはプーチンの長期戦略と合致している。EU離脱に投票した英国人は結果的にプーチンを助けたことになる」
 
こう解説するのは英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサイエティのロシア研究センター所長、フォックスオール氏だ。
 
フォックスオール所長はオープンソースの情報からロシアのプロパガンダに利用されている人脈を分析した報告書「プーチンの有益な愚か者たち」をまとめている。報告書は、欧州に広がる反EUネットワークとロシアのつながりをあぶり出している。
 
14年12月、国民戦線はモスクワにある第一チェコ・ロシア銀行から、940万(約11億2600万円)を借り入れた。ルペン党首はプーチンを敬服していることを隠さず、13年のロシア訪問ではロゴジン副首相とナルイシキン下院議長(現・対外情報局長官)と会談した。
 
トランプ勝利を受け、ルペン党首は「巨大な動きが世界で進行中だ。政治とメディアのエリートは思い知らされるだろう」と雄叫びを上げた。
 
英国のEU離脱を主導した英国独立党(UKIP)のファラージ暫定党首は、クリミア併合が強行された14年3月に、最も尊敬する世界の指導者としてプーチンの名前を挙げ、シリア内戦への対応を「素晴らしい」と持ち上げてみせた。
 
ジェームズ前党首(16年9月に就任するも、20日もしないうちに辞任した)もプーチンのナショナリズムを讃えている。
 
これらは氷山の一角に過ぎない。
「愚か者たちのネットワーク」はシンクタンクや大学の討論会、ロシアのニュース専門局RTや情報通信・ラジオ放送局スプートニクへの出演などを通じて世界中に張り巡らされている。【1月24日 WEDGE】
***************

ロシアに対峙するNATO 親ロシア・トランプ政権で?】
こうした中東欧のロシア回帰や、南欧における温度差、「プーチンの有益な愚か者たち」の存在はあるものの、全体としてはNATOはロシアと厳しく対立しています。

再三言うように、プーチン大統領にすれば、NATOの東方拡大こそが約束違反であり、ロシアはNATOのそうしたロシアへの敵対的な動きに防衛的に対応しているだけだ・・・という話にはなりますが。

そうしたなかで、ロシアが昨年10月初め、リトアニアとポーランドの間のロシアの飛び地カリーニングラードに、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデル」を配備したこと、一方、NATOはバルト3国とポーランドに計15か国が参加する多国籍部隊を配備することを決定したことなどは、前回ブログで取り上げたところです。

上記NATO決定を受けて、1月12日には、ロシアに対する東ヨーロッパでの軍事的な抑止力を強めるためアメリカが新たに派遣した地上部隊がポーランドに到着し、現地で歓迎の式典が開かれました。
オバマ大統領の最後の仕事でしたが、トランプ大統領がどう扱うのかは知りません。

トランプ大統領がロシアとの関係改善を掲げる一方、NATOを「時代遅れ」として欧州側の加盟国に一段の貢献を要求していることは周知のところです。

NATOは“後から撃たれる”ような事態となるのか、トランプ氏も「プーチンの有益な愚か者たち」の最重要人物なのか・・・いつものことながら、話が長くなってしまったので、また別機会に。トランプ氏の動向もまだよくわかりませんし。
コメント

ポピュリズム・「自国第一」の波 まずアメリカを飲みこみ、次いで欧州をうかがう

2017-01-23 23:12:38 | アメリカ

(独西部コブレンツで21日、集会後の記者会見に臨む欧州右翼政党の党首ら。左からオランダのウィルダース自由党党首、ペトリ「ドイツのための選択肢」党首、1人置いてフランスのルペン国民戦線党首、イタリアのサルビーニ北部同盟書記長【1月23日 朝日】)

【“単純化”“人気取り”の是正・歯止めとなるべきメディアを否定・攻撃するトランプ流政治
“ポピュリズムとは、一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治思想、または政治姿勢のことである”【ウィキペディア】という意味では、民意に基づく民主主義においてはその本質に沿うもののようにも思えますが、一般的には、“一貫性の無い考えや政策”“人気取りの為の迎合的考え”といったネガティブな意味合いで使用されることが多いようです。

“近年では、「複雑な政治的争点を単純化して、いたずらに民衆の人気取りに終始し、真の政治的解決を回避するもの」として、ポピュリズムを「大衆迎合(主義)」と訳したり、「衆愚政治」の意味で使用する例が増加している。村上弘によれば、個人的な人気を備えた政治家が政党組織などを経ずに直接大衆に訴えかけることや、単純化しすぎるスローガンを掲げることを指すとする”【ウィキペディア】とも。

税金にただ乗りする不法移民、テロをまき散らすイスラム教徒、アメリカから雇用を奪う外国企業、やたらと権利を主張するマイノリティ、応分の負担をしない同盟国・・・こうした“敵”を叩きのめせば再び“偉大なアメリカ”が蘇る・・・・という訴えで、既成政治から無視されてきたという不満を抱える人々の“権利、願望、不安や恐れ”を見事にすくい上げたトランプ大統領も、「大衆迎合(主義)」的な傾向を強く有しています。

