孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イタリア総選挙  「極右」とも評されるメローニ氏が予想どおり勝利 EUにとって新たな火種

2022-09-26 23:02:06 | 欧州情勢
(26日、ローマで勝利宣言するメローニ氏【9月26日 読売】)

【EUに新たな不安の種】
予想されていたように、イタリア総選挙で旧ファシスト党の流れをくむ極右野党「イタリアの同胞」が上下両院で第1党となることが確実となり、同党の党首メローニ氏がサルヴィーニ氏の右派「同盟」とベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党などとの右派連立で首相に就任すると思われます。

****イタリア極右野党「同胞」の第1党確実、ベルルスコーニ氏らとの右派連立政権誕生へ****
イタリア総選挙が25日、投開票された。旧ファシスト党の流れをくむ極右野党「イタリアの同胞」が上下両院で第1党となることが確実となった。右派の主要3党を中心とする連立政権が誕生する見通しで、「同胞」の女性党首が初の女性首相に就任する公算が大きい。

内務省の発表(開票率99%)によると、同胞の得票率は約26%。右派「同盟」とシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党などと合わせて、上下両院で過半数の議席を獲得することが確実な情勢となった。

「同胞」と両党の連立交渉が順調に進めば、セルジオ・マッタレッラ大統領がジョルジャ・メローニ党首(45)を首相候補に指名し、10月15日までに招集される新議会で首相に選出される見通しだ。

選挙は、前欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ首相の辞任に伴い行われた。「同胞」は、ムソリーニの支持者らが戦後に結党したネオファシズム政党「イタリア社会運動(MSI)」の流れをくみ、国益最優先を掲げる。

連立を組む見通しの2党はプーチン露大統領との関係が指摘され、対露を巡る欧州連合(EU)の結束が乱れかねないと懸念されている。【9月26日 読売】
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かつての弱小政党「同胞」メローニ氏が一躍トップに躍り出てきた理由は、大連立の前政権に参加しなかったことで不満を募らせた有権者の受け皿になったこと。

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21年に発足したドラギ政権は、同盟、フォルツァ・イタリア、民主党、五つ星などを糾合した大連立政権だが、「イタリアの同胞」の人気は、大連立に参加しない「唯一の野党」という立場を維持する戦略が奏功した。

左右の政策の違いを超えて団結した与党に対し、保守政党の「一貫性」を強調。18年総選挙で得票率は4%程度だったが、トップだった五つ星や、同3位だった同盟などポピュリズム(大衆迎合主義)色の強い政党の支持層を取り込んでいるとみられる。【8月1日 毎日】
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右派連合には、コンテ政権で副首相兼内務大臣として国政を左右した移民排斥の右派ポピュリストと評される「同盟」サルヴィーニ氏、かつて数々の女性スキャンダルを垂れ流し、一時は「過去の人」になったような感もあったプーチン大統領とも親しいベルルスコーニ元首相など“ユニーク”な面子が揃っていますが、「同胞」メローニ氏は旧ファシスト党の流れをくむ極右政党で、過去にはムッソリーニを称賛する発言もしているということで、欧州内にとどまらず世界的にも注目されています。

単に、党の出自や本人の経歴だけでなく、移民政策などでEUに対し批判的で「イタリア優先」を掲げるメローニ氏、ロシア・プーチン大統領とも親しい政治家が多い右派連合の登場で、対ロシア・ウクライナや移民対策などでEUの結束が維持できるのかが危ぶまれています。

****“親プーチン政権”誕生か イタリアで鍵握る女性****
EU(ヨーロッパ連合)の主要国でG7(先進7カ国)の一角でもあるイタリアが今、分岐点に立っている。その理由は、次の日曜日に行われる総選挙で、右派連合が勝利すると予想されている。

その中心にいるのが、ジョルジャ・メローニ氏。イタリア第一主義を掲げている。

イタリアの同胞 ジョルジャ・メローニ党首
「『メローニが首相になったらどうなるか』と、ヨーロッパでは心配しているようです。どうなるか? お楽しみは終わりです。イタリアはこれから国益を優先します」

イタリア初の女性の首相が有力視される時の人だが、考え方は極右。過去には、第2次世界大戦の独裁者・ムッソリーニを称賛する発言もしている。

さらに、選挙のあとに心配されているのが、ロシアとの関係。
2008年に史上最年少で閣僚に起用された、メローニ氏。この時の首相・ベルルスコーニ氏は、今回もメローニ氏と連合を組んでいて、ロシアのプーチン大統領とも親しい間柄。

右派連合には親ロシア派も少なくないため、国の政策がロシア寄りに傾くことが心配されている。EUに対しても、批判的な立場をとってきたメローニ氏。

結束してウクライナへの侵攻に反対していたEUに、新たな不安の種となるのだろうか。【9月22日 FNNプライムオンライン】
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ロシア・プーチン大統領との関係では、ベルルスコーニ元首相が“お友達”であるだけでなく、「同盟」サルビーニ氏も、過去にEU議会でプーチン大統領の顔をプリントしたTシャツを着てプーチン大統領を称賛したことも。

【「ファシズムとは決別した」と穏健発言で安全運転のメローニ氏 問題は「それは本心か?」】
なお、メローニ氏本人は「ファシズムとは決別した」と公言しています。

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(一党独裁を敷いたムソリーニの墓の炎を表現し、解党したネオファシスト政党と同じデザインのロゴマーク使用について)「イタリア右派の歴史的シンボルであって、ファシズムとはもはや何の関係もない」として、取り合っていない。

公約では子育て支援やインフレ対策のための減税などを打ち出している。本人はファシズムとは決別したと公言しているが、過去には欧州連合(EU)に懐疑的な姿勢を示したり、ロシアのプーチン大統領を称賛したりした。LGBTなど性的少数者や移民に対する排他的な主張から、EU内ではメローニ氏を「極右」とする見方が強い。【9月24日 日系メディア】
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メローニ氏は選挙中はEUとの協調、ウクライナ支持などで“穏健”な発言を行っていますが、多くが懸念するのは“これが本心ではないかもしれないという点”

****イタリア「新首相」メローニと右派三党連立政権の行方****
(中略)フィナンシャル・タイムズ紙のベン・ホールは、8月18日付け同紙掲載の論説‘The new face of Europe’s radical right is on display in Italy’で、メローニは欧州連合(EU)、大西洋同盟、ロシアと戦うウクライナへの支持を誓っているが、彼女の右派三党連立政権は欧州の懸念を招かざるを得ない、と指摘している。要旨は次の通りである。

・FdI(「イタリアの同胞」)に対する支持は2018年の選挙では4%に過ぎなかったが、以来、ドラギの政権に参加した他の右派政党の犠牲において6倍になった。

メローニの選挙戦の目的は、彼女は過激主義者ではなく、彼女はイタリアの安定と欧州におけるイタリアの地位を保護するだろうと、有権者とイタリアのエスタブリッシュメントを安心させることにある。

メローニは、FdIは英国の保守党、米国の共和党、あるいはイスラエルのリクードに近いと断言する英語、仏語、西語のビデオを公開した。右派連合の共通政策は大雑把であるが、EU、大西洋同盟、ロシアの侵略に対するウクライナの抵抗への支持を誓っている。

・FdIがファシスト政党であるというのは言い過ぎだが、同党にはファシストがいる。若き日のメローニがムッソリーニは優れた政治家だと称賛している映像もSNSに流れている。

・イタリアには大統領、中央銀行、財務省のような強力な独立した機関があり、ポピュリストの政治家に対するテクノクラートのガードレールとして機能している。

しかし、行政権に対する最も重要なチェック機能を果たす大統領は脅威に晒されている。右派連合は憲法を改正し、フランスに類似の大統領の直接選挙制とすることを欲している。

・ムッソリーニを称賛する人物がイタリアの首相に選ばれることはEU各国に深い懸念を生むであろう。大規模な財源の裏付けのない減税、EUの復興基金によるイタリアの2000億ユーロの復興計画の「修正」は更なる懸念の材料である。

メローニは規律があり分別があると自身を売り込んでいる。イタリアと欧州にとっては、三人のポピュリストの指導者から成る政府はそのようには思えないであろう。

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メローニのFdIは傍流の政党だった。選挙に勝って首相に就任する見通しとなるに及んで、彼女は自らの政党を伝統的な保守の政党に衣替えし、その政治的立場に対する国際的な懸念を払拭することに努力している様子である。

8月11日に公開されたビデオ(彼女は仏語、英語、西語を流暢に話している)で、彼女は次の諸点を述べている。

*ファシズムについて:「イタリアの右派は既に数十年の間ファシズムは歴史に手渡してしまっており、民主主義の抑圧と恥ずべき反ユダヤ法を紛れもなく糾弾している」。われわれは確固たる言葉をもって反民主主義的な如何なる漂流にも強烈に反対している。

*EUについて:右派の勝利は惨事であり権威主義への転向、ユーロからの離脱に至る、あるいはその他のナンセンスが言われている。どれも真実ではない。ドラギ政権によって敷かれたEU復興基金へのアクセスのロードマップを危険に晒すことはしない。

*ウクライナについて:「西側陣営におけるわれわれの立場には一点の曇りもない。われわれはウクライナに対するロシアの残忍な侵略を、何の躊躇もなく、糾弾し、欧州および国際場裏におけるイタリアの立場の強化を野党の立場から助けて来た」。

*政治的立場について:「私は欧州議会の欧州保守改革党を率いて来たが、この党は英国の保守党、米国の共和党、イスラエルのリクードと価値観を共有している」。

これらは、いずれも結構である。しかし、問題は、これが本心ではないかもしれないという点だ。

8月11日に公表された右派三党の共通政策も欧州統合の支持、北大西洋条約機構(NATO)のコミットメントの尊重、ウクライナ支持を謳っているが、同盟のサルヴィーニがユーロからの離脱を主張し、プーチンを称賛し、ウクライナへの武器支援に反対したばかりだ。【9月9日 WEDGE】
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対中国に関しては、メローニ氏は従来政権の親中国姿勢からの脱却を掲げています。

****伊・メローニ党首、台湾支持 「親中」脱却の構え****
イタリア総選挙で強硬右派「イタリアの同胞」を勝利に導いた女性のメローニ党首(45)は、「ファシストの末裔(まつえい)」と異端視された党のイメージを和らげ、支持拡大に成功した。外交では、北大西洋条約機構(NATO)を軸とした西側の結束を主張し、親中国姿勢からの脱却を掲げている。

中国の威嚇非難
メローニ氏は総選挙の直前、台湾の中央通信社のインタビューで、右派政権が実現すれば「台湾に強い関心を向けることになる」と述べ、台湾支持を明言した。中国による台湾への軍事威嚇を非難し、欧州連合(EU)が対中圧力を強化すべきだと訴えた。

イタリアは2019年、当時のコンテ政権が先進7カ国(G7)で唯一、中国と巨大経済圏構想「一帯一路」の覚書を結んだが、メローニ氏は、覚書の更新について「明日署名が必要だとすれば、そんな政治的状況ではない」と否定的な立場を示した。

同党のクロセット元党首は本紙に、「わが党は英国の保守党、安倍晋三首相時代の自民党に近い立場だ」と述べている。(後略)【9月26日 産経】
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【対ロシア制裁で苦境の欧州経済】
メローニ氏が掲げる“従来とは異なる政治”が有権者受けするのは、イタリアの厳しい経済事情、それに対し既存政治が有効に対応できなかったことがあります。

****ガス代が前年の8倍の1億円超に…  ウクライナ侵攻でイタリアでエネルギー価格が高騰****
長期化するロシアによるウクライナ侵攻。その影響でヨーロッパはエネルギー価格の高騰に直面しています。間もなく行われるイタリア総選挙にも影響を与えそうです。(中略)

対ロシア制裁の影響でヨーロッパではガスの使用制限などによりエネルギー価格が高騰。市民生活を直撃しています。

イタリアのナポリ。窯から取り出された熱々のピザにはトマトソースがふんだんに使われていますが…
レストランオーナー 「原材料が値上がりしています。特にたくさん使用するトマトですね、ピザに必要ですから」

イタリア料理に欠かせないトマト。日本など45か国に製品を輸出しているこちらの加工工場では、夏の太陽をたっぷり浴びた大量のトマトを7月中旬から2か月ほどかけて、一気に瓶詰や缶詰にしていきます。トマトを茹でる際に必要なのがガスですが…

トマト加工・販売会社社長 「ガス代が去年7月の12万ユーロ(約1670万円)から今年7月は97万8000ユーロ(約1億3600万円)になりました。8倍以上ですよ、とても失望しました」

消費量が去年より10%増えたのに対し、ガス代はなんと8倍!日本円で月額1億円を超えたのです。その影響もあり、こちらのトマトピューレは60%以上、値上げされました。

また、一般家庭でもこの秋・冬はガス代がおよそ30%、電気代が40%上昇の見込みです。街中では…

記者 「こちらのたばこ店のレジの前には、こんな表示が置かれています。去年7月の電気代が600ユーロ(約8万6000円)。今年は1500ユーロ(約21万5000円)と、2.5倍になったと窮状を訴えています」

そんななか、イタリアでは25日、注目の総選挙が実施されます。最新の世論調査では、「イタリア優先」を掲げ、本人はタカ派とされるメローニ氏ら、中道右派連合が優勢で、ドラギ現首相を支持してきた中道左派などを引き離しています。

国民が政府に最も求めることは、「インフレ対策」と「エネルギー危機」への対応で、その背景にあるロシアへの経済制裁については、世論が分かれています。

また、ウクライナへの「支援疲れ」が、国民の選択により影響を与える可能性も指摘されていて、右派政権誕生後のイタリアの立ち位置が注目されています。(後略)【9月23日 TBS NEWS DIG】
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このあたりの経済苦境は他の欧州諸国も同様です。

****ドイツを襲うロシアの天然ガス供給中止 広がる企業倒産の波****
ドイツのデュッセルドルフを拠点にトイレットペーパーを製造するハクレは1928年創業の老舗企業だ。それが今年夏のガス料金高騰で、あっさり倒産してしまった。

ロシアが欧州への天然ガス供給を中止したことで、ハクレのようなエネルギー集約型産業は特に大打撃を被っている。

「あっという間の出来事だった。電気とガスの料金が爆発的に上昇し、とてもではないが顧客に転嫁するのが追い付かなかった」とハクレのマーケティング責任者、カレン・ユング氏はロイターに語った。

8月以降、同社のように債務超過に陥る企業が急増し、欧州一の経済大国ドイツを倒産の大波が襲うのではないかとの恐れが広がっている。

ガス料金の高騰、数十年ぶりのインフレ、リセッション(景気後退)の恐れ、冬の燃料不足といったリスクから国民を守ろうと尽力するショルツ政権に、企業倒産という重圧が加わった格好だ。

ドイツの8月のエネルギー価格は前年同月比139%上昇した。
ハーベック副首相兼経済・気候保護相は今月のテレビインタビューで、生活に苦しむ顧客が商品を買わなくなったからといって企業が必ずしも倒産するわけではない、と発言して炎上した。

政府は企業支援策に数百億ユーロを投じており、国内最大のロシア産ガス輸入企業であるウニパーについては救済に乗り出した。

しかしハクレは、自社のような「ミッテルシュタント」への保護拡大を訴える。ミッテルシュタントは多くが家族経営の中小企業で、ドイツ経済のエンジン役を果たしてきた。

「システム全体に影響を与える巨大企業を見守り、解決策を探すことはもちろん重要だ」とハクレのユング氏。「しかしドイツの雇用の大部分をミッテルシュタントが担っているのも事実であり、そのわれわれが真に解決策を必要としている。ミッテルシュタントが未来もこのドイツで生き残れるように」と語った。

こうした懸念に応え、ハーベック経済相は中小企業への支援拡大を約束。ブッシュマン法相はエネルギー高に苦しむ企業を支えるため、債務超過基準の緩和を計画している。(後略)【9月26日 Newsweek】
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【民主主義は正しく機能しているのか?】
なお、既存政党が極右政党に敗れるというのは、北欧スウェーデンでも見られた現象です。

****スウェーデンで右派過半数に 総選挙で敗北の首相辞意****
北欧スウェーデンのアンデション首相は14日、辞意を表明した。11日に実施された議会(一院制、定数349)総選挙で反移民を掲げる極右の野党、民主党を含む右派勢力の過半数獲得が確実となり、自身が率いる与党、社会民主労働党を中心とする中道左派勢力の敗北を認めた。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、5月に申請した北大西洋条約機構(NATO)加盟は大半の政党が支持しており、政権が変わっても方針転換はないとみられる。(後略)【9月15日 共同】
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現代民主主義においては、既存政治を激しく攻撃し、明快・過激な政策を掲げる政党が有権者の注目を集めやすいという流れがあるようにも。それは民主主義の本来の姿なのか、「失敗」なのか?
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ロシア  部分的動員令で急増する出国者  受入れ対応にEU内で差異 独は受入れ表明

2022-09-25 21:34:36 | 欧州情勢
(ロシアの首都モスクワで、ウラジーミル・プーチン大統領が発表した部分的動員令に反対するデモに参加し、警察に拘束される人(2022年9月21日撮影)【9月23日 AFP】)

【「動員令」以前から欧州で問題となっていたロシアからの入国者の扱い】
ロシアの動員令によって、徴兵を忌避してロシアから出国する者が急増していることに関して、多くの報道がなされていますが、「動員令」以前からロシア人の欧州への入国についてはEU内で問題となっていました。

安全保障上のリスクに加え、まるでウクライナで戦争が起きていないかのように、観光や買い物のために旅行する裕福なロシア人が多く見られるようになっていることへの反発・批判からのことです。

特に陸路の玄関口となるバルト三国のエストニアや北欧フィンランドには強い批判があり、独自の対応もとられました。

****エストニア、一般のロシア人のビザ取り消しへ EU渡航困難に****
エストニアはこれまでにビザを取得した5万人以上のロシア人に対し、週内に国境を閉鎖する。こうした措置を取るのは欧州連合(EU)加盟国としては初めて。これにより一般のロシア人がエストニアからEU域内に入るのが難しくなる。

エストニアのレインサル外相はロイターに対し、政府は全てのロシア人に対し国境を完全に閉鎖することを検討していると述べた。エストニア政府報道官によると、過去に発行されたビザでの渡航を禁止するのはEU加盟国ではエストニアが初めて。

毎日約2500人のロシア人がエストニアに入国しており、その約半数が欧州域内をビザやパスポートなしで自由に行き来できる「シェンゲン協定」に基づくビザを取得しているという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は4日前、EU加盟国に対しロシア人に対するビザ発行を禁止するよう呼びかけていた。【8月17日 ロイター】
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****フィンランド、ロシア人向けビザ発給制限へ 9月1日から****
フィンランドは16日、9月1日からロシア人へのビザ発給数を削減すると発表した。フィンランドに陸路で入国し、その後フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港から欧州諸国に向かうロシア人観光客が急増している状況を踏まえた措置という。

フィンランド外務省によると、ロシアでのビザ申請予約を1日当たり1000件から500件に半減し、観光ビザも100件に限定する。(中略)

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、EU諸国に対し、EUが誰でも入れる「スーパーマーケット」にならないよう、ロシア人のビザ取得を禁止するようあらためて呼びかけた。【8月17日 ロイター】
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理念の問題で言えば、EUが批判しているのはプーチン政権であり、ロシア人一般ではないということもありますし、プーチン政権の圧力・弾圧を逃れてくるロシア人への対応もあります。

一方、一部の国が先行する状況でEUとしても統一的な対応に迫られ、ロシア人へのビザ発給を厳格化することとしました。

ただし、ウクライナやバルト3国のほか、ポーランドやフィンランドなどが主張していたロシア人向けのビザ発給の全面禁止については合意できませんでした。

****EU、ロシアとのビザ発給円滑化を完全停止 ウクライナが求めた全面禁止は合意できず****
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は31日、EUがロシアと合意していたビザ(査証)発給円滑化措置を完全に停止することで合意したと明らかにした。ただ、ウクライナのほか、一部EU加盟国が求めていた全面的なビザ発給の禁止については合意に至らなかった。

