孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア  南部拠点都市からイスラム過激派撤退 ソマリア海賊は各国警備で衰退

2012-09-30 22:20:01 | ソマリア

(9月22日 首都モガディシオの北80kmの地点で、アフリカ連合(AU)ソマリア平和維持部隊(AMISOM)に投降する200名以上のアルシャバブ兵士 AMISOMによれば、多くのアルシャバブ兵士から投降の接触があるそうです。“flickr”より By AU/UN IST http://www.flickr.com/photos/au_unistphotostream/8019356109/

新大統領選出 2日後には自爆テロの標的に
21年にも及ぶ内戦で実質的無政府状態が続き、イスラム過激派と海賊の温床ともなっていた東アフリカ・ソマリアで、「暫定政府」統治が終了し、正式政府発足に向けて動き出したことは、8月20日ブログ「ソマリア 暫定政府が終了し、正式政府発足へ 議員・新大統領選出には遅れが」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120820)で取り上げたところです。

その後、9月10日には、アハメド暫定大統領を破ってモハムド新大統領が選出されました。
学者出身で“政治手腕は未知数”とのことです。

****ソマリア:モハムド氏を大統領に選出****
内戦が20年以上続き、全土を支配する中央政府が無い状態のアフリカ東部ソマリアで10日、国会議員の投票による大統領選出投票が行われ、学者出身のハッサン・シェイク・モハムド氏(56)が選ばれた。新政府発足で内戦終結への期待感があるが、反政府組織勢力は依然強く、楽観できない情勢だ。

04年発足の暫定政府の統治期間が8月終了したのを受けた選挙。AP通信などによると議会(定数275)の投票は、決選投票に持ち込まれモハムド氏がシェイク・シャリフ・アハメド暫定大統領を190対79で破った。

モハムド氏はソマリアの大学で工学を学び、卒業後はインドに留学。その後、国連児童基金(ユニセフ)で勤務した。11年に「平和・開発党」を創設し、議長を務めているが、政界経験は短く、政治手腕は未知数だ。

ソマリアでは、91年のバーレ政権崩壊後、軍閥などによる内戦が激化。近年では国際テロ組織アルカイダと連携するイスラム過激派アルシャバブが南部を広範囲に実効支配している。暫定政府軍が昨年8月、アルシャバブを首都モガディシオから一掃したものの、完全掃討と全土の治安回復のめどは立っていない状況だ。【9月11日 毎日】
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首都モガディシオの一部を除く広い範囲を実効支配してきたイスラム過激派・アルシャバブをモガディシオから撤退させ、エチオピア・ケニアの隣国からもアルシャバブ追討の侵攻が行われるという、軍事的状況の変化もあっての新政権発足ですが、アルシャバブは中南部を支配しており、首都モガディシオでも爆弾テロを繰り返していました。
新大統領選出の2日後には、その新大統領が自爆テロに狙われるという事件があり、先行きが案じられていました。

****ソマリア新大統領狙い自爆テロ 警備兵ら4人死亡****
アフリカ東部ソマリアの首都モガディシオで12日、2日前に新大統領に選出されたばかりのハサン・マハムード氏を狙ったと見られる自爆テロがあった。マハムード氏は無事だった。AFP通信などが伝えた。

爆発は空港近くにあるマハムード氏が滞在するホテルの門の前で起きた。ケニアの閣僚らと会合をしていたという。ホテル内の人たちにけがはなかったが、警備兵3人と自爆テロをした1人が死亡した。

ソマリアは内戦が始まった1991年以来、無政府状態が続く。新大統領を選んで21年ぶりの正式政府を発足に動き出したところだった。イスラム武装勢力シャバブが「いわゆる大統領と外交団を狙った」との声明を出し、関与を認めた。
シャバブはソマリア中南部の広い地域を実効支配しており、アフリカ連合(AU)軍が掃討作戦をしている。昨年8月にはモガディシオをシャバブ支配から奪還したが、ゲリラ的な攻撃が頻発している。【9月13日 朝日】
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アルシャバブ掃討に向けた大きな転換
ただ、ここにきてケニア軍を主力とするアフリカ連合(AU)の部隊が、イスラム過激派・アルシャバブを拠点都市・南部キスマユから撤退に追い込むということで、形勢が更に一歩進展したかのように見えます。

****キスマユから撤退=イスラム過激派、拠点都市喪失―ソマリア****
ソマリアからの報道によると、イスラム過激派アルシャバーブは29日、最後の拠点都市だった南部キスマユから撤退したことを明らかにした。
ケニア軍を主力とするアフリカ連合(AU)の部隊が28日、キスマユへの総攻撃を開始していた。AFP通信によれば、アルシャバーブのスポークスマンは「29日午前0時、軍事部門から命令が出た」と撤退を認めた。

キスマユは首都モガディシオの南約500キロにある港湾都市。支配下の都市を相次ぎ失ったアルシャバーブの「最後の要衝」だった。9月に入りキスマユ包囲網を築いたケニア軍は28日、東方の海岸に強襲揚陸作戦を敢行した。
AFP通信によると、アルシャバーブ配下のラジオ局も放送を停止した。住人の一人は同通信に対し「最後の車両が早朝、街を去った。どこへ行ったか分からない」と語った。【9月29日 時事】
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アフリカ連合(AU)ソマリア平和維持部隊(AMISOM)は、“2007年から派遣されているが、長くウガンダ軍とブルンジ軍だけで、増援を求める両国に応える国はなく、モガディシオの数区画を守りアルシャバーブの猛攻に耐えてきた。そこに昨年10月、形勢を読んだケニア軍が参戦。破竹の勢いでアルシャバーブ掃討を続けている”【9月26日 時事】とのことです。
隣国ケニアがソマリアに軍事進攻したのは、アルシャバブによるケニア国内での外国人誘拐事件などが頻発する事態に業を煮やしてのことと言われています。

なお、“キスマユを包囲するAU軍は、ケニア軍とウガンダ軍の仲間割れが伝えられており・・・”【同上】とのことで、AMISOM内部の統制にも問題があるようです。

“キスマヨの港を経由して、イエメンのアルカイダ系組織などから武器や物資が入っていたとの指摘があり、シャバブの最重要都市だった”【9月29日 朝日】“キスマヨは違法な木炭輸出や密輸を通じた活動資金が得られる重要な戦略要衝となっていた”【9月30日 CNN】ということで、南部拠点都市キスマユ攻略は、AMISOMにとってアルシャバブ掃討に向けた大きな転換となると見られています。

ただし、上記CNN報道では“AU軍に加わるケニア軍は29日、シャバブの最後の拠点の1つであるソマリア南部の港湾都市キスマヨの地域半分を制圧したと発表した。ケニア軍の報道官によると、ソマリア軍地上部隊との合同作戦は1日半続き、同市の北部を攻略した。支配地域での足場を固めた後、シャバブが残存する市南部に進攻する計画。北部の奪還作戦でシャバブに甚大な被害を与えたとしている”【9月30日 CNN】となっており、キスマユからアルシャバブが完全撤退した訳ではないように報じられています。

いずれにしても、首都モガディシオ撤退に続き、拠点都市キスマヨ撤退ということで、アルシャバブの退潮傾向は確かなようです。
この背景としては、“ソマリア中南部を支配していたアルシャバーブは、昨年になって(1)大干ばつに対応できず民心が離反した(2)リビアのカダフィ政権が崩壊し支援が途絶えた(3)米無人機の攻撃で幹部が次々暗殺された―ことから急速に弱体化。昨年8月に首都モガディシオから撤退し「拠点」と呼べる都市はキスマユだけになった”【9月26日 時事】と言われています。
“大干ばつに対応できず民心が離反”というのは、干ばつ被害の住民救済を行おうとする国際援助を外国のスパイ活動としてアルシャバブが妨害し、住民の困窮を放置したことを指しています。

【「海賊たちは破産して、避難民のように暮らしている」】
AMISOMによるアルシャバブ掃討が加速して、新政権統治エリアが拡大していけば、船舶拉致・身代金要求で世界各国の頭痛の種となってきたソマリア海賊に対する根本的対策ともなります。
もっとも、ソマリア海賊の方は、日本も含めた欧米・中国・インドなどの海賊掃討作戦が功を奏して、すでに衰退しているとの報道があります。

****借金まみれに転落したソマリア海賊「春の日は去った*****
各国掃討作戦・船舶武装強化で拉致件数急減し、借金だらけの人間へと転落 豪華別荘衰退・遊興産業も沒落
一時期、国際社会の大きな障害だったソマリア海賊たちが、最近はカード遊びやロブスター釣りで日々を過している。各国海軍の取り締まりと船舶自身武装により海賊活動が衰退して、遊興産業に派手に金がばらまかれていたガルカイヨやホビョなどソマリア中部沿岸都市の姿を変化させているとAP通信が25日、報道した。

ヨーロッパ連合海軍によると、ソマリア海賊が拉致した船舶数は2009年46隻、2010年47隻だったが、2011年には25隻にとどまった。特に2011年、ソマリア海賊たちは合計176件の船舶攻撃を敢行し、歴代最高で活発な活動を示したが、拉致の成功は25隻にとどまった。海賊の船舶攻撃の撃退に成功しているという信号だ。今年に入ってからは計5隻の船舶を拉致するのにとどまっている。5月10日、リビア船籍のMVスミルニホを捕捉して26人の船員を拉致・抑留したのが最後だ。

2008年からソマリア沿岸で海賊掃討作業を持続して遂行してきたヨーロッパ連合海軍を中心に、アメリカ、中国、インド、ロシアなどの海軍の取り締まり作戦が決定的だった。今年5月からヨーロッパ連合海軍は任務を強化して、陸上にある海賊武器と装備、燃料などを破壊した。
日本の航空自衛隊まで加勢し、ソマリア沿岸上空を飛行して海賊たちの動向を近くの船舶に伝えていたりもしている。
商船など民間船舶も隣近を巡視中の海軍艦隊と随時交信する一方で、自身の警備を強化した。武装警備兵と海賊たちが船舶に這い上がるのを防ぐ鉄條網と水大砲なども設置した。

海賊たちは船舶と武器、燃料などを用意するために借りた金を返すことができず、逃亡者の身分だ。ガルカイヨで会った海賊のアブデー・リザク・サルレは、かつてはボディーガードと下女を従えながら暮していたが、最近は借金取りを避けて、むさくるしいバラックで暮す。
海賊たちにお金を貸していた金融業者のパルドサ・モハマド・アリは「海賊たちは破産して、避難民のように暮らしており、もうこれ以上、接触しない」と述べた。
国連によると、1045人の海賊が現在21ヶ国で逮捕され司法手続きにかけられている。海上での取り締まりと気象悪化、事故などで死んだ海賊の数は統計さえ出しにくい。

この地域の遊興産業京の景気も撃沈した。海賊ブームが絶頂だった頃はお茶一杯で50セントにまで上がったが、今は5セントに過ぎない。海賊出身のモハマド・アブドー・アデンは、昔の仕事だった町内サッカーコーチに戻ったが、月給が海賊時代のひと晩の遊興費にも満たない。
一晩に1000ドルを取っていた性売買の女性たちも去った。ホビョの市長のアリ・ディユアレ・カヒニは「海賊はインフレと道徳的退廃、治安不在を生んだ主犯なので、彼らがいなければ生活と文化が改善する」と語った。

過去2ヶ月間続いたこの地域のモンスーン後の今年下半期は、ソマリア海賊の衰退が恒久的な段階に入ったのか判断する試金石になると、ヨーロッパ連合海軍側は明らかにした。【9月29日 ハンギョレ・サランバン】(http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1667382.html
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世界最貧国のソマリアで“一晩に1000ドル”というのは、超バブルの様子が推察されますが、それも今は昔のことになったようです。

これで新政権による統治に向けてうまく進むかどうか・・・は、なかなか確信が持てません。
もともと新政権を支える勢力は多くの氏族の寄り合い所帯ですから、仮にアルシャバブを追い込んでも、今度は政権内部での勢力争いが表面化するという事態も懸念されます。
“政治手腕は未知数”のモハムド新大統領に期待します。また、国際支援も引き続き必要とされています。
コメント

東南アジア諸国への日本企業進出  加速する“脱中国” 所得水準向上で日系小売業の展開

2012-09-29 21:38:29 | 東南アジア

(今年6月、フィリピンに初出店したユニクロ “flickr”より By hiboshizakana http://www.flickr.com/photos/torax3/7433216292/

【朝日】が今月25日から27日かけて、日本企業の東南アジア進出に関する記事を掲載していました。
非常に興味深かったので、それら中心に概略をまとめてみました。

チャイナリスクで日本企業の“脱中国”加速
多くの日本企業が中国での経済活動を行っています。
近年の人件費の上昇を背景に東南アジア諸国に別の拠点を設ける“中国プラス1”の流れが以前からありましたが、先日来の暴徒化した反日デモに見られる“チャイナリスク”が改めて認識されたことで、“脱中国”の動きが加速しているようです。

“脱中国”の受け皿となっている国のひとつがカンボジア。今年の日系企業の投資は昨年の7倍になるとか。
安価な人件費に加え、インドシナ半島地域における中国・日本の開発援助競争で整備された幹線道路網の整備も、こうした動きを支えているようです。

****投資、向かうカンボジア 中国リスク、追い風に****
「そちらの団地を視察させて」「高度な技術を使う工場もやっていけますか」
カンボジアの首都プノンペン市街から車で西へ約45分。電気や上下水道などのインフラ設備が整った工業団地を開発・販売している会社「プノンペン経済特区」の上松裕士社長はいま、中国で事業を展開している日本企業からの問い合わせに追われている。(中略)

問い合わせが増えたのは、日本政府による尖閣諸島の国有化を巡って中国で大規模デモが起き、日系企業が略奪や放火にあった今月16日ごろからだ。上松社長は、それが「脱中国」の背中を押しているとみている。

日系企業のカンボジア投資は2010年からぐんぐん伸びた。今年は昨年の約7倍の5億ドル(約390億円)にのぼる見込みだ。政府の外国投資の窓口のカンボジア開発評議会によると、10年以降、これまで約500社の日系企業から相談があり、半分が製造業。その8割が中国からの移転話だったという。

2000年代後半以降、中国に進出した日系企業は、人件費の急騰や人手不足に音を上げ、中国事業を縮小・清算して新たな投資先を探す動きが出ていた。10年9月には尖閣諸島付近で日本の海上保安庁の巡視船に中国の漁船が衝突し、日中関係が悪化。日系企業が背負う中国リスクは一段と膨らんでいた。06年に沸き起こったベトナム投資ブームも、05年4月の中国の反日デモが背景のひとつだった。

「プノンペン経済特区」の開発済みの工業団地は東京ディズニーランドの2倍の広さ。すでに全区画、入居する企業が決まっていて、隣にその1.5倍ほどの工業団地をつくっている。「そこも来年末には売り切れるだろう」と上松社長。「心苦しいが、いまの状況はわが社には追い風です」

■輸送網整備、進む分業
20年前まで内戦が続いていたカンボジアは成長する東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかでは落ちこぼれ組だった。人口約1300万人と小国ながら、労賃は安く、外資に対して開放的。輸送網が整い、国境を越えた貿易が急速にやりやすくなったことで中国に代わる投資先(中国プラス1)としての評価が一気に高まった。

ベトナムと国境を接するカンボジア南東部の町バベット。ベトナムからの観光客でにぎわうカジノ街を抜け、水牛が寝そべる水田地帯をさらに15分ほど走ると、マンハッタン、タイセンの工業団地がある。税制や通関手続きなどで優遇措置を受けられる経済特別区に指定されている。(中略)
 
特区の入り口には凱旋(がいせん)門のような重厚な門。その下をコンテナを載せたトレーラーがひっきりなしに出入りする。大半がベトナムナンバーだ。団地内の企業の製品が積まれ、65~80キロ離れたベトナム南部最大のホーチミン市の空港や港に運ばれる。

メコン川流域の各国のつながりを深め、地域全体を底上げしようという「大メコン圏開発計画」がアジア開発銀行(ADB)主導でスタートして20年。輸送網の整備が集中的に進められ、インドシナ半島を縦横に走る三つの幹線道路がほぼ出来上がった。ホーチミン市からバベット、プノンペンを通ってバンコクに抜ける「南部回廊」はそのひとつだ。