“工場の閉鎖や、移民の雇用、海外への雇用流出など、多くの人が経済面の不安を抱えている。しかし自由を奉じるリベラルなエリートはそんなことにはお構いなしに自由貿易を支持し、企業を利するフレキシブルな雇用体系や規制緩和を支持するなど、困っている人々を嘲笑うかのように振る舞う。有権者はそんなエリートに愛想を尽かし、政治的経済的に欠陥だらけだが単純明快な主張を打ち出す「アウトサイダー」のポピュリストに票を託した。”【1月18日 Newsweek】

“単純化”“人気取り”の是正・歯止めには、本来はメディアが重要な役割を果たしますが、「メディアの言うことはウソばかりだ」と人々に思わせ、より直接的な手段(ツイッター)で人々に訴えるというのは、こうした「大衆迎合(主義)」において重要な手法となります。

従って、トランプ新大統領がかねてよりメディアとの対決姿勢を鮮明にしているのは、トランプ流政治においては重要な部分です。

****米政権、メディアと「全力で」戦う姿勢 就任式めぐる報道批判****
米ホワイトハウスは22日、トランプ大統領の就任式の観客数をめぐるメディア報道について、政権に対する不当な攻撃だと批判し、「全力で」戦う姿勢を示した。

トランプ大統領も21日、米中央情報局(CIA)を訪問し、観客数を少なく報じたとして報道関係者を批判、「私はメディアとの戦いを続けている」と言明した。

大統領は、自身と米情報機関の間の確執をメディアがでっちあげていると非難し、「不誠実」と攻撃した。

就任式の観客数をめぐっては、スパイサー大統領報道官が21日、観客数を少なく見せるためにメディアが写真を加工したと主張、「過去の就任式で最多だった」と断言し、メディアなどが反論している。

プリーバス大統領首席補佐官はフォックス・ニュース・サンデーで報道官の主張を繰り返した上で、「問題は観客の数ではなく、大統領を攻撃し、大統領の正当性を否定しようとする行為であり、われわれは容認しない」と発言、「全力で反撃する」と述べた。【1月23日 ロイター】
*******************

なお、就任式の観客数をめぐるトランプ大統領の執拗なメディア攻撃については、自分のやることにケチをつけられることを極端に嫌う“性格的な問題”もありそうです。

“元米大統領顧問のデービッド・アクセルロッド氏は「事の大きさからすれば聴衆の数はささいなことだ」とツイッターに投稿した。「(大統領が)それに執着している事実はささいではない」”【1月23日 AFP】

ポピュリズム批判に対し「理想とか、きれいごとは、明日のメシを安心して食えるようになってから」との考えも
話をポピュリズムに戻すと、ローマ法王も最近の欧米におけるポピュリズム的な流れに警鐘を鳴らしています。

****<ローマ法王>欧米のポピュリズム台頭に警鐘****
フランシスコ・ローマ法王はトランプ米新大統領就任に関連し、欧米社会におけるポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭について「危機の際に私たちは思慮を失う」と警鐘を鳴らした。22日付スペイン紙エルパイス(電子版)に掲載されたインタビューで語った。
 
法王は、第二次世界大戦前のドイツにおけるヒトラーの権力掌握をポピュリズムの例とし、「ヒトラーが権力を盗んだのではなく、『壁や鉄条網で自分たちを守ろう』と国民が彼に投票したのだ」と分析。危機に直面して「国柄を回復できる指導者」を求める大衆心理の危険性を指摘した。
 
トランプ氏について、法王は「先走って人を判断したくはない」「彼がどのように行動し、何を成すか、成り行きを見守ろう」と予断「避けた。
 
一方、20日にトランプ氏にあてたメッセージで、法王は「倫理的な価値観」に基づいて行動し、貧困者など社会的弱者に配慮するよう促した。「人間の尊厳と自由を世界に広げようとしてきた米国」の大統領として、トランプ氏が「米国史を形作ってきた豊かな精神的、倫理的な価値観」に基づく政策を実行することも求めた。
 
また、社会的弱者に寄り添う「貧者の教会」路線の観点から、トランプ政権下の米国が「貧困者、疎外されている人々、支援を必要としている者」への思いやりと配慮を欠かさないよう呼びかけた。
 
法王は昨年2月、メキシコ国境への壁建設を主張したトランプ氏について、「壁を造ることだけを考えている人はキリスト教徒ではない」と苦言を呈したことがある。【1月22日 時事】
********************

同様の批判は人権団体からも。

****トランプ氏や欧州の大衆迎合主義の台頭は人権への脅威=HRW****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は12日に発表した2017年世界人権年鑑で、米大統領選でのトランプ氏の勝利や、欧州での大衆迎合主義的な政策を掲げる政治家の台頭が人権への「深刻な脅威」となっていると警告した。

