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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ポーランド  大統領、ウクライナ難民を対象とした支援法案に拒否権 背景に世論の変化も

2025-08-27 22:39:52 | 欧州情勢
(【日経】)

【親EU路線の首相・与党と反EU路線の右派民族主義の大統領のねじれ 実権は首相にあるものの、大統領は拒否権発動 ウクライナ難民を対象とした児童手当を延長する法案を大統領拒否、「働いている親のみが受給すべきだ」】
ポーランドでは8年間に及ぶ民族主義政党「法と正義」(PIS)政権が(ハンガリー・オルバン政権と並んで)EUと対立してきましたが、2023年12月、EU大統領も務めたトゥスク元首相を首相とする親EU路線の新政権が誕生し、EUとの関係改善が期待されていました。

しかし、今年6月に行われた大統領選挙決選投票で反EU路線のナブロツキ氏が接戦を制して勝利したことで、大統領と議会の捻じれが続くことに。

*****ポーランド大統領選 反EU路線のナブロツキ氏が接戦制す*****
ポーランドで大統領選の決選投票が行われ、反EUを掲げる右派のナブロツキ氏が接戦を制しました。

(6月)1日に行われたポーランド大統領選の決選投票では、右派政党「法と正義」が推すナブロツキ氏が50.89%の得票率で中道与党のチャスコフスキ氏を破り、当選確実となりました。

現地メディアによりますと、都市部ではチャスコフスキ氏が支持を得たものの、経済規模の小さな地方などでナブロツキ氏に票が集まったということです。

ナブロツキ氏は現在42歳の歴史家で、政治経験はありませんが、先月の第一回投票では2位につけていました。

選挙戦では反EUの姿勢を強調。先月前半にはアメリカのトランプ大統領とも面会するなどしていて、決選投票に進めなかった極右候補らの票も集めて、巻き返しに成功した形です。

ポーランドでは、トゥスク首相ら親EU路線の与党と、右派で反EUの野党の争いが続いています。

政治の実権は首相が握っているものの、大統領には拒否権が与えられていて、今回のナブロツキ氏の勝利で、トゥスク首相は難しい政権運営を迫られることになります。【6月2日 TBS NEWS DIG】
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ナブロツキ氏は8月6日 に正式に大統領に就任しましたが、早速「拒否権」が表面化しています。

****ウクライナ難民支援法案に拒否権 「働く人のみに手当を」 ポーランド大統領****
ポーランドのナブロツキ大統領は25日、国内のウクライナ難民を対象とした児童手当を延長する法案について、「働いている親のみが受給すべきだ」として拒否権を行使した。 就職していないウクライナ人には無償で医療を受けさせるべきではないとも訴えた。  

9月末に失効する児童手当制度を来年3月まで延長する法案は、ナブロツキ氏と対立する親欧州連合(EU)派のトゥスク政権が提出し、議会で可決されていた。

だが、ナブロツキ氏は「母国にいるポーランド国民がウクライナ人よりも悪い扱いを受けている」と主張し、ウクライナ難民向けの社会福祉を削減する法案を提出した。  

2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、隣国ポーランドには約100万人の難民が身を寄せており、その大部分が女性と子供。トゥスク政権を支える与党は議会で拒否権を覆すのに必要な3分の2の議席を有していない。【8月26日 時事】 
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ポーランドにおけるウクライナの避難民向け支援措置はウクライナに米スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」を提供する根拠にもなっているとかで、大統領の拒否権発動でウクライナが「スターリンク」を利用できなくなる恐れが出てきたそうです。

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ウクライナのスターリンク利用に暗雲、ポーランド大統領の法案拒否権発動で****
ポーランドのガフコフスキ副首相兼デジタル化相は25日、同国で暮らすウクライナの避難民向け支援措置延長法案についてナブロツキ大統領が拒否権を発動したため、ウクライナが米スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」を利用できなくなる恐れが出てきたと明らかにした。

ナブロツキ氏は25日、同法案に拒否権を行使するとともに、今後ウクライナ難民による児童手当や医療給付金の利用を制限する計画を表明した。

ガフコフスキ氏によると、この法案はウクライナにスターリンクを提供する根拠にもなっている。ポーランドはウクライナのスターリンク利用料金支払いを負担しており、法案が成立しなければ、ウクライナは利用継続が不可能になりかねない。

デジタル化省の報道官は、ナブロツキ氏の拒否権発動によって10月1日以降、スターリンク利用料金支払いは法的根拠を失うと述べた。

一方大統領報道官はロイターに、大統領が提案した別の法案を9月末までに議会が採択すれば、スターリンク利用料金支払いの根拠は復活する可能性があると語った。【8月26日 ロイター】
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今後も大統領による拒否権発動で、司法改革や社会政策(移民、同性パートナーシップ、妊娠中絶など)について停滞が懸念されています。

【難民支援の長期化に伴い、住宅・教育・医療・労働市場への負担が話題になり、特に 低所得層や地方住民から「自分たちの生活が苦しいのに、なぜ難民優遇なのか」という「不公平感」】
ポーランドには戦前からの労働移民も含めて約150万人のウクライナ人 がいます。その内訳は・・・

難民保護を正式に申請して認められている人はごく少数(約1万人規模)。
大多数(約100万人)は EUの一時的保護(Temporary Protection, 仮保護)制度を利用して滞在しています。これが「およそ100万人規模」と報告されている層です。
残り(数十万人)は戦前から住んでいたウクライナ系移民や労働者(学生・技能労働者など)で、通常の就労ビザや居住許可で生活しています。

ポーランドにおける ウクライナ難民への世論 は、2022年の戦争直後の圧倒的歓迎ムードから、2025年現在はかなり揺らいでいます。整理すると以下の通りです。

*****ポーランドにおけるウクライナ難民への世論*****
1. 初期の反応(2022年)
ロシア侵攻直後は「兄弟国を助ける」という強い連帯感があり、EUの中で最も寛容に難民を受け入れた国でした。
一般市民が駅で無料で食事・住居を提供するなど、草の根の支援が目立ちました。  その背景には、歴史的・文化的な近さ(スラブ系・カトリック多数派)がありました。

2. 2023–2024年の変化
長期化に伴い、住宅・教育・医療・労働市場への負担が話題に。
特に 低所得層や地方住民から「自分たちの生活が苦しいのに、なぜ難民優遇なのか」という声が増えました。
世論調査では、
「ウクライナ難民を支援すべき」意見は 約6割 → 4割程度 に低下。
「支援を制限すべき」意見が拡大(特にPiSや極右政党支持層で顕著)。

3. 2025年のナブロツキ大統領の拒否権と世論
大統領が支援拡充法案に拒否権を行使した際、右派・保守層は「当然。ポーランド人が先だ(Poles first)」と歓迎。 リベラル・都市部は「人道的責任を放棄している」と批判。

世論全体としては「完全に支援をやめろ」までは多数派ではないが、「無条件の長期支援は反対」「働ける人は働くべき」という意見が主流になりつつあります。

2025年8月時点の報道では、難民支援を制限すべきと考える層がやや多数派に傾いていると伝えられています。

4. 難民自身への感情
個人レベルでは「職場で一緒に働くウクライナ人には好意的」だが、「社会保障や補助金で優遇されている」という認識があり、嫉妬や不公平感が募っています。
一部の極右系メディアは「犯罪増加」「文化的脅威」といった言説を拡散しており、これが不信感を助長しています。
【ChatGPT】
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戦争初期(2022年)には、ウクライナ難民支援に賛成するポーランド人は94%に達しましたが、2024年末には57%に低下しました。 Time誌による別の調査では、2023年早期には81%の支持があったものの、これも低下傾向で、2025年春には50%にまで下がったと報じられています。

ただ、ウクライナ難民が経済的にウクライナ社会の「負担」になっているのか?・・・ということに関しては、むしろ難民が支払う税金等の方が大きいという指摘も。

****経済への影響と難民の社会統合****
ウクライナ難民の経済的貢献は大きく、2024年には国内総生産(GDP)の 2.7 % を増加させました。
税収面でも大きな成果があり、 15 億ズウォティ以上(約数十億円規模) の貢献があったとされます。
BGK(国家開発銀行)によると、ウクライナ人は国庫に より多く納めており、受け取る支援よりも高い税収を生む傾向があると分析されています。【ChatGPT】
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****ウクライナ難民はポーランド経済に大きく貢献、悪影響は誤解=国連****
ウクライナ人はポーランド経済に大きく貢献しており、ポーランド人労働者の失業率上昇や賃金低下を引き起こしていないことが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とデロイトが10日に発表した報告で分かった。

ロシアの侵攻から3年以上が経過し、ポーランドではウクライナ避難民への否定的な見方が増ましており、リベラル派とナショナリスト派双方の政治家が、ウクライナ人への福祉給付制限や公共サービスにおけるポーランド人優先を打ち出して民意の取り込みを図っている。

UNHCRは記者会見で、「今回の報告は幾つかの誤解を覆すものだ。難民がポーランド経済に悪影響を及ぼしているとの指摘は真実ではない」と述べた。

ポーランドは100万人以上のウクライナ難民を受け入れており、5月の大統領選では反ウクライナ感情が一因となって極右政党の支持率が急上昇した。ただ、政府内はウクライナの戦争遂行を支援し続けるべきとの考えで一致している。【6月11日 ロイター】
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しかしながら、難民支援の長期化に伴い、住宅・教育・医療・労働市場への負担が話題になり、特に 低所得層や地方住民から「自分たちの生活が苦しいのに、なぜ難民優遇なのか」という「不公平感」が出ているところが問題の中心です。

3年以上が経過し経済・社会的負担が顕在化した結果、徐々に難民支持が揺らいでいます。
警戒感・疲労感が強まり、「無条件支援」よりも「条件付き支援」や「戦後の帰国支持」といった意見が台頭中です。

ナブロツキ大統領による支援法案への拒否権行使や政策見直しの背景には、そうした世論の変化があります。
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ウクライナ  プーチン・トランプ会談の合意とは? トランプ氏、ウクライナのロシア攻撃容認?

2025-08-26 22:39:28 | 欧州情勢
(「人々はショックを受けている。ガソリンはどこだ?」 - ロシアではガソリンスタンドに何キロもの行列ができ、ガソリンスタンドに燃料がない
ロシアではガソリンスタンドから文字通りガソリンが消えつつある。ロシアのドライバーは何キロメートルにも及ぶ列を作って並んでおり、燃料がまだ残っているところでは価格が急騰している。【8月20日 Dialog.ua】

“このガソリン不足は、現状ではまだクリミアや極東域など、ロシアの辺境と呼ぶべき地方での出来事のようです。とはいえ、これはモスクワやサンクトペテルブルクでガソリン不足を起こさせないために中央への供給を優先したためであることは、容易に想像できます。ロシア全体としてガソリンの供給不足となり、それが地方で顕在化したという図式でしょう。現在、ロシアの精製能力の約13%が失われていると言われています。
その原因は、ウクライナの長距離ドローンが、ロシアの製油所やパイプラインを攻撃し、石油製品の製造、供給を阻害しているためです。【8月25日 数多久遠氏 JBpress】)

【プーチン・トランプ会談の合意は何だったのか? 領土割譲 NATOスタイルの安全保障】
ウクライナに関しては8月15日アラスカでのプーチン・トランプ会談において、停戦の未設定・戦争継続下での和平交渉、ドンバス(東部ドネツク、ルハンスク州)全域(現在ウクライナ側が支配を維持している地域を含め)のロシア支配やウクライナの非NATO化、ロシア語の公用語化(事実上の領土割譲)、欧米によるNATO第5条(「1国が攻撃されたら全体で対応する」)に似た集団防衛制度を提供するNATOスタイルの安全保障の許容といった内容で合意したとされています。

事実上の領土割譲については、東部ドンパス地域の非占領地域(ドネツク州の約25%)はウクライナにとって要塞化された国土防衛の要であり、これを戦わずしてロシア側に提供することは容認しがたいところで、ウクライナの拒否が予想されます。また、占領・非占領を問わず、「領土の割譲」ウクライナにおいて憲法上も禁じられているという問題もあります。

ただ、停戦を実現したいのもウクライナの本音で、現在の前線で停戦してロシア占領地域におけるロシアの実効支配を認める「北方領土方式」なら認めるのでは・・・といった話も。

****「北方領土方式」なるもの****
ロシアのプーチン大統領は8月15日にアラスカで行われた米露首脳会談で、停戦条件としてウクライナ軍のドンバス地方からの撤退と全域の割譲を求め、見返りに再攻撃しないことを書面で約束すると提案したが、ウクライナが支配するドネツク州の残る25%から一方的に撤収することは困難だ。  

しかし、現在の前線で停戦すれば、ウクライナはロシアの実効支配を認める構えで、これは「北方領土方式」の決着となる。ロシアがそこまで譲歩しない可能性もあるが、領土線引きの駆け引きが今後激化しそうだ。  

在京のウクライナ外交筋は、「ゼレンスキー大統領は北方領土方式なら受け入れるだろう。ロシアの支配地域を法的にロシア領と認めることはあり得ない」と語った。  

北方4島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)は旧ソ連・ロシアが戦後80年間実効支配するが、日本政府は「4島は法的に日本領」と主張し、外交交渉でロシアに返還を求めてきた。日露間では領土をめぐる武力衝突は一切なく、ウクライナ侵攻前までは正常な関係が維持された。  

「ウクライナ憲法は領土の割譲を禁止しており、大統領が法的に領土を明け渡すことはできないが、実効支配の黙認なら憲法違反にならない」と同筋は指摘した。

疲弊するウクライナにとっては停戦が最優先であり、現在の前線上で戦火を凍結したいようだ。  

80年間ロシアの支配が続く北方領土問題では、ソ連邦崩壊直後の千載一遇の好機を日本外務省が逃すなど、日本側の外交失敗も目立った。現在のロシア占領地にはウクライナ人が多数居住しており、いずれ到来するプーチン後の時代に外交交渉で一定の領土奪還は可能と同筋はみている。【8月24日 Presidennt Online】
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もっとも、「北方領土」の現実に見るように、いったん実効支配を容認した地域の回復というのは、よほどのこと(ロシア側の国家崩壊に近い混乱など)がない限り、あるいはもう一度戦争する覚悟がない限り難しいのが現実ですが。

「安全保障」云々は更に不透明。欧米側は、プーチン大統領がNATOスタイルの安全保障保証を許容したと強調していますが、それはあくまで形式上の合意であり、何を・誰が・どのように保障するかという実務上の中身はまったく不透明です。

その不透明な状況で、欧州側はアメリカがどこまで関与するのか(トランプ大統領は地上軍派遣は否定するも、空軍力での支援は認めるような発言も)という問題を含めて、早急に枠組みを構築したいと議論を進めていますが、ロシア側の意図が不明瞭なことを前提に、「ロシアの反応がはっきりしないうちに、後戻りしにくい既成事実を作ってしまおう」といった意図もあるようににも。

そもそも、「安全保障」の枠組みにロシアが加わるのか?(ウクライナ・欧州からすれば、ロシアの侵略に備えた制度にロシアが参加するというのは奇妙な話にもなりますが、逆にロシアからすれば、あからさまにロシアに敵対するような枠組みを認めることなど考えにくいところ。)

ロシアは、ロシアだけでなく中国やトルコなども加えた拡大安保理みたいな枠組みを提示しています。

****ロ外相 “ウクライナへの安全の保証 複数国の枠組み望ましい”****
ロシアのラブロフ外相は、アメリカメディアのインタビューに応じ、焦点となっているウクライナへの安全の保証をめぐってロシアの立場も尊重されるべきだと強調したうえで、国連安全保障理事会の常任理事国を含む各国が参加するなどロシアなどを含めた複数の国が参加する枠組みが望ましいという考えを示しました。
アメリカのNBCテレビは24日、ロシアのラブロフ外相のインタビューを報じました。

この中で、ラブロフ外相は、ウクライナへの安全の保証をめぐって議論が活発化していることについて「誰も他者の安全を犠牲にしてみずからの安全を強化することはできない」と述べ、ロシアの立場も尊重されるべきだと強調しました。

そのうえで、2022年にトルコで行われたロシアとウクライナとの交渉で、ウクライナの安全の保証について国連安保理の常任理事国にドイツやトルコなどを加えた形で行う案が提示されていたことを思い出すべきだとして、ロシアなど複数の国が参加する枠組みが望ましいという考えを示しました。

一方、同じ番組のインタビューに対し、アメリカのバンス副大統領は「紛争開始からの3年半で初めてロシアはトランプ大統領に対して重大な譲歩を行ったと考えている」と述べたうえで、「重要なことはウクライナの領土の一体性に対して一定の安全保障が提供されることを認めた点だ」と述べました。【8月25日 HNK】
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国連安保理の常任理事国にドイツやトルコなどを加えた形・・・・そんなものをいくらつくっても何らの実効性がないのは現在の安保理が機能マヒしていることを見れば明らかです。プーチン大統領としては、現実には全く機能しない枠組みを「形式上」つくることに同意したということでしょう。

対ロシア対策ということではロシア抜きの軍事的枠組みが不可欠ですが、それをプーチン大統領が認めるとは考えにくい・・・。

結局のところ、プーチン・トランプ会談での合意というのは何だったのか? 今後の議論の道筋となるものなのか?

