孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カザフスタン  ナザルバエフ大統領 電撃辞任後も微妙なロシア・中国との関係を主導

2019-04-08 23:34:25 | 中央アジア

(【2月5日 GLOBE+】より)

 

【独自のアイデンティティーづくりで、ゆっくりとだが変化する中央アジア】

同じアジアにありながら、日本にはあまり馴染みがない中央アジア諸国のイメージは、“旧ソ連圏”“(キルギスを除き)非民主的な独裁体制”といったところでしょうか。

 

そうした中央アジア諸国ですが、ロシアと中国という大国に挟まれ、その間でバランスをとりつつ、ロシア離れを進め、独自のアイデンティティーを確立する取り組みが進んでいるとも。

 

****中央アジアの国々はもはや「旧ソ連圏」ではない****

(中略)

民主主義や安定が課題

それでも「旧ソ連」という呼称は私たちの目を曇らせ誤解を生む。中央アジアは決して変化していないわけではない。特に国家建設に関しては、ゆっくりとだが変化してきた。

 

ソ連崩壊以降、中央アジア各国はそれぞれ独自のアイデンティティーづくりに取り組んできた。

 

中央アジア最大の国カザフスタンは「ユーラシア国家」を自負している。地理的にアジアとヨーロッパの中間にあることから、94年にナザルバエフ大統領が提唱した考えだ。

 

ナザルバエフは14年の演説で、カザフスタンは「ソ連の旧弊」からはるか遠くまで前進したと語り、ソ連的なアイデンティティーに逆戻りする可能性を一蹴。民主化はお粗末な状態とはいえ、自由貿易を受け入れ、市場経済に分類されている。

 

一方キルギスは「中央アジアにおける民主主義の孤島」と広く見なされ、10年4月のバキエフ政権崩壊後、中央アジアで初めて民主的な議会選挙を実現。

民主主義の質はまだ安定しているとは言えないが、ソ連時代の古い中央集権制度から大きく様変わりし、周辺国よりオープンになっている。

 

タジキスタンやトルクメニスタンでは文化面で「旧ソ連」離れが進む。中央アジアで唯一ペルシヤ語系住民が多数派を占めるタジキスタンは16年、タジク語式の姓を復活させるべくロシア語式の姓を法律で禁止。

 

一方トルクメニスタンではニヤゾフ初代大統領が自らを「トルクメニスタンの父」と称し、その威光によるアイデンティティー再建を目指した。ニヤゾフは06年に死去したが、個人崇拝モデルは今も健在だ。

 

中央アジア最大の人口を有するウズベキスタンでは、独立以降、政治的安定と民族間の融和が最大の懸案だ。そのため91年に初代大統領に就任したカリモフは野党と宗教団体に対し強硬策を取ったが16年に死去。ミルジョエフ現政権は相変わらず独裁体制とはいえ、経済の自由化に取り組んでおり、外交面でも開放的だ。

 

中央アジアをソ連時代の遺物扱いするのはもうやめよう。独自のアイデンティティーを持つ新興国家群と考えるべきだ。【2018124日号 Newsweek日本語版】

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【ウズベキスタン 独裁者死去で親族に対する捜査・訴追】

中央アジア諸国のなかでも国際的に影響力があるのは、カザフスタンとウズベキスタンでしょう。

 

ウズベキスタンは、上記記事では独裁的なカリモフ大統領の死後、“ミルジョエフ現政権は相変わらず独裁体制とはいえ、経済の自由化に取り組んでおり、外交面でも開放的だ”とのことで、アメリカとも協調して、カリモフ体制の残滓を清算する動きもあります。

 

****米当局、資金洗浄でウズベキスタン前大統領の娘を起訴 1兆円近く収賄****

米検察当局は7日、ロシア通信大手と共謀して総額86500万ドル(約960億円)を超える賄賂を受け取り、約10年にわたってマネーロンダリング(資金洗浄)を行っていたとして、ウズベキスタン前大統領の娘を「海外腐敗行為防止法」違反で起訴した。

 

ニューヨーク南部地区連邦地検は、FCPA違反で起訴された事例では過去最大級の事件だとしている。

 

起訴されたグルナラ・カリモワ被告は、1990年から2016年に死去するまで旧ソ連圏のウズベキスタンを統治した故イスラム・カリモフ前大統領の娘で、元歌手。ウズベキスタン政府の高官や国連大使を務めた経歴を持つ。

 

カリモワ被告は、ニューヨーク証券取引所に上場しているロシア通信大手MTSのウズベキスタン子会社の元最高責任者で同じく起訴されたベフゾド・アフメドフ被告と共謀し、20012012年にMTSのほか、ロシアで事業展開するオランダの通信大手ビンペルコム(現VEON)、スウェーデンのテリア、これら3社のウズベキスタン子会社から賄賂を受け取っていたとされる。(中略)

 

カリモワ被告は2017年、ウズベキスタンで詐欺と資金洗浄の罪で禁錮5年の有罪判決を受けて自宅軟禁下にあったが、ウズベキスタン当局は今週、軟禁条件に違反したとして同被告を収監したと明らかにしていた。(後略)【38日 AFP】

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【カザフスタンのナザルバエフ大統領 電撃辞任で後継体制づくりを主導】

(電撃辞任したナザルバエフ大統領)

昨日ブログで、北アフリカのアルジェリアやスーダンにおいて、生活苦が続く住民不満が長期独裁政権に対して高まっており、「アラブの春」再現の兆しも・・・という話題を取り上げましたが、状況は中央アジア諸国でも似ています。

 

カザフスタンもナザルバエフ大統領による独裁政治は生活困難に対する住民の不満の高まりに直面しており、その動向を危惧しています。

 

更に、ウズベキスタンで進む上記のような死去した前独裁者に対する清算の動きにも、“明日は我が身”の思いもあるようです。

 

そうした懸念から、ナザルバエフ大統領は先手をうって、自ら電撃的な辞任を発表し、その影響力を残す形で後継者政権を樹立するという対応をとっています。

 

****カザフ大統領退任、30年君臨 親族へ権力禅譲への動き****

中央アジアのカザフスタンで、3月に辞任したナザルバエフ前大統領(78)が、長女のダリガ上院議長(55)ら親族への権力禅譲を視野に入れた動きを強めている。

 

30年近く君臨してきたナザルバエフ氏は、強い権限を持つ安全保障会議議長と与党党首の職に留まった。上院議長から昇格したトカエフ新大統領(65)の任期が終わる来年4月まで院政を敷きながら、次世代の体制づくりを急ぐとみられる。

 

カザフは中央アジアの旧ソ連構成国。ナザルバエフ氏はソ連時代末期の1989年にカザフ共産党第1書記に就任。ソ連崩壊後に独立したカザフで91年から5度の大統領選で圧勝した。

 

2010年には「初代大統領−国家指導者」との特別な地位についた。同氏への侮辱は禁じられたほか、同氏と家族には免責特権も与えらている。

 

同氏の突然の退任の理由としてまず、隣国ウズベキスタンで16年、独裁者だったカリモフ前大統領が在任中に死去したことが指摘されている。

 

後任のミルジヨエフ大統領はカリモフ時代の路線を否定し、カリモフ氏の親族に対する捜査・訴追も本格化させた。ナザルバエフ氏はこれ“反面教師”とし、自身が健康なうちに退任し、政策の継続性や一族の権益を確保するのが得策と考えたとみられる。

 

次に、石油など地下資源に依存するカザフ経済が、市況低迷で成長にかげりが見え始めたことだ。今年2月には貧困層などの間で反政権機運が高まり、初の内閣退陣に追い込まれた。

 

最有力の権力禅譲先として、トカエフ氏の後任の上院議長に就任したナザルバエフ氏の長女ダリガ氏のほか、ナザルバエフ氏の娘婿で富豪のクリバエフ氏ら親族の名が挙がっている。マシモフ国家保安委員会議長ら、ナザルバエフ氏の側近も権力の一角に加わるとの見方もある。

 

大統領などとしてロシアを約20年間統治してきたプーチン氏も、最終任期が終わる24年には70歳を超える。複数の露専門家は「プーチン氏や(旧ソ連諸国の)他の長期指導者らが、退任後も実権を保持する手法として、ナザルバエフ氏とカザフの動向を注視している」と話している。

 

トカエフ氏はロシアの招待に応じ、大統領就任後初の外遊先としてモスクワを訪れ、今月3日にプーチン大統領と首脳会談を行った。両首脳は経済面や安全保障面で協力関係を強化していくことで合意した。

 

ロシアにとって、カザフは地下資源など重要な貿易相手国である上、アフガニスタンや中東に近い同地域は安全保障上の要衝だ。ロシアもカザフも、いずれも国境を接する中国を牽制(けんせい)する狙いもありそうだ。【45日 産経】

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独裁国とは言え、そこまでやるかな・・・という感を抱かせたのは、以下のニュース。

 

****前大統領たたえ首都名変更=カザフ****

カザフスタンのトカエフ大統領代行は20日、大統領を退任したナザルバエフ氏の功績をたたえ、首都の名称をアスタナからナザルバエフ氏のファーストネームである「ヌルスルタン」に変更するよう提案した。

 

カザフの国営通信社「カズインフォルム」は、議会が変更を承認し、「アスタナは公式にヌルスルタンに名称変更された」と報じた。【320日 時事】

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さすがに、“だが「巨額の費用がかかる」などとインターネット上で反対の署名運動が広がっている。”【322日 共同】といった動きもあるようですが・・・。

 

このような見え透いた“歯の浮くような”対応をされてナザルバエフ氏は嬉しいのでしょうか?

独裁者というのはそういうものなのでしょうか?

あるいは、自身への忠誠心を試す試みとして進めているのでしょうか?

 

【ロシア・中国との微妙な関係を維持しながら独自性を主張するという困難な仕事】

いずれにしても、これまでのナザルバエフ氏がそうであったように、後継者もロシア・中国という大国を相手に微妙なバランスをとる外交が求められています。

 

独裁者云々は別にして、ロシア・中国とのバランスをとる手綱さばきに関しては、ナザルバエフ氏は傑出した政治家ではありました。

 

****独裁者辞任は院政への第一歩****

30年君臨した大統領が電撃辞任 経済不振や政治腐敗への不満をかわし、実質的な権力を握り続けるための準備か

 

カザフスタンの初代かつ建国史上唯一の大統領ヌルスルタン・ナザルバエフが319日、辞任を発表した。人口1800万人の中央アジアの資源大国で、権力の不透明な移行プロセスが始まることになる。

 

(中略)「私の今後の仕事は、この国の改革を継続する新しい世代の指導者の出現を支えることだ」

要するに、大統領を辞しても権力を手放すっもりはない、ということだ。(中略)

 

旧ソ連時代末期の89年からカザフスタンを率いてきたナザルバエフは、国家の創始者を自負する。実際、ソ連崩壊に伴う経済と地政学の混乱を乗り切り、カザフスタンを国際社会の一員として認めさせてきた。

 

中国やロシア、アメリカといった超大国とのバランス感覚に優れた有能な政治家でもあり、国全体の生活水準を引き上げた。

 

しかし、突然の辞任の背景には、経済の停滞と、国内で独裁政権に対する不満が高まっているという現実がある。(中略)

 

その矛先をかわすかのように、ナザルバエフは2月21日、内閣を総辞職させる大統領令に署名して、経済政策の成果が上かっていないと批判した。

辞任発表にも、暗い将来に対する民衆の怒りの矢面から逃れようという意図が透けて見える。

 

後継者選びを主導する

(中略)自分のタイミングで辞任することによって後継者選びを舞台裏で主導でき、さまざまな権力を行使し続けることもできると、(英グラスゴー大学で中央アジア問題を研究するルアンチェスキは指摘する。つまり、カザフスタンの将来を導く上で、ナザルバエフは重要な役割を演じ続けるのだ。

 

特に外交では、ロシアのウラジーミループーチン大統領や中国の習近平国家主席など近隣の超大国の指導者との戦略的関係を、今後も維持するだろう。

 

米政府との関係も良好で、18年1月にはドナルド・トランプ米大統領の招きで訪米している。

 

「(カザフスタンの)政治体制が内側から改革できるとは思えない」と、アンチェスキは言う。「カザフスタンは、独裁制の衰退という避けられない段階を迎えている。エリート層は国の自由化や改革ではなく、権力を強化することしか頭にない」

 

羊飼いの息子として生まれたナザルバエフは旧ソ連時代の共産党で力を付け、80年代に政治家として頭角を現した。

 

91年に独立したカザフスタンの初代大統領として、生まれて問もない国を脅かす数々の難局を切り抜けてきた。カザフスタンは世界9位の広大な国土を持ち、豊富な石油埋蔵量を誇る。しかし一方で、旧ソ連の大量の核兵器を受け継いでいた。

 

ナザルバエフはアメリカなどの支援を受けて、全ての核兵器をロシアに移管。国際社会でカザフスタンの独立性を確保した。

 

