孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エチオピア  ティグレ人勢力と連邦政府の衝突 民間人虐殺の真相は不明 戦闘は州都総攻撃へ

2020-11-27 23:02:21 | アフリカ

(エチオピア北部ティグレ州で続く武力紛争から避難し、スーダン国境付近で配給を待つ人々=2020年11月22日、AP【11月27日 毎日】)

 

【困惑するノーベル賞委】

ノーベル平和賞受賞者のアビー首相のエチオピアで、従前政治・経済の実権を握っていた少数民族ティグレ人(人口比6%)勢力と中央政府の間で紛争が勃発していることは、11月16日ブログ“エチオピア  “ノーベル平和賞受賞者”のアビー首相のもと、民族間の遺恨は解消せず戦闘へ”でも取り上げたところです。

 

数百人規模の民間人虐殺も取りざたされ、数万人の難民も発生している激しい戦闘に、平和賞を授与したノルウェー・ノーベル委員会にも困惑が。

 

****ノーベル委が異例の声明「エチオピアの動向、深く懸念」****

アフリカ東部エチオピアで続く軍事衝突をめぐり、同国のアビー首相に昨年、ノーベル平和賞を贈ったノルウェー・ノーベル委員会が17日、当事者に対して暴力を止めるよう求める異例の声明を出した。AP通信などが伝えた。

 

エチオピアでは今月初め、北部ティグレ州の政党ティグレ人民解放戦線(TPLF)が軍事施設を襲撃したとして、アビー首相が連邦政府軍に反撃を命令。軍事衝突に発展した。地元メディアなどは、この2週間ほどの間に数百人が犠牲になり、数千人が隣国スーダンに逃れたなどと報じている。民間人が虐殺されたという情報もある。

 

ノーベル平和賞を選考する同委員会は声明で「エチオピアの動向を注意深く追跡し、深く懸念している」としたうえで、すべての当事者に対して「激化する暴力を終わらせ、意見の不一致や紛争を平和的な手段で解決」するよう呼びかけた。

 

委員会は昨年、隣国エリトリアとの国境紛争を解決したとして、アビー氏にノーベル平和賞を贈った。国内では民族間の対立などの火種を抱えており、首相就任1年半ほどでの授与は「早すぎる」との見方もあったが、ライスアンデシェン委員長は「アビー氏の努力はいまこそ表彰に値し、激励が必要だ」と語っていた。委員会が過去の授賞に絡んで見解を表明するのは異例。【11月18日 朝日】

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【既得権益を失ったティグレ人の不満が背景か  WHO事務局長もティグレ人支配の名残】

一見無関係に思えるWHO(世界保健機関)にも飛び火。

冒頭に“従前政治・経済の実権を握っていた少数民族ティグレ人”と書きましたが、それを表すひとつの事例が、新型コロナで一躍“時の人”にもなっているテドロスWHO事務局長(エチオピア出身)。

 

****30年間に築いた利権の山****

少し歴史を整理しておこう。

エチオピアでは1974年の軍事クーデターで帝政が廃止されると、メンギスツ・ハイレ・マリアムによる独裁体制

が続いた。

 

TPLF(ティグレ人民解放戦線)らは91年にこれを倒し、リーダーのメレス・ゼナウィが暫定大統領を経て首相に就任。2012年に死去するまで強権的な政治を続けた。

 

現在のWHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長もTPLFの元幹部で、メレスの下で長年、保健相を務めた。

 

アビーが権力を握るまで、エチオピアの情報機関と軍の幹部は、TPLFかその軍事部門のメンバーによって占め

られていた。そもそもTPLFは、91年に権力を握ったときに政府軍を完全に解体して、自らの軍事部門を政府軍として改組していた。だから政府軍幹部も、TPLF出身者が占めることになったわけだ。

 

政権与党としてTPLFは、自らの幹部に国家経済と天然資源(主に土地)を思いのままに利用することを許した。

こうしてTPLFは、政治と軍事に加えて経済も支配するようになった。

 

外国からの援助金や融資も例外ではない。(後略)【12月1日号Newsweek日本語版】

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こうした背景から、エチオピア軍は、テドロスWHO事務局長がティグレ人民解放戦線(TPLF)を支援していると強く批判しています。

 

****エチオピア軍、WHO事務局長を非難 「敵対勢力を支援」****

エチオピア軍参謀長は19日、同国の少数民族で軍と衝突しているティグレ人として世界で最も知名度が高い、世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長が、ティグレが統治するティグレ州を利するために圧力をかけ、ティグレの武器入手を支援していると非難した。

 

ベルハヌ・ジュラ参謀長は記者会見で、ティグレ州の政党「ティグレ人民解放戦線」をテドロス氏が「ありとあらゆる手を尽くして」を支援していると述べた。アビー・アハメド首相は、同州における軍事行動の標的はTPLFだと公言している。

 

昨年ノーベル平和賞を受賞したアビー氏は、自身が2018年に首相に就任するまで約30年にわたって権力を掌握したTPLFが、自身の政権の不安定化を画策していると主張している。

 

アビー氏が同国に法と秩序を取り戻すために必要不可欠としている軍事行動は3週目に突入。これまでに数百人が死亡、数万人が隣国のスーダン国境に押し寄せている。 【11月19日 AFP】

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テドロスWHO事務局長は、ティグレ人が統治するティグレ州を利するために圧力をかけ、ティグレの武器調達を支援しているというエチオピア軍からの批判を否定しています。

 

アビー首相就任以前のエチオピアは、上記【Newsweek】のように、少数派ティグレ人が国の政治・経済のすべての実権を独占していましたが、多数派オモロ人(人口比34%)やアムハラ人などの不満が高まり、抗議行動が激化。

 

そうした状況下で、政治クーデター的な動きの中からオモロ人のアビー氏が首相に就任。

アビー首相は改革を推進して、ティグレ人はこれまでの既得権益を失うことになりました。

 

国際的にはノーベル平和賞授与理由となるほど評価されたアビー首相の改革ですが、既得権益を奪われたティグレ人のアビー政権への不満が、今回のティグレ人勢力と政府・軍の衝突となったと推測されます。

 

【市民600人殺害か どちら側の犯行かは不明】

戦闘はティグレ人勢力が支配する北部ティグレ州に政府軍が進攻、州都を包囲する形で進んでいますが、600人にも及ぶ民間人がこの過程で虐殺されたという報道も。

 

****エチオピア北部で市民600人殺害か、人権委員会が報告****

エチオピア政府が指定する人権委員会は24日、北部ティグレ州マイカドラで今月9日に少なくとも600人の市民が出身民族を理由に殺害されたと報告した。

 

エチオピア人権委員会(EHRC)は暫定報告書で、地元当局者や警察の支援を受けたティグレ人の若者の非公式のグループが、家を一軒一軒回り、アムハラやウォルカイトの民族だと断定した人々を殺害したと述べた。

 

独立した国家機関を自称するEHRCは、このグループと地元のティグレ人の民兵組織、警察の治安部隊が、政府軍の進攻を受け撤退するまで「戦争犯罪」と「人道に対する犯罪」を犯したと非難した。

 

EHRCのトップは「想像を絶する残虐な犯罪が、民族性という理由だけで市民に対して実行されたことに胸が張り裂ける思いだ」と発言。被害者への救済やリハビリの提供のほか、実行者の責任を法の下で問うことが必要だと述べた。

 

EHRCによると、襲撃者は家を破壊し略奪にも及んだ。ナイフやなた、おの、ロープを使って人々を切りつけ絞殺した。目撃者からは、ティグレ人の中には自宅や教会、畑に人々をかくまって命を助けた市民もいるとの証言もあるという。

 

虐殺の目撃者はCNNとアムネスティ・インターナショナルに対し、襲撃の背後にはティグレ人の当局者がいて、アムハラ人を狙っていたと語った。ティグレ州の与党、ティグレ人民解放戦線(TPLF)はCNNのコメントの要請に回答していない。

 

一方、アビー首相が連邦政府に従わないティグレ州の支配勢力に対する空爆と地上からの攻撃を命令して以降、政府軍が残虐行為を行っているとの報告もある。ティグレ人勢力は政府軍が教会や住居を目標にし、無実の市民を殺したと非難している。

 

CNNはいずれの当事者の主張も正当性を確認できていない。現地は通信手段が途絶しており、暫定報告書の当事者に連絡するのが困難な状況となっている。

 

今回の衝突で、アフリカで2番目に人口の多いこの国及び不安定なアフリカの角の地域で何年も積み重ねてきた和平の進展が振り出しに戻る恐れがある。

 

アビー首相は22日、TPLFに対し72時間以内の投降を呼びかける最後通牒を行ったが、TPLFは戦いを続ける姿勢を示している。

 

政府軍は同州州都のメケレに近づいていると発表。メケレを戦車で包囲する計画を含む最終段階の軍事作戦が目前だと述べた。

 

バチェレ国連人権高等弁務官はメケレを戦車や砲撃部隊が取り囲んだとの報告に、さらなる国際人権法の違反行為が行われると懸念と警告を発した。

 

国連人権高等弁務官事務所によると、今月7日以降の死者数は数百人に上り、隣国スーダンへの避難民は4万人を超える。国連事務総長の報道官は23日の記者会見で、「(難民への)対応の規模を拡大しているが、流入のペースに現地の対応能力が追い付かず、さらなる資金援助が即刻必要だ」と語った。

 

また紛争は隣国エリトリアにも飛び火し、TPLFの放ったロケット弾が同国に着弾した。さらにソマリアでは、過激派組織アルカイダの民兵と対峙(たいじ)する平和維持部隊にいるティグレ人数百人についてエチオピアが武装解除する動きも出ている。

 

アフリカ連合(AU)の議長を務める南アフリカのラマポーザ大統領は20日にエチオピアのサフェレウォルク大統領と会談し、AUと協力し平和的解決を探る特使の受け入れの用意があるとのエチオピア政府の姿勢を歓迎した。

 

英国のラーブ外相は24日、ティグレ州での紛争拡大を「非常に懸念する」と述べ、影響が地域に波及するリスクがあるとの認識を示した。欧州連合(EU)や米国も事態の鎮静化を呼び掛けている。【11月25日 CNN】

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上記記事にもあるように、どちらが虐殺を行ったのか・・・民間人虐殺の真相は明らかではありません。

 

****エチオピア虐殺、連邦政府側も? 食い違う証言 報復連鎖で紛争悪化の恐れ****

エチオピア北部ティグレ州西部の町マイカドラの教会には、敷地いっぱいに、たくさんの新しい墓が掘られていた。土の上には、疲れ果てた手が放り出したシャベルの横にレモンの香りの消臭剤の空き缶が幾つも転がっていたが、死臭をごまかすことはできていない。

 

町中ではあちこちで何十人もの遺体が道端に放置され、埋葬されるのを待ちながら日の光を浴びて腐敗し始めていた。

 

人口4万人のこの町で、恐ろしい事件が起きたことを否定する人はいない。何百人もの民間人が銃で撃たれ、刃物やなたで切りつけられ、刺されて虐殺されたのだ。

 

だが、犠牲者らの存在は今、3週間に及ぶ紛争の当事者たちの間で、非難合戦の駒と化している。

 

■食い違う証言

11月9日に起きた民間人の虐殺は、まず国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによって明るみに出た。アムネスティは検証した写真と動画を公開し、エチオピア連邦政府軍と戦っているティグレ州政府与党「ティグレ人民解放戦線」側の勢力が、退却する際にマイカドラに住むアムハラ人を殺害したとの目撃証言を報告した。

 

ノーベル平和賞受賞者のアビー・アハメド首相率いるエチオピア連邦政府は、この証言に飛びついた。それは、TPLFに対する武力攻撃の必要性を補強する残虐行為の証しだった。

 

連邦政府機関のエチオピア人権委員会は24日、ティグレ人の若者グループと地元警察や民兵組織が、民族に基づいて「前もって識別した」被害者少なくとも600人を虐殺したとする報告書を発表した。

 

だが、マイカドラから隣国スーダンに逃げたティグレ人難民らは、虐殺を行ったのは連邦政府側の勢力だったと証言している。

 

■「民族浄化」

AFPは先週、連邦政府軍が制圧したティグレ州内の地域に立ち入る許可を特別に得て、マイカドラを訪れた。アムハラ人の住民たちは口々に、町の近くまで戦闘が迫ったとき突然、ティグレ人の近隣住民らが襲い掛かってきたと語った。

 

「民兵と警官が発砲してきた。民間人はなたで襲ってきた」と、農場で働いていたアムハラ人男性は病院のベッドの上で話した。横たわった男性の頭部を覆うガーゼから、ギザギザの傷跡がはみ出していた。「町の住民全員が関係者だ」

 

新しく就任したマイカドラの行政官はアムハラ人の連邦政府支持者で、「アムハラ人に対して残忍な民族浄化が行われた」とAFPに語った。

 

しかし、マイカドラから少し西に進み、スーダンとの国境を越えたところに急拡大しているウム・ラクバ難民キャンプでは、まるで異なる証言が聞こえてくる。

 

「エチオピア軍兵士とアムハラ人民兵が、町に入ってきて空や住民に向かって発砲した」と、多数の同胞と逃げてきたティグレ人の農家の男性はAFPに話した。「私たちは、安全な場所を求めて町から逃げ出した。(軍服ではない)私服の男たちが、刃物やおので人々を襲っているのを見た」「通りという通りに、遺体が転がっていた」

 

他の難民たちも同様に、襲撃してきたのは連邦政府側の勢力で、TPLFではなかったと証言している。

 

アムネスティの調査員フィセハ・ティクレ氏は、マイカドラとウム・ラクバで語られた証言はいずれも真実の可能性があると指摘した。民族間の報復の連鎖によって、紛争の悪化に歯止めが効かなくなる恐れが浮き彫りになっている。 【11月27日 AFP】

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虐殺の主体がどちらなのかよくわからない・・・というのは、戦闘の混乱状態では珍しいことではありません。

両方ともに行っているというケーズも。

 

今後、その責任が追及されるとは思いますが、エチオピア政府はティグレ人勢力による犯行という立場を堅持するでしょう。

 

【州都総攻撃か】

戦闘の方は、最終局面に。

 

****エチオピア紛争 政府軍がティグレ州都を総攻撃へ 人道危機深刻に****

エチオピア北部ティグレ州で続く中央政府軍と同州政府のティグレ人民解放戦線(TPLF)との武力紛争で、アビー首相は26日、州都メケレに総攻撃をかけると明らかにした。TPLFは徹底抗戦の構えで、多数の市民が巻き添えになる恐れが出ている。

 

メケレは人口約50万人で、ロイター通信によると政府軍は既に町から50キロの距離まで迫っていると主張。アビー首相は攻撃に際し「罪のない市民が被害を受けないよう、最大限の注意を払う」と説明し、市民には自宅待機を求めた。

 

同通信によるとTPLF幹部は「我々の権利を守るため、死ぬ準備はできている」などと述べた。

 

一方、アフリカ連合(AU)は25日、紛争調停のためモザンビークのシサノ元大統領ら3人を首都アディスアベバに派遣した。国連や欧米諸国からも停戦を求める声が上がっているが、アビー首相は内政問題だとして海外からの働きかけには応じていない。

 

紛争に伴う人道危機も深刻になっており、ティグレ州から隣国スーダンに逃げた難民は4万人に達した。【11月27日 毎日】

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州都メケレをめぐる最終決戦は避けらない様相ですが、少なくとも民間人にこれ以上の犠牲者が出ないことを願っています。

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アメリカ  コロナ・パンデミックへのアメリカ的対応 「私はリスクをとります」 起業ラッシュ

2020-11-26 23:33:57 | アメリカ

(【11月26日 TBS NEWS】 アメリカ 感謝祭で移動する女性)

 

【感謝祭で感染爆発の危険 バイデン氏も自粛呼びかけ】

日本では「我慢の三連休」に続き「この3週間が極めて重要な時期だ」と、眉間に皺寄せた注意喚起が続いていますが、1日の新規感染者が15万人前後という驚異的ハイペースの感染拡大が続くアメリカでは、今日11月26日の感謝祭に伴う人の移動・会食が更なる感染拡大をもたらすのでは・・・と懸念されています。

 

****感謝祭の移動控えて、当局の呼び掛け無視し多くの市民が帰省計画****

混雑した空港に、検査施設前の長い列──。米国では、今月26日の感謝祭を機に新型コロナウイルスの感染が拡大する恐れがあるとして当局が自制を呼び掛けているにもかかわらず、多くの人が親類一同でこの日を祝う計画を立てている。

 

感謝祭は、多くの米国人にとってはクリスマスより大事な休暇だが、保健当局は、全面的な移動制限は行っていないものの、このたび初めて移動を控えるよう呼び掛けている。

 

1日当たりの新規感染者が15万人以上となり、これまでの死者は世界最多の25万6000人を超えている米国では、大半の州で知事が自宅のダイニングルームを新型ウイルスの温床にしてはならないと注意を促している。

 

米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は自ら模範を示そうと、今年の感謝祭は妻と2人だけで祝い、成人した3人の娘たちとは「ズーム」を通じて乾杯することにしたと明らかにした。

 

だが空港の保安検査を管轄する運輸保安局によると、先週末は、全米の空港を利用した乗降客数が300万人を超え、新型ウイルスが流行し始めて以来「最も混雑した週末」となった。前年の700万人に比べると半分以下とはいえ、保健当局は、感染者が12月に壊滅的なレベルにまで急増する恐れがあると懸念している。

 

ニューヨークをはじめ、多くの都市ではこのところ、安心して親類を訪ねるために自分が陰性であることを確認しようとする人々で検査施設の外に長い行列ができている。だが保健当局は、誰かと集まる数日前に検査をしても、感染リスクが取り除かれるわけではないとくぎを刺している。

 

■「予定変更はまだ間に合う」

ニューヨーク州ロングアイランド出身のメアリー・ペレスさんは、感謝祭には毎年、親類が35人は集まるが、今年は州知事が発表した「10人まで」という制限を少しオーバーし、大人5人と子ども6人の計11人で祝う予定だとAFPに話した。

 

「違反してるとは思わない。子どもたちは数に入れられない。子どもを残して親だけ来るわけにはいかないでしょ」

 

今年3月に新型ウイルスが流行し始めて以来、休暇は感染拡大のきっかけとなっている。7月4日の独立記念日、9月のレーバー・デー、10月のハロウィーンが終わった後、いずれもそうだった。

 

冬になって初めての休暇となる感謝祭の場合、感染拡大のリスクははるかに大きい。大勢の学生が帰省し、多くの場合、実家で1月まで過ごすからだ。

 

「予定変更はまだ間に合う」と、米ジョンズ・ホプキンス大学の防災問題の専門家、メーガン・マクギンティー氏は23日、感謝祭の移動を控えるよう訴えた。 【11月25日 AFP】