地域の国々は、物資の行き来をさらにスムーズにするため、入国管理、税関、検疫などの手続きが1カ所で済むワンストップサービスを導入。国境を越えるトラックにとっての利便性が飛躍的に高まった。

プノンペンの工業団地にある精密部品大手「ミネベア」の工場には週1、2回、約650キロ離れたタイ工場からデジタル映像機器に使う小型モーターの部品がトラックで運び込まれる。これらを組み立て、タイに送り返す。南部回廊のおかげで高度な加工技術が必要な作業はタイ、組み立てという人海戦術の作業は労賃が割安なカンボジアという「分業」が可能になった。

「わが国はハイテク産業の投資を誘致する新時代に入った」。昨年12月17日の開所式では、民間企業の行事にはめったに足を運ばないフン・セン首相があいさつに立ち、カンボジアでは初のハイテク工場の誕生に胸を張った。

■後発組に脚光、進出の機運
日本企業はいま東南アジア進出に前のめりになっている。「中国プラス1」として、インフラ整備で先行するインドネシアやベトナムで事業をできそうな工業団地を血眼で探し回っている。ただ、どこもいっぱいで賃金も高い。そこで注目しているのがカンボジアのほか、ミャンマー、ラオスといったASEAN域内の後発国だ。

民主化に踏み出したミャンマーは人口6200万人。エネルギー資源も豊富で、日系に限らず海外企業の関心は非常に高い。日本からの「下見」の出張者が急増していることもあって、宿泊設備が極端に不足。ヤンゴン市内の外資系高級ホテルの料金は昨年の2~3倍になっている。

人口が640万人と少なく、出遅れたラオスも好機を逃すまいと懸命だ。「我が国も産業化を進める時代になった。事務所を開設してほしい」。先月下旬、ラオスを訪問した日本貿易振興機構(ジェトロ)の石毛博行理事長は、面会したトンシン首相ら政権幹部から熱望された。隣のカンボジアでジェトロが事務所を開いた2010年から日系企業の投資が急増していたことを意識したとみられる。

これまでASEANの中での成長株はシンガポールやタイ、マレーシアといった海路をフル活用して輸出を伸ばしてきた国々だった。「カンボジア、ミャンマー、ラオスが陸路を通じて生産ネットワークに組み込まれ、経済的離陸を始めた。インドシナ半島を舞台にした『陸のASEAN』の登場だ」。ミネベアのカンボジア工場の香月健吾副社長は指摘する。 【9月25日 朝日】
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もっとも、販売市場としての中国の重要性を指摘し、生産の側面からだけの東南アジアへの拠点分散に対する否定的な見方もあります。

****チャイナ・プラス1は古い」=拠点の分散加速を否定―岡村日商会頭****
「チャイナ・プラス・ワンは遠い過去のものだ」。ベトナム訪問中の岡村正会頭(東芝相談役)は25日、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化を受け、日本企業がベトナムなど東南アジアへの拠点分散を加速させるとの観測が浮上していることについて「企業は生産と販売の両面から進出先を決めている」と語った。ハノイでの記者会見で語った。

岡村氏は「チャイナ・プラス・ワンは、生産拠点をどこに置くかという時代の発想。中国や東南アジアの市場の進展は早い」と指摘。製品の販売市場として重要性を増す中国から、日本企業が直ちにシフトすることはないとの認識を示した。【9月25日 時事】
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低賃金の労働力だけに頼る経済成長はいずれ限界に達する
安価な人件費もやがては上昇します。
インドネシアでは、日系企業など数百社が製造拠点を置く西ジャワ州ブカシ県の工業団地で今年1月、賃上げを求める労働者たちが、工業団地近くの高速の出入り口を封鎖しました。
高度成長の陰で所得格差が縮まらず、最低賃金の低さへの不満が充満しているためで、労働組合は来月3日に全国21カ所で200万人規模のゼネストを計画しています。

“日本貿易振興機構によると、東南アジア8カ国の昨年から今年にかけての賃上げ率の平均は8.0%。その1年前と同じハイペースの伸びだった。職場の賃金水準は口コミや携帯メールであっという間に広まる。企業は人手をつなぎとめるためにも周りと横並びで賃上げするしかない。外資の間では「このままだとコスト競争力が損なわれる」(ベトナムの日系企業関係者)との警戒感が広がっている。” 【9月27日 朝日】

****限界突破へ構造改革 ****
「東南アジアは、中国のような成長はできない」(小島オーナー)という見方がある。中国には2000年代後半まで、低賃金でスト権などを持たない労働者が無尽蔵にいたから外資もなだれをうって進出し、利益を上げた。しかし、いまの東南アジアで、労働者の権利が全く保障されていない国はないからだ。

ただ、賃金上昇は長い目で見て悪いことばかりではない。アジア開発銀行の東南アジア担当首席エコノミスト、ケリー・バード氏は「生活水準が上がり内需も増える。付加価値の低い製造業は国外へ出るかもしれないが、産業が高度化すれば働き手にも、経済にも利益は大きい」と解説する。

低賃金の労働力だけに頼る経済成長はいずれ限界に達する。その壁を打ち破ろうとしているのがタイだ。政府は企業に最低賃金の引き上げを突きつけて、人手が勝負の単純労働を周辺国に移すよう迫る。タイの大手ゼネコン幹部は「ミャンマーは15年でタイに追いつくだろう。労働集約型産業はもはやタイ経済の中核にならない」と言う。

マレーシアも最低賃金制度の整備を進めて「脱・労働集約型産業」を加速させる。「最低賃金は、東南アジアでシンガポールに次ぐ高い水準になる」(日本貿易振興機構)という。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の先行組が構造改革を進めれば、インドネシアやベトナム、ミャンマーに仕事が回り、雇用が増える。格差が縮まって社会不安が収まるという好循環が生まれる可能性がある。それこそが台頭するアジアの未来のカギを握る。【9月27日 朝日】
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【「パイ自体がどんどん増えている」】
東南アジア各国での賃金上昇は、生活水準上昇に伴う消費構造の変化をもたらします。
そうした流れに沿った日本の小売業界の進出に勢いがあるようです。

****ファミマ、タイで3千店計画 コンビニの海外進出加速****
日本のコンビニエンスストアが海外にどんどん出店している。国内はやがて出店が頭打ちになるため、若者が増えるアジア各国で「陣取り合戦」を始めた。
ファミリーマートは24日、タイでの店舗数を今の746店から10年後には約4倍の3千店に増やす計画を発表した。(中略)

タイではセブン―イレブンが6千店以上を構えており、これを追う態勢を整える。
ファミマの海外店は約1万2千店あり、すでに国内9千店を上回っている。さらに計画では8年後に「世界4万店体制」を目指す。

大手コンビニは若者からお年寄りまで客層を広げることで2012年2月期に軒並み過去最高の営業利益をあげた。ただ、少子化でいずれは国内の成長も鈍るという危機感から海外出店を急ぐ。
とくにセブン―イレブンは海外にすでに約3万3千店を出し、断トツだ。「本家」の米セブン―イレブンの運営会社を1991年に買収したことで世界中に店舗網が広がった。(中略)

日系コンビニには新興国の関心も高く、提携の誘いも多いという。ただ、SMBC日興証券の川原潤シニアアナリストは「どの国も外資を嫌う傾向があり、政情不安の危険もある。提携先の見極めが重要だ」と忠告する。(古谷祐伸) 【9月26日 朝日】
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今年5月の中国旅行で上海の北新駅周辺に宿泊した際に、ローソンとファミリーマート(全家)の日本国内以上の多さに驚きました。道路向かいも同系列店がもうひとつある・・・といった具合で、計画的な出店の発想はないのだろうか・・・と訝しく思いました。
それはともかく、ファミリーマートは今後、フィリピンやインドネシアにも出店の計画があるようです。
セブン・イレブンが20年以上前に米本家を買収していた話は知りませんでした。

日本の小売業界でコンビニと並んで元気があるのが“ユニクロ” 日本の消費行動のひとつのパターンにもなりつつありますが、東南アジアへの出店も盛んなようです。
背景には、東南アジア諸国の所得上昇に伴う消費構造の変化があります。

****東南アジア、消費沸騰 中間層増え「高級」ユニクロに列****
今年6月、マニラ首都圏パサイ市のショッピングモールに「ユニクロ」のフィリピン1号店がオープンした。最初の3日間で1万人が訪れ、470坪の店内に入りきらず、行列は1時間半待ち。特別価格590ペソ(約1100円)のジーンズ、Tシャツ、ポロシャツが飛ぶように売れた。

ユニクロの出店は、東南アジアではシンガポール、マレーシア、タイに続く4カ国目だが、2千ドル台の1人当たり国内総生産(GDP)は先行国と比べて格段に低い。日本とほぼ同じ値段で売られるユニクロの商品は、フィリピンでは「高級」の部類に入る。それでもフィリピンの店は日本・海外の計1200店舗の中でもトップクラスの売り上げを記録している。

ファーストリテイリング・フィリピンの久保田勝美・最高執行責任者(COO)は「ずばり、中間層の『手が届くあこがれ』にハマった」と説明する。フィリピンでも近年、中間層は確実に増えている。家や自動車は無理だけれど、上向いてきた生活を実感したい。ちょっといいものを着たい。そんな強い欲求をすくい上げた。
ユニクロの出店目標は3年で50店舗。久保田さんは「日本との一番の違いは、パイの奪い合いになっていないこと。パイ自体がどんどん増えている」と話す。

フィリピンとともに東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で大きく出遅れていたインドネシア。午前4時半、日の出前のイスラム礼拝を呼びかけるアザーンが流れるなか、荷台に「サリ・ロティ」のパンを積んだ15台の自転車が首都ジャカルタの狭い路地裏に飛び出した。各家庭を回り、午前8時までに1台で100点ほどを売る。
食パン1斤の値段約80円はコメなら十数食分に相当する。「昔は『朝食に高価なパンなんて』と言われたものだ。3食米飯を食べるのが普通だったから」と、売り子を始めて15年のトゥギマンさん(43)。

サリ・ロティは日本の敷島製パンと双日、インドネシアの財閥サリムグループなどが出資する国内最大のパンブランド。売り上げの7割を占めるコンビニエンスストアやスーパーとともに、全国2千台の自転車売りは販売の両輪となっている。売り上げは2006年から毎年2割以上伸び、今は毎月、食パン1千万斤など2500万点を売る。
6工場での製造が追いつかず、年内に新たに2工場がオープンする。双日インドネシアの岡部卓夫・食料部長は「路地裏でも中間層は増えている。消費が本格的に爆発するのはこれからだ」と意気込む。

1人当たりのGDPが3千ドルを超えるとモータリゼーション(自動車社会)の時代に突入するとされる。70年代の日本、80年代の韓国がそうだった。インドネシアが3千ドルに乗ったのは一昨年。昨年の国内新車販売台数は89万4千台余りで、タイを抜き、ASEANでトップに躍り出た。(中略)

■さらなる成長、外資カギ
成長の歯車が回り出した背景には、政治の安定がある。フィリピンは01年の政変後に発足したアロヨ政権以降、インドネシアは04年のユドヨノ政権の登場で政治が落ち着き始めた。ビジネス環境が改善する中、「人口大国」ともてはやされるようになり、海外から資金が流入。株価は史上最高値を塗り替え、旺盛な消費が成長を押し上げる。

ただ、危うさも垣間見える。インドネシアではクレジットカードのローンが社会問題化している。同国の中央銀行によると、カードの発行枚数は約1600万枚で、この5年間で約680万枚増えた。
身の丈以上に出費する人が少なくなく、一時は貸出金のうち不良債権が13%近くに達した。中銀は、来年からクレジットカード保有数を1人2枚までなどとする規制強化に乗り出した。

一方、銀行口座を持っているのは人口のわずか3割にとどまる。貯蓄が増えず、息の長い成長に必要な投資に回す資金を準備できなくなる可能性がある。もう一段上の成長のステージに乗るには、海外からの投資がかぎを握る。外資をどんどん取り入れて急速に豊かになったタイが手本になる。

インドネシアはしっかりとタイの軌跡を歩むことができるか。そしてフィリピンはインドネシアに続くことができるか。ASEANの「期待の星」は成長の難路に差しかかっている。【9月26日 朝日】
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なお、反日デモのさなかにいろいろ話題にもなったユニクロですが、28日には北京と遼寧省瀋陽に新しい店をオープンさせています。
“中国の建国記念日「国慶節」の大型連休を控え、10月1日までに予定通り、さらに10店を出す。反日機運のなかでも、巨大市場、中国への攻勢を続ける方針だ” “8月末現在で中国内には145店を展開する。毎年100店ほどの出店を目指しており、今年も80店ほどのめどがついているという”【9月29日 朝日】
日本製品不買運動の動きもあるなかで強気の展開ですが、それだけ消費者ニーズに合致した強みがあるということでしょう。

日本の「イオン・モール」も、2014年、カンボジア・プノンペンに初出店するそうです。
出店数は150店。プノンペンで最大級のショッピングエリアとなるとか。
“集客のターゲットは「若いファミリー」。人口の7割が30代以下の国で、購買力を持つ働き盛りの人口は、末広がりに増えていく。(中略)「今のカンボジアは日本の1960年代の状況と似ているが、成長のスピードは日本の4倍ともいわれる。その勢いに期待を込めた」と、同社幹部は言う。”【9月28日 DIAMOND online】
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ロシア  メドベージェフ首相の権限弱体化 世界に広がる「プッシー・ライオット」裁判批判

2012-09-27 22:38:57 | ロシア

(“反プーチン”の象徴ともなった「プッシー・ライオット」 この威勢のよさは圧巻です “flickr”より By jorge artajo http://www.flickr.com/photos/13977584@N08/8022985342/

首相解任の見方も
ロシアではプーチン大統領による反政府運動に対する締め付け、強権的な体制立て直しの動きが進み、リベラル色もあるメドベージェフ首相との関係も悪化しているのでは・・・という話は、9月2日ブログ「ロシア グルジア紛争開戦をめぐり憶測されるプーチン・メドベージェフの溝」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120902)でも取り上げたところです。

プーチン大統領とメドベージェフ首相の関係はその後も悪化が窺われ、“解任”も予測も取り沙汰される状況になっています。

****ロシア メドベージェフ氏「首相の座」ピンチ 覆される政策/3閣僚懲戒処分****
ロシアのプーチン政権で首相を務めるメドベージェフ前大統領の弱体化が顕著になってきた。5月に就任したプーチン大統領はメドベージェフ前政権期の政策をことごとく覆しており、最近は予算編成をめぐってメドベージェフ内閣の3閣僚を懲戒処分にした。
メドベージェフ氏がプーチン氏を頂点とする権力エリートの一翼を担う存在にすぎないことが鮮明になっており、政権内の派閥対立が深まる兆候もある。

メドベージェフ氏は政権内のリベラル派とされ、前大統領期には政治・経済の国家統制を緩める方向で独自色を出そうと試みた。集会の規制強化法案に拒否権を行使する一方、刑法から「中傷」罪を削除したり、非政府機関(NGO)に関する法制を簡素化したりしたことが挙げられる。

これに対し、通算3期目のプーチン政権はこれら全てを元に戻したのみならず、NGOの統制を大幅に強めるなど正反対の方向にかじを切っている。

プーチン氏は今月19日、5月の大統領令で命じた内容が2013~15年の予算案に盛り込まれていないとし、地域発展相ら3閣僚を懲戒。プーチン氏が大統領選前に公約した大学教員や医師の給与引き上げ、極東開発といった政策について予算措置がとられていないことに激怒したもので、メドベージェフ氏を公然と叱責したに等しい。
今やメドベージェフ氏の権威失墜は明らかで、プーチン氏がある時点で首相を解任するとの見方も有識者の間では根強い。

ただ、そもそもプーチン氏の選挙前公約は2兆8千億ルーブル(約7兆円)相当と試算される“バラマキ”であり、「公約の実現と均衡予算の達成は解決策のない課題」(ノーバヤ・ガゼータ紙)とみられている。
メドベージェフ氏は財源不足を補うため、国営石油・天然ガス企業「ロスネフチガス」の配当金の95%を予算に組み込む案を承認。同社は露指導部のシロビキ(治安・特務機関出身者ら武闘派)を代表するセチン氏が率いており、これはシロビキの権力基盤に切り込む動きとみられている。

