孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

難民・移民問題  苦悩するドイツ、拒否する東欧、英仏の押し付け合い、アメリカ、そして日本

2016-08-31 22:15:22 | 難民・移民

(【8月31日 AFP】)

1日で6500人を救助
命懸けで欧州を目指す難民・移民については、ひところに比べ、最近はあまりニュースでは目にする機会も少なくなりましたが、実態が改善している訳ではありません。

バルカン・ルートが事実上封鎖されているため、多くの難民・移民が、より危険な地中海ルートに押し寄せています。

****伊当局、リビア沖で移民ら6500人を救助 年初来の到着10万人突破*****
イタリア沿岸警備隊は29日、リビア沖で行った合同救難活動で移民ら約6500人を救助したと発表した。近年行った救難活動としては最大規模のものとなった。
 
公開された映像には、救命胴衣を着けた移民らが船から地中海に飛び込み、救助艇に向かって泳いでいく様子が捉えられている。
 
イタリア沿岸警備隊がツイッターで発表したところによると、救難活動はイタリア当局の他、人道支援団体や欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス、Frontex)などの船舶計40隻が出動して行われた。
 
今月の救助ペースは8月としては過去数年に比べやや落ち着いていたが、同じ水域では前日にも1100人余りの移民らが救助されていた。
 
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年に入ってから海路でイタリアに到着した移民らの数は、29日の救助者を除いて10万5000人に達している。
 
また年初来、ギリシャまたはイタリアに向かう途中に海で死亡した移民らは3000人余りと、前年同期に比べ約50%増えている。【8月30日 AFP】
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“約6500人を救助”・・・・今月の数字だろうか? 今年1月以来の数字だろうか?・・・と思ったのですが、なんと1日の数字でした。

異様に多い数字ですが、イタリア側が合同救難活動を行うという情報が難民らに流れて、みなが救難活動をあてにして海に乗り出した・・・ということでしょうか? 

“1隻に700人がすし詰めになっていた船もあり、別の小さなボートからは2人の遺体が見つかった”【8月30日 朝日】ということで、過酷で危険な旅路であることには変わりありません。
“密航船の約8割は、あっせん業者などが用意する設備の整わない小型のゴムボートなどを使用しているという。”【8月16日 毎日】とも。

バルカン・ルートについては、“FRONTEXによると7月にエーゲ海を密航してギリシャに入った難民・移民は1800人で、前年同月比で97%減った。EUとトルコが今年3月に合意したギリシャに密航する不法な移民を原則トルコに送還する対策が引き続き有効に機能している形だ。”【8月16日 毎日】とのことですが、トルコのクーデター未遂事件以後のトルコ・EU関係の悪化で、トルコはEUとの駆け引きで“難民カード”をちらつかせています。

トルコのチャブシオール外相は、EUへ渡航するトルコ国民のビザ免除が10月に実現しなければ、EUと合意した難民対策を破棄する可能性があると語っています。実際問題としては、EUとの関係が決定的に破たんするそうした措置は難しいようにも思いますが。

難民・移民絡みのテロを警戒するドイツ・メルケル政権
昨年は110万人の難民・移民が押し寄せたドイツですが、トルコとの合意の効果で、今年は年間30万人にとどまる見通しだとか。

****独 ことしの難民受け入れ 30万人にとどまる見通し****
去年、これまでで最も多い110万人近い難民や移民がたどり着いたドイツで、難民政策を担当する移民難民庁のトップが地元紙のインタビューに答え、ヨーロッパからトルコに難民を送り返す措置が始まったことを背景に、ことし1年間にドイツに到着する難民や移民は最大でも30万人にとどまるという見通しを示しました。

ドイツの大衆紙「ビルト」の日曜版は、難民政策を担当する連邦移民難民庁のトップ、ウァイゼ長官に単独インタビューを行い、その内容を28日付けの紙面で伝えました。

この中でウァイゼ長官は、ことし1年間にドイツに到着する難民や移民の数は、最大でも30万人にとどまるという見通しを示し、ドイツ政府として、ことしは25万人から30万人の受け入れ準備を進めていることを明らかにしました。

ドイツには去年、中東などからこれまでで最も多い110万人近くの難民や移民がたどり着きましたが、ことし4月、ギリシャに到着した難民や移民をトルコに送り返す措置が始まって以降、到着する難民の数は大きく減っています。

一方で、ドイツでは先月シリアなどからの難民が相次いで凶悪事件を起こし、「ビルト」は世論調査の結果、メルケル首相の続投を求める声が42%にとどまったと伝えていて、ドイツ政府にとって難民への対応は引き続き大きな
課題となっています。【8月29日 NHK】
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“7月に発生した一連の攻撃事件以後、メルケル首相が来年の連邦選挙後も4期目を続投することに反対との国民の割合が、全体の50%に上昇した。続投を希望したのは42%だった。”【8月28日 ロイター】ということで、難民・移民絡みの事件がメルケル首相にとって重い足かせとなっています。

テロ再発を許せばメルケル政権にとって致命的な打撃になりかねない状況で、メルケル政権のテロなどへの警戒感も強まっています。

****ブルカ着用禁止、ドイツでも 公共の場対象、法制化へ****
ドイツのデメジエール内務相は19日会見し、イスラム教徒の女性が全身を覆い隠す「ブルカ」や、目だけを出して顔を覆う「ニカブ」の公共の場での着用を禁止する方針を明らかにした。今後、連立与党内で調整のうえ、法制化をはかる。7月に相次いだイスラム教徒の難民らによる襲撃事件を受けて、警戒感が強まっていた。(中略)

ブルカの公共の場での着用は、数年前からフランスやベルギー、イタリアなどで禁止する動きが相次いでいるが、ドイツはこれまで異文化に対して寛容な政策をとってきた。過去に一部の州でイスラム教徒の教員がスカーフを身につけることを禁じた経緯があるが、憲法裁判所が2015年に「法の下の平等に反する」などとして無効を命じた。【8月20日 朝日】
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****トルコ系住民に忠誠心求める独首相発言に批判の声****
ドイツのメルケル首相がトルコ系住民に「国家への忠誠」を示すことを期待していると述べたことについて、一部の政治家から対立を深めるとして批判の声が上がった。

23日付の現地紙パッサウアー・ノイエ・プレッセに掲載されたインタビュー記事で、メルケル首相は「ドイツに長く住んでいるトルコ系住民には国家に対する強い忠誠心を期待している」と述べた。

その上で、独政府はこうした住民の懸念に対し偏見を持たず理解しようと努めていると語った。

これに対し社会民主党(SPD)のアイダン・オズオウズ移民・難民・統合担当相は独紙フンケ・メディアグループのインタビューで、大半のトルコ系住民は「国家に忠誠心を抱いている」とし、異なる考えを持っていることを前提にすべきでないと述べた。

緑の党の報道官ボルカー・ベック氏は独紙ハンデルスブラットに「特別な理由もなく国民の忠誠を疑うのは独裁政権にしか見られないものだ」と指摘した。

ベック氏はトルコ系住民について、言語や宗教、人種に関わりなく人間としての尊厳や人権などドイツの価値観を支持する必要があるとし、国家への「忠誠心」を示す必要はないと述べた。【8月25日 ロイター】
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ドイツ国内には、約300万人ものトルコ系住民が暮らしています。
トルコのクーデター未遂事件もあって、西部ケルンで7月31日にトルコ系住民を中心としたエルドアン・トルコ大統領支持派の大規模デモが起きるなど、トルコ系住民の動向を政権は懸念しています。

8月12日に発表された世論調査では、メルケル首相の難民・移民政策を支持するとの回答は44%、不支持は52%だったようですが【8月13日ロイターより】、連立与党内でも厳しい批判にさらされたいます。

“難民政策に揺れるドイツで、支持率でメルケル首相に肉薄している保守政治家がいる。首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党、キリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー党首だ。歯にきぬ着せぬ言いぶりで、首相の寛容な難民政策を批判。次期首相候補として取りざたされ始めた。”【8月9日 朝日】

CSUはバイエルン州だけの地域政党であることから、首相候補云々については非現実的との見方もあります。

受け入れを拒否する東欧諸国
こうした苦しい状況にあるメルケル首相ですが、難民受け入れに寛容な基本姿勢は変わっていません。
そうしたドイツ・メルケル首相と、難民受け入れを拒否する東欧諸国との溝が深まっています。

****イスラム教徒の移民拒否は「受け入れ難い」 独首相、東欧にくぎ****
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は欧州連合(EU)の一部加盟国がイスラム教徒の難民の受け入れ拒否を表明していることについて、「容認し難い」との考えを示した。ドイツは、欧州に殺到している難民をEU加盟各国に割り当て、受け入れを分担するよう求めている。
 
メルケル首相は28日ドイツ公共放送ARDの取材に応じ、「一部の国々は『一般論として、イスラム教徒を自国に入れたくない』と言っているが、そうした意見は間違っている」と語った。
 
移民の受け入れ人数を加盟国ごとに割り当てる案に賛成しているメルケル首相は「全員がそれぞれの役目を果たすべきだ」とした上で、「共通の解決策を見つけなければならない」と強調した。
 
9月に行われるEU首脳会議の議題に予定されているEU移民政策については意見が激しく対立し、ドイツが推す「割り当て制」によって各国で難民を受け入れ分担する案については東欧4加盟国、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキアが反対している。
 
スロバキアのロベルト・フィツォ首相は、自国には「イスラム教徒を1人たりとも入れない」と明言している。
 
また、チェコのボフスラフ・ソボトカ首相は23日、「われわれが目にしている問題を考えると…イスラム教徒の大規模なコミュニティー」は望まないとの考えを明らかにし、EU各加盟国が移民の受け入れ人数を選択できるようにすべきだと主張した。
 
ドイツの連邦移民難民庁(BAMF)が28日に行った報告によれば、昨年ドイツは主にシリアやイラク、アフガニスタン出身の移民・難民をおよそ100万人受け入れており、今年は最大30万人が同国に流入するとみられている。【8月30日 AFP】
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アメリカ大統領選挙のトランプ候補のイスラム教徒に対する差別的発言が批判を浴びてもいますが、「イスラム教徒を1人たりとも入れない」という主張がEU内部にも存在しています。

イギリス・フランスの難民の押し付け合い
一方、イギリスとフランスの間でも、“難民をめぐる醜い争い”が表面化しています。

****英仏がドーバー海峡で難民の押し付け合い****
難民の扱いをめぐり新たな論争が起こっている。舞台は英仏の間のドーバー海峡。イギリスを目指して中東やアフリカからフランス側の都市カレーにたどり着く難民を、イギリスが受け入れずにフランスに押し付けているという不満が表面化し始めた。

事実上の流入規制
英仏間の国境管理に関するル・トゥケ協定では、イギリスに難民申請をするにはイギリスに入国していることが条件とされている。カレーには英当局職員が滞在して難民のパスポートチェックはしているが、イギリスへの入国が却下されれば、その時点でイギリスへの難民申請は不可能になる。

難民たちはフランスに難民申請するか、ドーバー海峡トンネルに向かう車や電車に飛び乗って違法入国を図ることになる。それで命を落とした難民もいる。

着の身着のまま逃れてきてパスポートなど持たない難民を、事実上フランスに押しつける協定だとして、カレーでもイギリスへの難民申請を受け付けるか、イギリスを目指す難民については自国で難民申請を受け付けるよう修正すべきだという声が相次いだ。

カレーを管轄下に置く自治体のトップは言う。「カレーに到着した難民でイギリスを目指す者は、カレーで難民申請をできるようにするべきだ。それで申請が却下されれば、フランスは彼らを出身国へ送り返すことができる」

2017年の大統領選出馬を表明しているニコラ・サルコジ元大統領も最近の演説で「イギリスに国内に窓口を作って自国の難民は自国で面倒見ることを要求する」と主張した。

だがそれはフランスのためにならないと、元駐仏大使のピーター・リケッツは言う。そんな可能性が少しでも出てくれば、イギリス行きに命を懸ける難民たちが何千人もカレーに押し寄せるからだ。

イギリスの難民流入に歯止めをかける決まりを変更しようというなら、フランスとの対テロ協力を見直す、と脅す声もある。8月29日付けの英タイムズ紙に英政府高官が語った。「フランスはニースのテロ事件後、イギリスの軍事協力や情報提供に依存している。フランスがその変更を望んでいるとは思えない」

英内相のアンバー・ラッドは近々、パリでフランス内相のベルナール・カズヌーブとの会談を予定している。難民問題についても話し合われる見込みだ。【8月31日 Newsweek】
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8月30日にオランド大統領に辞表を提出し、来年4〜5月に行われるフランス大統領選への出馬が取りざたされているフランスのマクロン経済相は、今年3月、イギリスがEUから離脱するならば、フランスからイギリスへの移民流入を食い止めていた国境管理をやめると警告しています。【3月3日 ロイター】

同様に大統領選挙を目指すサルコジ元大統領(過去の人になったかと思っていましたが、最近復活傾向にあります。まだ、党内支持は弱いようですが、テロ事件が起きる状況で“強い指導者”をアピールしているようです)も上記記事のようにイギリスを批判しています。

“難民カード”でトルコがEUを揺さぶるように、フランスがイギリスに圧力をかけ、一方のイギリスは“テロ対策”で応戦する・・・・といった状況です。

アメリカ・オバマ政権は受け入れ拡大の方向だが・・・
アメリカ・オバマ政権は、受入枠拡大を希望していますが、国内に反対も強く、どうなるのか。

****米国、シリア難民受入枠を拡大へ 今年度は1カ月早く定員上限に****
米ホワイトハウスによると、米国は2017年度(10月からの1年間)に受け入れるシリア難民について、現行からさらに数千人分、枠を拡大するよう議会と協議を行っている。16年度の受け入れ予定数は1万人だったが、8月時点で既に定員に達した。

ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)は声明で「難民受け入れはシリアや周辺地域をめぐる人道支援の一部にすぎず、この(受け入れ枠拡大の)判断がシリアだけでなく国際社会に送るメッセージの重要性を、オバマ大統領はよく理解している」と指摘した。オバマ大統領は来年1月に任期満了となる。

ドイツをはじめとする欧米諸国は、内戦で故郷を追われた多くのシリア難民を受け入れているが、米国の受け入れ数はまだ少ない。たとえばカナダが昨年11月からの半年で3万人近くを受け入れたのに対し、米国は2015度は1682人、14年度は105人、それ以前は年間30人程度にとどまっていた。

一方で、難民受け入れについては米国内からの風当たりが強い。来年の大統領選に向けた選挙戦でも激論が交わされ、共和党候補のドナルド・トランプ氏は、難民を装った武装勢力を入国させることになりかねないと主張。

民主党内からも、シリア難民受け入れに際し審査を厳格化するよう求める声が出ている。【8月30日 ロイター】
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日本 向こう5年間で150人、留学生として
では日本はどうか?という話にもなるのですが、来年から5年間で150人(年間では30人)の受入を表明しています。

****シリア難民、150人受け入れへ 日本政府、留学生で****
政府は中東の難民支援策の一環として、内戦が続くシリアの難民のうち、留学生として2017年から5年間で最大150人の若者を受け入れることを決めた。20日に安倍晋三首相が正式表明する。
 
日本政府関係者によると、受け入れ対象は内戦や過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭により、就学機会を奪われたシリアの若者たち。将来のシリア復興を担う人材を育成する狙いがある。

国際協力機構(JICA)による技術協力制度を活用し、1年当たり20人を受け入れる。また、すでに文部科学省が実施している国費外国人留学生制度も1年当たり5人の枠を10人まで拡大し、合わせて5年間で最大150人を受け入れる方針だ。
 
JICAの枠は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との協定で行い、留学生の選考はUNHCRが担当。初年はヨルダンやレバノンに滞在するシリア難民が対象となる見通し。
 
日本はこれまで、難民認定基準が他の主要国と比べて厳しいとされてきた。26、27日に予定される主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で難民対策が主要議題の一つとなることから、日本政府の姿勢を示すために打ち出すものとみられる。【5月19日 朝日】
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“安倍総理は昨年9月の国連総会の一般討論演説で、シリア・イラク難民の問題に970億円の財政支援を発表した。その際日本の難民受け入れの可能性について尋ねられ、「国内問題解決が先」と返答したことで国際社会から非難を受けた。

2015年には7586件の難民申請をうけたものの、難民として認定したのはそのうちたったの27件のみだった。

ガーディアン紙は「昨年日本は、1億8160万ドルを国連の難民対策機関に支出し、アメリカに次いで2番目に多いが、その難民受け入れ数は経済規模に見合っていない。」と批判した。”【http://wanotewosekaini.com/150asexchange/】という状況から、一歩踏み出した・・・・ということでしょうか。個人的には、何も変わっていないように思えますが。
コメント

キルギス  「中央アジア随一の民主国家」で自爆テロ 狙いはウイグル族を抑圧する中国か?

