孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「一帯一路」やAIIBなどで増す中国の存在感に日本はどのように向き合うべきか

2016-09-30 22:27:35 | 中国

(中国が命運をか賭ける「一帯一路」構想【9月27日号 Newsweek日本版】)

一定の成果も出始めた4年目の「一帯一路」】
中国・習近平主席が2013年9月7日、カザフスタンの首都アスタナにあるナザルバエフ大学で「協力して『シルクロード経済ベルト』を構築しよう」と呼び掛けてから3年が経過しました。

****新シルクロード、4年目の現実****
・・・・先月に北京で聞かれたシンポジウムで習は、100を超える国と国際機関が一帯一路構想への参加を表明したと報告。中国との政府間協力に正式合意した国も34あるという。
 
これらの合意には中国の莫大な資金が投じられている。中国メディアによると、中国企業は昨年、陸と海のシルクロード上にある49力国に150億ドル近くを投資。今年1~4月にも49億1000万ドルを追加投資した。
中国商務省の発表では主要な投資先はシンガポール、カザフスタン、ラオス、インドネシア、ロシア、タイだ(順不同)。
 
プロジェクトヘの参加希望は多い。「昨年にはルート上の60力国が中国企業と合計3987件の請負契約を締結。契約額は926億4000万ドルで、中国の外国での契約の44.1%を占める」と、商務省の広報官は今年1月の記者会見で語った。
 
ただし、この数字は一帯一路上の国々への投資額を合算したもの。必ずしも中国政府が一帯一路構想で公式に掲げたプロジェクトとは限らない。

ちなみに、そうしたプロジェクトの多くは鉄道や幹線道路の建設、ガスや石油パイプラインの敷設といったインフラ整備事業や、中国企業に特権を与える「経済特区」の開発だ。
 
以下、中国からヨーロッパに至る「シルクロード経済ベルト」のルートをたどり、習の発表から3年たった今、どのように前進したか、どのような障害にぶっかっているかを検証してみたい。

(カザフスタン、パキスタン、イラン・カフカス・トルコ、ヨーロッパ、ロシアの各地域ごとに、具体的プロジェクトに関する分析がありますが、引用は省略します)

総合すると、習主席の誇る一帯構想の成績表には○も付けば×も付く。もちろん、個々のプロジェクトに困難が伴うからといって、一帯構想のすべてを失敗と断ずるのは間違いだ。
 
確かに、これまでいくつかの挫折はあった。60力国以上に広がる何兆ドルもの巨大プロジェクトなのだから、予想外の障害は付き物だ。
 
だが規模が大きいだけに、中国はすべてのプロジェクトを成功させなくてもいい。計画した事業のごく一部(アナリストたちは10%程度とみている)でも完成させれば、中国政府が「成功」と呼ぶには十分だろう。
 
構想の発表からわずか3年だが、一定の成果は挙げている。いくつかのパイプラインや鉄道、道路は完成したし、これから完成するものもある。
 
そもそも、一帯一路は10年(あるいは数十年)がかりの壮大なプロジェクトだ。習近平が最高指導者の座を降りる22年までに21世紀版シルクロードの形が見え始めていれば、それで合格とすべきだろう。【9月27日号 Newsweek日本版】
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省略しましたが、比較的順調に推移しているプロジェクト事例として、中国とトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンを結ぶ天然ガスパイプライン、中国・浙江省とイラン・テヘランを結ぶ「シルクロード鉄道」などがあげられています。

一方、今後の困難さを示す事例として、イギリス・ヒンクリーポイントの原子炉建設計画をメイ首相が保留した件があげられていますが、この件はすでにゴーサインが出ています。

****中国出資の英原発、ひそかに調印式 ヒンクリーポイント、英仏閣僚らが参加****
英南西部ヒンクリーポイントでフランス電力(EDF)が主導で、中国企業が出資する原発建設の調印式が29日、ロンドンで行われ、英仏政府、中国企業の代表が合意文書に署名した。
 
ロイター通信によると、非公開で行われた調印式にはクラーク英エネルギー相やフランスのエロー外相、約180億ポンド(約2兆4000億円)の建設費の3分の1を出資する中国国有原発大手「中国広核集団」(CGN)の代表が出席した。
 
「中国広核集団」が出資することから安全保障上の懸念が高まり、7月に就任したメイ首相が承認を延期したが、中国との経済関係を維持する「現実的判断」を下して15日に外資を規制する条件付きで最終承認した。2025年に発電開始予定で、英国での原発の新設は約20年ぶりとなる。
 
計画はキャメロン前政権が13年に発表。フランス原子力大手アレバの次世代型原発欧州加圧水型原子炉(EPR)2基を建設、英国の電力需要の7%を供給する。前政権は、東部ブラッドウウェルとサイズウェルでも中国製の原子炉導入で合意しており、安全保障上の懸念が指摘される。【9月30日 産経】 
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参加国でADBを上回るAIIB 人民元は国際通貨に
一方、「一帯一路」を資金面で後押しするのが中国主導の国際的な金融機関のAIIB=アジアインフラ投資銀行ですが、8月末にカナダが新たに参加申請することを決めたため、G'7で参加しないのは日本とアメリカだけになっています。

また、新たな参加申請国は20か国以上とのことで、参加国数で日本・アメリカが主導するADB=アジア開発銀行を上回る見通しです。

また、中国の通貨、人民元がアメリカのドルやユーロなどとともに世界の主要な通貨として来月1日からIMF=国際通貨基金の特別な資産(SDR)に組み入れられることになり、人民元が世界の主要な通貨に位置づけられることになります。さらに、組み合わせの配分で、人民元は円などを抜き、ドル、ユーロに次いで3番目となります。

****AIIB 20か国以上参加申請か 日米主導のADB上回る見通し****
中国が主導する国際的な金融機関のAIIB=アジアインフラ投資銀行は、30日、新たに参加を希望する国の申請の期限を迎え、これまでに20か国以上が参加を申請したものと見られ、最終的なメンバーの数は、日本などが主導するADB=アジア開発銀行を上回る見通しです。

AIIBは、アジアのインフラ建設を支援するため中国が主導して去年設立され、アジアの途上国のほかイギリスなどの先進国を含む57か国が加盟していますが、日本やアメリカは運営の透明性など、国際的な金融機関にふさわしい基準を満たしているのか注視するとして参加していません。

こうした中、AIIBは30日、新たに参加を希望する国の申請の期限を迎え、今のところ公式の発表はありませんが、これまでにG7=主要7か国のカナダなど20か国以上が参加を申請したものと見られます。

AIIBでは来年初めまでにこれらの国々を正式に承認する方針で、最終的なメンバーの数は、日本やアメリカが主導し、67の国と地域が加盟するADB=アジア開発銀行を上回る見通しです。

北京に本部を置くAIIBは、初代総裁を中国の金立群元財政次官が務め、最大の出資国の中国が増資などの重要な案件を1国だけで否決できる事実上の拒否権を持つなど、中国が大きな影響力を持っていてメンバーの増加で国際社会での中国の存在感が一段と高まることも予想されます。

専門家「人民元使った融資や投資増やす」
AIIB=アジアインフラ投資銀行と中国の通貨・人民元との関係について、専門家は、人民元が世界の主要な通貨に位置づけられたことで、中国が主導するAIIBが今後、人民元を使った融資や投資を増やす、という見通しを示しました。(中略)

篠原氏 日本は波に乗り遅れないほうがいい
AIIB=アジアインフラ投資銀行への日本の対応について、財務省の財務官やIMF=国際通貨基金の副専務理事などを歴任した篠原尚之氏は、「AIIBは従来からあったIMFとか世界銀行などに代表される戦後の国際金融システムへの1つのチャレンジであるわけで、日本は古いほうのシステムにこれまで乗ってきた訳だが、新しいほうの仕組み、メカニズムがだんだん大きくなってくる。その波に乗り遅れないほうがいいと思う」と述べました。

そのうえで篠原氏は「現状を考えると、中国が入ってくれと言ってきても入りますとはなかなかならないだろう。しかしAIIBの参加国がこれだけ増えて、これから融資量も増えていく中で、日本がこれを無視し続け、敵対していくというのは必ずしも得策ではない」と述べ、日本がAIIBに入る、入らないは別にしてアジアでのインフラ整備でどう協調していくか考えていく必要があるという認識を示しました。

また、篠原氏は「東南アジアの国などから話を聞くと、日本と中国が、それぞれ競い合う状況が望ましいと感じている。中国だけが優位に立たれては困ると多くの国が思っており、日本は、もう少し努力して、プレゼンスを高める方法を考えていかなければならない」と述べました。

そして、アジアで中国に対抗していく観点からも、日本の民間企業がアジアでの投資やビジネス展開をさらに活発化させるよう、政府は、民間の海外投資を後押しする支援策などを考えるべきだと指摘しました。

一方、中国の通貨・人民元が1日からアメリカのドルや日本の円などとともに世界の主要な通貨として、IMFのSDRと呼ばれる特別な資産に組み入れられます。

これについて篠原氏は「人民元がSDRに入るということは象徴的な意味しかなく中国が世界第2の経済大国になり人民元の取り引きが増えてきていることを追認したにすぎない。われわれが期待しているのはSDR入りを1つのきっかけに中国自身が金融のさらなる自由化を進めることだ」と述べ、中国に改革の加速を促しました。

そのうえで篠原氏は「中国は人口が日本の10倍以上で経済規模も日本を上回っていて、そういう国と経済的に対等に戦う、という概念をもつことに意味はない。大きなマーケットが横にあるのだからこれを利用しない手はなく、勝つ、負けるというのではなくどうやったら日本のためになるかを考えるべき」と述べました。【9月30日 NHK】
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なお、7時のNHKニュースでは、篠原尚之氏の発言の前半部分「その波に乗り遅れないほうがいいと思う」「無視し続け、敵対していくというのは必ずしも得策ではない」などは割愛され、「入らないは別にして・・・・」以降が流されていました。何か意図があってのことでしょうか。

なお、AIIBに関しては、モンゴルが融資を求めていることが報じられています。
モンゴルは厳しい経済危機に見舞われており、通貨ツグリクの下落が続き、パニックを起こしたモンゴル市民はブラックマーケットの米ドルや人民元に殺到、外貨不足が日に日に深刻化しているとも報じられています。

****モンゴル、中国主導のAIIBに融資求める、中国・欧州とつながる鉄道建設事業―英メディア****
2016年9月20日、環球網は、「中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、モンゴルが融資を求めている」と報じた。

英BBCの報道として伝えたもので、モンゴルは長さ550キロメートルの新路線を含む複数の鉄道プロジェクトを推し進め、中国と欧州とつながる鉄道網を整備したい考え。これにより外資の呼び込みや貿易促進を目指す。融資の額についてモンゴルは明らかにしておらず、AIIBもコメントを控えている。

モンゴルは中国の国境と世界最大級の炭鉱タバントルゴイを結ぶ鉄道建設にこれまで2億ドル(約205億円)を投じてきたが、交通当局関係者によると「完成には8億ドル(約820億円)必要」。AIIB以外の機関などと融資計画について協議を行う考えも明らかにしている。

5年前は経済の2桁成長を実現したモンゴルだが、近年は苦境に陥っている。中国とは2014年に全面的戦略パートナーシップを確認し、AIIBにも創設メンバーとして加わっている。【9月22日 Record china】
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日本で根強いAIIBに否定的な見方
中国との対抗意識が強い日本では、AIIBや国際通貨としての人民元については否定的な見方が多くあります。

****悪あがき中国、さらなる暴走も AIIB、G20前にカナダ取り込みで先進国分断する狙いか****
新たにカナダが加盟申請を決めた中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)。9月4~5日に浙江省杭州で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合を前に、経済面でのリーダーシップのアピールに必死の習近平政権だが、AIIBは今後さらに暴走する懸念も指摘されている。

中国中央テレビは、中国を訪問中のカナダのトルドー首相が8月31日、北京で習主席らと会談し、参加の意向を伝えたと報じた。
 
両国をめぐっては、6月に王毅外相がカナダを訪問した際、カナダ人記者に中国の人権問題を指摘され、激高するという失態を犯している。そのカナダに経済的メリットをちらつかせてAIIBに取り込んだ形だ。
 
カナダの加盟申請により、先進7カ国(G7)でAIIBへの加盟を見送っているのは日本と米国の2カ国となった。中国が先進国を分断する狙いもうかがえる。
 
中国としては、G20で中国の東シナ海や南シナ海での軍事的覇権が議題となって議長の習主席が矢面に立つことはなんとしても回避したいところだ。そのため関心を経済問題に集中させようと躍起になっている。【9月2日 産経ニュース】
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****世界中で存在感失う「人民元」 名ばかり「国際通貨」 習氏の野望に暗雲****
国際通貨とは名ばかりの人民元。習近平主席の思惑は外れている

中国当局が人民元を大幅に切り下げた「人民元ショック」から1年が過ぎたが、その後も人民元は下げ止まらない。ドル、ユーロに続く「第3の通貨」にのし上がるのが習近平国家主席の野望だったが、市場で人民元離れが加速し、決済シェアはカナダドルすら下回る6位に。「国際通貨」とは名ばかりの存在になっている。(後略)【8月19日 夕刊フジ】
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ただ、こうした論調は、自分たちに都合のいい面だけを強調し、全体的な流れを見失っているようにも見えます。
まるで、北朝鮮や中国がアメリカ・日本を批判するときの“意固地さ”と同類のようにも。

中国経済が今後パニック状態を起こすのかどうかは定かではありませんが(そうした話は10年以上昔から絶えず言われていますが・・・)、少なくとも現在までの流れを冷静に見ると、中国の経済的存在感の拡大、それを背景とした政治的存在感の拡大は否定できないところです。

日本としても中国との対抗一辺倒でいいのか・・・考えてみる必要があろうかと思います。
「中国は人口が日本の10倍以上で経済規模も日本を上回っていて、そういう国と経済的に対等に戦う、という概念をもつことに意味はない。」(前出 篠原氏)

軍事・経済力などハードパワーではなく文化などソフトパワーを活用
中国との関係に悩むのは日本だけではありません。
韓国はTHAAD配備で中国との関係が悪化しています。ベトナム・オーストラリアも経済的依存度と安全保障のバランスをどうするのかで揺れています。
南シナ海問題で中国と対峙してきたフィリピンのドゥテルテ大統領などは、何かと小うるさいアメリかとの関係よりは中国との関係に期待しているようです。

****人権で衝突もAIIBで協力する中国-ノルウェーのように…韓国も2トラック外交を(1****
中国と外交的対立を経験した国は少なくない。日本や米国のほかノルウェーとも中国は人権問題で対立した。

2010年、ノルウェーノーベル平和賞委員会が反体制作家の劉暁波氏を受賞者に決定すると、中国は報復措置としてノルウェー産サケの輸入を禁止した。中国の報復性禁輸措置は今も進行中だ。

しかしノルウェーは2013年、中国に北極評議会のオブザーバー資格を与えた。中国も昨年、ノルウェーのアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設メンバー入りに協力した。両国は人権問題では衝突したが、経済分野では協力する2トラック外交を見せている。

南シナ海領有権問題をめぐる中国とベトナムの摩擦も現在進行形だ。2014年5月、ベトナムが領有権を主張する南シナ海パラセル諸島近隣に中国が石油ボーリング装備を設置すると、ベトナムの哨戒艦が出動し、中国の軍艦と衝突した。ベトナム警備隊員が負傷し、その後、ベトナムの反中デモ隊が中国人が所有する自国内の工場を襲撃して火をつけるなど両国国民の感情は激化した。これに対し中国は2カ月後、静かに石油ボーリング設備を撤収した。翌年の2015年、両国首脳は相互訪問し、経済協力の拡大を約束した。

高高度ミサイル防衛(THAAD)体系配備決定後の韓中関係にもこうした接近法が適用されるべきだと、専門家らは強調した。キム・フンギュ亜洲大中国政策研究所長は「必要なら敵の前でも笑わなければいけないのが外交」とし「THAAD問題とは別に、対話ができる多様なチャンネルを作り、新しい分野での協力を図る必要がある」と述べた。

専門家らは国家間の葛藤を解消するための根本的方法の一つとして、他国の国民との直接的な接触と関係を構築する「公共外交(public diplomacy)」を挙げた。公共外交とは軍事・経済力などハードパワーではなく文化などソフトパワーを活用し、自国に対してプラスのイメージを抱くよう相手国の国民の心を引くことを意味する。(後略)【9月1日 韓国・中央日報日本語版】
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日本が中国と対抗するのは、尖閣・東シナ海などの領土問題があること、絶えず歴史認識を批判され、反日運動が絶えないこと、人権・民主化などで価値観に相違があること・・・などがあるかと思いますが、「アジアNo1」の座を中国に奪われたくないという対抗意識も強くあるように見えます。

ただ、「アジアNo1」にこだわっても仕方がないところがあります。
日本にも公共外交(軍事・経済力などハードパワーではなく文化などソフトパワーを活用し、自国に対してプラスのイメージを抱くよう相手国の国民の心を引くこと)が求められているのではないでしょうか。

日本を訪れた中国人観光客の日本社会に対する称賛の記事が連日、数多く報じられています。
そうした見方が中国国内でどれだけの影響力をもっているのかは定かではありませんが、10年後、50年後も「日本に行ってみたら、きれいで、安全で、親切で驚いた。とても中国は追いつけない」と言わしめることが重要では。

そうした社会を維持していくうえで、現実外交・経済政策においては、「必要なら敵の前でも笑わなければいけないのが外交」ということで、いかに中国のパワー・勢いを利用できるかを考えた方がいいのでは。
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イスラム過激派の影響が増す中央アジア 「アラブの春」再来を避けるべく親族への権限移譲で体制固め

2016-09-29 22:54:49 | 中央アジア

(【2015年05月26日 AFP】)

広がるイスラム過激派の影響 それが強権支配正当化の理由にも
正直なところ、中央アジアの国々は日本とはあまり馴染みがないこともあって、トルクメニスタンやタジキスタンと言われても、その地図上の位置も定かではありません。


(【2014年5月8日 赤旗】)

イメージとしては、ウズベキスタンはサマルカンドなど観光的スポットが多く、カザフスタンは広大な国土とウランなど豊富な資源を有し、キルギスはこの地域では比較的民主的な政治体制の国・・・・といったところでしょうか。

キルギス以外はいわゆる独裁的強権国家で、この地域を観光で旅行する際も何かと苦労が多いと聞きます。

その中央アジアでは最も民主的政治体制が進んでいるとされるキルギスで、8月30日、中国大使館が自爆テロの標的とされたことは、8月30日ブログ“キルギス 「中央アジア随一の民主国家」で自爆テロ 狙いはウイグル族を抑圧する中国か?”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160830で取り上げました。

****続報>キルギスの中国大使館襲撃事件、首謀はシリアのテロ組織****
2016年9月6日、キルギス当局は、先月末に首都ビシケクで起きた中国大使館襲撃事件について、容疑者5人を逮捕したことを明らかにした。環球時報が伝えた。(中略)

キルギス当局によると、襲撃事件はシリアに拠点を置くテロ組織が計画したもので、逮捕された5人のほか、4人がトルコにおり指名手配している。

同テロ組織のメンバーはキルギスのパスポートを所持しており、自爆テロを行ったのは中国からの独立を目指すイスラム主義組織「東トルキスタンイスラム運動」のメンバーだったという。海外メディアはキルギス当局が指名手配した4人について、トルコ政府に容疑者の資料提供を求めていると報じている。【9月7日 Record china】
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ウズベキスタンなど中央アジア諸国から「イスラム国」(IS)に数千人が参加したとも言われているように、イスラム過激派の影響が広がっていることは中央アジアに共通していますが、そのことが「政治混乱で過激派拡大の隙を与えてはならない」という、強権支配の正当化にも使われています。

【ウズベキスタン:後継者を指名していなかったカリモフ大統領死去
そうした独裁国家のひとつウズベキスタンでは、今月初め25年以上強権政治を続けてきたカリモフ大統領が死去し、その後継者が注目されています。

****ウズベキスタン独裁者の死はグレート・ゲームの導火線か****
<25年以上強権政治を続けてきたウズベキスタンのカリモフ大統領が、後継指名のないまま死去した。緊張高まる中央アジアに日本ができることは何か>

中央アジアの雄、ウズベキスタンのカリモフ大統領が今月2日死去した。78歳。ソ連末期から独立後の25年以上、一貫して大統領の座にあった。その間、強権政治を欧米に非難されながらも、外交・経済両面での自立を旨として、新しい国家の形をつけ、人口3000万の大国として安定を維持してきた。

ウズベキスタンは人口と軍事力で、中央アジアで群を抜く。しかも、他の中央アジア4カ国のすべて、そして不安定なアフガニスタンにも接している。大統領の交代でこの国が不安定化すれば、中央アジアだけでなくロシアにも影響が及ぶだろう。