90カ国以上における人権状況をまとめた同報告書で、HRWのケネス・ロス代表は「トランプ氏や欧州のさまざまな政治家は、人種差別や外国人嫌悪、女性蔑視、移民排斥を訴えることで権力を手中に収めようとしている」と指摘。「彼らは皆、雇用を守り、文化的な変革を避け、テロリストの攻撃を防ぐために必要とみられるなら、民衆は人権侵害を容認すると主張している。人権を無視することは独裁政治への最短の道だ」と主張した。

また、トランプ氏の選挙戦と英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票に向けたキャンペーンを引き合いに出し、不寛容政策の「はっきりした実例」とした。

「私たちは、過去の扇動政治家の危険を忘れている」とロス氏は指摘し、世界中の有権者は真実や民主主義の価値を基礎とした政策を求める必要があると述べた。【1月13日 ロイター】
*********************

ただ、トランプ氏やその支持者からすれば、貧者へ寄り添う姿勢とか、移民やマイノリティの人権尊重といったことこそ、建前・きれいごとに過ぎず、「もうウンザリだ、本音でやろうぜ!」という話にもなるのでしょう。

日本にあって「ポピュリスト」とも呼ばれた政治家・橋下徹氏は以下のようにも。

****トランプ勝利を「ポピュリスト」が大解剖 橋下徹氏インタビュー(抜粋****
国末 トランプのようにポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)を尊重しないという人が最近になって出てきています。現在こういうふうに急に変わってきたのは、どうしてだと思いますか。

橋下 有権者が政治家のきれいごとに、口ばかりで本気で課題解決をしない政治に、おかしいと思い始めてきたんですよ。日本で言うところの永田町にあたる、米国で言えばワシントン、英国で言えばウェストミンスターの中だけで通用するプロトコル(儀礼)できれいごとを言っても、それはしょせん、明日のメシを満足に食べられる連中だから言えることですからね。

理想とか、きれいごとは、明日のメシを安心して食えるようになってから、その次の問題だと思うんですよ。優先順位の問題です。

第2次世界大戦後、高度成長時代には、みんなの生活レベルはまだそんなに高くなかったし、今日より明日は良くなるという希望のもとに、国民の不満が鬱積(うっせき)している状態ではなかったんでしょう。だから、政治家がきれいごとを言っていても、みんな気にも止めてなかった。

でも、どんどんグローバルな社会になって、僕は自由貿易推進論者ですけど、だけどグローバル化が進めば格差が出てくることは間違いありません。弱者と強者の差が広がってくる。そういう中で、明日の生活に不満を持つ人たちが増えてきた。

その中でね、ポリティカル・コレクトネスの優先順位が一番じゃなくなっちゃったわけですよ。きれいごとよりも明日のメシだという有権者を増やしてしまったこと自体、これまでの政治の失敗です。

さらに、国民の教育レベルが上がり、情報収集手段も発達している今、政治家や知識人が国民よりも絶対的に優秀だ、賢いということはあり得ません。国民は政治家や知識人のきれいごと、欺瞞を見抜いています。

英国がEU離脱を決めた国民投票では、ウェストミンスターの政治に対して有権者からあれだけの「ノー」が出て、やっと首相のメイが「我々は今まで一部の人たちだけのために政治をやっていたんだ」と気づいたわけです。これからは「ノー」を突きつけた人たちの声も聴かなきゃいけない、そういう人たちのための政治をしなきゃいけない、と気づいた。

アメリカ大統領選の今回の結果でも、民主党側の、ポリティカル・コレクトネスを重視している人たちが、自分たちは絶対的に正しいわけじゃないんだと気づいたんじゃないですか?トランプを支持している人たちの不平、不満って何なんだと。これに目を向けるようになりますよ。

トランプ自身は、大統領選に勝利して、これからは全国民のために政治をやると言っています。政治家だから当たり前だと思いますが、当選してからも偏った政治をやるのであれば、メディアが徹底的に批判して、下院の中間選挙で鉄槌を食らわせたらいいじゃないですか。

これまでの政治に対して「ノー」を突きつける。そして、これまでの政治が正しいと思っていた政治家に、目を覚まさせる。これこそが民主主義ですよ。

EU離脱という英国の国民投票の結果も、トランプの当選も、その文脈です。今後またおかしな状況になれば、民主主義で修正していけばいい。このように、振り子が振れながら前進していくのが民主主義です。【2016年12月5日 GLOBE】
*******************

しかし、「理想やきれいごと」「ポリティカル・コレクトネス」が顧みられない社会がどのようなものになるか・・・非常に恐ろしいものを感じます。
常識的・日和見的言い様ですが、「理想やきれいごと」「ポリティカル・コレクトネス」に表される“価値観”を堅持しつつ、どうやって人々の現実の不満をすくい上げていくか・・・という問題でしょう。

単純・明快ではなく、非常に複雑で、試行錯誤的で、多くの人にとっては不十分なものになります。しかし、それが現実であり、唯一の道であると考えます。

欧州極右大集結「エリートでなく、民衆による政治が始まった」】
アメリカにおけるトランプ政権誕生で大いに意気上がるのが欧州の極右勢力です。
「アメリカ・ファーストあるのみ」というトランプ大統領同様に「自国第一」の主張は、移民・外国人排斥にストレートにつながります。

