孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・新疆ウイグル自治区の「施設」で何が行われているのか?

2019-05-26 22:11:05 | 中国

(職業技能教育訓練センターで調理の実習に取り組む入所者=4月18日、新疆ウイグル自治区ホータン地区、冨名腰隆撮影 【5月19日 朝日】

【施設入所者は「自ら望んで来た」とは言うものの、断れば「裁かれて終わり」】

新疆ウイグル自治区における、中国政府によるイスラム系ウイグル族等に対する弾圧・文化宗教改造を目的とした思想教育(もしくは、中国政府の言うところの「職業訓練」)については、同地域における思想教育を伴う「強制労働」に近い生産活動が、(欧米大企業はそのことを知ってか知らずか)欧米諸国の消費者が手にする商品のサプライチェーンに組み込まれている・・・という問題を、518日ブログ“欧米大企業のサプライチェーンに組み込まれた新疆ウイグル族の思想教育的(強制)労働”でも取り上げました。

 

新疆では100万人を超す住民が強制収容所(もしくは中国政府の言うところの再教育訓練施設)に入れられていると言われていますが、一体何が行われているのか?

 

それらの施設をめぐっては、虐待や拷問など深刻な人権侵害が行われているとの疑いを国際人権団体や米国政府などが指摘しています。

 

そのような指摘が事実かどうか、まずは、中国政府が「実際の姿」として“見せたがっているもの”がどういうものかを見る必要があります。下記は、中国当局が外国メディアに公開している「再教育施設」の状況です。

 

****「望んで来た」口そろえる入所者 新疆ウイグル自治区「再教育施設」ルポ****

(新疆の)カシュガルを訪れた翌日、政府担当者の案内で、タクラマカン砂漠に接する新疆ウイグル自治区南部のホータン地区に入った。

 

人口約250万人のうちウイグル族が97%を占める同地区は、中国からの独立を目指す勢力の動きも活発とされ、過去に大規模なテロも相次いだ。厳しい規制が敷かれ、外国メディアが取材するのがとりわけ難しい地域だ。

 

防砂用のポプラが両側にそびえ立つ直線道路を1時間ほど走り、「墨玉県職業技能教育訓練センター」に着いた。2017年5月に造られたという施設は、まだ真新しい。

 

職業訓練棟の調理室では、コック帽に白衣姿の約40人が、小さな石の入った中華鍋を無表情に振り続けていた。ガラン、ガランと音が響く。部屋の壁には「手に職あれば、生涯憂いなし」との標語が中国語とウイグル語で掲げてあった。約800人の入所者は、調理やあんまなど15のコースから選ぶという。

 

カシュガルの施設と同じく、入所者は宿舎内での携帯電話の使用や週1回の帰宅が許されているという。

 

 ■「軽い罪犯して」

彼らはどうやって、このセンターに来たのか。

 

ブアイシャム・アムリズ学長(34)は「みんな軽い罪を犯した者だが、警察とセンターが協議し、さらに地元政府の推薦を得て自ら申請した者がここに来る」と説明した。

 

行政の判断で刑事手続きを経ずに施設に送る仕組みは、長年、人権保護の観点から中国が内外の批判を浴び、13年に廃止が決まった「労働教養施設」と似通う。誰がどんな基準で入所期間を決めるのか、明確な規定がないのも似ている。

 

学長の説明の真偽を確かめたいと、パソコン実習室で学んでいた男性(31)に声をかけた。

入所7カ月。施設から10キロほど離れた村に妻と3人の子を残して来たという。

 

「イスラム教の教義を守るべきだと感じて子供を学校に通わせなくなり、(戒律に反して)酒を売る店の店主を殴った。村の幹部に『無料の施設でやり直せる』と言われ、申請した」

 

さらに7人の入所者に聞いたが、全員が「望んで来た」と答えた。

 

 ■「思想を改めた」

いずれも言葉遣いや話し方が似通っている分、模範的な回答を暗記させているのではという疑念もわいた。

学長にただすと、「話が似ているとすれば、それは彼らが思想を改めたからだ」と、色をなして反論した。

 

 ■中国側、過激思想の防止強調

人権団体や米国などが深刻な人権侵害の疑いを告発するまで、中国政府はこうした訓練センターの存在を対外的に明らかにはしてこなかった。国際的な関心と批判が高まるなか、昨年、公的施設と位置づけるための法整備をした。

 

過激思想の広がりを防ぐための教育施設だとする中国側と、民族的な抑圧が行われる強制収容施設だとする人権団体や米国との主張は真っ向から対立する。

 

背景にあるのは、根深さを増す共産党政権とウイグル族の対立だ。

共産党政権は長らく、発展の恩恵を行き渡らせることで民族対立を解消しようと政策を展開してきた。

 

だが、09年、広東省ウイグル族への偏見に根ざす乱闘事件が起き、それが新疆に飛び火して大規模な民族衝突に発展したころから、双方の不信と憎悪は深まった。

 

当局がウイグル族の集まりや宗教的習俗への抑圧を強めるのに比例するように、刃物や火器で武装したグループが警察署などを襲う事件が増加。手口も過激化し、13年には天安門に車ごと突入する事件、14年には雲南省で通行人を無差別に襲撃する事件が起きた。

 

当局は「分裂主義勢力」の犯行とみなし、海外のイスラム過激派組織とのつながりも強調。政権は、こうした動きを放置すれば、国家を揺るがす深刻な脅威になるとの危機感を隠さなくなった。

 

新疆での反テロ政策に関する政府の白書によると、14年以降、民族扇動や国家分裂などの疑いで摘発したグループは1588、拘束者は1万3千人。違法な宗教活動を行ったとして4858件、3万人以上を調査・処分した。街じゅうに監視カメラを設置したり家庭用の包丁を鎖で固定したりする管理政策も進んだ。

 

共産党政権はイスラム教を含む宗教自体を否定していない。しかし、前提はそれが社会の安定や国家の統一に役立つことだ。宗教が分裂活動や反政権的な動きの温床になっているとみなせば、容赦なく抑え込む。新疆やチベットで起きているのは、そうした現実だ。

 

習近平(シーチンピン)国家主席は16年、15年ぶりに開いた全国宗教工作会議で、「宗教管理は党と国家にとって特殊な重要性を持つ。法治によって社会主義に適応させよ」と指示した。

 

 ■在外ウイグル族「宗教理由に弾圧」

中国政府の迫害を恐れ、帰国をためらう在外ウイグル族の話からは、「携帯電話は使える」「自ら望んで来た」などとした施設側や入所者の説明とは異なる状況も浮かび上がる。

 

新疆の区都ウルムチ出身の元工場経営者トゥルグ・メフメティさん(51)は17年3月、産児制限のある中国で妻が5人目の子を妊娠したころから当局の圧力を感じ、妻を連れて親族のいるトルコに渡った。

 

当初は生まれた子を親族に預けて戻るつもりだったが、出国から半年の間に、新疆に住む母親から、兄と妹が相次いで中国当局に拘束され、妹は連行後に死亡したと聞かされた。

 

さらに、母親が携帯電話で中国に残るメフメティさんの子4人の写真をトルコに送ったことを罪に問われて刑務所に送られたと、義姉から知らされた。4人の子も施設に入れられたという。現在は義姉とも連絡が取れなくなり、知人経由で義姉が「再教育施設」にいると伝えられたという。

 

メフメティさんは「中国に戻れば、自分も拘束される可能性が高い」と恐れ、妻と生まれた子とトルコにとどまっている。新疆の他の知人らへの電話もつながらなくなり、中国のSNS「微信(ウィーチャット)」のアカウントは使用できなくなったという。

 

「私の家族が特別ではなく、イグル族が自らの文化や宗教を捨てないことを理由に政府の弾圧が続いている」と憤る。

 

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年の報告書で、中国外に住むウイグル族らの証言をもとに、新疆を訪れた親族が中国当局に拘束されたり、旅券を没収されたりしたと指摘。新疆のウイグル族らも、当局から国外の親族と連絡を取らぬよう命じられ、連絡が取れない状態が続いているとしている。【519日 朝日】

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中国側監視のもとで「望んで来た」と答える入所者の言葉をそのまま信じることが難しいのは言うまでもないところです。

 

****中国、新疆に謎の訓練所 入所断れば「裁かれて終わり」****

(中略) 男性のセンターでの生活は9カ月目に入ったという。告白は続いた。

 

「友人や家族にも『国家に従うな』と強要した。過激思想に染まっている自分には気づかなかった」

センターへ行くよう男性に促したのは、地元の共産党幹部だった。「本来、刑を受けなければならないが、施設に入れば免除される」。そう諭され、入所の申請書類にサインしたのだという。

 

「強制された」のかと問うと、男性はつぶやくように「自発的に来た」と答えた。そのやり取りを、そばに立つ地元政府関係者が見続けていた。

 

「過激思想を取り除き、仕事を見つけるための最高の環境を提供している」

そう言って胸を張るママト・アリ学長(45)に、「入所を拒否することは可能か。断るとどうなるのか」と詰め寄ると、学長はしばらく黙り込んでこう言った。

 

「そんな人はいない。いたとしても、裁かれて終わりだ」【520日 朝日】

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随分正直な学長です。断れば裁かれて終わりなるというのは、「自発的に来た」という建前とは相いれません。

 

【解放された妻は「別人」に 解放後も恐れる中国当局の目】

国際的批判の高まりを受けて、中国当局は“解放”も進めているようです。

 

****豚肉を食べて酒を飲む「別人」に、解放されたウイグル人妻たち 中国****

2017年、パキスタン人と結婚したウイグル人女性たちが、中国政府によるイスラム過激派排除の捜査網にとらわれ、その姿を消した。

 

これらの女性たちが最近になって解放されはじめている。しかしパキスタン人の夫らは、その解放には大きな代償が伴ったと話す。戻ってきた妻たちが「中国社会への適応」の証明を強要されており、宗教的戒律をも犠牲にしているというのだ。

 

中国には「職業教育センター」と称する強制収容所がある。ここには100万人近くの収容者がいるとみられているが、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人妻約40人もその一部だった。

 

夫たちによると、強制収容所で妻たちはイスラム教で禁止されている行為「ハラーム」を強要され、それは解放された今でも同じように続いているという。

 

最近、妻に会うため新疆にある妻の実家を訪ねたというあるパキスタン人の男性は、匿名を条件にAFPの取材に応じ「妻は豚肉を食べたり酒を飲んだりしなければならず、今でもそれを強要されていると話していた」と述べた。

 

また「当局者から、連れ戻されたくなければ、過激思想を捨てたことを証明する必要があると言われたようだ」と説明し、実家に戻った妻は礼拝をやめ、コーランの代わりに中国関連の本を読んでいると続けた。(中略)

 

強制収容所はウイグル人を含むイスラム教徒弾圧の一環で設置されたが、国際社会から激しい批判を受けたことや中国とパキスタンの経済的結びつきが深まっていることを踏まえ、政府は2か月前から徐々に女性たちを解放している。(中略)

 

■試される「中国社会への適応」

AFPが取材したウイグル人妻の夫9人は、解放された妻たちは3か月間、新疆を離れることができず、その間厳しく監視されることになると語った。

 

ある宝石商の男性は「妻が中国社会に適応しているか確かめるための監視だろう。適応していないと判断されれば、戻されてしまう」と述べた。(中略)

 

解放された妻たちについては、被害妄想に陥ったり、通報を恐れたりしていると、多くの家族が指摘している。

前述の宝石商の男性は「最悪なのは、妻が何も話さないことだ」「両親や家族、私のことさえ疑っている」と語った。

 

また、匿名を条件にAFPの取材に応じた別の夫ら7人も、妻との連絡はまだ電話のみだが、同じような状況にあると証言している。

 

■パキスタンへの多額投資の影響も

(中略)中国は近年、パキスタンとの関係を強化しており、中国・パキスタン経済回廊の下、インフラ事業に多額の資金を投じている。

 

一方パキスタンは、新疆でのイスラム教徒弾圧に対する国際的批判に表向きは同調している。同国のイムラン・カーン首相はこの問題について、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「率直に言って、それについてはよく分からない」と述べた。

 

パキスタン人の夫にとって、妻は今も行方不明も同然だ。愛する妻や母親の解放を最初は喜んだものの、帰って来た女性たちが別人のようになっているのを見てその喜びが消えたと話す男性もいる。

 

宝石商の男性は、「妻はまったく別人になってしまったので、私たちの結婚はもう長く続かないのではないかと心配している」と語った。 【526日 AFP

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解放された妻の夫の言葉ではなく、妻自身の言葉が聞きたいところですが、もともと女性が表に出る習慣のないことに加え、中国当局の目に“おびえている”現状では、それはかなわないのでしょう。

 

【異民族間の結婚を奨励するなどで同化を進める】

上記のような施設での思想教育(もしくは職業訓練)のほか、中国政府はウイグル族と漢民族の結婚を奨励するような施策で、“同化”を進めているとも。

 

****新疆で父母どちらか漢民族の学生有利に 中国、異なる民族間結婚を奨励か*****

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情勢が不安定な中国北西部の新疆ウイグル自治区で最近、大学入試に関する規定が変更され、父母のどちらかが漢民族の学生に対する得点の上乗せ幅が大幅に引き上げられた。専門家らは主にイスラム教徒の少数民族の文化を排除しようとする当局の新たな取り組みとみている。

 

暴力事件が相次いで発生した2014年以降、中国当局は新疆ウイグル自治区での取り締まりを強化。長いひげやスカーフ着用を禁止し、100万人に及ぶイスラム教徒の少数民族を収容施設で拘束するなど、過酷な措置を強要している。

 

中国当局者は施設について、チュルク語を話す人々が中国語と仕事のスキルを学べる「職業訓練施設」で、宗教的過激思想に染まらないようにするのが狙いと説明。しかし人権団体などは、施設はウイグル人ら少数民族の文化や宗教的信念を、中国で大多数を占める漢民族の社会に強制的に同化させるのが目的と指摘している。

 

専門家らは、新疆ウイグル自治区での大学入試規定の変更がこの方向に沿った動きだとみている。2015年の統計によると同自治区の人口2300万人のうち、およそ半数をウイグル人が占めている。

 

同自治区当局は不利な立場にある学生に全国の大学入試で得点を上乗せする既存の規定を変更。父か母が漢民族の学生に対する上乗せ幅を20点と昨年から2倍に引き上げた一方、両親が少数民族の学生に対する上乗せ幅を15点と昨年に比べ半分以下に引き下げた。

 

豪ラ・トローブ大学で中国の民族関係・政策に詳しいジェームズ・レイボールド教授はAFPの取材に対し、「新たな大学入試規定は漢民族と異なる思想や行動様式についていかなるものでもすべて漢民族化させる取り組みの一環」と説明。同教授によれば政府は「異なる民族間の結婚が、国家の統合促進とウイグル人ら少数民族の同化を促すのに重要な手段」と考えているという。 【翻訳編集】AFPBB News

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「収容所」にしろ「異なる民族間の結婚」にしろ、2300万人の民族の文化・宗教の改造を現実にやってしまうところが、中国という国のおそろしいところです。

 

中国政府のそのような圧力は、新疆のウイグル族等だけでなく、人権派弁護士、あるいは左派学生など、共産党の

指導する体制に異を唱える人々にも向けられています。

 

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フランス  植物状態の患者の延命治療をめぐる大論争 更に長期化の様相

2019-05-25 22:32:46 | 人権 児童

(フランス・ランスの病院でベッドに横たわるバンサン・ランベールさん。家族提供(201563日撮影【521日 AFP】)

 

延命治療をいつまで続けるのかということは、表立っては軽々に口にし難い問題ですが、その一方で、実際の現場では多くの患者・家族・医療関係者が直面し対応を迫られる問題でもあります。

 

通常は、家族の意向を担当医が尊重して・・・というところですが、判断が分かれる場合も。

そうしたなかでも、担当医が延命打ち切りを決断し、家族の一部がこれに反対して裁判沙汰に・・・というのは、あまり多くはないと思いますが、フランスでそうした案件が問題になっています。

 

****植物状態の息子、延命続けさせて 両親ら大統領に公開書簡 フランス****

10年間植物状態となっているフランス人男性の延命医療を打ち切ると担当医が決断したことについて、この男性の両親らが18日、エマニュエル・マクロン大統領に延命医療の継続を求めた。担当医は20日に延命医療を打ち切るとしている。

 

バンサン・ランベールさんは2008年に自動車事故に遭い、脳に重度の損傷を負って四肢まひとなった。ランベールさんの延命医療は、家族を引き裂く法廷闘争に発展している。

 

フランス当局の公式な立場は、患者は「治癒が極めて困難」な状況による苦しみを受けない権利があるというもの。ランベールさんの担当医は今月10日、あらゆる延命医療を20日に打ち切る方針を家族に伝えた。

 

担当医らは2014年、フランスの消極的安楽死法に基づき、ランベールさんの妻ラシェルさんときょうだいのうち5人、おいのフランソワさん同意を得て栄養・水分の補給を中止すると決定した。

 

しかし、敬虔(けいけん)なカトリック教徒の両親と片親違いのきょうだいらは、より良い治療を受ければ病状が改善する可能性があると主張。延命治療の中止を差し止める裁判所命令を得た。

 

両親らの弁護団は18日、大統領に宛てた公開書簡を発表した。公開書簡には、「大統領閣下、あなたが何もしなければ、バンサン・ランベールは520日の週に水分不足で死去するでしょう。あなたは介入することができる最後で唯一の人なのです」と書かれていた。

 

さらに、ランベールさんがこのまま亡くなった場合、後世の人々はこの出来事を「国家犯罪」とみなすでしょうとも記されていた。

 

国連の「障害者の権利委員会」は今月、フランス政府に対し、ランベールさんの延命に関して、その法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう要請。18日にも改めて同じ要請をした。両親はこの要請に従うようマクロン大統領に求めている。 【519日 AFP

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判断のポイントは、“「治癒が極めて困難」な状況による苦しみを受けない権利”です。

 

上記ケースでは、妻・兄弟と両親の判断が分かれていること、宗教的な背景もあることから、問題が複雑化しています。

 

上記のような状態で、担当医は延命措置打ち切りを実施しました。

 

****植物状態の仏男性、医師らが生命維持装置を停止****

フランスのランスの病院で、10年間植物状態となっている男性について、担当医らが20日、延命治療の中止に踏み切った。男性の両親の弁護士が明らかにした。この問題は同国内で大きな議論を巻き起こし、賛否をめぐって意見が二分している。

 

自動車事故で四肢まひとなったバンサン・ランベールさんの両親は、治療中止に断固反対している。両親の弁護士はAFPに対し、医師らが生命維持装置の停止を始めたと明かし、「恥ずべきことであり、(両親は)息子を抱き締めさせてももらえなかった」と語った。

 

他の親族も、装置の電源が落とされていることを認めている。 【520日 AFP

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これが正しい措置だったかどうかは別にして、一応このケースについての「結論」は出た・・・とも思ったのですが、事態は意外な展開に。

 

****植物状態の仏男性、延命治療再開 裁判所命令受け****

フランスのランスの病院で10年間植物状態となっているバンサン・ランベールさんに対し、担当医らは21日、裁判所命令に従って延命治療を再開した。弁護士らが明らかにした。

 

担当医らは前日20日午前、ランベールさんの妻や他の親族らの意向を踏まえて、水分補給や栄養の静脈投与を停止することを決定。生命維持装置の停止に踏み切っていた。

 

しかし首都パリの控訴院が同日、関係諸機関に対し、国連の「障害者の権利委員会」による判断を待つ間、ランベールさんの生命を維持するため「あらゆる措置を取る」よう命じていた。 【521日 AFP

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国連の「障害者の権利委員会」による判断が出るまで、延命措置が続けられるようです。

 

冒頭にも書いたように、非常に判断に悩む問題ですが、少なくとも自分自身がもしそういう状態になったら・・・ということを考えると、私自身は無理な延命は希望していません。

 

もちろん、それは自分自身に関しての判断であり、家族等のケーズに一般化できる話でもありません。

また、自分自身に関しても、今は上記のように思っていますが、実際にそういう状態になったとき、どのように考えるのかというは、なかなか確信がもてない話でもあります。

 

フランスのケースに話を戻すと、植物状態とはいいながらも、両親の主張によれば、相当な反応が可能な状況にあるとも。そうなると、更に判断は難しくなります。

 

このケースに関する国家レベル、国際機関レベルの判断も絡んだ争いは、今に始まったことではなく、以前から続いてきた問題のようです。

 

