孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  イスラム原理主義武装組織の掃討作戦に踏み切る

2009-04-30 21:37:23 | 世相

(スワト渓谷は観光客が国外からも集まる美しいリゾートでしたが、今は・・・
“flickr”より By Farooq Nasir (Extremely busy but available soon)
http://www.flickr.com/photos/farooqnasir/3152537951/)

【和平協定】
パキスタン政府の対応は、国内のシャリフ派など野党や前最高裁長官復職を求めた弁護士グループなどへの対応、アフガニスタン国境隣接地域での武装組織への対応、どれをとってもその場しのぎというか一貫しないものがあります。
これは国内問題にあっては、ザルダリ大統領自身がかつての収賄容疑を引きずっていること、武装組織との関係では、国内治安改善への要求および国民の反米感情とアメリカからの強い要請の板ばさみになっていることが背景にあります。

北西辺境州スワト地域で活動するタリバン系イスラム原理主義武装組織との間で、今年2月、同地域でのイスラム法の施行を条件に和平協定が締結されましたが、その後、ザルダリ大統領は、アメリカの反発やイスラム法施行に対する国民の不安もあって、これに署名せず棚上げしていることが報じられていました。

しかし、結局は武装組織側の首都へ向けた進軍という実力行使、州政府与党の中央での連立解消への動きなどに押される形で、この和平協定に署名し発効することになったことは、4月15日ブログ「パキスタン イスラム法(シャリア)導入を認める和平協定で開く「タリバン化」への水門」でも取り上げたところです。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090415

【逡巡する政府 拡大するタリバン支配】
しかし、「ビンラディンは兄弟のようなもの。いつでもここに来ることができる」と豪語する武装組織側と、アメリカの圧力を受け、また、“タリバン化への水門を開く”ことをためらう政府側の関係はやはりうまくいきません。
イスラム法施行を逡巡する政府側に対し、武装組織側は首都まで100kmの北西辺境州ブネール地区へ支配を拡大する形で圧力をかけます。

この事態にクリントン米国務長官は22日、下院外交委員会の公聴会で、パキスタン北西部でイスラム武装勢力タリバンが支配圏を拡大、首都に迫っていることについて、国際社会に「致命的な脅威を突きつけている」と述べ、深刻な懸念を示しました。

武装組織の戦闘員数百名が乗り込んだブネール地区では、音楽を聴いたことへの懲罰として、男性4人が頭髪とひげを剃るような事件も。
“「3人の友人らと車に乗り、音楽を聴いていたところ、武装したタリバンのメンバーに車を止められた。カセットテープとプレーヤーを叩き壊された後、彼らは、ぼくらの頭髪を半分だけ丸刈りにして、ひげをそり落とした。殴られ、2度と音楽を聴かないようにと言われた」(被害にあった匿名の若者)
地元警察は、そういった事件の情報は無いとしている。
被害にあった若者と友人らは、「無駄なので」警察に届け出なかったと述べ、「タリバンをさらに怒らせることになるし、自分の命が惜しい」と語った。”【4月26日 AFP】

【掃討作戦】
こうした武装組織側の支配圏拡大に対し、パキスタン政府は26日、北西辺境州スワト地区に隣接するローワー・ディール地区で、検問所を設置した武装勢力を武装ヘリで攻撃し30人を殺害したと発表、タリバン掃討作戦を開始したことを明らかにしています。
更に、首都に100kmと迫るブネール地区でも、武装組織側は一旦撤収したとのことでしたが実際には戦闘員が残っているようで、政府側はこの掃討作戦に乗り出しました。

****タリバン掃討開始 パキスタン軍*****
パキスタン軍報道官は28日、同国北西辺境州ブネール地区で、イスラム原理主義勢力タリバンの掃討作戦を開始したことを明らかにした。タリバンは24日に同地区からの撤退を表明したが依然、約500人のタリバン兵がとどまっているという。報道官は「撤退はうそだった」と非難し、「作戦の目的はブネール地区から武装兵を根絶し、駆逐することだ」と述べた。
地元からの情報によると、軍はブネール地区とスワト地区の間の山岳地帯への空爆も開始。ブネール地区では軍車両の通行のため住民の外出禁止令が出されている。
軍報道官はまた、スワト地区西隣のローワー・ディール地区で26日から実施されていたタリバン掃討作戦は終わり、「タリバン兵は一掃された」と語った。この作戦で武装兵75人と兵士10人が死亡した。
タリバンは、今月に入りスワト地区周辺にも勢力を拡大。米政府の強い懸念表明などを背景に、パキスタン政府もこれまで慎重だったタリバン掃討作戦に踏み切ったとみられる。【4月29日 産経】
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数日前の報道では、和平協定の成立しているスワト地区ではまだ戦闘は避けられているとも。
スワト地区での和平合意は昨年5月に続き2回目です。
前回は、米国の圧力を受けた政府がイスラム法導入の協定内容を守らなかったことなどから、同8月に破棄されています。
今回も、スワト地区に隣接するローワー・ディール地区、ブネール地区での掃討作戦によって、スワト地区での和平合意もかなり危うくなっています。

【難民3万人】
和平合意したり、掃討作戦を行ったり・・・一定しないパキスタン政府の対応ですが、そうした対応もやむを得ない苦しい事情があります。

****タリバーン掃討で難民3万人 パキスタン、拡大の恐れ****
パキスタン軍が同国北西辺境州で26日から開始した反政府武装勢力タリバーンへの掃討作戦で、28日までに約3万人の避難民が出ている模様だ。政府は首都イスラマバードに最も近いタリバーンの勢力範囲での新たな掃討作戦を示唆しており、今後、難民が増える可能性がある。
同州のフサイン情報相は28日の記者会見で、軍がタリバーンを攻撃している同州下ディール地区からの避難民が約3万人に上っている、と述べた。地元紙は同地区で軍による攻撃に巻き込まれて女性1人が死亡したと報じ、民間人の被害が懸念されている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「難民の規模や移動状況を確認し、できるだけ早く救済したい」としている。 (中略)
国連によると、昨秋から今年初めにかけて北西部バジョール地区で行われたタリバーン掃討作戦などで、今年1月下旬時点で20万人以上の国内難民が難民キャンプなどで生活している。うち約1万6千人は、今回の作戦が始まった下ディール地区の四つの難民キャンプに収容され、難民の増加が懸念されている。【4月28日 朝日】
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武装組織側と和平合意すればアメリカが怒り、国内ではタリバン化が進行する。
戦闘状態になると、地域住民の生活は破壊され大量の難民が発生する。更に、国内各地で自爆テロが頻発する。
ザルダリ大統領ならずとも対応に苦慮するところです。

【アメリカの懸念】
ところで、アメリカはこうした“ブレる”パキスタン政府への不信感を募らせています。
万一、パキスタンの支配権がイスラム原理主義勢力の手に落ちることになると、それはパキスタンが保有する核兵器がアルカイダとも通じる彼等の手に渡ることを意味します。

****オバマ米大統領、パキスタン政府は「ぜい弱」と懸念表明****
バラク・オバマ米大統領は29日、パキスタン政府のぜい弱性に懸念を表明し、さらに同国の核兵器がイスラム教原理主義者たちの手に落ちた場合、米国が介入する可能性を排除しないことを示唆した。
就任100日目にあたりゴールデンタイムに行った記者会見でオバマ大統領は、イスラム系武装勢力との戦いにパキスタンが真剣であり、同国が保有する核兵器は守られている点は確信していると語った。

しかし一方で、次週ワシントンを訪問するパキスタンのアシフ・アリ・ザルダリ(大統領率いる文民政権に関しては、同国国民の忠誠心を確保するための基本的機能を提供できていないと指摘し、「パキスタンの状況には非常に懸念を覚える。それは今すぐに政権が覆され、パキスタンがタリバンに支配にされると思うからではなく、現在の文民政権があまりにぜい弱なことから不安を感じる」と述べた。