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“次期大統領”のバイデン氏も、コロナ対策が就任早々の最大の急務となりますので他人事ではなく、感謝祭のイベント自粛を国民に求めています。

 

****バイデン氏、感謝祭のイベント自粛呼びかけ****

アメリカで政権移行を進めるバイデン氏は感謝祭に合わせた連休が始まるのを前に、イベントなどを自粛するよう呼びかけました。

バイデン氏「今年は国民の祝日に合わせた多くの伝統行事を自粛するよう求めたい」

バイデン氏は、26日から始まる感謝祭に合わせた連休で、人の往来が増えて新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていることを踏まえ、家族の集まりなどの自粛を呼びかけました。また、バイデン氏は、「マスクは愛国的義務だ」として、新型ウイルス対策により一層、取り組むよう国民に促しています。(後略)【11月26日 日テレNEWS24】

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【それでもおよそ5000万人が移動 「私はリスクをとります」】

ただ、束縛されるのを嫌うアメリカ国民は、クリスマスより大事な休暇とあって「大移動」を始めています。

 

****世界の感染者6000万人超、米・感謝祭前で帰省ラッシュ****

世界全体の感染者の累計は6000万人を超えています。感謝祭を迎えるアメリカでは帰省ラッシュが本格化し、保健当局が神経を尖らせています。

ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界の新型コロナウイルス感染者の累計は26日、6000万人を突破。最も多いのはアメリカで、次いでインド、ブラジルとなっています。また、ドイツでは第2波の感染状況が改善できていないとして、制限措置を強化する方針です。

「こちら、ニューヨーク市内最大級の駅です。感謝祭を前にマスクをした人々が、それぞれの旅先へと向かいます」(記者)

26日に感謝祭を迎えるアメリカは、この時期からクリスマスにかけて1年のうちで最も多くの人が移動する「ホリデーシーズン」となり、各地で帰省ラッシュが本格化。今年の感謝祭前後も、およそ5000万人の移動が見込まれています。

「気をつければそんなに心配いりません。手袋もマスクもして距離をとれば大丈夫です」(駅の利用客)
「家族の中には移動したくない人もいて寂しいです。私はリスクをとります」(フロリダから来た女性)

「保健当局が旅行を控えるよう呼びかける中、ロサンゼルスの空港では訪れた人たちが続々と搭乗手続きをしています」(記者)

アメリカのCDC(疾病対策センター)は旅行を控えるよう呼びかけていますが、ロサンゼルス国際空港ではここ数日、毎日4万人ほどが利用しているということです。ロサンゼルス郡当局は、今後2週間で新規感染者が倍増するおそれもあるとの見方を示しています。【11月26日 TBS NEWS】

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「私はリスクをとります」・・・いかにもアメリカ的。

ただ、日本だと「あなたはそれでいいだろうが、大事な人があなたから感染することにもなるでしょう」と言われるんでしょうね・・・。それはうつされる人の自覚・対応の問題という考え方も。

 

【トランプ大統領 国民に対し「集まって」休日を過ごすよう呼び掛け】

一方、トランプ大統領は移動を規制するつもりない・・・と言うより、“国民に対し「集まって」休日を過ごすよう呼び掛けた”とのこと。

 

今後の感染爆発など、(憎きバイデンが対処することであり)知ったことでない・・・ということでしょうか。

 

****ホワイトハウスの感謝祭宣言、国民に「集まり」呼びかけ 感染者急増の最中****

米国のトランプ大統領は、毎年行う感謝祭の宣言で国民に対し「集まって」休日を過ごすよう呼び掛けた。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、連邦政府の公衆衛生当局者らは人が大勢で集まることについて明確な警告を発している。

 

ホワイトハウスの報道官事務所が25日夜に発表した宣言の最後の行には、「すべての国民の集まりを奨励する。家庭と教会で祈りを捧げ、神に感謝してほしい。我々に対し多くの恵みがもたらされていることを」との言葉があった。

 

公衆衛生の専門家らは、26日の感謝祭が「爆発的な感染を引き起こすイベントの最たるもの」になる可能性があると警鐘を鳴らす。また米疾病対策センター(CDC)は、感染拡大の予防策として感謝祭のための旅行を控えることを推奨している。

 

米ジョンズ・ホプキンス大学によると、米国内における新型コロナの累計死者数は26万1000人以上。感染者数は1270万人を超えており、入院患者の数もこの数日間で過去最多を更新し続けている。

 

専門家らは感謝祭のように家族が集まるイベントについて、たいてい屋内で行われ、様々な世代が同席するため、高齢者など重症化しやすい人々がリスクにさらされると懸念を示す。

 

感謝祭などの祝日における大統領の宣言は通常、ホワイトハウスが発表する形式的な声明だが、時おり政権や現在起きている出来事などにからむ政治性を帯びたものになることもある。今年の宣言には、新型コロナのパンデミック(世界的な感染拡大)に言及する箇所も盛り込まれた。【11月26日 CNN】

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コロナに慎重な人が多い日本では、私はどちらかと言えば、やや慎重さに欠ける方かもしれませんが、そんな私でも「何だかな・・・」

 

【ユダヤ教超正統派 秘密裏に大規模結婚式】

もうひとつ、アメリカのコロナ関連ニュースで「何だかな・・・」と思ったのがユダヤ教超正統派の人々の対応。

 

****ユダヤ教超正統派がニューヨークで数千人規模の結婚式 市は罰金150万円****

新型コロナウイルスの感染が再び拡大傾向にある米東部ニューヨーク市で今月上旬、ユダヤ教超正統派が数千人規模の結婚式を屋内で開いていたことが明らかになり、デブラシオ市長は多数の集会を禁じた市長命令に違反したとして、会場となったシナゴーグ(ユダヤ教会堂)に1万5000ドル(約156万円)の罰金を科すと明らかにした。米メディアが24日伝えた。

 

罰金が科されることになったのは、11月8日にブルックリン地区で開かれたラビ(宗教指導者)の孫と別のラビの娘による結婚式。

 

会場は約7000人収容可能な大規模なシナゴーグで、ほぼ満員だったという。米メディアが入手した映像では、伝統的な衣装に身を包んだユダヤ教徒が、階段状のひな壇に肩が触れるほど密集し、マスクをせずに歌い、踊る姿が映っている。

 

市は結婚式の計画を事前に把握していなかったといい、市長は「結婚式を秘密裏に行おうとしていたのは明らかで、受け入れがたい」と批判。今後も違反行為があれば、このシナゴーグを閉鎖すると警告した。

 

ニューヨーク市には100万人以上のユダヤ教徒が暮らす。このうち宗教的な集まりを重んじる超正統派は、集会の禁止など新型コロナの規制に反発し、これまでも行政側と度々対立している。【11月25日 毎日】

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政府の規制に従わないユダヤ教超正統派がコロナのクラスター発生源となっていることは、イスラエルでも問題視されています。

 

【「世界が変化していること、新たなニーズが存在していることに人々は気付きつつある」】

なんだかんだで問題も多いアメリカですが、下記の記事など目にすると「やっぱ、これがアメリカの底力かな・・・」とも思ってしまいます。

 

****過去最高のビジネス立ち上げ数 コロナ禍の米国****

コロナ禍での弱い経済と高い失業率に直面する米国で、スタートアップ企業が記録的な勢いで誕生している。

 

この動きを後押ししているのは、金利の低さと融資に前向きな銀行、それと蓄えのある人々の存在だ。外出機会の減少と政府の景気刺激策がその背景にはある。

 

米国勢調査局によると、7月から9月までに設立された企業は約160万社に上る。四半期で企業設立が100万件を超えたのは初めてで、これまでの記録を大きく塗り替えた。

 

12か国で起業家教育に取り組むNPO「ネットワーク・フォー・ティーチング・アントレプレナーシップ」のJ・D・ラロック代表は、「新型ウイルスの世界的な流行によって、新規事業立ち上げへの関心が明らかに高まった。理由は単純だ。人々が仕事を失っているためだ」と述べる。

 

「世界が変化していること、新たなニーズが存在していることに人々は気付きつつある」と同代表は言う。

 

■起業する以外に方法がない

新型ウイルスの世界的な流行が始まって以来、米国の経済活動は数か月にわたって停滞し、その間に2000万人以上が職を失った。

 

復職できずに失業手当の給付が続いているケースは多く、また、なかには仕事を続けることができていたとしても、収入が激減しているケースもある。

 

サービス業や観光業といった業種での低迷が続くなか、一部の人にとっては、起業する以外に生活の糧を得る方法はないのだ。

 

公式のデータでは、スタートアップが多く誕生したセクターの詳細までは分からない。ただ、センター・フォー・アメリカン・アントレプレナーシップ のジョン・ディアリ―氏は、こうした起業の多くは食事の宅配サービスといった新型ウイルスの流行に関係しているものが多いと話す。

 

その一方で、米メリーランド大学のジョン・ハルティワンガー氏は、オンラインショッピングのようなトレンドは、コロナが流行して人々が家にこもるようになる前から見られていたと指摘する。

 

「こうした変化の一部はより永続的なものとなり、その流れを手助けできる事業者はうまくやることができるだろう」 【11月26日 AFP】AFPBB News

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もちろん、失業し、起業する以外に生活の糧を得る方法がなく・・・ということではありますが、日本とはメンタリティの違いを感じます。

 

アメリカを支えるダイナミズムの源でしょう。

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ポーランド・ハンガリーなどの中東欧諸国 コロナ復興でEUが求める「法の支配」を拒否

2020-11-25 23:00:33 | 欧州情勢

((メラニア夫人の故郷)スロベニア・セブニツァ近郊で披露されたメラニア・トランプ米大統領夫人の銅像【9月16日 AFP】 この銅像は2代目。初代は木造で水色の服を着ていましたが、7月に放火で焼失しました。)

 

【EUのコロナ復興基金 権威主義的傾向を強めるポーランド・ハンガリーの反対で運用が遅れる可能性も】

新型コロナが猛威をふるう欧州では、ピークを越えた国、依然厳しい状況にある国、状況は国によって異なります。

“仏英、コロナ規制緩和を発表 ロックダウンで感染に歯止め”【11月25日 AFP】

“ドイツ、1日当たりの新型コロナ死者が410人に 過去最多”【11月25日 ロイター】

 

ドイツは、感染の増加傾向には歯止めがかかったものの、依然として高止まりしているため、各州は行動制限を12月20日まで延長する見込みとされています。

 

感染状況に差異はあっても、2度目のロックダウンを余儀なくされて、各国ともに市民生活は疲弊し、政府による救済が早急に求められていることは同じです。

“欧州ロックダウン、貧困の波 非正規直撃 職探しの外出、不許可”【11月24日 朝日】

 

各国政府の救済策を資金的に支えるのがEU。

 

EU内部には、かねてより財政規律を重んじるドイツ・オランダなど北部諸国とギリシャ・イタリアなど救済を求める南部諸国の間で、財政規律をめぐる対立軸がありますが、同時に、いわゆる西欧的民主主義を重んじるドイツ・フランスなど西欧諸国と権威主義的傾向を強めるポーランド・ハンガリーなど中東欧諸国の間には、民主主義の価値観をめぐる深刻な対立があることは、これまでもしばしば取り上げてきたところです。

 

権威主義・国家主義的とされるハンガリーとポーランドの政府を巡っては、裁判所、メディア、非政府組織の独立性が損ねられているとして、EUが正式な調査手続きを進めています。

 

そのEUでは予算案には加盟27カ国による全会一致の承認が必要とされていますが、2021─27年予算と新型コロナウイルス復興基金の採択にあたり、資金へのアクセスを巡り、法の支配の尊重が条件に盛り込まれたことに反発するポーランド・ハンガリーが拒否権を行使したことで、来年1月からの予算執行が遅れる可能性が高まっています。

 

“ハンガリーのオルバン首相は18日の声明で「拒否権を行使した」と言明。隣国スロベニアのヤンシャ首相も17日、ハンガリーなどを支持する内容の書簡をミシェルEU大統領らに送った。EUの亀裂が鮮明になった。”【11月18日 共同】

 

ポーランド、ハンガリーはたびたび取り上げてきましたが、個人的にあまり馴染みがないのがスロベニア。

“トランプ氏の妻、メラニア・トランプ氏の生まれ故郷であるスロベニアでは、米大統領選を通じてヤンシャ首相がトランプ氏を称賛しており、10月にはツイッターにバイデン氏は、「歴史上、最も弱い大統領の1人となるだろう」と投稿した。”【後出WSJ】

 

16日の大使級会合、17日の欧州担当大臣級会合、そして19日の首脳会議でも東西の溝は埋まっていません。

 

****東欧2カ国「法の支配」条件に反発 EUのコロナ基金****

新型コロナウイルス禍で深刻な打撃を受けた国を支援する欧州連合(EU)の「復興基金」をめぐり、東欧のハンガリーとポーランドが承認手続きで同意を拒否している。

 

権威主義に傾斜している両国の政権は、「法の支配」順守を資金分配の条件とする基金の仕組みに反発している。基金の運用開始には加盟全27カ国の承認が必要で、来年1月とされていた予定がずれ込む可能性が出てきた。

 

基金はEUの欧州委員会が債券を発行し、金融市場で全額を調達する。規模は総額7500億ユーロ(約92兆円)でEU予算に組み込まれる。コロナ禍に伴う医療支援や景気対策などのため、返済不要の補助金として3900億ユーロ、融資の形で3600億ユーロの資金を加盟国に供給する仕組みだ。

 

EU首脳は7月、基金の設立に合意した。しかし、その後、EU議長国を務めるドイツと欧州議会の交渉担当者が、「法の支配」の原則に反する加盟国に対しては、基金からの資金拠出を差し止められるとする仕組みの導入方針を決めた。

 

ハンガリーとポーランドの政権は強権的な統治手法を強め、報道の自由や司法の独立を脅かしていると指摘される。基金運用に関する方針には、両国での「法の支配」の後退に歯止めをかける狙いがある。

 

ハンガリーやポーランドはこれに対し、「経済問題を政治的な議論に結びつけるのは誤りだ」などと反発。基金を含めたEU予算の承認手続きに拒否権を行使している。

 

EUは19日、オンラインによる首脳会議を開き、基金の問題を議論したが、両国は拒否する姿勢を変えなかった。加盟国は協議を継続することで一致しており、ミシェルEU大統領は12月の首脳会議までに解決を図る考えを示した。

 

ハンガリーのグヤーシュ首相府長官は同日、現状のままでは基金が稼働する「可能性はゼロだ」と述べ、仕組みの変更を改めて求めた。ドイツのメルケル首相は「拒否権がある以上、ハンガリーやポーランドとの協議を続けなければならない」と述べるにとどめた。

 

基金の運用開始が遅れれば、コロナ禍で低迷した欧州経済の回復が遅れる恐れもある。景気悪化が深刻なイタリアのアメンドラ欧州関係担当相は「(基金の承認を)遅らせた者は重い政治責任を負う」と警告した。【11月20日 産経】

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【トランプ退陣で守護者を失う中東欧ポピュリズム右派政権】

“強権的な統治手法を強め、報道の自由や司法の独立を脅かしていると指摘される”中東欧諸国ですが、こうした国々をこれまで強気にさせてきたのが、同様の傾向を持ち、西欧諸国と馬が合わないアメリカ・トランプ大統領でした。

 

そのトランプ大統領の退陣は、中東欧の強権支配・右派ポピュリズム国家にも大きな影響を与えることが予想されます。

 

今回、西欧諸国が「法の支配」順守を資金分配の条件とする形で中東欧諸国へ強気の姿勢を示しているのは、中東欧諸国を勢いづかせてきたトランプ大統領の退陣ということが影響しているとも指摘されています。

 

****「親トランプ」の東欧右派政権、米国の変化を警戒****

ハンガリーやポーランドなどの大衆迎合主義政府、バイデン氏の大統領就任で批判恐れる

 

11月3日の米大統領選挙の翌日、スロベニア右派政権のヤネス・ヤンシャ首相は、ドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利したと公式に宣言した。1国のリーダーとしてトランプ氏の勝利を認めたのは、世界でヤンシャ氏だけだ。ヤンシャ氏はその後、米大統領選挙で不正があったとの根拠の薄い主張を、頻繁にリツイートしている。

 

エストニアのマルト・ヘルメ内相(その後辞任)と彼の息子のマルティン・ヘルメ財務相は、ジョー・バイデン次期米大統領を腐敗した人物だと批判し、「ディープ・ステート(国家内国家)」が米大統領選挙を盗み取ったと主張するとともに、トランプ氏が内戦によって権力を取り戻しつつあると指摘している。マルト・ヘルメ、マルティン・ヘルメ両氏は、エストニア連立政権の一角を占める極右政党の指導者だ。

 

また、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は、バイデン氏の「大統領選挙での成功」に祝意を述べただけで、選挙人による投票の結果を待っていると語った。ドゥダ氏は、今年7月のポーランド大統領選挙直前にホワイトハウスを公式訪問したことで勢いを得て、大統領再選を果たしていた。ポーランド公共放送のテレビ番組は、米大統領選挙で不正が行われた可能性があるとの見方を、連日のように伝えている。

 

こうした反応は、強い立場の西欧諸国と、地政学的に弱い立場の東欧諸国との間の亀裂を示している。西欧諸国はバイデン氏の勝利を歓迎しているが、東欧諸国の多くはトランプ氏を支持してきた。

 

トランプ氏はこれまで、気候変動・貿易・国防などの問題でドイツやフランスと頻繁に対立してきたが、中・東欧諸国の何人かの首脳とは友好的関係を結んできた。

 

こうした諸国では、国内で伸長していたナショナリストとポピュリスト(大衆迎合主義)の勢力がトランプ氏の政治姿勢を歓迎していた。

 

東欧のナショナリスト勢力は、2016年の米大統領選でトランプ氏が勝利するはるか以前から、基盤を拡大していた。ハンガリーのビクトル・オルバン首相は、10年前から首相を務めており、メディア・市民社会組織・司法への影響を着実に強めている。ポーランドのドゥダ大統領が最初に当選したのは2015年だ。

 

しかし彼らは、トランプ氏が米大統領となったことで、主流になりつつある世界の流れの一翼を担っているとの感触を得て勢いを増した。

 

トランプ氏は、西欧諸国が仲間外れにしようとしていたこれら諸国の正当性を認めた。トランプ氏は大統領として初の欧州訪問の際にワルシャワを訪れ、「われわれ独自の文化、信仰、伝統による結び付きの一掃」を画策する勢力に対抗する共同戦線を提唱した。

 

米大統領選でバイデン氏が勝利したことで、東欧諸国のナショナリストは守勢に回っている。今年のポーランド大統領選でドゥダ氏に挑んだ欧州議会議員で中道左派のロベルト・ビエドロン氏は「彼らは、価値観を共有し反リベラルの主張を広める親しい仲間を失った。トランプ氏が敗れたことで、もはやトランプ効果は機能しなくなった」と語った。