****仏で大論争、延命治療の是非****

 「今、私の息子を殺そうとしているわ!モンスター!」

 

520日の朝、フランスのラジオ「フランスインフォ」から悲痛の声が流れていた。10年間植物状態となっている元看護師バンサン・ランベール(42)さんの延命医療を打ち切ることを担当医が決断し、その処置が始まり、息子が回復する可能性を信じ支えてきた母親の嘆き悲しみの叫びが流れていたのだ。

 

同じニュースでは、延命医療を打ち切りを決めた病院の担当医師が、今までこういった事例の経験はないが、セオリー通りに行けば3日〜7日後にランベールさんは永遠の眠りにつくだろうとも伝えていた。

 

ランベールさんは、2008年に自動車事故にあった結果、脳に重度の損傷を負い四肢が麻痺しており、水分と栄養素の補給受ける延命治療にて生命を維持した、植物状態であると言われている。

 

実は、最初に延命医療停止の話が出たのは2013年末のことだ。それからランベールさんに対する延命医療の継続について、医師及び家族内で対立が続いてきたのだ。

 

フランスには、一連の終末期医療関連法による枠組みが存在しており、2005年発布のレオネッティ法では「常軌を逸する執拗な延命治療は、意思表示不可能な患者に対しても禁じる。薬剤などで命を短縮させる措置は患者と近親者に予告すべし」と示されている。

 

このため2012年末に主治医は、回復の見込みがないランベールさんについて、延命治療の停止を、ランベールさんと同じく看護師でもある妻のラシェルさんに相談し承諾を得たため、2014年の4月に実地する予定とした。

 

しかし、その判断にランベールさんの両親はまったく納得せず、行政裁判所に訴え出たのだ。その結果、延命治療を続ける旨の判決が下された。

 

家族内の意見は真っ向から対立している。ランベールさんの両親と妹・義弟は、息がある限りランベールさんに生きていて欲しいと言う一方、妻と弟、妹、3人の義弟、甥(おい)は、ランベールさんが言っていた「誰かに依存する生活はいやだ」と言う言葉と、脳幹が損傷し回復の見込みがないことを理由に、この植物状態と言う苦痛から解放し、安らかな眠りについて欲しいと願っている。

 

その後、2回にわたる家族と医師団・治療関係者の協議後、主治医は再び延命治療を停止した。ところがまた裁判所は「人工的水分、栄養補給は執拗(しつよう)な延命治療ではない」とし協議結果を無効にしたのだ。

 

そこで、妻と甥が提訴した国務院は新たな治療証明書を要求し、医師会、倫理委員会、医学アカデミーに意見を尋ね、コンセイユ・デタ(国務院)の判決を求めた。

 

結果624日、国務院は患者の人工的水分・栄養補給の停止を最終的に認めた。だが、その直前に両親が欧州人権裁判所に提訴しており、判定が下るまで「延命治療を続けるべし」と発表されたのである。

 

両親は、病院の近くにアパートを借り、長年ランベールさんの看病を行ってきた。そして付き添っている間に、植物状態だと言われながらも、なんらかの反応をする姿を何度も見てきているのだ。

 

昏睡状態であると思われているが、食事ができたり、発声したり、どちらかと言えば重度の障害者である。そういった様子を、次々と動画で流してアピールし続けた。

 

しかし、そのかいもむなしく、201565日、欧州人権裁判所も、植物状態にあるランベールさんの生命維持中止を認めたフランス裁判所の判決を支持する判断が下された。今後の欧州における指針となりうる判決でもあった。

 

その後、2016年に、レオネッティ法をさらに厳格化した、クレス・レオネッティ法が制定された。当時の大統領フランソワ・オランド氏の政権公約は「終末期患者の耐え難い苦痛を和らげる手段が無くなった場合に、明確で厳格な条件の下で、尊厳を保って命を終えるための医療手段を要求できるようにすることを提案する」としておりその公約を実現した形だ。

 

レオネッティ法では、延命医療を打ち切りには、医者の決定に重みがあったところを、クレス・レオネッティ法では、本人の意思が考慮されることとなり、事前指示書で延命医療を拒否することができるようになったのだ。

 

また事前指示書がなく、本人が意思を伝えられない場合は、家族からの証言を聞くなどの方法がとられ参考にされることになった。

 

そうした場合、ランベールさんの妻の本人が言ったと言う「誰かに依存する生活はいやだ」と言う証言は、判断する上で以前よりさらに考慮されるようになるだろう。

 

そして、ついに20191月、担当医はランベールさんの脳の損傷に回復の見込みはないとして生命維持装置を外すことを決めた。その後、フランスの裁判所がこの決定を認め、最高行政裁判所である国務院も、先月この決定を支持する判断を下したのだ。

 

両親は、延命治療を続けさせて欲しいと、エマニュエル・マクロン大統領に公開書簡を送ったが、「延命治療中止の決定は、法の下に医師らとランベールさんの法定代理人である妻の間で続けられてきた話し合いによって下されたものだ」と言う主旨を、Facebook上で述べ、介入を拒否する姿勢を示した。

 

延命治療を停止する前日には、両親が語り掛けると、ランベールさんが瞬きをし泣いているようにも見えるビデオが流された。瞬きをするなどの反応していることに多くの人たちが驚き、広く拡散されていった。

 

また、国連(UN)の「障害者の権利委員会」は今月、フランス政府に対し、法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう求めていたが、その要求もむなしく、20日、延命治療を停止が決行されることになったのだ。

当日は、母親が涙ながらにインタビューに答え、一日中、ニュースが流れ続け、ものものしい雰囲気に包まれた。パリでは支援者によって、延命医療継続を訴え、マクロン大統領に介入を求めるデモも行われた。

 

しかし、その夜、驚きのニュースが入り一変に状況が変わった。なんと、最終的にフランス・パリの控訴院が、延命医療再開を決定したのだ。国連の「障害者の権利委員会」が法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう求めていたことを尊重した形である。

 

支援者は喜びに沸いた。一方、ランベールさんの妻のラシェルさん、「あの状態でおくことはサディズム行為である」とし、「夫が逝くのを見届けることは、夫が自由の身になるのを見ることでもある。人にはそれぞれ異なった意見や信念を持つことができる。しかし何よりも、私たちをそっとしておいてほしい」と述べた。

 

そして涙を流したとされるビデオを公表したことを訴えると決めた。甥もまたインタビューに答え、「あの状態を見ているのは辛い。早く楽にしてあげてほしい」と語り続けた。

 

そして、最大の支援者である両親は、ほっと胸をなでおろし安堵し、今後も息子のために戦い続けること再度決意した。

 

今後は、ランベールさんをランス大学病院からストラスブール近くの病院に移し、身体障害者のための専門の病棟に移ることを望んでいる。

 

そこで、食事も口から食べるように切り替えていき、ランベールさんが生きることを後押し、適切なケアを受けてもらいたいと願っていると言う。

 

国連の判断は、最低6か月かかる。数年かかる可能性もある。それは、法、医学、倫理、哲学、宗教、愛情などが複雑に絡み合い、全ての人が納得する解答を見つけるには非常に困難な状況の中、最終ともいえる判断が下されると言えるかもしれない。

 

ここで出される結論は今後の議論にも大きな影響を与えることになるだろう。しかしながら、その結果が本当にランベールさん本人が望んでいることであったかどうかは、知る由はない。【523日 Japan In-depth

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何回も言うように、何とも言い難い問題なので、単に経過の紹介だけ。

 

人間の生死の話は難しすぎるので、最後にペットの話を。

亡くなった飼い主の遺言で、元気なペットが安楽死させられたという話題

 

****「愛犬と一緒に埋葬を」 元気だった犬、遺言に従って安楽死 米****

 米バージニア州で、自分が死んだら愛犬を一緒に埋葬してほしいという故人の遺言に従って、元気だった飼い犬が安楽死させられた。

 

シーズーのミックス犬「エマ」は、飼い主の女性が死去したことを受けて3月8日に同州チェスターフィールドの保護施設に預けられた。

 

同施設はそれから2週間の間、遺言執行者と交渉を続け、エマを譲り受けて里親を探したいと申し出ていた。この犬であれば里親は簡単に見つかると判断していたという。

 

しかしチェスターフィールド警察によると、遺言執行者が3月22日にエマを引き取るため同施設を訪れた。施設側は、エマを譲渡してほしいと再度持ちかけたが、遺言執行者は応じなかった。

 

エマは地元の動物病院へ連れて行かれて安楽死させる処置が行われ、バージニア州の施設で火葬された。骨壺(こつつぼ)に収められた遺灰は遺産管理人に返還された。

 

飼い主とペットを一緒に埋葬することが認められるかどうかは、州によって異なる。バージニア州では2014年に合法化され、人とペットの合同埋葬区画を設けることが可能になった。

 

ただし、合同埋葬区画は明示が義務付けられ、同じ空間に人とペットを埋葬することは認められていない。

 

州によっては、飼い主の遺骨をペットの墓に埋葬することや、ペットを飼い主と一緒に家族の墓に埋葬することを認めている。

 

米獣医師協会によれば、バージニア州の法律では、資格を持った獣医師などが動物を安楽死させることを認めている。ただし、健康に問題のないペットの安楽死に応じる獣医を見つけることは難しいかもしれない。【523日 CNN

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遺言執行者としては、法的に遺言をそのまま実行しなければならない・・・ということなのでしょう。

 

しかしながら、そもそも、元気なペットの安楽死・合葬を求める遺言自体に非常な違和感を感じます。

将来、ペットが死んだら・・・というのは、極めてノーマルな話ですが。

 

通常の契約であれば、公序良俗に反して無効とも判断されるような、そんな違和感です。

 

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欧州議会選挙  台頭が予測されている極右EU懐疑派 流動的要素も 各国国内政治への影響

2019-05-24 23:01:33 | 欧州情勢

(【5月23日 WSJ】 あくまでも「予想」です。)

【これまでになく注目される欧州議会選挙 躍進が予想されるEU懐疑派は内からの改革を目指す】

周知のように欧州では23日~26日に欧州議会選挙が加盟各国ごとに行われています。

 

従来は親EU的な中道右派と中道左派のグループで過半数を占めていたため、欧州理事会の決定の追認機関として、その存在はあまり注目されることはありませんでしたが、今回の選挙では(親EU勢力全体では多数を維持するものの)中道両グループだけでは過半数を割り、EUに懐疑的な極右やポピュリズム勢力が3分の1程度の議席を獲得するのでは・・・との予測から、例年になくその行方が注目されています。

 

****【欧州議会選】Q&A 民意反映へ権限拡大 欧州議会、影響力増す****

(中略)

 Q 欧州議会とは?

 A EU機関の一つで、EUの立法を担う独自の議会だ。定数は751(英国離脱後は705)で、任期は5年。加盟国の有権者は、各国内の議会とは別に、欧州議会議員を直接選挙で選出する。本会議は原則年12回、フランス・ストラスブールで開かれる。

 

 Q 役割は?

 A EUでは加盟国首脳が集う「欧州理事会」(通称・EU首脳会議)が政治レベルの最高機関で、各国担当閣僚の「閣僚理事会」が実際の政策を決定する。そのための予算、法律、政策の立案・執行を担うのが「欧州委員会」。欧州議会は予算案や法案を閣僚理事会と共同で承認する。

 

 Q どれほど重要か

 A 欧州議会はかつて欧州委の政策を事実上追認するだけだったが、1979年に直接選挙を導入。EUの運営に民意を反映させるため権限が拡大され、今ではほとんどの政策分野の法案に欧州議会の承認が必要だ。法案提出権はないが、修正要求など大きな影響力がある。欧州委の人事にも関与し、制度上は総辞職させることも可能だ。(後略)【521日 産経】

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EU懐疑派は、イギリスのEU離脱の混迷を目の当たりにして、従来のようなEU離脱ではなく、(リスクが少なく、EU不満層に受け入れられやすい)EU内にとどまってEUを内側から(EU統合を弱め、各国主権を強める方向で)改革するとの戦略に転じています。

 

それだけに、EU懐疑派の勢力が拡大することで、今後のEU運営は大きく影響される可能性がでてきています。

 

****EU懐疑派が台頭へ、欧州議会選が映す内憂 ブレグジットより深刻か*****

域内にとどまりながらEUに抵抗する路線

 

英国が欧州連合(EU)離脱に向けた対応でつまずく中、EUにとってより深刻な混乱をもたらしかねない状況が生まれつつある。他のEU懐疑派が域内にとどまりながらEUと戦う構えを見せているのだ。

 

EUの諸機関内でのこうした政党の台頭は今週の欧州議会選挙で確認されるだろう。議会選の結果は、欧州政治の既成勢力が反乱勢力との共存の道を探らざるを得ない時代の幕開けを告げることになりそうだ。

 

「過激主義者とは、ブリュッセルで欧州を20年間支配してきた人々のことだ」。イタリアの極右政党「同盟」のマッテオ・サルビーニ党首は18日、ミラノ中心部のドゥオモ広場で大勢の聴衆を前にこう述べた。「われわれは過去しか見ていない官僚抜きで未来をつくりたい」と語り、EUの変革を約束した。

 

サルビーニ氏は最近、イタリアの内相として、地中海で難民の救助に当たるEU艦船の行動を骨抜きにすることで、自らの移民排斥の姿勢を強く打ち出した。EUの当局者らは、この出来事が共通政策を損なう前例となることを恐れている。

 

内部から抵抗するというEU懐疑派の戦略には、ブレグジット方式の実験はしないことを示すことで、リスクを避けがちな欧州の有権者を安心させると同時に、EUの方向性に不満を持つ人々にアピールする狙いがある。

 

EUにとっては、統合の深化に向けたいかなる動きも、EU機関内およびローマ・ブダペスト・ワルシャワなどにある加盟国政府から強硬な抵抗に遭うことを意味する。共通の政策で合意したり一部の既存規則を維持したりすることが一層困難になりかねない。

 

こうした衝突は欧州大陸における政治的な分裂現象の一部であり、急速に変化する米中主導の世界で欧州が適切な対応を取るのを妨げる恐れがある。

 

アムステルダム自由大学の政治学者キャサリン・デフリース氏は「EUは今後かなりの間、行き詰まり状態になるだろう。EU予算やユーロ圏の改革、気候変動について大きく前進することは難しくなる」と述べる。

 

欧州の統合は、かつては何十年にもわたりエリートによる政治プロジェクトであり続け、党派を超えた幅広い同意を得ていたため、選挙の争点になるほど有権者の関心を高めることはまれだった。

 

だが欧州が経済や難民を巡るさまざまな危機に直面した10年間で状況が変わった。EUを有益とみなすか、少なくともEUがない欧州よりは好ましいと考える有権者と、EUが各国の問題の原因になっていると批判する有権者とに二分されてきたのだ。

 

とはいえ今週の欧州議会選では、英国以外の約45000万人のEU市民の中でブレグジットへの追随を望む人はほとんどいないことが示されるだろう。これは膠着(こうちゃく)状態のブレグジットの主要な「遺産」といえる。

 

このため既成政治に反対する政党は、新たな形でのEU懐疑主義を生み出さざるを得なくなった。EU加盟国としてとどまりながら、EUを支配するエリートやその主要政策の一部を攻撃するという路線である。

 

仏極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首は2326日に行われる欧州議会選前の遊説で、「われわれは今、欧州を内部から徹底的に変革する機会を手にしている」と述べた。

 

EU派の既成政党は、定員751議席の欧州議会で明らかな過半数を維持しつつも議席数を減らすと予想されている。

 

かつてEU加盟諸国において優勢を占め、欧州規模の「欧州人民党(EPP)」などを形成していた中道右派と中道左派の各党は勢いを失い、親EU派のリベラル政党や新興のグリーン政党のほか、右派や左派の反既成政党グループに票を奪われつつある。

 

世論調査会社のカンターの予測によれば、選挙後の欧州議会ではEU懐疑派の政党が最大3分の1の議席を占める可能性がある。

 

この結果、中道派グループは3党か4党で連合を形成することを余儀なくされ、EUの複雑な意思決定過程がさらに混乱する恐れがある。【523日 WSJ】

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【EU懐疑派躍進には未だ流動的要素も オランダでは親EU勝利 オーストリア極右政党のロシア疑惑は影響するのか?】

もっとも、選挙はふたを開けてみないとわからないものでもあり、「欧州の有権者の殆どは現状に不満なのであり、それがすべてポピュリズムに向かうとは限らない、リベラル派の支持に行く場合もあり、まだ有権者の7割は態度を決めていないので、事態は極めて流動的である」(在ウィーン人間科学研究所のイヴァン・クラステフ氏)といった見方もあります。

 

実際、すでに選挙が行われたオランダでは予想を覆す結果も出ています。

 

****欧州議会選、オランダは親EU政党が予想外の勝利へ=出口調査****

欧州議会選の投票が23日にオランダで実施された。出口調査によると、欧州委員会のティメルマンス第1副委員長の労働党が欧州連合(EU)懐疑派を下し、予想外の勝利を収める見通しだ。

出口調査によると、親EUの労働党は得票率18%で首位。世論調査でルッテ首相率いる中道右派と首位を争っていた極右の新興政党「民主主義フォーラム」は投票率11%で3位となる見通しだ。

世論調査では、労働党は善戦しても3位に終わるとみられていた。

次期欧州委員長のポストを巡り欧州議会の中道左派系の有力候補でもあるティメルマンス氏は出口調査の結果について、「欧州の他の中道左派に追い風となることを望む」と述べた。(後略)【524日 ロイター】

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ポーランドでは、「親EU」の中道右派「欧州人民党」(EPP)に所属しながらも、極右・ポピュリズム勢力と並んで「反EU」のもうひとつの核ともなっている与党「法と正義」が教会スキャンダルで急速に支持率を落としているとか。

 

****聖職者の子供虐待で、ポーランド右派の支持率急落****

23〜26日に投開票される欧州連合(EU)の欧州議会選挙で、反EUを主張するポーランドの右派与党「法と正義」(PiS)の支持率が急落している。

 

カトリック司祭による子供への性的虐待を追ったドキュメンタリーが話題となり、同国カトリック界と密接な関係にあるPiSのイメージダウンにつながったためとみられる。

 

このドキュメンタリーは今月11日に動画サイト「YouTube」に投稿された無料動画で、タイトルは「誰にも言うな」。1週間余りで再生回数が2000万回を超えた。複数の被害者が登場し、8歳の時に被害にあった女性(39)が当時の司祭に会って事実関係を問いただす場面などが映されている。

 

ドキュメンタリーの公開後、PiSの支持率は急激にダウン。4月23〜26日の調査では約40%だったが、今月14〜16日の調査で約33%にまで下落。親EUの野党連合(約44%)に大きく差をつけられている。

 

ポーランドは国民の9割がカトリックだが、司祭の多くは右派のPiSを支持する。そのためドキュメンタリーによる「告発」は、PiSへの反感につながったようだ。

 

PiSは今月16日、子供に対する性的虐待を厳罰化する法案を下院で可決させるなど支持回復に躍起だが、欧州議会選への影響は避けられないとみられる。欧州議会選は、ポーランドでは26日に投開票される。

 

聖職者による子供への性的虐待は世界各国で発覚。ポーランドのカトリック教会は今年3月、1990〜2018年の間に625人の子供から被害報告があったと発表した。【524日 毎日】

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また、オーストリアで発覚した極右政党とロシアのつながり(上記のポーランド「法と正義」が西欧的民主主義とは相いれない反EU的立場ながら、それでも極右勢力と一線を画しているのは、ロシアに強硬姿勢をとるポーランドと、ロシアの影がちらつく極右政党の違いを反映したものです)は、欧州議会選挙での極右勢力全体へ影響する可能性もあります。

 

****欧州を震撼させた極右の汚職スキャンダルとその「黒幕」*****

オーストリアの極右政党、自由党を巻き込むスキャンダルが発覚しヨーロッパを震撼させている。

 

オーストリアでは、スキャンダルの張本人ハインツ=クリスティアン・シュトラーヒエ副首相兼自由党党首が辞任、与党を組んでいた自由党と国民党の連立が崩壊した。

 

衝撃はヨーロッパ中に広がり、ポピュリスト政党とロシアの不透明な関係が改めて指摘され、23日から始まった欧州議会選挙への影響が懸念されている。

更に、そもそも誰が、何の目的でビデオを隠し撮りしたのか、事実は依然闇の中だ。

 