その上でオバマ大統領は「もとより、わが国はパキスタンの主権を尊重したい。しかし、同時にわれわれは、米国の戦略、すなわち国家安全保障は、パキスタンが安定していること、パキスタンを核武装勢力の国にしないことに、極めて大きな関わりを持っていることを認識している」と語った。この発言を受け、パキスタンの保有する核兵器が脅威にさらされた場合に米国の介入はあるかと質問された大統領は、仮説に基づく質問には答えないと述べ、明言を避けた。【4月30日 AFP】
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アメリカはアフガニスタンのカルザイ政権も半ば見放しているところがありますが、アフガニスタンでもパキスタンでも現地政権の“ふがいなさ”に苛立ちを強めているようです。



コメント

新型インフルエンザ  依然わからないリスクの程度 遅れたメキシコの対応

2009-04-29 13:44:41 | 世相

(メキシコ 魅力的な女性はマスクをしていても・・・ 
“flickr”より By ALTO CONTRASTE . Edgar AVG
http://www.flickr.com/photos/eantoniovg/3484148699/)

【冷静な判断が必要】
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)感染が世界中に拡大していることは連日の報道のとおりです。
(被害が集中しているメキシコでの実態はよくわからないことが多いようですが。)
またこれも報じられているように、一番の疑問は、メキシコでの感染が疑われる死者が152名(28日段階)と報じられているように、なぜメキシコだけで重傷者が多いのか? 今回の新型インフルエンザの毒性はどれほどなのか? という点です。

WHOの専門家すら判断に苦慮しているところですので、なんとも言いようのないことですが、明らかなことは、従来からのインフルエンザでも日本国内だけで毎年数百人、多い年には千人を越える死者が出ており、今回の新型インフルエンザの脅威に関しては、そうした全体像の中でそのリスクを冷静に判断する必要があるということです。
その意味で、懸念されていたような鳥インフルエンザからの高病原性の新型インフルエンザ・パンデミックとは少し様相が異なるような感じがしています。

付け加えると、仮に今回の新型インフルエンザの毒性がさほど強くなく、パニックになる必要がないものだったとしても、全く免疫のない高病原性の鳥インンフルエンザ起源の新型インフルエンザ発症の危険、社会全体を麻痺させるようなパンデミックの危険は、依然として続いており、多分いつかは現実のものとなるのでは。
また、今回の新型インフルエンザウィルス自体も、今後の感染拡大の過程で変異していくことも考えられます。

【「世界初のケースだからだ」】
もうひとつ、今回の新型インフルエンザに関して明らかなことは、発生国メキシコ政府の対応の遅さ、情報の不透明さです。

****新型インフル:メキシコ、手薄な検査体制 国民は疑心暗鬼*****
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染が広がるメキシコで、ウイルス感染検査がこれまで1日15検体しかできていなかったことがわかった。同国政府は28日、200検体に検査能力を強化するが、重症肺炎だけでも1995例あり、軽症例も入れれば実態把握は困難を極める。また、政府の情報公開は不十分で、国民の間には「政府は何か隠している」との疑心暗鬼が広がる。
メキシコでは、これまで設備などの制約から、自前では少数の検体しか検査できず、米、カナダの支援で検査能力を引き上げた。最初の症例が確認されたとされる2日から約4週間後の態勢強化だ。
コルドバ保健相は、感染者数は「数週間で明らかになるだろう」と語るが、重症者よりけた違いに多いと予想される軽症者まで政府は把握していない。

また、患者家族への聞き取り調査や治療薬提供について保健相は「人員が十分でなく、すべて対応できていない」と打ち明ける。
AP通信によると、メキシコ市から約65キロ離れた村で2週間前に男性(39)が新型インフルエンザで死亡した。しかし、当局は遺族にも近所にも調査に来ない。男性の妻は26日、AP通信の取材で初めて、夫が新型インフルエンザで死亡したことを知ったという。
メキシコはラテンアメリカの大国だが貧富の差は極めて大きい。貧困層は病院に行けず、病院側も予算不足で機材の老朽化や医薬品の欠乏に苦しむ。

一方、政府は、いまだに最初の発症例や感染の全体像をつかめていない。保健相はこれまで4月13日に発症が確認された女性が最初に把握できたケースとしてきたが、27日の会見で、4月2日に4歳男児の感染を確認していたことを明かした。
政府の対応が遅いとの記者の批判に保健相は「世界初のケースだからだ」と、問題ないとの見解を示した。
情報提供も混乱している。メキシコ市長が独自に市内の新たな死者数を発表。政府発表と食い違いが起こった。また、保健相が記者会見を開かず、地元テレビ1社に患者・死者数を明らかにするケースが続いている。
政府は豚インフルエンザによる死者は20人とするが、死亡日や性別、年齢、職業、感染状況などを明らかにしていない。「政府は隠している」とのうわさも市民に流れている。
しかし、エスピノサ外相は、世界保健機関が国境閉鎖しないよう勧告したことを「メキシコ政府の対策が適切であるというメッセージ」と述べるなど、国際社会の常識とかけ離れた自信も見せる。【4月28日 毎日】
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【検討が必要な今後の初期対応】
世界中がこれほど騒いでいるなかで、発生国メキシコの情報が殆ど開示されていないのは非常に困った問題です。
メキシコ当局が24日に豚インフルエンザの発生を確認したことを発表した段階で、感染が疑われる死者は60人、感染者は800人規模に達しており、いかにも遅すぎます。
“4月2日に4歳男児の感染を確認していた”ということであれば、すでに三週間が経過しています。
この間、WHOへの連絡、もし連絡を受けていたとしたらWHO側の対応はどのようになっていたのでしょうか?

2003年のSARSのときも、中国政府の情報開示が遅れたことが被害を拡大させることになりました。
メキシコが対策のための人的・物的・資金的資源が充分でないということは、ひとりメキシコだけの問題ではありません。
今後、新たな新型インフルエンザ等の脅威が発生するのは、恐らく同様の環境の国でしょう。
そうした国で発生したとき、WHOを中心にどのような対応をとるべきか、今後に向けて検討する課題が多いように思われます。

【困難な感染拡大防止】
インフルエンザがSARSと比べて難しいのは、“SARS(重症急性呼吸器症候群)の場合では、発病から10日後が最も激しい感染期で、患者はそれまでに隔離されていた。これに比較し、豚インフルエンザの感染期のピークは、発病よりも前にあるとみられ、この場合、感染を食い止めるのはより難しいという。”【香港大学の微生物学専門家、袁國勇氏 4月28日 毎日】ということにあります。
本人が体調不良に気づいたときにはすでに周囲にウイルスを撒き散らしているということで、これでは感染拡大防止は困難です

感染拡大防止については現在空港・港での水際作戦が取られていますが、WHOの広報担当は「もしも感染していたり、感染源に接触したとしても、空港にいる時点で症状は現れていないだろう。空港での検査、検疫は役に立たない。搭乗客の体温監視も、潜伏期の患者を見つけ出すことはできない」と語っています。【4月28日 AFP】

完全に水際でチェック・阻止できなくても、対象者に注意を促し、何らかの監視下におくことが出来れば、“空港での検査、検疫は役に立たない”ということはないようにも思えます。
ただ、感染の流入を阻止することは、これだけ人的往来が増加し、スピードアップしている現在の社会では非常に困難なことであることは事実でしょう。

【GW旅行は?】
今、個人的に懸念しているのは、来月2日からのマレーシア・ボルネオ島へ旅行への影響です。
いまのところマレーシアでは感染者は報告されていないようですが・・・。
帰国時の関西空港での乗り継ぎ時間があまりなく、検疫で時間をとられると間に合わなくなるという心配も。

03年SARS感染が問題になっていたときは、ラオスへ行きました。
一応空港ではマスクを・・・と用意はして行ったのですが、実際にマスクをすると息苦しくなかなか着けていられません。特に現地では暑くて、とてもマスクなんてしていられませんでした。
息苦しいためしょっちゅうマスクに手をやることが、SARSのときの医療関係者の院内感染を助長したとの話も聞きます。さもありなんという感じがします。

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オーストラリア  ボートピープル増加、高まるラッド政権への批判

