
(【日経】)
【親EU路線の首相・与党と反EU路線の右派民族主義の大統領のねじれ 実権は首相にあるものの、大統領は拒否権発動 ウクライナ難民を対象とした児童手当を延長する法案を大統領拒否、「働いている親のみが受給すべきだ」】
ポーランドでは8年間に及ぶ民族主義政党「法と正義」(PIS)政権が(ハンガリー・オルバン政権と並んで)EUと対立してきましたが、2023年12月、EU大統領も務めたトゥスク元首相を首相とする親EU路線の新政権が誕生し、EUとの関係改善が期待されていました。
しかし、今年6月に行われた大統領選挙決選投票で反EU路線のナブロツキ氏が接戦を制して勝利したことで、大統領と議会の捻じれが続くことに。
*****ポーランド大統領選 反EU路線のナブロツキ氏が接戦制す*****
ポーランドで大統領選の決選投票が行われ、反EUを掲げる右派のナブロツキ氏が接戦を制しました。
(6月)1日に行われたポーランド大統領選の決選投票では、右派政党「法と正義」が推すナブロツキ氏が50.89%の得票率で中道与党のチャスコフスキ氏を破り、当選確実となりました。
現地メディアによりますと、都市部ではチャスコフスキ氏が支持を得たものの、経済規模の小さな地方などでナブロツキ氏に票が集まったということです。
ナブロツキ氏は現在42歳の歴史家で、政治経験はありませんが、先月の第一回投票では2位につけていました。
選挙戦では反EUの姿勢を強調。先月前半にはアメリカのトランプ大統領とも面会するなどしていて、決選投票に進めなかった極右候補らの票も集めて、巻き返しに成功した形です。
ポーランドでは、トゥスク首相ら親EU路線の与党と、右派で反EUの野党の争いが続いています。
政治の実権は首相が握っているものの、大統領には拒否権が与えられていて、今回のナブロツキ氏の勝利で、トゥスク首相は難しい政権運営を迫られることになります。【6月2日 TBS NEWS DIG】
(6月)1日に行われたポーランド大統領選の決選投票では、右派政党「法と正義」が推すナブロツキ氏が50.89%の得票率で中道与党のチャスコフスキ氏を破り、当選確実となりました。
現地メディアによりますと、都市部ではチャスコフスキ氏が支持を得たものの、経済規模の小さな地方などでナブロツキ氏に票が集まったということです。
ナブロツキ氏は現在42歳の歴史家で、政治経験はありませんが、先月の第一回投票では2位につけていました。
選挙戦では反EUの姿勢を強調。先月前半にはアメリカのトランプ大統領とも面会するなどしていて、決選投票に進めなかった極右候補らの票も集めて、巻き返しに成功した形です。
ポーランドでは、トゥスク首相ら親EU路線の与党と、右派で反EUの野党の争いが続いています。
政治の実権は首相が握っているものの、大統領には拒否権が与えられていて、今回のナブロツキ氏の勝利で、トゥスク首相は難しい政権運営を迫られることになります。【6月2日 TBS NEWS DIG】
************************
ナブロツキ氏は8月6日 に正式に大統領に就任しましたが、早速「拒否権」が表面化しています。
****ウクライナ難民支援法案に拒否権 「働く人のみに手当を」 ポーランド大統領****
ポーランドのナブロツキ大統領は25日、国内のウクライナ難民を対象とした児童手当を延長する法案について、「働いている親のみが受給すべきだ」として拒否権を行使した。 就職していないウクライナ人には無償で医療を受けさせるべきではないとも訴えた。
9月末に失効する児童手当制度を来年3月まで延長する法案は、ナブロツキ氏と対立する親欧州連合(EU)派のトゥスク政権が提出し、議会で可決されていた。
だが、ナブロツキ氏は「母国にいるポーランド国民がウクライナ人よりも悪い扱いを受けている」と主張し、ウクライナ難民向けの社会福祉を削減する法案を提出した。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、隣国ポーランドには約100万人の難民が身を寄せており、その大部分が女性と子供。トゥスク政権を支える与党は議会で拒否権を覆すのに必要な3分の2の議席を有していない。【8月26日 時事】
**********************
ポーランドにおけるウクライナの避難民向け支援措置はウクライナに米スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」を提供する根拠にもなっているとかで、大統領の拒否権発動でウクライナが「スターリンク」を利用できなくなる恐れが出てきたそうです。
****ウクライナのスターリンク利用に暗雲、ポーランド大統領の法案拒否権発動で****
ポーランドのガフコフスキ副首相兼デジタル化相は25日、同国で暮らすウクライナの避難民向け支援措置延長法案についてナブロツキ大統領が拒否権を発動したため、ウクライナが米スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」を利用できなくなる恐れが出てきたと明らかにした。
ナブロツキ氏は25日、同法案に拒否権を行使するとともに、今後ウクライナ難民による児童手当や医療給付金の利用を制限する計画を表明した。
ガフコフスキ氏によると、この法案はウクライナにスターリンクを提供する根拠にもなっている。ポーランドはウクライナのスターリンク利用料金支払いを負担しており、法案が成立しなければ、ウクライナは利用継続が不可能になりかねない。
デジタル化省の報道官は、ナブロツキ氏の拒否権発動によって10月1日以降、スターリンク利用料金支払いは法的根拠を失うと述べた。
一方大統領報道官はロイターに、大統領が提案した別の法案を9月末までに議会が採択すれば、スターリンク利用料金支払いの根拠は復活する可能性があると語った。【8月26日 ロイター】
