孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ASEAN  憲章発効後の初会合 “共同体”への遠い道のり

2009-02-28 13:26:37 | 国際情勢

(バングラデシュの難民キャンプで暮らすミャンマーからのロヒンギャ難民
ミャンマーはその存在すら否定しており、“共同体”を目指すタイは海上に放置して死に至らしめ、インドネシアも受入れを拒否しています。
“flickr”より By Austcare - World Humanitarian Aid
http://www.flickr.com/photos/austcare/2776551201/)

【15年の“共同体”目指して】
東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳・閣僚会議は、開催国であるタイ国内のタクシン派・反タクシン派の政治抗争、それに伴う政権交代などで延期・変更がなされていましたが、ようやく27日から3月1日までタイ中部のリゾート地フアヒンで開催されています。
今回会議は、08年12月に加盟国の行動規範である「ASEAN憲章」が発効後、初めての会議となります。

ASEANは、15年までに欧州連合(EU)のような、政治安保、経済、社会文化の各共同体で構成される共同体創設という目標を掲げており、今回の会議では、07年に採択した経済統合への行動計画を除く政治・安保、社会・文化統合への行動計画案の採択を目指しています。
政治安保共同体の計画案には、各国が紛争の防止や解決、人権保護などで協力することが盛り込まれています。

喫緊の課題となっている経済問題に関しては、先に開いたASEANと日中韓の財務相会合で、通貨危機に陥った国に外貨を融通する枠組み「チェンマイ・イニシアチブ」の総額を1200億ドルに拡大することで合意していますが、今回の会議には日中韓の首脳が参加していないため、それ以上の対策は出せないと推測されています。
“カンボジアのフン・セン首相も「経済危機対策で(3国に)働きかけができなければ(首脳会議は)時間の無駄だ」と手厳しい”【2月27日 産経】との批判もあるようです。

【骨抜きの“人権機構案”】
また、27日に行われた外相会議では、域内の人権問題を協議する「ASEAN人権機構」の枠組み案が策定されましたが、内政不干渉を前提にした全会一致方式に留まっているため、その実効性には疑問があります。

****ASEAN:人権機構案を策定…強制力、制裁規定なく*****
東南アジア諸国連合(ASEAN)は27日、タイのフアヒンで、加盟10カ国の外相会議などを開き、域内の人権問題を協議する「ASEAN人権機構」の枠組み案を策定した。同案では、人権機構の意思決定方式にもASEANの原則である「全会一致」を維持した。このため、人権問題が指摘された当該国が抵抗すれば強制力を持たず、人権弾圧が続くミャンマーの民主化問題など具体事例に有効に対応するのは当面は困難な見通しだ。

専門部会が外相会議に提出した枠組み案では、少なくとも年2回の会合を開き、意思決定で全会一致に至らない場合は外相会議に対応を委ねる。ASEANが原則とする「内政不干渉」も維持し、加盟各国・地域の特性や文化の違いに配慮するとして、制裁規定も見送った。

ASEANは07年の首脳会議で、ミャンマーの民主化停滞に対する国際社会の批判の高まりを念頭に、人権や基本的自由の促進に関する問題を協議する人権機構の創設に合意。年内の発足を目標に機能や権限を検討しているが、機構に強い権限を持たせることにミャンマーなどが反対し、調整が難航している。【2月27日 毎日】
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全会一致、内政不干渉、制裁規定なし・・・。
確かに、制裁を課して除名・排除すれば鬱憤ばらしにはなっても事態の改善にはつながらない、基本理念が異なる国であっても排除せず、普段に圧力をかけ続けることで何らかの前向きの変化を期待する・・・それもひとつの見識ではあります。

中国のチベット問題のように、他国の人権問題への対応は難しいものがあります。
ある程度、現実的諸問題を見ながらやっていかざるを得ない面もあります。
ただ、“共同体”を称するなら、メンバーに対してもう少し強いメッセージを発することができる枠組みがあってもいいように思えます。

【行き場のないロヒンギャ難民】
こうした事情で、今回会議ではミャンマー国内の人権問題には立ち入った議論はされないようですが、ミャンマー絡みの問題として具体的に議論されたのが“ロヒンギャ難民問題”です。
ミャンマーとバングラデシュの国境付近の少数民族ロヒンギャが、周辺国に多数入国している問題で、今年に入り、船でタイに密入国しようとしたロヒンギャをタイ軍が海上に放置し、死者も出たとの疑惑が浮上しています。
また、インドネシアなどにも多くのロヒンギャが漂着しており、ASEANとして対応を迫られる問題となっています。

****ロヒンギャ問題でミャンマーを批判 ASEAN外相会議****
この日(27日)の外相会議では、ミャンマー(ビルマ)から周辺国に大量流出しているロヒンギャ族問題をASEANの地域問題として正式に位置づけることで合意。域内で解決策を探るとともに4月中旬にインドネシア・バリ島で開かれる移民問題などの国際会議で取りあげ、国際協力を求めることで一致した。
国際会議は「バリ・プロセス」と呼ばれ、不法移民や人身売買を話し合うために開催。これまでの会議には日本など約50カ国が出席しており、タイ政府高官は「域内協議と国際協力の両方から解決の糸口を探る」と話した。
ASEANが15年の創設を目指す「政治安保」「経済」「社会文化」の三つの共同体が実現すれば、難民や移民の取り扱いは必ず浮上する課題。昨年12月に発効したASEAN憲章で域内の人権促進や保護をうたっており、発効後初めての首脳会議となる今回、ASEANがロヒンギャ族問題にどう対処するかが焦点になっている。

タイ筋によると、この問題は26日夜の夕食会でタイ外相が提起。ミャンマーのニャン・ウィン外相が「国内にロヒンギャ族という少数民族は存在しない」と従来の説明を繰り返したため、数カ国から批判が出たという。議論は27日の外相会議でも続き、結局はミャンマーもバリ・プロセスなどで解決策を探ることに合意した
ロヒンギャ族をめぐっては、昨年末にミャンマーから小船で逃れてきた約千人をタイ軍が「不法移民」として保護せずに海に放置。一部はインドネシアなどに流れ着いた。同国も「経済難民」に当たるとして受け入れを拒否し、拘束したうえで対応を協議している。軍事政権に迫害されていることを理由に難民としての受け入れを周辺国に求める人権団体らが、対応の改善を求めている。【2月27日 朝日】
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ミャンマーはロヒンギャ族の存在を否定、タイは海上放置、インドネシアも受け入れ拒否・・・。
結局のところ、タイ、インドネシアの主張は難民のミャンマーへの強制送還でしょうか。
その結果、ミャンマー国内で送還されたロヒンギャ族難民がどう扱われるのか?
ミャンマーが暖かく彼等を迎え入れることはあり得ません。
“共同体”への道のりははてしなく遠いものに思われます。


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ナイジェリア  新薬開発の実態 米ファイザー社、賠償金支払いで和解

2009-02-27 21:24:33 | 世相

(事件が起きたナイジェリア・カノの子供達 “flickr”より By eekim
http://www.flickr.com/photos/eekim/2635131660/)

医薬品・医療関係者には御馴染みの企業に「ファイザー」という製薬会社があります。
2006年売上世界第1位の超大企業です。
日本で販売されている医薬品としては、高血圧治療薬の“ノルバスク”、高コレステロール治療薬の“リピトール”などは、その分野では最も多く使用されているもののひとつです。
他にも、睡眠薬の“ハルシオン”、認知症治療の“アリセプト”、更にED治療の“バイアグラ”、禁煙補助の“チャンピックス”などのユニークな医薬品もこの会社の製品です。

****米ファイザーの試験薬訴訟、ナイジェリア犠牲者と賠償金和解へ****
米医薬品大手のファイザーがナイジェリア北部のカノ州で、髄膜炎の子どもに未承認の薬を試験的に投与し、11人が死亡、多数の子どもに重度の後遺症が残ったとして、犠牲者の家族らがファイザーに賠償を求めていた問題で、ファイザーは賠償金の支払いに合意した。