2009-04-28 22:26:04 | 世相

(ミャンマー軍事政権への抗議行動に参加するミャンマー難民 メルボルンにて
“flickr”より By Rusty Stewart
http://www.flickr.com/photos/rustystewart/1466367016/)

【ボートピープル】
アフガニスタン、パキスタン、イラクなどからの難民“ボートピープル”が次々とオーストラリアに押し寄せており、前政権の政策を転向して難民に対して寛容な政策をとっているラッド政権に対する批判がオーストラリア国内で高まっているそうです。

****豪政権悩ます難民船 政策転換後、次々と****
アジアや中東の紛争地などを逃れてきた難民を乗せた船が、オーストラリア海域に相次いで押し寄せている。労働党のラッド政権が昨夏、保守系の前政権の厳しい難民政策を転換して以降、続々と来航しており、野党側が責任を追及するなど政治問題化しつつある。(中略)

難民船は今年1月以降だけで計8隻が豪海域内に入るなど急増。ラッド政権が難民政策を緩和した昨年9月以降、計15隻の難民船が見つかり、この8カ月間に豪州上陸を目指したボートピープルは500人余にのぼるとされる。
難民は治安悪化の著しいイラクやアフガン、内戦が続くスリランカなどから逃げてきた人々が多い。
難民船の「出港地」であるインドネシアの島々を取材した地元テレビは、アジアや中東から大勢の難民が集まり、大半が密航あっせん業者に大金を払って不法入国の機会をうかがっている、と報じた。
世界的な金融危機で貧困層が新天地を目指すケースもあるという。

ハワード前政権は、ボートピープルを近隣国のナウルやパプアニューギニアに設置した収容所に送り、難民認定審査を行うなどの厳しい政策をとっていた。だが、ラッド首相は選挙戦で他国に置いていた収容所の閉鎖を公約。昨年2月に、公約を実現した。その後、難民申請者を他国の収容所に隔離する政策も廃止を決めた。
一方、野党陣営はラッド政権による見直しが難民船急増につながったとして、「政府の難民政策は緩い。違法な難民たちを思いとどまらせるためにも強化すべきだ」(野党自由党党首)と非難するなど攻勢を強めている。
多くの移民や難民を受け入れてきた豪州では難民問題に敏感なだけに、ラッド政権は対応に苦慮。
インドネシアのユドヨノ大統領に難民船の取り締まり強化を求める一方で、国内向けには「最近のアフガン情勢や金融危機などが難民急増につながっている」(ラッド氏)と説明しているが、難民船がこのまま急増すれば政権基盤にも響きかねない、との見方も出ている。【4月28日 朝日】
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このニュースを聞いて、地理的に遠く離れたアフガニスタン周辺国からどうやって“ボートピープル”がオーストラリアにたどり着くのか不思議に思ったのですが、密航斡旋業者が介在して、インドネシアやシンガポール・マレーシアなどを中継地として、オーストラリアに送り込んでいるようです。

“インドネシア国家警察によると、今年新たに確認されたアフガン、パキスタン、イラクからの難民は約200人。北スラウェシ州やスマトラ島のランプン州のほか、ジャカルタ沖の小島や西ジャワ州ボゴールなど首都近郊での発見も増えている。当局者は「これほどの数は(米国のアフガン攻撃があった)01年以来」と話す。
難民のルートはシンガポール、マレーシア経由などさまざまだが、目的地はいずれも豪州。今月17日にバンテン州で見つかったアフガン人68人は、密航あっせん業者によってリゾート地のコテージにかくまわれ、「豪州行きの順番」を待っていたという。”【4月25日 毎日】

【移民の国】
不法入国難民とはまた異なりますが、海外移民という観点からすると、もともとオーストラリアは移民国家で、国民約2100万人の4人に1人が海外生まれという国です。
近年でも、経済が好調で労働力が不足する時期には積極的に移民を受け入れてきました。

しかし、どこの国でもそうですが、移民増加は社会に受け入れられない移民による治安悪化を招き、また景気が悪化すると国内労働者の雇用を奪っていると敵視されることになります。
オーストラリアに在住したことがあるイギリス人の知人が「昔のオーストラリアはよかった。移民が増えてひどい社会になった。」と嘆いていたことを思い出します。
ここで言う“移民”は、通常“非白人”を念頭に置いていると思われます。

移民増加を抑えるため、保守党前政権(ハワード首相)は市民権テストを導入しました。

****オーストラリアが市民権テスト導入、国歌の歌い出しなど問う****
オーストラリアは1日、市民権の取得を希望する人に同国の歴史や文化に関するテストを課し、国民としてふさわしいかどうかを評価する市民権テストを開始した。
保守派のハワード首相は、新たに国籍を取得する人が「メイトシップ(仲間意識)」といった同国の幅広い価値観に確実にコミットするようにするため、テストが必要としている。
国内では2005年、シドニーのビーチでイスラム系の若者らと非イスラム系の若者らが衝突する暴動事件が起きており、「オーストラリアの価値観」推進の一環として、テストの導入などが決まった。
テストは、国歌の歌い出し部分を問うものなど全20問で、コンピューター上で行われ、12問以上正解で合格。オーストラリアは移民国家で、国民約2100万人の4人に1人が海外生まれ。1日には30人以上がこのテストを受ける予定。
同様のテストはカナダや米国、英国でも行われているが、オーストラリア国内では難民や移民グループから批判の声が上がっていた。【07年10月1日 ロイター】
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この時期は、同様の措置が移民増加に悩む欧州各国でも導入された時期です。
オーストラリア政府は「移民排斥が目的ではない」と説明していましたが、移民団体は「英語が苦手な移民を締め出すものだ」と批判していました。
その後、移民・難民に寛容なラッド現政権に変わった訳ですが、今現在“市民権テスト”がどうなっているのかは知りません。

【衝突する利害】
かつての“白豪主義”で知られるオーストラリアに限らず、移民・難民問題は“今自分達が手にしているものを、よそ者のために失いたくない”という本音が表面化する難しい問題です。
特に、人種的な問題が絡むだけに厄介です。
先住民への謝罪では国民的共感を得たラッド政権ですが、すでに奪いつくしてもはや社会的影響力を失っている先住民とは異なり、増加する移民・難民問題は直接に自分の生活・権益に関わってきます。

そうした本音は当然理解できますし、国家はまずもって現在の自国民の権利を保護するためにあるというのもわかります。
ただ、それだけでいいのか・・・という気もします。
“自分達さえよければ・・・”というのも、寂しい感じがあります。
どこかでうまく折り合いをつける、冷静な判断・理性が求められます。


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台湾  中国との経済関係強化で「一中市場」形成への流れ

2009-04-27 21:58:41 | 国際情勢

(台湾と中国を、幸せそうに抱き合う姉妹に見立てて描かれたプロパガンダ
“flickr”より By kattebelletje
http://www.flickr.com/photos/kattebelletje/3355051706/)

【自由貿易協定も検討スケジュールに】
高度成長する中国経済に相乗りする形で低迷する台湾経済を打開すべく、中国との経済関係強化を進める台湾・馬英九政権の動きが加速しています。
26日には中国江蘇省南京で、中国の陳雲林・海峡両岸関係協会(海協会)会長と、訪中した台湾の江丙坤(こうへいこん)海峡交流基金会(海基会)理事長による中台窓口機関のトップ会談が行われました。

****中台、経済融合推進で合意 交渉窓口トップが会談****
中国と台湾の交渉窓口の両トップが26日、南京で会談し、金融機関の相互乗り入れや定期便の導入など、中台の経済融合を進める協定に合意した。規制していた中国資本の台湾進出にも道を開く。世界的な景気低迷の下、台湾は中国マネーに近づく姿勢を強める。台湾が巨大な中国経済にのみ込まれず、中台関係で主体性を保てるかが今後の課題になりそうだ。

台湾側の江丙坤・海峡交流基金会(海基会)理事長と中国側の陳雲林・海峡両岸関係協会(海協会)会長の会談は、中台対話が復活した昨年6月以来3度目。
(1) 直行チャーター便の定期便化と増便
(2) 金融機関の相互乗り入れの解禁
(3) 犯罪捜査や情報提供などの司法協力
の3項目で協定に署名し、別に中国資本の台湾進出を認めることでも一致した。
また、江理事長は26日の会見で、年内に予定される次回協議の議題候補のリストに、関税撤廃など一種の自由貿易協定である「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)」を入れたことを認めた。