さらに、米石油メジャーのシェブロンやエクソンモービルなど、欧米へのパイプライン建設に携わる企業と大型契約をまとめてみせた。

 

「振り返ってみれば、ソ連崩壊に伴って生まれた権力者の中で最も有能な指導者だった」と、米ランド研究所上級研究員で、9295年にアメリカの初代駐カザフスタン大使を務めたウィリアムーコートニーは言う。

 

「非化によって(権力の)正続性固めたことは、他国にカザフスタンの独立を尊重させる巧妙な手段でもあった」

 

後継の大統領にとって最優先の課題は、厳しい国際情勢の中での国の舵取りだ。誰が選ばれるにせよ、隣国との付き合いではナザルバエフに頼らざるを得ないだろう。 

 

(中略)カザフスタンはロシアが主導するユーラシア経済同盟と集団安全保障条約機構(CSTO)の一角を占める。さらに、習が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」の要衝の1つでもある。

 

中口との微妙な信頼関係

ロシアと中国は近年、報復主義的および国家主義的な外交政策を強めてぃるが、カザフスタンは両国と強固な関係を維持している。

 

(中略)ナザルバエフはロシアと緊密に連携しながら、その重圧に直面しても、折に触れて独立性を示してきた。ロシアによるクリミア併合に反対する国連総会の決議は棄権した。ユーラシア経済同盟を政治共同体に拡大しようというロシアの思惑にも抵抗している。

 

北京との関係も綱渡りの状態だ。新疆ウイグル自治区の「再教育施設」には数万人のカザフスタン系住民が収容されており、カザフスタン国内で反中感情が高まっている。カザフスタン当局は一部の収容者の解放を働き掛ける一方で、施設の実態を告発している活動家を拘束した。

 

(中略)ナザルバエフが辞任発表後に初めて電話会談を行った相手はプーチンだった。

「ナザルバエフは強力な隣国と信頼関係を築いてきた」と、ストロンスキは言う。「問題は、彼がいなくなった後のことだ」【42日号 Newsweek日本語版】

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ロシアと一線を画したアイデンティティー確立という面では、ナザルバエフ前大統領は、ロシア語と同じキリル文字を使ってきたカザフ語の表記をラテン文字に切り替える施策をとっています。

 

ロシアとの関係については、2015918日ブログ“カザフスタン ロシアとの微妙な関係 「ナザルバエフ後」の不安もでも取り上げた不安が、現実課題となっています。

 

“ナザルバエフ氏を含め、独立カザフスタンのエリート第一世代には、「旧ソ連諸国の再統合は是である」という基本的な価値観がありました。

 

しかし、ロシアのプーチン政権が、ユーラシア経済連合を自国の国益に沿って過度に政治化していることに対して、カザフスタン国民の不満は高まっているという指摘もあります。

 

カザフでは今日、1991年末のソ連崩壊後に生まれた人々が人口の多数派になろうとしており、今すぐにではないにしても、今後政策の重点がユーラシア統合から主権重視へとシフトしていく可能性もありそうです。”【48日 GLOBE+

 

中国との関係で、上記記事にある“施設の実態を告発している活動家を拘束した”というのは、新疆ウイグル自治区からカザフスタンに不法入国したカザフ系中国人のサイラグル・サウイトバイ(41)のことと思われます。

 

中国のカザフ系住民を含むイスラム教徒弾圧に抗議する世論の後押しを受けて、彼女の身柄を中国側に送還せず、亡命申請者として国内にとどまることを認める“異例”の判決が下されたました。

 

しかし、“その後の展開には不穏な空気が漂っている。サウイトバイの姉妹と友人が拘束されたことだけではない。判決の12日後から、サウイトバイは自身の弁護士によって報道陣を含むあらゆる人との接触を禁じられ、3カ月〜1年かかる難民申請が認められるまで誰も彼女に近づけないという。”【2018828日号 Newsweek

 

「一帯一路」戦略の恩恵にあずかるためには、中国と全面的に対立する訳にもいきません。

 

ナザルバエフ前大統領の後継者は、こうしたロシア・中国との間の微妙なバランスをとりながらカザフスタンの独自性をも主張するという困難な仕事を担う必要があります。

コメント

中央アジア諸国  米中ロの草刈り場でもなく、「旧ソ連圏」でもなく、独自の国家建設への取り組み

2018-11-30 23:18:19 | 中央アジア


【「文明の十字路」中央アジア】
日頃、東南アジアや中国・インド方面へ観光旅行に行くことが多いのですが、さすがに4回目・5回目となると新鮮味という点では薄れてきます。

なるべく近場で、少し訪問先を広げて(フライト時間が10時間を超えるような遠方はちょっとしんどいので)・・・となると、中央アジアのいわゆる「スタン系」があります。

観光的に一番ポピュラーなのは、サマルカンドやブハラ、ヒワなどがあるウズベキスタンでしょう。ツアーも多数あります。逆に言えば、一般的ツアーではウズベキスタン以外はぐんと少なくなります。

ウズベキスタン観光などは、これまでもしばしば検討したことはあるのですが、イスラムのモスクみたいなものがメインになりがちなこと、乾燥した地域で東南アジアのような潤いには欠けることなどで、見送ってきました。

ただ、そういうのは偏見・独断・無知であり、中央アジアの観光資源としてはイスラム関係以外にも遺跡や風光明媚な山岳地帯とか、あるいは温泉があったりと、探せばいろいろと興味深いものがあるようです。なにせ、かつてのシルクロードにおける「文明の十字路」です。

来年あたりは、「スタン系」のどこかに足を運んでみようか・・・とも考えたのですが、3月末にパキスタンの北部フンザに行く予定で手配済みですので、中央アジアの「スタン系」と方面・イメージ的にかぶってしまうところが難点です。(行くとしたら、冬は寒いので夏ですが、そうなるとパキスタンと連続します)再来年かな・・・・。

【画一的イメージ、あるいは、米中ロといった大国の影響下の国というイメージで見られがちな中央アジア諸国】
国際ニュースで中央アジア関係のものを目にすることは、あまりありません。
最近では、タジキスタンの巨大ダムの話ぐらいでしょうか。

****世界最大級となる巨大ダムで発電開始 タジキスタン****
高さ7000メートル級の山々に囲まれた中央アジアのタジキスタンで、世界最大級になると見込まれる巨大なダムを利用した水力発電が始まり、周辺諸国を含めて安定した電力供給につながることが期待されています。

タジキスタン政府が建設を進めているログンダムは、完成すれば、ダムの底から堤防までの高さが335メートルと、世界最大級になることが見込まれています。

ダムに併設された水力発電所では16日、最初の発電機の稼働を祝う式典が開かれ、ラフモン大統領は「歴史的な出来事だ。ここで生み出された電力が国の隅々に届けられるだろう」と演説しました。

ログンダムは1970年代に建設が始まり、ソビエト崩壊に伴う混乱で中断していましたが、その後、2万人を超す労働者と3600台の建機を投入して建設が進められてきました。

タジキスタン政府は10年後の完成を目指すとともに、巨大なダムが生み出す余剰電力をウズベキスタンやアフガニスタンといった隣国に輸出したい考えで、周辺諸国を含め、安定した電力供給につながることが期待されています。【11月17日 NHK】
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タジキスタンには現在も、304mの堤防が高さにおいて世界最大であるヌレークダム(ソ連時代の1961年完成)がありますので、ログンダムが完成すれば高さでは1位、2位独占ということにもなります。

資金の出所は、「ロシアだろうか、それとも、また中国だろうか・・・?」と考えてしまうのですが、“ログンダム発電 所(発電設備能力3,600メガワット)の建設について、 14年6月に第三者機関である世界銀行から評価報告書が発表され、タジキスタン政府は16年7月、イタリアの建設大手サリーニ・イムプレジロと発電所建設に関する包括契約を締結。同年10月には起工式が行われた。”【JETRO エリアリポート 芝元英一氏】ということからすると、ロシア・中国ではなさそうです。

中央アジア諸国については、日本における情報が不足していることもあって、とかく「旧ソ連」とか、近年中国の進出が著しい地域といった画一的イメージ、あるいは、米中ロといった大国の影響に翻弄される国々というイメージで見てしまい、「スタン系」各国の独自の取り組み・動き、主体性といったものを見落としてしまいがちです。

【中央アジアを大国の草刈り場と見るのは誤りだ】
そうした傾向を戒めるような記事がたまたま2本ありましたので、並べて紹介します。

****イスラム勢力と中国が衝突?****
「世界を制する要衝」は米中ロの草刈り場にはならない

「地政学」なる怪しげな響きを持つ学問の大家にハルフォード・ジョン・マッキンダーというイギリスの学者がいた。

彼は20世紀初頭、「中央アジアを制する者がユーラシアを制し、ユーラシアを制する者が世界を制する」と提唱した。当時、中央アジアではインド洋を目指して南下を策すロシア帝国と、それに抵抗する大英帝国の問で「グレ
ートゲーム」と呼ばれる勢力争いが繰り広げられていた。
 
そして今、ソ連時代の勢力圏維持を図るロシア、世界のどこにでも割り込むアメリカ、「一帯一路」経済圏構想を掲げる中国の3大国間で、中央アジアを舞台にしたグレートゲームが再来・・・・との議論が定説化した。

かつて中央アジアに外交官として勤務した筆者には、大げさな話に思える。中央アジア5力国には十分な統治能力がある。特にウズベキスタンは十分な人口(3212万人)と経済力(GDP672億ドル)を持ち、カザフスタンは国家・官僚機構を整備して国際的なイニシアチブも取っている。

中央アジアを大国の草刈り場と見るのは誤りだ。
 
ロシアは二言目には、「アメリカが中央アジア進出を狙っている」と言う。確かに91年にソ連が崩壊して独立した中央アジア諸国に対して、アメリカは素早く連携を図ろうとした。

01年に9.11同時多発テロ事件が起きると、アメリカはアフガニスタンに進軍。補給のために中央アジアの数力所に基地を置き、積極的に経済援助を行った。
 
その後アフガン駐留米軍の縮小に伴い、14年までに中央アジアからも米軍は撤退した。筆者が接触する現地の米大使などアメリカ人専門家は皆「アメリカは中央アジアに死活的な関心がない」と言う。

石油・ガス資源はあるが、人目と経済力の面で巨大市場ではない。しかも中央アジアは内陸国で、軍事的な補給のためにはロシア、インド、中国などの領土を通らなければならない。

中国を警戒するカザフスタン
むしろ野心的なのはロシアのほうだ。19世紀に中央アジアを征服して以来、宗主国気分が抜けず、今も相互の経済関係は緊密だ。また、タジキスタンにロシア兵が5000人、キルギスには中隊規模の航空兵力が常駐するなど、ロシアは唯一の軍事的パートナーだ。
 
米ロに比べて、中国が中央アジアに積極的な進出をしたのはこの15年程度。タジキスタンではインフラ投資を一手に担い、首都ドゥシャンベに建築・建設ブームを起こした。

カザフスタンでは石油企業に大々的な資本参加をしている。中国はトルクメニスタンの輸出天然ガスもほぼ独占する。

ただカザフスタンでは中国警戒論が強まっており、トルクメニスタンは金払いが悪い中国に代わって、ロシアなどに天然ガス輸出を振り替えようとする動きがある。 

中国は一帯一路の旗印の下、中央アジアを横切る鉄道を現状の1路線に加えて何本も新設すると豪語していたが、まだ経路も確定していない。中国・ヨーロッパ間の鉄道輸送は運賃が海路の2倍かかる。大風呂敷を広げてみたが、採算面で二の足を踏んでいるようだ。
 
今、中央アジアでは地域大国のウズキスタンとカザフスタン主導で、ASEANのような諸国の団結強化の動きがある。

この2か国が自立姿勢を見せるたびにロシアは不快感を示し、なぜか両国でテロが起きる。またカザフスタン北部の工業地域に集住するロシア人の扱いをめぐって、ロシアが政治的・経済的圧力を強めるかもしれない。
 
ウズベキスタンでは16年に死去したイスラム・カリモフ大統領の後継者シヤフカト・ミルジョエフ大統領がいまだ権力確立の途上にある。

カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は78歳と高齢だが後継者の用意ができていない。

中央アジア南方に接するアフガニスタンからは、イスラム原理主義勢力タリバンの脅威が忍び寄る。 

こうした地域内の不安定が大規模紛争に発展するかどうかのカギは、大国の介入だ。その点で要注意なのが東方に隣接する中国新疆ウイグル自治区の動向。

対米貿易戦争で中国経済や統治能力が不安定化する可能性は否定できない。そうなればウイグル住民が多数流出し、中央アジアのイスラム勢力との連携を強めかねない。中国がウイグル人の後を追う形で軍事介入すれば、ユーラシアに激震が走るだろう。【河東哲夫氏 11月13日号 Newsweek日本語版】
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【もはや「旧ソ連圏」ではない 独自の国家建設に取り組む中央アジア各国】
“この2か国が自立姿勢を見せるたびにロシアは不快感を示し、なぜか両国でテロが起きる”・・・・表立っての言動はともかく、中央アジアでロシアに対する反感が強まっていることは想像に難くないところです。