2016-08-30 22:47:06 | 中央アジア

(爆発で上がる煙 【8月30日 朝日】)

【「中央アジア随一の民主国家」キルギスで増えるイスラム過激派 卒業しても国内では就職困難
中央アジアのキルギスで中国大使館を狙ったとも思われる自爆テロが起きています。

****キルギスの中国大使館に自動車が突入し爆発、自爆テロか****
キルギスの首都ビシケクの中国大使館で30日、自動車が門を破って突入しようとして爆発。自動車を運転していた男が死亡したほか3人が負傷した。自爆攻撃とみられている。
 
内務省報道官は、自動車が中国大使館の敷地内で爆発したとし、ラザコフ副首相が爆発を「テロ行為」と述べたとしている。
 
事件は0400GMT(日本時間午後1時)ごろ発生した。警察と国家治安当局が調査している。
 
イスラム教徒が大半のキルギスでは、過激派組織「イスラム国(IS)」との関連が疑われる武装メンバーが当局によって頻繁に拘束されている。
 
また、キルギスを含む一帯では、ウイグル族で構成する反中国武装集団も活発に活動している。2014年には中国・キルギス国境を不法越境した武装集団のメンバーとみられる11人をキルギス国境警備隊が殺害している。【8月30日 Newsweek】
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キルギスをを含む中央アジア一帯は、かねてよりイスラム過激派の活動が報じられているエリアです。

“中央アジアのキルギス、ウズベキスタン、タジキスタンにまたがるフェルガナ盆地はイスラム過激派の温床として知られる。キルギスで1999年、日本人技師4人の拉致事件を起こした「ウズベキスタン・イスラム運動」(IMU)は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓ったとされている。”【8月30日 産経】

昨年末にはユニセフ関係者から、キルギスで中東イスラム色が濃くなっていることへの懸念も報じられていました。
背景には、まずは経済問題。働き口がない状態では過激思想が容易に拡散します。
更に、民族問題などもあります。

****キルギスで強まる「中東イスラム色」、過激派にリクルートされる若者も****
中央アジアのキルギスで、イスラム武装勢力にリクルートされる若者が現れ始めた――。これは、国連児童基金(UNICEF)の杢尾雪絵キルギス事務所代表が10月30日に都内で開かれた活動報告会で語ったもの。

「キルギスでは年々、中東のイスラム色が濃くなっている。経済や教育、民族対立などさまざまな要因がそこには絡み合っている」と語った。

イスラム武装勢力に入る若者が増える最大の要因は、大きな産業がないことだ。キルギスの1人当たり国内総生産(GDP)は1299ドル(約16万円、2014年)で、パキスタンと同じぐらい。

GDPの約3割を海外出稼ぎ労働者からの送金に依存しているのが特徴だ。学校を卒業しても、富裕層やコネをもつ者以外は国内で就職することは厳しい。

就職難に、「やりがいのあることがしたい」「自分の力を試したい」といった思いが加わって、若者はイスラム武装勢力に入隊する。

杢尾氏は「正確な数字は出ていないが、一部の調査では200~300人といわれる」と指摘する。


UNICEFは若者の武装化を阻止するために、キルギスの情勢を安定させたい考えだ。経済や教育、他民族理解など複数の分野を支援する「平和構築事業」を手がける。主なターゲットは青少年と幼い子どもたちだ。

教育分野では「青少年センター」を設置する。このセンターでは、コンピュータや英語、ロシア語などのスキルのほか、平和や他民族との共存をどうやって実現できるかなどについても学ぶ。「若いときから教養を身につけ、平和を考えることで、社会で活躍できる人材を育てられる。ひいては国の情勢安定にもつながる」と杢尾氏は効果を強調する。

またUNICEFはかねて、平和構築事業の一環として、コミュニティを基盤とする幼稚園を設置してきた。物件探しや家具作りなどを地域住民と一緒に進めることで、その地域が一体となる。すでに64の幼稚園を立ち上げた。地域の安定につなげる狙いがある。

キルギスの情勢を悪化させる潜在的な要因のひとつになっているのが民族対立だ。キルギスは、人口の7割を占めるキルギス人のほか、ウズベク人、カザフ人などが暮らす民族複合国家。民族対立が起こることも少なくない。2010年にはキルギス人とウズベク人の間で大きな暴動が発生。470人が死亡、40万人が避難を余儀なくされた。

平和構築事業には、民族対立を防ぎ、政情安定を目的とする「複合言語教育」がある。少数民族も、国語であるキルギス語、公用語であるロシア語を学び、加えて自らの言語も維持できるプログラムだ。それぞれの少数民族がアイデンティティを保ち、ともに学ぶことで異なる民族同士の対話が生まれることを目指す。

キルギスは、実は、中央アジアで随一の民主国家だ。独裁体制を強めるウズベキスタンやタジキスタンなどの周辺諸国とは対照的。中央アジアの「希望の星」と称される。【2015年11月8日 ganas】
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独裁体制国家が多い中央アジアにあって、キルギスは“中央アジア随一の民主国家”とされています。
ただ、いろいろと紆余曲折はありました。

2005年の「チューリップ革命」でアカエフ大統領が辞任に追い込まれ、民主化を掲げるバキエフ大統領が就任。
しかし、「民主化の希望の星」だったバキエフ大統領も“プーチン流独裁に陥ったとされ”【ウィキペディア】、国民の不満が高まりました。

その後の政変・混乱については、2010年12月20日ブログ“旧ソ連、ベラルーシはルカシェンコ支配継続、キルギスは中央アジア諸国で初の議会制民主主義実現へ”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101220で、以下のように。

*****政変、人道危機を超えて****
従来からの南北の政治対立を背景に、(2010年)4月、南部出身のバキエフ前大統領が追放される政変が起きましたが、その政治混乱のなかで、ウズベク系住民が多い南部では、これまた以前からあるキルギス系とウズベク系の民族対立が表面化し、400人以上の死者を出す民族衝突に発展。隣国ウズベキスタンに越境したウズベク系難民は10万人以上に達しました。

また、キルギス国内の避難民も約30万人に達し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、キルギスに「人道危機」が迫っていると警告を発する混乱状態にもなりました。

そうした混乱を収束させるべく、6月27日にはオトンバエワ暫定大統領の信任と新憲法案の是非を問う国民投票が行われ、投票総数の約9割の賛成で承認され一応の安定に向けて動き出しました。

10月には、他の中央アジア諸国が独裁体制を敷くなかで、中央アジア諸国で初の議会制民主主義を実現するための議会選(1院制、定数120)が実施され注目を集めました。
再度の民族衝突なども懸念された選挙でしたが、大きな混乱なく実施されました。【2010年12月20日ブログより再録】
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2010年の政変後、中央アジアで初の議院内閣制に移行。憲法改正により、大統領権限の多くが首相や議会に移されるなどの政治改革が進められました。

2011年10月30日実施された大統領選挙では、連立与党の社会民主党を率いるアルマズベク・アタムバエフ首相(55)が当選。2代続けて市民の抵抗運動で大統領が失脚してきたキルギスにあって平和的な権限移譲が初めて実現しました。

非常に残念な言い方ではありますが、キルギスのこうした民主的で自由な政治状況が、イスラム過激派の跋扈を許した側面もあるのかも。中央アジアの独裁国家は人権侵害が問題視されていますが、その独裁で過激派の流入・活動を抑えているという側面もあります。

もちろん、経済問題や民族対立にきちんと対処できていれば、民主的社会にあっても問題は生じないのですが。
アラブの春の発端となったチュニジアが、地域では随一の民主的国家である一方で、経済不振から多くのイスラム過激派を生んでいるのとも似ています。

中国の抑圧的政策に反発したウイグル族過激派による犯行との見方も
今回の自爆テロが中国を標的にしたものだったのかはまだ定かではありませんが、“ワゴン車が大使館の門に突っ込もうとし、その際に爆発した”【8月30日 産経】とのことで、中国大使館の壁が崩れたとか。

当然ながら、中国は「極度に暴力的な攻撃」と非難し、キルギス当局に対し「事件の真相解明」を求めています。

中国との関連では、冒頭記事にもあるように“ウイグル族で構成する反中国武装集団も活発に活動している”【8月30日 Newsweek】状況があります。
“中央アジア諸国の治安当局はまた、中国新疆ウイグル自治区の独立派が域内に浸透を図っているとの見方を強めてきた。”【8月30日 産経】とも。

ソ連が崩壊すると、中国は直ちに旧ソ連から分離独立した中央アジア諸国を歴訪し、国交を結んでいます。
“これらの国は、すべてその昔、シルクロードの沿線上にあった、中国にとっての「西域(さいいき)」である。まるで「ここは私の陣地」と言わんばかりの「唾付け」であった。”【2015年10月26日 遠藤 誉氏 Newsweek】

その後も、習近平主席の掲げる一帯一路構想において、中央アジアは極めて重要な位置を占めるに至っています。

しかし、国内にウイグル族問題を抱える中国にとって、中央アジアにおけるイスラム過激派の拡大はウイグル族の反体制運動を刺激する極めて敏感な問題でもあります。

中国国内のウイグル族関連の問題については、最近はあまり報道を目にしません。中国当局が力で抑え込んでいる状況でしょうか。

6月に来日した亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長は「火炎放射器で殺害するなどすさまじく、ウイグル人は土地や家を売って難民となっている」ちょっとしたトラブルや中国人とにらみ合いなどをしたら、その場で射殺する権限が現場の警察官に与えられている」【6月2日 産経】とも語っています。

こうした「圧政」がイスラム過激派を生んでいるとの批判もありますが、中国当局は反撥しています。

****中国の圧政でウイグルから百人超がISに加入=米報告に中国反発****
2016年7月20日、中国の政策が「イスラム国」への加入を助長しているとの指摘に対し、中国の専門家が反論した。

仏AFP通信は20日の報道で米シンクタンクの報告を紹介。それによると、中国が新疆ウイグル自治区において宗教活動を制限する政策をとっているために、同自治区で100人余りのイスラム国加入者を招いたと指摘した。

同指摘に対し新疆大学中外研究院の潘志平(パン・ジーピン)教授は、「めちゃくちゃなロジックだ。この考えだとイスラム国に加入している米国人や英国人、フランス人も自国の政策が原因だということになる。政府は新疆ウイグル自治区の正常な宗教活動に干渉していない」と述べた。

さらに、中国の反テロ専門家も潘教授と同じ見解で、「イラク戦争がなければ今のイスラム国は存在しなかっただろう。米国が軍事的な干渉を世界で展開したことがイスラム国の台頭を招いた主因である。米国の政界とシンクタンク、メディアは最も自国の行為を見直してみるべきだろう」と批判した。【7月21日 Record China】
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隣接するキルギスなど中央アジア諸国でイスラム過激派が浸透すれば、いくら中国国内でウイグル族を抑圧しても限界があります。

今回自爆テロは、そうした問題を中国指導部に突き付けるものともなります。

隣国ウズベキスタンで強権支配を続けるカリモフ大統領死亡?】
なお、“キルギスとウズベキスタンの両軍が1週間以上、国境を挟んでにらみ合い、一触即発の危機を続けた”【3月27日 時事】といった話もあった隣国ウズベキスタンでは、長期独裁を続けるカリモフ大統領の死亡報道も流れていますが、当局は否定しています。

****ウズベク大統領「死亡」報道 当局は否定、権力争い激化か****
中央アジアの通信社「フェルガナ・ルー」は30日までに、ウズベキスタンの独裁者、イスラム・カリモフ大統領(78)が脳出血のために「死亡した」と報じた。ロシアの一部メディアも「死亡」を報じたが、ウズベク当局は否定しており、情報は錯綜(さくそう)している。
 
ウズベク政府は28日にカリモフ氏の入院を発表。29日には、次女のローラ氏が、カリモフ氏は27日に脳出血を起こし、集中治療室(ICU)に収容されていることを明らかにしていた。ローラ氏やウズベク政府筋は「容態は安定している」と説明してきた。
 
フェルガナ・ルーは、「29日午後に死亡した」と報じている。
 
カリモフ氏は1991年のソ連崩壊前からウズベクで最高位にあり、四半世紀にわたって独裁体制を維持してきた。確固とした後継者が指名されていなかったため、権力の空白が長期化すれば、次期大統領ポストをめぐる支配層の内紛が激化する可能性がある。

カリモフ氏が強権統治で押さえ込んでいた反体制派やイスラム過激派が台頭し、地域情勢が流動化する恐れも指摘されている。【8月30日 産経】
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強権統治でいくら抑え込んでも、いつかは噴出します。それも、より大規模、より過激な形で。
それすら許さない圧政で・・・・ということになれば、過激派だけでなく、国民全体が圧殺されます。
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中国  渋滞現場の売店商品を買占め、高値で売った女性 “商道徳”に関する日中両社会の違い

2016-08-29 22:45:24 | 中国

(石田梅岩講釈図 【http://www.ehle.ac.jp/meiseisha/meiseisha-nituite/meiseisha-nituite.htm】)

日本は完璧さを追求するあまり“お疲れモード”?】
日本と中国の社会の在り様の比較や、中国の人が実際に日本に来てみて、その素晴らしさに感動した・・・という類の話は、毎日たくさん報じられています。

そういう形で日本に対する認識が深まり、ステレオタイプな反日プロパガンダが薄まっていくことが期待されます。

下記コラムは、中国で日本語講師、ニュース翻訳、映画出演やマナー講師など幅広く活動されている日本人女性による、日本と中国、そして五輪開催のブラジルの超簡単な社会比較です。

****日本、中国、ブラジル・・・・3国の違いとは*****
・・・・リオのオリンピック前にも「スタジアムの工事が進んでいない」という記事を何度も見た。日本人の目に、この国の人々の職業意識は穴だらけに見える。

出国審査場の係員は、おしゃべりしながらパスポートにスタンプを押し、私の顔も見なかった。空港チェックインカウンターでは長蛇の列ができているにも関わらず、窓口のスタッフは隣のブースのスタッフと手をつなぎながら、空いた方の手で端末を操作していた。日本なら動画がSNSに投稿され、上層部の人たちが謝罪会見を開くレベルだろう。

しかし、ブラジル、特にリオで私はほとんど苦労しなかった。地図を持って立ち止まっていると、必ず誰かが近づいてきて、英語で「どうしたの?」と聞いてくる。(中略)

日本では、知らない人に道を尋ねるときには、親切で暇そうな人を見極めないと、無視されかねない。
中国では、向こうからニコニコと近寄ってくる人は、よい人でないことが多い。ブラジル人の陽気さと親切さは、旅行者にとって救いだ。

一方、同じくBricsの一員である中国。私が働いていた大学の教室には、天井から大きなテレビがぶら下がっていて、同僚が中国という国を説明する際に、よくこのテレビを例に挙げた。「大きな予算を組んで全部の教室に取り付けたのに、日本語学科では一度も使われていない」

私の在職中には、米国の大手IT企業の寄付で先進的な教室ができたが、20人しか座れないその教室に合う講義がなく、ずっと鍵がかかったままだ。教員室には監視カメラが設置されているが、動作している気配はない。

大連マラソンには1000人以上のボランティアがいたが、みな座り込んでスマホをいじっており、落とし物の探し方を尋ねても誰も答えられなかった。

ブラジルは、インフラの脆弱さや公務員のいい加減さを、市民の柔軟さ(ホスピタリティ)でカバーしている。中国は、大掛かりなプロジェクトでインフラを作り上げるが、ニーズに合わず野ざらしになっていたり、オペレーション能力の不足で無力化(時には障害にすらなる)されている。

日本はどうか。日本は完全なインフラを作り、ミスなくオペレーションすることに心血を注ぐ。列車がオーバーランしたら報道される。ファックスの送信ミスを防ぐために、2人1組で送信する会社は多い。

9月1日の防災訓練のニュースを見るたびに、「いつ起こるか分からない災害のために、こんなに真剣に(けが人役の迫真の演技にいつも見入ってしまう)訓練する国は日本くらいだろうな」と驚嘆する。

しかし完璧さを追求するあまり、人が疲弊している場面を見ると、何が正解なのか分からなくなるのである。【8月26日 Record China】
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三者三様ですが、“完璧さを追求するあまり、人が疲弊している”せいか、中国人の目には、日本人がよく居眠りをしている姿が奇異に映るようです。

****どこでも眠る日本人に、「ちょっと疲れ過ぎじゃないのか?」=中国****
・・・・しかし日本人が睡眠を活用するある習慣について、中国人は不可思議に感じるようだ。

中国メディアの光明網はこのほど、日本人には「どこでも眠る」という習慣があると読者に紹介している。じゃっかんの誇張はあるものの、電車内での居眠りなどを指しているようだ。

記事は日本の地下鉄の構内、駅のホーム、電車の中で日本人が居眠りしている画像を掲載し、日本では電車内の席で居眠りしている人や電車内で立ったまま居眠りしている人が多くいると主張。

地下鉄の構内や駅のホームで直接床に座って眠ている人の画像も掲載しているが、これは居眠りではなく、泥酔しているのではないかと推測される。

いずれにせよ、日本人が人前で居眠りをする習慣の背景には「疲れ」があると記事は指摘。出勤あるいは帰りの電車の時間を無駄にすることを「日本人はもったいない」と感じており、疲れをいやすために居眠りしていると説明した。

記事は「日本人は非常に疲れている」と指摘しているが、それは事実かも知れない。

中国の多くの会社や学校には1時間半から2時間程度の昼休みがある。この昼休みの活用の仕方は様々だが、一般的には昼寝をする人が多いようだ。しかし中国に比べて日本の昼休みは1時間であることが一般的であり、こうした要素も電車内で居眠りする日本人の習慣に影響していると言えるかもしれない。【8月25日 Searchina】
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日本人からすると「オヤオヤ・・・」と思われるような中国社会のトピックスは枚挙にいとまがありませんが、下記もそんな中のひとつ。

****無情?火事を消そうとしたバス運転手に、乗客は「帰りが遅れる!」****
2016年8月26日、新快報によると、中国広東省広州市で23日、勤務中に電線から火が上がっているのを見かけたバス運転手が車両を止めて消火を試みたところ、この行動が原因で乗客から非難されるという事態が起きた。運転手に対するクレームについて、人々の反応は分かれている。

運転手の潘さんが出火に気付いたのは夜7時ごろ。通勤ラッシュの時間帯で、車内は乗客でいっぱいだった。前を走る車が次々と車線変更をするのを不思議に思った潘さんがさらに先に進むと、窓の外には黒煙の上がる電線が。

潘さんは乗客に消火活動に当たることを告げ、車内にある消火器を持って火を消しに行った。しかし、火はなかなか消し切れず、潘さんが2本目の消火器を取りに戻ったところで乗客から「帰宅が遅れる」と不満が続出。潘さんはやむなく119番通報し、バスを走らせた。

この行動について、ある乗客はバス会社に「われわれの時間を無駄にした。消火なんかしないで直接、通報すべきたった」と電話を入れており、潘さんは「早く火を消さなければという思いだけだったが…。まさかこんな反応があるとは」と肩を落とした。

ただ、事情を知った会社は潘さんを処分せず、弁護士も「より大きな損失が出ることを防ぐ行為。乗客に理解を求めたい」と支持する考えを示している。

また、ネット上でも潘さんを称賛する声が多数上がっているが、中には「停車中に後ろから衝突されたら誰が責任を取る?」「良い行動をするのはいいが、乗客の利益も考えるべき」という意見もあった。【8月26日 Record China】
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まあ、どこの社会にも、日本にも、「オヤオヤ・・・」と思われるような出来事は多々あります。こうした話から「やっぱり、中国人は・・・」と決めつけるのも早計でしょう。

“中国人の日本に対する理解が深まる一方で、日本人の中国人に対する理解は進んでいない”との指摘もあります。

****中国人の日本への理解は進んでいるのに!日本人の中国への知識は「偏見ばかり****
日本を訪れる中国人が増加の一途を辿っている。日本政府観光局(JNTO)によれば、2016年1−7月に日本を訪れた中国人外客数は前年同期比38.2%増の380万7900人に達した。これは、過去最高を記録した前年をさらに上回るペースだ。

訪日中国人が増えるということは、消費によって日本に経済効果をもたらすだけでなく、訪日旅行を通じて日本に良い印象を抱き、日本を理解する人が増えることも意味する。

中国メディアの捜狐はこのほど、中国の日本に対する理解が深まる一方で、日本には中国に対する偏見が存在すると主張する記事を掲載した。(中略)