EUはプラハで2日間にわたり外相会議を開催。ボレル上級代表は同会議後の記者会見で「ロシアとのビザ発給円滑化協定の完全停止で合意した」とし、「これにより、EU加盟国が新たに発給するビザの数は大幅に減少する」と述べた。

バルト3国のほか、ポーランドやフィンランドなどが主張していたロシア人向けのビザ発給の全面禁止については、加盟国間の見解の相違が大きすぎたことで合意に至らなかった。ただ、ボレル上級代表は、ビザ発給円滑化の停止自体で実質的な影響を及ぼすことができるとの見方を示した。

ボレル氏によると、7月中旬以降、ロシアから近隣諸国との国境を通過する人が大幅に増加。「近隣諸国にとって安全保障上のリスクとなっている」とし、「これに加え、ウクライナで戦争が起きていないかのように、観光や買い物のために旅行するロシア人が多く見られるようになっている」と述べた。

欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)によると、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、100万人を超えるロシア人が陸路で国境を越えた。大部分がフィンランドとエストニアを経由してEU域内に入ったという。【9月1日 Newsweek】
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****EU、ロシア人のビザ厳格化=優遇措置の停止承認****
欧州連合(EU)は9日、ブリュッセルで開催した臨時の閣僚理事会で、ロシア人によるビザ取得を厳格化する提案を承認した。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する圧力を強めるのが狙い。これに伴い、ロシア人によるEU域内への渡航は12日から事実上制限される見通し。

ロシア側は反発しており、ロイター通信によると、報復措置を講じる考えを示した。

提案によると、EUはロシアと2007年に結んだビザ申請に関する優遇措置を停止する。ビザ取得費用が従来の2倍以上になり、手続きも煩雑になる。【9月9日 時事】
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【「動員令」で急増したロシア出国者 バルト三国・フィンランドは入国禁止の方向】
そこへもってきての「動員令」でした。

****フィンランド、ロシアからの入国制限へ 「動員令」後に倍増****
フィンランドの国境警備当局は23日、ウクライナに侵攻するロシアが部分的動員令を出して以降、フィンランドに入国するロシア人の数が倍増しているとAFPに明らかにした。フィンランド首相は、ロシア人の入国者数を制限する構えを示している。

同当局によると、陸路で国境を越えてフィンランド入りしたロシア人は、今週初めには3100人だったのに対し、22日には6470人に上った。ただし、新型コロナウイルスの流行以前に比べると少ないという。

サンナ・マリン首相は22日、「ロシア人の観光と移動は、フィンランドの通過のみの場合も含めて、中止させなければならない」と述べていた。

首相は、ロシアが部分的動員令を発表した後に「他の国々、例えばバルト諸国やポーランドは、安全保障上のリスクを外国人の入国阻止の論拠としている」とし、ロシア人旅行者がもたらす安保上のリスクを「再評価」する必要があると述べた。

フィンランドは9月、ロシア人向けの観光ビザ(査証)の発給を大幅に制限。だが欧州諸国間で出入国審査なしに国境を越えることを認めるシェンゲン協定の加盟諸国が発給したビザを持つロシア人は、引き続きフィンランドに入国している。【9月23日 AFP】
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****ロシア部分動員令受け出国者急増、フィンランドは入国禁止検討*****
ロシアのプーチン大統領が21日にウクライナでの戦闘継続のために部分的な動員令に署名したことを受け、招集される可能性のある男性の出国が増加している。フィンランドは22日、大部分のロシア人の入国禁止を検討していると発表した。

フィンランドはロシアと1300キロにわたって国境を接している。ロシア第2の都市サンクトペテルブルクから車で約3時間の距離にあるバーリマーの境検問所にはフィンランドに入国しようとする車が押し寄せ、国境当局によると、3車線ある道路で最大400メートルにわたり渋滞が発生した。

ジョージアへの出国も増えており、ロシアとジョージアとの間の国境検問所沿いでも渋滞が発生している。(中略)

フィンランドと同様に欧州連合(EU)加盟国でロシアと国境を接するエストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドは19日からロシア人の入国を禁止。バルト3国は21日、部分動員令による招集を逃れるロシア人に保護は提供しないと表明した。【9月23日 ロイター】
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【ロシア国内の抵抗運動と当局の弾圧】
ただ、ロシア国内では動員令に対する激しい抵抗が起きており、一方でロシア当局は抗議デモ参加者を狙い撃ちして徴兵することで弾圧しています。

****ロシア、部分動員令への抗議デモ続く 拘束者2000人超える****
ロシアでは、プーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り21日に出した部分動員令への抗議デモが全土で続き、治安当局による拘束者は2000人を越えた。招集兵の戦地派遣が始まる中、状況を悲観した国民がフィンランドやジョージアなどを目指す動きも見られる。

独立監視団体OVDインフォによると、24日には33の町で計798人が拘束された。

政府系メディアからも批判的な声が上がる。国営放送RTのある編集者は、招集令状が対象条件と合致しない男性に送られるといった問題が「人々を激怒させている」と指摘した。

ロシア国防省は23日、「特定のハイテク産業や金融システムの稼働を保証する」ため、重要産業で働く人の招集を免除すると表明。IT、電気通信、金融のほか、「システム上重要な」報道機関などが対象とされている。

ニューヨークで開催された国連総会に出席しているラブロフ外相は24日の会見で、なぜこれほど多くのロシア人が出国しているのかと質問され、移動の自由があると指摘した。【9月25日 ロイター】
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“プーチン氏演説の数時間後に訪問…対象外の大学生に令状、糖尿病の63歳も招集”【9月25日 読売】

動員規模についても、セルゲイ・ショイグ国防相が21日に言及した30万人にとどまらず、100万人規模との報道が相次ぎ、国民の不満は高まっています。

****「戦争に行くか、投獄か」 ロシア、逮捕のデモ参加者に選択強要****
ロシアの予備役動員令に抗議するデモに参加したミハイル・スエチンさんは、拘束されることは予測していたが、まさか自分が反対している軍への入隊を命じられるとは思いもしなかった。

ウラジーミル・プーチン大統領が21日、国民に向けたテレビ演説で、第2次世界大戦以来となる動員令を発表すると、国内では抗議が巻き起こった。

首都モスクワでこれまでにも反政権デモに参加してきたスエチンさんはAFPの電話取材に、「いつものように逮捕され、警察に連行され、出廷させられることは覚悟していた。ところが、『お前はあす戦争に行く』と言われ驚いた」と語った。

独立系人権団体「OVDインフォ」によると、21日に国内各地で行われたデモでは、1300人以上が逮捕された。モスクワの少なくとも15か所の警察署では、拘束された男性が徴兵用紙を手渡されたという。

大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は翌朝の記者会見で、こうした手続きは「法律違反ではない」と擁護した。

動員令発表の前日には、招集令状を拒否した人や脱走兵への処罰を強化する法案がロシア議会を通過。まだ新法として成立はしていないが、違反者に5〜15年の懲役刑を科す内容となっている。

■「戦争に行くか、10年間投獄か」
警察署に連行されたスエチンさんは一人で部屋に連れて行かれ、翌日に徴兵事務所に出頭することを求める令状に署名するよう圧力をかけられた。警察官は、「これに署名してあす戦争に行くか、10年間投獄されるかのどちらかだ」と脅したという。

スエチンさんは弁護士の助言に従い、署名を拒否。翌朝5時ごろに釈放された。だが警察は、重大事件を担当するロシア連邦捜査委員会に対し本件を通知するとし、スエチンさんは「非常にまずい」状況に置かれると警告した。

だが、招集に応じた人の未来がこれよりも明るいわけではない。
先週18歳になったばかりの大学生アンドレイさんは、モスクワでのデモで拘束された後、軍に招集された。

アンドレイさんはAFPに対し、警察署では署名を拒否する人々が警官から「脅迫」を受けていたと証言。「自分が逃げられないのは明らかだった」ことから、徴兵事務所への出頭を誓約する文書に署名してしまったと語った。

■両親には伝えず
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は21日、学生は動員しないと約束しており、大学に入学したばかりのアンドレイさんは招集されないはずだった。「ロシアは無限の可能性を秘めた国だとは良く言ったものだ」とアンドレイさんは皮肉った。

22日の徴兵事務所への出頭には応じないことにしたが、今は弁護士を探しているところで、今後どうするかは分からないという。

 親には、心配をかけたくないとの理由でまだ打ち明けていない。「自分がどうなるのかがより見えてきたら、言うと思う」 【9月24日 AFP】
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****「死にたくない」 ロシア人男性、動員令逃れ次々出国****
母国に妻子を残し、小さなかばん一つでアルメニアに到着したドミトリーさんは、ウクライナ侵攻への従軍を避けるためにロシアを出国した多数の人々の一人だ。

ドミトリーさんはAFPに「戦争には行きたくない」と吐露。「こんな無意味な戦争で死にたくはない。これは同胞殺しの戦争だ」と訴えた。

ウラジーミル・プーチン大統領が今週、30万人の予備兵動員を決定したことで、同国では国民の国外脱出が相次いでいる。

17歳の息子と共にアルメニアの空港に到着したセルゲイさんは、途方に暮れて疲れ果てた様子で「ロシアでは誰もが国を離れたくなるような状況だ」と証言。自身が「動員を理由に」逃れてきたことを認めたが、名字は明かさなかった。

アレクセイさんは「控えめに言っても、21世紀に戦争に行くなんて間違っている」と主張。将来、帰国できるかどうかは「状況次第だ」とした。

モスクワ発の便でアルメニアの首都エレバンに到着した人々の大半は、兵役対象年齢の男性で、多くの人は取材に消極的だった。

安全上の理由から匿名を希望した男性は、動員令に「ショックを受けた」と説明。「この戦争を支持している人はほとんどいない」とし、「とても痛ましい。すぐに全部終わってほしい」と語った。

■ロシアは「偽情報」と否定
ロシア大統領府は22日、招集対象の国民が出国を急いでいるとの報道を「偽情報」と否定。だが、ロシアからアルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンといった近隣の旧ソ連諸国に向かう空の便は、向こう1週間にわたりほぼ満席となっている。

ロシアと国境を接するフィンランドの入管当局は22日、動員令の発表後にロシアからの入国者が増えたことを認めたが、その数は比較的低い水準を保っていると強調した。

フィンランド・バーリマーのロシア国境検問所では同日午後、入国待ちの車が150メートルの列をつくっていた。モスクワから到着した男性はAFPに対し、自身は招集対象だと説明。もともと10月までにロシアを出国する計画だったが、動員令を受けて予定を早めたと語った。【9月23日 AFP】
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抗議デモを行っているロシア若者に敢えて苦言を呈すれば、これまで地方や少数民族から徴兵され、モスクワなど大都市からの徴兵が控えられてきたなかで、「自分たちには関係ない」と無関心を装ってきたことのツケが回ってきたとも言えます。「無関心」は将来自分の首を締めることになります。

【ドイツは受入れ表明】
こうした状況を受けて、欧州側にもドイツのようにロシア脱出者受入れを表明する国も

****ドイツ、ロシア脱出者の受け入れ表明****
ロシアで、ウラジーミル・プーチン大統領が出した部分的動員令から逃れるため国外へ脱出する人が相次いでいると伝えられたことを受け、ドイツの閣僚2人は22日、ロシアの脱走者を受け入れる用意があると表明した。

日刊紙フランクフルター・アルゲマイネが公開したインタビューの抜粋によると、ナンシー・フェーザー内相は「深刻な弾圧を受ける恐れがある脱走者は原則、ドイツで国際保護を受けることができる」と説明。「プーチン政権に勇敢に立ち向かい、そのために大きな危険にさらされる人は誰でも、政治的迫害を理由に亡命を申請することができる」と述べた。

またマルコ・ブッシュマン法相はツイッターに、「部分的動員」というハッシュタグを添え、「多くのロシア人が祖国を離れているようだ。プーチン氏の路線を嫌い、自由民主主義を愛する人は誰でもドイツで歓迎される」と投稿した。

ドイツは、ロシアによる侵攻を逃れたウクライナ人約100万人に加え、ロシアの反体制派も受け入れている。フェーザー氏によると、これまでに多数のジャーナリストを含む反体制派438人が、迅速化された保護申請手続きを利用した。【9月23日 AFP】
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「動員令」以前から、プーチン政権の弾圧を逃れてくるロシア人を拒否していいのか・・・という議論がありましたが、「動員令」によってその問題が表面化しています。

“バルト3国は21日、部分動員令による招集を逃れるロシア人に保護は提供しないと表明”
一方、ドイツ法相は「プーチン氏の路線を嫌い、自由民主主義を愛する人は誰でもドイツで歓迎される」と。

これまでのロシアとの距離感、ロシアの脅威の切実さなども反映した差異です。
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日中国交正常化50周年 今のナーバスな状況 時代を動かした熱意 中国残留孤児の問題

2022-09-24 22:27:54 | 日本
(日中国交正常化交渉に臨む田中角栄首相と周恩来首相【2015年7月29日 DIAMONDonline】)

【政治情勢とコロナでナーバスな雰囲気のなか、50周年記念イベント開催】
今月29日に日中国交正常化から50周年を迎えるということで、その関連ニュースがいくつか報じられています。

****日中行事ウルトラマンショー中止 コロナ対策が困難と説明****
北京のショッピングモールで24日に始まった日中国交正常化50周年の記念イベントで、在中国の日系企業が中心となり計画していたウルトラマンのショーが中止となった。中国側が求める新型コロナウイルス対策への対応が難しいためだと説明している。

当初は、ウルトラマンと怪獣がメインステージで約10分のパフォーマンスを繰り広げる計画で、24日に2回、25日に1回予定していた。イベント関係者はショーが「争いを想起させる」ため中止になったと話していたが、説明を変えた。
 
イベントの実行委員会は、ウルトラマンのグッズをプレゼントする抽選会に変更した。【9月24日 共同】
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記事にあるように、当初は中止理由として「争いを想起させる」と説明されていました。
なぜ理由が変わったのか・・・よくわかりませんが、別報道によれば、音楽パフォーマンスで予定していた「剣の舞」のビデオ上映も「争いを想起させる」という理由で変更が求められたとか。

少なくとも、50周年を迎えて“お祭りムード”と言うことではなく、台湾問題で日米と中国の対立が強く意識される雰囲気のもとで、ナーバスな感じがうかがえます。

微妙な政治情勢で、中国当局の開催許可が出たのは今月に入ってからのこととか。
“8月下旬、新型コロナに感染した岸田文雄首相に習近平国家主席が見舞いの電報を送ったことで、「日中関係を落ち着かせ、コントロールしようとする中国指導部のシグナル」(日中外交筋)との受け止めが広がった。”【日系メディア】とのこと。 岸田首相のコロナ感染も無駄ではなかったようです。

上記のように“ナーバス”な雰囲気ではありますが、10年前は尖閣国有化に反発する反日デモで記念行事どころではなかっただけに、今回記念イベント開催が実現しただけでも素直に喜びたい・・・という関係者の本音も。

****在中日系企業団体が北京で日中50年記念イベント****
在中国の日系企業などは24日、北京市中心部のショッピングモールで日中国交正常化50年の記念イベントを開いた。

現地の中国人に日本文化に興味を持ってもらうことを狙っており、垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国日本大使は開幕式で「時間がかかっても、国民レベルでの相互理解を通じて信頼を醸成していくことが、日中関係打開の王道であると信じている」と強調した。

中国に進出する日系企業の団体である中国日本商会などがつくる「日中国交正常化50周年記念事業在中国実行委員会」と、中国外務省傘下の中国公共外交協会が共催した。開催に当たっては、中国で事業を行う日系を中心とした企業から協賛金を募って約600万元(約1億2千万円)が集まった。

開幕式で、中国日本商会の池添洋一会長は「新型コロナウイルスの影響などでイベントの準備は困難に直面したが、日中双方の関係者が協力することで困難を克服して開幕を迎えることができた」とあいさつした。

開幕式には、中国側から中国外務省の劉勁松(りゅう・けいしょう)アジア局長や、中日友好協会常務副会長の程永華(てい・えいか)前駐日大使らが出席した。

イベントは25日までの2日間。会場には、ホンダの電気自動車(EV)など日本の商品を展示しているほか、日中両国の料理を組み合わせた創作料理の紹介なども実施。

24日には会場前に行列ができ、モールの上階から会場を興味深そうにのぞき込む親子連れらの姿も目立った。同日午前には会場で安全検査を実施していたが、午後には検査をなくして自由に入場できるようにした。

イベント開催にあたっては、日中関係の難しさが影を落とした面がある。中国公共外交協会との共催は、今月に入りようやく決まったという。また、音楽のパフォーマンスで予定していた「剣の舞」のビデオ上映は中国側に変更を求められた。「争いを想起させる」という理由だったといい、関係者は「コロナ対策と政治的な要素に関して、中国側はかなり神経をとがらせている」と指摘する。

垂大使は24日、産経新聞などの取材に対し、日中関係に関して「民間による役割は非常に重要で大きい」と指摘。その上で「中国にいれば『両国関係の基礎は民間にある』とよく耳にするが、そのことを実感するのは難しい。両国の政治関係が悪化した場合、真っ先に影響を受けるのは民間の往来や交流、活動だ」と懸念した。【9月24日 産経】
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【李克強首相 日本の経団連の会長らとオンライン会談】
50周年を前に、李克強首相は日本の経団連の会長らとオンラインで会談し、関係拡大を訴えています。

****中国首相 経団連と会談 日中関係の発展と中国への投資拡大訴え****
中国の李克強首相は日本の経団連の会長らとオンラインで会談し、両国関係の長期的な発展や中国への投資の拡大などを訴えました。

国営の中央テレビによりますと、22日に経団連の十倉会長らとオンラインで会談した中国の李克強首相は、「あと数日で国交正常化50周年を迎える。中日は互いの発展を客観的かつ理性的に見つめ、中日関係が長く安定的に続くよう推進しなければならない」と訴えました。

その上で、「互いに尊重して相違点を適切に処理し、平和な外部環境と安定した周辺環境を守り、中日と地域国家が共に発展することを望む」と述べました。

また、新型コロナの感染拡大やウクライナ情勢などを念頭に、「今年は予想を上回る要因の影響で中国経済の下押し圧力が強まっているが全体的には回復基調だ」と強調。

「市場化、法治化された国際ビジネス環境を構築して透明で予測可能な監督管理ルールを明確にし、知的財産権を厳格に保護する」として、中国市場に積極的に投資するよう呼びかけました。

さらに李首相は、両国の協力関係拡大のため、RCEPの有効活用や適切な新型コロナ対策を行うという前提のもと、日本との直行便を増やす考えも示しました。【9月22日 TBS NEWS DIG】
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【お膳立てがない異例の交渉 政治家の熱意が時代を動かす】
日中国交正常化当時のエピソードで、久しぶりに田中眞紀子氏もメディア登場。

****50年前の日中国交正常化 田中角栄・周恩来会談 娘の眞紀子氏が披露****
毒を盛られるかもしれないから、眞紀子は連れて行けない。50年前に日中国交正常化を実現させた田中角栄元総理。当時の“命がけの覚悟”のエピソードを、娘の眞紀子氏が披露しました。

田中角栄元総理の長女・眞紀子氏は、22日に都内で開かれた日中国交正常化50周年を祝うレセプションであいさつ。東西冷戦の真最中に中国へと渡った父親の思いを紹介しました。

「夢は眞紀子を連れて世界の要人に会わせることだ」と語っていた角栄氏。ただこの時は、「中国は駄目だ」と言われたといいます。「あれ、約束が違う」と思う眞紀子氏に、角栄氏は。

「これは命がけだ。相手があるし、中国は数千万の人たちが日本によって殺されている。お父さんが行って、毒を盛られるかも、切られるかもしれない。お父さんは議員なんか辞めても死ぬ覚悟で本当に行くんだ。誰かがやらなきゃいけないんだ。眞紀子は一人っ子だから、2人で殺されたり毒を盛られたら、ご先祖に申し訳ない。将来、お前たちの社会が自由に笑顔で交流できる時代を作るためだ」と語ったといいます。