****自国第一」の波、欧州覆うか 右翼政党、独に勢ぞろい****
トランプ米大統領の就任による大波が、早くも欧州に及んでいる。

今年、重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まり、「エリートでなく、民衆による政治が始まった」と気勢を上げた。掲げるのは、トランプ大統領と同じ「自国第一」だ。

■「自国第一」勢ぞろい
21日、ドイツ西部の人口11万の町コブレンツに、欧州各国で「自国第一」を掲げる面々が勢ぞろいした。
オランダのウィルダース自由党党首やフランスのルペン国民戦線(FN)党首、新興政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のペトリ党首らは、約千人の聴衆を前に「次は欧州の番だ」と言わんばかりだった。
 
「エリートが、我々の自由を危険にさらしている」「我々は、我々の国を再び偉大にする」
ウィルダース氏の発言は明らかにトランプ氏の就任演説を意識していた。ルペン氏は「最初のパンチは英国の民衆が選んだEU離脱。二つ目がトランプ政権。2017年は大陸欧州が目覚める」と宣言した。
 
会合は、EU批判を繰り広げる右翼政党が結成した欧州議会の会派「国家と自由の欧州」の主催。相乗効果で支持拡大を図る狙いがあるのは明らかだ。
 
各党とも移民制限を主張し、中東やアジアからの難民受け入れへの反対で一致している。ペトリ氏は「政治家やメディアは寛容を口にするが、なぜ普通の人々に聞かないのか。彼らは不安だらけだ」と話した。
 
3月に総選挙を迎えるオランダでは、イスラム教への敵意をむき出しにする自由党が、世論調査で支持率トップを走る。フランスでも4月の大統領選第1回投票でルペン氏が首位に躍り出る可能性がある。9月に連邦議会選が予定されるドイツでも、支持率が12~15%のAfDは初の連邦議会入りが確実視される。
 
批判の矛先は、欧州の統合を重んじ、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相に向かう。会場では、党首らの演説に、聴衆がしばしば「メルケルは去れ」と連呼して応えた。
 
トランプ政権の発足と右翼政党の高揚で、欧州でも分断と緊張が広がる。
会場付近では、開催に抗議する約3千人が「開かれた欧州を」と訴えてデモ行進した。ドイツのガブリエル副首相や、ユンケル欧州委員長の出身国ルクセンブルクのアッセルボーン外相ら、いま政治を動かしている側の姿もあった。

■訴えは日和見主義的
欧州議会で「国家と自由の欧州」が結成されたのは一昨年。会合は昨年1月に次いで2度目だ。
自国第一」や「愛国心」を唱える各党。EUやエリート層への批判で一致はしているが、具体的な政策で足並みをそろえているわけではない。
 
訴えも日和見主義的だ。例えばAfDは、ギリシャ危機後の13年に共通通貨ユーロへの反対を掲げて誕生した。だが15年にペトリ氏が実権を握ると、難民危機を受けて反難民、反イスラム色を強めた。

ただ経済的な自由主義を求めた人も多く、保護主義色の強いFNに対して「社会主義的で政策が違う」と共闘を批判する幹部が今もいる。
 
しかしペトリ氏は「メルケル氏の方がもっと社会主義的」と意に介さなかった。ルペン氏は「違いを探すことに意味はない」と意に介さなかった。「大義のために集まったのだ。国境を管理して国民を守る。国を愛し、主権を取り返す」
 
この日の会合には、ドイツの公共放送やシュピーゲル誌など、一部メディアの取材登録が認められなかった。その一人、フランクフルター・アルゲマイネ紙のユストゥス・ベンダー記者は「主催者から『うそを書くのをやめろ。フェアな記事を書け』とのメールが来た」と話した。「彼らは批判的な記事を書くジャーナリストを受けつけない。これも米国と同じだ」

■「怒りや反発だけでは統治難しい」
トランプ氏は、就任演説で「ピープル」という単語を10回繰り返した。
「2017年1月20日は、民衆(ピープル)が再び、この国の支配者になった日として記憶される」
 
19世紀末の米国で、既成政党に属さない農民運動として「ピープルズ・パーティー(人民党)」が台頭。「ポピュリスト党」とも呼ばれたことからポピュリズムという言葉が生まれた。
 
そして今、「ピープル」を強調し、「自国第一」を主張する政治家が、各国で支持を集める。
 
ピープルは、合衆国憲法の書き出しにも、有名なリンカーン大統領のゲティズバーグ演説にも使われる単語であり、民主主義を象徴する言葉でもある。だが、その同じ言葉で、トランプ氏らは人々を分断する。参加者の大半が白人だった就任式の翌日、全世界で抗議集会が開かれたことが、それを象徴している。
 
トランプ氏らへの支持が広がる背景や世論の動向も、各国で相似形を描く。
貧困率や失業率が高く、大卒未満の有権者や高齢者が多い――。英シンクタンク、レゾリューション財団は、米国でトランプ氏に投票した人が多い地区と、英国でEU離脱に賛成した人が多い地区の共通点を挙げた。