合意の大半は、台湾側の要望に基づくもので、「台湾経済救済」の様相が濃い。台湾経済は大幅なマイナス成長が確実な情勢で、失業率も過去最悪水準の6%弱に達する。経済立て直しを掲げて当選した馬英九(マー・インチウ)政権は、多少リスクを冒しても経済で成果を得たい事情がある。
中国はその事情も踏まえたうえで中国に好意的な馬政権の安定を優先し、できるだけ台湾に「アメ」を与える構えとみられる。経済を武器に相手を取り込む戦略は、過去に香港などでも見せた中国のお家芸でもある。

香港は新型肺炎(SARS)流行後の不況下にあった03年、中国と経済貿易緊密化協定(CEPA)を締結。本土からの中国人観光客が5割を超え、中国系企業が香港株式市場総額の55%を占めるほど経済一体化が進んで好況を取り戻した。その一方、民主選挙導入への勢いは後退したとされる。
香港のCEPAの中台版といえるのがECFAで、年内合意の可能性もささやかれる。これは胡錦濤(フー・チンタオ)・中国国家主席が昨年末に呼びかけたもので、「一国二制度」の実現につなげる中国の長期戦略の一環と見られる。
台湾では「ECFAを結べば台湾が香港化する第一歩になる」(蔡英文(ツァイ・インウェン)・民進党主席)との疑念もあるが、与党・国民党幹部は「中国ビジネスを手がける台湾企業からECFAを求める強烈な要請があった」と主張する。

台湾の経済的な中国依存の兆候はすでに出ている。昨年7月、中国人観光客の台湾旅行を解禁すると、台湾の101ビルや故宮博物院は記録的な入場者にあふれ、阿里山や日月潭など観光地のホテルも、ほぼ満室状態になった。
台湾はECFAの対中交渉で「対等・平等」堅持を掲げ、「香港化はあり得ない」(尹啓銘・経済部長)との姿勢だ。だが、中国とは大人と子供ほどの経済規模の差がある。馬政権は中国とどう対等に向き合うかという新たな課題も背負った形だが、具体策をまだ示せていない。【4月26日 朝日】
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【ウイン・ウイン・・・か?】
中国側の陳会長は会談の冒頭、「中台が共に手を携え、平和的発展の道にある困難を克服し、ウイン・ウイン(共に勝者となる)の経済発展を生み出そう」と呼びかけたそうですが、“ウイン・ウイン”なのか、中国による台湾呑みこみに繋がるのか・・・。
また、中国は台湾を標的にした1000基以上ものミサイルを配備していると言われていますが、馬総統は中台関係について、「経済の問題をまず解決し、その後に政治、軍事など困難な問題に取り組む。ミサイルの問題は配備から10年がたち、一朝一夕では解決しない」と述べています。【4月23日 毎日】

馬英九政権が進める中台の経済協定締結(ECFA)や中国資本による台湾への投資解禁などに対しては、野党の民進党や台湾団結連盟(台連)は「台湾を中国に売り渡す行為」と激しく反発しています。

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野党陣営は(1)「一つの中国市場(一中市場)」の形成で中国の安い農産品や工業製品、労働力が流入し、台湾の農民、中小企業、労働者が大打撃を受ける(2)世界最大の外貨準備を背景に、中国が台湾経済の要である銀行など金融産業を乗っ取る(3)ハイテク企業の買収によって中国への技術流出がおきる(4)メディア産業の買収で台湾の思想・言論が中国に牛耳られる-などあまたの問題を指摘して馬政権を激しく批判している。

一方、政府当局の行政院経済部(省庁に相当)は(1)農業など影響の大きい産業はECFAの対象から外す(2)中国資本の台湾企業への出資上限を30%以下に設定するなどの防御策を講じる-と反論している。
これについても野党陣営は、たとえ出資制限を設けても中国側が“籠絡(ろうらく)”した「台商(在中国の台湾企業)名義で買収すれば規制は尻抜けになる」(独立派系紙、自由時報)などと再反論。議論の応酬はとどまるところを知らない。

与党の国民党は立法院(議会)の3分の2の議席を抑えているだけに、馬政権は対中経済交流拡大の手綱を緩める気配はない。野党民進党は5月17日に台北で反ECFAの大規模な抗議デモを計画するなど反政府姿勢を強めている。【4月25日 産経】
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中国側は経済関係以外にも、台湾のWHO年次総会オブザーバー参加にも台湾への配慮を示しています。
あるいは、配慮を示しているのは経済関係やWHO問題など限られた範囲で、相変わらず1000基以上のミサイルを向けていると言うべきでしょうか。

****台湾:WHO年次総会へのオブザーバー参加、中国も「ほぼ合意」****
台湾紙「中国時報」は13日、世界保健機関(WHO)年次総会への台湾のオブザーバー参加が早ければ4月末にも決定すると報じた。中台間では参加について「ほぼ合意」に達しているという。5月にジュネーブで開かれる年次総会で、97年から申請してきた台湾の悲願が達成する可能性が高まっているようだ。
台湾のオブザーバー参加について日本や米国は支持を表明している。中国はオブザーバー参加についても反対してきたが、中台融和が進む中で柔軟姿勢に転じた。
台湾の馬英九総統は参加する際の名称を「中華民国」「台湾」「中華台北」の順に希望を挙げている。 【4月14日】
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【中国、台湾そして香港】
中台接近の結果、これまで中継地としての役割を果たしてきた香港が危機感を強めており、香港は台湾への接近を図っています。
上海の発展によって、アジアの金融センターとしての香港の「地盤沈下」に対する危機感もあります。

****台湾と香港60年ぶり急接近 「中国が統一工作に利用」警戒の声も****
中台関係の改善を追い風に、台湾と香港が60年ぶりの接近を始めている。先月末に香港特別行政区政府の曽徳成・民政局長が台湾を訪問したのに続き、今月中旬には台湾の胡志強・台中市長が訪港した。高官の相互訪問は初めてで、背後には台湾統一に向けて中国、香港、台湾の当局間交流を拡大しようとの胡錦濤政権の思惑も働いていそうだ。 (中略)
台湾は世界不況下で対中傾斜をさらに強めており、胡市長は「台湾、香港、広東、福建の協力強化」を呼びかけた。
中国にとっても双方の交流拡大は望むところだ。すでに中国の党・政府を後ろ盾とした香港メディアや企業の台湾進出が活発化しているが、経済・文化交流の拡大を通じた中台の一体化をさらに進めやすくなるからだ。
また香港特区政府に適用している「一国二制度」を台湾に宣伝する好機とも受け止めているようだ。
台湾内では民進党など野党陣営から中港台の協力拡大が「中国の統一工作に利用される」ことへの警戒の声が高まっている。しかし立法院(議会)の3分の2を占める国民党政権のもとで、この流れに歯止めがかかる気配はない。【4月19日 産経】
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中国・台湾、更に香港を加えた“一中市場”の形成は、大きな流れとなっています。
中国との統一または独立という政治関係についての台湾世論を、対中政策を主管する大陸委員会の最近の調査にみると、「現状維持の後、統一か独立を決定すべきだ」が35%で最も多く、「永遠に現状維持」が27%で次ぎ、早急に統一や独立を求める意見は合わせても8%弱しかなかったとか。【4月27日 毎日】
ただ、台湾や香港が中国の大きな引力にどれだけ抗して独自の軌道を維持できるのかについては、かなり疑問でもあります。
基本的には民族的同一性を持っていますので、今後中国の国際的地位が向上すれば、経済関係を超えた連携・関係強化もあるように思えます。


 
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グルジア  高まる大統領辞任要求 NATO軍事演習へのロシアの反発