****中央アジアの国々はもはや「旧ソ連圏」ではない****
時間が止まったイメージとは裏腹に、ソ連離れと独自の国家建設は着実に進んでいる

ソ連崩壊から30年近くたつのに、かつて植民地だった国々に対して「旧ソ連」という言葉を使うのは変だI。10月29日、ウクライナのジヤーナリストがツイッター上でそう批判した。
「私たちの現在のアイデンティティーを決めるのは植民地だった過去ではない」
 
91年のソ連崩壊から今年で27年。一部のジャーナリストや著述家はいまだに旧ソ連圏の国々とソ連の歴史をなかなか切り離せずにいる。

中央アジアについて論じる場合は特に顕著だ。カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5力国は、旧ソ連圏の他の国々とは違う。
 
第1に、バルト3国などではキリスト教徒とヨーロッパ系住民が多数派だが、中央アジアの国々ではイスラム教徒とテュルク語系住民(タジキスタンは除く)が圧倒的多数を占める。
 
第2に、中央アジアの国々は独立後の経緯も他の旧ソ連圏諸国とは比較的異なっている。他の国々が徐々に民主主義とリベラリズムを受け入れてきたのに対し、中央アジアの5力国は実質的には今も権威主義だ。
 
第3に、中央アジア各国は海のない内陸国。そのためロシア、インド、中国など大国の陰でかすみがちだ。

民主主義や安定が課題
それでも「旧ソ連」という呼称は私たちの目を曇らせ誤解を生む。中央アジアは決して変化していないわけではない。特に国家建設に関しては、ゆっくりとだが変化してきた。

ソ連崩壊以降、中央アジア各国はそれぞれ独自のアイデンティティーづくりに取り組んできた。
 
中央アジア最大の国カザフスタンは「ユーラシア国家」を自負している。地理的にアジアとヨーロッパの中間にあることから、94年にナザルバエフ大統領が提唱した考えだ。

ナザルバエフは14年の演説で、カザフスタンは「ソ連の旧弊」からはるか遠くまで前進したと語り、ソ連的なアイデンティティーに逆戻りする可能性を一蹴。民主化はお粗末な状態とはいえ、自由貿易を受け入れ、市場経済に分類されている。
 
一方キルギスは「中央アジアにおける民主主義の孤島」と広く見なされ、10年4月のバキエフ政権崩壊後、中央アジアで初めて民主的な議会選挙を実現。
民主主義の質はまだ安定しているとは言えないが、ソ連時代の古い中央集権制度から大きく様変わりし、周辺国よりオープンになっている。
 
タジキスタンやトルクメニスタンでは文化面で「旧ソ連」離れが進む。中央アジアで唯一ペルシヤ語系住民が多数派を占めるタジキスタンは16年、タジク語式の姓を復活させるべくロシア語式の姓を法律で禁止。

一方トルクメニスタンではニヤゾフ初代大統領が自らを「トルクメニスタンの父」と称し、その威光によるアイデンティティー再建を目指した。ニヤゾフは06年に死去したが、個人崇拝モデルは今も健在だ。
 
中央アジア最大の人口を有するウズベキスタンでは、独立以降、政治的安定と民族間の融和が最大の懸案だ。そのため91年に初代大統領に就任したカリモフは野党と宗教団体に対し強硬策を取ったが16年に死去。ミルジョエフ現政権は相変わらず独裁体制とはいえ、経済の自由化に取り組んでおり、外交面でも開放的だ。
 
中央アジアをソ連時代の遺物扱いするのはもうやめよう。独自のアイデンティティーを持つ新興国家群と考えるべきだ。【12月4日号 Newsweek日本語版】
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中央アジア各国において、(大国から支援を引き出しながら)それぞれ独自の国家建設の歩みがあり、また、独自の問題を抱えている(独裁・権威主義的という共通性はありますが)という、「当たり前」の話です。

中央アジア諸国が画一的なイメージで見られる原因として、「スタン」という国名の類似性も大きいように思われます。

周知のように「スタン」は、ペルシア語由来の言葉で、一般的に、その地方の多数派を占める民族の名称の語尾に接続して、地名を形成する語尾です。

当該国においても、この「スタン」イメージからの脱却の動きもあり、キルギスは93年にキルギスタンから国名を変更しています。

カザフスタンのナザルバエフ大統領も、「スタンの付く国が多い地域でカザフの知名度が埋没している」との認識で、国名を変更する考えを2014年に表明したことがありますが、その後は?

もちろん名前より中身が重要(特に、ソ連時代やロシアとは異なる民主主義を確立することが重要)・・・ではありますが、意気込みを名前で示すという考えもあります。
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イスラム過激派の影響が増す中央アジア 「アラブの春」再来を避けるべく親族への権限移譲で体制固め

2016-09-29 22:54:49 | 中央アジア

(【2015年05月26日 AFP】)

広がるイスラム過激派の影響 それが強権支配正当化の理由にも
正直なところ、中央アジアの国々は日本とはあまり馴染みがないこともあって、トルクメニスタンやタジキスタンと言われても、その地図上の位置も定かではありません。


(【2014年5月8日 赤旗】)

イメージとしては、ウズベキスタンはサマルカンドなど観光的スポットが多く、カザフスタンは広大な国土とウランなど豊富な資源を有し、キルギスはこの地域では比較的民主的な政治体制の国・・・・といったところでしょうか。

キルギス以外はいわゆる独裁的強権国家で、この地域を観光で旅行する際も何かと苦労が多いと聞きます。

その中央アジアでは最も民主的政治体制が進んでいるとされるキルギスで、8月30日、中国大使館が自爆テロの標的とされたことは、8月30日ブログ“キルギス 「中央アジア随一の民主国家」で自爆テロ 狙いはウイグル族を抑圧する中国か?”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160830で取り上げました。

****続報>キルギスの中国大使館襲撃事件、首謀はシリアのテロ組織****
2016年9月6日、キルギス当局は、先月末に首都ビシケクで起きた中国大使館襲撃事件について、容疑者5人を逮捕したことを明らかにした。環球時報が伝えた。(中略)

キルギス当局によると、襲撃事件はシリアに拠点を置くテロ組織が計画したもので、逮捕された5人のほか、4人がトルコにおり指名手配している。

同テロ組織のメンバーはキルギスのパスポートを所持しており、自爆テロを行ったのは中国からの独立を目指すイスラム主義組織「東トルキスタンイスラム運動」のメンバーだったという。海外メディアはキルギス当局が指名手配した4人について、トルコ政府に容疑者の資料提供を求めていると報じている。【9月7日 Record china】
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ウズベキスタンなど中央アジア諸国から「イスラム国」(IS)に数千人が参加したとも言われているように、イスラム過激派の影響が広がっていることは中央アジアに共通していますが、そのことが「政治混乱で過激派拡大の隙を与えてはならない」という、強権支配の正当化にも使われています。

【ウズベキスタン:後継者を指名していなかったカリモフ大統領死去
そうした独裁国家のひとつウズベキスタンでは、今月初め25年以上強権政治を続けてきたカリモフ大統領が死去し、その後継者が注目されています。

****ウズベキスタン独裁者の死はグレート・ゲームの導火線か****
<25年以上強権政治を続けてきたウズベキスタンのカリモフ大統領が、後継指名のないまま死去した。緊張高まる中央アジアに日本ができることは何か>

中央アジアの雄、ウズベキスタンのカリモフ大統領が今月2日死去した。78歳。ソ連末期から独立後の25年以上、一貫して大統領の座にあった。その間、強権政治を欧米に非難されながらも、外交・経済両面での自立を旨として、新しい国家の形をつけ、人口3000万の大国として安定を維持してきた。

ウズベキスタンは人口と軍事力で、中央アジアで群を抜く。しかも、他の中央アジア4カ国のすべて、そして不安定なアフガニスタンにも接している。大統領の交代でこの国が不安定化すれば、中央アジアだけでなくロシアにも影響が及ぶだろう。

ウズベキスタンの憲法は、大統領が執務不能になった場合、上院議長が代行し、3カ月以内に大統領選を行うものと定めている。この国では以前から、地方ごとのクラン(氏族)の勢力・利権争いがある。継承争いで対立が先鋭化し、これに大統領の長女グルナラ、あるいは中国、ロシアが絡めば、情勢はしばし荒れ模様となり得る。

ウズベキスタンの北方、ロシアを挟んで日本の7倍の国土を持つ、石油大国カザフスタンの雲行きも怪しい。同国のナザルバエフ大統領も、ソ連崩壊以降ずっと権力の座にある。76歳と高齢なのに、後継候補が定まっていない。

彼が急死すれば、副首相を務める彼の長女ダリガも加わってカザフスタンで権力闘争が展開されるだろう。既に5月から国内でテロ・暴力事件が頻発。宗教過激派の犯行とされるものの、実態は闇の世界も関与しての利権、権力闘争とも言われる。(後略)【09月13日 河東哲夫氏 Newsweek】
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「グレート・ゲーム」は、第一次大戦前の中央アジアを舞台として、インド洋への南下を目指すロシア帝国と、それを阻止する大英帝国の間で繰り広げられた抗争ですが、現在は旧ソ連圏の盟主たらんとするロシアと、「一帯一路」(現代版シルクロード経済圏構想)でこの地域への影響力を強める中国が争う形となっています。

ウズベキスタンの後継者問題については、ミルジヨエフ首相を軸として進むと見られていますが、不透明性も。

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ミルジヨエフ首相が後継大統領になるとの観測が強いが、ウズベキスタンの独裁は、カリモフ氏のカリスマ性に依存するところが大きかった。(中略)

後任と目されるミルジヨエフ氏にはカリモフ氏のようなカリスマ性はない。また、ウズベキスタンの国家制度において、首相は主に経済を担当し、軍、秘密警察などの管轄は大統領に属している。

従って、ミルジヨエフ氏が軍と秘密警察を掌握できない可能性がある。その場合、ウズベキスタンが、タジキスタンやキルギスのような破綻国家にはならないとしても、国家の一部領域を実効支配できなくなる可能性が十分にある。【9月19日 佐藤優氏 産経】
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親族への権限移譲を進める他の独裁国家
他の中央アジア独裁国家では、ウズベキスタンを睨みながら、親族への権限移譲体制を進めています。

****中央アジアで進む大統領終身化、親族への権力委譲準備の動****
旧ソ連の中央アジア各国で現職大統領が終身的に任期を継続できる制度を導入したり、大統領の親族が権力を継承しやすくしたりするなどの動きが顕著になっている。

中央アジアでは2日にウズベキスタンのカリモフ大統領が死去したが、各国はウズベクの権力委譲の推移を注視しつつ、自国内で混乱が起きる可能性を排除する狙いがあるとみられる。

カザフスタンでは16日、ナザルバエフ大統領(76)の長女ダリガ氏(53)が上院の国際関係・国防委員会トップに選出された。カザフでは大統領が死亡したり職務不能になったりした場合には上院議長が代行するため、今回の人事はダリガ氏への将来的な大統領権限の委譲に向けた準備との観測が出ている。ダリガ氏は副首相など重要ポストを歴任していたが、13日に大統領自らがダリガ氏を上院議員に任命していた。

また、トルクメニスタンでは14日、大統領任期を延長し、さらに70歳までだった大統領選出馬の年齢制限も撤廃する憲法改定が実施された。改定案はベルドイムハメドフ大統領(59)自身が率いる委員会がまとめたもので、同氏を事実上の終身大統領とするための動きだ。

タジキスタンでは5月、国民投票によりラフモン大統領(63)が無制限に大統領選に出馬できる憲法改定がなされ、大統領選の出馬年齢の下限も35歳から30歳に引き下げられた。ラフモン氏を終身大統領としつつ、必要に応じて2020年の次期大統領選に息子のルスタム氏(28)が立候補できるようにする措置とみられている。
 
央アジア情勢に詳しいカーネギー財団モスクワ・センターのマラシェンコ研究員は、「どの国も安定を望んでおり、(中東・北アフリカで11年に政権崩壊が相次いだ)『アラブの春』の再来を見たいとは思っていない」と指摘。

各国の動きは、将来の権力委譲時に起こりうる国家体制の不安定化を押さえ込む狙いがあるとの見方を示したうえで、指導者間の争いなどが起きれば「イスラム過激派につけいる隙を与えかねない」とも警告する。

