(アーカンソー州フォートスミスで失業保険申請に並ぶ市民ら。4月撮影【7月31日 ロイター】)
【4~6月期実質GDP 年率換算前期比でアメリカ32.9%、ユーロ圏40%減の記録的悪化】
4~6月期の実質国内総生産(GDP)が各地で発表されていますが、当然のことながら新型コロナ感染拡大に伴うロックダウン・経済活動の停止によって、記録的な大幅減少となっています。
それにしても、アメリカで年率換算で前期比32.9%減、欧州ユーロ圏は更に厳しく40.3%減・・・この深手の傷をこれからどのように癒していけるか・・・と言うところですが、コロナ禍自体がいまだ拡大、あるいは一部で再燃の兆しをみせるなど不安定な状況、さらに冬場は感染状況がもっと厳しくなる可能性もあり、一気にV字回復という訳にはいかず、先行き不透明です。
****米GDP、前期比32.9%減 コロナで戦後最悪水準****
米商務省が30日発表した2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、年率換算で前期比32・9%減となった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、統計が残る1947年以降で最大の落ち込みを記録した。経済活動の再開で今後は持ち直す見込みだが、足元では感染の拡大が止まらず、力強い急回復には程遠い状況だ。
マイナス幅はほぼ市場予想(約34%減)並み。リーマン・ショック後(08年10~12月期の8・4%減)などの低迷期を大きく上回る急減となった。(中略)
米経済は2月まで堅調だたが、1~3月期はリーマン以降で最悪の5・0%減(確定値)と暗転した。4月の失業率は戦後最悪の14・7%を記録。5~6月に経済活動が徐々に再開したことに伴い、小売りや製造業などの指標で改善がみられていた。
だが、経済活動の再開は感染の再拡大を招いている。7月下旬には新規感染者数が1日あたり7万人規模と過去最悪の水準に達し、死者数も連日1千人を超えた。累計の感染者数は440万人超と世界の4分の1を占め、夏を迎えても感染拡大に歯止めがかからなかったことが、消費者心理を冷え込ませている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は29日の記者会見で、クレジットカードの使用額やホテルの予約状況など直近のデータを踏まえ、「6月の感染急増以来、米経済の回復ペースは遅くなったようだ」と指摘。これに先立つ連邦公開市場委員会(FOMC)では、「ゼロ金利」など危機対応の金融政策の維持を決めた。
4~6月期の落ち込みが激しいだけに、10月29日に発表される7~9月期の米GDPはプラスに転じることが確実だ。ただ、FOMC後の声明では「経済の軌道はウイルスの動向に大きく依存する」と新たに明記し、見通しの不確実さを強調した。【7月30日 朝日】
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****ユーロ圏4〜6月期GDP、年40%減 過去最大の下落****
欧州連合(EU)統計局が7月31日発表した、ユーロ圏19カ国の2020年4〜6月期の実質域内総生産(GDP、速報値)は、前期比で12・1%減となった。年率換算では40・3%減で、前期(13・6%減)に記録した過去最大の落ち込みからさらに悪化した。
新型コロナウイルスの感染対策で、各国が3月から実施したロックダウン措置が大きく響いた。ユーロ圏は、米国、中国に次ぐ経済規模を持つ。前日発表された米国の4〜6月期GDPは年率で前期比32・9%減で、ユーロ圏はさらなる深手を負った格好だ。
足元では、ロックダウンの効果で感染は以前より抑制されている。感染者数が24万人を超えるイタリアでは、一日の新規感染者数が数百人ほど。各国は5月半ばから徐々に制限を解除し、飲食店や製造業などが再開している。
欧州委員会が30日に発表した景況感指数は、市場予測を上回る回復を示した。オランダの大手金融大手INGは、7〜9月期は前期比10・0%増を見込む。
ただ、7月の消費者の購買意欲を示す指数は前月からやや減少した。スペインなどは第2波が懸念される感染増に見舞われており、夏場の観光産業にどう響くかが注目されている。国際通貨基金(IMF)は6月、20年のユーロ圏の成長率は前年比10・2%減と予想している。【7月31日 朝日】
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【日本は20%台の減少か 今後のV字回復は期待薄】