多くの中国人が旅行で日本を訪れ、日本製品や日本人の民度を称賛し、中国人の日本に対する理解が深まる一方で、日本人の中国人に対する理解は進んでいないことを伝えている。【8月29日 Searchina】
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2015年に日本を訪れた中国人旅行客は前年比107.3%増の約500万人となり、過去最高を記録しました。中国人旅行客の過去最高は14年の240万人であったことから、15年は過去最高の数字を一気に2倍以上に伸ばしたことになります。今年は更に増えて、上記記事の1-7月の実績を単純に年換算すると650万人になります。

一方、中国を訪れる日本人は減少傾向にあり、15年の中国への出国者数は約250万人。人口規模が違いますから、その数字自体はともかく、減少傾向にあるのは気になります。

中国メディアの捜狐は、中国人は日本に「片思い」しているようだと伝えつつ、日本には中国人を引き寄せるどのような魅力があるのだろうかと問いを提起したとも。【8月29日 Searchinaより】

もっと多くの日本人が中国を観光して、その社会、人間を自分の目で見れば、これまでとはまた違った気づきもあると思います。

そうしたなかで、“偏見”と怒られるかもしれませんが、非常に面白かったのが下記記事。

****中国の女性観光客、渋滞中に売店で商品買い占め、他の客に売りつける****
2016年8月27日、重慶晨報によると、中国でこのほど、チベットツアーのバスが道路工事による渋滞に巻き込まれる中、1人の女性客が近くの売店でミネラルウオーターとインスタント麺を買い占め、同じように渋滞に巻き込まれた他の観光客に倍の値段で売りつけていたことがインターネット上で明らかにされた。

ミネラルウオーターもインスタント麺も、中国を旅行する際にはなくてはならない必需品だ。だがその様子を目撃したツアー客は、取材に対し「あんな人は今まで見たことがない」と話している。

ちょうど昼時。渋滞で誰もが強い日差しと空腹にぐったりしていた。ある女性が沿線に唯一の売店で食べ物などを調達しようとしたところ、1人の女性が「手を出すな。この店のラーメンと水は私のものだ」と言い放ったという。

女性が買い占めたのは、転売が目的だった。2元(約30円)の水は6元(約90円)で、5元(約65円)の水は10元(約150円)で売り始めた。事情を知らない観光客は女性を店の従業員だと勘違いするほどで、しかも売店には後払いで商品を押さえるというやり手ぶりだった。

観光地で物価が高いのはよくあることだが、このように観光客が自ら高値で売りつけるのはなかなか見られない。

ネット上には「手間ひまかけているのだし、価格もそれなり。チャリティーではあるまいし、それくらいいいのでは」などと女性の行為を肯定する声も一部にあるが、「これはビジネスチャンスなどではない」「ただの恥さらし。ろくでもないことだ」などと批判的なコメントが相次いでいる。【8月28日 Record China】
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上記トピックスも関連しているように思われるのが、日本と中国の商習慣の違いを指摘した下記記事。

****中国流「中抜き社会」が生まれるワケ~大乱戦の市場をどう生きるか****
中国で暮らしていると、この社会はつくづく「中抜き社会」だなあと思う。
 
例えば何か売れている商品があると、その商品を別ルートから独自に入手して中間マージンをカットし、安く売る人がすぐに現れる。時には極端な類似品やニセモノも混入し、それをすごい数の人がやるので市場は乱戦になり、値段はあっと言う間に下がる。こういうことが日常的に発生している社会である。

ネット社会、デジタル社会になってその傾向は一層強まっている。これは「業界の掟(おきて)」を尊重して集団の利益を守るという戦い方をしてきた日本の伝統的な商業モデルとは相当に異質なものがある。(中略)

「素人お断り」の看板
東京・日本橋馬喰町界隈の繊維問屋街を歩くと、そこには店先に今でも「素人お断り」「小売はいたしません」といった看板や張り紙をした店がたくさんある。御徒町の宝石問屋街などでも同様の掲示をみかける。すべての店がそうではないが、多くの店はプロでなければ商品を売りませんという意思表示をしている。(中略)

一方、中国で「卸売市場」に行ってみると、そこでは商品を買うのに何の制約もない。工場の仕入れ担当者も来れば、近所のおばさんも来る。(中略)

つまりここで問われているのは「量」である。その人はどれだけの量を買うのか。「批発市場」とは「とりあえず一定数量をまとめて買うことが標準とされている市場」ということであって、その人が「何者であるか」は問われない。(中略)

「量」の多さで決める中国社会
そもそも日本の「卸」の概念がなぜそうなっているのかと言えば、同じ業界の人たちが団結して利益を守るためだろう。皆がルールを守って「素人」との直取引を自粛し、安値競争を避ける。いわば「中抜き禁止」である。

好意的に解釈すれば、悪性の競争を排し、安定的な利益を確保することで良質な製品をリーズナブルな価格で長期的に供給することができる。悪く言えば、高い価格を維持し、自分たちの利益を増やすための一種の談合、カルテルとも言える。

一方の中国社会では、そこにあるのは「量」の概念だけで、買った商品の転売が目的であろうが、自分で使おうが、それは問わない。だから中国人には「素人お断り」「小売はしません」といった考え方は理解しにくい。(中略)

「その人が何者か」という属性を判断基準にする日本と「買う量」で判断する中国。ここには規範やルールを重視する日本と、現実重視、効率第一の中国という2つの社会の判断基準の違いが鮮明に現れている。

「爆買い」はプロか素人か
一時は一世を風靡した感のある「爆買い」だが、最近その言葉を聞くことも少なくなった。(中略)

日本人が「爆買い」に強い関心を示し、メディアがこぞって大きく報道したのは、それが旅行者という「素人」の日常的な経済行為であると認識していたからである。素人が自分のポケットマネーでかくも多額の買い物をする現象が驚きなのであって、仮に輸入を業としている人が仕入れに来て大量に商品を買ったとしても、別に面白くもなんともない。

ところが来日客が増え、「爆買い」の実態が明らかになるにつれ、そこには「プロ的」な実利目当ての購入が多く混じっていることが見えてきた。大量に買った商品を自分のネットショップで販売したり、ブローカーに転売したり、その買い物客自身がブローカーそのものだったり、そういう状況があることがわかってきた。

次第に「あれは買い物ではない。仕入れだ」。そういう見方が伝えられ始め、日本の人々、特にメディアの「爆買い」に対する視線は急速に冷めていった。

日本社会は中国人客が「素人」として買い物をするのなら非常に好意的である。しかし、いったんその人が「プロ」であり、転売のための商品を仕入れているのだと知ると、その視線は一転、厳しいものになる。(中略)

転売目的で商品を買う客に対して日本人が冷淡なのは、発想のどこかに「素人」が商売をすることに対する違和感があるからだろう。つまり素人とプロは違うのである。善し悪しは別として、日本社会の意識では、素人は素人、プロはプロと、それぞれの社会的な棲み分けや果すべき役割の境界が明確に分かれており、それを踏み越えるのはいわば「オキテ破り」のように映る。

「買い物」と「仕入れ」の境界線
しかしこれはあくまで日本人の視点であって、中国人的発想に立ってみれば、その買い物が「個人のお土産か、仕入れか」という議論はほとんど意味をなさない。

例えば、ある日本人が海外旅行でお買い得な商品を見つけたとする。そんな時、日本人は「うーん、これ確かに安いけど、たくさん買っても余ってしまったら無駄になるし、誰かにあげるとしても喜ばれるかどうかわからない。今回のおこづかいの予算をオーバーするから、やっぱり1つにしておこう」といった話に往々にしてなる。

ところが中国人が同じような状況に遭遇したらどうするか。まずスマートフォン(以下スマホ)で中国のショッピングサイトに接続してその商品の相場を確認し、もし大幅に安ければ大量に買い込む。お金が足りなければ誰かに借りて買う。

「こんなに安いのに買わなければ損だ。自分でも使うし、友人や知人、親戚一同に配れば喜ばれる。余ったらネットで売ればこれだけ利益が出る。もし自分で売り切れなければ、どこかの店に卸してしまえばいい」などといった感じで頭を巡らす。これがごく普通の思考回路である。(中略)

このように中国人は自分の人生を非常に柔軟かつ融通無碍に認識していて、臨機応変、即断即決の行動を取る。「こうでなければ」「こうであるべき」という規範に左右される部分が少ない。こうした特性がいかんなく発揮されたのが「爆買い」の場面だったと思う。(後略)【8月26日 田中 信彦氏 WISDOM】
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渋滞現場の売店商品を買い占めた女性も、“柔軟かつ融通無碍に認識していて、臨機応変、即断即決の行動”したのでしょう。

ただ、武士道や剣道・柔道のように、“道”が好きな日本の場合は、商取引にあってもモラル・精神性を重視します。ただ儲ければいいという考えは“商人道”では排除されます。

江戸時代の学者で、商家に奉公しながら独学で儒教を学び,その後、町人を集めて無料の講話を始めた石田梅岩は、武士が主君に忠でなく禄をもらっていれば、それは武士とはいえないように、商人も「売り先」への誠実がなければ商人とはいえない・・・として、倹約で3割コストを下げて、1割安い値段で売るような商道徳を主張しています。【http://www.synchronature.com/Science/Sekimon.html より】

また、“経営の神様”松下幸之助氏は“私がやってきた電器屋であれば、人びとの役に立つものを開発する。しかも合理化をはかり、適正な利益をとりつつもなお、安くなるよう努める。また配給もできるだけムダをなくす。それが商道徳というもので、それは他のどんな商売にも言えるのではないかと思う。”【http://www.webbyrock.com/2009/06/1day1story-0605.html より】

こうした“商道徳”に関する感覚が、日中両社会の違いの多くを生んでいるように思えます。
それは“民度”云々ということではなく、文化の違いでしょう。
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中国  広東省広州市「リトルアフリカ」の盛衰

2016-08-28 22:34:14 | アフリカ

(2年前の広州市「リトルアフリカ」の賑わい 【8月26日 CNN】)

日本は「質の高いアフリカ」をつくる・・・・
周知のように、安倍首相の他、アフリカ各国の首脳約30人が出席して、ケニアの首都ナイロビで第6回アフリカ開発会議(TICAD)首脳会議が27,28日に開催されました。これまで5回のTICADは全て日本で開かれており、アフリカ開催は今回が初めて。

安倍首相は2018年までにアフリカに300億ドル(約3兆円)規模の投資を行う意向を表明し、量的にははるかに日本を上回る大規模なインフラ投資などを進める中国を念頭に、「質の高いアフリカ」をつくることをアピールしています。

****アフリカ支援、量より「質」 首相演説、中国に対抗 TICAD****
初のアフリカ開催となった、第6回アフリカ開発会議(TICAD6)。安倍晋三首相は「質の高い」アフリカを目指すと演説。豊富な資金力で先行する中国との違いを強調した。日本の存在感を高める狙いだが、進出を狙う企業には、テロや内戦といった治安リスクが最大の懸案となっている。

安倍首相はTICADの開幕を告げる27日の基調演説で、アフリカに寄り添う姿勢を強調した。まず訴えたのは、アフリカからの国連安全保障理事会の常任理事国入りだった。

「国連安保理改革こそは、日本とアフリカの共通の目標だ。達成に向け共に歩むことを、皆様に呼びかけます」。日本も目指す常任理事国入りについて、首相がそう力を込めると、会場から拍手が湧いた。
 
首相は、経済協力に話題を移し「日本企業には質への献身がある。アフリカで力をいかす時が来た」と主張。「日アフリカ官民経済フォーラム」の立ち上げや、総額3兆円(300億ドル)規模の官民による投資など、具体的な協力・支援策を並べた。
 
人材育成やトヨタ式の「カイゼン」で「質の高いアフリカ」をつくるとも説明。アフリカでの影響力を強める中国に対し、「オールジャパンで量より質で勝負する」(外務省幹部)姿勢を打ち出した。
 
約20分間の演説の最後には、「世界に安定、繁栄を与えるのは、自由で開かれた二つの大洋、二つの大陸の結合が生む、偉大な躍動にほかならない」と切り出し、安倍外交の新戦略「自由で開かれたインド太平洋戦略」を披露した。
 
南シナ海や東シナ海で権益の拡大を図る中国の強硬姿勢との対比を念頭に、太平洋とインド洋を「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにする責任を担う」と決意を語った。
 
新たな戦略をテコにして、アフリカでの存在感を高めたい安倍政権。ただ、中国は昨年12月、習近平(シーチンピン)国家主席が南アフリカで開かれた中国・アフリカ協力フォーラムで、協力実施のために600億ドル(約6兆円)の支援を約束するなど、政府が豊富な資金力を持つ企業と一体となってインフラ開発を進める。
 
外務省幹部は「支援額の数字だけで比較されるのは、納得がいかない。アフリカは可能性を秘めた地域。今後さらに力を入れたい」と話すが、日本の新戦略がどこまで浸透するかは見通せない。【8月28日 朝日】
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トヨタ式の「カイゼン」云々については、8月11日ブログ“エチオピア 政府の「明確なビジョンと戦略」で経済成長と医療改善を実現”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160811でも取り上げた、エチオピア工業省の傘下の「エチオピア・カイゼン機構」の取り組みなどをイメージしていると思われます。

人材育成については、感染症に対応する専門家や産業の基礎を支えるエンジニアなど、3年間で1000万人の人材育成に取り組むことも発表しています。

アフリカが将来的には中国・インドを上回る巨大市場となることから、出遅れている日本にとっては関係強化が急務となっていることや、安保理常任理事国の件など、政治的にアフリカ諸国の協力を得ることが日本にとって重要であること(個人的には、常任理事国の話は、今の日本はその状況にはないようにも思えますが)などから、アフリカ支援の重要性が指摘されています。

しかし、そうした話は別にしても、欧州の難民問題・テロ問題に見るように、世界全体のバランスの取れた改善が図られない限り、貧困や内戦を残したままで自国だけの安全・繁栄を維持することはできない現代社会にあって、課題が山積するアフリカへの関与は重要であると言えます。

圧倒的な中国の存在感
安倍首相が強く意識する中国のアフリカにおける存在感は圧倒的なものがあります。
中国とアフリカのつながりは毛沢東時代からのものですが、その後、資源獲得の時代を経て、今は巨額のインフラ投資をアフリカで行っています。

****住んでいる中国人は13万人、日本人は200人*****
・・・・アフリカと中国の貿易額や中国の対アフリカ投資額は近年増え続けており、それを反映するようにアフリカにおける中国人の人口は増え続け、専門家によると100万人を超えたと言われている。

アフリカの著しい経済発展で生まれている旺盛な需要を背景に、中国企業が次々にアフリカへ進出、アフリカの国家プロジェクトを受注し、投資をしている。

また、アフリカでの商機を求めて来る中国人も多い。エチオピアには現在約13万人の中国人がいるといわれている。ちなみにエチオピアに住んでいる日本人は約200人である。・・・・【8月15日 上野 きより氏“中国が旗を振る「エチオピア開発」の光と影” 東洋経済オンライン】
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エチオピアでは昨年9月、中国輸出入銀行が総工費の85%を融資し、世界各地で鉄道建設を行う中国国営企業の中国中鉄(CREC)が建設する形で、人々の足となる電車ライト・レールが運行を始めています。

中国国営企業はライト・レールだけでなく、鉄道、道路、高速道路、発電所などいくつもの主要なインフラ整備の多くを担っています。

それに対し、エチオピアに進出している日本企業は首都アディスアベバ郊外に工場を開設した横浜市の革製品店ぐらい・・・・ということで、「量より質」とは言うものの、話になりません。

もちろん、中国の進出が必ずしも現地住民の利益となっていない・・・という話はよく聞きます。

ケニアではの鉄道建設現場で作業中だった中国人を地元青年が襲撃する事件も報じられています。

****ケニア青年200人、鉄道建設の中国人労働者襲撃****
2016年8月2日、ケニア南西の町ナロクの鉄道建設現場で作業中だった中国人14人が、地元の青年ら約200人に襲撃され負傷する騒ぎがあった。鉄道建設は中国資本によるもので、地元青年らは就業機会が分配されないことに不満を感じていたという。英BBCが伝えた。

ケニアで最大の発行部数を誇る英字紙のデーリー・ネーションによると、事件はナロクとマイ・マヒウを結ぶ幹線道路で起きた。約200人の地元青年らが棒などを持ち大声で叫びながら中国人労働者と衝突した。この騒動で、地元テレビ局の記者も被害を受けたという。【8月3日 Record China】
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もちろん中国のやり方に問題があるのは多くの指摘どおりですが、日本の場合は、そういう問題を起こすレベルにまで届いていないとも言えます。
中国の投資には両面ある話ですから、片面だけからの判断はするべきではないでしょう。

中国が「内政不干渉」の建前で、人権侵害や独裁の国にも進出しているという話もあります。ただ、これも、欧米から制裁を受けるミャンマーやスリランカとのパイプを維持した日本にも、ある程度あてはまる話です。

【「リトルアフリカ」を取り巻く環境変化 黒人蔑視の問題も
今日は、そういう話ではなく、中国に暮らすアフリカ人の話です。

両者の関係強化に伴って、アフリカに暮らす中国人が増えるのと同時に、中国でビジネスを展開するアフリカ人も多いようです。
しかし、中国で暮らすアフリカ人の環境も大きく変わっているようです。

****色あせるチャイニーズ・ドリーム<1> 中国を離れるアフリカ出身者****
中国南部の広東省広州市に「リトルアフリカ」と呼ばれる地域がある。「チョコレートシティー」とも呼ばれ、アフリカからの移民が集まっていた。だが近年、「チャイニーズ・ドリーム」を諦め中国を離れるアフリカ出身者が増加している。

広州の小北路ではつい2年前まで、買い物袋を頭に乗せて運ぶアンゴラ人女性や、長いローブに身を包みながら両替商を営むソマリア人男性、通りに面したレストランでヒツジをさばくウイグルからの飲食業者など、中国の他の地域とは異質な光景が広がっていた。

広州中心部にある登封には、中国内陸部だけでなくアフリカからも移民が殺到。サハラ砂漠以南から広州に移住してきたアフリカ出身者は2012年までに10万人に達したとの調査もある。

この数字が本当なら、アジア最大級のアフリカ出身者によるコミュニティーだったということになる。いずれも中国で成功する夢を追いかけてきた人々だが、この夢は現在、色あせつつある。

研究者らは、この約18カ月で数百人から数千人のアフリカ出身者が広州を去ったとみている。広州の競争力が薄れた背景には、経済を石油に依存する西アフリカ諸国でドルが枯渇していることや、中国の厳しい移民政策、人種差別のまん延がある。中国経済の減速と成熟も要因のひとつだ。