トランプ大統領側はプーチン大統領に大きな譲歩をさせたと成果を誇示していますが、上記のように今後の実際の交渉では紛糾・停滞しそうな問題ばかり。

****プーチン氏が重大な譲歩? 実際は「アラスカ会談」以前に逆戻り****
ウクライナ戦争に劇的な転換をもたらすと見られていた米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「アラスカ会談」から10日が過ぎた。しかし協議状況は会談前の状態に戻ったという評価が出ている。

トランプ大統領とJ・D・バンス副大統領は会談前に叫んでいた「制裁カード」を再び取り出し、プーチン大統領を圧迫した。それでもびくともしないロシアは、トランプ大統領が力を注いできたロシア・ウクライナ首脳会談に対して拒否意思まで示した。 

バンス副大統領は24日(現地時間)、米NBC放送「ミート・ザ・プレス(Meet the Press)」のインタビューで「制裁はテーブルから外れていない」とし「ロシアを交渉の場に引き出すため適切な圧力を加えられるかを判断する」と述べた。さらに「米大統領(トランプ)には残されたカードが多い」と付け加えた。 プーチン大統領がロシア・ウクライナ首脳会談に消極的な態度を示したことを受け、圧力レベルを高めたのだ。

トランプ大統領も22日、「ロシアとウクライナの態度を見てから我々が何をすべきか決める」としつつ「彼らに途方もない制裁を加えるかもしれないし、あるいは何もしないかもしれない」と述べた。そして「2週間以内に重要な決定を下す」と明らかにした。 

21日には自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「戦争で侵略者の国を攻撃しない限り勝つのは非常に難しい。バイデン(前大統領)はウクライナに防御だけをさせた」と書き込み、ウクライナによるロシア本土攻撃の可能性を示唆した。あわせて自分がプーチン大統領を指さす写真もシェアした。

 しかしトランプ大統領とバンス副大統領の発言は、逆説的に協議状況がアラスカ会談直前の状態に戻ったことを物語っている。トランプ大統領は7月、プーチン大統領がウクライナ攻撃をやめなかった際に「50日の期限を与える」として制裁を警告していた。

ワシントン・ポスト(WP)は「トランプがまたもや『お馴染みの』2週間の猶予を持ち出した」とし「2週間を与えるという言葉は彼が決断をしばらく先送りしたい時にしばしば使う」と解釈した。実際にトランプは5月、記者からロシアに追加制裁をしない理由を問われた際、「2週間以内に分かるだろう」と答えたことがある。

 ただしバンス副大統領は「トランプ大統領がロシアのペースに巻き込まれているのではないか」という質問に「全くそうではない」と反論した。むしろプーチン大統領から多くの譲歩を引き出したと主張した。彼は「過去3年半の戦争でロシアが初めてトランプ大統領に相当な譲歩をした。核心的な要求の一部に柔軟性を見せ始めた」と述べた。 

ロシアが譲歩した具体的内容としては、「戦後にウクライナの領土保全を認めたこと」、「キーウ(ウクライナ)に傀儡政権を樹立できないことを認めたこと」、「ウクライナ領土保全のため一部安全保障が存在することを認めたこと」などが挙げられた。 

しかしロシアが実際に多くを譲歩したのかについては議論の余地がある。ウクライナの領土保全を認めたとはいえ、ロシアは自らが占領したウクライナ領土に加え、ドネツィク内のウクライナ支配地域を含むドンバス(ドネツィク・ルハンシク)全体を要求している。 

ウクライナの安全保障に関しても、ロシア抜きでの議論には同意できない立場だ。ウクライナ安全保障最大の目的がロシアの再侵攻防止であるのに、ロシア自身もこの議論に参加するというのだ。 

ロシアは、トランプ大統領がアラスカ会談の成果物として打ち出してきたロシア・ウクライナ首脳会談についても、事実上の拒否意思を明らかにした。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、バンス副大統領が出演した「ミート・ザ・プレス」と同じ22日、オンラインインタビューで「(ロシア・ウクライナ首脳会談は)予定されていない」とし「会談をするには議題が必要だが、全く準備されていない」と語った。

 一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はプーチン大統領との首脳会談開催を求めている。彼は24日、ウクライナ独立34周年記念式典で「首脳間の対話形式が(戦争を終える)最も効果的な方法だ」と述べた。

ただし「ウクライナは二度とロシア人が『妥協』と呼ぶような屈辱を甘受するつもりはない。我々の未来は我々自身で決める」とし、協議で容易に譲歩する考えはないことを示唆した。【8月26日 中央日報】
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【トランプ大統領 突然のウクライナのロシア攻撃容認】
目を引く点としては、トランプ大統領の“手のひら返し”・・・“「戦争で侵略者の国を攻撃しない限り勝つのは非常に難しい。バイデン(前大統領)はウクライナに防御だけをさせた」と書き込み、ウクライナによるロシア本土攻撃の可能性を示唆した”というところ。

こうしたトランプ大統領の“手のひら返し”を受けたものかどうかは知りませんが、ウクライナはロシアのインフラ攻撃を強めています。

****ウクライナ、ロシアのエネルギー施設への攻撃を強化 日常生活にも揺さぶ****
ウクライナによるロシアの製油所への攻撃が急増し、ロシア国内のガソリン価格が記録的な高値に達している。ロシア政府は供給不足に対処するためガソリン輸出を禁止したが、影響を抑えきれていない。

ウクライナは無人機による製油所やポンプ場、燃料列車への攻撃を強化。ロシアの軍事力に打撃を与えるだけでなく、ロシア国民の日常生活を揺さぶる狙いもある。夏は自動車の利用や農作業でガソリン需要が最も高まる時期だ。

CNNの集計によれば、ウクライナの無人機は今月だけで少なくとも10カ所の主要なエネルギー施設を攻撃した。(後略)【8月24日 CNN】
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このウクライナのロシア製油所への攻撃はかなりロシアへのダメージを与えているようです。

****ウクライナのエネ施設攻撃、ロシア戦時経済の急所突く 国民生活に影響****
ウクライナがロシアの石油精製・輸出施設へのドローン攻撃を拡大している。 一連の攻撃で、ロシア国内の石油精製や輸出に支障が生じ、一部地域でガソリン不足が発生。戦争を続けるプーチン大統領にとって経済的に最も重要な分野に打撃を与えようとしている。

ウクライナの狙いは、前線におけるロシアの進撃を食い止め、ウクライナ側のエネルギー関連施設へのロシアの攻撃に対抗するとともに、今後開催される可能性がある和平協議で自らの立場を強め「ウクライナはもう戦争に負けた」という見方を否定することだ、と複数のアナリストは説明する。

ロシアは石油・天然ガス輸出収入が歳入の4分の1を占め、今年25%増額されて冷戦時代以来の規模になった国防関連予算の財源になっている。

今のところロシア経済は西側諸国による制裁に耐えているが、成長率は鈍化し、政府内で懸念が高まりつつある。

<ガソリンスタンドに行列>
ロイターの計算では、ウクライナが実施したロシアの10カ所の施設への攻撃で、ロシアの石油精製能力の少なくとも17%、日量110万バレル相当が打撃を受けたもようだ。【8月26日 ロイター】
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また、ウクライナはロシアの領土奥深くまで射程に入る重量級の長距離射程ミサイル「フラミンゴ」を開発しています。このミサイルをが量産できれば、これまで領土の奥深くに避難させるというロシア側の防御態勢を崩して大きな被害を与えることができます。
“ウクライナ新型ミサイル「フラミンゴ」は、ロシアの戦略的奥行きを無効化し得る=欧州専門家”【8月22日 ukrinform】

トランプ大統領の“手のひら返し”は、一般にはその直前に行われたウクライナ・ムカチェヴォにあるアメリカ企業フレックス(Flex)に対するロシアの攻撃にあると言われています。

しかし、トランプ大統領のいきなりの方針転換は、ウクライナの今後の攻勢を認めて、“勝ち馬”に乗っかろうという対応だとの指摘も。
“「ロシアを攻撃しなければウクライナは勝てない」 トランプ大統領が突然“転向表明”した理由は何か”【8月25日 数多久遠氏 JBpress】

ただ、今の段階でウクライナ側のロシア領内エネルギー施設への攻撃、そうした攻撃を可能にする重量級長距離射程ミサイルの開発を持って、ウクライナを“勝ち馬”と見なすほどの“ゲームチャンジャー”とも思えませんが・・・

「侵略国を攻撃せずに戦争に勝つことは、不可能ではないにせよ、きわめて困難です。それは、スポーツで素晴らしい守備力を持つチームが、攻撃を許されない状況に似ています。勝利のチャンスはありません! ウクライナとロシアの関係も同様です。不正でひどく無能なジョー・バイデンは、反撃することをウクライナに許さず、ただ防御させるだけでした。その結果はどうなったでしょうか?」(トランプ大統領 8月21日のSNS投稿)

この投稿が本気なら、今後アメリカはウクライナのロシア本土攻撃を武器の面でも支援するということになりますが、本当でしょうか? プーチン大統領を敬愛するトランプ大統領が、そんなプーチンを怒らせるようなことをするでしょうか?

トランプ大統領の場合、特に思い付きの無責任発言が多いので、実際の行動をチェックする必要があります。
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イギリス  政府借り上げで一時的に難民申請者を住まわせる「難民ホテル」に対する抗議デモ

2025-08-25 23:08:53 | 難民・移民
(難民申請者が滞在しているホテルの前で滞在に抗議するデモの参加者=英ロンドン郊外チェスハントで2025年8月22日、ロイター【8月24日 毎日】)

【「難民ホテル」前で続く抗議デモ 高等法院が、ホテルに難民申請者を滞在させることを禁じる仮処分命令 同様訴え・措置が拡大することも】
欧州各国で、移民・難民への批判的な世論の高まりを背景に、SNSでの偽情報拡散もあって移民排斥的な極右勢力が台頭していることは、7月22日ブログ“欧州で相次ぐ移民と極右勢力の衝突 極右勢力によるSNSなどでの偽情報を含む煽りで暴動にも”でも取り上げました。

事情はイギリスでも同様で、昨年就任したスターマー首相は不法移民の流入を抑制するため「ギャングを壊滅」することを公約に掲げていましたが、今年1─6月にドーバー海峡を渡ってイギリスに到着した移民は2万人と、前年同期比で約50%増加しています。

こうした状況を背景に移民に批判的なポピュリズム政党「リフォームUK」が二大政党を抑えて支持率でトップに躍り出ています。
スターマー首相としても、事態を傍観している訳ではなく、いろいろな対応策を講じてはいます。

****イギリス、フランスに不法移民を送還する枠組みを発表、数週間以内に試験実施****
イギリス政府は10日、英仏海峡を渡って小型ボートで到着した移民をフランスに送還する新たな試験的枠組みを、数週間以内に開始する方針を明らかにした。キア・スターマー首相が発表した。

この「1人受け入れ、1人送還」方式の合意に基づき、イギリスは到着した一部の移民をフランスへ送還する一方で、同数の難民を安全審査を経た上で受け入れるという。

スターマー首相は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の3日間にわたる国賓訪問の締めくくりとして共同記者会見に臨み、英仏のこの計画によって、小型ボートで英仏海峡を渡ろうとしても「無駄に終わる」と示すことになると述べた。

一部報道では、週あたり最大50人が送還される見通しとされているが、スターマー首相は具体的な人数については言及を避けた。【7月11日 BBC】
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上記枠組みに沿って、8月6日には最初のボートによる不法移民グループが拘束され、フランスへの送還手続きが行われています。

****密航業者に制裁、英政府 不法移民対策を強化****
英政府は(7月)23日、小型ボートによる不法移民の取り締まりを強化するため、密航業者に制裁を科したと発表した。24個人と1団体が対象となった。(中略)

政府は今年1月に制裁に関する新体制の概要を発表。小型ボートの提供、文書偽装、ハワラ(地下送金システム)の利用に関与した個人・団体に制裁を科す。

今回、制裁対象になったのは、密航を請け負ったイラク系の7人、偽造旅券を用意したバルカン半島出身者8人のほか、オンラインで密航用の小型ボートを宣伝した中国企業1社、ベルギーとセルビアで活動する複数の「ギャングのボス」という。【7月23日 ロイター】
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そうしたなかで、ここのところ反移民感情の標的となっているのが難民申請者が滞在しているホテル。
ホテルの滞在者が近所で14歳の少女に性的行為をしようとした疑いなどで逮捕・起訴されたこともあって、住民による抗議デモも。そうしたデモにはリフォームUKのような極右団体も組織的に関与しています。

****英国で「移民ホテル」への抗議デモ拡大 裁判所の退去命令で波紋も****
英国の高等法院が、ロンドン郊外のホテルに難民申請者を滞在させることを禁じる仮処分命令を出し、波紋を呼んでいる。反移民感情が高まる中、同様の処分を求める申し立てが他の自治体にも広がる可能性がある。不法移民の流入に歯止めをかけられないスターマー政権(労働党)にとって新たな頭痛の種となっている。

少女に対する事件が契機
「彼らを追い出せ」「子供たちを守ろう」
ロンドン郊外のエッピング。英政府が借り上げ、難民申請の結果を待つ不法移民に無償で提供するホテル前で7月中旬から、ホテルの閉鎖などを求める反移民デモが連日のように続く。ホテルには約140人の移民男性が滞在しているとされる。
デモのきっかけは7月上旬、ホテルの滞在者が近所で14歳の少女に性的行為をしようとした疑いなどで逮捕・起訴されたことだった。被告は容疑を否認しているが、地元警察によると、デモには多い日で約2000人が参加した。移民擁護のカウンターデモも発生。暴力行為も起き、これまでに16人が訴追された。

混乱が収まらないため、エッピング・フォレスト地区議会(自治体と一体)は8月12日、高等法院に対し、このホテルでの難民申請者の滞在を禁止するよう申し立てた。地域の緊張の高まりに加え、ホテルの目的外使用は「都市計画上、許可されていない」と主張した。同議会は移民に厳しい立場を取る保守党が多数派を占めている。

高等法院は18日、議会側の主張を認めた。仮処分命令では、9月12日までにホテルの滞在者を退去させるよう求めた。10月から改めて審議し、命令が妥当かどうか最終判断する。移民たちの移送先は不明だが、英メディアによると、別のホテルになる可能性があるという。

数千億円の公金支出
小型ボートなどで英国に渡る中東やアフリカ出身の不法移民が後を絶たない中、住宅不足もあり、英政府は国内約200カ所のホテルを不法移民の一時滞在先としている。

内務省は今月21日、6月末までの1年間の難民申請者数が11万1000人と過去最多を記録し、約3万2000人がホテルに滞在していると発表した。政府はホテルの借り上げ費用として年間20億~30億ポンド(約4000億~6000億円)を支出している。

