孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  ロヒンギャ難民「戻ったら殺される」 軍に沈黙し、批判に苛立つスー・チー氏

2018-01-31 22:35:51 | ミャンマー

(イスラム教徒ロヒンギャの村人と話す、河野太郎外相(右端)=13日午前、ミャンマー西部ラカイン州【1月13日 朝日】「ミャンマー政府にしっかり寄り添って支えたい」「不安なく昔通りに住める状況をつくるため、しっかり支援したい」とも)

帰還合意はしたものの、帰還作業開始は延期
ミャンマー西部ラカイン州におけるイスラム系少数民族ロヒンギャに対する弾圧、その結果としてのロヒンギャのバングラデシュへの逃避・難民化は、現在問題となっている2016年8月以降の約65万人だけでなく、それ以前からの問題であり、バングラデシュの難民キャンプでの登録者数は100万人を超えています。

登録作業を率いるバングラデシュ軍幹部によれば、登録者には生体認証カードが与えられているそうです。【1月17日 AFPより】

バングラデシュ側は、財政的な問題もあるでしょうし、急激な大量の難民流入は地元民との軋轢を惹起し、治安悪化にもつながりますので、早期のミャンマーへの帰還を望んでいます。

また、難民キャンプでは衛生状態悪化による伝染病の流行も問題となっています。

ミャンマー・バングラデシュ両国は2年以内に帰還を完了させることで合意しています。(帰還合意の対象は2016年10月以降にバングラデシュに入国したロヒンギャのみ)

しかし、ミャンマーの帰還受け入れは延期されており、今後の予定は不透明です。

****ロヒンギャ帰還開始延期=施設整備など遅れか―バングラデシュ****
ミャンマー西部ラカイン州で迫害を受けたイスラム系少数民族ロヒンギャが、隣国バングラデシュに大量に避難している問題で、バングラデシュ政府当局者は22日、23日から予定されていたロヒンギャの帰還が延期になったことを明らかにした。開始時期は未定という。
 
バングラデシュは、ロヒンギャの帰還に際し、対ミャンマー国境に一時宿泊施設を設置する計画だが、作業が遅れているとみられる。

同当局者は「施設建設や人道支援の準備が整い次第、帰還を開始できる。開始時期は未定だ」と述べた。(後略)【1月22日 時事】 
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【「戻ったら殺される」】
ミャンマー側の受け入れ態勢も問題ですが、そもそも難民らが、自分たちを殺害・追放したミャンマーへの恐怖感を強く抱いており、そんな危険な状態への帰還を望んでいないことが、今後の大きな問題となるでしょう。

****ロヒンギャ避難民「安全の保障ない」ミャンマー帰還に反対デモ****
(中略)ミャンマーとバングラデシュの両政府が避難民の帰還に向けた準備を進める中、バングラデシュにある避難民キャンプでは26日、100人近い避難民らが早期の帰還に反対するデモを行いました。

参加者は「安全が約束されない限り、戻らない」とか「帰還は時期尚早だ」などとシュプレヒコールをあげていました。

多くのロヒンギャの人たちはミャンマーの治安部隊に迫害されたと訴えて帰還をためらっており、去年9月に逃れてきた男性は「ミャンマー政府は信用できず自分たちの権利が守られない限り帰るつもりはない」と話していました。

ミャンマー政府は避難民が住んでいた村の再建を約束するなどして早期の帰還を促していますが、避難民のキャンプでは同じようなデモがたびたび起こっていて、ミャンマー政府への不信感が浮き彫りとなっています。【1月27日 NHK】
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帰還どころか、今もバングラデシュへの避難が止まっていない状況です。

****ロヒンギャ、帰還合意後も迫害=「戻ったら殺される」―バングラへの避難続く****
ミャンマー西部のラカイン州で迫害を受け、隣国バングラデシュに避難するイスラム系少数民族ロヒンギャが後を絶たない。

両国はロヒンギャを近く帰還させる方針で合意している。しかし、バングラデシュには29日も、船でロヒンギャが到着。口々に「戻ったら殺される」と帰還への恐怖を口にした。【1月30日 時事】 
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ミャンマーへの帰還を恐れるロヒンギャの中で、帰還推進派の指導者が殺害される事件も起きており、バングラデシュ政府も対応に苦慮しています。

****ロヒンギャ、帰還に募る不安=バングラ側、対応に苦慮―ミャンマーに安全確保要請****
ミャンマー西部ラカイン州で迫害を受け、バングラデシュに逃れた68万人超のイスラム系少数民族ロヒンギャに関し、両政府は近く帰還させる方針で合意している。しかし、ロヒンギャは「今のまま戻っても同じことの繰り返しだ」と不安を募らせる。「帰還推進派」の指導者が殺害される事件も発生、バングラデシュ当局は対応に頭を悩ませている。(中略)
 
別のキャンプでは、1月に入り、帰還推進派の指導者が殺害される事件が発生した。このキャンプに住むシャリフ・フセインさん(27)は「推進派は(ラカイン州で多数派の仏教徒)ラカイン族と連絡を取り合っている」と不信感を隠さない。
 
フセインさんは「一緒に逃げた500人のうち、200人は殺された。安全が確保されなければ、同じことの繰り返しだ」と訴える。
 
キャンプの警備に当たる地元警察当局者は「殺害事件以降、ロヒンギャの間に『帰還推進』と表立って口にできない雰囲気があるようだ」と語る。対立激化を避けるため警備を強化するぐらいしか打つ手がない。
 
バングラデシュは国連機関などと共に支援を続けてきたが、短期間に大量のロヒンギャが流入したため、すでに「限界」(地元住民)状態。できる限り早く帰還を実現させたいのが本音だ。

だが、人道上、ロヒンギャの安全は軽視できない。アリ外相は30日、ミャンマー政府に対し、ロヒンギャを安全に受け入れる環境整備など「有効な対応」を取るよう求めた。【1月31日 時事】 
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「有効な対応」とは言っても、物的な環境整備はともかく、難民の恐怖・不安を払拭するにはどうすればいいか・・・となると、なかなか難しいところです。

(物的な環境整備については、河野外相が、外国要人としては初めて混乱が起きた現場地域の視察が認められたように、ミャンマー側には日本への大きな期待があるようです。)

混乱の責任追求を明確にし、事態改善・帰還受け入れに向けたスー・チー氏の積極的な発言でもあれば、事態も少しは変わるのでしょうが。

事態改善への姿勢が見えないミャンマー
そもそも、ミャンマー政府・国軍に、帰還したロヒンギャの安全を保障する気があるのかも怪しいところです。
民族浄化を実現したミャンマーとしては、おびえる難民がこのまま帰ってこないことを望んでいるでしょう。

ミャンマー国軍は1月10日、ロヒンギャ10人が法的手続きを経ずに虐殺された事件への関与を認め、これについてアウン・サン・スー・チー国家顧問は「最終的には、国内における法の支配(を実現すること)は、その国の責任である。われわれが責任を果たすため歩んでいることは、前向きな兆候だ」として、「わが国が踏み出した新たな一歩」と評価しています。

しかし、その中身を見ると・・・・違法に殺害はしたが、村民を脅した「テロリスト」への報復だったという内容であり、その他の膨大な虐殺・放火・レイプ等を認めるものでもありません。

****ロヒンギャ殺害を認めても懲りないミャンマー****
<殺害は認めても国軍の責任は認めていないし、事件現場近くで取材していた記者2人は起訴された>

ミャンマー南西部のラカイン州の集団墓地で昨年12月にイスラム系少数民族ロヒンギャ10人の遺体が見つかった事件で、ミャンマー軍は1月10日、殺害への関与を認めた。軍がロヒンギャ殺害を認めるのは初めてだが、10人を民間人だとは認めなかった。

ミャンマー軍司令部はフェイスブックへの投稿で、ロヒンギャの「テロリスト」10人が仏教徒の村人を脅したため、報復として殺害したと主張した。

「村人と治安部隊がベンガリ(ロヒンギャの蔑称)テロリスト10人の殺害を認めたのは事実だ」と、ミャンマー軍は発表した。「交戦規定を破って殺人を犯した治安部隊員は処分する。事件は、テロリストが仏教徒の村人を脅して挑発したために起こった」(中略)

責任追及の意思も能力もない
ミャンマーのロヒンギャ迫害は「民族浄化の典型例」だと、国連は9月に糾弾した。レックス・ティラーソン米国務長官も11月のミャンマー訪問後、「民族浄化に等しい」と非難した。(中略)

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの東南アジア・太平洋部代表のジェームズ・ゴメックスは、ラカイン州で発覚したロヒンギャ10人の殺害について、独立した調査の必要だと言う。

「国軍が10人の殺害を認めたのは、ロヒンギャ迫害を全面否定してきた従来の方針からすれば大きな進歩だ。だがこの事件は氷山の一角に過ぎない。ロヒンギャを標的にした民族浄化の過程で他にどんな残虐行為が行われたのか、本格的な独立調査が必要だ」

ロヒンギャ虐殺の全容解明は、国連の調査団や独立した監視団体による現地調査をミャンマー政府が受け入れない限り不可能だ。

12月に集団墓地が見つかったラカイン州マウンドー近くにあるインディン村は、同州で最も弾圧が激しかった地域の1つだ。同月上旬、ロヒンギャ問題を取材していたロイター通信のミャンマー人記者2人がミャンマー当局に身柄を拘束されたのもこの地域だった。(中略)

国家機密法違反で記者逮捕
事実、ミャンマーの司法当局は1月10日、ロイター通信のワ・ロー記者(31)とチョー・ソー・ウー記者(27)の2人を国家機密法違反の罪で起訴した。有罪になれば、最高で禁固14年が科される可能性がある。

「私たちに真実を明らかにさせないための不当逮捕だ」と、ワ・ローは初公判後にロイター通信を通じて声明を発表。アメリカ、国連、EU、国際機関やその関係者らは相次いで、ミャンマー政府に対して2人の即時釈放を求めた。

(中略)米国務省も、無条件の即時釈放を訴えた。「2人の記者が起訴されたことに、アメリカは深い失望を表明する」【1月12日 Newsweek】
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これまで国軍の虐殺を否定してきたスー・チー氏ですが、そのことの責任への言及もありません。国際的な介入も拒否する姿勢です。

****スー・チー氏 ロヒンギャ問題でみずからの責任言及せず
(中略)(国軍によるロヒンギャへの暴力という)この問題をめぐっては、ロヒンギャの人たちが、多くの無抵抗の住民が殺害されたと訴えているほか、国際社会からも「迫害や虐殺があった」と非難が強まっていますが、スー・チー氏は、不法な暴力は確認されていないと主張してきました。

会見では、こうした点でのみずからの責任についてスー・チー氏から言及はありませんでした。

またスー・チー氏は「さまざまな批判を受け止めているが、最もよい対策が何かを決められるのは私たちだけだ」と述べ、あくまでミャンマー政府の責任で解決する問題だと強調しました。【1月12日 NHK】
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国際批判に苛立つスー・チー氏
スー・チー氏のロヒンギャ問題への消極的対応については、国際社会において失望も大きくなっています。

****ミャンマー、ロヒンギャ危機の諮問機関メンバーを解任 前米知事****
ミャンマー政府は25日、イスラム系少数民族ロヒンギャへの弾圧に関する諮問機関のメンバーを務める前米ニューメキシコ州知事のビル・リチャードソン氏を解任したと明らかにした。同氏によるアウン・サン・スー・チー国家顧問への「個人攻撃」を非難している。
 
ロヒンギャ弾圧を示す証拠が相次で明らかになる中、ロヒンギャの側に立った発言をしていないスー・チー氏は人権を守るスター政治家としての評価が急激に下がっていた。
 
ミャンマー政府は、22日に首都ネピドーで諮問会議が行われたが、ロヒンギャ問題で助言することにリチャードソン氏が関心を持っていないことが「明らかになった」としている。

隣国バングラデシュには69万人近くのロヒンギャが逃れており、リチャードソン氏は国際諮問機関のメンバー5人のうちの一人だった。
 
フェイスブックに投稿された英語の声明で政府は「異なる意見が表面化してきたことを考慮し、彼が今後も諮問機関のメンバーを務めることは、全ての関係者にとって最善ではないと判断した」と述べている。ビルマ語の声明では「解任」という言葉を使っている。
 
一方、リチャードソン氏の広報担当者は、ミャンマー政府の主張は「事実ではない」と批判している。
リチャードソン氏はミャンマー政府が設置した諮問機関がロヒンギャ危機の原因を「ごまかしてしまう」ことを危惧しているとして、そのような機関に居続けることは良心に反すると表明する声明を出していた。
 
またリチャードソン氏はスー・チー氏には「道徳的なリーダーシップが欠如」していると激しく非難。ロイター通信の記者2人の釈放を求めたリチャードソン氏に対し「怒り狂った反応」をしたと指摘した。【1月26日 AFP】
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“リチャードソン氏はロヒンギャ問題を取材していたロイター通信記者2人が国家機密法違反の罪で起訴されたことに関し、「報道の自由は民主主義の根幹」と強調。この問題でミャンマーの内相と会談する予定だったが、急に中止になったことを明らかにした。難民流出に対する国軍の責任問題でも、追及しないスー・チー氏に不満を示した。
”【1月26日 時事】とも。

スー・チー氏が他人の助言を聞き入れない“唯我独尊”的な傾向があることは以前から指摘されていたことですが、事態は悪い方向へ流れているように思われます。

軍の力の前で沈黙か
いつも言及しているように、スー・チー氏には国軍を動かす権限がない、国民世論もロヒンギャを嫌悪しているという大きな制約があるのは事実です。ただ、そうであっても・・・・

****盟友の死、スーチー氏沈黙 ミャンマー与党法律顧問、銃撃死1年****
ミャンマー最大都市ヤンゴンの空港で起きたある弁護士の殺害事件から29日で1年がたつ。殺されたのはアウンサンスーチー国家顧問の盟友で与党の法律顧問だったコーニー氏(当時63)。

軍の関与を疑う見方もある中、真相解明が進まない事件はスーチー氏の苦しい立場を象徴している。
 
■軍の影、進まぬ解明
「警察や裁判所が本気で真相を明らかにしようとしているとは思えない」。コーニー氏の遺族側代理人のロバート・サンアウン弁護士は取材に語気を強めた。
 
コーニー氏は昨年1月29日午後5時ごろ、インドネシアから帰国してヤンゴン空港で車を待っていたところ、拳銃で後頭部を撃たれ、即死した。

実行役の男(54)がタクシー運転手らに取り押さえられ、殺人の疑いで逮捕・起訴された。2月中旬、殺害を指示したとして軍の元中佐(47)が指名手配されたことで、軍の影がちらつき始めた。
 
実行役の男らの裁判は昨年3月から今月までに40回を数えた。だが、裁判や捜査には不可解な点がある。
 
事件に使われた拳銃について、警察は「我々の仕事ではない」と、いまだに鑑定を行っていない。今月26日の公判では、付着した指紋すら調べていないことが明らかになった。また、手配された元中佐は首都ネピドーでの足取りを最後に逃亡を続けている。

裁判所は「事実が判然としない」との理由で、法律で決められた指名手配犯の財産差し押さえ命令を出していない。

■政権不安定化、懸念?
コーニー氏は与党・国民民主連盟(NLD)で重要な役割を果たしてきた。英国籍の息子がいるため、軍事政権下でつくられた憲法の規定で大統領になれないスーチー氏を実質的な政権トップの国家顧問にする法案作成を担った。スーチー氏が掲げる憲法改正でも推進役の一人だった。
 
スーチー氏は昨年2月にあった追悼集会で、「大きな損失だ」とその死を悼んだものの、その後は一切発言をしていない。

NLDの国会議員は、「軍の関与が疑われても、下手な追及はできない」と説明する。決定的な証拠もなしに事を荒立てれば、政権の不安定化にもつながる。
 
また、コーニー氏がイスラム教徒であることも影響しているとの指摘もある。仏教徒が約9割を占めるミャンマーではイスラム教徒への視線は冷たい。

イスラム教徒ロヒンギャの問題で国際社会の批判を浴びる中、コーニー氏の殺害直前のインドネシア訪問は、ロヒンギャ問題解決の方策を探るためだったという。
 
ロヒンギャを支援するビルマ人権ネットワークのチョーウィン代表は、「殺害事件の解明にはミャンマーの民主国家としての力量が問われている。これができなければ、さらに複雑なロヒンギャ問題の解決は無理だろう」と話した。【1月28日 朝日】
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スー・チー氏が就任して以来、国軍に抵抗して民主化・人権のために奮闘している・・・という話はほとんど聞きません。報じられるのは国軍の影響に配慮して迎合するような発言ばかりです。

軍の影響力を恐れ、何もできないということであれば、民主化に一定の理解を示し、実際に民主化に大きな力を発揮し、軍への影響力も有していたテイン・セイン前大統領のほうがまだよかったかも・・・ということにもなります。「そんなことはない・・・」というところを見せてほしいのですが。

なお、「超法規的殺人」で国際的には悪評高い、フィリピンのドゥテルテ大統領は1月26日、スー・チー氏との最近の会話で、ミャンマーの問題に対する人権活動家の反発を無視するよう助言したことを明らかにしたそうです。
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インド  ガンジー殺害から70年 ガンジーが目指した「平等な社会」のほころび

2018-01-30 21:56:55 | 南アジア(インド)

(糸車を回すガンジー【ウィキペディア】 イギリス綿製品不買運動の一環です)

植民地解放運動や人権運動の領域で大きな影響を与えた「非暴力、不服従」】
インド独立の父であるガンジーの非暴力・不服従という思想は、インドにとどまらず、広く世界に大きな影響を与えました。

****マハトマ・ガンディー****
アフリカで弁護士をする傍らで公民権運動に参加し、帰国後はインドのイギリスからの独立運動を指揮した。

その形は民衆暴動の形をとるものではなく、「非暴力、不服従」(よく誤解されているが「無抵抗主義」ではない)を提唱した。

この思想(彼自身の造語によりサティヤーグラハ、すなわち真理の把握と名付けられた)はインドを独立させ、イギリス帝国をイギリス連邦へと転換させただけでなく、政治思想として植民地解放運動や人権運動の領域において平和主義的手法として世界中に大きな影響を与えた。

特にガンディーに倣ったと表明している指導者にマーティン・ルーサー・キング・ジュニア、ダライ・ラマ14世等がいる。【ウィキペディア】
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ガンジーの思想については何も知りませんが、暴力を厭わない権力の圧政に対峙したとき、「非暴力、不服従」でどれほどのものが達成できるのか、また、そのとき膨大な犠牲者が生まれるのでは・・・との、単純素朴な疑問も感じてはいます。

以前観たガンジーを扱った映画で一番印象的なシーンは、イギリス官憲に対し人々が列をなして立ち向かい、殴られても殴れても前進をやめず、殴られて倒れた者はまた列の後に並び・・・・と、まさに「非暴力、不服従」で抵抗の意思を示すシーンでした。

感動的ではありましたが、もし官憲が銃を使用したらどうなるのか・・・とも感じた次第です。
もちろん、「非暴力」の相手に、いかに官憲といえど銃を抜くわけにはいかない・・・というところが「非暴力、不服従」の肝要なところでしょう。

しかし、1930年4月23日のペシャワルでは、発砲するイギリス軍に対し、“前列の人々が倒れたらば後列の人々が前進し銃火に晒された。この衝突は朝11時から夕方5時まで続いた。”【ウィキペディア】という事態にも。

少なくとも、「非暴力、不服従」を貫くには、殴られても再び抵抗運動に加わるような、強靭な意思が必要であることは間違いありません。

現実の変革運動としての有効性とは別に、安易な暴力の応酬にならないために、敬意を払うべき考えではあるでしょう。

このあたりの話は、日本の平和憲法や現実の安全保障政策にも関係してくるようにも思いますが、私の手にはあまりますので、これ以上は。

モディ首相は本当に「敬意」を感じているのか?】
今日、1月30日は、カンジーがヒンズー至上主義者に暗殺されて70年目にあたるそうです。

****<ガンジー70年>インド各地で追悼 暗殺された日****
非暴力・不服従運動で知られるインド独立の父マハトマ・ガンジー(1869〜1948年)が暗殺されちょうど70年となった30日、インド各地で多くの人がガンジーを追悼した。

モディ首相はツイッターで「バープー(父という意味のガンジーの愛称)の命日にあたり敬意を表します」と投稿した。
 
ガンジーが火葬された首都ニューデリーの「ラージガート」では、モディ氏や与野党の幹部ら多数の人々が追悼に訪れた。

娘2人と訪問したアルチャナ・ジャーさん(44)は「子供たちにも非暴力の思想を受け継いでほしい」と話した。
 
ガンジーはニューデリーに滞在中、イスラム教徒に友好的な姿勢に反発したヒンズー至上主義者の男に銃撃され、78歳で死亡した。【1月30日 毎日】
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カンジーは「非暴力、不服従」でインド独立を実現しただけでなく、宗教や身分制度によって差別されない平等な社会を目指しました。