26日、交渉筋に近い関係者が明らかにした内容によると、ファイザーが賠償金を支払うことで両者は基本的に和解し、3月にイタリア・ローマで示談書の調印を行う予定だという。数百万ドルといわれる和解金の正確な額は明らかにされていない。
同問題については、ナイジェリアのカノ州政府が犠牲者らを代理し、刑事、民事双方で裁判が行われていた。訴訟で州政府が要求していた賠償額は27億5000万ドル(約2700億円)。
関係筋によると、ナイジェリアの軍事政権時代に最高指導者を務めたヤクブ・ゴウォン氏と、ジミー・カーター元米大統領が交渉を仲介した。

事件は1996年4月に、ナイジェリア北部のカノ州で、はしか、コレラ、髄膜炎が大流行して3000人の犠牲者が出た際、ファイザーが未承認のワクチン「トロバン」を保健当局の承認や親の同意なしに子どもたち約200人に投与したもの。結果11人が死亡、189人に重い後遺症が残った。ファイザー側は過失を一切認めていなかった。
ファイザーに対してはこの件で、ナイジェリア政府も別の訴訟で65億ドル(約6370億円)の賠償を求めている。【2月26日 AFP】
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【対処:変更せず、そのまま続行  結果:死亡】
ファイザー社の「トロバン」で検索すると、feed_the_world_0903さんのブログ「患者番号[0069]、年齢:10歳、性別:女 」(2007年7月4日)(http://blog.livedoor.jp/feed_the_world_0903/archives/64661033.html)がありました。
医薬品開発の実態を明らかにする非常に印象的な内容です。

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試験サイト番号[6587]  患者番号[0069]  年齢:10歳  性別:女
体重:41ポンド(18.6キログラム)

その記録には、少女は名前の代わりにそう記載されていた。
患者番号[0069]は試験番号[154-149]において、56ミリグラムの「薬」を投与された。
投薬から1日後、全身の力が抜け、片方の目は一点を凝視した。
投薬から3日後、彼女は死んだ。

記録には次のように記載されていた。
対処:変更せず、そのまま続行   結果:死亡
(後略)
【上記「患者番号[0069]、年齢:10歳、性別:女 」(2007年7月4日)より】
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「トロバン」はニューキノロン系と呼ばれる抗菌剤ですが、特に細菌性の脳炎、髄膜炎患者自体がアメリカ国内に少ないため、ファイザー社は早期の商品化のためこの関連データを必要としていたようです。

ファイザー社は、ナイジェリア当局に許可を得たと主張していますが、ナイジェリア政府は否定しています。
また、ファイザー社は、患者の子どもの親に新薬の実験であることを「口頭で伝えた」と言っていますが、親たちはファイザーのことも実験のことも知らなかったと言っています。
ファイザー社はアメリカで新薬の認可を得るために治験データを食品医薬品局(FDA)に提出した際に、病院の倫理委員会の承諾書等を偽造しています。

多くの新薬は世界中の特に発展途上国の貧しい人々を使って試験されているそうです。
貧しくて病院にも行った事のない人々は、他の薬の影響がないため試験データの収集には最適だという事情があります。

新薬の開発には治験が必要であり、その治験にはリスクがつきまといます。
それだけに“人体実験”とならないように、厳しいルールのもとで行う必要があります。
しかし、実際には“ルール違反”まがいの話もときおり聞きます。
アメリカなどでは新薬や新しい治療法にチャレンジすることに同意する患者さんも結構いるようですが、医療制度の違い、国民性の違いもあって、日本ではそうしたリスクをともなう治験について患者さんの同意を得ることが難しいといった話も聞きます。

同じ目的に使用する複数の薬剤、複数の治療法の評価のため、患者群を分けてそれぞれ別の薬剤・治療法があてがわれ、数年かけてその治療成績を比較するような確認試験も行われますが、試験途中で明らかに効果に差があることが判明し、それ以上その薬剤・治療法を継続することに問題があるような場合は、その薬剤・治療法の試験は中止されます。

薬剤だったか、治療法だったか、もう中身は忘れましたが、以前中国で行われた確認試験で“これだけ大きな死亡率の差がでました”といったものがありました。
その試験結果を聞いたとき、「どうしてそんな死亡率が大きく違うような試験を最後まで継続したのだろうか?」「死亡率の高いほうの試験で死んでいった患者さんはどうなるのか?」という疑問を感じたこともあります。

もし、途上国の貧しい人々によって行われる新薬開発のための治験が“いかがわしい”方法で行われているとすれば、主に私たち先進国の患者が使用する薬品が、途上国の人々の“人体実験”によって作られる・・・ということにもなります。

“対処:変更せず、そのまま続行  結果:死亡”・・・事務的な記述に恐ろしいものを感じます。


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アメリカ  “社会主義化”論議にみる日米社会の異質

2009-02-26 14:24:13 | 世相

(オバマ大統領の就任式を熱い視線で見つめる人々 この期待がいつまで続くのか
“flickr”より By Neno°
http://www.flickr.com/photos/ernest-morales/3213693716/)

現在の日本は概ね欧米と同じような価値観の社会(政治的な民主主義とか、経済的な資本主義とか)のように普段感じていますが、ときおり異質な側面に驚くこともあります。

****ダーウィンの進化論、米国人で信じているのは40%****
米世論調査企業ギャラップが11日に発表した調査結果によると、進化論を信じていると答えた米国人は、わずか40%だったという。過去10年間に行われた調査においても、44-47%の人が、神が過去1万年ほどの間に、人間を現在のような形で創造したと信じていると答えている。
米国では、学校で進化論についてはあまり教えられてはいないほか、多くの宗教団体がキリスト教の聖書の字義通りの解釈を主張している。(中略)
1968年になり、米最高裁はようやく、進化論を教えることを犯罪だとしていたアーカンソー州法を無効とする判決を下し、政教分離の政府の下で進化論を教えることを禁止するのは違憲だとする判断を示した。
その後、米最高裁は1987年、聖書の天地創造説を学校で教えることを強制するのは、公教育システムの中で宗教を奨励することにつながるとして、違憲であるとの判断を示した。【2月14日 AFP】
********************

残り60%が本当に進化論を信じていないのか、宗教的建前として否定しているのか・・・そのあたりは定かではありませんが、銃規制への対応と並んで“異質さ”を感じるところです。

【“社会主義化するアメリカ資本主義”】
先週のNewsweekを読んでいて、同様の異質さを感じるところがありました。
オバマ大統領の経済政策・景気対策を特集しているのですが、巻頭の記事の表題が「We are all socialists now 社会主義化するアメリカ資本主義」でした。

民間銀行・企業への公的介入という景気対策によって政府の役割が拡大することによる、欧州型国家(その典型としてフランスが引き合いに出されることが多いようですが)への変質に対する懸念・戸惑い・是非が論じられています。

もちろん、公的介入や“大きな政府”に対する議論は日本でもあるところですが、“社会主義”という言葉を持ち出す大仰さ(その裏にある抵抗感)にある種の“異質さ”を感じた次第です。
先日も金融機関の“国有化”の噂で株式市場が敏感に反応したりする場面もありました。

特に、こうした“社会主義化”への懸念は共和党支持者に強いようで、オバマ大統領が目指した“超党派”の取組みは早くも民主党・共和党の対決ムードになりつつあるようです。