広州は約束の地?
広州は香港の北西120キロの地点に位置する工業都市。アフリカ出身者の流入が始まったのは1990年代半ばだ。

中国政府は、初めて「中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」が開催された2000年を境に、アフリカの資源国と良好な関係を築く戦略を展開。2014年までに中国は米国を抜いてアフリカにとって最大の貿易相手国となり、100万人以上の中国人がアフリカ大陸に渡航した。

ナイジェリアやギニアにチャイナタウンが出現するなか、中国を視野に入れるアフリカの人々も増えていった。

ただ香港大学の講師ロベルト・カスティロ氏によれば、中国への移民は西洋に向かったアフリカ出身者とは異なる。西洋に向かった人々はアフリカで成功の機会に恵まれず、西洋諸国への定住を目指した。

一方、中国のアフリカ出身者は企業家精神に富み、さまざまな場所を巡り新天地での機会を模索する資金力を持っているという。中国に向かったアフリカ移民の40%は高等教育を受けていたとの調査もある。

広州の物流業界で働くソマリア人のアリ・モハメド・アリさんは大卒だ。「きょうだい5人はみな欧州に行ったが、結局タクシーの運転手や警備員になった」と述べる。自身は東洋に向かうことで機会が広がったという。
ギニア出身のマディナ・ディアロさんはマットレスやポップコーン製造機などあらゆる製品をコンテナで輸出し、母国で販売するビジネスを展開。2002年には37万5000ドルの年収があった。ギニアの1人当たりの国民総所得は470ドルだ。
模造品もお金になった。こう指摘するのは、かつてセネガル空軍で航空機エンジニアを務めていたムスタファ・ディエンさんだ。セネガルでは一時、中国で買い付けたアディダスやナイキの模造品を正規品と同じ値段で売れることができた。中国製の模造品だとは誰も気づかなかったという。
広州は約束の地となり、移住してくるアフリカ人はさらに増えた。【8月26日 CNN】
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*****色あせるチャイニーズ・ドリーム<2> 「競争力」失う中国****
アフリカ各国の出身者は広州での「大使」を国ごとに投票で選出している。中国警察との折衝や外国人社会内部の争いの調停にあたるほか、コミュニティーの人数も記録している。移民は広州に着くとコミュニティーの指導者に非公式に申告し、支援を仰ぐのが普通だ。

コンゴ出身の「外交官」フェリー・ムワンバさんによれば、2006年にリトルアフリカに住んでいたコンゴ人は1200人。この人数は今日、500人にまで減少したとみている。他国の「大使」も同様の減少を報告している。

広州の中でも特に人数が多いのがナイジェリア人だ。そのコミュニティーの大使を務めるエマニュエル・オジュクさんは「クリスマスに大勢が帰国してしまい、戻ってこない」と話す。

多くの人は移動を重ねながら商売を行っているため、広州におけるアフリカ出身者の数を正確に知ることは難しい。香港大学の講師ロベルト・カスティロ氏は、中国政府も正確な人数は把握していないとみている。ただリトルアフリカの通りは、記者が2年前に初めて訪れた時よりも静かになっているように見えた。

競争力を失う中国
アフリカ出身者の間でチャイニーズ・ドリームが色あせつつある現状の背景には、中国経済の成熟が一因としてある。

セネガル出身のムスタファ・ディエンさんによれば、中国の存在感が世界的に増すなか、アフリカの消費者は模造品を購入していることに気づき始めた。当然の帰結として、以前ほどお金を払わなくなったという。

また国際的な圧力の高まりを受け、中国当局は世界的なブランドの知的財産権を保護する姿勢を打ち出している。ディエンさんの携帯にも最近、広州郊外の工場経営者から、アディダスやナイキなどのロゴの使用を今年から控えるというメッセージが送られてきた。

為替レートの変動や労働者の賃金上昇により、工場製品の値段が上がったことも影響したという。製造業の時給が上がる一方で人民元高が進み、利益幅は減少した。ディエンさんは今、ベトナムやバングラデシュに目を向けている。

文化の違い
収益の減少に伴い、アフリカ出身者の多くは中国生活の負の側面をこれまでよりも強く意識するようになっている。
告発サイト「ウィキリークス」は2008年、広州でアフリカ出身者の存在が目立つとして、中国の地元当局が以前から「非常に懸念」していたことを報じた。

また米国の外交官は米政府への報告の中で、中国人住民の多くが「アフリカタウン」に住みたくないと感じているとの調査結果に言及。文化やライフスタイル、衛生観念の違いが原因だとしている。

セネガル出身のムスタファ・ディエンさんはCNNの取材に、地元住民とエレベーターに乗り合わせた際、鼻をつまむしぐさをされた経験を語った。アフリカ系入居者の黒い肌の色が「雪のように白い壁」に付着したとして、中国人の大家がニュースサイトに不満を書き込んだ例もある。【8月27日 CNN】
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****色あせるチャイニーズ・ドリーム<3> 帰国の時*****
中国は2013年、1986年以来となる出入国管理法の改正を行った。広州に長年住むアフリカ出身者は、この法改正により真の居住権への道が開かれることを期待していた。彼らは税金を収め、工場などへ支払いを行い、中国人と結婚するものもいた。

だが、香港大学の講師ロベルト・カスティロ氏は結果に「非常に失望」しているという。改正後の法律は極めて曖昧(あいまい)で、1986年に作られた法律と大差ないと指摘。外国人に向けて厳しいメッセージを送る内容だとしている。超過滞在や不法就労に対する罰則が厳しくなったのが唯一明確な変更点だ。

同氏によれば、法律が曖昧なことで、ビザ政策の解釈が地域ごとに大きく異なる事態が生じている。広州のように外国人の人口が多い地域では、滞在期間の短いビザが発給される傾向にある。多くのアフリカ出身者は、当局の対応が緩い近隣の仏山でビザ登録を行っているという。

1年間にわたった改修工事では外国との交易を歓迎する看板を取り壊し、この地域の生命線だった野外市場を禁止。道路を拡張し舗装し直したほか、警察を重点的に配置した。

「美化」は広州の未開発地域の刷新を図る政策の一環として行われたものだ。だが、これだけ狭い地域に警察を大規模投入したのは同市では他に前例がない。

外国人向けのサービスを提供する施設では8人の警官が同時に配置されたほか、300メートルの目抜き通りに複数の交番を置くなどの措置も取られた。日中いかなる場所でも警察がアフリカ出身者の旅券をチェックしているという。

この改修があって以来、アフリカ出身者の多くはリトルアフリカを去った。かつて活況を呈していた通りは今、人影もまばらだ。

アフリカではドルが枯渇
一方、ナイジェリアなどのアフリカ諸国では、ドルの枯渇が大きな問題となっている。石油をはじめとする資源価格が下落するなか、こうした国の政府は外貨準備高の減少を食い止めるため、ドルの使用を制限している。

母国の通貨で取引できない広州のアフリカ出身者にとって、この影響は甚大だ。ナイジェリア出身のエマニュエル・オジュクさんは「我々が中国で物を買うときにはドルを使う。だがそのドルがない。非常に大きな問題だ」と話す。

帰国のとき?
状況が厳しさを増すなか、コンゴ出身のフェリー・ムワンバさんは13年過ごした中国を離れ、故国に帰る準備をしている。撤退ではなく、最も必要とされる場所で自身のノウハウを使うための決断だ。「故郷に帰り、中国で学んだ知識を活用しなくては」と語る。【8月28日 CNN】
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あまりに面白い記事なので、長文記事の全文を引用しました。

広東省広州市の「リトルアフリカ」・・・・知りませんでした。
賑わっていた頃の様子を見ておくべきでした。

以前、洗剤のCM(中国人女性が洗濯機に黒人男性を放り込んで回すと、イケメン中国人男性が出てくるというもの)が話題にもなりましたが、中国人の黒人蔑視はよく聞くところです。(白人崇拝の裏返しでしょうか。空港などの広告でも、白人モデルがやけに目につきます。日本にもその傾向がありますので、あまり言える立場でもありませんが)

中国のアフリカ進出が必ずしも現地住民の利益になっていないという話も、根底には中国人のアフリカ黒人への認識があるのかも。そうだとすると、今後もトラブルが続きそうです。

また、日本が「質の高いアフリカ」に寄与したいということであれば、当然ながら、まず現地住民と対等の目線で向き合うことが大前提となります。
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インド  未だ遠い生活水準向上への道 トイレ事情、病院に関する話題、そして政治家は・・・

2016-08-27 21:55:55 | 南アジア(インド)

(警官に抱えてもらって泥流の中を移動する印マディヤプラデシュ州の州首相 【8月25日 CNN】)

深刻な「トイレ問題」に取り組むモディ首相
大いなる発展の可能性を秘め、おそらく間違いなくマクロ経済的には近い将来中国と並ぶ規模にもなるであろうインドですが、少なくとも現状においては、絶対的貧困や社会的格差・固定的身分制度など、いろんな問題が取り沙汰される中国以上に深刻な課題を抱えています。

生活環境においては、基本的なトイレや水道設備も未だ未整備の状況にあります。

****発育不全の子ども、インドで世界最多 屋外排せつと不衛生で****
インドでは、トイレの不足や汚れた水、劣悪な衛生環境などが原因で発育不全の子どもが世界一多い。新たな研究結果が26日に発表された。
 
発育不全は栄養不良が原因で起こり、年齢に対する成長率が標準よりも下回っている状態。生後2歳を超えてからは遅れを取り戻すことが難しいケースが多い。
 
水と衛生に関する国際NGO「ウォーターエイド(WaterAid)」によると、世界の5歳未満の子どもの30%に当たる4800万人を抱えるインドは、近年の経済成長にもかかわらず、世界のどの国よりも発育不全の子どもが多く、幼年期を生き延びても他国の栄養状態の良い子どもに比べて身体的、知的に脆弱だという。
 
ウォーターエイドは、トイレと清潔な水の不足がインドでの発育不全の原因になっていると指摘する。トイレが不足しているため、屋外での排せつが増え、不衛生な環境となり、病気のまん延と感染が起きるためだ。

インドに関する同NGOのデータでは、毎年14万人の子どもが下痢が原因でなくなってとしており、また安全な水を入手できない子どもが7600万人、適切な衛生環境下で暮らしていない子どもが7億7400万人いるという。
 
屋外排せつはインドで長年、大きな保健衛生問題となっている。国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、インド国民の半数近い約5億9400万人が屋外で排せつしているという。【7月27日 AFP】
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中国では、仕切りのない“中国式トイレ”は都市部ではあまり見かけなくなったようですが、インドはそれ以前の段階です。

これまでも取り上げてきたように、インドでは、家にトイレがある人より携帯電話を持っている人の方が多いとかで、野原で用を足す際の無防備な状態が性犯罪を誘発するなど、女性に大きな負担を強いてもいます。(2014年6月3日ブログ“インド 2少女レイプ殺人で、改めて「寺院よりトイレ」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140603など)

モディ首相も生活水準向上の象徴として重点を置いており、トイレ事情の改善をアピールしています。

****インド首相、過去2年間でトイレ2000万か所を新設と発表****
インドの独立記念日に当たる15日、同国のナレンドラ・モディ首相は首都ニューデリーで演説し、政府がこれまでにトイレを2000万か所以上新設したと述べた。
 
17世紀に築城されたデリー城(レッドフォート、Red Fort)で演説に臨んだモディ首相は、世界第2位の人口を誇る同国のあらゆる世帯に電力とトイレを供給するという公約実現に向けて順調な前進を遂げていると強調した。
 
モディ首相は就任後初めて行った2年前の独立記念日の演説で、性暴力やトイレの不足といった同国ではタブー視されがちな問題に取り組む考えを明らかにして称賛を浴びた。その際、4年以内にトイレを全ての世帯に設置するという公約も掲げていた。
 
モディ首相は同日の演説で、「これほどの短期間で、インドの村々に2000万か所以上のトイレを設置した」と述べて拍手喝采を受けた。
 
同国では長年、屋外での排せつが保健衛生上の大きな問題となっており、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、人口の半数近い約5億9400万人が屋外での排せつを続けているという。
 
モディ氏は2014年に首相に就任すると、衛生面での向上を強く訴え、下痢といった病気のまん延を防ぐため、各世帯にトイレを設置するよう繰り返し求めている。【8月15日 AFP】
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モディ首相の内政については、ヒンズー至上主義の拡大など問題もありますが、トイレ事情改善といった住民生活向上に直結する面での施策については、今後もその実行力を発揮してもらいたいところです。

病院をめぐる最近の話題に見るインド社会の現状
しかしながら、ここ2週間ほどの間にも、住民の生命を預かる病院の対応に関しても問題がいくつか報じられており、社会全体の底上げはまだまだこれからの状況です。

****病院職員が賄賂要求、治療遅れ赤ちゃん死亡か インド*****
インドで病院の職員から次々と賄賂を求められ、支払えずに治療が遅れたために生後10か月の赤ちゃんが死亡したと、赤ちゃんの家族が11日、地元ニュース専門局NDTVで訴えた。
 
スミタ・ダットとシブ・ダットさん夫妻は7日夜、病気の息子をウッタルプラデシュ州バーライチの公立病院に連れて行ったという。
 
夫妻によると、まず、看護師が書類処理のために賄賂を要求してきたという。その後、清掃作業員がベッドを手配するために賄賂を求めてきた。夫婦には賄賂を支払う以外の選択肢はなかったという。

さらに2日後、医師が注射のために賄賂を求めてきた。だが夫婦の資金は底をついていたため支払えず、口論となり、結果として赤ちゃんの治療が遅れたという。
 
病院側はこの問題について調査を行う方針を示したが、赤ちゃんの治療が遅れた事実はないと否定した。赤ちゃんの死因は今のところ分かっていない。

問題の清掃作業員は解雇され、看護師は別の部署に配置換えになったという。
 
インドでは、国営病院が過密状態にあるため貧困世帯も高額の民間医療に頼るしかなく、その中で病院での賄賂の要求や水増し請求が横行している。【8月11日 AFP】
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膨大な人数の貧しい人々は、生きている間はもちろん、死んだ後も人間らしい扱いは受けられないようです。

****病死の妻担ぎ徒歩で10キロ、車手配の余裕なく インド****
インド東部オディシャ州で27日までに、病院で病死した妻の遺体を金銭的な余裕がないため車を使って運べなかった夫が肩に担いで帰宅し、約10キロを歩き続ける出来事があった。

車の調達を手伝うなど夫への配慮に欠いた病院を批判する意見が出ている。

夫は悲しみに襲われながらも愛妻の遺体を青色のシートで包んで担ぎ、うだるような夏の暑さの中、泣きくれる12歳の娘を引き連れて自宅へ歩き続けていた。42歳だった妻は結核で死亡していた。

2人が村落の自宅までまだ約50キロの距離がある場所にたどり着いた際、住民の通行人が目撃して地元のテレビ記者に連絡。記者は父娘の苦難の姿をビデオ映像に収め、全国的な反響を呼ぶことになった。

夫は同記者の取材に、「お金がなく車を雇えなかった。病院にもその苦しい事情を説明したが、助けることは出来ないと言われた」と明かした。
2人にはその後、車が用意された。

地元のCNN系列局は政府がまず輸送用の車両を準備すべきだったと報道。夫の話として、病院側は手助けを断るだけでなく、遺体と共に立ち去るよう求めたとも伝えた。

病院当局者はCNNの取材に、車の提供を拒否したことは否定し、夫が妻の遺体を持ちだしたことは知らなかったと述べた。

また、妻の死去は当番の医師に確認されておらず、遺体を病院外へ連れ出す許可も出されていなかったとも主張した。

同州政府当局者は、今回の出来事の調査を指示し、不当な対応が見付かった場合、しかるべき措置を講じる考えを示した。

オディシャ州はインドの遠隔地にある州の1つ。国連が2011年に公表したインドの19州を対象にした調査では、同州は寿命などの人間開発指数で最低水準に位置付けられていた。【8月27日 CNN】
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****インドの病院、遺体の骨折りつるして搬送に批判殺到****
インド東部オリッサ州で病院職員らが、救急車が不足しているために高齢女性の遺体の骨を折って小さく折り曲げシーツにくるみ、棒につるして運ぶ様子を捉えた映像が公開され、国内で激しい怒りの声が上がっている。こうした事例は今週2度目。
 
映像の中で病院職員らは、腰骨あたりを折ったとみられる女性の遺体をシーツにくるんで運んでいる。遺体は、列車にはねられて死亡した80歳前後の女性のものだった。
 
オリッサ州では数日前にも、結核で死亡した妻の遺体を抱えて病院から10キロ離れた自宅まで徒歩で帰ることを余儀なくされた男性の映像が公開されていた。

同州で相次いで起きた2件の事例を捉えた映像は、ソーシャルメディアやテレビ番組で次々に取り上げられ、貧しい患者らに対する当局の扱いをめぐってネットユーザーや視聴者から批判の声が殺到した。
 
オリッサ州のナビーン・パトナイク州首相は報道陣に対し、非常に痛ましい出来事だと述べ、現在調査を進めており、遺体を搬送する救急車の配備へ向けた策も講じていくことを明らかにした。また州政府は、州内で霊きゅう車を無料で利用できるサービスも導入したと述べた。
 
インドの公立病院では、家族の遺体を自宅まで運ぶ際に救急車の利用を認めるケースは少なく、遺族は高額の自己負担で民間の霊きゅう車を手配せざるを得ない。
 
世界銀行によれば、インドでは保健制度に対する政府予算が国内総生産(GDP)の5%未満で、インフラと人的資源の深刻な不足に悩まされている。【8月27日 AFP】
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両事件ともネットユーザーや視聴者から批判の声が殺到しているということは、少なくともこうしたことに問題があるという認識はインド社会にもあるようです。

インド社会の改善を阻む政治家の意識レベル
そうした認識が政治に反映されていけば、やがては改善されていくのだろう・・・という期待もできますが、そうした期待すら潰しかねないのが、冒頭画像に写し出されたインド政治の在り様です。

****洪水視察の州首相、泥流嫌い警官の手車で移動 インド****
インド中部マディヤプラデシュ州の州首相が洪水の被災地を視察した際、泥流に入るのを嫌って警官の手車に乗って移動する写真がソーシャルメディアで流れ、ひんしゅくを買う事態となった。

シブラジ・シン・チョウハン首相は白色のスラックス姿で被災地を訪れていた。視察の目的は救援作業の現状を確認し、督励することなどだった。

首相府はインドの地元メディアに、警官の手車は首相が負傷するのを阻止するためだったと説明している。

インド東部や中部の諸州は豪雨に伴う洪水に襲われ、住民数万人が退避を強いられている。インド政府当局者などによると、被害が特に甚大なのは東部ビハール、北部ウッタルプラデシュ、マディヤプラデシュ州各州で少なくとも53人の犠牲者が出ている。被災者は総数で200万人以上とされる。