ロシアが持ちかけた「黒い取引」

シュピーゲル誌と南ドイツ新聞が518日明らかにしたビデオ録画は、2017724日夕刻に撮影された。地中海の保養地イビサにある別荘で、シュトラーヒエ氏(当時、野党自由党党首)、ヨハン・グデヌス氏(現、自由党議員団長)が、プーチン大統領に近いとされるロシア新興財閥イゴール・マカロワ氏の「姪」アレーナ・マカロワ氏と6時間にわたり密談した様子を隠し撮りしたものだ。

 

ビデオの中で、新興財閥の「姪」は、出所を明らかにできない資金約2億ユーロをオーストリアに投資する予定である旨、同国の有力紙クローネン・ツァイトゥング紙の株式50%を取得する意向であり、そこで自由党に有利なキャンペーンを展開すれば同党が3週間後の総選挙で有利になる旨を述べつつ、その見返りを期待したいとした。

 

これに対しシュトラーヒエ氏は、「姪」がクローネン・ツァイトゥング紙を買収し、「選挙で自由党を一位にしようとでもいうのなら話に応じたい」としつつ、公益法人を設立しそれを通し資金提供を行えば所管官庁への申告はいらない旨、現在シュトラバークという建設会社が受注している公共事業は、自由党が政権に参加すれば、それ以上の受注が認められることはなく、その分を「姪」に廻すことが可能である旨を伝えた。

 

但し、会談では何らかの具体的な約束を交わすまでには至らなかった。

 

欧州全土に広がった「疑惑」の眼

ビデオの公表を受け、シュトラーヒエ副首相は18日、直ちに副首相及び自由党党首を辞任した。セバスティアン・クルツ首相は翌19日、ファン・デア・ベレン大統領と善後策を協議、大統領は今秋にも総選挙を行うべきであると主張した。

 

続いて20日、クルツ首相は捜査及び情報機関を管轄するヘルベルト・キックル内相を更迭したが、自由党はこれに反発、同日、同党の全閣僚引上げで対抗し、ここに、国民党と自由党による連立が、発足以来1年半足らずで崩壊することとなった。

 

衝撃は直ちにヨーロッパ中に走った。ポピュリスト政党とロシアの不透明な関係はかねてから噂されていたが、ここに、資金供与と公共事業の見返りという生々しい形で明らかになったのだ。更に、衝撃的だったのは、ロシアが欧州の報道機関に手を回そうとしていたことだ。

 

早速、欧州議会のCDUCSUグループ代表ダニエル・カスパリー氏は、同様の事例は「ドイツのための選択肢(AfD)」にもある、AfDは出所不明な選挙資金を受け取っている、と糾弾した。これに対しAfDの共同代表ジェルク・モイテン氏は、今回の事件は自由党が犯した大きな間違いであり、自由党の個別の問題だ、と反論した。

 

危険を嗅ぎ取っていた欧米諸国

シュトラーヒエ氏とロシアとの関係は、古く同氏が自由党党首に就任した2005年頃まで遡る。その後、同氏はロシアとの緊密な関係を維持してきたが、2016年、自由党とプーチン大統領の党である「唯一のロシア」との間に友党関係を締結するに至った。党運営、立法の仕方等に関し情報交換することが謳われた。

 

2018年、カリン・クナイスル外相の結婚式にわざわざプーチン大統領が出席、花嫁(クナイスル外相)とダンスを踊った写真が公開されたことは記憶に新しい。

 

クルツ首相は、自由党とロシアのそういう緊密な関係を承知で、同党に内相や国防相といった国の安全にかかわるポストを提供した。秘密情報機関も当然、自由党が握った。当時、クルツ首相のこういう対応に批判が集中したが、同首相は自由党との関係を優先し押し切った。

 

しかし、20182月、内務省が憲法擁護テロ対策庁の捜索を強行したことを受け、欧米の情報機関はオーストリアとの情報共有見直しに踏み切った。当時、同庁は、ロシアによるオーストリア内政への関与を調査していた。欧米諸国は自由党とロシアのただならぬ関係を嗅ぎ取ったのだ。

 

「欧州議会選挙」への影響は?

欧州議会選挙の直前にビデオが公表されたことは、選挙に何らかの影響が出ること必至である。欧州議会選挙は通常あまり関心をひかないが、今回に限っては欧州全域に猛威を振るうポピュリスト政党がどこまで票を伸ばすか、全世界がかたずをのんで見つめている。(後略)【524日 WEDGE】

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この「極右・ロシアコネクション」がどの程度選挙に影響するかについては意見が分かれるところのようです。

 

 

なお、一体誰が、どういう思惑でこの時期にビデオを暴露したのか、自由党シュトラーヒエ副首相は罠にはめられたのか・・・は、今のところ謎です。

 

【各国国内政治に影響する選挙結果 イタリア・フランス・ドイツ・イギリスの場合】

今回選挙は、各国政治事情と連動して、各国の国内政治にもいろいろな影響をあたえそうです。

 

詳しく取り上げてきるとキリがないので、注目点のみいくつか。

 

イタリアでは、第2与党の右派「同盟」(党首は各国極右勢力統合の中心的存在となっているサルビーニ副首相)が、第1与党の左派「五つ星運動」に対し支持率で大きくリードしており、与党両党の確執が深まっています。

 

サルビーニ副首相は否定していますが、選挙後の連立崩壊、右派政権を目指して解散・総選挙に向かう可能性も取り沙汰されています。

 

フランスでは、欧州統合を主導するマクロン大統領の与党「共和国前進」と、反EU極右勢力のルペン氏の「国民連合」の激しい接戦となっています。

 

マクロン大統領は勝てば、各地でEUに懐疑的な勢力の躍進が見込まれる中、「防波堤」として存在感を発揮し、今後のEU統合を主導する形にもなります。

 

負ければ、国内的だけでなく、EU内においても権威を失墜することにもなります。

 

これまで歴代大統領は欧州議会選挙には関与してこなかったとのことですが、マクロン大統領は全面的なテコ入れに動いています。一方、ルペン氏側にはアメリカでトランプ政権を誕生させたバノン氏が応援に駆け付けています。

 

ドイツでは、EU懐疑派で国内最大野党「ドイツのための選択肢」(AfD)躍進が予測されるなか、メルケル与党が惨敗すれば、このところ求心力を失ってきたメルケル首相の処遇に発展する可能性があります。(ドイツ首相を辞して、EU大統領に・・・という話も出ていますが、本人は否定)

 

また、社民党の負けっぷり如何では、連立離脱・大連立瓦解の可能性も。

 

イギリスでは、メイ首相は辞任に追い込まれたようですが、EU離脱運動を主導したファラージ氏率いるブレグジット党が勝利することが予想されています。そうなると、ブレグジットをめぐって(これまでももたつくイギリスに批判的だった)フランスの対応が「さっさと出ていけ!」と更に硬化する可能性も。

 

いずれにしても、今回欧州議会選挙は、EUおよび欧州各国の情勢に大きな影響を与える注目すべき選挙となっています。

 

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インド  「世界史上最大の規模」の総選挙で与党「圧勝」 残された課題も

2019-05-23 22:45:17 | 南アジア(インド)

(インド・ベンガルール(バンガロール)で23日、モディ首相のマスクをかぶり、総選挙での与党インド人民党の勝利を喜ぶ支持者ら【523日 朝日】)

 

【予想以上の与党「圧勝」】

「世界最大の民主主義国」インドの「世界史上最大の規模」の総選挙は、4月11日から約6週間かけて地域ごとに7回に分けて行われました、日本の約9倍の国土に投票所が約100万カ所設置されたとか。

 

候補者は8000人、有権者は9億人。選挙に要する総費用は70億ドル(7700億円)とも。

正規の選挙運営費用以外に以下のようなものも。

 

もちろん違法ですが、多くの候補者は票獲得のため現金や景品を配布するとか。景品の中にはニワトリも。

押収された現金・景品は540億円相当。

 

そのほか、対立政党の有力候補を妨害するために同じ名前の候補者を擁立するのに要する費用、防弾仕様の特注車、対立政党の選挙活動を妨害するためにチャーター機やヘリを早い段階で事前に押さえてしまうための費用・・・・。【522日 BBCより】

 

とにもかくにも選挙が終了し、その開票が23日に全国一斉に行われましたが、こちらは電子式のため即日で結果がでます。

 

そしてその結果は、報じられているようにモディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)が予想以上の「圧勝」を果たしたようです。

 

****与党圧勝、モディ首相続投へ=「共に繁栄を」と宣言―インド総選挙****

5年の任期満了に伴うインド下院(定数545)選は23日、開票され、地元メディアによると、与党・インド人民党(BJP)が単独で過半数議席を確保し、圧勝した。総選挙での勝利で、ナレンドラ・モディ首相(68)の続投が確実となった。

 

モディ氏はツイッターに「われわれは共に成長し、繁栄し、強いインドを築く。インドは再び勝利する」と投稿し、勝利を宣言した。

 

BJPは、2014年の前回総選挙で、西部グジャラート州を州首相として経済発展させたモディ氏の人気を背景に単独過半数の282議席を獲得し大勝した。

 

BJPは当初、今回は議席を減らすものの与党連合として過半数を確保すると報じられていたが、インドメディアによれば、単独でも前回を上回る議席を獲得する見通しとなった。

 

インドはモディ氏の就任以降、毎年約7%の経済成長を遂げてきた。モディ氏は16年、汚職や不正蓄財撲滅を目指し、高額紙幣の廃止を発表。17年には、物流の円滑化を目指し、州ごとに異なっていた間接税を統一するなど都市部の商工業者を中心に支持を集めた。

 

経済成長から取り残された地方部などで一時、支持を減らしたが、今年2月に48年ぶりに隣国の宿敵パキスタンを空爆し、強い指導者像を見せることで巻き返した。

 

与党連合優勢の報道を受け、23日の主要株価指数SENSEXは過去最高値を更新。出口調査結果が報道される前の今月17日の終値と比べ、約6%上昇した。

 

最大野党・国民会議派は、3人の首相を輩出した名門出身のラフル・ガンジー総裁(48)を中心に、農産物価格の低迷に悩まされている地方部で支持固めを図った。

 

ただ、国政レベルでの選挙準備が遅れ、「早い時期から信頼できる政策目標を掲げ、分かりやすく説明すべきだった」(政治評論家)と指摘された。ラフル氏がモディ氏に代わる首相候補として存在感を示すこともできなかった。【523日 時事】 

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【昨年来の退潮傾向を「ヒンズー至上主義」全開で立て直し】

20181214日ブログ“インド  総選挙前哨戦の州議会選挙で与党敗北 宗教を前面に押し出して態勢立て直し

2019210日ブログ“インド  国内外に批判も、モディ首相の北東部訪問  ばらまき予算に統計不正、露骨な総選挙対策

でも取り上げたように、「毎年約7%の経済成長」とはいいつつも、日用品価格の上昇する一方で農産物価格は下落し、農民の生活が困窮するなど、必ずしも順調ではなく、前哨戦の州選挙では5州で全敗、退潮が明らかになっていました。

 

失業者数も高いレベルにあります。

 

****インド、201618年に500万人以上が失業=調査****

インドのベンガルールにある私立アジム・プレムジ大学が16日発表したリポートで、2016─18年に職を失ったインド人は少なくとも500万人に達し、都市部に住む若い男性が最も打撃を受けていることが分かった。

インドでは、5月19日に総選挙が終了する予定で、モディ政権は雇用を含む経済業績の擁護に躍起となっている。

リポート「2019年、インドにおける労働の現状」の筆頭執筆者は「2016年以降、高等教育を受けた人の失業が増加しているが、それに加えて、相対的に教育水準が低く(非正規の可能性が高い)人の失業も増加し就業機会が狭まっている」と述べた。

ただリポートは、この期間に創出された雇用は明らかにしていない。

2016年11月にモディ首相が脱税抑制と電子取引促進のため高額紙幣を突然廃止したことで中小企業が打撃を受け、レイオフの波が発生した。さらに、17年に「物品サービス税(GST)」が導入されると、一部企業にとって困難が増幅する結果となった。

リポートによると、失業者の大半は高等教育を受けた20─24歳の若年層。リポートは「たとえば都市部の男性の場合、この年齢層は労働年齢人口の13.5%だが、失業者全体に占める比率は60%に上る」としている。

公式統計で過去5年間の経済成長率が7%前後となっているにもかかわらず、モディ首相は数百万人の若年失業者の雇用に十分な措置を講じていないと批判されている。

ビジネス・スタンダード紙は2月、政府が公表を拒んだ公式調査として、2017/18年度の失業率は少なくとも過去45年間で最高水準に達したと伝えた。

シンクタンクのインド経済モニタリングセンター(CMIE)がまとめたデータによると、今年2月の失業率は7.2%と、2016年9月以来最高に上昇。前年同月の5.9%からも上昇した。【418日 ロイター】

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そのため、モディ首相・与党は総選挙に向けた態勢立て直しに躍起となり、そこで用いられた手法が、それまでも顕著だった「ヒンズー至上主義」を更に加速させることで多数派ヒンズー教徒有権者にアピールする手法でした。

 

****インド与党の「ヒンズー至上主義」拡大 「差別」「暗殺」不寛容な社会に****

4月11日に投票が始まったインド総選挙(下院議席545)は今月23日の一斉開票まで続く。インドは人口13億人を超える「世界最大の民主国家」。

 

だが、2014年の前回総選挙で誕生したヒンズー至上主義のモディ政権下では、多様な価値観への不寛容さが広がった側面も大きく、社会の分断が深まっている。

 

17年9月5日午後8時過ぎ。インド南部の大都市ベンガルールの閑静な住宅街に4発の銃声が響いた。自宅ドア前で銃弾に倒れたのは、著名なジャーナリストでヒンズー至上主義やモディ政権を批判してきたガウリ・ランケシュさん(当時55歳)。

 

事件では至上主義者16人が逮捕され、容疑者の関係先からはガウリさんを含め至上主義に批判的な計34人の著名な俳優らが掲載された複数の「暗殺リスト」も見つかった。この一件は至上主義者の活発化を象徴する出来事の一つとされている。

 

「ヒンズー至上主義者はいつの時代も活動してきたが、決して社会の『主流』ではなかった。だが今は大手を振って活動している」。ガウリさんの妹で映画監督のカビタさん(54)はモディ政権発足以降の社会の風潮をこう説明する。

 

ガウリさんは殺害前からインターネットなどで「非愛国者」だとして中傷されてきた。カビタさんは言う。「宗教、言語、文化といった多様性や寛容さがインドの本質だが、異なる意見を許さない風潮が広がっている。姉は不寛容さが進む社会に殺された」

 

17年には南部ケララ州で中央政府が、ヒンズー至上主義に批判的な映画の上映を中止させる事態も起きた。ある大手紙記者は「政府やヒンズー至上主義の批判はもちろんできる。だがどこで襲われるか分からない怖さがあり、自主規制する傾向にある」と話す。

 

モディ氏のインド人民党が支配する一部の州では歴史教科書の書き換えも進む。世俗主義を重視した初代首相ネールの記述が削除され、ヒンズー至上主義者の記述が加わるなどした。また一部の大学では教員が政府からの圧力や嫌がらせを懸念し、自由に研究テーマを選べない状況も出ている。

 

モディ政権は経済成長を進めるための改革路線と同時に、イスラム教徒以外の移民にだけ国籍を付与する法案の成立を目指すなど「差別的」な政策も進める。

 

ガウリさんの友人のコラムニスト、シバ・スンダル氏は「モディ政権は改革が難航すると、ヒンズー教徒の宗教感情に訴えて求心力の維持を図ってきた」と指摘。「政府が差別的な政策を進めれば、至上主義者が勢いづくのは当然だ」と批判した。

 

 ◇政権支える実働部隊「民族奉仕団」

与党インド人民党(BJP)の支持基盤を広げる実動部隊となっているのがヒンズー至上主義団体・民族奉仕団(RSS)だ。RSSがBJPを生み、政権を握ったBJPがRSSの勢力拡大を支える関係にある。

 

「母なるインドに勝利を!」。3月下旬の日曜朝7時。中間層が多く住むニューデリー郊外の公園に男性たちの大きな声が響き渡った。5歳〜60歳代の約30人が、ヨガやカバディ(インド伝統スポーツ)に取り組む。これは「シャーカー(支部の意味)」と呼ばれ、RSSが毎日2回行う訓練だ。

 

肉体訓練の後は神話や歴史についての講話や、政治や社会問題を議論し、「ヒンズー文化や国家への忠誠心を学び国民にふさわしい人物を作る」(RSS幹部のアルン・クマール氏)。シャーカーの数はモディ政権発足時の約4万から今年には6万近くまで増えた。

 

「仕事に忙殺され生きる意味を見失っていたが、RSSはそれを教えてくれた」。IT技術者のジャンク・ラジナジャニアさん(34)は15年にRSSに入った。

 

コラムニストのシバ・スンダル氏は「インド人の精神はいまだに宗教的。西洋化が進む中、中間層の若者が抱える疑問や不満、不安感をRSSがすくい上げている」と見る。

 

RSSは1925年に発足。インドを支配したイスラム王朝や英国を「よそ者」とし、古来のヒンズー文化を基盤とする強固な国家の形成を目指す。51年には政治部門としてBJPの前身政党を設立。産業界などさまざまな分野に事実上の傘下団体を持つ。モディ氏らBJP中枢はRSS出身だ。

 

こうしたヒンズー至上主義の拡大の中で進むのが、モディ政権の支持不支持を巡るインド社会の二極化だ。

 

著名な政治学者のカマル・ミトラ・チェノイ氏は「前回総選挙でモディ氏を支持した人の多くは経済成長や汚職対策を期待した。至上主義者がここまで勢いづくとは思っておらず、警戒感も広がっている」と説明。「建国の父ガンジーが目指した社会の統合はより遠のいている」とも強調した。【517日 毎日】

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今回選挙結果を見る限り、モディ首相のヒンズー至上主義重視は奏功したようです。

ただ、それがインドの将来にとっていいことかどうかは大いに疑問ですが。

 

【政治からも排除されがちな最下層ダリットやイスラム教徒】

冒頭【時事】にもあるように、宿敵パキスタンに強い姿勢で臨む姿を国民にアピールできたことも勝利に大きく影響したと思われます。

 

3月末にパキスタンを旅行したましたが、インド・パキスタンの間の衝突ついてパキスタンの方と話をすると「まあ、モディ首相は総選挙前だからね・・・」と早期の改善は見込めないとの認識を示していました。

 

冒頭に「世界史上最大の規模」の総選挙と書きましたが、そこから排除されている人々が存在することは、インド社会の根深い問題です。

 

****根強いカースト、総選挙に影 有権者9億人、インド23日開票****

(中略)

 発言力増す最下層、優先制度の功罪

「モディ首相は上位カーストや金持ちのためにしか働かない。ダリトのためには何もしなかった」。インド北部ウッタルプラデシュ(UP)州ジャウンプル。カースト社会で最下層のダリトでつくる大衆社会党(BSP)のマヤワティ党首(63)がだみ声で訴えると、40度を超える炎天下で支持者約3万人が両手を上げ「マヤワティ万歳」と応じた。(中略)

 

ニューデリー郊外のスラムで育ったマヤワティ氏が頭角を現したのは、小学校教師をしながら法律の勉強をしていた1977年。政府の集会で「ハリジャン」(ガンジーが使った言葉で「神の子」の意味)を連発した閣僚に対し、マヤワティ氏が壇上に行き「それなら上位カーストは悪の子なのか」と鋭く批判して注目された。84年のBSP設立に参加。UP州首相を計4期務め、「ダリトの女王」と呼ばれる。

 

同州は人口2億人を超え、最大の80議席を選出する重要州だ。今回マヤワティ氏は、ダリトの上に位置する「その他後進諸階級(OBC)」のカースト、ヤダブを中心につくる社会主義党(SP)とともに下位カースト連合を24年ぶりに組み、モディ氏への批判を強める。(中略)

 

ダリトの発言力が高まってきた背景には、インド政府の「留保制度」がある。過酷な差別を受けてきた下位カーストや少数民族に対し、政府が公務員採用や大学進学で設けた優先枠のことだ。

 

選挙では留保選挙区も全国に84カ所ある。選挙区内にはダリトでない有権者も住むが、立候補できるのはダリトだけだ。

 

「ダリト優遇政策はもうやめるべきだ。十分彼らは利益を享受してきた」。留保選挙区があるバラバンキに住む弁護士アビシェク・ミシュラさん(22)は、投票を終えてから不満を語った。自身はカースト最高位のバラモンの出身だ。

 

留保制度には、上位カーストから「逆差別だ」との根強い批判があり、抗議行動や暴動も起きている。比較的上位にあるカーストの人々が自分たちに優先枠を与えるよう求める抗議も相次いでいる。

