孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  「世界史上最大の規模」の総選挙で与党「圧勝」 残された課題も

2019-05-23 22:45:17 | 南アジア(インド)

(インド・ベンガルール(バンガロール)で23日、モディ首相のマスクをかぶり、総選挙での与党インド人民党の勝利を喜ぶ支持者ら【523日 朝日】)

 

【予想以上の与党「圧勝」】

「世界最大の民主主義国」インドの「世界史上最大の規模」の総選挙は、4月11日から約6週間かけて地域ごとに7回に分けて行われました、日本の約9倍の国土に投票所が約100万カ所設置されたとか。

 

候補者は8000人、有権者は9億人。選挙に要する総費用は70億ドル(7700億円)とも。

正規の選挙運営費用以外に以下のようなものも。

 

もちろん違法ですが、多くの候補者は票獲得のため現金や景品を配布するとか。景品の中にはニワトリも。

押収された現金・景品は540億円相当。

 

そのほか、対立政党の有力候補を妨害するために同じ名前の候補者を擁立するのに要する費用、防弾仕様の特注車、対立政党の選挙活動を妨害するためにチャーター機やヘリを早い段階で事前に押さえてしまうための費用・・・・。【522日 BBCより】

 

とにもかくにも選挙が終了し、その開票が23日に全国一斉に行われましたが、こちらは電子式のため即日で結果がでます。

 

そしてその結果は、報じられているようにモディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)が予想以上の「圧勝」を果たしたようです。

 

****与党圧勝、モディ首相続投へ=「共に繁栄を」と宣言―インド総選挙****

5年の任期満了に伴うインド下院(定数545)選は23日、開票され、地元メディアによると、与党・インド人民党(BJP)が単独で過半数議席を確保し、圧勝した。総選挙での勝利で、ナレンドラ・モディ首相(68)の続投が確実となった。

 

モディ氏はツイッターに「われわれは共に成長し、繁栄し、強いインドを築く。インドは再び勝利する」と投稿し、勝利を宣言した。

 

BJPは、2014年の前回総選挙で、西部グジャラート州を州首相として経済発展させたモディ氏の人気を背景に単独過半数の282議席を獲得し大勝した。

 

BJPは当初、今回は議席を減らすものの与党連合として過半数を確保すると報じられていたが、インドメディアによれば、単独でも前回を上回る議席を獲得する見通しとなった。

 

インドはモディ氏の就任以降、毎年約7%の経済成長を遂げてきた。モディ氏は16年、汚職や不正蓄財撲滅を目指し、高額紙幣の廃止を発表。17年には、物流の円滑化を目指し、州ごとに異なっていた間接税を統一するなど都市部の商工業者を中心に支持を集めた。

 

経済成長から取り残された地方部などで一時、支持を減らしたが、今年2月に48年ぶりに隣国の宿敵パキスタンを空爆し、強い指導者像を見せることで巻き返した。

 

与党連合優勢の報道を受け、23日の主要株価指数SENSEXは過去最高値を更新。出口調査結果が報道される前の今月17日の終値と比べ、約6%上昇した。

 

最大野党・国民会議派は、3人の首相を輩出した名門出身のラフル・ガンジー総裁(48)を中心に、農産物価格の低迷に悩まされている地方部で支持固めを図った。

 

ただ、国政レベルでの選挙準備が遅れ、「早い時期から信頼できる政策目標を掲げ、分かりやすく説明すべきだった」(政治評論家)と指摘された。ラフル氏がモディ氏に代わる首相候補として存在感を示すこともできなかった。【523日 時事】 

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【昨年来の退潮傾向を「ヒンズー至上主義」全開で立て直し】

20181214日ブログ“インド  総選挙前哨戦の州議会選挙で与党敗北 宗教を前面に押し出して態勢立て直し

2019210日ブログ“インド  国内外に批判も、モディ首相の北東部訪問  ばらまき予算に統計不正、露骨な総選挙対策

でも取り上げたように、「毎年約7%の経済成長」とはいいつつも、日用品価格の上昇する一方で農産物価格は下落し、農民の生活が困窮するなど、必ずしも順調ではなく、前哨戦の州選挙では5州で全敗、退潮が明らかになっていました。

 

失業者数も高いレベルにあります。

 

****インド、201618年に500万人以上が失業=調査****

インドのベンガルールにある私立アジム・プレムジ大学が16日発表したリポートで、2016─18年に職を失ったインド人は少なくとも500万人に達し、都市部に住む若い男性が最も打撃を受けていることが分かった。

インドでは、5月19日に総選挙が終了する予定で、モディ政権は雇用を含む経済業績の擁護に躍起となっている。

リポート「2019年、インドにおける労働の現状」の筆頭執筆者は「2016年以降、高等教育を受けた人の失業が増加しているが、それに加えて、相対的に教育水準が低く(非正規の可能性が高い)人の失業も増加し就業機会が狭まっている」と述べた。

ただリポートは、この期間に創出された雇用は明らかにしていない。

2016年11月にモディ首相が脱税抑制と電子取引促進のため高額紙幣を突然廃止したことで中小企業が打撃を受け、レイオフの波が発生した。さらに、17年に「物品サービス税(GST)」が導入されると、一部企業にとって困難が増幅する結果となった。

リポートによると、失業者の大半は高等教育を受けた20─24歳の若年層。リポートは「たとえば都市部の男性の場合、この年齢層は労働年齢人口の13.5%だが、失業者全体に占める比率は60%に上る」としている。

公式統計で過去5年間の経済成長率が7%前後となっているにもかかわらず、モディ首相は数百万人の若年失業者の雇用に十分な措置を講じていないと批判されている。

ビジネス・スタンダード紙は2月、政府が公表を拒んだ公式調査として、2017/18年度の失業率は少なくとも過去45年間で最高水準に達したと伝えた。

シンクタンクのインド経済モニタリングセンター(CMIE)がまとめたデータによると、今年2月の失業率は7.2%と、2016年9月以来最高に上昇。前年同月の5.9%からも上昇した。【418日 ロイター】

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そのため、モディ首相・与党は総選挙に向けた態勢立て直しに躍起となり、そこで用いられた手法が、それまでも顕著だった「ヒンズー至上主義」を更に加速させることで多数派ヒンズー教徒有権者にアピールする手法でした。

 

****インド与党の「ヒンズー至上主義」拡大 「差別」「暗殺」不寛容な社会に****

4月11日に投票が始まったインド総選挙(下院議席545)は今月23日の一斉開票まで続く。インドは人口13億人を超える「世界最大の民主国家」。

 

だが、2014年の前回総選挙で誕生したヒンズー至上主義のモディ政権下では、多様な価値観への不寛容さが広がった側面も大きく、社会の分断が深まっている。

 

17年9月5日午後8時過ぎ。インド南部の大都市ベンガルールの閑静な住宅街に4発の銃声が響いた。自宅ドア前で銃弾に倒れたのは、著名なジャーナリストでヒンズー至上主義やモディ政権を批判してきたガウリ・ランケシュさん(当時55歳)。

 

事件では至上主義者16人が逮捕され、容疑者の関係先からはガウリさんを含め至上主義に批判的な計34人の著名な俳優らが掲載された複数の「暗殺リスト」も見つかった。この一件は至上主義者の活発化を象徴する出来事の一つとされている。

 

「ヒンズー至上主義者はいつの時代も活動してきたが、決して社会の『主流』ではなかった。だが今は大手を振って活動している」。ガウリさんの妹で映画監督のカビタさん(54)はモディ政権発足以降の社会の風潮をこう説明する。

 

ガウリさんは殺害前からインターネットなどで「非愛国者」だとして中傷されてきた。カビタさんは言う。「宗教、言語、文化といった多様性や寛容さがインドの本質だが、異なる意見を許さない風潮が広がっている。姉は不寛容さが進む社会に殺された」

 

17年には南部ケララ州で中央政府が、ヒンズー至上主義に批判的な映画の上映を中止させる事態も起きた。ある大手紙記者は「政府やヒンズー至上主義の批判はもちろんできる。だがどこで襲われるか分からない怖さがあり、自主規制する傾向にある」と話す。

 

モディ氏のインド人民党が支配する一部の州では歴史教科書の書き換えも進む。世俗主義を重視した初代首相ネールの記述が削除され、ヒンズー至上主義者の記述が加わるなどした。また一部の大学では教員が政府からの圧力や嫌がらせを懸念し、自由に研究テーマを選べない状況も出ている。

 

モディ政権は経済成長を進めるための改革路線と同時に、イスラム教徒以外の移民にだけ国籍を付与する法案の成立を目指すなど「差別的」な政策も進める。

 

ガウリさんの友人のコラムニスト、シバ・スンダル氏は「モディ政権は改革が難航すると、ヒンズー教徒の宗教感情に訴えて求心力の維持を図ってきた」と指摘。「政府が差別的な政策を進めれば、至上主義者が勢いづくのは当然だ」と批判した。

 

 ◇政権支える実働部隊「民族奉仕団」

与党インド人民党(BJP)の支持基盤を広げる実動部隊となっているのがヒンズー至上主義団体・民族奉仕団(RSS)だ。RSSがBJPを生み、政権を握ったBJPがRSSの勢力拡大を支える関係にある。

 

「母なるインドに勝利を!」。3月下旬の日曜朝7時。中間層が多く住むニューデリー郊外の公園に男性たちの大きな声が響き渡った。5歳〜60歳代の約30人が、ヨガやカバディ(インド伝統スポーツ)に取り組む。これは「シャーカー(支部の意味)」と呼ばれ、RSSが毎日2回行う訓練だ。

 

肉体訓練の後は神話や歴史についての講話や、政治や社会問題を議論し、「ヒンズー文化や国家への忠誠心を学び国民にふさわしい人物を作る」(RSS幹部のアルン・クマール氏)。シャーカーの数はモディ政権発足時の約4万から今年には6万近くまで増えた。

 

「仕事に忙殺され生きる意味を見失っていたが、RSSはそれを教えてくれた」。IT技術者のジャンク・ラジナジャニアさん(34)は15年にRSSに入った。

 

コラムニストのシバ・スンダル氏は「インド人の精神はいまだに宗教的。西洋化が進む中、中間層の若者が抱える疑問や不満、不安感をRSSがすくい上げている」と見る。

 

RSSは1925年に発足。インドを支配したイスラム王朝や英国を「よそ者」とし、古来のヒンズー文化を基盤とする強固な国家の形成を目指す。51年には政治部門としてBJPの前身政党を設立。産業界などさまざまな分野に事実上の傘下団体を持つ。モディ氏らBJP中枢はRSS出身だ。

 

こうしたヒンズー至上主義の拡大の中で進むのが、モディ政権の支持不支持を巡るインド社会の二極化だ。

 

著名な政治学者のカマル・ミトラ・チェノイ氏は「前回総選挙でモディ氏を支持した人の多くは経済成長や汚職対策を期待した。至上主義者がここまで勢いづくとは思っておらず、警戒感も広がっている」と説明。「建国の父ガンジーが目指した社会の統合はより遠のいている」とも強調した。【517日 毎日】

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今回選挙結果を見る限り、モディ首相のヒンズー至上主義重視は奏功したようです。

ただ、それがインドの将来にとっていいことかどうかは大いに疑問ですが。

 

【政治からも排除されがちな最下層ダリットやイスラム教徒】

冒頭【時事】にもあるように、宿敵パキスタンに強い姿勢で臨む姿を国民にアピールできたことも勝利に大きく影響したと思われます。

 

3月末にパキスタンを旅行したましたが、インド・パキスタンの間の衝突ついてパキスタンの方と話をすると「まあ、モディ首相は総選挙前だからね・・・」と早期の改善は見込めないとの認識を示していました。

 

冒頭に「世界史上最大の規模」の総選挙と書きましたが、そこから排除されている人々が存在することは、インド社会の根深い問題です。

 

****根強いカースト、総選挙に影 有権者9億人、インド23日開票****

(中略)

 発言力増す最下層、優先制度の功罪

「モディ首相は上位カーストや金持ちのためにしか働かない。ダリトのためには何もしなかった」。インド北部ウッタルプラデシュ(UP)州ジャウンプル。カースト社会で最下層のダリトでつくる大衆社会党(BSP)のマヤワティ党首(63)がだみ声で訴えると、40度を超える炎天下で支持者約3万人が両手を上げ「マヤワティ万歳」と応じた。(中略)

 

ニューデリー郊外のスラムで育ったマヤワティ氏が頭角を現したのは、小学校教師をしながら法律の勉強をしていた1977年。政府の集会で「ハリジャン」(ガンジーが使った言葉で「神の子」の意味)を連発した閣僚に対し、マヤワティ氏が壇上に行き「それなら上位カーストは悪の子なのか」と鋭く批判して注目された。84年のBSP設立に参加。UP州首相を計4期務め、「ダリトの女王」と呼ばれる。

 

同州は人口2億人を超え、最大の80議席を選出する重要州だ。今回マヤワティ氏は、ダリトの上に位置する「その他後進諸階級(OBC)」のカースト、ヤダブを中心につくる社会主義党(SP)とともに下位カースト連合を24年ぶりに組み、モディ氏への批判を強める。(中略)

 

ダリトの発言力が高まってきた背景には、インド政府の「留保制度」がある。過酷な差別を受けてきた下位カーストや少数民族に対し、政府が公務員採用や大学進学で設けた優先枠のことだ。

 

選挙では留保選挙区も全国に84カ所ある。選挙区内にはダリトでない有権者も住むが、立候補できるのはダリトだけだ。

 

「ダリト優遇政策はもうやめるべきだ。十分彼らは利益を享受してきた」。留保選挙区があるバラバンキに住む弁護士アビシェク・ミシュラさん(22)は、投票を終えてから不満を語った。自身はカースト最高位のバラモンの出身だ。

 

留保制度には、上位カーストから「逆差別だ」との根強い批判があり、抗議行動や暴動も起きている。比較的上位にあるカーストの人々が自分たちに優先枠を与えるよう求める抗議も相次いでいる。

 

ニューデリーにある民間機関、政策研究センターのラフル・バルマ研究員は「留保選挙区を設けなければ、ダリトで立候補できる人はほとんどいない。これは必要な制度だ。一方、カーストに基づいた政党や選挙区が人々のカースト意識を固定し、社会を分断している側面もある」と話す。

 

 有権者登録に壁、1億人投票できず

北部バラバンキの投票所入り口で6日、主婦ラージ・クマリさん(58)は投票を断られた。名前が有権者リストになかったためだ。インドでは18歳以上の全ての人が有権者として登録する必要があり、その後リストに名前が記され、投票できる。「教育のない私たちに役所の手続きは難しい。代行業者もあるが、払えるお金はない」と話す。

 

民間シンクタンクなどによると、本来記載されるべき有権者でリストに名前がない人は推計で約1億2千万人に上っている。女性やイスラム教徒、下位カーストの人々に多い傾向があるという。

 

クマリさんもダリトの出身。インドの非識字率は約3割に及び、十分な教育を受けられなかった下位カーストの非識字率は特に高い。様々な書類を求められる行政手続きは難しく、役所で賄賂を要求されることもある。

 

「女性は結婚で名字が変わったり、転居したりしても登録し直さない人が多いのではないか」。選挙管理委員会の広報責任者シェイパリ・サラン氏はそう推測する。「選管は毎年、有権者の名前がリストにあるかどうかの確認を各自に求めている。問題は投票日前にそれをしない有権者にある」との立場だ。「有権者数の多さも管理が難しい原因の一つ」とも話す。

 

また、インドでは子の出生後の届け出が徹底されず、管理も行き届いていない。このため自身の身分を証明できない国民が多い。政府は貧困層を正確に把握しきれず、必要な補助金や政策が届かない。

 

そこで政府が2010年から進めているのが、指紋や眼球の虹彩(こうさい)による生体認証を使って登録する個人識別番号「アーダール」の整備だ。ヒンディー語で「基礎」を意味する。全国民に番号を付与し、個人情報を一元管理する。有権者リストの管理も簡単になる可能性がある。

 

投票を拒否される人々を救済する動きもある。ソフトウェア会社レイラブ・テクノロジーズは携帯アプリを開発。有権者リストに名前があるかどうかをアプリで確認し、ない場合は申請手続きを助ける。同社はすでに約4万人を支援したが、うち6割がイスラム教徒やダリトだったという。

 

インド経営大学院アーメダバード校のジャグディープ・チョッカル元教授は「なぜ投票拒否が相次ぐのか、選管は十分な調査も説明もしていない。インドの民主主義の信頼性を根幹から揺るがす事態だ」と話す。(後略)【522日 朝日】

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絶対的貧困が残存するなかでのモディ首相のヒンズー至上主義、成長からも政治からも排除される人々の存在といったものが、以下のようなことも生む土壌にもなるのでしょう。

 

****IS、インドに「ヒンド州」設立を主張 勢力誇示狙いか****

中東の過激派組織「イスラム国」(IS)が、インドに「州」の設立を主張した。10日に声明を出し、インド軍を攻撃したとも明らかにした。

 

ISは先月29日に、約5年ぶりに最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者だとする動画を公開したばかり。組織の衰退が進むなか、インドでの「支配領域」の保持を宣言し、影響力を誇示する狙いがあるとみられる。

 

ISは声明で、インドを「ヒンド州」と表現。北部のカシミール州でISの戦闘員がインドの「背教者の軍」と交戦し、殺害、負傷させたとしている。

 

ロイター通信によると、インドでの「支配領域」の主張は初めてだが、具体的な地域や、実際に組織化されているかは不透明だ。(後略)514日 朝日】

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なお、IS515日には「パキスタン州」の設立も表明しています。

 

コメント

温暖化に背を向けるトランプ米政権が、中ロの北極海進出を警戒・けん制するという“支離滅裂”

2019-05-22 23:01:00 | 国際情勢

(【520日 WEDGE】 普段見慣れた地図とは全く異なるイメージがあります)

 

【ある臨界点を超えると止められなくなる「ティッピング・エレメント」】

地球温暖化の進行のなかにあっても、北極圏の温暖化は非常に速いペースで進んでいると考えられています。

 

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北極圏は世界平均と比べ、少なくとも2倍のペースで温暖化している。

 

原因のひとつは海氷や雪の融解。海氷は1990年代から減少し始め、海の面積が約260万平方キロも増えた。

 

太陽光を反射する雪や氷が減少することで、より多くの太陽エネルギーが吸収され、気温が上昇する。これは「雪氷アルベド(反射率)フィードバック」と呼ばれる。【425日 NATIONAL GEOGRAPHIC

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こうした海氷と雪の消失や永久凍土の融解という変化は、ある臨界点を超えると、その変化がさらなる温暖化を引き起こすことで、止めることができない加速度的な悪化を招く「ティッピング・エレメント」と認識されており、海面上昇等により莫大な損失を世界全体にあたえることにもなります。

 

****北極圏の温暖化による経済損失、最大7500兆円****

海面上昇から嵐の大型化にいたるまで、気候変動は金銭的な損失をもたらす可能性が高いと、以前から科学者は警告してきた。最新の研究によると、その額面はさらに跳ね上がるという。

 

今回シミュレーションが行われたのは、北極圏の温暖化。海氷が解けたり大地を覆う雪がなくなると、その表面の色は白から暗い色へと変化する。これにより太陽熱の吸収率が高まる。また、広大な永久凍土が融解し、温室効果ガスであるメタンや炭素を放出している。

 

423日付けで学術誌「Nature Communications」に掲載された論文によると、北極圏におけるこうした現象が温暖化をさらに加速させており、たとえパリ協定の国別削減目標を遂行していても、気候変動に起因する総コストは67兆ドル(約7500兆円)増える恐れがあるという。

 

ただし、気温上昇を1.5度以下に抑えるシナリオでは、コストの増加は25兆ドル(約2800兆円)に抑えられると、論文は試算している。ちなみに2016年の全世界のGDPは、約76兆ドル(約8500兆円)だった。

 