日本の場合は、欧米ほどの厳しい対応をとらなかったので、落ち込みもやや少なめの20%台の予測が多いようです。
ただ、連日の新規感染者増加の報道もあるように、今後どのように回復軌道に乗せるかは非常に難しい状況です。
“実質GDP、4~6月23%減 民間予測”【7月10日 日経】
****2020年4~6月期GDP予測 ~前期比年率▲27.9%と過去最大のマイナス成長~****
2020年4~6月期の実質GDPは前期比年率▲27.9%(前期比▲7.8%)と、3四半期連続のマイナス成長となった見込み。新型コロナの影響拡大で内外需要が急減し、現行基準で比較可能な1994年以降で最大の落ち込みに。(中略)
7~9月期を展望すると、内外の活動制限緩和を受けて持ち直しに転じるものの、V字回復は期待薄。
7月入り後の感染再拡大を受けて、国内の小売・娯楽施設への人出の回復が頭打ちとなるなど、消費の回復力は脆弱。
入国制限の緩和は当面、一部の国からのビジネス目的に限られるとみられるなか、インバウンドも実質ゼロの状況が続く見通し。さらに、進捗ベースで計上される住宅や建設などは、今後一段と悪化する見込み。【7月31日 日本総研】
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【アメリカ 低迷する消費支出 鈍い雇用情勢の回復 「不況の影響これから」の指摘も】
アメリカ経済についてみると、個人消費の落ち込みがGDP減少幅の4分の3余りを占めています。
刺激策の給付金は消費に回らず、貯蓄が大幅に増加する傾向にあるようです。
****米GDPが大穴に転落、掘ったのは消費者****
米国内総生産(GDP)は4-6月期(第2四半期)に過去最悪の大幅減となった。政府が新型コロナウイルス危機対策の刺激措置を講じていなければ、さらに悪化していたことだろう。(中略)
米経済のけん引役は個人消費だ。個人消費の落ち込みは、GDP減少幅の4分の3余りを占めた。支出項目で最大のサービス支出は年率43.5%減少し、歯科医院に行ったりレストランで食事したりといった多様な支出行動が、米国人にとって単純に不可能になったことを反映している。衣服や食料品などを含む非耐久消費財の落ち込みはそれより小さく、15.9%減となった。
対照的に、自動車や洗濯機など長持ちする耐久消費財は、わずか1.4%の減少にとどまった。小幅な減少となったのは恐らく、政府の刺激策で給付された現金を、いずれ買おうと計画していた高額品の購入に充てたためだろう。刺激策がなければ、そうした購入に踏み切った可能性ははるかに低い。
一方、失業者に支払われた毎週600ドルの緊急手当ては、あらゆる類いの消費を支えた。
だが、刺激策の給付金は消費に回らなかった部分も大きい。税引き後所得の貯蓄の割合を示す個人貯蓄率は、4-6月期に25.7%に膨らんだ。
これは7-9月期の消費を支えるはずだが、新型コロナへの懸念と景気不安が相まって、この現金を手放す意欲は引き続き抑えられるだろう。
これに加え、何百万人もの失業者にとっては、その多くが既に給付金を使い果たしている上、失業保険の緊急手当ても31日で期限を迎える中、消費も貯蓄も苦しくなるだろう。【7月31日 WSJ】
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失業者については、感染が再拡大する中、一時解雇の増加が続いており、労働市場は回復ペースが鈍っています。
****米失業保険申請143.4万件、前週から増加 コロナ再拡大受け****
米労働省が30日発表した25日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は143万4000件と、前週から1万2000件増加した。国内で新型コロナウイルス感染が再拡大する中、一時解雇の増加が続いている。(中略)
18日までの1週間の失業保険受給総数は1701万8000件で、予想の1620万件を上回った。
また、11日までの1週間で何らかの失業手当を受けていた人は3020万人に上った。
PNCフィナンシャル(ピッツバーグ)のチーフエコノミスト、ガス・フォシャー氏は「過去数カ月で数千万人もの人が職を失い、今なお仕事に就いていない。労働市場は回復ペースが鈍っている」と指摘した。
さらに「(今月末で失効する)週600ドルの失業給付上乗せは、月750億ドルもの所得を家計にもたらしていた。こうした巨額の失業手当が短期的になくなれば、個人消費には相当な打撃になる」と述べた。【7月31日 ロイター】