 

ニューデリーにある民間機関、政策研究センターのラフル・バルマ研究員は「留保選挙区を設けなければ、ダリトで立候補できる人はほとんどいない。これは必要な制度だ。一方、カーストに基づいた政党や選挙区が人々のカースト意識を固定し、社会を分断している側面もある」と話す。

 

 有権者登録に壁、1億人投票できず

北部バラバンキの投票所入り口で6日、主婦ラージ・クマリさん(58)は投票を断られた。名前が有権者リストになかったためだ。インドでは18歳以上の全ての人が有権者として登録する必要があり、その後リストに名前が記され、投票できる。「教育のない私たちに役所の手続きは難しい。代行業者もあるが、払えるお金はない」と話す。

 

民間シンクタンクなどによると、本来記載されるべき有権者でリストに名前がない人は推計で約1億2千万人に上っている。女性やイスラム教徒、下位カーストの人々に多い傾向があるという。

 

クマリさんもダリトの出身。インドの非識字率は約3割に及び、十分な教育を受けられなかった下位カーストの非識字率は特に高い。様々な書類を求められる行政手続きは難しく、役所で賄賂を要求されることもある。

 

「女性は結婚で名字が変わったり、転居したりしても登録し直さない人が多いのではないか」。選挙管理委員会の広報責任者シェイパリ・サラン氏はそう推測する。「選管は毎年、有権者の名前がリストにあるかどうかの確認を各自に求めている。問題は投票日前にそれをしない有権者にある」との立場だ。「有権者数の多さも管理が難しい原因の一つ」とも話す。

 

また、インドでは子の出生後の届け出が徹底されず、管理も行き届いていない。このため自身の身分を証明できない国民が多い。政府は貧困層を正確に把握しきれず、必要な補助金や政策が届かない。

 

そこで政府が2010年から進めているのが、指紋や眼球の虹彩(こうさい)による生体認証を使って登録する個人識別番号「アーダール」の整備だ。ヒンディー語で「基礎」を意味する。全国民に番号を付与し、個人情報を一元管理する。有権者リストの管理も簡単になる可能性がある。

 

投票を拒否される人々を救済する動きもある。ソフトウェア会社レイラブ・テクノロジーズは携帯アプリを開発。有権者リストに名前があるかどうかをアプリで確認し、ない場合は申請手続きを助ける。同社はすでに約4万人を支援したが、うち6割がイスラム教徒やダリトだったという。

 

インド経営大学院アーメダバード校のジャグディープ・チョッカル元教授は「なぜ投票拒否が相次ぐのか、選管は十分な調査も説明もしていない。インドの民主主義の信頼性を根幹から揺るがす事態だ」と話す。(後略)【522日 朝日】

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絶対的貧困が残存するなかでのモディ首相のヒンズー至上主義、成長からも政治からも排除される人々の存在といったものが、以下のようなことも生む土壌にもなるのでしょう。

 

****IS、インドに「ヒンド州」設立を主張 勢力誇示狙いか****

中東の過激派組織「イスラム国」(IS)が、インドに「州」の設立を主張した。10日に声明を出し、インド軍を攻撃したとも明らかにした。

 

ISは先月29日に、約5年ぶりに最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者だとする動画を公開したばかり。組織の衰退が進むなか、インドでの「支配領域」の保持を宣言し、影響力を誇示する狙いがあるとみられる。

 

ISは声明で、インドを「ヒンド州」と表現。北部のカシミール州でISの戦闘員がインドの「背教者の軍」と交戦し、殺害、負傷させたとしている。

 

ロイター通信によると、インドでの「支配領域」の主張は初めてだが、具体的な地域や、実際に組織化されているかは不透明だ。(後略)514日 朝日】

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なお、IS515日には「パキスタン州」の設立も表明しています。

 

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温暖化に背を向けるトランプ米政権が、中ロの北極海進出を警戒・けん制するという“支離滅裂”

2019-05-22 23:01:00 | 国際情勢

(【520日 WEDGE】 普段見慣れた地図とは全く異なるイメージがあります)

 

【ある臨界点を超えると止められなくなる「ティッピング・エレメント」】

地球温暖化の進行のなかにあっても、北極圏の温暖化は非常に速いペースで進んでいると考えられています。

 

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北極圏は世界平均と比べ、少なくとも2倍のペースで温暖化している。

 

原因のひとつは海氷や雪の融解。海氷は1990年代から減少し始め、海の面積が約260万平方キロも増えた。

 

太陽光を反射する雪や氷が減少することで、より多くの太陽エネルギーが吸収され、気温が上昇する。これは「雪氷アルベド(反射率)フィードバック」と呼ばれる。【425日 NATIONAL GEOGRAPHIC

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こうした海氷と雪の消失や永久凍土の融解という変化は、ある臨界点を超えると、その変化がさらなる温暖化を引き起こすことで、止めることができない加速度的な悪化を招く「ティッピング・エレメント」と認識されており、海面上昇等により莫大な損失を世界全体にあたえることにもなります。

 

****北極圏の温暖化による経済損失、最大7500兆円****

海面上昇から嵐の大型化にいたるまで、気候変動は金銭的な損失をもたらす可能性が高いと、以前から科学者は警告してきた。最新の研究によると、その額面はさらに跳ね上がるという。

 

今回シミュレーションが行われたのは、北極圏の温暖化。海氷が解けたり大地を覆う雪がなくなると、その表面の色は白から暗い色へと変化する。これにより太陽熱の吸収率が高まる。また、広大な永久凍土が融解し、温室効果ガスであるメタンや炭素を放出している。

 

423日付けで学術誌「Nature Communications」に掲載された論文によると、北極圏におけるこうした現象が温暖化をさらに加速させており、たとえパリ協定の国別削減目標を遂行していても、気候変動に起因する総コストは67兆ドル(約7500兆円)増える恐れがあるという。

 

ただし、気温上昇を1.5度以下に抑えるシナリオでは、コストの増加は25兆ドル(約2800兆円)に抑えられると、論文は試算している。ちなみに2016年の全世界のGDPは、約76兆ドル(約8500兆円)だった。

 

論文の主執筆者で、英ランカスター大学ペントランドビジネス持続可能性センターに所属するドミトリー・ユマシェフ氏は「北極圏では、非常に大きな変化が起きています。永久凍土の融解や海氷と雪の消失は、気候システムの『ティッピング・エレメント』と認識されています」と話す。「北極圏の温暖化が全世界に及ぼす影響を知りたいと思いました」

 

こうした気候の「ティッピング・エレメント」は、ある臨界点を超えるとさらなる温暖化を引き起こすような自然システムのこと。

 

(中略)いったん臨界点に達すると、止めることはほぼ不可能で、いわゆる「ホットハウス・アース」状態に陥る危険がある。ホットハウス・アース状態では、世界の平均気温が現在より45度高くなり、北極圏などでは、気温上昇の平均値が10度に達するという。(後略)【同上】

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【経済的にも軍事的にも注目される北極海 その中心にはやはり中国が】

もちろん、悪影響ばかりではなく、これまで凍った海で利用価値がほとんどなかった北極海が、海氷の融解で利用できるようになるという好都合な話もあります。

 

あまりにも大きすぎて認識するのも困難なかなり先の危機的状況よりは、とりあえず認識が容易な比較的近い時点での好影響のほうに、各国の関心は惹かれるようです。

 

航路としての利用価値、膨大な資源といった経済的側面、さらには、これまで凍ているという前提で組み立てられていた安全保障の面でも、今後は海軍を展開することが可能になるということでの軍事的利用価値・・・・今、北極海に沿岸国・関係国の熱い視線が向けられています。

 

そうした中でも、中心的なプレイヤーとなっているのは、ここでも(沿岸国でもない)中国です。

中国は、世界戦略「一帯一路」を北極圏に拡大し「氷のシルクロード」を建設すると表明しています。

 

****<中国>初の「北極白書」 権益確保へ強い意欲****

中国政府は26日、北極開発の基本政策をまとめた初の「白書」を発表した。

 

白書は「中国は北極の重要な利害関係者」と宣言。習近平国家主席が提唱する経済圏構想「一帯一路」を北極圏に拡大し「氷のシルクロード」を建設すると打ち出した。

 

北極圏は地球温暖化によって解氷が進み、北極海航路が新たなシーレーン(海上交通路)となる可能性が出ている。

 

中国は北極圏に面していないが、白書は「最も接近する国の一つであり、中国の気候や経済利益に関係する」と主張。「責任を負う大国」として「平和安定と持続可能な発展に貢献する」とした。

 

習指導部の「大国外交」路線を色濃く反映し、権益確保への強い意欲を示した形だ。

 

一方で、習指導部は「海洋強国」を掲げて海空軍を増強しており、国際社会からは北極圏進出を警戒する声も上がる。

 

だが、孔鉉佑外務次官は26日の記者会見で「我々に他の意図があるとの懸念は全く必要ない」と反論。ロシアや北欧諸国との連携に加え、2016年に始まった「北極に関する日中韓ハイレベル対話」を具体例に、国際協調路線を歩んでいる点を強調した。【126日 毎日】

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中国は、アメリカ、ロシア、ノルウェー、デンマーク、カナダなどの沿岸国を加盟国とする北極評議会にもオブザーバー国として長年参加し、北極開発のルール作りで影響力を高めようとしています。

 

「我々に他の意図があるとの懸念は全く必要ない」とのことですが、軍事的展開も急ピッチで進んでおり、中国を警戒するアメリカが神経をとがらせています。

 

****中国軍、北極への進出積極化 潜水艦展開も=米国防総省****

米国防総省は、中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国人民解放軍が北極圏での展開を活発化させていると指摘した。核攻撃への抑止力という位置付けで潜水艦を派遣している、としている。

(中略)中国は、北極圏地域の国でないにもかかわらず、同地域での活動を活発化させ、2013年には北極評議会(AC)のオブザーバー国となった。こうした動きに、北極圏国(米、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシア)は、将来的に北極圏に軍を展開させる可能性など、中国の長期的な戦略目的に懸念を抱いている。

ポンペオ米国務長官は、6日にフィンランドで開幕する北極評議会の会合に出席することになっている。

国防総省の報告書によると、デンマークは、中国のグリーンランドへの関心を懸念。中国は、グリーンランドに研究施設や衛星通信施設の建設や、空港の改良工事などを提案しているという。

「民間の分析調査も、中国が核攻撃に対する抑止力として潜水艦を派遣するなど、北極海でのプレゼンスを高めているという見方を裏付けることができる」としている。(後略)【54日 ロイター】

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【中ロの北極海進出を強く警戒するアメリカ 一方で温暖化には背を向けたままという矛盾・支離滅裂】

****北極海で権益拡大、中国の「氷上のシルクロード」に米警戒 第3の一帯一路****

米国のポンペオ国務長官は6日、訪問先のフィンランドで北極海をめぐる情勢について演説し、「北極海は新たな戦略空間となっているが、関係各国は共通のルールに基づいて行動するべきだ」との認識を示し、また、「北極海を新たな南シナ海にしてはならない」と中国を強くけん制した。

 

米国は中国の北極海進出に警戒感を強めており、北極海が新たな米中対立の場とならないよう、軍事、安全保障的な視点から北極海への関与を強めようとしている。(後略)【516日 NewSphere

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アメリカが中国の北極海進出に神経をとがらせるのはわかりますが、一方でトランプ米政権は北極海の変化をもたらしている温暖化については、パリ協定から離脱するなどの対応で背を向けています。

 

そうしたアメリカ米政権の対応について、下記記事は“皮肉”と評していますが、“矛盾”“支離滅裂”と言うべきでしょう。

 

****北極海温暖化で過熱する米中露の覇権レース****

かつては分厚い氷で人を寄せ付けなかった北極海が今、温暖化による氷解が進み、海底に眠る豊富な資源の存在に世界の熱い視線が集まってきている。その中でもめだつのが、開発と覇権めぐり火花を散らし始めた米中ロ3大国の存在だ。

 

「世界は今日、かつてないほど磁石のように北極海に引きつけられつつある。われわれは今後、勢力争いと競争の場となりつつある新時代に備えていく必要がある」

 

今月6日、フィンランドで開催された「北極評議会」(The Arctic Council)に初めて出席したポンペオ米国務長官の演説は、冒頭から緊張感をにじませる調子で始まった。

 

「北極評議会」は1996年、北極圏に領土を持つアメリカ、カナダ、ロシア、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、アイスランドの8カ国が集まって組織され、2年に1度の閣僚会議で共通の問題について意見交換が行われてきた。

 

しかしその後、地球温暖化の影響で北極海域の海氷溶解が進むにつれ、海底資源の開発、大西洋からシベリア海への新たなシーレーン確保も可能となった結果、その戦略的価値が一躍脚光を浴びるにいたった。

 

このため、これまで地理的に縁の遠かった中国、日本、韓国、インドなどを含め他の14カ国もオブザーバーとして参加し始めており、閣僚会議も回を重ねるごとに活発な意見交換の場となってきている。

 

そんな中で、一段と熱気のこもった演説をしたのが、ポンペオ長官だった。

 

長官は、まず前段で、「北極海の戦略的価値と国際間協力」の意義について以下のような点を指摘した。

 

  アメリカは、1857年に当時のウィリアム・シーワード国務長官が貴重な財産であるアラスカを購入したが、今やその価値はかつてなく高まり、北極海国家として北極海の将来のために立ち上がるべき時が来た。

 

  この海域はシーワード長官当時に考えられていたような不毛で未開な僻地であるどころか、世界全体の未発見原油の13%、天然ガスの30%、未曾有のウラン、レアメタル、金、ダイアモンドなどが何百万平方マイルの海域に広がり、魚類はあふれんばかりに豊富に存在する。

 

  しかも、海氷が着実に減退し始めた結果、新たな交易と通航のチャンスを到来させ、アジア―西部欧州海域間の航海に要する時間は20日も短縮されてきたため、北極海は急速に新たな戦略的重要性を帯び始めている。北極海シーレーンはいわば「21世紀のスエズ、パナマ運河」ともいえる存在だ。

 

  それゆえにメンバー8カ国は、過去数十年間,科学面の協力、文化・環境面の調査・研究という極めて重要な諸テーマに焦点を絞り取り組んできたように、今後は「パワーと競争」の場となった北極海の新しい未来に向けて正しく対応していくべきだ。

 

さらに長官は後段で一転して、ロシアそしてオブザーバーである中国を繰り返し名指しで批判、具体的に以下のような行動パターンについて疑念を表明した:

 

ロシアは先月、北海をアジア―北部欧州間にまたがる中国の「一帯一路」とリンクさせる計画を発表、同時に中国は北極海に複数のシーレーン開発計画に着手している

 

中国は中国マネー、中国企業、中国人労働者を使い、同海域のインフラ開発に乗り出し、ある部分では中国の恒久的安全保障プレゼンス確保を企図している

 

米国防総省は最近、中国が今後、北極海に持つ商業用研究施設を核攻撃抑止力としての原子力潜水艦配備基地に転用する可能性について警告を発している

 

中国は、南シナ海、アフリカなど世界の他地域において侵略的、軍事的行動をとってきたが、われわれは同様に、北極海海域においても、中国のこれからの行動を注視していく必要がある

 

ロシアは「北極評議会」のフルメンバーだが、北海ルートの公海について“領海”を主張、他国船舶や砕氷船の通過の際には事前通過許可とロシア人パイロットの乗船を義務付け、これに応じない場合は軍事力行使の脅しをかけるなど、国際法上の違法行為を続けており、憂慮すべき問題だ

 

ロシアは2014年に北極軍事基地を建設以来、同海域における軍事プレゼンスを着々と強化、これまでに16カ所に深海港を開港したほか、475カ所に新たに軍事基地・拠点を建設した

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もちろんアメリカが、北極圏における中国やロシアの野望について言及したのは、今回が初めてではない。(中略)

ただ、今回のように激しい調子で両国の活動を同列に置いて批判したのは初めてだ。

 

その背景として、トランプ政権発足以来、いずれも対米関係の悪化という共通の状況下にある中露が提携を深め、北極海における関係強化の動きが念頭にあることは間違いない。

 

ポンペオ長官が「北極評議会」演説で、中国の「一帯一路」構想と北極海シーレーン計画へのロシア参加決定に具体的に言及したことは、その表れであり、アメリカ側の焦りを反映したものといえよう。

 

ポンペオ長官は、このように北極海における中露の新たな動きをけん制した上で、今後のアメリカの対応として、(1)同海域におけるアメリカの外交および安全保障上のプレゼンスを一段と強化していく(2)とくにロシアの不穏当な活動に対抗して軍事演習を実施していく(3)軍事プレゼンス強化の一環として砕氷船艦隊の再建および沿岸警備隊関連予算の拡充に着手する(4)米軍内に北極海担当の上級ポストを新設する―などの具体策を明らかにした。

 

これに対し、同席したラブロフ露外相は「北極海が直面する諸問題の解決にはより深化した国家間協力が求められる。そのような時に、軍事的対応で処理しようとする試みは前例がなく、また軍事対立をあおるいかなる口実も存在しない」と反論、ポンペオ長官の挑戦的態度にくぎを刺した。

 

また、中国も外務省報道官がただちに同長官発言に言及「北極海における平和的国際協力の全体的基調は以前と何ら変わっておらず、アメリカの主張は事実を歪曲し、善悪を混同したものであり、下心と隠れた動機に根ざした発言だ」と酷評した。

 

トランプ政権にとっての最大の皮肉

しかし、中露との対抗上、北極海の「戦略的重要性」を強調し始めたトランプ政権にとっての最大の皮肉は、世界180カ国が批准した地球温暖化規制の国際取り決め「パリ協定」からの離脱と北極海の現状との矛盾だ。

 

なぜなら、北極海は世界のどの地域よりも温暖化の影響が大きく、氷山や海氷の溶解が急速に進んでいるからだ。

 

58日付『ナショナル・ジオグラフィック』誌電子版も「世界の頂上で展開される新たな冷戦」の見出しで論評を掲げ「地球儀のてっぺんはこれまでの人類史を通じ、厳寒で僻地で危険に満ちた過酷な条件ゆえに、他の地域を変容させてきたような集中的開発からは縁遠い存在だった。しかし今日、北極海は地球のどの地域よりも早いスピードで温暖化が進みつつある。とくに2007年には、記録的な気温上昇の結果として、それまで夏季を含め年間通じ北極地点を覆っていた広大な厚い流氷が最低レベルまで縮小した。それ以後は、かつて商業利用や軍事的野心を抑制してきた分厚い海氷からなる防御バリアが崩壊したことで、新たに出現した“地球上のニューフロンティア”に向けて各国による投資、開発ラッシュに拍車がかかり始めた」と解説している。

 

つまり、一方では、北極海における中露の活動が活発化してきたのも、温暖化による氷解と密接な関係があるからであり、それゆえにアメリカも遅ればせながら対応を迫られることになったという現実がある。

 

他方、世界中の大半の国が「地球温暖化」対策に取り組む意欲を示す中でアメリカだけが「パリ協定」から離脱したことは、大きな矛盾以外の何物でもない。

 

本来なら、北極海における中国やロシアの進出を批判する前に、アメリカとしては最低限「パリ協定」からの離脱方針を見直すべきであり、そうしないかぎり、関係各国の理解と同情も得られないのは自明の理だ。                            

 

しかし、トランプ大統領は就任以来打ち出してきた反環境主義からは一歩も後退する姿勢を見せていない。

 

それどころか、ポンペオ国務長官は今回の「北極協議会」閣僚会議で「地球温暖化」対策の重要性に言及した文言を最終日の共同宣言に盛り込むことに最後まで抵抗、この結果、過去の閣僚会議とは異なり、宣言文のないまま終了するという異例の事態となった。

 

もしアメリカが今後も「パリ協定」を無視し、その一方で、北極海の氷解が加速するとすれば、同海域をめぐる中露との覇権レースにおいて“敵に塩を送る”状況が続くことになりかねない。【520日 WEDGE

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なお、ロシアの最近の動向については、ロシアメディアは以下のようにも。

 

****北極海の氷上基地、露で新たに開発進む****

ロシアのシルショフ海洋研究所は17日、北極海での活動向けに氷上基地の開発が同国の研究者らによって新たに進められていると発表した。開発中の基地により、気候の変化や氷の状態を監視したり、航海の安全を確保したりすることが可能になるとしている。

 