露政治学者、ミンチェンコ氏らが8月に発表した報告書によると、露指導部はシロビキなど利害の対立する複数の派閥から構成され、プーチン氏は「裁定者」として権力を保持している。プーチン氏の政権運営には常に、派閥間の微妙なバランスが崩れるリスクがつきまとっている。【9月24日 産経】
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“メドベージェフ首相は21日、国際投資フォーラムで演説し、プーチン氏が首相時代の08年に病気を理由に会合を欠席した鉄鋼大手社長に対し「医者を送って始末する」と発言したことを批判的に紹介。2人の亀裂を印象付けた。
メドベージェフ首相を巡っては最近、大統領時代の08年に起きたグルジア紛争で軍事介入の決断が遅れたとの批判が浮上。首相の改革の目玉として昨年導入された夏時間の通年適用が市民に不評で、来月から冬時間の通年適用に改める動きが進んでいる。いずれもメドベージェフ首相の権威失墜につながるものだ。”【9月26日 毎日】とも報じられています。

メドベージェフ首相をめぐる動きは、単に、リベラル色の施策をめぐる対立ではなく、プーチン大統領周辺のシロビキ既得権益層との権力争いという側面が強いようです。

昨年9月の与党「統一ロシア」党大会で「ポスト交換」を発表して1年が経過しますが、「双頭体制」とは言っても、実態はプーチン大統領が全てを仕切っているとされています。
ただ、メドベージェフ首相の解任云々は、全世界にロシア・プーチン政権の強権支配的方向への変質を公言するようなもので、敢えてそこまでするでしょうか?
今以上に首相の実権を制約して、お飾り的存在にするというのが現実的なように思えます。

正念場を迎えている反プーチン運動
プーチン政権による反政府勢力締め付けの動きのひとつとして、野党「公正ロシア」のグトコフ議員の議員資格剥奪が報じられています。

****ロシア:反プーチン下院議員の資格剥奪 野党は反発強める****
ロシア下院は14日、プーチン大統領を批判してきた野党「公正ロシア」のグトコフ議員の議員資格剥奪を与党「統一ロシア」などの賛成多数で決めた。グトコフ氏が議員在職中に禁止されているビジネスをしたというのが理由だが、本人はこれを否定。野党側は「反プーチン勢力つぶしを狙ったものだ」と反発を強めている。(中略)

グトコフ氏はプーチン大統領と同じ旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身で、以前は統一ロシアに所属したが、07年から公正ロシアに移り、最近は反プーチン勢力の急先鋒(せんぽう)に立っていた。グトコフ氏の疑惑については司法当局が捜査しており、同氏は議員資格剥奪により不逮捕特権がなくなったことで逮捕される可能性がある。【9月15日 毎日】
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一方、反プーチンの運動は、3か月ほど抑え込まれていましたが、9月15日、久しぶりに大規模な抗議行動が行われています。

****プーチン大統領辞任求め大規模デモ…3か月ぶり****
ロシアのプーチン大統領の辞任を求める反政権デモが15日、モスクワや第二の都市サンクトペテルブルクなどで行われた。
大規模な反プーチンの抗議行動は6月以来約3か月ぶり。

デモは反政権派が結集した政治組織「連帯」などの野党勢力が呼びかけ、極東のウラジオストク、シベリアのトムスクなどでも行われた。モスクワでは午後2時(日本時間午後7時)、公正な選挙や自由を意味する白いリボンを身に着けた数万人が中心部のプーシキン広場に集合し、「プーチンなきロシアを」などのスローガンを叫んで約2キロ・メートル離れたサハロフ広場に向けて行進を始めた。

当局は抗議行動を許可するにあたり、参加者を2万5000人に限定。インターファクス通信によると、警察当局者は参加者数を「約1万1000人」と推計する一方、主催者の一人は「約5万人」としている。【9月15日 読売】
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15日の反政府集会は、モスクワをはじめ約50都市で開かれましたが、“ロシアでは最近、野党指導者らへの刑事捜査が活発化しているほか、集会勢力の弱体化を狙ったような改正法が次々と成立。昨年以来、中間層を引きつけてきた「反プーチン集会」は正念場を迎えている”【9月16日 朝日】というように、今後の展開は厳しそうです。

【「政府は批判を受けるものであり、これを受け入れられなければ良い政府にはなれない」】
こうした反政府集会に代わって、“反プーチン”で話題になっているのが、女性パンクバンド「プッシー・ライオット」の裁判です。
8月3日ブログ(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120803)で取り上げたように、「プッシー・ライオット」は、ロシア大統領選直前の2月21日、目出し帽姿でロシア正教会大聖堂に押し入り、「聖母様、プーチンを追い出して!」などプーチン氏やロシア正教の総主教を批判する歌を演奏したことで、メンバー3名が半年以上拘束された後、「教会や信者を冒とくし、社会秩序を乱した」として8月17日に禁錮2年の実刑判決を受けています。

“「プッシー・ライオット」は男女同権や環境保護、反権力を掲げて昨年8月に結成された。90年代にフェミニズム運動を盛り上げた米パンクバンド「ライオット・ガール」の影響を受けたという。メンバーは歌ったり演奏したりする約10人と、動画撮影などの裏方約15人で構成する。全員匿名で、今回有罪となった3人以外の素性は分からない”【8月27日 毎日】

“実刑判決を受けたナジェジュダ・トロコンニコワさん(22)、マリヤ・アリョーヒナさん(24)、エカテリーナ・サムツェビッチさん(30)はいずれも大学教育を受けており、いわゆる「はみ出し者」ではない。ナジェジュダさんには4歳の娘、マリヤさんには5歳の息子がいる。裁判で3人は信者に謝罪しながらも「政治的、芸術的な動機に基づく行為で、犯罪にあたらない」と主張したが、認められなかった”【同上】

この厳しい当局・司法の対応に、世界中から批判が寄せられており、彼女らの活動を擁護する動きも出ています。

****ロシア女性バンドが候補に=人権たたえるサハロフ賞―EU欧州議会****
欧州連合(EU)の欧州議会は14日、顕著な人権活動を行った個人らをたたえる2012年の「サハロフ賞」候補に、ロシアのプーチン大統領を批判する歌を歌い、メンバー3人が禁錮刑を言い渡された同国の女性パンクバンド「プッシー・ライオット」が推薦されたと発表した。

推薦理由について欧州議会は、同バンドの行動により、「ロシアでの市民権の制限や法秩序の欠如に世界が注目した」と説明している。イランやベラルーシの活動家ら7人もノミネートされ、10月下旬に受賞者が決まる。【9月15日 時事】
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****オノ・ヨーコさん、露プッシー・ライオットに平和賞を授与****
故ジョン・レノン氏の妻で芸術家のオノ・ヨーコさんは21日、ウラジーミル・プーチン露大統領を批判する歌を演奏してロシアで裁判にかけられている女性パンクバンド「プッシー・ライオット」に、平和賞「レノン・オノ・グラント・フォー・ピース」を授与した。

授賞式はニューヨーク市内のホテルで行われ、先月禁錮2年の実刑判決を言い渡されて勾留されている同バンドメンバーの1人、ナジェージダ・トロコンニコワ被告の夫と娘が出席した。
オノさんは授賞式で、「プッシー・ライオットは表現の自由を信じて毅然とした態度を取っている。彼女らの即時解放を目指して活動していきたい」とコメントした。【9月24日 AFP】
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ミャンマー民主化運動指導者スー・チー氏も、この裁判を批判しています。
****女性バンドの即時釈放を=ロシア政府を批判―スー・チー氏****
訪米中のミャンマー最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー氏は20日、ワシントン市内で開かれた人権対話集会で、ロシアのプーチン大統領を批判する歌を歌い、禁錮刑を言い渡された同国の女性パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバー3人の即時釈放を求めた。

スー・チー氏は「政府は批判を受けるものであり、これを受け入れられなければ良い政府にはなれない」と、プーチン政権の対応を批判した。【9月21日 時事】
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禁固刑を受けたメンバーは「泣きはしないし、後悔していない」と、心境を語っているそうです。
****反プーチン・ソング「後悔せず」=禁錮刑のロシア女性バンド―仏誌****
ロシアでプーチン体制を批判する歌を披露し、禁錮2年の実刑判決を言い渡された女性パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバー3人は、21日発売のフランス女性誌エルに掲載されたインタビューで「泣きはしないし、後悔していない」などと現在の心境を語った。

メンバーのエカテリーナ・サムツェビッチさんは、「プーチン体制の真の顔が明らかになった」と強調。10月上旬に始まる控訴審については「何も変わらない。収容所へ送られるのはほぼ確実」と述べ、実刑判決が覆る可能性は極めて低いとの見方を示した。【9月22日 時事】
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当局側は、まだ身柄を拘束していないメンバーに対する捜査を開始したと発表していますが、女性メンバー2人が逮捕を逃れるために国外に逃亡したとも報じられています。
また、残りメンバーによる新たな活動も報じられています。

****反プーチンバンドが新作ビデオ 肖像写真燃やし政権批判****
ロシア正教会の聖堂で、大統領選に立候補していたプーチン氏を批判する曲を歌い、メンバー3人が実刑判決を受けたロシアの女性パンクバンド「プッシーライオット」が、プーチン氏の肖像写真を燃やしながら政権を批判する新たなビデオを制作した。

ロシアメディアが一斉に報じた。ビデオは約70秒で、動画サイト「ユーチューブ」などに投稿されている。場所は不明だが廃虚となったビルで撮影されたとみられる。服役中の女性たちとは別のメンバー3人が目出し帽をかぶって登場。
うち2人がビル屋上からロープで降下し、「私たちの国は悪人たちに支配されている」などと叫び、壁につるされたプーチン大統領の肖像写真に火をつけた。バンドへの支持を表明している米国歌手マドンナさんら音楽家らへの感謝も述べ、「自由を求める戦いは終わらない」と締めくくっている。

ビデオは米ロサンゼルスで6日に開かれた音楽ビデオの祭典「MTVビデオミュージックアワーズ」に合わせて制作されたという。セレモニーの際、ビデオが上映されたとの情報もある。【9月9日 朝日】
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【「実際の判決には何の影響もないだろう」】
最初のメドベージェフ首相の話題にも関連しますが、メドベージェフ首相はプッシー・ライオットの活動については批判しながらも、量刑については「もう十分長い期間、監獄にいる。判決は絶対的にとても重い懲罰だ」とコメントしています。

****ロシア首相「投獄、重すぎる」 反プーチンバンド判決で****
モスクワの救世主キリスト聖堂で反プーチンのゲリラ演奏をして拘束された女性パンクバンド「プッシー・ライオット」の3人が自由剥奪(はくだつ)2年の実刑判決を受けたことについて、ロシアのメドベージェフ首相は12日、「もう十分な懲罰は受けた。投獄はあまりに重すぎる」と述べた。

ロシア西南部ペンザで開かれた、自らが党首を務める政権与党「統一ロシア」の会合で「個人の意見」として語った。2月に逮捕されて以降、拘束が半年に及ぶ被告3人は8月17日、フーリガン(暴徒)行為罪で実刑判決を受け、「プーチン大統領の体制下の政治弾圧だ」などの国際的批判が起きた。被告はその後に控訴し、10月1日に控訴審判決が予定されている。

インタファクス通信によると、メドベージェフ首相はプッシー・ライオットの行為やその外見、その後に巻き起こった騒ぎについては「吐き気を覚える。これについて語るのは不快だ」などと発言した。しかし、量刑については「もう十分長い期間、監獄にいる。判決は絶対的にとても重い懲罰だ」などと述べた。

これに対して被告の弁護人の一人は「首相はこれ以上の投獄は非生産的だと考えている。正しい判断だ」と指摘した。ただ、一方では「実際の判決には何の影響もないだろう」と悲観的に見る弁護人もいる。(中略)

プーチン大統領は8月初めにロンドン五輪を視察した際、「そんなに厳しく裁くべきだとは思わない」などと語っている。(モスクワ=副島英樹) 【9月13日 朝日】
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もちろんロシアでも司法は独立しているのでしょうが、プーチン大統領の表向きの発言にもかかわらず、恐らく裁判はプーチン大統領の意向を反映したものではないでしょうか。
また、「(メドベージェフ首相の意向は)実際の判決には何の影響もないだろう」というのが現実のようです。
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ベトナム  経済減速と相次ぐ大手企業の不祥事 ネット社会へ厳しい言論統制

2012-09-26 23:04:09 | 東南アジア

(7月1日、ハノイでの反中国デモ こうしたデモの容認・規制は今のところは政府のコントロール下にありますが、こうした抗議行動やネット上での発言で示される個人の主張は、やがては現行政治システムへの批判につながる可能性があります。 “flickr”より By thanhmai2011 http://www.flickr.com/photos/thienmai/7499738076/

ベトナムにとって日本は最大の援助国
中国と類似した社会主義体制の下での開放経済政策をとるベトナムの経済成長が著しく、人件費が高騰する中国(最近の反日抗議デモで、政治的なリスクも強く意識されるようになっています)に代わって、日本企業の進出も増加している・・・と言う話は、かねてより言われていることであり、下記記事もその流れに沿うものです。

****ベトナムに官民熱視線 企業の進出、売り込み加速****
成長著しいベトナムに、日本の官民が熱いまなざしを送っている。経済産業省はトップセールスで航空機の売り込みをはかり、ベトナム政府肝いりの工業化計画には同省幹部らが指南役に就いた。

「協力して(航空機ビジネスを)広げていきたい」。枝野幸男経済産業相は出張先のハノイで15日、日本の官民が開発に取り組む国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」(ミツビシ・リージョナル・ジェット)を売り込んだ。
ハノイには航空機部品を組み立てる三菱重工業の子会社がある。ベトナム航空から受注がとれれば、アジア各国の受注獲得に弾みがつくうえ、地元ベトナムにも経済効果が高い、とアピールした。枝野氏と会談したビン計画投資相もMRJを「基本的に支持する」と前向きに応じた。

ベトナムは人口増が続き、若い世代が多いのが特徴だ。ドイモイ(刷新)政策で市場経済の導入を進めている。人件費が上がり続ける中国の代わりの生産拠点として日本企業の進出が加速し、進出企業の数は10年間で2倍以上になった。
製造業に続いて、最近ではイオンなど大手サービス業も進出している。日本からの直接投資額は年々増え、2010年には20億4千万ドル(約1600億円)に達した。

ベトナムには、中国が輸出規制を続けているレアアース(希土類)もある。枝野氏はズン首相とも会談し、日本企業が開発をめざすレアアース鉱山の認可について協力を要請した。
この鉱山の周辺には、日本政府の途上国援助(ODA)で、中学校や診療所が建った。ODAの一つの方法で、低い金利で資金を融資する円借款は、11年に2700億円にのぼる。ベトナムにとって日本は最大の援助国になった。

ベトナムも、日本をはじめ外国からの投資を呼び込んで発展を続けることに積極的だ。だが最近、日本企業を誘致するうえでライバルとなる国も現れている。民主化を進めるミャンマーだ。人口が多く人件費も安いため、日本企業が生産基地を築く国として魅力が高まっている。
そこでベトナムは、港湾や交通などインフラの整備を進める「工業化戦略」をつくっている。その顧問に、外国政府の関係者では唯一、経産省の通商部門トップと駐ベトナムの日本大使が就いた。ベトナムで存在感を高めたい日本と、日本の協力を仰ぎたいベトナムの思惑が一致した。(ハノイ=藤崎麻里) 【8月16日 朝日】
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経済の行方に垂れ込める暗雲
一方で、不動産バブル崩壊による経済危機、共産党独裁政権下における政府と企業の癒着など、ベトナム経済の内情を懸念する報道もあります。

****ベトナム:大物銀行家逮捕 経済全体への不信感広がる****
ベトナム有数の資産家として知られる大物銀行家が「違法な経済活動」の疑いで逮捕され、国内に混乱が広がっている。20日の逮捕以降、主要株価は軒並み急落しており、AFP通信は24日、ベトナム株式市場の時価総額はすでに50億ドル(約3900億円)以上、下落したと報じた。事件は新興市場として世界の注目を集めるベトナム経済全体への不信感をも招いている。