物価高による生活苦を背景に、こうした「移民ホテル」に対する抗議デモはロンドン市内を含め国内各地で起きている。英紙ガーディアンなどによると、デモには極右活動家も組織的に関与しているとみられる。

勢いづく右派 支援団体は懸念
「今こそ全ての移民ホテルを空にするために圧力を強め、英国に居場所のない不法移民を拘束・送還すべきだ」
右派ポピュリスト政党「リフォームUK」のファラージ党首は19日、「エッピングが勝利の道を示した」と題した英紙テレグラフ(電子版)への寄稿で、そう主張した。また、「私が率いる党が支配する地方議会はエッピングの先例に続くために全力を尽くす」と表明した。

反移民などを掲げて支持を伸ばすリフォームは5月の地方選で大勝し、10以上の地方議会で第1党となった。リフォームや保守党が議会を牛耳る地域に加え、労働党が多数派の地域も含む30以上の自治体が、エッピングと同様の申し立てを検討しているとの報道もある。

一方、今回の仮処分命令に対し、複数の難民支援団体は声明で「戦争や迫害からの保護を求めて英国に来た人々は尊厳を持って扱われるべきだ」などと懸念を表明した。

「難民評議会」の代表、エンベル・ソロモン氏は「ホテル滞在は高額な税金を使い、難民申請者を地域で中ぶらりんの状態にする措置で、間違っている」と指摘。地域社会から隔離されない滞在施設の整備と、難民申請の迅速な処理を政府に求めた。

不法移民問題で支持率低迷
不法移民対策に手を焼くスターマー政権の支持率は低迷している。8月の英調査会社ユーガブの世論調査では、スターマー首相を「好ましい」と答えた人は24%にとどまり、「好ましくない」の68%を大きく下回った。

英仏首脳は7月、フランスから小型ボートで英国を目指す不法移民を巡り、「1人を英国で受け入れるごとに、1人をフランスに送還する」という新たな対策で合意した。ただ、英国への流入減少につながるかは不透明だ。【8月24日 毎日】
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【難しい「難民ホテル」代替策】
借り上げに高額な税金投入を要する「難民ホテル」に代えてどういう方法で難民申請者を収容するのか・・・という話になると、なかなか対応が難しいのが現実です。

****英高裁が「難民ホテル」の使用差し止め認める...宿泊施設の不足で3万人以上の難民申請者に影響****
<王立裁判所はイングランド南東部のホテルに滞在する難民申請者約140人の退去を命令。難民申請者の宿泊施設として使うのは用途変更で事前の許可が必要だとした>

英イングランド南東部エセックス州のエッピング・フォレスト地方議会はホテルが本来の用途ではなく「難民申請者の宿泊施設」に使われるのは用途変更に当たり事前の許可を得なかったのは違法としてホテル側に「難民ホテル」としての使用差し止めを求めた。(中略)

王立裁判所(高裁)は地方議会の差し止め請求を認め、9月12日午後4時までにホテルに滞在する難民申請者約140人を退去させるよう命じた。(中略)

「差し止めは難民政策を混乱させる」
英内務省は「差し止めは英国全体の難民政策を混乱させる。『難民ホテル』以外の宿泊施設が不足している」と弁明している。ホテルの運営会社は上訴を検討しており、最終の司法判断は秋に持ち越される可能性がある。

高裁判決が英国政府の難民政策、難民ホテルの運営に影響を与えるのは必至。今も200カ所を超える難民ホテルに約3万2000人が滞在しており、難民ホテルを抱える他の地方議会も法的措置の検討を始めた。保守系、強硬右派の野党は同様の訴えを起こすよう呼びかけている。

最大野党・保守党のケミ・ベーデノック党首は高裁判決を「地域社会を守る勝利」と称賛し、難民申請者をホテルに収容するスターマー政権(労働党)の政策に対して差し止め請求訴訟を起こすよう促す書簡を保守党が率いる地方議会に送付した。

「『クズ野郎』と呼ばれソーダ缶を投げつけられる」
労働党寄りの英紙ガーディアン(8月20日付)によると、イベット・クーパー内相は次期総選挙までに難民ホテルを閉鎖するという今の計画を維持する方針だ。労働党は「難民制度を壊した張本人による偽善」と保守党を逆に批判している。

難民ホテルの数は前保守党政権時に約400カ所に達したが、現在は半減しており、滞在者数もピーク時より2万人減少したと指摘している。他の地方議会が同じように差し止め訴訟で勝訴すれば、スターマー政権は早急に代替の宿泊施設を確保する必要に迫られる。

労働党が率いる地方議会も難民ホテル閉鎖の法的措置を検討している。

立ち退きさせられるソマリア出身の難民申請者はガーディアン紙に「抗議活動の間、部屋に閉じ込められていた。外に出ると『クズ野郎』と呼ばれ、ソーダ缶を投げつけられた。英国でこんな目にあうとは思わなかった。もっと親切だと思っていたのに」と嘆いている。

EU離脱で英仏海峡を渡るボート難民が激増
内務省は難民申請者を収容・生活支援する義務を負う。最初は「一時的収容施設」(ホテル、ホステル、専用の宿泊施設)に収容し、その後「分散収容」(シェアハウスや家族向け住宅)に移す。収容対象は2019年末の4万7000人から昨年末には11万人に膨れ上がった。

欧州連合(EU)離脱でフランスとの協力関係が崩れ、小型ボートで英仏海峡を渡る難民が激増した。英オックスフォード大学移民・難民観測所によると、難民申請者1人1日当たりの費用はホテル170ポンド(3万3760円)。他の収容形態なら27ポンド(5362円)。

コスト面で6倍以上の開きがある。賃貸住宅市場は逼迫、インフレと連動して家賃は高騰し、近隣住民の反対運動も多発している。

難民ホテルに依存する政策は限界に達している。旧軍施設、はしけ、客船を利用する計画もあったが実績に乏しく、英国政府の選択肢は限られている。【8月22日 Newsweek】
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現在イギリスでは家賃高騰が社会問題化しており、「移民・難民収容のために賃貸住宅が不足し、家賃が高騰している」といった移民・難民問題と連動すると更に社会不安を煽ることにもなりかねません。

****ホームレス問題担当の英政権幹部 自身が所有する物件の家賃大幅値上げで辞任****
インフレの影響で家賃の高騰が深刻なイギリスで、ホームレス問題を担当していた政権の幹部が自身が所有する物件の家賃を大幅に値上げしたことなどを理由に辞任に追い込まれました。  7日付で政務次官を辞任したのはイギリスの労働党政権でホームレス問題を担当していたルシャナラ・アリ下院議員です。  

イギリス紙「アイ」によりますと、アリ氏は去年11月、自らが所有するロンドン東部の物件の入居者4人に対して「物件を売りに出すため」として退去を求めました。  

その後、半年以内に家賃を14万円ほど値上げして月額約79万円で新たに入居の募集をかけたということです。  

イギリス政府が現在、審議中の法案では物件の借主を守るため、物件を売りに出す目的で賃貸契約を解消した場合、半年間は賃貸物件とすることができないとしていて、「政府の姿勢に反する」と非難が相次いでいました。  

イギリスでは家賃の高騰が深刻で、ロンドンの平均家賃は去年12月の時点で約44万円と前の年に比べて11.5%値上がりしていて、その対策が政府の重要課題となっています。 【8月8日 テレ朝NEWS】
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ロンドンの平均家賃は去年12月の時点で約44万円・・・・どうしたらそんな家賃を負担できるのでしょうか。家賃に対する国民の不満は相当に強いものが予想されます。それが移民・難民問題で火が付くと大きく炎上することになります。
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パレスチナ  国連グテーレス事務総長はガザの状況を「飢饉」と宣言したうえで「人類の失敗」と

2025-08-24 23:10:44 | パレスチナ
(パレスチナ自治区ガザ地区ガザ市で、慈善団体の炊き出しから炊き込みご飯を受け取るために押し合うパレスチナの少年(2025年8月23日撮影)【8月24日 AFP】)

【イスラエル国内でも停戦・人質解放を求める大規模デモ 野党ガンツ氏「統一政府」樹立要請】
パレスチナ・ガザ地区の状況については度々取り上げていますが、残念ながら事態は悪化するばかりです。

イスラエルはガザ市全域の制圧・占拠に向けた地上攻撃の「予備的な行動」を開始しています。今後多くの住民が再度の避難を強いられることになります。

****イスラエル軍、ガザ市制圧作戦の第1段階を開始と発表****
イスラエル軍は20日、パレスチナ・ガザ地区のガザ市全域の制圧・占拠に向けた地上攻撃の「予備的な行動」を開始し、すでに同市の郊外を掌握したと発表した。

軍報道官によると、部隊はすでにガザ市のゼイトゥンとジャバリアの両地区で作戦を展開し、攻撃の足固めをしているという。この作戦は、イスラエル・カッツ国防相が19日に承認したもので、今週中に安全保障内閣に提出される。

イスラエルはこの作戦のため、予備役の兵士約6万人を9月初めに向けて招集する。

ロイター通信によると、ガザのイスラム組織ハマスは、イスラエルが「罪のない民間人に対する残虐な戦争」を続けるために停戦合意を妨害していると非難している。

イスラエルによるガザ市占領計画の準備が進むにつれ、同市のパレスチナ人数十万人に避難命令が出され、ガザ南部の避難所への移動を命じられることが予想される。【8月21日 BBC】
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イスラエル・ネタニヤフ首相の頑なな姿勢に欧州などでは批判が高まり、「パレスチナ国家承認」などの動きがひろまっていますが、イスラエル国内でも戦争の拡大よりも停戦と人質解放を優先させるべきとの声も根強くあります。

****イスラエルで大規模デモ、ガザ紛争の終結と人質解放求める ガザ市への空爆続くなか****
イスラエル各地で17日、パレスチナ・ガザ地区での戦争の終結と、イスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放を求める抗議デモがあり、数十万人が参加した。 最大規模の集会はテルアヴィヴの「人質広場」で行われた。

主催者は、ガザ市の掌握を目指すイスラエル政府の新たな作戦により、現在もハマスに拘束されている約20人の人質の命が危険にさらされると警告している。

全国規模の抗議活動の一環として実施された1日限定のストライキでは、一部地域で道路やオフィス、大学などが閉鎖された。日中には約40人が逮捕された。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は抗議活動を批判し、「ハマスの態度を硬化」させ、人質の解放を遅らせるだけだと述べた。

極右のベザレル・スモトリッチ財務相も、「ハマスの利益になる有害なキャンペーンだ」と非難した。

イスラエルの安全保障内閣は先に、ガザ地区最大の都市であるガザ市を占領し、住民を退去させる方針を決定した。この方針は、国連安全保障理事会によって非難されている。

ハマスが運営するガザ市当局はBBCに、イスラエル軍による連日の空爆により「壊滅的な状況」が生じており、ガザ市南部のザイトゥン地区から数千人の住民が避難したと述べた。

国連によると、ガザではすでに、人口の約90%に当たる約190万人が避難を余儀なくされている。

国連はまた、ガザで広範な栄養不良が発生していると指摘しており、同機関が支援する専門家らは先月の報告書で、「最悪の事態である飢饉(ききん)が現実となっている」と警告している。

ハマスは2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質として拘束した。これを受けたイスラエルの攻撃により、これまでに6万1000人以上のパレスチナ人が殺害されていると、ハマスが運営するガザ保健省は発表している。国連は、この数字を信頼できるものとみなしている【8月18日 BBC】
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最大都市テルアビブ(都市圏人口268万人)では50万人がデモに参加したとも。
イスラエルの人口は997万人ですから、「数十万人規模」というのは日本で考えるよりはインパクトのある数字です。

****「今すぐ停戦交渉合意を」エルサレムで大規模デモ****
イスラエル各地で23日夜、パレスチナ自治区ガザでの停戦と人質解放を求める大規模なデモが開かれた。イスラエル政府がガザ市の制圧作戦を着手する中で、エルサレムでは参加者たちが「今すぐに交渉に合意を」と叫んだ。【8月24日 読売】
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従って、ネタニヤフ首相としても停戦交渉を無視する訳にもいきませんので、戦闘の拡大・強化と併せて、ハマスとの停戦交渉開始も指示はしています・・・・どこまで本気かはわかりませんが。

****イスラエル首相 ガザ停戦案の交渉開始を指示も合意は不透明****
パレスチナのガザ地区をめぐり、イスラム組織ハマスが仲介国が提案した停戦案に同意しイスラエル側の対応が焦点となる中、ネタニヤフ首相は交渉を始めるよう指示したことを明らかにしました。ただ、解放する人質の人数などについて双方の主張に隔たりがあり、合意につながるかは不透明です。

ガザ地区で続くイスラエルとハマスの戦闘をめぐっては今月18日、仲介国が示した停戦案にハマスが同意し、イスラエル側の対応が焦点となっていました。

こうした中、イスラエルのネタニヤフ首相は21日「直ちに交渉を始めるよう指示した」と述べ、ハマスが同意した停戦案について協議する意向を初めて示しました。

ただ、停戦案では、ハマスが一部の人質を解放するとされているのに対し、ネタニヤフ首相は全員の解放を求めるなど、双方の主張に隔たりがあり合意につながるかは不透明です。

ネタニヤフ首相は協議する意向を示す一方で、ガザ地区最大の都市ガザ市の制圧とハマスの打倒に向けて、軍が示した作戦計画を承認する考えも示しました。

この作戦をめぐっては、人質の家族らが「人質を危険にさらす」として反対するなど、国内でも非難の声が上がっていますが、ネタニヤフ首相は「人質全員の解放とハマスの打倒は密接に関連している」と述べ、軍事的な圧力を緩めない姿勢を強調しました。

人質の親族「停戦案に今すぐサインを」
ガザ地区で拘束されているイスラエル人の人質の家族などで作るグループが21日、会見し、ガザ市の制圧などに向けた作戦の影響で人質の命が失われる前に、停戦案に同意するようイスラエル政府に求めました。

このうち、ガザ地区周辺の集落から連れ去られた30代の人質の親族は「停戦案に今すぐサインしなければならない。人質の解放と戦争の終結がイスラエルの未来を確かなものにし、家族の癒やしや兵士の帰還を可能にする」と訴えました。

イスラエルでは、政府がガザ市の制圧などに向けて軍事作戦を拡大するとした方針に対し、抗議の声が広がっています。

最大の商業都市テルアビブで今月17日に行われたデモには、主催者の発表で50万人近くが参加しました。【8月22日 NHK】
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停戦交渉開始を指示してはいますが、あくまでも徹底した戦争遂行を求める極右政権に支えられるネタニヤフ首相としては政権維持のためには戦争を止めることができないと見られています。

ライバル野党政治家ガンツ氏からは、極右を排除して統一政府を樹立し、人質解放最優先で取り組むべきとの提案も。

****イスラエル野党ガンツ氏、統一政府要請 人質解放を最優先に****
イスラエル野党「国家団結党」を率いるベニー・ガンツ元国防相は23日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、パレスチナ自治区ガザ地区で拘束されている人質の解放を視野に、野党のメンバーと共に統一政府を結成するよう呼びかけた。

ネタニヤフ現政権は、ガザでの戦闘終結やイスラム組織ハマスとの合意に反対する極右勢力の支持に依存している。 

ネタニヤフ氏のライバルであり、開戦当初には政権に参加していたガンツ氏は、人質解放の合意を目指す一時的な連立を提案した。これは極右勢力を政権から排除することにもつながる。 

「私は声を持たない人質たちのためにここにいる。私は叫ぶ兵士たちのためにここにいるが、現政権は誰も彼らの声を聞いていない」とガンツ氏はテレビ会見で述べた。 

さらに「わが国の義務はまず第一に、ユダヤ人とすべての市民の命を救うことだ」と強調し、野党「イェシュアティド」率いるヤイル・ラピド前首相や、同じく野党「わが家イスラエル」率いるアビグドール・リーベルマン前財務相にも検討を呼びかけた。 