インド国民がみな、そんなガンジーを敬愛しているか、インド社会でガンジーの精神が実現されつつあるのか・・・というと、そういう訳でもないようです。

銃撃したはヒンズー至上主義者でしたが、現在のインドでは、自身がヒンズー至上主義でもあるモディ首相のもとで、社会的にイスラムやカースト制枠外の被差別民(ダリット)などに対するヒンズー至上主義者の不寛容が顕在化しているということは、これまでも何度も取り上げてきたところです。

モディ首相のツイッターについても、どこまで本心なのか・・・という疑念も感じます。

また、そうした社会風潮が、カンジー銃撃の評価にも影響を与えているようです。

****<ガンジー>インド根強い差別 暗殺者「復権」広がる****
インド独立の父、マハトマ・ガンジーが暗殺されてから30日で70年。インドではカーストや宗教間の対立はここ数年、むしろ深まっている。インド社会の融和と平等を目指したガンジーの理想の実現はなお遠い。
 
インド西部ビマ・コレガオン。幹線道路沿いに焼け焦げた車やバスが放置されていた。「暴徒が放火して回った。こんなことは初めてだ」。カースト制の最下層として差別されている不可触民「ダリト」のラジェンドラさん(60)は嘆いた。
 
暴動が起きたのは今月1日。1818年にダリト主体の英国軍が上位カーストのマラタ王国との戦争に勝利した記念式典に数千人のダリトが参加したのに対抗し、ヒンズー至上主義集団が付近でデモをする過程で暴徒化してダリトを襲撃した。ラジェンドラさんは「いつ再発するか分からない」と不安を語る。
 
ガンジーはダリトを「ハリジャン(神の子)」と呼び、差別撤廃を訴えた。インド憲法は差別を禁じ、ダリトには公務員採用や大学入学などで優先枠が設けられたが、社会的な偏見や差別は続く。
 
ビマ・コレガオンの上位カーストの男性(36)は「以前から上位カーストはダリトを見下し、いさかいになっていた。それが暴動につながった」と火種は日常的にあったと明かす。
 
宗教対立も深まっている。2014年にヒンズー至上主義を掲げるモディ首相のインド人民党政権が発足して以来、ヒンズー教で神聖視する牛を食べたなどとしてイスラム教徒らが殺害される事件が相次いだ。

地元メディアによると、牛を巡る犯罪は10〜13年は2件だったが、14〜17年には76件に急増し、29人が死亡、226人が負傷。被害者の多くはイスラム教徒とダリトだ。

イスラム教団体指導者、ジャラルッディン・ウマリ師は「ガンジーの思想に反し、今のインドはイスラム教徒やダリトへの敵意に満ちている」と嘆く。
 
イスラム教徒に友好的だとしてガンジーを暗殺したナトラム・ゴドセは、人民党の支持母体でモディ首相も所属していた極右団体RSS(民族奉仕団)の元メンバーだ。

モディ政権や人民党が公然とガンジーを批判することはないが、ヒンズー至上主義政権の誕生が極右団体の活動を誘発したとの指摘は多い。
 
地元紙によると、ゴドセの命日を祝う集会など復権の動きが全国各地で広がっている。

ゴドセの共犯者だった実弟の孫アジンキャ氏(49)はモディ政権が発足したころから、西部プネで経営するオフィスの一室でゴドセの遺灰や写真の展示を始めた。アジンキャ氏は「彼は狂信者ではない。国のために暗殺したのだ」と正当化する。
 
ガンジー記念館(ニューデリー)のサイラジャ・グラパリ研究員は「社会が不寛容になり、ガンジーを理想と考える人が少なくなった」と懸念を示した。【1月28日 毎日】
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ヒンズー至上主義の台頭を示す社会現象のひとつとして、歴史を題材にした映画をめぐる以下のような話題も。

****インド、歴史映画めぐり抗議拡大 ヒンズー至上主義者「歴史を歪曲」 女優に「鼻をそぐ」脅迫も****
インドで25日に公開された歴史映画「パドマーバト」をめぐって、インド各地で激しい抗議活動が起きている。物語にヒンズー教徒の王妃とイスラム教徒の皇帝によるロマンスが盛り込まれているとの噂が広がり、ヒンズー至上主義者が「歴史を歪曲している」と反発したためだ。映画館前に軍が出動。異例の厳戒態勢での封切りとなった。
 
映画は13世紀のインド西部ラジャスタンが舞台で、メーワール王国の王妃パドミニの人生が描かれている。
 
抗議の発端は作中で、同地に攻め込んだイスラム教徒の皇帝とパドミニとの「恋愛シーンが描かれている」との見方が広まったためだ。

原作となった叙事詩で王妃は皇帝からの求婚を拒否して自殺しており、ラジャスタンでは「ヒンズー教徒女性の象徴」として今も人気を集めている。ヒンズー至上主義者にとって、侵略者であるイスラム教徒と“聖女”の恋愛は到底容認できないというわけだ。
 
制作者側は映画の内容についての噂を否定し続けたが、撮影時から地元の高位カーストであるラージプートを中心に反発がわき起こり、ヒンズー至上主義団体「カルニ・セナ」などが公開中止を求めるデモを展開した。
 
主演の女優ディーピカー・パードゥコーンさんには「鼻を切り落とす」という脅迫まで届いている。インドの中央映画認定委員会は複数箇所に編集を加えたうえで、タイトルの一部を変更するよう決定を下したが、それでも反発は収まらなかった。
 
ようやく25日に封切りにこぎ着けたものの、23日夜から抗議活動が激化し、主要都市では軍隊や警察が警備に当たった。

インド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどによると、公開に反対する人々が自動車に放火したり、高速道路を封鎖したりする騒動が続発し、ニューデリー近郊のハリヤナ州グルガオンではスクールバスが襲撃される事件も起きた。西部グジャラート州では、一連の騒動で250人が身柄を拘束されたという。
 
ただ、騒動を経た経緯もあってか映画は注目され、25日だけで国内で100万人以上を動員したという。インターネット上には、映画を見た人からの「2人が愛情を交わす場面はどこだ」「見てから抗議をした方がいいだろう」などと冷静な声が相次いでいる。【1月28日 産経】
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【「弱者の抑圧は恥ずべきこと」とは言いつつも、現実社会では・・・
ガンジーが目指した平等な社会への思いについて、ガンジーの孫で、子供時代にガンジーとも触れ合ったラージモーハン・ガンジー元上院議員は以下のように語っています。

****<ガンジー>思い死なず 孫「弱者抑圧の今こそ学んで*****
・・・・ヘイトスピーチが世界を覆う現状に触れ「ガンジーは弱者の抑圧は恥ずべきことだと言っていた。もし生きていれば、今の世界を変えようとしただろう」と語り、現代こそガンジーの思想に学ぶべきだと訴えた。(中略)
 
ガンジーはヒンズー教徒とイスラム教徒の融和や、カースト制の最底辺に位置する「不可触民」への差別の撤廃を訴えた。

だが、インドでは今も宗教暴動やカースト差別が続く。ラージモーハン氏は「多数派の一部が少数派を抑圧する権利があると思い込み、政府はそれに対して何もしない。平等なインド社会を目指したガンジーの思想に反する」と批判。

米トランプ政権による移民規制などにも触れ、「弱者への抑圧は世界的な潮流となり、不名誉ではなくなってしまった。弱者は権利のために闘うべきだ」と指摘した。また「暴力は結果を生み出さない。非暴力闘争で世界に訴えるべきだ」と強調した。
 
ラージモーハン氏はガンジー同様、人権活動家として長年、平等や宗教融和などを目指す運動に参加した。「正しい道を進もうとしたら、ガンジーと同じ道を歩んでいた」と語る。

ニューデリーの貧しい小屋でガンジーと再会する夢を繰り返し見た時期があった。「インドがまたガンジーを必要としていると感じた。彼の思想は死ぬことはない」【1月28日 毎日】
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ただ、ガンジーの“不可触民(ダリット)を含めすべてのカーストは平等”という考えは、現実社会で差別に長年苦しんできた最下層のダリットにしてみれば、いかにも“きれいごと”で、言葉の上だけのものにも思えたようです。

そのあたりのガンジーとダリット解放運動指導者の対立については、1月7日ブログ“インド ヒンズー至上主義によるダリットへの暴力 そのダリットが差別する「ネズミを食べる人」”でも取り上げましたが、一部を再録します。

****インドのカースト制度は「人種差別」。カースト廃止を望まない被差別層もいる現実****
・・・・そもそもインド憲法は、17条で「不可触民制は廃止され、いかなる形式におけるその慣行も禁止される。不可触民制より生ずる無資格を強制することは処罰される犯罪である」としてカーストによる差別を禁じているものの、カースト制度そのものの撤廃を宣言したわけではない。
 
なぜこのような条文になったかを説明しようとすると、インド独立をめぐるさまざまな利害対立が顕在化した1930年代の複雑な交渉過程から説き起こさなければならないが、要約すると次のような経緯だ。
 
ムスリム勢力が「自分たちはマイノリティ(少数民族)ではなく一民族である」として独立を強行したことで、ガーンディーは残されたインドを「ヒンドゥーの国」として統一するほかなくなった。
 
当時、ヒンドゥーの進歩派(改革派)のあいだでは、「(「ブラフミン(司祭階級)」「クシャトリア(軍人階級)」「ヴァイシャ(商人階級)」「シュードラ(奴隷)」という身分制度)ヴァルナは差別的なヒエラリキー(階層構造)ではなく、たんなる分業形態に過ぎず、本来、不可触民を含めすべてのカーストは平等である」という思想が唱えられていた。

いわば、カーストから差別性を取り除き近代的な平等に適合させようとしたのだが、ガーンディーがかなり無理のあるこの「進歩主義」に与したのは、ヒンドゥーを全否定することで社会が混乱し、イギリスに介入の口実を与えインド独立が頓挫することを恐れたからだった。

「カースト制は差別ではない」という“きれいごと”に対して真っ向から反論したのは、不可触民出身の政治家で、インド憲法の起草者でもあったアンベードカルで、「差別され、排除されてきた不可触民がヒンドゥーの一部であるわけがなく、(ムスリムと同じ)独立した民族として分離選挙(自治)を認められるのが当然だ」と主張した。
 
しかしガーンディーは、アンベードカルのこの分離主義をぜったいに認めることができなかった。イギリス植民地政府がイスラーム勢力の要求をいれて分離選挙を認めたことがパキスタン建国につながったからで、4000万~5000万人といわれる不可触民に分離選挙が認められれば、独立インドが内部から解体してしまうおそれがあった。

1932年、イギリス首相マクドナルドが、カースト差別撤廃運動の高まりを受けて不可触民への分離選挙を認めると(コミュナル裁定)、ガーンディーが断食によって抗議したのはこれが理由だ。
 
この「生命を賭した抗議」によってアンベードカルは妥協を余儀なくされたが、ガーンディー側も「カースト差別はヒンドゥー教徒のこころの問題」というきれいごとで済ますことはできなくなった。

こうしてインド憲法に、カースト間の差別を禁止するとともに、カースト制度によって差別されてきたひとびと(指定カーストおよび指定部族)に対する特別規定が設けられ、衆議院および州立法議員の議席が「留保(リザーブ)」されることになった。

分離選挙を撤回する代償として、被差別層に対する政治的権利の優遇を憲法で定めたのだ。この「リザーブ制度」が、インド版のアファーマティブアクション(少数民族優遇措置)になる。(後略)【2017年5月25日 橘玲氏 「橘玲の世界投資見聞録」】
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数千年の歴史のなかで育まれてきたカースト制はインドそのものと言っても過言ではなく、ガンジー一人の力ではいかんともし難いものもあったようです。

カーストによる差別は禁じるものの、カースト制度そのもののを撤廃するものでもない・・・という曖昧さは、現在のヒンズー至上主義の台頭、イスラム・被差別民への差別の増大、あるいは被差別民側のと特権的「リザーブ制度」への固執といった混乱・矛盾を今に残すことにもなっています。

もうひとつの差別、女性の問題
差別あるいは平等ということでは、インドが抱えるもうひとつの問題は、女性への性暴力に示されるような男女間の差別の問題です。

長くなるので、今日目にしたインド女性問題に関する記事をひとつだけ。

****インド、「望まれない女児」は推定2100万人 根強い男児偏重****
インド政府は29日、毎年発表している経済調査報告書で、男児の誕生を切望する親が息子を授かるまで子どもを産み続けるため、「望まれない女児」が推定で2100万人存在すると発表した。
 
インドでは一家の稼ぎ手や跡継ぎは息子だと考えられており、親が息子の誕生を望むことが常とされてきた。同国では花嫁側が多額の持参金を用意する慣習が根強く、娘は金銭的な負担とみなされることも多い。
 
直近の国勢調査によると、同国の男女比は男性1000人に対し女性は940人にしか満たない。胎児の性別による中絶は違法だが、この男女比の差は違法中絶も一因とされている。(中略)
  
2011年に英医学専門誌ランセット(The Lancet)で発表された研究では、インドで過去30年間に女児であるという理由で行われた妊娠中絶は最大で1200万件に上るとしている。【1月30日 AFP】
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コンゴ民主共和国の果てしない混乱、深刻化する危機的状況の背景には世界の無関心も

2018-01-29 21:18:52 | アフリカ

(ウガンダ西部の村で、コンゴ民主共和から国境を渡って来た避難民ら(2018年1月24日撮影)【1月27日 AFP】)

居座る大統領 今年12月の選挙実施も不透明 
アフリカの資源大国コンゴの果てしない混乱については、これまでも時折取り上げてきました。

*****コンゴの住民虐殺 中央アフリカの民兵組織衝突 イエメンではコレラが蔓延・・・世界の現状****
アフリカ中央に位置する資源大国コンゴでは、カビラ大統領が任期切れを過ぎても“居座り”を続けていますが、そうした政治混乱に加えて、中部・東部では多くの武装勢力が跋扈する状況が続いています。

そのひとつが、4月24日ブログ“コンゴ 中央カサイ州で暴力が横行 住民100万人以上が避難 政府高官・大統領の責任”でも取り上げた中央カサイ州での政府軍と反政府勢力の衝突です。

“政府軍と反政府勢力の衝突”と言うよりは、正確には“両勢力による住民虐殺”と言うべきでしょう。
現地カトリック教会は、3383人が殺害されたと報告しています。(後略)【2017年6月23日ブログより再録】
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年が明けても状況は改善していません。悪化の一途のようです。

カビラ大統領は依然として居座りを続けています。

****デモ隊と治安当局が衝突、7人死亡 コンゴ民主共和国****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で12月31日、任期が切れた後も大統領職にとどまるカビラ氏(46)の退陣を求めた集会の参加者と治安当局が衝突し、少なくとも市民7人が死亡、約120人が逮捕された。
 
ロイター通信などによると、デモは教会などが呼びかけ、首都キンシャサなどで実施された。治安当局はデモの実施を認めず、インターネット回線を遮断。一部地区で参加者に発砲したという。(中略)

憲法は3選を禁じており、カビラ氏は任期満了を迎える16年12月までに退陣する予定だったが、「有権者名を更新できない」などの理由で選挙の実施を先送りしている。今年12月に選挙を実施するとみられている。【1月1日 朝日】
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“今年12月に選挙を実施するとみられている”というのも、かなり怪しい状況です。

****<コンゴ民主共和国>混乱深まる 「大統領退陣デモ」活発化****
アフリカ中部の「資源大国」コンゴ民主共和国で、任期切れ後もその地位にとどまっているカビラ大統領(46)の退陣を求めるデモが活発化し、治安部隊との衝突が激しくなっている。

カビラ政権は大統領選の延期を繰り返す一方、市民の不満を治安当局の力で封じ込めようとしており、欧米諸国などが懸念を表明している。
 
コンゴの憲法は大統領の任期を2期までと定めている。カビラ氏は2016年末に2期目の任期が切れた後も退陣を拒否。与野党は昨年中の大統領選実施で合意したが実行されていない。

今のところ選挙は今年12月に実施が予定されているが、選挙管理委員会は資金不足を理由にさらなる延期も示唆している。
 
今月21日に首都キンシャサなど各地で選挙の実施を求める抗議行動が行われたが、治安当局は集会などの開催を認めず教会に集まった参加者に催涙ガス弾を発射。少なくとも6人が死亡、68人が負傷し、抗議を呼びかけた教会関係者の拘束も相次いだ。
 
昨年12月31日のデモでも7人が死亡している。また、国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)によると、治安当局によって昨年、「超法規的」に殺害された人々の数が1176人に上った。
 
こうした事態を受け、米国務省は「最も強い言葉で非難する」との声明を発表。旧宗主国のベルギーや欧州連合(EU)なども相次いで懸念を表明した。
 
AP通信などによると、カビラ大統領は26日、6年ぶりに記者会見に臨んだが「政情不安は存在しない」などと持論を展開。

しかし、次期大統領選への立候補を明確に否定しなかったため、野党はカビラ氏が「(3選を可能にする)憲法改正をもくろんでいる」と批判を強めている。
 
一方、大統領選を巡る問題とは別に、政府軍と反政府武装勢力の紛争が続く東部の南キブ州でも衝突が激化。24〜26日の3日間で、約7000人の避難民が隣国ブルンジに逃れたといい、治安の悪化が懸念される。
 
日本の約6倍の国土を誇るコンゴは銅やコバルトなど豊富な天然資源ゆえに紛争が絶えない。1998年に東部を中心に起きた大規模な内戦は周辺国を巻き込んだ国際紛争に発展。2003年に終結したが、紛争関連での死者は約540万人に上った。【1月29日 毎日】
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“6年ぶりに記者会見に臨んだ”というのも“民主共和国”の国名にそぐわない話です。

東部・中部で続く武装勢力の跋扈、政府軍との衝突 混乱で深刻化する飢餓
政府軍と反政府武装勢力の紛争が激化している南キブ州では、上記のように大量の難民が発生しています。

****コンゴ民主共和国の戦闘激化、約7000人の避難民 湖を渡りブルンジに****
政府軍と反体制派の戦闘が激化しているコンゴ民主共和国から今月24~26日までの3日間で7000人近い避難民がマットレスやスーツケースなどの家財道具を船に積んでタンガニーカ湖を渡り、隣国ブルンジに入っていたことが分かった。ブルンジ警察が26日に明らかにした。
 
コンゴ民主共和国東部の南キブ州では政府軍と反体制派の衝突が激化している。
 
ブルンジ警察によれば、24日以降、政府軍と民兵組織ヤクトゥンバとの戦闘を逃れるために同国からブルンジに渡り、難民として登録した人々は合計6692人に上る。ただし避難民流入のペースは落ちてきているようだという。
 
ある人権活動家はAFPに対し、「昨日(25日)のタンガニーカ湖は、避難民と彼らの家財道具をぎっしり積んだありとあらゆる大きさの船でほぼ埋め尽くされ、ものすごい眺めでした」と語った。

ブルンジに入った避難民の一人は「生活環境は極めて厳しい」と話した。「大多数の人間が食料や水もなく、トイレもない」【1月27日 AFP】
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コンゴの凄いところは、上記のような西部・首都キンシャサでの大統領退陣要求デモの混乱、東部の南キブ州での武力衝突だけにとどまらず、国内各地で武装組織などによる衝突・混乱が起きていることです。

従前ブログでも取り上げているように、中部のカサイ地域でも政府軍、民兵組織入り乱れての衝突で、危機的状況が生じています。

****コンゴ民主共和国:カサイ地域で320万人が深刻な食糧不足 飢きん発生目前****
国連WFP、ユニセフ(国連児童基金)、FAO(国連食糧農業機関)の3つの国連機関は、コンゴ民主共和国で数十万人のもの人々の命を救うための時間が限られていると厳しい警告を発表しました。