 

ホワイトハウスの変化は、資金援助に法の支配重視の条件を付けるという欧州連合(EU)の要求をめぐって、ポーランドとハンガリーが他のEU加盟国と対立する中で起きた。

 

こうした条件を課されることで、ハンガリーとポーランドは道路・鉄道・学校向けにEUから資金を得るため、裁判所や政府系メディアの力を排除する動きを抑制せざるを得なくなる可能性がある。

 

ハンガリー生まれでオランダ選出の欧州議会議員のカティ・ピリ氏は、EU主要国によるこうした強硬なアプローチについて、トランプ氏敗北の直接的な結果の1つだと話す。

 

同氏は、「本当に変わったのは、リベラルの力に公的な資格が与えられたように感じることだ。ここ何年かにわたって、欧州の指導者の多くはこうした独裁者に立ち向かわなかった。今後そのようなことは二度と起こらないだろうと感じている」と話した。

 

副大統領時代のバイデン氏と働いた米国の元当局者および顧問らは、バイデン政権が米国の政策を急旋回させ、同地域に対してより積極的なアプローチを取るとみていると話す。

 

ディック・ダービン上院議員(民主、イリノイ州)は、「私はバイデン次期大統領が民主主義的な規範や人権に関して、われわれが共有する価値観を改めて主張すると確信している」と述べる。

 

バラク・オバマ前大統領時代に北大西洋条約機構(NATO)の米国大使を務め、現在シカゴ・グローバル評議会会長を務めるイボ・ダルダー氏は、「とても大きな変化になるだろう」と述べ、「民主主義的価値観と法の支配へのコミットメントは、ワシントンと良好な関係を築く上でかなり重要になるだろう」と付け加えた。

 

バイデン氏の政権移行チームの広報担当者は、次期大統領のコミットメントについては、今年出された記事の中で、「民主主義の強化を世界的な政策目標に戻すこと」と述べていると指摘した。(後略)【11月24日 WSJ】

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【トランプ後も残るポピュリズム】

中東欧諸国とはいっても、事情はそれぞれ(例えばロシアの脅威の度合い、それはアメリカを必要とする度合いにもなります)ですから、今後の対応もそれぞれでしょう。

 

ただ、中東欧諸国にしても、アメリカのトランプ支持勢力にしても、トランプ退場で消えてなくなるものでもないでしょう。

 

****経済格差とエリートへの不満でポピュリズムは残る****

今回の米国の大統領選挙は、再びポピュリズムに焦点を当てることとなったが、米国のポピュリズムはトランプ以前からあり、トランプ後も何らかの形のポピュリズムが続くと思われる。

 

ポピュリズムの原動力は経済的不平等とエリートへの怒りである。

 

経済的不平等については、米国で過去40年間経済は顕著に発展したが、その間実質賃金は上がっておらず、特に教育程度の高くない者の実質収入は減ったという。

 

米国経済はグローバル化とデジタル技術、オートメーション技術に支えられて発展したが、教育程度の高くない者はこの経済発展に参加できず、その恩恵を受けることができなかった。

 

このようにして経済発展に取り残された形のグループが社会、政治体制に幻滅を感じ、ポピュリズムを支持するようになったと考えられる。

 

それはエリート、つまりエスタブリッシュメントに対する怒りと裏腹である。取り残された人々は、エスタブリッシュメントは経済発展に参画しその恩恵を受けたのに自分たちは疎外されたと感じ、エスタブリッシュメントに対する怒りが生じたのである。

 

このような経済的不平等とエリートに対する怒りは、トランプが去っても消えるものではなく、米国のポピュリズムはトランプ後も続くと考えられる。

 

バイデンは大統領選挙の勝利演説で国民の和解を呼び掛けた。トランプは対立や分裂を煽るような発言を繰り返していたが、バイデンが大統領になればそのような発言はなくなるだろう。

 

しかし、上記のような経済的不平等とエリートに対する怒りが続く限り、和解は困難である。バイデンが真に米国民の和解を図ろうとするのであれば、対立の原因である経済的不平等の軽減に取り組まなければならない。しかし、経済的不平等は構造的な性格のものであり、その軽減は容易でないだろう。

 

ポピュリズムは米国だけの現象ではない。欧州では以前よりポピュリズムの動きが見られたが、2011年の国家レベルの債務危機をきっかけにポピュリズムへの支持が急拡大した。

 

現在ではイタリアでポピュリスト党の「五つ星運動」が連立政権を組んでおり、ハンガリーではポピュリストのオルバンが首相を務めているほか、フランスではマリーヌ・ル・ペンがポピュリスト党の「国民連合」(前「国民戦線」)の党首を務めている。欧州以外ではブラジル、インド、フィリピン、ポーランド、トルコでポピュリズムが活発である。

 

このようにポピュリズムは世界的現象であり、今後とも先進地域、開発地域を問わず、国民の不満のはけ口、それにつけ込む政治家の動きとして広まりを見せると思われる。【11月25日 WEDGE Infinity】

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中東欧諸国が怒り・不満を向けるエリート・エスタブリッシュメントが西欧諸国、それに主導されるEUです。

 

だったらEUを抜ければいいのに・・・とも思うのですが、そのEUから補助金などで最も大きな便益を得ているのがほかならぬ中東欧諸国です。

 

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タイ  当局対応・デモ隊、双方がエスカレート傾向 首相は不敬罪適用も示唆 注目される25日デモ

2020-11-24 23:01:50 | 東南アジア

(デモ会場に登場した「黄色いアヒル」【11月24日 FNNプライムオンライン】 周囲で片手をあげているデモ参加者は「抵抗」のシンボル「三本指サイン」 ユーモラスな光景とは裏腹に、緊迫する情勢は「危険水域」に近づいているとも)

 

【放水・催涙弾、実弾射撃、一方で警察本部にペンキ エスカレートする攻防】

タイの長期化する若者らの抗議行動については、これまでも数回取り上げています。最近では11月15日ブログ”タイ 長期化する若者らの抗議行動 王室改革をも求める声に「愛」を語るワチュラロンコン国王”など。

 

プラユット政権はコロナ対策を名目にした非常事態宣言を、感染終息後も継続して延長しており、集会禁止などデモ封じ込めを狙ったものと見られています。

 

****新型コロナ対策で発令中のタイの非常事態宣言、8度目の延長…デモ抑え込みも意図か****

タイ政府は23日、新型コロナウイルスの感染対策として全土に発令中の非常事態宣言について、来年の1月15日まで約1か月半延長することを閣議決定した。今年3月に発令された非常事態宣言の延長は、これで8度目となる。

 

非常事態宣言に基づき、タイでは一時、夜間外出禁止や国際線の乗り入れ停止などの措置が取られたが、現在は国内の感染拡大が抑えられていることから、こうした措置は解除された。集会禁止などの措置は続いている。

 

年末年始には多くの人が集まって新年を祝うため、感染が再拡大する恐れが背景にある一方、タイでは学生らによる反政府デモが続いており、非常事態宣言の延長でデモを抑え込む意図もあるとみられる。【11月23日 読売】

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そうした非常事態宣言下でも抗議行動は続いていますが、11月17日には“タイのデモで40人超負傷、警察が放水銃や催涙弾 銃撃も”【11月18日 ロイター】と荒れた展開に。

 

後日の情報では、この日のデモ隊と警察・王室支持派による衝突で55人が負傷し、うち6人が何者かに銃撃されていたことも判明しています。

 

一方、国会で審議されていた、デモの若者らが求める王室改革案は否決されました。

 

****反政府デモ広がるタイ、7つの改憲案を採決 王室改革含む案は否決****

 タイの国会は18日、憲法改正に関わる7つの案について採決を行い、このうち2つを承認した。一方で王室改革を含む案は退けられた。タイでは軍事政権に抗議する全国規模のデモが激しさを増している。

 

若年層が主導するこれらのデモは過去5カ月間にわたって定期的に行われ、2014年の軍事クーデターで政権についたプラユット首相の退陣や国会の解散、憲法の改正などを求めている。

 

デモの参加者はこのほか、長年タブー視され犯罪に問われる可能性もある王室の改革も訴える。国王の権限の縮小を求めるこうした声は、王室に異を唱える動きとしてこの数十年で最も大きなものとなっていた。

 

採決の前日の夜には、首都バンコクにある国会議事堂の外でデモ参加者が警官隊や王室擁護のグループと衝突。催涙ガスや放水銃が使用される事態となった。

 

18日になると警察は実弾を発射したことも確認し、少なくとも2人が撃たれたと明らかにした。初めて実弾が使用されたこの時のデモでは55人が負傷した。

 

採決にかけられた7つの案のうち王室改革に関するものは1つのみで、現行の憲法を破棄したうえで、王室の章を含む新たな憲法を起草するという内容だった。

 

承認には国会議員の半数以上と上院議員の3分の1以上の賛成票が必要だったが、実際の賛成票は国会議員732人中の212票にとどまった。【11月19日 CNN】

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これに対し、デモ隊側は18日には“デモ隊、警察本部にペンキまく=「放水・催涙弾への報復」―タイ”【11月19日 時事】と行動をエスカレートさせています。

 

【首相 不敬罪の「刑法112条」適用をちらつかせる】

それに伴い、政府対応も硬化の様相。

 

****タイ首相、抗議者にあらゆる法律適用と表明****

タイのプラユット首相は19日、首相更迭や憲法改正、王室改革を要求する抗議者に対し、あらゆる法律を適用して措置を講じると表明した。

タイでは前日、首都バンコクの警察本部前で数万人が抗議活動を繰り広げ、本部の敷地内にペンキをまき散らすなどした。17日のデモで警察の催涙弾や放水銃などによって数十人が負傷したのに続き、議会でデモ隊側が求める国王の権限見直しにつながる可能性があった憲法改正案が否決されたのを受け、怒りの声をあげた。

プラユット首相は声明で「状況は改善しておらず、暴力がエスカレートするリスクがある。対応しなければ、我が国や愛すべき君主制がダメージを受ける可能性がある」と指摘。「政府は行動を強化し、あらゆる法律を適用して法に違反する抗議者に対する措置を講じる」と述べた。

王室侮辱罪を扱う112条がこれに含まれているかどうかは明らかではない。プラユット首相は、国王の要請で112条はしばらく適用されていないとこれまでに述べている。【11月19日 ロイター】

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「あらゆる法律を適用」という表明は、不敬罪を扱う刑法112条の適用を指すのでは・・・とも指摘されています。

 

政府のこうした厳しい方針に沿って、抗議デモに参加した高校生2人が訴追されています。

 

****タイ警察、抗議デモ参加で高校生2人を訴追へ****

タイ警察は20日、先月15日に非常事態宣言に違反して抗議デモに参加したとして、高校生2人を訴追する方針を示した。

2人は学生団体のリーダー。両親・弁護士を伴って取り調べを受けるという。先月15日の抗議デモには約1万人が参加した。

タイのプラユット首相は19日、首相更迭、憲法改正、王室改革を要求する抗議デモの参加者に対し、あらゆる法律を適用して措置を講じると表明していた。

訴追される15歳の高校生は、ロイターに「リーダーを逮捕しても、さらに数百人が立ち上がる。刑務所が足りなくなるだろう」とのメールを送信した。

学生団体は21日も抗議デモを予定しており、この学生もデモに参加する予定。訴追されるもう1人の高校生は17歳。(後略)【11月20日 ロイター】

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【その動向が注目される明日25日の大規模デモ】

緊迫した情勢が続くなかで、明日25日には王室財産管理局の前で大規模な抗議活動が予定されており、デモ参加者は国王が私的に管理している王室財産の返還を求める予定とのこと。

 

また、かつて軍事クーデターの引き金ともなった政治混乱の一方の当事者であるタクシン元首相支持の「赤シャツ隊」も抗議行動に参加する可能性も指摘されています。

すでに、黄色いシャツを着た王室支持派はデモ隊と小競り合いを起こしています。

 

タイの大規模デモは、かつて流血の事態となったことも度々あるだけに、その成り行きが注目されています。

 

****高まる緊張 タイ抗議デモ****

タイで7月から続いている反政府デモをめぐり、緊張が高まっている。警察は先週、デモ隊を鎮圧するために催涙弾を使用した他、刺激剤の入った水を放出。デモ隊6人が警官に撃たれた。

 

首都バンコクでは25日、大規模なデモが予定されている。長らく政情不安が続くタイの現状をまとめた。

 

■態度を硬化させるを強めるデモ隊

時には数万人が参加した4か月に及ぶデモで、参加者らは徐々に態度を硬化させている。デモの指導者らは、妥協するつもりはないと警告。少し前までは考えられなかった反王室スローガンや王室に対する侮辱の言葉も多く聞かれるようになっている。

 

一方、警察の機動隊は先週、デモ隊に対し強硬措置も辞さない構えを見せた。

 

今回のデモは学生主導で、ソーシャルメディアなどで幅広い支持を集めている。専門家らは10年前にバンコクで大規模なデモを展開した「赤シャツ隊」が今回のデモに加わる可能性も指摘している。

 

数か月にわたり続くデモの参加者らは、軍政下に制定された憲法の改正やプラユット・チャンオーチャー首相の退陣のみならず、これまでタブーとされてきた王室改革も求めている。

 

バンコクにあるチュラロンコン大学のシリパン・ノックスワン・サワディー教授は、デモ隊は王室改革を求めることでタブーを打ち破り、すでに新たな政治文化の出現を可能にし、タイの歴史上前例のない表現の自由を推し進めていると説明した。

 

■政府は「行き当たりばったり」

政府は7月に始まったデモに対し、慎重に対応している。緊急事態宣言を出しては撤回したり、デモの指導者らを逮捕しては釈放したりしている。

 

ナレースワン大学のポール・チャンバース氏は「デモが始まって以来、政府は行き当たりばったりの対応をしている」と述べた。

 

これまでのタイのデモとは異なり、今回のデモは都市部中流階級の若者が中心となっている。

 

2010年にバンコク中心部で起きた赤シャツ隊のデモでは、取り締まりの過程で90人が死亡した。当局は、国際的なイメージが傷ついたこのときの事態を繰り返さないよう警戒しているようだ。

 

ただし、最近になって政府は強硬な姿勢を強め、王室の名誉を傷つける行為を禁じる不敬罪の「刑法112条」をちらつかせ始めている。

 

■支持者らと交流する国王

今回のデモ以前は、マハ・ワチラロンコン国王が公の場に姿を見せることはあまりなかった。だが、最近は人前に頻繁に姿を見せるようになり、支持者らと交流し、タイ国民への「愛」を宣言している。

 

それでも、現国王が議論を呼ぶ存在であることに変わりはない。在位70年に及んだ父親のプミポン・アドゥンヤデート前国王のような絶大な人気を得るには至っておらず、王室の財産や軍の一部を直接自身のコントロール下に置くことで権力を強化しようとしている。

 

ワチラロンコン国王が、頻繁にドイツに滞在していることも問題となっている。さらに新型コロナウイルスの流行下で、国民のことを十分気にかけていないとの批判も上がっている。

 

■暴力的な結末に至るのか?

1970年代に2回、そして1992年と2010年に発生したタイのデモは、どれも流血の事態に終わった。このため専門家らは今回も同様の事態になることを懸念している。

 

チャンバース氏は「極右王室支持派団体」がすでに民主派のデモ参加者に嫌がらせをしていると指摘している。 【11月24日 AFP】

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デモでは「黄色いアヒル」が抗議のシンボルともなっており、一見するとユーモラスな雰囲気もありますが、その内情は「危険水鬼」に近づいているとも指摘されています。

 

****黄色いアヒル登場も…危険水域に入り始めたタイ反政府デモ****

反政府デモが続くタイの情勢が徐々に緊迫化している。11月17日にはデモ隊と警察・王室支持派が衝突し55人が負傷、うち6人が何者かに銃撃されていたことが判明した。

 

プラユット政権はさらなるデモの取り締まり強化を宣言し、不敬罪適用の可能性も浮上している。11月25日に予定されている大規模デモの行方が注目されている。

 

黄色いアヒルが「シンボル」に

11月18日、バンコク中心部で行われた反政府デモの会場に、巨大な黄色いアヒルのゴムボートが大挙して登場し注目を集めた。アヒルのゴムボートは数千人のデモ隊の頭上を波打つように移動し、多くの参加者を沸かせた。この黄色いアヒルはいまデモ隊の間で「抗議のシンボル」となっている。

 

きっかけとなったのは17日に国会議事堂前で行われたデモだった。警察がデモ隊に向けて放水車や催涙弾を使用した際に、参加者の一部がアヒルのゴムボートを盾代わりに使ったのだ。その様子がメディアやSNSで一斉に拡散すると、黄色いアヒルはデモ隊を守ってくれたヒーローとして称賛された。

 

この日からアヒルは「抗議のシンボル」となり、いまではデモ会場でアヒルを模したグッズを身につける参加者も増えている。

 

タイ情勢が徐々に緊迫化

こうした可愛らしいアヒルの姿とは対照的に、反政府デモを取り巻く状況は以前にも増して緊迫化している。

 

理由の一つはデモ隊に対する警察側の対応の変化だ。11月17日に国会議事堂前で開かれた集会では、デモ隊が国会に近づくためにバリケードを突破しようと試みると、警察側はすぐさま放水や催涙弾を使用した。

 

これまでのデモで警察側は放水等の対抗手段を取ることには抑制的だったが、この日はデモ開始から1時間もたたずに鎮圧のために強硬手段に出た。こうした行動の変化は、治部隊側が従来の抑制的な方針を転換した可能性を示している。

 

また王室支持派による抗議活動も緊張の激化に拍車をかけている。国会前のデモでは、黄色いシャツを着た王室支持派とデモ隊による小競り合いが発生し、双方がペットボトルを投げ合うなど一時騒然とした。

 

また、デモ隊と警察・王室支持派による衝突で55人が負傷し、うち6人が何者かに銃撃されていたことも判明した。この負傷者数は、一連の抗議デモでは最悪の被害となった。

 

デモ隊側も徐々に行動をエスカレートさせている。警察がデモ隊に向けて放水をした翌日の18日、数千人のデモ隊が報復として警察本部の建物を取り囲み、看板や壁にペンキを投げつけた。また外壁にもカラースプレーで抗議のメッセージを書き込んだ。

 

さらにデモ隊の一部は、警察本部だけでなく、付近の道路や横断歩道、鉄道の高架橋の柱、寺院の壁にも抗議の落書きをした。ワチラロンコン国王の母親であるシリキット王太后の肖像写真の前に、王室を侮辱する言葉を書きなぐった参加者もいた。

 

王室批判禁じる「不敬罪」復活か

抗議行動が過熱したのを受けて、政権側はデモの取り締まり強化を宣言した。プラユット首相は19日、声明で「政府が真剣に平和解決を模索してきたが、事態は一向に収束する気配を見せない」とデモ隊を批判した。