ラピド氏とリーベルマン氏はこれまで、ネタニヤフ氏が主導する政権への参加を拒否している。 

ネタニヤフ氏の連立政権は、ユダヤ教神学校の学生を軍に徴兵する法案をめぐって超正統派政党の支持を失い、夏季休会明けには崩壊の危機に直面するとみられている。 

ガンツ氏の呼びかけに対し、政権から排除される可能性のある極右のイタマル・ベングビール国家治安相は即座に反発した。 「右派の有権者は右派の政策を選んだのであって、ガンツの政策でも中道政権でもハマスとの降伏合意でもない。求めているのは絶対的な勝利だ」と述べた。 

イスラエル国内では、政府にガザでの戦争終結を求める圧力が強まっており、人質解放を求める大規模な抗議行動が続いている。【8月24日 AFP】
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【国連「飢饉」を宣言 求められる「行動」】
一方、ガザの飢餓を否定するネタニヤフ政権に対し、国連グテーレス事務総長はガザの状況を「飢饉」としたうえで「これは人為的な災害で、道義的な非難に値し、人類そのものの失敗だ」とイスラエルの対応を厳しく批判しています。

****ガザ市の飢饉は「人類の失敗」と国連事務総長、専門機関が最高レベルの危機を報告****
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は22日、パレスチナ・ガザ地区のガザ市とその周辺地域で起きている飢饉(ききん)は「人類の失敗」だと述べた。

これは、国連が支援する総合的食料安全保障レベル分類(IPC)が最新の報告書で、同地域の食料不安状況を最も深刻なレベルの「フェーズ5(壊滅的飢餓または飢饉)」に引き上げたことを受けた発言。

IPCによると、ガザ全域で50万人以上が「飢餓、困窮、死」によって特徴づけられる「壊滅的」な状況に直面している。

グテーレス事務総長は、「ガザの生き地獄を表現する言葉が尽きたかに思えたその時、新たな言葉が加わった。それが『飢饉』だ」と述べた。

事務総長はまた、この状況に「謎はない」とした上で、「これは人為的な災害で、道義的な非難に値し、人類そのものの失敗だ」と強調。さらに、イスラエルには「国際法の下で明確な義務がある」とし、「住民への食料や医療物資の供給を確保する責任がある」と述べた。【8月23日 BBC】
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グテーレス事務総長の発言はそのとおりですが、もはや単に「言う」だけでなく、実際の状況改善に繋がる何らかの行動を必要としています。

****炊き出しに群がるパレスチナ人、国連のガザ飢饉宣言「遅すぎる」****
国連がパレスチナ自治区ガザ地区での飢饉(ききん)を公式に宣言した翌日も、ガザ市の炊き出し所では必死に食べ物を求める市民の姿が見られた──。

イスラエルが拡大する軍事攻勢の一環として制圧を計画しているガザ市から送られてくるAFPの映像には、食料を求めて混乱の中で押し合う数十人の人々の中に、女性や幼い子どもが混じっている様子が見て取れる。

炊き出し所では、少年が調理用の大釜の内側から残り少ない米粒を手でかき集めていた。また別の少女はテントの端に座り、地面に置かれたプラスチック袋から米をすくっていた。

「家も食べ物も収入もなくなった。だから炊き出しに頼るしかないが、それでも空腹は満たされない」と、北部ベイト・ハヌーンから避難してきたユセフ・ハマドさんは語った。

ガザ地区中部デイル・エル・バラの炊き出し所では、ウム・モハマドさんが「国連の飢饉宣言はあまりにも遅すぎた」と述べ、子どもたちは「食べ物と水が不足しているため、めまいでふらつき、起き上がることができない」と訴えた。

国連は22日にガザでの飢饉を公式に宣言し、22か月以上にわたる戦争中にイスラエルが援助を「組織的に妨害」したと非難した。

この国連の宣言に対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「完全な嘘」と即座に否定した。

この否定を受けて、国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリニ事務局長は「イスラエル政府はガザで自らが引き起こした飢饉を否定するのをやめるべき時だ」と述べ、「影響力のある人々は決意と道徳的責任感を持って行動すべきだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

急性の飢餓の指標である「IPC」では、飢饉が9月末までにデイル・エル・バラとハンユニスに拡大し、ガザの約3分の2を覆うと予測されている。

一方、イスラエル軍はパレスチナへの爆撃を続けており、AFPの映像ではガザ市ゼイトゥン地区の上空に濃い煙が立ち上る中、人々が建物の残骸を掘り起こしている様子が確認できた。

■「終わりが近いように感じる」
ガザの民間防衛機関のマフムード・バッサル報道官は、サブラとゼイトゥンの状況を「著しく壊滅的」と呼び、「全住宅エリアの完全な平坦化」が起きていると説明した。

「ここに閉じ込められ、恐怖の中で生きている。ガザのどこにも安全な場所はない。今動けば死に至る」と、ゼイトゥンの北部郊外に避難したアフマド・ジュンディエさんは語った。

「爆撃の音が絶えず聞こえる。戦闘機、砲撃、無人機の爆発音まで聞こえる」とAFPの電話取材で語った。
「みんな非常に恐れている。終わりが近いように感じる」

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は22日、イスラム組織ハマスが武装解除し、領内の残りの人質をすべて解放し、イスラエルの条件で戦争を終わらせない限り、イスラエルはガザ市を他の地域と同様に破壊すると発言した。

マフムード・アブ・サケルさんは、イスラエルがガザ市を占領する計画を発表して以来、住民の脱出が加速しているとAFPに述べた。
「今朝だけで500から600家族以上が去り、昨日は数千家族が去った」とし、「朝からの爆発音が皆を追い立てている」と続けた。(後略)【8月24日 AFP】
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台湾  頼清徳総統、防衛費を2030年までにGDP比5%に トランプ大統領要求に応える形

2025-08-23 23:13:38 | 東アジア
(海軍艦隊指揮部168艦隊を視察する頼清徳総統(手前右)=8月22日【8月22日 フォーカス台湾】)

【頼清徳総統、防衛費を2030年までにGDP比5%に】
台湾の頼清徳総統は15日、第2次世界大戦の終戦記念日に合わせてフェイスブックに投稿し、「侵略は敗北につながる」と主張、権威主義が再び勢いを増す中、自由と民主主義が重要だと訴えています。
中国には直接言及しなかったものの、軍事的圧力を強める中国をけん制する狙いがあるとみられています。【8月15日 ロイターより】

一方の中国・習近平国家主席が台湾侵攻をどのように考えているか・・・誰にもわかりませんし、習近平氏自身も多分に状況次第という部分もあるでしょう。

トランプ米大統領によれば、習近平国家主席はアメリカがトランプ政権である限り台湾を巡り動かないと述べている・・・とのことですが、どういう意図で習近平氏がそんな発言をしたのか疑問です。そもそも、そんな発言が本当にあったのかすら疑問、なんせすべてを自分に都合のいいようにしてしまうトランプ大統領の言うことですから・・・。

****トランプ氏、自分が大統領でいる限り中国の習氏は台湾巡り動かず****
トランプ米大統領によれば、中国の習近平国家主席は米国がトランプ政権である限り台湾を巡り動かないと述べている。

トランプ氏がアラスカ州で15日に行われたロシアのプーチン大統領との首脳会談に向かう途中、FOXニュースとのインタビューで明らかにした。

「私がここにいる限り、そんなことが起きるとは到底思えない」とトランプ氏は話し、習氏は「『あなたが大統領でいる間は決してない』と私に言った」という。【8月17日 Bloomberg】
**********************

『あなたが大統領でいる間は決してない』・・・・トランプ大統領、夢でも見たのかも。それならまだいいが、何らかの意図でウソを広めようとしているなら、もっとたちが悪い。

トランプ大統領の妄言をあてにはできないので、台湾頼政権は防衛費を増額して中国の侵攻に備えています。

****台湾防衛費GDP比3%超、26年度予算 中国威圧の中拡大****
台湾行政院(内閣)の卓栄泰院長(首相)は21日、来年度予算案を発表した。中国の政治的・軍事的圧力が強まる中、防衛費は域内総生産(GDP)比3%以上に増額した。前年度比で22.9%増となる。

2026年度の防衛費は9495億台湾ドル(312億7000万米ドル)。GDP比で3.32%と09年以来初めて3%を超えた。

卓院長は会見で「国家の主権と安全を守り、インド太平洋地域の安定と安全を維持し、世界に対し共通の責任を果たすという決意と能力を世界と国民に改めて具体的に示すものだ」と述べた。

「北大西洋条約機構(NATO)モデル」に倣い、防衛費には海巡署(沿岸警備隊に相当)や退役軍人向けの予算も含まれると説明した。

トランプ米政権は台湾に防衛費増額を求めている。頼清徳総統は今月、来年の防衛費をGDPの3%以上に引き上げたいと述べていた。

台湾高官は、防衛費に海巡署の予算が計上されるのは初めてとロイターに語った。海巡署は頻繁に中国海警局とにらみ合い状態になっており、中国の威圧行動の「最前線に立っている」と指摘した。【8月21日 ロイター】
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更に、頼清徳総統は防衛費を2030年までに域内総生産(GDP)比5%まで引き上げたいと表明しています。

****台湾、防衛費を2030年までにGDP比5%に 総統表明****
台湾の頼清徳総統は22日、防衛費を2030年までに域内総生産(GDP)比5%まで引き上げたいと表明した。米国が台湾に求めてきた軍事予算増強の目標を引き上げた形だ。

台湾行政院(内閣)の卓栄泰院長(首相)は21日、来年度予算案を発表。中国の政治的・軍事的圧力が強まる中、防衛費をGDP比3.32%に増額した。

頼総統は台湾北東部の海軍基地を訪れ、中国の脅威が近年増していると指摘。30年までに防衛費を北大西洋条約機構(NATO)基準のGDP比5%に引き上げたいと述べた。

総統府が提供した動画によると、頼氏は「これは国家の安全保障を守り、民主主義、自由、人権を保護するわが国の決意を示すだけでない。国際社会と肩を並べ、共同で抑止力を発揮し、インド太平洋地域の平和と安定を維持する意志も示すものだ」と語った。【8月22日 ロイター】
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【トランプ大統領 欧州・アジアに「5%」要求】
「5%」という数字の背後にはアメリカ・トランプ政権の要求があります。

****NATO加盟国、防衛費引き上げ「5%」目標合意-集団防衛も再確認****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国は25日、オランダ・ハーグで開いた首脳会議で、防衛費支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる新たな目標で合意し、集団防衛へのコミットメントを再確認した。ロシアが攻撃的な姿勢を強める中で、歴史的な判断を下した。

安全保障への支出が足りないと欧州の同盟国を繰り返し非難していたトランプ米大統領にとって、NATO加盟32カ国の決定は大きな勝利だ。

ヘグセス米国防長官は5月末のシンガポールでの演説で、日本を含めたアジアの同盟国に対しても、防衛費をGDP比5%に向け増やすよう要求した。

トランプ氏は首脳会議に向かう途上でも、NATOの根幹を成す北大西洋条約第5条が規定する集団防衛の義務を疑問視するかのような発言をしていた。だが、会議終了後には「素晴らしい」会合だったと評価し、第5条についても「支持している」と明言した。

採択された首脳宣言では、加盟国は「集団防衛に対する揺るぎない意思を再確認」し、「10億人の市民とNATO、自由と民主主義を守るという決意において、団結し、確固たる姿勢を貫く」とうたった。

米国が欧州からの兵力撤収を検討しているとの懸念が膨らむ中で、今回の首脳会議ではNATOへのトランプ氏つなぎ留めに大きな努力が払われた。欧州のウクライナ支援国は、4年目に入ったロシアのウクライナ侵攻に、有効な対応策をなかなか打ち出せずにいる。

国防費支出増へ
国防費の支出目標は、現在のGDP比2%から大きな上積みとなる。宣言によると、新目標は「安全保障上の深刻な脅威と挑戦、とりわけロシアが欧州と大西洋地域に及ぼす長期的な安全保障の脅威と、テロの脅威が続いていることに」対応する措置だという。

NATOのルッテ事務総長は、目標の引き上げを数カ月にわたり各国へ働き掛けていた。GDP比5%の支出目標のうち、3.5%が中核の防衛支出、残り1.5%はインフラやサイバーセキュリティーなど関連の投資とした。今回の合意により、2035年まで巨額の資金が防衛支出に向かうことになる。

ルッテ氏は、ロシアは5年以内にNATO攻撃を考えられる態勢が整うと示唆していた。

ただ、目標の引き上げを巡るあつれきも生じた。スペインのサンチェス首相は目標を拒否し、「支出は2.1%まで引き上げるが、それ以上でも以下でもない」とした。同氏は、NATOが掲げる兵器や兵力の新たな目標は達成するとしつつ、そのための費用については合意していないとし、他の加盟国からの強い批判を招いている。

トランプ氏はスペインの態度を強く非難し、報復としてスペイン製品に対する関税を2倍に引き上げる可能性を示唆した。トランプ氏は記者会見で「支払っていないのはあなただけだ。何が問題なのかわからない」と語気を強めた。(後略)【6月25日 Bloomberg】
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トランプ政権の要求には日本を含めたアジアの同盟国にも。

****防衛費GDP比5%要求、防衛省幹部「受け入れは到底困難」 現行の1・8%の3倍近く****
日本政府は、米国が日本などのアジアの同盟国に対して国防費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるよう要求していることに苦慮している。

日本の防衛費は関連経費と合わせても令和7(2025)年度時点で9兆9000億円と、GDP比約1・8%にとどまる。3倍近くへの増額要求は「到底受け入れ困難」(防衛省幹部)なのが実情だ。

米国防総省のパーネル報道官はアジアの同盟国の国防費に関し、「欧州の水準に追いつくよう迅速に対応することは常識的だ」と発言。北大西洋条約機構(NATO)加盟国に求めるGDP比5%と同じ水準にすべきだとの認識を示した。

日本は9(27)年度に防衛費と関連経費の合計額でGDP比2%まで増やすのが当面の目標だが、10(28)年度分以降も米国からさらなる増額を迫られるのは必至の情勢だ。

中谷元・防衛相は24日の記者会見で「わが国の防衛費のあり方はわが国自身が主体的に判断すべきものだ。こうした考え方を丁寧に粘り強く米側に説明していく」と強調した。【6月24日 産経】
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ロシアの脅威に備えてアメリカをNATOのどうしても引きとどめておきたい欧州と同様に、中国の侵攻に備えてアメリカの支援がどうしても不可欠な台湾・頼総統としては、トランプ政権が求める「5%」もやむなしとの判断のようです。

【軍人の待遇改善も】
そのうえで、軍人の待遇改善に意欲を示しています。

****台湾、2030年までに防衛費をGDP比5%に 頼総統、軍人の待遇改善に意欲****
頼清徳(らいせいとく)総統は22日、北東部・宜蘭県蘇澳を訪れ、海軍艦隊指揮部168艦隊の隊員らを激励した。

政府は今後継続して防衛費を増やすとし、2030年までには北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求めた目標と同じ、国内総生産(GDP)比5%への引き上げが望めると語った。軍人の待遇改善についても前向きな姿勢を示した。

頼総統は、近年は中国による台湾への脅威が日増しに高まり、グレーゾーンでの嫌がらせの回数も多くなっていると指摘。国軍は圧力を恐れず、敵情を正確に把握して戦闘訓練を強化しており、国民が安心できるよりどころになっていると述べた。

その上で、軍隊内の日頃のささいな出来事も敵からすれば重要な情報になり得るとし、警戒心を高めるよう求めた。

また来年度の防衛費はGDP比で3.32%になると説明。予算の引き上げを通じ、国家の安全や民主主義、自由、人権を守る決意だけでなく、国際社会と肩を並べて共に抑止力を発揮し、インド太平洋の平和と安定を守る意欲を示すと語った。

国軍の給与増額を目指して立法院(国会)が可決しながらも、行政院(内閣)が立法院に予算を組む権利がないなどとして違憲審査を申し立てる方針の「軍人待遇条例」については、司法院大法官が違憲性はみられないと判断した場合、当初の施行日にさかのぼって増額分を支給すると語った。違憲とされた場合は別の方法で国軍を支援するとした。