論文の主執筆者で、英ランカスター大学ペントランドビジネス持続可能性センターに所属するドミトリー・ユマシェフ氏は「北極圏では、非常に大きな変化が起きています。永久凍土の融解や海氷と雪の消失は、気候システムの『ティッピング・エレメント』と認識されています」と話す。「北極圏の温暖化が全世界に及ぼす影響を知りたいと思いました」

 

こうした気候の「ティッピング・エレメント」は、ある臨界点を超えるとさらなる温暖化を引き起こすような自然システムのこと。

 

(中略)いったん臨界点に達すると、止めることはほぼ不可能で、いわゆる「ホットハウス・アース」状態に陥る危険がある。ホットハウス・アース状態では、世界の平均気温が現在より45度高くなり、北極圏などでは、気温上昇の平均値が10度に達するという。(後略)【同上】

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【経済的にも軍事的にも注目される北極海 その中心にはやはり中国が】

もちろん、悪影響ばかりではなく、これまで凍った海で利用価値がほとんどなかった北極海が、海氷の融解で利用できるようになるという好都合な話もあります。

 

あまりにも大きすぎて認識するのも困難なかなり先の危機的状況よりは、とりあえず認識が容易な比較的近い時点での好影響のほうに、各国の関心は惹かれるようです。

 

航路としての利用価値、膨大な資源といった経済的側面、さらには、これまで凍ているという前提で組み立てられていた安全保障の面でも、今後は海軍を展開することが可能になるということでの軍事的利用価値・・・・今、北極海に沿岸国・関係国の熱い視線が向けられています。

 

そうした中でも、中心的なプレイヤーとなっているのは、ここでも(沿岸国でもない)中国です。

中国は、世界戦略「一帯一路」を北極圏に拡大し「氷のシルクロード」を建設すると表明しています。

 

****<中国>初の「北極白書」 権益確保へ強い意欲****

中国政府は26日、北極開発の基本政策をまとめた初の「白書」を発表した。

 

白書は「中国は北極の重要な利害関係者」と宣言。習近平国家主席が提唱する経済圏構想「一帯一路」を北極圏に拡大し「氷のシルクロード」を建設すると打ち出した。

 

北極圏は地球温暖化によって解氷が進み、北極海航路が新たなシーレーン(海上交通路)となる可能性が出ている。

 

中国は北極圏に面していないが、白書は「最も接近する国の一つであり、中国の気候や経済利益に関係する」と主張。「責任を負う大国」として「平和安定と持続可能な発展に貢献する」とした。

 

習指導部の「大国外交」路線を色濃く反映し、権益確保への強い意欲を示した形だ。

 

一方で、習指導部は「海洋強国」を掲げて海空軍を増強しており、国際社会からは北極圏進出を警戒する声も上がる。

 

だが、孔鉉佑外務次官は26日の記者会見で「我々に他の意図があるとの懸念は全く必要ない」と反論。ロシアや北欧諸国との連携に加え、2016年に始まった「北極に関する日中韓ハイレベル対話」を具体例に、国際協調路線を歩んでいる点を強調した。【126日 毎日】

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中国は、アメリカ、ロシア、ノルウェー、デンマーク、カナダなどの沿岸国を加盟国とする北極評議会にもオブザーバー国として長年参加し、北極開発のルール作りで影響力を高めようとしています。

 

「我々に他の意図があるとの懸念は全く必要ない」とのことですが、軍事的展開も急ピッチで進んでおり、中国を警戒するアメリカが神経をとがらせています。

 

****中国軍、北極への進出積極化 潜水艦展開も=米国防総省****

米国防総省は、中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国人民解放軍が北極圏での展開を活発化させていると指摘した。核攻撃への抑止力という位置付けで潜水艦を派遣している、としている。

(中略)中国は、北極圏地域の国でないにもかかわらず、同地域での活動を活発化させ、2013年には北極評議会(AC)のオブザーバー国となった。こうした動きに、北極圏国(米、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシア)は、将来的に北極圏に軍を展開させる可能性など、中国の長期的な戦略目的に懸念を抱いている。

ポンペオ米国務長官は、6日にフィンランドで開幕する北極評議会の会合に出席することになっている。

国防総省の報告書によると、デンマークは、中国のグリーンランドへの関心を懸念。中国は、グリーンランドに研究施設や衛星通信施設の建設や、空港の改良工事などを提案しているという。

「民間の分析調査も、中国が核攻撃に対する抑止力として潜水艦を派遣するなど、北極海でのプレゼンスを高めているという見方を裏付けることができる」としている。(後略)【54日 ロイター】

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【中ロの北極海進出を強く警戒するアメリカ 一方で温暖化には背を向けたままという矛盾・支離滅裂】

****北極海で権益拡大、中国の「氷上のシルクロード」に米警戒 第3の一帯一路****

米国のポンペオ国務長官は6日、訪問先のフィンランドで北極海をめぐる情勢について演説し、「北極海は新たな戦略空間となっているが、関係各国は共通のルールに基づいて行動するべきだ」との認識を示し、また、「北極海を新たな南シナ海にしてはならない」と中国を強くけん制した。

 

米国は中国の北極海進出に警戒感を強めており、北極海が新たな米中対立の場とならないよう、軍事、安全保障的な視点から北極海への関与を強めようとしている。(後略)【516日 NewSphere

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アメリカが中国の北極海進出に神経をとがらせるのはわかりますが、一方でトランプ米政権は北極海の変化をもたらしている温暖化については、パリ協定から離脱するなどの対応で背を向けています。

 

そうしたアメリカ米政権の対応について、下記記事は“皮肉”と評していますが、“矛盾”“支離滅裂”と言うべきでしょう。

 

****北極海温暖化で過熱する米中露の覇権レース****

かつては分厚い氷で人を寄せ付けなかった北極海が今、温暖化による氷解が進み、海底に眠る豊富な資源の存在に世界の熱い視線が集まってきている。その中でもめだつのが、開発と覇権めぐり火花を散らし始めた米中ロ3大国の存在だ。

 

「世界は今日、かつてないほど磁石のように北極海に引きつけられつつある。われわれは今後、勢力争いと競争の場となりつつある新時代に備えていく必要がある」

 

今月6日、フィンランドで開催された「北極評議会」(The Arctic Council)に初めて出席したポンペオ米国務長官の演説は、冒頭から緊張感をにじませる調子で始まった。

 

「北極評議会」は1996年、北極圏に領土を持つアメリカ、カナダ、ロシア、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、アイスランドの8カ国が集まって組織され、2年に1度の閣僚会議で共通の問題について意見交換が行われてきた。

 

しかしその後、地球温暖化の影響で北極海域の海氷溶解が進むにつれ、海底資源の開発、大西洋からシベリア海への新たなシーレーン確保も可能となった結果、その戦略的価値が一躍脚光を浴びるにいたった。

 

このため、これまで地理的に縁の遠かった中国、日本、韓国、インドなどを含め他の14カ国もオブザーバーとして参加し始めており、閣僚会議も回を重ねるごとに活発な意見交換の場となってきている。

 

そんな中で、一段と熱気のこもった演説をしたのが、ポンペオ長官だった。

 

長官は、まず前段で、「北極海の戦略的価値と国際間協力」の意義について以下のような点を指摘した。

 

  アメリカは、1857年に当時のウィリアム・シーワード国務長官が貴重な財産であるアラスカを購入したが、今やその価値はかつてなく高まり、北極海国家として北極海の将来のために立ち上がるべき時が来た。

 

  この海域はシーワード長官当時に考えられていたような不毛で未開な僻地であるどころか、世界全体の未発見原油の13%、天然ガスの30%、未曾有のウラン、レアメタル、金、ダイアモンドなどが何百万平方マイルの海域に広がり、魚類はあふれんばかりに豊富に存在する。

 

  しかも、海氷が着実に減退し始めた結果、新たな交易と通航のチャンスを到来させ、アジア―西部欧州海域間の航海に要する時間は20日も短縮されてきたため、北極海は急速に新たな戦略的重要性を帯び始めている。北極海シーレーンはいわば「21世紀のスエズ、パナマ運河」ともいえる存在だ。

 

  それゆえにメンバー8カ国は、過去数十年間,科学面の協力、文化・環境面の調査・研究という極めて重要な諸テーマに焦点を絞り取り組んできたように、今後は「パワーと競争」の場となった北極海の新しい未来に向けて正しく対応していくべきだ。

 

さらに長官は後段で一転して、ロシアそしてオブザーバーである中国を繰り返し名指しで批判、具体的に以下のような行動パターンについて疑念を表明した:

 

ロシアは先月、北海をアジア―北部欧州間にまたがる中国の「一帯一路」とリンクさせる計画を発表、同時に中国は北極海に複数のシーレーン開発計画に着手している

 

中国は中国マネー、中国企業、中国人労働者を使い、同海域のインフラ開発に乗り出し、ある部分では中国の恒久的安全保障プレゼンス確保を企図している

 

米国防総省は最近、中国が今後、北極海に持つ商業用研究施設を核攻撃抑止力としての原子力潜水艦配備基地に転用する可能性について警告を発している

 

中国は、南シナ海、アフリカなど世界の他地域において侵略的、軍事的行動をとってきたが、われわれは同様に、北極海海域においても、中国のこれからの行動を注視していく必要がある

 

ロシアは「北極評議会」のフルメンバーだが、北海ルートの公海について“領海”を主張、他国船舶や砕氷船の通過の際には事前通過許可とロシア人パイロットの乗船を義務付け、これに応じない場合は軍事力行使の脅しをかけるなど、国際法上の違法行為を続けており、憂慮すべき問題だ

 

ロシアは2014年に北極軍事基地を建設以来、同海域における軍事プレゼンスを着々と強化、これまでに16カ所に深海港を開港したほか、475カ所に新たに軍事基地・拠点を建設した

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もちろんアメリカが、北極圏における中国やロシアの野望について言及したのは、今回が初めてではない。(中略)

ただ、今回のように激しい調子で両国の活動を同列に置いて批判したのは初めてだ。

 

その背景として、トランプ政権発足以来、いずれも対米関係の悪化という共通の状況下にある中露が提携を深め、北極海における関係強化の動きが念頭にあることは間違いない。

 

ポンペオ長官が「北極評議会」演説で、中国の「一帯一路」構想と北極海シーレーン計画へのロシア参加決定に具体的に言及したことは、その表れであり、アメリカ側の焦りを反映したものといえよう。

 

ポンペオ長官は、このように北極海における中露の新たな動きをけん制した上で、今後のアメリカの対応として、(1)同海域におけるアメリカの外交および安全保障上のプレゼンスを一段と強化していく(2)とくにロシアの不穏当な活動に対抗して軍事演習を実施していく(3)軍事プレゼンス強化の一環として砕氷船艦隊の再建および沿岸警備隊関連予算の拡充に着手する(4)米軍内に北極海担当の上級ポストを新設する―などの具体策を明らかにした。

 

これに対し、同席したラブロフ露外相は「北極海が直面する諸問題の解決にはより深化した国家間協力が求められる。そのような時に、軍事的対応で処理しようとする試みは前例がなく、また軍事対立をあおるいかなる口実も存在しない」と反論、ポンペオ長官の挑戦的態度にくぎを刺した。

 

また、中国も外務省報道官がただちに同長官発言に言及「北極海における平和的国際協力の全体的基調は以前と何ら変わっておらず、アメリカの主張は事実を歪曲し、善悪を混同したものであり、下心と隠れた動機に根ざした発言だ」と酷評した。

 

トランプ政権にとっての最大の皮肉

しかし、中露との対抗上、北極海の「戦略的重要性」を強調し始めたトランプ政権にとっての最大の皮肉は、世界180カ国が批准した地球温暖化規制の国際取り決め「パリ協定」からの離脱と北極海の現状との矛盾だ。

 

なぜなら、北極海は世界のどの地域よりも温暖化の影響が大きく、氷山や海氷の溶解が急速に進んでいるからだ。

 

58日付『ナショナル・ジオグラフィック』誌電子版も「世界の頂上で展開される新たな冷戦」の見出しで論評を掲げ「地球儀のてっぺんはこれまでの人類史を通じ、厳寒で僻地で危険に満ちた過酷な条件ゆえに、他の地域を変容させてきたような集中的開発からは縁遠い存在だった。しかし今日、北極海は地球のどの地域よりも早いスピードで温暖化が進みつつある。とくに2007年には、記録的な気温上昇の結果として、それまで夏季を含め年間通じ北極地点を覆っていた広大な厚い流氷が最低レベルまで縮小した。それ以後は、かつて商業利用や軍事的野心を抑制してきた分厚い海氷からなる防御バリアが崩壊したことで、新たに出現した“地球上のニューフロンティア”に向けて各国による投資、開発ラッシュに拍車がかかり始めた」と解説している。

 

つまり、一方では、北極海における中露の活動が活発化してきたのも、温暖化による氷解と密接な関係があるからであり、それゆえにアメリカも遅ればせながら対応を迫られることになったという現実がある。

 

他方、世界中の大半の国が「地球温暖化」対策に取り組む意欲を示す中でアメリカだけが「パリ協定」から離脱したことは、大きな矛盾以外の何物でもない。

 

本来なら、北極海における中国やロシアの進出を批判する前に、アメリカとしては最低限「パリ協定」からの離脱方針を見直すべきであり、そうしないかぎり、関係各国の理解と同情も得られないのは自明の理だ。                            

 

しかし、トランプ大統領は就任以来打ち出してきた反環境主義からは一歩も後退する姿勢を見せていない。

 

それどころか、ポンペオ国務長官は今回の「北極協議会」閣僚会議で「地球温暖化」対策の重要性に言及した文言を最終日の共同宣言に盛り込むことに最後まで抵抗、この結果、過去の閣僚会議とは異なり、宣言文のないまま終了するという異例の事態となった。

 

もしアメリカが今後も「パリ協定」を無視し、その一方で、北極海の氷解が加速するとすれば、同海域をめぐる中露との覇権レースにおいて“敵に塩を送る”状況が続くことになりかねない。【520日 WEDGE

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なお、ロシアの最近の動向については、ロシアメディアは以下のようにも。

 

****北極海の氷上基地、露で新たに開発進む****

ロシアのシルショフ海洋研究所は17日、北極海での活動向けに氷上基地の開発が同国の研究者らによって新たに進められていると発表した。開発中の基地により、気候の変化や氷の状態を監視したり、航海の安全を確保したりすることが可能になるとしている。

 

昨年5月にロシアのプーチン大統領によって署名された大統領令では、北極海航路の貨物輸送量を2024年の時点で8千万トンにまで拡大させるとの課題が示されている。これを巡りプーチン大統領は今年4月、2018年に達成された輸送量2千万トンについて、1987年に達成されたソ連時代の記録の既に3倍に上っていると指摘し、現在の目標については、現実主義的であるとともに、十分に考慮された具体的な課題であるとしている。

 

同研究所の代表者らがスプートニクに対し明らかにしたところでは、ロシアには現在、海洋研究のための氷上基地が存在していないものの、同様の基地は欧州連合(EU)や米国、日本、カナダによって使用されているという。

 

同研究所ではロシアが開発中の基地について、北極海航路における航海の安全確保以外にも、北極圏における生物多様性の維持を促進していくという役割も果たすとしている。【518日 SPUTNIK

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アメリカ  次期大統領選挙論点として再燃した人工中絶問題

2019-05-21 23:32:16 | アメリカ

(【520日 BBC】 米ピュー研究所の2018年世論調査 これで見ると、中絶は「すべての場合において合法であるべき」と答えた人は25%、「ほとんどの場合において合法であるべき」と答えた人は34%と、賛成派が計59%を占めており、反対派とは大きな差があるようにも思えますが。)

 

【国論を二分するどころか、テロ事件にも及ぶアメリカ・人工中絶問題】

アメリカの人工中絶をめぐる問題は、今までにも2,3回とりあげたことがあります。

20151129日ブログ“アメリカ  再び「中絶戦争」の犠牲者 現実には減少傾向の中絶 増えるシングルマザー”など)

 

アメリカにおいては、人工中絶を容認するか否かが、保守・リベラルを分かつ象徴的な問題ともなっており、オバマケアをめぐる対立同様に、国論を激しく二分する極めて政治的な重大問題に位置づけられています。

 

最初に認識しておく必要があるのは、日本人には想像できない対立・議論の “激しさ”で、医療関係者・施設へのテロ行為に及ぶことも珍しくありません。

 

****米コロラド州で男が銃乱射 3人死亡、9人負傷****
米西部コロラド州コロラドスプリングズで27日、男が銃を乱射し、少なくとも3人が死亡、警察官4人を含む9人がけがをした。CNNなどが伝えた。

米メディアによると、27日昼ごろ、コロラドスプリングズの医療施設「家族計画クリニック」で銃撃があったと通報があった。警官隊と容疑者の男との間で銃撃戦になり、目撃者によると5分間で20発ほど銃声が聞こえたという。(中略)

同クリニックは妊娠中絶や性感染予防などのケアをしている。米国では人工妊娠中絶の是非を巡り、大きな議論になっており、中絶に反対する人々は同クリニックなどを批判している。

米メディアによると、1977年から14年まで、人工中絶をする施設を狙った爆破事件は42件、殺人事件は8件、放火事件は182件起きているという。【20151128日 朝日】
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20151129日ブログでは、人工中絶をめぐる議論の高まりもあって、近年は中絶件数は減少傾向で、むしろシングルマザーを選択する女性が増加するという、伝統的“家庭観”を重視する保守派にとっては皮肉な現実もあるという話題も取り上げました。

 

【法案の支持者らには、「ロー対ウェイド判決」を覆す好機と捉える向き】

従来から上記のように激しい論争を呼ぶ問題でしたが、アラバマ州の決定で再び政治問題・大統領選挙の主要論点としてクローズアップされています。

 

****米アラバマ州、中絶ほぼ全面禁止法案を可決 レイプや近親相姦でも****

米アラバマ州議会上院は14日、レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠も含め、中絶をほぼ全面的に禁止するという全米で最も厳しい法案を可決した。

 

法律が成立すれば、中絶手術は犯罪とみなされ、手術を行った医師には10年以上99年以下の禁錮刑が言い渡される可能性もある。中絶が例外的に認められるのは、母体の生命が危険にさらされている場合、または胎児が致死的な状態にある場合に限定される。

 

法案可決を受けて米国自由人権協会は、「これはレイプや近親相姦の被害者の身体に関する自己決定をさらに奪って出産を強制することにより、被害者らを罰する法案だ」と断じ、法律の施行阻止を目指して裁判を起こす構えを示した。

 

共和党が主導権を握る同州議会上院で可決された法案は、同じく共和党のケイ・アイビー知事の元へ送られた。知事が署名すれば法廷闘争に持ち込まれ、判断が最高裁に委ねられることも考えられる。

 

法案の支持者らは、最高裁で争うことを歓迎する姿勢を明確に打ち出している。ドナルド・トランプ氏の大統領就任後、最高裁判事は保守派が過半数を占めており、共和党の中には1973年に最高裁が女性の中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆す好機と捉える向きがある。 【515日 AFP】

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“今回成立したアラバマ州法は全米で最も厳しい内容だ。中絶を「妊娠に気づいた後に器具や薬で妊娠を終わらせること」と定義し、母体に危険がある場合を除いて禁止した。妊娠初期段階でも中絶できず、性的暴行や近親相姦(そうかん)で妊娠した場合でも例外を認めない。妊婦は罪に問わないが、中絶手術をした医師は最長99年の禁錮刑となる。”【517日 朝日】

 

人工中絶の問題でいつも出てくるのが“1973年に最高裁が女性の中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」”

 

「われわれは既婚者であろうとなかろうと、産む産まないというような基本的な個人の問題に政府から不当な干渉を受けないという個人の権利を認める。その権利には妊娠を継続するか否かを決定する女性の権利が必然的に含まれる。」といった内容の判決で、人工中絶を容認することで問題に決着をつけた・・・・はずでしたが、その後も論議が絶えないのは前述のとおり。

 

****「最高裁判決をひっくり返す」****

成立から6カ月で施行されるが、最高裁のこれまでの判決と真っ向から対立するため、裁判になれば下級審で差し止めが認められることが確実視されている。

 

ただ、法案を出した女性の州下院議員は「目的は(上級審に控訴して)最高裁判決をひっくり返すこと」と明言する。法案に署名したケイ・アイビー州知事も「最高裁が73年に判決を下した際、私も含め、多くの米国民が同意できなかった」とする声明を出した。

 

米国では保守色の強い南部や中西部で、中絶の規制を強化する動きが出ている。米CNNによると、胎児の心音が確認できるようになるとされる妊娠6週以降の中絶を禁じる法律が、ジョージア、ケンタッキー、ミシシッピ、オハイオの4州で今年成立。6週では妊娠に気づかない女性も多く、一部の州では「違憲」として提訴されている。

 

 トランプ氏任命、保守派判事優勢

中絶規制強化の背景には、トランプ大統領が保守派の判事2人を任命し、最高裁の構成が保守派優勢になっていることがある。保守派の間では、現在の最高裁が中絶問題を取り上げれば過去の判例を覆し、中絶を禁じる判決を下すという期待が広がっている。

 

こうした動きに中絶擁護派は猛反発している。アラバマ州法成立に対しても、20年大統領選の民主党の候補者指名争いの候補者からは「全国の女性に対する直接的な攻撃。戦わなければならない」(カマラ・ハリス上院議員)と非難が相次いでおり、大統領選の大きな争点になるのは必至だ。【517日 朝日】

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「戦わなければならない」・・・・・というのはわかりますが、現在の最高裁判事の構成を見ると、勝ち目があるのでしょうか?

