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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トランプ関税のアジア世界への波紋 寄り添う姿勢をアピールする中国 ミャンマー軍政の統治を初認知

2025-07-12 20:59:26 | 東南アジア
(東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の外相会議で、マレーシアのモハマド外相(中央右)と手をつなぐ中国の王毅外相(同左)=クアラルンプールで2025年7月10日【7月11日 毎日】)

【中国 ASEANに寄り添う姿勢をアピール】
東南アジア各国は、トランプ米大統領による大規模関税措置(8月1日発動予定、最大40%超)に対して、強い懸念と反発、そして緊急対応を強いられています。以下、主要国別のリアクションです。

****東南アジア各国のトランプ関税へのリアクション****
ベトナム
当初、11%程度で交渉合意と見られていたが、トランプ氏が一転して20%(再輸出品は40%)に引き上げたことが判明し、ハノイでの交渉を混乱させました。
信頼性低下を批判し、追加交渉が継続中です 。

インドネシア
農産物やエネルギーなど約190億ドル分の米輸入を提案。財務相は36%の関税に「驚きつつも前向き」と発言 。
首席交渉官がワシントンへ出向き、買いオファーや交渉努力を継続中 。

タイ
36%の関税込みの警告に直面しつつも、米財務省へ積極的に交渉を継続 。

マレーシア
関税25%(少し上昇)の見込み。アンワル首相が「これは一時的な嵐ではない」と警鐘を鳴らし、ASEAN内で協力強化を訴えました 。
中銀は利下げ対応、また交渉継続の姿勢を示しています 。

カンボジア
ガーメント・靴などに対する関税が36%→減少した模様で、一部産業にとって救いになっています 。

ミャンマー
40%の新関税警告書に対し、政権トップが「米国からの初の公式接触」と歓迎し、支持を表明。制裁緩和や関税引き下げを条件に尋常ならざる外交姿勢を見せています 。【ChatGPT】
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この東南アジア諸国の混乱・戸惑い・反発を利用して、寄り添うソフトな姿勢をアピールして好感度上昇・取り込みを狙うのが中国。

****トランプ関税は“好都合” ASEANに寄り添う中国の思惑****
トランプ米大統領が東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などに対する新たな関税率を発表し、域内で動揺が広がる中、中国は「取り込み」の好機と見てASEANへの働きかけを強めている。

マレーシアの首都クアラルンプールで8日から開かれ、11日に閉幕したASEANの一連の外相会議で、中国の王毅外相兼共産党政治局員は米国の関税政策を繰り返し強く批判し、ASEAN各国に寄り添う姿勢を見せた。

「王毅だ!」。10日午前、中国とASEANの外相会議が行われる会議室前。会場入りするマレーシアのモハマド外相を報道陣が撮影していたところ、突如王氏が後方から現れ、報道陣から驚きの声が上がった。

国際会議では、主催国が招待国を出迎えるのが通例だ。しかし王氏はこの日、モハマド氏が来る前に会場入りしたうえで、カメラの前で手を上げて主催者を歓迎。満面の笑みを浮かべて親密さをアピールした。

さらに同日行われたモハマド氏との会談で王氏は、「米国は紙一枚をASEAN各国に送りつけ高関税を徴収しようとしている。典型的で一方的ないじめ行為だ。中国は自国のためだけではなく、ASEAN各国との共同利益を守るためにも立ち上がって抵抗する」と、米国を激しく非難してみせた。

米国と対立しながら経済を維持する必要がある中国にとって、ASEANとの良好な関係は不可欠だ。東南アジアに工場を移転したり、東南アジア向けの輸出品を多くしたりすれば、米国の高関税政策による打撃を緩和できるともみている。

中国税関総署によると、2025年1~5月、中国の対ASEAN輸出入額は3兆200億元(約60兆4000億円)に上り、前年同期比で9・1%増加した。トランプ政権は中国製品がASEAN各国を迂回(うかい)して米国に輸出されることを警戒している。
また中国は、フィリピンやベトナム、マレーシアなどと南シナ海の領有権を巡って対立を抱える。この問題への米国の介入をけん制するためには、トランプ政権の高関税政策は中国にとって「好都合」な面もあった。

王氏は今回、南シナ海を巡る問題について表面上は強硬な主張を控えた。10日のASEANとの会議では、南シナ海について「地域諸国の共通の故郷であり、大国同士の駆け引きの『闘技場』ではない」と指摘し、ASEAN側と「南シナ海行動規範(COC)」の協議を進めていく考えを示した。南シナ海問題で中国と激しく対立するフィリピンのラザロ外相と会場で握手する場面もあった。

一方、米国のルビオ国務長官もASEAN外相との会合で、「インド太平洋地域は米国の外交政策の中心だ」と述べ、高関税政策にかかわらず、米国はASEANを重視していると訴えた。

また南シナ海問題でのフィリピンなどとの連携も強調。日米比外相会談が終了した10日夜、報道陣の取材に応じたルビオ氏は「我々は日本、フィリピンと良好な関係を築いており、海上での安全保障や領土の一体性について緊密に協力している。今後もパートナーシップを強化しつづける」と語った。
 
一連の会議を終え、ASEAN外相会議は11日、トランプ政権の関税政策を念頭に「世界的な貿易摩擦や国際経済情勢の不確実性の高まり、特に関税に関する一方的な行動」に懸念を表明する共同声明を発表した。

中国とASEANの関係について青山瑠妙・早稲田大大学院教授(現代中国外交)は「中国は、領土問題で対立しながらも関係は前進できると考えている。ASEANは米中いずれにも偏らない外交を続けるが、中国がこの域内で指導力を強化する流れは今後も続いていくだろう」と語っている。【7月11日 毎日】
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アメリカは対中国を今後の外交戦略の基軸とする・・・としながらも、実際にやっていることは周辺諸国を中国の側に押しやっているだけ・・・みたいな戦略性の欠如を感じます。

【英国に続き2例目。アジアでは初めてとなったベトナムの“20%合意”・・・ベトナム指導部には“寝耳に水” 今も交渉中
個別にみると興味深いことも。

アメリカが巨額の貿易赤字を抱えるベトナムは他国に先駆けて合意し、その後の他国の交渉において「基準」となるとされています。

****トランプ氏、ベトナムとの関税交渉で合意と発表 アジアで初****
トランプ米大統領は2日、ベトナムとの関税交渉で合意したと明らかにした。自らのソーシャルメディアに投稿した。トランプ政権が大規模関税を発動した後に合意するのは、英国に続き2例目。アジアでは初めてとなる。

トランプ政権はベトナムに対し、46%の相互関税率を課していた。トランプ氏はソーシャルメディアで、ベトナム最高指導者のトー・ラム共産党書記長と会談した上で、▽ベトナムからの全ての輸入品に対し20%の関税を課す▽ベトナムは米国からの輸入品を無関税にする――ことで合意したと公表した。

トランプ氏は「相互関税」の上乗せ分の停止期限である7月9日までに多くの国との交渉をまとめたい考えを示していた。

米商務省によると、2024年の米国の対ベトナムの貿易赤字は1235億ドル(約17・7兆円)で、中国、メキシコに次ぎ3番目に大きかった。【7月3日 毎日】
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しかし、この「20%関税で合意」は“ベトナムの指導部にとって寝耳に水”だったようです。

****トランプ政権20%関税、ベトナムにとって寝耳に水-税率引き下げ探る****
トランプ米大統領がベトナムからの輸入品に対して20%の関税で合意したと先週発表したことは、ベトナムの指導部にとって寝耳に水だった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。ベトナム側は関税率の引き下げを目指しているという。

非公開の交渉だとして匿名を条件に話した関係者によると、ベトナムのトー・ラム共産党書記長は2日遅くにトランプ氏と電話会談を行った直後、交渉チームに対し、引き続き関税率の引き下げに向けて取り組むよう指示した。ベトナム側はより有利な関税レンジを確保したと考えていたため、20%という数字は予想外だったという。

ベトナムは電話会談前、10-15%の関税水準を求めて交渉を進めていた。

ベトナムの国営メディアでは、今回の20%関税に関する言及はほとんどない。ブルームバーグ・ニュースが確認した地元メディア宛ての政府文書では、ベトナムと米国の間でコンセンサスがない内容や、曖昧な情報あるいは臆測に関して掲載しないよう当局が地元メディアに指示した。

ベトナム外務省にコメントを求めたが、現時点で返答はなかった。

トランプ大統領が貿易合意を発表したのは英国に次いでベトナムが2例目だった。その後、トランプ氏は8月1日から最大50%の関税を課すと通知する書簡を対象の貿易相手国に次々と出している。

トランプ氏が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」でベトナムに関して投稿した翌日、ベトナム外務省は合意の詳細を詰めるため、米側となお調整していると説明していた。

それ以降、ベトナム指導部は公式コメントでこの問題への言及を避けており、ファム・ミン・チン首相は輸出先やサプライチェーンの分散を進め、新たな関税政策への適応を図る姿勢を強調した。

トランプ氏が今回の合意を発表してから1週間以上が経過したものの、ベトナムと米国はいずれも20%関税や迂回輸出と見なされる製品に課される40%関税について、具体的な内容や適用方法などをほとんど明らかにしていない。

ホワイトハウスに通常業務時間外にコメントを求めたが、すぐには回答がなかった。【7月11日 Bloomberg】
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ベトナム側の合意が得られていない段階で、トランプ大統領が「合意」を発表したということでしょうか?

ベトナム政府は具体的な合意文書を出しておらず、20%関税を正式に受け入れたわけではない状況で、“トー・ラム共産党書記長は2日遅くにトランプ氏と電話会談を行った直後、交渉チームに対し、引き続き関税率の引き下げに向けて取り組むよう指示した。”と、引き下げ交渉を継続しています。

この「寝耳に水」的な展開は、トランプ政権の一連の通商政策の突発性や曖昧さを象徴する事案として、大きな注目を浴びています。

同時に、ASEAN諸国にとっても米国との通商不安要因として、今後の交渉の行方が極めて重要になっています。

【ミャンマー トランプ氏からの関税通知が米国が軍政によるミャンマー統治を認めた初の事例 ミャンマー軍政は関税40%ながらもトランプ大統領に感謝】
変わったところではミャンマー。 関税40%ながらもトランプ大統領に感謝しているとか。

****ミャンマー軍政、関税40%でもトランプ氏に感謝 通知による「承認」で****
ミャンマー軍政は11日、軍政トップのミンアウンフライン国軍総司令官がドナルド・トランプ米大統領を称賛し、制裁解除を求めたと明らかにした。トランプ氏からの関税通知を受けたもので、これは米国が軍政によるミャンマー統治を認めた初の事例とみられている。

ミンアウンフライン氏は、2020年米大統領選が「盗まれた」とするトランプ氏の虚偽の主張を支持するとともに、紛争で荒廃したミャンマーについて独立報道を行う報道機関への資金提供を停止したことに感謝の意を表した。

国軍は2021年、クーデターを実行しアウンサンスーチー氏の民主政権を転覆した。以来、ミャンマーは内戦状態にある。

米国務省は、ミャンマー国民を「暴力とテロを用いて抑圧し」「彼らが自らの指導者を自由に選ぶ権利を否定した」として、ミンアウンフライン氏らに制裁を科した。

米国は軍政と正式な外交交渉を持っていないが、トランプ氏は7日、ミンアウンフライン氏宛てに書簡を送り、ミャンマーからの輸入品に対して8月1日から40%の関税を課すと通告した。

シンクタンク「国際危機グループ」のリチャード・ホーシー氏はAFPの取材に対し、「米国がミンアウンフライン氏と軍政を認める兆候を公にしたのは、今回が初めてだ」と述べた。

それ以前の非公式なやり取りは「当然ながら、トランプ氏からのものではないことはほぼ確実だ」と語った。
ミンアウンフライン氏はこの機を逃さず、軍政の情報チームが11日、ビルマ語と英語で公開した複数ページに及ぶ書簡で返答。

トランプ氏の書簡に「心からの感謝」を表明するとともに、トランプ氏の「米国を繁栄に導く強力なリーダーシップ」を称賛した。

また、国軍による権力掌握の正当化も試み、「トランプ氏が2020年米大統領選で直面した困難と同様、ミャンマーでも大規模な選挙不正などの重大な不正行為が起きた」と述べた。

自由なメディアのない国々にニュースを届けることを使命として米国によって設立されたボイス・オブ・アメリカとラジオ・フリー・アジアは、トランプ政権による資金提供停止を受けて、ビルマ語放送を停止した。
ミンアウンフライン氏は、こうしたトランプ氏の措置に「心から感謝する」と述べた。

軍政は、経済と軍事において、同盟国である中国とロシアからの支援への依存を強めている。
ミンアウンフライン氏はトランプ氏に対し、「ミャンマーに対する経済制裁の緩和と解除について再検討」を求めるとともに、関税率についても10〜20%に引き下げるよう要求。

トランプ氏が「世界一の市場である米国の特別な経済に引き続き参加するという心強い招待」をしてくれたことにも感謝した。

トランプ氏の懲罰的関税通知を受け、来月の発動を前に多くの国が米国と土壇場での合意締結に追われている。 【7月12日 AFP】
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“トランプ氏からの関税通知を受けたもので、これは米国が軍政によるミャンマー統治を認めた初の事例” 
外交的にこれが的確な選択だったのか・・・それともトランプ政権側は、ミャンマー軍政のリアクションを見越して敢えてそうした対応をとったのか?
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「変化」する欧州  英仏首脳 核兵器「統合運用」、抑止力強化で合意 

2025-07-11 23:48:34 | 欧州情勢
(10日、ロンドンの英首相官邸前で、フランスのマクロン大統領(右)を出迎えるスターマー首相【7月11日 時事】)

【英仏首脳は、核抑止力における連携で合意】
ウクライナに見るようにロシアの脅威は欧州各国にとって極めて現実的な問題です。 一方で、これまで欧州安全保障の中心的存在であり続けてきたアメリカは軸足を欧州からアジアでの中国対策に移しつつあります。

****英仏、初の核共同開発へ…ロシアの脅威に「欧州の核の傘」拡大****
英国とフランスが核兵器共同開発に過去初めて合意した。今回の合意を巡り、欧州内では「ロシアがウクライナ戦争を契機に核武力使用に言及し、米国のドナルド・トランプ政府が欧州の安全保障から手を引こうとする動きを見せている時点に取られた重大な安保協力強化措置」という評価だ。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、英国を国賓訪問中のフランスのエマニュエル・マクロン大統領がキア・スターマー英国首相とともに9日(現地時間)、英仏両国の核兵器共同開発調整に合意した。

これに対して英国政府は「今回の合意は両国それぞれの(核)抑止力が史上初めて独立的ながらも調整されることができるという意味」と明らかにした。フランスのエリゼ宮(大統領府)関係者も「今回の合意は2つの核保有国間の連帯」としながら「我々の同盟と敵対勢力すべてに対するメッセージ」と話した。 

今回の発表は、欧州諸国が最近になって「英国とフランスの核の傘を拡大するべきだ」と注文したことが契機となった。ウクライナ戦争以降、ロシアの核の脅威は高まったが、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)次元の集団防衛から手を引こうとする動きを繰り返しちらつかせているためだ。

これに関連して、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「米国の気まぐれとロシアの好戦性のために欧州が一致団結している」と指摘した。 

NATO当局者出身で欧州外交関係委員会名誉政策研究委員のカミーユ・グラン氏はFTに対して「今回の合意は両国の核政策において意味ある変化」としながら「欧州の安全保障に対する英国・フランスのコミットメントを示す非常に強力な宣言」と述べた。 

当初英国はNATOの核計画グループ(NPG)加盟国としてNATO安保のために核戦力を共有した。反面、NATO核共有協定には入っていないフランスは核兵器使用に関連して独立的な決定を下すという立場を維持し続けてきた。 

マクロン氏もこれまで核兵器の使用基準になるフランスの核心利益に「欧州的次元」があるとしながらも詳しい説明は省くなどの態度を示していた。だが、今回は決心したように具体的な立場を明らかにした。

マクロン氏は8日、英国議会の演説で「欧州では我々両国が欧州安保に特別な責任を負わなければならないという期待がある」とし「今はこれをはっきりと明らかにする時」と核兵器政策転換の背景を説明した。 

これに関連して、ロンドン大学ギングスカレッジのローレンス・フリードマン名誉教授は「私が知る限り、フランスは核戦力を誰かと調整すると公開的に認めたことがない」とし「大変重要な進展」とFTに話した。 

両国は今後、核兵器だけでなく次世代長距離ミサイルの共同開発などにも着手する。2010年に英仏が合意した「ランカスターハウス防衛協定」のアップグレードバージョンである「ランカスターハウス2.0宣言」に両国首脳が署名する予定だと新聞は伝えた。 

今回の宣言には▷ウクライナに支援した空対地巡航ミサイルである英国のストーム・シャドーとフランスのスカルプに代えるための次世代長距離ミサイルの開発▷次世代空対空ミサイル、ドローン(無人機)・ミサイル撃墜用極超短波武器の開発▷同時打撃力向上のための人工知能(AI)活用--などが含まれる。両国首脳はこの日、英仏海峡を通した不法移民の遮断にも大きな枠組みで合意し、10日に開かれる首脳会談で具体的な方案を扱う計画だ。【7月11日 中央日報】
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*****英仏、核運用の連携で合意 トランプ政権の関与低下に備え抑止力拡大****
(中略)
欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国で核兵器を持つのは英仏だけで、ストックホルム国際平和研究所によると、今年1月時点の核弾頭保有数はフランスが290発、英国が225発。ただ、ロシア(5459発)、米国(5177発)などに比べると少なく、「連携するのが望ましい」(元NATO高官)との見方もあった。

米国はドイツなどの米軍基地に約100発の核爆弾を配備し、NATOを通じて欧州に「核の傘」を提供している。

だが、トランプ政権はNATOへの関与低下を示唆する。そうした状況を受け、マクロン氏は自国の核抑止力を欧州全体に拡大する構想を明らかにし、メルツ独首相も前向きな姿勢を示していた。(後略)【7月11日 毎日】
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【フランス・マクロン大統領の「核の傘」を欧州全体に拡大する方向性に関する発言】
フランス・マクロン大統領の自国核兵器を欧州全体の観点から運用する、「核の傘」を欧州全体に拡大する・・・ということについては、これまでも同様の発言が相次いでいますので、驚きではありません。

*****マクロン大統領の核の傘拡大に関する発言*****
1. 2020年2月:戦略に欧州参加を呼びかけ
在フランス軍事教育校での演説において、マクロン大統領はフランス核抑止力への「欧州同盟国の参加」を初めて公に呼びかけました。

2. 2025年3月5日:核の傘拡大に向けた戦略的議論の開始発表
国民向けの全国演説で、「フランスの核抑止力は完全かつ主権的だが、ドイツのメルツ次期首相からの要請を受け、欧州同盟国の保護を巡る戦略的議論を始める」と述べました。
「我々の核抑止力は我々を守る。欧州パートナーを守るためにも開かれた議論を始める」との強い宣言でした。

3. 2025年5月14日:核兵器欧州展開の可能性示唆
フランスTF1とのインタビューで、具体的に「ベルギー、ドイツ、イタリア、トルコのように、フランスの核兵器を他国に展開する可能性について議論する用意がある」と発言。
ただし条件として、「配備によってフランス自身の防衛能力が損なわれない」「使用権限は大統領のまま」と明確にしています。

4. 2025年7月9–10日:英国との北ウッド宣言で実質的な協調へ
国賓として訪英したマクロン大統領は、英国のスターmer首相と共に「北ウッド宣言(Northwood Declaration)」を発表Reuters。

フランスと英国による核抑止力の「調整と共同対応」を明文化
「欧州に対する極度の脅威には、両国がともに対応する」として、核の傘が欧州全体に適用される可能性を示唆。
宣言では、新たに軍・政治の「核調整グループ」を設立するとされ、政策から運用に至る協力の枠組みが具体化しました。

これが「米国に依存しない欧州戦略自主性」の実質的な実装と評価されており、マクロン発言の集大成と見做されています。【ChatGPT】
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【ド・ゴール以来の仏独自性との関係】
フランスはド・ゴール時代より、アメリカ主導の安全保障システムとは一定の距離を置き、フランス固有の立場を維持してきました。

そうしたド・ゴール時代からのフランスの欧州安全保障あるいはNATOへの姿勢の観点からして、最近のマクロン大統領の核の傘拡大発言はどのように見るべきでしょうか?