ウズベキスタンの憲法は、大統領が執務不能になった場合、上院議長が代行し、3カ月以内に大統領選を行うものと定めている。この国では以前から、地方ごとのクラン(氏族)の勢力・利権争いがある。継承争いで対立が先鋭化し、これに大統領の長女グルナラ、あるいは中国、ロシアが絡めば、情勢はしばし荒れ模様となり得る。

ウズベキスタンの北方、ロシアを挟んで日本の7倍の国土を持つ、石油大国カザフスタンの雲行きも怪しい。同国のナザルバエフ大統領も、ソ連崩壊以降ずっと権力の座にある。76歳と高齢なのに、後継候補が定まっていない。

彼が急死すれば、副首相を務める彼の長女ダリガも加わってカザフスタンで権力闘争が展開されるだろう。既に5月から国内でテロ・暴力事件が頻発。宗教過激派の犯行とされるものの、実態は闇の世界も関与しての利権、権力闘争とも言われる。(後略)【09月13日 河東哲夫氏 Newsweek】
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「グレート・ゲーム」は、第一次大戦前の中央アジアを舞台として、インド洋への南下を目指すロシア帝国と、それを阻止する大英帝国の間で繰り広げられた抗争ですが、現在は旧ソ連圏の盟主たらんとするロシアと、「一帯一路」(現代版シルクロード経済圏構想)でこの地域への影響力を強める中国が争う形となっています。

ウズベキスタンの後継者問題については、ミルジヨエフ首相を軸として進むと見られていますが、不透明性も。

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ミルジヨエフ首相が後継大統領になるとの観測が強いが、ウズベキスタンの独裁は、カリモフ氏のカリスマ性に依存するところが大きかった。(中略)

後任と目されるミルジヨエフ氏にはカリモフ氏のようなカリスマ性はない。また、ウズベキスタンの国家制度において、首相は主に経済を担当し、軍、秘密警察などの管轄は大統領に属している。

従って、ミルジヨエフ氏が軍と秘密警察を掌握できない可能性がある。その場合、ウズベキスタンが、タジキスタンやキルギスのような破綻国家にはならないとしても、国家の一部領域を実効支配できなくなる可能性が十分にある。【9月19日 佐藤優氏 産経】
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親族への権限移譲を進める他の独裁国家
他の中央アジア独裁国家では、ウズベキスタンを睨みながら、親族への権限移譲体制を進めています。

****中央アジアで進む大統領終身化、親族への権力委譲準備の動****
旧ソ連の中央アジア各国で現職大統領が終身的に任期を継続できる制度を導入したり、大統領の親族が権力を継承しやすくしたりするなどの動きが顕著になっている。

中央アジアでは2日にウズベキスタンのカリモフ大統領が死去したが、各国はウズベクの権力委譲の推移を注視しつつ、自国内で混乱が起きる可能性を排除する狙いがあるとみられる。

カザフスタンでは16日、ナザルバエフ大統領(76)の長女ダリガ氏(53)が上院の国際関係・国防委員会トップに選出された。カザフでは大統領が死亡したり職務不能になったりした場合には上院議長が代行するため、今回の人事はダリガ氏への将来的な大統領権限の委譲に向けた準備との観測が出ている。ダリガ氏は副首相など重要ポストを歴任していたが、13日に大統領自らがダリガ氏を上院議員に任命していた。

また、トルクメニスタンでは14日、大統領任期を延長し、さらに70歳までだった大統領選出馬の年齢制限も撤廃する憲法改定が実施された。改定案はベルドイムハメドフ大統領(59)自身が率いる委員会がまとめたもので、同氏を事実上の終身大統領とするための動きだ。

タジキスタンでは5月、国民投票によりラフモン大統領(63)が無制限に大統領選に出馬できる憲法改定がなされ、大統領選の出馬年齢の下限も35歳から30歳に引き下げられた。ラフモン氏を終身大統領としつつ、必要に応じて2020年の次期大統領選に息子のルスタム氏(28)が立候補できるようにする措置とみられている。
 
央アジア情勢に詳しいカーネギー財団モスクワ・センターのマラシェンコ研究員は、「どの国も安定を望んでおり、(中東・北アフリカで11年に政権崩壊が相次いだ)『アラブの春』の再来を見たいとは思っていない」と指摘。

各国の動きは、将来の権力委譲時に起こりうる国家体制の不安定化を押さえ込む狙いがあるとの見方を示したうえで、指導者間の争いなどが起きれば「イスラム過激派につけいる隙を与えかねない」とも警告する。

そのうえでカザフを例に「ナザルバエフ氏は自身の死後、権力の分散化や政治・経済面での改革が必要だと認識している」とし、同様に大統領が独裁的な権力を維持してきたウズベキスタンの権力委譲がどのように進むかを注視していると分析する。【9月29日 産経】
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長女への権限移譲を進めるカザフスタンでは、相次ぐテロも
先ず、長女ダリガ氏への権限移譲を進める地域大国カザフスタンですが、カザフスタンでは今年6月5日、西部の工業都市アクトベで武装集団が内務省軍の駐屯地などを襲撃する事件が起き、軍人ら6人が死亡。
更に7月18日には最大都市アルマトイの中心部で自動小銃で武装した男が警察署を襲撃、警察官ら6人が死亡するというテロが起きており、イスラム過激派への警戒を強めています。

タジク民族主義を進めるタジキスタンでは、大統領の終身化と長男への世襲へ
タジキスタンは、ラフモン大統領の終身化と長男への世襲への道を開き、体制固めを狙っています。

****タジク国民投票、「終身大統領」に道筋 中央選管が暫定結果「賛成9割超えた****
旧ソ連中央アジアのタジキスタンで22日、現職のラフモン大統領(63)が無制限に大統領選に出馬できるようにする憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、中央選管は23日、暫定結果として賛成が9割を超えたと発表した。1994年から大統領の座にあるラフモン氏が終身大統領になることに道を開く動き。
 
憲法改正案には大統領選の被選挙権を現在の35歳以上から30歳以上に引き下げる項目も盛り込まれた。ラフモン氏の長男の出馬を念頭に置いた動きとみられ、世襲体制の確立にも道筋を付けた格好だ。
 
旧ソ連最貧国とされるタジクは、ロシアなどからの出稼ぎ労働者の送金が国内総生産(GDP)の4割に達するが、ロシア経済の悪化で送金額が激減。昨年9月には国防次官が政権転覆を狙い武装蜂起したと伝えられるなど社会情勢も不安定化しており、ラフモン氏は権力基盤をさらに固め、国内の締め付けを図る狙いだ。【5月23日 産経】
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ラフモン大統領は“ロシア離れ”を進め、タジク民族主義で国をまとめようとしています。

****理解不能」な言葉使った記者に罰金、タジキスタン****
中央アジアに位置し、旧ソ連の構成国だったタジキスタンでは、ロシア風のサンタクロースをテレビに登場させることが禁止され、子どもに外国名を付けることも禁じられたが、今度は「理解不能」な言葉を使用したジャーナリストに罰金が科されることになった。
 
タジキスタン政府の国語委員会を率いるガウハル・シャリフゾダ(Gavhar Sharifzoda)氏は1日、露インタファクス(Interfax)通信が伝えた談話の中で「ジャーナリストが素朴な読者や視聴者には理解できない言葉を、1日に10個も使う場合もある。国語の規範を甚だしく逸脱するものだ」と述べた。(中略)

人口800万人のタジキスタンでは、公用語のタジク語に対し、アフガニスタンで話されているペルシャ語やダリー語の影響が増しているとして当局が不満を表している。
 
タジキスタンでは旧ソ連時代に広く話されていたロシア語を「民族間のコミュニケーション」に使用する言語として憲法上で認めているが、公用語はタジク語だけとなっている。

内陸の貧困国タジキスタンで長年大統領の座にあるエモマリ・ラフモン氏は、愛国心を高めるためとして、2009年に公用語としてのロシア語の使用を廃止した。しかし、現在もタジク語の表記には、ロシア語のキリル文字の一種が使用されている。【8月2日 AFP】
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「理解不能」な言葉とは何でしょうか?「独裁」とか「強権支配」、あるいは「人権」「民主主義」とかいった類でしょうか?

【「中央アジアの北朝鮮」トルクメニスタン 天然ガス利益で「庶民の笑顔」も
北朝鮮と並んで世界で最も抑圧的な国の一つとされているトルクメニスタンは、更に風変わりです。

****<トルクメニスタン>金色の大統領像…強まる個人崇拝****
中央アジアの資源国トルクメニスタンの首都アシガバートで5月下旬、ベルドイムハメドフ大統領(57)を顕彰する金色の巨大モニュメントが設置された。ロシア通信が報じた。

同国は閉鎖的で独裁的な体制から「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれる。ニヤゾフ初代大統領(2006年死去)時代と同様、07年に就任した2代目大統領、ベルドイムハメドフ氏の個人崇拝が強まっていることを示している。
 
「擁護者のモニュメント」と名付けられた記念碑には、白い岩山を模した高さ15メートルの大理石の台座の上に、高さ6メートルの金張りの騎馬像が載る。大統領は伝統衣装姿で再現され、馬は同国が誇る貴重なアハルテケ種だ。

トルクメニスタン議会は「国民の絶大な要望を受けて設置された」としている。首都中心部にはニヤゾフ氏の黄金像があったが、11年に郊外へ移された。
 
トルクメニスタンは埋蔵量世界4位の天然ガスを有し、「永世中立国」として多角的な資源外交を展開。ウクライナ危機後、ロシアへのエネルギー依存の打開を目指す欧州連合(EU)から新たなガス供給国の一つとして重視されている。【2015年6月1日 毎日】
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前任者のニヤゾフ氏はもっと風変わりで、「わが国固有の芸術でなく、国民にはわからない」などの理由でオペラやサーカスを禁止、また、「田舎の人は字が読めないから」と図書館も廃止しました。
ベルドイムハメドフ大統領はこれらを復活させていますから、やや常識の線にもどったとも言えます。

馬好きで有名なベルドイムハメドフ大統領は、2013年には自身が民族衣装で騎乗して出走していたレースで、トップでゴールした直後に落馬し救急車で搬送されたことも話題になりました。

“この日の出来事について、国営紙ニュートラル・トルクメニスタンはベルドイムハメドフ大統領の大きな写真6枚とともに大統領のレース優勝を4ページを費やして伝えているが、落馬については同紙だけでなくトルクメニスタンの国内メディアは一切触れていない。レースの様子はテレビで放映されたが、大統領のゴールの瞬間で映像は切れている。”【2013年5月3日 AFP】といったあたりに、この国の性質が示されています。

「中央アジアの北朝鮮」は、お上にたてつかなければ安逸な生活が保証されてもいるようです。

****庶民の笑顔、幸せの尺度って・・・・オイルマネーで潤う独裁政権の国****
8月末に、中央アジアのトルクメニスタンを訪れた。
 
国土は日本の面積の約1・3倍。人口は約520万人。有史以来、ユーラシア大陸の遊牧民族がこの地を往来し、1991年、ソ連邦解体に伴い、独立した。

首都アシガバートは建設ラッシュに沸いていた。新しく整備された道路沿いには、近代的なビルが立ち並ぶ。天然ガスの確認埋蔵量は世界第4位であり、街はオイルマネーで潤っていた。
 
電気、ガス、水道代は無料。教育費もかからず、毎月120リットルのガソリンが運転手1人に配られる。郊外のバス停の待合室には誰もいないのに冷房が稼働し、夜は街中の照明が砂漠の中の都市をカラフルに彩る。
 
最近の市民のブームは自転車だ。健康促進のため、大統領が率先して自転車に乗り、大勢を引き連れてサイクリングするさまは、マスゲームにも見えた。
 
独裁政権が続くこの国は、民主化や報道の自由の尺度で、国際団体が北朝鮮と並びワースト上位に挙げる。しかし、少しずつ開放的な政策が取られ、国の印象も変わりつつある。
 
市場で出会った庶民の屈託のない笑顔に、影を見いだすことはできなかった。忙しそうに歩く東京やモスクワの人々の、眉間にしわを寄せる顔を思い出し、幸せの尺度は何なのかを考えさせられた。【2013年9月19日 産経】
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“庶民の笑顔”を呼ぶバラマキを可能としているのが天然ガスのもたらす利益です。

*****うごめく独裁国家・トルクメニスタン/中 資源輸出、日本に着目****
・・・・旧ソ連時代、トルクメニスタンのガスは全てロシア方面へ送られていた。ソ連崩壊直前に初代大統領となった故ニヤゾフ氏は対露依存脱却を模索。1997年にイラン向け、2009年には中国向けのパイプラインが開通した。
 
今や中国は最大のガス輸出先。一昨年には取引量が約260億立方メートルまで膨らみ、中国が国外から輸入するガスの4割強を占めるに至った。中国は東部レバプ州のガス田に権益も有し、約2000人の労働者らを送り込んでいる。中国留学も増えてきたという。
 
中国はロシアに代わる主役となったが、「大統領は過度な対中依存にも危機意識を持っている」と上月大使は指摘する。昨年末にアフガニスタン、パキスタンを経由してインドへ至る新ルート「TAPI」パイプラインを起工したのも、輸出先の多角化を図るためだ。(後略)【4月13日 毎日】
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2011年には、中国からの5000万元(約6億円)相当の無償援助の一環として、中国パソコン大手、聯想(レノボ)のノートブックPCが無償で小学1年生全員に提供されることも決定しています。

輸出先多角化として日本が注目されているとのことで、「今年9月から初・中等教育機関で日本語教育を始める」「日本から教員を招き、学生には日本留学させる」とのことです。

ただ、“ただ、ロシアの中央アジア専門家、マラシェンコ氏は「多角化は順調とは言えない」と指摘する。TAPIラインの建設にはアフガニスタン情勢や印パ関係の変動という大きなリスクがある。ガスの製品化も「売り先を十分に考えていない」(外交筋)のが実態。バラ色の展望が行き詰まる可能性も排除できない。”【同上】とも。

来年9月には、アジア・オリンピック評議会(OCA)が主催し、トルクメニスタンにとっては独立以来初の大規模な国際スポーツ大会も開催され、また、日本と中央アジア5カ国が2004年から続ける多国間外交の枠組みでも、今年初めて議長国として外相会合を主催するなど、部分的に開放政策も取られています。

ただし、不安定要素も。

****うごめく独裁国家・トルクメニスタン/下 開国、治安にリスク****
・・・・遊牧民族の流れをくむ部族間の不和も深刻だ。独立以来の2人の大統領は共に中南部が基盤のテケ族出身で、別の有力部族が暮らす東南部マルイ州で不満が高まっているとの情報もある。
 
マラシェンコ氏は「イスラム教、部族社会、エネルギー資源、独裁者といった要素はかつてのリビアによく似ている」と指摘。リビアでは11年の内戦でカダフィ政権が崩壊後、二つの政府が樹立され、混乱に乗じてISが実効支配地域の拡大を狙う。

安定の要となる天然ガスの価格低迷が続き、失業率の上昇が懸念される。独裁国家の近未来には暗雲が漂う。”【4月14日 毎日】
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経済が上手く回らなくなっても政権批判は一切許されないのが、こうした国の現実です。
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イスラム恐怖症(イスラモフォビア)に関する話題 ドレスデン、ロンドン、ニューヨークそしてパリ

2016-09-28 22:26:00 | 欧州情勢

(東ロンドンのストラトフォードにはムスリムを中心に多様な民族が暮らす【9月27日 Newsweek】)

昨日ブログで取り上げたイランのアフマディネジャド前大統領の次期大統領選挙出馬問題ですが、最高指導者ハメネイ師の自粛勧告に対し前大統領は「勧告に従い出馬しません。謙虚な革命の戦士、イラン国家のしもべでいます」と書簡で返答したようです。ただ、あまりに“素直な”反応に、「本当だろうか?何があったのだろうか?」という感も。


反イスラム団体PEGIDA発祥の地ドレスデンでモスク襲撃
“イスラム過激派によるテロが繰り返されるなかで、イスラム教徒全般に対する過度の警戒心・不信感・恐怖心、いわゆる「イスラム恐怖症(イスラモフォビア)」が社会に広がり、そのことがイスラム教徒とその他住民との相互理解・融和を阻害し、イスラム教徒の中に社会への不信・怒りを育て、さらなるテロを誘発する・・・・という悪循環を生み出す危険があります。”【8月16日ブログより再録】という件に関しては

8月16日ブログ“フランス イスラム教徒全般に対する過度の警戒心・不信感がもたらす危険性”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160816
9月17日ブログ“イスラム恐怖症 ノルウェーの「ドナルド・トランプ」 イスラム叩きで復権を目指す仏サルコジ元大統領”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160917
などでも取り上げてきました。

難民問題に揺れるドイツでは、反移民を掲げる新興右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が最近の選挙でメルケル首相の与党を上回る得票を得るとか、ベルリン市議会で初議席を獲得するなど躍進が報じられています。

そうした政治的流れと軌を一にしたように、イスラム教モスクへの襲撃事件も発生しています。

****独東部のモスクと国際会議場に爆弾、動機に外国人排斥か****
ドイツ東部ドレスデン(Dresden)の会議センターとモスクが26日夜、手製爆弾で攻撃された。けが人はいなかった。現地警察は27日の発表で、外国人排斥を掲げる国家主義的な動機があったと疑っていると述べた。
 
ドイツに大量の移民が流入する中、ドレスデンでは最近、極右勢力による抗議行動が頻発していた。

ドレスデン警察のホルスト・クレッチマー署長は「どこからも犯行声明は出ていないが、外国人排斥な動機があるとみている」と語った。また10月3日の「ドイツ統一記念日(Day of German Unity)との関連も疑っている」という。
 
爆弾が爆発したのはグリニッジ標準時(GMT)午後8時(日本時間27日午前5時)ごろ。モスクの内部にはイスラム教指導者とその家族がいたが、けが人はなく、被害はドアが壊れただけだった。また国際会議場に併設されているホテルでは一部が避難した。
 
旧東ドイツに位置するドレスデンは、右派ポピュリスト団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」の発祥の地。PEGIDAのメンバーらは、欧州の経済大国ドイツへの亡命を求めて、100万人の難民や移民が昨年流入した事態に対する怒りの抗議を行っている。【9月27日 AFP】
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PEGIDA(西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人)は、その名称からわかるように、戦前のナチスをも彷彿とさせる典型的な排外的極右団体です。

支持者は比較的収入が高い中上層の社会階層出身者が多く、高学歴の傾向を示すと言われる新興右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は公式的には“(PEGIDAとは)距離感を置いて否定的な立場にある”【ウィキペディア】とのことですが、実際には支持層が重なると思われ、ドレスデンではAfD党員や支持者たちがPEGIDAと共に活動していたと言われています。

【「多様性」のロンドンでも根強いイスラム差別
一方、イギリスでは今年5月、ロンドン市長にイスラム教徒のカーン氏が当選し、話題になりました。

****ロンドン市長に初のイスラム教徒 住民の多様化が後押し****
教徒の市長が誕生した。パキスタン移民2世の労働党下院議員サディク・カーン氏(45)だ。相次ぐテロの余波で、欧米で反イスラム感情が高まる中での勝利。背景には何があったのか。
 
2期8年務めた保守党のボリス・ジョンソン前市長(51)の後任を決める選挙は12人が立候補。事実上、上流階級出身の保守党下院議員ザック・ゴールドスミス氏(41)と、移民家庭から人権派弁護士になったカーン氏の一騎打ちだった。
 
保守党陣営は、カーン氏を「イスラム過激派」になぞらえるネガティブキャンペーンを展開した。
 
ゴールドスミス氏は大衆紙に「労働党が勝てば、過激派を正当化する候補を立てる政党に警察行政や対テロ政策をゆだねることになる」と寄稿。記事は過激派による2005年のロンドン同時爆破テロで大破した路線バスの写真とともに掲載された。キャメロン首相も「労働党候補に懸念を抱いている」と、カーン氏が過激派に近いという印象を発信した。
 
近年、欧州では過激派組織「イスラム国」(IS)に共鳴するグループによるテロ事件が続発。昨年8月の英YouGov社の世論調査では、3人に1人が「イスラム教徒のロンドン市長」に不快感を示した。米大統領選で「イスラム教徒の入国禁止」を訴える不動産王ドナルド・トランプ氏が共和党の候補者指名を確実にするなど、反イスラム感情の高まりは欧米共通の現象だ。
 
だが最終的にはカーン氏が約131万票を獲得。約99万4千票のゴールドスミス氏に圧勝した。投票率は46%で、前回12年を8ポイント上回り、関心の高さを示した。

なぜカーン氏は勝てたのか。
背景には、ロンドンという街が培ってきた「多様性」がある。
 
これまで、旧植民地や欧州連合(EU)加盟国から多くの移民を受け入れてきた。11年国勢調査によると、人口817万人(当時)のうち約37%が英国外生まれだ。「英国籍の白人」は約45%にとどまる。イスラム教徒も100万人以上で人口の12・4%を占める。
 