米国のピュー・リサーチ・センターの昨年の調査によると、「グローバル経済に巻き込まれると、職を減らし賃金を安くするので好ましくない」と答えた人は米国で49%、欧州で32%に上った。中国やインドより高かった。
 
欧州と米国で、時を同じくしてポピュリズムの地盤が生まれた。きっかけは2008年のリーマン・ショック後の世界不況だったと米ジョージタウン大学のマイケル・カジン教授は説く。不況とともに、大量の移民、格差の拡大、ITによる省力化などで、「自分たちは見捨てられた」と考える人が急増した。
 
「政府は経済を統制できず、救済を必要としている国民を助けようともしないと、人々は悟った。既成政治への不安と怒り、叫びこそが、米欧で起きている現象の理由です」
 
そして「自国第一」を主張する政治家は、国境を超えてつながり始めた。英国のEU離脱を先導した英国独立党(UKIP)党首だったファラージ氏は、昨年11月の米大統領選の4日後に、外国の政治家として初めて、ニューヨークでトランプ氏と面会。仏FNのルペン党首も今月、トランプタワーを訪問した姿が目撃された。
 
従来の政党が効果的な回答を見いだせない限り、反既成政治の運動は成長する。一方で、怒りや反発だけで国家を治めることはできない。「ポピュリズム運動が政権を取っても、効果的に統治を行うのが難しい」とカジン教授は言う。
 
トランプ氏は、欧州の政治家に先駆けて、現実という試練に向き合うことになる。【1月23日 朝日】
*******************
コメント

ナイジェリア  ボコ・ハラムによる混乱と急展開するIT革命 “古いアフリカ”と“新しいアフリカ”

2017-01-22 22:51:19 | アフリカ

(ナイジェリア空軍の戦闘機による誤爆を受けた北東部ボルノ州の避難民キャンプ【1月20日 AFP】)

(ナイジェリア首都ラゴスのイノベーションセンター「Ccハブ」)

【“古いアフリカ”のジャメ大統領、退陣
1月15日ブログ“西アフリカ・ガンビア 奇行の独裁者ジャメ大統領、選挙敗北を認めず居座り 軍事介入の動きも”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170115で取り上げた西アフリカ・ガンビアのジャメ大統領の“居座り”は、ナイジェリアやセネガルなど周辺国の軍事的手段も辞さないとの圧力もあって、何とか穏便な形で解決したようです。

****前大統領が出国=赤道ギニアに亡命へ―ガンビア****
西アフリカ・ガンビアなどからの報道によると、同国のジャメ前大統領が21日夜、首都バンジュールの空港から出国した。ジャメ氏は昨年12月の大統領選での敗北を認めず、今月18日の任期満了後も居座っていたが、周辺諸国が派兵するなど圧力をかけたことから、21日未明にようやく退任を表明していた。
 
ジャメ氏退任に向けた調停に当たった西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、ジャメ氏がギニアを経て赤道ギニアに亡命すると明らかにした。
 
これを受け、既にセネガルで就任宣誓を行っていた大統領選の勝者バロウ氏が帰国し、名実ともに新大統領となる。 【1月22日 時事】
*******************

“セネガル軍当局者はAFPに対し「陸・海・空を含む」部隊がガンビア領内に入ったと説明。ナイジェリア、ガーナ、トーゴ、マリの部隊も参加していると述べた。セネガル軍報道官も自国部隊による越境を認めた。ナイジェリアはガンビア上空にジェット機を飛来させた。”【1月20日 AFP】という軍事的圧力をかけつつ、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が退陣に向けて説得にあたり、最終的には近隣のギニアとモーリタニアの首脳が20日、ガンビアに入りジャメ大統領と会談、その後の退陣表明となりました。

まあ、人口約190万人の小国ガンビアは兵士の数は約900人しかおらず、しかも軍参謀長は周辺国の軍事介入があっても「兵士を戦わせることはない」と述べるなどジャメ大統領を見放していましたので【1月19日 毎日より】、大統領に残された選択肢は“出国”しかなかったとも言えます。

政府主導の“魔女狩り”とか、民主主義のルールを無視して大統領職に居座るといった“古いアフリカ”のイメージは、周辺国も払拭したかったというところでしょうか。

地域大国ナイジェリアの“古いアフリカ”】
そのガンビア・ジャメ大統領に対し、軍隊を派遣して圧力をかけた地域大国ナイジェリアですが、周知のようにイスラム過激派「ボコ・ハラム」によるテロや女子学生拉致といった、暴力がはびこる“古いアフリカ”の混乱を未だ完全には脱していません。(かなり追い詰めてきてはいるようで、ブハリ大統領も先月、掃討作戦が「最終段階を迎えている」と強調していますが・・・)

“ボコ・ハラムは2009年以来、少なくとも2万人の死亡に関与。2014年には女子生徒200人以上を拉致した。また約260万人が家を追われ、人道危機が生じている。”【2016年12月22日 AFP】という状況で、多くの住民が避難民キャンプで生活しています。

