孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  進まぬ関係改善 イスラエルのガザ空爆で停戦崩壊の危険も

2013-04-30 21:04:37 | パレスチナ

(ガザ地区南部のラファで、輸出用に栽培されたカーネーションを食べるヒツジたち 【4月26日 AFP】http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2940951/10641365)

イスラエル軍は28日、パレスチナ自治区ガザ南部の空爆しました。
武装勢力イスラム聖戦の軍事訓練施設などを対象とした攻撃で、前日のガザからイスラエル南部へのロケット弾の着弾に対する報復とされています。
昨年11月の停戦合意以降、2度目のガザ空爆であり、イスラエル・パレスチナ関係は再び悪化が懸念されています。【4月29日 朝日より】

****ガザ空爆、武装勢力殺害=停戦後初めて―イスラエル軍*****
イスラエル軍は30日、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ北部を空爆し、武装勢力のメンバー1人を殺害した。イスラエル放送が伝えた。

同軍は、このメンバーが17日の南部エイラートへのロケット弾攻撃に関与したと主張している。2012年11月のハマスとイスラエルの軍事衝突の停戦合意以降、空爆による暗殺作戦は初めて。

停戦合意には「暗殺を含む敵対的な行動の停止」が含まれているが、ネタニヤフ首相は28日、「ロケット弾攻撃には報復する」と警告していた。停戦が完全に崩壊する可能性もある。【4月30日 時事】 
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一進一退を繰り返し、なかなか進展しないパレスチナ問題ですが、下記の短い記事にもそうした情勢が反映されています。

*****輸出できない花、今年も家畜の餌に パレスチナ・ガザ地区****
パレスチナ自治区ガザ地区では今年も、輸出用に栽培された花が家畜の餌にされている。
ガザ地区では欧州市場向けの花の栽培が盛んだが、イスラム原理主義組織ハマスが同地区の実権を掌握して以来、イスラエルが禁輸措置を敷いているため、輸出できないのだ。【4月26日 AFP】
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“輸出できないとわかっている花をなぜ栽培するのだろうか?”と不思議に思ったのですが、“昨年10月に、イスラエルはガザ地区から、欧州向けの花やスパイスの輸出禁止を解除した。花卉農家やミント、バジル農家は、現金収入が得られると期待した。しかし、ガザ地区からロケット弾がイスラエルに撃ち込まれたことにより、イスラエル政府は再び4月8日に禁輸制裁をガザ地区に課した。”【4月29日 La Golondrina http://blog.goo.ne.jp/piita97/e/f8dd3e89465d7b9c91dd235c7cffb44e】といった事情があるようです。
関係改善で栽培に踏み切っても、すぐに関係悪化で輸出できなくなくなるということです。

気の滅入るのような話ばかりですが、少し将来に期待できる?ような話題も。

****パレスチナ・ガザ地区:「敵」の言葉学ぶ子供たち****
パレスチナ自治区ガザ地区の一部の学校で、イスラエルの言語であるヘブライ語の授業が行われている。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが昨年秋から始めた「試験的プログラム」だが、規模を拡大する方針だという。
「敵の考え方を知り、ガザを守るため」と教諭らは教えるが、生徒たちは授業を楽しみ、「将来の夢」さえ抱いている。

ガザ市内にあるハサン・サラマ校。「なぜ私たちはヘブライ語を学ぶのでしょう」。9年生(日本の中学3年に相当)のクラスで教諭がヘブライ語で問いかけると、女子生徒たちが声をそろえてヘブライ語で答えた。「敵を知り、私たちの国を敵から守るためです。イスラエルは私たちの土地を占領しても、私たち(人間)を占領することはできない」

ガザ地区は1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領され、ヘブライ語教育が義務付けられた。だが93年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)で大半がパレスチナ自治区の管理下となり、公立校でのヘブライ語授業は廃止された。

ただ、当時は100万人以上の住民が日帰りでイスラエルで働き、多くがヘブライ語を話した。しかしイスラエルによる07年のガザ封鎖措置以降、ガザを一度も出たことのない市民が増え、ヘブライ語を話す人は現在、約5万人にまで減少しているという。

ハマスのアンナジャー国際広報部長によると、ヘブライ語授業は、現在ガザにある公立校400校のうち、16校の9年生全員と10年生の一部希望者に試験的に実施している。「必要性と需要を考えて、フランス語からヘブライ語への移行を試みている」という。

投石などを理由に、生徒がイスラエル治安当局に逮捕されることも多く、「権利を主張する必要がある」。ガザではイスラエルのテレビなども受信可能で、「彼らが我々との戦争をどう報じているかを知ることも重要だ」と話す。教育省の授業プログラム部門を統括するアナハラ代表は、「生徒の関心が強いので、対象の学校や学年の拡大を検討中だ」と話した。【4月30日 毎日】
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「敵を知り、私たちの国を敵から守るため」とか、逮捕時の権利主張のためとか、厳しい現実を反映した措置のようですが、少なくとも“敵対する相手のことは一切否定する”といった頑なな姿勢からは1歩抜け出しています。

また、イスラエルに包囲された形のガザ地区にとっては、ヘブライ語はイスラエルとの関係が改善すれば経済活動において必要となる知識でしょう。
そうした「期待」も込められているのではないでしょうか。
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欧州各国に広がる「緊縮財政疲れ」

2013-04-29 21:39:52 | 欧州情勢

(スペイン 職探しをする人々 スペインでは、今年1~3月期の失業率が27.2%と過去最悪を更新 特に、16~24歳の若年層では57.2%の高水準に達しています 【4月28日 CNNより】)

【「庶民を犠牲にして、海外に借金返済をしている」】
経済再建の途上にあるアイスランドで、これまで緊縮財政を進めてきた与党が総選挙で大敗したことを、各紙は「緊縮財政疲れ」「改革疲れ」と報じています。

****緊縮財政疲れ、与党大敗 経済破綻のアイスランド総選挙****
2008年の世界的な金融危機で経済が破綻(はたん)状態になったアイスランドで27日、任期満了に伴う国会の総選挙(定数63)があり、緊縮財政を進める与党が大敗した。
欧州各国では、増税や公共サービスの削減に反対する勢力が存在感を増しており、財政再建一辺倒からの修正を迫られている。

経済運営の失敗の責任を問われ、09年の前回選挙で敗北した中道右派の野党独立党と進歩党がともに19議席を獲得。あわせて過半数となり、政権に復帰する。独立党のベネディクトソン党首は「再び責任を託された」と勝利宣言した。

アイスランドはリーマン・ショックに端を発した世界的な金融危機の影響で、大手銀行が破綻、通貨クローナが暴落した。中道左派の社会民主同盟が率いる現政権は、08年11月に決まった国際通貨基金(IMF)からの約21億ドル(約2千億円)の支援を受け、増税などの緊縮策を進めた。クローナ安で輸出産業は競争力をつけ、11年にはプラス成長を達成。一時9%だった失業率は5%台に改善した。

一方で、家計のやりくりに苦しむ国民は政府調査で約4割に上り、「庶民を犠牲にして、海外に借金返済をしている」(英BBC)との不満が充満していた。
独立、進歩の両党は所得減税や住宅ローンの削減を掲げて、不満をすくい上げた。「単なる人気取り政策で、長続きしない」(政治評論家のエギル・ヘルガソン氏)と見る向きもある。両党は欧州連合(EU)への加盟に反対している。

欧州では09年以降の政府債務(借金)危機を受け、財政再建の取り組みが加速した。だが、最近は「改革疲れ」の動きが目立つ。
昨春のフランス大統領選では、最初の投票で反緊縮や脱ユーロを掲げる政党が躍進。「経済成長を促す政策」を訴えた社会党のオランド氏が当選した。28日に発足したイタリアのレッタ政権も、財政再建より雇用を最優先に掲げる方針を明らかにしている。【4月29日 朝日】
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イタリアでは、混迷の末にようやくレッタ政権がスタートしましたが、大統領府でレッタ政権閣僚が就任宣誓式を行っている最中の28日、約500メートル離れた首相府前で失業中の男が拳銃を発砲、警官ら3人が負傷する事件が起きています。

****イタリア首相府前の発砲で警官2人負傷、容疑者は無職の男*****
イタリア10+ 件首都ローマにある首相府前広場で28日、無職の男(49)が銃を発砲10+ 件し、警官2人が負傷した。

医師らの話によると、警官1人は首を撃たれており、重体だという。もう1人の警官は足を負傷した。警察によると、スーツ姿の男が警官に向けて数発発砲し、「私を撃て」と繰り返し叫んだという。

容疑者は南部カラブリア州出身で無職の男であり、当初は政治家を狙って犯行を計画したが、射程圏内に見つけられなかったと捜査員に語ったという。
この日、中道左派連合のエンリコ・レッタ前民主党副書記長(46)は首相就任の宣誓を行い、新内閣を発足させたばかりだった。【4月29日 ロイター】
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欧州委員長:「限界に達した」】
オランダでも、これまでの緊縮財政を見直す動きが出ています。
こうした「緊縮財政疲れ」「改革疲れ」の空気を感じているEU首脳からは、「(緊縮)政策は基本的には正しいが、限界に達したと個人的に考えている」といった発言も出ています。

****現在の緊縮政策、限界に達した=バローゾ欧州委員長****
欧州委員会のバローゾ委員長は22日、欧州連合(EU)がここ数年、金融危機に対処すべく推し進めている緊縮財政政策は限界に達した、との見方を示した。

当地での会議「ブリュッセル・シンクタンク・ダイアローグ」で委員長は、「(緊縮)政策は基本的には正しいが、限界に達したと個人的に考えている」と述べた。「政策が成功するためには、適切な策定のみならず、最低限の政治・社会的支援が必要とされる」と説明した。

そして緊縮か成長かという二者択一の選択は「全くの誤りだ」と明言し、緊縮政策と平行して成長促進策も存在すべきとの考えを示した。
「(緊縮策は)不可欠だが、短期的であっても成長および成長策をさらに強調することで補完されなければならない。(緊縮策を)短期的な成長促進策で補完する必要がある」と繰り返した。

財政赤字を国内総生産(GDP)に対し3%に抑えるEU規則の順守において、一部の国が時間的猶予を与えられる可能性も示唆した。
「財政赤字修正政策は基本的に正しいが、(赤字修正)ペースの微調整に関する協議は常に可能だ。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)と欧州連合財務相会議(ECOFIN)が最終決定を下すことから欧州委員会は、過剰赤字(是正)過程の延長を提案している」と指摘した。

フランスは現在、同目標達成の延長を委員会に働きかけている。名目目標は達成できないが、景気対策などの一時的影響を除く構造的財政赤字の削減は目標達成に向かっている、と主張している。【4月23日 Wall Street Journal】
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緊縮財政維持を求めるドイツ
このバローゾ欧州委員長の発言を、ドイツ外相はただちに非難しています。
ドイツ・メルケル政権は、借金による成長政策は痛みを長期的に引きずることになるとして、厳格な緊縮財政を堅持することを自国にも、欧州各国にも求めています。

マイケル・フックス(キリスト教民主同盟の副党首)は、次のように発言しています。
「我々ドイツ国民は緊縮策の困難に耐えている。 他の国民が同じ種類の緊縮政策をする必要はないと我々ドイツ国民に説明することは非常に難しい。 ギリシア人が海辺に行くために、ドイツ人が67まで働かなければならないと説明することは非常に難しい。」【4月29日 The Telegraphより】

こうしたドイツ側の感情の背景にあるものを物語る数字が報じられています。

****ユーロ最貧国はどこ? 保有資産最下位はドイツ****
「キプロス国民は裕福。ドイツ国民は貧しい」。ドイツの主要紙フランクフルター・アルゲマイネが最近の紙面でこう訴えた。意外にも聞こえるが、欧州中央銀行(ECB)が公表したユーロ圏諸国の国民の保有資産に関する統計が、その根拠となっている。