****フランスの欧州安全保障およびNATOへの姿勢****
フランスの欧州安全保障およびNATOへの姿勢は、ド・ゴール以来一貫して「独立自尊・自主防衛」志向が強いのが特徴です。その立場を簡潔にまとめると、次のようになります。

ド・ゴール時代からの基本姿勢(1960年代以降)
核心理念:
「戦略的自立」:フランスは国家の存亡にかかわる抑止(特に核)を外国に委ねない。
「欧州=米国から自立すべき」:NATOを重視しつつも、アメリカ主導の構造に対する強い警戒。

具体的行動:
1966年、ド・ゴールはフランスをNATO統合軍から脱退(政治的には加盟継続)。
同時にフランス独自の核戦力(「フォース・ド・フラップ」)を強化。
「仏核はフランスのみを守る」という立場を明確にする一方、欧州他国の“核傘”には組み込まれず。

マクロン大統領の最近の発言の位置づけ(2020~2025年)
連続性:
戦略的自立の継承:「米国一辺倒の欧州防衛では不十分」という警戒感はド・ゴール時代と一致。
核の最終判断権は依然フランス大統領=あくまで主権的核。

相違点(歴史的転換):
欧州の「共有防衛」へと“開き始めた”点が大きな変化。
マクロンは2020年以降、フランス核戦力を欧州同盟国と「戦略対話の対象」として開放。
2025年には、実質的に「欧州全体への核抑止の提供」を打ち出す(北ウッド宣言)。

総括
時代
姿勢
対NATO
対欧州
ド・ゴール(1960s〜)
核を含め戦略的自立を絶対視
統合軍から脱退、自主路線
「仏核=仏のため」
マクロン(2020s〜)
戦略的自立を維持しつつ、欧州全体の抑止力へと再定義
NATO加盟維持(仏軍統合済)
「仏核=欧州の抑止力の一部に」(初の本格提案)

見るべきポイント:マクロンの発言は、ド・ゴール路線の修正的発展形と見るべきです。

ド・ゴールの「自立」を捨てず、同時に「米国不在の時代」に備えて、欧州にフランスの核を活用させる道を開いたという意味で、歴史的転換とも言える内容です。【ChatGPT】
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【アメリカとの「特別な関係」を重視してきたイギリスの変化】
一方、アメリカとの「特別な関係」を重視してきたイギリスが、マクロン大統領と協調して核兵器の運用で連携することに初めて合意した背景は?

****イギリスの核戦略****
イギリスが、アメリカとの「特別な関係(Special Relationship)」を保ちながらも、マクロン大統領とフランス核戦力の運用協調(北ウッド宣言)に初めて踏み切った背景には、以下のような複合的な地政学的・戦略的要因があります。

背景1:アメリカの欧州関与に対する不信感の高まり
◆ トランプ前大統領の再台頭・再選の可能性(2025年米大統領選)
トランプ氏は過去に「NATO加盟国が十分な国防支出をしていないなら、米国は守らない」と発言。
2024年にも同様の発言を繰り返し、NATOからの部分的撤退も辞さない態度を示した。
➡️ イギリスとしても「米国の核の傘」に全幅の信頼を置けない局面に。

背景2:ロシアの持続的な脅威と戦術核使用の懸念
ロシアはウクライナ戦争で核による恫喝を繰り返しており、戦術核の使用リスクが欧州で現実的懸念に。
米国の核抑止は主に大西洋を挟んだ「戦略核」によるもの。即応性や地域的威圧への対応には限界がある。
➡️ フランスとイギリスの欧州域内の独立核戦力の連携が「地域対応力」を高める。

背景3:英仏の核保有国としての責任共有意識の強まり
英仏はともに欧州で唯一の戦略核保有国(英:トライデント搭載潜水艦、仏:SLBM+空中投下型)。
英国内では、「欧州の安全保障の最終責任を仏に任せるのではなく、英も積極的に関与すべき」という保守層・軍部の声が強まっていた。
➡️ 「仏と組んで欧州の核抑止を英仏が共同で担う」ことが国益に適うとの判断。

背景4:EU脱退後の外交的再立脚と欧州での役割再構築
英国はBrexitによりEUを離脱し、「欧州の政治・防衛での信頼回復」が課題。
NATO以外の枠組み(たとえば英仏二国間協調)で欧州内リーダーシップを発揮する余地を探っていた。
➡️ 仏と核協調することで、英国の「欧州安保の要」としての地位を再主張。

背景5:マクロンとの個人的・戦略的関係改善
英国のキア・スターマー首相は、マクロンとの政治的協調関係を重視。
「EU懐柔」と「米国との自立した補完関係」を目指す中で、フランスとの連携は外交戦略の一環。

結論
イギリスは、アメリカの信頼性への懸念とロシアの軍事的脅威の現実化を背景に、フランスとともに欧州の「独自核抑止」の柱となることを選んだのです。それは、特別な対米関係を否定するものではなく、「補完し合う二重構造(米国+仏・英)」を目指す戦略的柔軟性の表れと言えます。【ChatGPT】
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アメリカの欧州からの撤退、ロシアの脅威といった一般的背景に加え、ブレグジット後のイギリスの欧州への関与の具体策として、今回の英仏共同の核運用は好都合だったということでしょうか。

【ドイツの立場 現政権はフランスの呼びかけに好意的】
こうした英仏の動きをドイツはどのように見ているのか?

****フランスの「核の傘」欧州拡大に対するドイツの立場****
ドイツでは、フランスの「核の傘」欧州拡大に対して、大きく2つの立場に分かれています。

オラフ・ショルツ前首相(SPD)&与党主流
慎重・懐疑的な姿勢:ショルツ氏は2025年3月のEUサミットで、フランスの提案について「NATOの既存の核抑止は維持されるべきだ」とコメントし、変更しない方針を明言しました。

総じて、米国による核抑止力への信頼を前提に、「仏核傘」への乗り換えには慎重です。

フリードリヒ・メルツ次期首相(CDU)
積極的な対話と検討支持:首相就任前から「仏・英と協議し、核共有の可能性を議論すべき」と発言。
フランスの呼びかけには好意的で、「(仏核)議論のテーブルは開かれるべき」と明言。

見解では「米国の核傘に替わるものではないが、欧州独自の選択肢として補完となる可能性を評価する価値がある」としています。

3. ドイツ世論・専門家の反応)
意見は二分:
「仏核への財政支援で共通核抑止を得るのは、ドイツにとって利益になる」
一方で、
「EUに核を持たせるのは遠い未来。まずは国内の通常兵器を整備するべき」

結論:CDU 主導政権では、フランスと英国との対話を通じ、「仏核傘」はNATOへの代替ではなく補完策として実質的に検討される流れにあると見られます。

つまり、マクロンの提案はドイツでも政策潮流に影響を与え始めており、歴史的に慎重だった安保観を少しずつ変化させつつあると言えます。その動きは「ドイツ国内の保守派からの支持」が鍵を握っているとも言えそうです。【ChatGPT】
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トランプ関税通知  アジア諸国中心とブラジルの突出した高さ

2025-07-10 23:46:47 | アメリカ
(関税率1:【7月8日 読売】   関税率2:【7月10日 中日Bizナビ】)

【なぜアジア諸国が中心だったのか?】
*****トランプ政権 日本から輸入品25%関税課されたら? 国内経済は****
(中略)
関税率25% シンクタンクが影響試算
大和総研 久後翔太郎シニアエコノミスト
関税率が25%となった場合、すでに発動されている自動車や鉄鋼などへの関税や中国に対する関税措置の影響分も含めると、日本のことしの実質GDPは1.3%押し下げられる可能性があるとしています。

日本総研 藤本一輝研究員
25%の関税と自動車などへの追加関税で日本企業は価格競争力が下がり、アメリカへの輸出が年間で4兆4000億円から6兆5000億円減ることで今年度の日本のGDPの伸び率は事実上のゼロ成長になると試算しています。昨年度=2024年度は日本のGDPの伸び率は実質で0.8%でした。

「実際に関税が25%に引き上げられた場合、企業の収益は悪化し、設備投資を控える動きなどが加速するおそれがある。ここ数年順調だった賃上げの動きも鈍ることが予想され、そうなれば私たちの暮らしにも悪影響が広がるとみられる」

銅(関税率50%)や医薬品(200%)への関税について「日本の輸出産業にさらなる打撃を及ぼす可能性があり、GDPの下押し圧力は拡大するだろう」

関税措置への反応は
石破首相「国益は必ず守る」
石破総理大臣は佐賀市で演説し「日本の国益をどうしても守っていかなければならない。農業や自動車をめぐり政府・与党を挙げて全力で戦っている時に『あれがいかん、これがいかん、不十分だ』と国内が割れて、どうして交渉に勝つことができるのか。私たちは国益は必ず守る。アメリカのトランプ大統領の言っていることで受け入れるべきは受け入れるが、譲れないものは絶対に譲れない」と述べました。

ASEAN加盟国からも懸念
ASEAN=東南アジア諸国連合の一連の外相会議が9日からマレーシアで始まり、加盟国からはアメリカの関税政策を念頭に一方的な関税措置は、ASEANの経済成長や安定に影響を与えるおそれがあるといった懸念が表明されたということです。

会議は非公開で行われ、外交筋によりますと複数の加盟国から「一方的な関税措置は、ASEANの経済成長や安定に影響を与えるおそれがある」といった懸念が相次いで表明されたということです。 各国は今後も協調して対応を検討することを確認したということです。

10日は、アメリカのルビオ国務長官とASEAN加盟国の外相会議も行われる予定でトランプ政権の関税政策をめぐって議論が行われるとみられます。

カナダ外相「企業や労働者は深刻な影響を実感している」  カナダのアナンド外相は9日、都内でNHKの単独インタビューに応じました。

アナンド外相は、アメリカのトランプ政権の関税措置について「鉄鋼とアルミニウム産業は関税によって打撃を受け、自動車産業も影響を受けている。カナダの企業や労働者は深刻な影響を実感している」と述べた上で今月21日までに交渉を通じて合意を目指す考えを強調しました。

一方、トランプ大統領が「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」などと主張していることについてアナンド外相は「カナダは決してそうなることはない。以上だ」と強く反発しました。【7月9日 NHK】
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冒頭の通知された各国関税率を見て感じるのは、日本経済への影響以外ではアジア諸国(特に東南アジア諸国)が多いこととブラジルの突出した高さです。

****なぜアジア諸国が中心だったのか?****
1. 貿易黒字の是正
日本、韓国、インド、東南アジア諸国などは米国に対し大幅な輸出超過(米側から見た貿易赤字)を抱えており、トランプ氏の「不公平是正」政策に合致しています。例えば、日本・韓国には25%、インドネシアやカンボジアには30〜40%と高率の関税通知が出されています。

2. 対中経済圧力の一環
アジア諸国は中国のサプライチェーンに深く組み込まれており、これらを圧迫することで中国へ間接的な圧力をかけようという狙いがあります。実際、ラオス・ミャンマーといった中国寄りの国々には最も厳しい40%という関税が通知されています 。

3. 製造業の「リショアリング」を狙う
トランプ政権は、アジアの低コスト製造拠点から米国内への工場回帰を掲げています。衣類・電子部品などを輸出するアジア諸国に高関税を課すことで、米国企業を国内重視に向かわせようとしています 。

4. 同盟国への牽制と交渉圧力
日本・韓国などは米国の重要な安全保障パートナーであり、交渉カードとしても利用価値が高いです。トランプ氏は「対中包囲網」の強化観点からも、交渉の焦点をアジアに絞る戦略に出ています 。【ChatGPT】
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【ボルソナロ・ブラジル前大統領は「魔女狩り」の被害者(トランプ大統領)】
アメリカにとって貿易黒字国であるブラジルへの高関税はもっぱら政治的というか、以前からトランプ大統領と同じような政治体質でトランプ大統領の盟友でもあったボルソナロ・ブラジル前大統領に対するルラ政権の厳しい対応への不満がその理由となっています。

****トランプ氏、公判中のブラジル前大統領擁護 「ボルソナロに手を出すな」****
トランプ米大統領は7日、公判中のボルソナロ・ブラジル前大統領について、「魔女狩り」の被害者とし、「ボルソナロに手を出すな!」と自信のソーシャルメディアに投稿した。

ブラジル検察は今年2月、2022年大統領選での敗北を覆すためにクーデターを企てたとして、ボルソナロ氏らを起訴した。

トランプ氏は「行われるべき唯一の裁判はブラジルの有権者による裁判で、それは選挙だ」と述べた。【7月8日 ロイター】
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****ブラジル資産急落、米政権が関税率50%を通知-首脳同士の対立強まる****
ブラジルの通貨レアルと株式相場がアジア時間10日早朝に急落した。トランプ米大統領が、ブラジルからの輸入品に50%の関税を課すと発表したことを受けた動きで、同氏とブラジルのルラ大統領との対立が強まっている。
  
トランプ氏はブラジル宛ての書簡で、ルラ氏の政敵であり、2022年の大統領選敗北後にクーデターを企てたとして起訴されたボルソナロ前大統領に言及。今回の関税措置について「一部は、ブラジルによる自由選挙、米国人の基本的な言論の自由への陰湿な攻撃が理由だ」とし、政治と直接関係があることを示した。
  
ボルソナロ氏は大統領在任中にトランプ氏の政治スタイルを模倣していたことで知られる。同氏は法的問題に直面する中でたびたびトランプ氏に支援を求めてきた。

関税の公表を受け、ブラジル・レアルは対ドルで3%近く下落。ブラジル株に連動する上場投資信託(ETF)「iシェアーズMSCIブラジルETF」も、通常取引終了後に一時約2%安で取引された。
  
トランプ氏が4月に関税措置を公表した際、ブラジルの関税率は最低水準の10%とされていた。トランプ氏がここ数日通知した20余りの関税率の中では、ブラジルが初めて従来から大幅に引き上げられたケースとなる。また米国との物品貿易で黒字を出していない国としては初めて対象となっており、トランプ氏が特に不満を抱いていることを示唆している。
  
関税公表後、ルラ大統領はSNSへの投稿で、ブラジルはいかなる者からの指図も受けないとした上で、クーデターを企てた者への訴追はブラジルの司法制度の専権事項であり、「干渉や脅しの対象にはならない」とコメントした。
  
ブラジルにとって米国は中国に次ぐ第二の貿易相手国で、今回の高関税が発動されれば、ブラジルの一部産業に深刻な打撃を与える恐れがある。
  
トランプ氏はこのほか、ブラジルによる「米企業のデジタル貿易活動に対する継続的な攻撃」を理由に、グリア米通商代表部(USTR)代表に対し、通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。
  
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのブラジル・マクロ経済責任者、ソランジェ・スロウル氏は「これらの関税は、国と国の関係全体が制度的に劣化し損なわれていることを示している。50%の関税は、多くの場合、輸出を不可能にする可能性がある」と指摘した。【7月10日 Bloomberg】
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2022年大統領選では、左派政党である労働者党のルラ候補に決選投票でルラ50.9%、ボルソナロ49.1%の僅差で敗北、これは1985年民政移管以降で最小の差でした。

敗北を認めないボルソナロ支持者は、2021年1月のトランプ支持者と同様に、“不正選挙”を糾弾し、議会襲撃事件を起こしています。

****ブラジル議会襲撃、拘束者1500人に ルラ大統領は「テロ行為」と非難****
ブラジルの首都ブラジリアで、ジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者が議会や大統領府、最高裁判所を襲撃した事件で、9日までに約1500人が拘束された。

襲撃は8日に発生。サッカーのブラジル代表チームの黄色いシャツを着た何千もの人々が、警察を押し切って国の中枢機関に侵入した。就任したばかりのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は、国家緊急権の発動を余儀なくされた。

9日朝になって、重武装の警官隊が、ブラジリアにあるボルソナロ氏支持者たちの抗議拠点の解体に乗り出した。こうした拠点は大統領選のあと、全国各地の軍兵舎の外に設置されてきた。支持者たちは大統領選で不正があったとし、軍に介入して是正するよう求めていた。

当局は9日に1200人を拘束。前日にも300人を拘束していた。

ルラ氏は襲撃について、「テロ行為と犯罪的でクーデターを誘発する破壊行為を拒絶する」と非難。侵入者を罰すると誓っている。議会と最高裁のトップも、襲撃は認められないとしている。【2023年1月10日 BBC】
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****ブラジル検察、前大統領をクーデター未遂で起訴…選挙結果覆そうとした「犯罪組織の首謀者」****
ブラジル検察は18日、2022年の大統領選で敗れた後も政権を維持するためにクーデターを企てたとして、ジャイル・ボルソナロ前大統領をクーデター未遂などの罪で最高裁に起訴した。ボルソナロ前大統領と共謀した元閣僚や元軍関係者ら33人もこの日、起訴された。
 
起訴状では、ボルソナロ前大統領について、大統領選で敗北した結果を覆そうと一連の陰謀を図った「犯罪組織の首謀者」と断定し、23年1月に自らの支持者が首都ブラジリアの連邦議会などを襲撃した事件を主導したとした。ルラ・ダシルバ現大統領の就任を阻むための暗殺計画も事前に把握し、「承諾した」と指摘した。
 
ボルソナロ前大統領は一貫して関与を否定している。起訴を受け、弁護団はボルソナロ前大統領が「民主的な法の支配や制度の解体をもくろむいかなる行動も支持したことはない」とする声明を発表した。