頼総統は同日、フェイスブックを更新し、軍事施設の改修や福利厚生の改善に加え、国内での製造や、海外からの購入などを通じて、次世代フリゲートや無人兵器など、より高性能な武器や装備を導入すると強調。国内の軍需産業を強化し、時代に即した形で国軍全体の戦力を向上させると語った。【8月22日 フォーカス台湾】
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アメリカ  「分断」は意識の差だけでなく、健康・寿命の不平等に至る生活基盤の格差にも根ざす

2025-08-22 23:36:59 | アメリカ
(1985年から2013年にかけての女性の平均寿命の変化 
青は平均寿命が長くなった地域(最も濃い青の地域で最大8年)、赤は短くなった地域(最も濃い赤の地域で最大5年)

「アメリカの貧困地域の住民は、北朝鮮や最貧国の国民と同じほどの年で死ぬ。このままでは日本も将来同じになるとOECDはいう」【2017年1月31日 Socius101】

“教授(社会科学者のエンリコ・モレッティ教授)によれば、アメリカは豊かな地域と貧しい地域で露骨に寿命格差があり、例えばシリコンバレーが位置しインテルやグラフィックボードのNVIDIAがあるカルフォルニア州サンタクララ郡、またバイオテクノロジーが盛んなメリーランド州モンゴメリー郡など豊かな地域の男性は大体81歳まで生きるとのこと。

その一方で、ウエストバージニア州マクダウェル、ミシシッピ州サンフラワーなど貧しい地域では63~67歳ほどしか生きられません。

このような寿命格差は、経済格差が顕在化するまでは存在しなかったそうです。

なるほど、アメリカで格差がハッキリ出てきたのは1970年代からですが、先のIHMEのデータで1985年~2013年までにおける各地域ごとの寿命変化を見るだけでも、この30年でずいぶんと生きられる期間に格差が生じてしまったことに気が付きます。

例えば女性の場合、豊かな西海岸、東海岸などでは最大で8年寿命が延びているのに対して、貧しい中南部では逆に5年寿命が縮小。

これは豊かな地域と貧しい地域で最大で13年もの寿命差が生じたことを意味します。”)

【貧困州女性の平均寿命は100年間でほとんど改善していない】
米イェール大学公衆衛生大学院の研究によると、アメリカの一部の州では、1900年から2000年に生まれた集団の間で女性の平均寿命が1世紀にわたってほとんど増えていないことが明らかになっています。また、全米の平均寿命の増加に州ごとの大きな差があることも明らかになっています。(冒頭のエンリコ・モレッティ教授の指摘のように、アメリカの平均寿命に著しい地域格差があり、その格差が近年悪化していることは以前から指摘されているところです)

****アメリカの一部の州では女性の平均寿命が1世紀にわたってほとんど変わっていない****
アメリカは国民の健康状態がかなり悪いことが知られており、「最も裕福なアメリカ人でさえ一部のヨーロッパ諸国で最も貧しい人より短命」という研究結果も報告されています。

新たな研究では、アメリカは州ごとに平均寿命の増加に大きな格差があり、一部の州では女性の平均寿命が1世紀にわたりほとんど増えていないことが明らかになりました。

イェール大学公衆衛生大学院が主導した大規模な研究では、1969年~2020年にかけてアメリカで死亡した1億7900万人分のデータを分析し、同じ年代に生まれた集団(出生コホート)ごとの平均寿命を調べました。そして、1900年生まれの人々から2000年生まれの人々にかけて、アメリカの各州における平均寿命がどれほど変化したのかを推定しました。

論文の筆頭著者であり、イェール大学公衆衛生大学院の生物統計学教授のセオドア・ホルフォード博士は、「出生コホートごとに死亡率の傾向を見ると、集団の生きた経験をより正確に反映することができます。これは、集団の人生に影響を与える政策や社会状況の長期的な影響を示します。これらの影響は、異なる世代の死亡率を年ごとに比較することでは見えてこないかもしれません」と述べています。

分析の結果、1900年生まれと比較すると2000年生まれのコホートは平均寿命が軒並み延びましたが、その程度には州ごとに大きな格差がみられました。

アメリカ北東部および西部の州では平均寿命が大きく増加した一方、南部の州では平均寿命の増加がわずかなものにとどまっており、特に一部の州では1世紀にわたりほとんど変化していないと報告されています。

以下のグラフは、「2000年生まれの男性の平均寿命が最も長い/最も短い5州」について、1900年生まれと2000年生まれの平均寿命を比較したもの。


2000年生まれの男性の平均寿命が長いニューヨーク州・カリフォルニア州・ワシントンD.C.・マサチューセッツ州・ワシントン州では、1900年と比較して30年以上も平均寿命が延びていることがわかります。特にワシントンD.C.の平均寿命増加は目覚ましく、1900年生まれは48.7歳だったのが2000年には86.5歳となっています。つまり、1世紀で約38年も平均寿命が延びたというわけです。

一方、男性の平均寿命が短いミシシッピ州・ウェストバージニア州・アラバマ州・ルイジアナ州・テネシー州では、平均寿命の増加が10年程度にとどまっています。

女性の場合はさらに顕著な格差がみられます。以下のグラフは、「2000年生まれの女性の平均寿命が最も長い/最も短い5州」について、1900年生まれと2000年生まれの平均寿命を比較したものです。

2000年生まれの女性の平均寿命が最も長い州はワシントンD.C.・ニューヨーク州・カリフォルニア州・マサチューセッツ州・ハワイ州で、ワシントンD.C.は約29年も平均寿命が延びていることがわかります。1900年の時点で平均寿命が長かったマサチューセッツ州やハワイ州では増加率が少なめですが、それでも13年以上平均寿命が延びています。

一方、2000年生まれの女性の平均寿命が短いウェストバージニア州・オクラホマ州・ケンタッキー州・ミシシッピ州・アーカンソー州では、平均寿命は1900年から2000年にかけてほとんど変わっておらず、オクラホマ州ではなんと0.7年減少しています。

ホルフォード氏は、「南部の一部の州で生まれた女性の平均寿命は、1900年から2000年にかけて3年未満しか延びませんでした。ニューヨーク州やカリフォルニア州のような州では、同じ期間に平均寿命が20年以上延びたことを考えると、これは驚くほど対照的です」とコメントしています。

また、研究チームは「35歳以降に死亡率が増加する割合」についても調査しました。その結果は、死亡率の増加速度が速ければ速いほど老化による悪影響が大きく、遅ければ遅いほど健康的に老化していることを示しています。この調査でも地域差は明らかであり、ニューヨーク州やフロリダ州では死亡率の増加が緩やかだったのに対し、オクラホマ州やアイオワ州では死亡率の増加が速かったとのことです。

ホルフォード氏はこれらのパターンについて、「今日私たちが目にしている格差は、喫煙率・医療へのアクセス・環境への暴露・公衆衛生への投資など、数十年にわたる累積的な影響の結果です。意識的な政策変更がなければ、これらのギャップは持続するか、さらに広がる可能性が高いでしょう」と述べています。

また、論文の共著者であり、イェール大学公衆衛生大学院の医療政策学の助教を務めるジェイミー・タム博士は、「たとえば、平均寿命の改善が少ない州ほど貧困率が高いのは驚くべきことではありません」と述べ、死亡率と平均寿命の傾向は基礎となる人口統計も反映したものだと指摘。

その上でタム氏は、「健康介入の利点は、生涯にわたります。早期に行動して公衆衛生に投資しないことは、将来の世代にも害を及ぼします」と主張しました。【5月31日 GIGAZINE】
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1900年というのは明治33年です。その後の100年間で医療水準は飛躍的に向上し、公衆衛生の改善、経済状況の意改善も大きく進んだはずです。

・・・にもかかわらず、州によっては平均寿命が殆ど変化していない、オクラホマ州女性のように寿命が短くなっている地域もあるというのは驚くべき事実です。

一部の州では大きく改善しているにもかかわらず、停滞している州も・・・この格差の背景は?

****平均寿命改善に関する地域差の背景*****
イェール大学公衆衛生大学院の調査が指摘している「地域による女性の平均寿命伸び率の極端な差」については、いくつかの要因が重なり合っています。大きく整理すると以下のようになります。

1. 経済・社会的要因
貧困率の高さ:ウェストバージニア州・ケンタッキー州・ミシシッピ州・アーカンソー州などは歴史的に「アメリカ最貧州」に属し、医療へのアクセス、教育レベル、栄養状態が他州に比べ劣る。
教育水準の低さ:高等教育の普及度が低いほど健康知識や生活習慣改善の取り組みも遅れる。


2. 医療アクセスの格差
農村部・山間部が多く、病院や専門医療施設が少ない。特に予防医療(がん検診、妊婦ケア、生活習慣病の早期治療)が不十分。
保険未加入率の高さ、または公的医療制度への依存度が高く、質の高い医療が受けにくい。


3. 生活習慣の違い
喫煙率・肥満率・糖尿病率が高い:とくに南部諸州は「Obesity Belt」と呼ばれるほど肥満率が高く、心血管疾患・糖尿病・脳卒中の死亡率を押し上げている。
食習慣(高脂肪・高糖分・加工食品中心)や、運動不足も平均寿命を下げる要因。


4. 政策・公衆衛生対策の差
マサチューセッツ州やハワイ州では、早期から公衆衛生プログラム(禁煙政策、栄養指導、健康教育)が整備されていた。
一方で南部・アパラチア地域の州は、公衆衛生施策への投資が少なく、健康格差が放置されやすい。


5. 人種・地域文化の影響
南部諸州にはアフリカ系住民の比率が高いが、アメリカでは人種による健康格差が依然存在。構造的差別や貧困、医療アクセス不平等が重なり、平均寿命に反映されている。
「タバコ栽培地域」としての歴史的背景から、喫煙文化が根強い。


まとめ
豊かな州(マサチューセッツ・ハワイ) → 医療・教育・公衆衛生政策が進展、生活習慣改善も進み、平均寿命は大幅に延びた。
貧困州(ウェストバージニア・オクラホマなど) → 貧困・低教育・高喫煙率・肥満率・医療アクセス不足が重なり、20世紀を通してほとんど寿命が改善しなかった。

つまり、単なる「医学の進歩」だけでは寿命は延びず、社会経済的条件・生活習慣・地域政策の差が「寿命格差」として現れた、というのが大きな理由です。【ChatGPT】
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【トランプ大統領を支持する貧困州の“忘れられた人々” 単に意識・価値観の違いではなく、寿命にも影響する生活基盤の厳然たる格差がもたらす「分断」】
貧困州(ウェストバージニア・オクラホマなど) → 貧困・低教育・高喫煙率・肥満率・医療アクセス不足が重なり、20世紀を通してほとんど寿命が改善しなかった。 そうした状況への公的な改善策も有効にとられず放置されきた・・・・既存の政治における「忘れられた人々」とも言えます。

そして、これら貧困州は先の大統領選挙でトランプ大統領が勝利した州とも重なります。

100年たっても平均寿命の改善すらはっきりしない貧困・低教育・高喫煙率・肥満率・医療アクセス不足とされる貧困州(ウェストバージニア・オクラホマなど)の既存の政治から忘れられた人々が抱える不満・絶望・・・・アメリカにおける「分断」は単に「意識」の問題ではなく、こうした経済・教育・医療のレベルの格差、ひいては、「寿命」の格差という現実に根ざしたものでもあります。

****「分断」の背景に、意識や価値観の違いにとどまらず、生活基盤そのものの格差、更には「平均寿命の格差」が****
アメリカの「分断」は単に「保守 vs リベラル」「都市 vs 農村」といった意識や価値観の違いにとどまらず、生活基盤そのものの格差として現れており、その一端が「平均寿命の格差」にもつながっています。

1. 「忘れられた人々」と寿命格差
貧困・低学歴・医療アクセス不足といった要因は、実際に「寿命の短さ」として表れている。こうした地域の人々にとっては、グローバル経済の利益や「進歩的な社会改革」が自分たちの生活に反映されず、むしろ取り残され感を強めてきた。

その不満が「既存政治への不信」となり、トランプ氏の「忘れられたアメリカ人を取り戻す」というレトリックと響き合った。

2. 都市・沿岸部との対比
マサチューセッツやハワイのように寿命が延びた州は、教育水準が高く、公共医療政策も進んでおり、経済的に比較的豊か。民主党支持が多い傾向とも重なる。

一方、ウェストバージニア・ケンタッキー・ミシシッピといった「寿命が延びない州」は、経済的に衰退し、医療や教育が十分でなく、共和党支持が強い。

3. 「分断」は生活格差から意識格差へ
つまり「意識の違い」以前に、経済・教育・医療の格差 → 健康・寿命の格差 → 政治選好の格差という構造がある。

こうした格差が固定化されることで、「健康で豊かな都市部と、病気や貧困に苦しむ農村部」という二層社会が広がり、相互の理解や共感がますます難しくなっている。

4. 「寿命の格差」は民主主義への挑戦
健康や寿命は、単なる個人の選択や生活習慣の問題ではなく、社会の不平等そのものの反映。

選挙や政策論争において「寿命の格差」が背景にあるということは、アメリカの分断がより根深い「社会構造上の不平等」に支えられていることを示す。

そのため、単に「価値観の対立」として片づけるのは不十分であり、むしろ「健康と寿命の格差を是正できるか」が民主主義の持続可能性に直結しているともいえる。【ChatGPT】
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要するに、アメリカの「分断」は単に価値観の違いだけではなく、健康・寿命の不平等をもたらすような生活基盤の格差にも根ざしている・・・と言えます。

したがって「分断」を埋めるためには、民主主義に関する上から目線の説教ではなく、その「格差」解消の取組が必要になります。
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ナイジェリア  イスラム過激派「ボコ・ハラム」復活も 依然として不安定な治安状況

2025-08-21 23:39:36 | アフリカ
(ナイジェリア中部ベヌエ州の村イェルワタで先週末、正体不明の武装集団の襲撃があった。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、今回の襲撃で少なくとも100人が死亡した。【6月18日 ロイター】)

****モスク襲撃で50人死亡 ナイジェリア、60人拉致****
ナイジェリア北部カツィナ州の村で19日、武装集団がモスク(イスラム教礼拝所)を襲撃し、住民ら少なくとも50人が死亡、約60人が拉致された。ロイター通信が20日報じた。

ナイジェリアでは近年、武装集団による襲撃や身代金目的の連れ去りが相次いでいる。

朝の祈りの最中に戦闘員がモスク内部を銃撃した。周辺の家屋数軒が放火された。【8月21日 共同】
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ナイジェリアの武装集団としてはイスラム過激派「ボコ・ハラム」が有名ですが、「ボコ・ハラム」以外にも多くの組織が(金銭目的のものまで含めて)活動していますので、どの組織が行った犯行かはわかりません。

西アフリカ・ナイジェリアを中心に活動するイスラム過激派「ボコ・ハラム」に関するニュースは、ひと頃に比べると減ったような感じがします。

ただ、ニュースが減ったことと、実際にボコ・ハラムの活動が少なくなっているのか、他の武装勢力も含め、ナイジェリアの治安が改善しているのか・・・・は、また別の問題かも。

「ボコ・ハラム」に関しては、一時期、組織の内部分裂・抗争もあって、その活動は低下したようです。
しかし、現地では「復活の兆し」があるとの不安も見られます。

****ナイジェリアのボコ・ハラム発祥の地,マイドゥグリで、ボコ・ハラムの復活への懸念が高まる(自動翻訳)****
ジハード主義者の脅威は消滅したと広く認識されていたが、最近の衝突はそうではないことを示唆している

マイドゥグリ(ナイジェリア北東部 ボルノ州の州都)空港から市内へ続く道路沿いに、塗り直されたばかりの女子校の壁が、長年にわたりジハード主義者ボコ・ハラムの名の下に展開してきた運動に抵抗するように佇んでいた。ボコ・ハラムとは「西洋の教育は禁じられている」という意味だ。