インドの気象観測当局は23日の時点で、降雨は今後数日間続くとも予報していた。

チョウハン首相の今回の振る舞いはツイッター上で嘲笑や冗談の材料となり、「インドは第3世界の国。3級のがさつな指導者を選んでいるのだから」などの書き込みがあった。【8月25日 CNN】
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“嘲笑や冗談”では済まされないことです。

以前、タイのインラック首相(当時)が洪水現場に駆け付ける際のブランドもののブーツが話題になったりもしましたが、それでも彼女は長靴で水の中をジャブジャブ歩いていました。

日本の政治家が災害視察や会議などで作業着みたいな服を着こんでいるのもパフォーマンス的であまり好きではありませんが、チョウハン州首相のケースは論外です。

人々の生活実態から遊離した政治家のこうした意識がインド社会の改善を妨げる最大の障害です。
コメント

オーストラリア  経済と安全保障の間で揺れる中国との“微妙”な関係

2016-08-26 22:34:33 | 国際情勢

(【6月28日 産経】)

オーストラリア・中国の“微妙”な関係
リオデジャネイロ五輪では、競泳で金メダルを獲得したオーストラリアのホートン選手が、2位になった中国のライバルを指して決勝レース前に「ドーピングの詐欺師に付き合っている時間はない」などと発言したことに中国ネット世論が激怒するという“騒動”がありました。

(中国側の話では、指摘された孫楊選手は、体調不良の際に謝って禁止薬物が入った薬を飲んでしまっただけで、処分も出場停止3カ月と軽微なものだったとのことです。)

****豪州に強まる反発=ドーピング発言、「南シナ海」影響―中国〔五輪****
リオデジャネイロ五輪の競泳で金メダルを獲得したオーストラリアの選手が、2位になった中国のライバルを「薬物違反者」と呼んだ問題で、9日付の中国各紙は反発を強めた。豪州が、南シナ海問題で中国と対立していることも影響し、メディアの豪州非難は激しさを増している。
 
発端は6日に行われた競泳男子400メートル自由形。中国国営新華社通信などによると、豪州のホートン選手は競技前に、中国の孫楊選手の過去のドーピング問題に言及した。

これを問題視した中国の水泳協会は、豪州側に抗議文書を送り謝罪を求めた。しかし、豪州側は「(ホートン選手には)自分の意見を表明する権利がある」として、中国側の要求をはねつけた。
 
最近、南シナ海問題で中国の領有権主張を否定した仲裁裁判所の判決に従うよう豪州が求めたため、中国で豪州のイメージは悪化している。

謝罪拒否の対応に、9日付の中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は「中国人は激怒している」と反発。かつて英国から豪州に囚人が送られていたことなどを挙げ、「恥ずべき歴史」を持つ国だと主張した。(後略)【8月9日 時事】
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ホートン選手の発言・意図は別にして、記事にもあるように、最近のオーストラリアと中国は“対立”が見られますが、一方で、経済的には中国に期待するところが大きいのも事実です。そうした両国の“微妙”な関係について。

中国との経済関係に期待する「親中派」ターンブル政権
オーストラリアでは昨年9月、安倍首相を「最高の友人」と呼んで日豪の蜜月関係を築いたアボット前首相に代って、中国について「豪州と抗日で戦った最も長い同盟者だ」と述べるなど、「親中派」とも言われるターンブル氏が首相となりました。

ターンブル首相の義理の娘の父が中国共産党関係者であるといった関係もあるようですが、そういうことは別にして、オーストラリア経済が中国の鉄鉱石輸入など中国に大きく依存する関係にあり、その中国の需要減退でオーストラリア経済が不振に陥っているという現状を考えれば、「親中派」ターンブル首相ならずとも、中国との関係を重視するのは当然とも言えます。

****ターンブル豪首相が就任 経済政策立て直しが急務****
・・・・豪統計局が今月上旬に発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)は、前期比0・2%増と、1〜3月期の同0・9%から減速が鮮明になった。失業率は6%台で高止まりし、労働組合が基盤の野党・労働党が支持を得やすい状況が続く。
 
豪州経済の減速の主因は、最大の輸出相手国である中国が予想を上回るペースで資源需要を減らしていることだ。主力の鉄鉱石輸出価格は昨年、約50%も下落した。ただ、問題は中国経済にあり、「豪州の首相が何とかできるものではない」(英タイム誌)。
 
一方、豪州国内に流入したチャイナ・マネーは不動産などの物価上昇を招き、住宅が購入できない若者が不満を募らせるなど、さまざまな弊害を招いている。
 
このため、ターンブル氏は、産業構造改革や技術革新などを重視すると強調。高い人気を支えに、アボット氏が廃止した資源や環境関連の税制復活など、国民に負担を求める政策にも踏み込む姿勢を示す。(後略)【2015年9月15日 産経】
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今年4月には、ターンブル首相が過去最大の約千人の企業関係者を随行して中国を訪問し、貿易や投資でトップ・セールスを展開すしています。

一方、オーストラリアを訪れる中国人観光客も急増しています。その経済効果に期待するのは日本もオーストラリアも同じです。

****オーストラリアを訪れる中国人観光客が増加、初めて100万人を突破―中国メディア****
2016年1月12日、オーストラリア統計局が発表したデータによると、2015年11月30日現在、オーストラリアへ出かけた中国人観光客が初めてのべ100万人の大台を突破し、前年同期比21.6%増加した。

オーストラリアのリチャード・コルベック観光・国際教育相は、「中国はオーストラリアで最も価値のある観光客源だ。過去1年間に、オーストラリアに来た中国人観光客の増加ペースは観光客全体の増加ペースの3倍になった。消費額は前年に比べて43%増加し、増加ペースは2014年の2倍だった。

中国人観光客の現在のオーストラリアでの消費額は77億オーストラリアドル(約6400億円)を超え、このうち買い物による消費額が約13億オーストラリアドル(約1100億円)で、海外からの観光客のオーストラリアでの買い物消費全体の37%を占める」と話す。

オーストラリアの観光産業研究機関の予測によると、オーストラリアを訪れる中国人観光客は今後も力強い伸びを維持し、24年から25年にかけて、2倍に増えてのべ200万人に達する見込みだ。その時には中国人観光客による消費額が137億オーストラリアドル(1兆1400億円)に上る。【1月14日 Record China】
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これも日本でも同じですが、ひと頃の「爆買い」はオーストラリアでも影を潜めたようですが、それでも観光大臣が道路上に中国語の標識を設置するよう呼びかけるなど、中国人観光客誘致に取り組んでいます。

また、最近は中国の顧客のためにオーストラリアの食品やダイエットピルを購入するいわゆる「代購(代理購入)」が盛んで、代購業者は4万人にものぼるとか。ブームの「代購」は、育児用粉ミルクなどの消費財が対象となっているようです。【8月15日 ロイターより】

世論調査では「アジアの親友」は中国がトップ
そうした中国との強い関係を反映して、オーストラリアの世論調査では、「アジアで最高の友人」に日本を抑えて中国が選ばれる結果ともなっています。

****アジアの親友は?」に中国トップ 豪の世論調査、若年層ほど親近感 「親中」鮮明に 日本は2位**** 
日本が「準同盟国」と位置付けるオーストラリアの世論調査で「アジアの親友は」との質問に、30%が中国を挙げて首位となり、日本は25%の2位だった。
18〜44歳では中国が36%で日本が21%と、とくに若年層が中国に好感を抱いている実態が浮かんだ。
 
ローウィ国際政策研究所(シドニー)が2月26日〜3月15日、18歳以上の1202人を対象に電話で実施し、21日に発表した。
 
今回「親友」の3位はインドネシア(15%)、4位はシンガポール(12%)、5位はインド(6%)、6位は韓国(4%)だった。
 
もっとも「友好的な感情を抱く国」との調査では、日本の数値は70で10年前調査と比較すると6ポイント上昇。米国(68、同6ポイント上昇)、中国(58、同3ポイント下落)よりも高かった。
 
同研究所のアレックス・オリバー氏は「オーストラリア人はいつも中国よりも日本に友好感情を抱いてきた」と指摘。一方、07年より最大の貿易相手国である中国にオーストラリア人が持つ感情には「厳格な留保が付く」とも指摘する。
 
実際、回答で中国への肯定的評価は「あった人」(85%)、「歴史と文化」(79%)、「経済成長」(75%)の順で高かった。

一方、否定的評価では「人権」(86%)、「地域での軍事行動」(79%)、「制度と政府」(73%)が上位を占めた。「多文化主義」の移民国家として中国に寛容な姿勢を示す一方、政治や軍事拡張に警戒感を抱いている実情が浮かぶ。
 
また、豪州にとり同盟国の米国と中国のどちらが重要かとの問いには、米中がいずれも43%で並んだ。前回14年調査では米国が48%で、中国の37%を上回っていた。米国との同盟が「非常に重要」「まあ重要」との回答は計71%と、前年から9ポイント減少した。
 
ただ、南シナ海で中国の人工島周辺に艦船を航行させる米国の「航行の自由作戦」には74%が賛成を表明(後略)【6月28日 産経】
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“「多文化主義」の移民国家”ということに関しては、オーストラリアが移民国家であることは間違いありませんが、寛容な“多文化主義”が今も維持されているかは議論のあるところです。

それはともかく、オーストラリアの中華系住民は2011年の推計で86万人(豪州生まれ含む)、人口の約4%を占め、現在は100万人を超すとの見方もあり、政治・社会的にも大きな影響力を有しています。【7月1日 産経より】

南シナ海問題など、安全保障面での懸念も
上記意識調査にも反映されているように、オーストラリア国民の中国に対する感情は、経済関係に基づく親近感と、政治や軍事拡張に対する警戒感が併存しています。

政策的にも、その二面性で悩ましい選択を迫られます。最近では南シナ海問題などでの“対立”が前面にでることが多くなっています。

****豪州、安保か経済か苦悩 南シナ海で緊張/中国、景気回復に必要****
オーストラリア空軍が主導する合同軍事演習「ピッチ・ブラック2016」が8月19日まで同国北部で開かれ、米国やシンガポールなど過去最多の10カ国が参加している。

最大の同盟国・米国と密接な関係を保ちつつ、南シナ海問題を視野に入れて空軍強化にも乗り出した豪州は最近、中国との関係がぎくしゃくする場面も。安全保障と経済の間でジレンマに陥っている。(中略)

昨年9月に就任したターンブル首相は、最大の貿易相手国・中国との関係を重視してきた。だが最近は、南シナ海問題で緊張が高まる場面が目立つ。

中国の権利主張を否定した今年7月の仲裁裁判所の判決について、ビショップ外相が「拘束力がある」と発言。中国は発言を強く批判した。
 
豪州国内ではインフラ施設を中国企業がリース・買収しようとする動きへの反発も高まっているが、資源ブームが終わった豪州で、景気回復に中国の存在が欠かせないのも現実だ。
 
モリソン財務相は今月11日、ニューサウスウェールズ州の送電事業の売却に関し、「国益に反する」として、買収に名乗りを上げていた中国と香港の企業の承認を拒否。「安保」を優先させた形だが、中国側がさらに態度を硬化させることも考えられる。【8月16日 朝日】
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中国企業の国内資産買収へ「市民が敏感になっている」】
国民にも中国による国内資産買収への警戒感が強まっており、オーストラリアメディアは「市民が敏感になっている」とも。そうしたことを反映して、オーストラリア政府が中国からの直接投資審査で慎重姿勢を強めているとも言われています。

中国の企業連合が韓国の国土に匹敵する広さの牧場を3億7070万豪ドルで落札しましたが、総選挙を控えたターンブル政権が売却を拒否し、中国企業側は今年5月に買収を一時断念する騒ぎも起きています。【7月20日 産経より】

今月11日には、電力公社オースグリッドの売却入札で、中国企業2社からの応札を「安全保障上の懸念」からオーストラリア政府が拒否する事態ともなっています。

****豪政府、電力公社の中国企業への売却阻止 「安全保障上の懸念*****
オーストラリア政府は11日、最大都市シドニーなどで送電を手掛ける電力公社オースグリッドの中国企業への売却を阻止する予備決定を下した。

オースグリッドの売却入札には、中国の電力配送会社、国家電網と香港の長江基建集団が応札していたが、国益に対するリスクがあると判断した。

モリソン豪財務相は、声明で「審査の期間中に、オースグリッドが企業や政府に提供している重要な電力・通信サービスにおいて国家安全保障上の問題が確認された」と説明した。

国家電網からのコメントは現時点で得られていない。著名実業家、李嘉誠氏が率いる長江基建集団は豪政府の決定について、自社とは関係ないとしている。

オースグリッドの予想売却額は100億豪ドル(77億米ドル)超と同国最大の民営化案件になることが見込まれていた。【8月12日 ロイター】
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当然ながら、中国側はこの決定に反発しています。

****中国商務省が豪政府に懸念示す、電力公社の買収拒否で****
オーストラリアの電力公社オースグリッドの売却入札で、中国企業2社からの応札を豪政府が19日正式拒否した件について、中国商務省は同日、同国企業による豪州への投資に著しい悪影響をもたらす可能性があると述べた。

商務省はウェブサイトで声明を公表。豪政府による決定は2国間の貿易関係に悪影響を与えるとし、豪州が海外からの投資に対し公正で透明性の高い環境を提供するよう望むと表明した。【8月19日 ロイター】
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新たに政治献金問題も
そうした“微妙”な中国・オーストラリア関係にあって、中国からの政治献金問題も浮上しています。

****中国からオーストラリアへの政治献金拡大、「政策に影響も」懸念****
2016年8月24日、オーストラリア公共放送ABC(オーストラリア放送協会)はこのほど、中国から自国政党への政治献金が増えていることを受け「政策に影響するのではないか」と懸念を示した。環球時報(電子版)が伝えた。

中国関連企業が13〜15年、オーストラリア政府の承認を経た上で、与党オーストラリア自由党に550万オーストラリアドル(約4億2000万円)を政治献金したことが分かっている。

ABCは中国人や情報機関関係者40人以上が13〜15年、オーストラリアへ政治献金したと指摘。献金者の氏名、金額、対象、対象者との関係などを詳細に伝えた。

中国人ビジネスマンとオーストラリア政府関係者が一緒に写った写真なども複数掲載した。最も金額が多かったのは中国政府関係者による85万オーストラリアドル(約6500万円)。専門家は「中国政府はオーストラリアに対する政治的影響を拡大しようとしている」と分析した。

さらに、オーストラリア軍や安全保障部門が中国による影響拡大に懸念を示していることも報じている。【8月26日 Record China】
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違法性はないのでしょうが、「市民が敏感になっている」時期だけに注目される問題です。
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シリア  クルド人勢力の拡大、トルコの越境攻撃・・・「IS後」を睨んで動き出す各勢力・関係国

2016-08-25 22:50:54 | 中東情勢

(【4月22日 WSJ】のシリア勢力図 現時点では少し変化しているかも。 北部の緑がクルド人勢力 西部のピンクが政府軍 グレーがIS 黄色が「反体制派」 ハサカは北東部クルド人勢力エリアに、ジャラブルスはIS支配グレーと緑の境目あたりのトルコ国境沿いに位置しています。アレッポは黄色とピンクの境目です。)

シリアをめぐる新たな動き
ここ数日、シリア情勢がめまぐるしく動いています。
ひとつは、8月18日、シリア政府軍が北東部の都市ハサカのクルド人民兵部隊「クルド人民防衛部隊(YPG)」に対する空爆を実施したこと、もうひとつは、トルコ軍が24日、「イスラム国」(IS)が支配する隣国シリア北部の町ジャラブルスに対し、空爆や戦車部隊による軍事作戦を開始したことです。

最近の主戦場でもあり、住民の安否が気遣われている、政府軍と反体制派が争う北部アレッポの状況がどうなったのかわからないぐらい、ハサカやジャラブルスでの動きが際立っています。

もともとシリア情勢は「プレイヤー」が多すぎる複雑な戦いでしたが、ここ数日もアサド政権、クルド人勢力、IS、反体制派などの国内各勢力に加え、各勢力と関係を持つロシア、トルコ、アメリカなども加わって、それぞれがそれぞれの思惑で動く非常に複雑な展開となっています。

どういうことになっているのか、よく理解できな部分が多々ありますが、全体的な印象としては、シリア混乱の中心にいたISの影が非常に薄い・・・ということが感じられます。

もちろん、ISは今回の動きのなかにいるのですが、各勢力・関係国は対ISというよりは、「IS後」の各自の勢力確保のために蠢いているといった印象です。

北東部ハサカの政府軍対クルド人勢力の衝突は、クルド人側の勝利
アサド政権とクルド人勢力の衝突は、クルド人勢力を対IS戦略の頼みとするアメリカを巻き込む形になりました。
(8月20日ブログ“シリア・イラク 「IS後」の焦点となるクルド人勢力の動き”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160820

****シリア軍がクルド人部隊を空爆、有志連合戦闘機が緊急発進*****
米国防総省のジェフ・デービス報道官は19日、シリア北東部の都市ハサカでシリア軍機がクルド人民兵部隊「クルド人民防衛部隊(YPG)」に対する空爆を実施したため、YPGと行動を共にする米国人の軍事顧問を保護する目的で、米軍主導有志連合の戦闘機が緊急発進したと述べた。シリア軍に対するYPGへの攻撃で、シリアで続く内戦は新たな展開を見せたことになる。
 
デービス報道官によると、シリア政府は18日にSU24攻撃機2機を出動させ、米軍特殊部隊の軍事顧問と共に戦闘訓練を行うYPGが駐屯する同国北東部のハサカ付近の地域の空爆を行った。
 
シリア軍機を阻止するため米軍主導の有志連合に属する複数の戦闘機が緊急発進したが、到着した際には既にシリア軍機は現場を離れた後だったという。(中略)
 
しかし、シリアは米国防総省による警告を無視し、19日にはハサカで2日連続となる空爆を行ったという。
 
18日の空爆が開始された直後、地上にいたYPGは無線を使用して空爆を停止するよう連絡を試みたものの、シリア軍機に無視されたという。

米軍はその後、シリアのバッシャール・アサド大統領を支援するため同国内の一部地域で空爆を続行しているロシアに連絡したものの、ロシア軍当局者は、ハサカの空爆を行ったのはシリア軍機であると述べたという。(中略)
 