ボルソナロ前大統領は根拠のない選挙制度批判を広め、権力を乱用したとして30年まで被選挙権が停止されている。【2月19日 読売】
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一方、かつては高い支持率を誇ったルラ大統領はここのところ国民の支持を失いつつあります。

****ルラ氏、不支持が2年ぶりに支持上回る 増税など懸念=世論調査****
27日に公表されたバンコ・ジニアルとクアエストの世論調査で、ブラジルのルラ大統領の支持率が急落した。増税や金融市場の混乱に対する懸念を受け、不支持が2年ぶりに支持を上回った。

調査では回答者の47%がルラ氏の業績を支持。昨年12月の52%から低下し、2023年1月の就任以来最低となった。

一方、不支持率は先月の47%から49%に上昇した。

3期目半ばを迎えたルラ氏は来年の再立候補の可能性を検討しているが、79歳と高齢なことから健康に対する懸念が高まっている。

クアエストは、政府が今月になって人気の即時決済システム「PIX」を含む金融取引の監視強化措置を講じたことが特に打撃となったと分析した。【1月28日 ロイター】
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その後も高いインフレ率で、ルラ大統領支持率は低下。

****ブラジル・ルラ政権不支持が過去最高の56%、物価高に不満=世論調査****
2日発表のブラジルの世論調査によると、左派ルラ大統領(79)が率いる政権の不支持率が56%となり、今年1月調査の49%から上昇した。調査会社によると、3期目(不連続)のルラ政権で最も高い不支持率。支持率は47%から41%に低下した。

有権者の間で高インフレに不満が広がっていることが響いた。ルラ大統領は来年の次期大統領選への再出馬を検討しているが、強力な支持基盤である北東部でも不支持率は上昇している。

政権は既に、月収5000レアル(約880ドル)以下の国民を対象とした所得税減税案や食品高騰を抑制する輸入減税案を打ち出している。しかし今回の世論調査では、ルラ政権の取り組みが支持の持ち直しにつながっていない実態をうかがわせた。

支持率は前回調査で既に低下しており、3期目が始まった1月以降で初めて不支持率が支持率を上回る事態となっていた。

世論調査を行ったクエストの幹部は「食品やガソリンが一段と値上がりしたと感じる国民が増えて、不支持率が支持率を上回る大きな要因となっている」と述べた。

3月上旬のインフレ率は2年ぶりの高水準となる前年同期比5.26%に及び、中央銀行の物価目標範囲(1.5―4.5%)を大きく上回った。

世論調査は3月27―31日、有権者2004人を対象に対面で実施した。【4月3日 ロイター】
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止まらないインフレで再選を目指すルラ大統領の支持率はかつての勢いを失い低下。
一方、トランプ大統領同様の復活を目指すボルソナロ前大統領は、議会襲撃・クーデター未遂で復活選挙への出馬を阻まれています。

こうした政治事情を「魔女狩り」と批判するトランプ大統領は50%関税でボルソナロ前大統領の援護射撃に出た・・・といったところですが、トランプ大統領の思惑が実現するのか、逆にルラ大統領の求心力を復活せせるのか・・・・
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アフガニスタン・タリバン暫定政権の女性抑圧に対し国連総会は批難決議、ICCは最高指導者への逮捕状

2025-07-09 23:41:45 | アフガン・パキスタン
(ブルカを着た女性=2024年9月、アフガニスタン・ヘラート【7月8日 共同】)

【タリバン暫定政権と関係を強めるロシア・中国】
女子教育禁止などで女性の権利を侵害しているとして欧米を中心とする国際社会からの国家承認が得られていないアフガニスタン・タリバン暫定政権ですが、ロシア・中国との関係は次第に濃くなっており、ロシアはタリバン暫定政権を正式承認するに至っています。

****ロシアがタリバン政権を初承認 アフガンで影響力狙いか****
タス通信によると、ロシア外務省は3日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権を正式承認したと発表した。タリバン政権の正式承認はロシアが初めて。タリバン復権から8月で4年となる。

ロシアには、復権直後の2021年8月末に米軍が撤退したアフガンで影響力を拡大させたい狙いがあるとみられる。
 
ただ、タリバン暫定政権は中学生以上の女子教育を停止し、女性の就労も制限。テロの温床化への懸念もある。欧米を中心に批判は根強く、承認が広まるかどうかは見通せない。

暫定政権のムッタキ外相は、ロシアのジルノフ大使との会談で「両国関係における重大な進展だ。他の国々への良い例となる」と歓迎した。

ロシアはタリバンを2003年からテロ組織として認定してきたが、タリバン復権後は関係正常化に動き、ロシア最高裁は今年4月にタリバンのロシア国内の活動禁止を解除した。【7月4日 共同】
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中国は2013年以降、タリバン暫定政権と非公式ながらも実務的な関係を維持し続けており、2024年1月には同政権派遣の外交官を受け入れています。

5月21日、中国・王毅外相、パキスタンのダール外相と、タリバン暫定政権のムッタキ外相代行は、非公式の3者会談を北京で開きました。

そして、中国とパキスタン、アフガニスタンのタリバン暫定政権は、中国とパキスタンを結ぶ大規模インフラ整備事業をアフガ二スタンまで延伸することで合意しました。

****中国外交部「引き続き建設的役割果たす」 パキスタン・アフガン関係改善で****
中国外交部の林剣(りん・けん)報道官は4日の記者会見で、パキスタン政府とアフガニスタン暫定政権が最近、外交関係を代理公使級から大使級に格上げすると発表したことに歓迎を表明し、パキスタン・アフガン関係の改善と発展を促進するため、引き続き建設的な役割を果たしていきたいと述べた。
 
林報道官はまた、次のように語った。 これは両国の相互信頼の増進、協力の強化、地域の平和と安定の共同維持に寄与する。中国、アフガン、パキスタンの外相による今年5月の非公式会合の成果をパキスタンとアフガンが実行に移すための重要な前向きな措置でもある。

中国はパキスタン、アフガンを含む地域諸国と共に、地域の平和と安定、発展を共同で維持し、周辺運命共同体の構築に注力していく。【6月4日 新華社】
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【国連総会 タリバン暫定政権が「女性を体系的に抑圧している」と非難決議 イスラエル・アメリカは「反対」】
一方、国連総会(193カ国)は7日、タリバン暫定政権が「女性を体系的に抑圧している」と非難し、タリバンに政策の撤回を求めた決議案を賛成多数で採択しました。

****アフガン対応で足並み乱れ 米、国連総会決議に反対****
国連総会(193カ国)は7日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が「女性を体系的に抑圧している」と非難し、タリバンに政策の撤回を求めた決議案を賛成多数で採択した。米国とイスラエルの2カ国は反対し、アフガンへの対応でも国際社会の足並みが乱れた。

米国の代表は「タリバンが譲歩したり、国際社会の期待に沿う政策を追求したりすると思えない」と反対理由を述べた。

日本の御巫智洋国連次席大使は、女性抑圧は「アフガンの繁栄の可能性、国際社会との信頼構築の努力を深刻に損なう」と指摘。一方、アフガン支援は継続するとした。【7月8日 共同】
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採決では、賛成116、反対2、棄権12
タリバン政権との関係を強化しているロシア・中国は棄権しています。

そして「反対」の2ヶ国がアメリカとイスラエル。
“米国の代表は「タリバンが譲歩したり、国際社会の期待に沿う政策を追求したりすると思えない」と反対理由を述べた。”・・・・だからと言って「反対」というのもよくわからない対応です。

****国連総会でのタリバン暫定政権批判決議でアメリカとイスラエルが反対した事情は?****
この国連総会決議に米国とイスラエルが反対票を投じた背景には、いくつかの複雑な要因があると考えられます。以下にその主な可能性を解説します。

【1】形式的・手続き的な懸念
米国・イスラエルがこの決議に反対したのは、決議の内容そのものよりも「表現や構成」に問題があると判断した可能性があります。

決議案に含まれていた文言が、一部の国々(特に開発途上国やイスラム圏)に配慮した中庸的・あいまいな表現だった場合、米国やイスラエルはそれを「実効性に欠ける」と判断した可能性があります。

あるいは、タリバンの行為に対してより強硬な非難を主張したが、それが盛り込まれなかったために、反対したという解釈も成り立ちます。

【2】「人権決議の政治利用」への警戒
米国やイスラエルはしばしば、国連の人権決議が特定の政治的意図や偏りを含むときには、賛成を避ける傾向があります。
特にイスラエルは、自国の人権状況が国連で一方的に非難される場面が多く、「ダブルスタンダード(二重基準)」に強い警戒心を持っています。

そのため、今回の決議にも「政治的に利用されている」との懸念を抱いた可能性があります。

【3】アフガニスタン政策全体への見解の違い
米国は、2021年のアフガン撤退以降、タリバン政権の正統性を認めておらず、タリバンとの接触・交渉のあり方についても慎重な立場を取っています。

今回の決議案が、タリバンを既成事実化するような文脈(たとえば「政権」として扱う表現)を含んでいた場合、それに対する反対の意味合いもあった可能性があります。

また、タリバン政権に「政策を改めよ」と要請する形式そのものが、「内政干渉」として扱われかねない点に懸念を持った可能性もあります。【ChatGPT】
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両国が反対した理由はよくわかりませんが、イスラエルが絡んでいるということは、イスラエル自身が国連の場で批判の対象となっている「人権」に対する考えにおいて、国連総会とイスラエル・アメリカの間で違いがあるということが想像されます。上記の説明で言えば、「【2】「人権決議の政治利用」への警戒」に近いものがあったのかも。

それにしても、アメリカがタリバン批判を回避してどうするのか?・・・という感はありますが。

【国連決議に連動する形でICCはタリバンの最高指導者ら2人に対する逮捕状】
国際刑事裁判所(ICC)は8日、7日の国連総会におけるタリバン暫定政権批判決議に連動する形で、アフガニスタンの女性の基本的人権や自由を侵害しているとして、同国で実権を握るイスラム主義勢力タリバンの最高指導者ら2人に対する逮捕状を出しました。

(同じような形でICCからの逮捕状が出ているイスラエル・ネタニヤフ首相としては、そういう「人権」を盾にした国際社会の一方的な干渉を容認できないというのが「反対」理由でしょうか)

****国際刑事裁、タリバン最高指導者らに逮捕状発行 女性迫害を非難****
国際刑事裁判所(ICC)は8日、アフガニスタンの女性の基本的人権や自由を侵害しているとして、同国で実権を握るイスラム主義勢力タリバンの最高指導者ら2人に対する逮捕状を出した。

ICCの声明によると、2人は少女や女性、タリバンのジェンダーに関する方針に従わない人々の迫害を命じてきた疑いがある。

ICCは今年1月に、タリバンのハイバトゥラー・アクンザダ最高指導者とアブドゥル・ハキム・ハッカーニ最高裁長官が「少なくとも」2021年8月15日以降、性別に根差す犯罪に関与したとして逮捕状を請求していた。

逮捕状の発行についてタリバンは「馬鹿げている」と一蹴し、ICCを認めない姿勢を示した。
タリバンは21年8月に実権を掌握して以来、女性を抑圧する措置を次々に取り、公共の場での女性の声すら取り締まっている。

同国では中学生以上の女性の教育は禁止されている。また、女性は公共の場では常に体や顔をベールで覆わなければならず、血縁関係のない男性を見ることも禁じられている。

ICCは「タリバンは国民に一定の規則や禁止事項を課してきたが、性別を理由に特に少女や女性の基本的人権や自由を奪ってきた」と述べた。また、性的少数者や、タリバンのジェンダー政策に反するとみなした人たちも標的にしたと指摘した。

タリバンは声明でICCは「イスラム教に対する敵意と憎悪」を示したと批判した。

アフガニスタン情勢をめぐっては、国連総会は7日、「アフガニスタンにおけるすべての女性と少女に対する重大かつ悪化しつつある、広範で制度的な抑圧に対する深刻な懸念」を表明し、タリバンに「これらの政策を速やかに撤回すること」を求める決議案を採択した。【7月9日 CNN】
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ICCの逮捕状は国際的に有効な拘束力を持ちますが、執行力(逮捕する実力組織)は持っていません。
加盟国(124カ国)は、対象者が自国に入国した場合、逮捕・引き渡し義務があります。
アフガニスタンは現在ICCの締約国ではない(※2016年までは加盟国だったがタリバン政権はそれを否認)ため、現地での逮捕は現実的ではありません。

****ICCによる逮捕状の政治的・国際的な影響****
1. タリバン政権の「正統性」否認の国際的象徴
タリバンを国際的に「犯罪政権」として明示する意義があります。
特にイスラム諸国にとっても、女性弾圧を「宗教に名を借りた犯罪」と明示されることで、タリバンと距離を取る口実にもなります。

2. 今後の外交的孤立を強化
タリバン指導者が公式の外交訪問・交渉に出てくることが難しくなります。 国際的な資金援助・開発支援がさらに遠のく可能性。

3 他のイスラム国家にとってのメッセージ
女性の権利を著しく制限すれば、たとえ「内政問題」であっても国際法に基づいて制裁対象になりうるという前例を示した点で、一定のけん制効果を持ちます。
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【特殊なタリバンの女性抑圧 他のイスラム主義国のタリバン対応】
そもそもタリバンはなぜこのような頑なな女性蔑視政策をとるのか?
他のイスラム主義国家では、これほど偏った女性抑圧はとられておらず、単にイスラム主義だけでなく、タリバンの出身部族パシュトゥン人の伝統的女性観が反映されていると思われます。

そうしたとき、他のイスラム主義国家はタリバンに対して、対応をあらためるように働きかけは行っていないのか?

****他のイスラム国家はタリバン政権をどのように見ているのか? イスラムのイメージを悪化させているタリバン政権に対し、他のイスラム国家から女性問題での譲歩を求めるような動きはないのか?****

ChatGPT:ご質問は非常に重要で繊細なテーマを含んでいます。以下に整理してお答えします。

【1】タリバンの女性差別:イスラム教義 vs. タリバン独自性
タリバンによる女性抑圧は一部イスラム的な価値観に依拠しているものの、多くは彼らの部族的・地域的な慣習(特にパシュトゥーン文化)や過激な独自解釈に根ざしています。

▶ 主なタリバンの女性抑圧政策
中等教育以上の女性の就学禁止 女性の職場就労の大幅制限 公共の場での顔の完全な覆い(ブルカ強制) 男性親族の同行(マハラム)なしでは移動制限 公共施設・公園・大学・NGO・医療などからの締め出し

これはイスラム教の主要な宗派(スンニ派・シーア派)における一般的な教義とは異なり、タリバンの極端主義的かつ閉鎖的な宗教観と、戦闘国家化した社会構造の複合体と見なされます。

【2】他のイスラム国家から見たタリバン政権
▶ 批判的・懸念的な立場(サウジ・トルコ・UAEなど)
サウジアラビアやUAE、トルコなどは公式にはタリバンと外交接触を持ちつつも、女性抑圧に対して繰り返し「イスラムの名において許容できない」と批判しています。

例:トルコのエルドアン大統領は「これはイスラムの教えに反している」と公言。
サウジ外相も「イスラムには教育を受ける女性の権利が明記されている」と発言。

▶ 実利的・静観的な立場(パキスタン、カタール)
地政学的関係が強い国(パキスタン、カタールなど)は明確な批判を避けつつも、非公式に「国際的孤立を避けるためにも女性政策の軟化が必要」と圧力をかけているとされます。

特にカタールはアメリカや国連との仲介役を担っており、水面下で「女性権利問題」を条件とした経済支援交渉が進められたと報じられています。

【3】イスラム共同体(イスラム諸国会議機構=OIC)の対応
2022年と2023年にOIC(イスラム諸国会議機構)は複数回タリバンに対し、女子教育再開・就労の自由を認めるよう公式要請を出しています。
しかし、タリバンはこれを「外国的・非イスラム的圧力」として退け、逆にOIC加盟国を「西側の代理」と批判する姿勢を強めました。

【4】なぜイスラム諸国はタリバンに強く出られないのか?
主権尊重の原則(内政干渉への慎重姿勢)
自国にも女性の地位向上への課題を抱える国が多い
イスラム法の解釈に幅があり、共通の規範が存在しない
アフガニスタン情勢が外交的リスクを伴う地雷原であること

【5】現時点での譲歩の可能性は?
現実的には、国連や一部イスラム国家が教育・医療など限定分野において女性活動を認めさせる「小出しの譲歩」を交渉材料として引き出そうとしていますが、タリバンの最高指導者アクンザダ師が強硬派であるため、抜本的な変化は起きていません。

【まとめ】
タリバンの女性政策は、伝統的なイスラム教義を超えた独自・過激な解釈によるものであり、他のイスラム諸国も距離を置いています。

イスラム諸国の多くは「批判的だが慎重」、一部は「影響力行使を模索」。

国際的孤立を回避する動機がある限り、「限定的な譲歩」は将来的に引き出せる可能性もありますが、現時点ではタリバン指導部の頑なな態度により困難な状況が続いています。【ChatGPT】
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ICCによる逮捕状は象徴的ながらも、国際社会が女性への深刻な人権侵害を「戦争犯罪や人道に対する罪」と認定した重要な判断です。
他のイスラム国家にとっても、宗教的正統性と人権擁護のバランスを見直す契機となりえます。

実効性には限界があるものの、今後の外交・人道圧力の根拠として使われ続けるでしょう。

【アフガニスタンでの女性たちによる地下教育活動】
なお、タリバンの女子教育禁止に対し、アフガニスタンでは女性たちによる地下教育活動("秘密学校"や"オンライン授業ネットワーク")も行われています。

****秘密教育の実態****
地下学校(Secret Schools)
地域コミュニティの女性たちが自宅の一室や地下室を使って、少女たちに読み書きや数学を教える「非公式な教室」を開いています。

教師の多くはかつて公立学校で教えていた女性たちで、現在は匿名で活動。 生徒数は1校あたり10〜20人ほど、極秘に時間と場所を変えながら実施。

授業はタリバンに見つかれば厳罰(逮捕・鞭打ち・家族への報復)があるため、警戒態勢の中で行われています。
▶ 例:「ザハラ・スクール」などの通称で呼ばれる小規模校が首都カブールやバーミヤンなどに存在。

オンライン授業ネットワーク
NGOや海外在住アフガニスタン人によるリモート教育の支援が広がっています。
ZoomやWhatsApp、Telegramなどを使い、匿名の講師が数学・科学・英語などを指導。 端末を家族共有するケースが多く、通信環境も不安定ながら、1000人以上の少女が参加するネットワークもある(報道例:Herat Online School、Learn Afghanistan など)。

多くは夜間や早朝に実施され、タリバンのインターネット監視を避ける工夫がされています。【ChatGPT】
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中国  習近平国家主席の権力不安定、健康問題に関する絶えない噂 早期引退説も