2009-04-26 13:16:48 | 国際情勢

(サーカシビリ大統領に退陣を迫る野党勢力の指導者、ブルジャナゼ前国会議長
かつてのバラ革命では、サーカシビリ大統領と共闘した関係ですが・・・
オレンジ革命のウクライナでも同様の争いが展開されています。
東欧のカラー革命の夢は今、厳しい現実に直面しています。
“flickr”より By gipajournos
http://www.flickr.com/photos/37237190@N07/3435459008/)

【苦悩するサーカシビリ政権】
グルジアとロシアと軍事衝突が起きたのが昨年8月。
グルジアのサーカシビリ大統領は当初「最初に侵攻したのはロシア軍」と主張していましたが、11月、グルジア側が先に軍事行動を起したことを認めました。
そのうえで、「ロシア軍がグルジア領内に入っているという情報を何度も確認した」、「(ロシア軍の)干渉から領土を守り、市民を救うために決断した。他に選択肢はなかった。」と、その行動を正当化しています。

2003年11月の“バラ革命”で誕生したサーカシビリ政権は、親欧米を明確にし、NATO加盟・開かれた社会の創設・汚職の撤廃・経済の再建を掲げました。
欧米対ロシアという図式で見ると、グルジアはウクライナと並び、欧米側が旧ソ連圏に築いた橋頭堡となっています。

サーカシビリ大統領はロシアとの衝突・緊張関係でグルジアのNATO加盟が加速されると考えていたとも言われていますが、NATOはこれ以上のロシアとの対立を望まず、12月にはグルジア・ウクライナのNATO加盟を見送り、対ロシア協調を優先するドイツ・フランス主導で対ロシア定期協議の一部再開に乗り出す流れとなっています。

ロシアはグルジアへの圧力を強めており、紛争後はグルジアからの輸入を停止。
これによりグルジアは輸出の70%を失いました。
ロシア・メドベージェフ大統領は、サーカシビリ大統領がその地位に留まる限り貿易再開はないと明言しています。
また紛争により、国外からの投資も激減しました。
更に、その後の世界同時不況の波が押し寄せ、グルジア経済は非常に困難な状態に追い込まれています。

【問われる大統領の責任】
こうしたなか、軍事衝突で大きな負担を抱えることになった国民からは、NATOからもはしごをはずされた形のサーカシビリ大統領に対し、大統領の責任を問う強い批判が起きています。

“紛争時のロシア軍の攻撃でインフラや物資供給網が寸断されたグルジアの経済的損失は10億ドルに上るとされ、最近のグルジア紙の世論調査では「すべての問題の責任は大統領にある」との回答が89%に上ったケースもあるという。
さらに、03年の政変劇「バラ革命」で大統領と共闘した有力女性政治家、ブルジャナゼ前国会議長が11月下旬、反政権野党を旗揚げして対決姿勢を鮮明にした。孤立無援のサーカシビリ氏が求心力回復のために取りうる手段も限られているのが実情だ。”【08年12月7日 産経】

ブルジャナゼ氏は2月、「統一グルジア運動」など八つの野党勢力と、グルジアの独立記念日4月9日までのサアカシュビリ氏の辞任を求める共同声明を発表。
3月15日には首都トビリシで数千人規模の街頭デモを行い、サーカシビリ大統領が辞任に応じない場合は、無期限の街頭デモをするとしていました。

これに対し、政権側は3月22日、武器の不法所持容疑で「民主運動・統一グルジア」の地方支部指導者ら7人を逮捕。
野党側は4月9日、大統領の辞任を求める大規模集会を決行。

****サーカシビリ大統領の辞任要求=野党が大規模集会-グルジア****
昨年8月、ロシアとの軍事紛争が起きたグルジアの首都トビリシで9日、主要野党による大規模な反政府集会が開かれ、サーカシビリ大統領に辞任要求を突き付けた。紛争後、国民の反ロシア感情の高まりで、大統領の求心力は一時強まっていたが、政権存続の正念場に直面しつつある。
インタファクス通信などによると、トビリシ中心部にある議会前広場には6万人を超える市民が集結。野党「民主運動・統一グルジア」を率いるブルジャナゼ前議会議長は「国民の大半が大統領の辞任を求めている」と述べた。
辞任要求の高まりの背景には、大統領への権力集中への批判のほか、ロシアとの軍事衝突を回避できなかった責任を追及する声がある。【4月9日 時事】
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国内的には“正念場”に立たされているサーカシビリ政権ですが、国際的にはNATOの軍事演習がグルジアで予定されており、再びロシアとの緊張が高まっています。

【再び高まる緊張】
****グルジアで来月NATOが演習 ロシア反発、対抗示唆*****
北大西洋条約機構(NATO)が来月、グルジアで計画する軍事演習にロシアが猛反発している。昨年8月のグルジア紛争で冷え切った露・NATO関係はここにきて改善の兆しを見せていたものの、この演習が再び冷や水を浴びせそうな情勢だ。ロシア側はグルジアからの独立を承認したアブハジア自治共和国と南オセチア自治州で対抗演習を行う可能性も示唆しており、ロシアとNATO軍がグルジア領内で100キロたらずを隔てて対峙(たいじ)する緊迫した状況も想定される。

NATOは5月6日~6月1日、グルジアの首都トビリシの東方約20キロで19カ国の約1300人による演習を行う予定。これに対し、ロシアのロゴジンNATO大使が「挑発行為だ」として演習中止を求めたほか、メドベージェフ大統領も計画を「近視眼的で非友好的」と非難し、「必要があれば何らかの決定をする」と述べた。アブハジアのバガプシ大統領も「南オセチアとともに対抗措置をとる」としている。
一方、NATOは演習が紛争に先立つ昨年春から予定されていたとし、米国も「グルジアとの演習に何ら特別なことはない」と計画撤回の考えがないことを強調した。

NATOは今月4日の首脳会議でロシアとの定期協議「NATOロシア理事会」の再開を決めたほか、米露両国は戦略核兵器削減条約交渉を24日から開始することになっている。
旧ソ連のグルジアはウクライナとともにNATO加盟を希望し、両国を「勢力圏」とみなすロシアはその阻止を対外政策の至上課題としている。【4月19日 産経】
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ロシア側は、NATOがグルジアでの合同軍事演習を実施した場合、ロシアとNATOが来月7日に予定している軍トップ会談に応じない意向を示しています。

素人考えでは、グルジアのような紛争の後始末が終わっていない地域での軍事演習というのは、いかにもロシアを刺激するような行為に思えますが、どのような背景があるのでしょうか?
NATO加盟見送りの見返り条件でしょうか?
冷徹なパワーゲームの中の一手でしょうか?


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豚インフルエンザ  メキシコで感染・死者拡大 パンデミックの危険は?

2009-04-25 12:04:35 | 世相

(豚インフルエンザを警戒するメキシコの人々 “flickr”より By juanhidalgo
http://www.flickr.com/photos/juanhidalgo/3472316564/)

この冬は新型インフルエンザのパンデミックも話題になりましたが、幸いに今のところそうした事態は起きておらず、ときに初夏の陽射しも感じる季節になりました。
ただ、インフルエンザに罹る方はまだ身の回りでも見かけます。

新型インフルエンザと言うと、世間では高病原性の鳥インフルエンザからの“ヒト→ヒト”感染への変異が注目されてきましたが、今、メキシコ・アメリカで豚インフルエンザの感染拡大が懸念されています。

****豚インフル:厚労省が情報収集 専門家ら大流行を警戒*****
豚インフルエンザの疑いによりメキシコで60人が死亡したとの報道を受け、厚生労働省は情報収集を始めた。専門家からは人から人へ感染するパンデミック(大流行)を懸念する声があがる一方、季節性のインフルエンザとの見方も出ている。

豚インフルエンザは、A型のインフルエンザウイルスが豚に感染することで起きる。米疾病対策センターによると、1976年に米国で豚から人への感染例が報告されている。通常は人に感染しても軽症でおさまる。ただ、豚は人間と鳥の両方のインフルエンザに感染するため、豚の体内でウイルスが混ざり合いウイルスが変異し、新型インフルエンザとして大流行する可能性が指摘されている。
国立感染症研究所の田代真人・ウイルス第三部長は「米国のウイルスはH1N1型だった。メキシコでも全員が同じ型かどうかWHOが確認中。同一であれば人から人への感染が広がっていることを示し、パンデミックの始まりになる」と説明する。