5歳未満児40万人が重度の急性栄養不良に
紛争のために避難を余儀なくされた農民たちは、植え付け期を3期連続して失いました。そのために、人々には食べるものがほとんど残されていません。食糧支援は彼らのニーズに応えきれていません。

カサイ地域で深刻な食糧不足に直面している320万人のうち、12月に支援を届けられたのはわずか40万人です。75万人以上が依然として避難生活を余儀なくされています。

林に隠れ住んでいた63万人近くの人々が焼き払われた村に戻りましたが、食糧生産を再開するための支援を必要としています。地方のコミュニティの90%以上が、農業以外に生きる術をもっていません。(中略)

国連WFPコンゴ民主共和国のクロード・ジビダー事務所長は、「各国によって支援が提供される兆しがあるものの、発生している人的被害の規模の大きさに対して獲得できた財源はまったく不十分です。コンゴ民主共和国政府と国際社会は、カサイ地域での大規模な飢きんの発生を予防するために、あらゆる分野での支援に再び取り組まなければなりません。それが迅速かつ共同に実施されなければ、多くの人が命を失うことになります」と話しました。【1月23日 国連WFPニュース 】
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本来は、大統領居座りなどの政治混乱などを許す状況にはないのですが・・・。
こうした危機的状況にあっても、保身しか考えないような指導者だから今の危機的状況があるとも言えます。

これは地図を見ていての全くの個人的印象ですが、首都キンシャサはコンコ共和国との国境近い西の端にあって、中東部など日本の6倍もある広大な領域を全く統治できていないのではないでしょうか。「資源さえ確保できれば・・・」ということで、統治の意思があるのかさえ疑問です。首都キンシャサは経済成長著しく、建設ラッシュに沸いているそうですが。

【「資源の呪い」が招いた“アフリカ大戦”と現在の混乱
“今の危機的状況”と書きましたが、コンゴの危機は今に始まった話ではなく、むしろ今は“長年の大乱がようやく収まった平和の時代”とも言えます。

前出【1月29日 毎日】の最後にあるように、“日本の約6倍の国土を誇るコンゴは銅やコバルトなど豊富な天然資源ゆえに紛争が絶えない。1998年に東部を中心に起きた大規模な内戦は周辺国を巻き込んだ国際紛争に発展。2003年に終結したが、紛争関連での死者は約540万人に上った。”という歴史があります。

現在も、各地で武装勢力が跋扈しているのも、豊富な地下資源が資金源となっているからでしょう。また衝突が絶え間なく起こるのも、そうした資源の利権をめぐる争いがあってのことでしょう。

1998年8月から2003年7月にかけて、ツチとフツの民族対立や資源獲得競争が原因で行なわれた“第2次コンゴ戦争”がアフリカの多くの国家の介入を呼び込んだ“アフリカ大戦”となったのも、豊富な地下資源が各国を呼び寄せた結果でしょう。まさに「資源の呪い」の典型です。

それにしても“死者は約540万人”というのは、とんでもない数字です。第2次世界大戦以降の最も犠牲者の多い戦争です。

そんな歴史があると“「超法規的」に殺害された人々の数が1176人に上った”とか、中東部での衝突で発生する犠牲者など、政治・軍指導者には“ごく日常的なもの”にも思えてしまうのかも。

【“無関心”が助長する中東を凌ぐ人道危機
更に問題は、“アフリカ大戦”で信じられないほどの犠牲者が出たこと、現在も続く衝突・混乱で多大な犠牲者で出ていることが、“アフリカのよくある混乱”としてかたづけられ、世界的にはほとんど注目されていないことです。

中東の混乱は、石油供給の不安定化という影響から、ひろく世界にその危機感が共有されますが、アフリカの奥地で何万人殺されようが、あるいはレイプされようが、国際社会には関係ない・・・と言ったら言い過ぎでしょうか。

****子ども40万人が餓死する」2018年、“シリアより深刻な”コンゴの人道危機に目を向けてほしい****
かつてノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏は、「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ。」と言った。

第二次世界大戦以降に起きた紛争で、最も多くの犠牲者を出しているのはどの国で起きている紛争か、ご存じだろうか。

シリア、イラク、アフガニスタン、パレスチナ、ウクライナ...。そんな答えが頭に浮かんだかもしれない。
正解は、コンゴ民主共和国。第二次世界大戦以降に起きている紛争としては最多である、540万人以上の犠牲者を生み出している。

多くの人にとっては、意外な答えだったかもしれない。なぜなら、「数字」に繋がらないコンゴの惨状が日本で報じられることなどほとんど無いからだ。

世界最多の避難民、子ども40万人の餓死
コンゴ民主共和国では紛争や武装勢力の影響によって、昨年だけでも170万人が避難民となっている。ノルウェー難民評議会は先月6日、「これは巨大危機だ。人々が暴力から逃げるそのスケールはとてつもなく、シリアやイエメン、イラクを凌ぐペースだ」と発表している。

コンゴでは2016年、平均して毎日5000人が家を追われたことになる。

UNICEF(国連児童基金)は先月12日、コンゴ民主共和国南西部カサイで、5歳以下の子ども40万人以上が深刻な栄養失調状態にあり、緊急支援が行われなければ2018年の間にも餓死する恐れがあると警告した。

ユニセフ・コンゴ民主共和国事務所のタジュディーン・オイウェイル代表代理は、「何か月にもわたり多くの家族が厳しい避難生活を強いられていることによって、カサイ地方の深刻な栄養失調や不安定な食料供給がもたらされている」と述べている。

レイプが横行しているコンゴ東部
南西部カサイの治安が悪化する一方で、コンゴ東部は「女性にとって世界最悪の場所」と形容されることもある。毎日のように、数百人もの規模でレイプが横行していることもあるからだ。

コンゴ紛争では、深刻な数の「女性に対する性的暴力の被害」が報告されている。国連人口基金によれば「1998年以降、推定20万人の女性と少女が性的暴力の被害を受けた」と言われる。

対象となるのは成人女性だけでなく、中には、4歳の女の子までもがレイプの被害に遭っている。詳しくは以下の記事「4歳の少女をレイプ、女性にとって最悪の場所-アフリカ最大の紛争コンゴの性暴力を考える」を読んでほしい。

コンゴの人道危機は中東よりも深刻
2018年に入り、コンゴでは1300万人以上もの人が緊急の支援を必要としており、昨年の同じ時期より約600万人も多くなっている。

コンゴでは、2016年12月までに退陣する予定だったカビラ大統領に対する抗議活動が度々起きており、首都キンサシャから離れた地域でも武装勢力が跋扈する原因となっている。

先月6日にBBCが報じた「DR Congo displacement crisis 'worse than Middle East'」(コンゴ民主共和国の避難民危機は"中東よりもさらに悪い")は、この国の惨状がいかに厳しい状況にあるか、そしていかに世界から関心を向けられていないかを物語っている。

シリアやイラクで続く紛争がメディアを通じ私たちに届けられる一方、これほどの惨状が今なお続いているにもかかわらず、コンゴ紛争がメディアに取り上げることは少ない。

日本においては、この紛争の存在すら知らない人がほとんどだろう。もしかしたら、「コンゴ民主共和国」という国自体もそれほど知られていないかもしれない。

かつてノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏は、「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ。」と言った。2018年、コンゴで起きている人道危機に目を向けてみてほしい。【1月9日 原貫太氏 ハフィントンポスト】
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コメント

この頃中国社会で流行るもの 「喪文化」「喪茶」に「仏系」

2018-01-28 21:37:42 | 中国

(「喪茶」メニュー 【https://matome.naver.jp/odai/2151304151064361001】)

自虐・自嘲の「喪茶」 人民日報は「精神的な麻薬」と批判
よく言えば“成功を目指してアグレッシブに挑戦する姿勢”、悪く言えば“手段を選ばず、モラル・ルールも無視して・・・”といったイメージが強い中国人・中国社会ですが、“中国の若者の間では2016年ごろから、自虐や自嘲といった若者の心理を表した「喪文化」が流行している”という興味深い記事が。

****自虐的な若者の「喪文化」 慰めか現実逃避か****
「役に立たず無為に過ごす紅茶」「命の無駄遣い緑茶」「家が買えないアイスレモンティー」……。悲しい名が付けられたお茶を出すのは、「喪茶(SungTea)」という飲料店。

白と黒を基調にデザインされた「喪茶」の店内のメニューには、「頑張れ、君が一番太っているラテ」「元彼の方が私より幸せ紅茶」など、後ろ向きな文言が並んでいる。
 
中国の若者の間では2016年ごろから、自虐や自嘲といった若者の心理を表した「喪文化」が流行している。

西北民族大学民族学・社会学学院の常進鋒講師は、「『喪文化』は退廃的で悲観的な情緒と色彩を帯びた言語や文字、絵などのサブカルチャーの一種だ」と説明する。(後略)【1月28日 東方新報】
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いかにも正規メディアらしく(「東方新報」は在日中国人向けのメディア。おそらく中国当局公認の立ち位置でしょう)面白くないので省略しましたが、あえて、その“大人視線”からの“指導の心にあふれた”論評の一部を紹介すると、以下のようにも。

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若者は学業や職場、物質面や感情など、さまざまな面で常に競争の中にいる。時に挫折したり、落ち込んだりするのは正常なことだ。成長の過程では避けて通れない立ち向かうべき問題だ。

普段の生活の中で深く傷ついた時、「喪文化」はもしかすると若者にとっては慰めとなるのかもしれない。もちろん、後ろ向きの状態が続き、現実から逃避したり、開き直ったりして「人生なんて意味がない」とねじ曲がった価値観を持つようなことは危惧すべき点だ。

「喪文化」を批判するのではなく、若者が勇気を持って積極的に「喪」から脱け出して社会的責任を果たし、思い描いたようなすばらしい生活を勝ち取ることを応援することが重要だ。

若者が学業や仕事、恋愛や結婚などの現実にストレスを感じていたら、手を差し伸べてやり、今後の人生がもっと明るくなるように一緒に歩んでやることが大切だ。【同上】
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「はい、はい、わかりました」といった感じの論評ですが、この「喪文化」について検索すると、以下のような記事も。

中国の厳しい競争社会、ハードルが高くなる一方の現実、親など周囲からの重荷となるような期待、開けぬ明日への展望・・・そうしたものを反映した若者サブカルチャーの一種のようです。

****中国ミレ二アル世代にまん延する自虐的「喪の文化****
9月5日、将来に大きな期待を抱いていた中国の相当な数の若者が、希望を失い、ソーシャルメディア上で「喪」と呼ばれる態度を示している。

中国の(2000年代に成人あるいは社会人になる)「ミレニアル世代」にとって、今後のキャリアや結婚についての見通しは暗い。

彼らは、「何も達成できないブラックティー」、「元彼(女)の方がいい生活をしているフルーツティー」など奇妙な名前のお茶を、苦い思いを抱きつつ啜っている。

さまざまな種類のお茶を提供するカフェチェーン「喪茶」のメニューは冗談半分だが、そこに反映されている感情は深刻である。将来に大きな期待を抱いていた中国の相当な数の若者が、希望を失い、ソーシャルメディア上で「喪」と呼ばれる態度を示している。「葬式」を意味する漢字に由来する、意気消沈を示す言葉だ。

多くの場合、皮肉に満ちた敗北主義を楽しむ「喪」の文化は、インターネット上の著名人や、音楽や一部の人気モバイルゲーム、テレビ番組、悲しい表情の絵文字や悲観的なスローガンによって人気に拍車がかかっている。

数年前と比べて好調とは言いがたい経済において、この文化は、好条件の就職を巡る苛酷な競争に対する反動と言える。

中国では以前から住宅の所有がほぼ結婚の必要条件のように思われているが、集合住宅の価格が急騰するなかで、主要都市では住宅がますます購入しにくくなっている。

「今日は社会主義のために戦いたいと思っていたけど、あまりに寒いのでベッドに寝転がって携帯電話をいじっている」

「喪」の文化を代表するネット著名人の1人であるZhao Zengliangさん(27)は、ある日の投稿でこう書いた。また別の投稿では、「明日起きたら、引退の日だったらいいのに」と書いている。

だが、こうした皮肉に満ちたユーモアは、この国を支配する中国共産党には通じない。
共産党機関紙の人民日報は8月、喪茶を「精神的な麻薬」を売っているとして非難。論説のなかで、「喪」の文化は「極端で悲観的かつ希望のない態度であり、憂慮と議論に値する」と表現した。

「立ち上がり、勇気を出そう。喪茶を飲むことを拒否し、正しい道を歩み、今日的な闘争心を持って生きよう」と人民日報は呼びかけている。

本記事について、中国国務院新聞弁公室にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

「喪」の文化はポーズや気取りかもしれないが、高学歴の若者の一部に見られる絶望感は、安定性を重視する習近平国家主席とその政権にとって大きな懸念事項である。

5年に1回開催される今秋の党大会が近づくにつれ、メディアやインターネットへの検閲・取り締まりが強化されているが、ネット上の視聴覚コンテンツに「前向きな活力」を求める規則が6月に発布されたことを受けて、その対象は消極的な言説にまで広がっている。

6月後半、半人半馬の元喜劇俳優を主人公とする米国のアニメシリーズ「ボージャック・ホースマン」が中国のオンライン番組配信「愛奇芸(iQiyi)」から削除されたことについて、若いネット市民の一部から不満の声が上がった。同シリーズは、主役の自己嫌悪と冷笑的な姿勢で「喪」世代に人気を博していた。

短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」を使用するビンセントと名乗る27歳のユーザーは、このニュースを伝える投稿に「前向きな活力なんてどうでもいい」とコメントした。(中略)

中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)<0700.HK>は、「喪」の文化に対する反撃に着手している。

同社は「燃」という中国語(字義通りでは「燃える」という意味であり、楽観主義という含みがある)を軸として、「あらゆる冒険は生まれ変わるチャンス」などのスローガンを掲げる広告キャンペーンを開始した。

<「一人っ子世代」の悲哀>
だが、「喪」の文化を崩していくのはなかなか難しい。

「喪」は、成算や労力の多寡を問わず目標を達成しようとする、現在繁栄している中国の都市文化に対する反乱でもある。これに結びついているのが、成功を期待する社会・家庭からの強いプレッシャーである。

一人っ子政策世代の一員として、高齢化する両親や祖父母を扶養することを期待されているという事情がこれには通常伴っている。(中略)

18歳から35歳くらいまでの中国ミレニアル世代の人口は、約3億8000万人。先行世代には思いもよらなかったような機会にも恵まれているが、彼らが抱いていた希望は実現困難になりつつある。

今年、大卒者の平均初任給は16%下落し、月4014元(約6万7000円)になった。国内大学の卒業者が過去最高の800万人(1997年の10倍近い)に達し、就職競争が激化しているためだ。

Zhaoping.comの調査によれば、エリート層である「ウミガメ」(多くは多額の費用をかけて海外留学し帰国した者)でさえ、2017年卒業者の半数近くは、月6000元を下回っている。回答者の70%は、給料が「期待を大きく下回る」と答えている。

マイホーム購入はほぼ中国全土で共通する夢だが、北京、上海、深センといった大都市で、より高級な住宅への住み替えはますます難しくなりつつある。

中国不動産関連サイト最大手のFang.comによれば、北京の中古住宅市場では2016年に価格が36.7%も跳ね上がり、2寝室の平均的な住宅価格は約600万元(約1億円)に達した。

これは同都市の住民1人あたり平均可処分所得の約70倍である。ちなみにこの比率は、ニューヨーク市では25倍に満たない。

Ziroom.comによれば、北京の賃借人は推定800万人で、その大半がミレニアル世代とされているが、E-House China R&D Instituteの調査結果では、1人あたり家賃の中央値が過去5年間で33%上昇し、6月には月2748元に達したという。これは同市の所得中央値の58%に相当する。

こうした住宅コストの上昇によって、中国の若年労働者は市の周縁部に住まざるを得ず、ストレスの多い長時間通勤を強いられる場合が多い。

このような経済的圧迫は、中国若年層の晩婚化にもつながっている。東部の主要都市である南京では、公式統計による初婚年齢の中央値が、2012年の29.9歳から、昨年は31.6歳に上昇した。

<高まる期待>
「喪」の世代と対照的なのが、それ以前の数十年間、中国経済が2桁成長を続けていた時期に成人した世代の楽観主義である。この世代は、より厳しい時代を経験した「吃苦」世代である両親・祖父母にとっては夢でしかなかったようなキャリア展望と生活向上への期待をモチベーションとしてきた。

「わが国のメディアと社会は、あまりにも多くのサクセスストーリーを私たちに押しつけてきた」とZhaoさんは言う。

Zhaoさんはロイターの取材に対し、「『喪』は、伝統的な『成功』の実現を求める社会の容赦ない圧力に対する、静かな抵抗だ。自分にはそれは無理だ、と認めることだ」と語った。

中国政府傘下のシンクタンク、中国社会科学院の研究者らが6月、国内の大学生200人を対象に行った調査では、これは鬱憤(うっぷん)をためたヤングアダルト層にとって不満のはけ口が不足している兆候でもある、と結論づけている。

「インターネットそのものは彼らにとってプレッシャーを解放する経路になっているが、検閲があるために、大っぴらに不満をぶちまけることは不可能になっている」と、社会科学院のXiao Ziyang研究員は指摘。「社会問題を防ぐには、政府が世論のコントロールを行う必要がある」と同研究員はロイターに語った。(後略)【2017年9月12日 Newsweek】
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「吃苦」世代から楽観主義世代へ、そして「喪文化」という流れ、海外留学者を指す「ウミガメ」という呼称、絶望的な賃金・住宅価格の現状、ネット規制で不問のはけ口がない状況・・・・等々、面白い話です。

人民日報が「喪茶」を「精神的な麻薬」と非難するのも面白いですが、“ネット上の視聴覚コンテンツに「前向きな活力」を求める規則”というのは笑えない話です。

反対意見、異論を認めず、すべてが党指導の意に沿うように仕向けることは、閉塞的で息苦しい社会をつくるだけです。

【「仏系」の人々は何も欲しない。なぜならば何も期待しないからだ。すべてを受け入れる。】
日本でもひところ“草食系”という言葉がはやりましたが、以下の「仏系」は中国版“草食系”のようです・
そして「喪文化」とも同根のようにも。

****中国の「仏系」ミレニアル世代、穏やかで十人並みがモットー****
中国の指導者は、一生懸命働き大きな夢を抱けと市民たちを鼓舞する。だが、ミレニアル世代の中には、ずっと十人並みであり続けることを宣言する若者たちがいる。
 
この若い世代は「仏(ほとけ)系」の若者たちと呼ばれている。何も経を読むわけではない。穏やかで、なるように任せるという姿勢で人生に臨むその様子からそのように呼ばれているのだ。

「人生はとても疲れる」と語る23歳のグオ・ジアさんは「仏系」について、「自分の力で変えられないことを受け入れ、流れに従っていく」人のことだと説明する。
 
中国の若い努力家たちの多くと同様、グオさんは自分自身に課した大きな期待に応えるために首都・北京にやって来た。しかしその当初から、就職した金融関係の仕事から地下鉄での通勤まで、あらゆることに不安を覚えていたという。
 
それから1年以上を経て、グオさんは物事をあるがままに任せることに安らぎを見出すようになった。「最近はほぼ穏やかで平静です。人生に満足を感じれば、それで十分です」と心情の変化について明らかにした。

「中国の夢」なる理念の周りに、特に若者を結集させようと習近平国家主席が奮闘している中国で、このような発言が聞かれるのはなんとも奇妙ではある。(中略)
 
例えば「仏系の乗客」は、配車サービスの「滴滴」の運転手に自分がいる場所を説明するよりも自ら歩いて車両のある場所まで行くこと選び、「仏系のネット通販利用者」は嫌いなものでも送り返さず、「仏系の労働者」は「職場に無事到着し、静かに家に帰る」ことを何よりも望んでいる、といった具合だ。