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消費が低迷し、雇用の回復が鈍いなか、「不況の影響を目にするのはこれからだ」との厳しい見方も。
****よぎる大恐慌、食料求め列 米雇用に陰り「影響これから」****
新型コロナウイルスの感染拡大で、米国は約90年前の世界恐慌以来となる不況に見舞われた。経済活動の再開を急いだ米南部や西部などでは、6月以降、感染の再拡大とともに消費が冷え込んでおり、夏以降の「V字回復」のシナリオは遠のいている。
7月9日、米サウスダコタ州スーフォールズの駐車場に、100台を超える車が並んでいた。NPO「フィーディング・サウスダコタ」が、生活困窮者に食料を配る順番を待つ車列だ。
車内で順番待ちをしていたフランク・ベーカーさん(62)は「いまも多少の大工仕事はしているが、娘や孫と暮らしているためとてもやっていけない」。昨年末までは食肉処理工場で働いていた。工場内の感染拡大で4月に操業を停止し、5月の再開後は従業員を募集しているが、「年齢を考えれば(感染リスクを恐れて)戻って働く気にはなれない」。
NPO責任者のマット・ガッセンさん(65)は2008年のリーマン・ショックも経験した。「今回際立つのは、初めて食料の寄付を受ける人の多さではないか」。
配布量は最悪期の4月で例年の3倍、7月に入っても2・5倍ほどという。ニューヨーク市でも、無料の食料を配る各地のフードバンクに長い行列ができた。
GDPの落ち込みの大半は飲食や娯楽、コロナ以外の受診が減った医療などサービス消費の急減によってもたらされており、打撃はこうした産業に従事する低賃金の若年層や非白人などに偏る。
懸念は、予想を上回るペースで回復してきた雇用情勢に陰りが出てきたことだ。7月18日までの1週間の失業保険申請は、16週ぶりに増加に転じた。
米破産協会によると、6月に連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請した米企業は609社に上り、前年同月から44%増えた。米銀最大手JPモルガン・チェースのダイモンCEOは「当局の刺激策のせいで見えづらくなっているが、不況の影響を目にするのはこれからだ」と警戒する。
■続く感染、消えたV字回復
(中略)大恐慌も教訓に、米政府は積極的に経済に介入し、ショックを和らげた。GDPの1割を超える計3兆ドル(約320兆円)規模の財政出動で、家計に直接お金を配ったほか、中小企業の給与支払いを政府が肩代わりし、失業保険も週600ドル(約6万3千円)を増額。経済の底割れをなんとか防いできた。
ただ、これらの対策は、コロナ危機が夏には小康状態になっている想定で打ち出されていた。現実には、経済の早期再開は、感染の爆発的な拡大をもたらした。米国での累計の感染者数は440万人を超え、世界の4分の1を占める。米ゴールドマン・サックスは年率33%と見込んでいた7~9月期の米経済成長率を25%に下方修正した。
失業保険の増額は7月末で期限が切れる。与党共和党は27日、1兆ドル規模の追加対策をまとめ、失業保険の増額幅は200ドルに抑える方針。600ドル増額の継続を主張する野党民主党と調整が続く。
ただ、感染が抑えられなければ「付け焼き刃」になる。政府債務を膨らませながら、ずるずると続く長期不況に陥りかねない。【7月31日 朝日】
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【焦点となっている失業給付上乗せ 今日で期限切れ】
各記事で触れられているのが、今月末で終了する週600ドルの失業給付上乗せ。
これは、就業時より収入が多くなるほど“大盤振る舞い”ですが、これを来月からどうするのか・・・個人消費の動向を大きく左右します。
****米失業保険、月50万円も 異例の厚遇、働く意欲に影響****
新型コロナウイルスで世界恐慌以来の雇用危機に陥った米国で、失業保険が過去に例のない「大盤振る舞い」となっている。従来の支払額に毎週600ドル(約6万5千円)が一律に加算され、平均的な働き手は就業時よりも収入が増えることになった。
ただ、手厚い補償が「経済再開」の足かせになりかねないとの心配も出ている。
ニューヨーク(NY)州中部ユティカでギリシャ料理店を営むシメオン・ツペリスさんは3月、従業員のうち55人の一時帰休に踏み切った。(中略)ツペリスさんもレストラン部分の再開を計画する。しかし、思わぬ壁が立ちはだかった。従業員たちが職場復帰をためらっているのだ。大きな理由は、コロナ対策で手厚くなった失業保険だ。