最高裁判事の判断は、一般に言われているような保守・リベラルの色分けほど単純でもない・・・・のでしょうか?

 

トランプ大統領が保守派判事を任命した時点で予想されていた展開でもあり、「アメリカ大統領の最大の仕事は、考えの近い最高裁判事の任命である」と言われる所以です。

 

政治問題に関して憲法判断にあまり踏み込まない日本の司法と異なり、アメリカでは政治的に決着しない国論を二分する問題が最高裁判断で決着します。

 

当然、中絶容認派は強い抗議を示しています。

 

****中絶禁止の州法に抗議、全米で一斉デモ 50以上の団体が参加****

米国内の各地で人工妊娠中絶を禁止する州法の成立が相次いでいることに対し、21日に全米50州のほぼすべてで一斉に抗議デモが実施される。

 

米市民自由連合(ACLU)や妊娠中絶権擁護全国連盟(NARAL)など50以上の団体が主催して、現地時間の正午から集会を開く。

 

主催者らは、全米で中絶の「極端な禁止」が相次ぎ、生殖の自由が奪われていると主張。トランプ政権が女性の選択権に反する運動を展開していると非難し、特に非白人層、低所得の層の女性に大きな影響が及ぶとの懸念を示す。

 

アラバマ州では先週、非常に厳格な中絶禁止法が成立した。強姦や近親相姦で妊娠した場合を含むほぼすべての中絶手術を禁止し、執刀医には最大で禁錮99年と、強姦犯や殺人犯に匹敵する刑を科す内容。

 

ただし、これは中絶を女性の権利として認めた1973年の最高裁判決に違反すると訴える反対派との間で法廷闘争が予想され、施行されるとしても数年先になる見通しだ。

 

ミシシッピやオハイオ、最近ではジョージア州でも、胎児の心音が確認できるようになってからの中絶を禁止する「心音法」が成立した。同様の法案はミズーリ、ルイジアナなど複数の州でも審議されている。

 

一方で米国最大の反中絶団体「生まれる権利を守る全米委員会(NRLC)」は7月に全国大会を予定し、支持者らに参加を呼び掛けている。【521日 CNN】

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【トランプ大統領 中絶反対派として保守団結を呼びかける 3つの例外を明示して極端な禁止論とは一線】

激しい保守・リベラルの論争を呼ぶこの問題ですが、トランプ大統領は“いつになく”静かでした。

 

静かでしたが、ここにきてようやく“自らの政権における国内の裁判所の保守化を成果として強調した上で、2020年米大統領選に向けて、人工中絶に反対する保守層の団結を呼びかけた”とのことです。

 

ただ、アラバマ州のような例外を認めない中絶禁止には賛成しないとの立場も。

 

****トランプ氏、妊娠中絶禁止法の論争に沈黙破る****

アメリカでドナルド・トランプ大統領の支持者の多い南部など複数の州が、妊娠の人工中絶を全面禁止したり厳しく制限したりする州法を成立させる中、トランプ氏は自分は中絶反対派だが例外はあるとツイートし、一部の州法の内容は支持しない姿勢を示した。かつては中絶容認の立場だったトランプ氏は、近年になり反対派に転じている。

 

南部アラバマ州などが、妊娠の原因が強姦や近親相姦でも人工中絶を認めない州法を成立させている状況で、トランプ氏は18日に初めてツイッターでこの問題について言及し、「自分は強固にプロ・ライフ(訳注:生命支持、アメリカでは『中絶反対』の意味)だが、例外は3つある。強姦、近親相姦、母親の生命を守るためだ。ロナルド・レーガンと同じ立場だ。」と書いた。

 

大統領はその上で、「過去2年間で、素晴らしい新しい連邦判事105人(もっと増える)と2人の最高の新しい最高裁判事、メキシコシティの条例、生命権についてまったく新しい前向きな態度のおかげで、大いに前進した。

 

極左は妊娠後期の中絶(もっとひどいことも)を推進して自滅しつつある。みんな団結して、2020年には生命のために勝たなくてはならない。

 

馬鹿な真似をして、ひとつにまとまるのをやめてしまったら、生命のためにせっかくがんばって獲得してきたことが、たちまち消えてなくなる!」とツイート。

 

自らの政権における国内の裁判所の保守化を成果として強調した上で、2020年米大統領選に向けて、人工中絶に反対する保守層の団結を呼びかけた。

 

中絶反対派は、アラバマ州などの中絶禁止州法がたとえ下級審で違憲と判断されても、連邦最高裁まで争う構えだ。連邦最高裁が人工中絶を女性の権利として認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆すことを、最終的な目的としている。(中略)

 

米世論と妊娠中絶

妊娠の人工中絶はアメリカで長年にわたり、常に激しい議論や運動の対象になってきた。特に、保守派の福音主義キリスト教徒が中心となり、人工中絶の全面的禁止や制限の厳格化を求めてきた。

 

米ピュー研究所の2018年世論調査によると、アメリカの成人回答者のうち、中絶は「すべての場合において合法であるべき」と答えた人は25%、「ほとんどの場合において合法であるべき」と答えた人は34%と、賛成派は計59%。「すべての場合において違法であるべき」と答えた人は22%、「ほとんどの場合において違法であるべき」と答えた人は15%と、反対派は計37%だった。

 

トランプ氏自身は、この問題について立場を変え続けており、1999年には「自分はとてもプロ・チョイス(訳注:選択権支持、アメリカでは『中絶支持』を意味する)だ。

 

自分は中絶の概念そのものが大嫌いだ。大嫌いだ。それが意味するすべてのことが大嫌いだ。この問題を人が議論しているのを聞くと、ぞっとする。ただしそうは言っても……自分は選択する権利を信じているだけだ」と、中絶容認の姿勢だった。

 

それが20163月には、自分の立場は「例外ありでプロ・ライフ(中絶反対)だ」と発言していた。

 

トランプ氏が「2020年(大統領選)で命のために勝つ」には、与党・共和党の一致団結が必要だとツイートした一方、野党・民主党からも、この中絶問題が次の大統領選の主要課題になるという意見が出ている。

 

民主党から出馬を表明しているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)は、アラバマ州の禁止法成立を「非常に危険で無類に残酷だ。提案者たちは、ロー対ウェード判例を覆そうとしている」と批判。

 

さらに、「私は(中絶が違法だった時代の)アメリカで暮らしたことがあり、その上であえて申し上げます。私たちは絶対に後戻りしないと。今も、二度と。私たちはこの動きに対抗して戦い、そして勝ちます」と呼びかけた。

 

アメリカで人工中絶手術は受けられるのか

1973年に連邦最高裁が中絶手術を合法と認めて以来、国内の中絶クリニックの数は減り続けた。2017年には州内に中絶手術が受けられる施設が1カ所しかない州は、6州に上るとされた。

 

昨年から今年にかけて、アラバマ州のほか、ジョージア、アイオワ、ケンタッキー、ミシシッピー、オハイオ各州の知事が、胎児の心拍が検知できるようになった時点で人工中絶を禁止するという州法に署名した(アイオワの州法は州最高裁が違法判断)。

 

ルイジアナとミズーリの州議会は同様の州法を可決し、知事の署名を待っている状態。ほかに、9州の州議会が同様の法案を検討している(そのうちペンシルベニア州では委員会で否決)。

 

生殖の権利について活動する市民団体、グットマッハー研究所によると、中絶を禁止する州法はいずれもまだ施行されていないが、各地の支持者は連邦最高裁まで争う構えだという。

 

その一方でこれら以外の州では、女性が中絶する権利を守ろうと対抗策を導入する動きが進んでいる。ニューヨーク州は今年1月、場合によっては妊娠24週以降も中絶する権利を守る州法を成立させた。【520日 BBC】

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トランプ大統領がかつては中絶を容認していた・・・というのは、以前から指摘されている点です。

まあ、人の考えは変わるものですから、「プロ・チョイス」から「プロ・ライフ」に転じること自体は問題ではないでしょう。(最近は“ブレない”ことを良しとする風潮がありますが、「君子豹変す」で、状況等によって判断を変えること自体は非難されることではないと考えます)

 

それはいいとして、よくわからないのは、アラバマ州判断のような極端な禁止派との距離感です。

「例外は3つある。強姦、近親相姦、母親の生命を守るためだ」ということで、考えの違いを明確に打ち出したということでしょうか。

 

“馬鹿な真似をして”というのは、アラバマ州のような極端な禁止法案のことでしょうか。

 

****トランプ大統領が行き過ぎと示唆-アラバマ州の人工中絶禁止法****

トランプ米大統領は18日遅く、 アラバマ州で成立したほぼ全ての人工妊娠中絶を禁止する法律は行き過ぎだと示唆するコメントをツイッターに投稿した。

  

大統領は一連のツイートで、中絶反対を「強く支持するが、3つの例外がある。性的暴行、近親相姦(そうかん)、母親の命を守る場合だ」と記した。【520日 bloomberg

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やっぱり、トランプ大統領はアラバマ州のような極端な禁止法案は支持していないという理解のようです。

 

【世論動向に変化?】

201511月ブログで紹介した世論動向は以下のようなものでした。

 

“米ギャラップ社が昨年(2013年)5月に行った世論調査では、(中絶反対の)プロ・ライフ支持者とプロ・チョイス支持者の割合は48%対45%と拮抗。米紙ニューヨーク・タイムズは「中絶が中間選挙での活発な争点になろうとしている」と指摘している。【201439日 産経】”

 

一方、前出BBCが紹介している米ピュー研究所の2018年世論調査では、人工中絶賛成派は計59%、反対派は37%とかなり差が開いています。

 

ここ数年で、世論動向に変化があったということでしょうか?

かりに米ピュー研究所の2018年世論調査が現状を示しているとすれば、今回のアラバマ州のような決定が次期大統領選挙にどのように影響するのか?

 

トランプ大統領がしばし沈黙していたのも、自身の判断の揺れ以外に、そうしたことを配慮したものであり、「例外は3つある」ことを明示したのも、やはり近年の世論動向を踏まえたうえでの判断でしょうか。

 

【私見をひとつだけ】

最後にひとつだけ言えば、アラバマ州のような胎児の人権を一途に尊重する人々が、世界各地で爆弾の雨を降らせたり、国内での銃誤射で子供を含む多くの人命が奪われたり、壁の向こうで難民・移民が生命の危険にさらされることなどに、一向に関心を払わないというところが、私には理解できないところです。

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日本  更に拡大が見込まれる外国人労働者 “外国人材”ではなく“人間”としての受入れ態勢を

2019-05-20 23:14:50 | 難民・移民

(【4月14日 朝日】)

【急増する外国人労働者 しかし、依然として外国人受入れに厳しい日本社会】

日本政府観光局(JNTO)によれば、2018年の年間訪日外国人数は前年比8.7%増の31191900人で統計開始以来の最高記録を更新しています。

 

また、周知のように日本では深刻な人手不足の解消を外国人に頼る改正入管法が4月に施行され、政府の構想どおりにいけば外国人労働者が大きく増えることになっています。

 

現在でも、(工場労働者の実態を目にする機会は私はありませんが)コンビニとか外食チェーン店、格安宿泊施設などでは、ごく普通にアジア系外国人が働いているのを目にします。

 

しかし、日本社会が外国人に開かれているか・・・という話になると、また別問題で、日本社会は依然として外国人に対して門戸を閉ざしている面が強く存在します。

 

****難民認定申請、前年比47%減 認定は昨年の2倍の42人****

法務省は27日、2018年の難民認定申請数などを公表した。申請数は前年比9136人(約47%)減の1万493人で8年ぶりに減少。

 

難民認定されたのは同22人増の42人、認定されなかったものの人道的配慮で在留が認められたのは同5人減の40人だった。難民保護の迅速化を図るため、昨年1月に開始した就労目的などの申請を抑制する運用が影響しているとみられる。

 

難民認定申請数は10年3月に、申請から半年後に就労を認める運用が始まったことなどから急増。そこで法務省は昨年1月、難民の可能性が高い申請者には就労が可能な在留資格を速やかに与える一方、明らかに難民に該当しない理由を訴えたり、再申請を繰り返したりする申請者には新たな資格を与えない運用に切り替えた。

 

申請者の国籍は74カ国。最多はネパールの1713人で、(2)スリランカ1551人(3)カンボジア961人(4)フィリピン860人(5)パキスタン720人――と続き、この5カ国で申請総数の約55%を占めた。一方、世界で難民認定申請者を多く出しているとされる5カ国(アフガニスタン、イラク、シリア、ベネズエラ、コンゴ民主共和国)の申請者は計50人だった。

 

申請処理数は前年比2129人増の1万3502人。認定された42人は、コンゴ民主共和国13人▽イエメン、エチオピア各5人▽アフガニスタン、中国各4人▽イラン、シリア各3人――など。認定者増加について担当者は「乱用的・誤用的な申請が減り、審査業務が進んだのが一因」とみている。

 

法務省は27日、18年に入管法違反で強制退去手続きをとった外国人数も公表。前年比2583人増の1万6269人で、1万86人が不法就労をしていた。【327日 毎日】

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難民認定数が2倍になったといっても“42人”・・・・ほんとんど認められていないと言うべきでしょう。

 

難民・移民流入で揺れる欧州や、アフリカ・中東からの難民受け入れ国となっているトルコやヨルダンなどで“万人”単位(国よっては“十万人”単位)の数字が問題となっている状況とは雲泥の差があります。

 

****なぜ日本の難民認定数は著しく少ないのか?****

(中略)日本で難民認定数が極めて少ない理由として、軍事政権下のミャンマーからの民主活動家が多くの申請を行っていた時期は例外として、難民が多数発生する地域から日本が遠く離れていることや、言語的・文化的な違いが障壁になっていることから、日本には真の難民が来ていないという見方もある。

 

しかし、紛争が長期化・複雑化し、多数の難民が発生しているシリアからの難民申請について、日本では201712月までに約80人が申請をしたのに対し、大半は人道配慮による在留が許可されたにすぎず、難民認定は12人にとどまっている。

 

また、集団的な虐殺がされるなどミャンマーで民族浄化の対象となっている少数民族のロヒンギャについても、これまでに約120人が申請を行ったのに対し、19人が難民認定、約80人が人道配慮による在留許可を得たにすぎず、それ以外の約20人は在留許可も与えられていない状況にある。

 

このような状況は、必ずしも日本には真の難民が来ていないのではなく、日本の難民認定の基準が著しく厳しいことを示唆している。(後略)【20187月 ヒューライツ大阪】

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外国人を受け入れることについて強い抵抗があるのは法制度だけではなく、社会全体の意識の問題が根底にあるように見えます。

 

****外国人施設「反対」、遠い対話****

住宅の軒先に、いくつもののぼりがはためく。「住環境の破壊 ダメ!絶対!」「子ども達の安全・安心を守れ」。昨年秋、大阪府摂津市にある住宅地の風景が変わった。

 

約1500世帯が暮らすこの地区には、古くから代々続く家も多い。そこに外国人技能実習生を受け入れる監理団体が研修施設を計画し、反対運動が巻き起こった。計画によると来日直後の実習生に約1カ月間、日本語や生活習慣を教え、最大60人余りが暮らせる。

 

(中略)しかし、この件については対話の糸口を見いだせない。「実習生と言葉が通じない」「怖い」という漠然とした不安を聞き、「ならば、なぜ不安なのか、どうしたら解消するのか話し合えばいい」と思った。しかし、「とにかく反対」「なぜ、反対しないのか」とたたみかけられ、話を進められなかった。

 

反対運動について「地元住民が猛反発」などと複数の報道が批判的に取り上げたことも、人々の感情を複雑にした。いまは、施設の立地条件や監理団体の計画の進め方などへの不満がより強く打ち出されている。反対運動を続ける住民の男性(63)は取材に対し、「不特定多数が出入りする施設を、住宅街の真ん中に建てる必要があるのか」と憤った。

 

互いの不安の正体を直視しあえないまま、議論を深められずにいる。

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背景の違う人々への理解はどうしたら進むのか。日系3世で、各地の日系コミュニティーを研究する武蔵大教授のアンジェロ・イシさん(51)は壁を目の当たりにしてきた。

 

来日したのは1990年。バブル景気のただ中のこの年、就労制限のない在留資格が与えられたのが日系人の2世、3世だった。製造業の労働者を中心に各地で急増した。自治体やコミュニティーによっては共生する態勢が大きく進んだが道は平坦(へいたん)ではなかった。

 

ゴミ出しをめぐるトラブルや生活習慣の違いなど、日本人との差異ばかりに目が向けられてきたと指摘する。「『トラブルを引き起こす存在』というイメージがつくられてしまった」

 

イシさん自身は留学生として来日したが、引っ越しのたび「外国人だから」という理由で入居を拒まれることが続いた。

 

多くの労働者が職を失った2008年のリーマン・ショック後には、職を失い苦境に陥る日系人も出た。政府は、当分日本に戻らないことを条件に、今度は帰国の費用を支給する施策を打ち出した。

 

「手切れ金か」と指摘され、日系人を労働力の調整弁に使う身勝手さへの批判は出たものの、社会に外国人労働者を位置づける議論はこのときも広がらなかったと、イシさんは残念に思っている。

 

「外国人の大多数は、目立たず、ごく普通に暮らしてきた。そこに視線を向けて議論をしなければ、警戒感はなくならない」【54日 朝日】

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【想像の中の外国人への不安】

当然、異なる文化・習慣の人々とともに暮らすことになれば様々な問題が発生しますが、そうした問題をどのように解決していくのか・・・という方向ではなく、そうした面倒な人々は頭から断るといった対応が目に付きます。

 

外国人への不信感・拒否感は、実際の外国人との付き合いの結果生まれたというより、まだ見ぬ“想像上”の外国人への抵抗感であることも多いようにも思われます。

 

****想像の移民におびえるよりも*****

移民はやっぱり移民と呼んだ方がいいのかもしれない。衆議院立憲会派の中川正春議員(68)は最近そう考える。

 

7年前の民主党政権時代、内閣府の特命大臣として共生社会を担当した。就任直後に「移民基本法を作りたい」と発言したら抗議が殺到した。「移民を容認するのはけしからん」

 

移民という言葉を使うと反発が強くなるようだった。その後、外国人材などといった言葉に言い換えてきた。中川議員に限らない。政界はこの言葉の使用にずっと及び腰だった。

 

「そうやって真っ向から問題を考えるのを避けてきたのでは」と振り返る。「移民ではないと言いながら技能実習生や日系定住外国人などは実質的に移民として受け入れる二枚舌をやってきた。これではなかなか本物の政策はできない」