統計によると、一般世帯が持つ資産の中間値で首位のルクセンブルク(39万8千ユーロ=約5千万円)に続いたのは、ユーロ圏の支援が最近まとまったキプロス(26万7千ユーロ)。債務危機の焦点だったスペインは18万3千ユーロで、イタリアは17万4千ユーロ。ドイツ(5万1千ユーロ)は最下位でギリシャ(10万2千ユーロ)の半分だった。

統計には考慮すべき条件もある。資産には自己所有の家が含まれるため、賃貸が中心で自己保有率が低いドイツ特有の事情も反映されている。とはいえ、欧州最大の経済国の国民の“つつましさ”が表れているともいえる。

ドイツは債務危機で他のユーロ導入国支援の最大貢献国。国内では「放漫」な国を何度も助けることへの不満は強い。だが支援を渋れば「ユーロの最大受益者なのに支援しないのか」と海外からやり玉に挙げられる。
債務危機は複雑だが、一面的ではなくバランスよくとらえる必要性もあるようだ。【4月16日 産経】
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ドイツが他国に厳しい財政規律を求めるのは、欧州経済の安定がドイツにとって死活問題だからでもありますが、ドイツ国内で高まる他国救済への不満、欧州各国で高まる厳しいドイツへの不満、各国にひろがる「緊縮財政疲れ」のなかで、これまでのようにドイツ・メルケル首相が欧州をリードできるか・・・不透明です。
今秋行われるドイツ国内の総選挙も微妙です。
コメント

アフガニスタン  タリバンの「春の作戦」と“外交努力”

2013-04-28 22:19:22 | アフガン・パキスタン

(南部ヘルマンド州の州都ラシュカルガーで当局指示により毎月行われる住民全員参加の清掃活動 衛生改善のほか、堆積したゴミに仕掛けられる爆発物防止にも役立つとか “flickr”より By FMT Helmand http://www.flickr.com/photos/93172215@N05/8670795241/in/photostream/

アフガニスタン軍制服組トップのカリミ陸軍参謀長は、かつて政府の権限が及ばなかった南部カンダハル州やヘルマンド州ですら「軍の掃討作戦で多くのタリバン指導者が殺害され、数年前と比べ大きく治安が改善した」と発言しています。上記の清掃活動などはそうした治安改善の結果のようにも見えます。

しかし、タリバン側は西部ファラー州の裁判所を狙った大規模襲撃などで、カルザイ政権の正統性を否定しようと活動しています。)

メンバーを国軍兵や警察官に紛れ込ませて、ISAFの隊員を攻撃
アフガニスタンでも厳しい寒さの冬が終わり、戦闘再開の季節となっています。
タリバンは「春の作戦」で攻勢をかけることを明らかにしています。
何やら「春の大感謝市」みたいな感じもする作戦名ですが・・・。

****きょう「春の作戦」開始 アフガンのタリバン*****
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは27日、同国に展開する国際治安支援部隊(ISAF)やアフガン政府の高官らを攻撃する「春の作戦」を28日から開始すると宣言した。報道機関に声明文を電子メールで送信した。

タリバンは降雪の多い冬と比べ、春から秋にかけて攻撃を増加させる傾向がある。ISAFの戦闘部隊が撤退を本格化させる中、タリバンが国民に影響力を誇示するため例年より攻勢を強めるとの見方も出ている。声明でタリバンはメンバーを国軍兵や警察官に紛れ込ませて、ISAFの隊員を攻撃する戦法を続けると強調した。

一方、タリバンのメンバーは、アフガン中部ロガール州で21日に拉致したトルコ人8人を含む11人を隣国パキスタン北西部の部族地域で監禁していると明らかにした。部族地域、北ワジリスタン地区にはタリバン内の強硬派ハッカニグループの拠点がある。【4月27日 共同】
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上記記事にある“トルコ人など11名を監禁している”というのは、21日にトルコ人建設労働者を乗せたロシア人パイロットの民間ヘリコプターが緊急着陸し、これをタリバンが包囲して拘束したと報じられている事件です。

春の攻勢は例年のことですが、“メンバーを国軍兵や警察官に紛れ込ませて、ISAFの隊員を攻撃する戦法を続けると強調した”と、具体的戦術に言及しています。
これはISAF内部で疑心暗鬼にさせる心理戦ともとれますが、ISAF・アフガニスタン軍と正面からぶつかるような戦闘ではないということでは、タリバンの戦闘力・組織力が低下してきているとも言われていることを裏付けるものにも思われます。

【「大事なときなのでわれわれの戦略を台無しにしないでほしい」】
一方、タリバンは、アメリカのボストンマラソン・テロ事件に関して早い段階で、事件に関与していないことを表明しました。

****ボストンテロはタリバンの「大迷惑*****
アメリカを再び襲ったテロに、意外な勢力が意外な反応を見せている。
先週、ボストンーマラソンのゴール付近で爆弾テロが発生。3人が死亡し、100人以ヒが負傷したが、この事件で、敵対するアメリカの悲劇を喜ぶどころか懸念を高めたのが、イスラム原理主義勢カタリバンだ。

彼らはこうしたテロがタリバンの評判を損なうことを案じている。国際テロ組織アルカイダをかくまい、同組織に触発された勢力もテロを容認している集団、というイメージを助長するからだ。「われわれはボストンのテロと何の関係もない」とタリバンの元閣僚は本誌に語った。

タリバンは約1ヵ月前に、攻撃を自重するようアルカイダに呼び掛けてさえいる。あるタリバン高官によれば、彼らはアルカイダの最高幹部アイマンーアルーザワヒリに書簡を送付。タリバンはイスラム諸国や世界との関係を改善しようと外交努力を重ねており、「大事なときなのでわれわれの戦略を台無しにしないでほしい」と伝えた。

だが、忠告どおりアルカイダがテロ攻撃を差し控えるかは疑わしい。これまでのところ、ザワヒリからの返答はないようだ。【4月30日号 Newsweek日本版】
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“タリバンの評判”というのも奇妙な感がありますが、一般市民を対象にしたテロで全世界を敵にまわすようなことは考えていないとのことのようです。
“イスラム諸国や世界との関係を改善しようと外交努力を重ねており”ということの中には、アメリカやアフガニスタン政府との交渉も含まれているのでしょうか。

オマル師の生存が確認されてない中で、タリバン組織内は統一がとれていないとの報道もあり、上記 Newsweek記事にあるよなタリバンの意向がどの程度組織内でオーソライズされたものかはわかりませんが、タリバンも14年末の米軍撤退をにらんだ“外交努力”に力を入れ始めているようにも思えます。

前述のようにタリバン側に戦闘力・組織力の低下があるのであれば、タリバンの選択肢も限られてきますので、“外交努力”は今後の具体的和平交渉につながっていくことが考えられます。
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「インド-ミャンマー-タイ3カ国ハイウエー構想」 インパールの記憶 インド北東部民族への差別

2013-04-27 22:48:20 | 南アジア(インド)

(インド・アッサム州の民族衝突で避難したボド族住民 “flickr”より By oxfamindia http://www.flickr.com/photos/91026338@N08/8618600036/)

ハイウエーは東南アジアを通り、民主主義を共有する日本へも続いている
東南アジアを観光する機会が多いため、最近目にした「インド-ミャンマー-タイ3カ国ハイウエー構想」に関する記事が印象に残りました。インパールとミャンマー中部マンダレーを直行バスで結ぶ構想もあるとか。

****大戦の地インパール 印の東南アジア貿易の玄関口目指しハイウエー構想*****
日本がかつて激戦を繰り広げたインド北東部インパール近郊からミャンマーを縦断しタイのミャンマー国境の町メソトへ至る「インド-ミャンマー-タイ3カ国ハイウエー構想」が進んでいる。
インドと東南アジアを結ぶ陸の大動脈にするのが狙いだ。インパールの住民は、民主化努力が続くミャンマーの将来を見据え、隣国からの訪問客の取り込みを狙っている。

インド・マニプル州の州都インパールから南東へ車を2時間半走らせると、ミャンマーとの国境の町モレに着いた。国境に建つ「友好門」をはさみ、モレとミャンマー側の町タムーでは、日用品などを扱う数百件の店がひしめいていた。
1995年に始まったこの地域での国境貿易制度で、両国民は日帰りを条件に査証などを得ずに相手国側の国境周辺地域を訪れることができるようになった。市場は、中国や東南アジア製の安価な商品を求めるインド人でごった返す。

この辺りは、第二次世界大戦中に日本軍が英軍との戦いで無謀な計画のために大敗を喫したインパール作戦が挙行された場所だ。
機械部品店を営むネパール系ミャンマー人のスレッシュ・パラジェリさん(31)は、英軍の勇猛果敢な傭兵(ようへい)として知られ、日本軍に打撃を与えたグルカ兵の孫だという。「ここで働く人の2割はグルカ兵の子孫だ」と話し、「移動のコストや時間を節約したい」とハイウエー完成を心待ちにしている。

ハイウエーは2016年の完成を目指し、インド、ミャンマー、タイが整備を進めている。ミャンマー内の未舗装区間は、インドとタイの支援で改修工事が行われることなっている。

地元の経済効果への期待は熱い。
マニプル州では分離独立などを目指す武装勢力が跋扈(ばっこ)し、長らく外国人は立ち入りに事前の許可を必要としてきた。

しかし、経済開発を目指して約2年前、国境問題を抱える中国とパキスタンの国籍保有者や国境貿易以外のために入国するミャンマー人など一部の外国人を除いてこの規制が解除された。インド領にぶら下がるように帰属し開発から取り残されてきた「辺境の地」マニプル州は外国人訪問者の増加で経済が上向き始め、次はミャンマー人の訪問客を取り込もうと懸命になっている。

今月2~6日には、ミャンマー側のインド国境にあるザガイン地域の代表団11人がマニプル州に招かれた。インパールで近代的な病院とホテルをこの数年で相次いでオープンさせたダバリ・シン・マニプル商工会議所会頭は一行を案内後、「ミャンマーでは民主化が進み、発展の希望が高まっている。ミャンマー人の入国規制を撤廃し、病院訪問客を呼び込みたい。国境付近で英語教室を開いてもいいし、日本人を狙った戦地観光も有望だ」とビジネス展開構想を披露した。道路改修を待たずに、インパールとミャンマー中部マンダレーを直行バスで結ぶ構想も持ち上がっている。

ミャンマー側の狙いは電力の共同開発だ。国境付近にインド資本で火力発電所を建設し、ミャンマーが石炭を提供、停電が日常化しているザガイン地域とマニプル州で電力を分け合うことを計画している。
代表団長のチョー・ウィン地域電力相は「私たちはインドの支援が必要だ。両国関係をさらに強化したい」と述べ、夢は膨らむばかりだ。

インド連邦政府もハイウエー構想に前のめりになっている。昨年12月には、ニューデリーでのインド・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に合わせ、インドネシア発の11カ国のカー・ラリー団に将来ハイウエーとなる道を走らせてニューデリー入りさせ、経済関係強化を訴えた。

インド・チームを率いたタルン・ビジャイ上院議員は「インドはルック・イースト政策をとってきた。ハイウエーは東南アジアを通り、民主主義を共有する日本へも続いている。日本で昇る太陽が、北東部を照らしてくれるはずだ」と「民主主義世界」の経済連携を熱く語った。

ただ、ハイウエー構想に乗せた夢がすべて実現するには、時間がかかりそうだ。ミャンマー側で補修工事がなかなか進まないことや民主化による経済発展の速度が見通せないことに加え、インドでは、マニプル州の治安状況が依然深刻だからだ。

メイティ、クキ、ナガの3つの大きな部族を抱える州内では、一部地域の分離独立や他州への帰属を訴え武力闘争を続けるグループが多数、存在する。治安当局との間で戦闘が頻発し、インドのシンクタンク「紛争処理研究所」によると、昨年だけで双方の110人、01年以降では3千人以上が死亡した。

インパールとモレの間では、武装勢力による略奪行為が横行している。多数の検問所が設置され、往来のチェックに当たる兵士は「ここを午後2時までに出て、インパールに戻らないと、安全は保証できない」と警告する。武装勢力と協調する住民が道を遮断することもしばしばだ。武装勢力は企業などに「みかじめ料」を要求し、ビジネスの障害にもなっている。