カーン氏自身が、そんなロンドンの多様性を体現する存在だ。地元のモスク(イスラム教の礼拝所)に通い、戒律に従って酒は飲まない一方、イスラム教が認めない同性婚を支持するリベラルさを併せ持つ。

カーン氏は英誌に「私たちはみんな、複合的なアイデンティティーを持つ。信仰は私の一面にすぎない」「私はロンドン市民で英国人、イングランド人、パキスタン系アジア人、父親で夫。(サッカークラブの)リバプールファン、労働党員、そしてイスラム教徒だ」と語った。
 
ロンドンでは伝統的に労働党が強いことや、庶民目線の行政手腕が期待された面もある。
 
保守党陣営の戦術は、党内からも「市民の分断をあおる」と批判が噴出。ゴールドスミス氏の支持離れを招いた。カーン氏は当選後、「市民が恐怖より希望を、分断より団結を選んだことを誇りに思う」と語った。
 
ロンドン大学経済政治学院のトニー・トラバース教授(政治学)は「マイノリティー出身の市長を嫌ってカーン氏に投票しなかった人がいた一方で、ロンドンが民族や信仰に寛容な都市である象徴として、あえて投票した人もいたのではないか。ロンドン市民もテロを懸念しているが、市長を選ぶ判断には影響しなかったということだろう」と分析する。
 
日本に住んで十数年になるインド系英国人のヴィアス・ウツパル立命館アジア太平洋大学准教授(国際政治学)は、「移民2世の若者の良い手本となり、外国にルーツを持つ英国人が政財界の要職につく流れを後押しするだろう」と指摘。今回の選挙を日本に置き換えると「移民2世の東京都知事が誕生するようなものだ」と言う。日本でも、そんな日は来るのだろうか。
 
ヴィアス氏は「近い将来にはありえない」とみる。「政党が多様な地方議員の擁立に動き、市民も支えることが必要になるが、日本では社会の多様性を深めることが歓迎も推進もされていない。今は女性議員を増やすことの方が優先順位が高く、民族・宗教的マイノリティーの日本人が地方政界のリーダーとして活躍するのは、まだまだ先だろう」【5月18日 朝日】
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そんな「多様性」を重んじるロンドンでも、イスラム教徒への強い反感が存在します。

****ロンドンに潜むムスリム差別****
<多文化共生を象徴する都市ロンドンでも、イスラム教徒への反感は根強い。欧州でテロが相次ぐ中、誤解を恐れて口を閉ざすムスリムの若者も多い>
 
イスラム教徒のサディク・カーンが新市長に選ばれたことで「融合」の象徴として期待されるロンドン。
だがそんな世界有数の多文化共生都市にも人種や民族間の軋轢はあり、なかでもイスラム教徒への反感は根深い。

英社会に溶け込む努力を重ねるムスリムは多いが、黒ずくめの伝統衣装や髪を覆うヒジャブに抵抗感を持つ市民も少なくない。
 
宗教的な対立が高まる背景には、英経済の低迷や失業率の増加がある。さらに再開発によって地価が高騰し、中流階級までが住む場所を追われる事態が多発していることも、市民の不安を高め、異文化への憎悪をあおる温床となっている。

そんな逆境のなか、ムスリムの人々、特に若者は本音を隠して生きようとしている。私がロンドンで出会った10代半ばの少女たちは、学校でパリとブリュッセルのテロ事件について議論した際に口をつぐんでいたという。非ムスリムの生徒が大半を占める環境では、何を言っても誤解を招くと恐れたのだ。
 
ムスリムの市長が誕生しても、ロンドンに真の多様性が浸透し、差別される不安が消え去る日は簡単には訪れそうにない。【9月27日 Newsweek】
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ニューヨークではイスラム嫌悪と闘うキャンペーンも
ロンドン同様に、あるいはそれ以上に「多様性」の都市ニューヨークでは。

****米NY市、イスラム嫌悪と闘うキャンペーンを開始へ****
米ニューヨーク市は26日、同市に暮らすイスラム教徒数十万人の権利の平等を強調し、イスラム嫌悪と闘う大規模なキャンペーンに乗り出すことを明らかにした。
 
ニューヨークでは10日前にマンハッタンで、イスラム過激派に感化されたアフガニスタン系米国人による爆破事件が起きたばかり。

ビル・デブラシオ市長は声明で「今こそニューヨーク市民全員が一つとなって団結して立ち上がり、ヘイト(憎悪)と暴力を拒絶することが、かつてないほど重要だ」と語った。
 
デブラシオ市長はさらに「われわれはいかなる差別も暴力も容認しない。そして、イスラム教徒の兄弟姉妹を含むすべてのニューヨーク市民が、彼らにふさわしい尊厳をもって扱われるまで、われわれは休むことはない」と述べた。
 
27日に始まるキャンペーンではまずソーシャルメディアを使い、「#IAmMuslimNYC」のハッシュタグでメッセージを広める。また同市は、来月初旬から市職員や官民の雇用主を対象に、イスラム教について理解を深めるためのワークショップの開催を計画している。【9月27日 AFP】
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ただ、イスラム教徒の入国禁止など、ポリティカル・コレクトネスを真っ向から否定するトランプ候補がどんなにマスコミなどで叩かれても支持が拡大するように、多くのアメリカ人の本音の部分に「イスラム恐怖症(イスラモフォビア)」が浸透しているようにも見えます。

9月17日ブログでも取り上げたように、ニューヨーク・マンハッタン5番街の高級ブティック前で9月10日夜、ベールで顔を覆った英国籍の女性(35)が衣服に火を付けられる事件も起きています。

パリ ブルキニがダメでヌーディストはかまわない?】
また、同じく9月17日ブログでも取り上げたフランスの「ブルキニ騒動」
「宗教を誇示するような浜辺での着衣は、フランスや礼拝所がテロの標的になっているなか、公共の秩序を脅かしかねない」(カンヌ市長)といった主張の背後には、「イスラム恐怖症(イスラモフォビア)」的な考えがあるようにしか思えません。

そのフランス・パリでは、ヌーディストは認められるとか。

****ブルキニを禁じたフランスのパリがヌーディスト解禁へ****
<ビーチでイスラム教徒の水着ブルキニを着るのは禁止だけど、何も着ないのはオーケーってどういうこと?>(写真はカナダのヌーディスト村)

フランスといえばこの夏、公共のビーチでの「ブルキニ」着用を禁止する自治体が相次いで、国際社会から批判にさらされたばかり。ブルキニとは、イスラム教徒の女性が着用する全身を覆う水着だ。

ところが首都パリでは今、公共のヌードを解禁しようとしている。

早ければ来年の夏までに、ヌーディストはパリの指定されたエリアで自由に過ごせることになりそうだ。市議会は26日、ヌーディストエリアの設置を賛成多数で承認した。

ダビッド・ベリアール議員は、フランスには200万人に上るヌーディストが存在し、観光客が押し寄せる夏の数か月間はその数が倍に増えると言う。

ヌーディスト観光客へのサービス
「ヌーディストにとってパリは世界で最も人気がある旅先なのに、裸になれる公共の場所がない。彼らが自由に服を脱いでバカンスを楽しめるエリアを作りたい」

フランスにおけるイスラム教徒の人口は約500万人。国内のヌーディスト人口はその半分だ。

ブリュノ・ジュリアール副市長は、アンヌ・イダルゴ市長とともに計画を支持した。設置の条件は、市の中心部のすぐ外で、「公共の秩序を脅かさないよう、湖の近くなどで当局が取り締まれる場所」になる見通し。

ジュリアールが言葉を慎重に選んだのは皮肉だ。テロ組織ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)が犯行声明を出したニースのトラック突入テロ以降、ビーチや湖、プールなどでブルキニを着用すれば、公共の安全に深刻な脅威になるという議論になったばかり。ブルキニはダメでヌーディストは良いというのは何とも気まずい。

緑の党に所属するベリアールは、自分はブルキニ禁止を支持しないと言う。
「人々は自分の好きなように服を着られるし、全然着ないという選択肢もある」【9月28日 Newsweek】
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ブルキニは宗教を誇示し、ヌーディストにはそいう面がない・・・ということでしょうが、ブルキニがダメでヌーディストはかまわないというのはなんだか奇妙な結論です。要するに「イスラム教徒が嫌いだ」ということでしょう。
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イラン  最高指導者ハメネイ師がアフマディネジャド前大統領の大統領選出馬自粛を要請、しかし・・・

2016-09-27 22:54:50 | イラン

(2009年8月、アフマディネジャド大統領の2期目就任を正式に承認した式典の最中に、ハメネイ師が大統領の敬意の手へのキスを拒み、大統領はハメネイ師の肩にキス 宗教的にはノン・エリートで、最高指導者の権威を利用しようとする大統領とハメネイ師の関係は当時から微妙でした。【2009年8月3日 AFP】)

女性が自転車に乗ることを禁じる宗教令 保守強硬派の巻き返し?】
イラン社会に関する最近の話題を2件

****女性に自転車禁止の宗教令・・・・イラン最高指導者****
イランの最高指導者ハメネイ師は、女性が自転車に乗ることを禁じる宗教令(ファトワ)を出した。
同師の事務所が18日、ウェブサイトで明らかにした。
 
イスラム教シーア派の最高位法学者として、信徒の質問に答えた。女性が公の場で自転車に乗れば家族以外の男性の目に触れるため「ハラーム」(イスラム教上の禁止行為)にあたるとの見解を示した。
 
イスラム法学者は信仰生活上の指針を示す役割を担う。複数いる最高位法学者の中でハメネイ師を権威として仰ぐ女性信徒は、自転車禁止令に従う義務がある。他の法学者を権威として仰ぐ信徒が従うかどうかは個人の判断に委ねられる。だがハメネイ師の影響力は大きく、自粛の動きが広がるとみられる。【9月19日 読売】
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どういう経緯で出された宗教令(ファトワ)かはわかりませんが、“女性が公の場で自転車に乗れば家族以外の男性の目に触れるため「ハラーム」にあたる”というのは、下記のように一定に女性の社会参加も進んでいるイランの現状からすると、まるでアフガニスタンの旧タリバン政権時代のような感じで、やや奇異にも思えます。

****イランにおける選挙制度と女性の政治参加****
―伝統的制度と価値観に挑戦するイランの女性たち―
1979年のイラン革命後、政治制度から、社会、文化、日常生活までイスラーム化政策が推進され、家族関係、結婚、離婚、服装など女性に係わる法律に、イスラーム法が色濃く反映されるようになった。

その結果、女性からの離婚や養育権の請求が困難となり、肌や髪の毛を見せない厳格な服装規定が適用されるようになった。

その一方で、政府は、イスラームの枠内での女性の政治や経済、社会活動への参加を奨励したため、女性の進学率や就業率は革命前から大きく前進した。

例えば、女子大学生の割合は、革命前の1978年には31.8%であったが、2006年には63.7%に拡大し、女子の進学率が男子を凌駕した。

女性の就業率も1978年の13.6%から、2006年に18.5%に上昇し、1971年に2.5%にすぎなかった女性ジャーナリストの割合は、2006年には22%に拡大した。

そして、2016年2月26日の第10期国会選挙と4月29日の第2回投票の結果、17名の女性が選出され、イラン・イスラーム共和国史上最大の女性議員が誕生した。(後略)【貫井万里氏 http://www.sridonline.org/j/doc/j201607s03a03.pdf
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改革派・穏健派と保守強硬派のバランスをとる関係で出された政治的産物でしょうか。
先の議会選挙で改革派・穏健派が躍進したイランですが、保守強硬派とのせめぎあいが続いています。

****当選女性「失格」、イラン政界混乱 保守強硬派が巻き返し策か****
イランで2月に行われた国会議員選挙(定数290)で当選した女性が失格を通告された。スカーフ未着用など宗教モラルに反する行為があったと報じられたが本人は否定。ロハニ大統領も失格を認めない。

選挙は国際協調を進めるロハニ氏の支持勢力が圧勝。快く思わない保守強硬派が、宗教を口実に巻き返しに出た形だ。混乱の中、新議員による国会は28日に始まる。(中略)

混乱の背景には政治勢力の対立がある。ロハニ氏を支持し、自由を好む保守穏健派・改革派と、反欧米で宗教の規律を重んじる保守強硬派だ。護憲評議会は保守強硬派の影響下にある。
 
選挙では保守穏健派・改革派が保守強硬派の議席を上回った。保守強硬派はアフマディネジャド前大統領時代に政権を担ったが、核開発を強行して国民を失望させた。

だがテヘランの警察は4月、女性の服装など風紀を取り締まる覆面警官7千人の導入を表明。保守強硬派が影響力を行使したとの観測が広がっている。
 
同志社大の中西久枝教授(中東地域研究)は「制裁解除を受け次期国会では外資導入に向けた法整備で争いが起こり得る。保守強硬派は、前政権時代に拡大した利権を手放すまいという動きに出ると予想される」と話す。【5月28日 朝日】
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もうひとつは、イランでもクレジットカードが使えるようになったという話題ですが、これまでカードが使えなかったということが驚きです。

****イラン、クレジットカードを初導****
イランで25日、クレジットカードが初めて導入された。イラン学生通信(ISNA)が報じた。

イランは、欧米などとの核合意を受けて1月に経済制裁が解除されて以来、石油生産や経済の強化を図っている。

ただ、イラン中央銀行のセイフ総裁は、銀行がクレジットカードシステムに慣れるまで時間がかかる可能性があるとの懸念も表明。ISNAによると、「こうしたカードが、銀行ネットワークの中で、すぐに利用されると考えるのは正しくないだろう」と述べたという。

クレジットカードの利用限度額は、約3000、1万、1万5000ドルの3種類。店舗やオンラインでの買い物に利用できる。【9月26日 ロイター】
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アフマディネジャド前大統領に立候補しないように求めた・・・・ただ、「出馬するなとは言っていない」】
制裁措置に苦しんできたイランでは、欧米との核合意で国民に経済回復への期待が一気に高まったものの、現実にはなかなか制裁解除が進まず、期待がロウハニ政権への不満・失望に変わりつつある・・・ということは、8月12日ブログ“イラン 実効を伴わない制裁解除でイラン経済の困難続く 政権・核合意への期待は失望に”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160812でも取り上げました。

そこでも触れたように、対欧米強硬派のアフマディネジャド前大統領がそうした国民の不満・失望の受け皿ともなって支持を拡大しています。

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米メリーランド大などが6月、イランの約1千人に行った世論調査では、核合意で暮らしが改善したと答えた人は26%。ロハニ氏の好感度も、「非常に良い」が昨年8月の61%から38%まで下がった。
 
台頭するのが、アフマディネジャド前大統領だ。次の大統領を尋ねる質問で、1年前はロハニ氏と27ポイント差があったが、今回は8ポイント差に詰めた。7月から各地のモスクで演説を始め、「時が来れば私は戻る」と発言している。今月8日にはオバマ米大統領に資産凍結の解除などを求める書簡を送り、イランメディアの話題をさらっている。【8月12日 朝日】
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アフマディネジャド前大統領は、2013年に大統領を退任した後、大学教授をしていたそうですが、昨年夏頃から政治活動に復帰していました。(アフマディネジャド前大統領は工学博士の学位を有していますが、大学で何を教えていたかは知りません)

このままいくと、来年5月19日実施の大統領選で2期目に挑むとみられる穏健派ロウハニ大統領にとって、厳しい戦いも予想されていましたが、最高指導者ハメネイ師がアフマディネジャド前大統領に大統領選挙出馬自粛を求める発言をしたそうです。

****イラン最高指導者、前大統領に不出馬勧告「国が割れる****
来年5月のイラン大統領選をめぐり、同国の最高指導者ハメネイ師は26日、アフマディネジャド前大統領に不出馬を勧告したと明らかにした。

現職のロハニ大統領の有力な対抗馬とみられていたが、立候補は難しくなる。国際社会からの孤立を招いた前大統領の強硬路線を否定した形だ。
 
ハメネイ師の公式サイトに、神学校での講義録として「彼自身と国の利益を考え、かの行事に参加しない方が良いと言った」「彼が特定の問題に当たれば国は二つに割れる。二極分化は国益に害だと助言した」との発言が公開された。名指しはしていないが、イランメディアは相手が前大統領で、行事とは大統領選のことだと一斉に報じた。
 
イランには現在、融和外交を支持する保守穏健派・改革派と、反欧米でイスラム教に厳格な保守強硬派という大きく二つの政治潮流があり、ロハニ大統領は前者の支持を受ける。前大統領は後者で、核開発を制限したのに欧米から十分な見返りがないとする国民の不満を背景に、支持を広げていた。
 
保守強硬派では他に、精鋭部隊・革命防衛隊のソレイマニ司令官を推す動きもあるが、同司令官は「軍人として生を全うする」と固辞する構え。

同派の候補者選びは難航し、ロハニ氏に有利な情勢だ。ただ、ハメネイ師は「出馬するなとは言っていない」とも述べ、アフマディネジャド氏への対応に含みも残した。【9月27日 朝日】
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穏健派ロウハニ大統領の核合意・対欧米協調路線を基本的には支持したと思われる最高指導者ハメネイ師としては、アフマディネジャド前大統領の復活でそうした路線がご破算になることは望んでいない・・・ということでしょうか。

****最高指導者の前大統領の立候補阻止(イラン****
日本のメディアも報道しているようですが、al arabiya net は、イランの最高指導者がアハマディ・ネジャード前大統領に、2017年の大統領選挙に出馬しないようにアドバイスしたと報じています。

それによると、最高指導者のネットが、ハメネイが数日前に有力者のひとり(アハマディ・ネジャード)と会って、彼の立候補は彼のためにも、イラン国家のためにもならない、として、来年の大統領選へ立候補しないように求めたと報じているとのことです。

また強硬派の前イラン通信事務局長が、アハマディ・ネジャードがハメネイと会談すべく努力してきたが、実現した会談では最高指導者は明確に彼の立候補に反対したと語った由。

いずれにしても、前大統領は数か月前から、イランお方々の町を回って、選挙運動をしてきたが、その中でかれは現大統領ロウハニが米国等と合意した、イランの核開発停止に関する合意を非難し、ロウハニ大統領は「一期だけの大統領になろう」と語ってきた由。

これに対して、最高指導者は、今後さらに米国がイランに対する制裁緩和を進めることを期待していて、特に米大統領選のこの時期における発言が、核合意の今後について与える悪影響を懸念した由。

ハメネイの核合意に対する立場については種々の見方があったかと思いますが、少なくとも彼の支持がなければロウハニが核合意に署名することはできなかったはずで、かれが(思惑はともかく)核合意を支持したことは間違いなく、その意味ではそのような彼の政策に真っ向から反対した前大統領の立候補を、好ましく思わないことは十分考えられます。

なお、記事は、その他前大統領の時期が、イラン正解が腐敗、汚職等の最も蔓延した時期であったとしており、そのことと最高指導者の反対を直接結びつけてはいないが、これも最高指導者がアハマディ・ネジャードに反対して理由の一つである可能性も強いかと思います。【9月27日 野口雅昭氏 「中東の窓」】
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最高指導者の権威にもひるまないアフマディネジャド前大統領
核合意をめぐる基本路線の問題もありますが、アフマディネジャド前大統領と最高指導者ハメネイ師の個人的関係も影響しているのではないでしょうか。

アフマディネジャド前大統領は良くも悪くも強烈な個性の持ち主です。

“米大統領選で共和党の候補者指名を争うドナルド・トランプ氏は、イランでは「アフマディネジャド前大統領のようだ」と言われている。周囲が抑えきれない絶大な権力を得たアフマディネジャド氏は倫理観や法令に縛られず、強硬路線を貫いた。両氏はまさに似たもの同士だ。”(イランのシャヒド・ベヘシティ大、アリ・ビグデリ教授)【4月23日 毎日】

イランでは最終決定権は最高指導者にあって、大統領は行政府の長に過ぎない・・・と言われていますが、アフマディネジャド前大統領はそうした立場を超えて実権を握ろうとしてハメネイ師とも争い、不興を買った経緯もあります。

****プーチンをめざすアハマディネジャド****
中東のイランは、1979年のイスラム革命でイスラム聖職者のホメイニ師が権力を取って以来、聖職者集団がすべての権力を握る「イスラム共和体制」だ。

聖職者集団(専門家会議)が選出する「最高指導者」が最高権力者で、大統領はその下の行政の責任者でしかない。

しかし、外交面で米国と敵対する戦略が成功し、内政面で補助金縮小による財政立て直しに成功しているアハマディネジャド大統領は、自分を任命したハメネイ最高指導者から権力を奪取することをもくろみ、イランの上層部で権力闘争を引き起こしている。 (Ahmadinejad fights to stay relevant)
 