 

移民という言葉はやっかい者のイメージをまといがちだが、問題の多くは仕組みの方にあると言う。「職業選択の自由がなく、使用者にいじめられても低賃金で働き続けなければならない。そんな環境から逃げると犯罪だとなる」

 

議員は三重の高校から米国の大学に進んだ。不法移民家庭の出身だった親友は名門大学を出て医師となった。そんな例をいくつも目の当たりにした。「人間の才能は環境によって花開く。日本もそんな人たちを活力にしていくべきです」

 

今は、日本で暮らす外国人にとってまず必要なのは言葉の習得と考え、その法整備に与野党の仲間と取り組んでいる。(中略)

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人々が不安を抱くのは、しばしば現実の中の外国人より想像の中の外国人だ。

 

フランスで移民排斥を掲げる右翼政党への支持は、移民系の住民が多いパリでは低い。ドイツでは旧東独のドレスデンなどが移民や難民排斥の運動拠点だが、旧西独に比べて移民の数は少ない。

 

日々、同じ街に暮らしていれば誤解が生じても話せば理解は進む。だが、これからやってくる外国人は不安をかき立てやすい。トラブルメーカー、雇用を奪う者、文化の破壊者……。政治家の仕事はそこにつけ込むことではない。現実的解決への道筋をつけることだ。

 

フランスの人口統計学者、フランソワ・エランは著書「移民とともに――計測・討論・行動するための人口統計学」の日本語版(林昌宏訳)序文で、日本での「移民の増加は国の文化的な均質性にとって有害」という考え方に、これまでも日本文化は「明治時代進駐軍の支配という衝撃を乗り越えてきた」と反論する。「移民の人口に占める割合が2%ではなく10%になったからといって脅かされるようなことがあるのだろうか」

 

想像の移民におびえるよりも、現実の移民と向き合う。そのためにも、移民は移民と呼んだ方がいいと思う。【519日 編集委員・大野博人氏 朝日】

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【現状の問題が改善されないまま拡大する“外国人材”受入れ】

現実には“外国人材”といった言葉で糊塗した形で、人間としての労働者が今後増加することへの日本社会の対応が遅れていることは、いろんなところで指摘されているところです。

 

人間として許容できる賃金・労働条件を確実にするのは、まずもって最低限のスタートラインですが、そこすら現状の問題が改善されないまま、新た制度による受け入れ拡大が図られようとしています。

 

****日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生、早急な対策が必要****

2019429日、日本新華僑報は日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生したと伝えた。

記事は、「青森県むつ市の77歳の社長が、4人の中国人技能実習生を含む15人の従業員に賃金を支払わなかったとして、むつ労働基準監督署により書類送検された。容疑は最低賃金法違反である」と伝えた。(中略)

記事は、「昨年2月に、青森県青森市の成邦商事株式会社が、15人の中国人技能実習生を含む31人の従業員に、月100時間を越える時間外労働をさせて書類送検されたほか、今年3月にも八戸市にある縫製会社が、ベトナム人技能実習生に賃金を適正に支払わなかったとして書類送検されている」と指摘した。

その上で、「青森県で連続して同様の問題が発生していることは、日本の労働力不足が深刻であることを説明しており、そのため政府は外国人労働力を導入する新たな政策が必要になった。また、日本政府も『口だけで行動せず』、監督不行届であるため問題が次々と発生し、関係する部門の行動も遅く効率が悪い」と批判した。

このため記事は、「中国人技能実習生を含む外国人労働者の権益を守るため、日本社会はこの方面で早急な対策が必要だ。さもないと、日本の労働力市場は圧力が緩和したとしても、日本社会の国際的名誉は落ちるだろう」と警告した。【429日 レコードチャイナ】

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こうした実態をチェックする制度も実態に追いついていません。

 

****働く外国人、守るには 監督機関を新設、でも「成果乏しい****

 ■「落差」ある検査結果

「暴力に抗議したら強制帰国させられた」「妊娠2カ月で帰国か中絶か迫られた」――。外国人労働者を支援しているNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」(東京・上野)には、技能実習生からの相談がいまも続々と舞い込む。

 

途上国の外国人に日本の技術を学んでもらう目的で1993年に始まった技能実習制度を巡っては、賃金の未払いや長時間勤務の強制などの労働法違反の行為が減らないことへの批判が高まり、2017年11月に実習生の保護策を強化した技能実習適正化法(技能実習法)が施行された。

 

新法で、監督権限がある認可法人「外国人技能実習機構」が新設された。実習機構が、受け入れ窓口である商工会などの監理団体や、職場に受け入れている企業に立ち入り検査し、実習生への不正行為があれば、政府と連携して罰則を科せるようにした。

 

「実績」はどうか。「実習生保護という点では成果は乏しい」と、移住連代表理事の鳥井一平さんは言う。

 

約2500の監理団体のうち実習機構の検査で不正が明らかになり、許可が取り消されたのは1団体。業務停止や改善命令の行政処分はゼロだ。

 

4万8千社あるといわれる受け入れ企業に関しては、実習機構に認定された実習計画を取り消されたのは8社の151人。改善命令を受けたのは三菱自動車1社にとどまる。

 

法務省が賃金未払いなどの不正行為があったと認定した監理団体や企業数は17年まで毎年200を大きく超えていた(18年は未公表)。実習機構の検査結果との「落差」は大きい。

 

実習機構は、行政処分の手前の「改善勧告」を少なくとも1400団体・企業に出していることを明らかにし、「勧告後も改善されない場合は行政処分に踏み切る」と強調する。(中略)

 

 ■チェック追いつかず

新制度にはもう一つ狙いがあった。受け入れ人数の大幅増だ。少子高齢化で若手の労働者が急減するなか、景気拡大が重なり2010年代半ばごろから人手不足が深刻化していたためだ。

 

(中略)こうした技能実習システムの急膨張に実習機構のチェックが追いついていない。18年4月から9月に実施した企業への実地検査は2600件。これだと「企業への検査は3年に1回」という低めの目標の実現さえ不可能だ。

 

実習機構の人員は昨年度より241人増えて587人となったが、当初から専門家らは「受け入れ枠の拡大は、保護強化策が効果を発揮する態勢が整い、制度の改善が確認されてからの話だ」(自由人権協会の旗手〈はたて〉明理事)と警鐘を鳴らしていた。

 

技能実習制度の「構造問題」も切り込み不足のままだ。ほとんどの技能実習生は来日する前、現地の人材派遣会社やブローカーに多額の手数料や謝礼を払っている。借金を背負った実習生は、日本では就労環境が悪くても我慢せざるを得なくなり、受け入れ側が図に乗って不正行為に走っていた。

 

新制度に合わせて、日本政府は実習生の送り出し国と、悪質な仲介業者を排除する取り決めを結ぶことにした。現在、最多の人材の送り出し国のベトナムなど13カ国と結んでいるが、取り決めが相手国を法的に拘束するわけではない。

 

 ■懸念残る「特定技能」

(中略)特定技能はこうしたまやかしをやめ、「労働者として正面から受け入れる制度」と評価された。一方で「実習制度と同じ過ちをおかすのではないか」との懸念が広がっている。

 

特定技能も、外国で人材を集めて日本に送り出すのは実習制度と同様の民間業者だ。応募者から様々な名目で金品を搾取する恐れがある。

 

実習生のように多額の借金を背負って来日したすえに、受け入れ企業に「逃げられない」とつけ込まれて酷使される可能性があるのだ。報酬も「日本人と同等以上」としているが、技能実習法で同じように約束されている実習生の大半は最低賃金で働いている。

 

国内外で「人身売買」とまで指弾されている実習制度を教訓に、外国人の人権を保護し、安心した就労・生活環境を提供する体制を整えないと新資格は根付かないだろう。

 

それは外国人との共生を巡る課題そのものでもある。

人口が加速度的に減少している日本は早晩、外国人を「労働者」ではなく「国民」として受け入れることが避けられなくなる。特定技能は「移民国家」への覚悟を問うている。【520日 織田一氏 朝日】

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外国人労働者の問題に限らず、個人の生き方・価値観、ジェンダーに関する問題等々、多様性を認め合う社会になってもらいたいのですが・・・。

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香港  「逃亡犯条例」改正案で岐路に立つ「一国二制度」・高度な自治

2019-05-19 22:00:02 | 東アジア

11日、香港立法会でつかみ合う民主派議員と親中派議員【511日 共同】)

 

【形骸化が進行する「一国二制度」】

香港の「一国二制度」が形骸化し、中国本土に取り込まれつつあることは今更の話です。

 

2014年の雨傘運動のような香港側の反対運動がときに盛り上がりますが、社会・政治の基盤となる経済面において、外堀を埋めるかのように本土経済との一体化が進展しています。

 

****中国「大湾区」構想が注目 広東、香港、マカオ一体化 1国2制度形骸化も****

北京で開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)で、習近平指導部が広東省と「1国2制度」下にある香港、マカオを一体化させて大経済圏を築く「ビッグベイエリア(大湾区)構想」が注目されている。

 

香港の分科会では構想を支持する声が相次いだ一方で、香港の民主派からは高度な自治を保障する「1国2制度」の形骸化を懸念する声もある。

 

構想は2月に本格始動。中国の先端都市である広東省深センや広州などの9都市に加え、国際金融都市の香港、カジノで知られるマカオを中心に経済交流を活性化させ、2035年までにハイテクや新産業の重要な発信地にする内容。

 

中国メディアによると、18年の域内総生産(GDP)は約1兆6500億ドル(約185兆円)で、米ニューヨーク周辺一帯25郡の規模に並ぶ。現代版シルクロード構想「一帯一路」とも連動し、往来やビジネス、物流、教育分野などの交流を盛んにする。

 

これに先立ち中国政府は大湾区構想の中核となるインフラ整備を進め、昨年9月に広東省と香港を結ぶ高速鉄道が開業。同10月には広東省と香港、マカオを結ぶ世界最長(約55キロ)の「港珠澳大橋」が開通した。

 

ただ、中国との一体化が進むことに、香港の民主派からは「大湾区構想によって中国と香港の融合がさらに進めば、香港の『1国2制度』は消滅してしまう」(毛孟静立法会議員)といった見方も出ている。

 

7日に開かれた分科会中、香港代表団の馬逢国団長は毎日新聞に、民主派側の懸念について「『1国2制度』を脅かすことはあり得ない。それぞれの地域の特徴を十分に生かすものだ」と語った。【39日 毎日】

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政治的にも、「一国二制度」・高度な自治を形骸化する“中国寄り”の姿勢が加速しています。

 

****香港、「雨傘運動」デモ発起人2人に禁錮16月の実刑判決****

香港の選挙制度の民主化を求めた2014年の大規模デモ「雨傘運動」をめぐる裁判で、香港の裁判所は24日、デモの発起人であるとして有罪判決を受けていた大学教授2人に禁錮16月の実刑判決を言い渡した。

 

禁錮16月の実刑判決を受けたのは香港大学の社会学教授、陳健民氏と同法学准教授の戴耀廷(ベニー・タイ)氏で、2人は公的不法妨害などの罪に問われ有罪判決を受けていた。 【424日 AFP】AFPBB News

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今回量刑が言い渡された二名を含め、「雨傘運動」を主導したとされる活動家リーダーら9人は48日に有罪判決が言い渡されていました。

 

9人はまれにしか使われない英植民地時代の法律に基づき公的不法妨害などの罪に問われ、全員少なくとも1つの罪状で有罪となった。”【49日 AFP】

 

また、、元学生リーダーで民主活動家の黄之鋒氏も。

 

****香港「雨傘運動」主導の民主活動家、二審も実刑判決****

香港の若者らが民主的な行政長官選挙の実現を求めて中心部を占拠した2014年のデモ「雨傘運動」で、裁判所の命令に反して当局によるデモ隊の排除を妨害したとして法廷侮辱罪に問われた、元学生リーダーで民主活動家の黄之鋒氏(22)に対し、香港の裁判所は16日、禁錮2カ月の実刑判決を言い渡した。黄氏は判決後、収監された。

 

黄氏は昨年1月の一審で禁錮3カ月の実刑判決を受け、上訴していた。二審となる今回の判決は、黄氏が犯行当時、未成年だったことを考慮して、1カ月短い禁錮2カ月とした。

 

雨傘運動をめぐっては、民主的な行政長官選挙の実現に後ろ向きな中国政府に圧力をかけるため、道路など公共の場所の占拠を提唱した香港大の副教授らに対し、香港の別の裁判所が4月、禁錮1年4カ月の実刑判決を言い渡し、副教授らは収監された。【516日 朝日】

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今後再び「雨傘運動」ような“不祥事”が起きないように、中国本土政府の意を受けて、香港当局は徹底した責任追及を行う構えのようです。

 

【「高度な自治」を捨て去る自殺行為ともなりかねない「逃亡犯条例」改正案】

その香港で、「一国二制度」・高度な自治を形骸化をめぐりホットな論争となっているのが、香港から中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案審議です。

 

****香港で「13万人」がデモ 犯罪人移送の条例改正反対****

香港民主派は28日、中国本土への容疑者引き渡しが可能になる条例改正に反対するデモを行った。

 

主催者発表で約13万人(警察発表は22800人)が参加。大規模デモは3月末に続き2回目で、前回の12千人(同5200人)より大幅に増加、市民の反発が強まっている。

 

香港立法会(議会)では、香港当局が拘束した容疑者の中国本土への引き渡しが可能となる「逃亡犯条例」改正案を審議中で、政府は7月の休会前に可決させたい考え。デモ参加者らは条例改正方針の撤回を求め、立法会まで行進した。【428日 共同】

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****香港議会で衝突、議員ら負傷 犯罪人移送条例巡り対立****

香港立法会(議会)で11日、中国本土への容疑者引き渡しが可能になる「逃亡犯条例」改正案の審議を巡り、民主派と親中派の議員がもみ合いとなり、議員ら数人が床に倒れるなどして負傷した。

 

民主派は、条例が改正されれば、中国共産党に批判的な活動家らが本土に引き渡される恐れがあるとして猛反発しており、混乱が深まっている。

 

11日は法案委員会が開催される予定だったが、中止となった。香港メディアによると、民主派と親中派は法案委員長選出などを巡り対立。前日から議場に泊まり込んでいた民主派議員らと、親中派議員らが複数回、激しくもみ合った。【511日 共同】

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いわゆる「民主派」だけでなく、「親中派」の議員・経済界にも異論があるようです。

 

****「中国へ容疑者移送」香港紛糾 条例審議入れず、親中派からも異論****

中国本土から逃げてきた刑事事件の容疑者を中国側に引き渡せるようにする香港の「逃亡犯条例」改正案に反対する動きが、勢いを増している。

 

市民の自由の制約につながるとして、中国に批判的な民主派に加え、親中派や外国からも異論が噴出。中国政府は譲歩を認めない方針とされ、板挟みの中で立案した香港政府の基盤が大きく揺らぐ事態となった。

 

14日早朝、香港立法会(議会)。逃亡犯条例改正案を審議する委員会の会議室には、普段はスーツを着ている民主派議員がTシャツ姿などのラフな格好で集合した。親中派議員が入室すると「違法開催だ」と叫び、激しいもみ合いに。委員会はわずか10分ほどで中止された。

 

香港政府の改正案提出から約40日が経つが、民主派の反対で委員長さえ選べず実質審議に入れていない。

 

親中派が多数を占める立法会で民主派が勢いづく背景には、「中国当局が事件をでっちあげ、香港の民主活動家が中国本土に引き渡される」との主張が市民の間に浸透しつつあるからだ。

 

4月末のデモ行進には主催者発表で約13万人(警察発表は約2万3千人)が参加し、2014年の民主化デモ「雨傘運動」以降、最大級のデモとなった。

 

親中派も一枚岩ではない。「中国とのビジネス上のトラブルが刑事事件として立件される」と警戒する経済界を支持基盤とする一部政党は、審議の先送りを公然と主張している。

 

14日に発表された香港大の世論調査によると、林鄭月娥行政長官の支持率は44・3%に急落。17年7月の就任後、最低の水準で、政権運営は試練を迎えている。

 

米国議会が今月、「香港にいる米国人のリスクが高まる」とする報告書を発表するなど、国際的な懸念も高まっている。

 

香港政府が掲げてきた条例改正の必要性にも、疑義が向けられた。昨年、台湾で起きた殺人事件で容疑者の香港人が香港に戻り、台湾当局の訴追を免れたことが改正の理由だが、台湾当局は今月9日、「香港から台湾人が中国本土に引き渡される」として、改正案に反対の立場を表明した。

 

 成立へ中国政府圧力

各方面から「集中砲火」を浴びる香港政府だが、今年7月までの成立をめざす方針を変えていない。中国と香港の関係に詳しい香港の外交筋によると、中国政府から民主派に譲歩しないよう圧力を受けているという。政府の方針が民意に振り回される事態が本土に飛び火することを警戒しているためとみられる。

 

実際、香港では03年、国家の分裂や政権転覆につながる動きを禁じた「国家安全条例」の立法に反対する大規模なデモが発生し、撤回に追い込まれた。

 

香港で最も市民の対立が大きい政治テーマになり、香港政府は中国政府から繰り返し立法化を要求されても慎重な対応を続けてきた。

 

民主派の活動家の一人は漏らす。「国家安全条例で摘発されても香港の刑務所に収監されるだけだが、逃亡犯条例改正案が成立すれば身柄が中国に引き渡されることもある。逃亡犯条例の方がはるかに脅威だ」

 

中国本土と香港の司法制度の違いは大きい。中国では司法機関共産党の指導下にあり、最高裁長官にあたる最高人民法院の院長は17年、「司法の独立など西側の誤った思想は断固拒否する」と発言した。中国は死刑の執行数が世界で最も多いとされるが、香港は93年に死刑制度を廃止している。【515日 朝日】

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香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしているようですが、香港政府の意向など中国本土政府の前では何の意味もなさないでしょう。

 

****逃亡犯条例 香港の自由守りぬけ****

香港立法会(議会)が、犯罪人の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正審議で紛糾している。改正されれば、香港で中国批判の言論は影を潜め、政治的自由は形骸化しかねない。

 

(中略)香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしている。だが、中国本土では多くの民主、人権活動家が政治犯罪とは別件で勾留・逮捕されており、香港政府の説明は説得力を欠く。

 

さらに、外国人の香港への旅行者やビジネスマンらも中国本土への引き渡し対象となり、ことは中国と香港だけの問題にはとどまらない。

 

米国政府は五月、条例改正について「米国と国際企業にとって、安全なビジネス環境としての香港の優位性が失われる」とする報告書を発表した。中国に批判的な外国人にとっても、香港は安全な場所とはいえなくなる。

 

国際社会が、香港に対する中国の政治的干渉に疑心暗鬼になるのは、香港返還の際に国際公約したはずの「一国二制度」を骨抜きにする振る舞いをだんだんと露骨にしているからである。

 

二〇一七年の共産党大会の演説では、中国の習近平国家主席は「香港の全面的な管轄権を握り締める」とまで言い切った。

 

香港住民の動きに目を移せば、挫折はしたものの、香港住民は一四年、行政長官選挙の民主化を求める七十九日間の「雨傘運動」を闘い抜いた。

 

抗議デモに続き、立法会占拠の動きもある。暴力は避けねばならぬが、香港の民主的な自由を守ろうとする住民の気持ちが失われていないのは心強い。

 

条例改正は、香港自身が「高度な自治」を捨て去る自殺行為に近いように映る。立法会には丁寧で真剣な議論を望みたい。【518日 東京】

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【朝日】にある改正案に反対する親中派というのがどの程度の数なのか知りませんが、全体的には立法会は親中派が多数を占めていますので、数の力で押し切る可能性が大きいようにも思えます。

 

ここまで問題が大きくなった以上、習近平指導部も今更後には引けないでしょう。

 

そうなると、いよいよ香港の政治的独自性は・・・ということです。

現状でも香港当局は中国本土の意向で動いており、「高度な自治」は形骸化しています。

 