逮捕されたのはベトナム大手銀行「アジア商業銀行(ACB)」の創業者、グエン・ドク・キエン容疑者(48)。ACBの経営から退いた今も多数の企業に投資し、プロサッカーチームの会長も務める。容疑は自身が会長を務める複数の投資会社に関するものとみられるが、政府は詳細を明らかにしていない。
ベトナム国家銀行(中央銀行)は事件とACBの関連性を否定したが、23日には、ACB頭取がその職を辞した直後に逮捕された。

事件は銀行業界全体への不信を招き、ACB株やほかの国内主要銀行株は急落、ベトナムの主要株価指数は23日までに約10%下落した。ホーチミンにあるACBの支店では預金を引き出す市民が殺到する取り付け騒ぎが起きている。

86年に「ドイモイ(刷新)」と呼ばれる開放政策を採用したベトナムは急速な経済成長を遂げた。
しかし、09年以降、外国投資は減少傾向にあり、一部では不動産バブル崩壊による経済危機を懸念する声も出始めている。
22日付の米ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、共産党独裁政権下における政府と企業の癒着が市場経済を不健全にさせており、キエン容疑者の詳しい逮捕容疑も明らかにされていないことから「ベトナム経済の問題点を浮き彫りにしている」と指摘した。
また、関係者の間では、政権と緊密な関係だったキエン容疑者の逮捕の背景には「共産党内の権力闘争があるのでは」との臆測も流れており、投資家らの不安が増している。【8月25日 毎日】
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上記のアジア商業銀行(ACB)創業者に続いて、国営ベトナム海運総合会社の元会長も逮捕され、大手企業の不祥事が目立ちます。

****海運会社の元会長逮捕=企業の不祥事続く―ベトナム****
ベトナム公安省は5日、国営ベトナム海運総合会社(ビナラインズ)の元会長で運輸省海事局長も務めたズオン・チ・ズン容疑者(55)を逮捕したことを明らかにした。同容疑者は浮体式ドックの購入などで多額の損失を計上し、「国家経済管理違反」で5月に逮捕状が出た後、逃走していた。有罪なら無期懲役の可能性もあるという。

ベトナムでは8月20日にアジア商業銀行(ACB)の共同創設者で大物実業家のグエン・ドゥック・キエン氏が「不正な事業活動」を行ったとして逮捕されたばかり。同30日には国営造船会社ビナシンの経営難を招いたとして、禁錮20年の有罪判決を受けたファム・タイン・ビン元会長の控訴が棄却されるなど、大手企業の不祥事が相次いでいる。【9月5日 時事】 
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経済が減速するなかで、ベトナム政府が銀行の不良債権問題でIMFに救済を求める可能性も取り沙汰されているようです。

****経済減速のベトナムがアジアのギリシャに****
ベトナム経済の行方に暗雲が垂れ込めている。銀行の取り付け騒ぎが噂されたかと思えば、汚職容疑で政府高官が逮捕され、着実に伸びていた経済成長にも陰りが見える。さらに政府が国際機関の支援を求めているという臆測まで飛び出した。

ベトナム政府が銀行の不良債権問題でIMF(国際通貨基金)に救済を求める可能性に言及したのは、国会の経済委員会だ。中央銀行のレー・ミン・フン副総裁がすぐにそれを否定したが、可能性が取り沙汰されただけでも注目に値する。財政赤字の是正と景気回復に必要な措置を早急に講じるべきだと、政府に対する圧力が高まっていることを意味するからだ。

地域の大国、中国の財政も非常に不安定な状態にあると指摘する専門家もいる。中国の財政が枯渇し、ベトナムが景気後退に向かっているとなれば、東南アジア諸国に対する影響は計り知れない。
東南アジア各国の経済は、世界金融危機が発生した08年以降も、その荒波をものともせずに成長を遂げてきた。だがその躍進を支えてきた中国とベトナムが共倒れとなれば大問題だ。

ASEAN自由貿易地域の関税撤廃によって、加盟10カ国問の貿易は飛躍的に伸びた。加えて、中国による投資と資金援助(特に対カンボジア)は、ASEAN地域の景気の見通しを明るいものにしてきた。
しかし国単位でいえば、マレーシアやタイ、フィリピン、インドネシアなどの経済は不安定な傾向を示している。経済成長は鈍く、債務が増え、規制撤廃による地域的な恩恵はもはや見込めない。かといって、ヨーロッパや日本、中国などの貿易相手国がすぐに好況を迎えるとも思えない。

ベトナムが「東南アジアのギリシャ」になると断言するのは時期尚早だろう。政府と国民の性質はギリシャとはかなり異なるし、インフレは抑制されて為替レートも安定している。
とはいえベトナムの不動産価格は2分の1に下落し、国外からの投資は3分の1も減少した。
向こう2年間の成長率の見通しは5%台だが、発展を目指す途上国にとっては微々たる数字だ。

ベトナム経済の不安は隣国のカンボジアやラオスにも悪影響を及ぼす。そして先行きの不透明感が急速に問題になりつつある東南アジア経済全体にも波及するだろう。【9月26日号 Newsweek日本版】
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個人のブログに対しても強まる監視・規制
経済だけでなく政治・社会の面でも軋みが出ています。
ベトナムを観光旅行していても、この国が共産党一党支配の社会主義であるということを意識させるものは殆んどありませんが、やはり中国同様、言論の自由が著しく制約されているという、共産党一党支配から生じる大きな問題が存在しています。

****ベトナム当局が「ブログ狩り」 体制批判に危機感***
ベトナム当局がブログの摘発を強めている。ブロガーの拘束や有罪判決が相次ぎ、サイト妨害も頻発する。共産党の一党独裁下で言論統制を続けるが、ネット空間で体制批判が広がる現状に危機感を募らせる。

ハノイの裁判所は11日、反国家宣伝をブログで広めたとして、元軍人のレ・タイン・トゥン氏に禁錮5年の判決を言い渡した。報道などによると、3年前から民主主義や政治の自由を求める意見をブログに掲載。昨年11月、国家や党の政策を誤って伝えたとして逮捕されていた。
この判決の3日前にも、教員や警察官を務めたブロガー、ディン・ダン・ディン氏が南部ダクノン省で禁錮6年の判決を受けた。

7日には著名な女性ブロガーのタ・フォン・タン氏(43)ら3人のブロガーの初公判も予定されていた。しかし先月30日にタン氏の母親(64)が娘の釈放を求めて焼身自殺。当局の弾圧への抗議とみられ、その直後に公判は理由が示されないまま延期された。

ブロガーへの脅迫行為も伝えられる。国立の研究所に勤めるグエン・スアン・ジエン氏は16日、自らのブログの内容について、ハノイの情報通信当局から罰金を課されたほか、当局者から「精神的な脅しや暴力的な態度」を繰り返して受けたと告発した。

ジエン氏が運営する人気ブログは今年5月、日本からの原子力発電所の輸入に反対する文章を掲載し、署名を呼びかけた。直後に傷病兵を名乗る集団がジエン氏の勤務先を訪ね、物を投げたり、脅迫したりする行為を繰り返したという。ブログへの嫌がらせの書き込みやアクセス妨害が続き、ジエン氏は公安当局の監視下に置かれている。

党や政府が警戒するのは、インターネットの普及でブログ利用者が急増しているためだ。「知りたい情報は政府の握るメディアにはないので、ブログやフェイスブックのチェックは欠かせない」(貿易会社に勤めるハノイ在住の男性)
政府は「インターネットの普及に力を入れている」(2009年12月の外務省会見)とする一方、「個人の心情をブログにつづるどさくさに紛れ、国家の治安を乱す情報を流す人間がいる。違法行為は厳重に処罰する」と警告してきた。

2年前からは中国と領有権をめぐり対立する南シナ海問題が国民の大きな関心を呼び、ハノイなどで開かれた反中デモはブログなどで参加が呼びかけられた。一部のブログでは、中国の非難だけでなく、ベトナム政府の対応のつたなさを公然と批判する書き込みもみられるようになっている。【8月28日 朝日】
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反日だろうが、反中国だろうが、ネット社会において国民が公然と声を出し始めると、やがてはそれは政府批判に転化するというのは、中国と同様です。
上記【朝日】にもある、著名な女性ブロガーのタ・フォン・タン氏ら3人のブロガーの初公判については、24日、禁錮4~12年の判決が出されています。

****政府批判のブロガーに禁錮4~12年 ベトナム****
インターネットのブログで政府を批判したとして、反国家宣伝の罪で起訴されたベトナムのブロガー3人に対し、ホーチミン市の人民裁判所は24日、禁錮4~12年の判決を言い渡した。AP通信などが伝えた。

ディウ・カイ被告は禁錮12年、タ・フォン・タン被告は同10年、ファン・ターン・ハイ被告は同4年。3人はそれぞれのブログで、警察の汚職や中国との関係などで政府に批判的な記事を執筆したとされる。

共産党一党体制のベトナムではテレビや新聞は政府が統制。個人のブログに対しても近年、監視や規制を強めていた。
在ベトナム米国大使館は同日、「ベトナム政府の対応は表現の自由に関する国際法と矛盾する恐れがある。3人は釈放されるべきだ」との声明を発表した。【9月25日 朝日】
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中国やベトナムは、著しい経済成長を実現して成長モデルとしての有効性を世界にアピールしましたが、経済成長とネット社会の拡大によって“もの言う”市民が増加すれば、その政治体制の根本的問題が浮かび上がってきます。
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韓国大統領選挙  父親の存在という十字架を背負って闘う朴槿恵氏 新しい成功モデルの安哲秀氏

2012-09-25 23:25:13 | 東アジア

(9月24日 父親の朴正煕元大統領時代の軍事クーデターや人民革命党事件などの人権侵害について「憲法の価値を損ねた」と謝罪する朴槿恵氏 “flickr”より By 박근혜 공식앨범 http://www.flickr.com/photos/withghpark/8017925157/

急速にレームダック化した李明博大統領
竹島を巡る問題で強硬姿勢をあらわにした韓国・李明博(イ・ミョンバク)大統領ですが、最近では与党セヌリ党内の求心力も失い、急速にレームダック化しており、日本としても事態打開は12月に選出される次期大統領を見据えてのものとなります。

なお、李明博大統領の支持率は、大統領就任直後にアメリカ産牛肉輸入問題で20%を割る水準まで一気に低下しましたが、その後のリーマンショックという経済環境の変化に彼が主張する自由主義的経済政策が合致したことで、09年末には40%を突破、2010年には50%に迫る勢いをみせています。その後、この40%を超える高い支持率は、大統領任期4年目の2011年前半まで継続しました。この水準は大統領任期4年目に入っての支持率としては、民主化以降の大統領としては最も高いものでした。

最近の支持率低下、求心力喪失の最大原因は、大統領の再選を認めない韓国の場合、任期末期には次期大統領候補(セヌリ党の場合は朴槿恵(パク・クンヘ氏)に求心力が移動することが避けらないことがあります。
特に李明博大統領の場合、任期末期が近い12年4月に国会議員選挙が行われたという政治スケジュール、そしてその選挙を指揮した朴槿恵氏が予想外の健闘を見せたことが、党内求心力の移動を促進したと考えられています。【木村幹氏「指導力の危機に直面する韓国政治」(http://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2010/2012-09_002.pdf)より】

また、近親者や側近の不祥事が続いていること、次期大統領選挙への出馬を明らかにしている安哲秀(アン・チョルス)氏に象徴される既成政党離れが進行していることが、李明博大統領の最近のレームダック化を加速させています。

野党一本化が焦点
12月19日に実施される韓国大統領選挙には、与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補、最大野党・民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)候補、野党陣営で既成政党の枠外にいる安哲秀(アン・チョルス)候補が有力候補として名乗りを上げています。

民間世論調査機関が19日に発表した支持率調査では、朴氏が38.6%、文氏が26.1%、安氏が22.5%となっていますが、既成政党と無縁で政治経験がない安哲秀氏には昨年9月に行われたソウル市長補欠選挙の頃から高い期待が国民から寄せられており、一時は支持率で首位を走っていました。

直近発表された4つの世論調査でも、野党陣営の文氏と安氏が一本化した場合、朴氏対安氏のケースなら、安氏が4~10ポイントの大差をつけて朴氏をリードしています。
朴氏対文氏のケースではほぼ互角といったところのようです。【9月24日 朝鮮日報より】
野党候補一本化ができるかどうかで、結果が変わります。

元大統領の長女が迫られる父親の評価
一本化できない場合、一番有利な位置につけているのが与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補です。
もし勝利すれば韓国初の女性大統領となります。

朴槿恵氏は、周知のように1979年にKCIA部長によって暗殺(10.26事件)された朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の長女です。母親も74年の文世光事件で射殺されていますが、朴槿恵氏は母親が暗殺された後は、父・朴正煕元大統領の傍らでファースト・レディの役割を務めていました。

朴正煕元大統領は、かつては満州国軍人として日本の陸軍士官学校に留学した経歴を持つ軍人で、61年にクーデターを決行して実権を掌握し、その後63年に大統領に就任しています。

朴元大統領は良くも悪くも、いわゆる“開発独裁”タイプの政治家の典型であり、“1961年には国民1人あたりの所得が僅か80ドルだったという世界最貧国圏から、1979年には1620ドルになるといったように、20年弱で国民所得を約20倍にまで跳ね上げるという「漢江の奇跡」を成し遂げた”【ウィキペディア】という功績の一方で、“国内では、1972年10月17日に非常戒厳令を発する(十月維新)など独裁色を強め、金大中事件に代表されるような中央情報部による強権的な反政府運動弾圧をも行った[5]。反政府勢力に対する弾圧は執政期全般を通して苛烈を極めた。共産主義者ないし北朝鮮のスパイ摘発に名を借りた不法な拷問・冤罪事件は枚挙に暇がない”【同上】という人権弾圧者の側面を併せ持っています。
従って、その評価も、どちらの側面を重視するかで大きく分かれます。

朴槿恵氏は、父・朴正煕元大統領に対する保守層の支持と地域的支持基盤を受け継いでいますが、一方で、人権弾圧政治家を父に持つという十字架を背負っての選挙戦ともなります。

個人的には、朴正煕元大統領に関しては、若い頃にTVなどで見聞きした金大中事件・文世光事件・10.26事件などの“怖い”イメージが強く、その長女が現在の政界で民主的有力政治家として活動できることが不思議な感もしていました。

保守派であるセヌリ党内においては、父親の存在はそう大きな問題とはならなくても、大統領選挙という全国民を相手にした場では、彼女自身が父・朴正煕元大統領をどのように評価しているのかという問題が避けて通れません。「野党側が差別化を図るために朴元大統領を争点に持ち出す可能性がある」とも指摘されています。
そのことは、父親が関与した竹島問題や日韓基本条約という日韓の枠組みがクローズアップされることでもあり、今後の日韓関係に影響してきます。

****韓国大統領選:朴槿恵氏の候補指名 野党側、竹島で攻撃も****
韓国の与党セヌリ党の大統領候補に指名された朴槿恵(パク・クンヘ)元党代表は、韓国を経済成長させたと評価される故朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の長女として圧倒的な知名度を持つ。

だが、野党側はむしろ、朴元大統領の負の側面を選挙戦で強調する可能性がありそうだ。特に最近の日韓関係悪化を背景に、元大統領と日本との関係が攻撃材料になることが懸念されている。

朴氏は20日の受諾演説で、大企業中心の社会構造の是正を柱とする「経済民主化」や、権力者の不正に厳しい態度を取ることを強調した。財閥寄りの経済政策で格差問題を深刻化させ、側近や親族が次々と汚職で逮捕されている李明博(イ・ミョンバク)政権への批判を意識したといえる。

しかし、朴氏の政策は、経済に限らず、北朝鮮との対話重視や福祉拡充といった主要政策の多くで野党側と重なる。そのため「野党側が差別化を図るために朴元大統領を争点に持ち出す可能性がある」(政界関係者)と見られているのだ。

朴氏は既に先月の討論会で、陸軍少将だった朴元大統領による1961年のクーデターを「不可避な最善の選択だった」と発言し、批判を浴びた。20日の党大会後の記者会見で改めてクーデターについて聞かれ、「国民の考えも多様だ」と釈明せざるをえなかった。

野党・民主統合党の予備選で支持率トップの文在寅(ムン・ジェイン)議員は既に、竹島と朴元大統領を争点にする構えを見せている。文氏は2日、65年の国交正常化当時に朴元大統領が竹島を「爆破し、なくしたかった」と語っていたと批判した。陣営関係者によると、文氏はその後も内部会議でこの問題を集中的に取り上げているという。