そのうえでカザフを例に「ナザルバエフ氏は自身の死後、権力の分散化や政治・経済面での改革が必要だと認識している」とし、同様に大統領が独裁的な権力を維持してきたウズベキスタンの権力委譲がどのように進むかを注視していると分析する。【9月29日 産経】
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長女への権限移譲を進めるカザフスタンでは、相次ぐテロも
先ず、長女ダリガ氏への権限移譲を進める地域大国カザフスタンですが、カザフスタンでは今年6月5日、西部の工業都市アクトベで武装集団が内務省軍の駐屯地などを襲撃する事件が起き、軍人ら6人が死亡。
更に7月18日には最大都市アルマトイの中心部で自動小銃で武装した男が警察署を襲撃、警察官ら6人が死亡するというテロが起きており、イスラム過激派への警戒を強めています。

タジク民族主義を進めるタジキスタンでは、大統領の終身化と長男への世襲へ
タジキスタンは、ラフモン大統領の終身化と長男への世襲への道を開き、体制固めを狙っています。

****タジク国民投票、「終身大統領」に道筋 中央選管が暫定結果「賛成9割超えた****
旧ソ連中央アジアのタジキスタンで22日、現職のラフモン大統領(63)が無制限に大統領選に出馬できるようにする憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、中央選管は23日、暫定結果として賛成が9割を超えたと発表した。1994年から大統領の座にあるラフモン氏が終身大統領になることに道を開く動き。
 
憲法改正案には大統領選の被選挙権を現在の35歳以上から30歳以上に引き下げる項目も盛り込まれた。ラフモン氏の長男の出馬を念頭に置いた動きとみられ、世襲体制の確立にも道筋を付けた格好だ。
 
旧ソ連最貧国とされるタジクは、ロシアなどからの出稼ぎ労働者の送金が国内総生産(GDP)の4割に達するが、ロシア経済の悪化で送金額が激減。昨年9月には国防次官が政権転覆を狙い武装蜂起したと伝えられるなど社会情勢も不安定化しており、ラフモン氏は権力基盤をさらに固め、国内の締め付けを図る狙いだ。【5月23日 産経】
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ラフモン大統領は“ロシア離れ”を進め、タジク民族主義で国をまとめようとしています。

****理解不能」な言葉使った記者に罰金、タジキスタン****
中央アジアに位置し、旧ソ連の構成国だったタジキスタンでは、ロシア風のサンタクロースをテレビに登場させることが禁止され、子どもに外国名を付けることも禁じられたが、今度は「理解不能」な言葉を使用したジャーナリストに罰金が科されることになった。
 
タジキスタン政府の国語委員会を率いるガウハル・シャリフゾダ(Gavhar Sharifzoda)氏は1日、露インタファクス(Interfax)通信が伝えた談話の中で「ジャーナリストが素朴な読者や視聴者には理解できない言葉を、1日に10個も使う場合もある。国語の規範を甚だしく逸脱するものだ」と述べた。(中略)

人口800万人のタジキスタンでは、公用語のタジク語に対し、アフガニスタンで話されているペルシャ語やダリー語の影響が増しているとして当局が不満を表している。
 
タジキスタンでは旧ソ連時代に広く話されていたロシア語を「民族間のコミュニケーション」に使用する言語として憲法上で認めているが、公用語はタジク語だけとなっている。

内陸の貧困国タジキスタンで長年大統領の座にあるエモマリ・ラフモン氏は、愛国心を高めるためとして、2009年に公用語としてのロシア語の使用を廃止した。しかし、現在もタジク語の表記には、ロシア語のキリル文字の一種が使用されている。【8月2日 AFP】
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「理解不能」な言葉とは何でしょうか?「独裁」とか「強権支配」、あるいは「人権」「民主主義」とかいった類でしょうか?

【「中央アジアの北朝鮮」トルクメニスタン 天然ガス利益で「庶民の笑顔」も
北朝鮮と並んで世界で最も抑圧的な国の一つとされているトルクメニスタンは、更に風変わりです。

****<トルクメニスタン>金色の大統領像…強まる個人崇拝****
中央アジアの資源国トルクメニスタンの首都アシガバートで5月下旬、ベルドイムハメドフ大統領(57)を顕彰する金色の巨大モニュメントが設置された。ロシア通信が報じた。

同国は閉鎖的で独裁的な体制から「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれる。ニヤゾフ初代大統領(2006年死去)時代と同様、07年に就任した2代目大統領、ベルドイムハメドフ氏の個人崇拝が強まっていることを示している。
 
「擁護者のモニュメント」と名付けられた記念碑には、白い岩山を模した高さ15メートルの大理石の台座の上に、高さ6メートルの金張りの騎馬像が載る。大統領は伝統衣装姿で再現され、馬は同国が誇る貴重なアハルテケ種だ。

トルクメニスタン議会は「国民の絶大な要望を受けて設置された」としている。首都中心部にはニヤゾフ氏の黄金像があったが、11年に郊外へ移された。
 
トルクメニスタンは埋蔵量世界4位の天然ガスを有し、「永世中立国」として多角的な資源外交を展開。ウクライナ危機後、ロシアへのエネルギー依存の打開を目指す欧州連合(EU)から新たなガス供給国の一つとして重視されている。【2015年6月1日 毎日】
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前任者のニヤゾフ氏はもっと風変わりで、「わが国固有の芸術でなく、国民にはわからない」などの理由でオペラやサーカスを禁止、また、「田舎の人は字が読めないから」と図書館も廃止しました。
ベルドイムハメドフ大統領はこれらを復活させていますから、やや常識の線にもどったとも言えます。

馬好きで有名なベルドイムハメドフ大統領は、2013年には自身が民族衣装で騎乗して出走していたレースで、トップでゴールした直後に落馬し救急車で搬送されたことも話題になりました。

“この日の出来事について、国営紙ニュートラル・トルクメニスタンはベルドイムハメドフ大統領の大きな写真6枚とともに大統領のレース優勝を4ページを費やして伝えているが、落馬については同紙だけでなくトルクメニスタンの国内メディアは一切触れていない。レースの様子はテレビで放映されたが、大統領のゴールの瞬間で映像は切れている。”【2013年5月3日 AFP】といったあたりに、この国の性質が示されています。

「中央アジアの北朝鮮」は、お上にたてつかなければ安逸な生活が保証されてもいるようです。

****庶民の笑顔、幸せの尺度って・・・・オイルマネーで潤う独裁政権の国****
8月末に、中央アジアのトルクメニスタンを訪れた。
 
国土は日本の面積の約1・3倍。人口は約520万人。有史以来、ユーラシア大陸の遊牧民族がこの地を往来し、1991年、ソ連邦解体に伴い、独立した。

首都アシガバートは建設ラッシュに沸いていた。新しく整備された道路沿いには、近代的なビルが立ち並ぶ。天然ガスの確認埋蔵量は世界第4位であり、街はオイルマネーで潤っていた。
 
電気、ガス、水道代は無料。教育費もかからず、毎月120リットルのガソリンが運転手1人に配られる。郊外のバス停の待合室には誰もいないのに冷房が稼働し、夜は街中の照明が砂漠の中の都市をカラフルに彩る。
 
最近の市民のブームは自転車だ。健康促進のため、大統領が率先して自転車に乗り、大勢を引き連れてサイクリングするさまは、マスゲームにも見えた。
 
独裁政権が続くこの国は、民主化や報道の自由の尺度で、国際団体が北朝鮮と並びワースト上位に挙げる。しかし、少しずつ開放的な政策が取られ、国の印象も変わりつつある。
 
市場で出会った庶民の屈託のない笑顔に、影を見いだすことはできなかった。忙しそうに歩く東京やモスクワの人々の、眉間にしわを寄せる顔を思い出し、幸せの尺度は何なのかを考えさせられた。【2013年9月19日 産経】
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“庶民の笑顔”を呼ぶバラマキを可能としているのが天然ガスのもたらす利益です。

*****うごめく独裁国家・トルクメニスタン/中 資源輸出、日本に着目****
・・・・旧ソ連時代、トルクメニスタンのガスは全てロシア方面へ送られていた。ソ連崩壊直前に初代大統領となった故ニヤゾフ氏は対露依存脱却を模索。1997年にイラン向け、2009年には中国向けのパイプラインが開通した。
 
今や中国は最大のガス輸出先。一昨年には取引量が約260億立方メートルまで膨らみ、中国が国外から輸入するガスの4割強を占めるに至った。中国は東部レバプ州のガス田に権益も有し、約2000人の労働者らを送り込んでいる。中国留学も増えてきたという。
 
中国はロシアに代わる主役となったが、「大統領は過度な対中依存にも危機意識を持っている」と上月大使は指摘する。昨年末にアフガニスタン、パキスタンを経由してインドへ至る新ルート「TAPI」パイプラインを起工したのも、輸出先の多角化を図るためだ。(後略)【4月13日 毎日】
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2011年には、中国からの5000万元(約6億円)相当の無償援助の一環として、中国パソコン大手、聯想(レノボ)のノートブックPCが無償で小学1年生全員に提供されることも決定しています。

輸出先多角化として日本が注目されているとのことで、「今年9月から初・中等教育機関で日本語教育を始める」「日本から教員を招き、学生には日本留学させる」とのことです。

ただ、“ただ、ロシアの中央アジア専門家、マラシェンコ氏は「多角化は順調とは言えない」と指摘する。TAPIラインの建設にはアフガニスタン情勢や印パ関係の変動という大きなリスクがある。ガスの製品化も「売り先を十分に考えていない」(外交筋)のが実態。バラ色の展望が行き詰まる可能性も排除できない。”【同上】とも。

来年9月には、アジア・オリンピック評議会(OCA)が主催し、トルクメニスタンにとっては独立以来初の大規模な国際スポーツ大会も開催され、また、日本と中央アジア5カ国が2004年から続ける多国間外交の枠組みでも、今年初めて議長国として外相会合を主催するなど、部分的に開放政策も取られています。

ただし、不安定要素も。

****うごめく独裁国家・トルクメニスタン/下 開国、治安にリスク****
・・・・遊牧民族の流れをくむ部族間の不和も深刻だ。独立以来の2人の大統領は共に中南部が基盤のテケ族出身で、別の有力部族が暮らす東南部マルイ州で不満が高まっているとの情報もある。
 
マラシェンコ氏は「イスラム教、部族社会、エネルギー資源、独裁者といった要素はかつてのリビアによく似ている」と指摘。リビアでは11年の内戦でカダフィ政権が崩壊後、二つの政府が樹立され、混乱に乗じてISが実効支配地域の拡大を狙う。

安定の要となる天然ガスの価格低迷が続き、失業率の上昇が懸念される。独裁国家の近未来には暗雲が漂う。”【4月14日 毎日】
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経済が上手く回らなくなっても政権批判は一切許されないのが、こうした国の現実です。
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キルギス  「中央アジア随一の民主国家」で自爆テロ 狙いはウイグル族を抑圧する中国か?

2016-08-30 22:47:06 | 中央アジア

(爆発で上がる煙 【8月30日 朝日】)

【「中央アジア随一の民主国家」キルギスで増えるイスラム過激派 卒業しても国内では就職困難
中央アジアのキルギスで中国大使館を狙ったとも思われる自爆テロが起きています。

****キルギスの中国大使館に自動車が突入し爆発、自爆テロか****
キルギスの首都ビシケクの中国大使館で30日、自動車が門を破って突入しようとして爆発。自動車を運転していた男が死亡したほか3人が負傷した。自爆攻撃とみられている。
 
内務省報道官は、自動車が中国大使館の敷地内で爆発したとし、ラザコフ副首相が爆発を「テロ行為」と述べたとしている。
 
事件は0400GMT(日本時間午後1時)ごろ発生した。警察と国家治安当局が調査している。
 
イスラム教徒が大半のキルギスでは、過激派組織「イスラム国(IS)」との関連が疑われる武装メンバーが当局によって頻繁に拘束されている。
 
また、キルギスを含む一帯では、ウイグル族で構成する反中国武装集団も活発に活動している。2014年には中国・キルギス国境を不法越境した武装集団のメンバーとみられる11人をキルギス国境警備隊が殺害している。【8月30日 Newsweek】
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キルギスをを含む中央アジア一帯は、かねてよりイスラム過激派の活動が報じられているエリアです。

“中央アジアのキルギス、ウズベキスタン、タジキスタンにまたがるフェルガナ盆地はイスラム過激派の温床として知られる。キルギスで1999年、日本人技師4人の拉致事件を起こした「ウズベキスタン・イスラム運動」(IMU)は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓ったとされている。”【8月30日 産経】

昨年末にはユニセフ関係者から、キルギスで中東イスラム色が濃くなっていることへの懸念も報じられていました。
背景には、まずは経済問題。働き口がない状態では過激思想が容易に拡散します。
更に、民族問題などもあります。

****キルギスで強まる「中東イスラム色」、過激派にリクルートされる若者も****
中央アジアのキルギスで、イスラム武装勢力にリクルートされる若者が現れ始めた――。これは、国連児童基金(UNICEF)の杢尾雪絵キルギス事務所代表が10月30日に都内で開かれた活動報告会で語ったもの。