インパール市内では、兵士がトラックの荷台から監視の目を光らせる。マニプル州の一部には、武装勢力とみられる者に兵士は発砲できるという軍特権法が適用されている。
この法律に基づき、市民団体の「犠牲者遺族の会」は罪のない約1500人が殺されたと告発している。最高裁に任命された特別調査団は無作為に選んだ7人を調べ、今月4日に全員が武装勢力と無関係だったとの報告書を最高裁に提出し、同法の正当性が揺らいでいる。
 
ンド北東部の住民は、モンゴロイド系の容姿や文化の違いから、主要都市で差別的扱いを受けることも多い。遺族の会のバブルー・ロイトンバムさん(43)は「インパールでの日本人の戦争は終わったが、私たちの戦いは続いている。本当の開発は、住民が他のインド人と同様に扱われてからだ」と訴えた。

インド-ミャンマー--タイ3カ国ハイウエー構想 2002年4月に3カ国閣僚級会議で発案された。全長約1360キロ。インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)をテコに、入国、税関事務の簡素化で人とモノの流れを加速させる。タイから先は日本などの協力で整備され、ベトナムやラオスへ広がる幹線道路「東西経済回廊」につながる。【4月21日 産経】
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【「これを見て泣かざるものは人にあらず」】
日本人にとっては忘れがたい、忘れてはならない“インパール”近郊を起点とするハイウェー構想です。
“太平洋戦争”という言葉で総括されることが多い戦争の記憶にあって、中国大陸における戦闘に触れることは自虐的と憚られるような風潮もあり、ましてやインド・ミャンマー方面での戦争の記憶は国民的には次第に薄れていくようにも思えます。

個人的には2007年1月にミャンマー・マンダレー方面を観光した際に、日本軍支配下で日本語を学校で教わり、その後現地の人に日本語を教える立場にあった、驚くほど日本語が上手な老人に偶然お会いする機会があったことや、ガザインで日本兵および現地の方の慰霊碑などを目にする機会があったことなどで、改めてこの地で日本人が戦っていたことを思い起こしました。

無謀なインパール作戦による犠牲者についてはいろんな数字もあるようですが、いずれにしても“参加将兵約8万6千人のうち戦死者3万2千人余り(そのほとんどが餓死者であった)、戦病者は4万人以上ともいう”【ウィキペディア】といった、悲惨きわまるものでした。
退却路に沿って餓死者の白骨死体が延々と横たわるむごたらしい有様を、日本兵は「白骨街道」若しくは「靖国街道」と呼んだそうです。

インパール作戦において要衝コヒマを占拠するも補給がまったくなく、司令官の進軍命令を無視して撤退した佐藤幸徳陸軍中将の打電「善戦敢闘六十日におよび人間に許されたる最大の忍耐を経てしかも刀折れ矢尽きたり。いずれの日にか再び来たって英霊に託びん。これを見て泣かざるものは人にあらず」【ウィキペディア】には、胸にこみ上げるものを感じます。

【“マイノリティー間”】
このインパールがあるマニプル州を含むインド北東部は、インド亜大陸からバングラデシュ・ミャンマー方面へ突き出たような形で地理的にも特異ですが、民族・文化的にもインド本体とは異なるところがあります。
記事にもあるように長く外国人の入域が制限されており、私が持っている10年前のインド観光のガイドブックではこの地域に関してはほんの2,3ページの記述しかありません。
最近はだいぶ緩和されたようです。

****外国人の入域長らく制限(インド北東部)/自然や嗜好日本と似通う****
これまでインドでは州によって文化の特色などが違うということを話してきたが、なかでもインド北東部は、特に独特の文化を持つことで知られている。

インドの地図を見ていただけるとわかるかと思うが、バングラデシュをはさんでさらに東側にもインドの国土は広がっている。いわゆるインド北東部(ノースイースト)と呼ばれている地域である。ここは、民族間の紛争やインドからの分離独立闘争のため治安が安定しておらず、外国人の入域については長らく制限されていた地域だ。

そのため、観光のガイドブックなどにも北東部のことはほとんど載っていない。だが、2011年より入域許可が不要になり、外国人も以前より入りやすくなった。昨年、私はこの北東部に2回旅行する機会があり、メガーラヤ州、アルナーチャル・プラデーシュ州、アッサム州、マニプール州を旅行して回った。

メガーラヤ州では、州都のシロンに行った。シロンはイギリスの植民地時代から避暑地として開発されていたこともあって、建物も洋風なものと東南アジア風のものがミックスした感じで、とてもインドとは思えないような雰囲気が漂っていた。また、草木や花なども、日本で見かけるようなものと似ていて、ちょうど私が訪れた頃には桜を見ることが出来た。インドで桜を見ることができるとは思ってなかったので、本当に驚いた。

アルナーチャル・プラデーシュ州は、多様な民族の生活が営まれていることで知られている。竹がたくさんあり、竹細工や竹で作られた家がとても印象的だった。

そして、マニプール州は私たち日本人にとってつながりの深い場所であると感じている。マニプール州の首都インパールは、第2次世界大戦の「インパール作戦」の舞台となった場所である。他の北東部の州も基本的にそうであるが、マニプールの人々は典型的なインドの人の顔とは違い、モンゴロイド系の顔立ちをしている人が多い。
「日本人かな?」なんて思う顔の人もよくいるし、私も「北東部出身ですか?」なんてたまに言われることがある。それくらい日本人と顔立ちが似通っている。

食事や文化もインドの典型的なものとは全く違っている。食事は、以前紹介したようなインド料理に比べると油が少なく、味付けも独特である。主食は米であるが、日本で食べられているお米に近く、もちもちした食感でとてもおいしい。また、マニプールでは魚を好んで食べる。川魚が多いのだが、生臭くなく、揚げたりカレーに混ぜたりと魚料理のバリエーションがとても多い。(中略)

インパール作戦の激戦地となった村には、平和記念碑が建てられている。これは1994(平成6)年に政府によって建立されたものだが、これとは別にロトパチン村の村人たちによって作られた慰霊碑もある。現在、日本政府の委託によって、マニプール側の管理者がこの場所を守っている。 

域許可が必要であった時代でも、このインパール作戦の戦没者慰霊のために訪れる日本人はいたようである。しかし今ではそのような人々も少なくなり、現在、遺骨収集は満足に進んでいない状態である。戦没者のための慰霊がさらにきちんとした形で行われていくことを祈っている。 
また、インパール作戦を題材に、おじの日本兵の足跡をたどる女性を主人公にした「マイ・ジャパニーズ・ニース」という映画がインド人映画監督のもと現在制作されている。これを機に、若い世代の人々にもインパール作戦やマニプールと日本の関係についてぜひ知っていただければと思っている。【3月15日 東奥日報 菊地恵理】
http://www.toonippo.co.jp/rensai/ren2011/sekai-machikado/20130315.html
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こうしたインド北東部の民族的差異は差別の対象ともなっており、昨年7月以来犠牲者を出す衝突や、社会に広まる不穏な動きなどが報じられています。

*****イスラム教徒に襲撃される」のデマでパニック****
インド南部の主要都市で16日、アッサム州など北東部出身者が「イスラム教徒に襲撃される」とのデマでパニックとなり、数千人が北東部へ逃避する騒ぎがあった。インド各紙が17日、報じた。デマは携帯電話のメールなどを通じて広まったという。

バンガロールでは16日、北東部出身の労働者や学生ら6千~7千人が、チェンナイやハイデラバードなどでも数千人が、列車で脱出するため駅に殺到した。

アッサム州で7月、イスラム教徒と少数民族の間で起きた衝突や、南部で北東部出身の学生が襲撃される事件が最近相次いだことが背景にあるとみられる。
シン首相は17日「北東部の出身者の安全を確保するため最大限のことをする」と強調し、騒ぎの沈静化を図った。【2012年8月17日 産経】
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*****印北東部の少数派住民暴動 モンゴロイド系住民の差別に拍車****
インド北東部アッサム州を中心に少数民族ボド族とイスラム教徒の衝突がやまない。襲撃や暴力事件が散発的に発生し、今も十数万人の避難民が州内の施設で暮らす。衝突の影響は州内にとどまらず、ボド族と同じモンゴロイド10+ 件系の北東部出身者に対する差別10+ 件感情が、インド各地でいびつな形で噴き出している。

アッサム州西部のバングラデシュ国境に近いコクラジャル。大河ブラマプトラ川沿いの平野には、青々と茂る樹木や水田が広がり、東南アジアを思わせる。
コクラジャルは、ボド族が主導して自治を行う「ボド地域自治地区」(約88万人在住)の中心都市だ。中心部から約8キロのマルガオン村に住むラケシュ・マスマタリさん(52)は、略奪された後に火を放たれた自宅の前で、遠くに見える村を指さし、「3千人ほどのイスラム教徒があそこから襲ってきた。村人を怖がらせて、土地を奪うつもりなんだ」と怒りをあらわにした。

インドにおける民族と宗教の“マイノリティー間”の衝突は、アッサム州で7月20日、ボド族の若者4人がイスラム教徒住民に殺害されたのを機に火を噴いた。双方の暴力でこれまでに約100人が殺害され、避難民は最大で約40万人に膨らんだ。【2012年9月16日 産経】
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ヒンドゥー教徒から差別されるイスラム教徒が、さらに少数派の北東部出身者を敵視する・・・差別を受ける者が、自分たちより弱い立場の者を求めて攻撃する“差別の構造”はインドだけではありませんが、やりきれないものがあります。
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シリア情勢に動き  ヒズボラ大規模介入の動き アサド政権の化学兵器使用確認でアメリカの関与強化も

2013-04-26 23:01:35 | 中東情勢

(シリア反体制派に加勢するクルド人女性戦闘員たち 【4月26日 AFP】http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2940488/10621581)

レバノン:シリア難民が人口の4分の1に迫る勢い
シリアの内戦も2年を経過すると、正直なところ難民に関するニュースなどを目にしても、つい読み飛ばしてしまいがちです。

シリア国外難民の数は正確なところはよくわかりませんが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、3月時点で難民登録がなされている者だけで約92万人、その内訳はヨルダンが31万人、レバノンが24万人、トルコが23万人、イラクが12万人となっています。
なお、登録待ちを含めると、3月18日で約113万人とのことです。
もちろん、これらはUNHCRが把握している者のみの数字です。

生活基盤を失った難民の生活の苦しさは今さら言うまでもないところですが、なにがしらかの避難先の国からの支援や国際援助も(十分でないにせよ)期待できるこうした国外難民はまだ恵まれた方です。
国境からも遠く、移動のための車もない人々は国内で自宅を離れた避難民となりますが、国内避難民への援助・支援は殆ど行き届かない状況にあります。こうした国内避難民は約250万ほどいると推測されています。

シリアからの国外難民を受け入れる側も限界に近づいています。
数が多いヨルダン、レバノン、トルコはもちろん、イラクも自国の紛争による難民に加えての国外難民受け入れとなります。
支援のための公的な負担増だけでなく、難民増加による地元民との仕事の競合、治安の悪化も問題となってきます。

****シリア人の波、警戒 レバノン、1日数千人 物価・家賃上昇、宗派対立も懸念****
内戦が2年に及ぶシリアから隣国レバノンへ逃れる人の波が止まらない。レバノン人口の4分の1に迫る勢いだ。レバノンは宗教・宗派が複雑な国だけに、不安定化を懸念する声も聞かれる。

首都ベイルートにある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)前は連日、食糧や医薬品をもらうための難民登録を求めるシリア人たちであふれる。ハイファン・ムスタファさん(40)は日雇いの仕事をしながら3~10歳の2男2女を養っている。「一回の仕事で10ドルもらえればいい方」とムスタファさん。国連が配る食糧券が欲しいと訴えた。
UNHCRによると、23日現在の登録難民(登録待ちを含む)は計43万8千人。毎日数千人規模で入国している。