****天安門事件30年、陰る香港 国際会議断念、会場を台湾に変更 民主派団体、入境拒否を懸念****

1989年6月に起きた中国の天安門事件から30年を迎えるのを前に、中国の民主化の現状などを話し合う国際フォーラムが18日、台北で始まった。

 

主催者側は香港での開催を希望していたが、中国に批判的な人物に対する香港当局の入境拒否が近年相次いでいることを考慮し、断念した。

 

主催は香港の民主派団体「香港市民支援愛国民主運動連合会」など。この日は、当時の学生リーダーで、事件後に出国した王丹氏らが登壇し、明らかになっていない事件の死傷者数などについて議論した。同会によると、登壇者で現在も中国に住む人はいないという。

 

香港は高度な自治が保障される「一国二制度」が適用されている。しかし、中国の習近平(シーチンピン)政権は香港と台湾が独立運動で連携するのを警戒し、香港当局への圧力を強化。近年は、政治的な理由とみられる入境の拒否が相次いでいる。

 

王氏も過去に香港当局から入境を拒まれた経験がある。このため、主催者側は、フォーラムの他の出席者も香港入りできないことを危惧し、香港での開催をあきらめたという。台湾側の共催団体「華人民主書院」の曽建元・主席は取材に、「中華圏において民主化を果たした台湾は、中国の将来や変革を議論するのに適した場所だ」とアピールした。

 

香港政治に詳しい立教大の倉田徹教授はフォーラムが台湾で開催された経緯について、「欧米の人権団体が拠点を置き、中国の人権や民主化の情報を国際社会に英語で発信できる香港で、言論や研究活動が不自由になることは非常に問題だ」と懸念を示した。【519日 朝日】

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「逃亡犯条例」改正案が成立すれば、中国に批判的な人物は入境拒否ではなく、拘束され「中国当局が事件をでっちあげ、中国本土に引き渡される」危険性も。

 

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欧米大企業のサプライチェーンに組み込まれた新疆ウイグル族の思想教育的(強制)労働

2019-05-18 23:25:04 | 中国

(新疆のトルファンで行われた春の祝祭で撮影されたウイグル族のナン 中央のナンには「私と私の国」を意味するスローガンが。 本来、ナンはウイグル族のアイデンティティを示す聖なる象徴でもある食材ですが・・・・【BITTER EINTER “新疆でナンの「中国化」が進む】)

 

【「強制収容所」ではなく「職業訓練センター」】

中国の新疆ウイグル自治区において、イスラム系ウイグル族などが100万人規模で「強制収容所」に拘束され、「再教育」されている・・・という話は、次第に定説となりつつありますが、過熱する米中貿易戦争・覇権争いの影響か、拘束人数について、300万人という数字もアメリカ側からは出ています。

 

****ウイグルの施設は「強制収容所」、米高官の非難を中国否定****

米国防総省幹部が先週、中国の新疆ウイグル自治区の「強制収容所」に300万人近くが拘束されていると非難したことについて、中国政府は6日、これを真っ向から否定した。

 

米国防総省アジア・太平洋安全保障担当のランドール・シュライバー次官補は先週の記者会見で、同自治区の収容施設を「強制収容所」と呼び、推計「300万人近く」が拘束されていると非難した。

 

これに対し中国外務省の耿爽報道官は定例会見で、シュライバー氏の発言は「完全に事実と矛盾している」と述べ、「中国側は強い不満と断固とした反対の意を表明する」と抗議。「米当局関係者に対し、新疆の問題を通じて中国に内政干渉することをやめるよう再度要請する」と述べた。

 

国連の委員会が引用している推計によると、新疆ウイグル自治区の収容施設には、イスラム教徒の少数民族ウイグル人や、同じくイスラム教徒が大半を占めるチュルク人ら100万人超が拘束されているという。

 

中国政府は、以前は収容施設の存在自体を否定していたが、現在はこれを認める方向に転換。しかし、施設は「職業訓練センター」であり、分離主義や宗教的な過激思想対策の要だと主張している。

 

耿報道官は「現在、新疆ウイグル自治区は政治的に安定しており、経済も発展している。そこでは社会の調和がとれている」と話し、「人々は平和な生活を送り、働いている」と述べた。 【57日 AFP】

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中国側は「職業訓練センター」と主張しており、施設の公開も行っています。

 

****中国、新疆の収容施設を公開 ウイグル族を「教育」と主張****

中国政府は(4月)27日までに、新疆ウイグル自治区カシュガル市で、イスラム教徒の少数民族、ウイグル族などの収容施設を一部の海外メディアに公開した。

 

国際社会では多くのウイグル族が強制収容されていると批判が高まっているが、当局者は「テロを防ぐため、法に基づいて教育している」と述べ、正当な措置だと主張した。

 

26日に公開されたのは「カシュガル市職業技能教育訓練センター」と称する施設で、日本の報道機関では共同通信だけに取材を認めた。

 

施設の責任者によると入所者は約1500人で、過激主義やテロ活動に関わったものの、程度が軽微とされた人たちが対象という。【427日 共同】

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一箇所を見せられても、その他の施設の実情はわかりません。

 

仮に、職業訓練を行っているにしても、強制的に入所させているなら、それは「強制収容所」と評されても仕方がないところです。

 

【思想・脱宗教教育を含むプログラムのもとで行われる「雇用創出」】

職業訓練云々はともかく、中国政府が、「仕事のある者は安定する」(習主席)と、新疆における「雇用」創出を重視していることは間違いありません。

 

そして、そのこと自体は正しい判断です。

 

しかし、現地で行われている「雇用」創出は、思想・脱宗教教育を含むプログラムのもとで行われ、“抵抗すれば過激派シンパと疑われ、拘束されかねない”とも。

 

そうなると、その「雇用」は強制労働に限りなく近いものともなります。

 

そして、その労働によって生産されたものが、最終的には欧米大企業の商品に使われ、欧米(多分、日本も含まれるのでしょう)消費者の手にわたる・・・・という構図があると指摘されています。

 

****中国のウイグル弾圧、欧米企業も無縁で済まず ****

欧米の大手衣料品メーカーや食品会社が、中国政府のイスラム教徒同化策に巻き込まれている。

 

アディダス、へネス・アンド・マウリッツ( HM )、クラフト・ハインツ、 コカ・コーラ 、ギャップといった企業が、新疆ウイグル自治区を通る同国の長く不透明なサプライチェーンの最後に位置しているのだ。

 

地元住民や国営メディアなどによると、同自治区では住民が強制的に訓練プログラムに送り込まれているが、その一環で地域の工場で働くケースが珍しくない。

 

複数の公式文書からすると、ウイグル人や他のイスラム教徒を対象とした同プログラムには政治的な教化という重要な要素がある。

 

プログラムの課程は職業訓練のほか、標準中国語、共産党の重要性や国家団結、法律や過激思想対策(あまりに保守的な服装や頻繁すぎるお祈りを避けること)を網羅している。軍隊さながらの訓練が含まれることもある。

 

労働者も工場の幹部も、そうしたプログラムに抵抗すれば過激派シンパと疑われ、拘束されかねない。

 

一部の企業はそうした強制的な訓練プログラムについて、差別のない職場環境を義務付けたサプライヤー規定に反するとしている。

 

ただプログラムの一環としての工場での労働は、企業側には気づかれないことが多い。中国政府は新疆での暴力や過激な宗教思想への対策の一環として、国内企業に同地での雇用創出を指示しており、それが欧米企業の関知しない下請け契約を通じて行われることも少なくないからだ。

 

地元当局者らは取材に対し、訓練プログラムが強制ではなく、貧しい住民の職探しを支援するための施策だと述べた。新疆の政府は文書を通じ、同自治区に強制労働はなく、そうした話は「うわさや中傷」だとしている。

 

綿製品を手掛ける 華孚時尚 (ホアフー・ファッション)がアクスに持つ大きな綿糸工場は、政府と協力して1カ月の職業訓練を実施している。

 

中国とカザフスタンの国境に近いこの都市は、有刺鉄線や警察による検問所、監視カメラで埋め尽くされている。住民の4人に3人はウイグル人だ。

 

華孚の訓練は201712月に600人でスタートした。ネットに掲載された発表文の写真には、迷彩服を着て直立不動の姿勢を取る女性労働者が写っている。地元政府は通達で、同社の工場を「大規模な職業訓練施設」の一部だとしている。

 

住民と話すのは難しい。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が最近行った現地取材は当局者に干渉された。

 

(中略)同社のことを良く知る関係者2人によると、華孚が新疆で生産する糸は中国の他地域のほかにバングラデシュやカンボジアの工場に運ばれ、HMの店舗で売られるTシャツになる。

 

そうした糸はアディダスやエスプリ・ホールディングスのサプライチェーンにも登場する。ただ、両社は華孚から直接の購入はしていないという。

 

アディダスは質問に対し、調査が終わるまで華孚からの糸購入を見合わせるようサプライヤーに助言したと述べた。同社はサプライヤーが新疆政府の機関を通じて人を雇うことを16年に禁止している。強制労働や差別への懸念が理由だ。

 

エスプリは華孚を調査中だと説明。HMは新疆でサプライヤーとの新たな関係を築く計画はないとしている。(中略)

 

一方で華孚は、労働者全員が自らの意思でそこにおり、同社の労働管理システムは「国際慣例と規制を完全に順守している」と主張。社内訓練プログラムは民族や宗教に関係なく、全ての新入社員に義務付けられていると説明している。

 

中国の習近平国家主席は数年前に新疆の本格的な抑圧を命じた。当局がイスラム武装派による犯行だとする爆弾事件などが相次いでいたためだ。

 

政府の戦略の中心にあったのが雇用促進であり、習氏は14年に地元当局者に対し、「仕事のある者は安定する」と述べている。

 

大手衣料品メーカーは新疆への生産移転に際し、5年間の税控除や電力・土地および職業訓練に対する補助金を提供されてきた。

 

米アパレル・履物協会(AAFA)の幹部ネイト・ハーマン氏は、同協会がウイグル人の置かれた状況や新疆のサプライチェーンの不透明性について議論してきたと述べた。

 

新疆南部のホタンおよびカシュガルの当局は2017年、「田舎の余剰労働者」10万人を職業訓練に送り込む3年計画を発表した。

 

アクス当局の文書によると、同地の当局者は過去2年に4000人を超える住民を招集し、工場労働のニーズに合った「集中的で非公開の軍隊式管理」の下、脱急進思想や布製造のコースを施した。多くは工場に向かったと書かれている。

 

(中略)カルバンクライン、トミー・ヒルフィガー、ナイキ、パタゴニアを顧客に持つという世界最大のシャツ製造請負会社、香港の溢達集団(エスケルグループ)は、綿花の一大産地である新疆に3つの製糸工場を設けた。

 

車克焘・最高経営責任者(CEO)は、当局者が2017年に新疆南部出身のウイグル人の紹介を始めたと述べた。

 

同社は過去2年に34人を受け入れたが、採用の決定や訓練は政府からは独立して行っており、「採用は強制されていない」という。

 

カルバンクラインとトミー・ヒルフィガーを傘下に持つPVHは、素材サプライヤーの精査を強化する計画だとした。ナイキは新疆産の綿を使用しているかどうかをサプライヤーに聞いていると述べた。パタゴニアはコメントを控えた。

 

政府の発表によると、新疆ジンリユアン・ガーメントは政府当局から紹介された村民の就業前に、「脱過激思想」を含む訓練プログラムを実施した。

 

同社は欧州を拠点とするコフラ・ホールディング傘下の小売りチェーン、CA向けにジャケットを生産した。新疆のテレビでは7月、ミニーマウスの描かれたピンク色の子供用パーカを同社工場の労働者が縫っている場面が流れた。

 

ディズニーの広報担当者は、同社には新疆の衣料品工場との関係は存在せず、アクスの同工場によるパーカ製造の許可もしていないと述べた。それらが偽造品かどうかは明らかにしなかった。

 

CAの広報担当者は、監査で問題が見つからなかったため同工場から昨年ジャケットを買ったと述べた。ジンリユアンはコメント要請に応じなかった。

 

7月に政府系の現地経済誌に掲載された記事によると、国有企業の中糧屯河(COFCO)の幹部らは政府の貧困緩和策に貢献するため、アクスのある村を訪ねて工場の労働者を採用した。同社は中国最大のトマト加工会社で新疆は最大の生産拠点だ。クラフト・ハインツやキャンベル・スープにトマトペースト、コカ・コーラに砂糖を供給している。

 

記事では、働きたがらない村民がいることにマネジャーらが言及していた。

 

中糧屯河は文書で、記事に書かれた出来事は「断じて起きなかった」と述べた。同社の労働者は自らの意思でそこにいるという。

 

クラフト・ハインツは、新疆産トマトは調達全体の5%を占めており、米国で売られているものはないとした。キャンベルは自社トマトペーストのうち中国産は2%未満で、オーストラリアとマレーシアで販売していると述べた。

 

コカ・コーラは、サプライヤーが「責任ある職場と人権に関する当社の厳しい規定」に従うことを義務付け、第三者機関を使って順守状況を監視していると語った。【517日 WSJ】

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経済がグローバル化した現在、先進国で消費される商品の多くが、多かれ少なかれ途上国の劣悪な労働条件に依拠したサプライチェーンによってもたらされています。

 

そして最終的なサプライヤーである大企業はそうした実態を十分に把握していない、もしくは敢えて厳しくチェックしようとはしていない・・・という実態も。

 

一応、形式上は劣悪な労働条件による企業はサプライチェーンから排除するように監査している企業も少なくありませんが、どこまで本気でチェックしているかということになると・・・・。

 

今はどうか知りませんが、かつて中国の下請け企業では、監査用に見せる表工場と、実際の生産主力となる裏工場を持っている・・・といった話もありましたが、それにしても最終生産者の大企業が本気でチェックしようと思えばわからないはずはないのでは・・・とも。

 

そうした現状を考えれば、上記【WSJ】の報じるような状況があっても不思議ではありません。

 

【顔認証技術による民族監視】

中国政府のウイグル族対策としては、“ご自慢”のAIを駆使した顔認証システムが、新疆だけでなく全国規模で活用されているとか。

 

****中国当局、ウイグル人の特定・追跡に顔認証技術使用か 米紙***

中国当局が、イスラム教徒の少数民族ウイグル人を国内全体で追跡するため、大規模な顔認証システムを使用していると、米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。(中略)

 

同紙は14日、中国における監視カメラの巨大ネットワークに組み込まれた顔認証技術が、外見を基にウイグル人を特定し、国内での動向を追跡するために使用されているという記事を掲載。

 

これによると現在、浙江省の杭州市や温州といった富裕都市をはじめ、同自治区外に暮らすウイグル人を追跡する目的で、警察が人工知能技術を駆使しているという。

 

同紙は、同国中部のある都市では、住民がウイグル人かどうかを確認するために、月に50万回もの読み取りが行われたとしている。

 

中国政府は2017年、AI業界で世界をけん引していくとの計画を発表。その一方で近年、民族間の激しい緊張状態を背景に、最新技術が警察の厳重な監視に用いられているという懸念が国際社会に広がっている。

 

同紙が引用した専門家らの話では、中国政府がAI技術を民族分析に用いたのは、把握されている限り今回が初めての事例で、同国各都市でこの新システムへの関心が高まっているという。 【416日 AFP】

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中国はこうした監視技術に自信を深めており、一方で、そうした技術を欲しがる国も多々あります。

 

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顔認証など人工知能(AI)を使った技術を犯罪捜査などに幅広く利用しているのが中国だ。ハイテク強国を目指す習近平政権の国家戦略の一環でもある。(中略)

 

習氏は、全国の治安当局者が参加した今月上旬の会議でも、「ビッグデータを大きなエンジン」として活用し、治安対策の質と効率を高めるよう指示した。

 

中国は、高度な顔認証技術と治安当局のデータベースを基に、数秒で人物を特定できるシステムなどを開発。AIを逃亡犯の検挙に役立てている。

 

一部の都市では、歩行者の信号無視対策にも利用されている状況だが、中国共産党の一党独裁体制下、プライバシーや人権の問題を指摘する声は小さい。

 

100万人規模のイスラム教徒が「再教育」目的で施設に収容されているという新疆ウイグル自治区でも、膨大な顔認証カメラを設置しウイグル族らイスラム教徒を監視している。

 

同自治区にとどまらず、「中国国内全体でウイグル族を追跡するため顔認証システムが利用されている」という米紙の報道もある。

 

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の一環で、AIの監視技術をベネズエラやフィリピン、ジンバブエなど途上国に輸出しており、反政府デモの弾圧に悪用される可能性もある。【516日 産経】

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顔認証技術に関しては、アメリカ・サンフラシスコ市が、プライバシーとの関連や女性や肌の色の濃いひとの顔の識別に問題があることなどから、警察や行政機関などで顔認証技術の利用を禁止する見通しとなったことが最近話題になりました。

 

まあ、以下のような活用なら問題もないでしょう。

 

****野生パンダを顔認証で識別するアプリ、中国で開発****

中国で、顔認証技術を使って環境保護活動家らがパンダを個体ごとに識別するアプリが開発された。国営新華社通信が17日、伝えた。

 

研究者らはまた、ジャイアントパンダの画像12万点と動画1万点のデータベースを構築。これにより個々のパンダの正確な識別が可能となる。

 

中国ジャイアントパンダ保護研究センターの研究者らは新華社に「このアプリとデータベースは、山奥に生息して追跡が難しい野生パンダの個体数、分布、年齢、性比、出生と死に関するより正確で包括的なデータを集める助けになる」と語った。(後略)【518日 AFP】

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絶望的な格差が生む命がけの人々の流れ 「壁」が深める分断

2019-05-17 22:52:22 | 難民・移民

(高台から壁の向こうの米国側を見つめる人たち=メキシコ・ティフアナ【5月6日 GLOBE+】)

 

【欧州が門戸を閉ざし、南米経由で「ダリエンギャップ」を超えてアメリカを目指す人々】

アフリカから欧州を目指す人々、中南米からアメリカを目指す人々などの移民・難民に関する記事は多々あります。

 

どれも心に重く残るものがありますが、受け入れ国側にも無条件では受け入れられない事情(自分たちの利益を守りたいという思い)もあり、どうしたらいいのか・・・というところでは答えが見つかりません。

 

そうした記事の比較的最近のもののなかから、特に印象に残ったものをいくつか。

 

アメリカでトランプ大統領が壁で追い払おうとしている、主に中米「北の三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの3カ国からアメリカを目指す人々はよく取り上げられており、それはそれで悲惨なのですが、その中にはアフリカ・アジア各地からの人々も混じっているそうです。

 

欧州への入国が難しくなったため、南米エクアドルやブラジルからコロンビア経由でアメリカを目指すためのようです。

 

また、そのように南米からアメリカをめざす場合、パナマにはルートの空白地帯「ダリエンギャップ」という「壁」が存在するそうで、彼らはそこを命がけで乗り越えてアメリカを目指すとか。

 

****4年で100倍、アメリカを目指す移民はなぜパナマのジャングルを目指すのか****

「エクソダス」壁を越える移民たち

南北アメリカ大陸は地図上ではつながってみえるが、車で渡ることはできない。北米アラスカから南米パタゴニアまで縦断する「パンアメリカン・ハイウェー」が途切れる空白地帯「ダリエンギャップ」があるからだ。

密林と湿地。マラリアや毒蛇。麻薬カルテルと武装組織。直線距離で100キロほどの「空白地帯」に潜むいくつもの危険が、豊かな北米への道を阻む「壁」になってきた。

 

ところがここ数年、ダリエンギャップを越え、遥かアフリカやアジアから米国を目指す移民たちが増えている。その先の道のりも、「エクソダス」(大量脱出)と呼ばれる移民集団の出現で一変しているという。何が起きているのか。

 

■おもちゃ屋2階の安宿

「ホテル・グッドナイトに行け」

南米から北米を目指す移民が集まる中継地と聞き、コロンビア北部メデジンからバスで9時間かけて着いた港町トゥルボ。材木が積まれた船着き場で移民がいそうな場所を尋ねると、一言、そう言われた。