イラン大統領の任期は、2期8年が限度と憲法で決められている。アハマディネジャドの任期は2013年までだ。しかしアハマディネジャドは、自分の娘の夫で官房長官のイスファンディアル・マシャイエを、次期大統領選挙に当選させ、マシャイエに1期4年の大統領をやらせた後、17年から再び自分が大統領に返り咲こうと目論んでいる。(Analysis: Deep echoes of Iran political tremors)
 
このやり方は、ロシアのプーチン首相から学んだことだ。ロシアの大統領も任期の上限は2期8年だが、プーチンは大統領を8年やった後、子分のメドベージェフに1期4年の大統領をやらせ、来年の選挙で再び大統領に返り咲こうとしている。メドベージェフは最近、嫌々ながら、次期大統領選挙に出ないことを認めた。(Putin eclipses Medvedev in run-up to 2012 election)
 
ロシアの聖職者は、百年前の革命で権威を剥奪された。敵のいない権力者であるプーチンは、自分の権力の設計図を自由に描いて実行できる。

対照的に、イランは30年前の革命で聖職者独裁の国になった。アハマディネジャドがプーチンになるには、聖職者独裁を壊さねばならない。

聖職者集団は、アハマディネジャドの意図を早くから見抜き、09年に再選を果たした彼がマシャイエを副大統領の一人として据えようとした時、その人事を拒否している。アハマディネジャドはしかたなく、マシャイエを官房長官(政策顧問)にした。(Inside Iran's Fight for Supremacy)
 
アハマディネジャドは4月中旬、マシャイエを諜報大臣に就任させようとして、それまで諜報大臣をしていたモスレヒ(Heidar Moslehi)を罷免した。

多民族で多様なイランのような国では、国家を統治する際に諜報が非常に重要な部門だ。アハマディネジャドは、マシャイエを次期大統領に据える前に諜報大臣を経験させ、諜報分野の権限を、聖職者集団の傘下組織である革命防衛隊から奪取しようとしたのだろう。(Reports: Iran intelligence chief in political vise)
 
ハメネイはモスレヒの罷免を認めないと宣告した。だがアハマディネジャドはハメネイの指示を無視し、モスレヒを呼ばずに閣議を開いた。

ハメネイは怒り、モスレヒを出席させて閣議を開くよう、アハマディネジャドに強く求めた。モスレヒが出席して閣議が開かれたが、こんどはアハマディネジャドが欠席していた。4月後半、アハマディネジャドは閣議を2回欠席し、ハメネイに抗議の意志を示した。(Iran's Ahmadinejad in growing rift with top cleric)
 
聖職者独裁のイランで、ハメネイに逆らう者は国賊だ。有力な聖職者たちが相次いでアハマディネジャドを非難し、軍より強い力を持つ革命防衛隊もハメネイを支持した。アハマディネジャドは四面楚歌状態となったが、国際社会で孤立するほど声高に反米主義を唱え続けた彼は、かなりの頑固者らしく、大してひるまなかった。 (Power Struggle in Iran Enters the Mosque)(後略)【2011年6月12日  田中宇氏】
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最高指導者の権威すら侵しかねないアハマディネジャド前大統領の復活をハメネイ師は望んでいない・・・とも推察されます。

もっとも、2011年当時の上記のような確執を考えると、アハマディネジャド前大統領がハメネイ師の勧告を無視して出馬する可能性もあります。

イランでは最高指導者ハメネイ師の影響下にある護憲評議会が候補者の適格審査を行い、適格と判断された者のみが大統領選挙に出馬することを許されますが、ハメネイ師がアハマディネジャド前大統領の出馬を止めるような強権を行使するかどうかはわかりません。

かつての絶対的権威を有していたホメイニ師とは異なり、ハメネイ師は“最高指導者”とは言いつつも、政治状況を無視できない立場にあります。保守強硬派の主流派とは対立しているアハマディネジャド前大統領ですが、有力候補者がいない強硬派がまとまって前大統領出馬を求めた場合は・・・。

今回も「出馬するなとは言っていない」といったあたりに、そうした政治バランスに乗っかる立場が窺えます。
コメント

メキシコの「麻薬戦争」を克服した都市 ホンジュラスの犯罪組織からアメリカへ逃れる不法移民

2016-09-26 22:21:34 | ラテンアメリカ

(世界で最も危険な都市、ホンジュラスのサン・ペドロ・スーラの刑務所 看守に抵抗した罰として手錠でつながれた受刑者 刑務所内では受刑者が自由にバザーを経営しており、iPhoneから売春婦までなんでも販売されているとか・・・TVドラマ「プリズンブレイク」の世界です。【THE FRAME http://blogs.sacbee.com/photos/2012/05/inmates-corruption-rule-hondur.html】)

メキシコの止まない「麻薬戦争」】
このところあまり取り上げていない「メキシコ麻薬戦争」の話。

最近の映画では、残忍な麻薬カルテルと市民による自警団との戦いを、アメリカとメキシコの両側から市民の目線で描いたドキュメンタリー「カルテル・ランド」、アメリカとメキシコ国境の町に送り込まれた女性FBIエージェントが常軌を逸した現場に直面し、葛藤するクライム・サスペンス「ボーダーライン」とか、話題作があるようです。
それだけ、深刻な現実があるということなのでしょう。

ここ数か月に目にしたメキシコ・麻薬絡みの話題を列挙すると・・・

“メキシコ中部で一家11人惨殺、武装集団が民家に押し入る”【6月11日 AFP】
“メキシコで連続民家襲撃、14人死亡 麻薬組織の抗争絡みか”【7月10日 AFP】
“メキシコで町長3人射殺・・・麻薬組織関与か”【8月4日 読売】
“「悪魔」の異名持つメキシコ麻薬王、整形手術直前に逮捕”【8月4日 AFP】
“麻薬王の息子誘拐=夜明けのバー襲う―メキシコ”【8月17日 時事】
“米国行き「隠しトンネル」発見=建設中、麻薬密輸用か-メキシコ”【8月29日 時事】
“メキシコで警察ヘリ撃墜、4人死亡”【9月8日 AFP】

ひところに比べて「麻薬戦争」の状況がどうなっているのかは把握していませんが、相変わらず事件は頻発しているようです。

アメリカへの麻薬持ち込みについては、上記にもある「トンネル」とか、あるいは「潜水艇」とかが話題にもなったりしますが、一番“簡単”そうで、「なるほど・・・」と思ったのが次の方法。

****大砲で麻薬の袋を発射し密輸か メキシコから米へ****
米国と国境を接するメキシコで、大砲のような筒を載せた小型トラックが見つかった。麻薬密売人が、麻薬の袋を高圧の空気で米国側に飛ばすために使っていたとみられるという。メキシコ当局が17日発表した。米メディアは「独創的な密輸の方法だ」などと、伝えている。
 
トラックは、米アリゾナ州ダグラスと国境を接するメキシコのアグアプリエタで見つかった。屋根の部分が取り去られ、約3メートルの長さの鉄の筒を搭載。高圧の空気圧縮機も見つかり、約27キロの重さのマリフアナの包みを発射できるという。
 
メキシコから米国に麻薬を密輸する方法は、トンネルやはしご、てこの原理を利用した投石機など様々な方法があるが、「大砲」を使うのはまれという。【9月22日 朝日】
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「大砲」なら「トランプの壁」が出来ても、壁を越えられそうです。

警察と麻薬組織の癒着は昔から言われていることですが、警察・軍の体質にも問題がありそうです。

****メキシコ警察と軍、逮捕した女性への暴力常態化 性的暴行も****
メキシコ警察と軍が、女性を逮捕し取り調べを行う際に日常的に拷問、虐待を行い、時に性的暴力を加えているとする報告を28日、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが発表した。
 
アムネスティは逮捕された際に暴力を受けたと報告した女性100人に取材調査を行ったが、その全員が何らかの性的嫌がらせや精神的虐待を受けたことを明らかにした。また約7割の女性が、逮捕された際か、それから数時間以内に性的虐待を受けたと回答した。
 
女性たちが受けた虐待には、腹や頭を殴られる、本人または家族をレイプすると脅迫を受ける、窒息させられそうになる、性器に電気ショックを与えられる、体を触られる、レイプされるなどがあった。
 
アムネスティは報告書で「警察は、政府の治安対策が実を結んでいることを社会に示し、検挙率を上げるために女性たちを格好の餌食として利用し、逮捕している」と述べ「こうした暴力を主に受けるのは若い、貧困家庭出身の女性たちだ。ジェンダー(社会的・文化的な性差)、年齢、社会経済状況が理由でこうした女性たちが直面している重層的で複合的な差別は、彼女たちが恣意(しい)的に逮捕、拷問され、虐待されるリスクを高めている」と指摘している。
 
さらにアムネスティは、逮捕、収監された女性たちの多くがシングルマザーで、男性のパートナーを持つべきだといった女性に期待される社会通念に従っていないというだけで差別に直面していると報告している。【6月28日 AFP】
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【「戦争地域以外では最も危険な街」で劇的な治安改善
ただ、「麻薬戦争」克服の明るい話題もあります。麻薬抗争最前線にあって「戦争地域以外では最も危険な街」とも呼ばれていたシウダー・フアレス(映画「ボーダー・ライン」の舞台ではないでしょうか)の治安が大きく改善したそうです。

****世界一危険だった街フアレス、殺人が15分の1に****
米国との国境沿いにあるメキシコ北部の都市、シウダー・フアレス。ここサン・アントニオ地区はかつてスラム街だったが、今はコンクリート・ブロックの家が立ち並ぶ住宅街になっている。

2008〜12年には、フアレスは世界で最も危険な都市として知られていた。3700人以上が銃で殺された年もある。誘拐や恐喝をしても罰せられず、国内の盗難車の4分の1はこの街で盗まれるという無法地帯だった。

フアレスに平和が戻ったわけ
彼らがおびえて家にこもるのをやめ、以前のようにのびのびと暮らせるようになったのはなぜだろう。

少なくともここフアレスでは、民意が政治を動かした。犯罪を取り締まる法制度の強化や、自治体への投資を目指そうとする方向へと働いたのだ。

そして、規律を取り戻した警察官、逃げ出さずに闘う事業者、硬直化した官僚組織に抵抗して改革の先頭に立つ政治家といった、予期せぬヒーローたちが生まれた。

多くの客でにぎわう花屋で、店主のクラウディア・サウシードから話を聞いた。かつて店は彼女が一人で切り盛りし、夫はほかの仕事に就いていた。ゆすり屋が毎週取り立てるみかじめ料100ドル(フアレスでの平均的な週給)の足しにするためだ。

市当局の推計では、2010年までにゆすり屋に脅されて金を支払っていた事業者の数は約8000にのぼっていた。その翌年、カルロス・サラスがチワワ州の検事総長に就任すると、州警察に恐喝取締部隊が創設された。

それまでは多くの犯罪が処罰を免れていた。「手抜き捜査どころか、そもそも捜査などされていなかったのです」と、当時の取締部隊の監督官で、現在は市の警察長を務めるセザール・ムニョスは語る。「犯罪事件が発生すると、警察官たちは署内で隠れていました」

犯罪組織とつながりのない、えり抜きの若い警察官で構成された部隊は、まず2週間かけて中心地で戸別訪問をし、恐喝されたら通報するよう呼びかけた。地域に根ざしたこうした治安維持活動は、メキシコでは前例がなかった。「誰も話そうとしませんでした。ゆすり屋が警官に変装して来たと思ったのでしょう」と、現在、部隊を指揮するルイス・エルナンデスは語る。

それから2週間後、最初の通報があった。パン屋からの電話で、5000ドル支払わなければ店を焼き払うと脅されたという。取締部隊は金の受け渡し場所へ向かうパン屋の後を追い、みかじめ料を受け取ったところで、犯人を逮捕した。これは、フアレスで初めて恐喝の捜査が成功した例となった。

2010年に3766件だったフアレスの殺人事件は、2015年には256件まで減った。世界で最も危険な50都市のリストからフアレスの名は消え、誘拐や恐喝の報告はもう2年以上ない。米国の景気回復の影響もあり、2015年の前半には1万7000人分の雇用が新たに創出された。これは過去5年間で最高の数字だ。

フアレスは、暴力が横行するほかのメキシコの地域が目指す手本になれると、この街でレストランとバーを経営するデビッド・アラミヨは力説する。「フアレスにできるなら、ほかの地域もできるはずです。同じ国ではありませんか。この状況は変えられるのです」【6月7日 National Geographic】
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恐喝されたら通報するよう呼びかけ、きちんと捜査して逮捕する・・・という、ごく当たり前のことを行った結果でもあるようです。警官・政治家がまともな仕事をすれば「麻薬戦争」も改善できるという事例でしょう。

メキシコより遥かに危険なホンジュラス
ところで、1月4日ブログ“中南米諸国の治安事情 「麻薬戦争」メキシコと、左翼ゲリラとの和平交渉が進むコロンビア”でも取り上げたように、「麻薬戦争」と言われるメキシコの殺人発生率は世界第22位ということで、数字はいろいろあるでしょうが、少なくともメキシコより遥かに危険な国々が中南米、特に中米に集中しています。

上記ブログでの数字で言えば、世界第1位は中米ホンジュラスで、メキシコの4.5倍ほどの殺人発生率になっています。

ホンジュラスをはじめとする中南米諸国の治安の悪さの原因は、やはり麻薬などにかかわる犯罪組織です。
メキシコの麻薬密売組織が拠点を中米に移し始めていることも関係しているようです。

****犯罪組織から逃れ国外へ 中米ホンジュラス、10年で7.4万人超移住****
・・・・ホンジュラスの国家人権委員会によると、人口およそ800万人の同国で2004年から2014年の間に7万4000人以上もの国民が国外へ移住している。
 
犯罪組織に3人の息子を殺されたヘラルディーナさんは今、娘のことを心配している。「娘は兄たちが殺されるのを目の当たりにしているの。家に押しかけてきたギャングたちは、彼女の口に拳銃を突っ込んで誰にも言うなと脅したんです」(中略)
 
ヘラルディーナさんの22歳と19歳の息子を犯罪組織「メガロコス」が殺害した理由は、サッカーチーム「オリンピア」のTシャツを着るなという警告に2人が従わなかったからだという。23歳の長男はメガロコスのメンバーになることを拒んだために殺された。
 
マリアさん(43)は、2014年にギャングに誘拐されたきり行方が分からなくなった息子を捜し続けていた。マリアさんの妹やおいも捜索に加わってくれたが、しばらくしてそのおいは頭部に銃痕のある遺体となって発見された。

■闘う気のない警察
国家人権委員会のロベルト・ヘレラ委員長によると、昨年に国外移住を申請したホンジュラス人は1万6000人超で、前年から99%も増加している。住み慣れた地を後にするのは殺人や誘拐、恐喝、暴行、脅迫などから逃れるためだ。移住先としては同じ中米のコスタリカか北米のカナダを希望する人が多いという。
 
もっとも、申請許可などわざわざ待たず、米国へそのまま逃げていく人も少なくない。
 
ホンジュラスは世界でも最も殺人率が高い国の一つだ。世界保健機関(WHO)によれば、ホンジュラスの殺人率は世界平均の6倍を上回る。
 
高い殺人率の要因として、ホンジュラスの当局者らは犯罪組織と麻薬密売者の存在を挙げる。
 
ホンジュラスの主要都市では「マラ・サルバトルチャ」や「ディストリクト18」といった犯罪組織が郊外の貧民街を牛耳っている。ホンジュラス第2の都市サンペドロスラは世界で最も治安の悪い都市の一つとされ、「銃撃が毎日のように起こり、1時間以上も続く」(地元女性)
 
米国際開発局(USAID)の推定では、ホンジュラスでは犯罪組織の構成員3万6000人が暗躍する。だが警察には犯罪組織に対抗する意思はないとみられている。
 
このためホンジュラスは警察の浄化を目的とした委員会を設置しなければならなかった。「法廷まで持ち込まれる犯罪は全体のわずか4%。これは有効な捜査が欠如しているためだ」と委員会のメンバー、オマル・リベラ氏は話している。【9月20日 AFP】
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アメリカに逃れた不法移民を待つ過酷な運命
「銃撃が毎日のように起こり、1時間以上も続く」・・・もはや“戦場”ですが、こうした戦場を逃れてアメリカに不法入国しても、「強制送還」が待っています。

アメリカのTVドラマなどを観ていると、不法移民でることをネタに脅され、「通報されたくなかったら、・・・・」といったシーンが頻繁に登場しますが、不法移民・強制送還というものが、ごく日常の出来事となっているようです。

大統領権限で移民制度改革「DAPA」(米国籍や合法的な滞在資格がある子供を持つ不法移民の強制送還を免除する政策)を進め、トランプ氏などに比べると移民に対し寛容とも見られるオバマ大統領ですが、不法移民の強制送還については手を緩めてはいないようです。

****成人したら国外退去、中米の子供たちの末路****
<密入国した未成年者が18歳でアメリカを追放に。だが故国で待つのはギャングによる脅迫と暴力だ>(写真は、カリフォルニア州で開かれた不法移民の子どもたちの強制送還に反対する集会)

今年1月の寒い朝、ノースカロライナ州に住むウィルディン・アコスタ(19)は学校へ行こうと自宅を出た。その瞬間、待ち構えていた移民関税執行局(ICE)の職員3人に手錠を掛けられ、車に乗せられた。

ホンジュラスから移住した両親を追って、危険な旅の末にアメリカに不法入国したアコスタにとっては、残酷な出来事だった。未成年(18歳未満)でなくなったため、国外退去処分の対象となったのだ。

アコスタが密入国したのは14年。その年、アコスタと同じく成人の同伴者なしに、メキシコ国境を超えてアメリカに入った未成年者の数は7万人近くに達した。

米税関・国境取締局によれば、昨年10月〜今年7月までにメキシコ国境から不法入国した未成年者は5万人弱。中にはわずか5歳の子供もいる。

中米各国ではギャング団の激しい抗争が続く。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が14年に発表した調査によると、11年10月以降に中米諸国からアメリカに密入国した未成年者の58%が、故国で横行する暴力を密入国の理由に挙げた。

オバマ政権は、過去2年間に未成年者として不法入国し、その後に成年に達した若者の国外退去を最優先課題に掲げている。だが故国へ送り返されれば、ギャングに加わるか、殺されるか、二つに一つだ。

ICEは昨年、同伴者なしで不法入国した中米出身者1000人以上を強制送還した。そのうち、ホンジュラスへ戻された者は400人を超える。

ホンジュラスでの生活は恐怖の連続だ。対立するギャング団「マラ18」と「マラ・サルバトルチャ」がのさばり、麻薬取引絡みの流血事件を繰り返している。さらに近年、彼らは地元住民に「戦争税」の支払いを要求し、払わなければ拷問または殺害すると脅している。

脅迫を逃れるために故国を離れた者が送還されれば、組織の標的にされる。特に狙われているのがキリスト教の信者だ。

ギャングは長年、キリスト教信者を不可侵の存在と見なしていた。だが次第に教会を敵と捉えるようになり、信者は攻撃のターゲットになった。

送還されれば殺される
敬虔なキリスト教福音派信者の一家に生まれたアコスタもそうだった。17歳のとき、おじと2人のいとこが教会に通っているとの理由でマラ18の下部組織に殺害された。教会へ行くのをやめないなら、次はおまえの番だと警告されたという。

怯えたアコスタは母親と相談し、アメリカへ行くことにした。密入国業者には、アメリカに入ったら国境警備隊の元へ出頭しろと言われた。メキシコとカナダの出身者を除く未成年の不法入国者は、アメリカ国内の家族または後見人に引き渡される規定になっているからだ。

送還されれば殺されると、アコスタは恐れている。人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが指摘するように、腐敗まみれのホンジュラスの警察は頼りにならない。

一方、ホンジュラス当局は14年以降、身元保護を口実に児童保護団体による送還者の受け入れを禁じている。

アコスタは現在、ICEの施設に収容されている。今年6月の卒業を目指して学校の課題を施設宛てに送ってもらっていたが、卒業はかなわなかった。

今は、いつ送還されるかと不安を募らせる毎日だ。「常に命の危険を感じている。僕の夢は打ち砕かれてしまった」【9月26日 Newsweek】
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不法移民を強制送還するのは当然と言えばそれまでですが、強制送還された結果は・・・・

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中米ホンジュラスの若者ネルソンさんは、麻薬の密売を強要する凶悪な犯罪組織から逃れようと米国に渡った。しかし母親のマリーナさん(46)によれば、本国に強制送還されてから間もなく命を落とした。まだ23歳だった。【前出 9月20日 AFP】
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いわゆる紛争地の難民と似たような境遇にも思えます。

麻薬組織がのさばるのはホンジュラスやメキシコなどの責任であり、アメリカは関係ない・・・とも言えますが、メキシコなどの麻薬組織が存在するのはアメリカという「麻薬消費地」があることが大きな原因です。

アメリカも単に強制送還したり「壁」をつくったりするだけでなく、まずは「麻薬消費」をなんとかすべきですし、供給国と連携した施策も必要になります。その点でも「壁をつくって建設費を払わせる」云々の対決姿勢はまっとうではないように思えます。

もっとも、アメリカが中南米に関与すると、「イラン・コントラ事件」とか、チリ・アジェンデ政権転覆とか、これまではろくな話がありませんが・・・。
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中国  宇宙技術の進展 月の資源利用?