「仏系」の人々は何も欲しない。なぜならば何も期待しないからだ。勝っても負けても不運でも幸運でも、すべてを受け入れる。
 
長年の一人っ子政策と経済の急成長は中国の若者らに、学業で成功を収めて社会で出世しろと多大な圧力をかけてきた。

表面的には彼らは「普通」の生活を送っている。同僚とランチを食べ、週末にはスポーツに興じる。でも「仏系」の若者たちは何事につけても、やり過ぎることを警戒している。
 
グオさんは数か月前に突然、自己改善しようと思い立った。定期的にジムに通ってテニスをし、ビジネススクールの入試勉強を始めた。だがその1か月後、頭痛と鼻水に悩まされるようになった。

「すぐさま食べたいものを食べて、好きな時だけ運動をする元のやり方に戻しました。そうしないと疲れすぎるから」 【1月28日 AFP】
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「仏系」という呼称は、もともとは日本の「仏男子(ぶっだんし)」に由来するそうです。

****中国で増える「仏系青年」、ネガティブ?それともただのユーモア****
今年のネット流行語を見ると、特定の人にレッテル貼りをする傾向が読み取れる。中年の人を「脂ぎった」と表現し、若者のことを「仏系」と表現している。(中略)

あなたは「仏系」をどう理解する?
最近、ネット上で「90後(1990年代生まれ)の第一陣がすでに『仏門』に入った」と題する文章が投稿され、「仏系」という言葉が話題になるようになった。

そして、ネットユーザーが「仏系」を使って、いろんな言葉を作っている。そのほとんどが90後の生活と密接な関係がある。例えば、「仏系恋愛」や「仏系大学院受験」、「仏系ゲーム」などだ。

「仏系」という言葉は新出単語ではない。2014年に、日本メディアが、一人で時間を過ごすのが好きで、自分の趣味や生活リズムを大切にし、恋愛などに多くの時間を割きたくない男性のことを「仏男子(ぶっだんし)」と表現したことに端を発している。

中国では17年、「仏系追っかけ」という言葉が、アイドルファンの間で流行した。それは、これまでアイドルの追っかけに熱中していたファンが、トラブルに疲れたのが原因で、怒ったり、けんかしたりしない、平和な追っかけスタイルに変えたことを意味する。

「仏系」という言葉が人気になると、議論も巻き起こった。そして、「すべてのことを『仏系』スタイルで片づけることはできない。生活上のとりとめのないことならどうでもいいが、恋愛は真剣にしなければどうやって実を結ばせることができるのか?真剣に仕事をしなければ、どうやって事業を成し遂げることができるのか?」との声のほか、「これは、90後が気持ちの整理をするために自嘲気味に『仏系』という言葉を使っているだけ」との声も上がった。

ただ、多くのネットユーザーは、「『仏系』という言葉を使って、現実から目をそらし、逃避しているだけでは」と懸念を示している。

「仏系青年」は決してネガティブではない
南京の女子大生・余さんは、「『仏系』という言葉を初めて見た時、まさに自分のことだと感じた。私は、『仏系』とは、いろんなことをあまり追及しすぎないようにすることだと理解している」と語った。

そんな余さんは最近、英語のテスト勉強をしており、「もちろん高い点の方がいい。でも、予想していたほどの成績でなかったとしても、無理にどうこうしたくないし、来年またがんばればいいだけのこと」と「仏系」の心で臨んでいる。 (中略)

最近話題になった「脂ぎった」という言葉が中年の人々の危機を反映しているというなら、「仏系」という言葉は90後の現状を反映していると言えるだろう。

17年、90後の最後の一陣(1999年生まれ)が成人になり、一部の90後は職場でその力を発揮し始めている。学校を出て社会に進出し、現実と理想のギャップを実感し、生活リズムの速さや熾烈な競争が、90後のストレスを増大させている。

そして、戸惑ったり、イライラしたり、自分に自信が持てなくなったりしている90後も少なくない。そのため、ネット上では、自分をネタにするサブカルチャーが人気になり、それが社会にも広がっている。(後略)【2017年12月19日 Record china】
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まあ、何事につけ“反作用”はつきものであり、「喪文化」にても「仏系」にしても、“アグレッシブな中国社会”の反作用のひとつであり、“アグレッシブな中国社会”そのものが変質するものでもないのでしょう。あだ花のようなポーズや気取りに過ぎないのかも。

そうであるにしても、「喪文化」や「仏系」が流行るということで、少し中国社会を身近なものに感じることができる・・・・かも。
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マレーシア  今年夏には総選挙 野党をまとめて与党に挑むマハティール元首相92歳 

2018-01-27 22:57:27 | 東南アジア

【1月17日 朝日】

汚職疑惑の首相 野党リーダーは服役中 野党の立場で復権を目指すマハティール元首相
多数派マレー系の他、華人系、インド系などの多民族国家(日本外務省HPによれば、マレー系67%、華人系25%、インド系7%)であるマレーシアは1957年の独立以来、現在の与党連合が政権を維持しています。

しかし、マレー系優遇策であるブミプトラ政策を根幹とした体制には近年揺らぎがみられ、かつて政権内部で副首相も務めたものの、内部抗争で政権外に追われたアンワル氏を軸にした野党連合が与党に迫る勢いとなり、2013年5月に行われた総選挙では初の政権交代があるかどうか注目されました。

この2013年選挙では、野党連合は得票率で上回りながらも議席では与党を下回る結果に終わり、政権交代は実現しませんでした。

その後もアンワル氏は政権交代に向けて活動を展開していましたが、2014年3月、2008年にアンワル氏が事務所スタッフの男性に「同性愛行為」をしたとして異常性行為罪に問われた事件の控訴審で、マレーシアの上訴裁判所は無罪とした2012年の1審判決を取り消して逆転有罪判決(禁固5年)を言い渡し、2014年3月に最高裁がアンワル氏の上告を棄却して有罪が確定しました。

アンワル氏の収監により、野党連合はその主軸を失うことになりました。

一方、与党・ナジブ首相には、政府系投資会社「1MDB」(ワン・マレーシア・デベロップメント)を舞台にした巨額汚職疑惑が持ち上がり、批判も強まっています。

その批判の急先鋒に立ったのが、ナジブ首相の“師匠”でもあるマハティール元首相。
マハティール元首相(92歳)は与党を離脱し、宿敵アンワル氏サイド(次期首相とも見られていたアンワル元首相を政権外に放逐したのはマハティール元首相でした)とも“手打ち”を行い、崩れかけた野党連合の再構築を図って、ナジブ首相へ挑戦しています。

****92歳、復権狙う マハティール元首相、マレーシア総選挙へ ナジブ氏と師弟対決****
マレーシアのマハティール元首相(92)が野党連合の首相候補として再び政権の座を狙っている。

与党連合を率いるかつての盟友、ナジブ首相(64)への批判を強め、好感度ではナジブ氏に迫るとの調査もある。3期目を目指すナジブ氏は汚職疑惑もあり、人気は低迷。今年前半にも行われる見通しの総選挙に注目が集まっている。
 
「マレーシアは近隣国との友好を大事にしたい。対決姿勢だった過去の時代にはもう戻らない」
16日、シンガポールでリー・シェンロン首相と会談したナジブ氏は記者団にこう語り、同国のリー・クアンユー元首相と厳しい応酬を繰り返したマハティール氏を皮肉った。
 
マハティール氏は1981年から5期22年にわたった首相時代、師弟関係にあったナジブ氏を主要閣僚として引き立てた。だが、2009年に首相に就任したナジブ氏がマハティール氏が進めたマレー系住民の優遇政策「ブミプトラ政策」の一部廃止に踏み切ったことなどから関係は悪化した。

 ■不正疑惑を攻撃
15年、政府系ファンド「1MDB」の資金をめぐってナジブ氏の不正流用疑惑が発覚した際は「国民の信頼を失った」と辞任を要求。16年には新党を立ち上げ、野党連合を主導してきた。
 
マハティール氏は今月7日、野党連合の首相候補に選出された。首相になるには下院議員になる必要があり、総選挙に出る予定だ。
 
下院の任期は6月24日で満了し、総選挙は遅くとも8月22日までに開催される。ナズリ観光相は7日、記者会見で「4月には下院は解散されるだろう」と語った。ナジブ氏は解散に踏み切れずにいるが、低所得者層などへの補助金を充実させた今年の予算の効果が出るのを待って解散するとの見方が強まっている。
 
与党連合は同国の独立以来60年以上にわたって政権を握るが、都市部では、ばらまき予算で地方を優遇する政策への不満が高まっている。

13年の前回総選挙で与党連合は議席数では勝利したが、得票率では野党連合を下回った。今回はナジブ氏の「政治とカネ」の問題もあり、首相周辺は「ギリギリの戦いになるかもしれない」と懸念する。
 
マラヤ大学のアズマン准教授が昨年7~12月に行った調査によると、「望ましい首相」としてナジブ氏を選んだのは21%。マハティール氏は18%だった。
 
ただ、現時点では地元メディアは与党優勢と報じる。都市部より人口当たりで議席が多く配分されている地方では今も与党人気が根強いからだ。

「ばらまきによって地方票を固める強大な集票マシンを作り上げたのはマハティール氏。それを本人が打ち崩すのは難しい」と政治評論家のオ・エイスン氏は分析する。

 ■野党に不協和音
野党連合内にも不協和音がある。連合を組む人民正義党のワンアジザ党首は、同国が刑法で禁じる同性愛行為の罪で収監中の野党指導者アンワル元副首相の妻。

アンワル氏は98年、当時首相だったマハティール氏と対立。副首相を解任され、同じ年に同性愛行為の罪などで1度目の起訴をされた経緯がある。アンワル氏の支持者には不満が残っており、連携の行方は不透明だ。【1月17日 朝日】
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原発問題で安倍首相を批判する小泉元首相が野党首相候補として選挙に挑む・・・といった感じでしょうか。
ただ、マハティール氏については、自身の息子の政治的扱いなど、ナジブ首相との権力闘争的な側面もあるとの指摘があります。

上記記事にもある「望ましい首相」に関する世論調査については、以下のようにも。

****マレーシア次期首相 世論調査でナジブ氏優位***
マレーシアは、5年に1度の総選挙が今夏に行われる。公立マラヤ大学が次期首相に関する世論調査を実施した結果、2009年から現職のナジブ首相が最も高い支持率を集めたことがわかった。現地紙ニュー・ストレーツ・タイムズが報じた。
 
調査は17年7~12月に主要12選挙区で行われ、次期首相に誰がふさわしいかという問いに対し21%がナジブ首相を挙げた。以下、2位が1981年から2003年に首相を務めたマハティール氏で18%、3位が1998年に副首相の座を解任されたアンワル氏で10%などとなっている。
 
調査担当者は「現時点では、ナジブ首相と政府が国民のための政策を示していると受け止められている一方、野党は自分たちに何ができるかをアピールできていないようだ」と分析した。(後略)1月23日 SankeiBiz】
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“世論調査でナジブ氏優位”とのことですが、マハティール氏とアンワル氏を足すと28%となり、ナジブ首相を上回ります。

前出記事にもあるように、マハティール氏とアンワル氏サイドには過去の因縁もあって、単純な“足し算”にはなりませんが・・・・。

ナジブ首相とマハティール元首相の間では、激しいやり取りがなされていますが、中国依存をめぐって、日本の名前もあがっています。

****マレーシア首相、「国の主権を中国に売却」に反論****
2018年1月25日、中国メディアの参考消息網は、シンガポールメディアの報道を引用し、マレーシアのナジブ首相が、中国からの直接投資に関連し「政府が国の主権を中国に売り渡している」とする批判が出ていることについて、日本を例に挙げて反論したと伝えている。

シンガポール華字紙・聯合早報によると、ナジブ首相は23日、「投資マレーシア2018」の基調講演で、こうした主張は「無責任な政治家によるもの」と反発した。

ナジブ首相は「中国と香港からの直接投資額を合わせると630億マレーシアリンギット(約1兆7600億円)だ。日本からの700億マレーシアリンギット(約1兆9600億円)よりも少ないが、私たちの国を日本に売っている主張する人は誰もいない」と指摘。「政府は中国だけでなく、日本や米国、欧州連合(EU)、インド、アラブ諸国からの投資も歓迎する」と述べた。

ナジブ首相はまた「現政権は、残された朋党主義に向き合わなければならない」とも述べ、名指しを避けながらもマハティール元首相を批判した。【1月25日 Record china】
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ナジブ首相が日本を持ち出したのは、“ルックイースト”で日本との関係を重視したマハティール首相への当てつけでしょうか。

アンワル元首相釈放予定の報道も
収監中のアンワル元首相については、釈放予定の報道も。

****同性愛罪で収監中の元副首相、6月釈放へ****
1/9 NNA ASIA
マレーシア連邦野党・人民正義党(PKR)の実質的指導者で、同性愛罪で収監中のアンワル・イブラヒム元副首相が、今年6月8日にもスランゴール州のスンガイブロー刑務所から釈放される見通しだ。8日付ニュー・ストレーツ・タイムズが伝えた。(後略)【1月9日 NNA ASIA】
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これが、刑期満了によるものなのかどうかは知りません。

6月というと、総選挙直前の微妙な時期です。
出所後5年は選挙に立候補できませんが、刑務所の中にいるのと、外で野党連合を支えるのとでは大違いです。

あるいは、アンワル氏サイドとマハティール元首相の間を裂くために、あえてこの時期に釈放する、あるいは、そうしたニュースを流して揺さぶるのか(アンワル氏が出所すれば、アンワル氏サイドとしては、あえて宿敵マハティール元首相と組む必要性は薄れます)・・・・まったく知りません。

ひとつ言えるのは、アンワル氏について、出所しても年齢を考えると政界復帰は困難・・・と見られていましたが、92歳のマハティール元首相がここまで活動できるなら、アンワル元首相(70歳)も、まだまだいけるのかも・・・・。

微妙な民族間の空気のなかで、民族対立のリスクもはらむブミプトラ政策の扱い
汚職疑惑に関しては当然に議論・追求される必要がありますが、マレーシアの今後にとっては、“合法的民族差別政策”でもある、マレー系優遇策のブミプトラ政策をどうするのか・・・という問題が非常に重要でしょう。

ブミプトラ政策は、“企業の設立や租税の軽減などの経済活動のほか、公務員の採用などでもマレー系住民が優遇されている。また、マレー人は国立大学へ優先的に入学できる”【ウィキペディア】といったマレー系優遇策で、経済的に劣後していたマレー系住民の地位引き上げを目指したものです。

ナジブ首相は2013年当時、「ワン・マレーシア」のスローガンで華人・インド人の取り込みを図り、ブミプトラ政策の緩和を目指しましたが、選挙敗北後、地盤のマレー系住民の支持を固めるべく、ブミプトラ政策に戻っています。

華人など、ブミプトラ政策に不満を持つ層を糾合するアンワル氏は、ブミプトラ政策の改革を目指すでしょう。

ブミプトラ政策の“生みの親”であるマハティール氏は?
マレー系住民に対する優遇政策の必要性を訴えながらも、過保護がマレー系住民から危機感を奪い勤労意欲を削いでいるという弊害に苦慮もしていたと言われます。
現在どのようなスタンスなのかはよく知りません。

マレー系優遇策のブミプトラ政策を緩和・廃止することは、多民族国家マレーシアにあっては、民族問題を惹起する非常に敏感なも問題となります。

政府側には、野党の反政府運動を華人中心の運動として民族的なイメージを刷り込むことで、多数派マレー系の支持を固めようとする動きがあります。

マレーシアは多民族共存が比較的うまくいっている・・・とも見られていますが、当然に民族間の緊張・対立もあります。

従来は、華人やインド系も、有力者はブミプトラ政策の“抜け穴”を活用する形で実質的な被害が及ばないよにしており、そうした有力者のコントロールもあって、華人・インド系の不満を抑えられていた側面があります。

しかし、そうしたコントロールは通用しない時代ともなっています。
一方で、マレー系にあっては、イスラム重視の宗教保守派が影響力を強める社会的流れもあります。

民族間の微妙な空気を反映した話題としては、以下のようなものも。

****不浄な」犬の置物は店内に 戌年の春節迎えるイスラム教国マレーシア****
戌(いぬ)年の春節(旧正月)が迫る中、イスラム教徒が多数派を占めるマレーシアで小売業を営む華僑・華人は、もめ事を避けるために犬の飾り物を店内に隠している。イスラム教において犬は不浄な生き物と考えられているからだ。
 
マレーシアのイスラム教徒の中では保守派が勢力を伸ばしており、少数派宗教や少数民族との間に緊張をもたらしている。
 
華僑・華人は人口の4分の1近くを占めているが、首都クアラルンプールのにぎやかなチャイナタウンでは春節用の赤いランタンや花が飾られている一方で、犬の形をした飾りのほとんどは外から見えない場所に隠されている。【1月27日 AFP】
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選挙結果や、ブミプトラ政策の扱いは、微妙な民族間の問題に火をつける危険性を常にはらんでいます。
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インドネシア領ニューギニア  開発の遅れ、差別的処遇が生む貧困と独立運動

2018-01-26 22:41:45 | 東南アジア

(【ウィキペディア】 赤い部分がインドネシア領ニューギニア ジャワ島・ジャカルタよりオーストラリアに近い位置にあります。)

ニューギニアで麻疹拡大 栄養失調による免疫機能の低下が一因
太平洋南部のニューギニア島は日本の2倍もある非常に大きな島です。
“面積は約78.6万km2で日本の国土の約2倍の大きさである。世界の島の中では、グリーンランドに次ぐ面積第2位の島であり、大陸を含めても8番目に広い陸塊である。”【ウィキペディア】

第2次世界大戦では、日本が北部を占領し、オーストラリア軍と戦闘を行った島でもあります。

現在は、東経141度線とフライ川を境に、西部をインドネシアが領有し(パプア州、西パプア州)、東部はパプアニューギニアとして独立国家を形成しています。

そのインドネシア領のパプア州からのニュース。

****子ども800人が麻疹や栄養失調、100人死亡か インドネシア・パプア州****

インドネシア最東部パプア州アガツの病院で、床にじかに横たわって点滴を受ける少女(2018年1月25日撮影)。

インドネシア最東部パプア州で麻疹と栄養失調が広まっている問題で、同国の当局は25日、子どもの患者数が約800人に達しており、さらに最大100人が死亡した恐れがあると明らかにした。死者の大半は幼い子どもとされる。
 
隣国パプアニューギニアと領土を二分しているニューギニア島の西側に位置するパプア州では、貧困に対する不満などを背景に分離独立派による小規模な反乱行為も起きている。
 
今回の健康危機は今月半ばに初めて公になったもので、医療などの基本的なサービスが深刻に不足している状況を浮き彫りにしている。

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は事態を受け、同州の遠隔地にある村々への物資供給を軍隊と医療当局に指示した。
 
AFP記者によると、同州アガツでは25日、設備が整っていない病院が患者であふれかえり、医師らは対応に苦慮している。悪臭の漂う病院の廊下では、やせ細った子どもらが泣きながら歩きまわる姿や、ぼろぼろの担架の上に横たわる患者が見られた。
 
地元当局者らは、麻疹患者の急増に衝撃を受けている。院長はAFPの取材に対し「われわれは(麻疹拡大についての)情報を受けるのが遅すぎたため、多くの死者が出ることになった」と説明した。感染拡大の一因には、食糧不足による免疫機能の低下があるとされている。
 
アガツは、麻疹がまん延している湿原地帯のアスマットで唯一の病院がある場所で、子どもに治療を受けさせるために数時間かけて訪れる親も多い。

同地域の多くの建物と同じく杭上に建てられている同病院では病床数が80床とスペースが不足しているため、数十人の患者が近くの教会で治療を受けている。【1月26日 AFP】
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開発が遅れるニューギニア
ジャワ島を中心に、赤道にまたがる1万3,466もの大小の島からなる「島嶼国」インドネシアでは、なかなか開発がすべての地域に及んでいないのが実情で、特に、ニューギニア・パプア州は電気普及率が5割に満たない状況にあります。

****インドネシア電気普及率「19年に100%****
 ■政権発足から1割拡大、93%超に
インドネシアは、電気普及率の上昇が続いている。同国のエネルギー・鉱物資源省によると、2017年11月末時点の地域ベースの普及率は93.1%で、6月末時点の92.8%から上昇した。

ジョコ・ウィドド大統領が就任したのは14年10月で、同年末は84.0%だったことから、現政権下で約1割拡大した計算だ。国営アンタラ通信などが報じた。
 
11月末の普及率を地域別にみると、西ジャワ州が99.9%、バンテン州が99.0%、ジャカルタ特別州が98.8%と東部が全般的に高かった。一方、西部に位置する東ヌサトゥンガラ州が59.0%、パプア州が48.9%となっており、東西で格差が生じている。