2025-07-08 23:52:46 | 中国
(6月17日、カザフスタン・アスタナで開かれた第2回中国-中央アジア5カ国首脳会談(C5+1)に中国の習近平国家主席が出席した。【7月1日 中央日報】)

【中国共産党機関紙、論調に変化…習近平国家主席の権力不安定化説】
国際的に大きな影響力を有する国家の指導者の健康問題とか政権内部の権力闘争的な動きは、国際情勢の今後に大きく影響することから、国際的に注目されたり、あるいは、国際社会に対し隠されたり・・・・そうしたことはいろいろ取り沙汰されることは多いのですが、そのほとんどは“ガセ”で終わることにも。

中国の絶対権力者・習近平国家主席もそうした権力者の一人・・・というか、その最たる存在。
5月21日から6月3日までの約2週間、公の場に姿を見せなかったことでは、いろいろと憶測が飛び交いました。

****習近平の「絶対権力」に深刻なヒビ?軍とメディアに相次ぐ異変で“権力不安定化説”が浮上****
一部の海外メディアを中心に、習近平中国国家主席の「権力不安定化説」が取り沙汰されている。報道各社は、中国共産党の機関紙「人民日報」において、習主席の政策方針と正面から対立する内容が掲載されている点に注目している。「人民日報」は、共産党中央宣伝部が内容と論調を決定する党の公式宣伝媒体である。

反中傾向で知られる米メディア「エポックタイムズ」は今月13日(現地時間)、「党機関紙一面から消えた習近平」と題した記事で、「人民日報が10日付の一面で習主席に言及せず、『国家がより開放的になるほど、発展できる』との内容が掲載されるという異例の編集を行った」と報じた。さらに同紙は、「この内容は、習主席が一貫して主張してきた閉鎖的統制強化や自立路線とは大きく対立するものだ」と評している。(中略)

これに先立ち、日本の産経新聞の英字紙「ジャパン・フォワード」も、「人民日報は今月2日から4日まで、習主席をはじめとする最高指導部の顔を一切紙面に出さず、代わりに炭素削減や地域開発といった日常的なテーマに集中していた」と報じた。また中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」も先月30日、「公権力は国民のために奉仕すべき」と題する記事を掲載し、習主席による権力の私物化を間接的に批判したと伝えた。

ジャパン・フォワードはさらに、習主席が先月21日から今月3日までの約2週間、公の場に姿を見せなかった点に言及し、「このような長期間の不在は前例がない」としている。

過去には、習氏が2012年の総書記就任前に権力掌握の一環として姿を消したり、2023年に脳手術のために一時的に公務を控えたりしたことがあるが、今回はそれらとは異なる様相だと分析した。また、習主席の妻であるポン・リーユアン氏が最近の海外訪問に同行せず、随行員の人数も削減されていたという。

同紙は「今回の不在は中国国内の権力移行の歴史的パターンを反映している」と評価した。ジャパン・フォワードは、中国共産党の指導者が権力を喪失した際、すぐにその事実を公表せず、発表を意図的に遅らせる慣例があると伝えた。

続けて、フー・ヤオパン元総書記の辞任が1987年1月の実施から約9か月遅れた同年10月に公表された事例を挙げ、「こうした前例は、たとえ習主席の権力が実質的に弱まっていたとしても、形式上は依然として指導者の地位にとどまり得ることを示唆している」と分析している。

今月初旬には英字紙「日経アジア」も、習主席の権力の安定性に疑問が投げかけられていると報じた。日経アジアは、新華社など中国の国営メディアが4月25日に開催された共産党中央政治局の定例会議については当日に報道したものの、5月の会議に関しては一切報道がなかったことを伝えた。中国共産党中央政治局は最高幹部24名で構成されており、党内規則に従って毎月定期会議を開催している。

日経アジアは「党総書記を兼務する習主席には、これまで強大な権限が集中してきた」とし、「その習氏が主導する共産党が不安定な状況にあるとは考えにくく、定例会議を欠席する理由がないはずだ」と指摘した。

ジャパンフォワードも「政治局は通常毎月会議を開くが、5月末には会議が開催されなかった」と報じ、「習主席の排除を目的とした会議があったという噂が流れている一方で、実際には会議そのものが開かれなかった」としている。

その他にも、習主席と30年来の親交があるとされるシュ・チリャン前中央軍事委員会副主席が今月2日に突然死去したほか、ジョン・イェンション香港駐在中央政府連絡弁公室主任が更迭されるなど、側近の周辺に変化が起きていることも、権力不安説に拍車をかけている。

5月には、中国軍の序列3位にあたるホー・ウェイドン中央軍事委員会副主席が約2か月間、公式行事に姿を見せていないと報じられたままで、現在も公の場に登場していない。ホー副主席は2022年の党大会で習主席が直接登用した人物で、軍内でも最側近の一人として知られている。【6月16日有馬侑之介氏 江南タイムズ】
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最高権力者はオチオチ休んでもいられない。
5月21日から6月3日までの約2週間、公の場に姿を見せなかった点についても政治的な闘争を想像する向きもありますが、単なる休暇に過ぎないとの声も

****中国では、習主席が先月21日から今月3日までの約2週間、公の場に姿を見せなかったようですが、何か政治的な変化とかあるのか?****
ChatGPT:
習近平国家主席が「5月21日から6月3日まで約2週間、公の場に姿を見せなかった」という件についてですが、結論から言うと、健康や非公開業務による一時的な“静養・静観”の可能性が高く、現時点で「クーデター」や「権力交代」の動きが進んでいる証拠は乏しいというのが大勢の分析です。

所見まとめ:(中略)
総合判断:要因としては
健康管理などによる短期休養
国内・経済・安全保障上の重要テーマ処理のための非公開活動
対米関係や輸出関税問題を巡る戦略的調整

権力基盤そのものが揺らいでいる証拠は現状、確認できません(少なくとも公式に否定もされています)。
一方で、軍幹部の粛清やメディア露出の変化など、「体制内での調整や再編」は動いており、今後の会合(例:第四回全面深化改革総会など)に向けて再調整が進んでいる可能性があります。

結論:習主席の“失踪”ではなく、短期の静音活動や内部調整だった可能性が最も高い
今のところ、権力中枢での“軋み”(きしみ)はあるものの、体制そのものの交代や大崩壊には至っていない
軍・幹部人事の動きと、今後の公式露出の回復に注目が必要   【ChatGPT】
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習近平国家主席の基盤はともかく、6月中旬、中央軍事委員会の副主席であった何衛東元上将らが「消えた」ように公の場に出なくなり、反腐敗キャンペーンを通じて習体制内部の粛清・権力再編が進行中だとの見方もあります。

更に習近平主席側近の苗華委員も。

****中国、軍最高指導機関の苗華委員解任-習主席に近いとされる人物****
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は軍の最高指導機関、中央軍事委員会の苗華委員の解任を投票で決定した。軍関連で失脚する幹部が相次いでいる。
  
中央軍事委は現在6人で構成されている。中央軍事委主席を兼ねる習近平国家主席の下、副主席2人と苗氏ら委員3人がいたが、苗氏は中でも習主席に近いとされていた。
  
習指導部は2017年までさかのぼる装備品調達に関して汚職疑惑を調査。これまでに十数人の軍幹部を追放してきた。この調査により、李尚福前国防相と魏鳳和元国防相の党籍も剥奪された。ロケット軍関連の複数の当局者も失脚している。
  
苗氏は昨年、「重大な規律違反」の疑いで中央軍事委の職務を停止されていた。共産党内で使われるこの表現は通常、汚職調査の対象となっていることを指す。今年4月には説明もなく全人代の代表資格を剝奪されていた。【6月27日 Bloomberg】
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【党員1億人超え 共産党員や公務員を対象とする倹約令】
そうした中で共産党の党員数が結党以来初の1億人超え・・・とも。当然ながら、その中身が問題になります。

****中国共産党、党員数が結党以来初の1億人超え…若者中心に入党希望者が年々増加****
中国共産党は30日、2024年末時点の党員数が1億27万1000人(前年比1・1%増)となったと発表した。党員数が1億人を超えたのは、1921年の結党以来初めてだ。

党が国家を指導する中国では、党員の資格は就職や昇進で有利となるため、若者を中心に入党希望者が年々増加している。党中央組織部の統計によると、24年末時点の入党申請者数は2142万人で前年から44万人増えた。

こうした中、入党審査は厳格化しているとされる。24年の新規入党者数は前年比11・5%減の213万1000人。ある党関係者によると、社会的地位を求めるだけで党の方針に忠実でない党員を問題視する意見が出ており、24年以降、特に若者の新規入党が認められにくくなったという。

党は24年6月、法律・規則違反以外に「革命意志の欠如」などを理由に党員を除名できる規定を施行した。 習近平シージンピン 政権は最近、党員の会食接待や高額消費に対する管理を強化しており、「不適格党員」の排除も同時に進めるとみられる。別の党関係者は「数を増やすよりも、質を見極める方が重要だ」と語った。【6月30日 読売】
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党員の会食接待や高額消費に対する管理を強化はかなり厳しいもののようです。

****中国、一部で公務員の会食禁止 「倹約令」行き過ぎとの批判も****
中国で一部の公務員が3人を超えるグループでの会食を禁止されている。宴会で過度な飲酒による死者が出たと報じられ、中央政府が公務員の「倹約令」を徹底していることが背景だが、ソーシャルメディアでは行き過ぎだとの批判も出ている。

中国政府は5月に共産党員や公務員を対象とする倹約令を改正。豪華な宴会、無駄な巨大インフラ事業、公用車の過度な装備、執務室への観葉植物設置などを禁止した。

同国では湖南省、安徽省、河南省の宴会で過度な飲酒により幹部公務員3人が死亡したことが4月以降、広く報じられた。3省では、宴会の事実を隠蔽し、死亡した家族に私的に補償金を払おうとした公務員数十人が処分される事態となった。

ただ今週、一部の地方自治体で導入された新たな会食指針はさらに踏み込んだ内容となっている。

安徽省の共産党の機関は「職務終了後に同僚と会食することは規則違反か」と題する文書をソーシャルメディアに投稿。社交的な集まりについて幹部に注意を喚起し、上司や部下にごちそうしたり、「小さな派閥」をつくらないよう求めた。

この投稿では「普通の同僚と会食する場合、通常3人以下のグループなら問題ない」とした上で「高級店での会食は避ける、常に同じ人たちと会食はしない、会食を利用して『小さな派閥』をつくってはならない」としている。

この指針を受けて、ソーシャルメディアでは「個人の自由が過度に制限されている」と、公務員の不満が続出。「1人だと快楽主義、2人だと不適切な男女関係、3人だと派閥形成」といった皮肉なコメントも見られる。

山東省のある公務員は「同僚3人で昼食に火鍋を食べに行ったところ、全員が警告処分を受けた」と投稿。四川省の公務員は、職務終了後は必ずまっすぐ帰宅するよう同僚が命じられていたと指摘した。

安徽省の幹部は、職場で毎日、飲酒検査を実施するようになったとし、陝西省の職員は職場の植物を処分するよう命じられたと明かした。

武漢のある国有企業の職員は、上司や他の部署の人と一緒に昼食に行かないよう指示されたという。

もっとも、北京市、広東省、重慶市の公務員3人はロイターに対し、そうした過度な規制は導入されていないと指摘。上司との飲み会が苦痛だったため、こうした規則は歓迎だと話す公務員もいる。

シンガポール国立大学のアルフレッド・ウー准教授は「公務員の飲酒文化は確かに非常に深刻だが、まだ良い解決策が見つかっておらず、画一的な政策しか導入できていない」とし「政府は(景気対策で)消費喚起を目指しているが、習近平国家主席が目指すクリーンな政府の実現には代償が伴う」と語った。【6月17日 ロイター】
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【習近平国家主席に囁かれる「8月引退の可能性」
話を習近平主席にもどすと、5月21日から6月3日までの約2週間の間の“不在”後も、“失脚説”“健康不安説”が絶えません。「8月引退の可能性」とも。

****「習近平、健康不安で8月引退の可能性」 米国で広がる失脚説****
米国官僚社会の間で、最近、中国の習近平国家主席の失脚説が出回っている。中国人民解放軍高位幹部の相次ぐ粛清などが根拠として提示されている。一部では習氏の健康不安説も出ている。

ドナルド・トランプ第1期政府時に最初の大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたマイケル・フリン氏は6月27日(現地時間)、ソーシャルメディアを通じてこのような習氏失脚説を主張した。

フリン氏はこの日、X(旧ツイッター)に「中国に注目している人々は中国共産党の核心構成員、特に大衆と国家安保部署の信頼喪失を綿密に注視する必要がある」とし「中国で明らかに権力移動が起きている」と記した。あわせて「中国のリーダーシップ変化は途方もない果を招くことになる」と指摘した。(中略)

これに関連し、6月30日台湾自由時報は最近中国軍部の動きに注目した。習氏の側近であり中央軍事委員会副主席の何衛東氏、苗華氏が失脚した背景に軍部内暗闘の可能性が浮上した。習氏は2人を前面に出して軍部実権者である張又侠氏と側近を粛清しようとしたが、かえって失脚させられて軍事力掌握に失敗したということだ。

自由時報は「習近平は中央軍事委員会主席を維持しているが、名目上にすぎない」と指摘した。続いて「習近平が反対派と交渉し、本人が退く条件として側近である丁薛祥が総書記、胡錦濤前主席の支持を受ける陳吉寧が首相、張又侠が中央軍事委主席を務めて集団指導体制を復元することに合意した」と失脚説を解説した。

一部では習氏の影響を受ける丁薛祥の執権を防ぐために汪洋前政治協商会議(政協)主席、胡春華副主席などが代案として議論されているという。2人は胡錦濤前主席と温家宝前首相らが支持する人物だ。

中国事情に明るい米国の元バミューダ駐在大使グレゴリー・スレイトン氏も習氏の失脚説を扱った記事を28日にニューヨーク・ポストに寄稿した。スレイトン氏は「習近平は健康が不安定で8月党中央委員会第4回全体会議(4中全会)で引退するか、名前だけ職責を維持する可能性がある」と予想した。あわせて「2022年習近平から屈辱を受けた後、胡錦濤氏ら元老が水面下で権力を掌握した」と主張した。

また習氏の父親・習仲勲を賛える習仲勲記念館が5月に開館して「関中革命記念館」に名称変更し、5月末から6月初めまで党高位幹部が外国高位要人と面会する時、習氏が痕跡をなくしたのはもちろん、党機関紙「人民日報」が習氏関の連ニュースを掲載しない点などを失脚の兆候に挙げた。【7月1日 中央日報】
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BRICSサミットが7月6日、ブラジルのリオデジャネイロで開催されましたが、中国の習近平国家主席が欠席したことがいろいろと憶測を呼んでいます。BRICSサミットに習近平が欠席したのはこれが初めて。

****中国・習近平、BRICSサミット欠席の謎…健康不安説が再燃、相次ぐ幹部の失脚・失踪で権勢弱まり早期引退か****
(中略)米中新冷戦構造が先鋭化してくるなかで、中国が主導力を発揮する新たな国際秩序の枠組みとしてBRICSは注目されている。このタイミングで習近平がサミットに欠席する理由がわからない。

一部では、習近平に深刻な健康問題が起きているとか、あるいは党内権力闘争が激化しており北京を離れられない状況であるとか、言われている。(中略)

どんな健康不安説が噂されているのか
まことしやかにささやかれているのは習近平の健康不安説だ。この問題は何年も前からくすぶっていたのだが6月中旬ごろ、再びこの噂が盛り上がっていた。

6月16日、習近平がカザフスタンで開催された第2回中国-中央アジアサミットに出席した時、カザフスタンのトカエフ大統領は、習近平に対し、その誕生日(6月15日)に合わせた訪問であったことにふれ、「習近平氏の健康と家族の幸せ、そして国を治める上でのさらなる成功を祈る」とあいさつした。(中略)

トカエフ大統領がわざわざ習近平の健康状態に言及したのも、何か含みがあるのではないか、という見方もあった。

習近平の健康問題については、2012年に政権トップの座に就いて以来、ずっとさまざまな噂が飛び交っている。(中略)
 
ただ、こうした習近平不健康説は、党内から意図的に流されているふしもある。なので、こうした噂は習近平の早期引退に筋道を開こうという狙いがあるのではないか、という見方がある。(中略)

弱まる習近平の権勢
もう一つ、習近平権勢の凋落を示す人事としては、中央組織部長(党中央人事担当)の李幹傑と、中央統一戦線工作部長(対外工作担当)の石泰峰を入れ替える異例の人事が4月に行われていた。この人事入れ替え理由については、さまざまな憶測が飛んでいるが、(中略)いずれにしろ、習近平人事の失敗、見直しの必要性に迫られた結果とみられる。

さらに、中央軍事委員会副主席の何衛東の「失踪」問題。3月の全人代閉幕式以降、突如姿を消した何衛東は、おそらく、昨年暮れに失脚した元中央軍事委員で政治工作部主任の苗華失脚に連座して取り調べを受けているとみられているが、苗華も何衛東も習近平が抜擢して中央軍事委員会入りさせた習近平人事だ。彼らの失脚は習近平の失策、ということになる。

オーストラリア在住の華人学者の袁紅冰は、紅二代ファミリー(革命家たちの子孫)が党中央幹部たちと連動して、習近平に引退を迫っている、と党内筋の話として語っている。

そういう動きが本当にあるとしても、クーデターといった派手な動きの気配はないので、習近平自身が、健康問題などを理由に穏便に引退する道を模索するのではないかというのが一つの見方としてある。【7月8日 福島 香織氏  JBpress】
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この類の話の十中八九はガセでしょうが、万が一にでも習近平氏早期引退とでもなると、世界中は大騒ぎになります。

なお、“習近平氏、「失脚説」意識してか自ら「健在アピール」!「党を厳格管理せよ」と猛訓示、幹部は頭を下げメモに必死”【7月2日 江南タイムズ】といった記事もあります。
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民主主義の終焉  アメリカ:自由を求める結果、自由を奪う僭主の台頭を許す

2025-07-07 21:30:39 | 民主主義・社会問題
(【1月24日 日経「哲人が問う民主主義の危機 ハンナ・アーレントの警鐘」】)

【崩れゆく民主主義秩序】
****戦後80年の節目に――崩れゆく民主主義秩序を前にメディアの使命とは****
私は2021年から3年半にわたり、アメリカ・ニューヨークで特派員として駐在した。アメリカ国内にとどまらず、毎年のように大西洋を越え、ウクライナ、イスラエル、シリアなど紛争地の取材にも赴いた。そこで見たのは、命が軽んじられている不条理な現実だった。

人類は二度の世界大戦の教訓から国際連合やEU(ヨーロッパ連合)といった多国間の協調機関を整え、グローバルな連携を模索してきた。しかし戦後80年の今年、その理想は明らかに揺らいでいる。(NNNニューヨーク支局長 末岡寛雄)