米政府はYPGを米軍の対イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」作戦における重要な同盟部隊とみなしており、YPGに武器や、軍事顧問として米軍特殊部隊を送っている。【8月20日 AFP】
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シリア政府軍の動きについては、“ハサカを県都とするハサカ県は大部分をYPGが実効支配している。政権側はハサカとカミシリの一部の支配権を維持し、共存してきた。YPGは米軍主導の有志国連合と連携して過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘に集中してきたが、ISの脅威が減退したことを受け、政権側支配地域の制圧に乗り出した可能性がある。”【8月22日 毎日】とも。

個人的には、8月20日ブログでも触れたように、国内反政府勢力PKKの関連組織でもあるクルド人勢力YPGをIS以上に警戒するトルコと、アサド政権を支援するロシアが、これまでの対立関係から急速に関係を改善させていることが関係しているのでは・・・という感じもしていました。

同様に、アサド政権のYPG攻撃の裏にロシア・トルコ関係の変化があることを指摘する向きもあります。

****トルコのクーデータ未遂事件後、「シリア内戦」の潮目が変わった****
シリア北東部のハサカ市で8月16日、シリア政府を支持する民兵組織「国防隊」と西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)の治安警察「アサーイシュ」が交戦状態に入り、同地の緊張が一気に高まった。

アレッポ市をめぐるシリア軍と「反体制派」との攻防戦に欧米諸国や日本の関心が集まるなかで突如発生したこの新たな動きは、「シリア内戦」において何を意味するのか?(中略)

トルコのクーデータ未遂事件後、「シリア内戦」の潮目が変わった
だがここへ来て、「シリア内戦」の潮目が再び変わり始めた。きっかけは、7月のトルコでの軍事クーデタ未遂事件だ。

事件を機に、これまでにも増して強権的な支配を強めるようになったエルドアン政権に対し、欧米諸国からは批判的な反応が相次ぐようになった。その一方で、ロシア(そしてイラン)は、事件直後に同政権への支持を表明し、接近を図った。(中略)

この変化とは、トルコとロシアがそれぞれ推し進めてきた二つの「テロとの戦い」の擦り合わせをもたらそうとしているかのようである。より明確に言うと、(クルド人組織)ロジャヴァと「反体制派」への両国の関係見直しの兆しが現れているのだ。

ハサカ市での武力衝突とは、おそらくはその予兆を察したロジャヴァとシリア政府のリアクションの一環として起こったと解釈できる。

二つの「テロとの戦い」の擦り合わせの兆しは他にもある。ロシアは、ジュネーブでの和平協議へのPYDの参加に固執してきた従来の姿勢を軟化させるかのように、2月にモスクワに開設されていたはずのロジャヴァの代表部は存在しないと発表した。

また、シリア政府は「愛国的反体制派」と呼んでいたPYDを、トルコに倣ってPKKと名指しし、その行為を厳しく指弾するようになった。(後略)【8月25日 青山弘之氏 Newsweek】
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ハサカの戦闘は、クルド人勢力YPGがシリア政府軍を圧倒する形で推移し、23日、ロシアの仲介で停戦合意が成立しています。

****<シリア>クルドにハサカの支配地域割譲・・・・政権、停戦合意****
シリア北東部ハサカで軍事衝突を続けていたアサド政権と少数民族クルド人民兵組織「人民防衛隊」(YPG)は23日、停戦協定を締結した。

クルド系メディアによると、政権はハサカの支配地域を事実上YPGに割譲し、政府軍部隊や政権側民兵はハサカから撤退する。YPGは実効支配の拡大に成功。これまで内戦下でもシリア全土の支配権を主張してきたアサド政権にとっては大きな痛手となる。
 
在英民間組織シリア人権観測所によると、政権とYPGがハサカの支配権を二分していたが、今月16日に軍事衝突が始まった。政権側はクルド人実効支配地域に内戦下で初めて空爆を実施したが、ハサカの大半を実効支配するYPGが優勢で、23日までにハサカのほぼ全域を制圧した。
 
国営メディアによると、双方は23日午後2時に停戦入りした。戦闘員の遺体や捕虜を交換し、交通規制を撤廃することも決まった。ロシアなどによる仲介があったとみられる。
 
国営メディアは政権側の撤退を報じていないが、YPG側は「政府軍や政権側民兵は市外に撤退し、将来的にも市内に駐留しないことで合意した」と説明している。YPGが新たに制圧した地域もクルド側が支配権を握り、政権側は市中心部の一部に警察が残るだけとなる。
 
ただ、停戦協定の全容は公表されておらず、政権が協定について異なる解釈をしている場合、戦闘が再燃する恐れもある。【8月24日 毎日】
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拡大するクルド人勢力を警戒するトルコが越境攻撃
クルド人勢力YPGは今月、ISが支配していた要衝マンビジュもアメリカの空爆支援を受けて制圧しており、その勢力拡大はシリア内戦を特徴づけるひとつになっています。

クルド人勢力がトルコ国境に独自国家を建設するようなことは、トルコにとっては国内反政府勢力PKKを刺激するものとして絶対に受け入れられないことであり、マンビジュを制圧したYPGが更にトルコ国境へ向けて勢力拡大する動きを見せていたことへ、ISが実効支配するシリア北部ジャラブルスへの越境攻撃という形でトルコが反応しました。

直接の相手はISですが、国境に近い要衝ジャラブルスへのクルド人勢力YPGの勢力が拡大することを封じるためと見られています。

****<トルコ>シリア北部に越境攻撃 IS・クルド制圧図る****
トルコ軍は24日、シリア反体制派と連携し、過激派組織「イスラム国」(IS)が実効支配するシリア北部ジャラブルスへの越境攻撃を始めた。戦車部隊も投入しており、シリア内戦への最大規模の介入だとみられる。

一方、少数民族クルド人民兵組織「人民防衛隊」(YPG)は23日、シリア北東部ハサカのほぼ全域を掌握した。トルコの介入には勢力拡大を続けるYPGへのけん制の思惑もあり、国境地帯での支配権争いが活発化している。
 
ロイター通信によると、トルコ軍は24日未明、ジャラブルスへの空爆や砲撃を開始。1500人規模のシリア反体制派とトルコ軍の戦車部隊が一緒に、トルコ側から越境した。
 
エルドアン大統領は24日、アンカラで演説し「我が国を脅かしているISやPYD(YPGの政治組織)のようなテロ集団に対する軍事作戦をシリア北部で始めた」と宣言。IS駆逐だけでなく、南方からジャラブルスに迫っているYPG主体の「シリア民主軍」が国境地帯でさらに勢力を広げるのを阻止するのが目的とみられる。
 
トルコでは昨年以降、ISやクルド人による大規模テロが相次ぎ、国境付近ではISによるとみられる越境砲撃も頻発。

また、YPGはトルコで反政府運動を続ける武装組織「クルド労働者党」(PKK)の関連組織だ。YPGの実効支配地域はPKKへの後方支援拠点になる可能性が高いため、トルコはYPGの勢力拡大に神経をとがらせてきた。
 
だが、トルコによる国境侵犯に対して、敵対するアサド政権やYPGが反発するのは必至だ。YPG側の有力政治指導者サレハ・ムスリム氏は「シリアの泥沼に足を踏み入れたトルコは、ISのように打ち負かされる」と反撃を示唆した。
 
一方、YPGは既に、ユーフラテス川以東のトルコ国境沿いで実効支配を固めている。23日にはシリア北東部ハサカで今月16日から軍事衝突を続けてきたアサド政権と停戦協定を締結。クルド系メディアによると、双方の戦闘部隊はハサカから撤退するが、市内の警察権は中心部の一部を除いてYPG側が握り、実質的なYPGの勝利となった。
 
YPGはシリアを連邦化し、クルド人集住地域で自治国家を樹立することを目指しており、ハサカ制圧によって実効支配の既成事実化がさらに進んだ。政府軍の空爆を受けた際、米軍主導の有志国連合の航空機が緊急出動して政府軍をけん制するなど、対ISで連携する米軍とのパイプも誇示した。【8月24日 毎日】
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この「越境攻撃」はアメリカも了承したうえでのものだったようです。
“米軍主導の有志連合も空爆で作戦を支援した。空からの援護は、米政府がトルコの介入を事前に了承していたことを示す。戦闘は数時間で終わり、トルコ軍は大したダメージも受けずに勝利を宣言した。”【8月25日 Newsweek】

もともとこの地域がISに支配されたのは“2015年8月、トルコは米国との合意のもと、(クルド人組織)ロジャヴァが支配するユーフラテス川以東とアレッポ県北西部のアフリーン市の間に位置する一帯を「安全保障地帯」に設定し、この地域へのロジャヴァの進入が「レッドライン」にあたると主張、米国やロシアの介入を阻止しようとした。しかし、この結果、同地は緩衝地帯と化し、イスラーム国に侵食されてしまった。”【8月25日 青山弘之氏 Newsweek】というトルコの事情によるものでもあります。

“トルコ軍が同国側からシリアのISの拠点に越境砲撃を加えた後、トルコ軍の戦車や装甲車がシリアに侵攻。回廊を確保したところに、トルコから自由シリア軍の戦闘員が入った。”【8月25日 時事】とのことですが、「自由シリア軍」とは言っても、“ジャラーブルス市を攻略した「反体制派」は「シャーム軍団」、「スルターン・ムラード師団」、「ヌールッディーン・ザンキー運動」など、アレッポ市での攻防戦でアル=カーイダ系組織と共闘する組織ではある。”【8月25日 青山弘之氏 Newsweek】とのことです。

ただ、“トルコは「反体制派」によるアレッポ市東部の解囲前後から、アル=カーイダ系組織への支援を控えるようになっているとされ、また移行プロセスにおいてアサド政権の役割を認めるといった政府首脳の発言も顕著になっている。”【同上】とのことで、従来欧米が支援してきた「穏健派」なるものが存在するのか、トルコとイスラム過激派の関係は微妙なものがあります。

アレッポで政府軍と戦っていた組織メンバーがジャラブルスへ入ったということは、ロシアが週48時間停戦を表明していたアレッポの戦闘は小康状態に入ったということでしょうか。

アメリカは「同盟国」トルコの側に立つも・・・・
アメリカにとっては、同盟国トルコと支援組織YPGの対立ということになりますが、やはり「同盟国」を優先ということでしょうか。トルコが対ISで本腰を入れてくれれば、アメリカは助かります。

****緊迫トルコ】シリアへ戦車部隊を追加派遣、国境安定狙う バイデン氏「ギュレン師が他国にいてくれたら・・・」と本音も****
・・・・「ユーフラテスの楯」と名付けられた同作戦は外交面でも効果を上げている。
 
24日にエルドアン氏らと会談したバイデン米副大統領は、米国が対ISで支援するクルド勢力は、ジャラブルスに近いユーフラテス川以東に勢力を後退させるべきだと言明した。
 
バイデン氏からこの発言を引き出したことは、トルコで武装闘争を展開する非合法組織「クルド労働者党」(PKK)に近い「民主連合党」(PYD)などのクルド勢力が、対IS掃討作戦に乗じて伸長することを警戒するトルコにとっては大きな成果だといえる。
 
同作戦でトルコは、ISに打撃を与えるのみならず、支援する反体制派にジャラブルス一帯を支配させることでクルド勢力を封じ込める橋頭堡(きょうとうほ)を得た形だ。
 
他方、トルコ側は、7月のクーデター未遂の黒幕だとする在米イスラム指導者、ギュレン師の本国送還を重ねて米側に要求。米側は、引き渡しにはクーデター計画への関与を示す証拠が必要だと慎重姿勢を崩していないが、IS掃討で大きな役割が期待されるトルコに配慮を示さざるを得ないとのジレンマもある。
 
バイデン氏は24日、トルコ議会関係者との会談で、ギュレン師が「(米国以外の)他国にいてくれたら良かった」と発言。これは、対IS有志連合を主導する立場や、トルコ側の強硬姿勢、自国の法制度の間で苦しむ米国の本音ともいえそうだ。【8月25日 産経】
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クルド人勢力の立場で考えると、対IS作戦で便利に使われたあげく“ユーフラテス川以東に勢力を後退させるべき”と言われても収まらにものがあるのではないでしょうか。アメリカに協力したのもクルド人にとって見返りがあることが前提でしょうから、そうした大国の勝手な「線引き」に従うのかどうか・・・・。一応今回は「シリア民主軍は将来的なラッカ攻略作戦に備えるためにユーフラテス川東岸へ移動した」(有志国連合発表)とのことですが。

アサド政権、ロシアとの関係は・・・
トルコが越境攻撃したことはシリア政府にとっては当然ながら主権侵害ですが、対クルド警戒という点では両者は利害が一致し、今後の関係改善の可能性もあるようです。

****シリア政権への態度軟化も=クルド敵視で利害一致―トルコ****
・・・・IS掃討の一環として行われた今回の作戦の本当の狙いは、トルコ政府が敵視しているシリアのクルド民主連合党(PYD YPGはPYDの軍事部門)とみられる。

シリアのアサド大統領の退陣を最優先してきたトルコ政府が今後、同じくPYDと対峙(たいじ)するアサド政権への態度を軟化させるのではないかとの臆測も出ている。(中略)

PYDを主力とする部隊が今月中旬、IS支配下にあったシリア北部の要衝マンビジュを制圧。PYDは次にジャラブルスを狙っているとの情報をトルコの情報機関がつかんだことから、作戦を決行することになったようだ。(中略)

また、トルコはかねて、ジャラブルスの東側を流れるユーフラテス川を「レッドライン(越えてはならない一線)」と規定し、川を挟んで東側を支配するPYDに越えないよう警告していた。PYDがジャラブルスを掌握すれば、西側にあるPYDの支配地域と結合し、トルコ国境沿いに広大なクルド人自治区が形成される恐れがあったからだ。
 
トルコのユルドゥルム首相は先週、「アサド(大統領)はシリアの舞台の一プレーヤーだ」と発言し、アサド政権による暫定的な統治を認める考えを示した。

同政権はトルコの今回の作戦を強く非難したが、シリア国内でのクルド自治区形成を警戒する点ではトルコと利害が一致。このため、トルコのシリア政策が転換する可能性もあるとみられている。【8月25日 時事】 
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一方、トルコと関係改善が進んでいたロシアはクルド人勢力とも良好な関係にあり、これまでもシリア正常化へ向けた和平プロセスに「クルド人を含める」よう主張してきました。

そうしたこともあって、トルコの越境攻撃に懸念を示しており、今後の関係への影響も指摘されています。

****<ロシア>トルコ越境「懸念」・・・・シリア巡り関係悪化も****
トルコ軍がシリア北部に戦車部隊を投入して過激派組織「イスラム国」(IS)や少数民族クルド人の民兵組織を攻撃したことについて、ロシア外務省は24日、「(シリア)紛争の悪化を深く懸念する」との論評を発表した。

ロシアとトルコは今月9日の首脳会談で関係改善へ向け、大きくかじを切ったが、トルコのシリア内戦介入に伴うクルド人攻撃が再び両国関係に影響を与える可能性がある。(後略)【8月25日 毎日】
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もっとも、実際のところは・・・よくわかりません。
よくわかりませんが、「IS後」を睨んで、各勢力・各国が激しく動き出しているのは間違いないようです。
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フィリピン  前政権から一転、中国への傾斜を強めるドゥテルテ大統領 改革への期待感から高支持率

2016-08-24 22:27:37 | 東南アジア

(麻薬密売人の殺害現場を遠巻きに見守るスラム街の住民達(Getty Images)【8月23日 WEDGE Infinity】

国連脱退・中国と新国際組織結成を示唆
フィリピンのドゥテルテ大統領が主導する警察及び“身元不明の武装集団”による麻薬犯罪容疑者の「超法規的」殺害については、これまでも再三取り上げてきたところです。
(8月5日ブログ“フィリピン 麻薬犯罪撲滅に「射殺」を奨励するドゥテルテ大統領 「法の支配」無視では中国と同じ”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160805など)

フィリピンの警察幹部は上院議会の公聴会で、麻薬犯罪取り締まりの過程で犯罪関与が疑われる665人を殺害し、自警団も889人を殺害したことを明らかにしています。

こうした「超法規的」殺害に対し、当然ながら国連は国際法で犯罪にあたる疑いがあると指摘しており、人権問題に関する国連特別報告者のアグネス・カラマード氏は実態を調査するため、フィリピンを訪問したいとする考えを明らかにしています。

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・・・・国連はこうした取り締まりが国際法で犯罪にあたる疑いがあると指摘しているが、ドゥテルテ政権の主席法務顧問であるサルバドール・パネロ氏は19日、これに反発し、カラマード氏にフィリピンを訪問して調査してもらいたいと挑んだ。
 
カラマード氏は電子メールでAFPに対し、「このところ高まっている超法規的処刑の疑惑に関して、フィリピン当局やその他の当事者および関係者を制約なく調査できるとすれば、(フィリピン)政府の招きを歓迎する」と述べた。
 
しかし、フィリピンのエルネスト・アベリャ大統領報道官は、パネロ氏の発言を訪問と調査の誘いだと捉えたのは、国連の「代弁者」であるカラマード氏の誤解だとの認識を示し「フィリピンは国内問題の調査を誰にも要請しておらず、国連に対しても求めていない」と明言した。【8月21日 AFP】
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ドゥテルテ大統領は国連のこうした批判的対応にご立腹で、国連脱退をほのめかすような発言を行って波紋を広げているのは周知のところです。

****フィリピン大統領が国連脱退に言及、超法規殺人の自制要求に反発****
フィリピンのドゥテルテ大統領は21日、国連が一連の麻薬犯罪絡みの殺人を止めるよう求めたことに反発し、国連を脱退して中国などの国と新たな組織を設立する可能性があると述べた。

麻薬撲滅を公約に掲げ大統領が当選した5月9日以降、麻薬犯罪の取り締まりを目的とした超法規的殺人がエスカレートし、これまでに麻薬取引の疑いをもたれた900人前後が殺害されている。

ドゥテルテ大統領は殺人に対する政府の関与を否定。19日深夜に地元ダバオで記者会見を開き、殺人は警察の手によるものではないとして、国連の専門家に自らを調査するよう促した。

大統領は、国連当局者らに対し、麻薬関係者ばかりでなく、麻薬によって犠牲となっている罪のない命も数えるよう求め「おそらく国連脱退を決断する必要があるだろう。この愚か者たちの話を聞く必要がなぜあるのか」と語った。