その避難民キャンプを、あろうことか政府軍の空軍機が誤爆して100人以上(情報によっては236人とも)が死亡するという、悲惨な事件が起きています。

****<ナイジェリア>空軍機誤爆、避難民ら100人以上死亡****
ナイジェリア北東部ボルノ州ランで17日、ナイジェリア空軍機がイスラム過激派ボコ・ハラムの掃討作戦を展開中に避難民キャンプを誤爆した。AP通信によると避難民や援助関係者ら100人以上が死亡、200人が重軽傷を負った。
 
ナイジェリア空軍によると、ボコ・ハラム指導者らの潜伏先を戦闘機や攻撃ヘリで空爆中に、攻撃対象を誤ってキャンプを爆撃したという。空爆で市民らに大きな被害が出たことを同国軍が公に認めたのは初めてとみられる。ブハリ大統領は誤爆を「遺憾に思う」との声明を発表した。
 
ボルノ州当局者は死者は100人以上に上ると説明。国際医療支援団体「国境なき医師団」(MSF)は、少なくとも52人の遺体を収容し、200人が治療を受けていると明らかにした。誤爆は「衝撃的で、容認できない」と強く非難している。犠牲者には、赤十字国際委員会(ICRC)のナイジェリア人職員6人も含まれる。
 
ボコ・ハラムは2014年に200人以上の女子生徒を拉致し、国際的な非難を浴びた。解放された被害者らは、生徒の一部が政府軍による空爆で死亡したと指摘していた。
 
ナイジェリア軍は北東部を拠点とするボコ・ハラムへの攻勢を強めており、ブハリ大統領も先月、掃討作戦が「最終段階を迎えている」と強調していた。【1月18日 毎日】
*****************

キャンプ内には2万人から4万人が暮らす仮設の避難施設が設置されています。
国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は、170人もの人々が死亡したとする「住民や地域の有力者から寄せられた、つじつまの合った報告」があるとしています。【1月20日 AFP】

“地元当局者は21日、死者を埋葬した人々の話として、これまでに234人の遺体が埋葬されたと説明。その後、マイドゥグリに搬送された負傷者2人が死亡したとの報告を受けたと語った”【1月22日 AFP】とも。

暴力によって家を追われたうえに、政府軍の誤爆で大勢が死亡・・・「やっぱりアフリカは・・・」とも思いたくなるような事件です。

政府軍が誤爆を公式に認め、ブハリ大統領の遺憾表明があっただけ、従来よりは“進歩”でしょうか。

【“新しいアフリカ”を切り開くIT革命
こうしたニュースからは想像できないことではありますが、ナイジェリアは今や南アフリカを抜いてアフリカ最大の経済大国になったそうです。(ナイジェリア連邦統計局が2014年4月6日、GDPの再計算した結果としてを発表)

中国の経済統計が水増しされている云々といった話がありますが、ナイジェリアではそもそも人口も正確に把握されていない・・・という話があるぐらいで、数字の信憑性はかなり疑問ではあります。

アフリカ最多の人口(正確な数字は別として)を抱えていますので経済規模も大きくなるのでしょうが、多くの貧困者と、一部の富裕層という大きな格差・不平等が存在するであろうことは容易に推察されます。
(ナイジェリア経済の実態については、“「ナイジェリアがアフリカ最大の経済大国」は本当か?”【2014年4月25日 石野香有氏 The Huffington Post  http://www.huffingtonpost.jp/kaaru-ishino/nigeria_b_5210612.html】も参考になります)

しかし、そうしたネガティブな話だけでなく、ナイジェリアを起点に「アフリカIT革命」が進行している・・・というポジティブな話もあるようです。

****アフリカIT革命は躍進中****
新興企業と支援企業が集うナイジェリアのラゴスが、インフラや投資の遅れを乗り越えて業界を変える

教会から通りを挟み、荒廃した学校の向かいに立っている汚れた灰色のビル。ナイジェリア最大の都市ラゴスによくあるタイプの建物だ。
 
だが内部には、よくあるタイプとは程遠い光景が広がる。西アフリカで急成長するテクノロジー産業の中心地だからだ。壁のポスターには「素早く動き、破壊せよ」の言葉。フロアに並ぶブルーとオレンジのデスクにはミレニアル世代が陣取り、まさにその標語を実践している。
 
数人はノートパソコンの周りに集まって、新規事業のアイデアを議論中。デジタルマーケティング会社の立ち上げ準備に追われる人もいれば、子供にプログラミングを教えている人もいる。彼らは大抵、休憩時間を人工芝が敷き詰められた屋上で過ごす。時にはこのスベースで、地元の関係者を招いてバーベキューパーティーも開かれる。
 
ここはナイジェリア内外で注目を集めるイノベーションセンター「Ccハブ」。ラゴスのテクノロジー地区、ヤバ中心地に居を構える、インキュベーター(起業支援事業者)付きのワークスペースだ。
 
2010年の開設以来、60以上の新興企業がこのCcハブから巣立った。最近ではマイクロソフトと提携し、20の新規事業を指導。昨年9月には、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOがナイジェリアを電撃訪問し、最初にCcハブを訪れて話題を呼んだ。
 