そうした“大きな政府”をめぐる党派対立は、24日にオバマ大統領が行った初の議会演説に対する反応にもあらわれています。

****オバマ大統領:「福祉重視」鮮明に 初の議会演説****
オバマ米大統領の24日の初の議会向け演説は、経済危機に直面する米国の再生を目指す「国家再建シナリオ」を明確に示し、国民に自信と活力を吹き込む狙いがあった。エネルギー、医療、教育が3本柱だが、透けて見えるのは連邦政府主導の福祉重視国家だ。これに対する共和党の反発は強く、新たな党派的亀裂も広がるなど、オバマ流の国家像をめぐる論争は今後も拡大しそうだ。

オバマ大統領は演説で26日に議会に提出する予算教書が「アメリカのビジョン、将来の青写真になる」と明言。「決定的に重要」な政策としてエネルギー、医療、教育の三つを挙げ、国際的競争力の向上に意欲を示した。
しかし、演説に対する共和党側の対抗演説で、次期大統領選の有力候補とされるジンダル・ルイジアナ州知事は「米国の強さは政府ではなく、市民の温情深い心と起業家精神にこそある」と真っ向から反発した。
共和党には医療や教育は民間や州政府の仕事との考えが根強い。オバマ氏の医療保険改革には750億ドル(約約7兆2600億円)の巨費がかかるとの試算もあり、「米国は社会主義国家になる」(ギングリッチ元下院議長)と危惧(きぐ)する声も出ている。
演説でも「これ以上、医療保険改革を先延ばしにすることはできない」とオバマ大統領が訴えると、民主党議員が総立ちで拍手を送ったが、共和党議員の大半は座席に身を沈めたままで、対立の根深さを見せ付けた。(後略)【2月25日 毎日】
***************

「米国の強さは政府ではなく、市民の温情深い心と起業家精神にこそある」という信念は、付け焼刃的な“構造改革”とは土台が違うようで、日本的にはさほど違和感もない(政策的に妥当かどうかという議論は別にして)福祉重視も「米国は社会主義国家になる」云々の話につながるようです。

【「自民党は実は社会民主主義の政党」】
一方、日本では、与謝野馨経済財政担当相が2月10日の参院財政金融委員会で、「この10年間の自民党の政策は外国から輸入したものを無理やりに移植してきたのではないか」「この10年間の経済界の動きは決して我々が目指している社会ではない」「『強者が栄え、弱者が滅びる』という感じは自民党内にはあまりない。自民党は実は社会民主主義の政党だと思っている」と語っています。

自民党が社会民主主義の政党かどうかは別として(自民党がかつての社会党との対立の時代にあって、社会党が理念的に主張しているものを政策的に取り込み実現していくことで、安定した支持を獲得してきた・・・ということはよく言われる話ですが)、昨今の派遣切り・雇い止めに対する世論の反応など見ていると、日米の社会には相当に異質な価値観があるようにも感じます。


 
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カンボジア  特別法廷の公判が始まる ポル・ポト政権幹部は<革命>をどう認識していたのか?

2009-02-25 20:56:04 | 世相

(トゥールスレンに展示されている処刑された人々の写真から この女性は当時の外務副大臣の妻であったチャン・キム・スルン 
ひざに乳飲み子をかかえています。背筋を伸ばし正面を見つめるその姿は、自らとわが子に襲い掛かる不条理のなかで、絶望を見つめているかのように思えます。
写真を眺めてしばらくして、女性の目元を伝うものがあるのに気づきました。
涙でしょうか。)

【収容所長から難民救援へ】
先週、カンボジアでようやくポル・ポト政権幹部を裁く特別法廷の公判がはじまりました。
(ポル・ポト自身は98年4月、権力を失いジャングルの中で死亡しています。)
国連とカンボジア政府が2006年に共同設置した特別法廷は、国内法手続きにこだわるカンボジア人判事と国際法廷を基準とする外国人判事との調整が難航、資金難も加わり、当初予定から1年7か月も開廷が遅れました。
(その背景には、自分自身がかつてはクメール・ルージュに身をおいていたフン・セン首相が、古傷を暴くことにもなる裁判について、特にその国際的基準での運営について、あまり熱心ではないのではとも勘ぐられます。)

****ポル・ポト裁判 初公判 政権崩壊30年 大量虐殺を解明****
1970年代後半、カンボジアのポル・ポト政権(当時)が約170万人を虐殺や餓死に追いやった事件の真相究明と、その責任を問う特別法廷が17日、プノンペン郊外の同法廷で政権崩壊から30年をへて初めて開かれた。
初公判には当時「S21」と呼ばれたトゥールスレン政治犯収容所で、子供や外国人を含む約1万5000人を処刑するなどしたとして殺人罪や人道に反する罪などで起訴された元所長、カン・ケ・イウ被告(66)が出廷。被告は水色のシャツ姿で被告側の席に座り、硬い表情で前を見つめた。被告への質問の予定はなく、裁判官が冒頭で、被告が問われる罪や、遺族らも尋問などで審理に参加する法廷の仕組みなどを説明した。

被告の弁護人は「すでに被告の拘束期間が9年9カ月と7日を経過した。カンボジアの法律では3年以上の拘束は認められていない。直ちに釈放すべきだ」と主張したが、裁判官はこれを認めなかった。罪状認否などの本格審理は3月の次回公判以降となる見通しだ。特別法廷はほかにポル・ポト元首相と並ぶ最高幹部、ヌオン・チア元人民代表会議議長(82)やキュー・サムファン元国家幹部会議長(77)、イエン・サリ元副首相(83)と妻のイエン・チリト元社会問題相(76)の4人を逮捕しているが、起訴には至っていない。【2月17日 産経】
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トゥールスレン政治犯収容所のカン・ケ・イウ被告は通称ドッチの名前のほうがよく知られています。
学校の成績は抜群で勉強熱心な少年だったそうですが、高校の数学教師になってから共産主義に傾倒していったようです。
少年衛兵を使って、拷問によって1万5000人を超える人々を死へ追いやったドッチですが、ポル・ポト政権が崩壊した79年1月からはその行方がわからなくなっていました。
99年にその存在が確認されたとき、ドッチはタイ国境近い森の中で、国連やアメリカの民間救援組織のバックアップを受け、難民救援活動に従事していました。
96年にはカトリックの洗礼を受けたとか。

ドッチは、ポル・ポト政権幹部になかで唯一自分の罪を認めている人物です。
公判がドッチから始まったのは、そういう事情もあってのことでしょう。
発見された彼は、「私の罪は、あおのころ神ではなく共産主義に仕えたことだった。殺戮の過去を大変後悔している。」「裁判で死刑にされてもかまわない。私の魂はイエスのものだから。」と語ったそうです。
【「ポル・ポト<革命>史」(山田寛著)より】
なお、特別法廷には死刑がなく、同被告には終身刑が言い渡されるとみられています。

法廷では、検察側が、トゥールスレン収容所が解放された直後、収容所の内部が撮影された記録フィルムの証拠品提出を申請しました。
提出されたビデオには、元高校校舎の廃棄された収容所で、ベッドの鉄枠に縛りつけられたまま膨れ上がった死体が複数映されるなど、恐怖の光景が記録されているそうです。
これに対し、被告弁護人は、証拠品がベトナム側のプロパガンダ映画である可能性が高いとして異議を唱えています。【2月18日 AFP】

昨年の正月にプノンペンのトゥールスレン収容所を訪れ、鉄枠のベッドも実際に目にしましたが、床に残るしみが血のあとのように思えた記憶があります。
(カンボジア2008 ①狂気の記憶(前編)・・・トゥール・スレン
http://4travel.jp/traveler/azianokaze/album/10209621/)

【「なぜ善人がこんな罪で非難されるのか分からない。」】
今回「人道上の罪」「戦争犯罪」「拷問」「計画的殺人罪」で起訴されているドッチですが、政権中枢にいた幹部ではありません。
政権中枢からの指示を冷酷・忠実に、元数学教師らしい律儀さで実行した立場にあります。
一体ポル・ポト政権がどういう考えであの<革命>と称する虐殺を行ったのか・・・その謎の解明には、まさに政権中枢にいた他の4名の幹部の公判が待たれます。