また、角栄氏は交渉相手だった当時の中国の首相・周恩来氏を高く評価していたといいます。

「世界の要人、あらゆる国の人と会ったけれど、周恩来は最高だったと。素晴らしかったと言っていました。私は2人とも本当に英明な政治家であったと思うし、肝胆相照らす(関係だった)」

眞紀子氏は、角栄氏から聞いた首脳会談のエピソードも披露。

周恩来氏は角栄氏に対し、「あなたが命をかけて来てくれたのはわかっているけれど、何千万の中国国民のほとんどは、あなたの訪中を歓迎していませんよと。その前提で交渉しましょう」と切り出したということです。そんな周恩来氏について、角栄氏は「あれだけのこと、事実をスパッと言うんだと、気に入ったね」と振り返っていたといいます。

この日行われた国交正常化50周年のレセプションには、中国の孔鉉佑大使ら300人以上が出席したということです。

孔大使は「歴史のバトンはわれわれの手に渡され、中日関係の今後の発展の重任は我々の肩にかかっています」と強調。両国が交わした政治文書の精神を堅持し、「一層成熟し安定した、健全かつ強靱な姿で、中日関係の次の50年を迎えるようにしなければなりません」と訴えました。

福田康夫元総理は、国交正常化50周年の機会に、先人の思いを思い出し、実現するためにどうしたらいいか、相談し合いながら順調な歩みを続けたい、とあいさつ。「これからの中国は、国際社会の中で安定した平和な勢力であるということ。これを私はこの際お願い申し上げたい」と呼びかけました。
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当時、中国側は毛沢東主席と周恩来首相 日本側は田中角栄首相と大平正芳外相。

“毒を盛られるかも、切られるか”はともかく、田中・大平の日本外交には台本のない交渉に政治生命をかけてガチで臨み、相手との信頼関係を築き、将来に向けて時代を動かそうという“熱意”が感じられました。
昨今の日本外交、あるいは日本の政治家の言動からはあまり感じられないものです。

****中国の覇権主義、大平外相が予言 「低姿勢、50年後変わる」―日中国交正常化****
1972年9月29日、日本と中国は国交正常化を果たした。日本側は首相の田中角栄と外相の大平正芳が主導。日中共同声明をめぐる交渉は一時難航したものの、中国側は総じて融和的な姿勢を取った。だが、その中でも大平は、覇権主義的な動きを強める現在の中国の姿を予言していた。(肩書は当時、敬称略)

◇見切り発車
「中国は低姿勢だったが、50年たったら態度はガラッと変わる。大きく経済発展して日本を見下すようになるよ」。9月29日の共同声明調印式を終え、中国から帰国する日本航空特別機の中で、大平は娘婿でもある秘書官の森田一(88、後に運輸相)にこう語り掛けた。

日本は52年に中華民国(台湾)と日華平和条約を締結して以降、台湾と良好な関係を維持してきた。しかし、71年7月に米大統領ニクソンが自身の訪中計画を電撃的に発表した「ニクソン・ショック」を契機に、中国との国交正常化へ大きくかじを切る。

72年7月の自民党総裁選を制した田中は、首相就任後初の記者会見で「日中関係正常化の機は熟した」と宣言。中国首相の周恩来からは直後に訪中招請が届いた。だが、「決断と実行」の田中がこの時ばかりは「これで失敗したら辞任だ」と迷いを見せたという。

当時、自民党内には親台派の議員も多かった。当初は外務省も法眼晋作事務次官をはじめ日中交渉に反対していた。

田中の長女真紀子(78、元外相)によると、「(中国から)戦争の損害賠償を言われたら日本の財政なんて吹っ飛ぶぞ」と懸念していた田中は、中国側の賠償放棄の意向が漏れ伝わると、「これだ」と腹を決めた。「誰かがやらなきゃ片付かない問題だ。見切り発車するしかない」。

◇「大学出が考えろ」
田中と大平は9月25日に北京に乗り込み、周らとの会談に臨んだ。外交当局のお膳立てがない異例の交渉。森田によれば、最も難航したのは戦争の終結をめぐる書きぶりだった。

日中共同声明調印をもって戦争状態終結だと主張する中国側。日華条約締結時に終結したとしている日本の立場とは相いれなかった。

交渉が行き詰まった26日夜。先行きを悲観する訪中団の重苦しい雰囲気を変えたのは、高等小学校卒を売りにしていた田中の一言だった。

「お前ら大学出は全然だめだなあ」。「じゃあ、どうすりゃいいんですか」と尋ねる大平に、「大学出たやつらが考えるんだ」。これで場は和み、大平は「戦争終結は表現の問題で解決できる」とひらめいたという。

結局、戦争終結の時期は明確にせず、日中の「不正常な状態」は「共同声明が発出される日に終了する」と表現することで決着。北京入りから5日目、調印にこぎつけた。

◇超大国の影
一連の交渉を間近で見た森田の脳裏には、中国側の腰の低さが焼き付いていた。周は戦争の損害賠償放棄を宣言し、日米安全保障条約を事実上容認。「経済力で中国は20世紀末になっても日本のレベルに到達できない」と持ち上げた。

中国側は事前に田中の食の好みを調べ上げ、訪中団をもてなした。真紀子は後に、周夫人のトウ穎超から、夜型だった周が田中の首相就任後、田中に合わせて朝型の生活習慣に変えたと聞かされた。「中国はそれほど真剣だった」と振り返る。

森田も当時、「なぜ中国はこんなに譲るのか」と疑問に思っていた。背景にあったのは、当時の超大国ソ連と中国の対立激化。大きく譲歩してでも対日関係を早期に正常化させた方が得策だという「高度な判断」があったと回想する。

「軍事大国には決してなりたくない」「私たちが台湾を武力で解放することはない」。周は田中との会談でこう語っていた。

それから半世紀。中国は日本を抜いて世界第2の経済大国となり、軍事面でも台頭した。今や米国と世界規模で覇権を争い、東アジアは「発火点」となる危険をはらむ。

そんな中国に今後どう向き合うべきか、森田に尋ねた。「だんだん中国との付き合いは難しくなるよと、当時、大平と話した。大平もどうしたらいいか答えが出ないまま、死んじゃった」。【9月24日 時事】
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【中国と日本の狭間で翻弄されてきた中国残留孤児】
50年を経過した日中関係では、政治・経済・文化以外にも多くの側面が。なかには取り残されたような“陰”の面も。

****日中国交正常化50年 “認定”されず中国に…「自分は一体何者」 2世は支援受けられず 残留孤児…それぞれの今****
29日、日中国交正常化から50年を迎えます。中国と日本の狭間で翻弄されてきた中国残留孤児の今を取材しました。

中国東北部・ハルビンで妻と暮らす白凱躍(はくがいやく)さん。白さんは、残留孤児の認定をめぐり翻弄される人生を送ってきました。

白さん「実の親すらも知らない。無駄に人生を生きてしまった」
中国残留孤児は戦後、旧満州などに取り残された日本人の子どものことで、日中国交正常化を機に本格的な調査が始まりました。

これまでに残留孤児と認定されたのは2818人。しかし、白さんは、「証拠が足りない」との理由から、認定されていません。

白さんが出生を知ったのは35歳で養父の仕事を継ごうとしたときでした。
白さん「養父から“君は私が拾った 日本人の残された子どもだ。将来日本に帰るかもしれないから 仕事を継がせても無駄になるかも”と」

白さん「(事実を知ったとき)農場で号泣したよ」
このとき、養父から渡されたのは1歳ほどで拾われたときに自分がくるまれていた服です。実の両親との唯一のつながり。内側に記された「日本語」が、両親が日本人である“証し”ではないかと寝るときも枕元に置いています。

白さん「日本は自分が日本人だと認めてくれない。中国も中国人だと扱ってくれない。自分は一体何者なんだ」

一方で、日本に帰国しても苦しむ人々がいます。
岐阜県に住む佐藤龍雄さん。親が残留孤児と認定され、1984年に帰国した“残留孤児2世”です。

68歳になった今でも日本での生活になじめず生活相談などを受けています。自宅での妻との会話は「中国語」。今も中国での生活に思いを馳せるといいます。

佐藤さん「(最初は)私は日本に戻りたくなかった。でも父が家族バラバラではだめだと」
職を転々とした佐藤さん。去年、体調を崩して仕事を辞め、今は、貯金をとり崩して生活しています。

佐藤さん「1984年のときは日本語の勉強の制度もなくて、国から(支援も)なくて」
残留孤児1世に対しては年金の支給などはありますが、佐藤さんのような2世への国の支援はありません。
佐藤さん「2世の人はみんな困っている。みんな苦しい」

国交正常化を機に調査が始まった中国残留孤児。50年がたった今もそれぞれがもがき続けています。【9月24日 日テレNEWS】
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新型コロナでも明らかになった日本社会の自己保身、思考停止

2022-09-23 22:33:37 | 日本
(3年ぶりに屋外の演舞場に観客を入れて開催された「阿波おどり」の総踊り=8月12日、徳島市【9月22日 共同】参加した踊り手らのほぼ4人に1人に当たる819人が新型コロナウイルスに感染したことが22日、主催した実行委員会のアンケートで分かったそうですが、「それがどうした?」というか、あまり大きく問題視されないように日本社会の意識も少しずつ変わってきた・・・のでしょうか)

【感染者数「日本が世界最多」??】
日本の新型コロナ新規感染者数は8月頃のピーク時に比べるとだいぶ減少していますが、単純に数字だけでみると世界的には「最多」レベルにあるとか。

****日本、9週連続で世界最多 コロナ感染者****
世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症の集計で、12〜18日の週間感染者数は日本は前週比13%増の60万5919人で、9週連続で世界最多だった。39万人の米国、38万人の韓国、37万人のロシアと比べ、大幅に多い状態が続いている。

同期間の死者数は米国が2601人で最多。前週比31%減の1162人の日本が2番目に多い。
 
世界全体では、週間感染者数は前週比2%減の323万人、死者数は同17%減の9862人。減少傾向が続いている。【9月22日 共同】
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ただ、死者数のレベルで見ても明らかなように、「日本がアメリカより新規感染者が多い」というのはあり得ない話です。

要するにアメリカも、東アジア以外の他の国々の多くも、もはや新型コロナの新感染者数を厳密に数えることをしなくなっている一方で、日本は全数調査で厳密にカウントしているので比較的大きな数字が出るというだけの話でしょう。

****欧米とアジアで大きく異なる「ウィズコロナ」 全数把握、海外では****
(中略)
◇感染者数「日本が世界最多」は誤り?
海外では全数把握を実質的に取りやめたり、隔離期間を大幅に短縮したりする国が増えている。
米国では医療機関などで実施するPCR検査については、検査機関を通じて、判定結果や患者の年齢、性別、人種などの報告が義務づけられている。

だが2021年後半以降、自宅で使える簡易検査キットが徐々に普及し、22年1月からは政府が計5億回分を無償配布。簡易検査の陽性者が受診せずに自宅療養するケースが増加し、感染者数の全容を把握できなくなった。

経済・社会活動を本格化させるため、感染者や濃厚接触者の隔離期間も大幅に短縮した。米疾病対策センター(CDC)は21年12月の指針改定で、感染者の症状の改善ぶりに応じて、発症後の隔離期間を10日間から最短5日間に短縮した。

濃厚接触者の隔離も最大14日間から5日間とし、3回目のワクチン接種を済ませていれば隔離は不要となった。22年8月には濃厚接触者の隔離を不要とし、代わりに高性能マスクの10日間着用などを推奨している。
 
英国は今年2月、「新型コロナをインフルエンザなど他の感染症と同様に扱う」として、人口の8割超を占めるイングランドの在住者を対象に、陽性者の自主隔離などの行動規制を撤廃した。陽性でも自主隔離しなくていいため、検査の必要性がなく、当局は感染者の実数を把握していない。
 
世界保健機関(WHO)の集計によると、1週間あたりのコロナ感染者は、9月11日まで8週連続で日本が世界最多となった。全数把握を続けているために他の国より感染者数が多くなるのはやむを得ない部分もあり、実際には日本が世界最多ではない可能性がある。

◇厳しい「ゼロコロナ」続ける中国
一方、北東アジアでは厳格な対策を続ける傾向がある。
 
韓国では今も全数把握を続けている。PCR検査の負担を軽減するため、今年3月からは医師らが実施した抗原検査で陽性が出た場合も感染者とみなす方針をとる。また感染者数の増加に対応するため1月以降、感染者の隔離期間を10日間から7日間に短縮した。

ただ、8月に1日あたりの新規感染者数が18万人を超えるなど再流行が本格化したことなどから、韓国政府は現時点では、隔離期間のさらなる短縮には慎重だ。

感染拡大を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を取ってきた台湾の当局は今年4月、オミクロン株の急拡大を受けて、感染抑制と社会の経済活動を両立させると表明。実質的な「ウィズコロナ」に転換した。ただ、全数把握は継続しており、感染者は無症状も含めて8日間の隔離が義務づけられる。
 
一方、中国はあまりにも厳しいゼロコロナ政策を堅持。感染者や濃厚接触者は軒並み隔離し、経済への悪影響を顧みずに都市封鎖(ロックダウン)を断行するなど、強硬措置を続けている。【9月22日 毎日】
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【誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っている日本】
中国がゼロコロナにこだわるのは、中国製ワクチンの効能に対する疑問、高齢者のワクチン接種率の低さ、医療資源が不十分で感染者が増大すると医療崩壊をきたす等々の問題があり、医学的にも、党大会を控えて政治的にも、今規制を緩める訳にはいかないという事情があるとも言われています。

そのように各国にはそれぞれの事情がありますが、日本の場合は過度にリスクを警戒するメンタリティーの問題があるように思えます。そのあたりの“日本の内向き特殊性”を指摘する意見は、特に世界が「アフターコロナ」に向かい始めた頃から多々見られましたが、とりあえず一つだけ。

****新型コロナが日本の劣化を助長した理由****
シンガポールから日本に帰国できずに2週間もホテルで待機させられたことは前回のコラムに書いた通りだ。『日本人コロナ難民が足止めされているシンガポール』。

足止めさせられた理由は日本大使館の領事部からの帰国許可が下りなかったからである。PCR検査では遺伝子配列の関係から完全な陰性になることはなく、いわゆる「疑似陽性」の形で結果が出てくるので、抗原検査と合わせて実際には回復してる途中だと判断するのが国際常識である。

しかし、日本の場合だけはその常識が通用しないのだ。つまり行政が一度決めた方針が明らかに間違っていても、指摘する人材がいないのである。

ところが、政府は突如8月24日の通達で72時間以内の陰性証明の提出を免除することを決定した。今までのルールは何だったのかと言いたい。あれだけ領事部に抗議しても政府の方針だからとの理由で受け付けなかったルールが説明なしにあっさり変更されたのだ。ただし9月7日からの実行である。なぜか2週間以降となった。
 
この猶予期間に何の意味があるのか分からない。説明のないこの実行の遅れは何だろう? 一時が万事で誰も責任を取りたくないので岸田文雄首相が緩和方針を伝えるまでは誰も言及しないのである。水際作戦に従事している専門家ですら自己の意見は出さずに保身に努めているように見える。
 
何を決定するのも風見鶏体質だから保身が優先されるのがもどかしい。非合理的な判断からくる経済的損失や多大なる無駄を決められたこととして疑問視する人はいないのである。普通に考えれば当たり前のことが日本という国では判断しない方が賢いとされているようにさえ見える。

メディアが大袈裟にコロナ禍の危険性を騒ぎ、日本中がワクチンの重要性に耳を傾ける毎日が2年半も続いた。有識者と呼ばれる人がTVに出ない日はなく、大騒ぎをしていることも気になった。

政府は根拠の乏しい自粛生活を強要した。日本人は実に従順にお上の要請に従った。マスクを忘れると非国民扱いされ、外出すらできない沈鬱な2年半を過ごした。なぜか、われわれ日本国民は世間体を気にして意味のない同調圧力に屈してしまうのだ。

既得権益に挑戦しない日本人
政治も行政も、そして国民も、誰も責任を取りたくない。つまり、誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っているのが日本の現状なのかもしれない。

そのような視点から日本の国際ランキングを調べてみた。海外との比較をすれば日本の実態がはっきりするからだ。例えば、以下が最下位だという。
企業活動指数 教育への公的支出 大学教育レベル 労働生産性 平均睡眠時間
社員のやる気 仕事へのやりがい 仕事への満足度

どのような調査をしたのかは定かではないが、私は概ね当たっているのではないかと思う。よく話題にのぼる世界の幸福指数ランキングでも日本は決して高くはない。各国の幸福度は主に「主観的な幸福度」によって決定される。2022年度の日本のランキングは世界156カ国中58位だという。

一方で、3年ぶり訪れたシンガポールのランキングを見て驚いた。
2015年の幸福度は148位だったのに、一昨年21年は32位で、22年には27位まで改善していた。一方の日本は2015年に46位だったのに、昨年の21年は54位で完全にシンガポールに逆転されていたのだ。さらに22年は56位まで下落の一途である。

その内訳で日本の劣化が目立つのが、「社会の自由度と寛容度」と「国家への信頼度」の低下傾向である。
逆にシンガポールは、どの要素も日本を追い抜いている。日本との地位が逆転したのだ。

それは、既得権の維持ではなく、激しい競争環境の中で、「自分にもチャンスがある」と、シンガポール国民が思えるようになったからではないか。

異端者が窒息する日本の組織
①中国、シンガポールに勝る、日本の組織の既得権益  
中国でも既得権益はあるが日本のように、ずっと見直しが行われないことはない。なぜ、専制国家である中国でそのようなことが起きるのか? 