「キルギスでは年々、中東のイスラム色が濃くなっている。経済や教育、民族対立などさまざまな要因がそこには絡み合っている」と語った。

イスラム武装勢力に入る若者が増える最大の要因は、大きな産業がないことだ。キルギスの1人当たり国内総生産(GDP)は1299ドル(約16万円、2014年)で、パキスタンと同じぐらい。

GDPの約3割を海外出稼ぎ労働者からの送金に依存しているのが特徴だ。学校を卒業しても、富裕層やコネをもつ者以外は国内で就職することは厳しい。

就職難に、「やりがいのあることがしたい」「自分の力を試したい」といった思いが加わって、若者はイスラム武装勢力に入隊する。

杢尾氏は「正確な数字は出ていないが、一部の調査では200~300人といわれる」と指摘する。


UNICEFは若者の武装化を阻止するために、キルギスの情勢を安定させたい考えだ。経済や教育、他民族理解など複数の分野を支援する「平和構築事業」を手がける。主なターゲットは青少年と幼い子どもたちだ。

教育分野では「青少年センター」を設置する。このセンターでは、コンピュータや英語、ロシア語などのスキルのほか、平和や他民族との共存をどうやって実現できるかなどについても学ぶ。「若いときから教養を身につけ、平和を考えることで、社会で活躍できる人材を育てられる。ひいては国の情勢安定にもつながる」と杢尾氏は効果を強調する。

またUNICEFはかねて、平和構築事業の一環として、コミュニティを基盤とする幼稚園を設置してきた。物件探しや家具作りなどを地域住民と一緒に進めることで、その地域が一体となる。すでに64の幼稚園を立ち上げた。地域の安定につなげる狙いがある。

キルギスの情勢を悪化させる潜在的な要因のひとつになっているのが民族対立だ。キルギスは、人口の7割を占めるキルギス人のほか、ウズベク人、カザフ人などが暮らす民族複合国家。民族対立が起こることも少なくない。2010年にはキルギス人とウズベク人の間で大きな暴動が発生。470人が死亡、40万人が避難を余儀なくされた。

平和構築事業には、民族対立を防ぎ、政情安定を目的とする「複合言語教育」がある。少数民族も、国語であるキルギス語、公用語であるロシア語を学び、加えて自らの言語も維持できるプログラムだ。それぞれの少数民族がアイデンティティを保ち、ともに学ぶことで異なる民族同士の対話が生まれることを目指す。

キルギスは、実は、中央アジアで随一の民主国家だ。独裁体制を強めるウズベキスタンやタジキスタンなどの周辺諸国とは対照的。中央アジアの「希望の星」と称される。【2015年11月8日 ganas】
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独裁体制国家が多い中央アジアにあって、キルギスは“中央アジア随一の民主国家”とされています。
ただ、いろいろと紆余曲折はありました。

2005年の「チューリップ革命」でアカエフ大統領が辞任に追い込まれ、民主化を掲げるバキエフ大統領が就任。
しかし、「民主化の希望の星」だったバキエフ大統領も“プーチン流独裁に陥ったとされ”【ウィキペディア】、国民の不満が高まりました。

その後の政変・混乱については、2010年12月20日ブログ“旧ソ連、ベラルーシはルカシェンコ支配継続、キルギスは中央アジア諸国で初の議会制民主主義実現へ”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101220で、以下のように。

*****政変、人道危機を超えて****
従来からの南北の政治対立を背景に、(2010年)4月、南部出身のバキエフ前大統領が追放される政変が起きましたが、その政治混乱のなかで、ウズベク系住民が多い南部では、これまた以前からあるキルギス系とウズベク系の民族対立が表面化し、400人以上の死者を出す民族衝突に発展。隣国ウズベキスタンに越境したウズベク系難民は10万人以上に達しました。

また、キルギス国内の避難民も約30万人に達し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、キルギスに「人道危機」が迫っていると警告を発する混乱状態にもなりました。

そうした混乱を収束させるべく、6月27日にはオトンバエワ暫定大統領の信任と新憲法案の是非を問う国民投票が行われ、投票総数の約9割の賛成で承認され一応の安定に向けて動き出しました。

10月には、他の中央アジア諸国が独裁体制を敷くなかで、中央アジア諸国で初の議会制民主主義を実現するための議会選(1院制、定数120)が実施され注目を集めました。
再度の民族衝突なども懸念された選挙でしたが、大きな混乱なく実施されました。【2010年12月20日ブログより再録】
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2010年の政変後、中央アジアで初の議院内閣制に移行。憲法改正により、大統領権限の多くが首相や議会に移されるなどの政治改革が進められました。

2011年10月30日実施された大統領選挙では、連立与党の社会民主党を率いるアルマズベク・アタムバエフ首相(55)が当選。2代続けて市民の抵抗運動で大統領が失脚してきたキルギスにあって平和的な権限移譲が初めて実現しました。

非常に残念な言い方ではありますが、キルギスのこうした民主的で自由な政治状況が、イスラム過激派の跋扈を許した側面もあるのかも。中央アジアの独裁国家は人権侵害が問題視されていますが、その独裁で過激派の流入・活動を抑えているという側面もあります。

もちろん、経済問題や民族対立にきちんと対処できていれば、民主的社会にあっても問題は生じないのですが。
アラブの春の発端となったチュニジアが、地域では随一の民主的国家である一方で、経済不振から多くのイスラム過激派を生んでいるのとも似ています。

中国の抑圧的政策に反発したウイグル族過激派による犯行との見方も
今回の自爆テロが中国を標的にしたものだったのかはまだ定かではありませんが、“ワゴン車が大使館の門に突っ込もうとし、その際に爆発した”【8月30日 産経】とのことで、中国大使館の壁が崩れたとか。

当然ながら、中国は「極度に暴力的な攻撃」と非難し、キルギス当局に対し「事件の真相解明」を求めています。

中国との関連では、冒頭記事にもあるように“ウイグル族で構成する反中国武装集団も活発に活動している”【8月30日 Newsweek】状況があります。
“中央アジア諸国の治安当局はまた、中国新疆ウイグル自治区の独立派が域内に浸透を図っているとの見方を強めてきた。”【8月30日 産経】とも。

ソ連が崩壊すると、中国は直ちに旧ソ連から分離独立した中央アジア諸国を歴訪し、国交を結んでいます。
“これらの国は、すべてその昔、シルクロードの沿線上にあった、中国にとっての「西域(さいいき)」である。まるで「ここは私の陣地」と言わんばかりの「唾付け」であった。”【2015年10月26日 遠藤 誉氏 Newsweek】

その後も、習近平主席の掲げる一帯一路構想において、中央アジアは極めて重要な位置を占めるに至っています。

しかし、国内にウイグル族問題を抱える中国にとって、中央アジアにおけるイスラム過激派の拡大はウイグル族の反体制運動を刺激する極めて敏感な問題でもあります。

中国国内のウイグル族関連の問題については、最近はあまり報道を目にしません。中国当局が力で抑え込んでいる状況でしょうか。

6月に来日した亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長は「火炎放射器で殺害するなどすさまじく、ウイグル人は土地や家を売って難民となっている」ちょっとしたトラブルや中国人とにらみ合いなどをしたら、その場で射殺する権限が現場の警察官に与えられている」【6月2日 産経】とも語っています。

こうした「圧政」がイスラム過激派を生んでいるとの批判もありますが、中国当局は反撥しています。

****中国の圧政でウイグルから百人超がISに加入=米報告に中国反発****
2016年7月20日、中国の政策が「イスラム国」への加入を助長しているとの指摘に対し、中国の専門家が反論した。

仏AFP通信は20日の報道で米シンクタンクの報告を紹介。それによると、中国が新疆ウイグル自治区において宗教活動を制限する政策をとっているために、同自治区で100人余りのイスラム国加入者を招いたと指摘した。

同指摘に対し新疆大学中外研究院の潘志平(パン・ジーピン)教授は、「めちゃくちゃなロジックだ。この考えだとイスラム国に加入している米国人や英国人、フランス人も自国の政策が原因だということになる。政府は新疆ウイグル自治区の正常な宗教活動に干渉していない」と述べた。

さらに、中国の反テロ専門家も潘教授と同じ見解で、「イラク戦争がなければ今のイスラム国は存在しなかっただろう。米国が軍事的な干渉を世界で展開したことがイスラム国の台頭を招いた主因である。米国の政界とシンクタンク、メディアは最も自国の行為を見直してみるべきだろう」と批判した。【7月21日 Record China】
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隣接するキルギスなど中央アジア諸国でイスラム過激派が浸透すれば、いくら中国国内でウイグル族を抑圧しても限界があります。

今回自爆テロは、そうした問題を中国指導部に突き付けるものともなります。

隣国ウズベキスタンで強権支配を続けるカリモフ大統領死亡?】
なお、“キルギスとウズベキスタンの両軍が1週間以上、国境を挟んでにらみ合い、一触即発の危機を続けた”【3月27日 時事】といった話もあった隣国ウズベキスタンでは、長期独裁を続けるカリモフ大統領の死亡報道も流れていますが、当局は否定しています。

****ウズベク大統領「死亡」報道 当局は否定、権力争い激化か****
中央アジアの通信社「フェルガナ・ルー」は30日までに、ウズベキスタンの独裁者、イスラム・カリモフ大統領(78)が脳出血のために「死亡した」と報じた。ロシアの一部メディアも「死亡」を報じたが、ウズベク当局は否定しており、情報は錯綜(さくそう)している。
 
ウズベク政府は28日にカリモフ氏の入院を発表。29日には、次女のローラ氏が、カリモフ氏は27日に脳出血を起こし、集中治療室(ICU)に収容されていることを明らかにしていた。ローラ氏やウズベク政府筋は「容態は安定している」と説明してきた。
 
フェルガナ・ルーは、「29日午後に死亡した」と報じている。
 
カリモフ氏は1991年のソ連崩壊前からウズベクで最高位にあり、四半世紀にわたって独裁体制を維持してきた。確固とした後継者が指名されていなかったため、権力の空白が長期化すれば、次期大統領ポストをめぐる支配層の内紛が激化する可能性がある。

カリモフ氏が強権統治で押さえ込んでいた反体制派やイスラム過激派が台頭し、地域情勢が流動化する恐れも指摘されている。【8月30日 産経】
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強権統治でいくら抑え込んでも、いつかは噴出します。それも、より大規模、より過激な形で。
それすら許さない圧政で・・・・ということになれば、過激派だけでなく、国民全体が圧殺されます。
コメント

カザフスタン ロシアとの微妙な関係 「ナザルバエフ後」の不安も

2015-09-18 22:56:18 | 中央アジア

(ロシア・モスクワで5月9日に行われた対ドイツ戦勝70周年式典に参加したナザルバエフ大統領(左)、プーチン大統領、習近平国家主席 【5月11日 WEDGE Infinity】)
 
国際的に重要性を増すカザフスタン
中央アジアのカザフスタンは1991年にソ連邦が崩壊して生まれた中央アジア諸国の一つですが、国土は日本の7倍もある大きな国です。

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カザフ民族は「草原の民」と呼ばれる。つまりソ連時代に定住を強制されるまでは広い草原を遊牧する生活をしていた。

カザフスタンの人口は16百万人を多少上回るが、カザフ民族はその6割強を占めるにすぎず、22%を占めるロシア系を始め、100を超える民族が住んでいる。

しかし多民族国家でありながら、隣国ウズベキスタンやキルギスと違って流血を伴うような民族問題はこれまで発生していない。”【外務省 特命全権大使 角 利夫氏 http://www.iist.or.jp/jp-m/2013/0220-0895/
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カザフスタンは国際的にその重要性を増しています。
その第1の理由は、石油やウランなど鉱物資源が豊富なことによります。

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石油、天然ガスなどのエネルギー資源、鉱物資源に恵まれた資源大国。石油埋蔵量は300億バレル(世界の1.8%)、天然ガス埋蔵量1.5兆立方メートル(世界の0.8%)(2014年BP統計)。

また、レアメタルを含め非鉄金属も多種豊富である(ウランの埋蔵量は世界2位、クロムは世界1位、亜鉛は世界6位(2014年:米日地質調査所))。【日本外務省HP】
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カザフスタンの重要性が増していいるもう一つの理由はその地政学的位置です。

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カザフスタンは中国のアキレス腱である新疆ウイグル自治区に隣接し、またソ連との長い国境には自然障害物がない、同国はいわば中ロの「柔らかい腹」に面して位置している。

またカザフスタンを含む中央アジア諸国はイランやアフガニスタンにも近接し、過激なイスラム思想の伝播という観点からも、またそれら諸国への様々なオペレーションという観点からも重要な位置にある。【前出 角 利夫氏】
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ロシアを警戒しつつ、関係は維持
政治的には、91年の独立以来、25年に及ぶナザルバエフ大統領(75)の長期政権が続いており、外交的にはロシアとの関係が主軸なっています。

“政治・経済面で密接な関係を有するロシアとの良好な関係維持を重視。ロシアを中心とするCIS関連の国際機関(ユーラシア経済同盟、集団安全保障条約機構など)にはあまねく参加している”【日本外務省HP】