2016-09-25 22:58:19 | 中国

【9月18日 産経ニュース】

いかにも“中国的”なやり方で世界最大の電波望遠鏡
8月6日ブログ“新技術の話題 「道路をまたぐバス」「セックスロボット」「自動運転車」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160806で、中国の「道路をまたぐバス」という、自動車は「バス」の下をくぐりぬけて走る実にユニークで大規模な新交通システムを取り上げました。

“安全性、環境への影響、住民との問題、経済効率等々、いろんなことはあるのでしょうが、(中国経済崩壊の危険性とか、社会が抱える様々な深刻な問題といった話はさておき)こうしたものを作ってしまう中国経済・社会の活力というか、バイタリティーというか、かつて黒四ダムなどに挑戦していた日本社会が失いかけているものを感じます。”【8月6日ブログ】という「中国らしい新技術」の話題として紹介しました。

“何がすごいといって、「現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明だという」という試作品をとにかく作ってしまうところがすごいです。”【同上】と中国のバイタリティーに驚いていたのですが、“中国メディアの取材によると、TEB(「トランジット・エレベーテッド・バス」)は退職した高齢者たちを中心に出資を集め、だまし取る大がかりな詐欺だったことが判明した”【8月28日 しらべぇ】とのことです。(まだ逮捕者が出たという話は聞きませんので、詐欺と確定した訳でもないのでしょうか?)
やっぱりカーブを曲がれない代物では・・・。

「道路をまたぐバス」は“ありゃりゃ・・・”という展開でしたが、下記の巨大電波望遠鏡は国家プロジェクトで完成品です。

【9月25日 時事】

****世界最大の電波望遠鏡=宇宙観測でもリード狙う―中国****
中国が南西部・貴州省の山中に建設していた巨大な球面の電波望遠鏡が完成し、25日に運用が始まった。口径500メートルの大きさは、同種の電波望遠鏡としては世界最大。軍事利用や将来の資源確保も見据え、宇宙開発を加速させる中国にとって、観測面でも世界をリードする狙いがある。
 
貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州の自然のくぼ地を利用して建設された。反射鏡は地面に置かれた皿のような格好。面積はサッカー場約30個分に相当する。
 
中国メディアによると、宇宙観測の障害にならないよう半径5キロに電磁波の「静穏区」が設定され、住民約8000人が域外への移住を余儀なくされた。地元は観光客を誘致しようと、「天文科学文化園」を開設するが、展望台には携帯電話を含め電子機器は持ち込み禁止だ。
 
運用開始に当たり、習近平国家主席は祝賀のメッセージを送り、関係者に対して「世界の科学技術強国建設のため努力し、さらに大きい新たな貢献をするよう希望する」と指示した。【9月25日 時事】 
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“報道によると、この望遠鏡は「天眼」と命名され、構想から二十数年かけて貴州省の山中のくぼ地に完成した。総工費は約12億元(約180億円)。米自治領プエルトリコにあるアレシボ天文台(直径305メートル)を抜き、世界最大となる。137億光年(1光年は約9兆4600億キロ)以上離れた宇宙からの信号も受信できるという。”【9月25日 朝日】とも。

サッカー場約30個分に相当する電波望遠鏡、137億光年以上離れた宇宙からの信号も受信・・・・なんとも“すごい”と言うしかありません。

もっとも、壮大さも中国的なら、“住民約8000人が域外への移住を余儀なくされた”(朝日記事では“約1万人”)7というのも、中国らしいと言うか、中国のような国でないと出来ないとも感じられます。おそらく多くの住民は強制的に立ち退かされたのでしょう。

功罪の二面性がある新技術について、“罪”は切り捨てて、とにかく実現させるというのが中国的発想ですが、そこから得られる“功”も小さくないことも認めない訳にはいかないでしょう。

将来の宇宙ステーション運用に向けて着実に前進
中国の宇宙開発技術に関して言えば、国家プロジェクトとして推進しているだけに、その成果は目覚ましいものがあります。

素人にはよく意味が理解できませんが、先月には「量子暗号通信衛星」なんてものもありました。

****中国「量子暗号通信衛星」打ち上げ 盗聴不可能、世界初****
中国は16日午前1時40分(日本時間同2時40分)、甘粛省の酒泉衛星発射センターからロケット「長征2号丁」を使い、量子暗号通信の運用を目指す実験衛星「墨子号」を打ち上げた。

量子暗号通信は理論上、盗聴が不可能な通信システムとされる。この種の衛星打ち上げは世界で初めて。国営新華社通信などが伝えた。
 
量子暗号通信は、光子(光の粒子)の量子力学的な性質を利用したもので、盗聴を避けながら暗号キーを共有できる通信手段。盗聴されると光子の状態が変化するため、盗聴を感知できるという。
 
墨子号では、衛星−地球間の高速量子暗号通信や広域の量子暗号ネットワークの各実験を進めて量子通信の実用化を目指す。実験が順調に進めば、2030年ごろには宇宙規模での通信網が完成する計画。【8月16日 毎日】
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また、今月15日には、将来の宇宙ステーション運用に向けた無人宇宙実験室「天宮2号」を打ち上げています。

****中国、宇宙実験室「天宮2号」打ち上げに成功****
中国の無人宇宙実験室「天宮2号」が15日夜、内モンゴル自治区の酒泉衛星発射センターから打ち上げられ、予定の軌道に乗ることに成功した。2022年ごろまでに独自の宇宙ステーションを建設する計画の一環。

中国は2011年9月に最初の宇宙実験室「天宮1号」を打ち上げた。「天宮2号」はその後継機で、現地時間15日午後10時(1400GMT、日本時間午後11時)に打ち上げられ、その様子は国営テレビで生放送された。

10月には2人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船「神舟11号」が打ち上げられ、軌道上で「天宮2号」とドッキングする。

宇宙飛行士らは「天宮2号」に1カ月前後滞在し、将来の宇宙ステーション運用に向けたシステムの試験や各種の科学実験などを行う。

中国の宇宙開発計画の当局者は今年4月、2022年の運用開始を目指して、2018年ごろから独自の宇宙ステーションの建設を始める計画を明らかにしている。【9月16日 ロイター】
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この「天宮二号」にも前出の量子配送鍵実験機器が搭載されており、「墨子号」と同様に、地上局と量子暗号通信の実験を行う予定とのことです。

“2022年の運用開始”ということですが、そのころには米航空宇宙局(NASA)がロシアなどと共同で運用している現在の国際宇宙ステーション(ISS)は終了することになっていますので、宇宙ステーションは中国の独壇場となることもあるのでしょうか。

****中国「第2の宇宙ステーション」打ち上げ成功 今後10年間かけ規模拡大の意向****
中国は9月15日、宇宙ステーション「天宮2号」の打ち上げに成功した。4~6週間以内に有人宇宙船「神舟11号」をドッキングさせ、さまざまな科学研究を行う計画だ。

無人宇宙実験室「天宮2号」は、「長征」ロケットで打ち上げられた。今後、2人の宇宙飛行士が搭乗する「神舟11号」を天宮2号にドッキングさせる計画がある。(中略)

宇宙飛行士たちは天宮2号に約1カ月間滞在し、ラボの生命維持システムのテストや科学研究を行う予定だ。中国国営の新華社通信によると、医学、物理学、生物学といった分野の実験のほか、量子鍵伝送、宇宙原子時計、太陽風の研究も行われるという。

中国は、強固な宇宙計画の一環として、今後10年間をかけて(天宮2号を)普通の大きさの宇宙ステーションへと規模を拡大する意向だ。宇宙担当の当局者によれば、その下準備のため、2017年に中国初の無人補給船「天舟1号」を天宮2号に向けて打ち上げる予定だという。

中国が最終的に計画しているモジュール式宇宙ステーションは、重量が約60トンになるとみられる。天宮よりもかなり大きいが、420トンの国際宇宙ステーション(ISS)と比べるとまだ小さめだ。

中国の大型宇宙ステーション打ち上げは、ISSの運用が中止される時期と重なる可能性がある。米航空宇宙局(NASA)とそのパートナーは、2024年までISSの運用を継続すると約束しているが、その後ロシアは独自路線を取る可能性がある。

中国は、ISSに関係する欧州諸国に対して、2020年代半ばに自国の宇宙ステーションを訪問するよう誘いかけている。

中国は米国との協力にも関心を寄せているが、米国議会は、宇宙飛行活動に関して中国との直接協力をNASAに禁じる法案を可決している。【9月18日 産経ニュース】
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外部からドッキングのもようを撮影する小型衛星「伴星2号」によって「天宮2号」と「神舟11号」のドッキングは「記念撮影」されるそうですから、近日中に中国から誇らしげな映像が配信されるでしょう。

月の裏側をめざす目的は「理想の核融合燃料」ヘリウム3独占?】
2013年、月面探査機「嫦娥(じょうが)3号」によって米、旧ソ連に続き3カ国目となる月面着陸に成功した中国には“月の裏側計画”もあります。

****中国が1万年もエネルギー独占!? 次は「月の裏側」探査“世界初の偉業” 恐ろし過ぎる目的****
・・・・さて、今回明らかになった“月の裏側計画”ですが、中国国営新華社通信(2015年9月8日付英語電子版)によると、今回、月の裏側をめざすのは、初の月面着陸を果たした「嫦娥(じょうが)3号」の予備機「嫦娥4号」です。
 
中国の科学技術分野の最高研究機関、中国科学院の月面探査部門に所属する科学者、ツォウ・ヨンリャオ氏が、9月8日に開かれた深宇宙(地球から遠く離れた宇宙)の探査について話し合うフォーラムで、20年までに嫦娥4号を打ち上げると明言。
 
複数の欧米メディアに、中国政府から依頼された専門家が過去1年間にわたり査定調査を実施したと説明したうえで「成功すれば、われわれが月の裏側に到達した世界最初の国になるだろう」と胸を張りました。

「5号」が月の裏側を撮影し帰還、2年後に岩石を採取・・・電波の届かぬ難題、解決めど
この計画については、同じ月面探査部門のチーフ科学者、ウー・ウェイレン氏が今年5月、中国の国営テレビ局、中国中央電視台(CCTV)に対し、月の表面を月面探査車で調べるため、嫦娥4号を月の軌道に送り出すことになるだろうと語っています。
 
実際、中国側の準備は“万全”です。既に2014年10月24日、月から探査機を帰還させるための実験として、嫦娥5号(4号とちゃいますよ!)の試験機「嫦娥5号T1」の打ち上げに成功しました。このT1は月の裏側を回り、翌11月1日、大気圏に再突入し、無事、地球(内モンゴル)に着陸しました。
 
そして中国の英字紙チャイナデイリー(9月3日付電子版)によると、中国政府は、T1が撮影した嫦娥4号の着陸予定地点の鮮明な画像を公開しました。月面から約30キロの地点から撮影したといい、解像度は1メートル級の凄さです。
 
こうした準備を経て、嫦娥4号は月の裏側でさまざまな調査を行いますが、中国ではまず、2017年に嫦娥5号を月面に着陸させ、搭載した探査車を使って月面の地下2メートルの地点の岩石などのサンプルを採取し、それを地球に持ち帰る計画です。
 
これまで各国が月の裏側を調査できなかったのは、地球から見えないうえ、電波が届かず、そちら側の宇宙船と通信ができないからなのですが、どうやら中国はこの難題の解決にもメドをつけたようです。【2015年9月29日 産経WEST】
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地球から見えないうえ、電波が届かず通信ができない月の裏側・・・・という問題は、裏側にいる探査機と地球との間を無線信号で中継するための宇宙船を月の軌道上に送り込むことで解決できるそうです。

「この方法は、米航空宇宙局(NASA)が火星に送った無人探査機「オポチュニティー」や「キュリオシティ」で実現したことと同じで、それほど困難なことではない」「中国の宇宙開発は、月面への着陸も通信衛星の構築も可能であると証明しており、20年までに月の裏側に探査機を送り込むという彼らの目標は間違いなく実現可能である」(豪メルボルンのモナッシュ大学の天文学者、マイケル・ブラウン博士)【同上】

「宇宙プロジェクトは複雑なように見えるが、基本的な概念が確立されてから数十年経っており、決してハイテクなものではない。意欲と資源があれば、多くの国が参加できる」【5月9日 香港アジア・タイムズ】とのことです。

かつて、中国が大型の衛星を打ち上げた際に、東京都知事の石原某老人は「支那のロケット技術など規模が大きいだけで大したことがない。日本の精緻なロケット技術の方がずっと優れている」といった趣旨のことをTVで語っておられ、現実が認識できない老人には困ったものだ・・・と感じた記憶があります。

現在の日本には、宇宙開発といった分野に注ぐ「意欲と資源」はあまりないようです。

中国が並々ならぬ「意欲と資源」を宇宙技術開発に注ぎ込んでいるのは、単に国威発揚や軍事面だけでなく、将来に向けての資源の確保が目的である・・・・という話が以前からあります。

****月に存在する夢の資源・ヘリウム3、中国が独占を画策か―英紙****
2014年8月7日、環球時報(電子版)によると、英紙タイムズは5日、中国が月に存在する夢の資源・ヘリウム3の独占を狙っていると伝えた。

宇宙の初期においてビッグバン原子核合成の結果生まれたヘリウム3は、太陽風によって供給され続けているものの、地表の大気層などの影響で地球上にはごく微量しか存在していない。一方、月には太陽風から供給された数十億年分のヘリウム3が堆積している。

関係者は「ヘリウム3に対する中国の態度は日に日に真剣になってきている」と指摘する。中国の科学者らは月に存在するヘリウム3を核融合などに利用することによって、少なくとも世界全体の1万年分のエネルギーをまかなえると考えている。

中国は経済成長の持続のために大量のエネルギーを必要としているが、多くの都市の汚染は極めて深刻で、石炭採掘や火力発電などに対するさらなる代価を負担しきれなくなっており、代替エネルギーの開発が急務となっている。

台湾淡江大学の博士は最近の論文で「中国は月での採掘活動が全人類にメリットがあると考えている。一方で、競合相手が少ないことから、中国がヘリウム3の独占を狙っているのではと推測する人もいる」と記した。

ノッティンガム大学の未来学者クリストファー・バーナット准教授は、「月でのヘリウム3の採掘活動に関する前途に消極的になりすぎるべきではない。これは誰が投資するかという問題に過ぎない。定期的な選挙による制限を受けず、資金力も豊富な中国は最適な位置にある」と指摘した。

一方、月での採掘活動に疑問を呈する科学者もいる。ロンドン大学マラード宇宙科学研究所の責任者アンドリュー•コーツ氏は、「地球と月の間の輸送方式はまだ完全ではない。核融合炉もまだ実現できていない。ヘリウム3の利用はすばらしいアイデアの1つだと思うが、まだ夢物語の段階だ」と指摘している。【2014年8月12日 Record china】
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ヘリウム3とは“太陽の中の核融合反応で、ヘリウム3ができます。このヘリウム3は、太陽風(太陽から流れてくる粒子の流れ)に乗って、月へ届きます。月には大気がありませんので、ヘリウム3は月の表面の砂(レゴリス)に吸着されます。 月ができてから45億年の間に、太陽からのヘリウム3は月の表面の砂にずっと吸着され続けてきたと考えられています。”【http://moonstation.jp/faq-items/f606】とのことです。

「理想の核融合燃料」とされるヘリウム3ですが、少なくも「現在の技術水準」では困難な問題を伴います。

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ヘリウム3を含むのは、月の砂の中に含まれている鉱物「イルメナイト」です。月の砂には、イルメナイトが約10パーセントほど含まれています。イルメナイトは、粒子の大きさが8〜125マイクロメートルととても細かいため、太陽から月表面に降り注ぐ太陽風に含まれる微粒子を吸収しやすい性質を持っています。

ヘリウム3は、月の砂を600度以上に加熱すれば得られます。しかし、ヘリウム3は月の砂に均等にごくわずかずつ含まれているだけですので、そのためには膨大な砂を処理しなければなりません。

仮に、ヘリウム3を10トン取り出そうとすると、月の砂は100万トンも必要になってしまいます。日本の年間消費電力をまかなうために、月の砂を毎日3000トン近くも処理しなければなりません。

また、いま研究されている核融合に比べて、ヘリウム3の核融合は、必要な温度が高く、技術的にもたいへん難しいとされています。ですから、実用化できるのはもっとずっと先のことになると思います。

このようにヘリウム3によるエネルギーを使えるのは、まだまだ先の話ではあります。しかし私たちが将来月に進出して、月面基地を作る頃になれば、あるいはヘリウム3による核融合発電で、快適な月の生活を送れるようになっているかも知れません。【前出http://moonstation.jp/faq-items/f606
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どの程度本気で中国が月の資源利用を考えているのかは知りません。カーブを曲がれない「道路をまたぐバス」のような話なのか、それでも試作品をつくるバイタリティーが最後には成果をつかむのか・・・。
中国の宇宙技術が着実に前進していることは間違いないでしょう。

中国技術の「品質問題」】
最後に、中国嫌いの人たちのために、中国の技術開発の問題も。

****中国製戦闘機、アフリカで「品質問題」、5年で3分の1が墜落大破****
2016年9月20日、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、中国製戦闘機の品質がアフリカで問題となっていると伝えた。

中国の軍事動向に詳しいカナダの民間研究機関「漢和情報センター」によると、中国は先ごろ南アフリカで行われた航空見本市で、中国が自主開発したL−15練習機と中国がパキスタンと共同開発したFC−1(梟龍)戦闘機の売り込みをかけ、ナイジェリア空軍からFC−1戦闘機の受注を獲得したと一部で報じられていた。だが、同センターの平可夫(ピン・コフ)編集長は、ナイジェリア空軍関係者の話として、この情報を否定した。

同関係者は「中国製J7戦闘機をこの5年間で12機輸入したが、すでに4機が墜落して大破した。今は学校の飛行試験で使用しているだけだ」と話しているという。【9月23日 Record china】
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ロマ差別  欧州を逃れてアメリカへ逃れるロマも増加 東欧諸国の「破られた約束」

2016-09-24 22:09:37 | 欧州情勢

(独ベルリン・ノイケルンの雑貨屋オーナーが店先に貼った「ロマはお断り」・・・・でしょうか。画像は【6月2日 「各国反応 – 気になる海外反応を配信」】 素人の手書きにしては上出来なデザインのようにも見えます)

犯罪関与などの現実が助長する欧州におけるロマ差別
“ロマ(Roma)は、ジプシーと呼ばれてきた集団のうちの主に北インドのロマニ系に由来し中東欧に居住する移動型民族である。移動生活者、放浪者とみなされることが多いが、現代では定住生活をする者も多い。”【ウィキペディア】(厳密には、ジプシーと呼ばれている人々には、ロマ以外の人々も含まれるようです)

日本では「ジプシー」という呼び名が方が一般的ですが、「ジプシー」などの呼称は物乞い、盗人、麻薬の売人などの代名詞のように使われる場合がままあり、「差別用語」のイメージがあるため、ポリティカル・コレクトの観点から現在は「ロマ」の呼称が使われることが多いようです。

呼称を変えたからといって差別がなくなる訳でもありませんが、あからさまな嫌悪感・侮蔑をまき散らすよりはましでしょう。

欧州におけるロマへの根深い差別の問題は、これまでも何回か取り上げてきました。
2013年8月24日ブログ“人権重視の欧州で続くロマ差別  ロマ分断の「壁」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130824
2013年10月24日ブログ“移民・外国人への風当たりが強まる欧州で、相次ぐ被差別民族ロマの話題”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131024
2016年3月4日ブログ“難民・移民問題に揺れる欧州が昔から抱えるもひとつの異民族・異文化問題・・・「ロマ」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160304
2016年7月16日ブログ“ルーマニアの「奴隷村」とロマ差別”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160716