同省幹部は「島嶼(とうしょ)国というインドネシアの地理特性が普及率のばらつきにつながっている」と分析し、今後は西部の電力インフラ整備に注力するとの方針を示した。すべての国民が電気の恩恵を享受できるよう全力で取り組むとしたうえで、19年には100%を達成できると自信をみせた。(中略)

ただし、今後は電気の普及拡大が難しい局面を迎えるとの意見もある。国営電力会社PLNによると、インドネシア全国で2500の集落に電力網が行き届かず、1万以上の集落は電力供給があっても使用できるのが1日8時間以内にとどまるという。
 
PLN幹部は、電気が普及していない集落は西部だけでなく、西ジャワ州やバンテン州といった普及率の高い東部にも存在すると指摘する。同幹部によると、電気が届いていないのは主に遠隔地にある人口20~50の小規模集落で、地理的に送電線の敷設が難しい。
 
アジア開発銀行(ADB)は、16年に発表したインドネシア電力事情に関する報告書で、電気の普及は人口ベースで最後の10~15%がもっとも困難だと指摘した。中国やタイの例を挙げて、インドネシアが普及率85~90%から100%を達成するまで、20年程度を要しても不思議ではないとしている。【2017年12月26日 SankeiBiz】
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多くの島々からなること、赤道も近いジャングル地帯であることなど、電化・開発が遅れている状況は理解できますが、ニューギニア島は“離れ小島”ではありません。パプア・西パプア両州には400万人以上(3分の2がパプア人)が生活しています。

素人考えでは、送電線のような大規模インフラが難しい地域なら、ローカルな太陽光発電などもあるのでは・・・とも思うのですが。

電気の普及も5割に満たず、冒頭記事にあるように貧困からの栄養失調が蔓延するという現状を見ると、何らかの政治的判断でニューギニアは優先度が劣後しているのでは、もっとはっきり言えば、インドネシア国内にあって差別的処遇を受けているのでは・・・とも考えてしまいます。

“インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、国内で最も開発が遅れている地域の一つであるパプア地方の生活水準を改善させると約束しており、2年前に大統領に就任して以降、たびたび同州を訪問している。”【2016年12月1日 AFP】とのことではありますが・・・。

中心部ジャワ島では日本・中国が受注を争った高速鉄道が中国によって建設されようとしていますが、栄養失調の子供たちに感染症が拡大するような状況の改善のほうが先でしょう。

【「自由パプア運動(OPM)」による独立運動
当然のように、現地には反政府運動・独立運動が起きています。

****西パプア」独立を 解放運動派 国連に請願書提出**** 
インドネシア東端ニューギニア島の西半分を占める「西パプア」の分離・独立を訴える請願書と180万人分の署名がこのほど、国連事務局に提出された。英ガーディアン紙など複数のメディアが報じた。 

半世紀近くくすぶり続ける西パプア独立問題について、アブドゥルラフマン・モハンマド・ファヒル外務副大臣は28日、「動向は注視するが、西パプア問題は(住民投票の行われた)1969年に解決済みだ。請願書は注目を集めるための手段にすぎない」とのコメントを出した。
 
一方、オーストラリア北部からインドネシアにまたがるメラネシア地域の島しょ国であるソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相は「(請願書提出は)より良い将来への願いを表明した」と述べ、独立を目指す国連直訴を歓迎した。
 
請願書を提出したのは、西パプア、パプア両州をまとめた「西パプア」の解放運動派。インドネシア治安部隊による人権侵害を訴えるとともに、自由意思に基づいた、西パプア独立を問う住民投票実施を要求している。
 
同解放運動派のベニー・ウェンダ・スポークスマンは「(インドネシア領入りが正式に決まった)69年の住民投票では治安部隊による住民への脅迫があった。(今回の)請願書の作成過程でも57人が治安部隊に逮捕され、54人が虐待された」と述べ、独立派住民に対する弾圧が続いていることを訴えた。
 
請願書に同意・署名したとされる住民の人数「180万人」は解放運動派の発表に基づくが、正確な数字かは定かでない。中央統計局(BPS)によると、2016年現在のパプア、西パプア両州の人口はそれぞれ約320万、89万人。10年実施の国勢調査によると、両州内に住むパプア人の比率は約66%。
 
パプア、西パプア両州はかつて「イリアンジャヤ」と呼ばれ、ニューギニア島の西半分を占めていた。1898年からオランダの植民地となったが、1961年にスカルノ政権が西イリアン解放闘争を起こしオランダと武力衝突。

62年に米国の仲介で「ニューヨーク協定」に調印し、63年にインドネシア移管。69年の住民投票でインドネシア領となったが、自由パプア運動(OPM)を名乗る独立派が「西パプア共和国」建国を掲げて分離・独立運動を展開した。
 
90年代には、同島の豊富な地下資源の権益をめぐって独立運動が再燃。この結果、広範な自治権を認めるパプア特別自治法などが2001年に制定されたが、インドネシア統治に対する不満、不信感は根強く、独立を求める火種は残ったままだ。【2017年9月29日 じゃかるた新聞】
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20世紀初頭までは“使い道のない島”でしたが、現在は“インドネシア政府は資源が豊富なパプア地方を確固として掌握し続けるため、兵士や警察官を多数配置している。”【2016年12月1日 AFP】とのこと。

住民1300人を“人質”とする村落占拠事件
反政府運動・独立運動のデモ、治安当局との衝突といったニュースはときおり目にしますが、昨年11月には、武装組織が住民1300人を人質にとって村落を占拠するという事件が起き、改めて世界の注目を集めています。

****武装組織が人質1300人、インドネシア・パプア州で謎の村落占拠事件****
<ニューギニア島のパプア州の村で警官らに対する銃撃事件が相次いだことから発覚した大量人質事件。地元では、イスラム系テロ組織説から独立運動説、米資本の鉱山会社での労働争議説まで諸説乱れ飛ぶが、未だ決め手がない>

インドネシア最東端に位置するニューギニア島にあるパプア州で正体不明の武装集団が複数の村を占拠し、住民など1300人を人質にとる事件が起きている。

インフラもほとんど整備されていない遠隔の地だけに、ニュースは地元の州警察や首都ジャカルタの国家警察の発表と数少ない地元メディアの情報に限られている。事件の詳細は不明で現地の様子を伝える映像もほとんどなく、一体何が起きているのか、インドネシア国内でも謎の事件として注目を集めている。

ことの発端は10月21日の現地時間午後12時半ごろ、同州の山間部に位置するミミカ県トゥンバガプラ地方のウティキニ川沿いにある小さな村を巡回警備中の州警察機動部隊車両が突然銃撃を受けて、警察官2人が負傷したことだ。同日朝には離れた場所で鉱山開発関連会社の車が銃撃され、運転手が負傷する事件も起きていた。

この2件の銃撃事件の捜査していた警察部隊が同日午後に再び発砲を受け、警察官1人が死亡、6人が負傷する事態になった。

このため警察は警察官を増員、完全武装で同地域での犯人捜査に乗り出したところ、11月6日ごろから周辺のバンティ村とキムベリー村が正体不明の武装組織に占拠され、住民など1300人が人質に捕らわれていることがわかった。

イスラム系テロ組織の犯行か
「武装した集団が住民を人質に取って村を占拠」という事件の第一報は、インドネシア政府、治安当局をあわてさせた。

フィリピンのミンダナオ島マラウィ市を5月に占拠し、戒厳令下フィリピン国軍と本格的戦闘を10月まで続け、多くの犠牲者がでたイスラム系武装組織と中東テロ組織「イスラム国(IS)」シンパによる事件を想起したからだ。

マラウィ市での状況が武装組織に不利になるにつれ海路インドネシアに逃走したメンバーの存在も伝えられ、インドネシアも国境警備を強化していた経緯がある。

しかし今回はパプア州の南部の山間部でとても外部から入り込める地域でないことや目撃証言による外見や言葉からパプア人の集団であること、武装しているとはいえ、拳銃や小銃レベルで一部は弓や槍を所持していることなどから、イスラム教系テロ組織の可能性は否定された。

警察は「犯罪者集団」との見方
地元パプア州警察、インドネシア国家警察によると、村々を占拠している武装集団は当初20〜25人とみられていたが、その後約100人と判明、ほぼ全員が武装し、住民と近くの金鉱山で働く州外からの労働者1300人が人質になり村外への移動を阻止されているという。

ボイ・ラフリ州警本部長は11月11日に武装集団のメンバーとして21人を指名手配したと発表。このうちリーダー格はサビヌス・ウェーカーという人物でこれまでに「殺人、銃の不法所持・不法発砲」容疑がある人物で、集団には類似の犯罪者が多く含まれている、としている。

パプア州警本部長だったこともある国家警察のティト・カルナフィアン本部長も「今回事件のあった一帯で金鉱山を無許可で採掘する労働者の中に武装グループが存在していることを当時確認していた」とわざわざコメントした。

これは今回の事件がテロや独立運動とは無関係であることを強調する意図があるものとみられているが、一部マスコミからは「そんなグループを確認していたのならなぜその時に摘発しなかったのか」と逆に批判を受けている。

独立運動の一派、労働争議との見方も
占拠された村には武装集団の求めに応じる形でこれまでに外部から食料などコンテナ20個分が届けられており、人質からは「子供用のミルクを届けてほしい」などの要望がでているという。

パプア州は西パプア州とともにニューギニア島の西半分にあり、旧オランダ領から国連統治を経て1969年に帰属を問う住民投票が実施された。しかし自国領と主張するインドネシア軍の投票操作とその後の軍の侵攻でインドネシアへの併合が実質上決まったことを背景に独立を求める武装闘争が細々とではあるが現在も続いている。

独立運動の主体は「自由パプア運動(OPM)」という武装組織で、インドネシア警察、軍への散発的襲撃やパプア州南部で大規模な金、銅鉱山開発、採掘を続ける米資本「フリーポート社」関係者への襲撃事件などを起こしている。

こうした経緯から今回の人質事件も警察官襲撃が前段になっていることからOPMの一派の関与を指摘する報道も出ている。

もっともOPMは当局が封じ込めほぼ活動停止状態と主張してきたインドネシア治安当局にしてみれば、「OPMの活動は認めたくないところ」。それがために「犯罪者集団の犯行説を強調しているのではないか」(インドネシア人記者)との見方も出ている。

さらにフリーポート社の現地子会社でもある「フリーポートインドネシア」や関連する下請けの鉱山開発各社では最低賃金や労働環境を巡る労働争議も頻発している。争議の大半は州外からの労働者とパプア人労働者の待遇格差とされ、今回も人質の中に州外からの鉱山労働者が300人含まれていることから、労働問題が関連している可能性もあるという。(後略)【2017年11月15日 大塚智彦氏 Newsweek】
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この事件については、続報で自由パプア運動(OPM)幹部が「パプア独立のため戦闘」と認めているとも報じられています。

****パプア独立のため戦闘」 CNN報道 武装組織、「人質」は否定**** 
米系鉱山フリーポート・インドネシアの拠点があるパプア州の村を武装集団が占拠した事件で、CNNインドネシアは、関与を指摘されている分離独立派武装組織・自由パプア運動(OPM)幹部の電話インタビューに成功し、その内容を15日に詳報した。

それによると、幹部は「(西パプアの)主権を取り戻すため、軍・警察と戦っている」と話し、村付近に戦闘員を展開していることを認めた。同幹部は、OPM作戦司令官のヘンドリック・ワンマン氏。

交戦地域に近い同州ミミカ県トゥンバガプラ付近で、村民約1300人が人質になっているとの当局発表、報道については、「村民は弾に当たるのを恐れて出歩かないだけ。われわれは人質を取ったことはなく、間違った情報だ」と否定した。その上で「耕作や家畜の飼育、村から村への移動、売り買いなど普段通り自由にできる」と付け加えた。(後略)【2017年11月16日 じゃかるた新聞】
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弾圧より、開発による生活水準向上が治安安定の方策
その後、“国家警察は占拠12日目の17日、「人質」となっていた住民の一部344人を救出したと発表した。救出時、武装集団が発砲したが、けが人の報告はないという。人質になった住民は総勢1300人とされ、残る約千人の安否は分かっていない。”【2017年11月18日 じゃかるた新聞】という報道がありましたが、それ以降どうなったのかは知りません。

“残る約千人の安否は分かっていない”のに続報がない(少なくとも日本語メディアでは)という無関心さが、ニューギニアの置かれている状況を示しているとも言えます。

インドネシア国軍の分離・独立運動への厳しい対応・弾圧は、東ティモールでも実証済みです。

しかしながら、そうした厳しい弾圧よりは、冒頭記事にあるような麻疹と栄養失調で子供たちが死んでいく現状を1日も早く改善し、差別的処遇をなくしていくことが、治安を安定させる最も有効な方策でしょう。
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「アメリカ第一」のトランプ大統領 グローバリズム総本山のダボス会議出席で何を語るのか?

2018-01-25 23:42:36 | アメリカ

(ダボス会議に向けて出発するトランプ大統領【11月25日 NHK】)

グローバリズムのもとで拡大する格差
グローバリズムにけん引される経済活動のなかで、貧富の経済格差が拡大していることは常に指摘されるところです。

****世界の最富裕層1%、富の82%独占 国際NGO****
世界人口の1%にあたる富裕層が1年間に生み出された富の82%を独占した一方、所得の低い人口の約半分は財産が増えなかったとの報告を、国際NGO「オックスファム(Oxfam)」が22日に発表した。
 
貧困撲滅に取り組むオックスファムは、スイス・ダボス世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が開催されるのを前に報告書を発表した。
 
それによると2010年以来、10億ドル以上の資産を持つ超富裕層の資産は一般的な労働者の資産の6倍の速さで増加。また2016年3月~2017年3月で、2日に1人のペースで超富裕層が誕生しているという。
 
オックスファムのウィニー・ビヤニマ事務局長はこの結果について、「経済の発展を示唆するものではなく、経済システムの破綻の兆しだ」と声明で述べた。(中略)
 
不平等の拡大を解決するため、オックスファムは各国政府に対し株主の配当や経営者層が得る報酬を制限することや、男女の収入格差の是正、脱税の取り締まり、保健医療や教育に対する投資の増大を訴えている。【1月22日 AFP】
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****世界の富、金融危機以降で27%増大 格差は広がる****
2007年に起きた世界金融危機以降の10年間で世界の富は27%増大したが、貧富の格差はいっそう広がったとする報告が14日、発表された。
 
スイス金融大手クレディ・スイスの調査部門が毎年発行している、世界の富に関する包括的な調査報告「グローバル・ウェルス・レポート」によると、特に昨年半ばから今年半ばの1年間における世界の富の成長ペースは過去5年間で最も速く、6.4%増となっている。

広範な株式市場の好況に加え、不動産のような非金融資産で保有される富が金融危機発生直前の水準を初めて超えたことなどが要因となっているという。
 
富の増大は世界全体で起こっているが、一方で恩恵を受けている層は明らかに一部であり、世界人口の10%未満の人々だけで、世界の富全体の86%を所有しているという。

同レポートによると2000年以降、保有資産3000万ドル(約34億円)以上の個人は5倍に増え、世界で4万5000人に上っている。
 
クレディ・スイスのレポートはまた、いわゆるミレニアル世代が前の世代よりもはるかに厳しい市場環境に置かれている点を詳細に指摘。そのため、ミレニアル世代は「富を得る展望も限られがちだ」という。
 
ミレニアル世代は世界金融危機による損害を直接被っていることに加え、「それに続いた失業や所得格差の増大にも直撃され、不動産価格の高騰や住宅ローン規制の厳格化にも見舞われ、さらに一部の国では教育ローンも大幅に増えている。一方で、彼らよりも前の世代ほど年金へのアクセスが見込めない」とレポートは論じている。【11月15日 AFP】
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グローバリズムを代表する「ダボス会議」 格差・分断の現状への認識も
その恩恵を受けていない各層からは、当然にグローバリズムによる格差・富の集中に対する強い反発が生じています。

アメリカでもグローバリズムの波から取り残されたラスト・ベルトの人々の不満を、グローバリズムを声高に否定する「アメリカ第一」を掲げるトランプ大統領が見事に拾い集めることで政権を獲得しています。(実際にトランプ氏を支える有力者が、ラスト・ベルトの人々と同じ考えかどうかは別ですが)

そのローカルを全面に押し出すトランプ大統領が、グローバリズムを代表する政治・経済エリートの集う“総本山”的なダボス会議に出席することで世界の注目を集めています。

これまでクローバリズムをけん引してダボス会議の側にも、グローバリズムのもとで“保護主義や民族間の亀裂、経済格差で世界の分断が深まっているという認識”があるようで、今年のテーマは「分断された世界における共通の未来の創造」・・・だそうです。

****ダボス会議23日開幕 保護主義や格差議論 トランプ氏の出席焦点****
会議は23~26日の4日間で、各国の首脳や経営トップら3千人以上が出席する。今年のテーマは「分断された世界における共通の未来の創造」。

保護主義や民族間の亀裂、経済格差で世界の分断が深まっているという認識のもとで、各界の指導者は将来の方向性を指し示す発言を求められる。
 
経済政策や難民問題、人工知能(AI)などの討論を中心に400以上のセッションが開かれ、このうち160以上はインターネットでライブ配信される。WEFのクラウス・シュワブ会長は「現代の地球上の課題は政治家や経営者、市民団体などあらゆる分野の英知を結集しないと解決できない」と会議の意義を強調した。
 
22日時点でトランプ氏は最終日の26日午後2時(日本時間午後10時)から演説する予定。(中略)米大統領の出席は2000年のクリントン氏以来18年ぶり。
 
ダボス会議にはグローバル経済の担い手となっている経営者や、市場開放や経済統合に熱心な指導者らが集まる。一方、トランプ氏は17年1月の就任以降、2国間交渉で国益を追求するグローバル化に逆行した通商政策を推進してきた。トランプ氏の演説とともに、経営者らがどう受け止めるかも注目される。(後略)【1月22日 日経】
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グローバリズムへの不満を背景に、保護主義や民族間の亀裂を拡大するトランプ大統領
“保護主義や民族間の亀裂”・・・保護主義は、NAFTAの再交渉を強引に進め、中国に対する制裁も辞さない、まさにトランプ大統領が推し進めているところのものです。

亀裂・分断については、「shithole」発言、「壁」による分断、一部の国からの新たな移民・すでにアメリカ国内に生活する不法移民に対する厳しい対応など、言うまでもないところです。

トランプ大統領に先立ってダボス会議に出席している政権高官からも、トランプ政権が今後、保護貿易主義的な動きをさらに強めていくことを示唆する発言がすでに出ています。

****トランプ政権】保護主義強める政権 緊急輸入制限、市場懸念**** 
トランプ米政権が再び保護貿易主義的な動きを強めている。約16年ぶりとなる緊急輸入制限(セーフガード)発動に続き、24日にはムニューシン財務長官が輸出競争力の強化につながるドル安容認に言及。金融市場はこれらの動きをトランプ大統領の貿易戦争も辞さない強硬姿勢とみて懸念を強めている。
 
ムニューシン氏はスイスでの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の会場で「貿易に関していえば弱いドルは米国にとって明らかによい」と発言。貿易赤字解消を求める政権中枢から発されたメッセージを受け、外国為替市場でドル安が加速した。
 
トランプ政権は23日には中国や韓国などからの太陽光パネルや住宅用洗濯機の輸入急増が米企業に損害を与えたとして、通商法201条のセーフガードの発動を決定。トランプ氏は発動を決める文書への署名の際、通商代表部(USTR)に「引き続き米国の産業を保護する調査を指示」したと述べた。
 
またダボス会議では24日、ロス商務長官も「中国は自由貿易を提唱することが上手だが、保護主義的な行動をとるのは一段とうまい」と挑発。中国の供給過剰が問題視されている鉄鋼製品などに厳しく対処する考えをにじませた。(後略)【1月25日 産経】
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トランプ氏出席で、「つり合いのとれたグローバル化」への合意形成?】
世界貿易のルールが破壊されるのか、新しい世界貿易のルールが見いだされるのか・・・NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉と米中貿易を巡る動きが注目されます。