一方、両国は昔から結びつきが強く、人々は査証なしで行き来できる。このため比較的裕福で、援助を求めないシリア人もレバノンに逃れる。レバノン政府によると、こうした人も含めると、レバノンには現在、100万人近くのシリア人が生活しているとみられる。

レバノンはシリアよりも経済力が高く、1人あたり国民総所得も9140ドル(2011年、世界銀行)と、シリアの約3倍だ。低賃金の仕事に就くシリア人も少なくなく、レバノン人との摩擦も起きている。日用品などの物価も上がりつつあり、ベイルート市内では家賃が倍になった物件もある。

レバノンはキリスト教やイスラム教のさまざまな宗派が微妙な均衡のもとで暮らす「モザイク国家」と呼ばれる。宗派ごとに政治勢力を構成しており、国会の議席も宗派ごとに配分されている。宗教・宗派の対立で内戦も経験、シリアは政治的にも軍事的にも介入を繰り返した。政治勢力は「親シリア」「反シリア」で色分けされる。

キリスト教政党の自由愛国運動のミシェル・アウン党首は今月、テレビ中継された演説で「シリア人の入国を制限し、緊急に援助が必要な人に限るべきだ」と訴えた。逃げてくるシリア人は多数派のイスラム教スンニ派の人たちが多い。その存在が政治力を持つことを懸念した発言だ。

レバノン首相府でシリア難民政策を統括するラムジ・ナーマン調整官は「様々な政治勢力が寄り集まった複雑な国だから、シリア人の存在を政治的に利用しようという動きは止められない。コントロールもできないし、大きな負担と不安要素になっている」と話した。【4月26日 朝日】
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レバノンの人口は約420万人、そこへシリアから100万人近い難民が入ってくる・・・・混乱は必至です。
特にレバノンの場合、そうでなくとも宗教的に難しいバランスをとっている国で、親シリアと反シリアを軸に長年内戦を含めた対立が続いている国です。難民の大量流入で国の基盤・バランスが大きく揺らぐことになります。

ヒズボラが大規模な軍事介入へ
もっとも、レバノンの場合、単に受身的にシリア難民を受け入れているだけでなく、レバノン最大の武装勢力ヒズボラ(親アサド政権・シーア派)によるシリアへの介入も報じられています。
ヒズボラはこれまでもシリア国内での活動が報じられていましたが、より本格的な大規模介入の動きがあるようです。

*****シリア内戦:ヒズボラが大規模介入 レバノン国境に進駐****
内戦が続くシリア中部で今月中旬、隣国レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラが国境付近にある少なくとも五つの村に約3000人の部隊を進駐させたことが、シリア反体制派の武装組織「自由シリア軍」幹部への取材で分かった。

ヒズボラはイランとともにアサド政権を支援してきたが、大規模な軍事介入が明らかになるのは初めて。戦闘はレバノンにも波及しており、周辺国を巻き込んだ地域紛争の様相が強まってきた。

複数の自由シリア軍幹部によると、ヒズボラは今月19日ごろ、レバノン国境に近いクサイル周辺に、携行式ロケット弾などを装備した約3000人の部隊を展開。シリア政府軍などと協力して、自由シリア軍を攻撃した。少なくとも五つの村にヒズボラの戦闘員が駐留しているという。

反体制派の主要組織「シリア国民連合」のサブラ暫定議長は22日、クサイルでの戦闘にヒズボラが加わっていると指摘。コーエン米財務次官も23日、ヒズボラが「シリア国内でイランと民兵組織を作り、アサド政権を助けている」と述べた。
ヒズボラの報道担当者は23日、毎日新聞の電話取材に対し、「国境付近ではヒズボラのメンバーも生活しており武装組織に対しては自衛する」と述べた。

クサイルは中部の主要都市ホムスに近い要衝だ。アサド政権の強固な基盤がある地中海沿岸都市と首都ダマスカスの中間地域に位置し、政権も重視。だが政権側は戦闘員や武器をダマスカスなど大都市に集中させる戦略をとっており、クサイルでは最近まで反体制派が優勢だった。

シリア内戦についてヒズボラは表向き介入を「自衛」に限定しているが、戦線の拡大は避けられない情勢だ。国境付近では自由シリア軍とヒズボラの戦闘が増加。シリア政府軍も3月にレバノン領内を空爆している。
さらに反ヒズボラの有力なイスラム教スンニ派指導者アシール師は22日に発表した声明で「ヒズボラの(シリア内戦への)関与は明白になった」と述べ、影響下にある武装組織にシリア反体制派との共闘を呼びかけた。

ヒズボラは1982年、対イスラエル闘争を行う武装組織として、イランの支援で設立され、レバノン国軍を上回る戦闘力を有している。シリア内戦でもイランとともにアサド政権を支援し、戦闘員や兵器を送り込んでいるとみられる。ダマスカスでもヒズボラの旗を掲げる戦闘部隊が目撃されている。【4月26日 毎日】
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アメリカ:アサド政権の「レッドライン」超えを確認
一方、これまでシリア内戦への関与を避けてきたアメリカがアサド政権による化学兵器使用を認めたことで、今後より積極的な関与への方針転換することも考えられます。

****シリア:政権の化学兵器使用、米政府認める****
米ホワイトハウスは25日、シリアのアサド政権が反政府勢力との戦闘で猛毒の神経ガス・サリンを使用したとの指摘について「ある程度の確信」を得たとする米情報機関の分析結果を明らかにした。
米政府がアサド政権の化学兵器使用を認めたのは初めて。オバマ大統領は化学兵器の使用を「レッドライン(越えてはならない一線)」と明言しており、英仏や中東の同盟国などと対応の検討に入った。

米政府はこれまでシリア反体制派への人道支援に集中していたが、大統領は化学・生物兵器の使用に関しては、軍事介入の可能性を示唆してきた。ただ、オバマ政権は米主導の軍事介入に極めて慎重で、反体制派への軍事支援や北大西洋条約機構(NATO)主導の間接的な介入にとどまる可能性もある。

米上院軍事委員会のレビン委員長(民主党)やマケイン上院議員(共和)らが24日、ホワイトハウスにアサド政権による化学兵器の使用疑惑について米政府の見解を尋ねる質問状を送付。ホワイトハウスは25日、回答書簡を両議員に送ると同時に内容を公表した。
書簡には「情報機関はシリア政権が小規模ながら化学兵器のサリンを使用したことについて、ある程度の確信を得た」と明記した。

ただ、使用時期や被害状況は把握できておらず、書簡は「情報機関の評価だけでは不十分だ」と指摘。対応策を決めるためには「信頼に足る確固たる事実」が必要だとし、反体制派への軍事支援や軍事介入を決定するためには国連などの徹底した調査が必要との見解を強調している。

ヘーゲル米国防長官は25日、訪問先のアラブ首長国連邦で記者団に対し、アサド政権による化学兵器使用の可能性に言及。ケリー国務長官は同日、情報機関がシリア国内で2件の化学兵器使用を確認したと議員らに説明した。

一方、イスラエル軍情報機関は23日、政権側が使用したとの見解を表明。ロイター通信によると英外務省も25日、化学兵器使用に関する情報があると発表した。シリア内戦では、アサド政権と反体制派の双方が「化学兵器を相手が使用した」と主張。国連は調査団派遣を準備したが、アサド政権は入国を拒否している。【4月26日 毎日】
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アメリカの厳しい財政事情などを考えると、直接介入よりは武器等の軍事支援ということになるのではないでしょうか。それでも、もし欧米の軍事支援が始まればシリアの戦局に大きく影響します。

トルコから撤退するクルド人武装勢力
一方、この地域のニュースとしては、トルコのクルド人武装勢力のトルコ領内からの撤退が発表されています。
これによりトルコの治安は改善しますが、イラク・クルド人自治区への撤退するクルド人武装組織がシリアへ流入することも考えられます。
また、クルド人自治区との対立があるイラク中央政府としても、穏やかではないのではないでしょうか。

*****クルド人武装組織 トルコ撤退開始表明*****
トルコからの分離独立を目指して武装闘争を続けてきた「クルド労働者党」の軍事部門のトップが、トルコから戦闘員の撤退を開始すると表明し、およそ30年にわたる戦闘の終結に向け大きく動き出すことになりました。

クルド人武装組織「クルド労働者党」は、トルコからの分離独立を目指し1984年から武装闘争を続けてきましたが、ことしになって交渉が活発化し、先月、オジャラン指導者が戦闘員に武器を捨ててトルコ国外に出るよう呼びかけました。
これを受けてクルド労働者党の軍事部門トップのカラユラン総司令官は、25日、イラク北部にある拠点で記者会見し、「メンバーは、5月8日から段階的にトルコから退去する」と述べ、戦闘員の撤退を開始する考えを明らかにしました。

トルコでは政府軍とクルド労働者党との戦闘やテロで市民を含む4万人以上が死亡したとみられていて、およそ30年にわたる戦闘の終結に向け大きく動き出すことになりました。
一方で、クルド労働者党はトルコ政府が求めている撤退前の武装解除には応じておらず、戦闘員がイラク北部や内戦の続く隣国のシリアなどに流入することが予想され、この地域のさらなる不安定化につながるとの懸念も出ています。【4月26日 NHK】
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国家を持たない最大民族ともいわれるクルド人は、トルコ、イラク、イラン、そしてシリアで暮らしています。
シリア内のクルド人は反体制派として活動しているようです。
トルコからの撤退で、シリア内のこうした反体制活動が強化されることも考えられます。

****シリア反体制派に加勢するクルド人女性戦闘員たち****
ベールで顔を隠しもせず、自分の倍も体が大きいクルド人男性たちに怒鳴り声で指図する女性司令官エンギゼク氏(28)の姿は、男性が圧倒的多数を占めるシリアの反体制派戦闘員たちに衝撃をもたらす光景だ。銃で武装した親衛隊を引き連れた小柄のエンギゼク氏は、シリアのアレッポ市内の戦闘区域シェイクマクスドで数十人のクルド人部隊を率いている。

シェイクマクスドの大半の地区は、先月末の戦闘でシリア政府軍から反体制派が奪還したばかりだ。「女性にもマシンガンやカラシニコフ銃は撃てるし、戦車だって操れる。男性と同じくらい上手に」と、エンギゼク司令官は語る。ズボンにベージュのダウンベスト、ダークブラウン色の髪は後ろできつく束ねている。

倒壊した、銃弾で壁が穴だらけの建物に挟まれた人気がない路地で、狙撃兵たちが放つ銃声が散発的に響き渡る中、エンギゼク氏はAFPの取材に語った。「女性はわれわれ反乱軍で欠くことはできない」エンギゼク氏のような女性戦闘員は、3年目に突入したシリアのバッシャール・アサド政権に対する反乱軍の、表に現れない側面の1つだ。

エンギゼク氏が属するクルド人民防衛隊(YGP)は20%が女性で構成されている。最近、シリア反体制派に合流したYGPは、トルコの非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」のシリアにおける姉妹組織、民主統一党(PYD)の武装部門とされている。(後略)【4月26日 AFP】
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膠着状態が続くシリア内戦も、ヒズボラ、アメリカなどの欧米諸国、さらにはクルド人勢力などが介入・関与を強めることで転機を迎える可能性が出てきています。
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バングラデシュ  縫製工場入居ビル倒壊で犠牲者多数 ないがしろにされる労働環境・安全

2013-04-25 22:04:54 | 南アジア(インド)

(24日に起きた8階建てビルの崩壊現場 “flickr”より By Q8India http://www.flickr.com/photos/66206215@N07/8680666268/)

世界第2位の縫製品輸出国だが、安全管理の不徹底や作業環境の劣悪さが問題となっている
アジア最貧国のひとつでもあるバングラデシュは、ここ数年は縫製産業を中心とした活況を呈しています。
“バングラデシュは、縫製業の伸びをてこに、ここ10年は6%前後の経済成長を維持してきた。長引く世界不況で先進国の消費者の間で「低級品志向」が強まっていること、また中国への依存リスクを分散させるトレンド「チャイナ+1」(中国と、もう1つ別の国に工場を作る)の浸透もバングラデシュにとっては追い風だ。バングラデシュは、ポストBRICSの新興国「ネクスト11」にも名を連ねている。”【2012年11月12日  開発メディアganas 投稿者:今井ゆき】