*****************
今後も大統領による拒否権発動で、司法改革や社会政策(移民、同性パートナーシップ、妊娠中絶など)について停滞が懸念されています。
【難民支援の長期化に伴い、住宅・教育・医療・労働市場への負担が話題になり、特に 低所得層や地方住民から「自分たちの生活が苦しいのに、なぜ難民優遇なのか」という「不公平感」】
ポーランドには戦前からの労働移民も含めて約150万人のウクライナ人 がいます。その内訳は・・・
難民保護を正式に申請して認められている人はごく少数(約1万人規模)。
大多数(約100万人)は EUの一時的保護(Temporary Protection, 仮保護)制度を利用して滞在しています。これが「およそ100万人規模」と報告されている層です。
大多数(約100万人)は EUの一時的保護(Temporary Protection, 仮保護)制度を利用して滞在しています。これが「およそ100万人規模」と報告されている層です。
残り(数十万人)は戦前から住んでいたウクライナ系移民や労働者(学生・技能労働者など)で、通常の就労ビザや居住許可で生活しています。
ポーランドにおける ウクライナ難民への世論 は、2022年の戦争直後の圧倒的歓迎ムードから、2025年現在はかなり揺らいでいます。整理すると以下の通りです。
*****ポーランドにおけるウクライナ難民への世論*****
1. 初期の反応(2022年)
ロシア侵攻直後は「兄弟国を助ける」という強い連帯感があり、EUの中で最も寛容に難民を受け入れた国でした。
一般市民が駅で無料で食事・住居を提供するなど、草の根の支援が目立ちました。 その背景には、歴史的・文化的な近さ(スラブ系・カトリック多数派)がありました。
2. 2023–2024年の変化
長期化に伴い、住宅・教育・医療・労働市場への負担が話題に。
特に 低所得層や地方住民から「自分たちの生活が苦しいのに、なぜ難民優遇なのか」という声が増えました。
世論調査では、
「ウクライナ難民を支援すべき」意見は 約6割 → 4割程度 に低下。
「支援を制限すべき」意見が拡大(特にPiSや極右政党支持層で顕著)。
3. 2025年のナブロツキ大統領の拒否権と世論
大統領が支援拡充法案に拒否権を行使した際、右派・保守層は「当然。ポーランド人が先だ(Poles first)」と歓迎。 リベラル・都市部は「人道的責任を放棄している」と批判。
世論全体としては「完全に支援をやめろ」までは多数派ではないが、「無条件の長期支援は反対」「働ける人は働くべき」という意見が主流になりつつあります。
2025年8月時点の報道では、難民支援を制限すべきと考える層がやや多数派に傾いていると伝えられています。
4. 難民自身への感情
個人レベルでは「職場で一緒に働くウクライナ人には好意的」だが、「社会保障や補助金で優遇されている」という認識があり、嫉妬や不公平感が募っています。
一部の極右系メディアは「犯罪増加」「文化的脅威」といった言説を拡散しており、これが不信感を助長しています。
【ChatGPT】
**************************
戦争初期(2022年)には、ウクライナ難民支援に賛成するポーランド人は94%に達しましたが、2024年末には57%に低下しました。 Time誌による別の調査では、2023年早期には81%の支持があったものの、これも低下傾向で、2025年春には50%にまで下がったと報じられています。
ただ、ウクライナ難民が経済的にウクライナ社会の「負担」になっているのか?・・・ということに関しては、むしろ難民が支払う税金等の方が大きいという指摘も。
****経済への影響と難民の社会統合****
ウクライナ難民の経済的貢献は大きく、2024年には国内総生産(GDP)の 2.7 % を増加させました。
税収面でも大きな成果があり、 15 億ズウォティ以上(約数十億円規模) の貢献があったとされます。
BGK(国家開発銀行)によると、ウクライナ人は国庫に より多く納めており、受け取る支援よりも高い税収を生む傾向があると分析されています。【ChatGPT】
********************
****ウクライナ難民はポーランド経済に大きく貢献、悪影響は誤解=国連****
ウクライナ人はポーランド経済に大きく貢献しており、ポーランド人労働者の失業率上昇や賃金低下を引き起こしていないことが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とデロイトが10日に発表した報告で分かった。
ロシアの侵攻から3年以上が経過し、ポーランドではウクライナ避難民への否定的な見方が増ましており、リベラル派とナショナリスト派双方の政治家が、ウクライナ人への福祉給付制限や公共サービスにおけるポーランド人優先を打ち出して民意の取り込みを図っている。
UNHCRは記者会見で、「今回の報告は幾つかの誤解を覆すものだ。難民がポーランド経済に悪影響を及ぼしているとの指摘は真実ではない」と述べた。
ポーランドは100万人以上のウクライナ難民を受け入れており、5月の大統領選では反ウクライナ感情が一因となって極右政党の支持率が急上昇した。ただ、政府内はウクライナの戦争遂行を支援し続けるべきとの考えで一致している。【6月11日 ロイター】
*******************
しかしながら、難民支援の長期化に伴い、住宅・教育・医療・労働市場への負担が話題になり、特に 低所得層や地方住民から「自分たちの生活が苦しいのに、なぜ難民優遇なのか」という「不公平感」が出ているところが問題の中心です。
3年以上が経過し経済・社会的負担が顕在化した結果、徐々に難民支持が揺らいでいます。
警戒感・疲労感が強まり、「無条件支援」よりも「条件付き支援」や「戦後の帰国支持」といった意見が台頭中です。
ナブロツキ大統領による支援法案への拒否権行使や政策見直しの背景には、そうした世論の変化があります。