重要なことは“貿易不均衡が正せるかどうかはむしろ、アメリカの国内政策にかかっている。技術革新を推進し、インフラに投資し、将来の労働力に対する教育や訓練を充実させること”【1月25日 「トランプの貿易戦争が始まった」 Newsweek】ですが、“トランプ政権は不幸にも、「アメリカを再び偉大にする」というスローガンに込めたトランプのノスタルジアに捕らわれているようだ。アメリカが世界唯一の経済大国で、一方的に他国に対米黒字削減を押し付けることができていた時代はとうに過ぎ去ったというのに。”【同上】とも。

****トランプの貿易戦争が始まった****
・・・・ある米政権高官は1月19日に報道陣に対し、アメリカは「NAFTAと米韓FTAで良い結果」に落ち着くことを望んでおり、WTOについては中国の台頭に対応できるようにするための「本気の改革」を望む、と言った。どちらとも、なんとしても必要だ。

だがアメリカがその両方を実現するには、トランプ政権が強硬な姿勢や一方的な言動をやめ、カナダやメキシコ、日本、EU、韓国などの同盟国と連携する方法を見つけ、現実的かつ多国間の貿易ルールを確立するしかない。

かつてなくバランスの取れた貿易ルールと相応の結果が求められる新時代に突入した、というトランプ政権の見解はそれ自体、正しい。

だがアメリカがそれを実現するには、友人の助けが必要だ。【同上】
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理念が真っ向から対立するようにも思われるダボス会議にトランプ大統領が出席することについては、トランプ大統領はウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、出席する目的は「アメリカのチアリーダー」になるためだと語っています。

****トランプ大統領 ダボス会議へ出発「米への投資呼び込む****
(中略)ダボス会議でトランプ大統領は、株価の上昇が続いて、失業率が17年ぶりの水準に改善したことや、法人税の大幅な減税を盛り込んだ税制改革を実現するなど経済政策の成果をアピールし、アメリカ国内への投資を呼びかけることにしています。

ホワイトハウスのギドリー副報道官は22日、NHKのインタビューに対して、「トランプ大統領は、アメリカを再び偉大な国にするため、貿易は自由だけでなく、公正でなければならないことをダボス会議で訴える」と述べ、トランプ大統領が、アメリカ第一主義を掲げて貿易の不均衡の是正などを訴えるという見通しを示しました。(中略)

トランプ大統領は24日、ダボス会議に出席するためワシントンを出発するのに先立ってホワイトハウスで、「私はアメリカへの投資を呼び込むためダボスに行く。私は『アメリカに来てくれ』と言うつもりだ」と述べて、ダボス会議でアメリカ国内への投資を呼びかける考えを示しました。【1月25日 NHK】
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何らかの合意形成を期待する向きもあるようですが・・・

****ダボス会議のトランプ氏、「世界」に何を説く****
ポピュリズムを体現する米大統領が世界のエリートを前に語ることは

・・・・トランプ氏は政治的な工作員であり、世界のエリートにとっての厄災、乱暴な言葉を吐いて礼儀正しい社会に乱入する者、そして「嘆かわしい人々」の擁護者だ。

そのトランプ氏が有名なスイスの山に登り、グローバル主義者からなる既存支配層のリーダーを自認する、正統な考えを持った裕福な人々を前に演説をする。舞台は、彼らにとって最も神聖な神殿の中心である世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)だ。

(中略)その「炎と怒り」を伴う激しい言動は、既にダボス会議の出席者が敬愛する制度や妙案の多くを攻撃している。今回の疑問は、両者がどこで折り合いをつけるかだ。ダボスがわずかながらトランプ流を受け入れるのか。それともトランプ政権がダボスの流儀を取り入れるのか。
 
トランプ氏は、過去30年にわたり国際システムをけん引してきたグローバル化への反対を決定づけるような綱領を掲げて大統領選を制した。

(中略)ナショナリストとグローバリストの論理が化学変化を起こして一体となることはあるのか。どこか不安げにグローバルシステムの雪深い山頂に座っている一部の国際機関のリーダーは、確かにそう願っているように見える。
 
トランプ氏を初めてのダボス会議に招待する裏には、何らかの新たな合意を形成する狙いがありそうだ。世界経済フォーラムの創設者兼会長のクラウス・シュワブ氏は、ポピュリスト・ナショナリスト運動のリーダーとの対話を仲介するために時間を費やしてきた。

スイスの経済学者であるシュワブ氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、現在の政治的ストレスからある種の「つり合いのとれたグローバル化」が浮上する可能性があるとの楽観的な見方を示している。
 
この見方にトランプ氏がどう反応するかは不明だ。(後略)【1月24日 WSJ】
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劇的な「悪臭弾」で会議を政治利用する可能性
現実には、国内支持層を強く意識した“政治ショー”になりそうに思えます。

****トランプ大統領、ダボス会議で「悪臭弾」放つか****
(中略)現在、トランプ米大統領は、グローバルエリートを自認するダボス会議参加者に、彼らがほぼ全てにおいて間違っていたと伝えるため、現地へと向かっている。(中略)

トランプ大統領とその側近らは、国内では難しい綱渡りに直面している。トランプ氏は、自分がアルプス山脈の麓に集まった企業経営者や著名人、リベラルな政治家を批判するのを国内の支持基盤の人々が見たがっていると分かっている。(中略)

トランプ氏がどのような演説をしようとも、それは同氏の海外における演説としてこれまでで最大の注目を集めるものとなるだろう。同氏はまた、会議で起きたことについてツイッターで非常に個人的なコメントをつぶやき続けると思われる。(中略)

米政治メディアのポリティコによると、トランプ大統領は、劇的な「悪臭弾」と一部で呼ばれるものを放つため、ダボス会議の演説を利用する可能性が最も高いという。

米国の利益を損なっているとみなす自由貿易協定を巡って他の出席者を糾弾したり、気候変動または国際通貨基金(IMF)や世界銀行の活動に懐疑的な態度を表明したりすることが考えられる。(中略)

成功したショーマンであるというのがトランプ大統領の取りえである。そして、自身の演説がダボス会議の最後に行われるという事実を確実にかみ締めるだろう。

出席する他のエリートたちにとっての問題は、最も巧みな駆け引きを講じても、自分たちの議題がトランプ氏のそれに飲み込まれてしまうことを阻止できないということだ。
言うまでもなく、それはトランプ氏がまさに望むところだ。【1月24日 ロイター】
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ダボス会議側は、本当に現状への危機感を認識しているのか?】
グローバリズムを主導するダボス会議に、格差と分断、そしてトランプ大統領のような「右派ポピュリズム」を生む現状への危機感がどの程度認識されているかに対する疑問も。

****グローバル時代の格差拡大とダボス会議が抱える矛盾 *****
(中略)私はダボス会議のベースにある基本的な考え方は間違っているとは思いません。21世紀という時代は、ヒト、モノ、カネ、情報が国境を越えて飛び交う時代であり、国や地域にしても、企業や個人にしても、このグローバリズムに最適化をしてゆくことが経済として最も合理的だからです。

反対に国境や地域に閉じこもるのでは、大きなデメリットを背負うことになります。(中略)物理的に成立しないか、コスト的に潰れていくか、あるいは規制の内部を衰退に追いやるなど副作用は計り知れないわけです。

では、このままグローバリズムを拡大して行くのがいいのかと言うと、変化のスピードが速過ぎれば問題が出ます。先進国の中で行われ、先進国の賃金水準が適用されていた仕事が、途上国に移転されれば、先進国では急速に大規模な失業が発生します。また、先進国から途上国に作業が移転し、急速に経済成長が起これば物価や地価の急速な上昇を招いたり、混乱が生じます。

そうした「ローカルな世界」から「グローバルな世界」への移行に伴う痛みもありますが、より深刻な問題としては「ローカル」と「グローバル」の間に計り知れない格差が生まれているということです。(中略)

21世紀の現代というのは、金融・情報通信・新技術という高度に知的な職種だけが、成功者としてグローバルな世界で繁栄する時代です。

その中で、その成功者のサークルに入れない人々には、「サーカスとしてのナショナリズム」と「規制などで守られた雇用というパン」が「国家というローカル」によって与えられるという「20世紀とは正反対の状況」が発生しているわけです。

つまり、国境を越えていける人間だけが富める時代であり、その結果として富める者の側は、「多様性」であるとか「寛容性」という価値観を掲げながら、「国境」を「より低く」したり「国家」というものを「より軽く」したりしたいという志向性を持つことになります。

反対に、ローカルに縛られ、しがみついている人間には排外や、孤立、多様性への嫌悪といったカルチャーが色濃くなって行くという負のスパイラルが発生するわけです。(中略)

問題は、このような格差が拡大して行けば、成功者のサークルではよりコスモポリタンなカルチャーが濃厚になる一方で、ローカルにしがみつく層はより「閉じこもる」方向になって行くということです。

その上でトランプのような「右派のポピュリズム」という政治手法を使えば、後者の持っている深い怨恨の感情を政治的求心力にする手法は、今後も出てくる可能性があると思います。

今回のダボス会議というのが、どこまでこうした危機感を持って運営されているのかどうかは分かりません。少なくとも、タイトルだけは「分断された世界の中で共通の未来を作り出す」というのですから、多少の危機意識はあるのでしょう。

ですが、少なくとも、このように「グローバル」と「ローカル」の間に経済的な格差だけでなく、世界観に関わる断裂が生じているというのは大変に危機的な状況だと思います。そのような時代に、世界経済フォーラムの大きな会議を、スイスの豪華なスキーリゾートで行うという感覚は、私には違和感があります。【1月25日 「冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」 Newsweek】
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イタリア総選挙 混乱の予測も 軌道修正も見せる「五つ星」 “お騒がせ”元首相の復権?

2018-01-24 22:59:13 | 欧州情勢

(1月22日、3月4日のイタリア総選挙に向けて選挙綱領を発表する、各種世論調査で支持率トップを走る「五つ星運動」のルイジ・ディ・マイオ新党首【1月23日 ロイター】 31歳の元ウェイター 総選挙で「五つ星」が主導権を握れば首相にも 「私は若者の失業率が60%の地域出身。私の経歴をばかにする人は、この国の若者をばかにするのと同じ」【12月29日 産経】)

【「勝者不在」の欧州政治の混迷
1月14日ブログ“EU 東西分断とポピュリズム台頭 両者が集約する難民対策で困難なかじ取り”でも取り上げたように、欧州では国民の現状・既成政治への不満を背景にした、反EU・反移民的な傾向が強い極右・ポピュリズム政党が大きな影響力を持つ状況にあります。

昨年は、オランダ総選挙、フランス大統領選挙、ドイツ総選挙等で、極右。ポピュリズム勢力の最終的勝利はなんとか回避したものの、その波は未だ収まっておらず、「執行猶予」状態にあるとも言えます。

ドイツでは昨年9月の総選挙で、難民の流入を背景に新興右翼政党「ドイツのための選択肢」が躍進する一方で、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(同盟)は議席を減らしました。

メルケル首相は、小政党との連立交渉を始めたものの昨年11月に頓挫。戦後初の少数与党政権や再選挙の可能性も指摘されていましたが、現在は、議会第2党の中道左派・社会民主党と再び大連立を組む方向で何とか協議を進めています。

ただ、“社会民主党は22日、正式な連立交渉開始が21日の社民党党大会で承認されたことを受け、交渉準備に着手する。社民党では予備交渉での合意見直しの要求も強まり、交渉が一段と険しさを増すのは必至だ。”【1月23日 産経】と、まだ政権樹立に向けた苦労が続きそうです。

こうした不透明な欧州政治状況を強く反映したものになりそうなのが、3月4日に予定されているイタリア総選挙です。

****勝者なき欧州政治、新興政党台頭で遠のく安定****
反既成政党への支持拡大で大胆な政策実施が困難に

3月実施予定のイタリア総選挙も、2017年に欧州で相次いだ選挙と同じ「勝者不在」の結末を迎える公算が大きい。
 
ドイツからオランダまで、欧州の有権者は主要政党に見切りを付け、新興政党の支持に回った。その結果、欧州政治を取り巻く環境はひどく分断され、新政権の樹立を困難にした。
 
そのため欧州諸国の多くが、受け入れ難い選択肢を迫られている。大胆な政策の実行を難しくする少数与党政権か、有権者の怒りを増幅しかねない主流派による超党派の連立政権のいずれかだ。
 
イタリアのエンリコ・レッタ元首相は「イタリアの選挙も、スペインやドイツ、オランダで見られたような分裂の道をたどるだろう」とし、「そうなれば欧州の状況はさらに厳しさを増す」と述べる。

イタリア政治の世界は、少数政党や枝分かれ政党が連立協議に過度な影響を及ぼし、これまでも常に深く分断されてきた。
 
その結果、脆弱なつぎはぎの連立政権となり、総じて短命に終わった。10年前、当時のロマーノ・プローディ政権には9つの政党が参加。各党の要求に応えるため、プローディ政権は100人を超える閣僚・次官を抱えた。だが2年も持たなかった。
 
イタリアの現議会もその伝統を維持している。2013年の議会発足時の政党数は15だった。だが現時点で23の政党が乱立、これにはメンバーが1人だけの政党が5つ含まれる。
 
3月総選挙に施行される新たな選挙法では、連合形態のグループが優位な仕組みとなっており、数多くの新たな枝分かれグループの形成を促している。
 
他国もイタリアと同様、新興政党が主流政党から票を奪う構図となっており、少数与党政権の誕生が相次いだ。
 
オランダでは、マルク・ルッテ首相が政権を樹立するのに7カ月を要した。ルッテ政権は異例の4政党による連立を組んでいる。アイルランド、ポルトガル、英国は、いずれも少数与党政権だ。

スペインでは、シウダダノスとポデモスの新政党が2015年の選挙で躍進、過去何年にもわたり続いていた2大政党政治にくさびを打ち込んだ。新政権の樹立ができず、その年の後半に再選挙の実施に追い込まれる。現在のマリアノ・ラホイ首相は少数与党政権を束ねている。
 
これまで安定政権のとりでだったドイツでさえ、(中略)メルケル首相は連立政権を樹立できていない。前政権を支えた超党派の「大連立」への回帰は可能性の1つだ。
 
だが、既存政党が新興グループや反エスタブリッシュメント(反既得権益層)の流れを封じ込めるために団結して大連立を形成したと有権者が受け止めれば、イタリアでは、すでに傷ついている既存政党の信認をさらに損ないかねない。

足元の世論調査によると、反エスタブリッシュメントを標榜する五つ星運動が30%弱を得票し、第一党に躍り出る勢いだ。そのため多くの議員や党指導者は、3月の選挙により、いずれの政党も過半数議席に届かない「ハングパーラメント」になると予想する。
 
イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領は第一党となった政党に少数与党政権の樹立か、主要政党に超党派の大連立を求めるかもしれない。
 
硬直したイタリア経済の立て直しには強力な政権の誕生が欠かせないが、いずれのシナリオもその先行きに暗い影を落とす。
 
五つ星運動は連立政権への参加を拒んでおり、すでに既存政党による大連立には反対する立場を表明している。
 
五つ星運動の首相候補ルイジ・ディマイオ氏は「同盟や連立といった言葉は廃止する」と主張。代わりとなる選択肢は、大連立政権の樹立ではなく「再選挙実施だ」と述べている。

TSロンバードの政治アナリスト、コンスタンティン・フレイザー氏は、大連立を組めば、有権者が支持しないことをやるのは避けられないとして、「主要政党が連立相手として手を組めば、反対派はポピュリスト(大衆迎合主義)へと向かう」と話す。
 
シンクタンク、ブリューゲルのフェロー、アレッシオ・テルツィ氏は、イタリアで超党派の連立政権が誕生すれば将来的に厄介な方向に進むと指摘。「ドイツとは異なり、イタリアにおける大連立は危機管理モードにおいてしか機能しないため、国に安定を与えることができない」という。【1月4日 WSJ】
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単独過半数獲得のハードルが高まったイタリア選挙制度
イタリアの政党支持率・選挙後の予測については、下記のように報じられています。
“(2017年12月)22日付の世論調査の政党支持率は、首位の「五つ星」29%に続き、レンツィ前首相の与党・民主党(中道左派)が22.8%。ベルルスコーニ元首相が率いるフォルツァ・イタリア(中道右派)は16.2%だった。
 
フォルツァ・イタリアは、反移民の右翼政党「北部同盟」などと右派の政党連合を組めば支持率約37%で、「五つ星」などを上回るものの、獲得議席は過半数には届かないとの見方が強い。
 
選挙では、経済政策に加えて、イタリアを目指して北アフリカから地中海を渡る移民問題が主な争点となる。”【12月29日 毎日】

“イタリア議会は10月、比例代表制だった両院の選挙を、議席の3分の1を小選挙区制で、3分の2を比例代表制で行う改正選挙法を可決。下院で40%以上を得票した政党に過半数議席を付与する「ボーナス制度」も撤廃し、単独過半数獲得のハードルが高まった。”【同上】という選挙制度改革は、主要政党で唯一、他政党との連立を拒否してきた「五つ星」に不利に働くとみられており、「五つ星」をターゲットにした改正とも見られています。

既成政治を批判し、インターネットを活用した「ダイレクトデモクラシー」を重視する「五つ星」】
人気コメディアンのベッペ・グリッロ氏が既成政治を批判して立ち上げた「五つ星」については、昨年11月に来日した「五つ星」のフラカーロ下院議員の講演などをもとに、インターネットを活用した「ダイレクトデモクラシー」の重視など、以下のようにも。

****社会を変えるのはヒーローではなく市民~イタリアの「五つ星運動****
(中略)イタリアで市民運動として始まった「五つ星運動」は、2009年の党創設以来、ローマやトリノで女性市長を誕生させ、市町村議会から国会まで2000人以上の議員を輩出してきました。

2013年の総選挙時には全体の25%もの票を集め、現在ではイタリアの第2党です。さらに最近の世論調査では約30%という、イタリア一の支持率を得ています。

こうした背景から、2017年に新党首として選ばれた31歳のルイジ・ディマイオ(若い!)は、イタリアの次期首相として期待されているのです。
 
(中略)「五つ星運動」は、「政党ではなく、国民の手に権力を取り戻したい」という思いから、ダイレクトデモクラシー(直接民主)を目指して生まれた市民運動なのだと話していました。

「五つ星」とは、社会が守るべきテーマ(持続可能な発展、持続可能な交通、水資源、環境、インターネット社会)のことを指しています。
 
「五つ星運動」の始まりは、約30年前に人気コメディアンのベッペ・グリッロ氏がTVで政党批判をしたことにさかのぼります。(中略)
 
五つ星の議員には「任期は2期まで」、「国民の平均給与以上の議員報酬は寄付をする」などのを決まりがあります。また、公的助成金や大企業・多国籍企業からの支援は受けず、活動資金は市民からの寄付に頼っています。
 
「大企業や多国籍企業から寄付を受ければ、彼らが私たちをコントロールする。でも、市民から援助を受ければ、市民が議員をコントロールすることになります。そして、それこそ私たちは望んでいること。すべての政治家は、市民から監視され、コントロールされるべきだと思っているのです」
 
さらに、五つ星運動の大きな特徴で、日本でも参考になるものに、インターネットの活用があります。たとえば、党内の立候補者選びをオンライン投票で行うほか、党のマニフェスト案や国会に提出する法案などもオンラインで公開され、党員同士でオープンな議論を行っています。党の運営にも「ダイレクトデモクラシー」が重視され、誰もが参加できる仕組みをSNSなどを利用して実現しているのです。
 
ほかにも、「E-LEARNIG」というアプリがあり、このアプリを通じて議員だけでなく市民も、市町村の決算の読み方、公的文書を入手するための方法、市民にどのような権利があるのかなどを学ぶことができるそうです。(中略)

もちろんオンラインだけでなく、リアルな場での対話も大事にしています。とくに意見が違う人たちと話し合うには、顔を合わせて話すことが必要なのだとフラカーロさんは強調していました。(後略)【2017年12月27日 マガジン9】
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【“ポピュリズム”批判
「五つ星」については、既成政治の打破という側面の一方で、“ポピュリズム”との批判がつきまといます。

*****ポピュリズム****
ポピュリズムとは、一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治思想、または政治姿勢のことである。日本語では大衆主義や人民主義などのほか、否定的な意味を込めて衆愚政治や大衆迎合主義などとも訳されている。(中略)