そのひとり、イエン・サリ元副首相の妻で、社会問題相だったイエン・チリトについての記事がはいっています。

****旧ポル・ポト政権の「ファーストレディー」、特別法廷で悪態****
1970年代にカンボジアで大虐殺を行ったポル・ポト政権の元幹部を裁くカンボジア特別法廷で24日、イエン・サリ元副首相の妻で、ポル・ポト派の「ファーストレディー」の異名をとるイエン・チリト元社会問題相(76)の保釈請求に対する審理が行われた。

イエン・チリト被告は検察側に対し「呪われて地獄に落ちるがいい」と悪態をつくなど、法廷内で延々と怒りと非難を口にした。同被告は1975-79年の独裁政権下で犯した戦争犯罪や「人道に対する罪」などで起訴されている。
被告は公判の冒頭では「わたしはあまりに弱っている」ため、身柄拘束に対する不服申し立ては弁護人が自分の代わりに行うと述べた。
しかし、被告が社会問題相を務めていた時期に起こったトゥールスレン収容所の大量虐殺について、被告が知っていたのではないかと検察側が言及した場面で逆上し、15分間にわたって「わたしを人殺しなどと非難すれば、おまえが地獄に落ちるだろう」などの発言を止めなかった。被告は「なぜ善人がこんな罪で非難されるのか分からない。わたしは非常に苦しんできた。誤った非難を受け続け、これ以上我慢ならない」とも述べた。
自らの罪の否定には衰えをまったく見せなかったイエン・チリト被告だが、高齢のため健康状態が懸念されている。
検察側は、被告の身柄の安全確保と公共秩序の維持、また逃亡防止などの観点から、同被告の身柄拘束の必要性を主張している。裁判所は後日、公判開始までの保釈に関する決定を言い渡す。【2月24日 AFP】
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“底辺の人民による革命”を唱えたポル・ポト政権幹部には、上流階級・ブルジョワ出身、当時の最高学府シソワット高校卒業、フランス留学、高校教師の経験という共通特徴、一言で言えばエリート出身という特徴があります。
ポル・ポトの妻となった姉のイエン・ポナリー(死亡)と妹のイエン・チリト姉妹は、このすべての特徴にあてはまり、シアヌークも子供時代の彼女等を知っているという王家とも近い上流階級の出です。

ポル・ポト夫妻、イエン・サリ夫妻の4名は“四人組”とも称され、権力の文字通り中枢を形成していました。
フン・セン首相はかつて、「私はポル・ポトとも生活したことがあり、彼等をよく知っている。ポル・ポト夫妻、イエン・サリ夫妻の四人組が真の実力者だった。二人の妻はキュー・サムファンなどよりよほど力があった。チリト夫人の夫への影響力はすこぶる大きく、サリやサムファンが出す文書の多くが、実は彼女によって書かれていた・・・」と述べています。【「ポル・ポト<革命>史」(山田寛著)より】

一方、イエン・チリトは政権崩壊後の会見で、自身が76年半ばに行った北西部地域視察について、「めちゃめちゃでした。老人・妊婦・赤ん坊に授乳している婦人・小さな子供は田畑で働かないようにというのが首相の指令だったのに、誰もがひどく暑い日光の中で、水田で働いていた。下痢やマラリアで苦しんでいる病人がいっぱいだった。そこで、私は北西部地域の幹部達は意図的に党の命令に背いているという報告書を書きましたよ。スパイが私たちの間に入り込んだのです。」と語っています。

自分たちの行っていた<革命>について、その実態について、どのような認識を持っていたのでしょうか?

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中国  炭鉱事情にみる地方官僚腐敗

2009-02-24 21:52:43 | 世相

(中国の炭鉱 屑の中から自宅で使える石炭を取り出す作業 主に女性の仕事とか
“flickr”より By LHOON
http://www.flickr.com/photos/lhoon/191847332/)

中国でまた大きな炭鉱事故がありました。

****坑内でガス爆発、74人死亡=「安全管理」の国有重点炭鉱-中国****
中国中央テレビによると、山西省古交市にある屯蘭炭鉱で22日午前2時(日本時間同3時)すぎ、ガス爆発が起き、作業員74人が死亡、100人以上が負傷した。うち5人が重体という。
事故当時、坑内では436人が作業中だった。うち約350人が自力で脱出するか救助隊によって地上に引き揚げられたが、同日午後6時(同7時)までに74人の死亡が確認された。
山西省トップの張宝順党委書記が現場に急行し、救出作業の指揮に当たった。屯蘭炭鉱は大手石炭企業、山西焦煤集団傘下の国有重点炭鉱で、年産能力500万トン。炭鉱が集中する同省では事故が頻発しているが、新華社電は屯蘭について「安全管理で知られ、過去5年間、大きな事故は起こしていない」と伝えている。【2月23日 時事】
******************

坑内にはまだ数十人が取り残されているとも報じられています。
中国では炭鉱での事故が続いていますが、07年12月には同じく山西省の炭坑で爆発があり105人が死亡。
今回の事故もこれに匹敵する規模となる恐れがあるとも。【2月22日 AFP】

炭鉱は危険と隣り合わせの職場であり、炭鉱事故自体はかつて日本でも炭鉱が存在していた頃はしばしば経験しています。
日本最大の炭鉱であった三井三池炭鉱では、60年の激しい労働争議の後、63年には三川抗で458人の死者を出す大事故を起しています。更に機械化・安全対策も進んだ84年には有明抗で83人が死亡する事故も起きています。
ただ、中国の炭鉱事故には現在の中国の社会事情を色濃く反映した側面もあるようです。

「中国貧困絶望工場(The China Price)」(アレクサンドラ・ハーニー)に中国の炭鉱事情を扱った章があります。
以下、要点を抜粋します。

***********
中国のエネルギー供給量の3分の2以上が石炭由来であり、中国は世界最大の石炭産出国、かつ、最大の石炭消費国です。

石炭は経済成長のエンジンですが、同時に最大の環境汚染源でもあります。
中国の大気中に放出される煤煙と粉塵の70%、二酸化硫黄の90%以上が石炭由来と言われています。
地方役人の出世がその地域の経済成長で決まるシステムのため、これまで環境より成長が優先されてきました。
しかし、中央政府レベルでは、環境保護は政策的に優先課題となりつつあります。
温家宝首相は「グリーンGDP」(環境破壊による損失をコストとして控除する概念)を提唱して、成長一辺倒からの脱却を訴えているようですが、まだ地方では根付いていないようです。

中国には炭鉱が28000ヶ所あるそうですが、そのうち24000ヶ所が小規模炭鉱であり、この小規模炭鉱が中国石炭の3分の1を産出しています。そしてこの小規模炭鉱は最も危険な職場でもあります。
中国は世界の石炭産出量の35%を占めていますが、一方、炭鉱事故死者数の80%が中国です。
その中国炭鉱でも、大規模国有炭鉱は近代化・安全措置を進めていますが、炭鉱事故の70%以上が小規模炭鉱で発生しています。
大規模な炭鉱でも、地中奥深い所で働く危険な作業は出稼ぎ労働者が多く、正社員は地表近くの比較的安全な場所で働いているとか。
「顔にこびりついているススの多さを見れば、階級がわかる」

中国政府にとっては生産性が低く、環境対策・安全対策がなされていない小規模炭鉱は厄介物でもあり、無許可炭鉱の閉山を推進しています。
全国の石炭の4分の1を産出する山西省では2006年、3550の違法炭鉱を閉鎖させたそうです。

しかし、違法炭鉱は地元役人への賄賂によって生き残っています。
中国では電力の絶対的不足から、火力発電をまかなう石炭は魅力的な投資先となっています。
炭鉱所有者は一攫千金を狙って、数人で掘るような零細な違法炭鉱を操業します。
炭鉱労働者も金が欲しいのは同様で、危険を承知で働いています。