 

その上で、デモが暴力に発展して国家と王室を傷つけるおそれがあるとして「あらゆる法律を適用し、違反する抗議者に対する措置を講じる」と牽制した。タイ国内では、これが不敬罪を扱う刑法112条の適用を指すのではないかとの憶測が広がっている。

 

タイには不敬罪(刑法112条)が存在し、国王や王妃などを中傷・侮辱したと判断されると最高で15年、最低でも3年の禁固刑が科される可能性がある。最近は不敬罪による逮捕・起訴はほとんどなく、プラユット首相は過去に不敬罪について、ワチラロンコン国王の要請で適用されていないと述べていた。

 

それが一転、不敬罪適用への具体的な動きが始まっていて、バンコク首都圏警察は刑法112条に関する捜査を担当する委員会を立ち上げた。デモ隊側は、不敬罪が王室に関する議論を制限しているとして撤廃を求めている。

 

首相による声明発表の翌日、反政府デモに参加していた一部のグループが次回以降のデモに参加しないと表明した。グループは、デモで度々取り上げられる王室批判は受け入れられるものではなく、またデモ隊が警察本部にペンキを投げつけたのも過剰な行為だと批判した。これらのグループの一時撤退は、不敬罪適用への警戒心の表れとみられている。

 

一部に離反の動きはあるものの、デモ隊側に攻勢を弱める気配は見られない。11月25日には、バンコクの王室財産管理局前で再び大規模デモを行い、国王が私的に管理している莫大な王室資産の返還を求める計画だ。一方で王室支持派も同日にデモを開催すると発表していて、再び衝突が起きる懸念も出ている。

 

反政府デモ隊とタイ政府当局、王室支持派による一触即発の状況が今後も続く。【11月24日 FNNプライムオンライン】

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デモ隊、当局側の対応、犠牲者の発生の有無、さらには政府の不敬罪・刑法112条の適用の有無など、ひとつの分水嶺ともなる可能性がある、明日25日の大規模デモです。

 

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ベトナム  相次ぐ技能実習生犯罪の背後に悪質ブローカーの存在

2020-11-23 22:46:55 | 東南アジア

(ベトナム北部の農村。実習生の多くはこうした地方の出身だ【11月22日 室橋 裕和氏 文春オンライン】)

 

【相次ぐ在留ベトナム人の犯罪】

10月末に、群馬県で家畜・果物などを盗み組織的に販売していたベトナム人グループが逮捕されました。

 

****家畜千頭を盗難…「群馬のボス」率いるベトナム武装集団の闇手口****

ベトナム人の窃盗集団による家畜盗難が相次いでいる。 10月26日、群馬県警は在留期限を超えたとして入国管理法違反で、自称カラオケ店店主レ・ティ・トゥアン容疑者(39)ら男女13人を逮捕した。

 

彼らが住んでいた太田市内の貸家2棟から、約30羽分の冷凍鶏肉を押収。トゥアン容疑者は「群馬のボス」というアカウントを持ち、SNS上でベトナム人の仲間を募集していた。

 

さらに同県警は、10月28日にカオ・スアン・トゥン容疑者(27)らベトナム人技能実習生の男4人を屠畜場法違反で逮捕したと発表。4人は太田市内のアパートで、豚を食肉にする目的で解体していたという。 

 

「(中略)彼らは、夜になると北関東を中心に徘徊。家畜や果物を盗んでいたとみられます。監視カメラの映像を分析すると、家畜を運ぶ者、見張り役、運転手と役割が明確に分かれていたようです。 

 

家畜の盗難は今年1月から目立つようになりましたが、被害が届けられたのは5月以降になります。中には、半年間で400頭の豚が盗まれた養豚場もある。警察は170人体制で、捜査に当たっていました」(全国紙社会部記者)

 

 家畜の盗難被害は、今年に入り群馬、埼玉、栃木、茨城の4県で22件にのぼる。被害総額は3000万円以上。群馬県だけで豚719頭、鶏144羽、ナシやブドウなどの果物約9000個が盗まれた。 

 

◆容疑者の部屋から漂う異臭 「近隣住民は、逮捕されたベトナム人の住む住宅から異臭がしていたと話しています。注意しても日本語が通じないようだったとか。家の外で肉を焼き、バーベキューをすることもたびたび。普段は夏でも窓を閉め切り、室内が見えないようにしていたようです。 

 

盗難の目的は、同胞への闇販売がひとつ。在留ベトナム人の数は、中国人、韓国人に次いで約33万人になります。とても強固なコミュニティを築いている。SNSなどによる連絡も密で、販売のマーケットが形成されているんです。今回もコミュニティを利用して、盗んだ家畜を解体し宅配便で日本に住むベトナム人に送っていたとみられています」(同前) 

 

コロナ禍で働き口がなくなり、食うに困っている外国人労働者が増えている。外国人技能実習生のあまりにひどい待遇なども近年問題になっている。盗難事件には、こうした背景があることにも目を向けなければならない。 

 

ただ、どうも本件は様子が違うようだ。警察が押収した中に、肉や果物の他にも危険物が混じっていたのである。 「牛刀の他、モデルガンや金属バット、模造刀も押収されたんです。

 

この容疑者たちは窃盗を繰り返すグループだっただけでない。トラブルになれば、モデルガンや金属バットで、養豚場のスタッフなど一般人に危害を加える恐れもあったでしょう。

 

SNSを駆使し、見張り役など役割万端をするなど手口も巧妙。北関東の広い範囲に土地勘もあるため、バックに日本人がいる疑いも強くなっています」(北関東の地元紙記者) 

 

続発する家畜の盗難。今回逮捕されたグループは、氷山の一角なのかもしれない。【11月4日 YAHOO!ニュース FRAIDAY DIGITAL】

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【調整弁として新型コロナ禍で職を失う外国人労働者】

このグループの行為は組織的犯罪行為そのもので、かつ、より暴力的な犯罪に至る危険性もあったようです。

 

もっとも、一般論で言えば、「凶悪な外国人による犯罪」というだけではなく、背景には多くの外国人をそうした世界に追いやる技能実習生制度の問題、更に新型コロナ禍による困窮という問題が存在していることもまた事実です。

 

新型コロナ禍でもとから不安定だった外国人労働者の生活は、一層困窮を深めています。

ベトナム人に限った話でもありません。

 

****外国人、暮らせない フィリピン人76人解雇 三重****

三重県多気町にあるシャープ三重工場で、派遣されて働いていたフィリピン人ら93人が15日付で解雇された。派遣など「非正規」と呼ばれる人や外国人など、雇用環境が不安定な人への新型コロナウイルス不況の影響が深刻化している。

 

労働組合「ユニオンみえ」によると、解雇された93人は、三重県松阪市にある下請け企業から派遣され、液晶パネルの生産にあたっていた。「業績悪化」を理由とする解雇通知は10月14日付で、うち76人がフィリピン人という。

 

「家族への仕送りもできなくなる」「16年間も働いた。どうして解雇なのか」

今月12日、津市内の施設で、フィリピン人労働者が県の雇用対策などの担当者に次々と不安を訴えた。(中略)

 

厚生労働省によると、外国人労働者は、2019年10月末時点で過去最多の約166万人に上った。新型コロナの影響による解雇や雇い止め(見込みを含む)は今月6日時点で7万242人。同省は国籍を「把握していない」としている。【11月16日 朝日】

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雇用の調整弁として、真っ先に外国人労働者が失業を余儀なくされるというのは日本だけでもないでしょうが、それを放置すれば、冒頭のベトナム人グループような犯罪も多発しますし、人道上の観点、あるいは長期的にみて人材を確保するという経済的側面でみても改善が求められます。

 

現在は、失業して帰国したくても航空便の減便や運賃高騰で帰国できないという事情もあります。

 

【そもそも問題が多い技能実習生制度】

やはり、多くの者が日本で働く中国のメディアも、日本の技能実習生制度の問題を指摘しています。

 

****日本でのベトナム人犯罪は「問題ありすぎの技能実習制度のせい」―中国メディア****

中国メディアの中国新聞社は1日、海外華字メディアとの協力媒体である華輿を通じて、日本で発生したベトナム人による犯罪の背景には、問題が多すぎる日本の外国人に対する技能実習制度があると論じる記事を発表した。

記事はまず、埼玉県、栃木県、群馬県で10月末までに発生したベトナム人による家畜などの大量盗難事件を紹介。

 

ベトナム人が犯罪に手を染めるに至った経緯については、技能実習の期間が終わり帰国するはずだったが、新型コロナウイルス感染症のために多くの航空便が運航を取りやめ、航空運賃が高騰したために日本に留まらざるをえなくなった。しかもコロナの影響で解雇されてしまったため、家畜類を盗み、一部は自分らで食べ、一部はネットで販売したと、ベトナム人側に同情的な論調で報じた。

日本の行政側の動きについては、コロナの影響で解雇されたり、航空便が減らされたことで帰国できない技能実習生が新たな職場で働くことを認めたなどと紹介。行政側の措置は「人道的であることは確か」などと一定の評価をした。

ただし、技能実習生の制度そのものに対しては、外国の労働力が先進的な技術を取得することを助け、母国の発展を支援するための制度として設けられたと紹介した上で、「良い政策だが効果を上げているとは言えず、実際には往々にして安価な労働力を獲得するための手段になっている」と批判した。

また、日本が2019年4月に「特定技能」と称して新たな在留資格を認めたことは、農業や介護など少子高齢化による人手不足に対応するためと紹介。さらに、「特定技能第1号」として在留資格を取得して来日した外国人が20年6月末までに累計5950人だったのに対して、日本政府が予定している技能実習生の24年末までの目標人数が34万5000であり、「特定技能」の受け入れは明らかに少ないと論じた。

記事は、外国人労働者の問題に詳しい日本人弁護士の話を引用して、日本政府はコロナの影響に伴って柔軟な対応したが、あくまでも応急措置であり抜本的な対策ではないと指摘。同弁護士の「日本政府は将来、技能実習制度を根本的に廃止すべきであり、特定技能による在留資格認定制度を完成させるべきだ」との主張も紹介した。

記事は、一連のベトナム人による犯罪は、技能実習制度における問題の「氷山の一角が露呈したものだ」と批判した。【11月2日 レコードチャイナ】

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実質的に単純労働者確保手段となっている技能実習生制度の問題は従前から繰り返し指摘されているところで、あとは行政・政府にやる気があるのかどうか・・・というところです。

 

【跋扈する悪質ブローカー】

下記のような受け入れ側、あるいは送り出し側の問題も以前から指摘され、「常識」ともなっています。

にもかかわらず改善が進まないということは、行政・政府にやる気がないと考えざるを得ません。

 

それで問題が起きたら「悪質な外国人」のせいにする、あるいはそういう世論を黙認するというのでは、やはり批判は免れないでしょう。

 

****相次ぐベトナム人犯罪のなぜ? 「ひとり月500円」「性接待も日常的」……実習生送り出し機関の“悪質な手口”****

ベトナム人による犯罪が相次いでいる。その背景だと語られるのは彼らの労働環境の劣悪さだ。

 

しかしもうひとつ、実習生を送り出してくるベトナム現地機関にも悪質なものが多いことはあまり知られていない。ベトナム人経営の送り出し機関が、同じベトナム人を搾取し、そこに日本人が寄生しているという図式があるのだ。

◆ ◆ ◆

「まず一度、ベトナムに行ってみませんか?」 人手不足に悩む地方の中小零細企業、とくに建設関連の会社を回っているブローカーは、まずこう切り出すという。


「技能実習生の候補生たちが日本語を学んでいる現場を見てから、彼らを雇うかどうか決めてはいかがでしょう。もちろん渡航費用はこちらでお出しします」

 

そう誘われて、企業の担当者はそれまで縁もなかったベトナムに向かうことになる。同行するのは営業をかけてきた「紹介会社」などと称する日本人ブローカー、それに地域にある実習生受け入れの組合(監理団体)の日本人担当者だ。

 

監理団体は英語でいうとアクセプト・オーガナイザー、つまり受け入れ機関だ。この団体が、ベトナム側にあるセンド・オーガナイザー、つまり送り出し機関を通じて、技能実習生を受け入れ、各企業が雇う。送り出し機関はベトナム人の経営だ。

 

技能実習制度は「海外の送り出し」と「日本の受け入れ」双方があって成り立つものなのだが、そこに悪質なブローカーが寄生していることがベトナムの場合、非常に多い。

 

そんなブローカーの営業を受けて実習生の導入を検討し始めた企業の担当者は、ベトナムに到着すると、流暢に日本語を話す送り出し機関のベトナム人に出迎えられる。クルマはたいてい、アルファードかヴェルファイア。まず向かうのは「日本語センター」などと呼ばれる学校だ。送り出し機関はたいてい日本語学校を兼ねているが、やはり悪質なところもかなり混じっているという。

 

「性接待」も日常的…送り出し機関“ベトナムツアー”の実態

教室をのぞいてみれば生徒たちがいっせいに立ち上がり、「ようこそお越しくださいました! いらっしゃいませ! 私たちは日本の技術を学びたいです! 一生懸命がんばります!」 などと、日本語で声を合わせて唱和する。

 

(中略)校内を回った一行が、校長室や応接室で次に見せられるのは、山のような日本語検定の合格証の束だ。日本語能力試験(JLPT)、日本語NAT-TEST……どれも高得点で生徒たちの優秀さをアピールするが、

 

(中略)偽造である。ろくに日本語を教えず、書類だけ偽造している送り出し機関が多いのだが、それに気づかず企業の担当者はいたく感心して宿泊先のホテルへと案内される。そこにベトナムの美女たちが待っているのもよくある手口だ。

 

「好きな子を選んでください」と迫られ、きっぱり断れる企業担当者はあまりいないという。こうして夕食まで2時間ほど、計算されたように空いた時間を部屋で楽しむことになる。その後の夕食や飲みの席は、女性がかいがいしく担当者を世話する。

 

「うちはひとりアタマ月500円でいいですよ」

(中略)実習生を受け入れる企業は、監理費という形で、実習生ひとり当たり毎月2〜5万円を組合に払う必要がある。このうち一部は送り出し機関にも還流されていく。もちろん話を仲介したブローカーも「分け前」にあずかるのだが、

「うちはひとりアタマ月500円でいいですよ」 などと、極めて良心的なことを言う。監理費や、実習生来日後の研修費などを含めても、日本人を雇うよりはるかに安い。

 

こうして大満足の視察を終えた担当者は、社長に報告をするのだ。ベトナム人は失踪や犯罪のイメージがあるかもしれないが、私が行った学校の生徒はとても優秀であいさつもしっかりしていて、費用も安いし……。

 

「じゃあ、20人ばかり入れてみるか」 こうして、送り出し機関とブローカーの巧みな連携で、日本語能力の低い実習生たちが次々と入国してくることになる。

 

親の土地や田畑を担保に借金を負う実習生たち

ブローカーはもちろん、実習生ひとり当たり月500円の利益で満足しているわけではない。

 

ベトナム人実習生が日本に旅立つまでの費用は、健全な送り出し機関の場合60〜70万円といわれる。日本語学習や、そのための寮生活、食費、パスポートの取得代金、役所での書類手続きといった費用だ。ちなみにインドネシアやラオスの場合は30万円ほど、ネパールは50万円前後といわれる。物価や、その国の役所の「取り分」によってもさまざまだ。

 

しかしベトナムでブローカーが絡んだ場合、その額におよそ80〜100万円が上乗せされて、送り出し機関から実習生へと請求される。

 

「実習生を目指すのはほとんどが、地方の農村の子たちです。もちろんそんなお金は払えない。そこで借金ということになるのですが、送り出し機関を経営するベトナム人は、元銀行員など金融関連の職歴を持った人が多いのです」(Tさん)

 

彼らのツテでブローカーの利益も含めた150〜200万円ほどの借金を負うことになるのだが、その場合に担保となるのは実習生の実家の土地や家、田畑、それに両親の生命保険だ。

 

「加えて高額な金利が課されます。まともな送り出し機関であれば年利5%ほどですが、悪質な送り出し機関は20%を超える年利を要求してくる」(Tさん)

 

ほかに借りる当てもないし、そもそも地方の農村で暮らしていた実習生もその家族も、あまり知識を持ち合わせていない。スマホは持っていてもSNSと動画サイトくらいで、なにかを検索して調べようというリテラシーにも乏しい。

 

そういう層にあえて営業をかけて「人買い」をしているわけだが、そのため実習生も「なにかおかしい」と薄々感じていながらも、借金の契約を交わしてしまえばもう日本へ行くしかなくなる。

 

失踪、犯罪へと追い込む仕組み

ベトナム人実習生を受け入れた担当者は、はじめの1か月ほどは彼らの真面目な働きぶりに安心して、胸をなでおろすのだ。

 

ところが、2か月目には休みがちになる。無断欠勤が目立つようになる。3か月も経つとそれが常態化し、パチンコを覚えて入り浸る者も出てくる。やがて寮の部屋はもぬけの殻となり、失踪してしまう。典型的なパターンだが、実習生は担当者の陰で送り出し機関の金利がどれほどにきついものか、日本で働き返済を始めてようやく気がつき、絶望するのだ。

 

もちろん日本側の企業が、残業代の不払いや寮費のピンハネなどあの手この手で最低賃金の実習生を食い物にしている実態もあるのだが、加えて送り出し機関の金利が彼らを圧迫する。これはちょっと返せないと感じ、無気力になり、労働意欲を失う。逃亡する。

 

焦った担当者は送り出し機関の窓口ともなっているブローカーに連絡をするが、親切だった態度は一変し、

「うちは500円しかもらってないんですよ。それでどうしろって言うんですか。それより、まだまだ生徒はいますから、次の入れましょうよ。何人ですか」 とあしらわれるのだ。

 

それならこちらは組合や警察、入管にも相談をすると返すと、スマホに送られてくるのは、あのとき一夜をともにしたベトナム女性との密会の様子、いわゆる「ハメ撮り」の写真だ。

 

愕然とした担当者は、社長や組合、入管に頭を下げ、自分の管理不行き届きだと謝罪し、話はうやむやとなり、もうベトナム人は懲り懲りだ、となる。ブローカーや送り出し機関に累が及ぶことはない。(中略)

 

借金を背負った実習生のリストが出回っている

実習生たちは、あてもなく逃げるわけではない。

 

日本で知り合ったベトナム人や、同じ元実習生に誘われて、さまざまな仕事に就いていく。在留カードを偽造して、ベトナム人経営の会社に潜り込んでいるケースもあるし、いま問題になっているように窃盗団や薬物売買の組織に取り込まれることもある。

 

というのも、実習生が日本に着いたときから、いやベトナムで借金をしたときからすでに「これだけの額を借りている人間が、この県のこの会社で来月から働く」といった情報、リストが出回るのだ。これは送り出し機関のベトナム人から、日本に住みグレーあるいはブラックな仕事をしているベトナム人に流され、活用される。