それは、異端に対して寛容だったり、異端であったりすることを物ともしない強い個性があるからだ。  

シンガポールでは高級官僚が民間大手の社長になったり、大学教授に転身したりする。ある意味で、既得権益は温存されるが、ポジションが代わることで風通しはよくなる。 

②組織の権力者が一旦権力を握ると離さない。  
中国の共産党でも独裁者は最強であるが、常に権力闘争に晒されているから自律的な見直しは必然的に行われる。これに対して、日本の官僚組織や大企業組織では、誰も変えようとしないから、ぬるま湯状態となる。 

③哲学のない人物が権力を握る  
組織が停滞してしまうと類は友を呼び、イエスマンだらけになってしまう。誰も非難をしないからこれほど楽なことはない。一方、中国は世界一の競争社会だから、現状維持で生き残ることはできない。  

保身ばかり考えるタイプが出世するから、それを見ている若者たちもそれが当たり前と思い、保身に走る社員ばかりになる。逆に男気を出して改革をする人物は干される構造になりやすいから、組織がさらに腐ってしまう。  

このような組織のなかでは、異端者は、窒息死してしまう。あるいは、圏外に飛ばされてしまう。そして、それが変だと気づいていても、多くは黙って従っていく。  

結果として、新規の提案や変革はできる限り潰す方向になり、発案者よりも管理者がはびこる構造になっていく。経営者や管理者たちは身を守る為ために責任回避して下請けに仕事をやらせて単に取り次ぎをするだけの仕事をするようになり、生産性は下がる一方だ。

組織の停滞を正すのは異端者だ
「統治客体意識の訣別を目指した20年前の構造改革とはなんだったのか」などと、言う人がいる。統治客体意識とは国家への依存体質のことだ。この体質は、コロナ禍でも発揮された。  

国が「要請」であり「自粛」であるとすると、その損失分を補償する必要もなく責任を取る必要はない。一方の国民は、お上が負担してくれるなら貰えるものは何でも欲しいという。  

過去20年は世界第2位の経済大国が1人当たりGDPで見ると、今や日本は世界第24位。10年前と比べてさえ、順位が大きく下がってしまった。  

コロナ禍を盲信する日本人の姿と一国平和主義を盲信する日本人の姿にはたった一つの共通点がある。「われわれ自分の頭で考えなくなってしまった」ということだ。何でも既得権に守られたお上(統治者)の言われるままになってしまった。  

コロナ時代を経験して見えてきたことがはっきりしてきた。アフターコロナになって炙り出されてきた問題が既得権益の暗闇であった。実は日本中が既得権益に守られている産官学医の世界はオワコン化しているのだ。【9月10日 WEDGE】
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私個人は、“政治も行政も、そして国民も、誰も責任を取りたくない。つまり、誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っている”日本の現状は、単にコロナ対応でのガラパゴス化だけでなく、「失われた20年、あるいは30年」といった日本経済・社会の沈下現象をもたらしている元凶だと考えています。

マスクひとつとっても、自分の頭で判断できない。周囲が着けているので自分も・・・
今月トルコを観光してきましたが、現地の人も、外国人観光客も誰もマスクしていないなかで、36℃の炎天下屋外でもほぼ全員がマスク着用する日本人ツアーは奇妙な光景でした。

日本国内でも、危険性はほとんどない屋外でマスクをはずしているのは未だにごくわずか。「一体どうして?」と不思議です。(顔を隠すマスクというのは、ある意味、安心感を与えるのでしょう。でも、その匿名性に隠れてしまうメンタリティーは大問題だと思えます)

【日本をはじめアジア各国でも緩和策相次ぐ】
さすがに日本政府の水際対策も徐々に緩和されてきており、上記記事にもあるように9月7日から日本入国時の陰性証明が不要になりました。私のトルコから帰国が9月8日ということで、さっそくこの緩和の恩恵に。おかげで予定していたトルコ国内での帰国前検査をしなくてすみました。(検査して陽性だったら一人隔離されて帰国できません)

更に、10月11日からはもう1段階緩和されます。

****日本がビザ免除・個人旅行解禁へ 訪日旅行予約急増の見通し=韓国****
日本が10月11日から1日当たり5万人とする入国者数の上限撤廃や短期滞在ビザの取得免除、個人旅行の受け入れ解禁の方針を表明したことを受け、韓国で日本旅行の予約が急増する見通しだ。

韓国の旅行業界は、日本政府が添乗員を伴わないツアーを認めるなど今月上旬から新型コロナウイルスの水際対策を緩和後、急激に高まった日本旅行の需要がさらに高まると期待している。

旅行会社ベリーグッドツアーのシン・ソルギョン日本チーム課長は、日本旅行は新型コロナ流行よりも前の2019年から日本製品不買運動の影響を受けたため、ペントアップ需要(抑えられていた需要)があるとし、「短期滞在ビザの取得免除で全ての障害が取り除かれ、第2の日本旅行好況期を迎える」との見通しを示した。

実際、同社は日本へのビザなし渡航解禁の可能性がメディアで報じられた今月14日以降、期待感が反映され、日本旅行の予約者が1日平均500人にまで増加したという。これは日本製品不買運動以前の水準で、コロナ禍の予約者数の50倍を超える。

旅行大手のモドゥツアーも今月14〜22日の日本旅行の予約件数が今月5〜13日に比べ140%増加した。
同社関係者は「需要急増が予想されるため、座席確保に向け航空会社との協議を進めている」と説明した。

ほかの旅行会社も似たような状況だ。
旅行大手ハナツアーの日本旅行予約は、今月1〜22日の1日平均が先月1〜22日に比べ776.6%増加した。
旅行会社の「黄色い風船」は、今月1〜20日の2泊3日大阪ツアー商品の予約率が先月1〜20日に比べ1200%増加した。2泊3日の九州紅葉ツアー商品の予約率は前年比600%、2泊3日の東京ツアー商品の予約率は同115%、それぞれ増加した。【9月23日 聯合ニュース】
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アジア各国、特にこれまで日本同様に厳しい規制をおこなってきた台湾や韓国、香港でも相次いで緩和策が報じられています。
“台湾 外国人旅行者の受け入れを29日から再開へ”【9月23日 日テレNEWS】
“韓国・屋外マスク義務を全面解除 入国後PCR検査は“維持””【9月23日 日テレNEWS】
“香港が水際対策を緩和 海外からの渡航者への“隔離”を撤廃へ”【9月23日 日テレNEWS】
“非常事態宣言、2年半ぶり解除=タイ、コロナ感染者の入国禁止措置も廃止”【9月23日 時事】

【やや勇み足のアメリカ・バイデン大統領】
依然として1日に400人近くがコロナで死亡しているアメリカではバイデン大統領がコロナパンデミック終息の見解をインタビューで披露
「コロナの問題はまだ残っており、対応が続いているが、パンデミックは終わった。(会場では)マスクをしている人はおらず、誰もが健康そうだ。状況は変わっている」“新型コロナのパンデミック「終わった」、バイデン米大統領が見解”【9月19日 ロイター】

さすがに、ちょっと勇み足か。おそらく中間選挙対策で状況好転をアピールしたかったのでしょう。
先週「終わりが視野に入ってきた」と語っていたWHO事務局長も「まだトンネルの中」とバイデン発言を否定

****パンデミックは終わっていない WHO事務局長「まだトンネルの中」****
世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は22日、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)について、収束宣言は「まだ遠い」との見方を示した。

パンデミックについて、テドロス氏は先週、「終わらせる上でこれまでで最も有利な状況にある」「終わりが視野に入ってきた」と述べた。米国のジョー・バイデン大統領は18日に放映されたインタビューでさらに踏み込み、米国では「終わった」と述べていた。

しかし、テドロス氏は22日、米ニューヨークで国連総会に合わせて開いた記者会見で、「終わりが視野に入ったのであって、終わりに到達したわけではない」と述べた。

続けて「私たちは長く暗いトンネルの中で2年半過ごしてきたが、ようやく終わりにある光がかすかに見えるようになってきたところだ」として、「しかし先はまだ長く、トンネルはまだ暗い。注意しなければつまずきかねない障害物も多い」「われわれはまだトンネルの中にいる」と強調した。

テドロス氏は世界がパンデミックを終わらせる上で絶好の状況にあるのに変わりはないと強調した上で、世界の1週間当たりの死者数は減少し続けており、ピークだった2021年1月の10%となっていると説明した。 【9月23日 AFP】
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イラン  スカーフをめぐる女性死亡で広がる抗議デモで混乱 瀬戸際の核合意再建問題

2022-09-22 22:35:47 | イラン
(テヘランで通りに繰り出したイランのデモ隊=AFP通信が21日入手【9月22日 時事】)

【「スカーフで髪を隠さなかったら拷問死か!」 拡散する抗議デモ 増える犠牲者】
イランでは、2019年にガソリン価格高騰に不満を抱く市民が行った抗議デモなど、しばしば国民の大規模な抗議行動が起きますが、今回イランを揺るがしているのはイスラム女性が義務付けられているスカーフの問題。

「スカーフを被る」と言っても、その対応は個人差があります。
宗教的価値観を重視する女性は髪の毛全体を隠す形できちんと。
逆に、そうした宗教的価値観の強制を嫌う女性は、前髪を大きく出す形で。

現在は保守強硬派のライシ大統領のもとで、スカーフについても厳しくチェックされる状況にあります。
今回問題となった女性は、スカーフのかぶり方が不適切だとして警察に拘束され、死亡しました。

SNSで女性が病院のベッドで治療を受けているとされる写真が拡散。頭部付近に血痕のようなものが見えるため、警察官の暴行を疑う声が強まり、頭を殴打されたとも報じられました。

17日に女性の地元で営まれた葬儀には数千人が参列し、その一部が当局の対応を批判し、最高指導者ハメネイ師も非難する抗議行動に発展、治安部隊と衝突する事態に。

その後も抗議行動は拡散し、死者がでる事態に。

****スカーフ着用めぐり逮捕の女性死亡 抗議で死者3人 イラン****
イランで、頭髪を覆うスカーフの着用方法をめぐり警察に逮捕された女性が死亡したことを受け、抗議デモが広まっている。女性の出身地である西部クルディスタン州のイスマイル・ザレイ・クーシャ知事は20日、同州のデモで3人が死亡したことを明らかにした。

マフサ・アミニさんは、家族と訪れていた首都テヘランで13日、服装規定などを取り締まる「道徳警察」に逮捕され、警察署に連行された。

その後、昏睡(こんすい)状態に陥り病院に搬送され、16日に死亡。警察署で何が起きたのかははっきりしないが、アミニさんの頭部には打撲傷があったとされる。

報道によると、同州では18日、約500人がデモを行い、参加者の一部が車の窓を割り、ごみに放火。警察が参加者を逮捕したり、催涙ガスを使用したりした。テヘランでも19日、デモ隊に対し警察が警棒や催涙ガスを使用した。

同国のファルス通信によると、知事は同州のデモでの死者3人について、死亡日時は明らかにしなかったものの、「敵の企て」により「不審な」死を遂げたと説明。

ディバンダーレで「治安当局が使用していない種類の武器」で1人が殺害され、サケズでは1人の遺体が病院の近くの車の中に置き去りにされた状態で見つかったとした。3人目の死者については詳細に触れなかった。 【9月21日 AFP】
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警察当局はアミニさんが意識を失った理由を「心臓発作」と説明。19日にも改めて暴行を否定し、アミニさんには「5歳の時に脳の手術を受け、以前から身体的な問題を抱えていた」と説明。「警察の対応に問題はなかった」と主張しています。

しかし、アミニさんの父親は19日までに地元メディアに対し、彼女に病歴はなく、逮捕前まで健康上の問題は一切なかったと語っています。

全国各地で数十~数百人規模の抗議集会が開かれ、一部は暴徒化して投石やタイヤの放火に及び、警察車両の窓ガラスが割られることも。
抗議デモは21日も続き、死者も増えています。

****イランの抗議デモ、死者6人に スカーフ巡り女性死亡で****
イランメディアは21日、イランで女性が髪を隠すスカーフのかぶり方が不適切だとして警察に拘束され、死亡したことに対する20日の抗議デモについて、警察関係者1人が南部シラーズで、市民2人が西部ケルマンシャーで死亡したと報じた。一連の抗議デモでの死者は計6人になった。

シラーズでは警察官4人が負傷し、デモ参加者15人が逮捕された。ケルマンシャーでは市民や治安当局者ら計25人がけがをした。

17日から始まった抗議デモはイラン各地に拡大。21日も首都テヘランで市民が抗議活動をし、デモは5日連続となった。【9月21日 共同】
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【大統領・最高指導者は亡くなった女性に寄り添う姿勢を見せて、抗議デモ鎮静化を図る】
ライシ大統領は16日、内務省に徹底した捜査を指示。18日には遺族に電話し、「あなたの娘は私の娘のような存在だ」と哀悼の意を伝え、「何が起きたのかは明らかにされる」と捜査の徹底を約束しています。

最高指導者ハメネイ師の代理人も19日に遺族宅を訪れ、「ハメネイ師も心を痛めている。侵害された権利の擁護のため、すべての機関が行動を取る」と伝えたそうです。

このあたりが、イランに対する欧米の宗教独裁国家イメージとはやや異なるところかも。

確かにイランは最高指導者を頂点とする宗教的権威が最重視される政治であり、今回事件のような宗教的価値観の強制もある社会ですが、一方で、そうした政治体制に批判的で自由を求める国民も多く、保守派とされる指導層も国民からの批判を強く警戒しています。

少なくとも大統領は選挙で選ばれるシステムですから(選挙への体制側の介入はありますが)、国民の批判が拡大すると政治システムが維持できなくなります。その点で、いわゆる民意が重視される民主主義的側面もあります。単なる宗教独裁国家ではありません。

死者は12人なったとの報道も。イランの情報は不透明で何が起きているかよくわからい部分がありますので、実際はもっと多いのかも。「宗教的価値観押しつけからの自由」「警察の横暴・人権無視」に加えて、下記記事が指摘するようにクルド問題が絡んでくると話は更に厄介にも。

****デモ衝突の死者12人 イランの混乱やまず―人権団体****
警察の拘束下での女性死亡を発端とする抗議デモがイラン各地で続き、人権団体によると、治安部隊との衝突などによるクルド人地域での死者は、21日時点で少なくとも12人となった。ロイター通信が報じた。

インターネット上には自動車を燃やすなどして抵抗するデモ隊の動画が相次いで投稿され、混乱がやむ気配は見られない。

女性は少数派クルド人が暮らす西部コルデスタン州出身。頭部を覆うスカーフを適切に着用していなかったことを理由に13日警察に逮捕され、16日に死亡が発表された。

クルド系の人権団体ヘンガウは、コルデスタン州では女性への連帯の意を示すデモに治安部隊が発砲するなどし、死傷者が出る事例が相次いでいると報告している。【9月22日 時事】
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「国家を持たない最大民族」クルド人はトルコやイラクでよく問題になりますが、イランにも多くが暮らしており、その政治行動はイラン当局と対立しています。

【国連総会 イランは欧米側の人権に関する「二重基準」を批判】
折しも開催されている国連総会で、アメリカとイランが核合意再建問題の他、女性の死を受けて人権問題でも批判を応酬する形にもなっています。

****イランと米国、核合意再建・人権問題巡り国連で対立****
米国とイランは21日、国連総会で安全保障や人権問題を巡り対立した。イランのライシ大統領は2015年の核合意への復帰を確約するよう米国に要求。バイデン米大統領はイランに決して核兵器を持たせないと表明した。

ライシ氏は人権分野における一部政府の「二重基準」が人権侵害の 慣行化につながっていると非難。カナダで発見された先住民の墓標のない墓やパレスチナの人々の苦悩、米国で収容された移民の子どもなどに言及した。

イランでは最近、髪を覆うスカーフの着用が不適切として拘束された女性が死亡した事件を受け抗議デモが広がっており、批判をかわす狙いがあるとみられる。

ライシ氏はまた「(15年の核)合意復活に向け、全ての問題を解決しようという偉大で真剣な意志がある」と述べ、「われわれが望むのはただ一つ、約束の順守だ」と指摘。米国が核合意から離脱したことに触れ、「恒久的な合意」を保証する重要性を訴えた。

バイデン氏は核合意復帰への意欲を改めて表明した上で「イランが核兵器を持つことを容認しない」と強調。また、イランのデモ参加者らに同調し、「われわれは基本的権利を守るためにデモに参加しているイランの勇敢な市民、女性たちとともにある」と語った。【9月22日 ロイター】
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【もはや“後がない”核合意再建問題】
一方の、核合意再建問題の方は、一時は“交渉も大詰め”と見られていましたが、結果を出すには至らず、行き詰まりも。

****イランと欧米、核合意巡り平行線 米「国連総会で突破口見えず」****
イランにある3カ所の未申告施設でウランが検出された問題に関する国際原子力機関(IAEA)の調査を巡り、イランと欧米諸国は20日も対立を続けた。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、今週の国連総会で2015年の核合意再建に向けた突破口が開かれるとは期待していないと述べた上で、米国は合意再建を望んでいると改めて表明した。

フランスのマクロン大統領はこの日、イランのライシ大統領と会談。マクロン氏は会談後、「欧米が正式に設定した条件を受け入れるかどうかイランが回答する番だ」と記者団に述べた。

イランは、核合意再建に向けた提案内容を完全に実行する前に、検出されたウランの痕跡に関するIAEAの調査終了を約束するよう米国に要求している。

欧米諸国はこの要求を拒否し、イランがIAEAに満足のいく回答をしたときにのみ調査は終了すると主張している。

マクロン氏は20日、欧米がIAEAに調査終了を迫ることはないと述べた。

一方、ライシ氏は、イランはIAEAが調査を終了し、2018年に核合意を放棄した米国が再び放棄した場合の影響を制限するための保証を引き続き要求していると語った。

イラン政府によると、ライシ氏はマクロン氏に対し「保証の要求は完全に合理的で論理的な要求だ」と述べ、IAEAが調査を終了することなくイランが合意することは不可能だとの見解を示した。【9月21日 ロイター】
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イラン側は、イランだけが不公平な扱いを受けていると主張しています。
IAEAの調査が続くのは、それだけイランに不審な行動があるためでもありますが。

****核兵器の意図、改めて否定=査察は「不公平」―イラン大統領****
イランのライシ大統領は21日、国連総会で演説し、核開発について「イランは核兵器を製造したり保持したりするつもりはなく、(核兵器は)防衛政策上も存在しない」と表明した。

イランはこれまでも兵器化の意図は繰り返し否定しており、米欧との核合意再建交渉が難航する中、改めてイランの立場を強調して国際社会に理解を求めた。

また、ライシ大統領は国際原子力機関(IAEA)による査察をめぐり「イランで行われている核活動は世界のわずか2%なのに対し、査察の35%がイランで行われている」と主張した。

再建交渉をめぐっては、イランによるIAEAの査察拒否が妥結の障害となっており、「不公平」と訴えることで対応の正当性をアピールした。【9月22日 時事】 
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イランが求めている「保証」は、アメリカで共和党が復権すれば、トランプ前大統領のときと同じように、また合意から離脱し、制裁が復活するという懸念によるもので、それはイランからすれば当然でしょう。

****イラン核兵器保有の土俵際にある核合意再開交渉****
クインシー研究所のパリシイ副所長が、Foreign Affairs誌ウェブサイトに8月26日付けで掲載された論説‘Last Chance For America and Iran’で、現在交渉されているイラン核合意再開交渉で合意すべきであり、米共和党が政権を奪還したら、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある、と書いている。主要点は次の通り。

・合意への反対者は、新たな核合意はより短期間かつ弱いものだと批判している。確かにイランが核爆弾を製造のために必要な濃縮ウランを得られる期間(ブレイク・アウト・タイム)が当初の合意では12カ月であったが、現在の合意案では6カ月から9カ月に短縮されている。しかし、現時点でイランは数日で必要量の濃縮ウランを手に入れることが可能なので半年というのは遙かにましだ。

・バイデンは2020年の大統領選挙でバイデン候補は、速やかに復帰する旨を公約に掲げていたので、イラン側は米国の核合意復帰を期待していたが、バイデン大統領は核合意復帰を急がず、貴重な数カ月間を、核合意に強く反対しているイスラエル、アラブ首長国連邦、サウジアラビアとの協議に費やす一方、イランとの信頼醸成については気にしなかった。

・イラン政府関係者は、バイデン大統領が、交渉の代わりに対イラン制裁を継続することによって、より厳しい条件をイランに課そうとしていると考え、対抗措置としてウランの濃縮計画を急速に拡大した。21年6月に核合意再開交渉が始まった時には、既に交渉の雰囲気は最悪であった。

・21年8月に就任した保守派のライシ新大統領は、核合意は優先的な課題では無いとして、過去の核合意について見直しを続け、その間もウラン濃縮のための遠心分離機を増設して濃縮ウランの備蓄を増やし続けた。米国側は、イランが事実上の核兵器保有国になるための時間稼ぎをしているとの疑いを強めた。

・米共和党が24年に政権を奪還すれば、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある。米国が再開された核合意から離脱しない件については、引き続き協議することとし、(米国を含む)全ての合意の当事者が、仮に合意に違反すれば、その対価を払うようにするべきである。

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イランの核合意再開問題は、ボレル欧州連合(EU)外交安全保障政策上級代表が、「最終合意案」を提示したが、案の定、イラン側は、色々とコメントを付けており、交渉を再開して時間稼ぎをしようとしているように見える。交渉が続いている限り、イランは核開発を継続出来る。

更に、問題なのは、8月29日、イランのライシ大統領が、未申告の核物質問題を止めなければ合意再開は難しいと発言したことである。未申告の核物質問題とは、イランが金属ウランを製造していたことついての国際原子力機構(IAEA)の調査の件であるが、金属ウランは、核爆弾の製造に必要不可欠な技術だ。

イラン側は、繰り返し核兵器の保有を否定しているが、核爆弾製造に必要な量の濃縮ウランを備蓄し、IAEAの調査の中止を要求していることは、イランが核兵器を開発しようとしていることを強く疑わせる。

政権交代懸念の米国への対策は
他方、共和党は、24年に政権を奪回すれば、核合意が再開していても廃棄すると公約している由だが、極めて党派的、かつ、無責任と言わざるを得ない。