竹島問題では、予備選でも同様の構図が見られた。朴氏陣営の幹部が16日、李大統領の竹島上陸を「ポピュリズムだ。次の政権が代価を払うことになる」と批判。これを受けて朴氏は翌17日のテレビ討論で、李大統領に近い候補から問い詰められることになり、「ポピュリズムとは思わない」と答えたのだ。

韓国政府系研究機関の外交専門家は、日韓基本条約で「解決済み」とされた戦後補償問題を蒸し返す動きが韓国内で強まっていると指摘。「(朴正熙政権下で固まった)両国関係の基本的枠組みへの疑念だ。主要政策での与野党の違いが小さいだけに、野党側が(朴元大統領と日本の関係を)争点にするかもしれない」と懸念する。複数の野党関係者も、毎日新聞に「望ましくはないが、激しい選挙戦の中でそうした展開になることは考えられる」と語った。【8月20日 毎日】
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日韓関係に一定の道筋をつけた朴正煕元大統領ですが、現在の韓国内の反日感情からすると日本に対する融和的姿勢は命取りにもなりますので、選挙戦を通して対日強硬姿勢を強めていくことが想像されます。

また、朴正煕元大統領の人権弾圧に関してもすでに大きな問題となっています。
朴槿恵氏は24日、父親の行った人権侵害に対し謝罪会見を行いました。

****韓国大統領選候補・朴氏、亡父の人権侵害を謝罪****
12月の韓国大統領選挙の与党セヌリ党候補、朴槿恵氏(60)が24日、父親の朴正熙元大統領時代の軍事クーデターや人民革命党事件などの人権侵害について「憲法の価値を損ねた」と謝罪した。
朴氏が亡父を批判するのは初めてだ。

朴氏は大統領選候補に選出されてからも、父親について「国益を最優先した」と肯定的な発言を重ねてきた。これが「独裁者の娘」との野党側の攻撃を招き、支持率が伸び悩むようになった。

朴氏は24日、ソウル市内で記者会見を開き、「一人の娘でなく、大統領候補として話したい」と切り出した。そして、元大統領時代の1960~70年代、「(韓国は)奇跡的な経済成長を成し遂げ北朝鮮に対抗したが、その陰で劣悪な労働環境に苦しんだ人がいて、人権侵害もあった」と指摘。「被害を受けた方やその家族に心から謝罪する」と、用意した原稿を読み上げ、最後に頭を下げた。【9月24日 読売】
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しかし、「これでは終わらないだろう」(野党関係者)という見方が出ているようです。
朴正煕元大統領の人権侵害に関しては、叩けばいくらでも埃が出てきます。選挙戦がどういう展開を示すかはわかりませんが、朴槿恵氏にとってはつらい場面も多いのではないでしょうか。
ただ、彼女が今のポジションに立てているのは、父親の存在によるところが大ですから、いたしかたないところではあります。

****韓国:朴候補、父の独裁に苦戦 大統領選****
韓国大統領選で与党セヌリ党の公認候補となった朴槿恵(パク・クンヘ)元代表が、父である故朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領による独裁をどう評価するかという「歴史認識」で苦しんでいる。
最近は、70年代の冤罪(えんざい)事件に関する発言が批判されて支持率も下降気味。24日には、朴正熙政権下で弾圧された被害者に謝罪する会見を開いたが、「これでは終わらないだろう」(野党関係者)という見方が出ている。

朴元大統領は、79年に殺害されるまで20年近く独裁体制を敷いた。世界最貧国の一つだった韓国に奇跡的な経済発展をもたらしたが、人権弾圧を繰り返した圧政者でもあったという評価が一般的だ。
一方、長女である朴氏は7月、陸軍少将だった朴元大統領による61年のクーデターを「不可避な最善の選択だった」と発言して批判された。

さらに今月10日、75年に8人の死刑が執行され、07年に全員無罪の再審判決が出た事件について、ラジオ番組で「二つの判決がある。今後の評価を待つべきだ」と述べ、再び批判された。党報道官が12日、「(朴氏の発言に)誤解されかねない部分があった。謝罪する」と火消しを図ったが、朴氏が直後に「(報道官と)そんな話はしていない」と反発したため、ますます印象が悪化してしまった。

野党側はこの間、朴氏の歴史認識問題として集中的に攻撃。世論調査での支持率も下がり始めたことから、事態収拾を求める声が与党内で噴き出した。朴氏は結局、24日に会見を開いて「(朴正熙政権下で)被害を受けた方たちと家族に改めて心からおわびする」と語った。

韓国メディアによると、最大野党・民主統合党の候補である文在寅(ムン・ジェイン)元大統領秘書室長と、無所属の有力候補である安哲秀(アン・チョルス)ソウル大教授は、謝罪を肯定的に評価したという。
ただ、民主統合党関係者は毎日新聞に対し「会見は質問を受け付けず一方的に話しただけ。仕方なく謝罪したという印象も受ける。朴正熙政権下ではさまざまな疑惑があり、これから新たに問題にされるものが出てくるのでは」と述べた。【9月24日 毎日】
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新しい成功モデルを体現している安哲秀氏の経歴
一方、既成政党に属さず、政治刷新を掲げ国民の大きな期待を集める安哲秀は、日本の橋下大阪市長のブームをも連想させます。

****安哲秀氏が出馬表明=「政治刷新」掲げ、朴槿恵氏の脅威に―韓国大統領選****
12月の韓国大統領選をめぐり、無党派層の人気が高く、動向が注目されていた安哲秀・ソウル大融合科学技術大学院長(50)が19日、ソウルで記者会見し、「政治刷新」を掲げ、無所属での出馬を表明した。
大統領選の支持率トップを走る与党セヌリ党の朴槿恵元党代表にとっては、大きな脅威となりそうだ。当選すれば、1987年の民主化以降、政治経験のない初の大統領となる。

安氏は「国民は政治刷新に対する熱望を表現した。出馬し、与えられた時代の宿題をやり遂げる」と述べ、「選挙戦の過程で、ネガティブ攻撃のような古い政治は行わない」と宣言。大統領に必要な資質として「デジタルマインド」「各分野の専門家らを糾合する水平的リーダーシップ」を挙げ、既存政治との差別化を図った。

さらに、朴氏と最大野党民主統合党の大統領候補、文在寅氏に対し「候補者が集まり、善意の政策競争を行って、選挙後、勝っても負けても協力すると約束する」ことを提案した。
具体的政策については選挙戦の過程で述べるとして明らかにしなかった。安氏はこれまで、著作などで、「福祉、正義、(南北の)平和」を掲げ、「米国と中国の間のバランス外交」を主張しているが、対日政策には言及していない。【9月19日 時事】
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安哲秀氏は、医学博士、情報産業ベンチャー、アメリカMBA、経営学教授、理工系の学際的大学院院長という多彩な経歴の持ち主です。この経歴こそが現代財閥の卓越した経営者であった李明博大統領の“古い韓国経済の成功モデル”と対比される、新しい成功モデルを表しているとの指摘があります。

“重要なのはこの脈略のない経歴にこそ、アジア通貨危機以降、韓国が目指してきた多くの「成功」の理想像が含まれていることである。
アジア通貨危機以降の韓国は、かつての保護貿易主義的な「韓国型経済システム」をかなぐり捨て、グローバル化する国際社会に適応することを余儀なくされた。そのなかで、韓国は自らの生き残り戦略のひとつとして情報産業を選択し、国際社会における激しい競争のなか生き残ってきた。国際社会で生き残るためには、英語を駆使することと並んで、洗練された経営手法と高い最先端技術に対する理解力も必要である。
こうしてみるなら安哲秀の一見脈略のない経歴のなかには、多くの韓国人が、これからの韓国社会を率いるリーダーに期待する要素が散りばめられていることがわかる。現代財閥の卓越した経営者であった李明博の経歴が古い韓国経済の成功モデルを体現するものであったとすれば、安哲秀の経歴はアジア通貨危機以降の新しい成功モデルを体現しているのである。” 【木村幹氏「指導力の危機に直面する韓国政治」(http://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2010/2012-09_002.pdf)】

それにしても、「デジタルマインド」・・・よくわかりません。
安氏が目指す具体的な政策もまだ見えません。
今後、グローバル化する世界において勝ち抜くために必要とされる自由競争と、その結果拡大する格差問題という現実に具体的にどのように向き合うのかを明示しなければなりませんが、それは今の大きな期待を損なうことになるかもしれません。
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スーダン・南スーダン  首脳会談で、アビエイ地区帰属など未解決問題での合意の期待

2012-09-24 21:47:34 | スーダン

(7月15日 AU首脳会議の際のスーダン・バシル大統領(左)と南スーダン・キール大統領(右)“flickr”より By Pan-African News Wire File Photos  http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/7573020708/

双方の代表団からは先行きを楽観視する声
スーダンと分離独立した南スーダンは、石油産出地域でもあるアビエイ地区が南北どちらに帰属するのかなど国境線が未確定な状態で、両者の間で武力衝突も起きる不安定な緊張関係が続いています。
そうしたなかで、このほど南北双方の大統領の会談が行われ、合意形成への期待が出ているそうです。

****スーダンと南スーダンの大統領が会談、合意実現に期待広がる****
スーダンと南スーダンの大統領は23日夜、エチオピアの首都アディスアベバで、2時間にわたって首脳会談を行った。

スーダンのオマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領と、南スーダンのサルバ・キール・マヤルディ大統領は深夜零時ごろ会談を中断し、その後友好的に会話する姿を見せた。会談はエチオピアのハイレマリアム・デザレン首相が仲介して24日朝に再開するとみられている。

交渉では両国間の紛争の火種になっているアビエイの帰属などの領土問題や、非武装地帯の設置など主な議題になっている。
両国の協議は、南スーダンが独立した2011年7月の数か月前からアフリカ連合(AU)の仲介で行われている。南スーダン代表団のアティフ・キール報道官は「意見の隔たりはあるがわれわれはそれを縮めようとしており、合意できると希望を持っている」と語った。

非武装地帯の設置は、スーダンの南コルドファン州と青ナイル州の武装勢力への南スーダンからの支援を断ち切ることにもつながる。この地域の武装勢力を一掃しようとしているスーダン政府は、南スーダンが内戦時代に協力関係にあった武装勢力を支援していると非難している。

これまでに繰り返された協議で両国は合意に達していない。しかし国連安全保障理事会が制裁を科す可能性がある上、今回の首脳会談で両大統領が問題解決に積極的な姿勢を見せたことから、双方の代表団からは先行きを楽観視する声が聞かれた。

南スーダン独立の時点で未解決だった多くの問題を解決するために国連が両国大統領に与えた期限は22日に切れた。3月に南スーダン軍がスーダンの油田地帯ヘグリグを一時的に奪い、スーダンがこれに空爆で応じたことを受けて、国連はこの期限を設定していた。【9月24日 AFP】
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8月:石油利益配分で合意するも、国境線画定等は先送り
交渉の経緯を振り返ると、国連安保理は5月2日,AU平和・安全保障理事会声明を土台とした決議を採択。
南北双方が,空爆等を含む全ての敵対行為の48時間以内の停止,双方の両国からの兵力の無条件撤退,国境付近の治安措置(共同国境検証モニタリング・メカニズム及び非武装国境地帯の始動等),石油問題,国籍問題,アビエイの最終的地位などについての交渉をAU ハイレベル履行パネル仲介の下で無条件に再開し,3か月以内(期限は8月2日)に交渉を妥結すべきこと等を求めていました。【日本外務省ホームページより】

アビエイ帰属問題と並んで両国間の重要懸案事項であった石油利益配分問題(南で産出した石油を北のパイプラインで運ぶ際のパイプライン使用量など)については、交渉期限の切れた翌日、8月3日に合意に達したことが報じられています。

****南北スーダン、石油の利益配分に合意 通信社報道****
石油を巡り対立するスーダンと南スーダンが4日、エチオピアで協議し、石油利益配分について合意した。スーダン政府の話としてAFP通信などが伝えた。

昨年7月に分離独立した南スーダンは、スーダン側のパイプラインを使って石油を輸出していた。しかし、今年1月、パイプライン使用料が法外だとして生産を停止。南スーダンの国家収入の95%以上が失われ、財政が困窮していた。

生産再開の交渉の中で、スーダンが使用料を1バレルあたり22.2ドルを要求するのに対し、南スーダンは7.61ドルを主張していた。今回の詳しい合意内容は明らかにされていないが、スーダン政府側は「合理的」としている。【8月4日 朝日】
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ほとんど唯一といっていい収入源の石油生産がストップした南スーダンの苦境は言うまでもないところですが、北のスーダンも厳しい状況です。

“スーダンも苦境に立たされている。大半の油田を失ったことで、国家収入が落ち込んだうえ、戦費がかさみ財政を圧迫。バシル政権は先月中旬、ガソリンへの補助金削減や日用品への増税を決めた。これに対し、負担増に反発した学生や野党勢力はデモを始め、その後「反政権デモ」に転化、道路を封鎖し、タイヤを焼くなどして抗議を続けた”【7月11日 朝日】

9月22日までの新たな交渉期限
「合理的」なパイプライン使用料で合意できたのであれば、南北スーダンにとって喜ばしいことです。
ただ、このときは国境線の画定等については先送りされています。
スーダン外務省報道官は国営スーダン通信に「石油合意の履行は国境安保協定が合意されてからとなる」「スーダン政府にとって安保が優先課題である」と語り、南北スーダン両国の争いを終結するには国境問題での合意が必要となることを強調しています。

また、アフリカ連合(AU)の調停者ムベキ氏(元・南アフリカ大統領)は、両国の合意について8月9日にビデオ会議で国連安全保障理事会に報告していますが、同氏の報告を聞いたアメリカのスーザン・ライス国連大使は、“合意が完全履行されない場合、国連安保理は経済制裁を含む追加手段を取ること、また、国連安保理は、国境の画定、アビエイ地区の管理権などの早急な解決を期待していること”などを指摘しています。【「中東・エネルギー・フォーラム」http://inspecs.org/jameef/2012_folder/August/0821_17.html より】

8月3日、AU平和・安全保障理事会は南北スーダンの石油問題における合意を歓迎し、先送りした国境画定問題などについて、南北スーダンに対し9月22日までの新たな交渉期限を与える旨の声明を出しています。
これを受けて、8月31日,国連安保理は,南北両スーダン間の石油等の課題に係る合意を歓迎すると共に,未合意の課題について速やかな合意を求める旨の議長声明を出していました。

冒頭記事にある南北スーダン大統領の会談及び合意への期待は、こうした経緯を踏まえてのもとなっています。
これまでの両国の緊張関係を考えると、“双方の代表団からは先行きを楽観視する声が聞かれた”というのは、「本当だろうか?」と疑いたくもなりますが、とにかく国境画定問題での何らかの前進を期待しましょう。

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パキスタン  イスラム冒涜問題で暴動を政権批判のガス抜きに利用?