 

「来日間もないうちから、金利と低待遇にあえぐ実習生に近づき、親密になるベトナム人が必ずいるものです。仕事を放棄し、失踪する実習生はほとんど、こうした連中の誘いに乗ったものです」(Tさん)

 

借金を背負わされ、犯罪へと追い立てられ、分かり切った結末に追い込まれていく。ベトナム人の犯罪が多発している要因はここにある。その絵図を描いているのは同胞のベトナム人と、実習生を奴隷としか見ていない日本人だ。

 

自らを搾取した送り出し機関に就職する実習生も

「ベトナムには300〜400の送り出し機関があると言われますが、そのうち半数くらいは悪質なブローカーが関与しているように思います」(Tさん)

 

こうした厳しい搾取を乗り越えて、借金を返済し、3年間の技能実習を無事に終えて帰国する優秀なベトナム人もいる。日本語や日本で学んだ技術を活かしてステップアップしていくケースもあるのだが、「目立つのは送り出し機関に就職するパターンです」(Tさん)

 

今度は自分が流暢な日本語で、日本の中小企業の人事担当者を出迎える立場になるのだ。借金を背負わされた側が、借金を背負わせる側へと回る。そんな負のスパイラルがある。

 

技能実習制度という制度そのものを根本から見直し、悪質な送り出し機関やブローカーを排除する仕組みを作る必要がある。でなければ、ベトナム人による犯罪が日本ではこれからも増えるし、搾取されるベトナム人も減ることはないだろう。【11月22日 室橋 裕和氏 文春オンライン】

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中国の「日本街」 両国民感情・相互理解の改善に資するなら「いいんじゃない?」

2020-11-22 22:27:49 | 中国

(【9月28日 Searchina】 オープン直後の広東省佛山市の「日本街」)

 

【悪化した日本の対中国感情 中国側の対日本感情には大きな変化なく、改善貴重維持か】

新型コロナによって日中間も国民レベルの往来が途絶えていますが、相手国に対する国民の好感度は、日本の対中国が尖閣諸島周辺の問題もあって悪化したのに対し、中国側の対日本はあまり変化しておらず、依然「改善基調」にあるとも考えられます。

 

****中国の対日感情が改善基調 日本の対中感情は悪いまま 言論NPO世論調査****

非営利団体「言論NPO」(工藤泰志代表)と中国国際出版集団は17日、第16回日中共同世論調査の結果を発表した。

 

相手国の印象が「良くない」(「どちらかと言えば」を含む、以下同じ)との回答は、日本側が89・7%で昨年の前回調査から5ポイント増えた。中国側は同0・2ポイント増の52・9%だった。

 

日本で対中感情は依然悪いままだが、中国での対日感情は改善基調にあり、日中間の温度差が浮き彫りになった。

 

印象が良くない理由を複数回答で尋ねたところ、日本側の最多は「尖閣諸島周辺の領海・領空をたびたび侵犯しているから」の57・4%で、中国側は「侵略した歴史をきちんと謝罪し反省していないから」の74・1%だった。

 

相手国の印象が「良い」との答えは、日本側が10%で過去4番目の低さだったが、中国側はほぼ横ばいの45・2%だった。

 

軍事的脅威を感じる国・地域の回答は変化が見られた。中国側では前回調査で日本が最多の75・3%だったが、今回は47・9%と大幅に減少。米国が84・1%で最多になり、米中対立が影響した可能性がある。日本では中国が63・4%で前回より5・6ポイント増えた。

 

調査は9月12日〜10月16日、日中両国の18歳以上の男女を対象に実施。日本は1000人、中国は1571人が回答した。【11月17日 毎日】

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【広東省佛山市の「日本街」に当局が改善命令 日本側の批判が原因とも】

中国国民の日本に対する関心の高さをうかがわせるニュースは多々ありますが、その一つが、中国に出現した「日本街」

 

日本の街を模した「日本街」はいくつかあるようですが、日本で話題になったのは広東省佛山市の「日本街」。

 

日本に対する関心が高い、近年日本社会へのいろんな面での評価が高くなっている、コロナ以前は日本への旅行者が急増し、日本への印象もかなり良い・・・とは言っても、難しい歴史問題も抱えている日中ですから、そんな「日本街」を大ぴらに作って大丈夫なのか?という疑問も。

 

広東省佛山市の「日本街」対しては、当局の改善命令が出されています。「やはり・・・」といった感も。

 

****広東省の「日本街」に改善命令 看板の撤去が命じられる=中国****

中国各地で「日本街」が誕生しており、中国のSNSでも「日本街」で撮った写真が話題を集めている。そんな中、広東省に最近誕生した「日本街」にオープンから二カ月ほどで動きがあったようだ。

テンセントに掲載された記事はまず、広東省佛山市の「日本街」のオープン直後の状況について取り上げている。

 

「一番街」と命名された通りに、日本の映画館やダンスホールやレストランを模倣したと思われる看板がところ狭しと並んでいる。店名もユニークで「毛利探偵事務所」や「藤原とうふ店」など、中国でも人気の日本のアニメ作品を模倣したと思われる表示が並んでいる。

 

また、実物の日本のタクシーが道路に駐車されており、日本の公衆電話などもある。こうした「日本街」の外観がアニメ好きの若者の人気を集め、SNSを中心に瞬く間に広がり、話題となっていた。

ところが、オープンからわずか二カ月後、この街に対し「改善命令」が出された。日本のアニメなどを単に模倣した看板や店名などを全て変えるようにと当局から指示が出たのだ。「一番街」という通りの名前すらも変えるように指示され、すでに「一番街」の看板には覆いがかけられている。

こうした当局による動きに対し、中国メディアは「ネットでは、世界中に中国を模倣した“中華街”が多数あるのに、なぜ“日本街”だけが目の敵にされるのか理解できない」と不満の声が上がっている。

 

「日本文化が好きな人々が中国に相当数いる中、日本街が中国各地で誕生することは不思議ではない」とまとめている。【11月20日 Searchina】

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当局が「改善」に動いたきっかけは、日本側の中国嫌いかつ偏狭なネット民が騒いだことにあるとの指摘も。

もし、そういう話なら、下記記事表題にもあるように、せっかくの日中交流の機会を潰してしまった「残念」なことと言うしかありません。

 

****残念・・・日本で取り沙汰されたことで崩壊した「日本一番街」=中国メディア****

中国のポータルサイト・百度に18日、「広東省仏山市に登場したネットの人気スポットが、日本メディアに取り上げられたことで潰れてしまった」とする記事が掲載された。

記事は、現在中国では「網紅経済」が盛んになっており、各地で写真や動画を撮影してSNS上に掲載するための人気ストリート、人気スポットが続々と誕生していると紹介。

 

香港の古い町並みを再現した通りや、ドイツ、イタリアの伝統的な欧州建築を模した場所などに人気が集まり、多くの男女がやってきては写真を撮る様子を日常的に見かけるとした。

そして、広東省仏山市に出現して短期間のうちに注目を集めた「日本一番街」もその一つであると説明。全長200メートルほどの短い通りの全体が日本風の装飾で埋め尽くされており、道路標識やバス停、ポストなど細部にまでこだわって再現されていたことから多くの若者、日本のマンガ・アニメファン、コスプレ愛好家が続々と現地を訪れていた紹介した。

一方で「有名になると面倒なことになる」とし、「日本一番街」が日本のメディアによって大きく紹介されると、日本のSNS上では「版権の侵害だ」「中国人によるパクリだ」などと批判が噴出、オープンしてしてわずか2カ月余りで通りの「改造」を余儀なくされ、日本の繁華街を模した看板や造形物が撤去されたり、覆い隠されたりして、日本テイストが瞬時のうちに消えてしまったと伝えている。

記事はその上で、多くの中国のネットユーザーがこの件について「日本文化が中国でも人気があることを示すものであり、非難するほどのことではないじゃないか」と不満をこぼしたとした。



「日本一番街」が取り沙汰されたのは、看板などに日本のマンガ・アニメ作品のタイトルや決め台詞が書かれていたことによる版権の問題が大きいと思われる。

 

では、もし「日本一番街」に版権を巡る議論が起きるような文言が並んでいなかったら、問題視されなかっただろうか。それでも日本のSNS上では「日本の街をパクった」と茶化し、非難する声が大きかったかもしれない。

 

今回の「日本一番街」を巡る日本の報道は、「中国人がまた変なもの、怪しいものを作った」という視点に終始した印象を覚える。

 

中国で版権や著作権に対する意識がまだまだ浅いことは否定できず、「ダメなものはダメ」と言う必要があることはもちろんだが、同時に「これだけ多くの中国の若者が、日本の街や文化に興味を持ってくれている」と考えることも大切なのではないだろうか。

昨今、中国では「日本街」や「和服」が歴史問題に絡んで激しい非難を受けるケースがしばしば生じている。そんな中でも、「いいものはいい」と日本の文化に親しみ、「推し」てくれている人たちを大事にすべきだろう。【11月20日 Searchina】

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日本側の反応は「ケツの穴が小さい」感じも。

 

【両国民の理解・親近感を深めるものとして「いいんじゃない?」】

上記の広東省仏山市「日本街」に改善命令が出たことで、日本との微妙な関係を踏まえて、他の「日本街」、例えば蘇州のものなどがどうなるのかも話題になっています。

 

日本を模するなんてけしからんという声もあるようですが、中国メディアには「いいんじゃないか?」という論調もあるようです。

 

****中国の「日本街」 文化交流のためなら何の問題もない!=中国メディア****

SNSなどを中心に中国各地の「日本街」が話題になっている。さらに、広東省の「日本街」には当局による「改善命令」などが出され、ネット上でも論議を呼んでいる。

 

こうした状況を受けて、中国メディアの百度は、「蘇州の“日本街”は文化交流のため? それとも歴史を忘れてしまったから?」と題する記事で「日本街」を擁護する記事を掲載している。

 

記事は、蘇州にある「日本街」について取り上げている。この日本街はもともと蘇州駐在の日本人向けに造られた。その後、ネットを中心に人気になり、まるで日本のような景観から「日本街」と呼ばれるようになった。

 

最近では、この場所で浴衣や下駄をはいたコスプレをして写真を撮る若者が表れ始め、話題になっている。さらに、最近こうした「日本街」に対し批判的な声が上がっている。

 

記者もこの日本街に行ったことがあるようで、「日本風の居酒屋や焼き鳥屋の看板が並ぶこの通りを歩いていると、まるで大阪にいるような錯覚を覚える。しかも、着物のコスプレをした男女が歩いているのを見ると、何とも言えない不思議な気持ちになる」と、この蘇州の日本街に対して肯定的なコメントを述べている。

 

さらに、この「日本街」に対して批判的な意見があることにも触れつつ、記者は「海外の文化を理解することは何も悪いことではない。中には、日本と中国の歴史を忘れてしまったのか、との声も上がっている。でも、そういう人たちは現在中国で毎年ハロウィンやクリスマスが行われていることを忘れてしまったのだろうか。問題なのは、海外の文化によって、自国の文化が失われ、踏みにじられてしまうこと」と述べている。

 

つまり、「中国の文化を第一にし、他の国の文化も知るような姿勢があるなら、“日本街”は何の問題もない」との意見を掲載している。【11月21日 Searchina】

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****騒動呼んだ蘇州の「日本街」、文化交流の観点から見れば決して悪いものではない=中国メディア****

(中略)一方で、より「日本化」したこの街が注目を集めると同時に、その是非を巡る議論も巻き起こったとし、多くのネットユーザーが「日中間には忘れ得ぬ歴史があるのに、国内にこのような日本テイストに満ちた通りを作るというのは、風刺以外の何物でもない」との認識を示していることを伝えた。

記事は、「日本街は文化の交流か、はたまた悲痛な歴史の忘却なのか」とした上で、文化交流の観点から見れば、日本に行ったことがない中国人が日本を知り見識を深めることができる場所であり、決して悪いことではないとしつつ、「革命烈士に対するリスペクトに欠ける」との意見もあると紹介。

 

その是非については一概に決めることはできず、それぞれの考え方があって然るべきだとする一方で、「外国の文化を学ぼうとする姿勢は悪くない。ただ、1人の中国人として、われわれはまず自国の文化を一番として認識する態度を持つべきではないだろうか」との考えを示している。【11月22日 Searchina】

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せっかくなら、日本資本で、本当の日本を感じられる「日本街」を作れれば、そこで多くの中国人が遊び、日本的なものへの理解・親しみが増すような「街」が出来たら一番いいと私は思うのですが。

 

 

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アゼルバイジャン・アルメニアの停戦 係争地の帰属も住民の遺恨も将来に持ち越し

2020-11-21 23:20:23 | 欧州情勢

(14日、引き渡しが決まったアルメニアの実効支配地で燃え上がる住宅。退去する住民らが自宅に火を放っている=AFP時事【11月20日 朝日】)

 

【プーチン大統領 最終的な帰属は将来の指導者で】

ナゴルノ・カラバフ地域の支配圏をめぐる(ロシアと同盟関係にある)アルメニアと(トルコが支援する)アゼルバイジャンの争いが、アゼルバイジャンの「実質的勝利」で“とりあえず”停戦したことは報道のとおり。

 

ただ、アルメニア人が居住するアルメニア側の支配地域は依然として残存しており、その帰属が明確になった訳でもありません。

 

****ナゴルノの帰属、確定を先送り 紛争仲介のロシア大統領****

ロシアのプーチン大統領は17日、係争地ナゴルノカラバフを巡るアゼルバイジャンとアルメニアの停戦合意に絡み、ナゴルノカラバフの帰属を巡る最終的な地位を確定するのは将来の指導者だとし、現時点では「現状維持」で合意したと語った。国営ニュース専門テレビ「ロシア24」のインタビューで述べた。

 

プーチン氏は9日にロシアを交えた3カ国合意を仲介した。合意では停戦のほか、一部アルメニア占領地のアゼルバイジャンへの引き渡しや、ロシア軍の平和維持部隊派遣が盛り込まれたが、ナゴルノカラバフの帰属には触れていなかった。【11月18日 共同】

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プーチン大統領は“アゼルバイジャンとアルメニアの関係修復に向けた環境づくりが紛争地帯を中心に進めば、帰属問題の解決に向けた環境も整っていくと訴えた。”【11月18日 時事】とのことですが、かなり絵空事にも似た響きも。

 

【ロシアがなぜ介入しなかったのか?】

今回の紛争に関しては、「ロシアがなぜ介入しなかったのか?」という疑問も。

ロシアは、アルメニア本土が攻撃されれば同盟国として介入・防衛するが、ナゴルノ・カラバフ地域はその対象外だとの立場をとっています。

 

****ロシアはなぜ積極的に介入しなかったのか?*****

ナゴルノ・カラバフ紛争をめぐっては、90年代の衝突と今回ではロシアの立ち位置が変化したように見える。90年代はアルメニアを積極的に支援。

 

廣瀬さん(コーカサス情勢に詳しい慶應義塾大学・総合政策学部の廣瀬陽子教授)は「ロシアがアルメニアを支援したことが大きな原因となってアゼルバイジャンは負けた」と指摘する。

 

 

「90年代の紛争の時期に2代目大統領に就任したアゼルバイジャンのエルチベイは、徹底的な反ロシアの姿勢を貫き、それがロシアの反発を引き起こして、ロシアのアルメニア支援を決定的にしたという経緯がありました」

 

しかし、今回の紛争に関してはロシアが積極的に介入した形跡はみられない。実は近年、アゼルバイジャンとロシアの関係は大きく改善されてきているという。

 

廣瀬さんはその要因の一つとして「中国の台頭」を挙げた。

「ロシアとしても、アゼルバイジャンと友好関係を維持しておかないと中国の台頭に耐えられないという事情もあるんです。

 

中国は、一帯一路で中央アジアを含めてユーラシアを席巻していますが、それに対抗するために、ロシアはアゼルバイジャン〜イランを経由してインドに繋げる『南北輸送回廊』で対抗しようとしています。

 

ロシアにとってもアゼルバイジャンはすごく重要で、敵に回せない。アゼルバイジャンも今だったらロシアが武力介入しないという自信があったんでしょう」

このようにロシアはアゼルバイジャンと関係を回復した。一方で、同盟国であるアルメニアとの関係は険悪になっているという。

 

「両国は集団安全保障条約(CSTO)を結んでいるので、今回の紛争でロシアが参戦してもいいくらいでしたが、ロシアはかたくなに『アルメニア領で戦闘にならない限りは関与しない』と明言していました。

 

ロシアはパシニャン首相を『いつかジョージアみたいに親欧米になるんじゃないか?』と疑いの目で見ていたからです。パシニャン首相になってから、逆にアゼルバイジャンとロシアの関係が深まっていました」【11月21日 HUFFPOST】

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上記の「中国の影」を警戒したということもあるでしょうが、もうひとつは、やはり「トルコの影」でしょう。

“アゼルバイジャンを軍事支援するトルコとの直接衝突を警戒した。”【11月11日 産経】

 

中国の影響拡大、トルコとの直接衝突・・・といったリスクを考えれば、敢えて今、アルメニアを支援する火中の栗を拾うこともないとの判断でしょう。

 

当然ながら、切り捨てられたような形のアルメニア側には恨みも残ります。

 

【アゼルバイジャンは、どうして最終決着をつけずに停戦に応じたのか?】

もう一つの疑問は、「軍事的に優勢だったアゼルバイジャンが、どうして最終決着をつけずに停戦に応じたのか?」ということ。

 

上記地図でざっと見た感じでは、ナゴルノ・カラバフ地域の3分の2程度がアゼルバイジャン側にわたり、アルメニアに残るのは3分の1程度といったところでしょうか。

 

前出廣瀬氏は、問題を残した形にする方が権威主義体制アゼルバイジャン指導部には都合がよかった・・・と指摘しています。

 

****アゼルバイジャンにとって「戦争が完全に終わらない」方が都合がいい?****

11月10日の完全停戦の結果、古都シュシャを含む「ナゴルノ・カラバフ共和国」の実効支配地域の多くをアゼルバイジャンが奪還することになった。

 

廣瀬さんは、アルメニアにとって「間違いなく事実上の敗北」と指摘。その一方で、アゼルバイジャンとロシアにとっては望ましい結果になったという。

 

「アゼルバイジャンにとっては、全占拠地の奪還は成らなかったとはいえ、おそらく目標の多くを達成して、非常にいい形で終わったのだと思います。アルメニアは苦々しい気持ちしかないとは思いますが……。ロシアとしても望ましい結論でした。というのはナゴルノ・カラバフにロシアの平和維持部隊を置いて、アゼルバイジャンとアルメニア両国に睨みを効かせることができるようになったからです」

  