トランプ政権以来、「過去に例の無い制裁」をイランに課しているが効果を上げていない以上、後は軍事オプションしか残されない様に思われるが、共和党はイランと戦争を行う覚悟があるのだろうか。

上記の記事は、このままでは、たとえ核合意が再開しても2年間しか継続出来ないので、合意を永続的とするために、
(1)米国が再度核合意から離脱する場合に米国にペナルティを科す。
(2)米国・イラン間の経済関係を再開し、米国の経済界にイランとの関係を維持するためのインセンティブを持たせる。
(3)イランと敵対するサウジアラビア等との間に対話を通じて信頼醸成、緊張緩和を進める。
と提言するが、いずれも非現実的と言わざるを得ない。

イランは、既に核爆弾1個を製造に必要な濃縮ウランを備蓄し、半年以内にさらに2個分の備蓄が可能と言われている。

恐らく、濃縮ウランから核爆弾を製造するために必要な金属ウラン製造技術を開発しており、起爆装置の研究も行っている可能性がある。

他方、イスラエルのF-35戦闘機がイランの領空侵犯を繰り返しているという報道があったが、イランの核問題は、いよいよ土俵際に来ているように思われる。【9月21日 WEDGE】
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8月段階の「大詰め」の雰囲気もまた最後を詰め切れずに決裂する可能性が大きくなっていますが、今回決裂すれば、アメリカ・イスラエルにとっては、あとは実力でイランの核開発を阻止するという選択肢しか残らないことにも。世界は新たな厄介の火種を抱えることにもなります。
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ミャンマーで弾圧を受けるロヒンギャの現状 ミャンマー国内では民主派・国軍戦闘で市民に犠牲も

2022-09-21 23:14:00 | ミャンマー
(空爆で破壊された学校とみられる映像(ロイター)【9月20日 読売】)

【将来の夢も希望も持てないロヒンギャの現状】
ウクライナ情勢に国際社会の目が行く一方で(ウクライナ問題についても、“支援疲れ”等の慢性化現象はありますが)、その他の問題が忘れられる危険も。

ミャンマー国軍の民族浄化的な殺戮・暴力・放火・レイプなどでミャンマーを追われたイスラム系少数民族ロヒンギャの問題もそのひとつ。

****八方ふさがりのロヒンギャ難民 弾圧による大量避難から5年*****
バングラデシュにあるロヒンギャ難民キャンプの学校で、モハマド・ユスフさんは毎朝、ミャンマー国歌を歌っている。

仏教徒が多数を占めるミャンマーで国軍が少数派イスラム教徒ロヒンギャを迫害し、大規模な難民流出が始まってから8月25日で5年を迎えた。少なくとも数千人が軍に殺害されたとみられ、ユスフさん一家をはじめ、74万人以上がバングラデシュに逃れた。

不衛生なキャンプで暮らすユスフさんら大多数のロヒンギャの子どもは、教育を受ける機会をほとんど与えられてこなかった。子どもたちに教育を受けさせれば、帰還がすぐには実現しそうにないと認めることになりかねないとバングラデシュ政府が懸念したためだ。

昨年のミャンマーの軍事クーデターによって、ロヒンギャ帰還の見通しはいっそう遠のいたとみられており、バングラデシュ政府は今年7月にようやく、国連児童基金(ユニセフ)に対し、ロヒンギャの子ども13万人に教育を受けさせる計画を許可した。いずれは難民キャンプにいる子ども全員に教育の機会が提供される見込みだ。

だが、バングラデシュ政府は今なお、ロヒンギャ難民の帰還を望んでいる。そのため授業はミャンマーのカリキュラムに沿ってビルマ語で行われ、さらに毎日始業の際にミャンマーの国歌を子どもたちに歌わせている。

オランダ・ハーグの国際司法裁判所では、ミャンマー国軍のロヒンギャへの弾圧がジェノサイド(集団殺害)に当たるかどうかを審理する裁判が行われている。

だが、ユスフさんはミャンマー国歌を大事にしていると言う。
「ミャンマーは私の祖国です」とユスフさん。「この国にひどい目に遭わされたわけじゃない。ひどいことをしたのは、権力を持った人たちです」 妹はミャンマーで亡くなり、同胞は虐殺されたと話す。「それでも、自分の国なのです」と続けた。 夢は航空関係のエンジニアかパイロットになることだ。「いつか世界中を飛び回りたい」と話した。

■「時限爆弾」
キャンプでは計100万人近いロヒンギャ難民が暮らしており、約半数は18歳未満だ。

バングラデシュ軍の元将軍マフズル・ラフマン氏は、同国政府が長期的な計画の必要性に「気付いた」のは、教育を受けていない若者がキャンプにいるリスクに着目したためだと指摘する。

キャンプの中では薬物を密売するギャングがうろつき、治安はすでに深刻な問題になっている。この5年間に起きた殺人事件は100件以上。武装勢力や犯罪集団は、キャンプ生活にうんざりしている若者の勧誘にも力を入れている。

ラフマン氏は、すべての子どもが「時限爆弾になりかねない」とAFPに語る。「教育も受けられず、夢も希望もないキャンプで育つと、どんな怪物になってしまうのか見当もつかない」

■ミャンマーにとどまったロヒンギャの苦難
一方、5年前にバングラデシュに逃れる道を選ばなかった人もいる。母親からミャンマーにとどまるよう懇願されたマウンソウナインさん(仮名)もその一人だ。

故郷と呼ぶ場所に今も住んでいるが、将来の計画を立てることはすっかり諦めたと話す。また弾圧で破壊されるかもしれないからと、雨期ごとの家の修理はやめてしまったため、自宅は荒れるがままになっている。

ミャンマーに残る約60万人のロヒンギャは、キャンプに収容されているか、あるいは村にとどまっている場合もミャンマー軍や国境警備隊に翻弄され、いつまた生活が一変するか分からない。

大半は市民権を与えられず、移動や医療、教育に関して制限を受けている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチはロヒンギャに対するこうした処遇を、かつての南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)になぞらえて非難している。

ロヒンギャの人々は「常にこの国から出ていくことを考えています」とマウンソウナインさん。「でも、出ていくことも許されません。拘束され、移動も止められてしまうからです」

■「夢も希望も持てない」
ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、昨年のクーデター以降、「無許可での移動」を理由に身柄を拘束されたロヒンギャは、子ども数百人を含め、約2000人に上る。

イスラム教徒が大多数を占めるマレーシアも、ロヒンギャ難民の主要な逃避先となっている。密航業者に命を預けて一か八かで危険な旅に出る人も多い。今年5月には、ミャンマー南西部の海岸に14人の遺体が打ち上げられた。国連難民高等弁務官事務所は、ロヒンギャ難民との見方を示している。

昨年、国軍が再び権力を握ったことで、ロヒンギャの人々が市民権を取得し、制限が緩和される希望はさらに薄れた。

国際医療援助団体「国境なき医師団」に所属し、ミャンマーでの活動の代表を務めているマルヤン・ベサイェン氏は、キャンプで暮らしている人々にとっては家に帰ることすらかなわないだろうと話す。
「たとえ移動できたとしても、彼らがかつて住んでいた多くの村やコミュニティーは、もはや存在しません」

マウンソウナインさんは「この国では、私たちロヒンギャへの人種的憎悪が根強いのです」と述べ、「将来の夢も希望も持てません」と訴える。「私たちはただ、尊厳を持って人並みの生活を送りたいだけです」 【9月3日 AFP】
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問題の根底には、ミャンマー国軍だけでなく、一般的ミャンマー国民の間で“ロヒンギャへの人種的憎悪が根強い”ことがあります。

【ミャンマー国内の国軍と民主派武装勢力の戦闘 空爆で子供11人死亡】
一方、ミャンマー国内にあっては、軍事政権は民主派や、その象徴としてのスー・チー氏への弾圧を強めています。

****スー・チー氏に新たに禁錮3年判決、刑期計20年に…重労働3年も言い渡す****
ミャンマー国軍が首都ネピドーに設置した特別法廷は2日、国軍による拘束が続く国民民主連盟(NLD)のトップ、アウン・サン・スー・チー氏(77)に、2020年の総選挙で不当に影響力を行使したとして禁錮3年の有罪判決を言い渡した。これまでの判決を合わせると、禁錮刑の刑期は計20年となる。法廷は、今回の刑期3年間の重労働も言い渡した。(後略)。【9月2日 読売】
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民主派武装勢力は国軍に抵抗する少数民族武装勢力と連携して、軍事政権への武力闘争を続けています。
こうした抵抗勢力に国軍は激しい攻撃をしかけており、その過程で痛ましい事件も。

****ミャンマー軍政、学校をヘリから空爆 児童11人殺害し証拠隠滅のため遺体火葬****
<1度の攻撃による子供の犠牲としては過去最悪の事態に──>

ミャンマーの北西部ザガイン地方域にある村の僧院学校が軍のヘリコプターから空爆を受けて児童11人が死亡した。一度の戦闘で子供が11人死亡したケースは2021年2月1日の軍によるクーデター以降初めてとみられ、民主派勢力は怒りをつのらせている。

9月16日午後1時ごろ、ザガイン地方域タバイン郡区レット・エット・コネ村にある仏教の僧院学校が、上空のMi35ヘリコプター2機から空爆を受け、僧院学校で学ぶ児童ら7人が即死し、教師3人と児童14人が負傷した。

その後、輸送ヘリから降り立った約80人の兵士が僧院学校を包囲して攻撃を続けた結果、さらに児童2人が死亡した。兵士は児童の遺体や負傷者約20人を民間人から強制的に奪ったトラックで約11キロ離れたエ・ウーにある伝統医学病院に搬送した。同病院はこの地域の軍の拠点となっていた。

軍に徴用されたトラックの運転手は「遺体は兵士と思っていたが、中を見るとみんな子供だったので大きなショックを受けた」と話しているという。

同病院で治療中に死亡したとみられる児童2人が確認され、これで児童の犠牲は11人となった。さらに負傷した児童には手足を攻撃で吹き飛ばされた重傷者も含まれているという。

児童の遺体を火葬、証拠隠滅か
(中略)軍は死者と負傷者を運んだ伝統医学病院で襲撃の翌日にあたる9月17日の午後4時ごろ、犠牲となった児童11人の遺体を全て火葬に付して病院敷地内の墓地に埋葬したという。

子供が行方不明になった両親が攻撃された僧院学校を訪れたが、残されていたのは子供の衣服だけだったため「もし死んだとしても葬儀も行えない」と悲しみに暮れていたという。

「イラワジ」は「火葬は軍による証拠隠滅の可能性が高く、多くの児童が犠牲になった攻撃は許されるものではない」と報じて軍政への反発を強めている。

国連児童基金(ユニセフ)のミャンマー事務所は9月19日、この事件の詳細はまだ不明としながらも児童11人が死亡し、15人が行方不明であることを明らかにしており、今後犠牲者が増加する可能性がある。

これに対し軍政は「武装抵抗勢力が僧院学校に潜伏しており、児童らを人間の盾として利用していた」との声明を発表し、攻撃や児童殺害を正当化した。

軍政は声明の中で、僧院学校には武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」のメンバーや、軍との戦闘を繰り返している隣接するカチン州を活動拠点とする少数民族武装勢力「カチン独立軍(KIA)」の兵士らが潜んでいたとしている。

これに対して地元のPDFは「空爆当時、僧院学校にはPDFやKIAのメンバーは誰一人としていなかった。軍は嘘をついている」と反論している。

ASEANの方針転換にも影響か
ニューヨークでの国連総会に出席しているマレーシアのサイフディン・アブドラ外相は、9月19日に記者会見でミャンマーの反軍政組織として抵抗を続けている「国民統一政府(NUG)」と接触したことを明らかにした。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国がNUGメンバーと接触するのは初。同外相は今後ASEANとしてミャンマー問題への取り組みを見直す方針を示した。

この会見でサイフディン外相は16日に起きた軍による僧院学校襲撃で多数の児童が不犠牲になったことが伝えられるなか、NUGとの面談に臨んだことを明らかにしている。

こうした軍による民間人、特に子供や女性への無差別攻撃や虐殺、レイプは重大な人権侵害であるとして国際的な人権団体などから軍政とその指導者であるミン・アウン・フライン国軍司令官に対する厳しい非難が浴びせられている。

ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると2021年2月1日のクーデター以降、9月19日までの軍による民間人の殺害は2299人にのぼり、逮捕者は1万5571人に達しているという。

出口の見えないミャンマー問題は、ASEANによる和解調停努力にも関わらず、ますます混迷の度を深めている。【9月21日 大塚智彦氏 Newsweek】 
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【ミャンマーへの対応を硬化させるASEAN 「五項目の合意」見直しの検討も】
上記記事にもあるマレーシアのサイフディン・アブドラ外相は、ASEANとしてのミャンマー軍事政権への対応を見直すことにも言及しています。

****ASEANのミャンマー和平計画、見直し必要=マレーシア外相*****
マレーシアのサイフディン外相は19日、東南アジア諸国連合(ASEAN)がミャンマーの和平実現に向けて国軍と合意した5項目について、11月のASEAN首脳会議までに見直す必要があるとの考えを示した。

ASEANは、昨年2月のクーデター後、ミャンマーの和平に向けた取り組みを主導しているが、国軍はASEANと合意した暴力の即時停止など5項目について大半を履行していない。

国連総会に参加するためニューヨークを訪問中のサイフディン氏は記者団に対して「11月のASEAN首脳会議までに5項目の合意事項が依然として妥当かどうか、より良いものに置き換える必要があるかどうかを見直す必要がある」とし、「11月までに答えを見つけなければならない」と語った。【9月20日 ロイター】
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ASEANはミャンマー軍事政権への対応を硬化させていますが、事態改善の方策はないようにも。

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7月、国民統一民主党(NUD)と共謀して軍政に対するテロを主導したなどとして、民主活動家チョーミンユおよび国民民主連盟(NLD)の元議員ピョーゼヤートーら計4人の死刑が執行された。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国カンボジアのフン・センが6月に死刑執行の停止を求める書簡をミン・アウン・フライン(国軍総司令官)に送った経緯があるが、ASEANは「死刑執行を含む長期化する政治危機への懸念」を表明し、ASEANが求める「五項目の合意」の履行が進まないことに「深い失望」を表明している。

ミャンマーに関与し情勢を打破する能力がASEANにないことが改めて明らかになっている。【9月15日 WEDGE】
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【民主派「影の政府」の承認の是非】
一方、Economist誌8月22日号は、ミャンマーの軍事政権に抵抗して奮闘する国民統一政府(NUG)は資金の支援を必要としているとして、アメリカがNUGを正統な政府として承認し、もって凍結したミャンマーの資産を彼等に使わせることを示唆する社説を掲げています。社説は次のように主張しています。

****忘れてはならないミャンマー情勢と必要な“奥の手”****
(中略)
NLDの議員は「影の政府」(国民統一政府:NUG)を組織している。

ビルマ族の排外主義との評にかかわらず、彼らは少数民族の代表を迎え入れた。彼らはロヒンギャの待遇を改善するとも約束した。NUGは殆どの抵抗勢力を含めビルマ族の大多数の支持を獲得している。幾つかの地域では、地方の行政組織を形成し、学校と診療所を運営している。

一方、軍は反乱勢力を打倒する能力がないことを証明した。

しかし、NUGは絶望的に資金が不足している。彼等は西側から資金の支援を必要としている。もし、米国がNUGを正統な政府を承認すれば、NUGは、クーデタの後に米国が凍結した10億ドルのミャンマーの資金の所有権を主張出来るであろう。そのようなジェスチャーには、外部世界は軍の残虐行為を不作為によって黙認する積りはないことを示す利点もあるであろう。

勿論、それは軍事政権の終焉を保証はしない。軍事政権は資金と火力において圧倒的な優位性を維持している。中国という強力な同盟国もある。しかし、抵抗運動は18カ月間不利な条件を克服してきた。この条件を有利な方向に動かすのに多くは要しないであろう。【9月15日 WEDGE】
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この考えに対し、WEDGEはやや現実性を欠くとの見方です。

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(中略)しかし、NUDは地下組織である。彼等の奮闘ぶりは讃えられるべきであるが、政府とは到底言い得まい。彼等は過激化しており、一般市民に職場放棄などを含め軍事政権との関係を一切断つよう要求し、軍事政権に協力していると見做される市民を殺害する。軍よりも抵抗勢力を怖れる市民もあると報じられている。

軍事政権の転覆も全土掌握も進まず
外交情報サイトThe DiplomatはNUDのドゥワラシラー大統領代行(彼はカチン族である)とのインタビュー記事(7月19日付)を掲載しているが、彼は抵抗勢力が国土の50%以上を支配し、数十の町に自治組織を作っているなどと述べ、いずれは真の連邦国家を作る目標を語っている。

しかし、これは割引いて聞く必要があろう。  都市と資源を支配しているのは軍事政権である。抵抗勢力は寄せ集めの勢力であり、武器に事欠く状況である。一定地域を支配していると言っても、それは軍が攻勢に出れば引き、軍が引けば出るといった類のことに違いない。

エコノミスト誌は5月21日号で、(地方メディアは威勢の良いニュースを流しているが)「抵抗勢力は自身のプロパガンダを信じるリスクを冒している」と書いたことがある。  

抵抗勢力に軍事政権を転覆する力はないが、軍事政権による全土掌握も進んでいない。ミャンマーの憲法によれば非常事態宣言の期間は1年だが、半年ずつ2回まで延長可能であり、7月31日、2回目の延長(23年2月まで)が決定された。  

憲法はその後6カ月以内に選挙を行うことを規定しており、軍事政権は23年8月までに選挙を行うとしている。軍事政権は選挙までに全土掌握を目指すであろうが、そのことは必然的に更なる流血を招くであろう。
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未だ出口が見えないミャンマー情勢です。
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台湾をめぐる米中間の緊張 バイデン発言、米議会の動き、中国党規約改正で更に一段階進む流れ

2022-09-20 22:11:27 | 東アジア
(8月25日、台湾行政院(内閣)は、中国との緊張が高まる中、2023年の防衛予算を前年比12.9%増の4151億台湾ドル(137億2000万米ドル)とする案を発表した。写真は台湾の年次軍事演習の様子。新北市で7月撮影【8月25日 大紀元】)

【バイデン大統領 再三再四の「台湾防衛」発言】
従来アメリカは台湾有事の際の軍事的対応をあきらかにしないことで、台湾の独立志向と中国の台湾侵攻の両者を牽制・抑制する、いわゆる「あいまい戦略」をとってきており、ホワイトハウスはそのことは今も変わっていないとしていますが、バイデン大統領はこれまで3回、有事の際の台湾防衛を口にしてきました。(そのたびに、ホワイトハウスは、従来からのあいまい戦略に変更はない旨を事後的に弁明)

これだけ繰り返せば、失言ではなく“意図的”発言と思われますが、再び・・・

****バイデン米大統領、台湾防衛を明言****
ジョー・バイデン米大統領は18日、中国が台湾に侵攻した場合、米軍は台湾を防衛すると明言した。一方、ホワイトハウスは従来の政策に変更はないとの見解を示した。

バイデン氏は米CBSの報道番組「60ミニッツ」で、米軍は台湾を防衛するのかという質問に対し、「前例のない攻撃」があれば「イエスだ」と答えた。

バイデン氏は5月の日本での日米首脳会談後の記者会見でも、台湾有事には軍事的に関与すると述べ、ホワイトハウスが火消しを図っていた。

米国は1979年に中国と国交を樹立し、台湾と断交した。一方で、台湾関係法により、台湾に自衛のための武器供与を約束している。

しかし、これまでは台湾防衛をするかどうか明確にしない「戦略的な曖昧さ」を維持し、中国による侵攻と、台湾が正式な独立宣言を行って中国を刺激する事態を回避してきた。

ホワイトハウスの報道官は、バイデン氏の今回の発言が「戦略的な曖昧さ」の変化を意味するのかと問われると、「大統領は今年に入ってから東京でもこのような発言をし、さらにわが国の台湾政策は変わっていないと明言した。それは今も変わらない」と述べた。 【9月19日 AFP】
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【「台湾独立」支持ともとれる発言】
今回発言は「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と、単に「有事の際の台湾防衛」にとどまらず、「台湾独立支持」を示唆したととれるような内容にもなっており、これまで以上に踏み込んだ発言と指摘されています。