発言の結果について問われると「反響が何だ。そんなものは意に介さない」と一蹴した。【8月22日 ロイター】
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大統領選でも「最初の6カ月間で犯罪者10万人を殺害する」と主張しており、「なぜ国連はわが国の問題に安易に干渉してくるのか。(殺害したのは)たった1000人だ」(17日)などとも発言しているドゥテルテ大統領が何を言おうが今更驚きもしませんし、フィリピンが国連を脱退したいなら勝手にすればいいだけですが(外相など側近は国連脱退を否定して「火消し」に努めていますが)、興味深いのは“中国などの国と新たな組織を設立する可能性”云々という部分です。

南シナ海をめぐってフィリピンと中国は国際仲裁裁判所判決など、その対立が先鋭化していましたが、ドゥテルテ大統領はラモス元大統領を特使として香港に派遣し、中国との関係改善に向けた対話の糸口を模索するなど、中国との協調路線をとる意向であることは周知のところです。

しかし、“中国などの国と新たな組織を設立する可能性”云々というほどに、中国へのめり込んでいるとはいささか驚きました。国連などの人権重視の考え方やアメリカ主導の現在の国際秩序に対する強い拒否感があるようです。

中国との関係については、“「中国に宣戦布告する選択肢はない」と明言。「自分はそれほど馬鹿ではない。戦争は今の政策の選択肢にない」と話した。対中関係について「良好な状態を保つことが、直接対話の環境を整えるだろう」”【8月20日 Record China】とも。

“馬鹿”ではないでしょうが、中国の「法の支配」を無視したやり様に対する拒否感もないようです。
8月5日ブログでも指摘したように、中国とドゥテルテ大統領は、その体質において似かよった部分が多いせいでしょう。

ドゥテルテ大統領は、中国との協議を年内に開始する見通しを明らかににています。

****中国との協議、年内開始=仲裁判決棚上げは「不可能」―比大統領****
フィリピンのドゥテルテ大統領は23日、南シナ海問題で対立する中国との2国間協議について、年内に開始されるとの見通しを明らかにした。大統領はこれまでも、中国との協議に積極的な意向を示してきたが、具体的な時期に触れたのは初めて。マニラのマラカニアン宮殿で記者団の質問に答えた。
 
大統領は中国とパイプを持つとみられるラモス元大統領を対話のための特使に指名。ラモス氏は今月、香港を訪れ、中国全国人民代表大会(全人代)外事委員会の傅瑩主任委員らと会談した。
 
大統領は「ラモス氏はいい仕事をしてくれた」と評価。中国との公式協議が近いかどうか問われると「そうだ。年内だ」と答えた。また、ラオスで9月に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議では、フィリピンが勝訴した仲裁裁判所の判決について、自分から取り上げる考えはないことも示した。【8月23日 時事】 
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ドゥテルテ大統領にとっては、仲裁裁判所判決は中国からできるだけ多くの資金を引き出すための格好の取引材料にすぎないようです。非常に現実的とも言えますが・・・・。

【「多くの国民は彼を救世主だと考えている」】
ドゥテルテ大統領の「超法規的処刑」については、国連も問題視していますし、個人的にも間違った対応だと考えていますが、フィリピン国内にあっては、ドゥテルテ大統領は非常に高い支持を得ています。

****<比大統領>止まらぬ暴言・・・・治安改善で実績、人気衰え知らず****
過激な発言で知られるフィリピンのドゥテルテ大統領(71)の暴言が止まらない。21日には、自身が進める強権的な麻薬犯罪対策を国連に批判されたとして、国連脱退の可能性を表明した。

ヤサイ外相は22日、脱退は否定したものの、国連の批判に「大統領は失望し、いらだっている」と非難した。

政権の強硬姿勢は国際社会から強い批判を浴びているが、治安改善の実績を背景にした、国民からの高い支持が衰える気配はない。(中略)
 
ドゥテルテ政権が強硬姿勢を貫くのは、国民の根強い支持があるからだ。世論調査機関SWSによると、6月下旬の調査では84%がドゥテルテ氏を「強く信頼している」と回答し、選挙前の5月上旬時点の54%から大きく増加。

「ほとんどの公約を実行できる」と考える人も63%に上った。別の機関による7月上旬の調査でも91%が「信頼できる」と回答している。
 
ドゥテルテ氏は20年以上ダバオ市長を務め、治安改善を実現した実績がある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、大統領選でも「最初の6カ月間で犯罪者10万人を殺害する」と主張していたという。ドゥテルテ氏当選後の6月は、犯罪件数が前月比13%減の4万6600件に減少したとの統計もある。
 
相次ぐ暴言に加え、外交手腕の危うさを指摘する声もあるが、治安改善という目に見える「実績」が続く限り、支持率が低下する兆しはなさそうだ。【8月22日 毎日】
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ドゥテルテ大統領への高い支持率は、貧困・格差・汚職といったフィリピン社会の抱える課題に関する「何かやってくれるかもしれない」という国民の期待感によってもたらされています。

****フィリピン新政権、“超法規的殺人”でも高支持率の謎****
ドゥテルテ政権発足から7月30日で1カ月が経過した。民間調査機関のパルスアジアがドゥテルテ大統領の信任に関して行った世論調査で、「大統領を信頼している」と答えた国民は91%に上り、歴代大統領で最高を記録した。
 
調査は全国の1200人が対象で、7月2日から8日に行われた。この結果を受けてアンダナー大統領府報道班長は声明を発表し「信任率の高さは、国民の生活をより良く、安全にするため、改善を続ける新政権にとって刺激剤になる」と述べた。
 
しかし、この91%という数字に至った世論調査は、発足直後に行われたためドゥテルテ政権の実績に対する評価というよりは、改革への期待感が影響した可能性がある。貧富の格差や汚職といった従来の問題を解消できなかった歴代政権に対する不満の反動ともいえるだろう。
 
発足直後に信任率が高かったのは今回に限ったことではない。アキノ前政権が10年6月末に発足した直後の世論調査でも、信任率は85%に上った。ところが任期切れ直前は50%前後まで下落した。政権が交代する潮目の時に期待が高まるという傾向があるようだ。

高支持率の裏で行われる“超法規的殺人”
ドゥテルテ政権発足後、最も顕著に取り組んでいるのが、麻薬密売組織の撲滅だ。国家警察によると、政権発足直後の7月1日から8月2日までの1カ月間、違法薬物密売などの疑いで超法規的に殺害された容疑者は約400人に上る。

1日に10人以上が殺害されている計算で、事態を重くみた国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(米ニューヨーク)は、ドゥテルテ政権に抗議するよう国連薬物犯罪事務所(UNODC)などに要請した。
 
このような批判にもかかわらず、8月1日に公表された世論調査でも、1年後の生活が「改善する」と答えた国民は49%に上り、84年の調査開始以来で最高を記録した。同じ質問に関する調査は開始以来、これまでに120回実施されたが、40%を超えたのは全体のおよそ1割に当たる16回だけだった。
 
ドゥテルテ政権が支持されているのは「半年以内に麻薬密売組織を撲滅させる」と選挙前に豪語し、その公約通り有言実行の姿勢を示せたことだ.
これが「何かやってくれるかもしれない」という国民の期待感につながっているとみられる。

フィリピン人のある男性ジャーナリストは「ドゥテルテ氏のやり方には賛同できない部分もあるが、彼の強い政治的意思は評価に値する。犯罪組織にとっては一定の脅威になっているのではないか。実際、多くの国民は彼を救世主だと考えている」と語る。
 
ドゥテルテ大統領は就任後に初めて行った施政方針演説で、違法薬物と汚職の撲滅に取り組む姿勢をあらためて強調した。フィリピン共産党勢力との和平実現を目指す考えも示したが、成長を続けるこの国にとって重要なのはやはり、経済政策だろう。
 
国民が世論調査で「新政権が取り組むべき課題」に挙げたのは、インフレ率の抑制、雇用創出、貧困対策だ。これら生活改善の実感につながる政策が実施できるか否かが、今後の政権運営の鍵を握ることになる。【8月24日 WEDGE】
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国民の期待感はわかりますが、問題を起こす連中は殺してしまえ・・・という姿勢は、今後ドゥテルテ大統領の政治に対する批判者にも向けられる危険があります。やはり、民主的社会にあっては超えてはならない一線を越えていると言うしかないでしょう。

アメリカでトランプ大統領が誕生すれば、似たようなことが起きるのでしょう。
麻薬犯罪者に代えて、不法移民や“テロを起こしそうに見える”イスラム教徒がその標的になるのでしょう。まあ、さすがに“処刑”はないでしょうが。

中国との関係も同様です。アメリカ国内の利害しか関心がなく、中国国内の人権侵害などにも興味がないトランプ大統領ということになると、利害調整の話がつけば、日本を含めた東アジアは中国にまかせる・・・ということにもなるのかも。
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リビア  カダフィ政権崩壊から5年 IS拠点シルトを“ほぼ”制圧 進まない「統一政府」樹立

2016-08-23 22:20:29 | 中東情勢

(リビア中部シルトでISが拠点を置いていたワガドゥグ会議センターを奪還後、カメラに向かってVサインをする暫定政府部隊の隊員。【8月11日 AFP】)

難航したシルト制圧 未だ「70%」】
北アフリカ・リビアではカダフィ政権崩壊から5年が経過しました。

これまでも取り上げてきたように、カダフィ政権崩壊後、西のイスラム主義主導のトリポリ政府と東の世俗主義主導のトブルク政府が対立、国連仲介で一応は大統領評議会がつくられ、「統一政府」への権限移譲が図られていますが、「統一政府」は東のトブルク政府側の承認を得るにはいたっていません。

その大統領評議会は国内での地位を確立させることも狙って、「イスラム国(IS)}がシリア・イラク後の「第3の拠点」とするために支配を強める中部・シルトの攻略を6月頃から進めてきました。

当初は、港湾部や東部地区を制圧という成果をあげていましたが、IS側の激しい抵抗にあって攻めあぐねる状態にもなったようです。

結局、大統領評議会は最初は拒否していたアメリカの空爆支援をあおぐことに。

****<米軍>リビアIS拠点を空爆 政情安定化は不透明****
米軍が1日、リビアでの過激派組織「イスラム国」(IS)の最大拠点、中部・シルトへの空爆を開始したことで、イラクとシリアに続き、ISへの国際的な圧力がさらに高まった。リビアでも米軍主導の有志国連合と地元武装勢力の連携が実現した形だ。

ただ、ISの勢力拡大を許す原因となったリビア国内の政治対立が解消する見通しは立っておらず、米軍介入がリビアの安定化につながるかどうかは不透明だ。(中略)

ただ、リビアへの空爆は米国や大統領評議会にとってもシナリオ通りだったわけではなさそうだ。
 
2011年のカダフィ独裁政権崩壊後、リビアは反カダフィ派の内紛から東西に二つの政府が分立する混乱に陥った。カダフィ政権が保有していた武器が流出し、独裁下で弾圧されてきたイスラム過激派が活動を活発化した。

また中東・アフリカからの難民や不法移民が地中海を経由して欧州へ渡る出発地にもなった。さらにISも14年ごろからリビアの拠点化を進めた。
 
米欧諸国は国連を通じて、リビアの各勢力に和解を呼びかけ、統一政府の樹立を促す戦略をとった。米欧には軍事介入の計画も浮上したが、「統一政府樹立後」の介入が基本方針だった。ISの勢力拡大を許す原因となった政情不安を解消しなければ、過激派の根絶は難しいとの判断があったからだ。
 
しかし、15年12月に東西の主要勢力が国連仲介の和解案に調印した後も、統一政府樹立は進まなかった。和解案に沿って最高意思決定機関の大統領評議会が設置され、トリポリを拠点とするイスラム勢力の多くは協力に転じたが、東部の世俗派は評議会の人選などを巡って反発した。

結局、米軍は統一政府樹立を待たず、目先のIS掃討を優先せざるを得なかった。今後、東部の世俗派が「不当な外国の介入」と反発し、政治和解に悪影響を及ぼす恐れがある。
 
一方、大統領評議会も当初は独力でシルトを奪還する方針だった。東部の世俗派は、第2の都市ベンガジを拠点とする元軍高官、ハフタル氏傘下の民兵組織の軍事力を頼みにしている。

評議会としてはシルト奪還で軍事力を誇示し、世俗派に妥協を促す機会でもあった。
 
しかし、6月にシルト攻撃に着手し、市街地まで進出したものの、推定約1000人のIS戦闘員が国際会議場や大学を拠点に激しい抵抗を続けた。地元メディアによると、一連の作戦で評議会側は354人が死亡、2000人以上が負傷。死傷者の増大で士気が下がる恐れが高まり、米軍に支援をあおいだとみられる。【8月2日 毎日】
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当初のシナリオからはずれてきましたが、米軍の空爆支援もあって、とにもかくにも「一応」、シルトの70%程度は「制圧」するに至ったようです。随分と苦戦したとも言えますが。

****シルトのIS拠点制圧 リビア暫定政府を支援する部隊****
内戦が続くリビアの暫定政府を支援する部隊は10日、中部シルトで過激派組織「イスラム国」(IS)が拠点としていた国際会議場を制圧した。部隊の報道担当者が明らかにした。シルトの当局者はAP通信に、「シルトの70%が解放された」と述べた。
 
イラク・シリアに次ぐ拠点としてリビアに勢力を伸ばしてきたISにとって、本拠としてきたシルトでの後退は大打撃となる。
 
リビアでは国連の仲介で東西に分かれていた政治勢力が昨年12月、統一政府の樹立に合意。西部ミスラタの民兵組織などが暫定状態の統一政府を支援して、5月からシルト奪還作戦を始めた。暫定政府の要請で米軍が8月に入って対IS空爆を開始し、地上の部隊を支援していた。
 
ただ、シルト郊外はISが押さえており、地雷やスナイパーからの狙撃があるため完全解放にはなお時間がかかる見通しだ。【8月11日 朝日】
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シルト制圧でIS勢力がリビアから消えるわけではなく、トリポリからチュニジア国境にいたる海岸線で新たな拠点をつくることを狙っており、ISによる首相暗殺計画なども発覚しているようです。

欧米は大統領評議会の統一政府樹立を支援する流れへ
リビアでは大統領評議会部隊を支援したアメリカのほか、イタリアも特殊部隊を投入しています。

****イタリア特殊部隊、リビアで活動 IS掃討部隊を訓練****
イタリアの主要紙レプブリカなどは10日、伊特殊部隊がリビア国内で活動していると報じた。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を進める部隊を訓練するため、数十人が首都トリポリなどに派遣されているという。
 
ISはローマを標的にすると公言している。欧州へ密航する難民らの中に戦闘員が紛れ込む可能性も指摘されており、伊当局は危機感を強めている。沿岸警備隊は11日、伊国内の港の警戒レベルを引き上げ、利用客や発着する車への検査が強化された。ANSA通信などが報じた。
 
伊政府はリビアへの直接軍事介入には慎重だが、IS掃討への協力は惜しまない考えだ。8月初旬に米軍がリビアで対IS空爆を実施した後、ピノッティ伊国防相は「空軍基地使用の要請があれば前向きに検討する」と述べ、安全保障上重要だとの考えを示した。【8月14日 朝日】
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ただ、フランスは、東のトブルク政府を支えるハフタル氏(カダフィ政権古参の軍幹部)との関係も明らかになっています。国際社会が結束して大統領評議会の統一政府づくりを支援・・・という訳でもなかったようです。

****<リビア>統一政府、元右腕が阻む…カダフィ政権崩壊5年****
リビアで42年間続いたカダフィ独裁政権が内戦の末に崩壊してから23日で5年を迎える。

反カダフィ派の内紛によって国情が揺れる中、かつて故カダフィ氏の右腕として活躍し、その後は一転して「米国の協力者」とも言われたハリファ・ハフタル将軍が復権をもくろみ、国連が主導する統一政府樹立の動きを阻んでいる。
 
「CIA(米中央情報局)のリビアでの協力者が、頭痛の種になってしまった」。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は17日、ハフタル氏がリビアの政情安定の足かせになっている現状をそう報じた。
 
ハフタル氏は1943年生まれ。カダフィ政権古参の軍幹部だったが、87年にチャドへの侵攻に失敗して捕虜になった後、米国に亡命。CIAの本部近くに居住し、カダフィ政権打倒のために協力関係にあったと報じられている。2011年の内戦時に帰国して反カダフィ派に参加、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)とも連携した。
 
内戦後の14年夏に世俗派とイスラム勢力の対立から東西に政府が分立した際も、米国とハフタル氏は直近の選挙で勝利した世俗派中心の東部トブルク政府を支持。ハフタル氏は傘下の民兵組織「リビア国民軍」を率い、トブルク政府の軍司令官に納まった。
 
しかし、内戦状態が長引く中、ハフタル氏は穏健派のイスラム政党にまで「テロリスト」のレッテルを貼り、15年夏には東部デルナで過激派組織「イスラム国」(IS)を追い出すのに貢献したイスラム武装勢力への攻撃を開始。ISの台頭を背景にイスラム武装勢力も含めた「反IS勢力の結集」を目指すようになった米国と思惑がずれ始めた。
 
15年12月に国連の仲介で東西政府の穏健派が和解し、大統領評議会が公式な新統治機構となったが、ハフタル氏は協力を拒んだ。大統領評議会はハフタル派が押さえる東部に支配権を広げられず、双方の支配が及ばない地域はISなどイスラム過激派の温床となったままだ。
 
双方の対立を複雑にしているのが国際社会の動きだ。かつて協力関係にあった米国は今月、中部シルトでIS掃討作戦を進める評議会の部隊を支援するため、空爆を開始。ワシントン・ポストによると、特殊部隊も現地で作戦を支援しており、評議会支持の立場を強めている。

一方で、7月にフランス軍のヘリコプターがベンガジ郊外で墜落する事件があり、仏軍特殊部隊がハフタル派を秘密裏に支援していることが判明。イスラム勢力の拡大を嫌うエジプトなど一部のアラブ諸国もハフタル氏との接触を保っている。
 
リビア人ジャーナリストのムハンマド・アムベアク氏は「ハフタル氏を取り込まなければ、政治的な和解は実現できない。国際社会が一致して大統領評議会を支援する姿勢を明確にした上で、評議会とハフタル氏の双方に譲歩を促すべきだ」と指摘した。【8月19日 毎日】
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もっとも、さすがにフランスも、国連やアメリカの進める流れと対立するのはまずい・・・と考えたようで、特殊部隊をベンガジから撤収し、今後の軍事協力は大統領評議会の統一政府を通じることとする旨を明らかにしているようです。【8月11日 「中東の窓」より】

国内問題で支持を失う統一政府 トブルク議会の承認も得られず
シルトも何とか攻略し、欧米の後押しもあって、大統領評議会の統一政府づくりが加速するか・・・というと、どうもそういう話でもないようです。