違法炭鉱の所有者はかねてから担当地方役人に賄賂をおくっていますので、違法炭鉱の摘発があるときは事前連絡があり、そのときは仕事を休み穴は隠すことで摘発を逃れるそうです。
「カネを持っていれば仕事は続けられるし、カネを使えば面倒も避けられる」

こうした小規模炭鉱では爆発など事故は日常茶飯事ですが、事故が起きても死体を隠す、遺族にはカネで口止めする、病死扱いにするといったことがなされているとか。
当然、賄賂を渡してある地方役人とは口裏あわせ・・・

地元役人自体が炭鉱に投資していることが多く、違法炭鉱がはびこり、収賄が横行する現状の是正がなかなか進みません。
中共中央紀律検査委員会は官僚・国有企業経営陣に炭鉱との利害関係を絶つように命令(2005年8月)しましたが、親族名義にするなどで、実態は改善されていないようです。
【「中国貧困絶望工場(The China Price)」(アレクサンドラ・ハーニー)より】
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今回の事故は安全対策も一応とられている大規模な国有炭鉱でおきたようですが、表面には出てこない違法小規模炭鉱での事故が多数存在しているようです。
そして、そうした事態を可能ならしめているのが、地方官僚の腐敗です。

中央政府の認識と、地方官僚の実態には大きなズレがあるようです。
最近は中国でも民衆の抗議行動が頻発し、社会が不安定化していますが、その大きな要因がこの地方官僚の腐敗にあります。
この問題に有効にメスをいれない限り、中国社会の改善も困難ですし、社会不安が一層つのります。


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タイ  収まらない深南部イスラム過激派の分離独立運動

2009-02-23 20:39:09 | 国際情勢

(タイのビーチでシュノケーリングを楽しむイスラム教徒
仏教国のイメージが定着しているタイでは国民の95%が仏教徒ですが、南部のナラティワート、ヤラー、パッターニの3県には多くのマレー系イスラム教徒が暮らしています。
この深南部と呼ばれる地域ではイスラム教徒が多数派で仏教徒が少数派と、立場が逆転します。
“flickr”より By tö
http://www.flickr.com/photos/2ni/2484262302/)

【「アジア通貨基金(AMF)」構想】
タイのプーケットで22日開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国の13カ国による財務相会議において、かねてより日本が提案していたIMFのアジア版とも言える「アジア通貨基金(AMF)」構想に近い形の枠組みがつくられることが決まりました。

“対外債務の返済が困難になった国にドルを融通する「チェンマイ・イニシアチブ(CMI)」の規模を総額1200億ドル(約11兆円)に増やすことを決めた。域内各国の経済状況を独自に監視する専門チームをつくり、国際通貨基金(IMF)が支援を決めなくても必要に応じて支援する枠組みにも合意した。
日本政府はアジア通貨危機のさなかの97年に、IMFのアジア版とも言える「アジア通貨基金(AMF)」構想を提案したが、米国の反対で頓挫した。一連の合意案が具体化すれば、「ASEAN+3」が独自の判断で参加国を経済支援できる余地が広がり、AMF構想に一歩近づく。”【2月22日 朝日】

ところで、タイ国内の政治的混乱によって開催が延期され、その後も二転三転していたASEAN首脳会議の日程が、27日から3月1日にかけてタイ中部ホアヒンで開かれることで決定したようです。
タクシン派の一部市民団体はホアヒンでの反政府活動を示唆しており、警察当局は厳戒態勢を敷くとも報じられています。【2月22日 時事】

【深南部 過激派によるテロで3400人以上が死亡】
タクシン派と反タクシン派の抗争は収まった訳ではありませんが、タイには報じられることが少ない、しかし、もっと深刻な対立が存在しています。
マレーシアに近い“深南部”と呼ばれる地域における少数派イスラム教徒による分離独立運動です。
2004年1月以降、過激派によるテロで3400人以上が死亡しています。
歴代政府は懐柔策と弾圧策を繰り返す形で、混乱の収拾に努めてきましたが、成果は上がっていません。

昨年10月には、当時のソムチャイ首相がこの地域を訪れ、南部での分離主義者によるテロは下火になったと表明しました。
“ソムチャイ首相は記者団に対し、「住民の福利に気を配る必要がある。南部の混乱は私の緊急課題の一つだ」と指摘するとともに、「現地情勢の説明を受けた。情勢は改善したと判断しているが、まだ満足できる状態ではない」と述べた。そのうえで首相は「混乱が続く南部での緊急課題は、治安担当者の安全向上と装備の改善、教育の改善、それに主要作物であるゴムの価格を支えることである」と強調した。”【08年10月29日 時事】

しかし、タイ国内のタクシン派・反タクシン派の政治抗争もあって、この地域への対策が充分になされてきたとは思えません。

【3日で3件の頭部切断事件】
****武装勢力が夫婦を射殺、夫の首を切断 タイ南部で****
タイ南部ヤラ県で22日早朝、30代の夫婦が分離独立派とみられる武装勢力に射殺され、夫の頭部が切断される事件が起きた。
警察が事件現場のゴムのプランテーションに到着すると、武装勢力は携帯電話を使って現場に残した爆発物を爆発させた。この爆発で警官1人がけがをした。
ヤラ県で頭部の切断事件が起きたのは過去3日で3件目。20日には教師を地元の学校に送り届けて基地に戻る途中の兵士10人が襲撃され、うち2人の兵士が頭部を切断された遺体で見つかっている。【2月22日 AFP】
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“ヤラ県で頭部の切断事件が起きたのは過去3日で3件目”・・・・3年や3ヶ月ではなく、3日で3件の頭部切断事件というのは、すさまじい状況です。

世界不況の波は当然タイにも及んでいますので、タイ国内、深南部地域の経済情勢は悪化しつつあると思われます。
経済情勢が悪化すれば、過激なテロ活動もまた、活発化することが懸念されます。
タイには、同国軍がミャンマーから船で漂着したイスラム系少数民族ロヒンギャ族を海上に追い返したり虐待した疑惑もあります。

本来は、タクシン派だ、反タクシン派で争っている場合ではないのですが、重要課題をさておき、つまらない抗争に明け暮れるのは別にタイに限った話でもありません。

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アメリカ・中国  「両国は積極的に協力する新時代に入った」(クリントン国務長官)

2009-02-22 13:07:00 | 国際情勢

(昨年4月頃の大統領選挙中の写真 ヒラリー候補のスピーチをTVで観るオバマ候補 両者の“携手共進”が続くかも問題です “flickr”より By Barack Obama
http://www.flickr.com/photos/barackobamadotcom/2801641241/)

【呉越同舟ではなく同舟共済、更に携手共進】
日本から始まったアジア歴訪最後の訪問国である中国での、ヒラリー・クリントン米国務長官と中国首脳との一連の会談は今後の米中関係の進展を窺わせるものです。

訪中に先立ち、クリントン長官は「人権問題が世界的金融危機、気候変動、安全保障といった問題での進展を妨げてはならない」と述べ、これまでアメリカが重視してきた民主化・人権問題よりも、現在世界で起きている重要問題に米中共同であたる姿勢を鮮明にしました。

また、クリントン長官はアジア歴訪出発前の講演で、米中関係を「同舟共済」と形容していましたが、温家宝首相は長官との会談で「あれは」孫子にある言葉で、交戦状態にあった呉越両国が同じ舟に乗り合わせて助け合うようになったことを表し、その後に『携手共進』と続く」と解説したそうで、「われわれは同じ舟で川を渡るだけでなく、手を携えて進むべきだ」と、米中協力強化を訴えたそうです。【2月22日 時事】