昨年5月にロシアのプーチン大統領によって署名された大統領令では、北極海航路の貨物輸送量を2024年の時点で8千万トンにまで拡大させるとの課題が示されている。これを巡りプーチン大統領は今年4月、2018年に達成された輸送量2千万トンについて、1987年に達成されたソ連時代の記録の既に3倍に上っていると指摘し、現在の目標については、現実主義的であるとともに、十分に考慮された具体的な課題であるとしている。

 

同研究所の代表者らがスプートニクに対し明らかにしたところでは、ロシアには現在、海洋研究のための氷上基地が存在していないものの、同様の基地は欧州連合(EU)や米国、日本、カナダによって使用されているという。

 

同研究所ではロシアが開発中の基地について、北極海航路における航海の安全確保以外にも、北極圏における生物多様性の維持を促進していくという役割も果たすとしている。【518日 SPUTNIK

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コメント

アメリカ  次期大統領選挙論点として再燃した人工中絶問題

2019-05-21 23:32:16 | アメリカ

(【520日 BBC】 米ピュー研究所の2018年世論調査 これで見ると、中絶は「すべての場合において合法であるべき」と答えた人は25%、「ほとんどの場合において合法であるべき」と答えた人は34%と、賛成派が計59%を占めており、反対派とは大きな差があるようにも思えますが。)

 

【国論を二分するどころか、テロ事件にも及ぶアメリカ・人工中絶問題】

アメリカの人工中絶をめぐる問題は、今までにも2,3回とりあげたことがあります。

20151129日ブログ“アメリカ  再び「中絶戦争」の犠牲者 現実には減少傾向の中絶 増えるシングルマザー”など)

 

アメリカにおいては、人工中絶を容認するか否かが、保守・リベラルを分かつ象徴的な問題ともなっており、オバマケアをめぐる対立同様に、国論を激しく二分する極めて政治的な重大問題に位置づけられています。

 

最初に認識しておく必要があるのは、日本人には想像できない対立・議論の “激しさ”で、医療関係者・施設へのテロ行為に及ぶことも珍しくありません。

 

****米コロラド州で男が銃乱射 3人死亡、9人負傷****
米西部コロラド州コロラドスプリングズで27日、男が銃を乱射し、少なくとも3人が死亡、警察官4人を含む9人がけがをした。CNNなどが伝えた。

米メディアによると、27日昼ごろ、コロラドスプリングズの医療施設「家族計画クリニック」で銃撃があったと通報があった。警官隊と容疑者の男との間で銃撃戦になり、目撃者によると5分間で20発ほど銃声が聞こえたという。(中略)

同クリニックは妊娠中絶や性感染予防などのケアをしている。米国では人工妊娠中絶の是非を巡り、大きな議論になっており、中絶に反対する人々は同クリニックなどを批判している。

米メディアによると、1977年から14年まで、人工中絶をする施設を狙った爆破事件は42件、殺人事件は8件、放火事件は182件起きているという。【20151128日 朝日】
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20151129日ブログでは、人工中絶をめぐる議論の高まりもあって、近年は中絶件数は減少傾向で、むしろシングルマザーを選択する女性が増加するという、伝統的“家庭観”を重視する保守派にとっては皮肉な現実もあるという話題も取り上げました。

 

【法案の支持者らには、「ロー対ウェイド判決」を覆す好機と捉える向き】

従来から上記のように激しい論争を呼ぶ問題でしたが、アラバマ州の決定で再び政治問題・大統領選挙の主要論点としてクローズアップされています。

 

****米アラバマ州、中絶ほぼ全面禁止法案を可決 レイプや近親相姦でも****

米アラバマ州議会上院は14日、レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠も含め、中絶をほぼ全面的に禁止するという全米で最も厳しい法案を可決した。

 

法律が成立すれば、中絶手術は犯罪とみなされ、手術を行った医師には10年以上99年以下の禁錮刑が言い渡される可能性もある。中絶が例外的に認められるのは、母体の生命が危険にさらされている場合、または胎児が致死的な状態にある場合に限定される。

 

法案可決を受けて米国自由人権協会は、「これはレイプや近親相姦の被害者の身体に関する自己決定をさらに奪って出産を強制することにより、被害者らを罰する法案だ」と断じ、法律の施行阻止を目指して裁判を起こす構えを示した。

 

共和党が主導権を握る同州議会上院で可決された法案は、同じく共和党のケイ・アイビー知事の元へ送られた。知事が署名すれば法廷闘争に持ち込まれ、判断が最高裁に委ねられることも考えられる。

 

法案の支持者らは、最高裁で争うことを歓迎する姿勢を明確に打ち出している。ドナルド・トランプ氏の大統領就任後、最高裁判事は保守派が過半数を占めており、共和党の中には1973年に最高裁が女性の中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆す好機と捉える向きがある。 【515日 AFP】

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“今回成立したアラバマ州法は全米で最も厳しい内容だ。中絶を「妊娠に気づいた後に器具や薬で妊娠を終わらせること」と定義し、母体に危険がある場合を除いて禁止した。妊娠初期段階でも中絶できず、性的暴行や近親相姦(そうかん)で妊娠した場合でも例外を認めない。妊婦は罪に問わないが、中絶手術をした医師は最長99年の禁錮刑となる。”【517日 朝日】

 

人工中絶の問題でいつも出てくるのが“1973年に最高裁が女性の中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」”

 

「われわれは既婚者であろうとなかろうと、産む産まないというような基本的な個人の問題に政府から不当な干渉を受けないという個人の権利を認める。その権利には妊娠を継続するか否かを決定する女性の権利が必然的に含まれる。」といった内容の判決で、人工中絶を容認することで問題に決着をつけた・・・・はずでしたが、その後も論議が絶えないのは前述のとおり。

 

****「最高裁判決をひっくり返す」****

成立から6カ月で施行されるが、最高裁のこれまでの判決と真っ向から対立するため、裁判になれば下級審で差し止めが認められることが確実視されている。

 

ただ、法案を出した女性の州下院議員は「目的は(上級審に控訴して)最高裁判決をひっくり返すこと」と明言する。法案に署名したケイ・アイビー州知事も「最高裁が73年に判決を下した際、私も含め、多くの米国民が同意できなかった」とする声明を出した。

 

米国では保守色の強い南部や中西部で、中絶の規制を強化する動きが出ている。米CNNによると、胎児の心音が確認できるようになるとされる妊娠6週以降の中絶を禁じる法律が、ジョージア、ケンタッキー、ミシシッピ、オハイオの4州で今年成立。6週では妊娠に気づかない女性も多く、一部の州では「違憲」として提訴されている。

 

 トランプ氏任命、保守派判事優勢

中絶規制強化の背景には、トランプ大統領が保守派の判事2人を任命し、最高裁の構成が保守派優勢になっていることがある。保守派の間では、現在の最高裁が中絶問題を取り上げれば過去の判例を覆し、中絶を禁じる判決を下すという期待が広がっている。

 

こうした動きに中絶擁護派は猛反発している。アラバマ州法成立に対しても、20年大統領選の民主党の候補者指名争いの候補者からは「全国の女性に対する直接的な攻撃。戦わなければならない」(カマラ・ハリス上院議員)と非難が相次いでおり、大統領選の大きな争点になるのは必至だ。【517日 朝日】

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「戦わなければならない」・・・・・というのはわかりますが、現在の最高裁判事の構成を見ると、勝ち目があるのでしょうか?

最高裁判事の判断は、一般に言われているような保守・リベラルの色分けほど単純でもない・・・・のでしょうか?

 

トランプ大統領が保守派判事を任命した時点で予想されていた展開でもあり、「アメリカ大統領の最大の仕事は、考えの近い最高裁判事の任命である」と言われる所以です。

 

政治問題に関して憲法判断にあまり踏み込まない日本の司法と異なり、アメリカでは政治的に決着しない国論を二分する問題が最高裁判断で決着します。

 

当然、中絶容認派は強い抗議を示しています。

 

****中絶禁止の州法に抗議、全米で一斉デモ 50以上の団体が参加****

米国内の各地で人工妊娠中絶を禁止する州法の成立が相次いでいることに対し、21日に全米50州のほぼすべてで一斉に抗議デモが実施される。

 

米市民自由連合(ACLU)や妊娠中絶権擁護全国連盟(NARAL)など50以上の団体が主催して、現地時間の正午から集会を開く。

 

主催者らは、全米で中絶の「極端な禁止」が相次ぎ、生殖の自由が奪われていると主張。トランプ政権が女性の選択権に反する運動を展開していると非難し、特に非白人層、低所得の層の女性に大きな影響が及ぶとの懸念を示す。

 

アラバマ州では先週、非常に厳格な中絶禁止法が成立した。強姦や近親相姦で妊娠した場合を含むほぼすべての中絶手術を禁止し、執刀医には最大で禁錮99年と、強姦犯や殺人犯に匹敵する刑を科す内容。

 

ただし、これは中絶を女性の権利として認めた1973年の最高裁判決に違反すると訴える反対派との間で法廷闘争が予想され、施行されるとしても数年先になる見通しだ。

 

ミシシッピやオハイオ、最近ではジョージア州でも、胎児の心音が確認できるようになってからの中絶を禁止する「心音法」が成立した。同様の法案はミズーリ、ルイジアナなど複数の州でも審議されている。

 

一方で米国最大の反中絶団体「生まれる権利を守る全米委員会(NRLC)」は7月に全国大会を予定し、支持者らに参加を呼び掛けている。【521日 CNN】

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【トランプ大統領 中絶反対派として保守団結を呼びかける 3つの例外を明示して極端な禁止論とは一線】

激しい保守・リベラルの論争を呼ぶこの問題ですが、トランプ大統領は“いつになく”静かでした。

 

静かでしたが、ここにきてようやく“自らの政権における国内の裁判所の保守化を成果として強調した上で、2020年米大統領選に向けて、人工中絶に反対する保守層の団結を呼びかけた”とのことです。

 

ただ、アラバマ州のような例外を認めない中絶禁止には賛成しないとの立場も。

 

****トランプ氏、妊娠中絶禁止法の論争に沈黙破る****

アメリカでドナルド・トランプ大統領の支持者の多い南部など複数の州が、妊娠の人工中絶を全面禁止したり厳しく制限したりする州法を成立させる中、トランプ氏は自分は中絶反対派だが例外はあるとツイートし、一部の州法の内容は支持しない姿勢を示した。かつては中絶容認の立場だったトランプ氏は、近年になり反対派に転じている。

 

南部アラバマ州などが、妊娠の原因が強姦や近親相姦でも人工中絶を認めない州法を成立させている状況で、トランプ氏は18日に初めてツイッターでこの問題について言及し、「自分は強固にプロ・ライフ(訳注:生命支持、アメリカでは『中絶反対』の意味)だが、例外は3つある。強姦、近親相姦、母親の生命を守るためだ。ロナルド・レーガンと同じ立場だ。」と書いた。

 

大統領はその上で、「過去2年間で、素晴らしい新しい連邦判事105人(もっと増える)と2人の最高の新しい最高裁判事、メキシコシティの条例、生命権についてまったく新しい前向きな態度のおかげで、大いに前進した。

 

極左は妊娠後期の中絶(もっとひどいことも)を推進して自滅しつつある。みんな団結して、2020年には生命のために勝たなくてはならない。

 

馬鹿な真似をして、ひとつにまとまるのをやめてしまったら、生命のためにせっかくがんばって獲得してきたことが、たちまち消えてなくなる!」とツイート。

 

自らの政権における国内の裁判所の保守化を成果として強調した上で、2020年米大統領選に向けて、人工中絶に反対する保守層の団結を呼びかけた。

 

中絶反対派は、アラバマ州などの中絶禁止州法がたとえ下級審で違憲と判断されても、連邦最高裁まで争う構えだ。連邦最高裁が人工中絶を女性の権利として認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆すことを、最終的な目的としている。(中略)

 

米世論と妊娠中絶

妊娠の人工中絶はアメリカで長年にわたり、常に激しい議論や運動の対象になってきた。特に、保守派の福音主義キリスト教徒が中心となり、人工中絶の全面的禁止や制限の厳格化を求めてきた。

 

米ピュー研究所の2018年世論調査によると、アメリカの成人回答者のうち、中絶は「すべての場合において合法であるべき」と答えた人は25%、「ほとんどの場合において合法であるべき」と答えた人は34%と、賛成派は計59%。「すべての場合において違法であるべき」と答えた人は22%、「ほとんどの場合において違法であるべき」と答えた人は15%と、反対派は計37%だった。

 

トランプ氏自身は、この問題について立場を変え続けており、1999年には「自分はとてもプロ・チョイス(訳注:選択権支持、アメリカでは『中絶支持』を意味する)だ。

 

自分は中絶の概念そのものが大嫌いだ。大嫌いだ。それが意味するすべてのことが大嫌いだ。この問題を人が議論しているのを聞くと、ぞっとする。ただしそうは言っても……自分は選択する権利を信じているだけだ」と、中絶容認の姿勢だった。

 

それが20163月には、自分の立場は「例外ありでプロ・ライフ(中絶反対)だ」と発言していた。

 

トランプ氏が「2020年(大統領選)で命のために勝つ」には、与党・共和党の一致団結が必要だとツイートした一方、野党・民主党からも、この中絶問題が次の大統領選の主要課題になるという意見が出ている。

 

民主党から出馬を表明しているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)は、アラバマ州の禁止法成立を「非常に危険で無類に残酷だ。提案者たちは、ロー対ウェード判例を覆そうとしている」と批判。

 

さらに、「私は(中絶が違法だった時代の)アメリカで暮らしたことがあり、その上であえて申し上げます。私たちは絶対に後戻りしないと。今も、二度と。私たちはこの動きに対抗して戦い、そして勝ちます」と呼びかけた。

 

アメリカで人工中絶手術は受けられるのか

1973年に連邦最高裁が中絶手術を合法と認めて以来、国内の中絶クリニックの数は減り続けた。2017年には州内に中絶手術が受けられる施設が1カ所しかない州は、6州に上るとされた。

 

昨年から今年にかけて、アラバマ州のほか、ジョージア、アイオワ、ケンタッキー、ミシシッピー、オハイオ各州の知事が、胎児の心拍が検知できるようになった時点で人工中絶を禁止するという州法に署名した(アイオワの州法は州最高裁が違法判断)。

 

ルイジアナとミズーリの州議会は同様の州法を可決し、知事の署名を待っている状態。ほかに、9州の州議会が同様の法案を検討している(そのうちペンシルベニア州では委員会で否決)。

 

生殖の権利について活動する市民団体、グットマッハー研究所によると、中絶を禁止する州法はいずれもまだ施行されていないが、各地の支持者は連邦最高裁まで争う構えだという。

 

その一方でこれら以外の州では、女性が中絶する権利を守ろうと対抗策を導入する動きが進んでいる。ニューヨーク州は今年1月、場合によっては妊娠24週以降も中絶する権利を守る州法を成立させた。【520日 BBC】

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トランプ大統領がかつては中絶を容認していた・・・というのは、以前から指摘されている点です。

まあ、人の考えは変わるものですから、「プロ・チョイス」から「プロ・ライフ」に転じること自体は問題ではないでしょう。(最近は“ブレない”ことを良しとする風潮がありますが、「君子豹変す」で、状況等によって判断を変えること自体は非難されることではないと考えます)

 

それはいいとして、よくわからないのは、アラバマ州判断のような極端な禁止派との距離感です。

「例外は3つある。強姦、近親相姦、母親の生命を守るためだ」ということで、考えの違いを明確に打ち出したということでしょうか。

 

“馬鹿な真似をして”というのは、アラバマ州のような極端な禁止法案のことでしょうか。

 

****トランプ大統領が行き過ぎと示唆-アラバマ州の人工中絶禁止法****

トランプ米大統領は18日遅く、 アラバマ州で成立したほぼ全ての人工妊娠中絶を禁止する法律は行き過ぎだと示唆するコメントをツイッターに投稿した。

  

大統領は一連のツイートで、中絶反対を「強く支持するが、3つの例外がある。性的暴行、近親相姦(そうかん)、母親の命を守る場合だ」と記した。【520日 bloomberg

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やっぱり、トランプ大統領はアラバマ州のような極端な禁止法案は支持していないという理解のようです。

 

【世論動向に変化?】

201511月ブログで紹介した世論動向は以下のようなものでした。

 

“米ギャラップ社が昨年(2013年)5月に行った世論調査では、(中絶反対の)プロ・ライフ支持者とプロ・チョイス支持者の割合は48%対45%と拮抗。米紙ニューヨーク・タイムズは「中絶が中間選挙での活発な争点になろうとしている」と指摘している。【201439日 産経】”

 

一方、前出BBCが紹介している米ピュー研究所の2018年世論調査では、人工中絶賛成派は計59%、反対派は37%とかなり差が開いています。

 

ここ数年で、世論動向に変化があったということでしょうか?

かりに米ピュー研究所の2018年世論調査が現状を示しているとすれば、今回のアラバマ州のような決定が次期大統領選挙にどのように影響するのか?

 

トランプ大統領がしばし沈黙していたのも、自身の判断の揺れ以外に、そうしたことを配慮したものであり、「例外は3つある」ことを明示したのも、やはり近年の世論動向を踏まえたうえでの判断でしょうか。

 

【私見をひとつだけ】

最後にひとつだけ言えば、アラバマ州のような胎児の人権を一途に尊重する人々が、世界各地で爆弾の雨を降らせたり、国内での銃誤射で子供を含む多くの人命が奪われたり、壁の向こうで難民・移民が生命の危険にさらされることなどに、一向に関心を払わないというところが、私には理解できないところです。

コメント

日本  更に拡大が見込まれる外国人労働者 “外国人材”ではなく“人間”としての受入れ態勢を

2019-05-20 23:14:50 | 難民・移民

(【4月14日 朝日】)

【急増する外国人労働者 しかし、依然として外国人受入れに厳しい日本社会】

日本政府観光局(JNTO)によれば、2018年の年間訪日外国人数は前年比8.7%増の31191900人で統計開始以来の最高記録を更新しています。

 

また、周知のように日本では深刻な人手不足の解消を外国人に頼る改正入管法が4月に施行され、政府の構想どおりにいけば外国人労働者が大きく増えることになっています。

 

現在でも、(工場労働者の実態を目にする機会は私はありませんが)コンビニとか外食チェーン店、格安宿泊施設などでは、ごく普通にアジア系外国人が働いているのを目にします。

 

しかし、日本社会が外国人に開かれているか・・・という話になると、また別問題で、日本社会は依然として外国人に対して門戸を閉ざしている面が強く存在します。

 

****難民認定申請、前年比47%減 認定は昨年の2倍の42人****

法務省は27日、2018年の難民認定申請数などを公表した。申請数は前年比9136人(約47%)減の1万493人で8年ぶりに減少。

 

難民認定されたのは同22人増の42人、認定されなかったものの人道的配慮で在留が認められたのは同5人減の40人だった。難民保護の迅速化を図るため、昨年1月に開始した就労目的などの申請を抑制する運用が影響しているとみられる。

 

難民認定申請数は10年3月に、申請から半年後に就労を認める運用が始まったことなどから急増。そこで法務省は昨年1月、難民の可能性が高い申請者には就労が可能な在留資格を速やかに与える一方、明らかに難民に該当しない理由を訴えたり、再申請を繰り返したりする申請者には新たな資格を与えない運用に切り替えた。

 

申請者の国籍は74カ国。最多はネパールの1713人で、(2)スリランカ1551人(3)カンボジア961人(4)フィリピン860人(5)パキスタン720人――と続き、この5カ国で申請総数の約55%を占めた。一方、世界で難民認定申請者を多く出しているとされる5カ国(アフガニスタン、イラク、シリア、ベネズエラ、コンゴ民主共和国)の申請者は計50人だった。

 

申請処理数は前年比2129人増の1万3502人。認定された42人は、コンゴ民主共和国13人▽イエメン、エチオピア各5人▽アフガニスタン、中国各4人▽イラン、シリア各3人――など。認定者増加について担当者は「乱用的・誤用的な申請が減り、審査業務が進んだのが一因」とみている。

 

法務省は27日、18年に入管法違反で強制退去手続きをとった外国人数も公表。前年比2583人増の1万6269人で、1万86人が不法就労をしていた。【327日 毎日】

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難民認定数が2倍になったといっても“42人”・・・・ほんとんど認められていないと言うべきでしょう。

 

難民・移民流入で揺れる欧州や、アフリカ・中東からの難民受け入れ国となっているトルコやヨルダンなどで“万人”単位(国よっては“十万人”単位)の数字が問題となっている状況とは雲泥の差があります。

 