国内の電力・経済事情悪化によって、はやくも国民の統一政府に対する支持は低下しているとか。

****リビア統一政府の支持の低下(国連特別代表の発言****
リビアでは、米軍機がシルト攻略の政府軍を空中支援していますが、ISを追い詰めたとされている政府軍は、なかなか決定的勝利を得るに至っていません。

この新統一政府については、西側諸国が足並みをそろえて支持する等、国際的な立場は強くなっていますが、どうやら国内的には必ずしも順調ではなさそうです。

この点に関し、国連のリビア特別代表が、12日スイス紙とのインタビューで現実的な(かなり悲観的な)見方を示しているところ、記事の要点次の通り。

国連特別代表は、12日スイス紙とのインタビューで、新統一政府は、停電が増えたり、リビア通貨の価値低下等のために、支持が下がっているとの危惧の念を表明した。

特別代表はリビア問題の解決のためには、新統一政府に対する支持以外にないとしつつ、同政府は当初の国民的信頼をかなり失っていると認めた。

特別代表がかって、国民の95%は新統一政府を支持していると語ったが、との質問に対して、それは4月の時点で、当時は国民の間に多くの期待感があったが、その後信頼がかなり下がったと語った。

彼はその背景として、当時トリポリでは一日20時間電気が供給されていたが、現在では12時間となり、当時1ドル3・5ディナールであったリビア通貨は、現在対ドル5ディナールとなり、ほとんどの物資を輸入に頼るリビアの経済を圧迫しているとした由。

またシルトの戦いについて米軍の空爆だけで、ISを倒すことはできずリビア軍による地上での攻撃が必要であるとして、リビアの各派が政府軍を支持することを呼び掛けた。

(これまでも、政府軍がIS戦闘員をシルトの一角に追い詰め完全制圧は時間の問題と伝えられてから、かなり時間が経っており、これに米軍の空爆も加わったことを考えると国、特別代表の目から見ても、政府軍の戦闘能力には問題があるのではないでしょうか?この発言は、かなりのところ、何故ここに来ても政府軍が最後の勝利を得ていないかを説明しているような気がします)【8月12日 野口雅昭氏「中東の窓」】
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「統一政府」も、承認される前から支持が低下するようでは先が思いやられますが、今後のリビアを再建するには「統一政府」樹立しかないでしょう。
ただ、肝心の東のトブルク政府側の承認が未だ得られていません。

****<リビア>東部トブルクの議会は統一政府案を否決****
内戦状態が続くリビアで、東部トブルクが拠点の暫定議会は22日、西部の首都トリポリを拠点とする大統領評議会が提示した統一政府樹立案への賛否を問う投票を実施し、反対多数で否決した。

国連が後押しする統一政府樹立は遠のき、国内で東西に二つの統治機構が分立する状況が当面続くことになった。
 
リビアからの報道によると、統一政府樹立案は賛成1、反対61、棄権39で否決された。暫定議会の定数は200で、賛成派の多くの議員がトブルク入りを制限される中で投票が実施されたことから、賛成派は「議会を乗っ取られた」と抗議しているという。
 
リビアは2011年の内戦でカダフィ政権が崩壊した後、反カダフィ派の内紛が続き、14年夏以降は東西に政府が分立する状態となった。国連の仲介で15年12月に東西の穏健派で作る大統領評議会が設置され、統一政府樹立を目指すことが決まっていた。【8月23日 毎日】
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トブルク政府側というか、ハフタル派は、ハフタル氏の統一政府における国防大臣以上の処遇を求めているとも。

今回採決は、“賛成1、反対61、棄権39”ということで、参加議員は合計101名。
定足数がどうなっているのか知りませんが、もし定数(200)の半数ということであれば、なにやら作為的な数字にも思えます。
これまでトブルク議会は必要議員が集まらない形で、「統一政府」承認問題を先送りにしてきたようです。

少なくとも、トブルク議会にもハフタル派と一線を画する勢力が相当数存在するようで、今後もあくまでも統一政府に反対していくのか、あるいはハフタル氏の処遇で妥協が図られるのか・・・不透明です。

対IS作戦にしても、「統一政府」にしても、簡単には進まないリビアですが、その間にも混乱のリビアから欧州を目指す難民・移民が増え続けます。
コメント

チュニジア  「対話」で国内対立・テロの克服を目指す

2016-08-22 21:59:20 | 北アフリカ

(写真は【松岡正剛氏 http://1000ya.isis.ne.jp/1488.html】より 一人の青年の焼身自殺が、経済苦にあえぐ多くの人々を動かして始まったチュニジアの政変、そして「アラブの春」 しかし、チュニジアは未だその経済問題を克服していません。)

経済不振・高失業率で首相辞任
中東民主化が期待されていた「アラブの春」は、シリア・リビア・イエメンの内戦、エジプトの軍事政権など、期待を裏切る結果に終わっていますが、そうしたなかで「アラブの春」の引き金ともなった北アフリカ・チュニジア(古代、地中海世界の覇権をローマと争ったカルタゴの地)が唯一、民主化をある程度実現したとされています。

もっとも、チュニジアもイスラム過激派によるテロ事件、国内の多くの若者のISなどへの参加、テロよる観光業への打撃からの経済不振、政治的な争い・・・など、決して安定している訳でもなく、アラブの春の「成功例」と呼ぶにはいささかためらわれるところもあります。

意地の悪い見方をすれば、国内の不満分子をISなど国外に出すことで、かろうじて国内の安定を維持しているともとれます。

そのチュニジアでは先月末、世俗政党にイスラム系政党も加わる連立政権を率いてきたシド首相が、主に経済不振を理由に、辞任に追い込まれています。

****チュニジア首相に不信任決議 経済低迷で内閣に批判****
チュニジア議会は30日、シド首相の不信任決議案を賛成多数で可決した。憲法の規定によりカイドセブシ大統領が連立与党と協議のうえ1カ月以内に新首相候補を指名した後、新内閣が発足する。経済危機や高失業率が解消されず、内閣への批判が高まっていた。
 
定数217議席のうち不信任案に118人が賛成、3人が反対し、残りは欠席あるいは棄権した。
 
チュニジアはベンアリ政権崩壊後に政治対立が続いたが、2014年の議会選、大統領選を経て15年1月にシド氏が首相に指名された。

第1党「チュニジアの声」など世俗政党にイスラム系のナハダ党が加わる連立政権が誕生したが、イスラム過激派による博物館襲撃事件やリゾート地での銃乱射事件が起こり、主要産業の観光が大打撃を受けるなど、経済は回復できていない。
 
今年1月には失業対策を求める抗議デモの一部が暴徒化し、全土に夜間外出禁止令が出るなどしていた。
カイドセブシ氏は6月にテレビ演説で改革が進まない内閣を批判し、新統一内閣が必要だと述べていた。
 
昨年末から「チュニジアの声」の内部対立が表面化しており、再び国内で政治的混乱が起こる可能性も指摘されている。【7月31日 朝日】
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「アラブの春」後の民主化プロセスの危機を対話を促すことで乗り越えることに貢献し、昨年のノーベル平和賞を受賞した「チュニジア国民対話カルテット」のメンバーが先月来日していますが、彼らも経済問題の重要性を指摘しています。

****雇用が最優先の課題」 チュニジア国民対話カルテット****
(カルテットのひとつ、産業商業手工業連合会の会長の)ブーシャマウイ氏は「我々はいま、民主主義を守る新しい闘いをしている」と指摘。

「2010年のチュニジアでのアラブの春の時、国民は人としての尊厳、民主主義、そして雇用の三つを求めていたが、雇用だけはまだ解決していない」と述べた。チュニジアの失業率は約15%で、アラブの春前の13%よりなお高い。「テロを防ぎ、社会を安定させるためにも、経済発展や投資が必要だ」と語った。【7月20日 朝日】
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チュニジアに限らず、経済不振・高失業率は若者らの社会に対する不満を高め、彼らをテロリストの側に追いやることになります。

若手・女性の起用で課題に挑む新首相40歳
辞任したシド首相の後任は、比較的順調に決まったようです。
このあたりが、他の「アラブの春」失敗国とは異なるところでもあるでしょう。

もちろん、新内閣がうまく事態を処理していけるかは別問題ですが。

****<チュニジア>新内閣発足へ シャヘド首相候補、課題山積****
チュニジアの首相候補に任命されたユスフ・シャヘド氏(40)は20日、閣僚候補の名簿をカイドセブシ大統領に提出した。議会の信任を経て、シャヘド新内閣が近く発足する。

チュニジアでは治安や経済の混乱が続き、過激派組織「イスラム国」(IS)が浸透する懸念も強まっている。シャヘド氏は20日の記者会見でテロ対策や中小企業支援に重点的に取り組む考えを示した。
 
チュニジアの安定化は、地中海地域でのIS対策という意味でも重要な側面を持つ。隣国リビアで過去2年間にISが台頭。チュニジアでも昨年、日本人3人を含む22人が殺害された国立博物館襲撃事件など大規模なテロが相次いだ。今年3月には国境を越えてチュニジアを攻撃する事件も起きた。
 
ISにはチュニジア人戦闘員が多く、イタリア南岸に近いチュニジアへの浸透を狙っていることから、欧州諸国もチュニジア情勢を注視し、治安対策などを支援している。
 
シャヘド氏は、シド前首相が経済や治安の混乱の責任を問われて議会から不信任されたのを受け、今月3日に次期首相候補に任命された。AFP通信などによると、正式に就任すれば1956年の独立後、最年少の首相となる。
 
シャヘド氏は「私の起用は若い世代への信頼の証しでもある」と述べており、20日発表した40人の大臣と次官の候補には35歳以下が5人、女性が8人含まれている。
 
また、これまで政府と距離を置いてきた最大労組のチュニジア労働総同盟の元幹部2人を閣僚に登用。財政立て直しのためには増税や補助金削減が必要になる見込みで、労働者層との摩擦を避けるための人選だとみられる。
 
シャヘド氏は農業問題の専門家で、与党ニダチュニス(チュニジアの呼びかけ)幹部としてシド前内閣では地方問題相を務めた。
 
ただ、シャヘド氏は、カイドセブシ大統領の遠い親戚にあたり、2011年の民主化要求運動「アラブの春」で倒れたベンアリ独裁政権時代の「縁故主義の復活」と批判する声もある。チュニジアでは11年の革命後、大統領が外交や国防、内閣が主な行政の権限を握るなど権力分散が図られたが、再び権力集中が進むとの懸念が出ている。
 
チュニジアは「アラブの春」の先駆けとなり、14年には民主的な選挙による政権交代が実現するなど、混迷するアラブ世界では比較的順調に民主化が進んでいる。しかしテロの影響で主要産業の観光が低迷し、経済の立て直しに苦慮している。【8月21日 毎日】
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40歳の新首相を始めとする若手閣僚の起用、女性の登用なども、やはり他のイスラム国とは違う「民主化の継続」を窺わせます。

女性の社会参加では、後出記事のように、日本よりむしろ進んでいるとの指摘もあります。

チュニジア成功のカギは「対話」】
経済対策やテロの問題では課題も多いチュニジアですが、イスラム主義と世俗派の対立の危機を乗り越え、とにもかくにも唯一の「成功例」として民主化を維持できている背景として、「国民対話カルテット」のメンバーは「対話」をあげています。

****混迷を極めるアラブ世界のなかで、なぜチュニジアは民主化に成功したのか? ノーベル平和賞組織が明かす非暴力の「対話」の力****

2015年のノーベル平和賞の本命は、難民問題に取り組んでいたメルケル独首相と目されていた。
だが、蓋を開けてみると、国際的には無名の団体「チュニジア国民対話カルテット」(QDN)が受賞。ノーベル賞委員会は、「対話」という手法によってチュニジアに民主化をもたらしたQDNの功績を高く評価した。

では、他のアラブ諸国がいまだにテロや政情不安から抜け出せないなか、なぜチュニジアだけが民主化を達成できたのだろうか?
来日したQDNのメンバーに取材し、対話を武器に平和を確立しつつある、その手法について聞いた。

アラブ世界を席巻した民主化運動「アラブの春」は、チュニジアから始まった。(中略)

チュニジアは民主化の道を順調に歩みはじめたかに見えたが、アンナハダ党が出した新憲法の草案がイスラム色の強いものだったため、比較的自由な伝統を守ってきた世俗派勢力と対立。

2013年には、世俗派の指導者シェクリ・ベラドとモハメド・ブラヒミが暗殺される事件が発生し、両者の溝は決定的となった。

対立が過熱して政府への信頼が失われると、民主化への道が再び閉ざされるのではという危惧が国内で広がった。そこで登場したのが、労働総同盟事務総長フサイン・アッバースィー氏。「対話」によって、イスラム主義と世俗派を融和させようと試みたのだ。

彼は、商工業・手工業経営者連合、人権擁護連盟、全国法律家協会といった国内の有力な市民団体に声をかけて「国民対話カルテット」(QDN)を結成。与野党の政治家を集めて、民主化を進めるための対話を開始した。

QDNは対話を進める過程で、新憲法制定までのロードマップを作成。みごとにそれを実行に移し、再度の憲法草案の提出から総選挙へと続く民主化のプロセスを成功させた。
このときに制定されたチュニジアの憲法は、アラブ諸国のなかでも「特に民主的」と高い評価を受けている。(中略)

「対話の成功」は必然だった
──「対話」は「平和学の父」と呼ばれるノルウェーのヨハン・ガルトゥング博士が、紛争を解決するための手段として提唱しています。そういう意味ではとてもベーシックな手法ですが、シリア内戦の和平会談が難航しているように、実際に機能させるのは簡単なことではないと思います。
なぜ、チュニジアでは対話による民主化が成功したのでしょうか?

アブデッサッタール・ベンムーサー人権擁護連盟会長(以下ベンムーサー氏) 
(中略)チュニジアでこの対話が成功したのは、決して偶然ではありません。

成功の要因として、まずチュニジアは古くからさまざまな文明が交差した場所であり、カルタゴの時代に遡れば世界で初めて憲法が制定された場所であることが挙げられます。

また、1846年には米国よりも先に奴隷制度を廃止し、1861年にはすでに民主的な憲法を制定していました。民主主義ははるか昔から、チュニジアの大地に根付いていたのです。

2つ目の要因は、チュニジア人は他者に対して非常に寛容で、民族や宗教によって分断されていなかったことでしょう。

伝統的に教育の質が高かったことが、こうした気質を作り出しました。
特に1959年から1987年まで任期を務めた故ハビーブ・ブルギーバ大統領は教育レベルの向上に力を注ぎ、国民が学校で世界各国の文化や哲学、政治思想について学べるカリキュラムを作り上げたのです。

女性が革命と民主化を牽引
3つ目は女性の活躍です。

今回、私は初めて日本を訪れて非常に近代的な国家だという印象を持ちましたが、女性の地位という観点からいえば、チュニジアのほうがずっと進歩的だと感じました。

1956年にフランスから独立して以来、チュニジアでは女性は教育の場でも職場でも、完全に平等な地位を獲得しています。これはアラブ世界やイスラム圏では非常に稀なことです。

ですから、「ジャスミン革命」が起きたときも、その後の民主化への移行プロセスにおいても、女性はNGOやNPOを組織するなどして、非常に重要な役割を担いました。

つまり、チュニジアではアラブの春が起きる前から市民社会が非常に発達していて、民主主義や自由のための運動に対する経験と理解があったのです。(中略)

──2015年3月には、チュニジアのバルド国立博物館で銃乱射事件が起き、21人が犠牲になりました。また、2016年7月にフランスのニースで起きたトラックテロ事件の犯人は、チュニジアの出身で、チュニジアは「テロリストの温床だ」という国際的な見方もあります。対話は暴力に立ち向かう手段としても、有効だと思われますか?

ベンムーサー氏 QDNはイスラム原理主義対策にも取り組みました。

まず、我々は宗教的なプロパガンダを、モスクや教育の現場でいっさいおこなわないと各政党に約束させ、憲法にも明記させました。

また国の総力を挙げてテロを予防するため、全国的なテロ対策会議の開催を呼びかけています。

学校ではテロリストの言うことを鵜呑みにしないよう、批判精神を持つ教育を大切にし、スポーツ、演劇、映画などの文化的な活動を活性化させ、若者たちがテロリズムの思想に傾倒するのを防止しています。

「対話」はテロとの戦いに有効か?
アッバースィー氏(労働総同盟事務総長) 「暴力」と「テロ」はチュニジアと決して相容れないものです。
対話の成功後、大統領と議会が民主的に選出され、チュニジアではいよいよ新たな共和国制が始まったのです。いまでは表現の自由、結社の自由、報道の自由が保障された近代国家になりました。

もちろん、暴力によってこの安定を破壊しようとする輩がいないわけではありませんが、チュニジア国民は生理的に暴力やテロを嫌悪しています。

2016年3月にもリビア国境付近のベンガルテンでテロが起きましたが、警察や軍隊に先だって市民が立ち上がり、これを阻止しようとしました。

「チュニジアにはテロ組織のキャンプがある」という評判が立っていますが、元をただせばテロリストたちは他国で生まれ、我が国に流入してきたのです。

ですから、まずはテロリストに訓練を施したり、資金を提供してきた国の責任を追及する必要があると思います。

また、テロはもはや一国の問題ではなく、国際社会の問題です。国際社会が共通の戦略を持ち、テロを撲滅するという姿勢が必要であり、日本にもその責任を果たす義務があります。

私は、チュニジアが再び民主主義を失うことはないと固く信じています。
すでに国民全員に、この民主化を成功させた当事者であるという意識と責任感が芽生えていますから。【8月22日 CORRiER Japon】
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「アラブの春」がチュニジアから始まったのも、当時からチュニジア社会がある程度民主化された社会であったことがあげられています。

他のアラブ諸国なら独裁者によって簡単に押しつぶされてしまったであろう反体制運動が、チュニジアでは潰されることなく広がったのも、そうした事情あってのことです。

カルタゴで世界で初めて憲法が制定された・・・というのは初耳ですが、軍隊を持たない貿易国として経済力でローマを脅かし(必要があれば軍隊は傭兵で対応したようです)、ローマと3回の死闘を繰り広げ、滅んでいったカルタゴの歴史は、英雄ハンニバルの活躍も含め、多くの世界史上の出来事のなかでも印象的なものの一つです。(子供の頃見た、象を引き連れたハンニバルのアルプス越えの挿絵は強烈なインパクトがありました)
日本の在り様をカルタゴの運命になぞらえる見方もあります。

是非とも一度訪れて、チュニジア観光業復活の一助ともなりたいものだと考えていますが、そのためにもぜひともチュニジアが「対話」の精神を堅持して、世俗主義とイスラム主義の対立を克服し、安定した社会を維持していけることを願っています。
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