こうした発言が、今回の訪中・会談の様相をよく表現しています。
なお、長官の人権問題を脇に置くような発言に関しては、国際人権団体から、「中国政府に誤ったメッセージを送った」(ヒューマン・ライツ・ウオッチ)という批判が出ています。

アメリカの中国との協力関係重視の背景には、国内経済の立て直しが最優先課題のオバマ米政権が、米中が世界規模の金融危機に協力して対処するという共通認識を固め、その上で貿易などの摩擦を減らすことを最大の課題にしたことがあると見られています。
“中国は米国債の最大保有国。総額約7800億ドル(約73兆円)の米国の景気対策にも、中国の口先介入で大きな影響が及ぶことは米国自身が認識している。航空機大手のボーイングや原子力発電大手ウェスチングハウスなど米企業も中国が最大の顧客だ。”【2月21日 毎日】

アメリカとの関係が重要なのは中国も同じで、“最大の貿易相手国であるアメリカが保護主義に転じれば、輸出に強く依存している中国経済がたちまち大きな損害を被ることへの焦りがある。”【2月22日 産経】という事情があり、中国・楊外相は長官との会談後の記者会見で、「中米貿易の発展は、両国に暮らす人々、特に低取得者層に恩恵をもたらす」と強調するなど、「バイ・アメリカン」条項など米国で台頭している保護貿易主義の動きを牽制しています。

【包括対話構築】
今回会談では経済問題だけでなく、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議、気候変動問題、地域安全保障なども含めた首脳級の包括的な対話の枠組みを構築する方向で話し合われました。

気候変動問題に関しては、地球温暖化対策やクリーン・エネルギー開発の技術協力を進めることでも一致し、12月にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の成功に向け、連携していく方針を確認されました。

また、政治・安全保障問題を対象とした戦略対話も開催していく方針で原則合意されました。
“両国は人権問題などの対立点をひとまず脇に置き、「新時代の米中関係」をアピールした。
国営新華社通信によると、胡主席は「世界の平和と発展に関して両国は広範な利益を共有し、重要な責任を負っている。21世紀の世界で最も重要な2国間関係のひとつだ」と指摘、オバマ米大統領の早期訪中を要請した。クリントン長官も「両国は積極的に協力する新時代に入った」と述べた。”【2月22日 産経】

気候変動問題にしても、ミャンマーやスーダンなどの問題にしても、中国の協力が充分得られず成果を出せずにきています。北朝鮮問題についても、中国が経済制裁に本腰を入れれば異なる展開もありえます。
そうしたことを考えれば、米中が共同して国際関係にあたれば、停滞していた諸問題にも活路が見えてきます。
もっとも、個々の問題については、また個々の利害・対応があるので、そう楽観的にもなれないでしょうが。

日本の中国に対する感情は、民主化・人権問題の存在や食の安全の問題、歴史認識等々で、かつてなく悪化しています。
ただ、急激な落ち込みを見せる日本の経済状況も最大の要因はアメリカ経済の問題であり(日本から中国などアジア諸国向け輸出も、最終的にはそれらの国々からのアメリカへの輸出にかかわっていることも含め)、そのアメリカ経済が米中協力で軌道回復できれば、日本にとっても大きなメリットがあります。
急速に政治的・経済的存在感を大きくする中国に対し、批判していれば済む時代ではなくなっていることを認識して、今後の日中関係・東アジア国際関係を構築するときではないかと考えます。

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フランス  中国への文化財返還で“人権”要求

2009-02-21 12:51:58 | 国際情勢

(北京・円明園の廃墟 中国自身が文化大革命の頃までは顧みなかった遺跡ではありますが。“flickr”より By dbaron
http://www.flickr.com/photos/dbaron/2444007320/)

日本・欧米的な価値観からみて、中国に重大な人権問題が存在することは周知のところです。
その中国で「人権デモ」が阻止されたとのこと。

****中国、「人権デモ」阻止****
クリントン米国務長官の訪中を機に中国の人権問題を訴えようと、北京市中心部で20日、「人権の旅」と題された数百人規模のデモが実施される予定だったが、公安当局は同日、厳しい警備態勢を敷いて事実上阻止した。デモは北京市民以外に、地方当局の不正や腐敗を訴えるために地方から北京に住み着く農民ら陳情者が中心となる予定だった。【2月21日 産経】
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【「チベット問題は中国の内政問題」】
一方、アメリカは中国との連携を強化の方向を強めています。
先のローマでのG7において、中国の人民元相場に対する圧力が前回より後退した表現となりましたが、これは長官就任前に「オバマ大統領は中国が為替操作をしていると信じている」と指摘し、為替政策をめぐり中国との関係が一時悪化したアメリカ・ガイトナー財務長官の意向が強く反映されたものと報じられています。 【2月15日 時事】

「人権デモ」が意識したヒラリー・クリントン国務長官ですが、「人権問題が世界的金融危機、気候変動、安全保障といった問題での進展を妨げてはならない」と述べ、米中両国は、中国政府のチベットへの対応など、人権問題における長年の意見の食い違いについて歩み寄るよりも、現在世界で起きている重要問題に取り組む可能性の方が高いとの見解を示しています。【2月21日 AFP】
世界不況という現状を考えると、中国との連携を重視せざるを得ないところと思われます。

一方、何事につけ自己主張が強いフランスも、昨年4月の北京五輪の聖火リレー妨害問題や、昨年12月にサルコジ大統領がチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した問題で、中国との関係が悪化しましたが、今月10日、ラファラン元首相が訪中して温家宝首相と会談、「チベット問題は中国の内政問題であり、フランスは中国の核心的な利益を害するつもりは毛頭ない」と発言して、関係修復をはかっています。

【波紋を広げるネズミとウサギ】
そんななかで、第2次アヘン戦争(アロー戦争)時に英仏連合軍によって破壊された北京「円明園」から持ち出されていたネズミとウサギの頭部ブロンズ像をめぐって、あらたな軋轢がおきそうな様子です。

****「人権軽視なら銅像返さない」=中国の要求にクギ-仏所有者****
パリで25日に競売に掛けられるブロンズ像2体が、北京の庭園から略奪されたものだとして、中国政府が返還を求めている問題で、フランス人の所有者は20日、「無条件では渡さない。中国が人権を認めるつもりなら提供の用意がある」と述べ、人権を軽視する国には返還しないとクギを刺した。
競売されるのは北京の「円明園」から清朝時代に英仏軍が持ち出したとされるウサギとネズミの頭部の像。所有者でデザイナーの故イブ・サンローラン氏のパートナーだったピエール・ベルジェ氏(78)は仏メディアに「中国が考えているのと違って、無条件で渡す気はない」と話した。【2月21日 時事】
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中国外交部の姜瑜報道官は「周知の通り、当該文化財は第2次アヘン戦争時に英仏連合軍に強奪され、長年海外に流出していた中国の貴重な文化財である。中国はこれらに対して、疑問の余地なき所有権を有しており、当該文化財は中国に返還するのが当然である。戦争中に不法に略奪した文化財を競売にかけるとは、中国人民の感情を傷つけ、中国人民の文化的権益を損なうだけでなく、国際条約にも反する。関係方面の慎重な考慮を望む。」と返還を要求しています。【2月13日「人民網日本語版」】

ウサギとネズミの頭部銅像は円明園にあった12支銅像の中の2点で、1860年に英仏連合軍が円明園を強奪した際になくなり、現在までのところ、5点が中国に返還されています。
ウシ、サル、トラの頭部銅像は2000年に保利集団が約3000万香港ドルで取り戻し、ブタ、ウマの頭部銅像は澳門の何鴻燊氏が2003年、2007年にそれぞれ700万元、6910万香港ドルの資金を投じて買い戻し、中国に寄贈しているとか。