■“底が抜けた”アメリカ…民主主義の基盤が瓦解
ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区での戦闘に対し、国際社会は明確な停戦の道筋を示せていない状況が続いている。北朝鮮のミサイル発射などの脅威にも、各国の外交関係者の努力にもかかわらず、国連は有効な対応を取れていない。

新型コロナのパンデミックでは、世界的な公衆衛生対応が後手に回ったWHO(世界保健機関)からアメリカが脱退を表明。貿易相手国に高関税を課するなど保護主義へと舵(かじ)を切るアメリカの姿は、時代の針を1世紀、巻き戻したようだ。

各国が国境を閉ざしたコロナ以降、国際協調のグローバリズムから自国優先のナショナリズムへの揺り戻しが一層、加速している。

2024年のアメリカ大統領選。現地で実感したのは、底が抜けたようなアメリカ社会だった。大統領選挙の候補者が平然と虚を語り、異なる価値観を持つ者を公然と貶(おとし)める。就任後は大富豪と癒着も指摘されるなど、権力を振りかざして異質な他者を排除するなどやりたい放題に。

かつて自らの手で民主主義を獲得した国の秩序が急激に瓦解し、その土台を自ら崩している。

トランプ政権1期目の2017年と比べても、街に出て抗議する市民の姿は減ったと感じる。弾圧への恐れから口を閉ざす者もいるのであろう。あきらめも漂っているように感じる。

その影響は知的分野にも及ぶ。学問の自由や報道の自由に対する圧力が強まれば、有能な人材はアメリカから去っていくだろう。知の力で世界を牽引してきたアメリカは、知的に貧しい国へと転落するだろう。したたかな中国とは数年後には大きな差をつけられているかもしれない。

■戦後80年…過去の悲劇を繰り返さぬために
振り返って日本はどうか。アメリカから見た日本は、自国通貨の価値が下がり、人口減少と低成長に苦しむ姿の国だった。

SNS上では誹謗(ひぼう)中傷がまん延し、それにより命を絶つ人も出ている。デマを"真実"と信じた人々が選んだ自治体の首長は“民意”の下、自らの非を認めることなく政治を行っているように見える――その構図は、アメリカとも似ている。

戦後の発展がもたらした豊かな民主主義社会で今、何が瓦解しているのか。アメリカに駐在した3年半は、その答えを探す期間だった。

世界では「インドとパキスタンの緊張」「フーシ派の攻撃」など、きな臭い状況が次々と起こっている。独裁者が林立し、自国第一主義が席巻している。外交関係者の懸命な努力にもかかわらず国際社会がなかなか有効な手立てを打てないように見える状況は、二度の世界大戦前夜に似た状況にも見える。(中略)

今、アメリカと同じ轍を踏みかけている日本は、どう軌道修正すべきなのか。過去の悲劇を繰り返さぬために、そして本来あるべき民主主義と人権を守るために、事実を追求しあふれる偽情報を正すなど、メディアに課された役割は重い。【5月31日 日テレNEWS】
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国際協調を前提にしたグローバリズムに関して、プーチン大統領は「BRICS」の首脳会議で、自由主義的グローバリゼーションは時代遅れで、未来は急速に成長する新興国にあると述べています。

****プーチン氏「グローバリゼーションは時代遅れ」、新興国に未来と主張****
ロシアのプーチン大統領は6日、新興国グループ「BRICS」の首脳会議で、自由主義的グローバリゼーションは時代遅れで、未来は急速に成長する新興国にあると述べた。貿易における新興国通貨の利用が拡大するとの見方も示した。

ブラジルのリオデジャネイロで開かれたBRICS首脳会議にオンラインで参加した。
「自由主義的グローバリゼーションのモデルが時代遅れになりつつあることをあらゆるものが示している」とし、「ビジネス活動の中心は新興国に移行しつつある」と述べた。

またBRICS諸国に対し、天然資源、物流、貿易、金融などさまざまな分野で協力を強化するよう求めた。

国際通貨基金(IMF)によると、BRICSの中核5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の名目国内総生産(GDP)は28兆ドル超。主要7カ国(G7)は51兆ドル超となっている。【7月7日 ロイター】
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“未来は急速に成長する新興国にある”としても、そのことを自由主義的グローバリゼーションと対立関係にとらえる理由は?

“急速に成長する新興国”を実現するためには、牽引するのが欧米であれ、新興国であれ、いずれにしても自由主義的グローバリゼーションが最も効果的のように思えます。

【三権分立揺るがすトランプ大統領の権力行使】
“底が抜けた”アメリカ民主義については・・・

****米国の三権分立揺るがすトランプ氏の権力行使、司法が唯一抵抗****
トランプ米大統領がホワイトハウスに復帰して以来の権力行使は、18世紀に確立された米国の憲法上のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)体制を試練にさらしている。トランプ氏と同じ共和党が多数を占める議会はおおむね同氏の政策に同調しているため、次々と繰り出される大統領令を抑え込む唯一の存在として浮上しているのが、連邦裁判所の判事らだ。

トランプ氏による対外援助や連邦支出の削減、政府職員の解雇、1798年の「敵性外国人法」に基づく強制送還などについて裁判所は実行を阻む命令を下している。連邦裁判所判事らは、政権が命令をどこまで順守するのかを厳しく精査している。

連邦地裁判事は、ベネズエラの犯罪組織メンバーの迅速な強制送還を停止するよう命じた。トランプ氏は前週、この件について議会での弾劾を要求したが、ロバーツ最高裁長官は同氏の発言を非難した。

米国の建国の父らは憲法で三権分立を確立し、行政、立法、司法の各機関が互いの権力をチェックし合うよう設計した。

ジョージタウン大のデービッド・スーパー教授(法学)は、トランプ氏が「他の2つの政府部門を明らかに犠牲にし、大統領権限を拡大するために非常に積極的に動いている」と話す。

アメリカン大ワシントン法科大学院のエリザベス・ベスケ教授は、トランプ政権による憲法上の秩序の再構築は「段階的に進んでいる」と指摘した。

トランプ政権は、行き過ぎているのは大統領ではなく司法だと主張している。トランプ氏は20日、最高裁に対し、連邦判事らが政権による全国的な措置に差し止め命令を出す権限を制限するよう求めた。

トランプ氏はソーシャルメディアに「手遅れになる前に、全国的な差し止め命令を今すぐやめよ。ロバーツ最高裁長官と最高裁が、この有害で前例のない状況を直ちに正さなければ、わが国は非常に深刻な事態に陥る!」と投稿した。

<単一執行府論>
法律の専門家によると、トランプ氏は監察官や各種機関の長官を解任するなど、行政機関内のチェック機能を弱体化させることも狙っている。これらの職は、大統領の管理からある程度独立性を持たせる狙いで議会が導入したポストだ。

トランプ氏の広範な権力行使の一部は、いわゆる「単一執行府」論に沿っている。この保守的な法的見解では、大統領は行政部門に対して広大な権限を有しているとされる。独立機関の長官が不当に解雇されることがないよう議会が制限を課そうとした場合でさえだ。

単一執行府論を提唱するカリフォルニア大バークレー校法学部のジョン・ユー教授によると、トランプ氏は大統領権限を、ウォーターゲート事件の後に実施された改革以前の水準に戻そうとしている。同事件でニクソン大統領(当時)は1974年に辞任したが、この際の改革は大統領の権限を犠牲にして議会の権限を増大させたとユー氏は主張する。

ユー氏は「トランプ氏の行動の多くは、ウォーターゲート事件後の改革を覆し、行政機関に対する大統領の完全な支配権を復活させる試みだと理解できる」と語った。

にもかかわらず、共和党主導の現議会はトランプ氏にほとんど反発していない。ハーバード大公共政策大学院(ケネディ・スクール)のベンジャミン・シュニアー教授(公共政策学)によると、これは米国で2大政党間の不信感が深まる中、「三権分立」から「政党分立」へと向かってきた数十年来の傾向とほぼ一致している。

トランプ氏の返り咲き以来、議会が行政のチェック機能をほとんど放棄したことで、こうした力学は増幅されているとして「これが今、私たちが生きている新しい世界だ」と語った。(中略)

<トランプ氏に逆風の判決>
現在、トランプ氏および政権の政策に異議を唱える100件以上の訴訟が連邦裁判所で審理されている。 これまでに、米国で生まれた子どもに自動的に国籍を与える出生地主義制度の制限、連邦政府支出の凍結、さまざまな政府役人の解任、トランスジェンダー兵士の除隊といったトランプ氏の措置を差し止める判決が数十件下されており、その多くは民主党所属の大統領が任命した判事らによるものだった。ただ、全員というわけではない。

一部の専門家によると、現政権は最近の政権では見られなかったような司法命令への抵抗を示している。

デューク大法学部のマリン・レビー教授は「これはいくら強調しても、し過ぎではない。今に至るまで、現代において政権が裁判所の命令に従うかどうかを疑わなければならなかったことなど一度もなかった」と嘆いた。

FOXニュースの番組で裁判所の命令に逆らうかどうかを問われたトランプ氏は「いや、それはできない」と答えた。だが、続けて「悪い判事がいる。非常に悪い判事がいる。許してはならない判事だ。悪徳判事がいる場合にどうするかを、ある時点で考えなければならないと思う」と話した。

トランプ氏と親しい下院議員らは、トランプ氏に不利な判決を下した裁判官の弾劾手続きを進めようとしている。
(後略)【3月24日 ロイター】
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ただ、司法、特にトランプ選任により保守化した最高裁もトランプ支持勢力に堕している感もあります。

米連邦最高裁は6月27日、米国で生まれた子どもに国籍を与える出生地主義制度を修正するトランプ大統領の大統領令について、全米で差し止める下級審の仮処分を制限する判断を下しました。

米メディアは、トランプ氏が連発する大統領令などを全米レベルですぐに差し止めることが難しくなったと指摘しています。トランプ氏は27日、SNSで「大きな勝利だ」と主張しています。

****民主主義が独裁生むリスク「古代も今も」 自由が支配生む逆説****
デモクライシス インタビュー編 豊永郁子・早大教授

古代ギリシャの哲学者プラトンは民主政は衆愚政治に陥り独裁者を生むと指摘した。2400年前の言葉は現代の民主主義にも重なるのか。早大の豊永郁子教授(政治学)に聞いた。

――プラトンが最悪の国家の政体とした僭主(せんしゅ)政とは何でしょうか。
「古代ギリシャは1000以上の都市国家がひしめく政体の『見本市』のような状態だった。プラトンは政体は優秀者支配、名誉支配、寡頭政、民主政へと移り変わると指摘した。その失墜、堕落の果てに独裁、僭主が生まれるというのがプラトンの洞察だ」

「民主社会の基礎は自由だ。人々が自由を渇望し、国家に自由が行き渡る。プラトンは『最高度の自由からは最も野蛮な最高度の隷属が生まれてくる』と説いた。自由を求める結果、自由を奪う僭主の台頭を許すのは民主主義のパラドックス(逆説)とも言える」

「僭主はやりたい放題で、欲望のままに統治する存在として語られている。政敵や異議を唱える可能性がある人物は徹底的に排除し、自分を守る粗暴な親衛隊をつくるのが定石だ」

――今日の政治にも当てはまるのでしょうか。
「民主政に僭主的な存在を生み出す危険性が備わっているのは古代も今日も変わらない。著書『国家』を読むとヒトラーが独裁者になった過程を予言しているようにリアルだ」

「リベラリズム(自由主義)の反動というより、行き過ぎた『何でもあり』のリベラリズムが、その帰結として僭主やその予備軍を生んでいる。米国では民主党が推し進めた価値多元主義的なリベラリズムがトランプ大統領のような存在を受け入れる素地をつくった面がある。今は『民主主義の危機』というより『民主主義がもたらす典型的な危機』かもしれない」

――欧州でも移民排斥を訴えるポピュリズム政党が伸びています。
「欧州は議院内閣制の国が多い。議会の信任に基づいて内閣を組織する議院内閣制は大統領制に比べればカリスマ的な人がリーダーに率いられる勢力が成長しにくい。僭主に対する一定の防御壁にはなっている」

――民主主義がもたらす危機に歯止めをかけられますか。
「18世紀のフランスの哲学者、モンテスキューは立法、行政、司法の三権分立と連邦制を唱えた。米国憲法の父、ジェームズ・マディソンは憲法体制にこの理論を落とし込んだ。抑制均衡を通じて多数派の横暴、僭主の台頭を封じる意図があった」

「米国は立法府も司法府もトランプ氏の追従者が占め、三権分立が形骸化している部分がある。米国の民主主義は権力者たちによる憲法への敬意や公共心があったからこそ機能してきた面があるのかもしれない」

「現代はSNSを通じて個々人にデマゴギー(政治的効果を狙った虚偽の情報)が届く。古代ギリシャの小規模な民主政での扇動のようなことが起きやすくなっている。SNSやプラットフォーマーに対する規制は考えていかなければいけない」【7月7日 日経】
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“行き過ぎた『何でもあり』のリベラリズム”、僭主政(独裁)の容認はイギリスでも。

****英のZ世代、半数が「独裁」容認 「男女平等行き過ぎ」男性は不満も****
英国で「Z世代」と呼ばれる若い人々が、「独裁政治」を受け入れる傾向があることが世論調査で浮き彫りになった。また、最近の男女平等の取り組みについては「行き過ぎ」と答える男性も多かった。英紙ガーディアンなどが伝えた。

全世代3000人を対象にした英テレビ局「チャンネル4」の1月の世論調査によると、13〜27歳の52%は「議会や選挙を気にせず、強力なリーダーが統治する方が英国は良くなる」と答えた。また、「軍が統治する方が良くなる」との回答も33%に上った。英メディアでは「Z世代は独裁や権威主義容認」などと報じられている。

宗教社会学者でロンドン大キングスカレッジのリンダ・ウッドヘッド教授は、ガーディアンに「彼らはスマートフォンを手にした瞬間からオンラインで自己発信できた世代だ。民主主義は遅く、効率も悪い。古い政治システムのもとでは、発言権を得るまでに時間がかかる。この世代はそれに慣れていない」と分析した。

また、Z世代の男性の45%は「男女平等の取り組みは行き過ぎで、今では男性が差別されている」と回答した。【2月15日 毎日】
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“底が抜けた”アメリカ民主義の現状を『最高度の自由からは最も野蛮な最高度の隷属が生まれてくる』と説いたプラトンの主張になぞらえると

****プラトン『国家』が説く僭主政とアメリカ・トランプ政権の現状****
ここで重要なのは、民主制が行き過ぎると、無秩序・放縦に陥り、結局は強力なリーダー(僭主)を人々が求めるようになるという点です。

「最高度の自由は、奴隷状態に転化する。なぜなら、放縦が限界に達すると、強制と支配を人々が自ら求めるようになるからだ」— プラトン『国家』第8巻

■ 現代アメリカへの適用:「民主主義が僭主を選ぶ」という逆説
これを現代のアメリカや国際社会に当てはめると、以下のような事象がプラトンの警告と重なります:

① トランプ現象と「ポピュリズムの代償」
トランプ元大統領の台頭は、「自由と自己表現」を最大限に許容する民主主義のもとで、既存の秩序(エスタブリッシュメント)への不満が爆発し、その裏返しとして強権的だがわかりやすいリーダーを求めた結果といえます。
2021年の議事堂襲撃事件は、民主的手続きで選ばれたリーダーが、民主制度そのものを脅かす存在にもなりうるという皮肉を象徴しました。

② SNSと「過剰な自由」の副作用
インターネットやSNSは「表現の自由」の極致ともいえるツールですが、それが偽情報・陰謀論の拡散装置ともなり、かえって理性や熟議の空間を破壊する結果を招いています。
これは、プラトンが「民主政の末期では、教師が生徒を恐れ、親が子に媚びるようになる」と描いた放縦の状態とも重なります。

③ グローバルな民主主義の危機
アメリカだけでなく、ハンガリー(オルバン)、トルコ(エルドアン)、インド(モディ)、ロシア(プーチン)など、多くの国で選挙を通じて選ばれた権威主義的リーダーが、自由を制限していく事例が増えています。
これはまさに「自由を通じて、不自由が制度化される」という逆説そのものです。

■ 民主主義の自己防衛という課題
このような逆説への対処としては、「民主主義が自壊しないための自己防衛」が不可欠とされています。例えば:
言論の自由とデマの規制のバランス
選挙のルールと制度の透明性の強化
ポピュリズムに流されないメディアリテラシーの向上
憲法による基本権の保障と司法の独立
これらは「自由の濫用が、自由の破壊者を招く」ことへの制度的ブレーキとなります。

■ 結論:「自由の守護者は理性である」
プラトンが最も警戒したのは、「自由が目的化され、理性を失うこと」でした。現代においても、「自分の自由」ばかりを叫ぶ社会が、共同体全体の秩序や責任を軽視するようになったとき、その空白を埋めるのはカリスマ的で強権的な指導者です。
これはまさに「民主主義の皮をかぶった僭主制」の誕生を許す土壌であり、現代の自由社会が直面している最も深いパラドックスといえるでしょう。【ChatGPT】
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香港  国安法施行5年 消える「自由・香港」 急速に進む中国化 分岐点は1984年

2025-07-05 23:36:37 | 東アジア
(旗に書かれた中国語のスローガン「香港を解放せよ、時代の革命」は、2019年の抗議活動でよく使われた。しかし、国家安全維持法の施行以降、香港当局はこのスローガンと民主化を求める抗議活動の両方を禁止した。長年にわたり平和的なデモを組織してきた団体「民生人権戦線」も活動を停止しており、主催者はその後拘留されている。【2021年 06月 25日 HRW】)

【国安法施行5年 消える「自由・香港」 急速に進む中国化】
6月30日で香港国家安全維持法(国安法)施行5年を迎えた香港は、一国二制度のもとでのかつての「自由・香港」は消滅し、中国との一体化が急速に進行しています。

****香港「社民連」が解散発表 統制が続き、民主派政党は全て消滅へ****
香港の民主派政党「社会民主連線」(社民連)は29日、香港島内で記者会見し、解散を決めたと発表した。30日で施行5年を迎える香港国家安全維持法(国安法)に基づき、民主派に対する統制が続いている。最大の民主党も近く正式に解散を決める見通しで、民主派政党は全て消滅することになる。

記者会見で陳宝瑩主席(党首)は「強大な政治的圧力に直面し、メンバーらに対する影響を考慮して、残念ながら解散するしかないと決定した」と述べた。香港メディアによると、当局の考えを知る関係者から党に対し、7月1日までに解散しないと「深刻な結果を招くことになる」との警告が3度にわたってあった。陳氏は解散の理由を詳しく説明することはできないとしている。