ナイジェリア北東部ボルノ州の州都郊外にある近くのロータリーでは、制服を着た3人の男がセメントトラックを追いかけ、道路税を徴収しようとしていた。運転手がスピードを落とし、42℃の暑さの中、彼らはスピードを落とし、後悔の笑みを浮かべ、次の大型車が通り過ぎるのを待った。

ボコ・ハラムによる15年間の反乱の最盛期には、人気の月曜市場で恐ろしいほどの頻度で爆弾が爆発していた。しかし、ボコ・ハラム発祥の地として知られるこの都市は、2021年2月以降大規模な攻撃を受けておらず、治安の雰囲気は比較的穏やかであることが反映されている。

この組織は2002年に結成されたが、2009年7月に創設者のモハメド・ユスフが警察に殺害された後、テロ活動が活発化しました。3万6000人以上が殺害され、220万人が避難を余儀なくされました。11年前の今月には、特に悪名高い事件が発生し、ボコ・ハラムはチボクの町の学校から276人の女子生徒を誘拐しました。

地域外の多くの人々は、反乱勢力は鎮圧されたと考えていましたが、今年4月8日、ボルノ州のババガナ・ズルム知事は、ボコ・ハラムが復活しつつあるという憂慮すべき警告を発しました。ズルム知事は治安当局の会合で、新たな攻撃と誘拐が「ほぼ毎日、衝突もなく」発生しており、州当局が「後退」している兆候だと述べました。

ズルム氏がこの警告を発したのは、ボルノ州にある2つの軍事基地が武装勢力に襲撃され、同氏の警備隊がボコ・ハラムの待ち伏せ攻撃を阻止したと報じられてから1か月も経っていない頃だった。どちらの事件も犠牲者数は不明である。

ズルム氏の発言に対し、軍当局の報道官は「軍は多大な犠牲を払っており、我々の努力は評価されるべきだ」と述べた。

ナイジェリアのモハメド・イドリス情報大臣も、武装勢力は「ほぼ壊滅した」と述べ、2015年に「技術的には壊滅した」と述べた前任者のライ・モハメド氏の論調に同調した。

イドリス氏は安全保障会議後、「ボコ・ハラムを100%撲滅したとは言っていない。しかし、ボコ・ハラムが我が国にとって何らかの重大な脅威とならない程度に、勢力を著しく弱体化させたと考えている」と述べた。

ズルム氏は反論し、「彼は国内で何が起こっているのかを知らないようだ」と述べた。

近年、カメルーン、チャド、ニジェール、ナイジェリアからなる多国籍連合軍は、ボコ・ハラムの支配地域を奪還し、駐屯地を攻撃から守る支援を行ってきた。同時に、ボコ・ハラムは二つの派閥に分裂し、しばしば内部抗争を繰り広げることで弱体化している。

2024年1月、ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は、「ボコ・ハラム、アンサル、盗賊団、誘拐組織の残存勢力を根絶する」と約束した。「闇の工作員を根絶するまで、我々は休むことはない」と彼は付け加えた。

しかし、アナリストらは、軍が「トンブクトゥ・トライアングル」でジハード主義者の封じ込めに苦戦していると指摘している。トンブクトゥ・トライアングルとは、かつてジハード主義者の拠点であったマリの都市を指す用語で、かつてはヨベ州東部からボルノ州西部にかけて広がる地域を指す。

軍基地への攻撃に加え、現地の報道によると、1月にはボコ・ハラムとイスラム国西アフリカ州(ISWAP)によって40人の農民が殺害され、数人が拉致されたと伝えられている。ISWAPは分裂してイスラム国と連携し、これまでとは異なる行動様式を取っており、支配下にある村や小さな町に課税し、司令官に納税させている。

また、再定住計画の下、キャンプから村に送り返された数千世帯の避難民が、現在、脅威にさらされているのではないかとの懸念もある。

国際危機グループは2023年という早い時期に、この再定住計画について警告を発していた。「性急なプロセスは避難民の命を危険にさらしている。彼らを戦闘に近づけ、支援から切り離してしまうからだ。民間人を困難にさらすことで、政府はジハード主義組織に、移住したコミュニティと関係を築き、彼らの経済活動から利益を得る機会を与えてしまう恐れがある。」

ヨベ州の状況は緊迫している。9月には襲撃で34人が死亡し、3月にはティヌブ派メディアが、2013年に40人以上の学生が虐殺されたグジバの村人たちが、最近の戦闘で軍がジハード主義者を倒すのを支援したとして、ボコ・ハラムから立ち退き通告を受けたと報じた。当局はこの報道を裏付ける「信頼できる情報はない」と主張した。

3月下旬、ニジェールが軍事連合から離脱したことで、フランスとアメリカの部隊がサヘル地域から撤退した後、情報共有とジハード主義者の抑制能力への懸念が高まった。今年設立された、より大規模な新たな地域部隊はまだ機能していない。

マイドゥグリでは、ティヌブ政権は現状に満足しているとの意見があり、国家安全保障顧問は政治問題にばかり気を取られていると非難している。

市内の診療所では、匿名を希望する援助活動員が、看護学生たちが廊下を歩き回る様子を目にしていた。 「みんなマイドゥグリのことを忘れてしまった」と彼らは言った。【4月28日 The Guardian】
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****「ボコ・ハラム」の活動状況 及びナイジェリアの治安状況****
1. ボコ・ハラムとISWAPの活動状況(北東ナイジェリア)
押し寄せるテロの波
Boko Haram(ボコ・ハラム)とその分派であり、広範に活動するISWAP(Islamic State West Africa Province/西アフリカ・イスラム国派)による攻撃が依然として頻発しています。

2025年1月~現在にかけての主な事件:
1月5日、ボルノ州ダンボアにおいて兵士6名と極端主義者34名が死亡する襲撃
同月、ドゥンバ州で農民少なくとも40名が殺害されるなど、民間人への被害も拡大。
1月26日にはISWAPによる自爆攻撃で兵士27名が死亡(マラム=ファトリ)。

2025年春頃、戦況はさらに悪化:
5月15日には、ボコ・ハラムが北東ボルノ州の村々で57名の住民を拉致・殺害(うち70名不明)。
同時期にISWAPはマルテで陸軍基地に攻撃を仕掛け、多数の兵士が死亡し、現地住民約2万人が避難。

ISWAPはUAV(ドローン)攻撃を多用する高度化した戦術を展開。
過去10年以上で蓄積された人的被害は、少なくとも3万6千人の死亡・220万人以上の国内避難者に上ると見られます。

最近の不安材料:
マイドゥグリ地域(ボコ・ハラム発祥地)にて再び襲撃や誘拐が頻発しており、現地知事も「再興の兆し」を警告。
6月には、カトリック司祭がボコ・ハラムに誘拐される事件も発生。


2. その他の武装組織:Ansaru、Mahmuda、Lakurwa、そして地方の武装化
・Ansaru(アンサル) & Mahmuda
Ansaruはかつてアル=カーイダと関連した分派であり、2025年にはリーダーが逮捕されました。Mahmudaという比較的新しい武装グループの指導者も同時期に逮捕されています。

・Lakurwa(ラクリワ)
元々は住民の自衛グループだったものが、次第に過激化。2023年にはソコト州・ケッビ州を中心に、200村以上に勢力を持ち、2025年1月には正式に「テロ組織」と指定されました。

3月には越境した軍事拠点や村への襲撃、7月にはソコト州タガザ地域での大規模な襲撃事件が報告されています。

・地方に蔓延する武装化:バンダリズム(盗賊)、牧畜民、農民の衝突
北西州(ザンファラ州、カツィナ州等)では「バンディット(盗賊)」による略奪、誘拐事件が増加。政府軍は地元民兵とともに攻略作戦を断続的に実施していますが、被害は依然大きい状態です。

ベヌエ州では、農民と牧畜民の間で武装した集団による武力衝突や政治的緊張が高まっており、2025年6月には同州で最も犠牲者が多い月となりました。

・南東部の分離主義(IPOB)
南東部アビア州では、分離主義組織IPOB(Indigenous People of Biafra)が関与したとされる攻撃も起きています。政府はIPOB関与を示唆しつつも、詳細は未確定です。

全体として、ナイジェリアでは複数の武装集団や過激派組織が同時多発的に活動しており、それぞれ地域や組織の性質によって異なる脅威をもたらしています。

軍・治安当局に一定の成果(指導者の拘束など)は見られるものの、地域によっては依然として不安定であり、特に民間人の被害は深刻です。【ChatGPT】
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トランプ関税で生じた米印関係のほころびを利用してインドとの関係改善を図る中国

2025-08-20 23:33:56 | 南アジア(インド)
(インドのモディ首相と中国の王毅外相は19日、インドの首都ニューデリーで会談を行った。同日撮影の提供写真【8月20日 ロイター】)

【トランプ関税で米印関係に亀裂】
トランプ大統領は「戦争をすぐに終わらせる」と豪語していたウクライナやパレスチナに足を取られて欧州や中東への関与を深めていますが、トランプ政権を含めて近年のアメリカ外交の基本方針は対中国戦略を中心に据えて、軍事力の配備や外交関係など展開することにあります。

そのために、中国と領土問題を抱え、ライバル意識も強いインドを自陣営に取り込むべく、安倍元首相が提唱した戦略に沿った「Quad(クアッド)」などの枠組みも構築されました。

そうした対中国の観点からのインド取り込みは、トランプ大統領とモディ首相の個人的友好関係(強い指導者を目指す“肌合い”の相性の良さ)、中国とインドの国境をめぐる緊張関係もあって、概ね順調に推移してきました。

インド・アメリカの関係にややギクシャクしたものも感じられたのは、インドとパキスタンの軍事衝突における“トランプ仲介”

****インドのモディ首相はトランプの言いなりか?停戦したインドとパキスタン、裏側にあるモディの老練外交****
テロ事件を受けてインドが行ったパキスタンのテロ支援拠点に対する攻撃は、パキスタン軍の反撃によって、両軍のミサイル、ドローン発射合戦に発展したが、5月10日、トランプ大統領のSNSへの投稿によると、アメリカの仲介によって、印パ即時停戦に至ったことになっている。その後、トランプ大統領は、カシミール問題そのものの解決に向けても仲介することに言及した。

ところが、その後、インド側から、これに反発する意見が数多く出た。インド側が有利な戦況なのになぜ停戦を受け入れたのか、「モディ首相はアメリカの言いなり」だという、戦争継続を求める意見が強く出た。

さらに、インド外務省は、印パ両軍をつなぐ電話で、パキスタン側から申し出があったために起きた停戦で、アメリカが直接関与した仲介のようなものはない、との声明も出した。

加えて、トランプ大統領の説明も、少し修正されたものとなった。カタールを訪問したトランプ大統領は、現地の米軍基地で演説し、そこで、「I don't wanna say I did but I sure as hell helped settle the problem between Pakistan and India last week,…(私が停戦をもたらしたと言いたいわけではない。でも、先週、パキスタンとインドの問題を解決するのに、間違いなく貢献したことは確かだ)」と演説した。

ということは、トランプ大統領が停戦を直接アレンジしたのではなく、停戦に至るような状況を作り出すことに貢献したといった言い方である。

この件に関して、モディ首相は黙ったままだ。なぜ沈黙なのだろうか。本稿は、この件の分析を試みる。まず、経緯の整理からだ。(後略)【5月20日 WEDGE】
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結論的には、モディ首相はトランプ大統領の“顔を立てる”ことを選択した、そこにモディ外交の老獪さがある・・・という記事ですが、パキスタンが「トランプ大統領をノーベル平和賞に」と持ち上げるのに対し、やはりインド側としてはすっきりしない結末だったようにも見えます。

もっと明確にインドを困惑させ、怒らせたのがトランプ関税の問題。

****米印交渉決裂!インド譲歩不足で“関税50%”へ急騰…モディ首相が直接対話避け、関係に亀裂か****
かつて順調に進んでいるように見えた米国とインドの貿易交渉が頓挫し、米国の対インド関税率は世界最高水準の50%に急騰する見通しだ。

ポリティコは9日(現地時間)、交渉が行き詰まった要因として、米国産品に課される関税率を他国が0%に引き下げたのに比べ、インドの譲歩が不十分であったと分析した。

先月までは、インドはドナルド・トランプ米大統領の最終承認が残るだけで交渉合意が目前と信じていた。トランプ大統領も先月中旬に「我々はインドと非常に近い関係にある」と発言しており、インドとの合意が間近だと見なされていた。しかし、両国の交渉は急速に行き詰まった。

トランプ政権関係者によると、インドは米国産品に対する貿易障壁を大幅に引き下げる提案をしたものの、完全撤廃には至らなかったという。

この関係者は「トランプ大統領は他国が(対米関税率)を0%またはそれに近い水準に引き下げることができた」とし、「そのため、インドの提案について交渉チームは完全に不十分だと認識した」と述べた。

また、インドのナレンドラ・モディ首相がトランプ大統領と直接会談や電話会談を行わなかったことも影響したとの見方がある。

ポリティコは、モディ首相がトランプ大統領から公然と叱責される事態を避けたため、直接対話を行わなかったと指摘した。

両国の協力民間団体「米印戦略的パートナーシップフォーラム」の会長、ムケシ・アギ氏は「強い指導者を自認するモディ首相は、他国の指導者から叱責したり、叱責を受け反撃する立場に立ちたくなかったのだ」とし、「そのため電話会談を避けた」と分析した。

アギ氏は「25年かけて築いてきた関係構築の努力が25時間で水泡に帰したかのようだ」と述べ、「我々は何としてもこの事態を食い止めなければならない。米印関係は両国にとって極めて重要だからだ」と強調した。

ただし、トランプ大統領はモディ首相を直接批判せず、常に「友人だ」と称している点に触れ、「私見だが、これは対話の窓口を開いたままにするための意図的な発言だ」と付け加えた。

6日、トランプ大統領はインドのロシア産石油輸入に対抗し、21日後にインド製品に25%の追加関税を課す大統領令に署名した。米国は7日からインドに対して25%の国別関税(相互関税)を課しており、27日からはその関税率が50%に跳ね上がる見通しである。【8月11日 江南タイムズ】
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インド国内では“マクドナルドやコカ・コーラ、アマゾン・ドット・コム、アップルといった米国を拠点とする多国籍企業は、インド国内で呼びかけられている米国製品不買運動の標的となっている。”【8月12日 ロイター】というアメリカ製品不買運動も起きています。

【対印関係改善を図る中国 王毅外相が訪印】
こうした状況を見逃さないのが中国外交。

中国の王毅外相はインドを訪問し、インドのジャイシャンカル外相と18日、インド首都ニューデリーで両国間の協力強化に向けた会談を行い、国境の安定や貿易問題、2国間交流などについて協議しました。

ギクシャクするインド・アメリカ関係を横目に、中印関係の改善を図り、米印関係にくさびを撃ち込もうとする狙いでしょう。

****中印、互いをライバルでなくパートナーと見なすべき=王毅外相****
中国の王毅外相は18日、インドのジャイシャンカル外相との会談で、両国は「正しい戦略的理解」を確立し、互いをライバルではなくパートナーと見なすべきとの考えを伝えた。中国外務省が明らかにした。

同省の発表によると、中国はインドとの友好関係と互恵の原則を堅持する用意がある。【8月19日 ロイター】
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*****インド首相・中国外相が会談 直行便の再開や貿易・投資拡大で合意*****
インドのモディ首相と中国の王毅外相は19日、インドの首都ニューデリーで会談を行った。2020年の国境での軍事衝突で損なわれた両国関係の再構築を図る中、両国間の直行便再開や、貿易・投資の流れの拡大で合意した。

モディ首相は王外相との会談後、Xへの投稿で「両国間の安定的で予測可能かつ、建設的な関係は、地域と世界の平和と繁栄に大きく貢献するだろう」と述べた。

インド外務省は、国境を巡る協議ではヒマラヤ山脈地帯の国境線に集結している軍隊の撤退や国境画定などに関する問題が話し合われたとした。

一方、20日に発表された中国外務省の声明によると、両国は国境画定交渉を進めるワーキンググループを設置することに合意。このメカニズムで協議を拡大し、国境の東部と中部をカバーする一方、西部に関する新たな協議はできるだけ早く開催するという。