****なぜ日本の難民認定数は著しく少ないのか?****

(中略)日本で難民認定数が極めて少ない理由として、軍事政権下のミャンマーからの民主活動家が多くの申請を行っていた時期は例外として、難民が多数発生する地域から日本が遠く離れていることや、言語的・文化的な違いが障壁になっていることから、日本には真の難民が来ていないという見方もある。

 

しかし、紛争が長期化・複雑化し、多数の難民が発生しているシリアからの難民申請について、日本では201712月までに約80人が申請をしたのに対し、大半は人道配慮による在留が許可されたにすぎず、難民認定は12人にとどまっている。

 

また、集団的な虐殺がされるなどミャンマーで民族浄化の対象となっている少数民族のロヒンギャについても、これまでに約120人が申請を行ったのに対し、19人が難民認定、約80人が人道配慮による在留許可を得たにすぎず、それ以外の約20人は在留許可も与えられていない状況にある。

 

このような状況は、必ずしも日本には真の難民が来ていないのではなく、日本の難民認定の基準が著しく厳しいことを示唆している。(後略)【20187月 ヒューライツ大阪】

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外国人を受け入れることについて強い抵抗があるのは法制度だけではなく、社会全体の意識の問題が根底にあるように見えます。

 

****外国人施設「反対」、遠い対話****

住宅の軒先に、いくつもののぼりがはためく。「住環境の破壊 ダメ!絶対!」「子ども達の安全・安心を守れ」。昨年秋、大阪府摂津市にある住宅地の風景が変わった。

 

約1500世帯が暮らすこの地区には、古くから代々続く家も多い。そこに外国人技能実習生を受け入れる監理団体が研修施設を計画し、反対運動が巻き起こった。計画によると来日直後の実習生に約1カ月間、日本語や生活習慣を教え、最大60人余りが暮らせる。

 

(中略)しかし、この件については対話の糸口を見いだせない。「実習生と言葉が通じない」「怖い」という漠然とした不安を聞き、「ならば、なぜ不安なのか、どうしたら解消するのか話し合えばいい」と思った。しかし、「とにかく反対」「なぜ、反対しないのか」とたたみかけられ、話を進められなかった。

 

反対運動について「地元住民が猛反発」などと複数の報道が批判的に取り上げたことも、人々の感情を複雑にした。いまは、施設の立地条件や監理団体の計画の進め方などへの不満がより強く打ち出されている。反対運動を続ける住民の男性(63)は取材に対し、「不特定多数が出入りする施設を、住宅街の真ん中に建てる必要があるのか」と憤った。

 

互いの不安の正体を直視しあえないまま、議論を深められずにいる。

    *

背景の違う人々への理解はどうしたら進むのか。日系3世で、各地の日系コミュニティーを研究する武蔵大教授のアンジェロ・イシさん(51)は壁を目の当たりにしてきた。

 

来日したのは1990年。バブル景気のただ中のこの年、就労制限のない在留資格が与えられたのが日系人の2世、3世だった。製造業の労働者を中心に各地で急増した。自治体やコミュニティーによっては共生する態勢が大きく進んだが道は平坦(へいたん)ではなかった。

 

ゴミ出しをめぐるトラブルや生活習慣の違いなど、日本人との差異ばかりに目が向けられてきたと指摘する。「『トラブルを引き起こす存在』というイメージがつくられてしまった」

 

イシさん自身は留学生として来日したが、引っ越しのたび「外国人だから」という理由で入居を拒まれることが続いた。

 

多くの労働者が職を失った2008年のリーマン・ショック後には、職を失い苦境に陥る日系人も出た。政府は、当分日本に戻らないことを条件に、今度は帰国の費用を支給する施策を打ち出した。

 

「手切れ金か」と指摘され、日系人を労働力の調整弁に使う身勝手さへの批判は出たものの、社会に外国人労働者を位置づける議論はこのときも広がらなかったと、イシさんは残念に思っている。

 

「外国人の大多数は、目立たず、ごく普通に暮らしてきた。そこに視線を向けて議論をしなければ、警戒感はなくならない」【54日 朝日】

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【想像の中の外国人への不安】

当然、異なる文化・習慣の人々とともに暮らすことになれば様々な問題が発生しますが、そうした問題をどのように解決していくのか・・・という方向ではなく、そうした面倒な人々は頭から断るといった対応が目に付きます。

 

外国人への不信感・拒否感は、実際の外国人との付き合いの結果生まれたというより、まだ見ぬ“想像上”の外国人への抵抗感であることも多いようにも思われます。

 

****想像の移民におびえるよりも*****

移民はやっぱり移民と呼んだ方がいいのかもしれない。衆議院立憲会派の中川正春議員(68)は最近そう考える。

 

7年前の民主党政権時代、内閣府の特命大臣として共生社会を担当した。就任直後に「移民基本法を作りたい」と発言したら抗議が殺到した。「移民を容認するのはけしからん」

 

移民という言葉を使うと反発が強くなるようだった。その後、外国人材などといった言葉に言い換えてきた。中川議員に限らない。政界はこの言葉の使用にずっと及び腰だった。

 

「そうやって真っ向から問題を考えるのを避けてきたのでは」と振り返る。「移民ではないと言いながら技能実習生や日系定住外国人などは実質的に移民として受け入れる二枚舌をやってきた。これではなかなか本物の政策はできない」

 

移民という言葉はやっかい者のイメージをまといがちだが、問題の多くは仕組みの方にあると言う。「職業選択の自由がなく、使用者にいじめられても低賃金で働き続けなければならない。そんな環境から逃げると犯罪だとなる」

 

議員は三重の高校から米国の大学に進んだ。不法移民家庭の出身だった親友は名門大学を出て医師となった。そんな例をいくつも目の当たりにした。「人間の才能は環境によって花開く。日本もそんな人たちを活力にしていくべきです」

 

今は、日本で暮らす外国人にとってまず必要なのは言葉の習得と考え、その法整備に与野党の仲間と取り組んでいる。(中略)

     *

人々が不安を抱くのは、しばしば現実の中の外国人より想像の中の外国人だ。

 

フランスで移民排斥を掲げる右翼政党への支持は、移民系の住民が多いパリでは低い。ドイツでは旧東独のドレスデンなどが移民や難民排斥の運動拠点だが、旧西独に比べて移民の数は少ない。

 

日々、同じ街に暮らしていれば誤解が生じても話せば理解は進む。だが、これからやってくる外国人は不安をかき立てやすい。トラブルメーカー、雇用を奪う者、文化の破壊者……。政治家の仕事はそこにつけ込むことではない。現実的解決への道筋をつけることだ。

 

フランスの人口統計学者、フランソワ・エランは著書「移民とともに――計測・討論・行動するための人口統計学」の日本語版(林昌宏訳)序文で、日本での「移民の増加は国の文化的な均質性にとって有害」という考え方に、これまでも日本文化は「明治時代進駐軍の支配という衝撃を乗り越えてきた」と反論する。「移民の人口に占める割合が2%ではなく10%になったからといって脅かされるようなことがあるのだろうか」

 

想像の移民におびえるよりも、現実の移民と向き合う。そのためにも、移民は移民と呼んだ方がいいと思う。【519日 編集委員・大野博人氏 朝日】

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【現状の問題が改善されないまま拡大する“外国人材”受入れ】

現実には“外国人材”といった言葉で糊塗した形で、人間としての労働者が今後増加することへの日本社会の対応が遅れていることは、いろんなところで指摘されているところです。

 

人間として許容できる賃金・労働条件を確実にするのは、まずもって最低限のスタートラインですが、そこすら現状の問題が改善されないまま、新た制度による受け入れ拡大が図られようとしています。

 

****日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生、早急な対策が必要****

2019429日、日本新華僑報は日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生したと伝えた。

記事は、「青森県むつ市の77歳の社長が、4人の中国人技能実習生を含む15人の従業員に賃金を支払わなかったとして、むつ労働基準監督署により書類送検された。容疑は最低賃金法違反である」と伝えた。(中略)

記事は、「昨年2月に、青森県青森市の成邦商事株式会社が、15人の中国人技能実習生を含む31人の従業員に、月100時間を越える時間外労働をさせて書類送検されたほか、今年3月にも八戸市にある縫製会社が、ベトナム人技能実習生に賃金を適正に支払わなかったとして書類送検されている」と指摘した。

その上で、「青森県で連続して同様の問題が発生していることは、日本の労働力不足が深刻であることを説明しており、そのため政府は外国人労働力を導入する新たな政策が必要になった。また、日本政府も『口だけで行動せず』、監督不行届であるため問題が次々と発生し、関係する部門の行動も遅く効率が悪い」と批判した。

このため記事は、「中国人技能実習生を含む外国人労働者の権益を守るため、日本社会はこの方面で早急な対策が必要だ。さもないと、日本の労働力市場は圧力が緩和したとしても、日本社会の国際的名誉は落ちるだろう」と警告した。【429日 レコードチャイナ】

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こうした実態をチェックする制度も実態に追いついていません。

 

****働く外国人、守るには 監督機関を新設、でも「成果乏しい****

 ■「落差」ある検査結果

「暴力に抗議したら強制帰国させられた」「妊娠2カ月で帰国か中絶か迫られた」――。外国人労働者を支援しているNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」(東京・上野)には、技能実習生からの相談がいまも続々と舞い込む。

 

途上国の外国人に日本の技術を学んでもらう目的で1993年に始まった技能実習制度を巡っては、賃金の未払いや長時間勤務の強制などの労働法違反の行為が減らないことへの批判が高まり、2017年11月に実習生の保護策を強化した技能実習適正化法(技能実習法)が施行された。

 

新法で、監督権限がある認可法人「外国人技能実習機構」が新設された。実習機構が、受け入れ窓口である商工会などの監理団体や、職場に受け入れている企業に立ち入り検査し、実習生への不正行為があれば、政府と連携して罰則を科せるようにした。

 

「実績」はどうか。「実習生保護という点では成果は乏しい」と、移住連代表理事の鳥井一平さんは言う。

 

約2500の監理団体のうち実習機構の検査で不正が明らかになり、許可が取り消されたのは1団体。業務停止や改善命令の行政処分はゼロだ。

 

4万8千社あるといわれる受け入れ企業に関しては、実習機構に認定された実習計画を取り消されたのは8社の151人。改善命令を受けたのは三菱自動車1社にとどまる。

 

法務省が賃金未払いなどの不正行為があったと認定した監理団体や企業数は17年まで毎年200を大きく超えていた(18年は未公表)。実習機構の検査結果との「落差」は大きい。

 

実習機構は、行政処分の手前の「改善勧告」を少なくとも1400団体・企業に出していることを明らかにし、「勧告後も改善されない場合は行政処分に踏み切る」と強調する。(中略)

 

 ■チェック追いつかず

新制度にはもう一つ狙いがあった。受け入れ人数の大幅増だ。少子高齢化で若手の労働者が急減するなか、景気拡大が重なり2010年代半ばごろから人手不足が深刻化していたためだ。

 

(中略)こうした技能実習システムの急膨張に実習機構のチェックが追いついていない。18年4月から9月に実施した企業への実地検査は2600件。これだと「企業への検査は3年に1回」という低めの目標の実現さえ不可能だ。

 

実習機構の人員は昨年度より241人増えて587人となったが、当初から専門家らは「受け入れ枠の拡大は、保護強化策が効果を発揮する態勢が整い、制度の改善が確認されてからの話だ」(自由人権協会の旗手〈はたて〉明理事)と警鐘を鳴らしていた。

 

技能実習制度の「構造問題」も切り込み不足のままだ。ほとんどの技能実習生は来日する前、現地の人材派遣会社やブローカーに多額の手数料や謝礼を払っている。借金を背負った実習生は、日本では就労環境が悪くても我慢せざるを得なくなり、受け入れ側が図に乗って不正行為に走っていた。

 

新制度に合わせて、日本政府は実習生の送り出し国と、悪質な仲介業者を排除する取り決めを結ぶことにした。現在、最多の人材の送り出し国のベトナムなど13カ国と結んでいるが、取り決めが相手国を法的に拘束するわけではない。

 

 ■懸念残る「特定技能」

(中略)特定技能はこうしたまやかしをやめ、「労働者として正面から受け入れる制度」と評価された。一方で「実習制度と同じ過ちをおかすのではないか」との懸念が広がっている。

 

特定技能も、外国で人材を集めて日本に送り出すのは実習制度と同様の民間業者だ。応募者から様々な名目で金品を搾取する恐れがある。

 

実習生のように多額の借金を背負って来日したすえに、受け入れ企業に「逃げられない」とつけ込まれて酷使される可能性があるのだ。報酬も「日本人と同等以上」としているが、技能実習法で同じように約束されている実習生の大半は最低賃金で働いている。

 

国内外で「人身売買」とまで指弾されている実習制度を教訓に、外国人の人権を保護し、安心した就労・生活環境を提供する体制を整えないと新資格は根付かないだろう。

 

それは外国人との共生を巡る課題そのものでもある。

人口が加速度的に減少している日本は早晩、外国人を「労働者」ではなく「国民」として受け入れることが避けられなくなる。特定技能は「移民国家」への覚悟を問うている。【520日 織田一氏 朝日】

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外国人労働者の問題に限らず、個人の生き方・価値観、ジェンダーに関する問題等々、多様性を認め合う社会になってもらいたいのですが・・・。

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香港  「逃亡犯条例」改正案で岐路に立つ「一国二制度」・高度な自治

2019-05-19 22:00:02 | 東アジア

11日、香港立法会でつかみ合う民主派議員と親中派議員【511日 共同】)

 

【形骸化が進行する「一国二制度」】

香港の「一国二制度」が形骸化し、中国本土に取り込まれつつあることは今更の話です。

 

2014年の雨傘運動のような香港側の反対運動がときに盛り上がりますが、社会・政治の基盤となる経済面において、外堀を埋めるかのように本土経済との一体化が進展しています。

 

****中国「大湾区」構想が注目 広東、香港、マカオ一体化 1国2制度形骸化も****

北京で開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)で、習近平指導部が広東省と「1国2制度」下にある香港、マカオを一体化させて大経済圏を築く「ビッグベイエリア(大湾区)構想」が注目されている。

 

香港の分科会では構想を支持する声が相次いだ一方で、香港の民主派からは高度な自治を保障する「1国2制度」の形骸化を懸念する声もある。

 

構想は2月に本格始動。中国の先端都市である広東省深センや広州などの9都市に加え、国際金融都市の香港、カジノで知られるマカオを中心に経済交流を活性化させ、2035年までにハイテクや新産業の重要な発信地にする内容。

 

中国メディアによると、18年の域内総生産(GDP)は約1兆6500億ドル(約185兆円)で、米ニューヨーク周辺一帯25郡の規模に並ぶ。現代版シルクロード構想「一帯一路」とも連動し、往来やビジネス、物流、教育分野などの交流を盛んにする。

 

これに先立ち中国政府は大湾区構想の中核となるインフラ整備を進め、昨年9月に広東省と香港を結ぶ高速鉄道が開業。同10月には広東省と香港、マカオを結ぶ世界最長(約55キロ)の「港珠澳大橋」が開通した。

 

ただ、中国との一体化が進むことに、香港の民主派からは「大湾区構想によって中国と香港の融合がさらに進めば、香港の『1国2制度』は消滅してしまう」(毛孟静立法会議員)といった見方も出ている。

 

7日に開かれた分科会中、香港代表団の馬逢国団長は毎日新聞に、民主派側の懸念について「『1国2制度』を脅かすことはあり得ない。それぞれの地域の特徴を十分に生かすものだ」と語った。【39日 毎日】

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政治的にも、「一国二制度」・高度な自治を形骸化する“中国寄り”の姿勢が加速しています。

 

****香港、「雨傘運動」デモ発起人2人に禁錮16月の実刑判決****

香港の選挙制度の民主化を求めた2014年の大規模デモ「雨傘運動」をめぐる裁判で、香港の裁判所は24日、デモの発起人であるとして有罪判決を受けていた大学教授2人に禁錮16月の実刑判決を言い渡した。

 

禁錮16月の実刑判決を受けたのは香港大学の社会学教授、陳健民氏と同法学准教授の戴耀廷(ベニー・タイ)氏で、2人は公的不法妨害などの罪に問われ有罪判決を受けていた。 【424日 AFP】AFPBB News

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今回量刑が言い渡された二名を含め、「雨傘運動」を主導したとされる活動家リーダーら9人は48日に有罪判決が言い渡されていました。

 

9人はまれにしか使われない英植民地時代の法律に基づき公的不法妨害などの罪に問われ、全員少なくとも1つの罪状で有罪となった。”【49日 AFP】

 

また、、元学生リーダーで民主活動家の黄之鋒氏も。

 

****香港「雨傘運動」主導の民主活動家、二審も実刑判決****

香港の若者らが民主的な行政長官選挙の実現を求めて中心部を占拠した2014年のデモ「雨傘運動」で、裁判所の命令に反して当局によるデモ隊の排除を妨害したとして法廷侮辱罪に問われた、元学生リーダーで民主活動家の黄之鋒氏(22)に対し、香港の裁判所は16日、禁錮2カ月の実刑判決を言い渡した。黄氏は判決後、収監された。

 

黄氏は昨年1月の一審で禁錮3カ月の実刑判決を受け、上訴していた。二審となる今回の判決は、黄氏が犯行当時、未成年だったことを考慮して、1カ月短い禁錮2カ月とした。

 

雨傘運動をめぐっては、民主的な行政長官選挙の実現に後ろ向きな中国政府に圧力をかけるため、道路など公共の場所の占拠を提唱した香港大の副教授らに対し、香港の別の裁判所が4月、禁錮1年4カ月の実刑判決を言い渡し、副教授らは収監された。【516日 朝日】

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今後再び「雨傘運動」ような“不祥事”が起きないように、中国本土政府の意を受けて、香港当局は徹底した責任追及を行う構えのようです。

 

【「高度な自治」を捨て去る自殺行為ともなりかねない「逃亡犯条例」改正案】

その香港で、「一国二制度」・高度な自治を形骸化をめぐりホットな論争となっているのが、香港から中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案審議です。

 

****香港で「13万人」がデモ 犯罪人移送の条例改正反対****

香港民主派は28日、中国本土への容疑者引き渡しが可能になる条例改正に反対するデモを行った。

 

主催者発表で約13万人(警察発表は22800人)が参加。大規模デモは3月末に続き2回目で、前回の12千人(同5200人)より大幅に増加、市民の反発が強まっている。

 

香港立法会(議会)では、香港当局が拘束した容疑者の中国本土への引き渡しが可能となる「逃亡犯条例」改正案を審議中で、政府は7月の休会前に可決させたい考え。デモ参加者らは条例改正方針の撤回を求め、立法会まで行進した。【428日 共同】

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****香港議会で衝突、議員ら負傷 犯罪人移送条例巡り対立****

香港立法会(議会)で11日、中国本土への容疑者引き渡しが可能になる「逃亡犯条例」改正案の審議を巡り、民主派と親中派の議員がもみ合いとなり、議員ら数人が床に倒れるなどして負傷した。

 

民主派は、条例が改正されれば、中国共産党に批判的な活動家らが本土に引き渡される恐れがあるとして猛反発しており、混乱が深まっている。

 

11日は法案委員会が開催される予定だったが、中止となった。香港メディアによると、民主派と親中派は法案委員長選出などを巡り対立。前日から議場に泊まり込んでいた民主派議員らと、親中派議員らが複数回、激しくもみ合った。【511日 共同】

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いわゆる「民主派」だけでなく、「親中派」の議員・経済界にも異論があるようです。

 

****「中国へ容疑者移送」香港紛糾 条例審議入れず、親中派からも異論****

中国本土から逃げてきた刑事事件の容疑者を中国側に引き渡せるようにする香港の「逃亡犯条例」改正案に反対する動きが、勢いを増している。

 

市民の自由の制約につながるとして、中国に批判的な民主派に加え、親中派や外国からも異論が噴出。中国政府は譲歩を認めない方針とされ、板挟みの中で立案した香港政府の基盤が大きく揺らぐ事態となった。

 

14日早朝、香港立法会(議会)。逃亡犯条例改正案を審議する委員会の会議室には、普段はスーツを着ている民主派議員がTシャツ姿などのラフな格好で集合した。親中派議員が入室すると「違法開催だ」と叫び、激しいもみ合いに。委員会はわずか10分ほどで中止された。

 

香港政府の改正案提出から約40日が経つが、民主派の反対で委員長さえ選べず実質審議に入れていない。

 

親中派が多数を占める立法会で民主派が勢いづく背景には、「中国当局が事件をでっちあげ、香港の民主活動家が中国本土に引き渡される」との主張が市民の間に浸透しつつあるからだ。