もっとも、ロシア一辺倒という訳でもなく、微妙なところもあります。
特に、近年のロシアによるクリミア併合などの動きには、ロシア人が2割以上いるカザフスタンとしても警戒感を持っています。

****カザフ、「国家なかった」に反発=歴史アピール高まる―プーチン発言に対抗****
旧ソ連圏の中央アジア・カザフスタンで、国家としてのアイデンティティーや歴史をアピールする動きが高まっている。

15〜19世紀に存在した「カザフ・ハン国」の創設550年を祝う式典が最近、首都アスタナで盛大に行われ、ナザルバエフ大統領がカザフの歴史を読み上げた。

背景には昨年のウクライナ介入後「カザフに(歴史上)国家は存在しなかった」と口を滑らせたロシアのプーチン大統領に対する反発がありそうだ。

プーチン大統領は昨年8月、若者らとの会合で「(ソ連崩壊まで)カザフに国家は存在しなかった」と発言している。ロシアの極右・自由民主党のジリノフスキー党首もカザフなど中央アジアの統合に言及したことがある。

アゼルバイジャンのアリエフ大統領やキルギスのアタムバエフ大統領を招き、カザフ・ハン国に関する式典が11日、アスタナで行われた。

ナザルバエフ大統領が、式典の目的について「われわれの輝かしい先人をたたえるためだ」と高らかに訴えると、会場は万雷の拍手に包まれた。カザフ政府関係者は「カザフの歴史を振り返るまたとない機会だ。ソ連時代は異なる歴史が教えられていた」と語った。

カザフはロシアと国境を接する北部や北東部にロシア系住民が多い。人口比はカザフ人約65%に対し、ロシア系は約22%。ナザルバエフ大統領が1997年に南部アルマトイから北部アスタナに遷都したのは「カザフ人を北部に進出させる狙いがあった」(関係筋)とも言われる。

カザフ政府はウクライナ危機でロシア批判を控えている。
しかし、ロシアヘの警戒心は隠せない。ナザルバエフ大統領は4月の大統領選勝利後に発表した五つの制度改革の中に「統合された国家」を盛り込んだ。クリミア半島併合のような事態は、カザフでは許さないと明確にしている。

一方、カザフはロシア主導で今年発足した「ユーラシア経済同盟」の加盟国でもある。ロシアとは約7000キロにも及ぶ国境で接している。「ロシアの影響力は圧倒的」(外交筋)だ。カザフは今後もロシアを警戒しつつ「関係維持に心を砕く」(同筋)ことになりそうだ。【9月18日 時事】 
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特に、カザフ北部ではロシア系住民が多数派で、ロシア語地名も多いことから、ロシアの極右指導者、ジリノフスキー自民党党首はカザフ北部を「ロシア固有の領土」と呼んだことがあります。

ナザルバエフ大統領はロシアによる分離独立運動を警戒して、カザフスタン北部へのカザフ人入植を
進め、昨年7月には分離活動や国境変更に絡む活動を禁止する新法を制定しています。

プーチン大統領の「カザフに(歴史上)国家は存在しなかった」云々の発言は、昨年8月29日、モスクワ郊外で行った若者との対話における、「カザフは一度も国家を持ったことがないが、ナザルバエフ大統領はそこに国家を創設した。彼は賢明で退陣する意思もないが、自分が辞めたあとの国家の将来を憂慮している」「広範なロシア経済圏に加わったほうが、産業、技術の発展の上でもカザフにとってプラスだ」との発言です。

カザフスタンを恫喝するような発言は、ウクライナ問題でロシア・プーチン政権が求めた欧米への逆制裁への参加要請をカザフスタンが拒否したこと、それへのプーチン大統領の苛立ちが背景にあるようです。【4月2日 フォーサイト 名越健郎氏 “中央アジアの優等生「カザフスタン」の憂鬱”より】

影響力を強める中国
一方で、中国との関係が強まっているのは、他の多くの国々と同様です。
世界各国の支部で中国語と中国文化を教える孔子学院がアルマトイに開設され、学生の間では中国語ブームが起きているとか。

****中国、旧ソ連・カザフスタンに接近 ロシアの影響力低下か****
旧ソ連・カザフスタンに中国が接近している。

中国西部と国境を接し、豊富な資源を有するカザフは、中国が提唱する新シルクロード経済圏構想で重要な位置を占める。

ロシアは旧ソ連諸国への中国の影響力浸透を警戒しているが、中国の存在感の高まりに対抗しがたいのが実情のようだ。(中略)

中国の習近平国家主席はカザフを訪れた13年9月、シルクロード構想を打ち出した。カザフの対中輸出額は過去数年で倍増しており、中国による旧ソ連諸国への直接投資の大半はカザフの資源開発向けとされる。

学生の中国語熱の高まりは文化、経済の両面で浸透を図る中国の成功を裏付けているように見える。

カザフも中国と歩調を合わせる。ナザルバエフ大統領は14年12月、シルクロード構想に対する全面的な支持を表明。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加も真っ先に決めた。(後略)【5月8日 産経】
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昨年のカザフの貿易統計では、欧州連合(EU)との貿易が全体の44%でトップ。ロシアは15.8%、中国が14.4%だった。

中国との貿易が急増しており、市場で見た日用品の大半は中国製だった。カザフへの投資・貿易で、中国が近くロシアを抜くのは間違いない。

中国・カザフ間は石油・ガスパイプラインで結ばれているが、近年中国の企業進出や農民の進出が目立つ。南部の最大都市、アルマトイには大型中国人市場があり、数万人の中国人が農地をレンタルして収穫している。中国の経済プレゼンスが確実に増大しているのが分かる。【前出 名越健郎氏 “中央アジアの優等生「カザフスタン」の憂鬱”】 
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【「ナザルバエフ後」に不安も
ロシア・中国とのバランスを図りながら・・・というところでしょうが、今後の課題は、プーチン大統領が言及しているように「ナザルバエフ後」です。

ナザルバエフ大統領は11日、長女ダリガ・ナザルバエワ氏(52)を副首相に任命しました。
高齢問題から大統領の後継指名の布石ではないかと臆測を呼んでいるそうです。

****カザフスタン大統領、娘を副首相に任命****
中央アジア・カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(75)は11日、娘のダリガ・ナザルバエワ氏(52)を副首相に任命した。ナザルバエフ大統領は今年4月の大統領選で再選を果たしたが、多くの人々が最後の任期だとみており、大統領の後継者問題にからんだ動きとみられる。

ナザルバエワ氏は同日まで同国の下院議員で、副議長も勤めていた。(中略)

ナザルバエワ氏は、2004年から2007年に下院議員を勤めていたが、2007年に当時の夫、ラハト・アリエフ氏が、銀行員2人の誘拐事件でオーストリアで捜査対象になったことを受け、父親の後ろ盾を失ったと考えられていた。

報道によると、ナザルバエワ氏は同年、国家保安委員会副議長でオーストリア大使だったアリエフ氏と離婚。同氏との間には3人の子どもがいる。

スキャンダルのあと、カザフスタン政府がオーストリアに対して同氏の身柄引き渡しを要求する最中、ナザルバエワ氏は政治の舞台から退き、父親の慈善活動基金を率いていたが、2012年に与党ヌル・オタン党から出馬して下院議員に復帰した。(後略)【9月13日 AFP】
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長女ダリガ・ナザルバエバ氏が国営テレビなどメディアを牛耳るのに対し、次女の夫は資源を握り、更に三女は経済成長で潤う建設業界の利権を握る・・・・といった「身内の権力闘争」が、かつて話題にもなっていましたが・・・・。

ナザルバエフ大統領はソ連時代末期には共産党政治局員の大物で、当時無名のプーチン大統領よりはるかに格上の存在でした。

大国ロシアとの関係をコントロールできているのは、そうしたナザルバエフ大統領の存在感によるところもあると思われますが、「ナザルバエフ後」はどうでしょうか?

社会全体に広がる汚職・腐敗
カザフスタンの最大の問題は社会全体に広がる汚職・腐敗でしょう。
2014年の腐敗認識指数 国別ランキングでカザフスタンは第126位と下位に甘んじています。

カザフスタンでは公的機関の職を得るのに金銭を支払うことがしばしば行われるとか。
当然に、職についたら投資資金を回収しますが、その一部は上位の者に渡され、更にその一部はより上位の者に・・・という形のピラミッド型のシステムがあって、汚職は制度的に再生産されることにもなっています。
(岡 奈津子氏 「カザフスタンにおける日常的腐敗」より)

豊かな地下資源も、利権をめぐる汚職・腐敗が拡大する“資源の呪い”ともなりかねません。

もちろん、カザフスタンでも汚職撲滅対策は行われてはいますが、最高権力が身内に引き継がれるような体制では、大きな改善はあまり期待できません。
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カザフスタンやトルコなどチュルク系民族の、中国の高圧的なウイグル族対策に向ける目

2015-06-16 22:11:01 | 中央アジア

(5月7日、アスタナでカザフスタンのナザルバエフ大統領が行った歓迎式に出席した中国の習近平国家主席 【5月8日 新華社】)

新疆:相変わらずの緊張状態
中国・新疆ウイグル自治区における中国政府の徹底したウイグル抑圧策、その結果としてイスラム過激派がこの地域に浸透しつつあることは、5月25日ブログ「中国新疆のウイグル族問題  当局の徹底した抑圧のもとで忍び込む過激思想」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150525)でも取り上げました。

新疆における厳しい緊張状態は変わっていません。

****ウイグル族2人射殺=手製爆弾で警察襲撃―中国****
米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は28日、中国新疆ウイグル自治区ホータン地区モーユー県で25日夜、ウイグル族6人が手製爆弾を使い、パトロール中の警察部隊に対する襲撃を試みる事件が発生したと伝えた。これでウイグル族2人が射殺され、4人が逃亡した。

6人は20〜26歳で、4人が既に拘束されたかどうかは不明。当局は、地元の18〜60歳の男性住民を集めて4人に関する捜査の手掛かりを収集している。【5月29日 時事】
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ISによる組織的勧誘も報じられています。

****ウイグル族をISISに勧誘していた組織が特定****
トルコの新聞、ミリエットが、中国ウイグル族をテロ組織ISISに勧誘する組織が特定され、トルコとシリアの国境でウイグル族400人が逮捕されたことを明らかにしました。

ミリエットは、2日火曜、「ウイグル族への罠」というタイトルの一面記事の中で、「ウイグル族のための新たな祖国を約束し、彼らをISISの罠にはめていた組織が特定された」としました。

この報告によりますと、この組織は、新疆ウイグル自治区の不満を抱くトルコ系ウイグル族に対し、弾圧のない自由な祖国と宗教的な自由を与えると約束し、彼らをISISの罠にかけていたということです。(後略)【6月2日 Iran Japanese Radio】
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北京とモスクワの意向で勝手に引かれた国境線は、まさに自由を剥奪された象徴
中国のウイグル族対策については、欧米からの批判がよくとりあげられますが、新疆に関心を持つのは欧米だけだはないようです。ある意味では、欧米の人権批判よりもっと切実・身近な関心です。

****カザフをにらむ孔子学院が、中華思想対イスラムの発火点となる****
中央ユーラシアの背骨である天山山脈。天山の北麓にアルマトイという都市がある。「リンゴの都」の意だ。旧ソ連から独立後、97年までカザフスタンの首都だったこの地に中国政府の文化機関、孔子学院があり、現在約1500人の若者たちが学んでいる。

世界各国の支部で中国語と中国文化を教える孔子学院は中国共産党のプロパガンダ機関と批判され、欧米諸国から軒並み姿を消しつつある。そんななかで、シルクロードの天山北路に09年に設置された校舎だけは活況を呈し、イスラム文化圏にあって異彩を放っている。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は先月に13年以来2度目となる同国訪問を実現し、シルクロード経済圏構想を持ち掛けている。中国の狙いはカザフスタンの豊富な地下資源であり、まさに経済的な権益を確保するための橋頭堡としての役割を孔子学院は果たしている。

それだけではない。中国はまた孔子学院を通してカザフスタンに対する政治的干渉をも強めようとしている。というのも、カザフスタンには中国から亡命してきたウイグル人とカザフ人が大勢暮らしているからだ。

ウイグル人やカザフ人は中国の同化に抵抗している

時は1962年。中国・新疆ウイグル自治区西部のイリとタルバガタイ地区に住むウイグル人とカザフ人は、人民公社など中国の急激な公有化政策に反発。生活レベルが高かったソ連に大挙して逃亡した。中ソ国境紛争の1つとして知られる「イリ・タルバガタイ事件」である。