(中略)しかし、アゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフ全域を攻め落とすのではなく、アゼルバイジャン人の「心のふるさと」とされるシュシャを落とした段階で、矛を収めたのはなぜだろうか。廣瀬さんは「完全解決しない方が、アゼルバイジャンにとっても都合がいい」と指摘する。

 

「確たる証拠はありませんが、今回の紛争再燃でのアゼルバイジャン首脳陣の目的は、シュシャという『シンボリックなところを奪還する』ことであり、『ナゴルノ・カラバフ問題の全面解決』は目的ではなかったと、私は推測しています。

 

アゼルバイジャンの権威主義体制は国民を抑圧する側面があるため、不満がたまりやすい。同じく権威主義のベラルーシでは最近、国民の不満が高まって抗議行動が起きており、アゼルバイジャンも他人事ではありません。

 

でも、国民の不満をガス抜きできると政府への不満は起きない。常に国民の不満を振り向ける対象があると、権威主義は維持しやすいんです。そういった意味では『アルメニアとの戦争状態』というのはアゼルバイジャン政府にとって都合がいいんです」【前出HUFFPOST】

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素人考えでは、上記のような事情で介入しなかったロシアですが、さすがにナゴルノ・カラバフ全域をアゼルバイジャンが支配するという事態は受け入れがたく、「そこでやめておけ。それ以上やるならロシアとしても・・・・」と凄んだのでは・・・と考えてしまいます。

 

ロシアとしても、これ以上トルコの影響力がこの地域で増す事態は避けたかったでしょうから。

 

アゼルバイジャンにナゴルノ・カラバフ全域を回復しようという意図があったのか、シュシャ奪還が当初からの目標だったのか・・・そのあたりはわかりません。

 

【影響力を増すトルコ エルドアン大統「ロシアとともに停戦監視の役割を担う」と軍派遣】

いずれにしても、トルコは今回紛争の一方の当事者でもあった訳ですが、停戦合意については、その存在は明確にされていません。

 

明確にされていませんが、実質的には、ロシアと共同でこの地域を管理するつもりのようです。

 

****ナゴルノ紛争、和平に暗雲 トルコ、アゼルバイジャンへの派兵承認****

アルメニアが実効支配するアゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフ地域をめぐる紛争で、トルコがアゼルバイジャンへの軍派遣に動き始めた。

 

現地では44日間の軍事衝突の末に停戦合意が発効したばかり。派兵は停戦監視にあたるロシア軍との「共同活動」を目的とするが、関係国の警戒心は強い。支配地の多くを失うアルメニアの混乱も続き、和平は見通せなくなっている。

 

「停戦合意は重要だ。だが、あいまいさは取り払わなければならない」

フランスのルドリアン外相は17日、議会でこう語り、合意を仲介したロシアに対し、停戦でトルコが果たす役割について説明を求める考えを強調した。フランスはロシア、米国とともに1990年代から続く和平協議の共同議長国だ。

 

停戦合意が発効したのは10日。その翌日、トルコのエルドアン大統領は与党の会議で「ロシアとともに停戦監視の役割を担う」と発言した。

 

停戦合意は、アルメニアがナゴルノ・カラバフ地域の一部を残し、90年代から支配してきた周辺地域をアゼルバイジャンに引き渡すとする。ロシア軍が停戦監視を担うことも決まった。

 

だが、発表された和平合意の声明にトルコに関する記述はない。関係国に疑心が広がったのは、直後にエルドアン氏とロシアのプーチン大統領が電話協議し、トルコ側が両国による停戦監視のための「共同センター」設置が決まったと発表したからだ。

 

トルコ議会は17日、期限を1年とするアゼルバイジャンへの軍派遣を承認した。

 

9月末の衝突開始以来、エルドアン氏はアゼルバイジャンの軍事行動を支援する発言を繰り返してきた。トルコとアルメニアの間には第1次世界大戦中のアルメニア人迫害をめぐる歴史論争があり、アルメニア系住民が暮らすナゴルノ・カラバフ付近でトルコ軍が活動すればアルメニアを刺激するのは必至だ。

 

ロシアもトルコとの「共同センター」設置の合意は認めている。プーチン氏は17日夜に国営テレビで「アゼルバイジャンの要請だった」と明かした。ただ、活動内容はあいまいで、センターの場所やトルコ軍の派遣規模は不明なままだ。

 

停戦合意の直前、アゼルバイジャン軍はナゴルノ・カラバフ第2の都市シュシャを制圧。事態が緊迫する中、ロシアはアゼルバイジャンを支えるトルコの納得を得るため、停戦交渉の枠外で妥協を強いられた可能性がある。

 

■譲歩のアルメニア、国政混乱

ナゴルノ・カラバフ紛争は旧ソ連時代の1980年代末、アゼルバイジャン当局とアルメニア系住民の衝突で始まり、94年にロシアの仲介でいったん停戦が成立した。

 

その後アゼルバイジャンとの結び付きが強いトルコの台頭で地域情勢は変化。トルコ外交に詳しいカディル・ハス大(トルコ)のソリ・オゼル講師は「南コーカサスに影響力を持つことで、周辺地域でもトルコの発言力が高まる可能性がある」と話す。

 

今回の停戦合意を受け、米国、フランスの代表は18日、モスクワでロシアのラブロフ外相と会談。3国は和平協議を再開する構えだ。91年に独立宣言したナゴルノ・カラバフの地位問題が最大の焦点だが、アゼルバイジャンとトルコは「トルコにはこの地域の紛争解決で、さらに大きな役割が与えられるべきだ」(アリエフ・アゼルバイジャン大統領)と要求しており、協議の難航は避けられない。

 

一方、アルメニア側からアゼルバイジャンへの引き渡しが決まった周辺地域では、アルメニア系住民の退去が始まった。一部の住民らはアゼルバイジャン側に接収されるのを嫌い、自宅に放火した。

 

停戦合意で大幅な譲歩を強いられたアルメニアでは国内で政治の混乱も続く。

 

合意に署名したパシニャン首相に対する野党の辞任要求に加え、政権内に離反の動きも。外相や緊急事態相が相次ぎ辞任し、議会で過半数を維持する与党からも一部議員が離脱した。サルキシャン大統領は議会の解散、前倒し選挙は避けられないとの考えを示した。【11月20日 朝日】

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【「領土問題は軍事力・戦争で解決できる」という「先例」】

今回紛争の最大の問題は、「領土問題は軍事力・戦争で解決できる」という「先例」をつくってしまったことでしょう。

 

****「領土問題は戦争で解決できるという先例になりかねない」 ナゴルノ・カラバフ紛争に専門家が警鐘****

(中略)

■ナゴルノ・カラバフ紛争をどうみるべきか?

いくら日本とは縁が薄い地域とはいえ、21世紀になって国同士が武力衝突で領土の奪い合いをしている状況を放置していていいのだろうか。

 

廣瀬さん(コーカサス情勢に詳しい慶應義塾大学・総合政策学部の廣瀬陽子教授)も「戦争で奪われた領土を戦争で取り返すというのは中世や帝国主義の考え方」と批判する。

 

2国間で武力による領土の奪い合いが起きているのに、国際社会のほとんどの国が距離を置いてみていたという現実をどう感じているだろうか。

 

「決して、いい終わり方じゃないですよね。不当に領土を取られた国がある戦争を30年近く国際社会が放置したことが一番良くないと思います。そこで両方が納得行くような解決を、早めに国際社会が導いていれば、今回のことは起きなかったと思うんです」

 

その上で、廣瀬さんは「未承認国家は平和な状態ではない」と強調した。「ナゴルノ・カラバフ共和国」という未承認国家を28年間に渡って国際社会が放置してきた結果、多くの死者が出る紛争に繋がったという見解を示した。

 

「今回の件は悪い先例になりかねなくて『取られた領土は戦争で奪還できるんだ』という認識が世界に広まると、似たようなことが各地で次々に起きると思うんですよ。これが先例になってしまうと、今後はすごい問題になる。そういう意味でも、私は警鐘を鳴らしたいですし、国際社会は身を持って反省すべきだと考えています」【11月21日 HUFFPOST】

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【将来に持ち越された遺恨】

アゼルバイジャンの支配下に入る地域からはアルメニア人が避難していますが、その際に自宅に自ら火をつけて、アゼルバイジャン側には何も残さない・・・ということのようです。

 

****自宅燃やしてアルメニアに避難、ナゴルノカラバフ紛争****

アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフの外側に位置するキャルバジャル地域は14日、両国の停戦合意によってアゼルバイジャンの支配下に置かれることになったことを受け、住民らがアルメニアへの避難を前に自宅に火を付けた。

 

数十年にわたりアルメニア側が支配してきたキャルバジャル地域では、15日からアゼルバイジャンの支配下に置かれるとの発表を受け、大勢の住民が集団脱出を始めた。

 

現場のAFP記者が目撃したところによると、キャルバジャル地域の村で、アルメニア側に残るマルタケルトと接するチャレクタルでは14日朝、少なくとも6軒の民家に火が放たれ、谷の上空に濃い煙が立ち上った。

 

ある住民は、空っぽになった家の中に燃える木の板やガソリンで濡らしたぼろ切れを投げながら「これは私の家だ。この家をトゥルク(アルメニア人がアゼルバイジャン人に使う呼称)に残すことはできない」「すべての住民がきょう、自分たちの家を燃やすつもりだ。私たちは深夜までに離れることになっている」と語った。

 

「私たちは両親の墓も移動させた。アゼルバイジャン人たちはわれわれの墓を汚すことに喜びを感じるだろう。それには耐えられない」

 

前日の13日にはチャレクタルやその周辺で、少なくとも10軒の民家が焼かれた。

 

かつてキャルバジャルには、ほぼアゼルバイジャン民族のみが住んでいたが、旧ソ連解体後の1990年代に起きた戦争でアルメニア人らから追放され、当初アゼルバイジャン人が所有していた家の多くが焼かれた。

 

■死者4000人以上とプーチン大統領

アルメニアは14日、9月下旬から6週間続いた今回の軍事衝突によるアルメニア側の戦死者は前回の公式発表より1000人近く多い2317人になったと発表した。アゼルバイジャン側は戦死者数を発表していない。

 

しかしロシアのウラジーミル・プーチン大統領は13日、今回の軍事衝突による死者は4000人を超えており、数万人が避難を強いられたと述べた。 【11月15日 AFP】

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プーチン大統領は「ナゴルノカラバフの帰属を巡る最終的な地位を確定するのは将来の指導者だ」と発言していますが、住民相互の遺恨も将来に持ち越された形です。

 

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新型コロナ  WHO「この山は、ワクチンなしで登らなければならない」 

2020-11-20 22:34:20 | 疾病・保健衛生

(“サイゼリヤは、食事用マスク「しゃべれるくん」を開発した。客自身のマスクと、備え付けの紙ナプキンを使ってその場で作るもので、紙ナプキンが口元を覆うため、会話しながら食事をしても感染リスクを抑えることができるという。”【8月7日 Impress Watch】 要するにマスクで紙ナプキンを止めただけのもののようです。

片手に団扇みたいな手持ちマスクを持っていて、しゃべるときはそれを口の前に・・・という方が実用的な気もしますが)

 

【WHO「現在の感染の波は、ワクチンなしで耐え抜くことになるだろう。」】

日本は新型コロナ第3波に襲われて、GO TOをどうするか、会食中も食べるとき以外はマスクを、我慢の三連休を・・・等々が論じられていますが、そうした中で将来への希望となっているのがワクチン開発。

 

ファイザーのワクチンは、高齢者でも有効率が94%を超えたとか。

 

****米ファイザー、コロナワクチン有効率95%確認 近く緊急使用申請****

米製薬大手ファイザー<PFE.N>は18日、独バイオ医薬ベンチャーのビオンテック<BNTX.O><22UAy.F>と共同開発する新型コロナウイルス感染症ワクチンの臨床試験(治験)で95%の有効率が確認されたとする最終結果を発表した。

ファイザーは2カ月分の安全データもそろっているとしており、数日以内に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する可能性がある。

ファイザーとビオンテックが開発するワクチン「BNT162b2」はメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくもの。遺伝子を人工的に合成するため、短期間で大量のワクチンを製造できる利点がある。ファイザーは今月9日、同ワクチンの有効率が90%を超えたと発表していた。

ファイザーによると、4万3000人を超える治験参加者のうち、170人が新型ウイルス感染症(COVID−19)に感染。感染者のうちワクチンの接種を受けていたのは8人にとどまり、残りはプラセボ(偽薬)の接種を受けていた。このことから、有効率が95%だったと確認されたとした。

また、感染して重症となった被験者10人のうち、プラセボではなくワクチンの接種を受けていたのは1人のみだった。

リスクが高いとされる65歳以上の年齢層でも有効率は94%を超え、ファイザーはワクチンの効果は人種や年齢を問わず一様だったとしている。

副作用については、おおむね軽度ですぐに解消したと報告。ワクチン接種を受けた被験者の2%超が疲労感を訴えたとした。

ファイザーは、米FDAのワクチン委員会が12月にも開かれるとみられる会合で今回のデータを検証するとの見通しを示した。ファイザーとビオンテックは世界中の保健当局にデータを提出するとともに、査読(ピアレビュー)を受けた論文を科学誌に提出するとしている。【11月18日 ロイター】

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アメリカのバイオ医薬品メーカー「モデルナ」も16日、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験で94.5%の有効性が確認されたと発表しました。

 

“モデルナのワクチンは通常の冷蔵庫の庫内の温度である2─8度で30日間の保存が可能。マイナス20度では最大6カ月の保存が可能になる。ファイザーのワクチンはマイナス70度と、超低温での保存が必要。”【11月16日 ロイター】

 

トンネルの向こうに光が・・・・といったところですが、実際にワクチンが戦力となるのはしばらく先。

 

****WHO「現在の波はワクチンなしで耐えて」発売は来春か****

新型コロナウイルスのワクチンについて、世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者マイク・ライアン氏は18日、ソーシャルメディア上での質疑応答で、「多くの国が経験している現在の感染の波は、ワクチンなしで耐え抜くことになるだろう。この山は、ワクチンなしで登らなければならない」と語った。

 

ライアン氏は「春になればワクチンが発売され、追加の強力な武器を手にすることになるだろう」との見通しを示した。そのうえで「ワクチンが魔法の解決策だと考える人もいるが、そうではない。ワクチンだけに頼って他の抑止策を忘れたら、ウイルスはゼロにならない」と強調した。

 

ワクチンをめぐっては、米企業のファイザーやモデルナが今週相次いで、大規模な最終治験の暫定結果として9割以上の高い効果を確認したと発表した。早期の実用化に期待が高まっているが、ライアン氏の発言は過度な期待を抑制する形となった。【11月19日 朝日】

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ワクチンへの過剰の期待を戒める発言は、WHOの他の高官からも。

 

****マスク使用95%で封鎖回避、ワクチンは特効薬でない=WHO高官****

 世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は19日、欧州における新型コロナウイルスの感染拡大について、マスクの着用を徹底することなどで新たなロックダウン(都市封鎖)は回避可能との考えを示した。

クルーゲ氏はコペンハーゲンから記者会見し、欧州では過去1週間だけで新型コロナ感染による死者が2万9000人を超えており、一部で医療体制がひっ迫していると述べた。

同氏は、「欧州は米国とともに、再び感染の震源となっている。トンネルの向こうには光があるが、今後6カ月は厳しい時期となる」と語った。

また、「ロックダウンは回避可能で最後の手段というのが私の立場。マスクは万能薬ではなく、他の感染抑制手段と併用する必要がある。だが、マスク着用率が95%になれば、封鎖は不要となり、回避できる」と述べた。

一方、封鎖は安全かつ段階的な解除が必要とし、緩和を急ぎすぎた場合に生じる悪影響を警告した。

学校については、初等教育機関は閉鎖すべきでないとし、青少年は感染拡大の主因となっておらず休校措置は「効果的でない」との見解を示した。

希望的なニュースがこのところ相次ぐワクチンについては、「特に初期段階では供給が限られることが分かっており、特効薬ではない」と指摘した。【11月20日 ロイター】

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治療薬の方は、パッとしません。

 

****WHO、新型コロナ治療薬として「レムデシビル」推奨せず****

WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルスの治療薬として使用されている「レムデシビル」について、症状の度合いに関わらず推奨しないとのガイドラインを公表しました。

WHOが20日に公表したガイドラインでは、新型コロナウイルスの治療薬として使用されている「レムデシビル」について、症状の度合いに関わらず効果を示す証拠がないため、使用は薦めないとしています。レムデシビルは比較的コストが高く、点滴による投与期間が長いため、医療機関にとって負担になることも推奨しない理由だということです。

エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビルは、新型コロナへの効果が確認されたとして日本でも特例承認されていて、感染したアメリカのトランプ大統領にも投与されていました。しかし、WHOは先月、レムデシビルについて、入院患者への治験で致死率などに改善がみられず、新型コロナへの効果がほとんどないとしていました。

一方、デキサメタゾンなどステロイド系抗炎症薬については重症者の致死率を下げる効果がみられ、コスト面でも優位であるとして使用が推奨されています。【11月20日 TBS NEWS】

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【バイデン新大統領、マスク着用は「政治的声明ではなく、愛国的義務だ」 共和党知事「状況は変わった」】

「やれやれ、またマスクかよ・・・」という感もありますが、マスクの有効性に関しては、相変わらず多様な議論が。

 

****マスクの新型コロナ感染予防効果、期待より限定的=研究****

 デンマークのコペンハーゲン大学病院は18日、マスク着用による新型コロナウイルス感染予防効果は限定的、とする研究結果を発表した。ただ、感染拡大抑制策としてマスクの広範囲な使用に対する反論材料に利用すべきではないとの見解も示した。

研究は、デンマーク政府がマスク着用を推奨していなかった4─5月に、成人6024人を対象にマスク着用と非着用のグループに分けて調査を実施。

その結果、1カ月後に着用グループで新型コロナに感染した人の割合は1.8%、比較対象グループではこの割合が2.1%となった。

研究は、「この調査では期待された感染リスクの半減は確認されず、予防率は15─20%である可能性が示唆された」と分析。一方、「この研究では、マスクが保護の機能を果たさない可能性も排除できなかった」としている。

専門家らは長らく、マスク着用による予防効果は限定的だが他者に感染させるリスクは劇的に下げられるとの見解を示しており、今回の結果はこれに一致する内容となった。

ただ研究は、「調査では感染源を取り除く『ソースコントロール』については検証しておらず、今回の結果を、市中でのマスク着用推奨は感染抑制に効果なしといった結論の根拠とすべきではない」とも指摘している。【11月19日 ロイター】

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上記と異なる、マスクの予防効果、重症化リスク軽減効果を示すような調査研究も、日々TV等で報じられています。

 

ただ、会食中にも食べるとき以外はマスク着用を・・・というのは、どんなものかね?