このブログでも、2010年10月10日ブログ「バングラデシュ 頻発する衣料品工場労働者のストライキ・デモ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101010)で、ユニクロの現地でのソーシャルビジネス展開の話題、08年6月にNHK「沸騰都市」で紹介された活況ぶり、その一方で、多くの労働者が低賃金に苦しんでおり、労働争議も頻発している状況などを取り上げました。

そのバングラデシュから、複数の欧州ブランド向けの衣料を生産する縫製工場が入居する商業ビル倒壊の事故が伝えられています。

****バングラデシュのビル崩壊、死者150人超す 亀裂発見後も労働を強制*****
バングラデシュの首都ダッカ近郊のサバールで24日に起きた8階建てビルの崩壊現場では、夜を徹して生存者の救出活動が続けられ、25日朝までに159人の死亡が確認された。負傷者は1000人を超えている。国内では、バングラデシュで安価に衣料製品を製造する海外アパレル大手に対する批判が高まっている。

崩壊した商業ビルには複数の欧州ブランド向けの衣料を生産する縫製工場が入居しており、人権団体「バングラデシュ労働連帯センター(Bangladesh Center for Workers Solidarity)」によると約3000人が働いていた。AFPの取材に応じた消防当局者によると、ビルは「わずか数分でパンケーキのように全体が崩れ落ちた。工場労働者の大半は逃げる間もなかった」という。現在もがれきの下から、閉じ込められた生存者が助けを求める弱々しいうめき声が聞こえるという。

崩壊するビルからの避難に成功した人々の話によれば、事故発生前日の23日、ビルに亀裂が走っているのが見つかった。従業員らは一時退避したが、経営者らに仕事に戻るよう命じられたという。24歳の女性従業員は「仕事を再開するよう言われて工場内に戻ったが、1時間後、大音響とともにビルが崩れ落ちた」とAFPに語った。

地元警察によれば、亀裂が見つかった時点で警察が工場の一時閉鎖を命じていたが、工場の経営者らはこれを無視したという。経営者らの行方は現在、不明という。

バングラデシュには先進国の衣料品ブランドの下請け工場が多数あり、世界第2位の縫製品輸出国だが、安全管理の不徹底や作業環境の劣悪さが問題となっている。サバールでは2005年にも縫製工場ビルが崩壊し、70人以上が死亡する事故が起きているほか、2012年にはやはりダッカ郊外の欧米向け衣料品工場で火災が発生し、111人が死亡している。【4月25日 AFP】
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事故当時、ビル内には約5000人がいたとの情報もあり、犠牲者の数は、今後大幅に増加しそうです。
また、地震でもないのに建物が倒壊するというのは、何らかの違法な工事があったことも想像されます。

****バングラデシュのビル倒壊、死者200人以上に****
バングラデシュの首都ダッカで8階建ての商業ビルが倒壊した事故で、警察当局は25日、死者は200人以上、負傷者は1400人に上ったと明らかにした。

がれきの下に依然500人以上が埋まっているとみられ、救出活動が続いている。事故当時、ビル内には約5000人がいたとの情報があり、死傷者がさらに増える可能性が高いという。

ビルは湿地帯に建設され、2010年に完成。6階建ての予定が8階建てに無断変更されたほか、低品質の材料を使ったとされており、建築基準に関する法令違反が指摘されている。【4月25日 読売】
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バングラデシュでの労働環境の問題・安全対策の不備は、2012年に起きたダッカ郊外の欧米向け衣料品工場での火災でも指摘されたところです。

****縫製工場で火災、124人死亡…バングラデシュ****
バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場で24日夜、火災が発生し、警察当局によると少なくとも124人が死亡し、数百人が重軽傷を負った。
火災は25日朝には鎮火したが、工場では約2000人が働いていたとされ、死者の数はさらに増える恐れがある。

警察当局などによると、出火場所は9階建ての工場の1階。火災が起きると夜勤中だった労働者らが出口に殺到するなどしてパニックとなり、上層階の窓から飛び降りる従業員もいたという。従業員のほとんどは女性だという。警察当局は、電気回路のトラブルが原因とみて調べている。

衣料品は、バングラデシュの輸出全体の約8割を占める主要産業。労働力が安価なため、日米欧の有名衣料ブランドも進出している。【2012年11月25日 読売】
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“欧米向けに輸出される衣類を安価な労働力で製造しているバングラデシュの衣料品工場では、配線の手抜き工事などによる電気系統の問題が火災につながることが多い。また、消防当局によると周辺地域は水が不足しているという。”【2012年11月25日 AFP】とのことですが、バングラデシュ政府は火災後の調査で、放火が原因と判断しています。

大企業の利潤と国家的利益追求の陰で、一般市民の権利が踏みにじられていることを示唆
この火災が放火・破壊工作によるものなのかどうかはともかく、労働環境に大きな問題があること、バングラデシュ政府が労働環境より経済拡大を優先させていることは否めないようです。
さらに言えば、こうした環境での生産を発注し、低コスト製品を生産しているのは先進国メーカーであり、その受益者は我々先進国の人間であるという側面もあります。

*****バングラデシュ、縫製工場火災に労働者の不満が爆発–劣悪な労働環境の改善なるか****
(2012年11月)24日夜、バングラデシュを代表する縫製会社、タズレーン・ファッションズが操業する8階建ての工場で火災が発生。少なくとも112人が死亡する大惨事となった。目撃者によれば、炎や煙にまかれた労働者たちが次々に、上階の窓から周辺の建物の屋根に飛び移ったという。材料や製品が脱出口をふさいでいたために、多数の従業員が窒息死した模様だ。

さらに、大火災の衝撃が冷めやらぬ26日朝、小規模で犠牲者こそ出さなかったものの、ダッカの縫製工場で第2の火災が発生したことで、市民感情が悪化。労働者の怒りが爆発し、激しいデモが繰り広げられた。

バングラデシュは中国に次ぐ世界第二位の衣料品輸出国で、国内の工場数は4500、従業員数は300万人にのぼる。今や縫製産業は、同国にとって国内経済の牽引役であり、石油輸入に必要な外貨獲得の手段でもある。海外各紙はその光と影に注目した。

バングラデシュが近年、縫製業界で中国を猛追しているのは、中国の人件費の高騰を受け、同国の安価な製造コストが世界中の衣料品メーカーを魅了しているからにほかならない。
しかし、それだけに労働環境の劣悪さは国内外でしばしば指摘されてきた。特にやり玉に挙げられてきたのが、低賃金、工場内の労働組合の制限、そして火災に対する安全措置の乏しさだとされる。実際、2006年以後、数十件の工場火災によって、すでに500人とも600人とも言われる死者が出ているという。

フィナンシャル・タイムズ紙は、労働環境改善活動団体であるバングラディッシュ労働者連帯センター(BCWS)のアクター代表が、このような悲劇の責任を、工場主、バングラデシュ政府、欧米の衣料企業に求めていると紹介した。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、今回火災の起きた工場の取引先と取沙汰されるウォルマートでは、かねてより同工場を「ハイリスク」と認定していたともされる。同社は、工場にはすでに同社の製品生産の権限がなかったとしながらも、関係するサプライヤーが同工場に発注していた事実を認め、哀悼の意を表すると共に、今後の安全性の向上に取り組むことを表明した。
同紙は、今回の機運を受け、今後、海外の衣料品メーカー各社に安全性向上の責任が生じ、コストが増加する可能性を示唆した。

一方、ニューヨーク・タイムズ紙はハシナ首相が27日を国家哀悼の日として、すべての繊維工場に休業を命じた際、確たる証拠はないままに、今回の火災が、同国の縫製業界をむしばもうとする陰謀によるものと示唆したことを紹介した。発表によれば、すでに2名の放火犯が逮捕されたという。

また、フィナンシャル・タイムズ紙は、前述の、BCWSの代表、アクター氏が過去、投獄の憂き目にあっていることを紹介。さらに、彼女の同僚は、拷問の痕もあらわな遺体となって発見されたが、一切は謎のままだとし、大企業の利潤と国家的利益追求の陰で、一般市民の権利が踏みにじられていることを示唆した。【12年11月27日 NewSpere】
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途上国が低賃金を武器にして経済のテイクオフを図ろうとするとき、先進国基準からすれば問題と思われる労働環境・条件が往々にして出現することは、現実問題としては避けがたいものもあるように思われます。
ただ、そうは言っても程度の問題はあり、監督する政府当局は労働環境整備にも応分の注意を払うべきであり、また、海外の発注メーカーもその責任を共同で負うべきです。

もっとも、実際には難しいようで、中国などでも海外発注企業に見せる表工場と、実際の生産を担う裏工場があり、そのことを海外発注先も承知しながら表工場しか視察しない・・・といった話があるようです。
また、労働者のほうも、長時間労働で多くの収入が得られる裏工場を選択するといった問題もあるとか。

現実の問題となるときれいごとでは済まないのは世の常です。
ただ、繰り返しになりますが、そうは言っても・・・というところで、踏みとどまる良識も必要です。

女子工員の劣悪な職場環境
バングラデシュの縫製工場に関しては、低賃金労働、労働安全の不備のほか、セクハラ・人権侵害の問題も指摘されています。

*****縫製大国”バングラデシュを支える女子工員ら、増え続けるセクハラに直面 *****
■「服を脱げ」との脅しも
バングラデシュ経済をけん引する縫製業。同国には首都ダッカやチッタゴンを中心に4000以上の縫製工場がある。縫製品(衣料品、ニットウェア)の輸出額(約125億ドル=約9900億円、2010年度)はいまや国全体の8割を占めるなど、バングラデシュは“縫製大国”として発展し始めた。これを支えるのが縫製工場で働く150万人の女子工員らだ。

女子工員の多くは貧しい農村の出身。仕事を求めて都会へ出てきた。平均年齢は19歳。若い女子工員らは国家の屋台骨を支えるだけでなく、故郷へ仕送りもしており、一族にとっても重要な稼ぎ手となっている。こうみると縫製業は、バングラデシュの農村女性に仕事を提供し、経済的にエンパワーメントさせていると映らなくもない。

ところが現実はそう単純ではない。女子工員らは劣悪な職場環境に置かれ、苦しんでいる。給料は男性の同僚の約6割に抑えられ、残業代もなし。また教育や研修を受けさせてもらえないため、昇進の機会もないという。

しかしより深刻なのは「セクハラ」だ。バングラデシュ縫製業の女子工員の実態について英国のNGO「ウォー・オン・ウォント」が2011年に発表した報告書によると、インタビューに応じた女子工員998人のうち、297人が「望まない性的な誘いを受けたことがある」と答えている。実際に体を触られたのは290人。さらに衝撃的なのは、500人近くが顔面を殴られるなど、工場の監督者から暴力を振るわれたことがあり、328人が「服を脱げ」と脅された経験をもつことだ。

■都市化がセクハラを呼ぶ
バングラデシュでは近年、セクハラが急増している。その背景にあるのが都市化といわれる。国連人口基金(UNFPA)などが03年に発表した労働者のセクハラについての報告書は、バングラデシュ女性に対するセクハラが増えているのは、女性の経済的地位の向上や人口移動の増加(農村から都市へ)などと相関関係にある、と指摘する。都市には、人間関係が濃い農村のようなコミュニティは存在せず、それがセクハラをさせやすくしている。

バングラデシュでは年率6%のペースで都市人口が増大している。いまや国民(約1億5000万人)の28%が都市在住者。都市人口は15年までに5000万人に達する見通しという。

セクハラに悩まされているのは女子工員だけではない。バングラデシュのNGO「BRAC(バングラデシュ農村向上委員会)」は、都市部では通学途中の女子生徒に対するセクハラも増えていると指摘する。セクハラに遭うのが嫌で学校を中退する生徒や、また娘を守るために早く結婚させようとする親もいるなど、事態は深刻化している。