 

4月末のデモ行進には主催者発表で約13万人(警察発表は約2万3千人)が参加し、2014年の民主化デモ「雨傘運動」以降、最大級のデモとなった。

 

親中派も一枚岩ではない。「中国とのビジネス上のトラブルが刑事事件として立件される」と警戒する経済界を支持基盤とする一部政党は、審議の先送りを公然と主張している。

 

14日に発表された香港大の世論調査によると、林鄭月娥行政長官の支持率は44・3%に急落。17年7月の就任後、最低の水準で、政権運営は試練を迎えている。

 

米国議会が今月、「香港にいる米国人のリスクが高まる」とする報告書を発表するなど、国際的な懸念も高まっている。

 

香港政府が掲げてきた条例改正の必要性にも、疑義が向けられた。昨年、台湾で起きた殺人事件で容疑者の香港人が香港に戻り、台湾当局の訴追を免れたことが改正の理由だが、台湾当局は今月9日、「香港から台湾人が中国本土に引き渡される」として、改正案に反対の立場を表明した。

 

 成立へ中国政府圧力

各方面から「集中砲火」を浴びる香港政府だが、今年7月までの成立をめざす方針を変えていない。中国と香港の関係に詳しい香港の外交筋によると、中国政府から民主派に譲歩しないよう圧力を受けているという。政府の方針が民意に振り回される事態が本土に飛び火することを警戒しているためとみられる。

 

実際、香港では03年、国家の分裂や政権転覆につながる動きを禁じた「国家安全条例」の立法に反対する大規模なデモが発生し、撤回に追い込まれた。

 

香港で最も市民の対立が大きい政治テーマになり、香港政府は中国政府から繰り返し立法化を要求されても慎重な対応を続けてきた。

 

民主派の活動家の一人は漏らす。「国家安全条例で摘発されても香港の刑務所に収監されるだけだが、逃亡犯条例改正案が成立すれば身柄が中国に引き渡されることもある。逃亡犯条例の方がはるかに脅威だ」

 

中国本土と香港の司法制度の違いは大きい。中国では司法機関共産党の指導下にあり、最高裁長官にあたる最高人民法院の院長は17年、「司法の独立など西側の誤った思想は断固拒否する」と発言した。中国は死刑の執行数が世界で最も多いとされるが、香港は93年に死刑制度を廃止している。【515日 朝日】

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香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしているようですが、香港政府の意向など中国本土政府の前では何の意味もなさないでしょう。

 

****逃亡犯条例 香港の自由守りぬけ****

香港立法会(議会)が、犯罪人の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正審議で紛糾している。改正されれば、香港で中国批判の言論は影を潜め、政治的自由は形骸化しかねない。

 

(中略)香港政府は条例が改正されても、中国からの「政治犯」移送の要請は拒否するとしている。だが、中国本土では多くの民主、人権活動家が政治犯罪とは別件で勾留・逮捕されており、香港政府の説明は説得力を欠く。

 

さらに、外国人の香港への旅行者やビジネスマンらも中国本土への引き渡し対象となり、ことは中国と香港だけの問題にはとどまらない。

 

米国政府は五月、条例改正について「米国と国際企業にとって、安全なビジネス環境としての香港の優位性が失われる」とする報告書を発表した。中国に批判的な外国人にとっても、香港は安全な場所とはいえなくなる。

 

国際社会が、香港に対する中国の政治的干渉に疑心暗鬼になるのは、香港返還の際に国際公約したはずの「一国二制度」を骨抜きにする振る舞いをだんだんと露骨にしているからである。

 

二〇一七年の共産党大会の演説では、中国の習近平国家主席は「香港の全面的な管轄権を握り締める」とまで言い切った。

 

香港住民の動きに目を移せば、挫折はしたものの、香港住民は一四年、行政長官選挙の民主化を求める七十九日間の「雨傘運動」を闘い抜いた。

 

抗議デモに続き、立法会占拠の動きもある。暴力は避けねばならぬが、香港の民主的な自由を守ろうとする住民の気持ちが失われていないのは心強い。

 

条例改正は、香港自身が「高度な自治」を捨て去る自殺行為に近いように映る。立法会には丁寧で真剣な議論を望みたい。【518日 東京】

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【朝日】にある改正案に反対する親中派というのがどの程度の数なのか知りませんが、全体的には立法会は親中派が多数を占めていますので、数の力で押し切る可能性が大きいようにも思えます。

 

ここまで問題が大きくなった以上、習近平指導部も今更後には引けないでしょう。

 

そうなると、いよいよ香港の政治的独自性は・・・ということです。

現状でも香港当局は中国本土の意向で動いており、「高度な自治」は形骸化しています。

 

****天安門事件30年、陰る香港 国際会議断念、会場を台湾に変更 民主派団体、入境拒否を懸念****

1989年6月に起きた中国の天安門事件から30年を迎えるのを前に、中国の民主化の現状などを話し合う国際フォーラムが18日、台北で始まった。

 

主催者側は香港での開催を希望していたが、中国に批判的な人物に対する香港当局の入境拒否が近年相次いでいることを考慮し、断念した。

 

主催は香港の民主派団体「香港市民支援愛国民主運動連合会」など。この日は、当時の学生リーダーで、事件後に出国した王丹氏らが登壇し、明らかになっていない事件の死傷者数などについて議論した。同会によると、登壇者で現在も中国に住む人はいないという。

 

香港は高度な自治が保障される「一国二制度」が適用されている。しかし、中国の習近平(シーチンピン)政権は香港と台湾が独立運動で連携するのを警戒し、香港当局への圧力を強化。近年は、政治的な理由とみられる入境の拒否が相次いでいる。

 

王氏も過去に香港当局から入境を拒まれた経験がある。このため、主催者側は、フォーラムの他の出席者も香港入りできないことを危惧し、香港での開催をあきらめたという。台湾側の共催団体「華人民主書院」の曽建元・主席は取材に、「中華圏において民主化を果たした台湾は、中国の将来や変革を議論するのに適した場所だ」とアピールした。

 

香港政治に詳しい立教大の倉田徹教授はフォーラムが台湾で開催された経緯について、「欧米の人権団体が拠点を置き、中国の人権や民主化の情報を国際社会に英語で発信できる香港で、言論や研究活動が不自由になることは非常に問題だ」と懸念を示した。【519日 朝日】

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「逃亡犯条例」改正案が成立すれば、中国に批判的な人物は入境拒否ではなく、拘束され「中国当局が事件をでっちあげ、中国本土に引き渡される」危険性も。

 

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欧米大企業のサプライチェーンに組み込まれた新疆ウイグル族の思想教育的(強制)労働

2019-05-18 23:25:04 | 中国

(新疆のトルファンで行われた春の祝祭で撮影されたウイグル族のナン 中央のナンには「私と私の国」を意味するスローガンが。 本来、ナンはウイグル族のアイデンティティを示す聖なる象徴でもある食材ですが・・・・【BITTER EINTER “新疆でナンの「中国化」が進む】)

 

【「強制収容所」ではなく「職業訓練センター」】

中国の新疆ウイグル自治区において、イスラム系ウイグル族などが100万人規模で「強制収容所」に拘束され、「再教育」されている・・・という話は、次第に定説となりつつありますが、過熱する米中貿易戦争・覇権争いの影響か、拘束人数について、300万人という数字もアメリカ側からは出ています。

 

****ウイグルの施設は「強制収容所」、米高官の非難を中国否定****

米国防総省幹部が先週、中国の新疆ウイグル自治区の「強制収容所」に300万人近くが拘束されていると非難したことについて、中国政府は6日、これを真っ向から否定した。

 

米国防総省アジア・太平洋安全保障担当のランドール・シュライバー次官補は先週の記者会見で、同自治区の収容施設を「強制収容所」と呼び、推計「300万人近く」が拘束されていると非難した。

 

これに対し中国外務省の耿爽報道官は定例会見で、シュライバー氏の発言は「完全に事実と矛盾している」と述べ、「中国側は強い不満と断固とした反対の意を表明する」と抗議。「米当局関係者に対し、新疆の問題を通じて中国に内政干渉することをやめるよう再度要請する」と述べた。

 

国連の委員会が引用している推計によると、新疆ウイグル自治区の収容施設には、イスラム教徒の少数民族ウイグル人や、同じくイスラム教徒が大半を占めるチュルク人ら100万人超が拘束されているという。

 

中国政府は、以前は収容施設の存在自体を否定していたが、現在はこれを認める方向に転換。しかし、施設は「職業訓練センター」であり、分離主義や宗教的な過激思想対策の要だと主張している。

 

耿報道官は「現在、新疆ウイグル自治区は政治的に安定しており、経済も発展している。そこでは社会の調和がとれている」と話し、「人々は平和な生活を送り、働いている」と述べた。 【57日 AFP】

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中国側は「職業訓練センター」と主張しており、施設の公開も行っています。

 

****中国、新疆の収容施設を公開 ウイグル族を「教育」と主張****

中国政府は(4月)27日までに、新疆ウイグル自治区カシュガル市で、イスラム教徒の少数民族、ウイグル族などの収容施設を一部の海外メディアに公開した。

 

国際社会では多くのウイグル族が強制収容されていると批判が高まっているが、当局者は「テロを防ぐため、法に基づいて教育している」と述べ、正当な措置だと主張した。

 

26日に公開されたのは「カシュガル市職業技能教育訓練センター」と称する施設で、日本の報道機関では共同通信だけに取材を認めた。

 

施設の責任者によると入所者は約1500人で、過激主義やテロ活動に関わったものの、程度が軽微とされた人たちが対象という。【427日 共同】

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一箇所を見せられても、その他の施設の実情はわかりません。

 

仮に、職業訓練を行っているにしても、強制的に入所させているなら、それは「強制収容所」と評されても仕方がないところです。

 

【思想・脱宗教教育を含むプログラムのもとで行われる「雇用創出」】

職業訓練云々はともかく、中国政府が、「仕事のある者は安定する」(習主席)と、新疆における「雇用」創出を重視していることは間違いありません。

 

そして、そのこと自体は正しい判断です。

 

しかし、現地で行われている「雇用」創出は、思想・脱宗教教育を含むプログラムのもとで行われ、“抵抗すれば過激派シンパと疑われ、拘束されかねない”とも。

 

そうなると、その「雇用」は強制労働に限りなく近いものともなります。

 

そして、その労働によって生産されたものが、最終的には欧米大企業の商品に使われ、欧米(多分、日本も含まれるのでしょう)消費者の手にわたる・・・・という構図があると指摘されています。

 

****中国のウイグル弾圧、欧米企業も無縁で済まず ****

欧米の大手衣料品メーカーや食品会社が、中国政府のイスラム教徒同化策に巻き込まれている。

 

アディダス、へネス・アンド・マウリッツ( HM )、クラフト・ハインツ、 コカ・コーラ 、ギャップといった企業が、新疆ウイグル自治区を通る同国の長く不透明なサプライチェーンの最後に位置しているのだ。

 

地元住民や国営メディアなどによると、同自治区では住民が強制的に訓練プログラムに送り込まれているが、その一環で地域の工場で働くケースが珍しくない。

 

複数の公式文書からすると、ウイグル人や他のイスラム教徒を対象とした同プログラムには政治的な教化という重要な要素がある。

 

プログラムの課程は職業訓練のほか、標準中国語、共産党の重要性や国家団結、法律や過激思想対策(あまりに保守的な服装や頻繁すぎるお祈りを避けること)を網羅している。軍隊さながらの訓練が含まれることもある。

 

労働者も工場の幹部も、そうしたプログラムに抵抗すれば過激派シンパと疑われ、拘束されかねない。

 

一部の企業はそうした強制的な訓練プログラムについて、差別のない職場環境を義務付けたサプライヤー規定に反するとしている。

 

ただプログラムの一環としての工場での労働は、企業側には気づかれないことが多い。中国政府は新疆での暴力や過激な宗教思想への対策の一環として、国内企業に同地での雇用創出を指示しており、それが欧米企業の関知しない下請け契約を通じて行われることも少なくないからだ。

 

地元当局者らは取材に対し、訓練プログラムが強制ではなく、貧しい住民の職探しを支援するための施策だと述べた。新疆の政府は文書を通じ、同自治区に強制労働はなく、そうした話は「うわさや中傷」だとしている。

 

綿製品を手掛ける 華孚時尚 (ホアフー・ファッション)がアクスに持つ大きな綿糸工場は、政府と協力して1カ月の職業訓練を実施している。

 

中国とカザフスタンの国境に近いこの都市は、有刺鉄線や警察による検問所、監視カメラで埋め尽くされている。住民の4人に3人はウイグル人だ。

 

華孚の訓練は201712月に600人でスタートした。ネットに掲載された発表文の写真には、迷彩服を着て直立不動の姿勢を取る女性労働者が写っている。地元政府は通達で、同社の工場を「大規模な職業訓練施設」の一部だとしている。

 

住民と話すのは難しい。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が最近行った現地取材は当局者に干渉された。

 

(中略)同社のことを良く知る関係者2人によると、華孚が新疆で生産する糸は中国の他地域のほかにバングラデシュやカンボジアの工場に運ばれ、HMの店舗で売られるTシャツになる。

 

そうした糸はアディダスやエスプリ・ホールディングスのサプライチェーンにも登場する。ただ、両社は華孚から直接の購入はしていないという。

 

アディダスは質問に対し、調査が終わるまで華孚からの糸購入を見合わせるようサプライヤーに助言したと述べた。同社はサプライヤーが新疆政府の機関を通じて人を雇うことを16年に禁止している。強制労働や差別への懸念が理由だ。

 

エスプリは華孚を調査中だと説明。HMは新疆でサプライヤーとの新たな関係を築く計画はないとしている。(中略)

 

一方で華孚は、労働者全員が自らの意思でそこにおり、同社の労働管理システムは「国際慣例と規制を完全に順守している」と主張。社内訓練プログラムは民族や宗教に関係なく、全ての新入社員に義務付けられていると説明している。

 

中国の習近平国家主席は数年前に新疆の本格的な抑圧を命じた。当局がイスラム武装派による犯行だとする爆弾事件などが相次いでいたためだ。

 

政府の戦略の中心にあったのが雇用促進であり、習氏は14年に地元当局者に対し、「仕事のある者は安定する」と述べている。

 

大手衣料品メーカーは新疆への生産移転に際し、5年間の税控除や電力・土地および職業訓練に対する補助金を提供されてきた。

 

米アパレル・履物協会(AAFA)の幹部ネイト・ハーマン氏は、同協会がウイグル人の置かれた状況や新疆のサプライチェーンの不透明性について議論してきたと述べた。

 

新疆南部のホタンおよびカシュガルの当局は2017年、「田舎の余剰労働者」10万人を職業訓練に送り込む3年計画を発表した。

 

アクス当局の文書によると、同地の当局者は過去2年に4000人を超える住民を招集し、工場労働のニーズに合った「集中的で非公開の軍隊式管理」の下、脱急進思想や布製造のコースを施した。多くは工場に向かったと書かれている。

 

(中略)カルバンクライン、トミー・ヒルフィガー、ナイキ、パタゴニアを顧客に持つという世界最大のシャツ製造請負会社、香港の溢達集団(エスケルグループ)は、綿花の一大産地である新疆に3つの製糸工場を設けた。

 

車克焘・最高経営責任者(CEO)は、当局者が2017年に新疆南部出身のウイグル人の紹介を始めたと述べた。

 

同社は過去2年に34人を受け入れたが、採用の決定や訓練は政府からは独立して行っており、「採用は強制されていない」という。

 

カルバンクラインとトミー・ヒルフィガーを傘下に持つPVHは、素材サプライヤーの精査を強化する計画だとした。ナイキは新疆産の綿を使用しているかどうかをサプライヤーに聞いていると述べた。パタゴニアはコメントを控えた。

 

政府の発表によると、新疆ジンリユアン・ガーメントは政府当局から紹介された村民の就業前に、「脱過激思想」を含む訓練プログラムを実施した。

 

同社は欧州を拠点とするコフラ・ホールディング傘下の小売りチェーン、CA向けにジャケットを生産した。新疆のテレビでは7月、ミニーマウスの描かれたピンク色の子供用パーカを同社工場の労働者が縫っている場面が流れた。

 

ディズニーの広報担当者は、同社には新疆の衣料品工場との関係は存在せず、アクスの同工場によるパーカ製造の許可もしていないと述べた。それらが偽造品かどうかは明らかにしなかった。

 

CAの広報担当者は、監査で問題が見つからなかったため同工場から昨年ジャケットを買ったと述べた。ジンリユアンはコメント要請に応じなかった。

 

7月に政府系の現地経済誌に掲載された記事によると、国有企業の中糧屯河(COFCO)の幹部らは政府の貧困緩和策に貢献するため、アクスのある村を訪ねて工場の労働者を採用した。同社は中国最大のトマト加工会社で新疆は最大の生産拠点だ。クラフト・ハインツやキャンベル・スープにトマトペースト、コカ・コーラに砂糖を供給している。

 

記事では、働きたがらない村民がいることにマネジャーらが言及していた。

 

中糧屯河は文書で、記事に書かれた出来事は「断じて起きなかった」と述べた。同社の労働者は自らの意思でそこにいるという。

 

クラフト・ハインツは、新疆産トマトは調達全体の5%を占めており、米国で売られているものはないとした。キャンベルは自社トマトペーストのうち中国産は2%未満で、オーストラリアとマレーシアで販売していると述べた。

 

コカ・コーラは、サプライヤーが「責任ある職場と人権に関する当社の厳しい規定」に従うことを義務付け、第三者機関を使って順守状況を監視していると語った。【517日 WSJ】

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経済がグローバル化した現在、先進国で消費される商品の多くが、多かれ少なかれ途上国の劣悪な労働条件に依拠したサプライチェーンによってもたらされています。

 

そして最終的なサプライヤーである大企業はそうした実態を十分に把握していない、もしくは敢えて厳しくチェックしようとはしていない・・・という実態も。

 

一応、形式上は劣悪な労働条件による企業はサプライチェーンから排除するように監査している企業も少なくありませんが、どこまで本気でチェックしているかということになると・・・・。

 

今はどうか知りませんが、かつて中国の下請け企業では、監査用に見せる表工場と、実際の生産主力となる裏工場を持っている・・・といった話もありましたが、それにしても最終生産者の大企業が本気でチェックしようと思えばわからないはずはないのでは・・・とも。

 

そうした現状を考えれば、上記【WSJ】の報じるような状況があっても不思議ではありません。

 

【顔認証技術による民族監視】

中国政府のウイグル族対策としては、“ご自慢”のAIを駆使した顔認証システムが、新疆だけでなく全国規模で活用されているとか。

 

****中国当局、ウイグル人の特定・追跡に顔認証技術使用か 米紙***

中国当局が、イスラム教徒の少数民族ウイグル人を国内全体で追跡するため、大規模な顔認証システムを使用していると、米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。(中略)

 

同紙は14日、中国における監視カメラの巨大ネットワークに組み込まれた顔認証技術が、外見を基にウイグル人を特定し、国内での動向を追跡するために使用されているという記事を掲載。

 

これによると現在、浙江省の杭州市や温州といった富裕都市をはじめ、同自治区外に暮らすウイグル人を追跡する目的で、警察が人工知能技術を駆使しているという。

 

同紙は、同国中部のある都市では、住民がウイグル人かどうかを確認するために、月に50万回もの読み取りが行われたとしている。

 

中国政府は2017年、AI業界で世界をけん引していくとの計画を発表。その一方で近年、民族間の激しい緊張状態を背景に、最新技術が警察の厳重な監視に用いられているという懸念が国際社会に広がっている。

 

同紙が引用した専門家らの話では、中国政府がAI技術を民族分析に用いたのは、把握されている限り今回が初めての事例で、同国各都市でこの新システムへの関心が高まっているという。 【416日 AFP】

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中国はこうした監視技術に自信を深めており、一方で、そうした技術を欲しがる国も多々あります。

 

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顔認証など人工知能(AI)を使った技術を犯罪捜査などに幅広く利用しているのが中国だ。ハイテク強国を目指す習近平政権の国家戦略の一環でもある。(中略)

 

習氏は、全国の治安当局者が参加した今月上旬の会議でも、「ビッグデータを大きなエンジン」として活用し、治安対策の質と効率を高めるよう指示した。

 

中国は、高度な顔認証技術と治安当局のデータベースを基に、数秒で人物を特定できるシステムなどを開発。AIを逃亡犯の検挙に役立てている。

 