新型インフルエンザに詳しい外岡(とのおか)立人・元小樽市保健所長は「メキシコでの死者は25~40歳の若年層で、急激に症状が悪化したとみられる。パンデミックの始まりを疑った方がいいのではないか。すでに日本にウイルスが入っている可能性もある。検疫を強化すべきだ」と指摘する。
一方、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「米国で検出されたH1N1型は、人間では季節性インフルエンザのAソ連型として流行を繰り返しており、だれもがある程度は免疫を持っている。感染が拡大しても被害は大きくならないだろう」と話している。【4月25日 毎日】
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メキシコでは3月末に初の例が報告され、その後増加。

****メキシコで豚インフルエンザ、60人死亡か*****
メキシコのホセ・アンヘル・コルドバ保健相は24日、同国で豚インフルエンザにより20人が死亡し、さらに40人の死因が豚インフルエンザだった可能性があり調査中だと発表した。コルドバ保健相はこれに先立ち、ブタの体内で変異したウイルスがヒトに感染したと述べていた。

メキシコ当局は豚インフルエンザに感染した恐れがある943人を調査中だとしている。メキシコ政府は人ごみや地下鉄の利用を避けるよう呼びかけ、首都メキシコ市の学校と博物館を閉鎖した。
メキシコ政府は50万人分のワクチンを備蓄しており、医療関係者にワクチンを接種する予定。メキシコ市当局は「季節性インフルエンザワクチン未接種のすべての人」に予防接種する方針を示したが、都市部には約2000万人が暮らしており、ワクチンの備蓄量は十分ではない。【4月25日 AFP】
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世界保健機関(WHO)は、メキシコで18人が死亡したことを確認し、うち12例が米カリフォルニア州で見つかったインフルエンザウイルスと遺伝子組成が同じだったと発表しています。

アメリカではカリフォルニア州とテキサス州で7人の感染が確認されています。
“米疾病対策センター(CDC)は23日、全米で豚インフルエンザに感染した患者が7人報告されたと発表した。患者は全員回復している。患者から分離されたウイルスは人、鳥、豚のそれぞれがかかるウイルスの遺伝子が混じったような未知の遺伝子をもっていた。このためCDCは、ウイルスが変化して人から人への感染が起きた可能性が高いとみている。”【4月24日 朝日】

【WHO 警戒水準引き上げも検討】
前出のように、「米国で検出されたH1N1型は、人間では季節性インフルエンザのAソ連型として流行を繰り返しており、だれもがある程度は免疫を持っている。感染が拡大しても被害は大きくならないだろう」という専門家の意見もありますが、一方で、Aソ連型と豚インフルエンザのH1N1型は微妙に違いがあり、現在の免疫が有効でないこともありえるという専門家の指摘もあります。

現実にメキシコでは大勢の感染者と死者を出していますが、この地域ではもともとAソ連型の感染が少なく、免疫もない者が多かったせいでしょうか、それとも従来の免疫が機能しなかったせいでしょうか?
素人にはよくわかりません。

よくわかりませんが、警戒を要する事態ではあるようで、WHOも対応を急いでいます。
WHOは世界の専門家で構成する緊急委員会を25日にも開く方針を固めました。
WHOでは、新型インフルエンザの大流行に備えて、六段階に設定されている警戒水準を現行の「3」から「4」へ引き上げることも検討されているもようです。【4月25日 共同】

草なぎ君の裸騒ぎはもちろん、上空を通過する飛翔体よりも、その現実的リスクははるかに大きな問題です。
GWでメキシコ等への人の移動が大幅に増える時期でもあり、日本国内への流入の事態も現実的な問題です。


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南アフリカ  与党ANCの支配体制変わらず ズマ新大統領誕生へ

2009-04-24 22:06:15 | 国際情勢

(ANCの集会でズマ議長を支持して歌い踊る女性支持者 “flickr”より By bbcworldservice
http://www.flickr.com/photos/bbcworldservice/3457443708/)

【ANCの得票率は66%】
アパルトヘイト(人種隔離)後の南アフリカで国民議会(下院)の3分の2以上を占め、事実上南アを一党支配してきた与党「アフリカ民族会議(ANC)」の議席動向が注目されていた南アフリカの下院総選挙が22日行われました。
結果は選挙前の予想に近い「6割以上を占めるが、3分の2確保は微妙」というところのようです。

この結果を、“議席を減らした”と見る見方と、“一党支配体制を維持した”と見る見方の両方があるようですが、わずか数週間前まで、ANCのズマ議長には汚職で起訴される可能性があったことや、ANC内の権力闘争に敗れた反ズマ議長派の離党者が新党「国民会議(COPE)」を立ち上げて選挙戦に臨んでいたことを考えると、ズマ議長の与党ANCが勝利したと見ていいのではないでしょうか。

****南ア総選挙、与党ANC勝利へ 失業・治安なお重い課題*****
南アフリカで22日投票の国民議会(下院、400議席)選挙は開票が始まり、23日午後の中間集計で、与党アフリカ民族会議(ANC)の得票率が6割を超え、過半数獲得は確実な情勢だ。だが、選挙戦を通じてANCの問題点も目立ち始めている。

集計によると、ANCの得票率は65%(ANC得票率については、開票率40%で66%という報道もあります。【4月24日 産経】)、最大野党の民主同盟(DA)は17%、ANCから分裂した国民会議(COPE)は8%。投票率は、前回04年総選挙の約76%を上回ると予想されている。
分裂に危機感を抱き、2億ランド(約22億5千万円)の選挙費用をつぎ込んだANCが、アパルトヘイト(人種隔離)後の南アを事実上、一党支配してきた体制を維持するのは確実だ。だが、5月6日に新大統領に選出される見通しのズマ議長(党首)の前に、課題は山積している。

ズマ氏は政府の武器取引に絡んで収賄疑惑を持たれたが、訴追は4月に不透明な形で取りやめになった。背景に、ANCの圧力があった可能性が指摘されている。
党内の権力闘争は近年あからさまで、08年9月に犬猿の仲のムベキ前大統領を辞任に追い込み、COPEの結成を導いた。ANC支持者によるCOPEなど野党の集会への妨害行為も何度もあった。
失業率は昨年末の段階で22%。平均年5%を維持してきた経済成長は、世界的な経済危機のあおりで08年は3.1%に落ち込んだ。治安も改善されず、07年度の殺人事件は約1万8500件。毎日50人が殺された計算だ。
それでも、低所得層を中心にズマ氏の人気は高い。その源は、歌や踊りの庶民向けパフォーマンスと言われる。マンデラ元大統領が率いた解放闘争の歴史への信頼に支えられている感も否めない。【4月23日 朝日】
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【危惧されるズマ次期大統領の資質】
これにより、ANCのズマ議長が来月新たな大統領に就任することが確実となりました。
ただ、ズマ議長のキャラクター・資質については懸念する声もあります。

****南アフリカ ズマ大統領誕生へ 総選挙で与党勝利 資質に疑念の目*****
来月9日に新大統領に就任することが確実なズマ氏は、海外では「暴力的なアフリカの一夫多妻主義者」と紹介されることが多い。6人の女性との間に22人の子供。最大部族ズールー族出身で、選挙集会で伝統衣装のヒョウ皮をまとい、やりや盾を持って踊った。
05年にはエイズウイルス(HIV)感染者の女性をレイプしたとして起訴された(同年、無罪判決)が、裁判で「性交の後、シャワーを浴びれば感染は防げる」と発言し、あぜんとさせた。
武器輸入に絡み外国企業から783回計500万ランド(約5500万円)のわいろを受け取った疑惑も発覚したが、今月に入り検察当局が起訴を断念した。
英紙は「マンデラ元大統領が掲げた全人種による“虹をかける国家”は暗雲に覆われている」と強い危惧(きぐ)を示す。