中ソがイデオロギーをめぐって対立していたこの時期、亡命者はモスクワの対中干渉のカードとして使われてきた。

ソ連崩壊後の今日、彼らは新疆ウイグル自治区における分離独立運動の最大の支持者となっている。中国は孔子学院を通して、亡命者組織を分断し、抑えようと企図している。

「カザフスタンの現代の大ハーン」ナザルバエフ大統領には別の雄略がありそうだ。中央アジア諸国の中でいち早くシルクロード経済圏への支持を表明しており、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加も決めている。

こうした「親中」ぶりの一方で、実は新疆に住むカザフ人への配慮もある。新疆北部に住む約150万人ものカザフ人の大半は、1917年のロシア革命後の移住者たちの子孫だ。

ソ連で遊牧民に対する過酷な定住化政策が導入されていた時期に、それを嫌ったカザフ人は東トルキスタンと当時呼ばれていた新疆側に渡った。

もともと「トルコ系の言葉を話す人々の故郷」を意味するトルキスタン。その一部である東トルキスタンは、ウイグル人にとってもカザフ人にとっても民族の故郷だ。彼らにとって、北京とモスクワの意向で勝手に引かれた国境線は、まさに自由を剥奪された象徴以外の何ものでもない。

ナザルバエフは新疆側で暮らす同胞たちの境遇に目を光らせている。中国政府の高圧的な民族政策が場合によっては民族の新たな大移動を触発する危険性を帯びているので、カザフスタン政府も神経をとがらさざるを得ないからだ。

儒教は伝統的な境界線だった万里の長城を越えるか
孔子に源を発する儒教の思想は歴史的に万里の長城の最西端、嘉峪関(かよくかん)を越えたことはなかった。長城は儒教とイスラムとの境界線でもあった。

一度だけ、中国の為政者たちは東トルキスタンで儒教を強制したことがある。19世紀後半にムスリムたちが清朝に対して大反乱を起こし、鎮圧された後のことである。湖南省出身の中国人軍閥が儒教でもってトルコ系住民たちを中華の臣民に改造しようと試みたが、猛反発を受けて失敗に終わった。


今日においても、新疆ウイグル自治区のウイグル人とカザフ人が最も抵抗しているのは中国への同化だ。
水と油のように混合不可能な儒教思想とイスラム。孔子学院を武器に中華思想をイスラム圏へ広げようとする野望は、新たな火種になる可能性が高い。【6月9日号 Newsweek】
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“水と油のように混合不可能な儒教思想とイスラム”なのかどうかはさておき、カザフスタンには上記のような経緯もあって約23万人のウイグル人が暮らしています。

また、新疆を中心に中国には約150万人のカザフ人が暮らしています。
更に、ウイグルもカザフも同じテュルク系遊牧民族で、血のうえでも、文化的にも近しい関係にあります。

4月に6選を果たしたばかりのナザルバエフ大統領は選挙直後の5月7日、習近平主席のカザフスタン訪問を歓迎した上で「中国との善隣関係はカザフの外交の優先課題だ」と述べ、協力強化に意欲を示していますが、一方で、“中国政府の高圧的な民族政策が場合によっては民族の新たな大移動を触発する危険性”だけでなく、同胞らへの処遇に対する一般的関心も高いことも想像されます。

もっとも、新疆では漢族の圧政だけでなく、カザフ人は同じ少数民族のウイグル人からも迫害を受けている・・・といった話もあるようですので、話は単純ではないかも。【http://www.chatabi.net/colum/3048.html

ウイグル族問題をめぐるトルコ・中国の軋轢
テュルク系遊牧民族という点では一番多いのがトルコ人ですが、トルコと中国の間で、新疆におけるウイグル対策が問題となったこともあります。

今、トルコは中国製戦闘機の導入を検討していますが、トルコ側の過去のウイグル問題への反発を問題視する見方も中国にはあるようです。

****中国の軍事技術導入、たぶん世論が許さない・・・「J−31」戦闘機、トルコが購入の可能性****
中国の大手ポータルサイト、新浪網は12日、トルコが中国の瀋陽飛機工業集団が開発したステルス戦闘機「J−31(殲−31)」の関連技術を購入する可能性があると紹介した。

ただし、トルコは中国から防空ミサイルシステムの「HQ−9(紅旗9)」の輸入を決めたが、世論などのために見送りになったことがあるという。(中略)

瀋陽飛機のJ−31が、トルコの要求に最も適していると主張する専門家もいるという。
しかし新浪網は、「トルコがHQ−9の導入の際に見せた悪行を忘れてはならない」と主張。40億ドルでの購入を決めたが、トルコ国内の媒体による「熱烈な議論」が発生し、入札結果が反故にされたと指摘した。

トルコは西側諸国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)のメンバーだ。NATO関係国の懸念に対してトルコのイスミト・ユルマズ国防相は2015年2月19日、中国から導入する防空システムは、NATOの防空システムとは切り離すと述べた。しかしその後、HQ−9導入は「音沙汰なし」という。

新浪網は、「トルコは常に態度を変転させており、『心と知能が健全な国』として信用するのは、極めて困難」と論評した。

◆解説◆
2009年にトルコ首相ら閣僚が、人権を抑圧してウイグル族を弾圧しているとして、中国政府を非難した。中国ではトルコ批判の報道が続き、多くのネット民がトルコを批判した。

トルコでウイグル問題に対する関心が高いのは、ウイグル族がチュルク(=トルコ)系民族であることに関係している。チュルク民族は中央アジアに広く分布する民族で、アゼルバイジャン、カザフ、ウズベク、トルクメン、キルギス、トゥバ、サハなどがある。

ただしトルコがチュルク系民族に示す連帯感/親近感は「トルコ中心主義」として、他のチュルク系民族には歓迎されない場合もある。【6月16日 Searchina】
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トルコの中国製HQ−9導入が「音沙汰なし」なったのは、アメリカなどが、NATO諸国から武器支援を受けていながら中国製ミサイルを導入しようというトルコへの強い不快感を示し、圧力をかけたせいではないか・・・とか、あるいは、もともとトルコは本気で中国製ミサイルを導入する考えはなく、欧米メーカーに価格の再検討を促すためではないか・・・とも言われていました。

上記記事によれば、国内的にも、チュルク系民族のリーダーとして、中国のウイグル族抑圧に強い批判があるようです。

もっとも、“トルコがチュルク系民族に示す連帯感/親近感は「トルコ中心主義」として、他のチュルク系民族には歓迎されない場合もある”というのも、非常に興味深いところです。

チュルク系民族はトルコ、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、ロシアなどに広範に存在しています。

中国の高圧的なウイグル族への対応は、こうした国・地域との関係にも影響してきます。
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トルクメニスタン  現職大統領、得票率97%で再選 “謎の国”で復活する個人崇拝路線

2012-02-13 20:40:45 | 中央アジア


(トルクメニスタン産の名馬アハル・テケ種のビューティー・コンテストで、愛馬にまたがるベルドイムハメドフ大統領 確かに美しい馬です。国民の娯楽は制約されていますが、大統領のお楽しみは別のようです。なお、漢の武帝が求めた汗血馬は、このアハル・テケ種だった・・・とも言われています。大宛国(フェルガナ)は今のウズベキスタン・タジキスタン・キルギスあたりに相当します。“flickr”より By Kerri-Jo http://www.flickr.com/photos/kerri-jo/5692083814/ )

投票率約96%、得票率97%
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンにトルクメニスタン・・・正直なところ、中央アジアの国々には殆んど馴染みがなく、いつもどの国がどこにあって、誰が指導者で、どんな情勢にあるのか混乱します。
大まかな印象としては、旧ソ連圏の国々で、昨年5月の反政府騒乱でバキエフ前大統領がベラルーシに追われたキルギス以外では、総じて強権的独裁政権が続いているといったイメージです。

中央アジア諸国のなかでも、カスピ海に接し、イラン北部に位置するトルクメニスタンは、あまり情報が伝わってこない国ですが、現職のベルドイムハメドフ大統領が再選されたそうです。

****得票率97%、現職が圧勝 トルクメニスタン大統領選*****
旧ソ連の中央アジア・トルクメニスタンで12日、任期満了に伴う大統領選があった。インタファクス通信によると、現職のベルドイムハメドフ大統領が約97%を得票し、再選を決めた。
任期は5年。選挙には国営企業幹部や地方行政幹部ら計8人が立候補したが、ベルドイムハメドフ氏が圧倒した。投票率は約96%。

大統領は2期目も、豊富な天然ガスの輸出をてこに経済発展をはかる方針とみられる。国の各地に自身の肖像画を掲げさせる個人崇拝や、インターネットの閲覧を規制する情報統制を続けるとの見方も強い。

旧ソ連の崩壊で誕生したトルクメニスタンでは、初代のニヤゾフ大統領が国中に自らの黄金像を建設するなど個人崇拝の体制を確立した。ベルドイムハメドフ氏は当初、開放政策を宣言したものの、前大統領と同様の路線をとっている。【2月13日 朝日】
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どうやれば、“投票率約96%、得票率97%”という結果が出るのでしょうか?日本的常識では考えられない数字です。2007年2月14日に行われた前回大統領選では89.23%の得票率だったそうですから、更に支持率が上昇しています。この数字を見るだけで、おおよその国の雰囲気が窺われます。

【「中央アジアの北朝鮮」に変化も
トルクメニスタンは、ニヤゾフ前大統領(06年12月死去)の独裁政権下で長く外国との交流を断ち、事実上の鎖国体制を取っていたこともあって、「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれていました。
ニヤゾフ前大統領死後、07年2月に就任したベルドイムハメドフ大統領は、欧米を訪問するなど外交姿勢を転換し、変化の兆しを見せているとも報じられていました。

確かに、ニヤゾフ前大統領の施策が、オペラやサーカスを禁止し、図書館も廃止するなど、すこぶる“異様”であっただけに、変化は見られます。

****オペラ、サーカスの禁止解く トルクメニスタン****
来月就任から1年を迎える中央アジア・トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領が、故ニヤゾフ前大統領の独裁体制下で始まったオペラの禁止など風変わりな政策の見直しを進めている。

99年に終身大統領となったニヤゾフ氏は01年、「わが国固有の芸術でなく、国民にはわからない」などの理由でオペラやサーカスを禁止した。これに対し、大統領は19日、文化関係者との会合で「今は市場経済の創出など発展のための移行期。新しい考え方が必要だ」と強調、「今後数カ月で国民のための新作オペラをつくり、上演する」との方針を示した。サーカスについても、閉鎖中の首都アシガバートの国立サーカスを大改修して復活させる考えを明らかにした。
またニヤゾフ氏が「田舎の人は字が読めないから」と廃止した地方の図書館も、改めて整備する考えを表明。15日には、10年以上も途絶えていた大学院教育についても、修士と博士両課程の学生受け入れを決めた。
豊かな天然ガス資源を持つ同国だが、ニヤゾフ氏は教育や文化へ予算を向けずに荒廃させた。その再建が新政権の重要課題となっている。【08年1月23日 朝日】
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“異国の文化”として禁じられていたサーカスは10年4月に9年ぶりに公演されています。
なお、娯楽施設は現在も少なく、首都アシガバートでも、観客の投票で見たいDVDを選び、大型テレビで鑑賞する「映画館」と呼ばれる施設が1軒しかないという状況です。【10年4月26日 毎日より】

自宅でネットを使用するには勤務先の上司から許可状をもらい、国に提出
ネットカフェも出来たようですが、自宅でのネット使用に対する制約など、制限は厳しいようです。

****トルクメニスタン:「中央アジアの北朝鮮」 積極外交、鎖国に変化*****
・・・・インターネットカフェの開設も改革政策の一つ。
公務員用の高層住宅が並ぶ新市街の一角にあるネットカフェでは、4台のコンピューターに若者が向かっていた。その一人で石油関連企業に勤めるハハン・クルバンマメドフさん(25)は「英国とドバイ(アラブ首長国連邦)にいる親類にメールを書いているんだ。自宅のパソコンは通信ができないから」と話した。
同国では自宅でネットを使用するには勤務先の上司から許可状をもらい、国に提出する必要がある。

店長のオバド・セルダさん(23)によると市内にはネットカフェが現在5店ある。いずれも通信省傘下の国営会社が運営し、セルダさんも公務員だ。ただ、利用料は1時間3万マナト(約200円)で、平均月収が1万~1万5000円とされる市民にはまだ割高。セルダさんが「規制がある」と認めるように、反体制派や一部の外国サイトに接続できないのが実態で、1日の利用者は10~30人にとどまっている。・・・・【08年12月6日 毎日】
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そんなトルクメニスタンで、中国の無償援助により小学1年生全員に中国製PCが無償支給されるという報道もありました。
****トルクメニスタン、小学1年生全員に中国製PCを無償支給****
トルクメニスタン政府は、今年度から小学校の1年生全員に、中国製のノートブックPCを無償で支給することを決めた。教育省の関係者が1日、AFPに明らかにした。
中国政府から同国に対する5000万元(約6億円)相当の無償援助の一環として、トルクメニスタン政府と中国パソコン大手、聯想(レノボ)が6月、ノートブックPCの無償提供で合意した。
配布されるノートPCは、基礎文法やアルファベットなどの教育ソフトを備えた小学1年生向けの特別仕様だという。