2020年に中国政府が主導して反政府的な言動を取り締まる香港国安法を制定して以降、民主派の団体や政党は次々に解散や活動停止に追い込まれている。

23年5月には公民党が解散を決め、民主派の中核的存在だった民主党も25年2月に解散に向けた手続きを進めることを決めた。陳氏は一連の動きを「ドミノ倒し」にたとえ、「我々の次は誰になるのだろうか」と訴えた。
 
社民連は06年に設立され、労働者らを中心に支持を得た。一時は立法会(議会)でも議席を獲得したが、議員を「愛国者」に限る選挙制度の改変によって、民主派は事実上排除された。主席として党を引っ張った梁国雄氏が国安法違反の罪で実刑判決を受けるなど党関係者の投獄も相次いだ。【6月29日 毎日】
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****密告奨励、急増する監視カメラ 香港で消えていく自由 中国本土並みの「監視社会」へ 香港国安法施行5年****
中国の習近平政権が香港の民主化運動などを取り締まる目的で、「香港国家安全維持法(国安法)」を導入・施行してから30日で5年となった。同法違反など国安関連で332人が逮捕され、165人に有罪判決が下された。

中国・香港政府は「愛国者治港」(愛国者による香港統治)が進んだと統制強化を正当化する。しかし香港市民にとっては「国安治港」の下、一国二制度で認められていた〝自由・香港〟のシンボルが消えていく5年だった。

国安法は「安定と繁栄を守る守護神」
香港で21日に開催された国安法施行5年を記念するフォーラム。基調講演を行ったのは、中国政府で香港政策を統括する夏宝竜・香港マカオ事務弁公室主任(72)である。

「香港を破壊し、国家の安全に危害を加えた!」
選挙の民主化などを訴えた2019年の反香港政府・反中国共産党デモを厳しく非難した。そして、多くの香港市民の助けを求める声に応じ中国政府が国安法を香港に導入したのだ-と強弁しつつ、こう絶賛した。
「国安法は香港の安定と繁栄を守る守護神だ」

1997年に英国から中国へ返還された香港では一国二制度の下、資本主義的制度の50年間の維持が認められていた。社会主義体制の中国本土では許されないものの、香港では認められていたシンボルの一つが反中国的な報道で知られた蘋果(ひんか)日報(アップルデイリー)だった。

同紙が発行停止に追い込まれたのは2021年6月24日、国安法施行から約1年後のこと。創業者で民主活動家の黎智英(れい・ちえい、ジミー・ライ)氏(77)や同紙幹部らが、報道を通じて外国政府に中国や香港への制裁を求めた-などとする国安法違反の罪で起訴され、会社の資産が凍結されたのだ。

民主派系のネットメディア、立場新聞も幹部らが逮捕され、21年末、運営停止に。25年の報道の自由度ランキング(180カ国・地域)で香港は20年の80位から140位に後退。中国(178位)に近づいている。

24年3月には、国安法を補完する「国家安全条例」が香港立法会(議会)で成立、施行された。スパイ活動や、中国・香港政府への憎悪、侮蔑を扇動する行為などが禁じられた。外国人や外国メディアなどが標的となる可能性が取り沙汰されている。

香港外国記者会(FCC)が今年4月に発表した調査結果によると、回答した外国メディア記者の65%に当たる45人が報道に慎重になり、「過去1年半の間に自己検閲した」という。

天安門事件の追悼集会も開催阻止
国家安全が優先され、言論・集会の自由が制限される中、反政府デモは事実上禁止された。香港島のビクトリア公園で30年以上にわたり行われてきた天安門事件の犠牲者追悼集会も21年以降、警察によって開催が阻止されている。

国安法施行後、市民に警察への密告が奨励され、これまでに国安関連の通報が約92万件あったという。地下鉄の車両や構内、道路、公共施設などの監視カメラも急増中で、中国本土並みの監視社会の構築に向けて整備が進んでいる。

「国安」を名目にした政府による社会統制は強まる一方だ。今月、飲食店や娯楽施設で「国家の安全」を脅かす行為などがあれば政府は免許を取り消せることになった。萎縮させ、自由・民主化を求める声や政府批判を封殺する狙いとみられる。

また、香港の米国総領事館が主催する米独立記念日(7月4日)の祝賀行事を巡り、香港政府は一部の学校に参加しないよう圧力をかけたと報じられている。その理由も「国安法違反の疑いがある」だった。
香港国家安全維持法(国安法) 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会の法制工作委員会が法案を作成し、2020年6月30日、全人代常務委員会で可決・成立。同日深夜、公布と同時に施行された。犯罪行為には①国家分裂罪②国家政権転覆罪③テロ活動罪④海外勢力と結託し国家の安全に危害を加える罪-がある。これらを扇動、幇助、教唆することも罪に問われる。香港域外での言動や外国人にも適用される。犯罪行為が重大な場合は禁錮10年以上。最高刑は終身刑。中国本土に身柄を移送し中国本土での裁判も可能。【6月30日 産経】
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【香港の運命を決定した1984年の英中共同声明 雨傘運動や国安法などその後の動きは“時間の問題、程度の問題”】
香港島と九龍半島、周りの島々を合わせて、広さは東京都の半分ほど。そこに約750万人が暮らす香港。
香港の歴史をザックリと振り返ると・・・

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香港の激動の始まりは清の時代に遡る。アヘン戦争でイギリスに負けた清朝は、香港島を割譲。香港はイギリスの統治下に入った。

それから150年余り、1997年7月1日、香港はイギリスから中国に返還される。
この時、中国は「一国二制度」を約束。香港に50年間、経済や司法、言論の自由など、高度な自治を認めたのだ。

しかし、2014年に「雨傘運動」が起きる。中国政府が選挙制度などへの介入を強めたため、香港の人たちに危機感が募り、民主化を求める声が強まったのだ。

2019年には大規模な反政府デモが頻発。
そして2020年6月30日、反政府的な活動を取り締まる「国家安全維持法(国安法)」が施行される。違反すると最高で終身刑という重い罪が科される。

言論の締め付け…。市民の声はかき消され、政府に批判的なメディア関係者や活動家など、332人が逮捕された(2025年6月時点)。【7月4日 テレ東プラス「香港映画の聖地巡礼で、日本人が殺到?! 返還から28年…香港はいま」
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香港の運命を決定づけたのは「国家安全維持法(国安法)」ではなく、1997年7月1日のイギリスから中国への香港返還であり、1984年12月19日にその枠組みが英中間で合意された英中共同声明でした。

その後の「国家安全維持法(国安法)」を含めた動きは、1984年の英中共同声明の枠組みのなかの動きであり、「時間の問題・程度の問題」すぎなかった・・・と、個人的には考えています。

****香港返還****
背景
1842年の南京条約(第1次アヘン戦争の講和条約)によって、香港島が清朝からイギリスに割譲され、イギリスの永久領土となった。さらに、1860年の北京条約(第2次アヘン戦争(アロー戦争)の講和条約)によって、九龍半島の南端が割譲された。

その後、イギリス領となった2地域の緩衝地帯として新界が注目され、1898年の展拓香港界址専条によって、99年間の租借が決まった。以後、3地域はイギリスの統治下に置かれることとなった。

1941年に太平洋戦争が勃発し、イギリス植民地軍を放逐した日本軍が香港を占領したが、1945年の日本の降伏によりイギリスの植民地に復帰した。その後1950年にイギリスは前年建国された中華人民共和国を承認した。この後イギリスは中華民国ではなく中華人民共和国を返還、再譲渡先として扱うようになる。(中略)

1979年、香港総督として初めて北京を訪問したクロフォード・マレー・マクレホースは、中華人民共和国側に香港の帰属をめぐる協議を提案した。しかし、中華人民共和国側は「いずれ香港を回収する」と表明するに留まり、具体的な協議を避けた。それでもイギリス側は「1997年問題」の重要性を説き続けた。

1982年9月には首相マーガレット・サッチャーが訪中し、ここに英中交渉が開始されることになった。サッチャーは同年6月にフォークランド紛争でアルゼンチンに勝利して自信を深めていたが、鄧小平中央顧問委員会主任は「香港はフォークランドではないし、中国はアルゼンチンではない」と激しく応酬し、「港人治港」の要求で妥協せず、イギリスが交渉で応じない場合は、武力行使や水の供給の停止などの実力行使もありうることを示唆した。

当初イギリス側は租借期間が終了する新界のみの返還を検討していたものの、イギリスの永久領土である香港島や九龍半島の返還も求める猛烈な鄧小平に押されてサッチャーは折れた恰好となった。

1984年12月19日に、両国が署名した英中共同声明が発表され、イギリスは1997年7月1日に香港の主権を中華人民共和国に返還し、香港は中華人民共和国の特別行政区となることが明らかにされた。共産党政府は鄧小平が提示した一国二制度(一国両制)をもとに、社会主義政策を将来50年(2047年まで)にわたって香港で実施しないことを約束した。

この発表は、中国共産党の一党独裁国家である中華人民共和国の支配を受けることを良しとしない香港住民を不安に陥れ、イギリス連邦内のカナダやオーストラリアへの移民ブームが起こった。【ウィキペディア】
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2014年の雨傘運動など、香港人として民主的香港を求め、中国の介入へ抵抗する若者たちの動きはありましたが、すでに中国への返還が決定し、枠組みが確定している状況での抵抗であり、所詮枠組みを変更するまでの力はなく、香港当局を追い込めば追い込むほどに、「国家安全維持法(国安法)」のような中国側の強硬な介入を招くだけでは・・・という思いで眺めていました。

もし、「自由・香港」の未来があったすれば、それは1984年12月19日の英中共同声明以前の段階における運動が唯一の機会であったはずです。

その時点で「香港人」が「自由・香港」を求めて運動すれば、イギリスとしても「イギリスの永久領土である香港島や九龍半島の返還も求める猛烈な鄧小平に押されてサッチャーは折れた恰好となった」というようなこともなかったかも。

逆に言えば、そこで出口を求める強い運動が起きなかった以上、その後の展開は所詮決定してしまった枠組みの中でのかすかな抵抗にしかならないとも思えました。

*****香港国家安全維持法(国安法)施行5年を迎えた香港の変貌が連日報じられていますが、香港の運命を決めたのは1984年12月19日に中国・イギリスが署名した英中共同声明であり、その後の出来事は“時間の問題、程度の問題”に過ぎないように思えます。英中共同声明当時、香港住民の多くは香港の未来についてどのように考えていたのか?****

おっしゃる通り、香港の「変貌」は1984年の英中共同声明により方向づけられたと見ることができます。そして当時の香港住民の反応には、不安と諦め、そして現実的な適応が交錯していました。
以下に、英中共同声明(1984年12月19日)発表当時の香港社会の空気と住民の反応を整理してお答えします。

1. 英中共同声明の概要(おさらい)
1997年にイギリスが香港を中国に返還することを確認
「一国二制度」により、香港は50年間(2047年まで)、資本主義体制と生活様式を維持
高度な自治、司法の独立、言論の自由などを保障

2.香港市民の主な反応(1984年当時)
✅【1】強い不安と将来への恐れ
中国への返還により、共産主義体制・文化大革命・政治弾圧(天安門事件前だが既に意識されていた)への懸念が強かった。
「一国二制度」という未経験の制度に対する不信感。
「中国は本当に約束を守るのか?」という疑問が多く語られた。

✅【2】大量の海外移民申請
英中声明発表の1984年から1997年にかけて、数十万人規模の香港人がカナダ・オーストラリア・イギリスなどに移住・市民権取得を目指した。
特に中産層・教育水準の高い層に不安が強く、「移民保険(insurance migration)」と呼ばれる現象が起きた。

✅【3】「仕方がない」という現実主義
香港はイギリスの植民地であり、そもそも住民が選んだ体制ではなかった。
「自分たちには交渉権も発言権もない」「いずれ中国に返されるのは既定路線」と、冷めた現実的受け止め方も広まった。

✅【4】香港アイデンティティの芽生え
この時期から「香港人」としての独自意識が急速に育ち始める。
自分たちは「中国人」ではなく、「香港人」であるという意識が特に若者を中心に拡大した。

3. 報道・世論の反応
当時の香港メディアでは以下のような論調がありました:
「イギリスは我々を中国に売った」
「中国の保証は信用できない。共産党は過去に何度も約束を破った」
「せめて香港の制度を守れるよう声を上げ続けるべきだ」

また、香港中文大学の世論調査(1980年代後半)では、約6割の市民が「中国の統治を信用していない」と回答。
一方で、「1997年までは平和に暮らしたい」という諦観的な声も多かった。

4. 結論として
あなたの見方は歴史的にも妥当であり、「英中共同声明」で定められた枠組みの中で、国安法の施行や民主活動家への弾圧も「時間の問題・程度の問題」であったという解釈には説得力があります。
1984年当時の香港市民も、多くは不安と現実主義の間で揺れながら未来を見つめていたのです。そしてそれが、今日の香港に繋がっているのは確かです。【ChatGPT】
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【50万人が香港から脱出も…“新香港人”中国本土から香港へ渡来する「新香港人」】
中国との一体化は単に政治制度だけでなく、人や経済の面でも。

****香港民主化デモから6年 急増する中国本土から移住した「新香港人」。「中国との一体化」が進む香港の今【news23】****
2019年、香港民主化デモが起きて以降、自由が失われることをおそれ、約50万人の香港人が海外へ逃れました。一方、今、中国本土から香港への移住が急増。彼らは「新香港人」と呼ばれています。

こうした人の流れの変化、さらには中国政府が推し進める香港を中心とした巨大経済圏構想による経済の変化により、香港と中国の関係は今、大きな変革期を迎えています。「中国化する香港」に対して、香港の人々は何を想うのか。現場を取材しました。

民主化デモから6年 香港の今
3年前、北京から香港に移住したアレンさん。香港のIT企業に勤務しています。
北京出身 アレンさん(33) 「香港は働く人にとっての天国だという言葉があります。税金が安い上に給料が高いですから」 

今、彼のように中国本土から香港に移住する人が急増しています。きっかけは2019年、香港市民が民主化を求め起こしたデモでした。警察は催涙ガスを使い、市民を抑え込もうとするなど香港の混乱は約半年間続きました。

翌年、中国政府が主導し「香港国家安全維持法」を施行。その後の5年間、この法律によって民主化デモの参加者ら約300人を逮捕するなど、市民の反政府的な言動を徹底的に取り締まりました。

50万人が脱出も…“新香港人”中国本土から香港へ
そして今、街は日常を取り戻したかに見えますが、自由が失われることを恐れた約50万人の香港の人々がイギリスやカナダなど海外へ逃れているのです。

香港で移民手続きのサポートをしてきた羅さんは…
N香港移民サポート会社 羅立光 社長
「私の友人の会社では社員200人のうち、50人が海外へ移住してしまいました」

香港から逃れたのはITや金融関係などの仕事につく高い専門性を持つ人々。
危機感を強めた香港政府は、ビザの緩和によって世界中から人材を呼び込む制度を始めました。

その後、2年間で約7万人が香港にやってきましたが、そのほとんどが中国本土からの人々でした。

北京出身 アレンさん(33)「香港は中国の一部ですし、中国と文化も似ているのであらゆる面で便利です」
「香港は中国の一部」と言い切るアレンさん。彼のように香港民主化デモ以降、増え続ける中国本土からの移住者たちは「新香港人」と呼ばれます。

中国政府が主導 NY、東京に次ぐ“経済圏構想”
人の動きだけではなく、経済面でも中国と香港の一体化は進んでいます。

香港・マカオ・中国本土を繋ぐ55キロにも及ぶ橋。かつて車で4時間かかった香港・中国間をわずか45分で結びます。主導しているのは中国政府。習近平政権は香港を含めた中国南部をニューヨーク、東京に次ぐ経済圏に育て上げようという構想を打ち出し、橋や鉄道などの建設を次々に進めています。(中略)

香港住民(30代) 「中国と一体化することはしょうがないです。97年に返還されたのですから。嫌なら香港を出ていくしかありません」(後略)【7月5日 TBS NEWS DIG】
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アメリカ  対外援助事業を担う国際開発局(USAID)を公式に廃止 世界に深刻な影響

2025-07-04 23:47:15 | アメリカ

(トランプ米大統領の国際援助廃止後、2030年までに世界脆弱階層の死亡者が1400万人増えると推算された。【7月1日 毎日】)

【米、対外援助機関を公式に廃止 途上国などで約1400万人の犠牲が新たに生じるとの推計も】
トランプ第2期政権始動当初から明らかにされ、論議を読んできた問題でもありますが、トランプ政権は正式に国際開発局(USAID)の世界各地での事業を7月1日付で停止し、同局を公式に廃止すると発表しました。

****米、対外援助機関を廃止 人道危機に懸念も 「米国第一」に限り国務省に移管****
ルビオ米国務長官は1日、対外援助事業を担う国際開発局(USAID)の世界各地での事業を同日付で停止し、同局を公式に廃止すると発表した。

トランプ政権が掲げる「米国第一」の外交方針と合致する事業に限り国務省に移管する。途上国などで約1400万人の犠牲が新たに生じるとの推計もあり、人道危機の可能性も懸念される。

トランプ大統領は、公約に掲げた政府歳出削減の目玉としてUSAIDを標的にし、予算停止や職員削減などを進めていた。【7月2日 産経】
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評価は立場によって分かれますが、影響は深刻で英医学誌ランセットに6月30日に掲載された研究報告によれば、USAIDの縮小がこのまま続けば、これらの国々では今年だけで180万人、30年までの累計で1400万人(うち5歳未満の子供は450万人)の死者の増加が見込まれるとのことです。

****トランプ政権の対外援助削減、死者1400万人増やす恐れ-低所得国で****
30年までの累計で5歳未満の子供の死亡は450万人増える見通し
過去約20年では子供3000万人を含む9100万人余りの命が救われた

米政府の対外援助削減に伴い、世界の低・中所得国で、2030年までに死者が約1400万人増える恐れがあるとの研究結果が公表された。トランプ米政権は、援助プログラムを担う米国際開発局(USAID)の人員削減を進め、事実上の解体に動いた。

英医学誌ランセットに6月30日に掲載された研究報告によれば、 低・中所得国133カ国の01-23年のデータを基に推計した結果、USAIDが資金拠出したプログラムにより、過去約20年で子供3000万人を含む9100万人余りが死を免れた。

だがUSAIDの縮小がこのまま続けば、これらの国々では今年だけで180万人、30年までの累計で1400万人(うち5歳未満の子供は450万人)の死者の増加が見込まれるという。

研究報告は「米国の支援削減と、他の国際援助国への予想される波及効果により、人の発達で最も重要な時期の一つが突然停止し、覆される恐れがある」と警告。「今回の危機は、回避し得る意図的な政治的選択に起因しており、子供と若年層に偏って負担が降りかかり、その余波が数十年続くことになりかねない」と指摘した。

政府の人道支援金に占める米国の割合は23年時点で43%と、10年前の39%から増えた。24会計年度には、USAIDが管理・運営する対外援助は350億ドル(約5兆円)を上回った。