しかし、黒人社会では「ズマ氏は自分たちの大統領」との声が圧倒的だ。貧しい母子家庭に育ち、アパルトヘイト(人種隔離)撤廃闘争でマンデラ氏とともにロベン島に10年間投獄された経歴、大衆の心をつかむ才能などを生かし、07年末のANC議長選では左派の労組や共産党の支持を取り付け、政敵・ムベキ前大統領を破った。
経済自由化を進めたムベキ前政権は格差拡大の批判を浴びた。社会福祉の充実を唱えるズマ氏が大統領に就任すれば、規制が強化されるとの懸念が強い。南ア在住の英国人記者、ブリッジランド氏は「G20に南アから何人のファーストレディーが出席するのか」と皮肉交じりに話している。【4月24日 産経】
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ANCの集会で反アパルトヘイト(人種隔離政策)闘争時に歌われた「Umshini Wami(わたしにマシンガンを持ってこい)」という歌を踊りながら披露するズマ議長をTVで観ましたが、確かに「大丈夫かな・・・」という感じはします。
こうしたズマ議長のパフォーマンスや、ヒョウ皮をまとった姿などは、イギリスで教育を受けたムガベ前大統領のエリート主義とは対照的ですが、ムガベ前大統領の進めた新自由主義的な政策で取り残され不満を抱く貧困層、更に、労働運動や南ア共産党の活動家グループを取り込み、ムガベ前大統領の権力闘争に勝利し、今日の選挙結果となっています。
“地元スター紙は最近の社説で「彼は愚か者でも、文盲でもない。だが大衆受けしたい場合には、公的な教育を受けていない点を大いに売りにしている」と評した。”【4月20日 AFP】という評価もあります。

【規制強化、黒人貧困層への配慮】
資質やパフォーマンスはともかく、前出記事にもあるように「経済自由化を進めたムベキ前政権は格差拡大の批判を浴びた。社会福祉の充実を唱えるズマ氏が大統領に就任すれば、規制が強化されるとの懸念が強い。」という、今後の政策が注目されます。

新興国の一角を占める南アでは、好調な経済によって「ブラックダイヤモンド」と呼ばれる黒人中間層が急増しています。
しかしその一方で、日本でも同様ですが、経済自由化は格差拡大にもつながり、経済成長・好景気の恩恵を享受できない多くの貧困層を生んでいます。

また、アパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃されて15年たった現在も白人と黒人間の経済格差は大きく、30業種の組合「UASA」が08年5月に行った調査では、白人の平均収入は黒人の4.5倍、カラード(混血)の4倍であるとされています。
この格差の背景には、教育格差があるとされています。【08年5月14日 AFP】

こうした格差是正に向けて、今まで以上に黒人貧困層に配慮した政策をズマ次期大統領は進めると思われますが、そうした政策は悪くすると、人気取り的な政策にもなる危険、経済全体のシステムを破壊するリスクもあります。
昨年10月に、ANCは、5万人の白人農場主が国土の87%を所有している現状を改めるべく、強制収用を使ってでも黒人への土地再分配を加速させるように求めています。【08年10月20日 AFP】
このような改革の失敗例としては、ジンバブエのムガベ大統領の失政があります。

【頭脳流失とアフリカ経済への影響】
また、南アフリカには白人や黒人エリート層の国外流出という問題があります。
その原因は、国内政治の混乱、経済のグローバル化などもありますが、国内治安の悪さが主な原因のひとつになっています。【3月11日号 Newsweek】
1日の殺人件数が50件を越え、国民一人当たりの殺人発生率が世界でも最も高い国のひとつです。
レイプ事件も紛争地域並に多いと言われます。
黒人貧困層に軸足を置くズマ次期大統領は、白人や黒人富裕層からは拒絶されており、今後の黒人貧困層遊具策如何では、更に頭脳流出が激しくなり、国内空洞化を招く危険も指摘されています。

南アフリカ経済も昨今の世界的不況の波に飲み込まれ、苦しい状況になっています。
08年第4四半期は1.8%のマイナス成長に陥っています。
規制強化的なズマ新議長の政策でこの不況からどのように脱出できるか、あるいは混乱に拍車がかかるのか・・・という問題は、ひとり南アフリカだけの問題ではなく、アフリカ全体に影響します。

南アフリカの企業はアフリカ諸国に多額の投資を行っており、南アフリカ経済はアフリカ全体経済を牽引してきました。
今後の南アフリカ経済の停滞・混乱は、資源価格低下や国際援助減少に苦しむアフリカ経済全体を更に悪化させる懸念もあります。


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キプロス  異文化統合は可能か? 北キプロスで再統合反対の野党が第1党へ

2009-04-23 20:16:52 | 国際情勢

(南北に分断されたニコシア トルコ系の北側の街角 “flickr”より By darkroom11
http://www.flickr.com/photos/darkroom11/3305634875/)

【分断から再統合への動き】
エーゲ海の小さな島国“キプロス”は鹿児島県ほどの大きさ。
1960年イギリスから独立しましたが、ギリシャ系住民とトルコ系住民の反目、ギリシャ・トルコの介入により、現在は島の北側3分の1がトルコ系の北キプロス・トルコ共和国(承認はトルコのみ)、南側の残り3分の2がギリシャ系のキプロス共和国(EU加盟)と、分断された状態が続いています。

04年、アナン国連事務総長が示した調停案に基づき、南北統合の是非を問う南北同時住民投票が実施されましたが、ギリシャ系の南側の反対多数(反対が76%)という結果に終わり、EUへの参加による国際社会への復帰を望むトルコ系側の賛成多数(賛成が65%)にもかかわらず否決されました。

ギリシャ系住民側には、経済水準が格段に落ちる北側とは今更一緒になりたくないという事情があります。内戦で家族・肉親を殺された双方の遺恨もあります。
なによりキリスト教とイスラム教という相容れ難い文化の違いが両者間にはあります。
また、北には3万人以上のトルコ軍が駐留し、分断後にトルコから来た入植者が多数住んでいる問題をどのように扱うかも南北間で対立するところです。

こうした分断状態のキプロスに統合の機運が、南における再統合推進派大統領の誕生という形で訪れたことは、1年ほど前のブログで取り上げました。
08年2月18日「キプロス  異文化統合に向けて、大統領選挙で見せた民意は?」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080218
08年3月23日「キプロス  再統合へ向けて、小さな島国の大きな試み」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080323

それまで統合に消極的だった南に、北側の政治家と親交があり、選挙では「対話の架け橋になる」と公約していたフリストフィアス新大統領が再統合反対派現職大統領を破って就任。
北側も再統合推進派のタラト大統領で、親交のある両指導者のもとで、昨年3月から会談が重ねられてきました。
しかし、南北間に横たわる問題のクリアはなかなか困難なようです。
下記記事は交渉が本格化した昨年9月のものです。

****南北キプロス:交渉再開 再統合「最後の好機」****
再統合交渉は南が04年に国連の仲介案を拒否して以来、中断してきたが、今年(08年)2月のフリストフィアス大統領就任で状況が変化。両大統領は旧知の間柄で、いずれも再統合の「推進派」。3月以降、4度の会談を重ね、交渉再開にこぎつけた。それぞれの「後ろ盾」ギリシャとトルコの関係が改善していることも好転材料になった。
南北とも将来像として、民族別の二つの共同体からなる「統一国家」を描く。だが、南がEUの一員であるのに対し、北はトルコのみが承認する国際的に孤立した「国家」だ。北は二つの共同体が同等の権利を有するよう主張して譲らないが、南は北を「吸収」したいのが本音だ。

また、北には3万人以上のトルコ軍が駐留し、分断後にトルコから来た入植者が多数住む。南はトルコ軍の完全撤退を求め、入植者も「不法移民」としてトルコへの帰国を迫るが、北に要求をのむ用意はない。
報道によると、交渉再開後の世論調査では、南北双方で「問題解決は不可能」との見方が41%を占めた。相互不信は根深く、南の51%が「子供が北の住民と結婚することに反対する」と回答。88%が問題解決の最大の障害に「トルコの関与・姿勢」を挙げた。【08年9月13日 毎日】
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キプロス問題は、トルコのEU加盟問題にも直結します。
EU加盟を切望するトルコに対し、その異質性を懸念する消極的な空気が欧州各国には強く、トルコがEU加盟の南を承認していないことが、トルコ批判の材料になっています。