数か月前なら「笑い話」ですけどね。

 

政府のコロナ対策のお達しに従順な日本はむしろ(強権支配国家を除けば)珍しい方で、欧米などでは激しい抗議行動も起きているのは周知のところ。

 

****独警察、コロナデモに放水 首都中心部、規制に反発****

ドイツの首都ベルリン中心部のブランデンブルク門前で18日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた政府の規制に反発する5千人規模のデモが行われた。マスクを着用せずに密集した参加者が多く、警察の解散指示に従わなかったため、警察は放水し、違反者を拘束した。

 

連邦議会(下院)では同日、コロナ規制関連の法案が審議され、デモ隊が抗議していた。報道によると、参加者には政府を敵視する右派支持者のほか、一般市民も含まれていたという。

 

ドイツでは政府のコロナ対策に反対するデモが繰り返されている。【11月18日 共同】

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全国的に感染拡大が止まらないアメリカ、バイデン新政権はマスク着用などコロナ対策を強化する方針。

 

****バイデン氏、マスク着用の全国的義務付けを州知事らと協議****

米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領は19日、全米の州知事らとの電話会議で、新型コロナウイルス感染予防対策として全国的にマスク着用を義務付けることを議論したと明らかにした。

バイデン氏は電話会議後、マスク着用は「政治的声明ではなく、愛国的義務だ」と指摘した。

さらに、各州がウイルス対策を強化できるよう連邦政府の資金支援が必要だとの考えを示した。【11月20日 ロイター】

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このあたりは、感染拡大・犠牲者増加を受けて、共和党知事の州でもやや変化が。

 

****ノースダコタ州、公共の場でのマスク着用義務化 全米35州目****

米ノースダコタ州は、公共の場でのマスク着用を義務化した。米国で新型コロナウイルスの感染が急拡大、医療現場が逼迫する中、マスク着用の義務化を導入した州はこれで35州となった。

ロイターの集計によると、ノースダコタ州を含む39州で今月、新型コロナの1日当たりの新規感染者が過去最多を更新。ノースダコタ州を含む18州で死者数が最多となり、同26州で新型コロナ感染症による入院患者数が過去最多を記録した。

ノースダコタ州のバーガム知事(共和党)は13日夜に声明を出し「状況は変わった。われわれも変わる必要がある」などと訴えた。

同州は、大半の屋内の公共空間と「対人距離を確保できない屋外の営業区域並びに公共の場」において、顔を覆うことを義務付けた。

バーガム知事はまた、レストランとバーについて、受け入れる客の数を収容可能人数の50%までに制限したほか、午後10時までの時短営業を命じた。【11月15日 ロイター】

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ただ、マスク着用は分断の象徴ともなっていますので、これを全国義務化となると、またひと悶着ありそうです。

 

【韓国では徒労感も「感染するのはある程度、運次第だ」】

「K防疫」の成果を世界に誇ってきた韓国では「コロナ疲れ」も。

 

****韓国、感染対策に徒労感か 意識調査、半数「防ぎ切れず」****

韓国のソウル大保健大学院の研究チームは20日までに、同国内の約千人に新型コロナウイルス感染予防対策への意識調査で約46%が「感染するのはある程度、運次第だ」と答え、防ぎ切れないとみていると明らかにした。

 

研究チームは、感染対策に徒労感が出ており、悲観論が強まることで対策がおろそかになる恐れがあると指摘している。

 

調査は今月上旬に実施。5月の同じ調査では防ぎ切れないとみている人は約38%だった。

 

韓国では感染再拡大を受け、政府が感染症対策のレベルを引き上げたほか、多くの人が集まる場所でのマスクの着用を義務化した。【11月20日 共同】

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日韓の間の様々な問題はさておき、このあたりの感覚は日本でも共感できるところです。

 

濃厚接触者の追跡で大騒ぎといった話さえなければ、仮に感染しても「運が悪かったね」ですませることができるのですけどね・・・。

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アメリカ  敗北を認めないトランプ大統領 深まる分断 安全保障の問題も 「駆け込み外交」続々

2020-11-19 23:10:31 | アメリカ

(【11月19日 朝日】)

 

【「不正選挙」主張で深まる国民の分断・憎悪】

トランプ大統領が選挙結果を認めようとしないのは相変わらずです。

いささか駄々をこねる子供のような感も。

 

****オバマ氏「自分の子なら叱る」 敗北の受け入れ、与党に説得促す****

「自分の子が同じことをしたら叱りつけるはずだ」―。オバマ前米大統領は15日放映のCBSテレビのインタビューで、大統領選で負けを認めないトランプ大統領を、競争に負けたのに証拠もなく相手がずるをしたと非難する子どもに例え、与党共和党に敗北受け入れへ説得するよう“決起”を促した。

 

オバマ氏はトランプ氏の性格について「負けるのが嫌いで、負けたと絶対に認めない」と分析した。その上で共和党議員の多くが事態を黙認し、トランプ氏の機嫌取りに終始していると批判。

 

「次期バイデン政権だけでなく、民主主義全般の正当性も損ねようとしている。危険だ」と述べた。【11月16日 共同】

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“ウィスコンシン州で一部再集計へ、費用300万ドル…結果が覆る可能性は低い”【11月19日 読売】と、トランプ陣営がすでに再集計費用約3億1000万円を支払ったとのこと。

 

ここで「不正」の根拠を見つけて、大統領選挙全体の「不正」へ全面展開する狙いでしょう。

 

“トランプ氏、「大量の選挙不正」否定のサイバーセキュリティー長官を解任”【11月18日 AFP】と、政権内部の締め付けにもなりふり構わぬ姿勢です。

 

トランプ大統領が敗北を認めない限り、支持者の間の分断も和らぎそうにありません。

 

****共和派の半数、バイデン氏が不正選挙で「勝利盗んだ」と認識=調査****

ロイター/イプソスの世論調査によると、米大統領選で共和党支持者の半数が、民主党のバイデン候補は不正選挙で「勝利を盗んだ」と認識しており、現職のトランプ大統領が正当な勝利者と考えていることが分かった。

調査は今月13─17日に実施。バイデン氏は大統領選で勝利を確実にしているが、トランプ氏は敗北を認めておらず、選挙で不正が行われたと一貫して主張している。

大統領選で誰が勝利したと思うかとの質問には、73%がバイデン氏と回答。トランプ氏と答えた向きは5%にとどまった。一方、正当な勝利者はどちらかとの問いには、共和党支持者の52%がトランプ氏と答えた。バイデン氏は29%だった。

トランプ氏が正当な勝利者と考える理由について、共和党支持者の68%は選挙が不正に操作されたためと認識。こうした考えを持つ民主党支持者は16%、独立派は30%強だった。

トランプ陣営は、選挙で有権者のなりすましや投票監視員に対する妨害、ドミニオン集計システムを利用した票の入れ替えなどの不正が横行したと主張している。

今回の選挙は合法かつ正確だったと思うかとの質問には、55%が「そう思う」と回答。前回2016年時点では62%だった。また、選挙は「不正に操作され違法」と考える向きは28%で、前回から12%ポイント上昇した。【11月19日 ロイター】

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分断の結果は「憎悪」 トランプ政治の最大の害悪のひとつでしょう。

 

****米国内のヘイトクライム、過去11年で最多 FBI報告****

米連邦捜査局(FBI)は16日、2019年の米国内のヘイトクライム(憎悪犯罪)が7314件に上ったとする報告書を発表した。18年より194件増え、09年以降では最も多かった。殺人事件は51件で、統計を取り始めた1991年以来、最多となった。

 

FBIはヘイトクライムを「人種・民族、宗教、性的指向、性自認などに基づく偏見に動機づけられた犯罪」と定義。動機別では、人種・民族=57・6%▽宗教=20・1%▽性的指向=16・7%▽性自認=2・7%――となり、人種差別が根強く残る米国の現状が明らかになった。

 

中でもマイノリティーが被害にあうケースが多く、人種・民族を理由にしたヘイトクライムの被害者のうち、黒人=48・5%▽ヒスパニック系=14・1%▽アジア系=4・4%だった。【11月17日 朝日】

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【アメリカ大統領選挙の「制度疲労」】

今回の混乱はトランプ大統領の「個性」によって際立ったものにもなっていますが、アメリカ大統領選挙の混乱は今に始まった話でもなく、世界でもいち早く民主主義を実現した選挙でもあるアメリカ大統領選挙が「制度疲労」を起こしているところに問題の根幹があるように思われます。

 

幌馬車で各州から選挙人がワシントンに集まるような時代と現代では、やはり差があるでしょう。

とりわけ、いつも問題になるのは州ごとの選挙人獲得競争と、国全体の投票総数の結果の乖離をどう考えるかという問題。

 

日本的な常識からすると、州ごとに選挙制度が異なるというのも、なかなか受け入れがたいところ。

もちろん、州の独自性は合衆国の成り立ちに起因する「アメリカの核心」でもあるのでしょうが、いつまでもそれでいいのか?という疑問も。

 

****「選挙人」実質廃止の動き=得票総数で勝敗を―15州と首都が協定加入・米大統領選****

米国で大統領選の勝者を州単位の選挙人獲得数でなく、全国の得票総数で決めようという動きが広がっている。これまでに全米50州のうち15州と首都ワシントンが賛同。

 

トランプ大統領も2016年の大統領選で、全国得票で対立候補のクリントン元国務長官を下回りながら、選挙人獲得数で勝って当選を決めており、制度変更が実現すれば、大統領選の様相が一変することになる。

 

西部コロラド州で大統領選と同じ今月3日に行われた住民投票で、同州の「全国一般投票州際協定」加入が正式に決まった。加入に関する州法は昨年成立していたが、多数の反対署名が寄せられたことから、改めて住民投票を実施。52%が加入に賛成票を投じた。

 

協定に加わった州では大統領選で、州内の集計結果にかかわらず、全米の得票総数トップの候補がその州に割り当てられた選挙人を獲得する。ただし、発効するのは加盟州の選挙人の合計が、選挙人(538人)の過半数に当たる270人に達してからだ。

 

協定の推進団体によると、ニューヨーク、カリフォルニア、イリノイなど大規模州も既に加入しており、コロラドを含めると、加入州の選挙人の合計は196人。加入州がさらに増えて発効すれば、全米の得票でトップの候補が自動的に選挙人の過半数を得ることになり、選挙人制度は実質的な意味を失う。

 

ただ、共和党には慎重な声が強く、協定発効への道筋が見えているわけではない。NBCニュースによれば、反対派は選挙人制度が実質的に廃止されれば「候補者は(有権者の多い)都市部での運動に集中し、小規模州の声を届けられなくなる」と主張。都市部に強い民主党が結果的に有利になると懸念する。

 

実際、今回の選挙戦でもトランプ氏とバイデン前副大統領は、支持が伯仲する「スイング・ステート(揺れる州)」での運動に重点を置いた。それでも推進団体幹部は「(制度を支援するのは)米国内の他の選挙と同様、最多の票を得た候補が勝つべきだという単純な理由からだ」と述べ、党派的な動きをけん制する。

 

今回の大統領選では、勝利を確実にしたバイデン氏が史上最多となる約7900万票を獲得。得票率でトランプ氏に約3.6ポイントの差をつけた。【11月15日 時事】 

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全体の得票数にかかわらず、小さな「スイング・ステート(揺れる州)」の動向で勝敗が決まるという現状は、「なんだかな・・・」という感じがしますが、「銃規制」も一向に進まないようなアメリカで、民主・共和で利害が対立する上記「全国一般投票州際協定」の動きは、「話としては面白いけど、実現には・・・」というレベルの話なんでしょう。

 

【政権移行停滞で安全保障にも支障】

でもって、話を今回の選挙に戻すと、トランプ大統領が敗北を認めないことで、様々な問題が生じています。

 

****トランプ氏の“政権移行妨害”が生んだ深刻な事態 「安全保障を犠牲にしてまで抗戦か」との報道も****

(中略)

■政権移行を阻む措置

トランプ氏は、公の場に出ることもなく、存在感を消しているかに見えるが、実は、バイデン新政権への移行を困難にする措置を着々と行っている。

 

オバマ前大統領が2016年、投開票日の2日後にトランプ氏をホワイトハウスに招待したのとは、大きく異なり、バイデン氏は当確から5日経ってもホワイトハウス入りしていない。

 

政権移行の妨害は、深刻だ。

 

第1に、国防総省(ペンタゴン)では、反トランプ派の幹部がわずか2日間で4人解任されるか、辞任した。その中には、トランプ氏にツイッターで解任されたトップのマーク・エスパー国防長官が含まれる。

 

同長官は今夏、黒人のジョージ・フロイド氏が白人警官に殺害された事件をきっかけに起きた「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大切だ)」デモに対し、トランプ氏が連邦軍を送ろうとしたが、記者会見を開いて公式に派兵を否定した。「危険なレベルに達していない」というのが理由だが、民間人の非武装デモに、武装した兵士が配備されるというのは異常事態だ。

 

エスパー長官に続き、高官のジェームズ・アンダーソン国防副次官(政策担当)が自ら辞任。つまり、国家安全保障という最優先事項について、新政権移行の際に行われる「引き継ぎ」をする幹部4人が、空席という事態だ。米誌ニューズウィークは「安全保障を犠牲にしても、トランプはバイデンの政権移行に徹底抗戦する構えか」と書いた。

 

第2に、選挙をめぐる開票作業や訴訟がいまだに続いており、逆転を期待するトランプ派市民を活気づかせていることも事実だ。(後略)【AERA 2020年11月23日号より抜粋】

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こうした政権移行が停滞し、安全保障に空白を生じかねない事態には共和党サイドからも懸念が。

 

****トランプ氏法廷闘争、共和党は様子見も 移行停滞には懸念****

(中略)共和党議員らがトランプ氏に配慮するのは、同氏が選挙に敗れたとはいえ現職大統領としては最多となる7200万票を獲得し、今後も共和党内で強い影響力を維持していくことが確実とみられているためだ。

 

また、大統領選と同時に行われた上院選では、これまでに共和党が50議席、民主党が48議席を獲得した。来年1月に行われる南部ジョージア州の2議席をめぐる決選投票で、どちらの党が上院多数派を確保するかが決まる。

 

共和党としては現段階で、トランプ氏に敵対することはトランプ支持者の反発を招き、ジョージア州での議席確保に向けた選挙戦略の上でも好ましくないと判断しているとされる。

 

共和党議員らは一方で、トランプ氏が具体的な根拠を示さずに「不正があった」と主張し、訴訟攻勢で政権移行プロセスに支障を与えている現状を有権者がどう受け止めているかも慎重に見極めている。

 

大統領選での勝利が確実となった次期大統領は通常、米国を取り巻く安全保障情勢を正確に把握するため、国家情報長官から大統領に毎日提供される最高度の機密報告「大統領日報」(PDB)を就任前から受けることができる。

 

しかし、トランプ氏は敗北を認めていないことから政権移行手続きを拒否。国家情報長官室も、政権移行作業を統括する一般調達局(GSA)がバイデン氏を勝者に認定していないことを理由にPDBの閲覧を認めない立場だ。

 

共和党議員のグラム、コーニン、ランクフォード各上院議員らは、訴訟が続いている間も、安全保障上の観点からPDB報告を受ける権限を受けられるべきだと主張している。

 

共和党の息子ブッシュ大統領の選挙参謀を務めた政治評論家のカール・ローブ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(12日付)への寄稿で「再集計で選挙結果が覆ることはない」と指摘し、トランプ氏に「訴訟が終結したら、平和的な政権移行を主導して怨念を捨て、国の統合に力を貸すべきだ」と訴えた。【11月13日 産経】

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【相次ぐ「駆け込み外交」 共和党内からも懸念が】

当のトランプ大統領は「駆け込み外交」とも評される安全保障分野での重要決定を続々と行っています。

 

*****「駆け込み外交」トランプ氏展開 アフガン駐留米軍削減・対中強硬策も*****

大統領選に敗れたトランプ米大統領が、任期切れを前に「駆け込み外交」を展開し始めた。

 

国防総省は17日、アフガニスタンイラクの駐留米軍を削減すると発表。ポンペオ国務長官がイスラエルの占領地ゴラン高原などを初訪問する予定もある。政権のレガシー(後世に残る功績)作りを狙ったものとみられるが、拙速な動きが混乱を広げ、バイデン次期政権の外交に影響を与える恐れもある。

 

ミラー米国防長官代行は17日、アフガニスタンの駐留米軍を約4500人から2500人に削減すると表明。イラク駐留米軍も約3千人から2500人に減らす。期限はトランプ氏の任期が切れる来年1月20日直前の同月15日とした。

 

米国はアフガニスタンの反政府勢力タリバーンとの合意に基づき、駐留米軍を段階的に撤退させてきたが、和平の道筋は見えていない。トランプ氏は「終わりなき戦争を終わらせる」との公約を掲げるが、強行すれば「テロの温床」に逆戻りしかねず、エスパー前国防長官や軍高官らは撤収に懸念を示していた。

 

上院共和党トップのマコネル院内総務は17日、「今後数カ月、国防や外交政策で極めて重大な変更をしないことが重要」と記者団に語った。アフガニスタンに部隊が駐留する北大西洋条約機構NATO)のストルテンベルグ事務総長も「性急で、バラバラな形での撤収の代償はとても大きいかもしれない」と述べた。

 

一方、米ニュースサイトのアクシオスによると、ポンペオ米国務長官は18日からのイスラエル訪問中に、イスラエルの占領地であるヨルダン川西岸のユダヤ人入植地ゴラン高原を訪れる予定だ。ともに現職の国務長官として初めてで、トランプ政権が鮮明にした親イスラエルの姿勢をアピールする狙いとみられる。ただ、パレスチナの猛反発は必至だ。

 

また、ニューヨーク・タイムズは16日、トランプ氏が12日にホワイトハウスで政権幹部に対し、イランの核施設を数週間以内に攻撃するための選択肢があるかを尋ねたと報じた。ペンス副大統領らが、大規模な紛争に発展しかねないと説得して止めたが、トランプ氏イラクの親イラン勢力などへの攻撃を検討している可能性があるという。

 

トランプ政権は選挙後、対中国でも強硬策を次々と打ち出している。ポンペオ氏は12日に出演したラジオ番組で「台湾は中国の一部ではない」と発言し、中国政府は強く反発した。トランプ氏は同日、米側が中国軍の影響下にあるとみる30超の中国企業に対し、米国人が株式や投資信託などの購入を通じて投資するのを禁じる大統領令に署名。米メディアは、さらに複数の対中強硬措置を計画していると報じている。【11月19日 朝日】

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現地情勢に大きな影響を及ぼすアフガニスタン・イラクからの撤退は、ある程度織り込み済みではありますが、「イランの核施設を数週間以内に攻撃するための選択肢」となると、この期に及んで世界情勢をひっくり返すのは勘弁して欲しい・・・という感が。