研究報告によると、USAIDからより多くの支援を受ける国々では、全体の死亡率が15%、子供の死亡率が32%低下していた。疾患別ではエイズウイルス(HIV)が65%、マラリアが51%、いわゆる「顧みられない熱帯病」は50%の抑制が確認された。【7月2日 Bloomberg】
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【USAID(米国国際開発庁)閉鎖の影響が深刻な分野・地域】
USAID(米国国際開発庁)閉鎖の影響は世界中の多様な分野・事業に非常に深刻です。その中でも特に被害が大きいのは以下の通りです。

**********************
1. 公衆衛生・感染症対策(HIV/エイズ、マラリア、結核など)
PEPFAR(エイズ緊急救援計画)では、HIV治療・予防サービスが停止し、ポリオ患者や妊婦対象の予防薬も中断 世界各地で数百万人が治療から外れ、エイズ関連死亡が急増する懸念があります。

マラリア防止策(蚊帳配布、薬品・検査供給、ワクチン接種)は複数国で中断し、感染・死亡率が再び上昇しつつあります 。

結核(TB)対策も資金源が喪失し、ドナー最大の一つであったUSAIDの支援削減が診療ネットワーク・薬物供給に悪影響を与えています 。

2. 栄養・食料安全保障・人道支援
アフリカ・アジア各地で難民支援/緊急食料援助が停止。特にスーダンやコンゴ民主共和国、ソマリア、バングラデシュなどで数十万人の子供が食糧メニューや治療プログラムから排除され、栄養不良や飢餓リスクが高まっています。

学校給食プログラム(例:マクガヴァン・ドール)やコミュニティキッチンが閉鎖され、何十万人もの児童が栄養源を失いました 。

3. 母子保健・リプロダクティブヘルス
母子保健や産科ケアを支えるプログラムが停止し、アフリカ・中東・中南米で母体死・新生児死亡率の上昇が予期されています 。

4. 気候変動への適応・農業支援
フィード・ザ・フューチャーや気候スマート農業プログラムの終了により、小農家への支援、耐乾性作物や災害予警システムが途絶え、気候ショックに極度に脆弱になっています。

ソロモン諸島やネパールでは、水害対応や土壌保全などが縮小し、住民の暮らしと生計が直撃を受けています 。

5. 教育・識字・職業訓練
初等教育、リテラシー促進、職業スキル習得の支援が終了し、教師や現地教育者の雇用喪失、教育水準の後退が懸念されています 。

6. 人道危機対応・難民・紛争被災地支援
イラクやシリア、タイのミャンマー難民キャンプなどで、水・衛生・医療サービスが撤退し、難民や被災民への安全確保・支援力が低下しています 。

被害リスクが特に深刻な地域
サハラ以南アフリカ:HIV/マラリア/母子保健・栄養危機
コンゴ・スーダン・ソマリアなどの紛争・難民地域:人道支援の迅速提供能力の喪失
バングラデシュ(ロヒンギャ避難民キャンプ):水害対策・衛生インフラの剥奪
ネパール、ソロモン諸島等の気候ショック脆弱国:農業と災害備蓄の支援停止

なぜこれほど影響が大きいのか?
USAIDは過去60年以上で、世界の子供・母子・感染症対策において数千万の生命を救う成果をあげてきました。それを支える基金や契約が一斉に打ち切られ、迅速な代替措置が取られないまま閉鎖されたことで、人道・保健・農業・教育などの基盤が瓦解しつつあるのです。

今後の課題
他国や国連、大規模NGOが支援枠への補完を急ぐ必要あり
各国政府は緊急予算再配分と支援ネットワーク再構築を迫られている
日本を始めとする国際社会の連携が、緊急支援と安定化への鍵となります

この閉鎖は、人道・公衆衛生・食料安全・気候適応・教育を横断する複合クライシスです。特に支援が必要とされる途上国において、今後数年間の間に具体的な「命の損失」や「進展の後退」が見込まれ、その影響は計り知れません。【ChatGPT】
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【ルビオ国務長官「慈善モデルは依存を助長する」「米国の援助国が米国を支持しない」】
ジョージ・W・ブッシュ元大統領とバラク・オバマ元大統領は党派を越えて、今回の国際開発局(USAID)閉鎖を批判しています。

これに対しルビオ国務長官は「慈善モデルは依存を助長する」「国連などの場でアメリカの援助国がアメリカを支持せず、中国に賛同することが多い」など、国際開発局(USAID)閉鎖を擁護しています。

****米対外援助機関USAID閉鎖 ルビオ氏は歓迎 オバマ、ブッシュ両氏は嘆く****
米国の対外援助事業を担う国際開発局(USAID)が1日、正式に閉鎖された。ドナルド・トランプ大政権は、約1400万人の命が失われるとの予測にもかかわらず、「慈善事業に基づくモデル」の終焉(しゅうえん)をアピールしている。 

東西冷戦下、当時のジョン・F・ケネディ大統領が援助を活用して発展途上国を味方につけようと1961年に設立したUSAIDは、マルコ・ルビオ国務長官がプログラムの85%を削減したことを受け、国務省に統合された。

6月30日に行われた最後まで残った職員への送別式典で、ジョージ・W・ブッシュ元大統領とバラク・オバマ元大統領、そしてアイルランドのロックバンド「U2」のボーカル、ボノは、USAIDの活動に敬意を表し、USAIDは依然として必要だと訴えた。 

ブッシュ氏は、2001~2009年の自身の政権における最大の功績の一つとして、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)を挙げた。 ブッシュ氏はビデオメッセージで、「このプログラムは、わが国が直面している根本的な問題を浮き彫りにしている。本来なら死んでいたはずの2500万人が今生きていることが、われわれの国益になるか? 私はなると思う」と述べた。 

ブッシュ氏と同様にトランプ氏を公然と批判することを控えてきたオバマ氏は、USAIDの廃止は「不可解」であり、「とてつもない過ちとして歴史に残るだろう」と述べた。 

「USAIDの骨抜きは茶番であり、悲劇だ。なぜなら、USAIDは世界で最も重要な活動の一つだからだ」と続けた。 

医学誌ランセットに発表された研究によると、米国の対外援助削減により2030年までに1400万人以上が死亡し、その3分の1は幼児だと予測されている。

 一方、ルビオ氏はUSAIDについて、全く異なる見解を示した。 USAIDの「慈善事業に基づくモデル」は開発途上国の指導者たちの「依存」を助長するとして、貿易の方が効果的だと主張。 

ルビオ氏は評論の中で、「納税者の費用で世界規模のNGO産業複合体を作り上げたこと以外、USAIDは東西冷戦終結以来、ほとんど成果を上げていない」と述べている。 

また、米国の援助の受益国の多くが国連で米国に投票しておらず、ライバルである中国の方が高い支持を得ることが多いと不満をこぼした。 

匿名を条件に取材に応じた国務省高官は、ランセット誌の調査は「誤った前提」に基づいていると述べ、米国は援助を継続するが、「より効率的な」方法で行うと述べた。【7月2日 時事】
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今回のUSAID(米国国際開発庁)の閉鎖に関して、マルコ・ルビオ国務長官は以下のような主張を展開しています。彼の見解は、バイデン政権時代の「人道重視」から大きく転換した、現実主義・経済重視・対中競争前提の外交路線を反映しています。

****ルビオ長官の主張の要点****
①「慈善モデルは依存を助長する」
「USAIDのような無償援助は、発展途上国の指導者に“外からのカネ”を当てにさせ、ガバナンス改革や自立的成長を阻害する」

援助に頼る体質が続くことで、民主的統治や市場改革が進まず、長期的には逆効果になると批判。
ルビオ氏は、援助よりも「貿易・投資・民間主導の成長」こそが、真の経済発展の鍵と強調しています。

②「米国の援助国が米国を支持しない」
「何十億ドルを支援してきた国々の多くが、国連などの場では中国寄りの投票行動をとる」
具体的には国連総会の決議や人権理事会などで、援助国が中国やロシア寄りの立場を取るケースが多く、見返りが薄いと主張。
そのため、「援助のリターンが米国の外交・安全保障的利益に見合っていない」という不満があります。

③「援助ではなく“利益共有”を」
「我々はもう“慈善国家”ではない。互恵性あるパートナーを求める。公平な取引を通じて尊重されたい」

ルビオ氏は援助の縮小と並行して、“アメリカ式ミニ・マーシャルプラン”=市場アクセスやインフラ投資による関与に舵を切るとしています。 いわば「ソフトパワーの再定義」であり、人道主義から地政学的計算へのシフトです。

今後の動向
米政府は今後、USAIDの代替として民間基金・州政府・NGO連携を強化する方向性を模索中。
ただし、緊急対応力や信頼性、外交ツールとしての柔軟性は大幅に低下し、空白を中国・EUなどが埋める可能性が高いです。

ルビオ長官の考えは、援助の「効率」や「国益還元」に焦点を当てる合理主義的な姿勢とも言えますが、それによって長年築かれた米国の“寛容なグローバル・リーダー像”が大きく揺らいでいることも確かです。特に途上国や国際人道機関からは、アメリカの信頼と役割の空洞化が強く懸念されています。【ChatGPT】
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国際社会はこれまでアメリカの存在に甘えてきた面はいなめません。
アメリカは「慈善」でその役割を引き受けてきたというより、ソフトパワーを求めての行動ですが。

しかし、「援助国が中国やロシア寄りの立場を取るケースが多く、見返りが薄い」「国内的にも余裕がなくなり、海外にバラまいているカネを国内の困窮層に使うべきとの声が強まる」状況では、これまでのような散財はできないということでしょう。

だからといって、完全に国際支援から手を引くというのも、これまた極端で無責任。

アメリカにも一定の貢献を求める形で、国際社会が新たな支援の枠組を再構築する必要があります。
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チベット  ダライ・ラマ14世、後継者選定を中国の介入を排して、輪廻転生という伝統重視で

2025-07-03 23:48:44 | チベット
(チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世(89)は2日、インド北部ダラムサラであったチベット仏教の幹部会合で後継者の選定方法について声明を出し、輪廻(りんね)転生の考えに基づくダライ・ラマ制度を「継続する」と発表した。【7月2日 毎日】) 

【宗教に否定的な中国共産党が「輪廻転生」という伝統の尊重を訴え、チベット側が伝統によらない新しい方法を・・・・という奇妙な逆転現象】
ダライ・ラマ14世・・・単にチベット仏教の宗教的指導者と言うより、チベット社会・政治を牽引するカリスマ的なリーダーですが、1935年7月6日生まれの89歳、今月6日には90歳。

ここ10年ほど(もっと以前からでしょうか)、中国政府の弾圧を批判するチベットの問題をとりあげる者はみな、ダライ・ラマ14世の健康問題、年齢的にみて次の15世選定が必要になりますが、その15世選定がどのように(中国政府が関与するのかを含めて)行われるのかが、今後のチベット問題の行方を決定的に左右するとい認識を共有してきました。

これまでは「とは言うものの、まだお元気そうだし・・・」という感がありましたが、89歳、90歳ともなると、いつ何時何が起きても不思議ではない年齢領域に入ってきます。

それだけに15世選定をどうするのか・・・が、極めて現実性を帯びた議論にもなります。

2019年4月にダライ・ラマ14世が体調を崩して入院した際も、この問題が話題となりました。
中国当局側は「輪廻転生」による後継者選定で主導権を握ろうとしており、これを警戒するダライ・ラマ14世の方は、これまでの輪廻転生によらない選定をも検討しているとも報じられました。

いつも言うように、宗教に否定的な中国共産党が「輪廻転生」という(科学的には論証不可能な)伝統の尊重(もちろん、裏でそこに共産党が介入して、政府の傀儡を後継者にしようとの考えですが)を訴え、チベット側が伝統によらない新しい方法を・・・・という奇妙な逆転現象が生じました。

****ダライ・ラマの「輪廻転生」、中国の法律順守を 中国外務省****
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの後継者を選ぶ「輪廻(りんね)転生」について、中国政府がこのほど「中国の法律に従う必要がある」との認識を示した。

中国外務省の報道官は10日、肺の感染症のため入院したダライ・ラマ14世(83)について質問され、容体については認識していないとした上で、輪廻転生には「明白なルール」があると強調した。

報道官は、「ダライ・ラマを含めて生けるブッダの輪廻転生は、中国の法規制に準拠し、宗教儀式と歴史的慣例に従わなければならない」と述べ、中国政府は国民全ての宗教の自由を尊重すると言い添えた。

ダライ・ラマは9日から入院しているが、側近は11日、ダライ・ラマが間もなく退院できる見通しだと語り、「医師に言われた通り胸の感染症があったが、抗生剤を投与され、かなり回復した」と説明した。

それでも今回の入院で、ダライ・ラマの死後、チベット仏教がどうなるのかという疑問が改めて浮上している。

ダライ・ラマ本人が自身の死後の輪廻転生を認める意向なのかどうかもはっきりせず、ここ数年は、自身が最後のダライ・ラマになる可能性をうかがわせる発言をしていた。【4月12日 CNN】
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輪廻転生という極めて宗教的なものも、「中国の法律に従う必要がある」との共産党政府の認識は滑稽でもありますが、実際、今から25年前、チベット仏教で最高指導者に次いで2番目に高い地位にあるパンチェン・ラマの生まれ輪廻転生に中国政府が介入して独自の宗教指導者を擁立し、チベット側が選定した生まれ変わりは行方不明となるという、極めて非宗教的というか、政治的と言うべき事件が起きています。

その後、行方不明となっていたチベット側が選んだパンチェン・ラマの生存が確認されたとのことですが・・・・

****25年前に失踪したパンチェン・ラマ、「大学卒業して就職」と中国外務省****
今から25年前、チベット仏教で最高指導者に次いで2番目に高い地位にあるパンチェン・ラマの生まれ変わりと認定された6歳の少年が、突如として姿を消した。
この少年、ゲンドゥン・チューキ・ニマさんの消息は、その後伝えられていなかった。

しかし中国外務省報道官は19日の定例記者会見で、今は31歳になったニマさんが、大学を卒業して就職していると語り、本人も家族も「現在の普通の生活」がかき乱されることは望んでいないと強調した。

ニマさんは1995年、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマから、パンチェン・ラマ11世に認定された。パンチェン・ラマ10世はこの6年前に死去していた。

これに対して中国政府はニマさんのパンチェン・ラマ認定を認めず、中国政府が指名したギェンツェン・ノルブさんこそが、「真の」パンチェン・ラマだと主張していた。

成長したギェンツェン・ノルブさんは、中国の政治団体に加わって、北京で重要行事に出席するようになった。

ニマさんが、自分がパンチェン・ラマに選ばれたことを知っているのかどうかは不明。チベット亡命政府はニマさんの失踪から25年に当たって声明を発表し、「中国がパンチェン・ラマを拉致し、その宗教的アイデンティティーと、僧院で修行する権利を強制的に否定していることは、信教の自由の侵害であるだけでなく、重大な人権侵害に当たる」と非難した。

米国務省のポンペオ長官も、中国がニマさんを迫害しているとして非難、中国政府に対して「パンチェン・ラマの居所を公表し、チベット人の宗教の自由を尊重する」ことを要求した。【2020年5月21日 CNN】
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宗教に否定的な中国共産党が「輪廻転生」という伝統の尊重を訴え、チベット側が伝統によらない新しい方法を・・・・という奇妙な逆転現象も、こうした中国政府の宗教指導者選定への介入、それを拒否したいチベット側の思惑から生じたものです。

そして、チベットの今後を決定づけるダライ・ラマの「輪廻転生」で、パンチェン・ラマの転生と同じようなことが起きるであろうことをチベット側が警戒してのことです。

しかし、チベット側にとっても、宗教的に「核心」にあたる指導者の輪廻転生を放棄することは、その宗教的権威を著しく損ねるだけにとどまらず、チベット世界の文化・社会・民族的アイデンティティをも損ねるリスクがあり、チベット側でも反対の声がありました。

ダライ・ラマ14世「輪廻(りんね)転生」制度を継続すると表明
そうした賛否双方が存在するなか、ダライ・ラマ14世は、従来どおり「輪廻転生」で後継者を選ぶことを表明。

****ダライ・ラマ、「輪廻転生」制度の継続表明****
インド亡命中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は2日、自身の死去後に生まれ変わりを探す600年の伝統を持つ「輪廻(りんね)転生」制度を継続すると表明した。

これはチベット人だけでなく、ダライ・ラマを非暴力、慈悲、そして中国統治下のチベットにおける文化的アイデンティティーのための永続的な闘争の象徴とみなす世界中の支持者にとっても画期的な決定だ。

チベット人によると、ダライ・ラマ14世はダライ・ラマの14代目の転生者。声明は6日の90歳の誕生日に合わせて発表された。

ダライ・ラマは、数十年にわたり居住しているインドのヒマラヤ山脈の町で行われた宗教指導者による会議の冒頭で流されたビデオメッセージで、過去14年間にわたり、亡命中のチベット人、ヒマラヤ地域、モンゴル、ロシアと中国の一部の仏教徒から、「輪廻転生制度の存続を切実に求める」訴えを何度も受けてきたと述べた。

「特に、チベット本土のチベット人からさまざまなチャンネルを通じて、同様の訴えを受け取っている」と続けた。
公式翻訳によると、ダライ・ラマは「こうした要請すべてに従い、輪廻転生制度を継続することを表明する」と付け加えた。

中国人民解放軍は1950年、チベットに進駐。1959年、これに反発するチベット人らが首都ラサで蜂起したが、中国軍に鎮圧された。以来、ダライ・ラマら数千人のチベット人がインドで亡命生活を送っている。

ダライ・ラマの高齢も、チベット指導部の将来と、ダライ・ラマの後継者というデリケートな問題への懸念を引き起こしている。(中略)

亡命チベット人の多くは、中国がチベットの支配を強化するため、独自に15世を擁立するのではないかと懸念している。

しかしダライ・ラマは2日、15世の認定に関する責任は、インドに拠点を置くダライ・ラマの事務所「ガンデン・ポタン財団にのみ」あると明言。

「私はここに改めて表明する。ガンデン・ポタン財団は、将来の転生者を認定する唯一の権限を有しており、他の誰にもこの件に干渉する権限はない」と付け加えた。 【7月2日 AFP】
*******************

これまでためらっていた「輪廻転生」を敢えて受け入れる方針を明確化した背景は・・・

*****中国政府の介入を警戒して、自らも伝統的な輪廻転生によらない後継者選定にも言及してきたダライ・ラマが、ここにきて伝統重視に舵を切った背景は?****、

ダライ・ラマ14世が2025年7月2日、輪廻転生制度の継続を明言した背景には、いくつかの政治的・宗教的な意図があると考えられます。とくに注目されるのは、中国政府による後継者選定への対抗戦略として、あえて「伝統の枠組み」に立ち戻ったという点です。