後発開発途上国(LDC)のバングラデシュは、縫製業の伸びをてこに、ここ10年は6%前後の経済成長を維持してきた。長引く世界不況で先進国の消費者の間で「低級品志向」が強まっていること、また中国への依存リスクを分散させるトレンド「チャイナ+1」(中国と、もう1つ別の国に工場を作る)の浸透もバングラデシュにとっては追い風だ。バングラデシュは、ポストBRICSの新興国「ネクスト11」にも名を連ねている。
08年にはユニクロも進出するなど、いまや世界的に注目を集めるバングラデシュの縫製業。そうした発展の陰で、女子工員とその予備軍は、増え続けるセクハラに直面している。(今井ゆき)【2012年11月12日 開発メディアganas

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女性へのセクハラの問題は、インドで問題となっているレイプ事件に見られるように、女性の人権が十分に尊重されていない社会が抱える問題のひとつのあらわれです。
別に、バングラデシュ・インド地域だけでなく、レイプ問題はパプア・ニューギニアでも今問題になっていますし、アフリカの内戦・紛争地域では日常茶飯事です。また、イスラム社会での女性の権利侵害は日常のことです。
先進国においても、家庭内暴力など、問題の根っこは同じでしょう。

だから放置していいという話ではなく、適切な規制が当然求められます。
縫製産業などでの女性の経済的地位が向上すれば、社会全般における女性の権利拡大にも道が開ける訳ですが、そのためには女子工員が置かれている劣悪な職場環境の制度的改善が必要です。
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パキスタン  ムシャラフ前大統領逮捕で表面化する「赤いモスク」事件の責任

2013-04-24 20:50:44 | アフガン・パキスタン

(「赤いモスク」事件が起きる前の2007年4月、周辺のCDショップを襲い、押収した“わいせつな”CDなどを焼き払う「赤いモスク」の神学生 “flickr”より By tahirpix http://www.flickr.com/photos/tahirpix/4102395423/)

【「逮捕は政治的動機によるものだ。裁判で争う」】
事実上の亡命生活からの帰国を強行したパキスタンのムシャラフ前大統領が19日、2007年に判事らを解任、拘束した事件で警察に逮捕されました。
逮捕に至るまでには、イスラマバードの高等裁判所に出廷中、逮捕命令を受けたムシャラフ氏が治安部隊に守られながら首都郊外の邸宅逃げ込むなどのドタバタ劇もありました。

****ムシャラフ氏「裁判で争う」 パキスタン、前大統領逮捕****
パキスタンの警察当局は19日、軍事クーデターで政権を奪い、9年間独裁体制を率いたムシャラフ前大統領を逮捕した。建国以来66年。その半分を軍事政権が占めてきた軍優先の歴史に終止符が打たれるのか。新たな混乱の引き金になるのか。裁判の行方が注目される。

18日に首都イスラマバードの高等裁判所に出廷中、逮捕命令を受けたムシャラフ氏は、治安部隊に守られながら逃げ込んだ首都郊外の邸宅で一夜を明かした。軍部の反発を警戒してか、逮捕をためらう警察に、高裁は署長の出頭を命令。逮捕するよう圧力をかけた。

ムシャラフ氏は自宅からビデオメッセージを発表し、在任中の実績を並べ立てた。しかし、19日朝になって、警察関係者の前に自ら姿を現し、そのまま地元の地方裁判所に連行された。

容疑となった2007年にチョードリ最高裁長官らを拘束させた行為について地裁は、対テロ法違反の疑いがあると指摘。2日後にムシャラフ氏を一般法廷よりも取り調べが厳しい対テロ特別法廷に出頭させるよう警察に命じた。ムシャラフ氏は自宅軟禁下に置かれた後、警察で取り調べを受けている。ムシャラフ氏はフェイスブックに「逮捕は政治的動機によるものだ。裁判で争う」と書き込んだ。

 ■軍への裁き、前例なし
パキスタンでは独立以来、3度の軍事クーデターがあり、軍部が計33年にわたり政権を直接掌握した。残る33年間を担ってきた文民政権も、軍部の反発を恐れて追及に及び腰で、今回まで、裁かれなかった。

前例のない過去の清算に道を開いたのは、チョードリ最高裁長官が率いる裁判所だ。ムシャラフ氏に対しては最高裁が、今回の逮捕容疑などに加えて、最高刑が死刑の国家反逆容疑についても事前審理を開始。来月の総選挙まで政権の座にある選挙管理内閣に対し、訴追手続きを始めるよう異例の圧力を強めている。

ムシャラフ氏側は「自分を裁くなら、当時の軍首脳全体が裁かれるべきだ」と主張。キアニ陸軍参謀長ら現在の軍首脳を巻き込む構えを見せている。
ムシャラフ氏の失脚後、軍は政治介入を控えており、今回の逮捕にも公式には反応していない。ただ、退役軍人からは「軍高官を裁くことを軍は看過しない」との声が漏れ始めた。

政治評論家のハサン・アスカリ氏は「軍部はすぐに介入しないにせよ、不満を募らせている。総選挙を控えた政治空白に乗じて、裁判所が指導者のように振る舞い、暴走すれば、事態は制御不能な方向に進みかねない」と指摘した。【4月20日 朝日】
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【「ムシャラフ氏のために軍が動くこともなく、下院選への影響も少ないだろう」】
そもそも、ムシャラフ前大統領がどういう算段があって帰国したのかよくわかりません。
下記記事にあるように“パキスタンで多くの支持を得ている”と思っていたのであれば、ずいぶんと認識にずれがあったようです。かつての軍政トップの自信でしょうか。

****パキスタン ムシャラフ氏を逮捕 「政界復帰」の思惑外れる*****
・・・・事実上の亡命生活を送っていたムシャラフ氏は帰国後に政界復帰を果たせるとみていたが、軍事政権を主導した自身への逆風を読み違えていたようだ。(中略)

ムシャラフ氏は「パキスタンを救う」と訴え、逮捕状が出ているにもかかわらず、帰国を強行した。政治評論家、ザイディ氏は「前大統領は、パキスタンで多くの支持を得ていると思っていたが、状況を見誤っていた」と指摘する。

69歳のムシャラフ氏は、今回を逃せば政界復帰がさらに遠のくと危機感を募らせ、軍の反対を押し切って帰国したとされる。かつて「独裁者」と呼ばれた力を過信し、パキスタンで最も影響力を持つといわれる軍トップを務めたという自信が帰国を実行させた。

しかし、海外生活を送る約4年間で、パキスタンでは文民政治への支持や、かつての軍事政権への批判が強まり、司法も政治家に厳しい判決を下していた。ザイディ氏は「ムシャラフ氏のために軍が動くこともなく、下院選への影響も少ないだろう」と述べた。【4月20日 産経】
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改めて責任が問われる「赤いモスク」事件
いずれにしても、ムシャラフ前大統領は政治的にはすでに“過去の人”であり、同氏の逮捕自体はパキスタン政治・社会に大きな影響を与えるものではないでしょう。

むしろ注目されるのは、“世直し”的な改革に動くチョードリー最高裁長官を頂点とする司法と、パキスタン社会の中核としてのプライドを傷つけられたとも思われるキアニ陸軍参謀長など軍首脳との関係が、この事件でどうなるのかということです。

もう一点、個人的に興味がもたれるのは、ムシャラフ前大統領の罪状として、2007年の「赤いモスク」事件が表面化してきたことです。

****パキスタン ムシャラフ前大統領 殺人で訴追、動き拡大****
最高裁判事らの解任、拘束事件で逮捕されたパキスタンのムシャラフ前大統領に対し、罪を問う動きが拡大している。ムシャラフ氏が大統領だった2007年にイスラマバードのモスク(イスラム教礼拝所)で100人余りが特殊部隊に殺害された事件で、判事を長とする調査委員会が、同氏を殺人容疑で訴追すべきだとする報告書を最高裁に提出した。遺族らは改めてムシャラフ氏への厳しい裁きを求めている。

このモスクは、建物の色から「赤いモスク」と呼ばれた「ラル・マスジード」。イスラム原理主義勢力に近い思想を持つとされたマドラサ(イスラム神学校)の神学生らが立てこもり、7日後に治安部隊が突入して武力鎮圧した。
21日付のパキスタン紙ドーンによれば、調査委員会は報告書で、当時大統領だったムシャラフ氏ら政権幹部を殺人罪で起訴すべきだと指摘し、同氏らに損害賠償金を支払うよう求めた。

ムシャラフ氏のスポークスマン、モハンマド・アムジャド氏は産経新聞に「ムシャラフ氏が殺害を指示したのではない。内務省や警察の管轄だ」としているが、調査委員会は、「大統領らが知らなかったと容易に結論付けることはできない」と指摘している。

01年の米中枢同時テロ後、当時のブッシュ米政権のテロとの戦いに協力したムシャラフ氏は、イスラム過激派を厳しく取り締まり、国内のイスラム勢力から命を狙われるなど強い反発を受けた。政権末期には、首都イスラマバードでも過激派の行動が活発化。赤いモスク事件では、モスクに武装して籠城した神学生らだけでなく、女性を含む多くの市民も巻き添えとなり、少なくとも100人が死亡したとされている。

赤いモスクは事件後、「政府が赤は流血をイメージさせると指摘した」(モスクのスポークスマン)ため、白く塗り替えられたが、ムシャラフ氏の大統領辞任と国外脱出後、少しずつ赤く塗り替えられ、現在は元の赤色になっている。門には当時、特殊部隊に殺害された指導者のガジ師やその母の名が付けられ、以前の状態に回帰させようとの動きが加速した。

ムシャラフ氏は逮捕後、一時、警察の宿泊施設に移されたが、すぐに自宅軟禁下に戻された。ムシャラフ氏は、判事拘束事件を含め、ブット元首相暗殺事件などに関連した3つの事件で罪に問われており、07年に出した非常事態宣言についても、最高裁で国家反逆罪に問うための審議が続けられている。【4月24日 産経】
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イスラム過激派にどのように向き合うか
「赤いモスク」事件は、このブログを始めた頃に起きた事件で、ブログでも何回か取り上げたこともあって、記憶に強く残っている事件です。

“9.11以降アメリカの意向を受けて“テロとの戦い”に“転向”していたムシャラフ大統領とイスラム急進派の対立は、この事件で決定的な段階を向かえました。その後、対決姿勢を強めるムシャラフ大統領に対し、イスラム急進派は自爆テロで対抗、1000人近くが死亡するほどパキスタン全土の治安は悪化しました。この治安悪化が今年2月の総選挙での与党敗退の大きな原因となりました。”
【2008年7月9日ブログ“パキスタン「赤いモスク」から1年、武装勢力との対話決裂”より】

“過去の事件”である「赤いモスク」事件は、イスラム過激派のテロ頻発に苦しむパキスタン社会の“現在”を導く大きな契機となった事件です。
また、イスラム過激派の跋扈にどのように向き合うかは、総選挙を控えたパキスタンの“明日”にもかかわる問題です。
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ボストンマラソン・テロで表面化した中国高級幹部子女のアメリカ留学の問題

2013-04-22 21:47:50 | 中国

(事件犠牲者である中国人女子学生呂令子さんのミニブログに投稿された、事件当日の朝の様子 「新唐人テレビ」(http://www.ntdtv.jp/ntdtv_jp/society/2013-04-18/360133257270.html

【「遺族の要望」が生んだ「疑念の声」】
15日に爆弾テロ起きたボストン市内及び周辺地域にはハーバードなど多くの総合・単科大学があり、中国人留学生も多く在籍しています。
その関係もあって、テロ犠牲者の一人はボストン大学統計学学部の中国人女子学生呂令子さんで、友人の周丹伶さんも重傷を負っています。

この事実は、ネットでは動画サイト「新唐人テレビ」“ボストン爆弾テロ 中国人女子学生が犠牲に”(http://www.ntdtv.jp/ntdtv_jp/society/2013-04-18/360133257270.html)などで、詳しく報じられています。