 

それは、移民局のそばのおもちゃ屋の上にある安宿だった。「Good Nigth」とつづりを間違えた看板を掲げた2階からフロントに入ると、受付の女性のポロシャツの胸には、今度は「Goog Night」の刺繍。案の定、スペイン語しか通じない。

 

それでも、移民が集まる理由はこの宿の名にあった。宿帳にはインドやパキスタン、ガーナやエリトリアなどアジアやアフリカの国々の名が並ぶ。

 

ホテルの通路に、カメルーン人が集まっていた。同国では少数派の英語圏住民で、政府軍に家を焼かれ国を逃れたという。元大学生の男性(25)は「英語名のホテルだから言葉が通じるかも」と、ここを選んだ。同じ境遇の仲間を見つけ、ともにダリエンギャップを越えて北米を目指す。「家で兵士に射殺されるのを待つより、密林で死ぬ方を選ぶ。命がけです」

 

窓のない部屋の壁を見ると、「心配するな、神とともにある」と英語の小さな落書きがあった。

 

■「速度を落とせば転覆する」

翌朝、郊外の波止場からダリエン湾を渡るボートに乗り込むと、すし詰めの乗客45人のうち、41人が移民で、中には子どもも10人いた。ビーチリゾートの町に向かう一般の定期便だが、オフシーズンのいまは、移民船のようになっていた。

 

出発するや小さなボートは荒波を猛スピードで進む。すぐに波しぶきで目を開けていられなくなった。10秒ごとに波がしらを越え、乗客の体がそろって宙に舞い、着水のたびに椅子に打ち付けられて悲鳴が上がる。歯を折りかねない。慌ててハンカチを口に含もうとしたが、手すりから手を離せなかった。(中略)

 

■「天国」への道

船旅を終えた移民たちは夜明け前、「コヨーテ」と呼ばれる密航手引き人とともに数十人の集団になって、町はずれの山道から自然保護区のジャングルに入るという。その入り口には、看板が立っていた。

 

「El Cielo」。スペイン語で「天国」を意味する。いくつもの山を越えて崖を下り、川を渡った先に、天国を思わせる美しい湖沼があるという。だが道中は、誘拐や強盗、置き去りといった危険に満ち、けがや熱帯病で歩けなくなっても助けは来ない。港に面した宿のオーナー、ネシー・ホハナ(30)は「捨てられた服と人骨、とりわけ子どもの骨がよく見つかる」と話した。(中略)

 

■ジャングル最奥の多国籍な村

川を十数回渡り、いくつもの牧場を通り抜けて5時間半。隣町に着いた時には日が暮れかけていた。移民たちはこの密林の奥を、小川の水をすすり、ビスケットを食べながら1週間ほどかけて越えて、パナマ側にある人の住む村を目指す。

 

私は、パナマ市から移民が到着する地を目指した。その一つで、少数民族が暮らすジャングル最奥の村バホチキトを訪ねると、まるで国際会議を思わせるような多国籍の顔ぶれであふれかえっていた。

 

川べりで水浴びするハイチ人やペルー人、高床式住居の木陰には青いターバンを巻いたインド人。人口約250人の村に世界中からの移民が約450人も集まっていた。

 

国境警備隊の詰め所の黒板には、ネパールやスリランカといったアジア、コンゴやカメルーンなどのアフリカ、キューバなどのカリブ海まで、20を超す国名と人数がチョークで殴り書きされていた。

 

移民が増えたのは2015年ごろという。体を壊す人も少なくなく、前日にもアフリカ系の人の水死体が見つかっていた。村はずれの墓地には、土を盛ったばかりの跡があった。

 

女性や子どもの姿も目立つ。近くの村で会ったハイチ人女性は15人のグループで6日間、密林を歩いた。「食べ物がなくて本当に大変で、マラリアになった人もいます。でも子どもは米国で産みたいんです」と膨らんだおなかをさすった。

 

■コロンビアからパナマへ、4年で100倍

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計を見ると、コロンビアからパナマに入った外国人は11年に300人足らずだったのが、15年と16年は約3万人に。わずか4年で100倍に膨らんだ。

 

その出身国はアフリカ、アジアを中心に約50カ国に及ぶ。なぜわざわざ南米に渡り、危険なダリエンギャップに身を投じて北米を目指すのか。

 

UNHCR中米キューバ地域代表ジョバンニ・バス(48)は、「欧州に向かう地中海ルートが困難になり、だれもが代替ルートを探していた」と話す。中東やアフリカなどから難民が殺到した15年の「欧州難民危機」で欧州諸国が門戸を狭めたため、代わりに米州に向かうようになった、というのだ。「密林を抜ける危険が、十分に理解されているとはとても思えない」

 

この新しい流れの中で、米州に目を向けた移民の「玄関口」になったのが、多くの国からビザなしで入国できるエクアドルや、五輪やワールドカップで外国人労働力を受け入れてきたブラジルだ。

 

国を逃れざるをえない人、貧しい母国に帰らずに豊かな国を目指す人。ダリエンギャップはこうして、彼らが明日を描くのに、どうしても越えなければならない「壁」になっていった。

 

 

ダリエンギャップを越えた移民たちはその後、さらに北上し、「北の三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの3カ国から米国を目指す人たちの波に流れ込んでいく。

 

警察やギャングを恐れ、人目を避けて身を潜める「伏流水」だった移民の流れが突然、堂々とした「大河」に変貌したのは昨年10月のことだ。数千人規模のキャラバンを組んで米国境に迫り、中間選挙を前にした米大統領トランプが「侵略者だ」と非難したことで世界中のメディアの注目を集めた。

 

「エクソダス」(大量脱出)と呼ばれ、「完全にゲームを変えた」とも言われるキャラバンの背景に何があるのか。私は同行することにした。(後略)【5月6日 GLOBE+】

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【大量難民が出ている内戦国イエメンに命がけで渡る人々】

一方、激しい内戦と飢餓・コレラに苦しみ大量の難民を出している中東イエメンにアフリカ各地から命がけで渡ろうとする人々が絶えないそうです。イエメン経由でサウジアラビアを目指す人々です。

 

****密入国、内戦のイエメンへ アフリカから死の危険冒しても/はびこる密航業****

中東イエメンは内戦で「世界最悪の人道危機」と言われ、約18万人が周辺国に逃れている。ところが、逆にイエメン密入国するアフリカの若者が後を絶たない。さらに北隣の産油国サウジアラビアに渡って稼ぐためだ。

 

イエメンと海峡を隔てて約30キロのジブチ。首都ジブチから北へ向かう幹線道路に、1・5リットルのペットボトルを手に歩く若者を50人以上見かけた。ほとんどが隣国エチオピア出身で、国境から150キロ以上歩いて密航船が出るオボックを目指す。

 

エチオピア中部出身のムハンマド・イドリスさん(22)がのどの渇きを訴えて記者の車を止めた。手には水を入れるために拾った食用油の容器。気温は38度。野宿しながら国境から15日かけて歩いてきた。

 

イドリスさんは1年半前にも密航船でイエメンに入ったが、武装した男らに拘束され、親族は身代金を要求された。そのとき受けた拷問の傷が首筋に残る。解放後にサウジで羊飼いとして2カ月働き、不法滞在強制送還。だが故郷は仕事もなく貧しい。危険を冒してでも再びサウジに渡ることを決めた。

 

持ち物は刃渡り10センチのさびた護身用ナイフと2枚の顔写真。「途中で死んで顔がわからなくなっても写真があれば誰かわかるから」

 

ジブチは以前からサウジなど裕福な産油国への経由地になっていたが、2012年ごろから人の流れが増加。国際移住機関(IOM)によると、隣国ソマリアなどから出る者と合わせると、16年に11万7千人がイエメンに渡り、17年も9万9千人。大半がエチオピア人で、一部にソマリア人もいる。

 

夏場の気温は50度になり、のどの渇きや病で息絶える者もいる。船は強風や高波、客の乗せ過ぎで時折、転覆する。内戦状態と知らずに入ったイエメンで戦闘に巻き込まれたり、誘拐されたりすることもある。無事にたどり着けるのは、ごく一部だ。

 

オボック周辺には、対岸のイエメン人らと共謀して密航ビジネスで稼ぐ業者がいる。沿岸警備隊などが取り締まるが、当局者は「海岸線は100キロ以上あり、密航業者が動くのは夜中。すべてを止めるのは難しい」と話す。

 

「我々の助けなしでサウジにたどり着くのは不可能だ」。モウラと名乗る密航業者の男(48)はそう断言した。エチオピアやイエメンにネットワークを持つ「ビッグボス」の下で働いていると自慢した。(中略)

 

内戦下のイエメンに事情を知らない人々を送り込む点をどう思うのかと問うと「やつらは知っているさ」と反論し、こう付け加えた。「需要があるからビジネスをする。それだけだ」

 

 ■貧困背景、裕福なサウジ目指す

(中略)それでも多くの若者が流れ込むのは経済上の理由だ。中国などの支援で急速な経済発展を遂げるエチオピアだが、17年の1人当たり国民総所得は740ドル(約8万1千円)で、2万90ドルのサウジの27分の1程度。しかも都市と農村の格差が大きい。

 

「サウジに行けば金持ちになって仕送りもできる」といった密航業者の話が「サクセスストーリー」として広まる。

 

中部の農村出身のアブドルファッターハ・ムハンマドさん(19)は、家族が財産の牛1頭を売って密航業者に払う約6万円を工面。家は貧しく、8人兄妹の末っ子のムハンマドさんは学校には5年通っただけだ。

 

イエメンの内戦は知らず、ジブチで国際機関の説得を受けて思いとどまった。「金を作って送り出してくれたのに、家族にどう説明すればいいのか。期待されていたから帰るのも怖い」(5月16日 朝日)

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【「壁」で分断された二つの世界】

そして壁をはさんで分断される二つの世界。

 

****流れ作業で移民に有罪判決 壁が分かつ世界の現実****

米大統領トランプが掲げ、米社会を揺さぶり続けるメキシコとの国境の壁建設計画の現場をみようと2017年8月、私は米国とメキシコの国境3200キロをたどった。

 

四半世紀をかけて築かれた1100キロにおよぶ「壁」の周辺には、毎年数十万人が検挙され、数百もの遺体が見つかる異様な世界が広がっていた。

 

米南西部アリゾナ州ツーソンの地方裁判所。証言台にラフな格好の男性6人と女性1人が、弁護士に付き添われて横一列に並んでいた。数日前に不法入国容疑で逮捕されたメキシコなどからの移民だった。

 

「通関施設を通らずに入国しましたか」。裁判長が英語で、日時と場所だけを替えた通りいっぺんの質問をすると、移民たちはスペイン語で一言「シー(はい)」と答える。審理は1人わずか1分40秒。全員に有罪判決が言い渡され、すぐ次の7人が入ってきた。

 

「オペレーション・ストリームライン」(流れ作業)の名の通り、ベルトコンベヤー式に進む裁判に私は戸惑った。移民に犯歴をつけて再犯時の刑を重くし、再び越境するのを思いとどまらせる狙いで2005年に始まった。人権を軽視した「移民処理工場」との批判が絶えない。

 

だが、彼らは命があるだけまだ幸運かもしれない。私はツーソンにある移民の支援団体の事務所で、「デスマップ」(死の地図)と呼ばれる地図を見たときの悪寒を思い出した。国境周辺の広大な砂漠が無数の点で赤く染まっていた。一つ一つが遺体の発見場所だ。

 

「移民はどんどん砂漠の奥地に向かっています」。地図をつくっている団体の代表ダイナ・ベア(66)は、硬い表情を見せた。

 

米側で国境管理強化を求める声が強まり、1990年代に西海岸の都市部に壁ができると、2000年代には東の砂漠に回り道する移民が増加。

 

人里離れて警備が手薄な砂漠にあえて踏み込み、途中で力尽きたとみられる移民の遺体が年に百数十体も見つかるようになり、地元に動揺が広がった。

 

自動小銃で武装した自警団ができる一方、ベアたち支援団体が砂漠に水タンクを置く活動を始めた。

 

私は自警団や支援団体に同行して3日間、国境近くの砂漠を回った。雨期で緑は豊かだったが、気温は40度を超え、足元はトゲのあるサボテンだらけで、毒蛇もいる。「3週間もあれば白骨化し、身元も死因も分からなくなってしまう」。検視官の話にぞっとした。

 

国境は高さ5メートルほどの鉄柵で仕切られ、センサーを備えた監視塔が周囲を見下ろしている。この「壁」を越えたメキシコ・ノガレスは、米国を目指す移民の拠点だ。

 

夕方に支援施設を訪ねると、礼拝堂の床の上で数人が力尽きたように寝入っていた。マイクロバスが横付けされると、この日強制送還されたばかりの移民が続々と入ってきた。

  

「水が尽きてから2日間歩き続けた。たくさんの遺体を見た」(農場作業員)

「マフィアの許可なく壁を越えると殺される。金が払えないなら麻薬を背負えと言われた」(車塗装工)

移民たちは、追い詰められた様子で苦境を訴えた。

 

10年代に入ると、砂漠に加え、国境の東半分に沿って流れるリオグランデ川での遺体発見が相次ぐようになる。治安が悪化した中米から逃れ、川を渡ろうとする移民が急増したためだ。

 

トランプ政権が真っ先に目をつけたのも、この川だった。壁建設計画を示し、地元で激しい反対運動が起きていた。

四半世紀の間に雇用確保やテロ防止、麻薬対策など様々な理由で、壁は延び続けた。ひとたびできると、壁を隔てて新しい二つの世界が生まれていく。

 

その現実を取材の終盤に、西海岸で米国と国境を接するメキシコ北部ティフアナで出会った家族が教えてくれた。鉄柵を握りしめた看護師ベロニカ・ルビオ(41)の視線の先、壁の向こうに、生後3カ月のめいソフィアの姿があった。目を細めても、抱きしめることはできない。壁がつくった冷徹な現実だった。(後略)【5月3日 GLOBE+】

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【それでも「壁」を超える人々】

「壁」を築いて排除しようとしても、命がけで壁を越える彼らを思いとどまらせることはできません。

 

****「必死に壁をジャンプした」****

彼らの旅の終着点は、米国との国境を高さ5メートルほどの壁で阻まれたメキシコ国境の町ティフアナ。難民申請の窓口に行くと面接までに数週間待たされるため、壁を乗り越えて米国境警備隊に出頭する移民が多いという。

 

彼らはその後、施設に収容されたり、監視用のGPS機器をつけられたりしながら、米国内で審査の結果を待つことになる。(中略)

 

移民支援団体「ボーダーエンジェルズ」のウゴ・カストロ(47)は、壁を越える彼らの姿を思い起こした。「必死だった。地元住民にも迷惑がられ、もう待てない、と思ってジャンプしていったよ」

 

■得をしたのは誰だ

エクソダスが押し寄せたのは、米中間選挙の直前だった。(中略)トランプには最高の贈り物で、完璧なタイミングだった」という専門家もいた。得をしたのは、トランプだった。

 

そして、再選に向けて動き出したトランプは「壁をつくれ」に続く新しいキャッチフレーズをつくった。「壁を完成させろ」。国家非常事態を宣言し、中米3カ国への援助停止を表明した。

 

国境を閉鎖すると脅されたメキシコは4月下旬、数百人の移民の一斉逮捕に踏み切った。逃れた移民たちは貨物列車の屋根に飛び乗って、北を目指した。

 

■なぜ壁を越えるのか

ダリエン湾を渡るボートが出るトゥルボから米国境に面したティフアナまで、飛行時間でわずか10時間ほど。移民たちが命がけでたどる約7000キロの道のりを眼下に見ながら、日本のパスポートを持っているというだけで、自由に、そして安全を考えた上で目的地に行ける「特権」が不条理に思えた。

 

貧困、治安、政情不安など理由は様々だが、移民たちに共通しているのは、母国で生きることへの絶望だ。

 

失意の弱者たちは今、集団になることで、かつてない力を手に入れた。それが、グローバル化の恩恵を受けた国で格差にあえぐ弱者をいらだたせる。その連鎖が「自国第一主義」を加速させていく。

 

しかし、「壁」を築いて排除しようとしても、命がけで壁を越える彼らを思いとどまらせることはできない。その過程で多くの命が失われ、分断が深まっていく。

 

回り道のように見えても、人々が母国で希望を持てるようにするために、手を携えるしかない。移民集団の出現は、特権を享受している私たちにその責任を問いかけている。【5月6日 GLOBE+】

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米中貿易戦争 「中国が貿易戦争に勝つための3枚のカード」は有効か?

2019-05-16 23:16:54 | 中国

100ドル紙幣と100元紙幣【5月15日 ブルームバーグ】)

【また出てきた「レアアース輸出制限」】

米中貿易戦争だか、米中覇権争いだか、米中間の問題については読み切れないほどの記事が溢れています。

 

輸出依存度が低いアメリカに比べて中国は「持ち札」が少なく、対抗措置もとりづらいとされているなかで、「また出てきたか・・・」という感があるのがレアアース。

 

日本にとっては、記憶に新しいところです。(その後の展開は、日本の中国産レアアース離れもあって、中国のレアアース産業は苦しくなっているとも聞きます)

 

アメリカも中国産レアアースに依存しているのは日本同様です。

 

****米、対中関税対象からレアアース再び除外 資源依存浮き彫りに****

米国は、中国製品の関税対象から希土類元素(レアアース)など重要な原料を除外すると再び決めた。コンピューターや軍用機器などに使われる中国の原料資源に米国が依存する姿を浮き彫りにした。

米通商代表部(USTR)は13日、約3000億ドル相当の中国製品に適用する可能性のある最大25%の追加関税について、対象品目リストを公表した。

6月17日にパブリックヒアリングを開くとし、医薬品やレアアースを対象に含めなかった。バッテリーなどで使われるアンチモンやヘリウム、天然黒鉛は対象外となった。

米国内で産出されないものの研究開発で用いるセシウムやルビジウムのほか、ガソリンや鉄鋼製造で使うとされるホタル石も関税を免れた。

中国は世界最大のレアアース産出国だ。米国は昨年にも、対中関税第3弾の適用対象から、レアアースや希少金属(レアメタル)を除外している。

コンサルト会社の幹部は「これらの原料は米産業、防衛に死活的に重要で、短期の代替調達先も存在せず、関税となれば中国より米国の最終使用者がより大きな困難に直面する」と指摘した。【515日 ロイター】

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中国側からすれば、レアアースが交渉カードになる・・・・という話にもなります。

 

****米国の対中関税リストに含まれなかったものとは?―中国メディア****

2019515日、観察者網は、米国による対中関税リストに含まれなかったものについて指摘する記事を掲載した。 (中略)

記事は、関税リストに含まれなかったものは、「希土類元素(レアアース)、重要な鉱物、医薬品や医療機器」だと紹介。観察者網のコラムニストはこれより前に、「中国が貿易戦争に勝つための3枚のカードの1枚が『レアアースの対米輸出規制』」と指摘していたという。

コンサルタント会社のアダマス・インテリジェンスは、「米国の工業と国防にとってレアアースは何より重要であり、短期間で代替供給できるところはない。追加関税をかけると中国より米国の方が痛手になる」と分析した。

(
中略)さらに記事は、「レアアースの採掘のみならず、精製、生産などの全体的な供給チェーンにおいて、中国の実力は群を抜いている」と紹介。開発から生産できるようになるまで時間がかかるため、「中国が米国へのレアアース輸出を禁止するなら、米国は自分で開発生産しなければならず、需要量が大きいため、需要を満たせるようになるには数年が必要であり、空白期間ができてしまう」という。【516日 レコードチャイナ】

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ただ、中国がレアアースについて何らかの制限をすれば、(日本と違って)アメリカは黙ってはいないでしょう。

 

アメリカにとってのレアアースのように、中国もアメリカからの輸入を必要としているものがあるでしょうから、そうしたものへの報復措置も含めて、“両者リング中央、足を止めての流血の打ち合い”にもなりかねません。

 

あまり現実的とは思えません。

 