2012-09-23 20:41:41 | アフガン・パキスタン

(21日 共同会見するパキスタン・カル外相とクリントン米国務長官 昨年7月の就任時に最年少・初の女性外相として注目され、美貌の一方で、経験不足も危惧されたカル外相ですが、その評価はどうなのでしょうか? 真面目に考えればパキスタンの外相はとてつもなく難しいポジションですが、軍部が実権を握っている同国で外相が何を言おうが大きな問題にならない・・・とも言えます。 “flickr”より By U.S. Department of State http://www.flickr.com/photos/statephotos/8010786438/ )

仏の風刺画で暴動再燃、デモ封じ込めの動きも
中国の反日デモはとりあえず当局側が抑え込んだようですが(中国政府の強硬な対日姿勢は依然として続いていますが)、イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜したとされるアメリカ映像に反発するイスラム圏の抗議デモ・暴動はいまだ収まっていません。

アメリカ映像に続いて、フランスの週刊紙「シャルリー・エブド」が、預言者「ムハンマド」を出演者に見立て映画のパロディーを描いたほか、裸の姿なども掲載したことで、騒ぎは再燃した状況になっています。
ただ、エジプト・チュニジアなどでは、当局側のデモ封じ込めの動きも強まっています。

****仏の風刺画、火に油 ムハンマド冒涜、抗議デモ再燃****
イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)する米国発の映像に続き、フランスの雑誌が風刺画を掲載したことで、イスラム教の金曜礼拝があった21日、世界各地で抗議デモが再燃した。政府がデモを主導したパキスタンでは一部が暴徒化し、警官隊との衝突などで計15人が死亡した。エジプトやフランスでは当局がデモの封じ込めを図った。

イスラム教を国教とするマレーシアでは21日、与党連合の統一マレー国民組織(UMNO)と野党連合の全マレーシア・イスラム党(PAS)の各青年部が米国大使館前でそれぞれデモをし、地元メディアによると、数千人規模を集めた。一連の預言者冒涜への抗議が始まって最大規模となった。参加者らは米仏両国政府の責任を追及。両国旗を燃やしたが、大きな混乱はなかった。

AP通信などによると、スリランカ・コロンボでは金曜礼拝後、約2千人が米大使館近くに集まりオバマ米大統領の人形や星条旗を燃やした。バングラデシュの首都ダッカでも多数の市民が「米国に死を、フランスに死を」などと叫び、両国国旗を燃やした。

イスラム教徒住民が多数を占めるインド北部スリナガルでは当局が外出禁止令を出し、携帯電話の通話を遮断したが、数カ所でデモがあった。約30人の女性のグループには警官隊が催涙弾を発射し、解散させた。 

レバノン南部サイダでは、モスクに集まった約300人が星条旗とイスラエル国旗を燃やし、東部バールベックでも数千人がデモをした。イラク南部バスラでも数千人がデモに参加した。

一方、デモ封じ込めの動きも強まっている。19日付の週刊紙がムハンマドの風刺画を掲載したフランスは、政府が21日にイスラム圏約20カ国の在外公館を閉鎖。仏人学校も休校になった。
パリでは、警察当局が、22日に計画されていた市内でのデモ申請を却下したのを受け、イスラム指導者は、信徒に非合法デモに参加しないよう呼びかけた。

穏健派イスラム組織ムスリム同胞団系のムルシ氏が6月に政権に就いたエジプトでは、治安部隊を各地に動員。カイロ中心部タハリール広場は21日朝、警察車両が並び、人通りもまばら。近くの米大使館に続く道は大きなブロックで完全に封鎖されていた。カイロ南部の仏大使館周辺も封鎖され、人や車の出入りを禁じた。

同胞団の流れをくむ穏健派イスラム政党ナハダが政権を握るチュニジアも21日は国内で集会やデモを禁止した。両国とも、預言者の冒涜映像問題で米大使館などがデモ隊に襲撃されており、これ以上の過激化は避けたいためだ。
イエメンのサヌアでは数百人が米国大使館などに押し寄せようとしたが、治安部隊に阻まれた。

イランのアフマディネジャド大統領は21日、テヘランであった軍事パレードでの演説で「イスラエルが西側と手を組み、宗教的な対立をあおる謀略を始めた」と述べ、ムハンマドの冒涜が相次いだ責任をイスラエルになすりつけた。【9月22日 朝日】
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アメリカ パキスタンで事態鎮静化の広告
問題の発火点であり、最大の標的となっているアメリカでは、表現の自由という基本理念とイスラム教徒刺激という現実の問題のはざまで対応に苦慮しています。
しかし、対米感情の悪化を座視することもできませんので、騒動が起きているイスラム教国のひとつで、アメリカのアフガニスタン戦略にとって協力関係が不可欠な国でもあるパキスタンにおいて、アメリカ政府は事態の鎮静化を図るための広告活動を始めています。

****反イスラム映画「怒り静めて」、米政府がTV・ネット広告****
反イスラム的な内容の米映画『イノセンス・オブ・ムスリム』に対する激しい反発がイスラム教国を中心に起きている状況を受け、事態の沈静化を図る米政府は20日、テレビやソーシャルメディアを介したメッセージ広告をパキスタンで展開し始めた。他のイスラム教国でも実施するかどうかは未定という。

30秒のテレビコマーシャルは在パキスタン米国大使館が7万ドル(約550万円)をかけて制作し、パキスタン国内のテレビ網7系列で放映する。バラク・オバマ米大統領、ヒラリー・クリントン国務長官が登場し、『イノセンス・オブ・ムスリム』の内容は米政府の見解と異なることを伝える内容という。
国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、「約900万人のパキスタン国民のできるだけ多く」にメッセージを伝えるためには、テレビコマーシャルが最適な手法だと考えたと説明した。

在パキスタン米国大使館はまた、一般の米国人がこの映画を非難している映像も、動画サイトのユーチューブ用に制作した。ヌーランド報道官によると、「米国人はイスラム教に否定的だ」と考える人が多いことを懸念した各国米大使館から「米国人、特に宗教指導者らが立ち上がり、(反イスラム的な考えについて)『われわれは違う』と訴える動画をもっと紹介して欲しい」との要請があったという。【9月21日 AFP】
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パキスタン 「預言者ムハンマドを愛する日」でデモを煽る
一方、パキスタン政府側は、イスラム教の礼拝日である金曜日に当たる21日を「預言者ムハンマドを愛する日」として国民の休日とし、国民に「平和的な抗議デモ」を行うよう呼びかける異例の取組を行っています。
しかし、結果としてはパキスタン各地でこの政府推奨の「平和的な抗議デモ」は暴徒化し、二十名以上が死亡する最悪の結果となっています。

****パキスタン:反米デモの死者23人に****
米国の映画がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したとして、パキスタン政府の呼びかけにより計画された「平和的」抗議デモが21日、各地で暴徒化した。22日付のパキスタン紙ドーンによると、北西部ペシャワルや首都イスラマバード、南部カラチなどでの大規模デモで、映画館や警察車両への放火や襲撃が相次ぎ、少なくとも23人が死亡、200人以上が負傷した。(後略)【9月22日 毎日】
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この21日、クリントン米国務長官は国務省でパキスタンのカル外相と会談、「イスラムを侮辱する映画を非難するが、暴力は容認できない」と改めて強調しています。

****暴力容認できない」=関係再構築も確認―米パ外相会談****
クリントン米国務長官は21日、国務省でパキスタンのカル外相と会談した。会談に先立ち、クリントン長官は記者団に対し、パキスタン各地で同日行われた反米デモについて「イスラムを侮辱する映画を非難するが、暴力は容認できない」と改めて強調した。

カル外相もこれに関し「(長官の)強いメッセージは世界各地の抗議デモを収束させる効果がある」と応じた。
両外相は会談で、昨年11月の北大西洋条約機構(NATO)軍によるパキスタン軍検問所誤爆事件で急速に悪化した両国関係の再構築を確認したとみられる。【9月22日 時事】
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反米感情を政権浮揚に利用
一連のパキスタン側の対応には、“米国の顔色をうかがいながら国内では反米感情を政権浮揚に利用している”との批判もあります。

****米パキスタン関係に綻び 面従腹背 国務長官に賛辞も暴動あおりガス抜き****
パキスタンのカル外相は21日、ワシントンでクリントン米国務長官と会談した。
AP通信によると、外相は米国で制作された反イスラム的な映画について、米側が非難したとして称賛し、対米関係に最大限の配慮を示した。
パキスタンでは同日、この映画に抗議するデモで一部が暴徒化する事態となっており、米国の顔色をうかがいながら国内では反米感情を政権浮揚に利用している-と批判の声が上がっている。

カル外相は、クリントン長官が映画について「非常に侮辱的で非難されるべきものだ」と述べたことに、「世界中の多くの町で暴力をやめさせるため、どこまでも届くだろう」と賛辞を贈った。半面、外相は長官に暴動を非難するよう求められたさい、それには応じなかった。

それどころか、21日の暴動はパキスタン政府がきっかけを与えたものだった。暴動では警官やテレビ局の運転手を含む計21人が死亡する惨事になったが、政府は、イスラム教の礼拝日である金曜日に当たり、国民の宗教心が高まるこの日を「預言者ムハンマドの日」として祝日に指定し、国民に「平和的なデモ」を呼びかけていたからだ。
反米感情に容易に火がつくパキスタンでは、デモが暴動に発展したのは、十分に予想されることだった。

政府がこうした対応を取ったのは、物価高騰や電力不足、汚職問題などで満身創痍(そうい)のザルダリ政権が、来春までに行われる総選挙を前に、反米デモを国民の不満のはけ口にしようとしたとの見方が強い。

パキスタンの政治評論家、イクラム・ホティ氏は、「祝日を宣言したのは、与党パキスタン人民党の危機的な不人気ぶりを少しでも和らげるため、保守派イスラム勢力に屈服したからだ。宣言がなければ、イスラム勢力は人民党に対し、預言者への敬意に欠けるとして厳しい批判を浴びせていたはずだ」と指摘する。
コラムニストのメフリーン・ザフラマリク氏はロイター通信に、「人民党は、内政と選挙での勝利にとらわれて、外部世界とどんな関係が必要であるかを忘れている」と批判している。【9月23日 産経】
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また、パキスタン鉄道相がイスラム教侮辱映画の製作者を殺害した者に、10万ドル(約780万円)の賞金を与えるとしたことが話題になっていますが、これも与党側の人気とり政策の一環でしょうか。

****パキスタン鉄道相がイスラム侮辱映画製作者の殺害に賞金****
パキスタンの鉄道相が22日、イスラム世界で暴力的な抗議デモを巻き起こす発端となった米制作のイスラム教侮辱映画の製作者を殺害した者に、10万ドル(約780万円)の賞金を与えると述べた。

グラーム・アフマド・ビロウル鉄道相は、隣国アフガニスタンの旧支配勢力タリバンや国際テロ組織アルカイダのメンバーにも「崇高な行為」への参加を呼び掛けた。さらに、チャンスがあれば、鉄道相自ら映画製作者を殺したいとも語った。

この前日には、米映画『イノセンス・オブ・ムスリム』に対してパキスタン各地で暴力的な抗議デモが発生。21人が死亡、200人以上が負傷している。
キリスト教過激派によって製作された同映画への抗議デモはイスラム圏全体で勃発。9月11日に最初のデモが行われて以来、50人以上が死亡した。【9月23日 AFP】
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“タリバンや国際テロ組織アルカイダのメンバーにも「崇高な行為」への参加を呼び掛けた”というのは、アメリカには看過できないところでしょう。
(9月24日追記 上記の件に関しては“ビロウル氏が所属し、パキスタン人民党主導の連立政権に参加するアワミ民族党は、この件には無関係だとしており、アシュラフ首相の報道官は、発言を非難した”【9月24日 産経】とのことです)

大統領訴追手続きを開始する方針
どちらを向いているのかわからないパキスタン政府の対応は今に始まった話ではありませんが、ザルダリ大統領と最高裁の確執のほうも、これから一体どうするつもりなのか?と訝しく思われる状況です。

****大統領の訴追再開表明=最高裁との対立緩和へ―パキスタン首相****
ザルダリ・パキスタン大統領の過去の汚職疑惑への訴追再開を拒んでいるのは法廷侮辱罪に当たるとして、最高裁から出頭命令を受けていたアシュラフ首相が18日、出頭した。同首相は「大統領は免責特権がある」との従来の主張から一転し、大統領訴追に必要な手続きを開始する方針を初めて明らかにした。

パキスタンでは今年に入り、大統領訴追を求める最高裁とザルダリ政権との対立が激化。4月には前任のギラニ首相が最高裁から有罪判決を受け、その後失職。アシュラフ首相も同じ運命をたどる恐れが強まっていた。しかし、首相の態度軟化で事態は沈静化に向かう見通しとなった。【9月18日 時事】 
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“事態は沈静化に向かう見通し”と記されていますが、実際に大統領訴追に必要な手続きを開始したら政権そのものが崩壊します。どうするのでしょうか?のらりくらりと時間稼ぎしてやり過ごそう・・・ということでしょうか。
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インド  減速傾向を脱しきれない経済 成長の足を引っ張る腐敗・汚職の蔓延

2012-09-22 23:35:33 | 南アジア(インド)

(ニューデリー中心部で20日、小売業への外資参入を認める政府の決定の撤回を求めて気勢を上げる小売業者や野党政治家ら=五十嵐誠撮影【9月21日 朝日】)

前期を上回るものの、依然伸び悩み
中国と並んで世界経済牽引を期待されているインド経済。中国の方は減速傾向が窺われ、将来を危ぶむ声がいろいろあるところですが、インドの方は、より厳しい数字がこのところ続いています。

****インドの4~6月期GDP、成長率上昇5.5****
インド政府が31日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、前年同期比5.5%となり、1~3月期(5.3%)からわずかに上昇した。

四半期ベースで前期の伸び率を上回るのは2011年1~3月期以来だが、依然として伸び悩みが目立つ。金融の引き締めと物価の高止まりで需要が鈍り、成長の重しとなっている。
産業別でみると、建設が10・9%、サービスが7・9%と大幅に伸びたが、いずれも低成長だった前年同期の反動とみられる。製造業は0・2%だった。【8月31日 読売】
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“11年度通年では6.5%と03年度以来8年ぶりの低い値となった。インフレ抑制のための高金利政策や急激なルピー安によるコスト増により、企業の設備投資や消費行動が衰え製造業が減速したことや、鉱業の不振が続いたことなどが主因だ”【JETRO】と、11年度も低い数字でしたが、その状況を脱しきれていません。
(ゼロ成長が続く日本にとっては5.5%でも、6.5%でも夢のような数字ですが、これから豊かさを掴もうとするインドにとっては物足りない数字です)

ただ、前四半期の5.3%からはわずかに加速、大方の予測も前四半期と同じ5.3%程度といったところでしたので、4~6月期の5.5%という数字については“最悪期を脱した可能性を示唆”【8月31日 ロイター】との見方があります。

こうした経済状況へのテコ入れとして、17日、預金準備率引き下げが行われましたが、予想ほど悪くもなかった・・・ということで、インフレが続く現状を考慮して、政策金利の引き下げは見送られています。

****インド中銀、預金準備率引き下げ 再利下げは見送り****
インド準備銀行(RBI、中央銀行)は17日、金融政策決定会合を開き、RBIが一般の銀行から強制的にお金を預かる際の比率(預金準備率)を0.25%幅引き下げ、4.5%とすることを決めた。預金準備率の引き下げは3月以来。一方、政策金利は年8.0%に据え置いた。

インド経済は減速傾向が強まっており、預金準備率を下げて市場に出回るお金を増やし、景気のテコ入れをはかる。だが、インフレが収まらないため、市場に与える影響がより大きい政策金利のさらなる引き下げには踏み切らなかった。(ジャカルタ=庄司将晃)【9月18日 朝日】
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外国直接投資規制の緩和を断行、政権運営は困難に
国民会議派のシン首相は、スーパーやコンビニなどの総合小売業への外国直接投資規制の緩和などで経済活性化を図りたいとして、法律改正の作業を進めてきましたが、野党・零細小売業者などの猛反発を受けて実施は棚上げしていました。
しかし、減速状態からの脱却が進まないなかで、14日、反対を押し切って規制緩和の実施を決めています。
これにより、反対勢力の連立与党からの離脱が起こり、シン首相は政治的に難しい運営を迫られています。

****印シン政権、外資規制緩和めぐり第2党離脱 連立綱渡り****
野党スト扇動、首相テレビで「理解を」
インドの経済成長のテコ入れのため総合小売業への外国直接投資規制の緩和などを決めたシン政権に対し、これに抵抗する連立与党内第2党、草の根会議派は21日、閣外相を含む6閣僚がシン首相に辞表を提出し、連立を離脱した。
連立与党は少数与党に転落。政権は閣外協力する小政党2党の支持を加えてようやく下院の過半数を得る状態となり、綱渡りの政権運営を迫られそうだ。

連立政権はシン首相率いる最大与党の国民会議派に、草の根会議派などを加え過半数を維持してきた。草の根会議派は、総合小売業の外資比率を51%に拡大することに強く反対。
昨年11月には規制緩和を閣議決定したが、「小売店が打撃を受ける」とする草の根会議派などの連立与党内勢力や、野党の猛反発にあい、実施の棚上げに追い込まれた経緯がある。

今回、草の根会議派の連立離脱の危険を冒してまでシン政権が規制緩和に乗り出したのは、市場の閉鎖性に耐えられなくなった外資の一部がインドから撤退を始め、国内総生産(GDP)成長率が鈍るなど経済への悪影響が顕著になってきたからだ。
財政赤字も拡大し、昨年度は約5兆ルピー(約7・3兆円)に上った。このため政府は最近、ディーゼル油を値上げし、家庭用ガスへの政府補助を削減する方針を打ち出した。