中国は両国が26年に中国で再び会談することに合意したとも明らかにした。

王氏はモディ首相との会談に先立ち、ドバル国家安全保障担当補佐官と国境問題を巡る協議を行ったほか、18日にはジャイシャンカル外相とも面会した。【8月20日 ロイター】
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****中印が国境画定と平和維持に向け専門家グループなど設置 中国はレアアースでも対処****
インドを訪問した中国の王毅共産党政治局員兼外相は19日、ドバル印国家安全保障補佐官らと会談し、両国は国境問題を協議するための専門家グループと作業部会を設置することで合意した。

トランプ米政権はインドに対し、ロシア産原油の大量購入を批判して計50%の関税を科すとしている。インドは米国との関税交渉をにらみ、領土問題を抱える中国との対立緩和への取り組みを進めた形だ。 

インド外務省の発表によると、専門家グループと作業部会は中印国境問題に関する既存のメカニズムの下に発足させる。専門家グループは国境画定の早期実現を模索し、作業部会は国境地帯の平和と平穏の維持を推進する。国境問題の解決に向けて、「二国間関係全体を政治的な観点から見る必要がある」と強調した。

 両国は、両国間の直行便早期再開や、観光客と商用、報道関係者に対するビザ(査証)発給の円滑化についても合意した。

 一方、印政府筋によると、王氏はインドがレアアース(希土類)と肥料、トンネル掘削機を必要としていることにも対処すると約束したという。王氏は19日、モディ印首相とも会談した。【8月20日 産経】
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“インドの通信社ANIによると、王氏は過去数年間に中印が経験した困難は、両国民の利益にならないと述べた。
中国外務省が発表した会談内容によると、王外相はドバル氏に対し、「安定的かつ健全な両国関係の発展は両国民の基本的利益」と表明。「対話を通じて相互信頼を強化し協力を拡大すべき」とし、国境管理や境界線交渉などで合意を目指すべきと述べた。”【8月19日 ロイター】

トランプ政権のインドを軽んじるような対応に不満を募らせていたインド側にとって、中国・王毅外相の訪印はアメリカを牽制する絶好の機会となったようで、中印関係は改善に向けてはずみがついた形です。(もちろん、実際にどのように進むかは、今後の両国およびアメリカの対応によりますが)
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ミャンマー  軍事政権、12月28日に総選挙強行 支配の正統性を内外にアピール

2025-08-19 23:48:49 | ミャンマー
(選挙管理委員会により導入された電子投票機(Myanmar Electronic Voting Machine, MEVM)のデモンストレーションの様子(2025年7月、タニンダーリ管区)【7月12日 日本ミャンマー協会】

投票終了後数秒で開票結果を出力できますが、ブラックボックス化することで、選挙管理委員会と政権が一体化している状況では不正も容易に・・・)

【軍事政権の実効支配は国土の30〜40%程度に縮小】
ミャンマーでは反政府勢力(民主派)及び少数民族武装勢力と軍事政権の内戦が続いています。

戦況をおおまかに俯瞰すれば、少数民族武装勢力は国軍に対し優位に戦闘を展開し、支配地域を拡大していますが、ビルマ族主体の反政府勢力(民主派)は統一を欠き、ゲリラ戦レベルからの脱却が出来ずにいます。

そのため、都市部は以前として国軍支配下にあります。

****ミャンマー内戦:流動的な戦線と不確かな未来(自動翻訳)****
ミャンマーの軍事クーデターから4年が経過した現在も、同国の内戦は依然として極めて予測不可能な状況が続いています。

2025年の状況を一言で表すとすれば、「流動性」、つまりどの派閥も決定的な支配権を握れない不安定な勢力均衡です。

国家行政評議会(SAC)として知られる軍事政権は、民族革命組織(ERO)と人民防衛軍(PDF)からの圧力が高まっていますが、抵抗勢力自身も依然として分裂状態にあり、協調的な軍事作戦を展開する上で大きな障害に直面しています。

内戦の行方については様々な予測が飛び交っていますが、一つ確かなことがあります。それは、ミャンマーの経済崩壊が加速し、人道危機が深刻化することです。

しかし、混沌とした状況の中、現場では対照的な二つの現実が内戦の未来を形作っています。一つ目は、民族武装組織が自らの領土確保に引き続き成功していることです。

二つ目は、ビルマ族が多数派を占める抵抗勢力が、ゲリラ戦術から機動戦へと発展できる統一軍へと統合できなかったことである。(中略)

2025年のミャンマー内戦の行方は依然として不透明ですが、いくつかの重要な傾向が見られます。民族抵抗勢力は支配を拡大し続け、一方、ビルマ族が多数派を占める抵抗勢力は結束に苦戦しています。軍は、優れた火力にもかかわらず、産業と経済の中核への脅威に直面し、ますます守勢に立たされています。

軍事政権が重要な工業地帯と食料生産地域の支配力を失えば、内戦は決定的な転換点を迎える可能性があります。これがミン・アウン・フライン上級大将の退陣、交渉、あるいはさらなるエスカレーションにつながるかどうかは、まだ分かりません。

しかし、一つ確かなことは、SAC(特別軍司令部)による揺るぎない支配の時代は終わったということです。【2月19日 The Asia Live News Service】
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総じて、地上戦では劣勢を強いられている国軍は、激しい空爆を繰り返していますが、民間人犠牲も増大しています。

****ミャンマー国軍、学校空爆か 生徒20人死亡 民主派「停戦は偽物」****
内戦下のミャンマーで、3月末の大地震を受けて一時停戦を宣言した国軍が、空爆を続けている。

独立系メディアなどによると、12日には北部ザガイン管区の学校に爆弾が投下され、生徒20人と教師2人が死亡した。国軍に抵抗する民主派「国民統一政府(NUG)」は、「国軍の停戦は国際的な支持を得るための偽物だ」と非難した。

独立系メディア「ミャンマー・ナウ」などによると、民主派支配地域にある学校が空爆されたのは12日午前9時40分ごろ。犠牲になった生徒の多くは5〜10年生だったという。負傷者は50人を超え、死者は増える可能性がある。

目撃者や遺体の収容に協力した住民らによると、投下された爆弾は2発。教室の被害が大きく、切断された遺体もあった。反国軍派の戦闘員は「子供たちは爆弾の破片を浴びていた」と証言した。

一方、国軍側は空爆を否定。国営英字紙は、地元治安当局者が攻撃を否定したと伝え、「悪意あるメディアによって拡散された虚偽報道」と反論した。

NUGによると、地震から5月9日までに国軍による空爆は372回あり、市民334人が死亡。うち32人が子供だったという。負傷者は552人に上った。13日の記者発表で「真の停戦は強制力のある行動規範と合意が必要だ」とし、国際社会による監視を求めた。【5月14日 毎日】
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*****ミャンマーで空爆、12人死亡 国軍、少数民族地域で***
ミャンマー国軍が2日、中部マンダレー地域の少数民族支配地区を空爆し、民間人ら少なくとも12人が死亡した。住民らの話として独立系メディアなどが報じた。現場は中部マンダレー地域と北東部シャン州の境界に近いモーゴウで、ルビーの産地として知られる。

現地を支配する「タアン民族解放軍(TNLA)」などによると、空爆当時、現場には民間人や僧侶らがおり、巻き込まれたという。

ミャンマー軍事政権は総選挙を12月にも実施する方針だが、各地で戦闘が続いている。【8月3日 共同】
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こうした状況で、軍事政権の実効支配は国土の30〜40%程度に縮小していると見られています。

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軍政の実効支配は国土の30〜40%程度に縮小*****
ミャンマー内戦は2021年のクーデター以降「全土型」の抗争になっていますが、国土の支配状況は地域ごとに大きく異なるのが特徴です。最近の分析を整理すると、以下のようになります。


現在の支配状況(2025年半ば時点)
1. 軍事政権(国軍=タトマドー)が主に支配する地域
主要都市部と幹線ルート
ヤンゴン(最大都市)、首都ネピドー、マンダレー中心部、主要空港・港湾都市などは依然として軍が強固に支配。
幹線道路・鉄道の要衝も軍が確保し、都市と都市を結ぶ「動脈」部分は軍の管理下。

デルタ・中央部の一部
エーヤワディー・デルタやマグウェ地方の中心部などでは軍駐屯地が多く、PDF(市民防衛隊)の活動は続くものの支配までは及んでいない地域が多い。

2. 反政権勢力(民族武装組織EAO+人民防衛隊PDF)が強い地域
国境地帯ほぼ全域
カチン州北部(KIA)、カレン州(KNU)、チン州(Chin Brotherhood)、ラカイン州(AA)など、国境に近い地域では軍は拠点を失うか守勢に立たされています。

2023年末の「1027作戦」以降、シャン州北部やカチン州で軍基地が大量に陥落し、軍は国境貿易路の多くを失いました。

サガイン・マグウェ地方の農村地帯
中央乾燥地帯ではPDFが村落レベルで広範に活動。都市部を除く農村のかなりの部分は事実上「無政府化」またはPDFの影響下にあります。

支配領域の割合(推定)
専門家・現地調査機関の見立てによると:
軍政の実効支配は国土の30〜40%程度に縮小 (主に都市・主要道路・行政中枢部)
反政権勢力が実効支配または影響力を持つのは60〜70% (特に国境地帯・農村・山岳地帯)

ただし「完全支配」ではなく、村や町単位で支配が流動的に変化する地域も多く、地図上で線引きできない「灰色地帯」が広範に存在します。

まとめ
都市=軍政、農村・国境地帯=抵抗勢力という大まかな構図。
国軍は依然として航空戦力を持つため都市支配を維持していますが、国土全体で見るとすでに多数派ではないと評価されています。

今後は、12月に予定される「選挙」を契機に、軍が都市での権威維持を狙う一方、地方ではさらに軍の拠点喪失が進む可能性が高いとみられます。【ChatGPT】
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「ミャンマーには《パラレルワールド》が存在している」との声も。国軍と武装勢力は併存する「独自の世界」を生きており、互いが交わるのは戦場のみで、政治的には修復不能なほど断絶している・・・・。

軍事政権統治下での人権侵害も報告されています。
****ミャンマー軍政、拘禁施設で拷問常態化 国連調査報告****
国連の「ミャンマーに関する独立調査メカニズム」は12日、ミャンマーの国軍が運営する拘禁施設で「組織的な」拷問が行われていることを確認したと発表した。拷問には殴打、電気ショック、集団性的暴行などが含まれる。

ミャンマーでは2021年のクーデターで軍が民選政府を打倒して以降、内戦状態が続いており、軍は民主化を求めるゲリラや少数民族武装勢力と戦っている。

人権監視団体「政治囚支援協会」によると、この間の弾圧でこれまでに約3万人が拘束された。

IIMM(ミャンマーに関する独立調査メカニズム)は年次報告書で、「尋問や拘禁施設における深刻な人権侵害」を特定したと指摘。約600人の目撃証言に基づくもので、報告書で示された告発について軍政側のコメントは得られていない。

報告書によると、拷問は「体系的に行われており」、その中には「性的奴隷化」、「タバコや焼けた物で性器を焼く行為」、ペンチで爪を引き抜く行為などが含まれる。

また、「2歳から17歳までの子どもが、しばしば親の代理として拘束されている」ことを示す証拠もあるとし、「拘束された子どもの中には、拷問や虐待、性的・ジェンダーに基づく犯罪の被害に遭った者もいる」とした。

IIMMのニコラス・クムジアン責任者は、「残虐行為の頻度と残虐さが増していることを確認しているが、加害者の特定には進展があった」と述べた。

さらに「加害者が法廷でその行為を問われる日を目指している」とも語った。

ミャンマーの内戦では、すべての当事者が戦争犯罪を行ったと非難されており、IIMM報告書は反政府勢力による捕虜の即決処刑事例も確認したとしている。 【8月13日 AFP】AFPBB News
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【軍事政権 年内の総選挙を強行する構え 反政府勢力を排除した形式だけの選挙ではあるが、支配の正統性を国内外にアピール】
都市部を中心に国土の30〜40%程度の支配しかない軍事政権ですが、年内の総選挙を強行する構えです。

****12月28日に総選挙「第1段階」 クーデター後初、軍政発表―ミャンマー****
ミャンマー軍事政権は18日、かねて実施を予告していた総選挙の第1段階を12月28日に開始すると発表した。選挙管理委員会は国営テレビを通じた声明で「その後の日程は改めて発表する」としている。総選挙が実施されれば、2021年のクーデター後初めて。

国軍は「民政移管」を演出し、親軍政権樹立を通じた統治の正統化を目指している。ただ、国軍に抵抗する民主派や少数民族武装勢力は総選挙に参加せず戦闘を継続するとみられ、公正な選挙が実現するかは不透明な情勢だ。

国軍は今年7月31日、クーデター時に出した非常事態宣言を解除。12月と来年1月に選挙を実施する方針を示していた。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は前日の演説で「(総選挙の実施は)第2章の始まりで、成功させることができればより多くの成果を得られる」と強調した。【8月18日 時事】
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かつてスー・チー氏が率いていた反政府勢力は総選挙には参加できませんし、そうした勢力は選挙自体をボイコットすると思われますので、選挙結果は軍事政権に賛同する勢力の勝利が確定しています。

国内支配がままならない現状で、敢えてそうした形だけの総選挙を強行する背景には、国内外に「正統性」をアピールしたい軍事政権の思惑があると思われます。

****軍事政権が総選挙を強行したい理由*****
ミャンマーの軍事政権(国軍=タトマドー)が実効支配を失いながらも総選挙を強行したい理由は、軍事的勝利ではなく 政治的・国際的な「正当性の演出」 に重きを置いているからです。整理すると以下のようになります。

1. 国際社会への正当化
国軍はクーデター以来「不当な政権奪取」と批判され続けています。
「選挙」を実施することで、自らを“合法的な政府”として見せたい意図があります。

特にASEANや中国、ロシアなどに対し「我々は民主的プロセスを進めている」と主張する材料になります。
西側諸国は「茶番」として認めませんが、国軍にとっては部分的でも外交関係改善に利用可能です。

2. 国内向けの権威付け
多くの国民は選挙を信用しませんが、軍政は 「憲法に基づき統治を続けている」 というプロパガンダを必要としています。

軍政支持政党(USDPなど)や軍と近い政党を当選させる仕組みを作り、「国民が選んだ代表」として権威を装う狙い。

反政権派(NLDや民族政党)の参加は排除されるため、事実上「軍が勝つための選挙」。

3. 実効支配の再構築ツール
選挙を口実に 治安強化・検問・集会規制 を拡大できる。
「選挙妨害」を名目に、反政権派の拠点を攻撃する口実にもなる。
実際に、軍は選挙妨害を「テロ行為」と位置づけ、死刑や長期刑を科す法律を整備しています。

4. 長期的な軍の権力維持
ミャンマーの2008年憲法は「軍が議会の25%の議席を自動的に確保」できる仕組みを持っています。
つまり、どんな選挙結果でも軍は拒否権を持ち続けるため、選挙をしても軍の優位は揺るがない。
選挙を通じて「文民政府を装いつつ、実権は軍が握る」という体制に戻したい。

まとめ
軍政が総選挙を強行したい理由は、
国際的な正当性アピール(制裁緩和や外交カードに)
国内向けの権威付け(軍主導政党の勝利を演出)
治安統制の強化口実(反政権派の弾圧を正当化)
軍憲法に基づく長期支配の固定化(選挙後も軍の 拒否権は維持)
という 「軍の支配を持続するための政治ショー」 だと言えます。【ChatGPT】
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国民の支持がない強権支配の政権は、劣勢の状況がある程度進行すると、内部から崩れる形で一気に全面崩壊することも。アフガニスタンでタリバンの攻勢によって当時の政権があっけなく崩壊したように。