海外資源を貪欲に求める中国は近年、融資やエネルギー協定を通じて、資源に恵まれた中央アジアの旧ソ連諸国において政治・経済両面での影響力を拡大している。既に7月から全長8700キロのパイプラインを通じたトルクメニスタン産天然ガスの中国向け供給が始まっている。

トルクメニスタンのインターネット事情は、回線の信頼性が低い上に料金も高い。1世帯あたりの高速インターネットサービスの常時接続料金は、月額でおよそ7000ドル(約54万円)もする。それでも、トルクメニスタンの学校や大学の多くが、デスクトップ・パソコンを備えている。

2007年からグルバングルイ・ベルドイムハメドフ大統領がトップの座にあるトルクメニスタンは、世界でも強権的で不透明な点が多い国家の1つだ。【11年9月2日  AFP】
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【“黄金像”復活 ベルドイムハメドフ大統領自身の肖像画も
上記のような変化はあるものの、冒頭【朝日】記事に“ベルドイムハメドフ氏は当初、開放政策を宣言したものの、前大統領と同様の路線をとっている。”とあるように、基本的な政権の性格はあまり変わっていないようです。

ニヤゾフ前大統領に対する個人崇拝の象徴であった巨大な“黄金像”は、ベルドイムハメドフ大統領に変わって、「景観向上」を理由に一旦は撤去されましたが、最近郊外に復活しています。また、ベルドイムハメドフ大統領自身の肖像画が市内あちこちに掲げられているそうです。

****アシガバート 近づけぬ黄金像に迫る*****
・・・・「像には近づけません。遠くから見るのもだめ」。トルクメニスタン外務省職員にいきなり断られた。像がそびえる「中立の塔」は現在、移設工事中で見せられないという。
同国では報道規制が厳しく、今回の同行でも、希望する取材先を事前に提出させられ、認められたのはわずか。移動中は常に当局員が随行した。「少しでも国のマイナスイメージになると判断されると、取材はできない」と、ある住民は語った。

像と中立の塔は、同国が1995年12月12日に永世中立国になったのを記念して建設された。高さはその記念日に合わせ、それぞれ12メートル、95メートルという。両手を上げたニヤゾフ氏が常に太陽の方向を向きながら1日で1回転する。(中略)

かつては首都のど真ん中に立っていた。2代目の現大統領ベルドイムハメドフ氏が昨年、約8キロ離れた郊外に移設を決めたという。街のあちこちにあったニヤゾフ氏の他の黄金像も次々と撤去されて少なくなった。威光排除が目的とされる。その代わりに、至る所にベルドイムハメドフ氏の肖像画が掲げられている。【11年12月19日 朝日】
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三つ巴の天然ガス争奪戦
“謎の国”トルクメニスタンが話題になるのは、多くは、その豊富な天然資源を巡ってのことです。
なかでも、天然ガスの確認埋蔵量は7兆9000億立方メートルで世界第4位(1位はロシアの43兆立方メートル)とされており、従来から独占してきたロシア、ロシアに対抗するパイプライン計画“ナブッコ”を進める欧州、新たに参入した中国の三つ巴の資源争奪戦が展開されています。

****トルクメニスタン:中国へ天然ガスの直通パイプライン完成*****
世界有数の天然ガス埋蔵量で知られる中央アジアのトルクメニスタンから中国までの直通パイプラインが完成し、14日、起点となるトルクメン東部サマンテプで開通式典が開かれた。同国からの天然ガス輸出はこれまでロシアにほぼ独占されてきたが、中国向けパイプラインの開通によってロシアと中国、別のパイプライン計画を推進する欧州の間で三つ巴の争奪戦が激しさを増しそうだ。

タス通信によると、完成したパイプラインはトルクメンからウズベキスタン、カザフスタンを経て中国・新疆ウイグル自治区へ至る約2000キロ。同自治区から沿岸部までの既存のパイプラインと合わせた総延長は約7000キロに及ぶ。06年に関係国が計画に調印し、07年に着工。約73億ドルとされる建設費の多くを中国が負担したという。

開通式典には、中国の胡錦濤国家主席ら沿線4カ国の首脳が出席した。トルクメンのベルディムハメドフ大統領は式典に先立つ13日、胡主席との会談で「地域の安定要因となる傑出した世紀の事業が完成した」と述べた。
同大統領によると、中国への天然ガス輸出量は最大で年400億立方メートルを予定しており、従来のロシアへの輸出量(年約500億立方メートル)に匹敵する。対露輸出は今年4月のパイプライン事故以来、価格や輸出量を巡る対立もあり停止中。中国という巨大な競争相手の出現でロシアは交渉上、厳しい立場に立たされそうだ。

欧州連合(EU)主導のロシア迂回(うかい)パイプライン「ナブッコ」計画も、トルクメンを有力供給源の一つとみており、欧州向け輸出ルートの独占を続けたいロシアとの競合が始まっている。

トルクメンは91年のソ連崩壊に伴う独立後、経済的にはロシアに大きく依存する一方、故ニヤゾフ前大統領の独裁政権が「永世中立」を宣言し、事実上の鎖国状態にあった。しかし、07年に就任したベルディムハメドフ大統領は積極外交で欧米やイランとの関係強化に動き、対露依存体質からの脱却を目指している。

一方、ベルディムハメドフ大統領は16~18日、同国元首として初めて日本を訪問し、鳩山由紀夫首相と会談するほか、天皇陛下とも会見する。大統領はガス田開発や液化天然ガス(LNG)技術の向上などに向け、日本に投資や経済協力の促進を呼びかけるとみられる。【09年12月14日 毎日】
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先述の“小学1年生に中国製PC無償供与”の話も、この中国の天然ガス確保戦略の一環です。

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キルギス大統領選挙  初の平和的な権限移譲 国民融和は今後の課題

2011-11-02 21:25:25 | 中央アジア

(投票するアタムバエフ首相 “flickr”より By theseoduke http://www.flickr.com/photos/theseoduke/6297936182/

初めて平和的に権力が移譲
中央アジア・キルギスで30日実施された大統領選挙で、連立与党の社会民主党を率いるアルマズベク・アタムバエフ首相(55)が当選し、平和的な権限移譲が初めて実現しました。

過半数を制することはできず決選投票にもつれ込むのでは・・・との見方もありましたが、得票率は63.22%。次点候補との差は約50ポイント開いており、“昨年にバキエフ前大統領が追放された政変(4月)やキルギス系とウズベク系住民の大規模衝突(6月)など混乱が続いたことから、国民は「安定」を望んだ”【10月31日 毎日】と見られています。

****キルギス大統領選、現首相が大差で勝利*****
昨年の民衆抵抗で独裁的な前大統領が失脚したキルギスで10月30日、政変後初の大統領選があった。中央選挙管理委員会は31日、連立与党の一角、社会民主党党首で親ロシアのアタムバエフ首相(55)がほかの候補に大差をつけて当選したと発表した。

同日午後(日本時間同)の中間集計(開票率99.78%)によると、首相の得票率は63.22%。次点候補との差は約50ポイント開いている。次期大統領の任期は6年で1期のみ。
政変後に新政府を率いてきたオトゥンバエワ暫定大統領が今年末に任期満了を迎えるのに伴い、実施された。ソ連から独立後、キルギスでは2代続けて市民の抵抗運動で大統領が失脚しており、今回は初めて平和的に権力が移譲されることになる。

今回の選挙では、投票日直前に3人が立候補を取りやめ、最終的に残った候補者は16人だった。中央選管によると有権者数は約300万人で、投票率は60%を超えた。
キルギスは政変後、独裁的な大統領が居並ぶ中央アジアで初の議院内閣制に移行。憲法改正により、大統領権限の多くが首相や議会に移されるなどの政治改革が進められてきた。(ビシケク=関根和弘) 【10月31日 朝日】
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有力候補は、産業が集中する北部の出身のアタムバエフ首相、貧困層が多い南部を地盤とするマドゥマロフ、タシエフ候補でした。
バキエフ政権崩壊後、大統領権限を縮小して議会の裁量を拡大する政治改革が行われ、アタムバエフ首相はこの改革を引き継ぐ立場で、大統領選はその最終仕上げと位置づけられています。一方、対立候補のタシエフ氏らは大統領権限の拡大を訴えていました。【10月31日 産経より】

【「国民融和」へ向けた1歩ではあるが、融和実現は今後の課題
選挙選は概ね公正・民主的に行われたようです。
アタムバエフ首相は首相職を休職して選挙戦に臨む形で、政府権力の不正行使が起きないように配慮しています。
なお、TVニュースによれば、有権者を登録する段階で、準備が不十分だったり、一部地域で恣意的な操作が行われ、国民の権利が十分に保証されなかった点はあったとのことです。

ウズベキスタンやタジキスタンなど独裁色の濃い国が多い中央アジアにおいて、民主的な選挙で平和的な権限移譲が実現できたことは大きな意義があります。
また、キルギスはアメリカ・ロシア両国が軍事拠点を有する中央アジアの要衝であり、アフガニスタンに近く麻薬の密輸ルートになっているともいわれており、キルギスが政治的に安定することは、この地域全体の安定化にも資すると思われます。

キルギスは従前より南北対立が根底にあり、先のバキエフ前大統領が追放された政変もそうした政治環境がありました。
また、南部地域を中心にキルギス系と少数派ウズベク系の民族対立も根深く存在しており、昨年6月の衝突では約470人の犠牲を出しています。

今回当選したアタムバエフ首相は「国民融和」を掲げているのに対し、対立候補は「キルギス人のキルギス」を掲げており、アタムバエフ首相の勝利は「国民融和」へ向けた1歩と評価することができます。

ただし、獲得票の中身を見ると、北部チュイ州出身のアタムバエフ首相が北部で圧倒的な支持を集め、南部でも少数派ウイグル系の票を獲得したのに対し、南部キルギス系住民の票は南部出身の対立候補に流れたようで、南北対立、キルギス系対ウイグル系の対立が解消されたものではありません。
今後のアタムバエフ新大統領の手腕によるところが大きいと言えます。

プーチン首相が掲げる旧ソ連諸国の再結集を後押し
アタムバエフ首相は、国際関係では“親ロシア”と見られています。
あの「ウラジーミル・プーチン峰」命名を主導した人物だそうです。

****親ロシアの現首相優勢 キルギス、政変後初の大統領選****
昨年の政変で独裁的な大統領が退陣し、中央アジア初の議会制共和国となったキルギスで30日、政変後初の大統領選がある。親ロシアのアタムバエフ首相(55)が優勢で、当選すればロシアのプーチン首相が掲げる旧ソ連諸国の再結集を後押しすることになる。(中略)

同氏は、重点公約としてロシアとの関係強化を掲げ、ロシア、カザフスタン、ベラルーシでつくる関税同盟への加盟を主張。アフガニスタンの対テロ作戦で米国が使用している空軍基地をめぐっては、3年後の返還を言明している。

首相就任直後に国内の山脈の一つを「ウラジーミル・プーチン峰」と名付ける動きを主導するなど、ロシア大統領への復帰が確実なプーチン氏とは特に親密な関係を構築してきた。プーチン氏は最近、旧ソ連諸国を経済的に再統合する「ユーラシア連合」構想を提唱しており、アタムバエフ氏が当選すれば、構想前進につながりそうだ。【10月29日 朝日】
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上記記事にもあるように、米軍がアフガニスタンへの輸送拠点として使用するマナス空軍基地については、「2014年以降、民間の航空拠点になる。いかなる軍事基地も置かない」と、14年で閉鎖することを明言しています。
なお、首都ビシケク近郊のカント基地にはロシア軍が長期駐留しています。

立候補予定者全員にキルギス語の試験
ただ、全体的にロシアの影響力が強いキルギスにおいては、キルギスのアイデンティティー維持も重視されており、今回選挙に際しても、候補者にキルギス語の試験が課されたそうです。

***候補予定者に国語試験 不合格5人 キルギス大統領選****
30日に投票があった中央アジア・キルギス大統領選では、立候補予定者全員に国語の試験を課している。ソ連崩壊から20年たった今でもロシア語が日常的に使われており、キルギス語を満足に話せない人がいるためだ。合格しなければ立候補できない仕組みで、今回は5人が不合格だった。

同国中央選管によると、憲法や選挙法は、キルギス語が使えることを大統領選立候補の条件としている。キルギス語委員会が作成した「読む、書く、話す」の試験が9月に行われ、文学作品の一節を音読させたり、選挙公約をキルギス語で書かせたりした。
試験の模様はテレビで中継された。同委員会12人が採点した結果、当時立候補を表明していた25人が受験、うち5人が不合格となり、立候補資格を失った。【10月31日 朝日】
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試験の模様はテレビで中継されたとのことですが、さぞかし面白い番組になったのでは・・・というのは部外者の無責任な感想です。
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