シン政権は一方で、規制緩和に消極的とされたムカジー財務相を大統領に祭り上げ、閣議決定の実行に向けて動き、ようやく20日の政府公示にこぎつけた。

対する最大野党のインド人民党(BJP)は同日、各地で全国規模のストライキを呼びかけ、主要都市の一部で商店が閉店し、交通機関がマヒした。野党は今後も連立与党への攻勢を強める方針だ。

ただ、シン政権は現時点では“致命傷”を受けていない。これまで規制緩和に反対しながらも、閣外協力にとどまっている社会党のヤダブ党首が21日、閣外協力継続を言明したためだ。
とはいえ、閣外協力する社会党と大衆社会党の小政党は地域政党で、地盤とする地域を優先させる傾向があり、シン政権と異なる立場の政策も少なくない。また、両党の関係者の汚職疑惑がたびたび指摘されており、政権側は両党関係者の汚職追及に気を使わざるを得ない。

シン首相は21日のテレビ演説で「外国直接投資は投資家の信頼を得るためだ。燃料の価格は長年、国際価格からかけ離れてきた」などと国民に理解を求めた。しかし、経済成長の減速や度重なる汚職問題ですでに低下した政権の求心力は、さらに傷つく恐れもある。【9月22日 産経】
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閣外協力する大衆社会党は、カースト制の被差別民ダリット出身で“ダリットの女王”とも呼ばれるマヤワティ氏の政党ですが(3月のウッタルプラデシュ州議会選挙敗北後、どのような政治状況にあるのかは把握していません。選挙前は州首相でしたが、敗北で州首相は退いています)、マヤワティ氏は“襲撃を恐れ、自宅から公邸までの専用道路を建設した。また、お気に入りのブランドのサンダルを受け取るために、西部ムンバイに自家用ジェット機を飛ばした・・・”【11年9月6日 スポニチ】など、とかく噂がある女性です。

社会党は3月のウッタルプラデシュ州議会選挙で、“ダリットの女王”マヤワティ、“ガンジー王朝御曹司”ラフル・ガンジーを蹴落として最年少首相となったアキレシュ・ヤダヴの率いる政党ですが、彼が党を刷新するまでは党員の50%が何らかの犯罪に関係している・・・と言われていました。アキレシュはそうした疑惑のある党員を排除して全面的に刷新することで選挙に勝利しました。首相の座を奪われたマヤワティは、「暴力団とマフィアの支配がウッタルプラデシュ州へ戻って来る」とコメントしています。

話を外資規制緩和に戻すと、当然ながら、今回の規制緩和に小売業者などからは強い抗議行動が起こされています。

****インド各地、デモやゼネスト 小売業の外資開放に抗議****
インド政府がスーパーやコンビニなどの小売業に外資の参入を認める決定をしたことなどに抗議するデモやゼネストが20日、全国各地であった。商店は閉まり、列車の運行も妨害され約200本が遅れるなど社会生活に影響が出た。

首都ニューデリー中心部では、商店主らでつくる全インド商業者連盟が集会を開き、外資参入の決定を撤回するよう訴えた。集会には野党指導者らも参加し、「外資開放は失業者を生み出す」「外国スーパーの進出は中国製品の大量流入につながり、国益に反する」と政府を批判した。連盟事務局長は「全国の商店主ら5千万人が店を閉めて抗議している」と語った。(後略)【9月21日 朝日】
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相次ぐ汚職疑惑 広がる政治不信
インド経済の問題点としては、インフレや補助金による赤字財政拡大、通貨ルピー安、また今回改正にも関連した市場構造の問題などがありますが、問題の根底には、経済を取り巻く政治・社会環境に蔓延する腐敗・汚職構造があると思われます。

腐敗・汚職構造は社会の上から下まで広がっていますが、政治の世界でも汚職疑惑が相次いでいます。
腐敗・汚職が常識とも言えるインド政界にあっては、シン首相自身は例外的に清廉な存在と見られていますが、鉱山相を兼務していた頃の鉱山払下げ問題が発覚し政権を揺さぶっています。

****不正疑惑、インド政権打撃 石炭採掘権で2.6兆円損失****
インドのシン政権が行き詰まりの様相を見せている。経済成長の減速にも有効な改革ができず、相次ぐ汚職疑惑にも批判が強まる中、石炭鉱区の不適正な払い下げ問題が新たに発覚。当時鉱山相を兼務していたシン首相に野党は辞任を要求。国会は空転し、政治停滞は深刻さを増している。

国会は28日、上下両院で本会議が行われる予定だったが、開会直後から最大野党インド人民党の議員らが大声を上げて議長に詰め寄り妨害。両院とも数分で散会となった。野党の審議拒否は21日に始まり、空転は9月7日の会期末まで続くとの予想も出ている。

混乱の発端は17日に国会に提出された会計検査院の報告書。検査院は国内の石炭鉱区の採掘権の割り当てに関し、鉱山省事務次官が競売を提案したにもかかわらず格安の随意契約が続けられたため、2004~09年の間に国庫に約1兆8600億ルピー(約2兆6千億円)の損失が出たと指摘した。損失は年間国家予算額の12%に匹敵する。
これにより、国営企業やタタ、リライアンスなどの財閥系企業が利益を得て、鉱区を転売して巨額の利益を得た例もあった。報告書は「割り当ては透明性と客観性に欠けていた」と政府を批判している。

報告書を受け、インド人民党はシン首相に「巨額損失に対する道義的、政治的責任がある」と辞任要求を突きつけた。これに対し、与党側は「同様の割り当ては(04年までの)人民党政権下でも行われていた」と反論。シン氏も27日に自ら「検査院の指摘には議論の余地がある」と反発し、野党に国会での議論に応じるよう求めたが、野党側に態度軟化の兆しはない。

インドでは一昨年、国庫に約1兆7600億ルピー(約2兆4600億円)の損失を出したとされる携帯電話周波数の不正割り当て事件で前閣僚が逮捕されるなど、汚職疑惑が相次いで露見。汚職撲滅を掲げる社会活動家アンナ・ハザレ氏の市民運動が盛り上がるなど国民の間に政治不信が広がる。
今回の問題でも26日、活動家らが首都ニューデリーで首相官邸などを目指して抗議デモを行い、警官隊と衝突する騒ぎとなった。新たな不正疑惑で政権の不人気に拍車がかかるのは確実とみられている。

行き詰まりは与党内の合意形成にも及ぶ。政権は連立を組む小政党の反発で市場自由化など経済改革を進められずにいる。昨年11月にはスーパーやデパートなどへの外資参入を認めることを閣議決定したが、地元小売業への悪影響を危惧する与党連合内の声を受け、実施の時期を示せずにいる。

インド経済は今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比5.3%増にとどまり、成長に減速がみられる。米格付け会社ムーディーズは今月、「インド政府が今後の経済見通しを悪化させる最大の要因になっている」と指摘。任期がまだ2年弱残るシン政権の改革遂行能力のなさに内外から失望の声が出ている。(ニューデリー=五十嵐誠)
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腐敗・汚職が蔓延している状況なので経済が離陸せず、貧困も解消しないのか、経済が離陸できず貧困が存在しているので腐敗・汚職が絶えないのか・・・そのあたりは悪循環のようにも見え、インドに限らず、多くの途上国・新興国で見られるところです。

国民会議派としては、本来なら“つなぎ役”のシン首相に替えて、ネール・ガンジー王朝の後継者であるラフル・ガンジー幹事長を前面に押し出して形勢挽回を図りたいところでしょうが、2014年総選挙の前哨戦として陣頭指揮にあたった3月のウッタルプラデシュ州(人口1億8千万人超)議会選挙の実質的敗北で、それも難しい情勢です。

懸案の経済改革に踏み切るものの、政局的には危機的状況に陥る、改革遂行能力のなさに内外から失望の声・・・・どこかの国の政権の話のようでもあります。
まあ、どの国も似たり寄ったりということなのでしょう・・・と言えば、少しは慰めになるでしょうか。
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イスラエル 米大統領選挙前にイラン核施設攻撃のうわさ 

2012-09-21 23:43:35 | イラン

(テルアビブで行われているガスマスクの無料配布 “くつ箱”のようなものの中身がガスマスクで、赤ちゃん用・病人用・ひげの人用など13種類あるとか “flickr”より By activestills http://www.flickr.com/photos/activestills/7769032142/

イラン攻撃に前のめりのネタニヤフ首相
核爆弾開発を進めているとされるイラン核施設に対して、イラン核武装を国家的脅威とするイスラエルが攻撃をするのでは・・・という話が周知のようにだいぶ以前から続いています。
特に熱心なのがイスラエル・ネタニヤフ首相で、イスラエルとしてはアメリカの協力を得たいところですが、アメリカ・オバマ政権にとってはイランとの武力衝突になるイラン攻撃は極力避けたいシナリオです。

アメリカ大統領選挙は11月6日に行われますが、イスラエルがこのアメリカ大統領選挙前に単独攻撃を強行するのでは・・・という見方が出ているそうです。
この時期に攻撃を行えば、大統領選挙でユダヤ票を欲しいオバマ大統領は、結局イスラエルのイラン攻撃を支持せざるを得ない・・・・というネタニヤフ首相側の思惑だとも言われています。

****イラン核開発 膠着する外交交渉 イスラエル 単独攻撃か、慎重姿勢か****
方針は不透明
イスラエルのメディアで最近、同国が11月の米大統領選前にも、イランを単独攻撃するシナリオについて論じる記事が目立っている。ただ、ネタニヤフ首相とともに、攻撃に積極的とみられていたバラク国防相が慎重論に転じつつあるとの報道もあり、政府としての方針は不透明なままだ。

イラン攻撃が近いとの見方が取り沙汰され始めたきっかけの一つは、イスラエル紙ハアレツで8月、バラク氏とみられる政府高官が、イランの核開発は「のど元に突きつけられた刃だ」などと強い危機感を示したことだった。
足並みを合わせるように、ネタニヤフ氏も「残された時間は少ない」などと発言。これに、攻撃が米大統領選前に行われれば、再選を狙うオバマ大統領は、米国内のユダヤ票をつなぎ留めるために攻撃容認に回らざるを得ない、との観測が加わった。

こうした見方を否定する情報もある。今月7日付のイスラエル紙マーリブは「バラク氏は現時点での攻撃に反対している」と伝えた。

首相は許容範囲設定
また同日付のハアレツも、バラク氏が総選挙が近いとみてネタニヤフ氏と距離を取り始めていると指摘。そんな中でネタニヤフ氏が最近、イラン問題での「レッドライン(越えてはならない一線)」に言及したのは、イラン核開発の許容範囲を設定することで当面の軍事衝突を避けるためだ-との見方を紹介している。【9月12日 産経】
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イスラエル国内でも賛否両論ありますが、イスラエル軍部は作戦の難しさから消極的だと言われています。
また、イラン攻撃を行えばイランやレバノン・ヒズボラなどからの報復攻撃は避けられないため、イスラエル経済界もイラン攻撃に消極的と報じられています。

****イラン攻撃なら損害3兆円=イスラエル経済界に不安の声****
イスラエルのネタニヤフ首相がイランの核開発を阻止するために攻撃を辞さない構えを取る中、イスラエルの経済界からは首相の強硬姿勢を不安視する声が上がっている。イランを攻撃した後に反撃を受ければ、5年間で1670億シェケル(約3兆2565億円)の損害が出るとの試算もある。

イスラエル北部のハイテク企業RH社のヤアコフ・ローゼンベルク社長は同国メディアに「(イランと協力関係にあるレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラから)ロケット弾攻撃を受けるような事態になれば、会社の一部をハンガリーに移転することも検討している」と語った。イラン攻撃論が浮上することで、米欧の取引企業から契約履行の保証を求められているといい、「イスラエル経済への深刻なダメージになっている」と懸念する。【8月29日 時事】
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すでにイスラエル国内では、イランの報復攻撃に備えて国民にガスマスクを配布する作業が大々的に進められており、多数の地下駐車場を防空避難所として使用するための準備作業も進んでいるようです。

****特派員メモ〉エルサレム ガスマスク無料配布****
核開発を進めるイランへの単独攻撃の構えも見せるイスラエル。攻撃した場合の報復が懸念される中、政府による市民向け「保護キット」無料配布のチラシが届いたので、配布場所のショッピングモールに見に行った。
特設コーナーは、順番を待つ市民でごった返していた。

靴箱サイズのキットの中身はガスマスク。余計な不安を与えないようにするためか、決して「ガスマスク」とは呼ばない。箱ごとに「ニンジン」や「ベビーシッター」などの名称までついていた。
数えてみると、なんと13種類もあった。
赤ちゃんや病人向けのみならず、ユダヤ教の戒律に厳しい男性に配慮してか「ひげの人用」のものまである。「心配してないけど一応ね」と箱を手にした女性は、自宅にはシェルターがある、と言っていた。

国民皆兵制で、何度も周辺諸国との戦争を繰り返してきたお国柄。戦争時に何を食べるかなど、様々な想定が新聞をにぎわし、心配事は日々増える。
万事に備えは必要だけれども、どうか想定だけに終わってほしい。【9月11日 朝日】
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巻き込まれるアメリカ側は“うんざり”】
実際にイラン攻撃を行えば、イラン側は機雷などによるホルムズ海峡封鎖にでるとされています。
アメリカもそうした事態を想定した訓練をペルシャ湾で日本など多くの国と合同で行い、敢えて積極的にその情報をメディアに流すことで対イラン牽制を行ってはいます。
しかし、ことさらにイラン攻撃を振りかざし、アメリカを戦争に巻き込もうとするイスラエル・ネタニヤフ首相の言動には、いささかうんざりもしているようです。

****イスラエル首相に米国民はうんざり****
イランヘの攻撃期限を設けろとネタニヤフはアメリカに強硬に迫るが

アメリカ政府と何かともめがちなイスラエルのネタニヤフ首相。先週、アメリカはイラン核開発問題に弱腰だと怒りを爆発させたときは、アメリカ側からさまざまな反発が起きた。
反発の内容で共通しているのは、ネタニヤフは(名前こそ挙げないが)オバマ大統領を中傷して、大統領選で共和党のロムニー候補を有利にさせようとしているというものだ。

ネタニヤフは大統領選への介入を否定して発言をトーンダウンさせているが、アメリカとの関係がますます悪化したのは確か。オバマが再選されたら、彼にとって不運な結果をもたらしかねない。

ネタニヤフはエルサレムで関かれた式典で、「国際社会」は、アメリカがイランの核施設を攻撃することになるレッドライン(譲れない一線)を定めていないと非難。前日にクリントン米国務長官がイランの核放棄に期限を設けないと表明しているため、彼の発言は米政府に向けたものと考えられた。

ネタニヤフは、オバマ政権がイランの核開発に対して厳しい姿勢を見せなければ、イスラエルが同国の核施設を攻撃する可能性があると警告。アナリストの中には、大統領選前に攻撃を行うとみる向きもある。オバマはフロリダ州などで親イスラエル票が欲しいので、選挙前にイランを攻撃すればイスラエル側に付くだろうという計算からだ。

ネタニヤフはイランの核問題が浮上するかなり前から、アメリカ政治に口を出し、とりわけ民主党の大統領に盾突いてきた。
外務次官時代の89年には、軌道に乗りそうだった米政府とパレスチナ解放機構(PLO)の対話を断念させようと米議会に働き掛け、一時は国務省へ出入り禁止になった。

98年、当時のクリントン大統領のセックススキャンダルが発覚した3日後、前回の首相在任中だったネタニヤフはクリントン批判の先頭に立つキリスト教右派指導者シェリー・ファルウェルが組織した大会で演説した。
ファルウェルは後になって、「ネタニヤフがクリントンを侮辱するため仕組んだものだった」と語った。クリントンは当時、ネタニヤフにオスロ合意を守ってヨルダン川西岸地区から撤退するよう追っていたからだ。