****バイデン氏の台湾防衛発言、「独立支持」への転換示唆か****
バイデン米大統領が18日の米CBSテレビでのインタビューで、台湾問題を巡って、再び踏み込んだ発言を行った。ニュースのヘッドラインには、中国が侵攻すれば米軍が台湾を守る、との文字が躍った。

しかし、それよりもずっと重大なのは、米国の政策を台湾独立支持の方向に転換させることをバイデン氏が示唆したとも解釈されることだった。

ホワイトハウスはバイデン氏の発言後、米国の政策に変更はないと必死に説明している。だが、何人かの専門家は、意図的かどうかはともかくとして、バイデン氏によって、台湾の独立にはコミットしないという従来の米国の姿勢は損なわれたのではないか、との見方を示した。

中国の習近平国家主席はずっと前から台湾を支配下に置くと表明し、そのために軍事力行使を辞さない構えを示してきた。台湾政府は中国側の「自国領土の一部」という主張に強く反発しつつ、既に事実上の独立国家である以上、改めて独立宣言をする必要はないとのメッセージを発している。

ブリンケン国務長官、オースティン国防長官ら米政府高官も今年、米国は台湾独立を支持しないとの立場を強調。これは過去数十年間にわたり、中国政府に「挑発によらざる攻撃」を思いとどまらせながら、台湾に正式な独立を宣言しないよう納得させるため、細心の注意を払って続けてきた米国の外交的努力、ワシントン流の言い方なら「二重の抑止」政策の一環だった。

ところが、バイデン氏はCBSテレビ番組「60ミニッツ」で「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と語った。

<矛盾する姿勢>
バイデン氏に批判的な人々は、バイデン氏が台湾の独立宣言を暗黙で支持したと、中国政府に受け止められると主張する。中国は既に米国が台湾防衛に動くと想定している公算が大きい以上、わざわざ守ると明言する効果より、中国側の敵意を増幅させるデメリットの方が大きいとも指摘した。

シンクタンクのファウンデーション・フォー・ディフェンス・オブ・デモクラシーズの中国専門家、クレイグ・シングルトン氏は「米国の台湾政策は変わらないと言いながら、米軍の台湾防衛を約束し、台湾に独立決定権があると認めるのは矛盾している」と述べ、バイデン氏は台湾自らが独立するかどうか決められると示唆した、と中国が懸念する公算が大きいと付け加えた。

ベン・サス上院議員ら一部の共和党議員は、バイデン氏の発言を称賛するとともに、ホワイトハウスが姿勢を後退させたと非難。一方、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は「大統領は米国の『長らく維持してきた1つの中国政策』を直接肯定している」と言い張った。

<求められる説明責任>
台湾外交部はバイデン氏の発言に対して、確固とした支持を示してくれたことへの「心からの感謝」を表明した。

在米中国大使館の報道官は、米国は台湾の独立派勢力に誤ったシグナルを送り、台湾海峡の平和と中米関係を危険にさらしてはならないとくぎを刺した。

シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、ジュード・ブランチェット氏は、バイデン氏の発言は米国の政策を明瞭化するより、むしろ混乱をもたらしたと話す。

その上で同氏は「正確な言葉づかいが最も大事になる問題の1つは、台湾政策を巡る話だ。台湾が独立を宣言しても米国が台湾を守るという方向にわれわれの外交政策が根本的に変わるのだとすれば、それは単に60ミニッツのインタビューで知らせるより、もっとしっかりした議論がふさわしいテーマになる」と主張した。【9月20日 ロイター】
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当然ながら中国は激しく反発しています。

****米大統領の台湾防衛発言は「約束違反」 中国が反発****
中国政府は19日、ジョー・バイデン大統領が、米国は中国の侵攻から台湾を守ると表明したことについて、米政府の従来方針に「著しく反している」と抗議した。(中略)

中国外務省の毛寧報道官は定例記者会見で、バイデン氏の発言について「台湾の独立を支持しないとする米国の重要な約束に著しく反しており、独立派に重大な誤った信号を送るものだ」と述べた。

その上で「われわれは平和的統一に向けて最大限、真摯(しんし)に努力する用意がある」と強調。「同時に、わが国の分裂を狙ういかなる活動も断固容認せず、あらゆる必要な措置を講じる選択肢を保有している」と語った。

毛氏は「米国に対し、台湾問題は極めて重要かつ繊細であることを十分に認識するよう求める」と述べるとともに、台湾独立を支持しないとの約束を誠実に守るよう要請した。

一方、台湾外交部(外務省)は19日、バイデン氏発言に「心から感謝する」と表明した。 【9月20日 AFP】*******************

習近平国家主席も、こうしたバイデン大統領の発言に対し攻撃性を強化するのか(結果的に米中対立を先鋭化させるのか)、あるいは抑制的に対応するのか、自身の3選を決める党大会が直後にひかえているだけに難しいところ。

【政権以上に強硬な米議会 超党派で台湾支援強化の動き】
アメリカは台湾への武器売却を進めています。

****アメリカ政府 台湾にミサイルなど1500億円規模の売却承認 台湾外交部「大いに歓迎し、感謝」****
アメリカ国務省が台湾に対するミサイルなどの売却を承認しました。

対艦ミサイル「ハープーン」や、空対空ミサイル「サイドワインダー」などで、総額は11億ドル=日本円にして1500億円にのぼります。

これを受け、台湾外交部は「大いに歓迎し、感謝する」としたうえで、「中国が軍事的な挑発を続け、現状を一方的に変えようとしているが、台湾の自衛への決意はこの上なく強固だ」としています。

また、国防部も「台湾海峡とインド太平洋地域の安全と平和を共同で維持したい」とアメリカとの協力関係を強調しています。【9月3日 TBS NEWS DIG】
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アメリカは、再三のバイデン発言、武器売却、ペロシ下院議長訪台など、台湾支援の姿勢を強めていますが、これはバイデン政権の姿勢という以上に、むしろ米議会の方が台湾支援では強硬な姿勢をとっていることのあらわれでもあります。

****台湾支援強化へ強硬姿勢=米上院委、超党派で法案可決―バイデン政権、対応苦慮も****
米上院外交委員会は14日、台湾への軍事支援を大幅に拡大する「台湾政策法案」を賛成多数で可決した。成立には上下両院本会議での可決と、大統領の署名が必要。

米議会が超党派で台湾支援強化に向けた強い姿勢を示した形で、米中対話を模索するバイデン政権は難しい対応を迫られそうだ。

ペロシ米下院議長による8月の訪台に反発した中国は、台湾への軍事的圧力を強め、米国との対話の窓口も閉ざしている。

バイデン政権は台湾への軍事的威嚇をけん制する一方、「一つの中国」政策を堅持する姿勢もたびたび表明。不測の事態を避けるための対話維持を目指しており、法案が中国側に誤ったメッセージを送ることを懸念している。

法案は、台湾軍の装備や訓練などの強化を目的とした4年間で総額約45億ドル(約6400億円)の軍事支援のほか、最大20億ドル(約2850億円)の財政援助を規定。

台湾を北大西洋条約機構(NATO)非加盟の「主要同盟国」に指定することも盛り込み、米台間の軍事協力強化をうたっている。台湾侵攻の動きがあれば、中国共産党幹部らに制裁を科すことも明記した。

親台湾派とされるメネンデス上院外交委員長(民主)は委員会で「頼れる抑止と台湾海峡の安定維持を望むなら、現状を自覚すべきだ」と述べ、台湾への軍事的圧力を強める中国に警戒感を示した。「米国は戦争を望んでいない」とも語り、緊張を激化させているのは中国だとの認識を強調した。【9月15日 時事】
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今回法案は、アメリカによる台湾関与の基盤となっている「台湾関係法」が制定された1979年以降で、米台関係を最も包括的に再構築する内容となっています。

なお、バイデン政権も対中国制裁を検討していることも報じられていますが、実現は難しいという見方も。

****米政権、中国に制裁検討か 台湾侵攻抑止で、実現性疑問視も****
ロイター通信は13日、バイデン米政権が中国の台湾侵攻を抑止するための対中制裁措置を検討していると報じた。関係筋の話として伝えた。

8月上旬のペロシ米下院議長による訪台を受けて中国が軍事行動を激化させた後、喫緊の検討課題となった。世界第2位の経済大国である中国への制裁の実現可能性を疑問視する見方もある。

バイデン政権は2月にロシアがウクライナに侵攻した後、対中制裁の検討を始めた。詳しい内容は不明で、欧州やアジア各国と連携しつつ中国を過度に刺激しない方法を探っているという。台湾も欧州各国に、中国が攻撃した場合の行動を計画するよう要求している。【9月14日 共同】
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【中国も「台湾統一」を党規約に明記か】
一方の中国も、来月中旬の党大会で「台湾統一を達成することはゆるぎない党の任務」という文言が党の規約に初めて入る可能性があるとの報道も。

****中国共産党「党規約」に「台湾統一」初めて盛り込む可能性****
中国で来月開かれる共産党大会で「台湾統一を達成することはゆるぎない党の任務」という文言が党の規約に初めて入る可能性があると香港メディアが伝えました。

中国では来月、5年に一度の党大会が開かれますがこの際、中国共産党の最高規則にあたる党規約を改正し「重大な戦略的思想」を盛り込むことを決めています。

いまの規約では台湾について「香港、マカオ、台湾、海外同胞を含む全国民の団結を継続的に強化する」とだけ記されていますが、15日付けの香港メディアは今度の改正で「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することは、党の揺るぎない歴史的任務だ」という表現が盛り込まれる可能性があると伝えました。

「台湾統一」という文言が盛り込まれるのは初めてのことで、規約に明記することで台湾統一に向けたより具体的な行動をとる根拠とされる可能性があります。

また、習近平国家主席は今回の党大会で、異例の3期目に入る見通しですが、自身の続投を正当化する根拠のひとつとして台湾問題の「解決」を強調する狙いがあるものとみられます。【9月16日 TBS NEWS DIG】
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党規約明記となれば、自身の続投を正当化する根拠ともなりますが、自身がその規約に縛られて更にエスカレートせざるを得なくなる可能性も。

台湾有事という事態は不可避的に日本も関与せざるを得なくなりますので、あまり想像したくはない事態であり、また、いかに中国・習近平政権と言えど、おいそれと踏み込めるものでもありませんが、米中間の緊張はまた1段階あがったようにも見えます。
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ロシア  ウクライナ情勢をめぐり、戦局でも、国際関係でも色濃い苦境

2022-09-19 23:22:55 | ロシア
(ウクライナ軍の攻撃ドローン「R18」【9月18日 YAHOO!ニュース】)

【ロシア ドローンも弾薬も兵士も不足】
アメリカの空軍戦力の主力が従来の有人戦闘機から無人機ドローンに変わりつつあること、アゼルバイジャンがトルコ製ドローンを駆使してアルメニア軍を大破したことで戦闘の形が変わったと言われていること・・・など、ドローンが現代の戦闘の重要な部分を担うようになっていますが、そのあたりは野戦砲など「古いタイプ」の兵器が目立つウクライナの戦地でも同様のようです。

****戦場のウクライナ兵に直接聞いた…“電光石火作戦”でロシア軍敗走 陰の主役は「中国製ドローン」だった【報道1930】****
(中略)(ウクライナ軍の戦果について)こう語るのはウクライナ軍の空中偵察部隊チーム長、マジャル氏。ヘルソンでウクライナ軍が攻勢を見せているのは、米国供与の高機動ロケット砲システム=ハイマースが届いたことに加え、ドローンが重要な役割を果たしているという。

マジャル氏 「見てください。ドローンを持った兵士です。私の後ろにいる兵士らは、1つのシフトで50回くらいドローンを飛ばします。ドローンは攻撃や砲撃を受けたり、ドローン妨害装置が使われることもあるので、手動で操作することが多いです。つまり、ナビゲーション、距離計や高度計を使わないで、カメラだけで操作している状態です。戦闘地では必要不可欠なスキルです」

マジャル氏は実際にドローンを飛ばしている映像を送ってくれた。 「これは中国製の民間用ドローンで、MAVIC3です。DJI社が製造しています。」

ドローンは「偵察用」「爆弾を落として戻ってくるタイプ」「自爆型」など何種類かを駆使して攻撃を行っていると明らかにした。そして、ドローンは消耗品なので質、量ともにもっと必要だと語る。

「様々なドローンはありますが、その中に、100キロも飛べるドローンや高高度ドローンがあり、ドローン妨害装置の電波が届かないので有利なのですが、このようなプロフェショナルなドローンは、非常に数が少なく不足しています」(BS-TBS『報道1930』 9月13日放送より)【9月14日 TBS NEWS DIG】
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戦闘のさなかに兵士がカメラ映像を観ながらピコピコ操作している・・・というのは奇妙な絵でもありますが、それが現代の戦闘の一端でもあるようです。これからはゲームオタク的な人材が優れた兵士になるのかも。

その重要な武器である無人機でもロシアは不足をきたしており、イランに頼っているとか。ただ、イラン製は信頼性に欠けるとも。

****イランのロシアへの無人航空機提供の脅威と限界****
イランはウクライナでの使用のために無人機をロシアに送った。しかし、米高官によれば、そのいくつかはすでに機能不全を起こしたと言う。(中略)

ロシア軍がイランに重要技術を頼らなければならないのは、その武器在庫がどれほど足りないかを示すものだ

イランとロシアの軍事協力が、無人機をイランがロシアに提供するなど進んでいる。イランとロシアの同盟関係ができつつあるのではないかと懸念する向きもあるが、イランとロシアの関係は伝統的に相互不信が強く、信頼関係に裏打ちされた同盟関係になることは考え難いように思われる。

今回の無人機の取引は、ロシア側の無人機需要と制裁下のイラン側の輸出収益確保願望が一致したので成立したものと考えていいのではないかと判断できる。【9月13日 WEDGE】
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同様の現象は戦闘に不可欠な弾薬でも起きています。ロシアが弾薬で頼ったのは、あの北朝鮮。

****ロシア、武器不足浮き彫り 北朝鮮から弾薬「数百万発」調達へ協議*****
バイデン米政権は6日、ウクライナに侵略を続けるロシアが北朝鮮から大量の弾薬の調達を打診していることを明らかにした。ロシアはイランから無人機を調達したことも判明している。経済制裁の影響で兵器や弾薬の不足に悩むロシアが、権威主義国家に支援を求める実態が浮き彫りになった。(中略)

電子機器の禁輸など対露経済制裁が弾薬の製造や在庫に影響を与えていると指摘されており、バイデン政権は、ロシアがイランに続き北朝鮮にも触手を伸ばしたことについて、「ロシアが補給の最前線でさまざまな困難に直面している証左」(国防総省のライダー報道官)と注視している。(後略)【9月7日 産経】
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北朝鮮製弾薬には不発弾が多いとのことで、ウクライナ軍の攻勢に苦しむロシア軍にとっては、更に悩みの種にも。

「もしウクライナの最前線に届いたのなら、試射を行っても不思議ではありません。その結果、延坪島砲撃事件と同じくらいの高率で不発弾があることが判明すると、部隊全体が不安に包まれるはずです。士気は更に低下することになるでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)【9月16日 デイリー新潮】

ロシア軍が不足しているのは武器・弾薬だけでなく、そもそも兵士も足りません。

“(ウクライナ軍参謀本部)報告によると、ロシア軍は受刑者の動員を計画。重罪を犯した受刑者は6カ月の兵役で、ほかの受刑者は3カ月の兵役につけば、「犯罪歴を取り消す」などの条件を示しているという。また、薬物やアルコールの依存症の人たちも、数多く動員されているとしている。”【9月14日 日系メディア】

当然のようにロシア国内強硬派からは「戦時動員をかけて戦争のための人員を確保すべし」との声も出てきていますが、プーチン政権としては「特殊作戦」の失敗を認め、「戦争」に対する国民の忌避感を煽る危険があるため、そうした方策はとりたくないところ。

****ロシア、予備兵動員の議論否定 ウクライナによる領土奪還でも****
ロシア大統領府のペスコフ報道官は13日、ウクライナ軍が同国北東部ハリコフ地方のほぼ全域をロシアから奪還したのを受け、ウクライナに予備兵を動員するかどうかについて「現時点ではない、その議論はしていない」と語った。 

7カ月近くに及ぶウクライナとの戦闘でロシアは最悪の敗北の一つを喫し、ウクライナでの兵力強化のため全国から兵士を動員するように求める圧力が高まっている。 

ロシアのメディアは12日、政権与党の統一ロシアのシェレメト下院議員が勝利には「総動員」が必要と言及したことを報じた。 

野党の共産党のジュガーノフ委員長は13日、党ウェブサイトで発表した声明で、欧米と北大西洋条約機構(NATO)に対する「戦争」と呼ぶものに勝利するには「何よりもわれわれの力と資源を最大限に動員することが必要だ」と記した。 

ペスコフ氏は、動員を求める民族主義的な論客による軍指導部への批判は「多元主義」の一つの例であり、ロシア人は全体としてプーチン大統領を支持し続けていると主張した。 

プーチン氏はこれまでのところ、過去5年間に兵役に就いた約200万人のロシアの予備兵を動員していない。動員した場合、限定的な軍事作戦と称してきたのが実際には全面戦争であることを認めることになる。【9月14日 ロイター】
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プーチン大統領としては、もしウクライナで失敗したら軍の責任にするつもりのようです。

【戦局好転で強気増すウクライナ】
戦況の方は周知のようにウクライナ軍が電撃的な攻勢で目覚ましい成果をあげています。

****ウクライナ軍の反攻続く=東部ドンバスのロシア軍もろく****
ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドンバス地方のロシア軍を脅かす北東部ハリコフ州のオスキル川東岸に軍が前進したと表明した。18日夜の演説で「一連の勝利の後、現状は小休止しているように見えるが、これはさらなる(勝利への)準備だ」と宣言した。
 
米シンクタンクの戦争研究所は17日、ロシアがハリコフ、ルガンスク両州に大規模な援軍を出せなかったとして「ウクライナ北東部の大部分で、ロシア軍はウクライナの反攻に対し非常に脆弱(ぜいじゃく)な状態になっている」と分析した。英国防省によると、ロシア軍は攻撃対象を民間施設などに拡大している。【9月19日 時事】
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この状況を受けてウクライナ国民の領土奪還の思いは更に強まっています。

****領土割譲「認めない」87%に ウクライナ世論調査 軍の攻勢で****
ウクライナの世論調査会社「キーウ国際社会学研究所」が15日、発表した最新の世論調査結果で、回答した人の87%が、どんなに戦争が長引いても領土をロシアに提供することを「認めない」と答えた。

3月時点より5ポイント増加したという。ウクライナ軍が今月に入って東部と南部で領土を奪還したため、国民の士気が高まっているとみられる。(中略)

同社幹部は調査結果について、「国民に(戦争に対する)疲労はなく、ウクライナに(ロシアとの)和平を押しつけることは意味がない」とするコメントを発表した。【9月16日 毎日】
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ゼレンスキー政権も強気姿勢を強めています。

****ロシア排除・中立化拒否、ウクライナが「安全の保証」で新提案****
ウクライナ大統領府は13日、ロシアに再侵略を許さないことを目的にした自国の「安全の保証」に関する作業部会の提案を公表した。

安全の保証を確約する国際条約からロシアを排除し、自国の中立化も拒否しているのが特徴で、3月末の提案から様変わりした。タス通信によると、露大統領報道官は14日、提案が「ロシアにとって主要な脅威になる」と反発した。(中略)

提案ではウクライナが侵略されないようにするため、米英仏独やカナダ、トルコ、豪州などと「キーウ安全保障盟約」と名付けた法的拘束力のある国際条約の締結を提唱した。ロシアの参加には言及していない。