現在、ロマはルーマニア・ブルガリアなど東欧を中心に、西欧にも広く拡散しており、各地で差別の対象となっています。

“欧州連合の行政府・欧州委員会によると、欧州に暮らすロマの人口は推定1000万~1200万人。 欧州評議会の各国別推計によると、ルーマニア185万人、ブルガリア75万人、スペイン72万5000人、ハンガリー70万人、スロバキア49万人、フランス40万人、ギリシャ26万5000人、チェコ22万5000人、イタリア14万人など。”【ウィキペヂア】

欧州でのロマへの差別的感情は、イスラムやユダヤ以上に強いものがあるとか。

ロマが差別される理由として・流れ者の民族で文化が違う。・キリスト教徒ではない。・コーカソイド(白人系)ではない。・個人主義で、決して地域に同化しない。などが挙げられていますが、現実問題として差別されて合法的な暮らしが困難なロマが窃盗などの犯罪や物乞いに関与することが多いことが一般市民の彼らへの感情を更に悪化させているものと思われます。

****ベルリンの雑貨屋でロマ・ジプシーが出禁になる【緑の党は差別と反撃****
独ベルリン・ノイケルンの雑貨屋で連日起こる万引き被害からオーナーが店の入り口に「ロマはお断り」と書いた紙を貼ったことが今物議を醸している。

このオーナーのアクションに独緑の党は怒り爆発。レイシズムだと痛烈批判を行う。

ベルリン・ノイケルンは特に移民が多く住むエリアで 地下鉄構内を歩くと、ドイツ語や英語だけではなく、トルコ語、アラビア語、 東欧言語、ベトナム語などが聞こえてくる、いわゆるマルチカルチュラルなエリアだ。

ノイケルンにあるその雑貨屋は、日々いわゆるシンティ・ロマ人による万引き被害に悩んでいた。警察に通報しても何の解決にもならなかったようだ。

その中オーナーの女性は、シンティ・ロマ人立ち入り禁止の札を店に貼り、ジプシーの立ち入りを防ぎ、問題を解決しようとしたが、この対応が「レイシズム」だとドイツの緑の党を始め、 左翼活動家から大きな批判を集めることになった。

加えて、警察もこの女性オーナーに対して、民衆扇動罪で捜査を始めたようだ。

シンティ・ロマ人による万引き、スリ、物乞いは近年ドイツでは大きな問題になっている。
今回の雑貨屋での万引きの手口は、妊婦のフリをしたロマが来店し、その大きなお腹に商品を詰めていくというもの。その他は、観光地などでアンケート用紙を持って近づき、気を逸らしている間に、 財布や携帯電話を抜き取るという手口だ。

また、2007年にシンティ・ロマ人が多く住むルーマニアとブルガリアがEUに加盟したことにより、多くのシンティ・ロマ人がドイツにやって来た。

また、バルカン半島にも多く住むシンティ・ロマ人は、昨年の難民流入以来どさくさに紛れてドイツにやって来ている。

バルカン半島諸国が安全国として認定されて以来、自動的に強制送還の手続きが進んではいるものの、送還を拒否するシンティ・ロマ人が続出。 多くのシンティ・ロマ人が消えていることも大きな問題になっている。【6月2日 http://kakkokuhannou.com/ドイツ/【万引き地獄】ベルリンの雑貨屋でロマ・ジプシ/】
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もっとも、いったん差別意識が出来上がってしまうと、理由などなくても差別が継続する・・・という面もあります。
そこらあたりは、日本にも残存する同和問題や在日韓国・朝鮮人などへの根深い差別意識を考えればわかります。

差別の欧州を逃れてアメリカへ
ロマの人々は、欧州における差別を逃れるためアメリカに渡るケースも増えているようです。
アメリカが温かく彼らを迎え入れてくれる・・・という訳ではありませんが、少なくとも欧州のようにロマを意識していないだけでも、ロマにとっては暮らしやすいのでしょう。

****ヨーロッパを追われアメリカに逃れるロマの人々****
<アメリカへの亡命を求めるヨーロッパのロマの人々が増加している。EU加盟と引き換えに、ロマの生活環境の改善を約束したルーマニアなどの中欧諸国が、その約束を反故にしたからだ>(写真はルーマニア北部のスラムで暮らすロマの家族)

アメリカの国境警備隊は、メキシコから入国しようとする多様な国籍の人々には慣れきっている。しかしここ数年、ヨーロッパの特殊なグループの人々の難民申請が、わずかではあるが特異的に増えている。

ヨーロッパでナショナリズムや外国人排斥(ゼノフォビア)の風潮が高まるなか、迫害を理由に亡命を求めるルーマニア国籍の少数民族ロマの人々が着実に増加している。今年7月までに既に1800人のルーマニア人が収容された。昨年1年間は400人以下だったので、大幅に増加した。

警官に保護を求める不法入国者
そのほとんどが亡命申請者だ。ヨーロッパでのヘイトクライム(憎悪犯罪)や根強い差別によって、生活上の様々な機会が制限されているというのが理由だ。(中略)

ロマの増加の背景には、ヨーロッパでの長い迫害と放浪の歴史がある。差別的に「ジプシー」と呼ばれることもあるロマの人々は、ヨーロッパ各地に暮らす少数民族だ。

もともとはインドから移民してきたと言われ、何世紀にも渡ってヨーロッパ諸国の政府から、人種隔離、迫害、公民権剥奪、退去処分などの不当な差別を受けてきた。多くの人々がいまだに極度の貧困状態にある。

ロマの人々のアメリカへの移住は、歴史を通じてあったが、20世紀初頭は特に顕著だった。ここ数年の流入は歴史的に見れば僅かだが、ヨーロッパ諸国がロマの人権を守れなかったり、または守ろうとしなかったりしていることに対して、ロマの人々が絶望している兆候だと、ロマ擁護の活動家は指摘する。

「現在、特に西ヨーロッパ諸国では、ロマも移民も歓迎されない。社会環境は敵対的で、暴力事件も起きている」と、米ラトガース大学准教授でヨーロッパ・ロマ人権センター理事長のエセル・ブルックスは話す。ルーマニアの一部の都市では、公共の場所でロマが隔離されているところもあるし、「犬とジプシーは入るべからず」という看板も目にする、と言う。

ロマ擁護の人権活動家ジェリコ・ジョバノビッチによると、つい10年前には、市場経済や民主選挙の広がり、移動の自由の拡大で、偏見も少なくなるだろうと希望的な見通しを持つロマの人々が多かった。

EU統合でなくなるはずだった差別
2003年や2007年ごろ、中欧諸国のEU加盟協議が始まり、ハンガリーやルーマニア、ブルガリアはEU加盟と引き換えに国内法の整備を迫られた。人権擁護を推進すると同時に、新たな人権プログラムを実施して、社会の底辺の劣悪な環境で生活し、物乞いや泥棒を生業としているという偏見があったロマのコミュニティーを、支援して社会へと統合することが求められた。

ジョバノビッチはそれを「破られた約束」だと言った。

「ここ数年で状況は大きく悪化した。東欧諸国もEUに加盟した途端、ロマの生活支援などどうでもよくなってしまった」

当初、EUの基本原則である「人の自由な移動」を好機ととらえた一部のロマ人は、職を求めて西ヨーロッパ諸国への移住を試みた。だが2009年のギリシャ危機に端を発した欧州債務危機やシリア難民の急増、ローンウルフ(一匹狼)型テロリストによるテロ攻撃の脅威からエスカレートした反移民感情など逆風が強まり、少数民族や移民に対する敵意の連鎖が止まらなくなった。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターが行ったここ数年の調査から、欧州各国でロマに対する否定的な見方が国民の過半数を占める実態が明らかになった。2016年にはイタリアやフランス、ドイツといった国々で、ロマを「好意的でない」と答えた人が、イスラム教徒やユダヤ人に対する割合を大きく上回った。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルや人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチなどは、EU各国でロマに対する体系的な差別の実態調査を続けている。

米国務省が公表したルーマニアに関する2015年の人権報告書は、ロマを標的にした差別は「重大な問題」だと指摘。具体的な問題点として、警察による暴行、嫌がらせ、公共の場所でのサービス提供の拒否、子どもの学校の隔離、医療保険制度の不備などを列挙した。

かくいうアメリカも亡命資格を得るのが難しいことで有名だし、そもそもロマはアメリカや国連が定めた規則で難民の認定基準を満たしていない。

ロマがアメリカへの亡命に成功したケースをいくつか見てきたブルックス曰く、「大量の証拠書類を提出しなければならないうえ、認定される確率は低い」。彼女は今後、貧しいが紛争国の出身ではないロマがアメリカで「経済難民」として扱われ、難民認定がさらに難しくなる事態を懸念している。

失われた希望
ジャバノビッチは、ロマ人に経済移民というレッテルを貼るのは間違いだと言った。「彼らは何世紀にもわたりヨーロッパで貧しい生活を送ってきた。一番問題なのは、ロマ人がもはや希望を持てないことだ」

EUにはロマ人の福祉の充実に役立てるために割り当てられた資金があるのに、有効活用されていないことにも言及した。

「2003〜04年にかけて、我々の団体がロマの権利拡大のために複数のプロジェクトを立ち上げたときは、現在と比べて集まった資金こそ少なかったが、政治的な機運は高まっていた。今はその逆で、資金は足りても政治的な盛り上がりに欠けている」

アメリカを目指す理由について、アメリカがよりオープンな国で、ロマであろうと目立つことなく溶け込みやすい印象があるからだと専門家は見ている。ほとんどのアメリカ人はロマが迫害されてきた少数民族であることや、「ジプシー」という言葉が蔑称だということすら知らない。

今年の米大統領選挙を見ても明らかなように、アメリカは国内で人種的なマイノリティをめぐる問題を抱えている。たとえロマ人がアメリカで居住権を得られても、移住する地域や肌の色によっては、人種差別や排外主義に直面せざるを得ないのが現状だ。【9月23日 Newsweek】
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ハンガリーやチェコにおける教育差別
ハンガリーなど東欧諸国は、現在シリアや北アフリカなどからの難民・移民の受け入れを拒んでいますが、その問題以前に果たすべき“宿題”が残っています。

もっとも、その‟宿題”に取り組む意思はさらさらないようです。

****ハンガリー:ロマの分離教育を廃止せよ****
欧州委員会は、ハンガリーのロマの子どもたちに対する教育的差別に対し、正式に対処することを決定した。この決定で、何世代も続く不正義に風穴を開けなければならない。

欧州ロマ権利センターやアムネスティ・インターナショナルなどの人権団体が、同国でロマの子どもたちが教育制度で常に差別や分離を受けてきたことを示すさまざまな事例を欧州委員会に提供した。それを受けての今回の決定だった。

ハンガリーは、欧州委員会の要請に応え、ロマの子どもたちに対する差別を廃止する措置を速やかに取らなければならない。

同委員会は、「ロマの子どもたちへの差別は、もうたくさんだ。これ以上、制度的差別や分離は容認できない」と語った。

公式には条約侵害手続きとよばれる今回の介入は、欧州委員会が、その加盟国が国内法や欧州法を遵守していることを保障するための仕組みだ。

2014年以降、同様の問題でEU(欧州連合)の差別禁止規定に抵触したとして、チェコとスロバキアの2件で適用された。

ハンガリーが欧州委員会の懸念に対応しなければ、本ケースは欧州裁判所に付託され、同国は、金融制裁を科される可能性がある。

この侵害手続きは、ハンガリーのロマの子どもたちが、長年教育的に差別され、その45%が分離教育を受けてきたことを示す事実にもとづいて取られた措置だ。

欧州人権裁判所、ハンガリー国内の裁判所、差別のない待遇局(Equal Treatment Authority)が、「ハンガリーの教育分離は違法である」という判決を下したにもかかわらず、同国は、共学に向けた施策をまったく取らなかった。それどころか、民族差別をさらに助長する教育政策を取とうとしている動きさえあった。

分離による平等などあり得ない。強引な差別は、ロマの子どもたちの未来を否定し、さらに次の世代をも困窮と貧困に陥れる。

ハンガリーは今こそ、教育分離を廃止するために、早急に具体的な措置を取り、ロマの子どもたちが、国内外の人権義務にそった教育の権利を享受できるように保障しなければならない。
アムネスティ国際ニュース 2016年5月26日 【6月 1日 アムネスティ・インターナショナル日本】
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上記記事にもあるチェコの教育差別については、以下のようにも。

****チェコ教育現場での差別****
差別は子どもにも向かう。そしてそれを行政が助長している。ハンガリーで、ルーマニアで、スロバキアで、チェコで、ロマというだけで一般教育からはじき出し、知的障がい者のための学校やロマだけを集めた学校へと追いやっているのだ。(中略)

ロマの子どもたちは公用語のチェコ語が母語でないことも多いが、チェコ政府はサポートを行うどころか、面倒だからと一般の学校への入学を拒否しているのだ。

チェコの人口に占めるロマの人びとの割合は3%に満たない。にも関わらず、軽度の知的障がい者用の学校・学級の子どもたちの30%近くは、ロマの子どもたちだ。明らかに異常な多さだ。

こうした差別はEU法や国際人権法に違反する行為であるが、それがチェコではまかり通っている。

また、たとえ一般の学校への入学を許されたとしても、生徒や教職員たちからいじめや差別的な扱いを受けたりすることもある。

一般レベルの教育を受ける機会を奪われることは、将来の可能性も摘み取られてしまうということだ。そして貧困や疎外から抜け出せない悪循環に陥らされてしまう。

チェコ政府はこういった状況に対し適切な対策をとることを怠ってきた。これは人種差別以外のなにものでもない。【2015年07月24日 アムネスティ・インターナショナル日本】
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差別する側の人間性の問題
先述のようにロマの人々が実際に犯罪や物乞いなど社会秩序を乱すような行為にかかわることが多いという現実はあるにしても、彼らをそのような境遇に追いやっているもは何なのかを考える必要があります。

家を借りることもできず、仕事にもつけず、満足な教育すら受けられない・・・こうした状況にあれば生きていくために犯罪にかかわるのは当然の結果でもあります。

ロマが欧州の歴史に明示的にあらわれるのは15世紀頃からが多いようです。少なくとももそのころから何百年にもわたって続く差別意識を解消することは容易ではありませんが、放置していい問題でもありません。

こういう言い方は建前的な“ポリティカル・コレクトネス”として疎んじられる傾向にもありますが、差別の問題はロマの問題というより、差別する側の人間性の問題です。
日本国内における差別に関しても同様です。

ところで、“寛容”を普遍的価値基準としているという欧州におけるホロコーストやロマ差別などを考えるとき、若い頃にたまたま見かけた五木寛之『風に吹かれて』に書かれた、欧州の「人間扱いしていない区別」とアメリカの「同じ人間としての差別」に関する一節を思い出します。
 
あの文章が真実の一端を指摘したものなのか、あるいは小説家のひねくれた見方にすぎないのか、そこは未だによくわかりませんが。
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グリーンランド  地球温暖化の「恩恵」で、将来的には独立も

2016-09-23 21:02:35 | 環境

(【1月25日 AFP】 厚い氷床が融解し、文字どおりの“グリーンランド”になる日も・・・その時世界は・・・)

世界最大の貯水槽 想定を上回るペースで進むグリーンランド氷床の融解
地球温暖化が人類の生存・生活に及ぼす影響は様々なものがありますが、一番わかりやすいもののひとつが海面上昇とそれにともなう水没する国々・都市でしょう。

この世界を水浸しにしてしまう大量の水の供給源“貯水槽”となっているのがグリーンランドを厚く覆う氷です。

****沈みゆく国あれば、上昇する国あり****
グリーンランド住民の誰のせいでもないが、おそらくモルディヴ諸島は消滅するだろう。ツバル諸島も消滅するだろう。キリバスも、マーシャル諸島も、セーシェル諸島も、バハマ諸島も、カーテレット諸島も。

バングラデシュは少なくとも国土の5分の1を失うだろう。フィリピンのマニラ、エジプトのアレクサンドリア、ナイジェリアのラゴス、パキスタンのカラチ、インドのコルカタ、インドネシアのジャカルタ、セネガルのダカール、ブラジルのリオデジャネイロ、アメリカのマイアミ、ヴェトナムのホーチミンの大半も水没するだろう。

これらの土地を水浸しにするだけの水量が、世界最大の貯水槽であるグリーンランドの氷床(島の81パーセントを覆う内陸部の氷の塊)に貯えられている。

1996年以来、氷床が解ける割合は毎年7パーセントずつ増している。いつの日か完全に解けてしまったら、世界の海面は6メートル以上上昇する。(マッケンジー・ファンク著『地球を「売り物」にする人たち』74-77ページより抜粋)【3月23日 ダイヤモンド社書籍オンライン】
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具体的な数字については誰も正確なところは知りえませんので、様々な研究・報告があります。

“国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した最新の報告書は、この(海面上昇)の数字を約12センチとしている。これはすべて、西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)と呼ばれる比較的狭い区域の融解によるものだ。また、水温上昇に伴う海水の膨張や、氷河やグリーンランドの氷床の融解などを含むあらゆる要因を考慮したとしても、今世紀末までに海面の総上昇値が1メートルを超える可能性は低いとも”【3月31日 AFP】

ただ、グリーンランドの氷床の融解がハイペースで進んでいることが多くの研究で報告されています。

****未来の海面上昇、100センチは不可避 NASA****
地球温暖化による海面上昇についての最新データが示しているのは、今後100~200年間で100センチ以上の上昇が起きるのは避けられないということ──。米航空宇宙局(NASA)の科学者チームが26日、このような発表を行った。(中略)

研究チームは特に、グリーンランド(Greenland)の氷床に注目している。この氷床からは過去10年間にわたって年間平均3030億トンの氷が流出した。また、南極氷床からも年間平均1180億トンの氷が失われている。

だが、氷床の崩壊はこれまで一度も確認されていないため、海面がいつ大幅に上昇するかという問題は大きな謎になっている。(後略)【2015年8月27日 AFP】
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****グリーンランド氷床の融解速度、近年倍増 観測研究****
デンマーク領グリーンランドの氷床では、2003年~2010年の期間に、20世紀全体のペースの2倍の速さで質量が失われたとの研究結果が16日、発表された。氷床の融解は、陸地を浸食する海面上昇の重大な一因となる可能性があるとされている。(中略)

この研究論文にについて、ネイチャー誌の要約記事では「最近観測された、グリーンランド氷床の質量消失量の増加と、その結果として生じた海面上昇の加速は、小氷期以降で初の現象と思われると、論文の執筆者らは説明している」とあり、また「観察される質量消失と海面上昇の全体的傾向は、当分の間継続する可能性が高いことを、論文執筆者らは示唆している」とも記されている。【2015年12月17日 AFP】
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*****グリーンランドの気温が過去最高に、氷床の融解進む****
デンマーク領グリーンランドの気温が今夏、観測史上最高を記録した。デンマーク気象研究所(DMI)が13日、発表した。氷床の一部は例年よりもかなり早い時期に融解を始めており、北極圏の温暖化が続いていることを示す新たな証拠とDMIは述べている。(中略)
 
グリーンランド氷床の融解は海面上昇の大きな潜在的要因。2003~2010年の間だけで、20世紀全体のペースの2倍の速さで氷床の質量が失われている。【9月14日 AFP】
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****グリーンランドの氷床融解、推定より7%速いペース 研究****
デンマーク領グリーンランドの氷床がこれまで考えられていたより約7%速いペースで解けていることが、科学者らが今週発表した研究論文で明らかになった。
 
米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載の論文は、南極に次いで世界で2番目に大きいグリーンランドの氷床融解による、海面上昇への影響増に懸念を示した。(中略)

論文の主著者である米オハイオ州立大学のマイケル・ベビス教授(地球科学)は、7.6%の違いについて、「かなり小さな訂正」と述べる。その上で「グリーンランド全体の推定消失量が大きく変わるわけではない。だが、氷床内で消失が起きてきた場所、今現在消失が起きている場所についてのわれわれの理解により大幅な変更をもたらす」と続けた。(後略)【9月23日 AFP】
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当然ながら融解がハイペースで進むのはグリーンランドだけでなく、南極も同様です。
“温室効果ガスの排出が現在のペースで続くと、南極の氷の融解によって海水面が2100年までに1メートル上昇する可能性があるとする研究結果が(3月)30日、発表された。これは、海面上昇に関するこれまでの予測値の2倍に相当するという。”【3月31日 AFP】

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の予測はかなり“控えめ”で、実際はもっとハイペースでより大きな変動が生じつつあるのでは・・・・という見方・懸念が少なくないようです。

温暖化の「恩恵」で経済成長 将来的には本国から経済的にも自立し、独立も
そうした温暖化で注目を集めているグリーンランドですが、通常目にする地図ではメルカトル図法の関係でおそろしく巨大な島になっていますが、実際は面積2,166千k㎡ということで、オーストラリアの3分の1以下です。
それでも日本の5.7倍ですから、巨大な島であることにはかわりありません。