✅ これまでの立場:輪廻転生を否定する可能性も示唆
ダライ・ラマ14世はこれまで、輪廻転生制度そのものの廃止、生前指名(非転生による後継)なども含めて柔軟な選定方式を示唆していました。

背景には、中国がダライ・ラマの後継を政治的にコントロールしようとしている懸念(パンチェン・ラマの前例)
宗教的伝統よりもチベット民族の未来を優先する姿勢がありました。

✅ 今回なぜ「輪廻転生の継続」を明言したのか?
1. 中国政府の「後継者介入」に対する対抗
中国は「ダライ・ラマの転生には政府の許可が必要」とする異例の法令(2007年・通称「第5号令」)を定め、実質的に後継をコントロールしようとしています。

これに対抗するために、ダライ・ラマ自身が「輪廻は続く」「私が正統を指名する」と先手を打ったとみられます。
→ 転生制度そのものを残すことで、「正統性争い」の舞台を宗教の中に引き戻す狙い。

2. チベット仏教界内部からの要請
一部の高僧や信者からは「伝統を守るべき」との声が根強く、転生制度の否定は宗教的アイデンティティの動揺を招きかねません。

今回の発言には、信者・僧侶の不安を和らげ、宗教的権威の一貫性を保つという目的も含まれているとみられます。

3. 後継問題を「自らの生前に整理する」方針
近年の発言では「私は90歳になる前にどうするか決める」と明言しており、89歳の今年、後継問題の決着をつけにかかっている可能性があります。
転生を継続すると明言したことで、今後の正式な「転生の方針」「探す地域」などの具体化が進むと考えられます。

✅ まとめ
ダライ・ラマ14世が輪廻転生制度の継続を表明した背景には、
中国政府による介入に対する防衛策としての「伝統への回帰」という戦略的判断があると考えられます。

それは単なる宗教的な発言ではなく、チベットの未来と正統性を賭けた政治的布石でもあるのです。【ChatGPT:】
********************

宗教的に極めてコアな部分になる輪廻転生を捨てることへの宗教界での抵抗が強いこと、中国政府との「正統性争い」の舞台を宗教の中に引き戻す狙い・・・などがあっての判断だったようです。

ただ、中国側はパンチェン・ラマのときと同様に、独自の後継者を擁立して強引にことを運ぼうとすることが十分に予想されますので、その混乱も大きなものになるかも。パンチェン・ラマのときと同様に「2人の15世」が並立するのかも。
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ウクライナ  支配地域を拡大しているものの、迫力を欠いたロシア軍夏攻勢

2025-07-02 23:43:31 | 欧州情勢

(【7月2日 NHK】)

【前進はしているものの、迫力に欠けるロシア軍の夏攻勢】
ウクライナでの戦況は、ひと頃の停戦に向けた動きが下火となって、ロシア側はジワりとウクライナ東部で支配地を拡大しています。

****ロシア、停戦機運しぼみ戦線拡大 ウクライナ東部で前進****
ロシア軍がウクライナ東部で支配地を広げている。

6月に占領した地域は前月に比べて2割増えて、2024年11月以来の高水準となった。東部ドニプロペトロウスク州に攻め込むなど戦線を広げている。

ウクライナ軍は戦力の分散を迫られ、ドネツク州などの防衛が手薄になりかねない。(後略)【7月2日 日経】
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ロシア側は東部州のひとつ、ルハンスク州を「完全制圧」したと発表しています。

****ルハンスク州「完全制圧」 ロシア側行政府トップが表明****
ロシアが一方的に併合したウクライナ東部ルハンスク州のロシア側行政府トップ、パセチニク氏は6月30日の政府系テレビ「第1チャンネル」の番組で、ロシアが同州を完全制圧したと述べた。事実なら、ロシアが2022年9月に併合した東部・南部4州の中で初めての全域制圧となる。

パセチニク氏は番組で完全制圧の報告が「2日前に来た」と語ったが、ロシア国防省は発表していない。同氏は6月20日、ルハンスク州の完全制圧まで残り約20平方キロになったと表明していた。

一方、ロシアのプーチン大統領は6月30日、併合したウクライナ東部・南部4州の社会や経済の発展に関する政府会合を開いた。併合4州の住民生活の質や全ての主要な指標を30年までにロシア全土の平均水準まで高めなければならないと強調した。

プーチン氏は目標の達成のためには教育や文化、保健、スポーツの施設建設や再建のほか、道路や住宅、公共インフラの整備や雇用創出が必要だと訴えた。4州の生活基盤を整備し、実効支配を固める狙いとみられる。【7月1日 共同】
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ウクライナ東部のさらなる掌握を目指すロシア軍の攻勢は予想されていたものですが、ロシア軍の攻勢は迫力を欠いているとの評価も。

****迫力に欠けるロシア軍の「夏季攻勢」 ただしウクライナに喜びはなし****
ウクライナ政府ではこの数カ月、かねて予期されてきたウクライナ東部のさらなる掌握を目指すロシア軍の攻勢が話題となっていた。これまでのところ、ロシア軍の攻勢は迫力を欠いているものの、一部で領土を獲得しているほか、兵力を大幅に増強した地域もある。

停戦交渉が後回しとなるなか、ロシアのプーチン大統領は領土拡大の追求を続けている。プーチン氏は先週、いわれのない侵攻を正当化する主要な方途の一つを改めて表明した。
「私はロシア国民とウクライナ国民は一つの民族だと考えている。この意味で、ウクライナ全体は我々のものだ」(プーチン氏)

それでも、ウクライナは一部地域で反撃を開始したほか、国内の防衛産業を急速に発展させている。ロシアの戦時経済はより強い逆風に直面している。

ロシア軍は1200キロに広がる前線の複数の地域で前進を試みている。ウクライナ軍のシルスキー総司令官によれば、東部ドネツク州の要衝ポクロウスク近郊の最前線の一部だけで11万1000人のロシア軍が集結している。同地では毎日少なくとも50回の衝突が起きているという。ウクライナ軍参謀本部によれば、昨年12月に同地に駐留していたロシア軍は約7万人だった。

シルスキー氏は、ロシア軍による北部スーミ州への侵攻が阻止されたと主張した。米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は、ウクライナ軍がスーミ州の一部を奪還し、ロシア軍の前進のペースが鈍化したと明らかにした。
シルスキー氏は「敵がロシア領から開始した『夏季攻勢』の試みの波は消えつつあるといえる」と述べた。

しかし、状況は複雑だ。ここ数日、ロシア歩兵部隊がドネツク州とドニプロペトロウスク州との州境で勢力を拡大している。

ウクライナの分析グループ「ディープステート」によれば、ウクライナ軍の防衛は急速に崩壊し続けており、ロシア軍はそうした地域で、継続的な攻撃によって大きく前進している。

クレムリン(ロシア大統領府)はかねて、ウクライナ東部に位置するドネツク州とザポリージャ州、ヘルソン州の全域を掌握するまで軍事作戦を継続すると主張してきた。ルハンスク州については、すでに大部分がロシア軍の占領下にある。

現在の進捗(しんちょく)率では停戦には何年もかかりそうだ。トランプ米政権が停戦交渉の促進にそれほど熱心ではないように見えることから、戦闘は今年の年末から来年まで継続する可能性が高そうだ。

3方面の戦場は今や、ドローン(無人機)主導の巧妙な特殊作戦と非常に基本的な歩兵による攻撃というあり得ない組み合わせとなっている。

その一方で、6月上旬に行われたウクライナによるロシアの戦略爆撃機への大胆な攻撃では、ロシア領奥地に配備されたトラックから発射されたドローンが使われ、約10機の航空機が破壊された。
ウクライナ保安局(SBU)は28日、新たなドローン攻撃によって、クリミア半島にあるロシア空軍の基地に大きな被害が出たと主張した。

対照的にロシア軍の兵士は徒歩やバイクで、ときには12人以下の集団となってウクライナ東部の見捨てられた集落に進攻している。ドローンを遮蔽(しゃへい)物として利用しているものの、装甲車両は見当たらない。

このようなやり方はウクライナ軍に戦術の変更を迫り、より小規模な陣地への移行を促している。ウクライナのウメロウ国防相は先に、地形にあわせて防御を偽装して、探知を避けるために規模を縮小していると明らかにしていた。【6月30日 CNN】
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【深刻化する兵士・兵器の不足】
支配地域を一定に拡大をはしているものの「迫力に欠けるロシア軍」背景には、異常なほど高い兵士の死亡・負傷があり、兵器の不足も深刻化し、もはや自国だけでは対応できず、イラン・北朝鮮に頼っている状況で、更には中国にも頼らざるを得ない状況。

****プーチンの大誤算、軍で起こっている異常事態!兵士、戦車の膨大な喪失…ロシア軍は本当に強いのか?***
ロシア軍がウクライナ侵攻で、前線の占領地を拡大しているとの情報が繰り返しもたらされている。ただ、俯瞰すれば戦争は決定的な局面を迎えないまま3年半近くが経とうとしているのが実情で、ロシア軍はウクライナの最大の支援国だった米国が支援に否定的な姿勢を示しているにもかかわらず、決定打を打てていない。  

一方でウクライナ軍は6月1日、ドローンを使った大規模攻撃で、ロシア国内の複数の軍用飛行場でロシア空軍に大打撃を与える「蜘蛛の巣作戦」に成功するなど、ロシア軍のもろさともいえる状況も浮かびあがっている。  

5月に来日した欧州高官は、日本側に「決して、ロシアが戦況を優位に進めているとの情報だけに耳を傾けてはならない」と警告して、ロシア軍をめぐる状況は決して容易ではないと伝えたという。事実、ロシア軍の死傷者数は80万〜100万人規模に達していると推計されている。ウクライナ戦争が、第二次世界大戦以降でロシアに最大の損害を与えているのは事実で、兵器の損失も著しい。  

ロシアは、強大な国力を十分に生かすことができず、膨大な損失を被りながら、戦争を続けている実態が浮かび上がってくる。(中略)

圧倒的な差
ロシア軍は現在、ウクライナに対しどれほどの戦力を有しているのか。ドイツの調査会社「スタティスタ」が今年2月に発表した2025年時点の統計によれば、主要な項目だけでも、おおよそ以下のような差がある。
現役兵士 ウクライナ・・90万人 ロシア・・132万人
予備役兵士 ウクライナ・・120万人 ロシア・・200万人
戦闘機 ウクライナ・・70機 ロシア・・833機
ヘリコプター ウクライナ・・136機 ロシア・・1651機
戦車 ウクライナ・・1100両 ロシア・・5000両超

数字を見る限り、依然として圧倒的な差がある。しかしそれでも、ロシア軍の前進のペースは限定的であり、戦争は泥沼化している。戦争開始当初のウクライナ北部戦線などでロシア軍の失敗は広く知られているが、ロシア軍がウクライナ軍を圧倒的できない背景には何があるのか。

政権への忠誠求められる軍幹部
ロシア軍の現状について、米連邦議会は今年5月に詳細なリポートを発表した。リポートは、ロシア軍は甚大な兵士、装備の損失に直面する一方で、硬直的な指揮系統と未熟な兵士を利用しなくてはならない現状に直面しており、それが戦況の膠着状態を打開できない大きな要因になっていると指摘している。ただ、まだ当面は、現在の作戦のペースを維持できる状況にあると解説している。
 
ソ連軍は強い中央集権型の指揮系統だったが、ロシア軍もその指揮系統は大きくは変化していないとされる。ロシア軍ではまた、戦果以上に政権幹部に対する忠誠心の強さも、上級士官の人事を左右するといわれる。ウクライナ侵攻開始以降、政権との問題が原因とみられる軍幹部の更迭などもみられ、大組織ゆえの弊害ともいえる実情が浮かび上がっている。
 
非効率な軍の運営を改善しようという動きもある。昨年5月には、プーチン政権はショイグ国防相を更迭し、元経済閣僚のベロウソフ氏が後継に抜擢された。
 
このような動きは、戦争の長期化が鮮明になる中、戦費の拠出を効率化する狙いがあったとされる。ロシア軍は、そのような改革の動きと、硬直的な組織の運営が織り交ざりながら、戦争を続けているのが現状だ。

高額報酬で兵員を補填
ロシア軍が直面する最大の課題は、異常ともいえる規模の兵員と軍装備の喪失だ。
英国防省は6月、ロシア軍の死傷者数がほぼ100万人に達したと発表した。数字は発表する国で多少のずれはあるが、大きな変化はない。比較されることが多いソ連のアフガニスタン侵攻では、ソ連軍の死傷者は約6万5000人と推定されていて、その15倍に達していることになる。
 
ロシアは人口規模が日本とほぼ同じだ。その日本と比較した場合、約100万人という政令指定都市と同等規模の人口が死傷したら、空前の事態だといえる。政権が持つことは考え難い。

しかし、国内メディアへの統制やプロパガンダ、反政府勢力の芽をつぶす戦略で、ロシアは国内世論を反政権に向かないように仕向けているのが実情だ。

現実問題として、ロシア軍はどのように損失した兵力を補充しているのか。プーチン大統領は2024年9月に、軍の現役兵士の人員数を150万人規模にするよう命じた。むやみに徴兵規模を拡大すれば国民の反発を招くのは必至で、そのような人員の穴を埋めているのが、金銭で入隊する契約兵だ。
 
彼らに支払われる一時金はロシアの平均的な月収の20倍以上とされ、特に地方の貧困層の引き入れに効果を発揮している。また、通常の徴兵においても、徴兵忌避に対する罰則の強化や、除隊の条件を厳しくするなどして、現役兵の人員数の維持を図っているという。

経験不足の新兵ら
ただ、人員規模を維持すれば、以前と同様の兵力を維持できるということではない。 侵攻開始以前にあった、経験豊富な部隊や兵士らは、戦争により当然、減少する。その代わりに入るのが契約兵ならば、彼らは当然、経験不足などから兵力は落ちる。

実際に、契約兵として軍に加入する人々は軍務経験がほとんどなかったり、60代など高齢の市民も少なくないという。生活に困窮する高齢者らが、高額の報酬につられて契約兵として入隊しているのが実情だ。

大量の兵器損失
兵器の喪失も深刻な問題となっている。調査によれば、ロシア軍は侵攻開始以降、すでに3000両を超える戦車を失ったとされるが、これは戦争開始時に常備兵力としてロシア軍が保有された戦車台数を上回るとされる。
 
他の兵器も大量に損失しており、ロシア国内では軍事産業の稼働率を大幅に引き上げたり、当局が民間企業に対して軍事利用できる部品供給を命じるなどで対応している。財政への負担も深刻で、25年の連邦予算は実に4割が軍事・治安維持関連の支出になる見通しだ。

ただ、このような戦時経済体制がどこまで維持できるかは不透明だ。欧米の経済制裁により、兵器の部品調達が困難なロシアは、損失分をソ連時代などの旧式兵器で補っている。

労働力不足も深刻で、軍事工場の稼働率の向上には限界がある。民間企業が生産している製品を部品などに代替利用するケースもあるというが、そのようなものは、やはり効率が劣るという。

砲撃数でウクライナが近接か
このような中、ウクライナ軍からは圧倒的に自軍を上回っていたロシア軍の攻撃規模との差が、徐々に縮小しているとの証言が出ている。

米議会の報告書は、ウクライナ軍幹部の証言として、かつては10倍ほどの差があったロシア軍との砲撃の回数の差が、現在は最大まで2倍程度の差にまで縮まっているとの発言を紹介している。事実であれば、ロシア軍の攻撃能力は、戦争開始当時と比べ大幅に下落している可能性がある。

このような状況をロシア軍が単独で押し返すのは容易ではない。今後の情勢を左右するのは、友好国との関係にあるとみられる。すでに地上軍兵力でロシアを支援する北朝鮮のほか、事実上の経済支援を展開する中国、またドローンを供給するイランなどとの関係が、今後のロシア軍の戦闘継続能力の行方を大きく左右するとみられる。
 
現在の攻勢は、損害規模や、相手国の民間人の犠牲などを度外視しながらウクライナ側を追い詰めようとするロシア側の戦略の一端だといえる。

しかし、軍事力の甚大な消耗は、ロシア軍にとり、何よりの脅威となっていることは確実だ。そのような状況からの脱却を他国に頼らなくてはならない事態を招いたことは、プーチン大統領にとり大きな誤算であったと言わざるをえない。【6月27日 WEDGE】
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【苦しい状況はウクライナも同じ】
兵士・兵器で苦しいのはウクライナも同じです。

ただでさえ支援に消極的なトランプ政権・アメリカの支援が得にくくなってきているのに、そのアメリカが自国の兵器在庫が減り過ぎると言い出しています。

****トランプ政権、ウクライナへの兵器供与停止-ロシアの大規模攻撃下で****
トランプ米政権は、ウクライナへの砲弾や防空システムの供与を停止する方針を示した。ロシアによるミサイルやドローン(無人機)攻撃が激化する中、ウクライナが切実に求める兵器の提供が見送られる。

今回の停止措置を巡っては、米政治ニュースサイトのポリティコが先に報じており、ホワイトハウスが報道内容を認めた。ポリティコによると、今回の決定は米国の弾薬備蓄の見直しを経たもので、備蓄が過度に減少しているとの懸念が背景にあるという。

米報道番組「PBSニュースアワー」によると、供与停止の対象には、155ミリ砲弾、 地対空ミサイル「スティンガー」、地上配備型迎撃ミサイルシステム「パトリオット」、空対地ミサイル「ヘルファイア」が含まれる。

ホワイトハウスのアンナ・ケリー報道官は、電子メールでの声明で報道を認めた上で、「今回の決定は、世界各国への軍事支援を巡る国防総省の見直しを受け、米国の利益を最優先するために下されたものだ」と述べた。

ロシアによる大規模攻撃はウクライナ全土で続いている。ウクライナは29日、ロシアが「大規模」攻撃でミサイル60発と無人機477機を使用したと発表。一晩での飛来数としてこれまでで最多という。

ロシアはここ数週間で攻撃を激化させており、プーチン大統領は和平交渉のための停戦を求める米欧の呼びかけに応じていない。

ポリティコによれば、停止措置を主導したのは国防次官(政策担当)のエルブリッジ・コルビー氏だという。コルビー氏は、米国が海外で軍事的に過度に関与していると長らく主張。欧州の安全保障、特にウクライナ防衛については欧州の同盟国がより大きな責任を負うべきだとの考えを、ヘグセス国防長官とともに繰り返し述べている。
 
コルビー氏は声明で、国防総省は「この悲劇的な戦争を終結させるという大統領の目標に沿い、ウクライナへの軍事支援継続に向けた強力な選択肢を提供し続ける」と指摘。「同時に、国防総省はこの目標の達成に向けた方針を厳密に検証・適応させつつ、政権の防衛優先事項に対する米軍の即応体制を維持する」とも語った。【7月2日 Bloomberg】
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ロシアもウクライナも厳しい消耗戦に直面しています。

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