安全の保証は、ウクライナのNATO加盟が実現するまで「暫定的に」必要だと強調し、ウクライナは「中立化」などの義務を負わないとも明記した。

ウクライナが3月29日のロシアとの停戦協議で提示した安全の保証に関する国際条約案では、ウクライナのNATO加盟を嫌うロシアに配慮し、ウクライナが「中立化」を確約する見返りに、自国の安全を保証してもらう内容だった。

新たな提案では、条約の適用範囲についても、「国際的に承認された領土」と位置付け、ロシアが2014年に併合した南部クリミアや、東部の親露派武装集団が実効支配する地域にも対象を拡大した。日本にも対露制裁など非軍事での貢献に期待感を示した。

ウクライナの副首相は13日、フランスのテレビ局とのインタビューで、ロシア側から、改めて停戦協議の打診があったことを明らかにし、ウクライナは拒否したと説明した。双方の停戦協議は5月中旬以降、中断している。【9月15日 読売】
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【旧ソ連構成国不安定化で明らかなロシアの影響力低下】
一方のロシアは前述のように兵士も不足する状況で、紛争を抱える旧ソ連構成国へ派遣している平和維持部隊から兵士をウクライナにまわそうともしていますが、そのことで派遣先の状況が不安定化し、結果的にロシアの影響力低下を明らかにすることにもなっています。

****上海協力機構、参加国間で紛争=ウクライナ侵攻でロシア影響力低下****
中ロが主導する上海協力機構(SCO)首脳会議は16日、ウズベキスタンの古都サマルカンドで2日間の日程を終えた。イランの正式加盟も決まり、採択された首脳宣言は「SCO拡大は地域安定に寄与する」と結束を強調した。

しかし、現実には開幕直前からアルメニアとアゼルバイジャン、キルギスとタジキスタンという参加国同士の国境紛争が起き、不安要素が残った。

「情勢悪化を非常に懸念している」。プーチン大統領は16日、サマルカンドで会談したアゼルバイジャンのアリエフ大統領に訴えた。SCO首脳会議を欠席したアルメニアのパシニャン首相とは事前に電話で協議しており、双方に自制を呼び掛けた形だ。

13日に再燃した両国の係争地ナゴルノカラバフの紛争は沈静化に向かったが、戦死者はアルメニア側135人、アゼルバイジャン側80人の計215人に上った。
 
キルギスとタジクは14日から国境地帯で交戦。相手による攻撃で始まったと非難し合った。ロシア紙コメルサントによると、衝突は「過去12年間で150件以上」と珍しくないが、SCO首脳会議に合わせてキルギスのジャパロフ、タジクのラフモン両大統領が急きょ会談する事態に。キルギス側の発表では、少なくとも36人が死亡している。

衝突したのはいずれも旧ソ連構成国。ロシア軍は、ウクライナ侵攻が長期化し、戦闘による死傷者が「7万〜8万人」(米国防総省)とも推計される。ロシアはナゴルノカラバフに派遣した平和維持部隊などからも兵士をかき集めていると言われ、それが地域の不安定化につながっているもようだ。

米シンクタンクの戦争研究所は15日、プーチン政権が2月に侵攻開始後、「旧ソ連圏に駐留するロシア軍部隊の大半が流出した」と指摘した。ロシアは今も勢力圏と見なすアルメニアやキルギス、タジクなどに在外基地を置くが、戦争研究所は引き揚げの動きが「旧ソ連圏でロシアの影響力を低下させるとみられる」と分析した。【9月18日 時事】 
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【上海協力機構(SCO)首脳会議 目立った中国との温度差】
その上海協力機構(SCO)首脳会議では、プーチン大統領に対し、インド・モディ首相からは「今は戦争の時ではない」とウクライナ侵略への苦言が。

****プーチン氏「早く停戦できるよう最善尽くす」…侵略に苦言のモディ印首相との会談で言及****
ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相は16日、中央アジアのウズベキスタンで会談した。モディ氏が「今は戦争の時ではない」とウクライナ侵略に苦言を呈したのに対し、プーチン氏は「あなたの立場と懸念は分かっている。できる限り早く停戦できるように最善を尽くす」と述べた。

両者が対面で会談するのはプーチン氏が訪印した昨年12月以来で、ウクライナ侵略開始後は初めて。
インドは、武器調達をロシアに依存し、伝統的な友好関係にある。インドは、これまでも「対話と外交による解決」の重要性をロシアに訴える一方、米欧日による対露制裁には加わってこなかった。

プーチン氏が停戦条件を明示せず停戦に言及するのは異例だ。ただ、侵略が継続している理由について「ウクライナ政府が停戦協議を拒否すると宣言した」と述べ、責任転嫁する主張を崩しておらず、停戦が実現するかどうかは不透明だ。

モディ氏は「食料と肥料、燃料の確保が世界的な問題となっている」と述べた。侵略の長期化で国民生活に悪影響が及んでいることへの懸念が発言の背景にあるとみられる。【9月17日 読売】
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一方、ロシアにとって孤立化を避けるための頼みの綱でもある中国・習近平との会談では、(プーチン大統領も予想していたことでしょうが)積極的な支援策は引き出せず、深入りを避けたい中国との温度差を目立つ形にも。

****中露、ウクライナで温度差 プーチン氏「懸念を理解」****
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、15日にウズベキスタンで行われた首脳会談で中露の良好な関係を高く評価した。

ただ、ロシアが侵攻したウクライナの情勢に関しては、習氏が公の場での言及を避けた。プーチン氏も「中国側の疑問と懸念は理解している」と述べるなど、ウクライナを巡る両国の温度差が透けてみえた。

会談冒頭でプーチン氏は「この半年間で世界は劇的に変化しているが、変わらないものが一つある。それは中露の友情だ」と発言。台湾情勢に関しても「ロシアは米国や従属国による挑発を非難する」と述べ、中国への支持を鮮明にした。習氏も「激変する世界で、中国はロシアとともに大国の模範を示し、主導的役割を果たす」と応じるなど、蜜月ぶりをアピールした。

しかし、ウクライナ情勢に話が及ぶと、プーチン氏は「中国の中立的立場を高く評価する」と述べ、中国がロシアを完全には支持していないことを暗に認めた。習氏はウクライナに言及せず、ウクライナ情勢を念頭に置いたとみられる発言すらしなかった。

ウクライナ侵攻で中国は、対露制裁を発動した米欧などを非難する一方、ロシアへの支持も表明していない。ロシアに巻き込まれる形で国際社会で孤立したり、米欧の制裁対象とされたりすることを避けたいのが本音だ。タス通信によると、米国務省のプライス報道官は15日の記者会見で「現時点で中国がロシアに軍事支援や制裁回避手段を組織的に提供している兆候は見られない」と述べた。

他方で習氏には、米国への対抗軸を形成する上でロシアとの連携を必要としている事情がある。

ウズベクで16日に行われた上海協力機構(SCO)首脳会議で、習氏は米国による対中包囲網の形成を念頭に「陣営対立を作り出すことや、地域の安定を破壊する企てを食い止めるべきだ」と発言した。SCOの参加国拡大にも意欲を見せている。

習氏は同日、ウズベクでイランのライシ大統領とも個別に会談し、「内政不干渉の原則を守り、途上国の共通の利益を擁護したい」と強調した。

「地域の安全や広範な途上国、新興国の共通利益を守る必要がある」。プーチン氏との会談でこう訴えた習氏は、ロシアと連携し、米国と異なる価値観を持つ発展途上国をまとめ上げていく考えとみられる。【9月16日 産経】
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****“同床異夢”の中露首脳会談 表向きは対欧米での共闘だが…習氏が気にする「プーチンリスク」****
(中略)習近平指導部としては対欧米でロシアとの協力が重要と感じている一方、そうすることによって欧米だけでなく、ASEANやアフリカなど第3諸国からどう思われるかということを気にしている。

中国が最も懸念しているのは米国の存在以上に、諸外国の中国からの離反であり、ウクライナ侵攻という国際法違反を犯したロシアを第3諸国がどう見ているかを注視している。

習政権としては、“国際法違反を犯したロシアに隠れ蓑を与える中国”というイメージが先行することは避けたく、何が何でもロシアとの共闘というわけではない。(後略)【9月19日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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プーチン大統領にとっては、戦局も国際関係も、苦しい状況が色濃くなっています。
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韓国と中国の微妙な関係  特に韓国若年層に強い反中国感情 それでも無視できない中国の経済的引力

2022-09-18 23:20:27 | 東アジア
(【CRI online】16日、ソウルで会談した韓国の尹錫悦大統領(左)と中国の栗戦書・全人代常務委員長(右))

【韓国若年層 中国への否定的な認識 最大理由はキムチ起源?】
韓国と日本の間の国民レベルの不信感・反発がよく話題になりますが、その韓国では、特に若年層では日本に対する以上に中国に対する嫌悪感・反発が強いということもしばしば言われるところです。

ただ、最大の原因がキムチの起源をめぐる論争ということで、歴史問題を抱える日韓関係の問題とは根深さと言うか、やや質的に違うようにも思えます。

もっとも、韓国・中国の間にも2千年近い圧力・侵略・攻撃などの歴史があり、韓国人のDNAには嫌中感情あるいは中国への恐怖が刷り込まれているとも言われるように、キムチ論争も“軽いもの”とも一概に言えないのかも。

****韓国の若者は中国が嫌い?好感度が日本や北朝鮮より低い理由=韓国ネット「あの屈辱が忘れられない」****
2022年8月22日、韓国・東亜日報は「韓国の20~30代の多くが中国に否定的な認識を持っている」と伝えた。

記事によると、韓国の世論調査機関「リサーチアンドリサーチ」は11~14日に全国の20~39歳の成人男女420人を対象に調査を行った。その結果、中国に対する好感度は2.73点(10点満点、10点に近づくほど好感度が高い)にとどまり、米国(6.76点)だけでなく、日本(3.98点)や北朝鮮(2.89点)より低かった。中国に0~4点をつけた回答者は全体の78.8%に達したという。

中国に否定的な認識を持つ理由としては「キムチと韓服(韓国の伝統衣装)を中国起源と主張する(48.2%)」が最も多く挙げられた。2位以下には「香港民主化デモ鎮圧や新疆ウイグル自治区などの人権侵害問題(35%)」「先端技術・人材・情報の流出と知的財産権の侵害(29.3%)」「中国共産党の一党統治などの政治体制(26.4%)」「高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に対する経済報復(18.8%)」が続いた。

現在の中韓関係を「悪い」と評価した回答者は58.9%に達し、「良い(5.3%)」を大きく上回った。関係悪化の原因としては「韓国に対する中国政府の高圧的外交と態度(52.9%)」が最も多く挙げられた。

「中韓関係の改善が必要だ」と考える人は75.3%に達したが、改善のために最も必要なものとしては「中国が経済・安全保障分野で韓国への威圧的な態度を変えなければならない」との回答が60.2%で最も多かった。

一方、回答者の78.8%が「中国は経済の面で重要な存在であるため協力するべき」との考えを示した。経済協力の理由としては「人口が多く市場が巨大であるため(42.3%)」「韓国の経済・貿易の対中依存度が高いため(36.7%)」が主に挙げられた。

「安全保障の面で中国は協力対象か」との質問には「そう思わない(49.7%)」と「そう思う(48.7%)」が拮抗した。ただ、「非常にそう思う」と回答した割合が8.3%であったのに対し「全くそう思わない」は27.2%に達した。協力が必要な理由としては「北朝鮮の核問題解決のため(40.8%)」が最も多かった。

専門家は「若い世代は現実的な感覚を持っている」とし、「中国の形態が改善されれば中韓関係は改善の糸口を見つけられるだろう」と話したという。

これに韓国のネットユーザーからは「昔は日本のほうが嫌いだったけど、今は中国よりずっと好感が持てる」「経済が今より多少苦しくなったとしても、中国とは距離を置いた方がいい」「若い人だけではない。40代以上も同意見」「中国が韓国を助けてくれたことなんてある?」など、調査結果に納得の声が上がっている。

また「これもすべて文在寅(ムン・ジェイン)前政権のせい。中国に媚びへつらい過ぎた」「中国を国賓訪問した文前大統領は一人飯をさせられてもへらへら笑っていた。あの屈辱が今でも忘れられない」との意見も見られた。【8月22日 レコードチャイナ】
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【最近の秋夕(チュソク)をめぐる論争 「高句麗」「渤海」の歴史認識】
最近でも“キムチ論争”的な軋轢が。

****「起源は中国にある!」韓国の名節“秋夕”を巡って中韓がオンライン上で激しく対決****
韓国では旧暦8月15日が先祖の霊を祀る秋夕(チュソク)と呼ばれる1年の間で最も重要な祝日だ。会社やお店は休みにすることも多く、墓参のために帰郷する人も多い。

今年は9月10日が秋夕当日で、9月9〜12日が連休だった。朝鮮半島の伝統行事のため、秋夕の祝いは当然、北朝鮮にもある。

そんな伝統行事に茶々を入れる事態が発生し、韓国内で大きな怒りがわき上がっている。

なんと中国ネット民が「秋夕は中国伝統文化の模倣」と主張し、強く批判したのだ。

発端は、アメリカのバークレー大学にある韓国食堂の秋夕記念メニューに「Korean Mid-Autumn Festival」というフレーズが掲載されたことにある。アメリカ在住の中国人が、その写真を中国版Twitterである「ウェイボー」に掲載したのだ。

すると、中国ネット民の間では「韓国の秋夕ではなく、中国の中秋節が正式名称だ」と、連日のバッシングを加えた。中国のオンライン上では、「韓国の伝統行事だと?韓国が中秋節を盗んでいる」「また、中国の伝統文化が盗まれた」など批判一色の様相だ。

これには、韓国内でも「秋夕は新羅(シルラ)時代に誕生して、新羅は中国を重んじていたから、間違いではないが…」「秋夕で着る服も食べる物も違うのに起源を主張されても」「また、中国か」など、一部主張を認める声も上がりながらも、批判の色が濃くなった。

昨今、加熱する一方の中韓オンライン対決は、お互いに揚げ足を取りながら日夜激論が繰り広げられている。もう少し相手を尊重できるようになればいいのだが…。【9月17日 サーチコリア】
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日本を含め、東アジア文化の多くが中国に起源を持ち、それぞれの国でその国の事情に合わせて進化・成熟してきたことは今更言うまでもないことで、その起源をめぐって争うというのは“子供のケンカ”のようにも。

ただ、そういう“子供のケンカ”をしたくなる背景・国民感情が問題なのでしょう。

下記の「高句麗」と「渤海国」をめぐる問題になると、“子供のケンカ”とは言っていられない歴史認識の問題にもなります。

****中韓またもや「歴史問題」で衝突、中国が抗議受け入れ最悪の事態を回避***
中国国家博物館は15日、開催中の特別展「東方吉金—中韓日古代青銅器展」に展示されていた韓国古代史年表を撤去した。年表に「高句麗」と「渤海国」に関連する記述が削除されていたことに対する韓国側の抗議を受け入れた。

同特別展は中韓国交正常化30周年と日中国交正常化50周年を記念して中国国家博物館で7月26日に始まった。韓国国立中央博物館や日本の東京国立博物館から運ばれた青銅器も展示されている。

韓国が資料として提供した歴史年表には、高句麗と渤海国に関連する記述があったが、会場の展示された年表には、高句麗と渤海国に関連する部分が削除されていたとして、韓国国内で反発が発生していた。韓国国立中央博物館は、歴史年表における高句麗と渤海国の削除の問題が是正されなければ、韓国からの出展品を引き揚げると発表した。

高句麗は紀元前に成立したとされる国で、西暦668年に滅亡した。渤海国の建国は698年で滅亡は928年だった。いずれの国の版図も、現在の中国東北地方、ロシアの一部、北朝鮮にまたがっていた。中国の学術界で1990年代後半から、高句麗や渤海国について「古代中国にいた少数民族であるツングース系の夫余人の一部が興した政権」、「高句麗は中国の一部であり中国の地方政権である」などの見解が次々に発表されたことで、韓国側は強く反発した。

両国の感情的対立が高まったことを受け、中国は2002年に武大偉外交部副部長(副大臣、当時)を韓国に派遣して崔英鎮(チェ・ヨンジン)外交次官との会談を行った。武副部長が「中国は中央及び地方政府次元の高句麗史関連記述に対する韓国側の関心に理解を表明し、必要な措置を取っていく」などと説明したことで、対立は一応、下火になった。

韓国外交部(外務省)は中国国家博物館の特別展の年表問題について、中国側からは「なんらかの意図があって、意図的に行ったわけではない」と説明があったと発表した。さらに、中国側と「中韓両国が2004までに達成した歴史問題の共通認識についての合意」を確認したと表明した。

中国外交部(外務省)の毛寧報道官は13日の定例記者会見で同件に関連して、「高句麗問題は学術問題だ」と主張して、「学術問題は学術分野で専門的に議論し、意思疎通することができ、政治的に騒ぎ立てる必要はない」と述べた。

韓国外交部は「今回の事件の動向と歴史論争の問題については、今後も注視していく」考えを明らかにした。【9月18日 レコードチャイナ】
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私個人の印象では「高句麗」は朝鮮、「渤海」(日本とは渤海使・遣渤海使の頻回の往来で、非常に関係が深い国です)は中国のイメージがありましたが、そうした現在の国境線・国家を基準にした区分があまり意味ないことなのでしょう。

【ペロシ米下院議長と会わなかった伊大統領、中国・栗戦書全人代委員長とは会談 伊政権を引き寄せる中国の経済的引力】
国際政治・外交レベルで中国と韓国の間で懸案となっているのは在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備問題です。

****中国序列3位と会談=THAAD議論、配慮示す―韓国大統領****
韓国の尹錫悦大統領は16日、中国共産党序列3位の栗戦書・全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当)とソウルの大統領府で会談した。

中国が反対する在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備問題に関して議論し、意思疎通を通じて関係の悪化を避ける姿勢を示した。大統領府が発表した。

尹氏は「国交正常化30周年を迎え、成長してきた韓中関係を今後30年間、相互尊重と互恵の精神で質的にもさらに発展させていきたい」と表明。THAAD問題に関して「両者が緊密な意思疎通を通じて韓中関係の障害にならないようにしないといけない」と指摘した。栗氏も「意思疎通の必要性に共感した」という。両者は北朝鮮の核問題も議論した。【9月16日 時事】
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在韓米軍のTHAAD韓国配備については2016年に表面化し、中国が激しく反発、「限韓令」と言われる韓国からの輸入規制措置・非関税障壁・韓流排除・韓国企業の営業阻止などの露骨な報復を行っています。

中国側の反発の強さ・露骨さは、日本に対するものとは異なり、中国側の韓国に対する“上から目線”をうかがわせる感じもありました。

この問題はいったんは鎮静化したものの、最近また再燃するかたちでくすぶっています。

今回の会談におけるTHAADをめぐる具体的なやりとりもさることながら、ペロシ米下院議長が訪韓した際には会わなかった尹錫悦大統領が、同じような地位にある中国共産党序列3位の栗戦書・全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当)とは会談したというあたりに、アメリカと中国の間にあって腐心する韓国政権の苦悩もうかがえます。また、中国の“引力”の強さも。

****中国・栗戦書全人代委員長が訪韓―実質的進展は共産党大会終了後か、焦点は依然としてTHAAD****
中国全国人民代表大会常務委員会の栗戦書委員長が15日から17日にかけて韓国を訪問し、(ユン・ソンニョル)大統領や金振杓(キム・ジンピョ)国会議長ととの会談も行った。

しかし中韓関係の実施的な進展は10月16日に始まる中国共産党全国代表大会(中国共産党大会)の終了後との見方が出ている。また、中韓関係の今後を決める大きな要因は、韓国国内での高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備という。