一部の都市では、歩行者の信号無視対策にも利用されている状況だが、中国共産党の一党独裁体制下、プライバシーや人権の問題を指摘する声は小さい。

 

100万人規模のイスラム教徒が「再教育」目的で施設に収容されているという新疆ウイグル自治区でも、膨大な顔認証カメラを設置しウイグル族らイスラム教徒を監視している。

 

同自治区にとどまらず、「中国国内全体でウイグル族を追跡するため顔認証システムが利用されている」という米紙の報道もある。

 

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の一環で、AIの監視技術をベネズエラやフィリピン、ジンバブエなど途上国に輸出しており、反政府デモの弾圧に悪用される可能性もある。【516日 産経】

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顔認証技術に関しては、アメリカ・サンフラシスコ市が、プライバシーとの関連や女性や肌の色の濃いひとの顔の識別に問題があることなどから、警察や行政機関などで顔認証技術の利用を禁止する見通しとなったことが最近話題になりました。

 

まあ、以下のような活用なら問題もないでしょう。

 

****野生パンダを顔認証で識別するアプリ、中国で開発****

中国で、顔認証技術を使って環境保護活動家らがパンダを個体ごとに識別するアプリが開発された。国営新華社通信が17日、伝えた。

 

研究者らはまた、ジャイアントパンダの画像12万点と動画1万点のデータベースを構築。これにより個々のパンダの正確な識別が可能となる。

 

中国ジャイアントパンダ保護研究センターの研究者らは新華社に「このアプリとデータベースは、山奥に生息して追跡が難しい野生パンダの個体数、分布、年齢、性比、出生と死に関するより正確で包括的なデータを集める助けになる」と語った。(後略)【518日 AFP】

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絶望的な格差が生む命がけの人々の流れ 「壁」が深める分断

2019-05-17 22:52:22 | 難民・移民

(高台から壁の向こうの米国側を見つめる人たち=メキシコ・ティフアナ【5月6日 GLOBE+】)

 

【欧州が門戸を閉ざし、南米経由で「ダリエンギャップ」を超えてアメリカを目指す人々】

アフリカから欧州を目指す人々、中南米からアメリカを目指す人々などの移民・難民に関する記事は多々あります。

 

どれも心に重く残るものがありますが、受け入れ国側にも無条件では受け入れられない事情(自分たちの利益を守りたいという思い)もあり、どうしたらいいのか・・・というところでは答えが見つかりません。

 

そうした記事の比較的最近のもののなかから、特に印象に残ったものをいくつか。

 

アメリカでトランプ大統領が壁で追い払おうとしている、主に中米「北の三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの3カ国からアメリカを目指す人々はよく取り上げられており、それはそれで悲惨なのですが、その中にはアフリカ・アジア各地からの人々も混じっているそうです。

 

欧州への入国が難しくなったため、南米エクアドルやブラジルからコロンビア経由でアメリカを目指すためのようです。

 

また、そのように南米からアメリカをめざす場合、パナマにはルートの空白地帯「ダリエンギャップ」という「壁」が存在するそうで、彼らはそこを命がけで乗り越えてアメリカを目指すとか。

 

****4年で100倍、アメリカを目指す移民はなぜパナマのジャングルを目指すのか****

「エクソダス」壁を越える移民たち

南北アメリカ大陸は地図上ではつながってみえるが、車で渡ることはできない。北米アラスカから南米パタゴニアまで縦断する「パンアメリカン・ハイウェー」が途切れる空白地帯「ダリエンギャップ」があるからだ。

密林と湿地。マラリアや毒蛇。麻薬カルテルと武装組織。直線距離で100キロほどの「空白地帯」に潜むいくつもの危険が、豊かな北米への道を阻む「壁」になってきた。

 

ところがここ数年、ダリエンギャップを越え、遥かアフリカやアジアから米国を目指す移民たちが増えている。その先の道のりも、「エクソダス」(大量脱出)と呼ばれる移民集団の出現で一変しているという。何が起きているのか。

 

■おもちゃ屋2階の安宿

「ホテル・グッドナイトに行け」

南米から北米を目指す移民が集まる中継地と聞き、コロンビア北部メデジンからバスで9時間かけて着いた港町トゥルボ。材木が積まれた船着き場で移民がいそうな場所を尋ねると、一言、そう言われた。

 

それは、移民局のそばのおもちゃ屋の上にある安宿だった。「Good Nigth」とつづりを間違えた看板を掲げた2階からフロントに入ると、受付の女性のポロシャツの胸には、今度は「Goog Night」の刺繍。案の定、スペイン語しか通じない。

 

それでも、移民が集まる理由はこの宿の名にあった。宿帳にはインドやパキスタン、ガーナやエリトリアなどアジアやアフリカの国々の名が並ぶ。

 

ホテルの通路に、カメルーン人が集まっていた。同国では少数派の英語圏住民で、政府軍に家を焼かれ国を逃れたという。元大学生の男性(25)は「英語名のホテルだから言葉が通じるかも」と、ここを選んだ。同じ境遇の仲間を見つけ、ともにダリエンギャップを越えて北米を目指す。「家で兵士に射殺されるのを待つより、密林で死ぬ方を選ぶ。命がけです」

 

窓のない部屋の壁を見ると、「心配するな、神とともにある」と英語の小さな落書きがあった。

 

■「速度を落とせば転覆する」

翌朝、郊外の波止場からダリエン湾を渡るボートに乗り込むと、すし詰めの乗客45人のうち、41人が移民で、中には子どもも10人いた。ビーチリゾートの町に向かう一般の定期便だが、オフシーズンのいまは、移民船のようになっていた。

 

出発するや小さなボートは荒波を猛スピードで進む。すぐに波しぶきで目を開けていられなくなった。10秒ごとに波がしらを越え、乗客の体がそろって宙に舞い、着水のたびに椅子に打ち付けられて悲鳴が上がる。歯を折りかねない。慌ててハンカチを口に含もうとしたが、手すりから手を離せなかった。(中略)

 

■「天国」への道

船旅を終えた移民たちは夜明け前、「コヨーテ」と呼ばれる密航手引き人とともに数十人の集団になって、町はずれの山道から自然保護区のジャングルに入るという。その入り口には、看板が立っていた。

 

「El Cielo」。スペイン語で「天国」を意味する。いくつもの山を越えて崖を下り、川を渡った先に、天国を思わせる美しい湖沼があるという。だが道中は、誘拐や強盗、置き去りといった危険に満ち、けがや熱帯病で歩けなくなっても助けは来ない。港に面した宿のオーナー、ネシー・ホハナ(30)は「捨てられた服と人骨、とりわけ子どもの骨がよく見つかる」と話した。(中略)

 

■ジャングル最奥の多国籍な村

川を十数回渡り、いくつもの牧場を通り抜けて5時間半。隣町に着いた時には日が暮れかけていた。移民たちはこの密林の奥を、小川の水をすすり、ビスケットを食べながら1週間ほどかけて越えて、パナマ側にある人の住む村を目指す。

 

私は、パナマ市から移民が到着する地を目指した。その一つで、少数民族が暮らすジャングル最奥の村バホチキトを訪ねると、まるで国際会議を思わせるような多国籍の顔ぶれであふれかえっていた。

 

川べりで水浴びするハイチ人やペルー人、高床式住居の木陰には青いターバンを巻いたインド人。人口約250人の村に世界中からの移民が約450人も集まっていた。

 

国境警備隊の詰め所の黒板には、ネパールやスリランカといったアジア、コンゴやカメルーンなどのアフリカ、キューバなどのカリブ海まで、20を超す国名と人数がチョークで殴り書きされていた。

 

移民が増えたのは2015年ごろという。体を壊す人も少なくなく、前日にもアフリカ系の人の水死体が見つかっていた。村はずれの墓地には、土を盛ったばかりの跡があった。

 

女性や子どもの姿も目立つ。近くの村で会ったハイチ人女性は15人のグループで6日間、密林を歩いた。「食べ物がなくて本当に大変で、マラリアになった人もいます。でも子どもは米国で産みたいんです」と膨らんだおなかをさすった。

 

■コロンビアからパナマへ、4年で100倍

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計を見ると、コロンビアからパナマに入った外国人は11年に300人足らずだったのが、15年と16年は約3万人に。わずか4年で100倍に膨らんだ。

 

その出身国はアフリカ、アジアを中心に約50カ国に及ぶ。なぜわざわざ南米に渡り、危険なダリエンギャップに身を投じて北米を目指すのか。

 

UNHCR中米キューバ地域代表ジョバンニ・バス(48)は、「欧州に向かう地中海ルートが困難になり、だれもが代替ルートを探していた」と話す。中東やアフリカなどから難民が殺到した15年の「欧州難民危機」で欧州諸国が門戸を狭めたため、代わりに米州に向かうようになった、というのだ。「密林を抜ける危険が、十分に理解されているとはとても思えない」

 

この新しい流れの中で、米州に目を向けた移民の「玄関口」になったのが、多くの国からビザなしで入国できるエクアドルや、五輪やワールドカップで外国人労働力を受け入れてきたブラジルだ。

 

国を逃れざるをえない人、貧しい母国に帰らずに豊かな国を目指す人。ダリエンギャップはこうして、彼らが明日を描くのに、どうしても越えなければならない「壁」になっていった。

 

 

ダリエンギャップを越えた移民たちはその後、さらに北上し、「北の三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの3カ国から米国を目指す人たちの波に流れ込んでいく。

 

警察やギャングを恐れ、人目を避けて身を潜める「伏流水」だった移民の流れが突然、堂々とした「大河」に変貌したのは昨年10月のことだ。数千人規模のキャラバンを組んで米国境に迫り、中間選挙を前にした米大統領トランプが「侵略者だ」と非難したことで世界中のメディアの注目を集めた。

 

「エクソダス」(大量脱出)と呼ばれ、「完全にゲームを変えた」とも言われるキャラバンの背景に何があるのか。私は同行することにした。(後略)【5月6日 GLOBE+】

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【大量難民が出ている内戦国イエメンに命がけで渡る人々】

一方、激しい内戦と飢餓・コレラに苦しみ大量の難民を出している中東イエメンにアフリカ各地から命がけで渡ろうとする人々が絶えないそうです。イエメン経由でサウジアラビアを目指す人々です。

 

****密入国、内戦のイエメンへ アフリカから死の危険冒しても/はびこる密航業****

中東イエメンは内戦で「世界最悪の人道危機」と言われ、約18万人が周辺国に逃れている。ところが、逆にイエメン密入国するアフリカの若者が後を絶たない。さらに北隣の産油国サウジアラビアに渡って稼ぐためだ。

 

イエメンと海峡を隔てて約30キロのジブチ。首都ジブチから北へ向かう幹線道路に、1・5リットルのペットボトルを手に歩く若者を50人以上見かけた。ほとんどが隣国エチオピア出身で、国境から150キロ以上歩いて密航船が出るオボックを目指す。

 

エチオピア中部出身のムハンマド・イドリスさん(22)がのどの渇きを訴えて記者の車を止めた。手には水を入れるために拾った食用油の容器。気温は38度。野宿しながら国境から15日かけて歩いてきた。

 

イドリスさんは1年半前にも密航船でイエメンに入ったが、武装した男らに拘束され、親族は身代金を要求された。そのとき受けた拷問の傷が首筋に残る。解放後にサウジで羊飼いとして2カ月働き、不法滞在強制送還。だが故郷は仕事もなく貧しい。危険を冒してでも再びサウジに渡ることを決めた。

 

持ち物は刃渡り10センチのさびた護身用ナイフと2枚の顔写真。「途中で死んで顔がわからなくなっても写真があれば誰かわかるから」

 

ジブチは以前からサウジなど裕福な産油国への経由地になっていたが、2012年ごろから人の流れが増加。国際移住機関(IOM)によると、隣国ソマリアなどから出る者と合わせると、16年に11万7千人がイエメンに渡り、17年も9万9千人。大半がエチオピア人で、一部にソマリア人もいる。

 

夏場の気温は50度になり、のどの渇きや病で息絶える者もいる。船は強風や高波、客の乗せ過ぎで時折、転覆する。内戦状態と知らずに入ったイエメンで戦闘に巻き込まれたり、誘拐されたりすることもある。無事にたどり着けるのは、ごく一部だ。

 

オボック周辺には、対岸のイエメン人らと共謀して密航ビジネスで稼ぐ業者がいる。沿岸警備隊などが取り締まるが、当局者は「海岸線は100キロ以上あり、密航業者が動くのは夜中。すべてを止めるのは難しい」と話す。

 

「我々の助けなしでサウジにたどり着くのは不可能だ」。モウラと名乗る密航業者の男(48)はそう断言した。エチオピアやイエメンにネットワークを持つ「ビッグボス」の下で働いていると自慢した。(中略)

 

内戦下のイエメンに事情を知らない人々を送り込む点をどう思うのかと問うと「やつらは知っているさ」と反論し、こう付け加えた。「需要があるからビジネスをする。それだけだ」

 

 ■貧困背景、裕福なサウジ目指す

(中略)それでも多くの若者が流れ込むのは経済上の理由だ。中国などの支援で急速な経済発展を遂げるエチオピアだが、17年の1人当たり国民総所得は740ドル(約8万1千円)で、2万90ドルのサウジの27分の1程度。しかも都市と農村の格差が大きい。

 

「サウジに行けば金持ちになって仕送りもできる」といった密航業者の話が「サクセスストーリー」として広まる。

 

中部の農村出身のアブドルファッターハ・ムハンマドさん(19)は、家族が財産の牛1頭を売って密航業者に払う約6万円を工面。家は貧しく、8人兄妹の末っ子のムハンマドさんは学校には5年通っただけだ。

 

イエメンの内戦は知らず、ジブチで国際機関の説得を受けて思いとどまった。「金を作って送り出してくれたのに、家族にどう説明すればいいのか。期待されていたから帰るのも怖い」(5月16日 朝日)

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【「壁」で分断された二つの世界】

そして壁をはさんで分断される二つの世界。

 

****流れ作業で移民に有罪判決 壁が分かつ世界の現実****

米大統領トランプが掲げ、米社会を揺さぶり続けるメキシコとの国境の壁建設計画の現場をみようと2017年8月、私は米国とメキシコの国境3200キロをたどった。

 

四半世紀をかけて築かれた1100キロにおよぶ「壁」の周辺には、毎年数十万人が検挙され、数百もの遺体が見つかる異様な世界が広がっていた。

 

米南西部アリゾナ州ツーソンの地方裁判所。証言台にラフな格好の男性6人と女性1人が、弁護士に付き添われて横一列に並んでいた。数日前に不法入国容疑で逮捕されたメキシコなどからの移民だった。

 

「通関施設を通らずに入国しましたか」。裁判長が英語で、日時と場所だけを替えた通りいっぺんの質問をすると、移民たちはスペイン語で一言「シー(はい)」と答える。審理は1人わずか1分40秒。全員に有罪判決が言い渡され、すぐ次の7人が入ってきた。

 

「オペレーション・ストリームライン」(流れ作業)の名の通り、ベルトコンベヤー式に進む裁判に私は戸惑った。移民に犯歴をつけて再犯時の刑を重くし、再び越境するのを思いとどまらせる狙いで2005年に始まった。人権を軽視した「移民処理工場」との批判が絶えない。

 

だが、彼らは命があるだけまだ幸運かもしれない。私はツーソンにある移民の支援団体の事務所で、「デスマップ」(死の地図)と呼ばれる地図を見たときの悪寒を思い出した。国境周辺の広大な砂漠が無数の点で赤く染まっていた。一つ一つが遺体の発見場所だ。

 

「移民はどんどん砂漠の奥地に向かっています」。地図をつくっている団体の代表ダイナ・ベア(66)は、硬い表情を見せた。

 

米側で国境管理強化を求める声が強まり、1990年代に西海岸の都市部に壁ができると、2000年代には東の砂漠に回り道する移民が増加。

 

人里離れて警備が手薄な砂漠にあえて踏み込み、途中で力尽きたとみられる移民の遺体が年に百数十体も見つかるようになり、地元に動揺が広がった。

 

自動小銃で武装した自警団ができる一方、ベアたち支援団体が砂漠に水タンクを置く活動を始めた。

 

私は自警団や支援団体に同行して3日間、国境近くの砂漠を回った。雨期で緑は豊かだったが、気温は40度を超え、足元はトゲのあるサボテンだらけで、毒蛇もいる。「3週間もあれば白骨化し、身元も死因も分からなくなってしまう」。検視官の話にぞっとした。

 

国境は高さ5メートルほどの鉄柵で仕切られ、センサーを備えた監視塔が周囲を見下ろしている。この「壁」を越えたメキシコ・ノガレスは、米国を目指す移民の拠点だ。

 

夕方に支援施設を訪ねると、礼拝堂の床の上で数人が力尽きたように寝入っていた。マイクロバスが横付けされると、この日強制送還されたばかりの移民が続々と入ってきた。

  

「水が尽きてから2日間歩き続けた。たくさんの遺体を見た」(農場作業員)

「マフィアの許可なく壁を越えると殺される。金が払えないなら麻薬を背負えと言われた」(車塗装工)

移民たちは、追い詰められた様子で苦境を訴えた。

 

10年代に入ると、砂漠に加え、国境の東半分に沿って流れるリオグランデ川での遺体発見が相次ぐようになる。治安が悪化した中米から逃れ、川を渡ろうとする移民が急増したためだ。

 

トランプ政権が真っ先に目をつけたのも、この川だった。壁建設計画を示し、地元で激しい反対運動が起きていた。

四半世紀の間に雇用確保やテロ防止、麻薬対策など様々な理由で、壁は延び続けた。ひとたびできると、壁を隔てて新しい二つの世界が生まれていく。

 

その現実を取材の終盤に、西海岸で米国と国境を接するメキシコ北部ティフアナで出会った家族が教えてくれた。鉄柵を握りしめた看護師ベロニカ・ルビオ(41)の視線の先、壁の向こうに、生後3カ月のめいソフィアの姿があった。目を細めても、抱きしめることはできない。壁がつくった冷徹な現実だった。(後略)【5月3日 GLOBE+】

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【それでも「壁」を超える人々】

「壁」を築いて排除しようとしても、命がけで壁を越える彼らを思いとどまらせることはできません。

 

****「必死に壁をジャンプした」****

彼らの旅の終着点は、米国との国境を高さ5メートルほどの壁で阻まれたメキシコ国境の町ティフアナ。難民申請の窓口に行くと面接までに数週間待たされるため、壁を乗り越えて米国境警備隊に出頭する移民が多いという。

 

彼らはその後、施設に収容されたり、監視用のGPS機器をつけられたりしながら、米国内で審査の結果を待つことになる。(中略)

 

移民支援団体「ボーダーエンジェルズ」のウゴ・カストロ(47)は、壁を越える彼らの姿を思い起こした。「必死だった。地元住民にも迷惑がられ、もう待てない、と思ってジャンプしていったよ」

 

■得をしたのは誰だ

エクソダスが押し寄せたのは、米中間選挙の直前だった。(中略)トランプには最高の贈り物で、完璧なタイミングだった」という専門家もいた。得をしたのは、トランプだった。

 

そして、再選に向けて動き出したトランプは「壁をつくれ」に続く新しいキャッチフレーズをつくった。「壁を完成させろ」。国家非常事態を宣言し、中米3カ国への援助停止を表明した。

 

国境を閉鎖すると脅されたメキシコは4月下旬、数百人の移民の一斉逮捕に踏み切った。逃れた移民たちは貨物列車の屋根に飛び乗って、北を目指した。

 

■なぜ壁を越えるのか

ダリエン湾を渡るボートが出るトゥルボから米国境に面したティフアナまで、飛行時間でわずか10時間ほど。移民たちが命がけでたどる約7000キロの道のりを眼下に見ながら、日本のパスポートを持っているというだけで、自由に、そして安全を考えた上で目的地に行ける「特権」が不条理に思えた。

 

貧困、治安、政情不安など理由は様々だが、移民たちに共通しているのは、母国で生きることへの絶望だ。

 

失意の弱者たちは今、集団になることで、かつてない力を手に入れた。それが、グローバル化の恩恵を受けた国で格差にあえぐ弱者をいらだたせる。その連鎖が「自国第一主義」を加速させていく。

 

しかし、「壁」を築いて排除しようとしても、命がけで壁を越える彼らを思いとどまらせることはできない。その過程で多くの命が失われ、分断が深まっていく。

 

回り道のように見えても、人々が母国で希望を持てるようにするために、手を携えるしかない。移民集団の出現は、特権を享受している私たちにその責任を問いかけている。【5月6日 GLOBE+】

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