この島はデンマーク領ですが、住んでいるのは混血も含めてイヌイット系の人々を中心に5~6万人程度のようです。

“全島の約80%以上は氷床と万年雪に覆われる。巨大なフィヨルドが多く、氷の厚さは3,000m以上に達する所もある。居住区は沿岸部に限られる”【ウィキペディア】と、これまでは大きいだけで経済的利用価値はあまりない島でしたが、温暖化で水没する国々・地域とは反対に、今後その利益を最大に享受しそうな島です。

****温暖化を逆手に経済発展めざせ、グリーンランド****
地球温暖化を食い止めようと世界が奮闘を続けるなか、グリーンランド(デンマーク領)では気温や海水温の上昇を新たな漁業や輸出拡大、農業技術の革新につなげようとの動きがある。

■多様化する漁業
北極海と北大西洋の間に位置するグリーンランドでは、輸出の大半を地元で「ピンク・ゴールド」と呼ばれるエビに頼ってきた。だが海水温の上昇に伴い、ほかの種類の魚もとれるようになったのだ。(中略)
 
いまやグリーンランド東部の漁師たちは、夏になれば地中海やメキシコ湾で産卵を終えて北上してきたサバやタイセイヨウクロマグロを水揚げする。
これは、(中略)高齢化を支える歳入増を求めているヌークの自治政府にとっては新たな輸出機会をもたらすものだ。
 
デンマーク技術大学のブライアン・マッケンジー海洋生態学教授は「今世紀も夏の気温上昇が続けば、グリーンランド東部沖では毎夏クロマグロが回遊するようになるだろう」と予測する。(中略)

■温暖化で農業が豊かに
その一方で、氷床の融解がもたらす利点もある。氷で削られてできる「岩粉」はミネラルが豊富で、肥沃な土地に恵まれない国々で農業に役立てることが可能だ。グリーンランドの人々にとっては厄介でしかない岩粉だが、アフリカや南米に輸出すれば岩粉の養分が不毛な土地を豊かな農地に変えてくれる。
 
さらに温暖化はグリーンランドの農業にも恩恵をもたらす。グリーンランド南部では夏季の気温が上がったことでジャガイモの生産量が増え、将来的には輸出を見込んだ生産規模の拡大がのぞめそうだ。(後略)【1月25日 AFP】
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漁業や農業も今後拡大が見込めますが、もっと手っ取り早い“経済的価値”は豊富な地下資源の開発が可能となりつつあることです。

現在は“1979年5月に自治政府が発足し高度な自治権を獲得した。2008年11月、グリーンランドで自治拡大を問う住民投票が行われた。開票の結果、賛成75.54%、反対23.57%で承認された。”【ウィキペディア】と、自治権を有する自治政府が統治していますが、経済的には本国デンマークからの補助金に依存しています。

しかし、地球温暖化の影響で氷が解け出しており、これまで厚い氷に覆われ採掘が困難であった地下資源の採掘のスピードが速まると期待されています。

その“取り分”については本国デンマークと協定があり、将来的な「独立」も視野に入っているようです。

****気候変動の「恩恵」に沸くグリーンランド****
・・・・陸地では氷河が後退して、亜鉛、金、ダイヤモンド、ウランの巨大な鉱床が現れつつあった。

彼らは採掘によって自らを解放するつもりだった。デンマークとの協定では、グリーンランドは最初の1500万ドルの取り分を除いた鉱物資源収入をデンマークと折半することになっている。

収入が増えるにつれ、現在6億5000万ドル交付されているデンマークからの補助金は削減される。最終的には5年から10年、あるいは15年から20年で、温暖化が進んで生産量が増えれば補助金はゼロになり、グリーンランドは晴れて独立を宣言する。【3月23日 ダイヤモンド社書籍オンライン】
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“グリーンランドの地下には中東地域に匹敵する量の原油が存在する”【ウィキペディア】とも。
それら以外にもいろいろ。

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世界大手のアルミニウム・メーカーのアルコアが建設し、島の豊富な川の水を使った水力発電で稼働させる、処理能力が年36万トンの世界最大のアルミニウム精錬所の計画が立てられた。

2隻の船が、デンマーク海峡を横断する高速インターネットケーブルの敷設を終えたばかりだ。これによって、グリーンランドからアイスランドまで、さらには北アメリカまでつながった。

また、安価な電力と高緯度という長所を利用して、サーバーファーム(グーグルやシスコやアマゾン向けのコンピューター・プロセッサーを収めた施設)を設置する計画もあった。「普通こういう施設には大規模な空調が必要です」とミニックは説明した。

解ける氷そのものを利用する計画まであった。水の輸出だ。「グリーンランドの氷床は推定170万立方キロメートルで、世界最大の貯水槽です」と、氷・水資源事務局のウェブサイトは豪語していた。投資家は「200万年の歴史の詰まったボトル!」を売ることができる、と。【同上】
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あれもこれも・・・今後急速にグリーンランドは様変わりしそうな勢いです。
環境保全の問題もあるでしょうが、この勢いは止まらないのでは。

【「パリ協定」からのアメリカの脱退を公約するトランプ候補
グリーンランドほどドラスティックではないにしても、全世界の多くの地域で、これまで利用されてこなかった土地の利用価値が高まったり、あるいは逆に利用できなくなったりという変化が起きるでしょう。大変なことです。

世界中の英知を集めて対応していく必要がありますが、アメリカではトランプ候補が「パリ協定」からの脱退を公約しています。

****パリ協定離脱すれば環境に深刻な影響」 科学界がトランプ氏非難****
温室効果ガスの削減に向けた新たな国際枠組み「パリ協定」からの米国の脱退を公約した米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏を非難する書簡が公開され、これまでに世界各地の科学者400人近くが署名した。書簡は、同氏が当選すれば環境に深刻な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしている。
 
20日にウェブサイト「responsiblescientists.org」に投稿された公開書簡は「(パリ協定から離脱する)『パリグジット』が現実のものとなれば、人間が引き起こす気候変動という地球規模の問題に米国は留意しないという明確なメッセージを送ることになる」と指摘。

「この世界的な枠組みから脱退すれば、地球の気候にとっても米国の国際的な信頼にとっても、長期にわたって厳しい結果がもたらされるだろう」と警告している。
 
書簡には既に世界中の科学者375人の署名が集まっており、世界的に有名な英宇宙物理学者スティーブン・ホーキング氏や、ノーベル物理学賞の受賞者でもあるスティーブン・チュー前米エネルギー長官らも名を連ねている。
 
トランプ氏は、米科学誌サイエンスの出版人から気候変動について見解を問われた際、この分野では「調査すべきことがたくさんある」と述べるにとどめ、代わりに浄水計画や食料増産、マラリアなどの病気撲滅のために資金を拠出する可能性に言及した。
 
一方、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官は「科学は非常に明白だ。気候変動は差し迫った脅威であり、われわれの時代に取り組むべき課題だ。その影響はすでに世界中の家庭で感じられている」と答えている。
 
2015年に仏パリで開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)では、出席した約190か国の首脳らが気候変動は危機であり、解決する必要があるとの認識で一致している。【9月22日 AFP】
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困ったことに、トランプ候補勝利の可能性が次第に大きくなる流れにあります。
当初は“泡沫”と見られていましたが共和党候補者を手中に。どうせクリントン候補には勝てない・・・と言われていましたが、それも怪しくなっています。

エリート科学者が何を言おうが、そうしたエスタブリッシュメントに背を向けるトランプ候補支持者には全く響かないでしょう。

パリ協定からは離脱、「聡明で有能」と評価するプーチン大統領と協調し、東アジアは中国にまかせてアメリカ国内に専念する、世界各地の人権問題などおかまいなし・・・・アメリカ国民が選んだ大統領でアメリカがどうなろうが自業自得ですが、世界まで道連れにされるのは困った話です。
コメント

ベネズエラ  大統領罷免の国民投票を越年し体制延命を画策 マドゥロ政権から距離を置く国際社会

2016-09-22 21:43:35 | ラテンアメリカ

(【9月2日 AFP】)

【「二度と帰ってこれると思うな」との脅迫のもとで、抗議に集結した大群衆
南米・ベネズエラでは反米左派のチャベス路線を継承するマドゥロ大統領のもとで深刻な経済危機が進行しており、食糧・日用品品がスーパーから消えるというモノ不足とインフレーションで市民生活は崩壊の危機に瀕していること、また、野党勢力がマドゥロ大統領の罷免を求める運動を行っているものの、政権側は時間稼ぎで体制延命を狙っていることなどは、これまでも取り上げてきました。
(7月26日ブログ“ベネズエラ  食料配給制度の歪み 迫るデフォルトの危機”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160726など)

9月1日にも、大規模な抗議デモがおこなわれました。

****大統領の退陣求め大規模デモ ベネズエラ、深刻な物不足****
南米ベネズエラの首都カラカスで1日、反米左派のマドゥロ政権の退陣を求める大規模なデモがあった。同国は経済政策の失敗による深刻な物不足や治安悪化に直面している。

参加者は国民投票でマドゥロ大統領の罷免(ひめん)の是非を問うよう求めた。前任の故チャベス前大統領の政権期を通じても最大規模の反政府デモとされ、野党連合の民主統一会議(MUD)は「100万人が集まった」としている。
 
同国では2013年のチャベス氏の死去後、マドゥロ氏が政権を継いだが、無理な価格統制や主要輸出品である原油の価格下落で経済が急速に悪化。商店の前には日常的に行列ができ、病院には薬品がない状態が続いている。昨年12月の総選挙では、野党連合が与党に圧勝。マドゥロ氏は議会と対立を続けてきた。
 
1日のデモでは、国旗を掲げた市民が通りを埋め尽くし、「政府は倒れる」「変革を」と書かれたプラカードを掲げた。報道によると、一部で警察との衝突もあったが、大きな混乱はなかった。国内の他の都市でもデモが行われた。
 
憲法の規定で、国民投票が来年1月10日以降になった場合、マドゥロ氏が罷免されても副大統領が政権を継承する。野党勢力は年内の実施を強く求めるが、マドゥロ氏は「年内の国民投票はない」としている。
 
カラカスの別の場所では1日、大統領支持派のデモもあった。駆けつけたマドゥロ氏は「反政府派のデモは3万5千人を超えない。クーデターの企ては制圧された」と語った。【9月3日 朝日】
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「反政府派のデモは3万5千人を超えない」(マドゥロ大統領)とのことですが、広い通りを人々が埋め尽くす写真を見る限りそんなものではなさそうです。

100万人かどうかはともかく、この大群衆は決して“気楽な抗議”で集まった訳ではなく、「木曜にデモに行くつもりの人は二度と帰ってこれると思うな」と脅迫する政権側の厳しい弾圧のもとで集結した人々です。

また、従来チャベス流の政治を支持してきた人々の間でも政権批判が高まっていることを窺わせるものでした。

****神父からインディオスまで ベネズエラ9.1大規模デモの参加者たち****
・・・・Toma de Caracas(カラカス奪取)のスローガンの元に、多くの人が地方からもカラカスに集まりました。

特に、話題になったのが、レニン・バスティダス神父のカラカス巡礼。
この若い神父はベネズエラの危機的状況を憂い人々に呼びかけ、政府に抗議するためアンソアテギ州のエルティグレからカラカスへ徒歩で巡礼を行いました。熱心なカトリック信者の多いベネズエラでは、神父の巡礼は大きな反響を呼びました。

当初、神父は9月1日の野党派の抗議には反対を表明しており平和を求めると発言していましたが、最終的に、9月1日の平和的なデモに神父自身も参加しました。

そしてインディオスの人々の参加。
チャベス政権下ではインディオスの権利の尊重は常に重要なテーマでした。そのために憲法も変わりましたが、結局のところ憲法上の文面が変わっただけで、実際には経済悪化などの影響をもろに受け、何かと苦しい生活を強いられてきたのがインディオスの人々です。

以前は熱心にチャベスを支持した彼らがカラカスまで徒歩で出向きマドゥロに抗議する姿は、まさに時代の変化を象徴するものでした。

デモ直前の政治的指導者、政治活動家の逮捕
デモ当日が近づくにつれ、政府当局は突如、大胆な弾圧行為に出ます。野党政治家および野党支持者の逮捕、拘束です。(中略)

続いては、2007年の反政府派学生運動の中心的人物で、ここ数年スペインに亡命していたジョン・ゴイコチェアがSEBINにより逮捕(というより実質的な誘拐)されます。(中略)

このようにレオポルド・ロペス率いる「民衆の意志」党員に対する弾圧はエスカレートしており、これまでのチャベス主義政権にはないキューバのような独裁的やり方に、野党派側には動揺が広がりました。
 
締め出される外国メディア
さらに、今回のデモに合わせて海外から取材に来た取材陣が次々と入国を拒否されました。アルジャジーラのクルー、続いてコロンビアのラジオCaracol、アメリカのナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)、フランスの新聞ル・モンドの記者が「入国不適格者」とされ、追い返されたのです。(中略)

デモ参加者に対する脅し
9月1日を控え、防衛省は当日のドローンによる写真撮影を禁止、内務省は暴動鎮圧のための武器の使用許可を発表しました。

政府高官のディオスダド・カベジョはジョン・ゴイコチェアに対する告発に続き、野党メンバーがUCAB(カトリカ・アンドレス・ベジョ大学)に武器を隠し持ちクーデターを起こそうしていると非難、これに対して断固とした姿勢で対処するとの見解を示しました。

内務大臣ネストル・レベロルは「抗議は条件付きの権利であって、絶対的な権利ではない」と発言、カラカス首都区の市長ホルヘ・ロドリゲスは執拗に野党派がクーデターを企画していることを主張、首都区長ダニエル・アポンテは「混乱を起こす集団は治安部隊に鎮圧される」と発言、CLAP(食料配給制度)の代表フレディ・ベルナルは「木曜にデモに行くつもりの人は二度と帰ってこれると思うな」とデモ参加者を脅しました。

このように、ベネズエラ政府高官は「デモに参加する奴は有無を言わせず弾圧するぞ」というメッセージを発信していました。この挑発ともとれるメッセージを見るに、政府当局は反政府派との激しい衝突を望んでいるかのようでした。

急激に独裁色を強めた政府の動きから、ベネズエラ政府にとって9月1日の大規模な抗議運動がどれほど大きな脅威であるかは明らかで、9月1日当日は政府当局によるひどい弾圧が起きるだろうという懸念が高まっていました。(中略)

そんな中、多くのベネズエラ人が「今度のデモは今までとは違う」と肌で感じ、その今までとは違う空気に希望を見出していたのです。(中略)

当日の朝は、デモに参加するために多くの人がカラカスの外からも集まりました。そのため、当局はカラカスに入る道路が次々と封鎖し、抗議に向かう人々が軍などにより足止めをくらいました。それでも、最終的には多くの人が封鎖を乗り越え、徒歩でカラカス入りしました。(中略)

結果的に、これだけの規模のデモにも関わらず、懸念されていた暴力的な衝突や弾圧は見られませんでした。(中略)

ビジャロサでのカセロラソ
さらにデモ以上にベネズエラ中を驚かせ、マドゥロ政府を震撼させたのが、デモの翌日に起きたこの事件。マルガリータ島のビジャロサで、住民が鍋叩きの抗議でマドゥロを追い立て、罵倒を浴びせるビデオの流出です。ビジャロサは従来熱心なチャベス主義者の集まる地域として知られていました。(中略)

9月1日の抗議運動とは何だったのか
今回のデモで明らかになったのは、何よりも圧倒的な数のマドゥロに反対する人々の存在と、以前では考えられないほどに数の減った政府支持者のコントラストです。これはチャベスが政権を取って以来初めてのことでした。

このデモが大統領罷免に続くものであることは前回説明しました。これに加えて、9月1日のデモとビジャロサでの抗議で注目すべきは、ベネズエラ国民全体がマドゥロに退陣を迫る方向に動きつつあるという点です。

これまでの17年間、ベネズエラの政治は常にチャベス主義者(政府派)と野党派(反政府派)の根深い対立を中心に語られてきました。しかし、この与野党の対立という構図に変化が見られ始めています。今なお熱心にチャベスを信奉している人々も、マドゥロ政権に退陣を迫り抗議の声をあげています。

長年、野党派内ではチャベス主義者を自分たちの陣営に取り込まない限り政権奪取は不可能だと言われてきましたが、今回のデモでは、それがいまだかつてないほど現実的に感じられました。【9月16日 野田 香奈子氏 Newsweek】
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しかし、大統領罷免を求める国民投票が来年(1月10日以降)にずれこむと、仮に罷免が成立してしても、大統領が辞めて副大統領に代るだけで体制には変化は生じません。

政権側は、すでに不人気なマドゥロ大統領を見限り、越年の国民投票でガス抜きを行い、体制内の首のすげ替えですまそう・・・という考えと見られています。

大統領罷免については、憲法に規定された、あるいは根拠不明の、何重ものハードルが課せられています。

*****ベネズエラ9月1日大規模デモの意味するもの****
・・・・このデモは単に人が集まったということ以上に、政治的にはテクニカルな意味をもつかなり重要なデモでした。

 1. ベネズエラの憲法では、大統領の任期6年の後半期に罷免が可能である。ただし、任期4年を全うすると大統領が罷免されても新たな大統領選挙は行われず、副大統領が政権を継ぐ。

 2. ベネズエラの憲法では、大統領の罷免には、国民投票で賛成多数になるだけではなく、その賛成票が大統領に当選したときの得票数を上回る必要がある。

 3.  大統領罷免の国民投票の実施には、国民の20%が「罷免のための国民投票を求める」という意志を示した署名が必要である。

 4. ベネズエラの選管CNEはこの手続きを妨害するため、新たに「罷免を求める国民投票実施の手続きを始めるためには、各州の1%の署名が必要」という新たなルールを作った。

 ちなみに、CNEはこの時点で署名に必要な所定の用紙の準備をしぶっており、「署名用の用紙をくれ」というデモも起きていました。

 5. このルールを受け、野党派は当初の各州1%を大幅に超える数の署名を集めた。ところがCNEは、次は指紋認証による署名の本人確認が必要だと発表。

 そそもこのような手続きは憲法に記されておらず、すべてが罷免を遅らせるためのでっち上げだと言われています。

 6. この指紋認証の機械が人里離れた場所(ジャングルの中など)に設置される、カラカスの中心部には設置されないなどの妨害行為もあったが、野党はこの本人確認の難関もクリアした。

 7. これを受け、CNEはついに国民投票がどのように進むかの日程を発表した。ただし、この日程ではマドゥロの罷免は実現しても、政権交代に至らないことが明らかになった。
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こうした政権側の“国民投票潰し”“時間稼ぎ”に対し 9月1日のデモの直接的な目的は、上記2.の国民投票の実施を求める署名集めのゴーサインを選管CNEにすぐにでも出させることにあったとのことです。

“この20%の署名集めの段階で、野党が20%(390万票)を大幅に超える署名、つまりマドゥロが大統領が当選したときの得票数(750万票)を超える署名を集めることができれば、この署名集めは実質的な国民投票の意味を持つからです。こうなると、いくら独裁的な政権とはいえ、マドゥロ政府は政権を維持することはできないと見られています。【同上】”

選管「来年1〜3月期の中頃になる」 政治混乱に拍車
こうした国民の国民投票を求める動きにもかかわらず、政権側は予想されたように年内実施を拒否する方針を示しています。

****国民投票、年内に実施せず=民主的な政権交代困難に―ベネズエラ****
ベネズエラの投票管理当局は21日、マドゥロ大統領の罷免を問う国民投票について、手続きが順調に進んでも実施は「来年1〜3月期の中頃になる」との見通しを示した。野党が求める年内実施は実現せず、民主的な政権交代は困難な情勢となった。
 
投票手続きを急ぐよう求め、デモを繰り返してきた野党の反発は必至。政治混乱に拍車が掛かる可能性もある。【9月22日 時事】
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予想された対応ではありますが、極めて遺憾な流れです。
国民は、政権側のこのような姑息な首のすげ替えだけの体制延命を受け入れなければならないのか・・・・。

そうした延命策に反発した、より過激な抗議行動の可能性もあります。
ただ、政権側は流血も厭わない徹底した弾圧で応じるでしょう。政権の意を受ける民兵組織もあると聞いています。

政治混乱が拡大した場合、軍の動向がカギとなりますが、軍は大半が故チャベス氏に忠実な人物で占められているようです。ただ、軍出身ではないマドゥロ大統領にどこまで忠誠を尽くすか・・・。