韓国にとって、とりわけ重要なことは中国との経済関係の推進だ。中興大学国際政治研究所の盧信吉助教授は、「チップ4」が焦点の一つとの見方を示した。

「チップ4」とは米国が推進する半導体関連の国際戦略で、中国を可能な限り排除しながら米国と台湾、韓国、日本が永続的な同盟を結ぶ内容だ。

韓国はチップ4に参加することができるが、その場合には中国との関係は後退する。盧助教授によると、韓国は半導体の対中輸出に「風穴」を開ける方向で動いているという。

尹大統領は栗委員長に対して、習近平国家主席の都合のよい時期の韓国訪問を招待した。しかし盧助教授は、習近平主席が早い時期に訪韓しても実質的な成果は得られないとの見方を示した。

中国共産党大会で習近平氏が相当な支持を得て、指導者としての地位をさらに確固たるものにする、すなわち国内を固めた上でないと、中国は外交戦略の調整に乗り出せないという。

韓国にとっては、北朝鮮問題などを考えれば米国との関係は極めて重要だが、経済を考えれば中国との関係は極めて重要だ。

8月上旬にはペロシ米下院議長が中国の猛反発にもかかわらず台湾を訪問したが、続いて韓国を訪れた際に、尹大統領はペロシ議長に直接の対面はしなかった。しかし今回、中国の栗委員長とは対談した。

ペロシ議長は米国政界中で3番目の地位にある人物で、栗委員長は中国政界中で3番目の地位にある人物だ。韓国側の両者に対する対応の違いも注目された。東京国際大学国際戦略研究所の李克賢准教授は尹大統領が、栗委員長に直接会ったのは、政治的・経済的利益を考慮したものだとの考えを示した。

李准教授は「中国は(韓国の)最大の貿易相手国であり、米国は韓国の電気自動車生産の利益を損ねている。経済的には当然、韓国は米国よりも中国に接近するだろう」と指摘。

李准教授はさらに、北朝鮮問題では、中国の影響力が米国よりもずっと大きいとの考えを示した。尹大統領がペロシ議長に会わなかったのは、韓国が台湾問題について米国の立場とは異なることを中国に示す狙いがあったという。

尹大統領は選挙期間中には、親米的な立場を強調した。そのため、ペロシ議長とは会わず栗委員長とは会談したことを、意外視する声も出た。

李准教授は尹大統領の方向性の転換について「就任後は現実的な路線を取り、中国に傾いている」と指摘。現実を重視して、可能な限りバランスを取ろうとしているのが、現在の尹大統領の方針という。

中韓にとっての最大の「摩擦の原因」は、米軍によるTHAADの韓国国内配備だ。

中国政府外交部(中国外務省)は8月に、韓国政府はTHAADの追加配備は行わず、韓国国内におけるTHAADの使用を制限する方針を採用したなどと表明した。しかし韓国側は同表明を否定し、中国側が関連事項に言及すれば中韓関係の足かせになると批判した。

尹大統領はは栗委員長と会談した際に、THAAD問題が中韓関係の足かせにならないようにする必要があると述べたとされる。李准教授はTHAADについて、名目上は北朝鮮内のミサイルを探知するためとされているが、ロシアの一部と中国領土の大部分を探知する能力があることから、中国がTHAADを潜在的脅威とみなすことは理解できるとの考えを示した。

しかし韓国側はこれまでのところ、韓国国内でのTHAAD配備について、北朝鮮の核の脅威に対応するものであり、国家の安全保障にかかわることであるので妥協はできないとの姿勢を示している。【9月17日 レコードチャイナ】
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前政権と比べて親米的とされる尹錫悦大統領にしても抗しきれない経済的引力が中国にはあるようです。

経済的関係の深さ、地理的条件などを考えれば、そうした中国の引力の強さもわからなくはありません。
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英独と中国の最近の摩擦 宙に浮くEU・中国の包括投資協定

2022-09-17 23:19:44 | 欧州情勢
(【9月17日 ABEMA TIMES】12日に北京のイギリス大使館を弔問し記帳する中国・王岐山国家副主席)

【弔問で英議会にメンツを潰された中国 それでも王岐山国家副主席参列で関係改善を図る】
****エリザベス女王弔問客の列が8キロの長さに 一時受付停止****
イギリスのエリザベス女王を弔問するための列がおよそ8キロに達し、政府は一時的に新たに並ばないよう呼びかけました。

エリザベス女王のひつぎはロンドンのウェストミンスターホールに安置されていて、市民は、国葬が営まれる19日早朝までいつでも弔問できます。

16日は、サッカー元イングランド代表のベッカムさんの姿もありました。
サッカー元イングランド代表 ベッカムさん 「皆、女王の人生をたたえるためにここにいます」

列がおよそ8キロに達したため、政府は16日午前、6時間は列に加わらないよう呼びかけました。現在は再開されていますが、待ち時間は22時間にも及ぶということです。(後略)【9月17日 TBS】
********************

私は8キロの列とか、22時間待ちとか聞くと気が遠くなってしまいますが、それだけイギリス国民にとって故女王が大きな存在だったということでしょう。トイレとか食事は・・・まあ、簡易トイレなどが大量に設置されているのでしょうが・・・。

当然ながら、「弔問外交」も活発に行われていますが、物議を醸しているのが人権問題で対立する中国との関係。

****英、議会と政府で中国対応割れる 議事堂の弔問拒否 国葬は招待*****
英BBC放送は16日、エリザベス英女王のひつぎが安置されている場所への弔問について、英議会が中国政府代表団の立ち入りを拒否したと伝えた。

ひつぎは国会議事堂のあるウェストミンスター宮殿のホールに安置され、一般市民が14日から弔問に訪れている。一方、英政府は19日にウェストミンスター寺院で行われる国葬には中国も招待しており、議会と政府で中国への対応が分かれた格好だ。

英国は昨年、新疆ウイグル自治区での人権問題を理由に中国当局者への制裁を発動。これに対し中国側は一部の英議員の中国入国を禁じて対抗した。

今回は英議員への制裁に反発するホイル下院議長が、中国代表団による追悼を拒否したと報じられている。安置場所のホールは議会の管理下にあるという。

一方、英政府は既に習近平国家主席に国葬の招待状を送っており、19日の国葬については拒否しない方針だ。中国からは代理で王岐山国家副主席が参列する見通しと伝えられている。だが議会内にはこの政府判断を問題視する声もあり、一部の議員はクレバリー外相に「国葬招待は不適切」との書簡を送ったという。

BBCによると、中国外務省報道官は16日、「英国はホスト国として、外交儀礼や適切なマナーを分かっているはずだ」とコメントした。

英政府は19日の国葬について、ウクライナに侵攻したロシアとその同盟国ベラルーシのほか、ミャンマー、シリア、アフガニスタンなどは招待していない。イラン、北朝鮮は招待したが、国家元首級ではなく大使級の招待にとどめている。【9月17日 毎日】
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日本なら「弔問を断るのは・・・」とウヤムヤになりそうですが、その点英議会の対応は明確なようです。
ウイグル人権問題だけでなく、香港問題で中国にさんざんコケにされた怒りもあるのでしょう。

興味深いのは、メンツを潰されたような中国側の対応が、いつになく抑制的なこと。
議事堂の弔問が拒否されても、王岐山国家副主席が参列するようです。

王氏は最近は陰が薄くなった感がありますが、かつては習氏の看板政策である“虎もハエも叩く”「反腐敗」を主導した盟友で、習近平政権を支えた実力者です。

“バイデン米政権が中国への圧力を強め主要7カ国(G7)などに結束を呼びかける一方、習指導部は欧州や周辺国との外交を強化して切り崩しを図ってきた。外交樹立50年を迎えた英国との関係も強化したいのが本音だ。”【日系メディア】というように、メンツより実をとった形です。

【独連立政権 中国企業の港湾ターミナル買収問題で内部対立 経済界は中国との関係を求める】
欧州と中国の関係で言えば、ドイツと中国の関係もちょっと“揉めて”います。
ドイツ政連立政権内部で中国との関係について意見の対立があるとか。

****ドイツ連立政権、中国のハンブルク港湾ターミナル買収提案で対立****
ドイツ連立政権は、中国海運大手の中国遠洋運輸(COSCO)にハンブルク港湾ターミナルの権益取得を認めるかどうかを巡り意見が分かれている。複数の政府筋が明らかにした。

COSCOは昨年、ハンブルクのドイツ最大の港にある3つのターミナルのうち1つについて、35%権益取得に向けた買収提案を行った。政府の対応は、最大の貿易相手国である中国に対してどこまで強硬な姿勢を取るかを測るものと見られている。

中国に対して特にタカ派であるハーベック経済相(緑の党)は13日、ロイターとのインタビューで、この取引を許可しない方向に傾いていると語った。

一方、3人の政府筋によると、社会民主党(SPD)が主導する首相府は懸念への解決策を見いだしたい考えに傾いている。ショルツ首相は2011─18年にハンブルク市長を務めていた際、拡大する対中貿易を所管していた。

首相府にコメントを求めたが、返答を得られなかった。

中国外務省は、COSCOによる買収提案を政治化しないよう望むとコメントしている。

ハンブルク港マーケティングディレクターのアクセル・マターン氏は「特にCOSCOは近いうちに世界最大の海運会社になるため、(中国の投資は)危険というよりむしろ港にとって大きな利益となる」と述べ、拒否しないよう警告。ロイターに対し「中国に対する拒絶は港だけでなく、ドイツにとっても大惨事となる」と語った。【9月14日 ロイター】
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“ドイツの政界では「経済の対中依存からの脱却」を求める声が高まっているが、ドイツ商工会議所(DIHK)の貿易専門家であるトレイアー氏は、「投資を拒否する明確な基準がない中で、われわれにとってこれほど重要な貿易パートナーからの投資を禁止することは、投資先としてのドイツの魅力に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。”【9月15日 レコードチャイナ】と、経済界は中国との関係を求めています。

****「脱中国」に舵を切るドイツ政府、経済界から異論「中国市場からの徹底は利益にならない」―独メディア****
独メディアのドイチェ・ヴェレは15日、ドイツのロベルト・ハーベック経済相がより強硬な対中路線を歩む中、経済界から「中国市場と全面的に関係を断つことはドイツの利益に合致しない」との声が上がっていると伝えた。

ドイツ財界アジア太平洋委員会(APA)のフリードリン・シュトラク委員長は15日、ロイターとのインタビューで「ドイツ企業の中国事業に対する政府の支援と保護は維持されなければならない」と語った。記事はこの発言について、「ハーベック氏が打ち出した新たな対中政策についてドイツ経済界が意見を異にしていることを示すものだ」と伝えた。

ハーベック氏は先日、対中強硬路線が実際の政策に転化されつつあると言明。「中国との貿易においてドイツはこれ以上、天真らんまんではいられない」との考えを示した。

記事によると、これに先立ち、ロイターは複数の消息筋の話として「ドイツ経済省は中国市場の魅力を低下させるための包括的な措置を策定している」と報道。

この措置の中には、中国で事業を展開するドイツ企業に対する投資・輸出保証の廃止、中国でのイベントの開催やマネージャーの訓練などを含む小規模プロジェクトの停止などが含まれるという。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は今年8月の記者会見で、ドイツ企業に対してサプライチェーンの面でも貿易の面でも中国に依存しすぎないよう呼び掛け、「ドイツ企業はすでにこうした決定を下していると、私は信じている」と述べた。

一方、シュトラク氏は「成長の鍵となる市場である中国での適切なプレゼンスは個々の企業だけでなく、経済全体の視点からも重要だ」とし、「ドイツ政府が繰り返し強調している経済面での中国との“全面切り離し”はドイツの利益にならない」と訴えた。

また、「目指すべきは中国市場からの撤退ではなく、アジアや世界の他地域の成長可能性のある市場をさらに切り開くこと。むしろ、対外貿易の促進を拡大する必要がある」との考えを示した。【9月17日 レコードチャイナ】
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ドイツ経済はウクライナ問題での「脱ロシア」によってエネルギーコスト増大などの多大な負担を強いられています。

****対ロシア制裁で大赤字の独天然ガス企業、政府に再び「救難信号」****
2022年9月9日、中国中央テレビ(CCTV)は、ロシアに対する制裁の影響で巨額の損失を抱えているドイツの天然ガス輸入企業最大手のウニパーが、ドイツ政府に再度の支援を求めたことを報じた。

同局はニュース番組の中で「ウクライナとロシアの軍事衝突、西側による対ロ制裁の影響により、欧州の天然ガス価格が大幅に値上がりしている」とし、すでに巨額の損失を抱えているドイツ最大のロシア産天然ガス輸入業者であるウニパーが先日、ドイツ政府に対して改めて資金援助を求めたと紹介。

同社のCEOが「天然ガス価格の高止まりによって損失が増え続けており、ドイツ政府から支援を受けた70億ユーロ(約1兆円)も9月末に底をつく可能性がある」と語ったことを伝えた。

そして、同社がドイツエネルギー企業の大手であることから、ドイツ世論では同社の倒産がエネルギー業界全体の崩壊を引き起こし、より広範な経済分野に衝撃が拡大するのではないかとの懸念が広がっているとした。

また、ドイツでロシアからの天然ガス供給が激減したことで、同社は高価な現物市場にて天然ガスを購入して契約を履行せざるをない状況となっており、今年1〜6月期の報告では120億ユーロ(約1兆7400億円)の赤字が出て、ドイツ企業史上最大規模の赤字額となったことを紹介。ドイツ政府は先日すでに大規模な支援策を打ち出し、同社に大量の融資を行っていたと伝えている。

記事はさらに、エネルギー価格の高騰がイタリアの各産業にもダメージを与えているとし、43業種の零細企業88万社以上、約350万人の雇用が危機にさらされ、陶磁器、ガラス、コンクリート、冶金、化学工業などのエネルギー集約型産業への影響が特に大きくなっていると紹介した。【9月12日 レコードチャイナ】
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ロシアとの関係も断たれたうえに、中国との関係も抑制されたら、「いったいどうしたらいいのか!」といったところでしょうか。

「脱化石燃料」の動きやロシア・中国との関係など、政治が経済に優先する傾向への不満が経済界にはあるのかも。

【凍結状態にあるEUと中国が大筋合意した包括投資協定(CAI) 中国は「パートナーであり、経済的競争相手であり、体制上のライバル」】
各国で中国との関係には事情・差異は当然ありますが、総じて言えば、2020年12月30日にEUと中国が大筋合意した包括投資協定(以下、CAI)が凍結状態となっているように、EUは中国との関係について警戒感を強めています。

****変わるEUの対中スタンス****
(中略)
2――宙に浮く包括投資協定(CAI)-何が問題だったのか?
1|経緯
EUにとって、CAIは、加盟国が個別に締結した投資協定に替わり「EUと中国間の投資関係で一貫した法的枠組みを構築」すること、すなわち加盟各国が個別に締結した二国間投資協定が並存する分散状態を改めるものである。

最大の狙いは中国におけるEU企業の競争条件の公平化にあった。EUの会社法・競争法がEU企業と非EU企業を区別せず、官民も無差別であるのに対して、中国では外資と国内民間企業と国有企業を差別し、国有企業を優遇していることが問題となってきた。中国市場へのアクセスに関わる様々な障壁、制度・政策面での予測可能性の低さや不安定さも問題となってきた。

(中略)こうした背景から、20年下半期、EU加盟国が半年毎の輪番制で務めるEU理事会の議長国であったドイツのメルケル首相(当時)が「相当強引にまとめ上げた」と評価されているが、「駆け込み合意」、「人権よりカネ」という印象を与え2、域内外で波紋が広がった。(中略)

協定は、双方が必要な手続きの完了を通知した日から2カ月後に発効するが、大筋合意から1年半となる今も発効の目途は立っていない。EU側の手続きが凍結されているためだ。

EUの場合、欧州議会による同意、EU理事会(閣僚理事会)の承認手続きが必要だが、欧州議会は21年5月20日にCAIの批准手続きを賛成599対反対30という圧倒的多数で凍結することを決めた。

21年3月22日に少数民族ウイグル族への人権侵害を巡りEU外相理事会が中国に制裁を決めたことを受け、中国政府がただちに報復制裁に動いたことを受けた決定だ。

欧州議会は、中国の制裁が解除されない限り、審議には応じない方針だが、中国はEUが「人権の先生」として振る舞うことへの反発を強めている。

ロシアによるウクライナ侵攻は、次節で見る通り、中国とEUの価値観を巡る溝を際立たせる要因となっており、協定の発効は極めて困難な状態に陥った。(中略)

3――変わるEUの対中スタンス-合意から一方的手段、代替案へ
1|戦略的自立への指向を強めるEU
19年12月に就任したフォンデアライエン欧州委員会委員長は、自らの率いる欧州委員会を「地政学的欧州委員会」と位置づけている。

EUにとって、地政学的な最大の脅威はロシアだが、地経学的な警戒の対象は中国にある。(中略)

EUは「体制上のライバル」としての中国への意識を強めざるを得ない状況となっている。コロナ禍によって、医療防護具等の中国依存のリスクが露呈したこと、コロナ禍の起源や政策対応の巧拙を巡って、中国が自己主張を強め、体制上の優位性を強調するようになったこと、さらにウクライナ侵攻で、西側が主導して形成してきた既存の国際秩序に対する不満というロシアと中国の共通項が浮き彫りになったからだ。(中略)

4|ドイツの新政権と2022年上半期EU理事会議長国フランスの動き
EUを牽引してきたドイツとフランスは、共にCAIの凍結解除には否定的で、戦略目標実現のための規制強化、通商政策の活用を支持する。

ドイツで21年12月に発足したショルツ政権は、16年にわたる在任期間中に12回訪中するなど、中国への傾斜を強めたメルケル政権に比べて中国に強硬な姿勢を採ると見られている。

連立を構成する3党の協定には、メルケル首相が取りまとめに尽力したCAIのEU理事会による承認は不可能としている。

連立協定には、南シナ海、東シナ海、台湾海峡に関する記述のほか、「台湾の国際機関への実質的参加支持」、「新疆ウイグル自治区の問題を含む中国の人権弾圧に対してより明確に発言」、「香港の一国二制度の復活を目指す」など、中国政府の反発を招きかねない文言も盛り込まれた。

外相に、人権問題により厳しい立場をとる緑の党のベーアボック氏が就任したことも、ショルツ政権が中国に対して強硬な姿勢を採るとの思惑につながっているようだ。

ショルツ政権も、EUと同じく中国を「パートナーであり、経済的競争相手であり、体制上のライバル」と位置付けている。(中略)エネルギーの脱ロシアも急務であり、対中政策はやや後景に退いている感がある。(中略)

中国とのCAIについてはフランスでも早期発効への政治的機運は失われている。マクロン大統領は、CAIの大筋合意に至ったテレビ会談に、ミッシェルEU首脳会議議長、フォンデアライエン欧州委員会委員長、当時の議長国であるドイツのメルケル首相(当時)とともに参加している。

メルケル首相の招待によるものとされるが、マクロン大統領も、この時点では、合意を積極的に支持していたと思われる。しかし、合意からおよそ1年後の演説では、CAIへの言及はない。

リステール貿易・誘致担当相はメデイアのインタビューで「中国の対応が変わらない限り、批准はできない」との見方を示していた。(後略)【7月12日 伊藤 さゆり氏 ニッセイ基礎研究所】
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EUは台湾問題でも中国批判を強めています。

****欧州議会、台湾海峡の中国実弾演習を非難 決議採択****
欧州議会は15日、中国による台湾海峡での実弾演習を非難する決議を賛成多数で採択した。 決議は欧州連合(EU)と台湾の関係緊密化を呼びかけるとともに、中国に対し台湾海峡や地域の安全保障を脅かす行動の自制を求めている。 

中国は先月、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことに反発し、台湾海峡で実弾射撃などの軍事演習を実施した。 

台湾外交部(外務省)は決議採択を歓迎。台湾海峡の平和と安定に対するハイレベルで党派を超えた関心を示すものだとして、台湾への支持に謝意を表明した。 

決議は台湾の通商上の戦略的地位や、半導体など主要ハイテク分野のサプライチェーン(供給網)における主導的な役割に言及し、EUに台湾との関係強化を要請。 台湾に通商代表部を開設するリトアニアの計画を歓迎し、他の国に追随するよう促した。【9月16日 ロイター】
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