しかし、中国当局は「遺族の要望」として、犠牲者の氏名や年齢、職業などの情報を公表しておらず、それが中国国内で思わぬ波紋を呼んでいるそうです。

****汚職官僚の子女に違いない! 中国で疑念呼んだボストンの悲劇*****
米北東部マサチューセッツ州の州都ボストンで1897年から開催されてきたボストン・マラソンは、96年に第1回大会が開かれた近代五輪に次ぐ歴史を誇る。その大会を揺らした惨劇は、遠く離れた中国にも瞬時に伝わった。そして、犠牲者の一人が中国人女子留学生であることが判明するや、中国のインターネット上に一枚の写真が出回った。

白と赤のチェック柄のテーブルクロスがかかったテーブル。トレイの上に並んだケーキとおぼしき食べ物に、スプーンを持った手を伸ばす女性の姿が写っていた。15日に発生したボストン爆弾テロ事件の犠牲者とされる女子留学生が、その日の午前9時(現地時間)ごろ、中国版ツイッター「微博」に自らアップした写真だった。

それから約6時間後、テロ事件に巻き込まれて命を絶たれるなど、本人も想像しなかっただろう。ネットの掲示板には、女子留学生への哀悼の辞や、テロへの怒りや恐怖の言葉が殺到した。だが、目を引いたのは、それらに交じって寄せられていた「疑念の声」だった。

ネット上では、早い時点から犠牲者の氏名や出身地、出身校が報じられていた。父親の名前も明らかになっていた。高校時代の担任の談話も流れていた。それにもかかわらず、中国当局は「遺族の要望」だとして、犠牲者の氏名や年齢、職業などの情報を公表しなかった。それが、汚職官僚や富裕層に対する不満を募らせている国民の思考回路を刺激した。

「どうして公開しようとしないんだ? 彼女の父親は中国の官僚だろう!」「米国に送り出せば天国にたどり着くと思ったのだろうが、落とし穴があった」「ある官僚の子女と推測できる。だから、死亡者の名字を公表する勇気がないのだ」「きっと外国に逃れた汚職官僚(の子女)に違いない」-。

中国では、欧米に移住した政府高官らの家族が、ぜいたくな暮らしをしているとの批判が出ている。指導者の親族による海外での不正蓄財を暴いた米メディアの報道に対し、共産党指導部は極めて敏感になっている。子女の海外留学も、指導者や官僚、富裕層の特権と受け止められている。

香港メディアは3月下旬、米ハーバード大に留学していた習近平国家主席の娘が昨年11月に突然退学して帰国したと報道。李克強首相や李源潮国家副主席ら指導部の子女も最近、米国から中国に戻ったと伝えられた。特権階級の多くが子女を留学させているのは事実だが、留学ブームは昨今、「大衆富裕層」にも広がっている。

中国で「大衆富裕層」とは、「10万ドルから100万ドルの投資可能資産を保有する中産階級」と定義されている。米経済誌フォーブス(中国語版)と北京の資産管理会社がまとめた「白書」によると、その4分の3が「子供を海外に留学させたい」と望んでいるという。2011~12年の統計では、米国で学ぶ中国人留学生の数は約32万人に達し、13年末には45万人を突破する見通しだ。

党機関紙、人民日報によると、中国の専門家は「所得増や中国国内の質の高い教育資源の不足、厳しさを増す雇用情勢によって留学ブームが続いている。他者に倣う心理も動機になっている」と分析している。家や車を売却したり、銀行ローンを組んでまで、子供を留学させる家庭も珍しくないという。

テロ事件の衝撃は小さくないが、今後も留学ブームは続くに違いない。ただ、これだけ多くの中国人が、多感な時期に海外に留学し、見聞を広めているはずなのに、母国の“素顔”に疑問を持たずにいることが不思議でならない。【4月22日 産経】
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“呂さんの両親と祖父母4人のうち、3人が悲報を聞いて気を失い、残りの人たちも精神が崩壊寸前になっている”【前出「新唐人テレビ」】という状況で、中国当局が詳しい情報を伏せたというのもわからないではないですし、ネットの反応も故人に対していささかつらいものがあるようにも思えます。

それだけ人々の心の奥に、特権階層への不満が渦巻いているということでしょう。
私的な話ですが、海外旅行にでかけた際に、最近旅先で中国人観光客をよく目にします。
昨年9月にアメリカ・ラスベガスでショーを観たとき、終わって出てくる観客の4割ほどが中国人だったのには驚きました。

経済成長著しい中国ですが、まだ多くの国民にとっては海外旅行で散財するというのは手の届かない贅沢です。
しかし、実際に大勢の中国人観光客が海外に出かけ、ブランド品などを気前よく買っています。いったい彼らは国内ではどういう職業・立場にあって、どのようにして金儲けをしているのだろうか?と訝しく思うこともよくあります。

中国のアメリカに対する屈折した感情
習近平国家主席はじめ高級幹部の子女の海外留学については、下記のような報道もありました。

*****習近平主席の娘ら指導者層の子女、米から一斉帰国 特権批判かわす狙いか****
香港紙、明報は30日までに、習近平国家主席の娘ら中国の国家指導者層の子女が、昨年11月に開かれた共産党大会前後に、留学先や居住先の米国から相次いで帰国していたと報じた。国内の経済格差問題が深刻化する中で、高級幹部とその家族など特権階級に対して高まっている批判をかわす狙いがありそうだ。

同紙によると、習氏の一人娘、習明沢さん(21)は2010年5月に米ハーバード大に留学。父親との関係を伏せて仮名で学生生活を送っていたが、党大会の前後に突然中退して帰国したという。
党大会で習近平氏は胡錦濤氏の後任の総書記に選出され、翌月には汚職対策など綱紀粛正や経費削減で倹約令を出している。

また、北京で今月開かれた全国人民代表大会(全人代=国会)で首相に就いた李克強氏の娘も同大留学を終えて同時期に帰国。国家副主席となった李源潮氏の息子、副首相の汪洋、馬凱両氏の娘も米国の生活を切り上げて中国に戻った。

同大などには江沢民元国家主席の孫娘や昨年失脚した重慶市の元トップ、薄煕来氏の息子らも留学経験がある。さらに同紙は、一斉帰国の背景に「政治的な要因もある」と指摘して、対米関係で何らかの変化が起きた可能性も示唆した。【3月31日 産経】
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国際関係では何かとアメリカとはりあうことの多い中国ですが、その指導層の子女の多くがアメリカへ留学している・・・・中国のアメリカという大国・富裕国に対する屈折した感情があるように思われます。対抗意識の裏の強烈な羨望・コンプレックスでしょうか。

【4月22日 産経】は、“これだけ多くの中国人が、多感な時期に海外に留学し、見聞を広めているはずなのに、母国の“素顔”に疑問を持たずにいることが不思議でならない。”と、産経らしいものの言いようをしていますが、汚職官僚や貧富の格差の問題はさておき、私は素直に“高級幹部の子女という将来のエリート候補たちがアメリカ生活で感じたものは、将来の中国の進路に多少の影響があるのかも・・・、そうあってほしいものだ。”と感じた次第です。

中国幹部子女を大勢受け入れるアメリカ側にも、単に金払いのいいお客さんというだけでなく、将来的なコネクションの形成など国家的深慮遠謀もあるかも。
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セルビアとコソボ EU加盟に向けて“歴史的合意”

2013-04-21 21:57:03 | 欧州情勢

(「分断の街」ミトロビツァ 川を挟んで手前南側はアルバニア系、奥北側はセルビア系住民の居住区となっています。 セルビア系居住区へは土砂で遮断されています。“flickr”より By e ele e http://www.flickr.com/photos/elenadepascual/8500051757/)

欧州最後のバルカン紛争地点での新たな歴史の幕開けが期待されている
分離独立をめぐり深い傷跡を残すセルビアとコソボの和解への模索と、その困難な道のりにちては、これまでも何回か取り上げてきました。
最近では、2月26日ブログ「コソボ 独立から5年、「祖国」を手にしたが、生活向上には高い壁  進まぬセルビア系住民との和解」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130226)など。

コソボの分離独立を認めないセルビアの基本姿勢、コソボ領内に存在するセルビア系住民居住区の扱いなど、対応が困難な問題がありますが、EU加盟を目指す両国にとって、EUが関係正常化を加盟の条件としていますのでなんらかの対応を迫られてもいます。

2011年3月から両国の直接交渉は行われており、最近では歩み寄りの姿勢も出てはきていましたが、4月2日にブリュッセルで行われた両国首相の会談では、コソボ領内でコソボ政府の支配を拒んできたセルビア系住民居住区の地位について合意できませんでした。

”コソボの人口約170万人の9割をアルバニア系住民が占めるが、北部の住民のほとんどがセルビア系。武力紛争のさなか南部から北に逃れ、5年前の独立宣言後も首都プリシュティナの中央政府の支配を拒んできた。
北部地域の自治体は今も自らをセルビアの一部とみなし、セルビア政府の予算で運営されている。南端の都市ミトロビツァは川で南北に分断。北大西洋条約機構(NATO)主体の国際治安部隊が警戒する。”【4月7日 朝日】

今回、EUの仲介によって、関係正常化へ向けた一歩がようやく踏み出されたようです。

****セルビアとコソボが歴史的合意、関係正常化へ前進*****
セルビア共和国とその自治州だったコソボ共和国は19日、関係正常化に向けた歴史的な合意書に署名した。西バルカン諸国の将来にとって重要な動きであり、両国は欧州連合(EU)加盟に向けて一歩前進した。

セルビアのイビツァ・ダチッチ首相とコソボのハシム・サチ首相は、両国間で続く緊張緩和のための2年間におよぶ厳しい交渉の末、15項目からなる合意書に署名。EU の指導者たちはこれを画期的な出来事として歓迎しているコソボ紛争の終結から14年、さらにセルビアからのコソボの一方的な独立宣言から5年が経った今、この合意がなされたことで、欧州最後のバルカン紛争地点での新たな歴史の幕開けが期待されている。

コソボのサチ首相は「この合意は過去の傷を癒すだろう。和解と国家間協力の時代の始まりを象徴する合意だ」と語った。セルビアのダチッチ首相は「セルビアの提案が受け入れられた。私が署名したのは、今後数日間に双方がこれを受け入れるか拒否するかを決める提案文だ」と述べた。

22日に会合予定のEU閣僚は、両国の交渉結果を受け、セルビアのEU加盟への扉を開くか否かを決定する予定。セルビア側は、6月のEUサミットでEU加盟交渉の開始日が決まることを期待している。22日までに両国の合意がない場合、セルビアのEU加盟は無期限延期となる。【4月20日 AFP】
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”画期的な出来事”“新たな歴史の幕開けが期待”という今回合意ですが、22日のタイムリミットを背景にしたEUの強い指導があったようです。
経済状態が悪く、失業率が約25%に達するセルビアにとって、EU加盟の成否は死活問題ともなっています。
独立したものの経済的苦境が続くコソボも同様でしょう。
EUには、加盟交渉をてこにして武力対立を抱えてきたこの地域の安定を図ろうとする狙いがあります。

****EU、懸命の説得=セルビアとコソボの関係改善****
旧ユーゴスラビア中核国のセルビアと、2008年にセルビアから一方的に独立したコソボが19日、関係正常化に取り組むことで基本合意し、対立克服への大きな転機となることが期待されている。合意の背景には、欧州連合(EU)加盟を悲願とする双方に対してEUが展開した懸命の説得工作があった。

北大西洋条約機構(NATO)軍による空爆から10年の節目に当たる09年にEU加盟を申請したセルビアに対し、まずEUが要求したのは、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦時のセルビア人武装勢力司令官で、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷に起訴されたムラディッチ被告の拘束だった。

セルビアは11年に被告を拘束、戦犯法廷に引き渡し、これを高く評価したEUは12年、セルビアをEUの加盟候補国として承認した。ただ、加盟候補になってもEUとの加盟交渉は始まらなかった。EUが交渉開始の条件として、今度はコソボとの緊張緩和を迫ったからだ。