ここ数世紀の学術的定義は大きく揺れ動いており、「人民」、デマゴーギー、「超党派的政策」へアピールする政策、もしくは新しいタイプの政党へのレッテルなど、しばしば広く一貫性の無い考えや政策に使われた。

英米の政治家はしばしばポピュリズムを政敵を非難する言葉として使い、この様な使い方ではポピュリズムを単に民衆の為の立場の考えではなく人気取りの為の迎合的考えと見ている。(中略)

近年では、「複雑な政治的争点を単純化して、いたずらに民衆の人気取りに終始し、真の政治的解決を回避するもの」として、ポピュリズムを「大衆迎合(主義)」と訳したり、「衆愚政治」の意味で使用する例が増加している。

村上弘によれば、個人的な人気を備えた政治家が政党組織などを経ずに直接大衆に訴えかけることや、単純化しすぎるスローガンを掲げることを指すとする。(中略)

民主制は人民主権を前提とするが、間接民主制を含めた既存の制度や支配層が、十分に機能していない場合や、直面する危機に対応できない場合、腐敗や不正などで信用できないと大衆が考えた場合には、ポピュリズムへの直接支持が拡大しうる。その際にはポピュリストが大衆に直接訴える民会・出版・マスコミなどのメディアの存在が重要となる。(後略)【ウィキペディア】
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“大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治思想”という点では民主主義そのものでもありますが、“一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用”“一貫性の無い考えや政策”“複雑な政治的争点を単純化して、いたずらに民衆の人気取りに終始”というあたりが、評価の分かれ目になります。

アメリカ・トランプ大統領などは、悪い意味でのポピュリズムの傾向を強く有しているようにも思えます。
欧州にあっては、難民・移民やEUへの感情が、“願望、不安や恐れ”“単純化”“人気取り”とも結びついてきます。

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(イタリアの)ジェンティローニ首相は(12月)28日、議会解散前の記者会見で、「選挙戦では不安や幻想をかきたてないようにすべきだ」と述べ、大衆迎合主義の横行にクギを刺した。しかし、選挙戦では実現不可能な公約が飛び交うのは必至。

イタリア経済は最近、ようやくユーロ危機から回復の兆しを見せているが、次期政権成立までの混乱は国内のみならず、ユーロ圏全体の不安材料になる可能性が高い。【2017年12月29日 産経】
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また、インターネット、ツイッターなどのソーシャルメディアの普及が、“大衆に直接訴える”現実的手段を可能にしていることが、ポピュリズムの台頭の背景にあるように思えます。

現実対応の軌道修正も
ポピュリズムと評されることが多い「五つ星」ですが、ユーロへの批判的姿勢はこれまでもだいぶ軌道修正してきています。また、既成政治たる“他政党”との連立拒否についても、前述のように「五つ星」に不利な選挙制度を意識してか、総選挙に向けてやや修正を見せています。(あるいは、ポピュリズム的な“風向き次第で主張を変える節操のなさ”でしょうか)

****伊五つ星運動、選挙綱領を発表 ユーロ離脱の国民投票盛り込まず****
3月4日のイタリア総選挙に向けて、各種世論調査で支持率トップを走る反体制派政党「五つ星運動」は22日、20項目から成る選挙綱領を発表した。ユーロ圏離脱の是非を問う国民投票は盛り込まれなかった。

「五つ星運動」はかつては国民投票を強硬に訴えていたが、最近では穏健派に配慮する形でその主張を後退させている。金融市場では、国民投票が行われればユーロの打撃になりかねないとして警戒感が強い。

9月に選出された「五つ星運動」のルイジ・ディ・マイオ新党首は、アドリア海に面した港湾都市ペスカーラで開かれた党の会合で綱領を披露。総選挙後に他の党と交渉する際のたたき台になる、と語った。

世論調査によると、「五つ星運動」は支持率が約28%で、与党の民主党を約5ポイントリード。ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」を中心とする中道右派連合の支持率は合計で約37%と、最多議席を獲得する見通しだが、過半数には達しないとみられる。

「五つ星運動」はこれまでは、他の党とは連立を組まないとの方針を掲げてきたが、今回公表した選挙綱領では、この方針が撤回された。【1月23日 ロイター】
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結果的には、既成政治の悪弊そのもののベルルスコーニ元首相復権?】
それにしても、「五つ星」の動向もさることながら、汚職・性的スキャンダルまみれの“お騒がせ”ベルルスコーニ元首相がキーマンとして再び復活するというのは、“それでいいのか・・・”という徒労感も。

****あのベルルスコーニが再び政局の中心に****
予測のつかない3月の総選挙に向けて、中道右派連合を率いるお騒がせ元首相に追い風が

イタリア総選挙の実施日が3月4日に決まった。どの政党も過半数を獲得できない見込みで結果がどうなるかは不透明だが、1つだけ確実なことがある。

選挙戦の成り行きのカギを握るキングメーカーは、ほかならぬ81歳のシルビオ・ベルルスコーニということだ。
 
そう、首相を4期務め、「ブンガブンガパーティー」の言葉を有名にしたあの男だ。11年11月に首相を辞任したベルルスコーニは13年に脱税で有罪となっており、公職に就くことはできない。それでも彼が率いる中道右派連合は、総選挙に向けていま最も勢いがある。(中略)

新制度で最大限の恩恵を受けるのは、選挙前に連立で合意した政党。つまり、ベルルスコーニ率いる中道右派連合だ。

94年と01年、08年の選挙で勝利したときもそうだが、ベルルスコーニの最大の強みは常に政党連合を作ってきたことだろう。(中略)
 
難民・移民の流入に対する有権者の怒りや、五つ星が招きかねない混乱に対する不安は、ベルルスコーニ率いる中道右派連合に有利に働きそうだ。
 
彼らが絶対多数を獲得することは難しいだろうが、可能性はゼロではない。
いずれにしても躍進をみせれば、老いたベルルスコーニにとっては大きな返り咲きだ。

過半数を得られればベルルスコーニが首相を選ぶだろうし、中道右派と中道左派の大連立政権の交渉で中心的役割を果たすことだって考えられる。(後略)【1月16日号 Newsweek日本語版】
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既成政治打破を掲げる「五つ星」台頭が、結果的には既成政治の悪弊そのもののベルルスコーニ元首相復権を現実のものにするのか・・・・。
コメント

中国  ビッグデータ解析・ネット規制でめざす「神の見えざる手」によらない「特色ある社会主義」

2018-01-23 22:54:50 | 中国

(現金やクレジットカードには対応せず、アリババの「支付宝(アリペイ)」を使って個人情報を登録した会員だけがスマホで決済できるしくみの上海市内の格安大型スーパーマーケット【1月9日 産経】 ブラックホールに吸い込まれるように個人情報が蓄積されていきます)

とりあえず走ってみる。問題があったら対応はそのあとで・・・
中国では、現金を多用する日本とは異なり、スマホを利用したモバイル決済が主流となっていることは、これまでも再三取り上げてきました。

“中新網(CNS)のウェイボー(Weibo)アカウントで、出かける際に財布を持つかどうかについてアンケートを行った結果、回答した1018人中41.8%が「持たない」、41.1%は「持っていくが、携帯電話で支払うことが多い」と答えた。携帯電話一つで何でもできる日もそう遠くない。”【1月16日 CNS】

モバイル決済を前提にした自転車シェアリングなど、新たなサービスも拡充・拡散しています。

中国“ご自慢”の高速鉄道では、事前にスマホから食事を注文して、指定駅で座席までデリバリーしてくれるサービスも一般化しているようです。(このデリバリーも、現代中国社会の特徴のひとつです)

****高速鉄道ネットデリバリーサービスがより便利に、特産の注文も―中国****
中国鉄道総公司によると、鉄道部門は1月23日から高速鉄道ネットデリバリーサービスに対しアップグレートを行った。

注文できる時間を列車が出発する2時間前から1時間前に繰り下げたと同時に、高速鉄道での地方特産物注文予約サービスもスタートした。新華網が伝えた。(後略)【1月23日 Record china】
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走る前にあれこれ考え、結局走らない日本に対し、とにかく走ってみて、問題があればそのとき考えるというのが中国流ですから、いろんなサービスが出現する一方で、いろんな問題も当然に起こります。

****中国の無人コンビニBingo Box、役員の離職や営業停止相次ぐ****
中国で半年前にオープンした無人コンビニエンスストア「Bingo Box」。役員の離職や、営業停止が各地で相次ぐなど、さまざまな問題が浮上している。同社に限らず、無人コンビニの開業ペースは調整期に入った。(中略)

陳CEOは去年7月、無人コンビニを翌月末には全国200か所に展開し、同年内に5000店舗出店を目指すと発表していたが、その後、各地で出店した店舗に対し、現地政府から営業停止命令が相次いで出された。

営業停止の主な理由は、申請手続きの不備や、防火対策に問題があったことなど。最近のデータによると、全国29か所、300店舗までしか展開できていない。
 
展開スピードが減速したことについて陳CEOは、「急ぎ過ぎたことで多くの問題が起きてしまった。それを教訓として今後はスピードを落とし、じっくりと問題点を改善していき、各地域の政府と協力して運営条件などを擦り合わせたい。また、新たな画像識別技術を取り入れたレジを近々導入する予定だ」と話した。
 
無人コンビニを経営する会社は、昨年1年間で約30社設立されたが、中でもトップを走るBingo Boxは、経営モデルや運営方法を模索し続けている。【1月18日 東方新報】
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こうした“走りながら考える”やり方は、急激な社会変化を可能にしてもいますが、そうした変化についていけない人々もやはり存在するようです。

****<中国>春節に帰れぬ農民工 スマホ使えず、帰省切符買えず****
中華圏の旧正月「春節」(2月16日)まで1カ月を切った中国では帰省に向けた鉄道の切符の販売がピークを迎えている。

数億人が参加する激しい争奪戦は、急速なIT化を反映しインターネットによる販売が大半を占める。便利さによって長蛇の行列が減る一方、ネットを使いこなせない一部の出稼ぎ労働者「農民工」には、待ち望んだ家族との新年をあきらめざるを得ない人も出ている。

「何時の列車でも構わない。1枚だけでいいんだ」。上海駅の切符売り場で劉月英さん(62)は窓口に向かって、何度も繰り返した。妻と孫が暮らす町に近い湖北省武漢市までの150元(2600円)の切符を買うため、駅に通って3日目。だが端末を検索した女性係員は「没有(ないです)」。劉さんは後ろの客にせかされ、やむなく窓口を離れた。「他に買える場所がない。昔は朝早く並べば買えたんだ」
 
中国国鉄の規則では発売開始はインターネットと電話では乗車30日前からだが、駅窓口は2日遅い。春節前からは発売数分で完売となることが多い。

中国メディアによると、14日までに発売された春節期間の切符1億3300万枚のうちネット販売が78%を占めた。
 
その多くがスマートフォンのアプリ経由だ。事前に予約を受け付け、発売と同時に自動的に注文の接続を繰り返す。あるアプリでは50元(850円)を払えば接続頻度が4割アップする機能もある。(中略)

中国政府系機関の調査ではネットは全人口の53%に当たる7億人強(2016年)に普及した。一方、高齢者を中心に地方出身労働者にはネットを使えないか、限られた機能の利用にとどまる人も少なくない。

春節には農民工専用列車が走るなど、救済策も用意されているが利用できる人は一部だ。高速鉄道の作業現場で働く60代の男性は「春節に帰るのは無理だ。1年ぶりに孫の顔を見たかった」と話し、駅を後にした。【1月20日 毎日】
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「中国には弱者の利益を代弁する共産党のような左翼政党はないのか?」と思ってしまうような光景ですが、その共産党の一党支配社会であることが皮肉なところです。

【「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」監視社会、さらには信用度ですべてが決まる「ランク社会」へ
急速に進展するモバイル決済システムで集まる膨大な個人情報に、国家が保有するIDカード作成に伴う情報、街中に配置された膨大な数の監視カメラ・・・・それらの行きつく先として懸念されるのが、ジョージ・オーウェルの未来小説「1984年」に描かれたような「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」という監視社会であろうことは、多くの者が思うところです。

お尋ね者の指名手配犯が田舎のお寺に潜りこみ、その地域の人々から非常な尊敬を受けるまでになったのですが、公安局のビッグデータを用いたデジタル捜査によって逮捕される・・・・という話も起きているとか。

****住民が尊敬していた中国の名僧、なんとその正体は****
・・・・中国では全国民が顔写真入りのIDカードの作成を義務付けられており、相当な分量の顔写真が当局のデータベースに保存されているほか、これに紐付けされた銀行口座や携帯電話番号なども一括して把握されている。

また、中国全土をオンラインでカバーする監視カメラと、顔認証技術をはじめとした最新のテクノロジーが、「維穏」(社会の治安維持)を名目に当局側によって大いに活用されている。(中略)

いまや中国は国民のデータベース化に加え、全国に1億7000万台の監視カメラが設置されたサイバー監視大国となっている。監視カメラのうち2000万台は顔認証機能で指名手配中の犯罪者を自動認識するアプリが組み込まれた最新型だ。
 
2015年ごろから整備されるようになったこの徹底した犯罪者追跡システムは「天網工程(スカイネット計画)」と呼ばれている。犯罪者が出家して僧侶になることで過去をごまかす手法も、いよいよ通用しなくなってきたというわけだ。(後略)【1月22日 JB Press】
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監視社会の懸念・・・というより“現実”については、2017年12月23日ブログ“新疆ウイグル自治区  圧倒的な治安維持強化のもとで進む「完全監視社会」構築”でも取り上げたところです。

また、単に国家から監視されるだけでなく、個人生活のあるゆる場面で、顔認認証システム、スマホ決済データなどから導かれる“信用度”で評価される“ランク社会”にもなります。こちらも現実化しつつあるようです。

2017年9月11日ブログ“中国 顔認証システム、信用の可視化 その次にやってくるのはSNSによる「ランク社会」か

****スマホ、監視カメラ…中国は今、ジョージ・オーウェルの「1984年」の世界****
中国で日常生活のあらゆるシーンから現金を使う支払いが消える「キャッシュレス化」が猛烈な勢いで進行している。銀行口座に直結したスマホが主役だ。
 
アリババが運営する「支付宝(アリペイ)」など複数のサービスに延べ12億人が登録。決済額は2016年に約35兆元(約610兆円)、17年は倍増した。
 
驚異のスピードと決済規模だが、アリペイに付加された機能の「芝麻信用(セサミ・クレジット)」には別の意味で驚かされる。
 
1年近くアリペイを使った記者(河崎)の個人評価は「617点」だった。
 
950点満点の5段階評価で「極好」と「優秀」に次ぐ「良好」だ。小学校の通信簿なら「3」。買い物や公共料金の支払いなどに問題はなく、2と1にあたる「中等」「較差」は免れた。

ただ、不動産や自家用車の所有など資産状況、交友範囲に富裕層がいるかなどまで評価されるため、点数はいまひとつだった。
 
点数が高いと消費者金融から無担保で借り入れができるほか、ネットで公開すれば“称賛”を浴びることもでき、メンツが立つ。だが支払い滞納で点数が下がると、鉄道のチケット購入が制限されるなど、生活に支障が生じるしくみだ。
 
利便さと引き換えに個人のあらゆる情報や行動がネット業者に蓄積されて「格付け」され、店頭で撮影される顔の画像データも加わって、アメとムチで人々の生活を監視していく。

中国人に携帯が義務づけられている身分証も、中国版LINE「微信(ウィーチャット)」に電子的に埋め込む制度が近く本格化する。
 
こうしたキャッシュレス社会の個人情報管理について、香港中文大学の張●(=或のノを三本に)(イク)●(=民の右に攵、下に日)(マン)講師(社会学)は、「政治的な監視も可能で『1984年』に描かれた世界が出現した」と考えている。
 
英国の作家ジョージ・オーウェルが1948年に執筆し、49年に刊行された未来小説「1984年」。一党独裁の社会で人々は、街中でも自宅でも「テレスクリーン」と呼ばれる双方向の映像装置で監視され、党やそのトップ「ビッグ・ブラザー」に背く言動がみつかれば思想警察に捕らえられて監禁、拷問される。
 
旧ソ連を念頭に70年前に書かれたが、スマホやネットワーク化された監視カメラは21世紀のテレスクリーンともいえ、オーウェルの慧眼には驚くばかりだ。
 
ニューヨーク証券市場に上場している民間企業のアリババ。ただ、蓄積データはすべて中国内にあり、中国共産党が命じれば、党に差し出さねばならない。(中略)
 
小説に描かれたシーンでは「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」と書いたポスターが、街角のいたるところに貼られている。
 
現代のビッグ・ブラザーは、そんな直接的な表現はしないが、人々をキャッシュレス社会の利便性のとりこにさせながら、監視機能を飛躍的に高めることに成功した。しかも数十億人分の膨大な情報を蓄積、分析できる「ビッグデータ」という最新の技術まで手にしたのだ。【1月9日 河崎真澄氏 産経】
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個人の購入・支払い情報だけでなく、資産情報、さらには交友範囲の者のランクまで加味されるという話になると、人々は高いランクの者と付き合おうとし、低いランクの者はますます社会から疎外されることにも・・・・従前ブログで取り上げたネットフリックス配信動画「ブラック・ミラー」が近未来を描く「ランク社会」の世界そのものです。

あらゆる行動・付き合いにおいて、いかに自分の信用度・ランクを上げるかが意識される「ランク社会」は、国民自らがのめりこんでいくという点で、国家による監視社会よりも怖いかも。

日本でも“いいね”の数に夢中になるような現象がありますので、こういう「ランク社会」の現実味は小さくないでしょう。

【「神の見えざる手」を凌駕するのか・・・ネットとビックデータの国家管理による「新時代の中国の特色ある社会主義」】
また、中国では当局によるネットやSNSの監視体制が強化されています。

****中国当局、15年以降に1万3000のウェブサイトを閉鎖****
中国で、当局が定めたインターネットに関する規則に違反したとして、2015年以降に閉鎖されたり認可を取り消されたりしたウェブサイトの数は1万3000に上ると、国営新華社通信が24日、報じた。
 
中国では2012年に習近平氏が中国共産党総書記に就き、同氏指導部が発足して以降、当局がインターネット規制を一層強めている。(後略)【2017年12月24日 AFP】
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****政府がSNSを監視? 発言に不安広がる 中国****
中国で人気のSNS(中国版LINEとも呼ばれる「ウェイシン」)を使ったやり取りについて、大企業の経営者が監視されているおそれがあるとの懸念を示したことが利用者の間に波紋を広げ運営会社が打ち消しを迫られる事態となり、政府などによる通信監視に対する中国の人々の不安を浮き彫りにしています。(中略)

中国では、政府によるインターネットの規制強化が進み、去年からは個人の利用者で作るグループのやり取りまで取締りの対象になっています。(後略)【1月3日 NHK】
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****#MeToo」中国でも広がる 大学教授からセクハラ、女性がネットで告発 当局は統制の動き、投稿削除も****
・・・・ただ、一連の運動は政府批判につながりかねないため、中国当局は神経をとがらせる。北京市のある大学生はネット上で、大学にセクハラ対策を求める公開質問状を出したところ、当局から呼び出され、書き込みを削除されたという。

習近平指導部は人権活動や言論の自由への締め付けを強めている。セクハラ被害の訴えには政治的なリスクも伴うだけに、告発運動がどこまで効果を上げるかは見通せない部分もある。【1月22日 西日本】
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こうした個人情報管理やネット・SNS統制を当局・党指導部の立場から考えると、「神の見えざる手」に頼ることなく「新時代の中国の特色ある社会主義」を実現する社会コントロール手段・・・という話にもなります。

****中国のネット監視社会が世界のスタンダードになる日****
王滬寧(おう・こねい)。(中略)彼は中国共産党政治局常務委員、いわゆる「チャイナセブン」(中国共産党の7人の最高指導部のこと)の1人である。(中略)

ネット規制の最高責任者
その王は常務委員に就任した直後、2017年12月に浙江省で開かれた第4回世界インターネット大会において、国家がネットを規制しネットビジネスの制度設計にも積極的に関与してゆくことを大々的に宣言した。
 
王を中国のネット規制の最高責任者と見てよいだろう。ネットが世論形成や経済活動において重要な役割を果たすようになった今日、その管理は政治局常務委員が直接担当する分野になった。
 