【奪った側と奪われた側】
今回は中国政府の公的な返還要求に併せて、劉洋氏をはじめとする中国民間弁護士団が、国際法にもとづく訴訟を起して返還を要求しています。

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劉洋氏によると、弁護士団の最たる法律的根拠は、私法統一国際協会(UNIDROIT)による「盗取または不法に輸出された文化財に関する条約」である。条約は、盗まれた文化財の所有者は盗まれた文化財を返却すべきであることを明確に規定している。フランスは条約の加盟国で、中国は1997年に同条約に加盟した際、「中華人民共和国は戦争が原因で略奪され或いは盗まれて海外に密輸された文化財に対して、時間的制限を設けずに取り戻す権利を保留する」と表明した。現在、弁護士団は世界中のこれに類似した訴訟事件を探し集めているが、そのうち4件が勝訴し、1件が敗訴していることから、弁護士団は勝訴に自信満々である。

しかし、弁護士団が依拠するすべてのルール体系は国際的道義のみを拠り所に維持されており、効果的な制約メカニズムに欠けるため、成功を収める可能性は大きくないと見る専門家もいる。
事実上、文化財主権国の申し立てに対して、西側諸国は少しも耳を貸さないだけでなく、声明をでっち上げた。大英博物館やパリのルーブル美術館をはじめとする19の博物館は2002年に、いわゆる「世界の博物館の重要性と価値に関する声明」の中で、これらの獲得物(略奪品)は、購入したものであれ、贈答・交換などの方式で手に入れたものであれ、いずれも博物館の収蔵品の一部となっており、ひいては国のコレクションにまでなっている、と公言した。(後略)【2月20日「北京週報日本語版」】
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ピエール・ベルジェ氏の「中国が人権を認めるつもりなら・・・」云々はわからないではないですが、ただ、当該文化財について言えば、やはりもともと欧米列強が世界中の多くの国々から強奪・収奪した無数の文化財・遺産の一部であり、その返還について「そこまで言うかな・・・」との違和感を覚えます。

この違和感は、単に文化財持ち出しの話だけでなく、欧米列強の話だけでもなく、もっと広く通じるところがあるものかとは思いますが、話が拡散するので今日はここまで。


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コンゴ  いまも繰り返される虐殺、増加する難民

2009-02-20 21:36:19 | 国際情勢

(コンゴ東部・北キブ州 UNICEFによる子供と女性のためのEmergency shelter
“flickr”より By Julien Harneis
http://www.flickr.com/photos/julien_harneis/1353712127/)

アフリカ・コンゴから内紛・難民に関するニュースがいくつかはいっています。
いまコンゴでは、ふたつの武装勢力の活動が問題になっています。
ひとつは北部・北東部で活動している「神の抵抗軍(LRA)」、もうひとつが東部で活動している「ルワンダ解放民主軍(FDLR)」です。

「神の抵抗軍(LRA)」は87年から、ウガンダ北部で子ども兵誘拐や住民の殺害を繰り返してきました。
一時は、国連主導の和平交渉が進展し、あと一息のところまでいきましたが、指導者のコニー容疑者への国際刑事裁判所から逮捕状をめぐって交渉が決裂。
06年ごろからは、拠点をコンゴに移しています。
参考:08年7月13日ブログ「国際刑事裁判所の逮捕状  スーダン、ウガンダそしてアメリカ」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080713
08年3月30日ブログ「ウガンダ  “子供による、子供に対する戦争” “夜の通勤者”」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080330

【クリスマスの虐殺】
****コンゴでLRAが865人虐殺 国際人権団体が報告書*****
コンゴ北東部で08年12月24日から09年1月17日にかけ、ウガンダの反政府組織「神の抵抗軍(LRA)」が住民865人を虐殺したとして、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)」が報告書を出した。
報告書「クリスマスの虐殺」によると、現場はスーダン国境付近。12月25日にはファラジェという町のキリスト教会で、コンサートに来た住民が約200人のLRAの集団に襲われ、143人が死亡、160人が誘拐された。その西約250キロの町ドルマと周辺13村は、25日からの3日間に次々襲撃され、約300人が死亡。クリスマスの集まりが狙われ、住民はゴムチューブなどでしばられ、なたやこん棒でなぐり殺されたという。

コンゴ、ウガンダ、南部スーダン自治政府は合同でLRA掃討作戦を始めていたが、HRWはコンゴ政府が住民を守るための対策をしていない、と批判。また、08年11月に国連安全保障理事会が決めた、コンゴ東部の平和維持部隊(MONUC)への3千人増派の早期実施を求めている。【2月19日 朝日】
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“住民はゴムチューブなどでしばられ、なたやこん棒でなぐり殺された”・・・悲惨としか言いようがありません。

【「後ろ盾」に裏切られた武装組織】
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)」は、「ルワンダ解放民主軍(FDLR)」による住民被害も報告しています。

****コンゴ東部で住民100人殺害=ルワンダの武装勢力-人権団体****
コンゴ民主共和国(旧ザイール)からの報道によると、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは13日、同国東部でルワンダのフツ族系反政府武装勢力が住民100人以上を殺害したとの調査結果を明らかにした。
実行したのは武装組織「ルワンダ解放民主軍(FDLR)」。同組織は1994年のルワンダ虐殺事件以降、コンゴ東部に逃れて同地を拠点としている。同地域では先月下旬から、コンゴとルワンダ両軍が共同で武装勢力の掃討作戦を本格化させているが、これに対する報復攻撃とみられる。【2月13日 時事】
*************************

上記記事にある“コンゴとルワンダ両軍が共同で武装勢力の掃討作戦を本格化させている”ということについては、次の記事があります。

*****コンゴ・ルワンダ合同軍が大規模空爆、40人以上死亡*****
コンゴ(旧ザイール)からの報道によると、コンゴとルワンダの合同軍が12日、コンゴ東部で大規模な空爆を実施、フツ族系武装組織のメンバー40人以上が殺された。1月下旬からの合同軍の作戦は、コンゴ東部に新たな火種を生みかねない状況にある。

空爆されたのは、94年のルワンダ虐殺への関与が疑われるルワンダ解放民主軍(FDLR)の拠点。民間人の被害状況は不明だ。合同軍は13日、コンゴ東部に駐留する国連平和維持部隊(MONUC)がFDLRの攻撃を受けそうになったため、空爆したと発表した。合同作戦は今月いっぱい続けるという。

FDLRは従来、コンゴ政府の支援を得ているとされ、ルワンダ政府が批判してきた。昨年のコンゴ東部での激しい戦闘を受けて、両国が関与した解決策への国際社会の圧力が高まり、協調に転じたとみられる。ルワンダ政府が支援するとされているツチ族系武装組織「人民防衛国民会議」の指導者ヌクンダ氏も、1月下旬にルワンダで逮捕された。
「後ろ盾」に裏切られた形のこれら武装組織の反撃が心配される。ロイター通信は、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」の情報として、フツ族武装組織が1月下旬から民間人100人以上を報復で殺害したと報じた。【2月13日 朝日】
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コンゴ政府に近いフツ族のルワンダ解放民主軍(FDLR)、ルワンダ政府に近いツチ族の人民防衛国民会議(CNDP)という図式が崩れ、コンゴ政府とルワンダ政府が共同して武装勢力の押さえ込みに出ているようです。
参考:09年1月23日ブログ「ルワンダの虐殺から十余年、隣国コンゴで続くフツ・ツチの抗争」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090123

【増大する難民】
こうした内紛の結果、大量の難民が発生しています。

****コンゴから南部スーダンへの難民が急増 UNHCR****
2009年02月18日 12:46 発信地:ジュネーブ/スイス
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は17日、紛争が激化しているコンゴ民主共和国(旧ザイール)北東部から南部スーダンへ流入する難民が1万5000人に膨れあがっていると発表した。