ただミャンマーの場合、国境地帯の少数民族武装勢力はともかく、反政府勢力が都市部・中央地域で軍事政権にそこまでの圧力をかけるには至っていないため、現在のような状態がしばらく続く可能性も。

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アメリカ  首都への州兵派遣、トランプ支持州からも 抗議行動混乱の鎮圧部隊 文化・思想の「審査」

2025-08-18 23:15:49 | アメリカ
(米首都ワシントンで連邦議会議事堂の周辺を巡回する州兵=14日(AP=共同)【8月17日 産経】)

【事実とはやや異なるも「世界で最も危険な都市の1つ」ワシントンへの州兵派遣強行】
トランプ大統領が治安悪化を名目に州兵を動員してまでも大統領に批判的なリベラル勢力が強い首都ワシントンの犯罪者・ホームレスを一掃しようとしている件については、8月11日ブログ“トランプ大統領  州兵を動員して首都ワシントンのホームレス一掃へ”でも取り上げたところです。

トランプ大統領は首都ワシントンD.C.を「世界で最も危険な都市の1つ」、無法状態に陥りつつある都市と主張していますが、“いつものように”大統領の主張は事実とは異なります。

****トランプ「首都に州兵を投入する!」...ワシントンD.C.の犯罪率悪化は本当か? データが語る驚きの実態****
<トランプはワシントンD.C.の治安悪化を名目に、同区に州兵の派遣を検討するなどしているが>
ドナルド・トランプ米大統領は、ワシントンD.C.を「世界で最も危険な都市の1つ」と主張。無法状態に陥りつつある都市として喧伝している。

しかし、本誌が複数のデータを用いて分析すると、実態はトランプの妄想ほど単純ではないようだ。本誌はホワイトハウスにコメントを求めた。

トランプは最近、ワシントンD.C.の犯罪率が悪化しているとの発言を繰り返している。犯罪対策として、ワシントンD.C.を連邦政府の管理下に置く可能性に言及してきた。

また、3月に発令された「コロンビア特別区を安全で美しい場所にする」大統領令や、8月7日の元政府高官への襲撃事件を受け、トランプは連邦法執行機関の「配置強化」をワシントンD.C.に指示するなどしている。

しかし、データを見る限り、トランプの主張する「ワシントンD.C.の犯罪率悪化」は妄想と言わざるを得ない。
ワシントンD.C.連邦検事局が1月に発表した警察データによると、2024年の暴力犯罪は過去30年間で最低水準となった。殺人、強盗、カージャック、危険な武器による暴行など他の犯罪も減少している。

ワシントンD.C.警察のデータによれば、今年の暴力犯罪は前年同期比26%減となった。内訳は、殺人が12%減、強盗が28%減、危険な武器による暴行が20%減。カージャックに至っては37%減となった。

FBIが8月に発表したデータでも、2024年のワシントンD.C.における暴行、殺人、誘拐、拉致、性犯罪といった「対人犯罪」の総件数は2万2320件と、2023年の2万3914件から減少している。その大半が暴行事件(2万1437件)であり、次いで性犯罪(655件)、殺人(179件)、誘拐(49件)が続く。

ただし、カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州などの人口が多い州と比較すると、ワシントンD.C.の対人犯罪率は高い傾向にある。

殺人発生率は世界の最も危険な都市トップランカーの足元にも及ばない
米ニューヨーク州のロチェスター工科大学(RIT)公共安全イニシアチブのデータによれば、2024年のワシントンD.C.の殺人率は人口10万人あたり27.3件となっている。これは世界の「最も危険な都市」トップ10の人口10万人当たりの殺人率と比較しても大幅に低い数値だ(10位のブラジル・サルバドールで77.4件)。

実際、ワシントンD.C.含め、全米での殺人率は低下傾向にある。ワシントン・ポストが米国内の大都市100警察署のデータを分析したところ、全体として殺人は30%以上減少していた。

一方、ワシントンD.C.は、犯罪全般を基準としたワールドアトラスの「世界で最も危険な都市」ランキングで100都市中69位となった。このランキングには、ミシガン州のデトロイトやイリノイ州のシカゴなど、ワシントンより犯罪が多い米主要都市もランクインしている。

トランプは8月9日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「12日にホワイトハウスで記者会見を開く。ワシントンD.C.の暴力犯罪は事実上止まるだろう。この都市は世界で最も危険な都市の1つになってしまったが、すぐに最も安全な都市の1つになる!!!」と投稿した。

他にも、「アメリカの首都を守り、真に偉大な首都へと再び変貌させる!テント、貧困、不衛生、犯罪に覆われる前は、世界で最も美しい首都だった。まもなく再びその首都を取り戻すだろう」とも投稿している。

区長はトランプに真っ向から反論
ワシントンD.C.の連邦検事、ジャニーン・ピロは8月7日、記者団に対し「14~17歳の若者による犯罪があまりにも多い。私には手が付けられない。皆さんも写真を見たことがあるだろう。若者は甘やかされすぎだ。もう甘やかすべきではない。責任を取らせる必要がある。もうたくさんだと理解させなければならない」と少年犯罪を批判した。

ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は8月7日の声明で「ワシントンD.C.は素晴らしい都市だが、長きにわたり暴力犯罪に苦しんできた。トランプ大統領は無辜の市民を守るため、連邦法執行機関の増員を指示した。DCに暴力犯罪者の逃げ場はない。大統領は、ワシントンD.C.を住民、議員、世界中からの訪問者にとって、より安全な場所にすることを約束している」とトランプの政策を擁護した。

一方、ワシントンD.C.のミュリエル・バウザー区長は米ニュース専門放送局のMSNBCに対し「2023年にひどい犯罪の急増があったのは事実だが、今は2025年だ。我々は地域社会、警察、検察、そして実際に連邦政府とも協力して犯罪率の改善を成し遂げてきた」とトランプの主張に反対した。

トランプは12日に記者会見を開く。この中で、ワシントンD.C.における犯罪対策の詳細を明らかにする見通しだ。【8月12日 Newsweek】
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12日には州兵の一部がワシントンに到着しました。

****連邦指揮下、初日に23人逮捕 米首都、州兵も到着*****
トランプ米政権は12日、首都ワシントン(コロンビア特別区)の犯罪対策強化のため地元警察を連邦政府の指揮下に置いた初日の11日夜、約850人の捜査員らが巡回し、殺人や銃関連の容疑などで23人を逮捕したと明らかにした。

NBCテレビによると、トランプ大統領が投入を決めた州兵約800人の一部が12日、ワシントンの駐屯地に到着した。

米メディアによると、11日夜には連邦捜査局(FBI)や移民・税関捜査局(ICE)の捜査員が首都を巡回する姿が目撃された。

レビット大統領報道官は12日の記者会見で「これは始まりに過ぎない」と述べ、取り締まりを一層強化する方針を示した。【8月13日 共同】
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【市民の抗議活動などが激化し騒乱状態になった場合に備え、即応部隊の新設を検討】
更に、政権は市民の抗議活動などが激化し騒乱状態になった場合に備え、州兵による即応部隊の新設を検討しているとも。

****市民騒乱へ即応部隊新設か トランプ政権、州兵6百人****
米紙ワシントン・ポスト電子版は12日、トランプ政権が国内で市民の抗議活動などが激化し騒乱状態になった場合に備え、即応部隊の新設を検討していると報じた。州兵600人で構成し、早ければ2027会計年度(26年10月〜27年9月)にも設置する計画としている。
 
部隊は南部アラバマ州と西部アリゾナ州の拠点に300人ずつが常駐し、米国を南北に縦断するミシシッピ川の東西で管轄地域を分ける。最終決定はされておらず、変更もあり得るという。

トランプ氏は6月、西部ロサンゼルスでの不法移民取り締まりを巡る抗議デモに対応する名目で約4千人の州兵を動員し、地元知事や市長の反発を招いた。【8月13日 共同】
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市民の抗議活動に対する鎮圧部隊の創設という「強権支配」的な試みが、当たり前のことのようにすんなりと進んでいくのが現在のトランプ政権・アメリカの実態です。

【思想・文化にも介入「審査」するトランプ政権】
「鎮圧」は抗議行動だけでなく“思想”にも及びそうです。ハーバードなど大学への圧力はかねてよりのものですが、スミソニアン博物館群の展示内容についても“審査”を行うとか。

****米ホワイトハウス、スミソニアン博物館群の展示を「審査」へ****
米ホワイトハウスは12日、首都ワシントンを中心とするスミソニアン博物館群の展示内容を巡って、広範な「内部審査」に乗り出すことを明らかにした。

来年の建国250周年に先立って、トランプ大統領が提唱する「米国史の真実と健全性の回復」を反映させるためだという。「米国例外主義を祝福するという大統領の指示に沿い、分断的で党派的な叙述を排除する」とも説明している。

ホワイトハウスが12日に博物館群を運営するスミソニアン協会に送付した書簡によると、この審査は、米国歴史博物館▽自然史博物館▽国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館▽国立航空宇宙博物館▽アメリカ美術館――など8施設を対象に実施する。

オンラインを含むコンテンツ全般、キュレーション(展示品の取捨選択と展示構成)の過程、現在と今後の展示計画、収蔵品の使用方法などを詳細に調べるという。120日以内に展示内容を「是正」させ、順調にいけば来年の早い時期に審査を終えるとしている。

ホワイトハウスは「キュレーターやスタッフへの干渉ではなく、正確で包摂的な米国の歴史を描くための支援だ」と主張する。

だが、米紙ワシントン・ポストは「トランプ氏による政治的干渉が、歴史的に非党派的と考えられてきたスミソニアン協会への懸念を生じさせている」と指摘している。

トランプ氏は3月、協会が分断的で人種中心的なイデオロギーの影響下にあるとして「不適切なイデオロギー」を排除するよう命じる大統領令に署名した。

7月には、米国歴史博物館でトランプ氏の2度の弾劾を扱った展示が撤去されて批判が起こり、記述の一部を改めた上で8月8日に再び展示されるという騒動があった。【8月13日 毎日】
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なぜトランプ大統領は文化にまで首を突っ込むのか。

****なぜトランプ大統領は文化にまで首を突っ込む? 今度は博物館が標的に…政権による「歴史修正」の恐れは****
(中略)
◆「深い歴史観はないけれど…支持者を喜ばせたい」
なぜトランプ氏は文化にまで首を突っ込むのか。 同志社大の三牧聖子教授(米国政治外交)は「自身に深い歴史観があるわけではない。支持者を喜ばせる政策の一つだ」とみる。

DEI(多様性・公平性・包括性)の取り組みが進む社会に不満を持つ白人や非エリート層の不満を巧みにくみ取り、「文化施設はリベラル派に乗っ取られ、白人を疎外していると決め付けてたたき、統制下に置こうとしている」と指摘する。その上で「歴史叙述は長い時間をかけ、女性や黒人の視点や語りを組み込むようになってきた。再び巻き戻すような修正は許されない」とくぎを刺す。

◆「戦争賛美や原爆肯定の展示が出てくる可能性も」
美術ジャーナリストの藤田一人氏は「政治は文化に介入してきた過去がある」と解説する。

ナチス・ドイツを率いたヒトラーが抽象画などの近代芸術を「退廃芸術」と呼んで排斥したほか、日本でも先の大戦で一流画家たちを指名して戦争画を数多く制作させたとし、「権力者は正当な守護者であるとのアピールや、国威発揚のために文化を統治した」と説明する。

かたやトランプ氏の試みに関しては「米国内だけの保守的な価値観を反映させるため、戦争を賛美したり、原爆投下を肯定したりするような展示が出てくる可能性はある」と危ぶむ。

◆「展示見直しの圧力」は権力者以外からも
展示内容の見直しを求める動きは日本でも。一例が長崎市の長崎原爆資料館。戦後80年となる本年度中の展示リニューアルを計画したが、南京事件を「でっち上げ」との意見が審議会委員の一部から出た。

戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏は「負の歴史を展示するのは自国に打撃を与えるためではない。繰り返さないよう反省するためだ。事実に基づかず、『国益に反する』『自尊心を傷つけられる』という主張は言いがかりだ」と強調する。

権力者以外からかかる圧力にも危惧を募らせる。
「事実に基づかなくとも声高に主張すれば、SNS(交流サイト)やネットによって影響力を持ち、研究者が長年積み重ねた成果が簡単に覆るようになった。日本も米国も国際社会で信用を落とさないため、国民一人一人が事実に誠実に向き合う姿勢が求められる」【8月16日 東京】
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【トランプ支持州の州兵も動員 将来的なクーデターの準備にならないことを願うが・・・・】
話をワシントンに戻すと、トランプ米政権は首都ワシントンの警察本部長交代を命じて連邦政府が首都の警察権を掌握する指示を行っていましたが、裁判所判断を受けてこれを撤回しています。

****米政府、首都ワシントンの警察本部長交代を撤回 首都の訴えを連邦地裁認め****
トランプ米政権は16日、コロンビア特別区(DC、首都ワシントン)の警察本部長交代を命じた指示を撤回した。パム・ボンディ司法長官は15日、麻薬取締局(DEA)の長官を同地区の「緊急警察本部長」に任命したが、首都ワシントンが政府を提訴したため、首都ワシントンの連邦地裁が緊急で審理した。

首都は訴えの中で、ボンディ長官の命令を無効とし、DEA長官が首都警察内で一切の指揮権を持たないよう求めていた。

裁判所の決定により、首都警察のパメラ・スミス本部長は、引き続き警察の指揮を執ることが決まった。

首都ワシントンのアナ・レイズ連邦地裁判事は、トランプ政権が警察権掌握の根拠とした連邦法「コロンビア特別区自治法」に基づき、同市のミュリエル・バウザー市長はホワイトハウスの指示に従う義務があると指摘した。

ただし、同法は政権に首都警察全体の完全な統制権を与えるものではないと、判事は明言した。【8月16日 BBC】
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警察権掌握は頓挫したようですが、州兵派遣は進んでおり、大統領の指揮下にある「コロンビア特別区州兵」だけでなく、トランプ支持の共和党系州からも派遣されています。

****米南部と中西部の共和党系3州がワシントンに州兵派遣へ、市長は猛反発****
米南部ウェストバージニア、サウスカロライナと中西部オハイオの3州は16日、トランプ政権の要請に基づいて首都ワシントンに州兵を派遣すると発表した。いずれの州も与党共和党が知事を務めている。

トランプ大統領は11日、ワシントン市内の治安維持やホームレス問題の緊急対策として州兵投入を表明した。

ただ3州の州兵派遣発表後、ワシントンのバウザー市長(民主党)はX(旧ツイッター)に「米国の国土で米国市民を取り締まる兵士は米国人ではない」と投稿して強く反発。またワシントンのシュワルブ司法長官は、連邦政府が警察の指揮権を掌握するのは違法だと提訴している。

ウェストバージニアのモリシー知事の事務所は声明で、公共の安全と地域間協力の意思を示すためにワシントンに300-400人の州兵を派遣すると述べた。
サウスカロライナのマクマスター知事は、国防総省の要請に応じて200人の州兵を送る意向。オハイオのデワイン知事は、数日中に150人を派遣すると明らかにした。【8月18日 ロイター】
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犯罪者やホームレス対応を名目に州の自治権を剥奪し、警察権を取り上げ、大統領支持州からの州兵を派遣、抗議行動鎮圧のための州兵からなる即応部隊も。単に「行動」だけでなく「思想」「文化」にも介入・・・およそ「民主主義国」での出来事とは思えず、中国・ロシアのような強権支配国家の出来事のよう。

今回のワシントンでの政権対応が、将来のより広範な「反トランプ州」弾圧への強権発動(一種のクーデターか)の準備とならないことを願いますが・・・・。

いよいよ「侍女の物語」が描くディストピアが近づいてきたようにも。
核戦争の危険性についてはあまり現実味を感じていませんが、宗教保守・白人・MAGAなどの勢力を背景にしたアメリカの強権独裁国家への変質については、ありそうな感じも・・・。
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