【「中国が貿易戦争に勝つための3枚のカード」】

そのレアアースを含めて、「中国が貿易戦争に勝つための3枚のカード」については、以下のようにも。

 

****中国が貿易戦争に勝つための3つの切り札―中国メディア****

2019512日、環球時報は、米中貿易戦争において中国が米国にしたたかな打撃を与えうる3つの切り札を持っているとする評論記事を掲載した。

記事は「米国との貿易戦争において、中国には2つの小さな切り札と1つの大きな切り札がある」とし、この3つの切り札について説明している。

1
つ目の小さな切り札は、米国へのレアアース輸出を完全に禁止すること。あらゆる半導体チップ製品に必要とされる有色金属の原料となるレアアースは中国が世界の産出量の95%を占めていることに言及し、「中国が徹底的にレアアースを禁輸すれば、米国では多くのものが製造できなくなる。

 

自国で採掘しようにも需要を満たすレベルに到達するには何年もの時間が必要になる。そのころには中国でハイエンドなチップ製品が作れるようになっているはずだ」と論じた。

2
つ目は米国債の大量売却を挙げている。2008年の世界金融危機時に中国政府は世界の流れに逆らって3カ月間米国債を売らずに持ち続け、これにより信用を安定させ、米国に活路を与えたと説明。

 

現在中国は2兆ドル(約220兆円)の米国債を持っており、これを売却すれば米国経済は悲惨な目に遭うことになるとした。

そして、大きな切り札として「米国企業が中国に持つ市場」を挙げた。記事は昨年米国企業が中国市場で3800億ドル(約416000億円)余り稼いだのに対し、中国企業は米国市場で200億ドル(約22000億円)余りしか稼いでいおらず、その差が非常に大きいことを指摘。

 

そこで市場の均等を訴えて中国市場における米国企業製品の販売を制限すれば、中国市場に依存してきた米国企業に大きな痛手を与えることができるとし、その例としてビュイックブランドを展開するGM(ゼネラルモーターズ)や、アップルを挙げている。【516日 レコードチャイナ】

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【いつも取り沙汰される米国債売却は可能か?】

2番目の米国債売却は、今回に限らず、米中関係が悪化するたびに取りざたされるものです。

 

もし、中国が米国債を大量売却し、米国債価格が暴落するようなことがあれば、アメリカ経済だけでなく、世界の金融市場が大混乱となり、中国同様に大量の米国債を保有する日本への影響も甚大なものが考えられます。

 

ただ、一般論としては、そのように世界経済にも甚大な影響があり、また、米国債価格が急落すれば中国自らも損を被り、核攻撃のように中国の方に被害が大きいため、「中国の大量売却はありえない」とみられています。

 

実際に中国が米国債価格を揺るがすような売却が可能かどうかについても疑問が。

 

****中国の対米報復、米国債売却は打撃にならず****

中国は11000億ドルの米国債を保有しているが、これを売却して米国債市場に冷水を浴びせる可能性をちらつかせている。だが、米企業を手当たり次第にたたくほうが、ドナルド・トランプ大統領の打撃になりそうだ。

 

(中略)米国債市場を巡る脅威は現実離れしている。2015年と16年には、諸外国が近年みられなかったほどの急速なペースで米国債の売却を継続した。

 

より高い利回りの投資先を探すポートフォリオ戦略の一環だった。これを受け多くの投資家が、米国債市場が売りに耐えられなくなると懸念を強めた。

 

だが、そうはならなかったし、そうなりそうな見込みも全くなかった。

 

国債価格はたいていの場合、中銀の政策金利を巡る投資家の予想に左右される。世界で最も流動性の高い米国債では特にそうだ。大量に売却されても、価格の変動は短期的なものにとどまる。

 

16年に米国債が市場に溢(あふ)れた際も、数カ月にわたって少しばかりの影響を及ぼしたかに見えたが、程なく吸収された。

 

しかもそれは、連邦準備制度理事会(FRB)が引き締め政策に余念がなかった頃の話だ。今回は、中国との緊張関係を背景に投資家が利下げを予想し、米国債に買いを入れている。利回りは価格と反対方向に動くが、10年債利回りは足元で2.4%近辺に低下している。

 

中国にとってさらに状況を複雑にしているのは、外貨準備の運用において安定性と流動性の面で米国債が最も便利な資産であることだ。

 

中国当局が利益を保管するための他の資産を探すのは難しいだろう。海外利益を国内に還流させれば人民元を押し上げるため、米国の関税に加え、輸出業者がさらなる問題に直面することになる。

 

だからといって、中国が米国債を売却できないわけではない。当局は現金を銀行に預けるか、他国で米ドル資産を購入することができる。ドルを人民元に換える代わりに、さらにユーロや円に換えることも可能だ。

 

だが、米国債市場にせいぜいかすり傷しか負わせられないのに、中国政府がそれほど骨折りする根拠があるだろうか。むしろ、中国の報復は米大手企業など、効果を出せる標的に向かいそうだ。例えばアップルやボーイングは、中国に顧客も工場も持っている。

 

ここ10年というもの、世界の投資家はFRBに逆らう度に痛い目に遭ってきた。中国であってもその手はうまく行かないと知れば、多少なりとも安心できるだろう。【515日 WSJ】

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要するに、中国の保有米国債を持ってしても、米国債市場を人為的に操作することは難しい・・・ということのようです。

 

ただ、ポートフォリオ戦略の一環としての15年、16年のときと、貿易戦争としての(アメリカに打撃を与えるための措置としての)今回では市場に与えるインパクトは全く異なるようにも思えます。市場全体が浮き足立てば、実際に市場はその方向に動き、更にそれが投資家を走らせる・・・ということにも。

 

いずれにしても、下記のブログによれば、アメリカが中国の米国債売却を危険とみなせば、ブレーキをかけることもできるようです。

 

****アメリカは、中国の米国債を凍結・没収できる****
アメリカには、「国際緊急経済権限法(IEEPA)」という法律があります。これは安全保障や外交、経済上の重大な脅威に対し、大統領の権限で金融制裁できるというものです。

また、2001年の9.11テロ後、「米国愛国者法」が成立しました(2015年に一部改正して「米国自由法」に名称変更)。これは安全保障上の脅威に対し、資産を凍結・没収できることを定めた法律で、米国債も対象になります。

この2つの法律によって、アメリカはボタンを押すだけで、中国の保有する資産を凍結・没収することができます(米国債は現物があるわけではなく、電子登録でアメリカによって管理されています)

経済評論家の渡邉哲也氏は、本誌20173月号の中でこう指摘していました。

「アメリカが本気で怒ったら、中国を潰すのは簡単なんです。アメリカには、脅威国に対して報復できる法律があるので、中国が所有するアメリカ国債をすぐに凍結できる。そうなれば、中国の信用は一気になくなり、経済は崩壊します」【2018729日 大阪 しげ太郎氏 「天使のモーニングコール ファンの会」】
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ただこれも、「中国の保有する資産を凍結・没収」というのは、核戦争一歩手前状態でもあり、現実問題としては誰も考えたくない局面です。(中国も、その点では同様でしょう)

 

なお、貿易戦争の手段としてではなく、“世界の金融市場に緊張が広がり、人民元の下落に歯止めがかからなくなれば、中国は米国への報復としてではなく、通貨防衛のため159000億ドル規模の米国債市場で自国保有分の一部売却に動く可能性はある。”【515日 ブルームバーグ】とも。

 

もっとも、元安は中国の輸出に有利で、元安が進むほど、米国による追加関税の痛みが和らぐことになりますので、中国が通貨防衛に乗り出すかどうかは、また別問題のようにも思えますが。

 

「中国が貿易戦争に勝つための3枚のカード」に戻ると、レアアースにしても、米国債売却にしても現実性については???ですが、3番目の「米国企業が中国に持つ市場」は意味があるでしょう。

 

巨大な中国市場に依存してきた米国企業(アップル、ボーイングなど)を標的に、中国市場から締め出すとの圧力をかければ、それは有効でしょう。

 

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アメリカとイラン  十分な説明がないまま煽られる危機感

2019-05-15 22:58:52 | イラン

(攻撃を受けた船。アラブ首長国連邦のフジャイラの港で13日撮影【5月15日 Newsweek】)

 

【「戦争ではない合理的な対応」が必要(アメリカの駐サウジ大使)】

イランとアメリカの緊張関係については、512日ブログ“トランプ政権のイラン圧力強化で高まる緊張 パレスチナ・シリアにも連動か”で取り上げ、一昨日ブログでもサウジの石油タンカーがアラブ首長国連邦(UAE)沖で攻撃を受けた事件について取り上げました。

 

そのサウジ石油タンカー攻撃事件の続報。

 

****石油タンカーへの「テロ攻撃」、海上安全への脅威 サウジが声明****

サウジアラビア政府は14日、アラブ首長国連邦(UAE)の領海付近で同国の石油タンカー2隻が受けた「テロ攻撃」は、海上安全への脅威だと指摘した。サウジプレス通信が14日に伝えた。

同通信によると、サウジ内閣は声明で、エネルギー市場へ影響が及び世界経済を危険にさらす可能性があることを踏まえると、海上と石油タンカーの安全を確保することは国際社会が共有する責務だと説明した。【515日 ロイター】

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海上安全への脅威」であることはわかりますが、依然として誰が攻撃したのは判然としません。イランは関与を否定しています。

 

わけがわからないまま、危機感だけが煽られているようにも。

 

アメリカの駐サウジ大使も“合理的な対応”を求めています。

 

****サウジ石油タンカーへの攻撃、戦争ではない合理的な対応必要=米大使****

米国のジョン・アビゼイド駐サウジアラビア大使は、サウジの石油タンカーがアラブ首長国連邦(UAE)沖で攻撃を受けた事件について、米国には「戦争ではない合理的な対応」が必要だとの認識を示した。

情報活動に詳しい米当局者は13日、この事件について、イランが実行した疑いが強いが、決定的な証拠がないと明らかにした。イランは関与を否定している。

同大使はリヤドで記者団に「何が起きたのか、なぜ起きたのか、徹底的な調査が必要だ。その上で、戦争ではない合理的な対応策を検討する必要がある」と発言。「紛争は(イランの)ためにも、我々のためにも、サウジのためにもならない」と述べた。

大使の発言は14日に公表された。【514日 ロイター】

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“情報活動に詳しい米当局者は、サウジの石油タンカーが攻撃を受けた事件について、米当局はイラン軍が直接関与したというより、イランに同調するあるいは支援を受けている勢力が実施した可能性があるとみていると明らかにした。

同当局者はイエメンのイスラム教シーア派武装組織「フーシ派」やイランを後ろ盾とするイラクのシーア派武装勢力による犯行の可能性があるが、明確な証拠はないとした。”【515日 Newsweek

 

イエメン「フーシ派」はサウジの石油パイプラインもドローン攻撃しています。

「フーシ派」とすると、イラン国内のどの勢力が後ろにいるのか?という話にもなります。もし革命防衛隊が・・・ということなら、実に危険な挑発行為です。

 

ベトナム戦争へのアメリカの本格介入の引き金として利用された“トンキン湾事件”の再現にならないことを願います。

 

【説明がないまま高まる危機感】

上記のサウジ石油タンカー攻撃事件もよくわからいまま危機感が煽られていますが、今回イラン問題については、アメリカ・トランプ政権の対応全般にそうした説明不足が感じられます。

 

****米軍、イラク駐留部隊への「差し迫った脅威」の可能性警告****

米軍は14日、イランの支援を受ける勢力によるイラク駐留部隊への差し迫った脅威の可能性にあらためて懸念を示し、イラク駐留米軍は警戒態勢を強めていると明らかにした。

 

これより先、イラクとシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討に当たる米主導の有志国連合の英指揮官は、イラン傘下の武装勢力による脅威は高まっていないと発言していた。

米中央軍の報道官はこの発言について、イラン傘下の勢力に関する米国や同盟国からの情報で特定された信頼の置ける脅威に矛盾していると説明。有志国連合は警戒態勢を強めており、イラク駐留米軍に対する信頼の置ける、緊急の可能性のある脅威を引き続き注意深く監視すると述べた。【515日 ロイター】

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****米、イラク大使館員出国へ 「イランの脅威」に対応****

米国務省は15日、在イラク米大使館職員のうち、緊急性の低い業務に携わっている職員を出国させるよう指示した。大使館が発表した。米メディアは、イラクの隣国イランからの脅威が理由だと報じた。

 

首都バグダッドの大使館と、北部アルビルの領事館の職員らが対象。大使館は(1)民間交通機関でできるだけ早くイラクを離れる(2)イラクの米関連施設を避ける―などの行動を取るよう米国民に呼び掛けた。

 

イラン産原油の全面禁輸に踏み切ったトランプ米政権は、イランによる米国への脅威が高まったとして、空母打撃群や爆撃機をイラン近海に派遣している。【515日 共同】

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最大限に危機感を煽っているのが、例によってトランプ大統領です。

 

****米標的なら「イランは痛い目に」=トランプ氏が報復警告****

トランプ米大統領は13日、イラン情勢について、記者団に「もしイランが何かするなら、重大な誤りだ。彼らの方が痛い目に遭う」と語った。イランとの間で緊張が高まる中、米国の国益が攻撃の標的になった場合は強力に報復すると警告したものだ。(後略)【514日 時事】

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イラク駐留部隊への差し迫った脅威」「イランの脅威」とは何なのか?

上記【ロイター】にもあるように、有志国連合の英指揮官も疑問を呈しています。

 

****「イランの脅威は深刻化していない」 有志連合の英軍報道官、米と矛盾する見解****

イラクとシリアでイスラム過激派組織「イスラム国」の掃討を目的とした米軍主導の有志連合に加わる英軍の報道官が14日、中東におけるイランの脅威は深刻化していないと発言し、米国の主張とは矛盾する見解を示した。

 

米政府は、自国と同盟国に対するイランの脅威が差し迫っていると警告し、ペルシャ湾一帯の兵力を増強している。

 

しかし、有志連合による「生来の決意作戦」の英報道官を担当するクリス・ギカ少将は、テレビ会議システムを通じて米国防総省で会見し、「イラクとシリアでは、イランが支援する勢力の脅威は拡大していない」と断言した。

 

この発言の後、直ちに米中央軍は、イランの脅威は高まっていると反論。同軍報道官のビル・アーバン大尉は、「米国および同盟国の情報機関は同地域で、イランが支援する勢力の差し迫った脅威について確認しており、(ギカ氏のコメントは)これらの情報と矛盾する」と述べた。

 

米軍はイランの脅威に対抗するためとして過去9日間にわたり、湾岸地域の空母打撃群にB52戦略爆撃機やパトリオットミサイルなどを追加し、配備を増強していた。

 

この見解の相違は、米軍が裏付けとする情報を説明することなく、湾岸周辺の兵力を増強していることに対する疑問を強調する結果になった。

 

専門家の間では、ギカ氏のコメントに加え、米政府はイランが何を計画していると考えているのか、詳しい説明がないことから、トランプ政権が正当な理由なく中東の緊張を高めているとの疑いが生じている。

 

またイラン側も、何も計画などしていないと真っ向から否定。米国の同盟国らは、湾岸地域へのパトリオットミサイルや強襲揚陸艦の配備は偶発的な出来事が大きな紛争を誘発する可能性を高めるとして、事態が深刻化する危険性について警告している。 【翻訳編集】AFPBB News

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同盟国イギリスだけでなく、アメリカ与党内からも説明を求める声が出ています。

 

****米政権、議会とイラン問題の情報共有せず 「闇の中」と不満も****

トランプ米政権とイランの緊張が高まる中、米議員らはホワイトハウスから十分な情報が提供されていないことに不満の声を挙げている。

議員らはイラン情勢について政権から秘密裏に状況説明があってしかるべきだと訴えており、トランプ氏と同じ共和党の一部議員からもそうした不満が聞こえる。過去の政権は国家安全保障上の重要事項について、定期的に議会への説明を行ってきた。

共和党のリンゼー・グラハム上院議員は記者団に対し「われわれは皆、闇の中にいるようだ」と述べた。

ナンシー・ペロシ民主党下院議長は、ホワイトハウスに下院議員への説明を求めたが、まだ同意できないとの返答があったという。

上院関係者らによると、民主党が要請したが、上院での説明会は予定されていない。

上院外交委員会のボブ・メネンデス議員(民主党)は、イランによる米駐留部隊への脅威と米国の対応について「議会が具体的な情報を受け取るのを阻害し続ける政権の対応は正当化し難い」と述べた。

ホワイトハウスからはコメント要請への回答が得られていない。【515日 ロイター】

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サウジ石油タンカー攻撃事件がベトナム戦争介入の契機ともなった謀略“トンキン湾事件”を連想させるなら、こちらの「イランの脅威」はイラク戦争開戦の証拠とされたウソ“大量破壊兵器”をも連想させます。

 

【核合意の履行義務の一部停止】

イランは、ロウハニ大統領が表明していたように、核合意の履行義務の一部を公式に停止したと公表しています。

 

****核合意の履行停止を実行 イラン****

イランの原子力エネルギー当局者は、2015年締結の核合意の履行義務の一部を公式に停止したと述べた。ロイター通信が15日に伝えた。履行停止の方針は8日、ロウハニ大統領が表明していた。

 

当局者によると、低濃縮ウランは300キロ、重水は130トンに定められた貯蔵の上限を撤廃し、今後は無制限に貯蔵する。

 

いずれも核兵器開発に関連する物質だが、イランは余剰分を国外に搬出したり販売したりしており、核合意の上限に達するまでにはまだ余裕があるとみられる。

 

また、核兵器には濃縮度90%以上のウランが必要とされるが、核合意では濃縮度は3・67%までに制限されている。

 

ロウハニ師は核合意を離脱した米国を除く英仏独中露の当事国5カ国に60日間の猶予を設け、原油や金融などの取引が保証されなければ、規定の濃縮度を超えるウランの製造に着手するとしている。【515日 産経】

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この「核合意の履行義務の一部停止」の意味合いは、512日ブログでも触れたように、“核合意で定められた「数値」は違反するが、核兵器開発に直結する活動を困難にするという核合意の「精神」は尊重するというメッセージ”ともとれますが、いずれにしてもアメリカ・トランプ政権がこれを契機に更に圧力を強めること想定されます。

 

トランプ大統領は一応否定してみせましたが、政権内では最大12万人の部隊を派遣する案も検討されているといった話も取りざたされています。

 

****米大統領、対イラン軍事計画巡る報道否定 「派兵検討せず」****
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は13日、当局筋の話として、イランが米軍を攻撃したり、核兵器開発を加速させたりした場合に最大12万人の部隊を派遣する案などを含む最新の軍事計画を、シャナハン米国防長官代行がトランプ政権に提出したと報じた。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、NYTの報道を「フェイク(偽)ニュース」とし、部隊派遣などを計画していないと指摘。「このような計画が必要にならないことを願う。もしこのような計画が実行されれば、計画以上の部隊を地獄に送ることになるだろう」と述べた。【515日 ロイター】

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【ハメネイ師 「イランは抵抗の道を選んだ」】

イラン側の対応は、アメリカとの「交渉」は否定しつつ、「戦争」も否定するというもので、ハメネイ師は「イランはレジスタンス(抵抗)の道を選んだ」とも。

 

要するにトランプ大統領が任期切れで退任するとかいった事態の変化を待って「耐える」というところです。

 

****米との交渉は「毒」 戦争は否定 イラン最高指導者****

イランのイスラム教シーア派最高指導者ハメネイ師は14日、政府高官らとの会合で、2015年締結の核合意から離脱したトランプ米政権について、敵対的な態度を取っているなどと批判し、交渉に応じることは「毒」だとして拒否する考えを強調した。イランのメディアが伝えた。

 

米政権は原子力空母やB52爆撃機などをペルシャ湾周辺に派遣し、イランに対する軍事的圧力を強めているが、そうした中でも交渉姿勢に転じることはないと宣言した形だ。交渉の否定には、国内の改革派から対米融和論が高まるのを封じる狙いもうかがえる。