EUは12年末、セルビアとコソボの対立の象徴となっているコソボ北部のセルビア系住民の処遇で双方が合意すれば、セルビアはEU加盟交渉の開始、コソボは交渉準備の本格化がそれぞれ13年に可能だと諭し、早期の事態打開を促した。

対話は大詰めを迎えた4月に入って2度も決裂。しかし、仲介役のアシュトン外交安全保障上級代表(EU外相)は諦めなかった。セルビアとコソボの現状をEU加盟国に報告する22日のタイムリミットが迫る中、アシュトン氏は報告作成を後回しにして粘り強く双方を取り持ち、EU加盟を通じた関係改善という道筋を受け入れさせた。

今回の合意を受け、EUは6月の首脳会議で、セルビアとコソボの加盟を後押しする決定を下すとの公算が大きくなっている。【4月20日 時事】
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内容は曖昧で、合意の実行には困難が伴う
「一つの中国」など、利害が対立する外交交渉においては問題点をあえて玉虫色・曖昧にして、双方が都合のよいように解釈する手法がとられますが、今回合意も多分にそんな雰囲気があります。

コソボ側は「独立が承認された」としていますが、セルビアはコソボを国家として承認したわけではなく、コソボが一方的に独立を宣言している現状を事実上追認するという姿勢です。
EUも加盟条件として国家承認までは求めていないとされています。

また、問題点となっていたコソボ北部の少数派セルビア系住民居住区についても、自治権をめぐる解釈はセルビア側とEUでは異なっています。

*****セルビア:コソボ独立「追認」…EU加盟へ関係改善*****
欧州連合(EU)の仲介で関係正常化に向けた首脳同士の直接交渉を昨年10月から行っていたセルビアとコソボは19日、「EU加盟への道をお互いに阻止しない」ことを含む15条項で合意した。

セルビアはコソボを国家として承認していないが、コソボが一方的に独立を宣言している現状を事実上、追認する。ただ、正常化の最大の障害であるコソボ北部の少数派セルビア人地域の扱いはあいまいなままで、合意の実行には困難が伴う。

セルビア側は国内の協議を経て22日に正式に態度表明する。セルビアは昨年、EU加盟候補国になっており、今回の合意により、6月のEU首脳会議で加盟交渉開始を認められる見通し。

セルビアの自治州だったコソボは内戦や99年の北大西洋条約機構(NATO)によるコソボ空爆などを経て、08年に一方的に独立を宣言した。96カ国が承認したがセルビアは国家と認めていない。
報道やEU当局によると、合意はコソボとセルビアが、EU加盟を目指す双方の政策を容認する。コソボ政府は19日、「独立が承認された」と強調した。

コソボ北部のセルビアに隣接する地域には約5万人のセルビア人が集住する。現在、セルビア政府により、自治機関や学校、病院などが運営されており、関係正常化の最大の障害になっていた。
合意はセルビア人地域がコソボ政府の統治下に入ることを認める代わりに、医療、教育、司法、警察分野でセルビア人による自治を尊重。セルビア政府は、コソボ北部が独自の政府や議会を持つ共同体になると説明しているが、EU当局者は「自治権獲得ではない」とし、扱いはあいまいだ。

EU内では5カ国がコソボを承認していないが、EUは全加盟国が承認したうえで双方をEUに加盟させることを最終目標にしている。EUは今回の合意を「加盟への一歩」(アシュトン外務・安全保障政策上級代表=外相)と位置づけている。【4月20日 毎日】
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コソボ北部の少数派セルビア系住民居住区の扱いが難しいのは、セルビア政府とコソボ政府の間の問題ではすまず、当事者であるセルビア系住民に強い反コソボ感情・コソボ統合への不安感・本国セルビアへの不信感が存在しているためです。
自治権があるのか、ないのか・・・両国政府間では玉虫色・曖昧でもすみますが、具体的な進展によってはセルビア系住民が「本国セルビアから見捨てられた」として態度を硬化させる可能性もあります。そのことは、セリビア国内世論にも影響します。

かなり危うい「合意」にも思えますが、22日に会合予定のEU閣僚などであまり中身に深入りせず、合意を既成事実として固めてしまうしかないでしょう。
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イタリア  深まる政局の混迷 新大統領選出できず、第1勢力トップ辞任

2013-04-20 23:04:22 | 欧州情勢

(新大統領選出投票で得票があった、マリーニ元上院議長と同姓のイタリア女優バレリア・マリーニさん【4月19日 AFP】http://www.afpbb.com/article/politics/2939483/10606786)

迷走する新大統領選出
2月25日に総選挙が行われたイタリアですが、下院では第1勢力となったベルサーニ民主党書記長率いる中道左派連合が第1勢力に与えられる「ボーナス議席」を得て定数の約54%を獲得したものの、議席配分方法の異なる上院では中道左派連合113議席(得票率31.63%)、ベルルスコーニ前首相率いる中道右派連合116議席(30.72%)、既成政治を否定するベッペ・グリッロ氏率いる「五つ星運動」54議席(23.79%)、緊縮財政路線のモンティ首相の中道勢力連合18議席(9.13%)と各勢力が分散し、緊縮財政派の中道左派連合と中道勢力連合を合わせても過半数に届かないという結果になりました。

このため、緊縮財政維持路線の“中道左派連合と中道勢力連合”という組み合わせ以外の連立が必要となりましたが、下院第1勢力のベルサーニ民主党書記長はベルルスコーニ前首相との「大連立」を拒否、既成政党批判の「五つ星運動」はどことも手を組まない・・・という状況で、連立工作は暗礁に乗り上げ、ナポリターノ大統領による調整も結果を出せませんでした。

膠着状態打開のためには議会解散・再選挙もひとつの選択肢ですが、憲法の規定ではナポリターノ大統領は任期切れ直前のため議会解散権を行使できません。
そこで5月15日の任期満了前に大統領が辞任し、新たに選出される大統領の下で早期に解散、総選挙の実施も視野に入れて再調整を行う・・・ということで、ナポリターノ大統領が辞任。

新大統領選出については、中道左派重鎮で中道色の強いマリーニ元上院議長(80)を候補とすることでいったんはベルサーニ民主党書記長とベルルスコーニ前首相の左右両派で合意ができたものの、中道左派内では、若手実力者マッテオ・レンツィ・フィレンツェ市長派らが、「(新鮮味のない)前世紀の候補だ」などと猛反発、18日に行われた2回の投票で必要な定数の3分の2の得票を獲得できませんでした。

なお、大統領は上下両院議員と州代表3人(バレダオスタ州は1人)の計1007人による選挙で選ばれます。
儀礼的な役割が大きいイタリア大統領ですが、国家元首として首相を指名したり、国会を解散する権限を有しており、政治危機の際には調整役を果たします。

****イタリア議員、大統領にポルノ男優やセクシー女優を希望?無効票続々****
18日、次期大統領の選出に失敗したイタリア議会の投票では大量の無効票が投じられたが、議員たちが投票用紙に書いた名前の中には、ポルノ俳優や女優、サッカー監督などが含まれていた。

伊メディアによると、ラウラ・ボルドリーニ議長はまじめな口調で、ポルノ俳優のロッコ・シフレディさん(48)について「大統領候補の要件を満たしていない」と指摘したという。伊大統領には満50歳以上でないとなれない。

女優のソフィア・ローレンさんや、シルビオ・ベルルスコーニ前首相の妻ベロニカ・ラリオさんの名前を書いた議員もいた。また、実際の大統領候補フランコ・マリーニ氏と姓が同じグラマー女優、バレリア・マリーニさんの名前もあった。これを知った当のバレリアさんは「うれしいわ!皮肉だとは分かっているけど、それでもうれしい」とコメント。大統領にはならないと念のため断った上で、「ふさわしい人選は重要。大統領は要の職ですから」と語っている。

2か月にわたって混迷が続いているイタリア政界だが、事態の深刻さとは裏腹に、この日の議場では票に書かれた名前が読み上げられるたびに、議員たちから笑い声や拍手がどっと巻き起こった。

中には、多くの人に愛されながら亡くなった喜劇俳優ウーゴ・トニャッツィさんが演じたおちぶれた貴族「ラファエロ・マシェッティ」の名を書いた議員もいた。また、サッカーが熱狂的な人気を誇るイタリアらしく、元同国代表監督のジョバンニ・トラパットーニ氏にも一票が投じられた。【4月19日 AFP】
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イタリア流のユーモアととるべきか、現状への痛烈な皮肉ととるべきか、緊張感のなさを嘆くべきか・・・。

18日の投票で中道右派との「密室合意」に多くが造反したことを受けて、中道左派連合の中核である民主党は19日、首相経験もあるプロディ元欧州委員会委員長を推す方針に急きょ変更。

しかし、プロディ氏はベルルスコーニ氏とは政敵にあたり、中道右派連合は民主党の方針転換によって裏切られた形ともなり、「国家分裂を招く」と強く反発。
中道左派連合内部の批判も収まらず、3回目までとは異なり過半数で決まる4回目投票においても造反が相次いだことで決着できませんでした。

【「4人に1人が裏切り者である状況は受け入れ難い」】
ベルサーニ書記長は、身内の造反によって大統領候補を引き受けた2人の先輩の顔に泥を塗った形ともなり、辞意を表明・・・・ということでますます混迷の度を深めています。

****プローディ氏選出失敗=中道左派のベルサーニ氏辞意―伊大統領選*****
イタリアの上下両院議員らは19日、5月中旬に任期満了となるナポリターノ大統領(87)の後任を決める選挙を続け、4回目となる投票を行った。

しかし、議会最大勢力の民主党が擁立したプローディ元首相(73)の選出に失敗、ベルサーニ書記長(61)は辞意を表明した。大統領選をめぐる混乱は、中道左派連合トップの辞任劇に発展、混乱長期化は不可避の情勢だ。
地元紙によると、ベルサーニ氏は党議員会合で大統領候補に決めたプローディ氏が選出されなかったことを問題視。「4人に1人が裏切り者である状況は受け入れ難い」と強い不満を表明した。

4回目以降の投票は過半数(504票)の得票で当選者が決まる。しかし、民主党を軸とした中道左派は造反が続出。プローディ氏は395票と過半数に100票以上も届かない惨敗だった。【4月20日 時事】
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政治危機がさらに長期化する事態への懸念
今後については、“左派系出身のナポリターノ氏は高齢を理由に続投を拒んできたが、20日、「国への責任を負わざるを得ない」との声明を出し、続投する意向を表明した。再選は、中道左派の大量造反が起きない限り、確実視されている。”【4月20日 読売】とのことです。

ナポリターノ大統領が設置した賢人会議は4月12日、新政権樹立の土台となる政治・経済改革政策の提言書を大統領に提出し、上下両院が同等の権限を持つ現在の国会・選挙制度を改め、下院が上院に優越する仕組みを確立するよう促しています。

しかし、仕切り直しにあたり、新大統領が決まらず、しかも首相候補だった第1勢力トップが辞任に追い込まれるというスタートラインにも立てない、ズルズル後退する状況が続いています。

おそらく新大統領は誰かには決まるのでしょうが、各勢力が対立する政治状況は変化なさそうです。
こうした状況では抜本的な政治・選挙制度改革も難しいように思われます。

新大統領がすぐ国会を解散し、今の制度のもとで選挙が行われる場合、現状と同じ勢力図となる可能性が高いとみられていましたが、ベルサーニ民主党書記長が指導力を発揮できなかった今回の騒動を見ていると、中道左派が後退し、中道右派・五つ星運動が増大するようにも思われます。
そうなると、スキャンダラスで大衆迎合的なベルルスコーニ前首相が復活という、EU各国としては歓迎できない事態の可能性も出てきます。

なお、新大統領が国会を解散せず、現在のモンティ首相が暫定的に政権を担い続けて賢人会議の答申を実現し、新しい選挙制度で解散総選挙に至るシナリオもあるようですが、すでに死に体とも思われるモンティ首相には無理ではないでしょうか。
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