Ccハブは、ソフトウエアのエンジニアを養成するナイジェリアの新興企業アンデラからも程近い場所にある。そのアンデラに、サッカーパークと妻プリシラーチャンが設立した団体「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ」は最近、2400万ドルの投資を行っている。

ザッカーバーグの訪問は、Ccハブの創設者であるボースン・ティジヤニの見通しが正しかったことを証明した。ナイジェリアの新興テクノロジー企業と、西アフリカのIT業界は今、大躍進を遂げている。
 
アフリカは長年、紛争や貧困、飢餓といったイメージと結び付けられてきた。ナイジェリアにしても、ここ数年で最もニュースになったのはイスラム過激派組織ボコ・ハラムの蛮行だ。

初のユニコーンも誕生
だが問題だらけのこの地で、テクノロジーはアフリカ人の生き方とビジネスのやり方を劇的に変えつつある。インキュベーターやアクセラレーター(起業促進事業者)がアフリカ大陸のあちこちに生まれ、ラゴスやガーナの首都アクラなどの都市部に集結しつっある。
 
粗末なインフラや未発達な投資文化といった障壁が今も立ちはだかるものの、テクノロジーはアフリカ大陸を変革する大きな可能性を秘めている。ラゴス滞在中、サッカーパークは開発者らに語った。「このエネルギーはラゴスやナイジェリアを生まれ変わらせるだけではない。大陸全体を形作り、次世代の世界の在り方にも影響を与える」
 
例外的な南アフリカとボツワナをのぞけば、アフリカのテクノロジー業界の誕生は、ケニアの首都ナイロビ郊外にIT企業が集まる「シリコンサバンナ」の建設計画が持ち上がった07~10年にさかのぼる。

07年に事業を開始し、爆発的に拡大したモバイル送金サービス「エムペサ」などが、ケニアをテクノロジー業界の中心地に押し上げた。
 
ここ数年で、テクノロジー革命は大陸中に広がった。世界銀行によれば、昨年6月時点でアフリカには173のテクノロジーハブとインキュベーターが存在しているという。ベンチャー投資も12年の4100万ドルから14年には4億1400万ドルに急増。18年までに6億ドルを上回る見込みだ。
 
シリコンバレーなど世界のテクノロジ・ハブとの関係も強化しつつある。チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブがアンデラを支援するのも、その一例だ。

アンデラは「才能があっても機会に恵まれない」アフリカのギャップを埋めるべく最前線で戦っていると、サッカーバークは称賛している。
 
ラゴスで先月初めに聞かれたアフリカテクノロジ・サミットのようなイベントには、有望な人材が集う。ヨーロッパやアメリカで教育を受けたアフリカ人起業家たちが革新的な会社を立ち上げようと母国に帰る一方、アフリカで起業した新興企業の数々は、シリコンバレーのインキュベーターに加わろうとする。
 
急成長するナイジェリアのテクノロジー業界は、アフリカ初のユニコーン(未上場で10億ドル以上の企業価値を持つベンチャー企業)も生み出した。アフリカ全土でさまざまなオンラインサービスを提供するアフリカ・インターネットーグループだ。

政府主導で通信環境整備
そんなナイジェリアでも、テクノロジー業界は根本的な問題を抱えている。オンライン決済のポータルサービスはしばしば機能せず、14年の調査では成人人口の64%が銀行口座を持っていなかった。銀行口座を介したオンライン決済すらままならない状態だ。
 
テクノロジー業界の繁栄に不可欠な電力の安定供給やインターネットアクセスは、今も遅れたまま。送電網が整備されている地域に住む人々はアフリカの全人口の40%でしかない。インターネットアクセスとなるとさらに絶望的で、国際電気通信連合によれば20%の人々しかネットを使っていないという。
 
だがヤバのような地区では、こうした問題は急速に解決されつつある。13年には、同地区に高速インターネットを供給するため、ラゴス州政府が27キロの光ファイバーケーブルを整備。

「シリコンラグーン」「ヤバコンバレー」とさまざまな名称で呼ばれるようになった同地区には現在、30以上のテクノロジー企業が拠点を置いていると、Ccハブのティジャニは言う。
 
Ccハブは10階建ての専用イノベーションセンター建設を計画中で、今年中に予算800万ご以内で着工したいという。
 
「私たちは、ほんの5~6年でここまで来られた。この調子で歩んでいけば、10年後にどうなっているか、想像してほしい」と、ティジヤニは言う。
 
その頃にはラゴスもアフリカのテクノロジー業界も、さらに大きく変化しているに違いない。【1月24日号 Newsweek日本語版】
*********************

インフラが未整備なアフリカにおいけるイノベーションを牽引したのは携帯電話の普及です。
“携帯電話の急速な普及を契機として、アフリカ諸国等では金融、医療などの様々な分野での産業革新や生活改善が始まっており、「モバイル革命」と呼ばれている。”【総務省HP】