米議会とトランプ政権が3月末に決めた計2兆ドル(約220兆円)超の経済対策は、失業保険の受給期間を13週間延ばしたり、単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」も対象にしたりしたほか、各州が支給する額に一律600ドルを7月末まで積み増すことにした。
この上乗せ分だけでNY州の最低賃金(週給換算で472ドル)を上回る。NY州の元の支給額(最大約500ドル)と合わせると、最大で週約1100ドル(約12万円)を受け取れる。月収換算では約50万円に迫る。
給料が最低賃金に近いことが多い飲食業の従業員にとっては、失業保険を受ければ多くの州で収入が就労時のほぼ2倍になる。(中略)
寛大な失業保険により、企業や自治体が人を減らしやすくなったり、働き手が一時帰休を求めたりして、逆に雇用の縮小を加速させているとの指摘もある。
働く意欲を損なわないよう、失業保険は賃金より低く抑えるのが常道だ。米国の各州は賃金のおおむね4割しか出してこなかった。加算するにしても一律ではなく、元の賃金水準に応じて差をつける手もあった。
ただ、米国の4月の失業率は14・7%と戦後最悪で、近く20%を超すおそれがある。コロナ危機が始まってから3300万人超が失業保険を申請。各州のシステムの処理能力が追いつかず、申請すらできなかった人がさらに1千万人規模にのぼる可能性がある。
社会不安や経済危機の深刻化を避けるには、制度をシンプルにし、失職者に現金をできるだけ早く届ける必要があった。失業保険の一律加算は、働く意欲がそがれる「モラルハザード」の懸念よりも、人々の当面の生活水準の維持を優先した結果といえそうだ。
収入を得るために無理に働きに出て感染リスクが高まるのを防ぐ効果もあり、リベラル系識者の多くは歓迎する。
経済政策研究所(EPI)のシニアエコノミスト、ハイジ・シェルホルツ氏は「600ドル加算はこれまでのコロナ危機対応ではベストの策だ。失業率が劇的に改善するまで延長し、危機後も制度を手厚く見直すべきだ」と話す。
米国では物流や小売りの現場が「必要不可欠」な仕事とされ、いまも雇用を増やしている。しかし、大半は低賃金のままで感染リスクにもさらされ、拡充された失業保険との落差が際立つ。米ダートマス大のパトリシア・アンダーソン教授らは「現場で働いている人の就労意欲を維持するためにも、失業保険に見合った上乗せ賃金を政府が負担すべきだ」と提唱する。
下院民主党は12日に提案した計3兆ドル超の追加経済対策案に、失業保険の600ドル加算を来年1月まで延長することや、現場の労働者に「危険手当」を支給することを盛り込んだ。
米ハーバード大のカレン・ディナン教授(元米財務省チーフエコノミスト)の話
失業率が高止まりした状態では就業機会も限られるため、失業保険への手厚い加算を続けるべきだ。感染リスクが高い今はなおさらだ。
しかし、経済が持ち直して求人が活発になったら、就労を妨げないよう減額するのがよい。失業状態が長引けば職業能力が衰え、本人のためにもならないからだ。失業率などに一定の基準を設けて、失業保険への加算額を決めるなどの方法も考えられる。【5月13日 朝日】
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共和党指導部は週600ドルの失業給付上乗せを200ドルに減額する案を出していますが、共和党内部からは批判も。
****米コロナ追加対策、共和案に早くも党内から異論噴出****
米与党・共和党の議会指導部が27日に提示した1兆ドル規模の新型コロナウイルス追加対策法案を巡って、早くも党内から異論が噴出している。
党の上院議員らからは法案の規模が大きすぎるとの声が相次いだ。ランド・ポール議員は「さらに1兆ドルの借金を増やすことには反対だ」と表明した。(中略)
共和案では、(中略)焦点となる失業給付は、特例加算額を現行の週600ドルから200ドルに減額して2カ月延長し、その後は州政府が失業前の給与の70%を給付するとしている。
党内では、従来の給与以上の額を給付として支払えば、労働者は職場に戻りたがらないとの声が根強い。
これに対し野党・民主党は、200ドルの失業給付上乗せでは経済に支障をきたすと批判。民主上院トップのシューマー院内総務は「働きたくても仕事がないというのが現状で、このような法案を通して人々を飢え死させてはならない」と訴えた。(後略)【7月29日 ロイター】
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トランプ政権は、復職を阻んでいるとして失業給付上乗せの延長に否定的です。
今日で期限が切れますが、どうするのでしょうか? 一時的に失効するのでしょうか。