国連によると、前年10月時点での南部スーダンへの難民数は5000人程度だった。しかしコンゴ北部で活動するウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」が、コンゴ軍、ウガンダ軍、南部スーダン軍による合同掃討作戦を受けて攻撃を活発化させていることもあり、難民の移動に拍車がかかっている。
UNHCRのロン・レドモンド報道官によると、LRAは多数のグループに分裂し、それぞれがコンゴ北部の広範囲を移動しながら村落を襲撃しているという。  
南部スーダンの住民の話によると、武装勢力は南部スーダンでも活発に活動しており、略奪を繰り返しているという。ラスから9キロ離れた街で12人が拉致されたという情報もある。

一方、前年8月以来紛争が激化しているコンゴ東部の北キブ州、南キブ州からは、同地に住むルワンダ人が紛争を逃れて本国へ帰還する動きが加速している。本国へ帰還したルワンダ人は前年は8000人だったが、今年に入って6週間で3000人に達しているという。こうしたルワンダ人の中には、1994年のルワンダ大虐殺後に同地へ避難した人々もいるという。
また、コンゴの北キブ州からウガンダへ逃れたコンゴ人難民は、前年8月以来4万7000人に達している。【2月18日 AFP】
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コンゴから難民が流入するスーダンは、ダルフールという深刻な紛争地を抱えて、膨大な国外難民が発生しています。
普通に暮らしている部落が武装勢力に襲われ住民が棍棒やなたで殺される、襲撃を恐れる住民が国境を越えて避難する・・・日本の常識では考えられないようなことが、日常的現実として繰り返されています。


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アフガニスタン  米軍増派への対応をパキスタンと協議へ、されど大雪・・・

2009-02-19 20:46:36 | 国際情勢

(アフガニスタン国境に近いパキスタン北西辺境州のチトラールも、昨年10月から積雪のため外界と同地を結ぶ交通手段が途絶しています。
そのため、自分の足で歩くしかありません。
通常こういう場合はアフガニスタン領内を経由するルートがとられるのですが、昨年来アフガニスタン政府は自国領内通行を禁止しています。
このため、州都ペシャワルへの移動は歩いてロワライ峠(3200m)を越えるしかなく、住民は毎日生命の危険をおかしながら雪の中を歩いて峠越えしています。
この写真が撮影された時期も、生後1ヶ月の赤ちゃんが凍死したそうです。
雪の中の民族衣装が美しい写真ですが、そんな厳しい現実を写したものです。
“flickr”より By groundreporter
http://www.flickr.com/photos/16901703@N06/3141064781/)

【オバマの戦争】
オバマ米大統領は17日、アフガニスタンへの1万7000人の米兵増派を決断しました。
これによりアフガン駐留米軍は現在の約3万2000人から5万人近くに増強されることになります。
また、ゲーツ国防長官はNATO国防相会議が開かれるポーランドへ向かう機中で、「オバマ政権にはアフガンへの義務をさらに果たす用意があるが、同盟国ももっと努力すべきだとの要望があることも明らかだろう」と指摘し、8月大統領選挙前までの同盟国の増派を求めています。【2月19日 時事】

ただ、今回の増派は、8月のアフガン大統領選を前に、現状では選挙の実施さえままならない現地情勢に対する対症療法にすぎないもので、オバマ政権内では、軍事力による効果には限界があるとの見方で一致しています。
“オバマの戦争”“オバマのベトナム”といった言葉も散見されます。

一昨日16日のブログでも取り上げたように、オバマ政権は、アフガニスタン・パキスタンも参加した“対テロ戦略見直し”を4月までに行い、軍事、外交、経済など包括的な戦略指針を打ち出すことになっています。
来日したクリントン米国務長官も17日の中曽根弘文外相との共同記者会見で、日本のアフガニスタン復興への貢献を評価したうえで、アメリカのアフガン戦略見直し作業に日本が参加するよう求めたことを明らかにしています。

【両当事国 米軍増派への対応協議へ】
当事国でもあり、“見直し作業”にも参加が予定されているアフガニスタン・パキスタン両国ですが、これまで必ずしもその関係は良好とはいいがたいところがあります。
アフガニスタンは、パキスタンが北西部の部族支配地域等国境隣接地域におけるイスラム武装勢力を充分に押さえ込んできていないことが、アフガニスタンでのタリバン攻勢の背景にあると考えています。
パキスタンは16日、北西辺境州スワート地区の武装勢力と、和平協定の締結で合意しましたが、このような武装勢力との停戦は、武装勢力のアフガニスタンでの活動を活発化させる懸念があります。

一方、パキスタンは、インドとの関係が強いアフガニスタン現政権の基盤強化を望んでいないとも見られています。
ただ、両国と自国内での米軍の行動による自国民被害に関しては、国内世論を意識して、批判を強めています。
その両国首脳が、アメリカの増派決定への対応を協議すると報じられています。

****アフガン:パキスタンで両首脳、対応協議へ 米増派受け****
17日のオバマ米大統領によるアフガニスタン増派決定を受け、カルザイ・アフガン大統領は19日に急きょパキスタンを訪問し、ザルダリ大統領らと会談することを決めた。両政府の幹部が毎日新聞に明らかにした。両国とも、武装勢力との対話による和平を模索しており、会談では米国増派への対応を協議する見込みだ。

アフガン国内では増派決定は、米国に対し武力重視の従来路線の転換を求めてきたカルザイ氏の訴えを「オバマ氏が考慮しなかった」(内務省幹部)と、受け止められている。
カルザイ氏は「米軍の攻撃による住民の犠牲が、反米感情を強めタリバンの勢力拡大を招いている」として、繰り返し米国に対し住民の犠牲を防ぐよう求めてきた。だが16日には西部ヘラート州の村を米軍機が空爆し、現地からの報道によると、女性や子供ら住民15人以上が死亡した。

ただ、8月の大統領選での再選に米国の後ろ盾が必要なカルザイ氏は、増派決定を真っ向から非難できない弱みもある。
パキスタンでも、増派はアフガン、パキスタン両国の武装勢力の反米闘争を一層あおるだけだとの失望感が濃い。ただ、当初3万人の増派計画が現時点では1万7000人にとどまったことについて、「対話解決への選択肢を残したつもりかもしれない」(情報省幹部)との見方もある。
タリバンのザビウラ報道官は毎日新聞の電話取材に、「米国は(79年にアフガンへ軍事侵攻し、10年後に撤退した)ソ連と同じ道を歩むだろう」と語った。【2月19日 毎日】
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【異例の大雪】
もっとも、このカルザイ大統領のパキスタン訪問は、豪雪でカブール空港が閉鎖されたため延期となった模様です。アフガニスタンでは2月、北部を中心に異例の大雪が断続的に続いているとか。【2月19日 毎日】
カルザイ大統領のパキスタン訪問はともかく、アフガニスタンの豪雪で懸念されるのは、アフガニスタン国内の難民の生活です。

****アフガン:避難民続出、困窮さらに 国際人権団体が警告****
国際人権保護団体「アムネスティ・インターナショナル」(本部ロンドン)は18日、アフガニスタンで続く戦闘で国内避難民が続出し、厳冬の中で深刻な食糧不足に直面していると警告した。国連は同国に約23万5000人の国内避難民がいるとみているが、同団体は「そのほとんどが戦闘から逃れた人々だ」と指摘した。
同団体が現地調査で実態を確認。避難民の多くが支援を求め、カブールなど主要都市を目指しているが、食糧や水、住居など生活支援はなく、多くの子供たちが暖房器具もない中で地面に寝ているという。
米国は兵士1万7000人の増派を決定し、戦闘は激化するとみられる。同団体は、こうした「戦闘避難民」への早急な国際的支援の必要性を訴えている。 【2月19日 毎日】
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“多くの子供たちが暖房器具もない中で地面に寝ている”状況での異例の大雪・・・厳しい試練が続いています。

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