****アフリカから押し寄せるイノベーションの波****
“新しいものはいつもアフリカからやってくる”・・・アリストテレス

世界四大文明の一つとしてピラミッド建築に代表されるような高度文明を築いていた古代エジプト。アリストテレスは、そんなエジプトから洪水のように押し寄せる新たな発想に驚嘆を禁じ得ず、こんな言葉を残しました。

そして今ふたたび、新しい波がアフリカから押し寄せ始めています。アフリカの起業家たちは、自らのアイディアに情報技術(IT)の発達を応用し、世界の競争に挑もうとしているのです。(中略)

たとえば、携帯電話が良い例です。ケニアのサファリコム社は、携帯によるモバイル送金サービス「エムペサ(M-PESA)」(PESAはスワヒリ語でお金を意味する)によって、銀行口座を持たない何百万人もの人々が正規の金融システムを利用できる環境を作り出しました。

その結果、これまでの送金システムを根本から覆しただけでなく、ケニア最大の銀行であるエクイティ銀行が近距離無線通信技術(NFC)搭載のスマートフォン30万台以上をケニアの小売業者に無料配布するといった波及効果まで生まれ始めています。

また、スタートアップのアフリカの企業が直面する資金調達の問題に対しては、Kickstarterをはじめとしたクラウドファンディングが活躍。(中略)

世界中の大企業も注目するアフリカの課題解決イノベーション
世界銀行が把握しているだけでも、アフリカのイノベーション・ハブは90カ所に及び、今なお次々と誕生しています。

「アフリカのシリコンバレー」と呼ばれるケニアでは、国内43郡に1カ所ずつイノベーション・ハブを構築する計画が進められていますし、ボツワナでは政府自身がイノベーション・ハブを支援しています。(中略)

こうした環境の中で生まれているイノベーションの代表的な例がモバイルアプリ、それも日常的課題を解決するためのアプリです。

例えば、最も効率的なミルクの生産方法について情報を提供する「iCow」や、マダガスカルの農業従事者に情報を提供する「Rural eMarket」といった農業関連のアプリ、アフリカで深刻な問題となっている偽造医薬品の発見・警告をしてくれる「PREVENT」、ルワンダで展開される、国内のあらゆるヒト免疫不全ウイルス(HIV)プログラムに関する重要情報を提供するアプリ「TRACnet」といった健康関連のアプリが次々と生み出されています。

また、教育をアフリカの遠隔地にまで普及させるためにもテクノロジーが活かされています。インタラクティブな教育プラットフォーム「eLimu」は、ケニアの小学校のカリキュラムをデジタル・コンテンツとして完備。現地で開発された文化関連のビデオやアニメーション、歌、音楽、ゲーム、クイズと組み合わせて、学習成果や評価結果の改善を実現しています。

もちろん、アプリだけではありません。アフリカで唯一のバイオフォトニクス(生体医用光学)研究医であるPatience Mthunzi博士は、レーザーを使用した疾患診断ツールを開発。トーゴ人のVictor Agbegnenou博士が開発した多義的な無線通信システムは、医療研究所とアフリカ全土をつなぐ通信手段として試験中です。(中略)

そして、ナイジェリアでは、iROKOtv社が電話やパソコンを通じて視聴者に直接映像を配信することによって、著作権侵害行為を阻止するナイジェリア映画(ノリウッド「Nollywood」)の製作会社の支援など、新しいアイディアが今、アフリカで次々と産声を上げています。

「1996年、国連アフリカ経済委員会(UNECA)がアフリカ諸国の閣僚と協働で、地域に根ざした包括的なICT開発の枠組みとしてアフリカ情報社会イニシアチブ(AISI)を発足させた時には、今のような状況になるとは想像もつきませんでした」と(アフリカ経済変革センターの)アモアコ氏は言います。

「しかし、AISIがアフリカのICT革命を牽引する原動力として広く知られると、アフリカの若者たちは先進諸国との数十年分の技術的格差を一足飛びで縮め、アフリカ政府の非効率性やインフラ不足を飛躍的に改善し、魅力的な進歩を遂げているのです」

イノベーションが生まれる場所が拡がっています。国境や大陸を超えた投資や連携も、ますます加速していくでしょう。こうした世界の動きにも目が離せませんね。【2015年5月20日 GE Reports Japan】
******************

【“IT革命”に問題は? 先ずは“古いアフリカ”の一掃を
アフリカの人々の生活がIT革命で急速に改善するのであれば、実に喜ばしいことです。

ただ、“先進諸国との数十年分の技術的格差を一足飛びで縮め”といった流れが、社会に歪を生むことにならないのか?農業・製造業といった全体的な国民経済の底上げなしに一気に最先端技術に飛びくこと(人的・資金的配分を含め)に問題はないのか?成長の果実は広く国民に行き渡るのか?・・・やや不安も感じます。

いずれにしても、“古いアフリカ”の一掃が最優先課題です。多くの国民が避難民キャンプでの生活を余儀なくされている状況で「IT革命だ」と言われても、「それがどうした」という話にしかなりません。

紛争・暴力・汚職・腐敗といった“古いアフリカ”を一掃しない限り、“新しいアフリカ”の健全な成長もないでしょう。
コメント