 

トランプ大統領からすれば、イランの核開発阻止という公約実現なのでしょうが・・・(公約を駆け込み的に実現しようというのは、次回立候補に向けた布石でしょうか。やる気満々のようです。)

 

****トランプ氏、敗北認めず安保分野で続々と重要決定****

米上院の超党派議員は18日、トランプ政権が10日に承認したアラブ首長国連邦(UAE)への最新鋭ステルス戦闘機F35などの武器売却を承認しないとする決議案を提出すると発表した。

 

トランプ大統領は11月3日の大統領選で敗北が確実となって以降、エスパー国防長官の解任、アフガニスタンやイラクからの米軍部隊の撤収など、政権移行期にある米国の安全保障を脅かしかねない決定を次々と下しており、身内の共和党の間でも懸念が広がっている。

 

F35の売却反対決議案は、民主党のメネンデス、マーフィー両議員と共和党のポール議員が共同提出する。

 

トランプ政権は、UAEがイスラエルと国交を正常化させたのを受けてF35最大50機の売却を決めた。だが米国内では、中東でのイスラエルの軍事的優位が崩れ、地域の不安定化につながるとして、売却に反対する声が強い。

 

トランプ政権が17日発表したアフガニスタンとイラクからの米軍撤収に関しても、米国とアフガンのイスラム原理主義勢力との和平交渉の行方をにらんだ現地情勢などが考慮されていないとの批判が強い。

 

安全保障関係者の間では、2000年大統領選挙での集計をめぐる訴訟で息子ブッシュ政権への引き継ぎが遅れたことが翌年9月の米中枢同時テロにつながったとの反省も踏まえ、アフガンからの性急な米軍の撤収は、アフガンを再び米本土を脅かすテロの温床に逆戻りさせかねないとの懸念も強まっている。

 

歴代米政権の交代期は通常、次の政権が政策上の選択肢を確保できるよう、現状を大きく変更させる安全保障分野の重要決定は行わない慣例となっている。

 

上院共和党トップのマコネル院内総務も17日、記者団に「(次期大統領就任までの)向こう数カ月間は、国防や外交政策を著しく変えないことが極めて重要だ」と述べ、トランプ氏に暗に自制を求めた。

 

オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は16日、民主党のバイデン氏が大統領選の勝利を確実にしたことに関し「明らかにその方向にあるように見える」と認め、同氏の勝利が確定し次第、「非常にプロ意識の高い政権移行を行う」と強調した。

 

しかし、トランプ氏と決別したボルトン前大統領補佐官(同)は18日、「トランプ氏はバイデン氏の執務ができるだけ困難になるように仕向けている」と指摘し、安保分野で今後も予想外の行動をとる恐れが「十分にある」と警告した。【11月19日 産経】

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「トランプ氏はバイデン氏の執務ができるだけ困難になるように仕向けている」・・・・子供じゃあるまいし・・・。

マケイン氏が存命なら、叱りつけるところでしょうが。

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中国  武漢でのコロナ対応の誤りを認めないことにも示される国家主義への傾斜

2020-11-18 23:22:27 | 中国

(江漢路を行き交う人々=8月12日、湖北省武漢市【11月5日 NNA ASIA】)

 

【武漢での原因不明の肺炎の発生を公表して処分された医師 死後に名誉回復はなされたものの、当局の隠蔽による被害に関しては言及なし】

中国・武漢で猛威を振るう新型コロナの存在を中国政府がまだ認めていないときに、原因不明の肺炎の発生をSNSに公表したことで「訓戒処分」を受けた眼科医だった李文亮氏が、その後新型コロナに感染して死亡。

 

国際的な批判があるなかで、中国政府は死後になってようやく処分が不当だったことを認め、李文亮氏の名誉回復をしたことは、中国政府の初動態勢のまずさを端的に示すエピソードになっています。

 

トランプ大統領がコロナについて(自分への責任追求をそらすために)執拗に中国の責任を言いたてるのも、このあたりの中国政府の隠蔽体質があっての話です。

 

****新型コロナを告発し罰せられた医師。死後に「処分は不当でした」と発表、その本当のワケは?****

原因不明の肺炎の発生に警鐘を鳴らしたつもりが、逆に処分の対象になり、訓戒を受けた医師。後に自ら新型コロナウイルスに感染し死亡したこの医師に対し、中国政府の調査チームが「処分は不当だった」と結論を出した。だが本当の狙いは、単に医師の名誉回復だけではなさそうだ。(中略)

 

「処分は不当」と調査結果

李医師は、不正などの内部告発者を意味する英語のホイッスルブロワーを中国語に訳した呼称で国内でも讃えられ、勇気ある行動ゆえに同医師が受けた処分に対しては、怒りの声が上がっていた。

 

そうした中で、中国政府の最高の監察機関である国家監察委員会の調査チームが、李医師の死から1か月以上経った、昨日3月19日、調査結果を発表した。調査は、実際に12月中に武漢市内の複数の病院で原因不明の肺炎患者が確認されていた事実などに触れた。

 

その上で、李医師の処遇について「警察が訓戒書を作ったことは不当であり、法執行の手順も規範に合っていなかった」と結論づけた。警察に対し訓戒書の取り消しと関係者の責任追及などを求めた。

 

この調査結果に対し、ネット上では「真相が明らかになった」「国家を信じ、調査結果を支持する。李先生安らかに」などと賛辞が寄せられている。もっとも中国では政府の判断に反対する意見がネット上に残るはずはないが、人々の批判の矛先を逸らすには、まずまずの効果があったようだ。

 

しかし、この調査結果は、重要な点に触れていない。李医師の発信が「社会の関心を集めた」などとしているが、訓戒によって李医師が口をつぐんでしまった事態が招いた結果についての検証がされていない。

 

その結果とは「情報隠し」が引き起こした感染拡大だ。特に、医療関係者の防疫が後手に回ったために、武漢では医療崩壊が起きた。(中略)

 

敵対勢力が李医師を利用?

国営新華社通信が、李文亮医師の調査チームとの質疑を報じている。その中で、李医師の情報発信が、社会にどのような作用を与えたかとの質問に対して、調査チームは次のようにこう答えている。

 

「一部の敵対勢力は中国共産党と中国政府を攻撃するために、李文亮医師に体制に対抗する“英雄”“覚醒者”のラベルを貼っている。しかし、それは事実に全く合わない。李文亮医師は共産党員であり、いわゆる“反体制人物”ではない。そのような下心を持つ勢力が、扇動したり、人心を惑わせたり、社会の不満を挑発しようとしているが、目的を達せられないことは決まっている」

 

中国の体制にとって感染症そのものよりも、対策で下手を打ったとして民心が離れる事態の方が脅威だ。今回の調査結果の一番の狙いは、おそらくこれだ。【3月20日 宮崎紀秀氏 YAHOO!ニュース】

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武漢の感染拡大を「鎮圧」したことは、政府・党の「勝利」であり、政府・党の対応には誤りはなかった・・・という「無謬性」「硬直性」が、はからずも外部の人間にとっては中国共産主義の「限界」を示すものに思われます。

 

【武漢の状況を報じた市民 拘束・禁固刑も】

この旧聞ともいえる李文亮氏の件を改めて取り上げたのは、今日、下記記事を目にして驚いたせいです。

武漢の惨状を伝えた結果、当局によって拘束されていると思われる市民が今も複数名存在し、そのうちの1名は禁固刑の恐れがあるとか。

 

****中国・武漢の市民記者、禁錮刑の恐れ 感染流行報じて起訴****

中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスの大流行について伝えた市民ジャーナリストが、最長5年の禁錮刑に処される可能性に直面している。彼女の起訴状が16日、表面化した。

 

元弁護士の張展さん(37)は、5月に逮捕されて以来、拘束が続いている。

容疑は「口論をけしかけトラブルを誘発した」というもの。中国でよく活動家に適用される内容だ。

 

新型ウイルスの感染が広がった当時の武漢市の状況を報じ、トラブルに直面した市民ジャーナリストは、張さんだけではない。

 

2月以降、少なくとも3人の行方がわからなくなった。そのうち、李沢華さんは4月に姿を現し、「隔離」されていたと述べた

 

陳秋実さんはその後、政府の監視下に置かれていることが判明。方斌さんは今も行方不明のままだ。

中国当局は、声を上げる活動家を弾圧することで知られている。

 

ハンスト

今回明らかになった起訴状によると、張さんは2月に武漢市に入り、多くの記事を出した。NGO中国人権擁護者(CHRD)ネットワークによると、張さんは他の独立系ジャーナリストらの拘束や、当局の責任を追及した新型ウイルス犠牲者の家族に対する嫌がらせなどを報じていた。

 

CHRDによると、張さんは5月14日に武漢市で行方不明になった。翌日になって、640キロメートル以上離れた上海で警察に拘束されていたと明らかにされた。

 

6月19日になって、上海で正式に逮捕された。ほぼ3カ月後の9月9日、弁護士が面会を許可された。

CHRDは、張さんが逮捕に抗議してハンガーストライキに入っていたとしている。9月18日には張さんの弁護士に電話があり、彼女が起訴されたと伝えられたという。正式には今月13日に起訴された。

 

「悪意をもって広めた」

16日に表面化した起訴状は、張さんについて、「微信(ウィーチャット)、ツイッター、ユーチューブを通して、偽の情報をメールやビデオ、他のメディアで」送ったとしている。また、外国メディアのインタビューを受け、武漢市の新型ウイルスに関する情報を「悪意をもって広めた」と非難している。

当局は禁錮4〜5年の刑を求めている。

 

張さんはこれ以前にも、当局とトラブルになったことがあった。CHRDによると、2019年9月に上海で警察に呼び出され、香港の活動家らへの支援を表明したとして拘束された。

拘束中、精神鑑定を受けさせられたと報じられた。【11月18日 BBC】

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「目をつけられる」ような存在だったようですが、“外国メディアのインタビューを受け、武漢市の新型ウイルスに関する情報を「悪意をもって広めた」”というあたり、特に、外国メディアに中国の実情が流れることに中国当局は異様に神経質になります。

 

彼らの尊大なブライドを傷つけるせいでしょうか?

 

【厳しいバッシングを受ける「武漢日記」の方方さん 文革を想起させるような国家主義に走る習近平政権】

パンデミック当時の武漢の市民生活を赤裸々に描いて有名になった中国作家・方方さんも、海外での英語翻訳版が出版されると、「裏切者」と厳しいバッシングを受けるようになり、当局対応もそうしたバッシングを容認するものに急変しています。

 

****中国、「武漢日記」発禁に 作者を攻撃、当局黙認****

新型コロナウイルス対応で封鎖された中国湖北省武漢市の生活を記録して国際的反響を呼んだ地元作家、方方さん(65)の「武漢日記」が中国で事実上の発禁扱いとなり、出版できない状況であることが分かった。

 

方方さんが21日までに共同通信の書面取材に応じ、明らかにした。武漢市が封鎖されてから今月23日で半年。中国の暗部を描いた日記の出版を阻もうとするメディアなどが攻撃し、当局も黙認しているためだという。

 

海外では既に英語の翻訳版が出版された。しかし中国では国内出版に向けて準備が進んでいたものの、出版社が圧力を恐れて本を出せない状況だ。【7月21日 共同】

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「国家のやることに間違いはない」「共産党のやることに間違いはない」、そしてそのことは最終的には「習近平主席のやることに間違いはない」へ・・・こうした「無謬性」、さらに外国からの批判を受け付けない肥大した国家プライド・・・武漢における新型コロナ対応に限らず、中国政治全般に見られることであり、かつ、近年その傾向が強まるように見えるところです。毛沢東時代の文革を想起させるぐらいに。

 

****習主席支配の中国、過激な国家主義への暗転****

「国家への忠誠欠如」で過激なバッシング横行

 

中国に吹き荒れる国家主義の風がここにきて、過激な様相を帯びてきた。毛沢東主義の暗い過去を想起させる足元の潮流を後押ししているのが、共産党のプロパガンダや習近平国家主席の政治的野望、そして新型コロナウイルスの封じ込めに成功した国家のプライドだ。

 

ネット上で、中国指導部を批判する、または国家への忠誠が欠如していると見なされた人物は、執拗(しつよう)な集団攻撃の標的になる。嫌がらせは標的が沈黙するまで続く。中には職を失った人もいる。

 

今年目立った標的となったのが、コロナ対応を巡り、当局者の初動に疑問を投げかけた人々だ。湖北省武漢市の文筆家である方方氏もターゲットになった1人だ。

 

方方氏がネット上で住民の苦境に言及し、地元政府の対応の遅れを批判すると、多くの国内ネットユーザーは同氏を「裏切り者」と切り捨てた。

 

武漢市内のバス停には、同氏に対して「人々に犯した罪を償うため、頭をそるか死ね」と書かれた匿名のポスターが貼られ、その画像はネット上に拡散した。太極拳の有名な武術家は「正義の握り拳」で同氏を攻撃するよう唱えた。

 

方方氏はその後、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で、市民にこう呼びかけた。「中国は文化大革命の時代に後戻りすることはできない」

 

中国政治の専門家は、国家主義の高まりについて、世界における中国の地位が向上する中で自然な成り行きだと指摘する。中国人からは、国家に対する心からの誇りが根底にあるとの声も聞かれる。

 

中国政府も国家主義の増進に余念がない。当局者はネット規制や大量のソーシャルメディア(SNS)アカウントを通じて、当局に対する批判を検閲により徹底的に封じ込めているほか、政府や共産党を促進するコンテンツを大量拡散するエコシステムを構築している。

 

長期独裁体制を視野に入れる習氏も、国家主義者の急先鋒に立つ。国家復興という「中国の夢」の実現を誓う同氏は、経済成長が鈍り、米国との対立が先鋭化する中で、共産党への支持を固めようと、生活のあらゆる面で国民の愛国心に訴える。

 

習氏が目指す中国の国家像はこうだ。独裁政権およびハイテク技術による社会統制を超国家主義の浸透と組み合わせることで、反対派を封じ込める新たなタイプの強国――。

 

中国のネット検閲では、社会問題に関する限定的な議論を容認していた時代もあった。だが、習氏が実権を握って以降の8年間、国内リベラル派の間では、文化大革命の熱狂的な政治に後戻りするのではとの懸念が強まっている。

 

毛沢東が仕掛けた「反革命的な要素」に対する戦争により、中国社会と経済は1960年代~70年代に崩壊の瀬戸際に追い込まれた。

 

文化大革命の時代には、100万人以上が死亡した。近代中国の文化・思想史を研究する歴史家ジェレミー・R・バーメ氏は、当時ほどの過激さはないものの、当局は「痛烈な批判、ヒステリー(興奮状態)、毛沢東時代の祖先の暴力的な意図と、デジタル監視で入手可能になった科学捜査的な詳細情報を組み合わせている」と指摘する。

 

また、反対意見に対する中国の不寛容さは、往々にして欧米諸国を上回るとして、「欧米人が自分たちには『キャンセルカルチャー(言動を問題視する相手への集中的なバッシング)』があると思うなら、欧米人は(中国のことを)全く分かっていない」と述べる。

 

<バッシングを呼んだ日記>

方方氏が「武漢日記」を記録し始めたのは、コロナ封じ込めに向けて武漢市当局がロックダウン(都市封鎖)を敷いた直後の1月だ。同氏は、政府も資金援助する湖北省の作家協会のトップを務めていた経歴を持つ。

 

中国メディアの報道が厳しく制限される中、同氏の日記は深刻化していたコロナ感染拡大の実態を知る上で、貴重な機会を提供していた。大半はロックダウン下の日常に関する記述だが、時には真実を隠ぺいしているとして、当局者を批判することもあった。同氏の日記の視聴回数は数百万回に上った。

 

同氏への攻撃が加速したのは、日記の英語の翻訳版が米国で出版されるとのニュースが4月に伝わってからだ。ネット上では方方氏の動機に対して疑問を呈し、外国人に中国を攻撃するための「短刀を提供している」として糾弾する声が上がった。

 

方方氏の自宅には石が投げられた。あまりの嫌がらせに耐えられず、同氏は自身のウェイボー投稿に対するコメントが目に入らないよう遮断した。中国語版の日記を含め、本土や香港の出版社は、同氏の作品を出版することを拒否しているという。

 

ネット上のバッシングには、中国共産党系の新聞「環球時報」の胡錫進編集長など、政府とつながりのある人物も加わった。胡編集長は、方方氏が欧米で注目を浴びることで、中国人はその影響に苦しむだろうと投稿した。

 

方方氏はメールで、胡編集長らは、政府の意見を代表しているとみられているため、世論に影響を与えることができると話す。「とりわけ政府の支援を受けているこうしたやくざと1人で戦うのは無駄だ」

 

胡編集長は方方氏への攻撃をあおったとする見方を否定。批判を受け入れようとしない同氏の姿勢が、世論の反発を呼んだとコメントした。

 

<プロパガンダの威力>

中国のサイバー空間に詳しい専門家らは、ネット上には政府寄りのコンテンツを投稿する数百万人のユーザーが存在すると推定している。こうしたユーザーは、政府からの雇われか、政府当局者だ。(後略)【10月26日 WSJ】

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武漢での当局のコロナ対応に関しては、犠牲者の遺族に不満も残っているようですが・・・・

 

****武漢の遺族ら 習主席宛てに請願書****

世界で最初に新型コロナウイルスの感染が拡大した、中国・武漢市の患者の遺族たちが、習近平国家主席に宛て請願書を送った。

 

遺族の男性「隠ぺいでこんなに多くの人が死んだ。なぜ逃れようとするのか」

遺族たちは、感染拡大は武漢市当局の情報隠ぺいによって起きたとして、関係者の法的責任を追及するよう求めている。

 

FNNの取材に応じた男性は、2020年2月に父親を亡くし、これまでに武漢市などに謝罪や情報公開を求めてきたが受理されず、習主席宛ての書簡のほかに、16日、最高人民法院に訴状を送ったという。【11月16日 FNNプライムオンライン】

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こうした訴えがまともに取り扱われることはないでしょう。

無視されるだけならまだいいですが・・・。

 

中国政治の流れは、過激な国家主義への流れであると同時に、国家・党=習近平体制であり、習近平指導部礼賛の流れでもあります。

 

中国共産党は2022年の次期党大会で「党主席制」を復活させ、習近平国家主席が就任する見通しとも報じられています。

 

方方さんは、こうした現況について、「(過酷な経験をした)多くの人は本当の思いを表現したくてもできず、心の中に押しとどめたままだ。ウイルス発生の反省も責任追及もされていない」「形式主義や政治最優先、表面的な繁栄を追求する体質を改めなければ前には進めない。放置すれば全土の人が再度重い対価を支払うことになる」「政治的に正しくないと処分、文革と同じ」と語っています。【11月17日 毎日より】

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