つい先日まで「新時代の中国の特色ある社会主義」がなにを意味するのかよく分からなかったが、王が常務委員に就任してその直後にインターネットの大会に出席したことから、「新時代の中国の特色ある社会主義」がなにを意味するのか、ようやくよく分かった。
 
ソ連が崩壊した直後、1990年代初頭、フランシス・フクヤマ氏が書いた「歴史の終わり」が世界中でもてはやされた。そこでは「民主主義」と「市場経済」の組み合わせが、人類がたどりついた最善かつ最後のシステムとされた。
 
それから30年ほどが経過したが、その間、コンピュータとネット技術が驚異的なスピードで発展し続けた。スマホは旧来メデイアである新聞、雑誌、テレビを駆逐し、ネット通販は既存の小売店を脅かしている。ビッグデータを用いて個人を特定する技術も驚異的なスピードで進歩し続けている。
 
そんな時代に王が考え出したのが「新時代の中国の特色ある社会主義」である。それは、国家がネットを使って政治と経済を強力にコントロールするシステムとしてよいだろう。
 
ソ連を代表とする20世紀に出現した社会主義国では、官僚が政治や経済をコントロールした。官僚による独裁政治である。しかしながら、ソ連が崩壊したことからも分かるように、官僚は政治や経済を効率的にコントロールすることができなかった。その結果、社会主義と官僚による独裁は効率の悪いシステムとして歴史の彼方に追いやられてしまった。
 
しかし、それから30年が経過し、ネットとビックデータの処理技術が驚異的に発達すると、中国は、再度、社会主義に挑戦することにしたようだ。それを「新時代の中国の特色ある社会主義」と呼んでいる。
 
この体制下では、国民の情報はネットを通じて全て国家によって収集される。住所や職業はもちろんのこと、通信内容、どこで何を買ったか、どこに旅行したか、ネットでどのページを見ていたかなど、ありとあらゆる事柄が国家に筒抜けになる。そこから各人の能力や志向、交友関係、政治への関心度などが明らかになる。
 
国家はその情報を用いて、経済や政治をコントロールする。それが「新時代の中国の特色ある社会主義」である。(中略)

政治において重要な意味を持つネット管理
もし、中国がこれからも順調に発展していくとしたら、「神の見えざる手」を前提とした旧来の経済学の教科書は全面的に書きかえなければならなくなる。

ネットが発達した社会では、「神の見えざる手」よりも国家がビッグデータによって管理した方が、社会をより適正にコントロールできる、ということになるからだ。

「新時代の中国の特色ある社会主義」は極めて挑戦的なテーゼである。これまでSF小説でしか語ることができなかった管理社会を、この地上に実現しようとしている。(中略)

習近平体制の今後は21世紀を占う上でも重要である。恐ろしいことだが、もし「新時代の中国の特色ある社会主義」が成功して、2050年頃に中国が米国を超えるようなことがあれば、多くの国が中国を真似ることになろう。
 
そこでは個人情報は丸裸にされる。そして、その情報を分析した国家が、国民に知らせることなく秘密の内に全てをコントロールする。
 
習近平体制は中国の今後だけでなく、コンピュータやネットが驚異的なスピードで発展する現在、我々の未来を考える上でも重要である。これから中国で起こることを細心の注意を払って見ていく必要があろう。【1月23日 川島 博之氏 JB Press】
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コメント

「幸せ」の在り様は様々 所得との関係 文化的特徴 男性に比べ満足度が高い日本女性

2018-01-22 23:04:32 | 女性問題
幸せは金で買えるか?】
毎年末恒例の「世界幸福度調査」(米国の世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査)によれば、調査対象国55カ国で1位は南太平洋の国フィジーで、2位コロンビア、3位フィリピン、4位メキシコと続いています。

“今回の調査で唯一90ポイント以上を獲得した「フィジー」は、前年も1位、その前が2位、その前は1位。直近の4年間で3回も1位を獲得している幸福先進国です。”【1月6日 ハフィントンポスト】

「幸せ」のとらえ方は個人で千差万別であり、「幸福度」といった形で数量化することには無理があることは、今更言うまでもないことです。

ましてや、国別の「幸福度」指数といった類は、何を基準に数量化するかで全く異なった結果にもなります。

そこは百も承知の上で、あえて「幸福」と「所得」の関係、つまり「幸せは金で買えるか?」という問いに答えようとすると・・・やはり結果は様々のようです。


https://ourworldindata.org/grapher/gdp-vs-happiness?time=2014

上記などは、比較的明瞭な、所得が高いほど幸福感が強まる傾向を示していますが、下記は必ずしも単純ではないことを示しています。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9482.html
確かに所得が高い国は比較的高い幸福度をしめしますが、所得が低い国では大きなバラつきが見られます。

****幸せはお金で買えるか(所得水準と幸福度の国別相関*****
(中略)相関度をあらわすR2値は0.1737(2005年期データであると0.3071)であり、ゆるい相関が認められる。

しかし、相関図を見て、より印象的なのは、所得水準の高い国では幸福度がある一定水準以上に収斂している(不幸と感じている者はそれほど多くない傾向がある)のに対して、所得水準の低い国では、幸福度に大きなばらつきが認められる点である。(中略)

所得水準が高まれば不幸と感じる人の割合が大いに減じるということから、幸せはお金で買えるといえるが、だからといって所得水準の低い国で不幸な者が多いとは限らないのである。

お金持ちでも不幸かも知れないよ、という貧乏人の慰めは、事実に反するが、貧乏でも幸せに暮らそうという態度は十分な合理性を持っているといえよう。

また、経済成長が重要なのは幸福を増すからというより、不幸を減じるからであるということが分かる。【本川 裕氏 「社会実情データ図録」】
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所得水準の低い国で幸福度に大きなばらつきが生じる背景として、「国民性」と呼ばれるような文化的要素があると思われます。
なお、所得水準と幸福度の関連については、2013年5月3日ブログ“「お金はあればあるほど幸せ」か? 富・所得と幸福度の関係”でも。

家族や友人、教師との信頼関係を重視するドミニカ
数量化した指数で何かを語ることは難しいにしても、個々の事例を見ていけば、「幸せ」あるいは「不幸」に関する理解について何かの参考も得られるかも。

冒頭のギャラップ調査でもそうですが、この手の調査では総じて中南米諸国は、所得水準は低いながらも「幸福度」では上位にランキングされます。いわゆる「ラテン気質」でしょうか。

コロンビアとかメキシコなど、所得水準もさることながら、治安の面でも、世界有数の難民国だったり、「麻薬戦争」と言われる状態だったりもします。それでも・・・・

****みんな誰かの宝物だから ドミニカ共和国・メキシコ****
カリブ海の真ん中にあるドミニカ共和国。青い海に囲まれた小さな島国が、世界の15歳に「幸福度」を尋ねた国際機関の調査で1位になった。どんな秘密があるのか。この国で「幸せのかたち」を考えた。
 
「一番すてきで特別な人へ。君は毎日を楽しくしてくれる家族のような存在です。どうか君の全ての夢が実現しますように。愛する人たちに囲まれながら何百年も過ごせますように」
 
首都サントドミンゴの公立中学校。模造紙いっぱいのメッセージを読みながら、16歳の誕生日を翌日に控えたチェルシ・シエラさんは涙を流した。仲の良い友人たちが、休み時間にサプライズの誕生会を開いてくれたのだ。
 
シエラさんは一人一人をぎゅっと抱きしめた。「こんな友人に恵まれてとても幸せ。みんなにすごく感謝している」。企画した男子生徒も「喜んでもらえてうれしい」と満足げだ。
 
この国の子どもたちの「幸福度」は世界1位。経済協力開発機構(OECD)が昨年発表した、2015年の学習到達度調査(PISA)の一環で調べた結果だ。学校に通う15歳の子らに生活の満足度を尋ねると、「十分に満足」と答えた割合が47カ国・地域で最も高かった。
 
コンクリート製の校舎は古く、黒板は穴だらけ。机や椅子の大きさもまちまちだ。だが、今の生活について生徒たちに聞くと、ほとんどが「私は幸せ」と口をそろえた。
 
女子生徒の一人アンジェリ・カブレラさん(15)は「お母さんが毎日、ほおにキスして『大好き』と言ってくれる。それが私の幸せの時間。幸せとは他の人と一緒に過ごす時間のこと」と笑った。教師のロサ・ペレスさん(47)は「多くの子が幸福そうに見えるのは家族や友人、教師との信頼関係が強いことと関係があると思う。ドミニカ人は人間関係が濃密ですから」。(中略)

海に囲まれたドミニカ共和国は観光が主要産業だ。16年は欧米などから観光客600万人が訪れた。経済成長率は6・6%を記録し、3年連続で中南米カリブ地域のトップ。

だが、貧富の格差は激しい。治安も悪化し、17年の世論調査では国民の42%が「3年以内に国を出たい」と答えた。
 
教育政策も行き届いているとは言いがたい。15年のPISAでは、数学と科学部門で72カ国・地域で最下位だった。
 
国連児童基金(ユニセフ)ドミニカ共和国事務所によると、15~17歳の10%は途中で学校をやめ、最初から行かない子も多い。少女の妊娠も問題になっている。37%の女性は17歳前に、12%は15歳前に結婚する。5歳未満の子の12%は出生届すら出されない。65%の親は体罰を容認する。
 
ロサ・エルカルテ所長は「確かにこの国の人々は陽気でよく笑う。でも、それは本当の幸せというより、気分的なものかもしれない」と考えている。
 
国際NGOプラン・インターナショナルのラケル・カサレス氏は「子どもたちが幸せと感じているのは衝撃的」と驚きを隠さない。「弱く危険な立場にありながら、それに気付いていない。安易に『世界一幸せ』とくくるのはとても危険だ」と警鐘を鳴らす。
 
同国の著名な精神科医セサル・メジャ氏は「苦しい生活の中で陽気に踊るドミニカ人の行動はつじつまが合わない。学者たちも十分に解き明かせずにいる」という。だが、こう語った。
 
「幸せとは満足感や精神的な喜びによるもの。物質的な豊かさや所有財産の多寡とは関係ない。ドミニカ人は前向きに楽しむすべを知っている。それが幸福感につながっている」
 
厳しい現実にかかわらず、人々が幸せを感じる土壌が確かに、ここにはあるのかもしれない。(後略)【1月1日 朝日】
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他人の視線を人生の重要な基準にしている韓国
一方、儒教文化という点では日本と比較的似かよっている韓国ですが、近年はもろもろの社会問題から、特に若者の間で「ヘル朝鮮」という自虐的な言葉がよく聞かれます。

****幸せに見られたい」流行語に見る韓国若者の特徴に、ネットがため息****
2018年1月16日、韓国・朝鮮日報によると、昨年流行した新造語から、20〜30代の若者世代が「幸せとは程遠いが幸せに見えていたい」という持続性のない「使い捨ての幸せ」のためにお金や時間を費やしていることが分かった。

昨年、韓国の若者世代に流行した新造語のうち、中でも「イッソビリティー(『イッソボイダ:ありそうに見える』+『アビリティー:能力』=ありそうに見える能力)」が大流行した。

その他に「腹いせで使った費用」という意味の「始発費用」という言葉もあるが、どちらも「幸せに見えていたい欲求」が反映されているとされる。

このような消費行動は30代に最も多いという。非営利研究所の希望製作所が昨年11月に全国の満15歳以上の男女1000人を対象に調査したところ、30代は「現在の暮らしの満足度」「心身の健康」「経済状態」をはじめほぼ全ての項目で平均以下という結果が出たというのだ。(中略)

学者らはこのような韓国人の性向を「自己監視(self monitoring)が過度に強い」ものと解釈する。つまり、韓国社会が表向きには欧米のように個人主義化したように見えても、依然として他人の視線を人生の重要な基準にしているというのだ。

これを受け、ネットユーザーからは「ヘル朝鮮(地獄のような韓国の意)のせい」「李明博(イ・ミョンバク)や朴槿恵(パク・クネ)など元大統領のせいで一番被害に遭ったのが30代」「幼い頃から『一番になれ』『他人の先を行け』と圧迫されたから」など昨今の韓国社会に責任を問うコメントが目立つ。(後略)【1月21日 Record china】
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“表向きには欧米のように個人主義化したように見えても、依然として他人の視線を人生の重要な基準にしている”というのは、日本にもあてはまるところがありますが、最近はそうした生き方から抜け出そうする人々も増えているようにも。

男性に比べて女性の幸福感が際立って高い日本
その日本は、「幸福度ランキング」の類では、大体“中の上”“上の下”といったところで、悪くはないが、それほど高いという訳でもない・・・といったところでしょうか。

ただ、ひとつ日本には際立った特徴があるようです。それは“男性に比べて女性の幸福度が高い”という特徴です。

下記「幸福度の男女差」(世界価値観調査及びISSP調査)で見ると、中央線より右に行くほど女性の幸福感が男性を上回る度合い、左へ行けば男性が上回る度合いを示していますが、女性超過の点で日本は1位が3回、2位が1回、3位が1回、11位が1回と、“世界で一番、女性超過が大きい国”であることを示しています。

****「幸福度の男女差」****

・・・・東アジア諸国はかつての儒教国だという性格を共有し、欧米諸国と比較すると、家庭や社会の中での女性の地位が低いと考えられているが、経済発展と社会の近代化が進んだ高所得国では、幸福度にそれが反映しているわけではなさそうである。

むしろ、女性は、①家族の財産権、相続権の男女平等など近代的な法律上の位置、②家事労働を軽減する家電製品の発達、③子育て、老親の世話の負担を軽減する社会保障の充実、などにより、かつての家への従属・拘束から解放されて自由になったのに、男性の方は、男性の権利ばかりでなく責任も大きかった過去の伝統に引きずられ、自分が家族やまわりを支えなくてはと思いすぎて、幸福度を感じにくくなっているのではと想像される。【本川 裕氏 「社会実情データ図録」】
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【“やたらと楽しそうな”日本の女子学生
上記の“男性に比べて女性の幸福度が高い”という日本の特徴を反映した調査がもうひとつ。

高校1年生を対象とする国際学力テストであるOECDのPISA調査によると、日本を含む東アジア儒教圏の生活満足度が他のグループより際立って低いこと(下記図の横軸で見ると、先述のドミニカは最高に対し、韓国は下から二番目)、ほとんどの国が男子学生のほうが満足感が女子学生より高いのに対し、日本だけが女子学生のほうが高いこと(縦軸で見て、日本だけがマイナス)が示されています。

****日本の女子高生がやたらと楽しそうな理由****

世界の高校生は生活満足度の状態で文化圏ごとにグループ分けできる
 
・・・・・(高校1年生を対象とする国際学力テストであるOECDの)PISA調査では、学力テストのほかに、学力の要因を探るため、先生や同級生との学校生活の状態や学習意欲、生活満足度などの意識の状態を、生徒に対する調査票によって調べている。
 
図1には、世界48ヵ国の生徒の生活満足度の状態を示すグラフを掲げた。ここで生活満足度は、0から10までの11段階で回答を求めた結果の平均点で示されている。
 
X軸方向に「生活満足度の高さ」、Y軸方向に「生活満足度の男女差」を取った散布図を描いた。これを見ると、欧米、ラテンアメリカ、イスラム圏、東アジア儒教圏といった文化圏ごとに、ほぼ例外なく、国々がグループ分けできる点が非常に興味深い。
 
また、日本については、東アジア儒教圏の共通の特徴として、X軸方向の全体的な満足度が世界の中でも最低の水準になっているとともに、Y軸方向については、世界では一般に男子生徒の生活満足度が女子生徒を上回っている中で、唯一、女子生徒の方が上回っている点で非常に特徴的だ。(中略)
 
日本だけでなく、儒教の影響がなお残る東アジア諸国では、所得が高くなってもなかなか幸福を感じないようなのだ。(中略)

東アジア諸国の高校生の生活満足度が、世界の中で最も低くなっているのは、上述のように、成人と比較して学生の場合は所得水準との関係が薄く、さらに教育分野では儒教の影響がなお大きいこともあって、成人と同じ理由がダイレクトに働いているためだといえる。(中略)

日本の高校生も、先生や親の期待に十分応えられていないと感じてしまいがちなので、生活満足度が欧米などと比較して低くなってしまっているのであろう。
 
さらに、人生態度に関する、これ以外の文化心理学的な要因も考えられる。
 
幸福感研究の世界的な第一人者、エド・ディーナーとの実験心理学的な研究で知られる大石繁宏氏によれば、社会の流動性が高く、友人を選択する可能性の高い米国では、弱音を吐くと友人から「お荷物になりそうな面倒な奴だ」と思われるプレッシャーがあるという。
 
これに対して、友人を選ぶ余地の小さい島国の日本では、悲しみや苦しみを共有する人間関係が大事だと思われており、「自分が元気すぎると不幸な友人を傷つける場合がある」という配慮が働く。欧米起源のスポーツと異なり、日本の武道や大相撲では、勝者のガッツポーズが控えられているのも同じことだといえる。
 
このため、全体としての満足度を聞くアンケートに答える段階で、欧米では毎日の満足度のうちいい面だけ回顧し、日本では悪い面だけを思い出して回答する傾向があり、結果として毎日の満足度は同じレベルでも、日本人の満足度は低くなるという(大石繁宏「幸せを科学する」p.35〜43)。(中略)

全ての国で、生活満足度の男女差は、「男マイナス女」が成人より高校生の方が大きくなっている点が印象的だ。成人については生活満足度に男女の差があまりないのに対して、高校生については、男子生徒が女子生徒を上回る場合が圧倒的に多いのだ。(中略)

PISA報告書によれば、女子高生の生活満足度が男子より低いのは、一つの可能性として、「思春期の女子の厳しい自己批評を反映しているのではないか」と考えられている。

すなわち、マスメディアが前提にしている「スリムで理想的な体型」や、ソーシャルメディアで共有されている美しいとされる体型の画像の影響にさらされていることが、思春期の女子の自己認識や満足感にネガティブなインパクト与えているとされているのである。(中略)

日本の女子高生がやたらと楽しそうなのは古い道徳からも新しい規範からも自由なため
ここまで考えてくると、日本の女子高生の生活満足度が、世界で唯一、男子より高い理由の一つは、自分の身体イメージへのこだわりについて、欧米のようには強迫観念にまでは至っていないためだと考えられる。(中略)
 
さて、日本の女子高生の生活満足度が世界で唯一、男子より高いことを説明するもう一つの要因は、成人の生活満足度がそもそも女性優位であり、女子高生もそれと同じだと考えられるからである。(中略)

このように、日本の女子高生が男子より楽しそうなのは、男性と比較して、性差に対する旧来の道徳感からの解放が進んでいると同時に、若い女性の身なりや体型はこうあらねばならないという情報社会の新規範からも外国と比較して自由だから、というのがデータから推察されるとりあえずの結論である。【1月17日 本川 裕氏 ダイヤモンド・オンライン】 
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大幅に省略しましたので文脈・論旨が不明瞭になってしまいました。興味のある方は上記リンク先でご覧ください。

ただ、“日本の女子高生がやたらと楽しそうな”理由が、“自分の身体イメージへのこだわりについて、欧米のようには強迫観念にまでは至っていないため”というのは、個人的にはあまり説得的でないように感じています。

自殺にみる男女格差
ついでに男女差に関する、全く別の観点からの数字を。

2017年の日本全国の自殺者は16年よりも757人少ない2万1140人で、8年連続で減少しています。結構なことです。

男女別にみると、男性が1万4693人、女性は6447人で、男性が女性の倍以上になっています。【1月22日 Record china】

*****自殺者の70%は男性 統計データから見る男性の自殺リスク*****
・・・・アメリカの男性自殺率は女性の4.2倍、イギリスは3.6倍とのこと。自殺率の男女格差が日本と同程度かそれ以上に激しい国も、世界には少なくないようです。

WHOの報告によると、英米と同じく旧ソ連・旧共産諸国も自殺率の男女格差が大きく、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、エストニアなどは日本とほぼ同じの約2~3倍程度、リトアニアについては男性自殺率は女性の6倍という驚きの数字です。

興味深いのがイスラム圏と中国で、これらの地域においては女性自殺率が男性自殺率を僅かに上回ります。アフガニスタン、イラク、インドネシア、パキスタン、中国……など。(後略)【小山晃弘氏】
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このあたりも興味深いところですが、長くなったので、また別機会に。
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