距離を置き始めた身内南米、非同盟諸国、そして頼みの中国も
なお、国際社会のマドゥロ大統領への対応も厳しさを増しています。
身内の南米でも孤立化が進んでいます。

****メルコスル加盟国がベネズエラに最終通告、要件順守を要求**** 
南米南部共同市場(メルコスル)の創設国は、ベネズエラが12月1日までに加盟要件を満たさなかった場合、同国の加盟を停止する。ブラジル外務省が13日、明らかにした。

ブラジル外務省は声明で、この決定は、「メルコスルの保全と強化」を目指したものだと述べた。

この最終通告により、ベネズエラはさらに孤立する恐れがある。

ベネズエラは、メルコスルの持ち回り議長国をめぐる争いの中心。議長は半年ごとの持ち回りで、7月からはベネズエラの予定だったが、ウルグアイ以外の全ての加盟国は6月、共同の経済同意や人権保護に関する責務を果たしていないとして、ベネズエラの議長国就任を阻止した。(中略)【9月14日 ロイター】
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17日の非同盟諸国会議も閑散としたものになったようです。各国がベネズエラと距離を置くようになっています。

****首脳の出席わずか、非同盟会議 ベネズエラ政権と距離****
ベネズエラ北部沖合のマルガリタ島で17日、非同盟諸国会議の第17回首脳会議が開幕した。現地からの報道によると、首脳級の出席は約15人にとどまっており、反米左翼マドゥロ大統領罷免のための国民投票を巡って政治的緊張が高まる中、各国がベネズエラの政権と距離を置く姿勢を示したとみられる。

ロイター通信によると、前回2012年のイランでの首脳会議には首脳級約35人が出席しており、今回、国際的な認知をアピールしようとしたマドゥロ政権の思惑は外れた形だ。(後略)【9月18日 共同】
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更に、資金繰りに苦しむベネズエラにとってデフォルトを避けるうえで頼みの綱ともなっている中国も、距離を置き始めたようです。

****中国、肩入れしてきたベネズエラとの関係再考か***
社会・経済情勢や治安面の悪化が背景

中国は過去10年、ベネズエラと戦略的同盟関係を築くことに多くを費やしてきた。世界最大の石油埋蔵量を持つと言われているベネズエラは、毛沢東を称賛していた社会主義者の故ウゴ・チャベス前大統領が率いていた国だ。チャベス氏は中南米に対する米国の影響力に対抗するのが望みだった。
 
中国はベネズエラに対し、約600億ドル(約6兆円)を融資している。だがここ最近は未払いの請求書が積み重なっているうえ、ベネズエラ国内の中国人や中国企業に安全面で頭の痛い問題が増えていることもあり、関係を見直しつつあるように見える。
 
その結果、ベネズエラは中国からの大きな新規投融資を得られない可能性が出てきた。そうなれば、ベネズエラは1100億ドルを超える国債や国営石油企業の社債がデフォルト(債務不履行)に陥る公算が強まる。(中略)

関係者によると、中国からの融資額600億ドルのうち約200億ドルが未返済であり、中国当局はベネズエラ国内の腐敗や開発基金の不正流用を懸念している。

ベネズエラでは食料を巡る暴動や犯罪行為が横行するなど、社会情勢が急激に悪化しつつある。そうした中、中国は次期政権を担う可能性の高い野党から、ベネズエラへの融資が適切に扱われる保証を要求している。(後略)【9月12日 WSJ】
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すでに中国企業は安全面を考慮して従業員をコロンビアやパナマに移動させているとも、また、野党議員が北京に招かれ意見交換を行っているとも。

中国としても先の見えたマドゥロ政権に資金をつぎ込むいわれはないでしょう。中国に見限られるとベネズエラはデフォルトの危機が現実のものになります。

そのとき国内が更に混乱し、どうなるのか・・・?
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「難民サミット」でオバマ氏「人間性が問われている」 「棲み分け」を主張するアイデンティタリアン

2016-09-21 22:12:33 | 難民・移民

(「難民に関するリーダーズ・サミット」で演説するオバマ米大統領 【9月21日 毎日】)

【「反省」を強いられたメルケル首相
欧州を目指す難民・移民の状況は好転していません。

****地中海経由の難民30万人に=死者数は最悪ペース―欧州****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は20日、中東やアフリカから地中海を渡って欧州に入った難民らが年初からこれまでに、30万人を超えたと発表した。昨年は9月末時点で約52万人に達しており、流入の勢いは鈍化している。
 
イタリアには、昨年9月末とほぼ同数の約13万人が入った。ギリシャには約16万6000人が到着したが、欧州連合(EU)と経由地トルコの対策により、昨年9月末時点の半分以下に抑えられている。
 
ただ、地中海での死者・行方不明者は今年既に3211人に上り、昨年を上回るペースで増えている。UNHCR報道官は「今年は死者数で過去最悪の年になりそうだ」と語った。【9月20日 時事】
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欧州各国への受入が進まないなかで、留め置かれた難民らの情勢にも不穏なものが生じます。

****ギリシャで難民ら衝突、キャンプに放火 4千人避難****
ギリシャ東部レスボス島のモリア難民キャンプで19日夜、火災があり、多くのテントが焼失した。滞在する難民・移民ら約4千人が避難したが、負傷者は報告されていない。AFP通信などが伝えた。
 
アテネ通信によると、同キャンプでは19日夕、難民らのグループ間の衝突があり、何人かがキャンプに放火する騒ぎがあった。その前には、難民らのトルコへの送還が大規模に行われるとのうわさがたち、デモ行進のために島中心部へ向かおうとした人たちが警察に阻止されたという。
 
欧州連合(EU)とトルコは3月、トルコからギリシャに密航した難民・移民を原則トルコへ送還することで合意。ギリシャ東部の島々には難民申請を希望する人や、審査で受理しないと決まった人ら約1万3500人が留め置かれている。住民らとの摩擦も顕在化しており、レスボス島では19日、地元住民ら約500人がキャンプの撤去などを求めて抗議デモを行った。【9月20日 朝日】
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しかし、政治状況は難民らにとって厳しい方向に向かっています。

これまで難民受け入れを進めてきたドイツ・メルケル首相も、相次ぐテロ事件などで難民受け入れへの批判が強まる国民世論、その結果としての4日のクレンブルク・フォアポンメルン州議会選に続く18日の首都ベルリン特別市での与党敗北という政治状況を受けて、「時計の針戻したい」と難民政策への“反省・自己批判”を迫られるところともなっています。

「メルケル氏は実質的に難民歓迎の旗を降ろし、厳格政策にかじを切っている。だが、保守層が求めているのは難民を無制限に受け入れた政治判断についての謝罪だ」【マインツ大のユルゲン・ファルター教授(政治学)9月19日 毎日】という政治的雰囲気もあってのことでしょう。

****難民対応で問題認める=「時計の針戻したい」―独首相****
18日のベルリン市議会選挙で「反難民」を掲げる新興右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進し、国政与党が大きく後退した結果を受け、ドイツのメルケル首相は19日の記者会見で、中東などからの難民受け入れ対応に問題があったことを認めた。
 
難民への寛容姿勢を貫く首相の方針には、国民の不満が根強い。首相としては、こうした世論に配慮することで、来秋の連邦議会(下院)選までに国民の反発を和らげたい考えとみられる。
 
首相は会見で、昨年殺到した難民の問題を十分に管理できない時期があったとし、「あの状況の再来は、私を含め誰も望んでいない」と強調。「できることなら時計の針を何年も戻し、政府全体で備えをしっかりし直したいくらいだ」と率直に語った。
 
難民受け入れの決意を込めて首相が昨年用いた「われわれは成し遂げられる」というスローガンについても、「ほとんど空虚な決まり文句」になってしまったと指摘。今後は使用を控える考えを改めて示した。
 
ただ、人道的見地から難民に国境を開いた判断自体は「完全に正しかった」と明言。連立与党の一部から出ている受け入れ上限設定要求をのまない立場も崩しておらず、今回の「反省」が首相と与党の人気回復にどの程度つながるかは不透明だ。【9月20日 時事】 
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国境を開いた判断自体は「完全に正しかった」が、「準備不足だった昨夏以降の出来事をやり直したい」というもののようです。

【“及び腰”の各国のなかで、オバマ大統領「私たちの人間性が問われている」】
こうした状況で、シリアなど内戦や紛争が続く国から逃れた難民への支援について各国の首脳が話し合うサミットが、国連総会にあわせて開かれました。

具体的には、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が19日に国連本部で主催した「難民・移民に関する国連サミット」と、翌20日にバラク・オバマ米大統領の呼びかけで開催された「難民に関するリーダーズ・サミット」です。

19日の難民・移民に関する国連サミット」については、メルケル首相は欠席したとのこと。18日の苦戦が予想されていたベルリン市議選で国を離れられなかったようです。

難民受け入れの旗振り役だったメルケル首相が難民サミットの出席できないというのも、現在の政治状況を象徴しているように思われます。

難民対応という難題に対する各国の対応も“及び腰”が目立ち、合意についても「役に立たない取り決めだ」(アムネスティ・インターナショナル)との批判も

****難民受け入れ、及び腰サミット シリア周辺国、悲鳴 @国連本部****
シリアなどの難民問題を協議する国連サミットが19日、米ニューヨークの国連本部で開かれた。シリアの周辺国から、難民受け入れの分担を求める声が上がったが、国際社会の「及び腰」ぶりが目立った。

米国とロシアが主導したシリアの停戦合意も崩壊の危機に陥っており、問題を解決する糸口は見つからないままだ。
 
今年の国連総会では、難民問題が最大のテーマの一つに掲げられた。紛争などで家を追われた人は世界で6500万人超で第2次世界大戦後で最大。難民は2100万人超、特にシリアは約480万人となった。
 
150カ国が参加したサミットで、国際社会で難民を受け入れる機運を高め、各国が受け入れや費用などの負担を引き上げることを狙った。
 
サミットでは、隣接するシリアなどから100万人以上の難民を抱えるレバノンのサラーム首相が「この状況を続けることはできない。国家崩壊の危険を冒している」と訴えた。
 
シリアで内紛が始まった2011年以降に急増。首相は、これまでに10万人のシリア難民の子が国内で生まれたことを挙げて「他国が受け入れている難民数よりも多い。レバノンだけでは不可能だ」と述べ、各国に難民の受け入れ負担を増やすよう求めた。
 
250万人超もの難民を受け入れてきたトルコも、120億ドル(約1兆2千億円)を出費したとし、国際社会で負担を分担する必要性を訴えた。

 ■メルケル氏は欠席
しかし、サミットの目的は成し遂げられたとは言えない状況だ。大幅に受け入れを増やす表明は多くなかった。背景には、欧州などで昨年から過激派によるテロが相次いだことで、難民とテロを結びつける風潮が高まったことがある。難民受け入れに反対する政党が各国で伸長している。
 
難民受け入れの旗振り役だったドイツのメルケル首相も欠席した。難民政策への反発が強まり、今月4日の州議会選で新興右翼政党に敗北。18日のベルリン市議会選でも苦戦が予想されたため、今回はドイツに残ったとみられる。地元メディアは「世界政治に没頭するより、ドイツで自らの政策を説明するほうが大事だった」と指摘した。

 ■日本、資金は出すが
サミットに出席した安倍晋三首相は「日本は主導的役割を果たす」と演説し、今後3年間で28億ドル(約2800億円)規模の人道支援を行う考えを表明した。
 
ただ、難民受け入れの負担についての言及はなかった。日本の難民受け入れは低調で、国会でも議論になっていない。今年上半期をみると、難民認定申請者は5011人で、認定は4人だけだ。
 
外務省幹部は「難民受け入れだけが貢献ではない。シリア難民は経済的苦境にあり、日本の地道な支援は評価されている」と話す。
 
サミットは「ニューヨーク宣言」を採択して終わった。受け入れや支援について「責任の公平な分担」を明記したが、法的な拘束力はなく、具体的な数値に乏しい内容にとどまった。
 
国際的NGOのアムネスティ・インターナショナルは「役に立たない取り決めだ」と厳しく批判。サミットの開催は、かえって各国の「及び腰」が浮き彫りになる結果となった。(【9月21日 朝日】
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“難民とテロを結びつける風潮が高まったことがある。難民受け入れに反対する政党が各国で伸長している”ことから「及び腰」が目立つ状況で、メルケル首相に代って難民保護の姿勢を強く主張したのがアメリカのオバマ大統領でした。

****難民危機「人間性問われる」=支援4500億円超増額―米大統領****
オバマ米大統領は20日、国連でメルケル・ドイツ首相らと「難民サミット」を開催した。大統領は国際社会を揺るがす難民危機への対応について「私たちの人間性が問われている」と強調し、支援と協力を訴えた。
 
オバマ氏は冒頭、「もしイスラム教徒だからという理由で難民を拒否すれば、米国がイスラム教と対立しているというテロリストのプロパガンダを補強することになる」と指摘。難民の受け入れは「私たちを強くする」と主張した。
 
世界の避難民は推定6500万人以上で、このうち2100万人以上が国外に流出している。
 
難民サミットは、難民へのさらなる人道支援や、難民の子供らが避難先で学校に通えるよう取り組むことなどを申し合わせた共同声明を発表。サミット参加各国は、年内に計36万人以上の難民を受け入れ、人道支援を計45億ドル(約4570億円)増額することを確認した。
 
サミットにはこのほか、安倍晋三首相ら50以上の国・国際機関の代表が参加した。【9月21日 時事】 
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****<難民サミット>援助45億ドル増額表明 米大統領支援訴え****
・・・・オバマ大統領は、シリアで空爆後に救出され救急車の椅子に座る男児(5)の映像を見たニューヨークの6歳児から「僕たちが彼の家族になってあげます」と書かれた手紙を受け取った経験を紹介し、「我々はこの幼い子供が見せた『人間性』から学ぶべきだ」と述べ、難民支援の拡充を訴えた。
 
また、「政治家は権力のはしごを上りつめ、権力を維持し、世論の支持を得ることばかりに時間を費やしている」と指摘。「幼い子を助けようという気持ちだけで十分、支援する理由になるということを忘れがちだ」と述べた。(後略)【9月21日 毎日】
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個人的には「私たちの人間性が問われている」というオバマ大統領に同意します。
ただ、現在の政治状況でこうした発言をするのは勇気のいることです。

私のブログのようなつまらないものでも、難民保護を訴える考えなどを取り上げるときは、「おそらく、大方は“欧州の現実を見ろ!ボケ!”といった類の反応だろうな・・・」と、気が重くなることも。

いまや、欧州の右翼勢力、アメリカのトランプ氏など、外国人、特にイスラム教徒への露骨な嫌悪感を公にすることが“当たり前”の風潮となり、テロへの不安を感じる人々は、かねてからの既成政治への不満と共鳴して、そうした風潮に雪崩を打って突き進んでいます。

オバマ大統領の場合、任期切れを控えての“レガシー”づくり云々や、トランプ候補への批判などもあるのでしょうが、基本的にはこの人の“信条”なのでしょう。

今ではこうした人間性云々を発言するのは、ローマ法王とオバマ大統領ぐらいです。その意味では、政治的功績は別にして、“稀有”な存在とも言えます。

20日の国連総会では絶対的指導者や大衆迎合主義者らを痛烈に批判、「未来が好むのは強い人物だという人もいる。だが私はこの考え方は間違っていると思う」「歴史を振り返れば、力に訴える者らには2つの道筋しか残らないことが分かる。一方は永久弾圧で、これは自国内で衝突をもたらす。もう一方は国外の敵への責任転嫁で、戦争を引き起こしかねない」とも。【9月21日 AFPより】

【「棲み分け」を主張するアイデンティタリアンとしてのオルタナ右翼
一方で、トランプ氏に象徴されるような、もはや“主流”ともなりつつある右翼・保守思想、及び「アイデンティタリアニズム」については以下のようにも。(トランプ氏は、ニューヨークの爆発事件で、クリントン氏に追いついたのではないでしょうか)

****レイシズム2.0としての「アイデンティタリアニズム****
<オルタナ右翼(alt-right)と呼ばれるもう一つの右翼・保守思想が注目を集めているが、その考えを理解する鍵となるのが、ヨーロッパでも広がる「アイデンティタリアニズム」という動きだ>

オルタナ右翼を理解する鍵となる「アイデンティタリアニズム」
しばらく前、「はっきり呼ぼう、alt-right(オルタナ右翼)はまごうことなきレイシストだと」という記事がRolling Stoneのウェブサイトに掲載された。

確かに、オルタナ右翼の言動にはいわゆるレイシスト的要素が色濃く感じられる。その一方で、少なからぬ数のオルタナ右翼が、自分たちはレイシストではないと主張してもいるのである。もちろん単なる詭弁、言い逃れという面もあるのだが、彼らの言い分を少し追ってみたい。

理解する上で鍵となるのは、「アイデンティタリアニズム」という思想ではないかと私は思う。オルタナ右翼の代表的な論客の一人であり、「alt-right」という語を考案したとされるリチャード・B・スペンサーは、自身をアイデンティタリアンだと規定している。(中略)

アイデンティタリアニズムは、ようはアイデンティティ至上主義なのである。ここで言うアイデンティティとは、ある集団が持つ文化や慣習、価値観を意味するようだ。スペンサーのようなアメリカの白人にとっては、それは西洋的な文化や慣習、価値観ということになろう。

アイデンティティの問題が、経済的メリットや外交的配慮等に優先する、というのがアイデンティタリアニズムの基本的な主張ということになる。

アイデンティタリアニズムは、人種を問題にしているわけではない
(狭い意味での)レイシズムは、レイス、すなわち人種に基づく差別だった。例えばアメリカでは、黒人種や黄色人種といった白人種以外の人種を劣等人種と見なして差別したし、ナチス・ドイツはユダヤ人を、ユダヤ人という人種であるがゆえに虐殺した。

しかし、アイデンティタリアニズムは、一義的には人種を問題にしているわけではない。例えばアメリカでなら、黒人やユダヤ人、あるいは日本人が、西洋的な価値観を受け入れて西洋風に暮らせばそれでよい、ということになる(中略)。西洋的価値観といっても別に大した話ではなく、良き隣人として仲良く暮らしてください、という程度の意味だ。

一方で、なかなか移住先に同化しない移民はもちろん、例えば人種的には白人であっても、イスラム国に洗脳されてアメリカに帰国後テロをやるような手合いは、価値観を共有していないので差別の対象となるわけだ。これが、アイデンティタリアンが自分たちはレイシストではないと主張する根拠である。レイスではない、問題はアイデンティティなのだ、と。

とはいっても、世の中には価値観が合わない、アイデンティティが異なる集団が多くある。昔なら、あるいは白人/西洋至上主義の立場に立つなら、そういう集団は劣っているのだから征服して教化しようとでもいう話になったのだろうが、さすがに現代に生きるアイデンティタリアンはそこまでは言えない。

彼らが主張するのは、棲み分け(enclave)である。同じアイデンティティを持つ集団は、わざわざ他と混ざらずに、それぞれが元々住む地域で棲み分ければよいではないか、という話だ。

これは、単純な移民排斥の論理ではない。自分の価値観、例えば宗教的規範に固執したいなら自分の国(あるいは地域)にいろ、勝手にしろ、こっちへ来るな、さもなくば歓迎しますよ、ということなのだ。(中略)

このようなアイデンティタリアニズムが支持を得る背景には、例えばアメリカにおいては移民が増えて、白人とその文化がマイノリティになり、社会が荒廃しつつあるという現状認識がある。(中略)

ヨーロッパで広がるアイデンティタリアニズム
しかし、多文化共生の理想は麗しいものの、実際にはきれいごとばかりでは済まないのもまた事実である。少なくとも、それによって割を食う人々というのは相当数いるのだ。

そこには目をつぶり、市井の人々が抱いた素朴な違和感を(SJW流に)抑圧したのが、こうした人々をオルタナ右翼へ追いやり、その伸張を許した原因の一つだと私は思う。(後略)【9月12日 八田真行氏 Newsweek】
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アメリカは不思議な社会で、こうした「レイシズム2.0」的な考えが広がる一方で、対人関係において相手の人種・性別・宗教などに十分に配慮することを指す「ポリティカルコレクトネス」が(日本的感覚では“過度に”)重視される社会でもあります。

前出八田氏は“オルタナ右翼ことalt-rightに統一されたイデオロギーは存在しない。移民反対など、個々の政策でだいたい方向性が一致しているものはいくつかあるが、むしろ彼らが共有しているのは、ある種の「気分」のようなものだと思う。その気分とはようするに、「自分たちは不当に迫害されている」という思い、悪く言えばある種の被害妄想である。”【9月21日 Newsweek】とも。

そして“政治や文化、メディアにおいてこうした様々な「迫害」の武器となっているのがポリティカル・コレクトネスで、ゆえに彼らはこれを極めて敵視するわけだ。”【同上】とのことで、オバマ大統領が一貫して寛容な姿勢を見せてきた不法移民について「問答無用で国外退去させる」と、「ポリティカルコレクトネス」など完全無視でぶち上げるトランプ候補が一部の(現在では“多くの”)大喝采を浴びることにも。
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