ネタニヤフはアメリカの高校、大学、大学院で学び、30代になるまで米市民権を有していた。米政府に影響を与えられるという異常なまでの自信を持っているのは、アメリカとの深い関係があるためかもしれない。
デニス・ロス元中東特使は回想録で、ネタニヤフ首相と初めて会ったクリントン大統領は困惑した面持ちで、「彼は自分が強大な力の持ち主で、私たちは彼の要求に従うと思っている」と語ったと書いている。

今回のネタニヤフの挑発的な発言が裏目に出た理由は簡単だ。
アメリカが戦争をするか、しないかの問題だからだ。和平プロセスを撤回して他国を攻撃する? 選挙を控えた大統領が取る選択肢とはとても思えない。

米国民はイランの核開発には反対だが、戦争にはうんざりしている。ネタニヤフにうんざりしつつあるのも間違いない。【9月26日 Newsweek日本版】
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【「そりが合わない」両首脳
ネタニヤフ首相は国連総会出席のため今月末訪米しますが、アメリ・オバマ大統領はネタニヤフ首相との会談を断っているとも報じられています。

****イスラエルの首相訪米も異例の首脳会談なし 二国間関係に再び暗雲****
紆余曲折を続ける米国とイスラエルの関係に再び暗雲が立ち込めている。
米政府高官は11日、オバマ大統領と国連総会のため今月末に訪米するイスラエルのネタニヤフ首相に会談の予定がないことを認めた。訪米中のイスラエル首相と大統領が面会しないのは極めて異例。イラン核開発への対応で足並みが乱れているとの観測が広がっている。

11日夜、両首脳は電話で約1時間会談した。ホワイトハウスは声明で、両首脳が「イランの核保有を阻止する決意で一致している」と強調し、今後も「緊密に協議することで合意した」と述べ、“不仲説”の打ち消しに躍起となった。

発端は、膠着したイラン核問題をめぐる両国の対応だ。ネタニヤフ首相は11日の記者会見で、イランに対する交渉期限やレッドライン(越えてはならない一線)の設定に否定的なオバマ政権の対応を批判した。
その直後、米国家安全保障会議(NSC)のビーター報道官が、国連総会期間中に両首脳がニューヨークで面会する予定がないことに言及した。

表向きの理由は滞在期間が重ならず、クリントン国務長官との会談日程もあるためだが、両首脳の会談は「ワシントンでも可能」(米政府元高官)との見方が支配的だ。米主要メディアはイスラエル政府高官の話として、ネタニヤフ首相の会談要請を米政府が断ったと11日に報道。ホワイトハウスは否定に追われた。

イラン核問題をめぐっては、単独空爆も視野に入れるイスラエルに対し、米国は経済制裁による圧力の重要性を強調しており、意見が割れている。両首脳の個人的な関係もオバマ大統領はネタニヤフ首相と「そりが合わない」(中東外交筋)とされる。

一方、AP通信は米政府高官の話として、ネタニヤフ首相が共和党の大統領候補、ロムニー前マサチューセッツ州知事と親しいことから、オバマ大統領を「困難な境遇」に追い込もうとしているとの見方を伝えるなど、11月の大統領選を前に米政府が神経をとがらせている様子もうかがえる。【9月12日 msn産経】
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ミャンマー  訪米中のスー・チー氏、制裁緩和を容認

2012-09-20 22:41:57 | ミャンマー

(「議会名誉黄金勲章」を授与されたスー・チー氏 “flickr”より By Senate Democrats http://www.flickr.com/photos/sdmc/8004457323/

【「(経済)制裁に不必要に執着することはない」】
“つい数年前までは実現不可能と思われていた”ミャンマー民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏とオバマ米大統領の面会が、19日、ホワイトハウスで行われました。

****スー・チー氏、オバマ米大統領と面会 米議会から最高勲章を授与****
訪米中のミャンマーの最大野党、国民民主連盟(NLD)党首、アウン・サン・スー・チー氏は19日、ホワイトハウスの大統領執務室でバラク・オバマ大統領と面会した。

共にノーベル平和賞受賞者でもある両者の面会は、つい数年前までは実現不可能と思われていた。スー・チー氏は黒いブラウス、白と黒のロンジー(巻きスカート)とピンクのスカーフという装いでオバマ大統領と並んで座り、両者共ににこやかな表情だった。

面会に先立ち、スー・チー氏は米議会最高位の勲章「議会名誉黄金勲章」を授与され、「ここから先の道のりは困難なものとなるでしょう。ですが、私たちの友人からの支援と協力により、どんな障害も乗り越えられると確信しています」米国の支援に対する感謝の意を述べた。

米財務省は同日、ミャンマーのテイン・セイン大統領とトゥラ・シュエ・マン下院議長に科していた制裁の解除を発表した。米国は2007年、当時ミャンマー軍事政権の第1書記だったテイン・セイン氏と陸海空軍作戦調整官だったトゥラ・シュエ・マン氏を制裁リストに加えていた。【9月20日 AFP】
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注目されていたアメリカのミャンマーに対する経済制裁解除については、「軍政時代には政治的効果があった」と民主化を後押しした意義を認めたうえで、「(経済)制裁に不必要に執着することはない」と、制裁緩和を容認する姿勢を明言しました。

民主化の進展がまだ道半ばの現在においては、スー・チー氏はかねてより早期の経済制裁解除には慎重な姿勢を示していました。海外投資についても、一昨日ブログでも取り上げたように、6月1日、タイ・バンコクで行われた世界経済フォーラム東アジア会議では、ミャンマーの基盤整備の不備、気まぐれな若年層、劣悪な教育レベル、依然影響力を維持する軍部――など障害を列挙して、「対ミャンマー投資には用心が必要」と警告しています。【6月12日 読売より】
こうした発言は、これまで改革を二人三脚で進めてきたテイン・セイン大統領の不興を買ったとも言われています。

****スーチー氏:訪米後初演説、対ミャンマー制裁緩和を支持****
ミャンマー最大野党・国民民主連盟(NLD)党首、アウンサンスーチー氏(67)は18日午後(日本時間19日未明)、ワシントンのシンクタンク「米国平和研究所」で行った訪米後初めての演説で、オバマ政権が進める対ミャンマー制裁緩和を支持する考えを表明した。

オバマ政権はスーチー氏の意向を踏まえて制裁全面解除の是非を検討する方針。スーチー氏の理解が得られたことにより、全面解除へ向けた動きが加速する可能性がある。

スーチー氏は、米国による制裁について、「軍政時代には政治的効果があった」と民主化を後押しした意義を認め、「私は制裁緩和を支持する。(ミャンマーの)国民は自らの運命に責任を持つことを始めるべきだと考える」と明言。外圧に依存しない民主化運動の重要性を強調した。

ミャンマー政府の改革を評価するオバマ政権は制裁の段階的緩和を進め、7月には97年から禁止されていた米企業の対ミャンマー新規投資が解禁された。残る制裁には、03年から継続中のミャンマー産品の米国への輸入禁止措置などがあり、解除されるかが焦点だ。

ただ、スーチー氏の演説に先立ちあいさつに立ったクリントン国務長官は、改革に抵抗する勢力の存在を指摘。政治囚の存在、少数民族との紛争、北朝鮮との軍事関係などミャンマー政府が解決すべき課題を列挙し、今月下旬に国連総会出席のため訪米するテインセイン大統領に民主化の継続を求めた。【9月19日 毎日】
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“「われわれは民主化の推進力を米国の制裁に頼るべきではない」と述べ、国内での取り組みの必要性を強調。その上で、民主化プロセスは「テイン・セイン大統領によって提案されたことを思い出さねばならない」と述べるなど、政権側への配慮もにじませた”【9月20日 産経】とのことで、これまでの理想を高く掲げた民主化運動指導者としての立場より、現実を重視した政治家としての立場を優先させる姿勢を見せています。

“ミャンマー政府は外貨獲得手段として制裁の全面解除を熱望しており、スー・チー氏はクリントン国務長官との会談でも同様の見解を伝えたもようだ。
ただ、クリントン長官は改革が「逆行しないよう監視することがカギとなる」と述べ、早期の制裁解除には慎重な見方を示した”【9月20日 産経】

“米国は民主化の促進を歓迎しながらも、今後の改革の進展には警戒感を崩していない。クリントン長官はスー・チー氏の講演に先立つ演説で、スー・チー氏の訪米実現を歓迎する一方で、ミャンマーには「チャンスがあれば国家を誤った方向に導こうとする勢力が存在する」との懸念を示した。
特に、政治犯の釈放や少数民族の弾圧、北朝鮮との軍事交流の停止などが遅れている点を強調、演説でも「より一層の改革が必要」と繰り返した。”【同上】

このあたりは、スー・チー氏の置かれている政治環境に配慮して、スー・チー氏がテイン・セイン政権の方針に賛同を示す一方で、今後への懸念はクリントン国務長官が代弁を引き受けるという役割分担のシナリオのように思えます。

【「予想を上回る早いペースに驚いている」】
制裁解除については、手続き的には時間を要するもののようです。
ミャンマー経済制裁は、5つの連邦法と4つの大統領令が複雑に絡み合ってできており、連邦法の改正には議会の承認が必要になります。【9月19日号 Newsweek日本版】
ミャンマー進出を狙う経済界は早期の解除を求めていますが、一方で、“米政府に制裁強化を求めてきた在米ミャンマー人社会からは、急激な制裁緩和に戸惑いの声も出ている”とも。

****オバマ米政権:対ミャンマー制裁の全面解除へ環境整備****
オバマ米政権が対ミャンマー制裁の全面解除に向けた歩みを加速している。米財務省は19日、ミャンマーのテインセイン大統領とトゥラシュエマン下院議長を制裁対象リストから除外したと発表した。
訪米中のミャンマー最大野党・国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏は18日の講演で、米国の制裁解除を容認する考えを表明。民主化運動指導者のスーチー氏の「お墨付き」を得たことにより、全面解除へ向けた環境は着々と整いつつある。

テインセイン大統領に対する制裁解除について、コーエン米財務次官は19日、「(大統領は)抑圧・独裁から民主主義と自由に向かう改革に取り組んでいる」と述べ、米国管理下の資産凍結などを解除することを明らかにした。テインセイン大統領は今月下旬、国連総会出席のため訪米の予定で、オバマ大統領との首脳会談の可能性も指摘されており、制裁解除は両国関係の正常化へ向けた地ならしとみられる。

オバマ政権は2月に国際機関のミャンマー支援を容認したことを皮切りに、制裁の段階的解除に着手。7月11日に米企業の対ミャンマー新規投資と金融サービス提供を15年ぶりに解禁した。今後はミャンマー製品の米国への輸入を解禁するか、ミャンマーの世界銀行などへのアクセスを保障するかが焦点だ。

在ワシントン外交筋は、米国の制裁緩和について「予想を上回る早いペースに驚いている」と語る。新規投資解禁から3日後の7月14日には石油、建設機械など米国の大企業37社がミャンマーの最大都市ヤンゴンを訪れており、制裁緩和の背景にはミャンマー進出を急ぎたい米財界の意向もあるとみられる。

米政府に制裁強化を求めてきた在米ミャンマー人社会からは、急激な制裁緩和に戸惑いの声も出ている。ワシントンの民主化支援団体「ビルマ(ミャンマー)のための米キャンペーン」のアウンディン代表は19日、毎日新聞の取材に「現状は完全な民主化にはほど遠い。制裁を全面解除してしまえば、ミャンマー政府を動かすテコを失ってしまう」と危機感をあらわにした。【9月20日 毎日】
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【「中国を敵視するものではないし、米中両国の友好関係はわれわれにとっても有益だ」】
スー・チー氏は、対米関係の進展は「中国を敵視しない」と、中国への配慮も示しています。

****中国を敵視しない」=対米関係の進展でスー・チー氏―制裁解除、容認の姿勢****
訪米中のミャンマー最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー氏は18日、ワシントン市内で講演し、対米関係が2011年から急進展した現状について「中国を敵視するものではないし、米中両国の友好関係はわれわれにとっても有益だ」と強調した。同氏がミャンマーの外交や東アジア情勢に言及するのは珍しい。

スー・チー氏はこの中で、最近の米・ミャンマー関係の進展には中国を封じ込める狙いがあるとの見方があるが、「ミャンマーの対中関係が損なわれることを意味しない。3カ国関係の強化のために新たな状況を活用できる」との考えを示した。

オバマ政権は11年12月、中国との結び付きが深いミャンマーの民主化進展を受け、クリントン国務長官をミャンマーに派遣。今年7月に22年ぶりに大使を復帰させたほか、経済制裁も15年ぶりに緩和している。
一方、スー・チー氏は自国の民主化プロセスについて「どれくらい本物で、どれほど持続性があるのか。これらの疑問に完全には答えられていない」と語り、オバマ政権に対し投資面だけではなく、政府や議会を含めた改革全体の支援を訴えた。(後略)【9月19日 時事】
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経済制裁を受けている間に拡大した中国とミャンマーの経済関係については周知のところですが、ミャンマー側には中国への警戒感もあると報じられています。

****中国マネーがあおる「属国化」の恐怖****
ビルマ投資の先陣を切る中国の「侵略」に対する警戒感が高まっているが

中国とインドに挟まれたビルマ(ミャンマー)は、まるで巨人の遊び場に迷い込んだ子供のようだ。人口も経済力も圧倒的な両国に比べれば、ビルマは牧歌的な農業国にすぎない。

ビルマと欧米の緊張関係が和らぐ以前から、中国とインドは国境のジャングル地帯をまたいで活発にビルマと貿易を続けてきた。特に大きな存在感を放っているのが中国。政府統計によれば、ビルマでの外国投資の50%が中国からのものだ。

とはいえ、ビルマ経済はまだ隣国タイの7分の1の規模にすぎない。中国からの年140億ドル相当の投資-そのほとんどは水力発電、石油・天然ガス、鉱業の分野に集中している-の大き過ぎる影響力は、時にビルマをまごつかせている。

侵略的でない、互恵的な対中関係を維持することはビルマにとって難題だ。政府は昨年9月末、抗議活動が起きていた北部カチン州のミッソンダムの建設を凍結した。カチン州は少数民族との紛争が世界で最も長引いている地だが、ダム建設によって中国企業による支配が強まるのではないかという恐れが広まっているのだ。

ビルマはもともと排他的な愛国感情が強い国だ。少数民族が複雑に共存するなかにあって、主権確立を求める気持ちも強い。
「ビルマが中国の省の1つになってしまう」と、旧首都ラングーン(ヤンゴン)に本社を置く調査会社SAILマーケティング&コミュニケーションズの創業者キン・キン・チョーートは嘆く。

「それに今では中国と同じように貧富の差も存在する」。ビルマ国民の70%は農村経済に依存しており、高等教育どころか中等教育も受けられない人が多い。

ビルマでは1960年代にインド移民に対する暴動が発生している。外国に侵略されるという恐怖心が原因だが、現在のビルマ人が「属国化」を懸念するなら、中国も暴動の対象になる危険がある。

それでも減らない投資
中国とビルマが協調した時代もあった。日中戦争中の1938年には、両国の労働者20万人がビルマ北部の険しい山岳地帯を貫く全長1154キロの「ビルマ公路」を完成させた。

現在、ビルマ企業とその従業員が警戒するのは北京、上海、そして昆明から進出してくる中国企業だ。中国からの投資家は地元の産物を安く買いたたき、労働者を安い賃金で使うという不満が広がっている。
現地の専門家によれば、ビルマ企業の中には中国製の機械を好んで使う企業との取引を避けるところもある。中国が東南アジア諸国との問に領土問題を抱えていることも、国民の不安のタネだ。

それでも中国からの投資が減る兆候はない。中国は来年、ビルマ西部のチヤウピューと昆明を結ぶ771キロの石油・天然ガスのパイプラインを完成させる予定だ。
短期的には国境沿いの少数民族をめぐる衝突などの摩擦は起きるかもしれないが、長期的には双方が潤う関係をつくれる、という点で両国の専門家は一致している。観光インフラが整備されれば、中国人のビルマ旅行熱も高まるだろう。

ビルマはアジアの「失われた輪」だ。中国のインフラ技術によってビルマは中国とインドの懸け橋になり、さらにタイを通じて両国と東南アジアを結び付けるだろう。南東部のダウェイに建設が予定されている深海港は、中国製品をベンガル湾へ運ぶ最初のルートになるはずだ。

そのためには中国が、ビルマの複雑な少数民族問題や微妙な政治の舵取りにも配慮する必要があるが。
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