 

ハメネイ師は一方で、「私たちは戦争を望まないし、彼ら(米国)も同様だ。彼らはそれが利益にならないことを知っている」と戦争への懸念を打ち消し、「イランは抵抗の道を選んだ」と述べた。

 

イランの最高指導者はロウハニ大統領がトップを務める行政府のほか司法府、軍などを掌握し、国政全般に決定権を持つ。ハメネイ師は反米の保守派として知られ、発言は米国との対決で指導部を一致団結させる思惑もありそうだ。【515日 産経】

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【ロウハニ大統領 「前例のない」圧力に国民結束を呼びかけ】

耐えきれるかどうかは国内情勢にもよります。

 

****「ガソリン値上げ」報道、誤報だった イラン各地で混乱****

イランで5月初旬、反米保守強硬派の有力通信2社が特ダネとしてガソリン価格の値上げを報道したことで、市民がガソリンスタンドに殺到し、各地で混乱が起きた。

 

政府はすぐさま報道を否定。司法当局が両通信社の幹部を事情聴取するなどして事態の収拾を図ったが、騒動の背景には国内の政治対立があるのではないかとみられている。

 

イランではガソリン代に政府の補助金が充てられており、ガソリンが1リットル1万リアル(実勢レートで約7円)と、ベネズエラやスーダンと並び、世界有数の安さを誇る。ガソリン価格が上昇すると、輸送費もかさみ、物価上昇に直結するため、市民はガソリンの値上げには神経をとがらせている。2007年には値上げに端を発して首都テヘランで暴動が起きたこともある。

 

核合意から離脱したトランプ米政権がイランへの制裁を再開して以来、物価高や現地通貨の価値急落などで経済は低迷。米国がイラン産原油の完全禁輸措置に踏み切る矢先の報道とあって、国家歳入の約6割を占めるとされる原油収入の激減が予測される中、政府が予算不足からガソリンへの補助金を削減するのではないかとの観測が強まっていた時期でもあった。【514日 朝日】

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イラン国内でも危機感を煽り、この機に乗じて穏健派政権を揺さぶろうとする保守強硬派の勢力があります。

一般に、対立する両陣営の強硬派と称される勢力は、互いにもっとも敵対する言動を示しながらも、危機が高まることで自らの存在感をアピールできるという点では共通する利害関係にあります。

 

これまで革命後のイランにとって最大の試練はイラン・イラク戦争でしたが、ロウハニ大統領はそのイラン・イラク戦争当時以上の圧力を受けているとも表明し、結束を呼びかけています。

****イラン大統領、米国から「前例のない」圧力 国内の結束呼び掛け****

イランのロウハニ大統領は11日、米制裁強化に直面する中、現在の状況は1980年代のイラクとの戦争時よりも厳しいかもしれないと指摘し、この状況を乗り切るため派閥間の結束を呼び掛けた。国営イラン通信(IRNA)が伝えた。

トランプ米大統領は9日、イランに対し 核放棄に向けた交渉の席に付くよう促した上で、両国の軍事衝突の可能性を排除しないと語った。

米国は今月、イラン産原油禁輸措置を強化したほか、湾岸地域での米軍の配備を拡大させている。

ロウハニ大統領は「現在の状況が(1980─88年の)戦時よりも良いのか悪いのかはいえないが、戦時には金融機関や石油販売、輸出入に問題はなかった。あったのは武器購入への制裁だけだった」と指摘。

 

「敵からの圧力はイスラム革命史上前例のない戦争だ。しかし、私は将来に大きな期待を抱いている。われわれが結束すれば、この厳しい状況を乗り切れると確信している」と述べた。

ロウハニ大統領は、2015年の核合意から米国が昨年離脱し、制裁を再開したことを受け、国内強硬派からの批判に直面しているほか、身内の穏健派からも一部離反が出ている。【513日 ロイター】

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トランプ政権がどのような対応を示すのか、ロウハニ政権が耐えきれるのか・・・不透明です。

 

日本外務省によると、イランのザリフ外相が来日し、16日に安倍晋三首相、河野太郎外相とそれぞれ会談するそうです。

 

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ベネズエラ  しぶといマドゥロ政権 クーデター失敗でアメリカの介入にすがる反政府勢力 

2019-05-14 23:05:54 | ラテンアメリカ

(ベネズエラ北西部コヘデス州エルパオの軍施設で、兵士らと行進するニコラス・マドゥロ大統領(中央)とブラディミル・パドリノ国防相(中央右)。大統領府提供写真(201954日撮影)【55日 AFP】)

 

【クーデター失敗で圧力を強めるマドゥロ政権】

べネズエラでは430日、暫定大統領就任を宣言した野党指導者のグアイド国民議会議長が、マドゥロ大統領政権の打倒を掲げ、軍に決起を促すとともに国民にも抗議行動を呼びかけ、国内各地で治安部隊と市民らの衝突がありましたが、大規模な軍の政権離反は起きず、“クーデターは失敗した”との評価が一般的です。

 

その後の流れを記事見出しで見ると以下のようにも。

総じて、マドゥロ大統領側が事態を掌握し、反政府勢力に対する圧力を強めている状況がうかがえます。

 

“マドゥロ大統領が空軍基地視察 軍掌握をアピール ベネズエラ”【53日 毎日】

“ベネズエラ、蜂起の市民ら18人に逮捕状請求”【55日 読売】

“ベネズエラ大統領、「米国の軍事介入に備えよ」 兵士らに指示”【55日 AFP】

“ベネズエラ、野党議員の逮捕状を請求中 特権取り消しへ”【56日 朝日】

“ベネズエラ、元国会議長ら捜査へ 反逆容疑で、米は圧力”【58日 共同】

“反体制派の国会副議長拘束=「クーデター未遂」関与で―ベネズエラ”【59日 時事】

“ベネズエラ、対ブラジル国境再開”【511日 時事】

“グアイド氏派の副議長を軍事刑務所に収容 ベネズエラ”【511日 AFP】

 

国民に多大な犠牲を強いる失政を続けるマドゥロ政権ですが、軍部の支持のものとで、これまでも“じぶとく”権力を掌握してきました。

 

これまでも何回も取り上げたように、単に失政がある、国民不満が大きいというだけでは強権的支配はなかなか覆らないという見本のようでもあります。

 

【マドゥロ氏の力を過小評価していたグアイド氏とアメリカ】

そして、1月以来のグアイド氏の“決起”は、アメリカ・トランプ政権の後押しを受けてのものでしたが、今までのところ、“しぶといマドゥロ政権”という構図を変えるには至っていません。

 

「野党指導者の力量を米国が過大評価している」「反対勢力がマドゥロ氏の力を過小評価していた」との指摘も。

 

****こう着状態のベネズエラ、打開策は限定的 米軍事介入の可能性は?****

南米ベネズエラの首都カラカスで430日に発生した軍の蜂起は、瞬く間に終息に向かった。

だが、ニコラス・マドゥロ大統領に残された時間はごくわずかだと米国は主張する──。

 

こうした状況について専門家らは、野党指導者の力量を米国が過大評価しているとしながら、長期化したこう着状態を打開するための選択肢は限られていると指摘する。

 

米国を含む50か国以上から、暫定大統領就任への承認を得ている野党指導者のフアン・グアイド国会議長は430日、カラカスの空軍基地で「勇敢な兵士」の一団から支持を得たと声を挙げた。この直後、政権に対する抗議デモが発生したが、マドゥロ氏がこれを鎮圧するまでにはそう時間はかからなかった。

 

これを受ける形で、マイク・ポンペオ米国務長官は1日、「軍事行動もあり得る」とベネズエラ政府をけん制した。

 

しかし、米国は過去3か月にわたってすでに、広い範囲を対象とした経済制裁を同国に科している。ベネズエラ政府にとって命綱である国営石油会社もその対象だ。

 

中南米地域における民主主義を後押しする「インターアメリカン・ダイアログ」のマイケル・シフター会長は、「反対勢力がマドゥロ氏の力を過小評価していたのは明らかだ。マドゥロ氏は抗議活動による相当な圧力に持ちこたえる能力がある」と述べた。(後略)【53日 AFP】

 

【トランプ政権の思い描くシナリオどおりには進まない現実】

グアイド氏は暫定大統領就任を宣言する以前から米トランプ政権と連絡をとっていたとの報道もありますので、同氏の決起、その後の展開はアメリカ・トランプ政権の描くシナリオに沿ったものでもあるでしょう。

 

あわよくばベネズエラらと結託するキューバも巻き込んで一網打尽に・・・という思惑もあるのでしょう。

 

ただ、状況は思い描いたようには進んでいません。

「軍事行動もあり得る」とのトランプ政権ですが、今は対外的問題だけでも中国、イラン、さらに北朝鮮の問題を抱えており、それらに比べてアメリカにとってのベネズエラの重要性・緊急性は劣後するでしょう。

 

また、仮に軍事介入すれば、アメリカの軍事行動に強いアレルギーを有する南米諸国の強い反発を招くという問題もあります。

 

そこらを考えると、アメリカが自らの血を流す覚悟でベネズエラに関与するとも思えません。

 

****ベネズエラ危機、独裁打倒の失敗とアメリカの無責任****

<グアイドの反政府デモは今回も不発 軍事介入をにおわせつつ何もしない米政府の罪>

始まりはサプライズだったが、終わりは今までどおりの尻すぼみ。ベネズエラの独裁政権打倒はならず、例によってトランプ米政権は、全てはキューバとロシアのせいだとかみついた。

それは430日の早朝だった。野党指導者で国会議長のフアン・グアイド(1月に暫定大統領への就任を宣言している)は、軍人や有力な野党政治家レオポルド・ロペスらを従えて軍隊に決起を呼び掛け、共にマドゥロ政権と戦おうと訴えた。

(中略)市民による大規模なデモ行進も、軍幹部の離反も現実には起こらなかった。

そしてグアイドによる動画公開から半日もたたないうちに、今回の「決起」は急速に勢いを失っていった。その後はさまざまな臆測が飛び交い、非難の応酬があり、ホワイトハウスは強硬姿勢を取り、ロペスとその家族はスペイン大使館に保護を求める羽目になった。

マドゥロ政権打倒を目指してグアイドが決起を促したのはこれが3回目。そして反政府運動自体はウゴ・チャベスが大統領選に勝利した98年直後から続いている。(中略)


今年1月に暫定大統領に就任すると宣言し、多くの外国政府から支持を受けているグアイドも、(街頭行動で軍の政権離反を促すというチャベス時代の反政府行動と)同じシナリオを描いて行動した。

 

まず、暫定大統領就任でマドゥロ政権の分断を狙った。それが失敗に終わると222日には人道支援を呼び掛け、コロンビアからの支援物資の搬入を試みた。いずれも、軍上層部や政権内部からの離反を期待したものだった。

この数年でベネズエラで最も信頼され、動員力のある民主的な指導者による政権打倒の挑戦は、果たして失敗だったのだろうか。

 

これまでも多くの反政府指導者が、市民の期待を膨らませるだけで成果を上げられず、揚げ句に戦略や指導力をめぐる内紛を起こして消えていった。グアイドも現時点では、彼らの失敗例と何ら変わるところがないように見える。

そこで背景に浮かび上がってくるのが、アメリカの政策だ。トランプ政権は、腐敗や不正、人権侵害などを理由に、マドゥロ政権の圧政への関与が疑われる個人を対象にした国際的な制裁を主導している。

 

今のところ約500600人が対象とみられており、アメリカ入国に必要なビザの発行禁止や、資産凍結などを行っている。

 

グアイドの暫定大統領就任による政権打倒が失敗に終わると、石油の禁輸を行い、ベネズエラ中央銀行を制裁対象に加え、マドゥロ政権を支援するキューバへの渡航制限強化を発表した。

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カ国封じ込めの一環
ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、中間選挙を翌週に控えた昨年111日に、フロリダ州マイアミで演説を行った。そこはベネズエラやキューバからの移民が多い場所だった。

このとき以来、トランプ政権は対ベネズエラ政策と対キューバ制裁強化を関連付けるようになった。これは、ボルトンが「暴政のトロイカ」と呼ぶキューバとベネズエラ、ニカラグアの3カ国に対する広範な封じ込め政策の一環だ。

キューバとベネズエラを同時に締め付ければ、キューバはマドゥロ政権への支援をやめるだろう、そしてベネズエラの政権が代わればキューバへの石油供給は止まり、宿敵キューバの政権は沈没する。ボルトンらはそんなシナリオを描いていた。

だが、それは願望にすぎない。両国に圧力をかけることと、それぞれの国で政治的な変化が起きることの論理的なつながりはどこにも明示されていない。

キューバ経済を痛めつけ、革命後に接収された米企業の資産に投資する第三国企業への訴訟提起をちらつかせるといった制裁を強化すれば、苦しくなったキューバは一段とベネズエラにすり寄るかもしれない。

一方でベネズエラに対する原油の禁輸や腐敗官僚の資産凍結などを進めれば、困ったマドゥロ政権はキューバの軍事顧問団への依存を強めるだけだ。

 

キューバ以外の、やはり強権的な体制の国々にもすがるだろう。現に中国からは50億ドルの融資を受けた。ロシアからは軍事顧問100人を受け入れている。トルコはマドゥロ政権の金資産売却に手を貸している。イランの支援もあるはずだ。

制裁は切り札にならない
一方で、制裁がアメリカ政府の強力な切り札となったためしはない。制裁強化が政権転覆につながる理屈は示されていない。相手国を経済的に苦しめれば市民が一斉に蜂起し、エリート層が寝返って政権交代を促すという保証はどこにもない。

過去の例を見ても、制裁の強化で政権交代が実現した例はない。制裁強化を通じてベネズエラで平和的な民主化を実現するというシナリオは、論理的にも歴史的にも信憑性を欠く。

それでも4月末の蜂起が失敗に終わると、ボルトンはまたぞろマドゥロ政権を非難した。トランプはベネズエラ国内にいるキューバ顧問団を悪役に仕立て、対キューバ制裁のさらなる強化をちらつかせた。顧問団が残虐かつ無能なマドゥロ政権の存続に絶大な役割を果たしていると言いたいらしい。

 

一方で国務長官のポンペオは、追い詰められたマドゥロの国外脱出をロシアが制止したと語ったが、そうした形跡は確認されていない。

この間、トランプ政権は一貫して政権転覆を支持する姿勢を強調し、「あらゆる選択肢」を検討していると繰り返し、ベネズエラ国民の期待を高めてきた。

 

マドゥロ政権がまだ健在なことを認めた430日の記者会見でも、ボルトンは同じせりふを繰り返した。しかし、これでは「アメリカが助けに来てくれる」という期待をいたずらに膨らませるだけだ。

数々の専門家や関係者が指摘していることだが、アメリカが軍事介入することは政治的にも戦略的にも無謀過ぎる。米軍の幹部でさえ、軍事的選択肢は現実的でないとみている。

ホワイトハウスが強硬なのは口先だけだ。反政府勢力を軍事的に支援する具体的な計画は存在しない。それでもトランプ政権は威嚇を続け、反政府勢力に「いつかアメリカが助けに来る」という非現実的な希望を抱かせる一方、マドゥロ政権には「アメリカの軍事介入は近い」と内外の支援者に訴える口実を与えてしまっている。

中南米の現代史上最悪の人道危機を招いたマドゥロは、依然として権力の座にあるが、民衆の抗議と一部兵士の離反で足元が揺らいでいる。(中略)

こうして政権基盤が揺らいできても、あいにく政権交代には至っていない。とはいえマドゥロ政権の不確実性ともろさが露呈したのも事実。幹部の更迭や粛清もあり得る。同じことは、蜂起に失敗した反政府側にも言える。

 

しかし悲しいかな、アメリカの姿勢だけは変わりそうもない。失敗は明白なのに。【59日 Newsweek
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トランプ政権が“都合のいい”シナリオを思い描いて動いているというのは事実でしょう。(対イラン、対中国でも同様ですが)

 

“制裁の強化で政権交代が実現した例はない”・・・・そうかも。

ただ、ではどうすればいいのか? 軍事介入しかないのか?・・・という話にもなり、答えのわからないところです。

 

【“アメリカ頼み”を強めるグアイド氏だが・・・・】

“「アメリカが助けに来てくれる」という期待をいたずらに膨らませる”・・・“期待”というより、もはやアメリカに頼るしかないという“追い詰められた状況”がグアイド氏側の実情のようにも。

 

****ベネズエラ野党、米軍に協力を要請へ ****

政情混乱が続く南米ベネズエラの野党陣営は11日、米軍に協力を要請すると発表した。野党指導者のグアイド国会議長はこれまで米国の軍事介入を受け入れると発言しており、さらに一歩踏み込んだ。

 

軍人への蜂起呼びかけが不発に終わったことで追い詰められつつある中、米国の軍事力に頼ることで事態打開を狙うが、国内外の反発も大きく、実現は不透明だ。

 

11日、カラカスで開いた反政府デモでグアイド氏が演説し、自身が米国に送り込んだ「大使」に対し、米軍の中南米を管轄する米南方軍司令官と会談するよう指示したと明らかにした。「直接的で、広範囲に及ぶ協力関係を設立する」と説明している。

 

グアイド氏は既にメディアを通じ、「もし米国が軍事介入を提案したら私は受け入れるだろう」と発言している。足元でマドゥロ政権が野党議員の不逮捕特権剥奪や身柄拘束で攻勢を強めており、野党陣営は厳しい状況に立たされている。後ろ盾となっている米国の軍事力を盾に、政権をけん制する狙いとみられる。

 

もっとも、グアイド氏はこれまでマドゥロ政権の命令に従い国民を弾圧するベネズエラ軍に対し「政権の犠牲者だ」と説明してきた。仮に軍事介入を要請することになれば米軍に自国の軍を攻撃するよう求めることになるため、これまでの発言との整合性を問われることとなる。

 

軍事介入の実現には高いハードルが残る。トランプ米大統領はこれまで「全ての選択肢はテーブルの上にある」と述べ軍事介入を排除しないとしてきたが、米国内にも反対する声は大きい。グアイド氏を支持する欧州や中南米の周辺国も軍事介入には明確に反対する。【512日 日経】

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****グアイド国会議長、米軍からの支援を模索か 米南方軍との協議要請****

 政情不安が続く南米ベネズエラの反マドゥロ派のグアイド国会議長は13日、これまで以上に米国からの支援を求める姿勢を明らかにした。

 

グアイド議長が駐米大使に指名したカルロス・ベッキオ氏は13日に公開された書簡の中で、米南方軍とグアイド議長側の代表者との間での協議を要請した。書簡は米南方軍のファラー司令官にあてたものとなっている。同司令官はかねてグアイド議長の行動を支持する考えを明らかにしていた。

 

ベッキオ氏は書簡の中で、「戦略的な計画立案を歓迎する」と指摘。そうすることで、ベネズエラ国民への憲法上の義務を果たすことができるようになるとしている。ただ、軍事行動を明確に求めることはなかった。

 

米国はここ数カ月、グアイド議長支持に向けた軍事行動の可能性について排除していない。

グアイド議長については、米国をはじめとする50カ国以上が正統な大統領と認めている。

 

ベネズエラ国内で定期的に開催される全国規模の抗議活動にも停滞の動きが見えており、グアイド議長は変革に向けた新しい戦略を模索し始めている。

 

マドゥロ政権側は今回の書簡を一蹴。ロドリゲス副大統領は「ベネズエラへの軍事介入を要請すること」は国の不安定化を目指す試みだと指摘した。【514日 CNN】

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こういう「小国」の助けを求める声に「大国」が動くというのは、非情な国際関係にあってはあまり現実性はないように思えます。ましてや損得勘定で動くトランプ大統領は・・・(国内選挙対策として、中国・イラン・北朝鮮はどうにもならいけどべネズエラなら・・・という話なら別ですが)

 

一方、マドゥロ政権側には弾圧の格好の口実を提供することにもなります。

 

カリスマ性のある反政府指導者として期待したグアイド氏ですが、状況は次第に厳しさを増しています。

 

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