【北で再統合反対派躍進】
昨年9月3日に始まった国連が仲介する統合交渉は、その後、会談ペースが鈍るなどして足踏み状態が続いていましたが、具体的な内容についてはあまり報じられることがありませんでした。
ここにきて、少し状況の変化を感じさせる記事が入っています。

****北キプロス:議会選で中道右派野党躍進 統合交渉に影響か****
地中海の分断国家キプロスの北側を占める北キプロス・トルコ共和国(トルコのみ承認)で19日、議会選挙(1院制、定数50)があり、ロイター通信によると、中道右派の野党・国家統一党(UBP)が得票率44.06%で第1党に躍進した。島の分断解消を図る再統合交渉は昨年、再開したが、UBPは、島南部のキプロス共和国(ギリシャ系)との「連邦」樹立を目指す現方針に反対しており、今後の交渉に影響を与えそうだ。
一方、再統合を推進する与党の共和国トルコ党(CTP)は29.25%の得票率にとどまり敗れた。
UBPは島の再統合ではなく、北キプロスの完全独立による「2国家共存」を主張している。 【4月20日 毎日】
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これまで、経済的に低迷しており南との格差が大きい北キプロス側は、国際的に孤立している現状もあって、南側との交渉にはメリットが大きいと思われ、04年の住民投票でも再統合支持の声が強かったのですが、流れが変化したのでしょうか。
昨年9月段階で、タラト北キプロス大統領は「最も困難なのは土地などの所有権の問題だ。(内戦が発生した)1963年以来、多くのトルコ系住民は(南に)財産を残してきた。」と語っていました。

個人的には、キプロス再統合交渉について、1年前のブログでは「民族・宗教の違いから抗争・分離に向かう話ばかりの近年の世界情勢にあって、異なる民族・宗教の両者が共存に向けて合意を形勢できるとすれば、小さな島国ではありますが、大きなメッセージを世界に発信できるのではないかと思います。」と評価しています。

ただ、毎日世界のあちこちで起きる民族間・宗教間の対立の話題ばかり目にしていると、「キプロスも無理して統合しても、結局また両者間のトラブルを引き起こすだけではないだろうか・・・。それくらいなら、両者が完全独立したうえで、関係国もこれを支持し、南北間で互いの主権を前提にした良好な相互関係を構築する「2国家共存」のほうが現実的ではないだろうか・・・」とも思えてきました。


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スリランカ  近づく最終段階 懸念される市民犠牲者

2009-04-22 22:06:36 | 国際情勢

(LTTE支配地域から脱出するタミル系住民 スリランカ政府提供写真 “ロイター”より)

【人間の盾】
スリランカの反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)に関しては、これまでも度々話題にしてきました。
最近では取り上げるたびに、“いよいよ最終段階に近づいている”というふうに書いてきましたが、その割に決着はまだついていません。意図的に政府軍は遅らせているのでは・・・と勘ぐるぐらいでした。
しかし今度こそ、1972年以来続いてきたLTTEとの戦闘にようやく終止符が打たれる“最終段階”のようです。
このブログを書いている間にも事態が動くこともあり得ます。

最高指導者のプラバカラン議長率いるLTTEは、沿岸と内陸を完全に包囲された十数平方キロの北東部地域に追い込まれており、スリランカ政府は21日正午を降伏期限に定めて通告を行っていました。
そして、その期限も過ぎ、進軍を開始したとの報道もあります。
LTTEがたてこもるこの地域には、21日段階で、国連の推定では依然10万人前後の民間人がいるとみられ、多くがLTTEに「人間の盾」として利用されている可能性が高いとされています。

国連や西側諸国は、市民解放のために軍が停戦を延長するよう要請していますが、スリランカのラジャパクサ大統領は20日のブラウン英首相との電話会談で、軍事行動を停止する考えがないことを言明しています。
一方、LTTE側も、徹底抗戦の構えを見せています。【4月22日 ロイター】

赤十字国際委員会(ICRC)は、現状を「壊滅的な事態」として、軍とLTTE双方に対し、市民にこれ以上の犠牲者が出ないよう呼び掛けています。ICRCによると、この2日間で市民数百人が死亡しているとのことです。
また、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は20日、「民間人の犠牲は戦争犯罪と考えられる」と警告しています。

スリランカ政府は、市民保護のため砲撃をしない「安全地帯」を設けていると説明してきましたが、市民の死傷者の多くがこの「安全地帯」で発生していると国連人権高等弁務官は声明を出しています。
LTTE側は市民を「人間の盾」とし、また、兵士への強制徴用をしているとも。

****スリランカ内戦 国連「市民2800人以上死亡の恐れ」*****
政府軍と武装組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」の内戦が最終局面にあるスリランカ北部の状況について、国連人権高等弁務官は13日、「信頼できる情報筋によれば、1月20日以来、(戦闘による砲撃で)2800人以上の市民が死亡し、7千人が負傷した可能性がある」とする声明を出した。
声明は、15万~18万人の市民が戦闘地域に閉じこめられていると推計。死傷者の3分の2以上が、政府がLTTE支配地域内に設けた「(砲撃をしない)安全地帯」で出ているとし、「市民の被害のレベルは本当に衝撃的であり、戦闘がこのように続けば、犠牲が破滅的になる恐れがある。紛争地域では食料や医療品も手に入らない」と深刻な懸念を表明した。
LTTEに対しては「報道では、市民を『人間の盾』として囲い込み、子供を含む市民を強制的に兵士として徴用している」と批判した。
AFP通信によると、スリランカのサマラシンハ人権担当相は「根拠のない数字」と否定した。しかし、政府は紛争地域へのメディアの立ち入りを認めず、戦闘被害の確認は非常に困難な状況が続いている。【3月14日 朝日】
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【制圧か降伏か 大量脱出】
最終段階が近づいたここ数日で、LTTE支配地域からの市民の大量脱出がおきています。

****「人間の盾」8万人以上が避難=制圧作戦間近か-スリランカ*****
内戦が最終段階にあるスリランカで、敗色鮮明な反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」のゲリラが潜伏、抵抗を続ける北東部の海岸地域から、人間の盾として留め置かれていたとみられる民間人が雪崩を打つように流出し、軍当局者によると22日までの3日間だけで8万1423人が避難した。

この地域は本来、民間人の安全を確保するための「非交戦地帯」だが、事実上、LTTEの最後の支配地となっている。沿岸と内陸を完全に包囲された十数平方キロの地域には最高指導者のプラバカラン議長以下、戦闘員少なくとも200人がいるとみられている。
政府が呼び掛けていた降伏期限は21日に切れており、近く最終制圧作戦が行われるとの観測が高まっている。軍は残り数千人とみられる人間の盾の救出を続けながら、制圧のタイミングを見極めている。【4月22日 時事】
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“200人”というのは相当に少ない数字です。
その程度の人数で十数平方キロの地域に何万人もの市民を人間の盾して閉じ込めるのは困難にも思えます。
一方で、どのくらいの市民が残っているかも、よくわかりません。
“残り数千人”というのも、根拠はあまりない数字のようにも思えます。
これまでも、政府側・LTTE側双方とも、被害状況や戦闘成果について大本営発表的な自分達に都合のいい全く食い違う発表を重ねてきていますので、数字的なところは何を信用していいのかわかりません。

ここに至っては、 “完全降伏”に近い形で市民の犠牲者がこれ以上増えない決着を望みますが、自爆攻撃を世界で最初に実施した組織と言われる戦闘的なLTTEですので、難しいところです。
大勢の市民犠牲者は、今でも国際的批判を受けているスリランカ政府側にとっても好ましいものではありません。
本来なら、こういう場面でこそ国連の仲介があってしかるべきなのですが・・・。

(続報)
LTTEからの幹部投降が出始めているようです。

****LTTE主要幹部が投降、市民10万人が避難 スリランカ****
スリランカで22日、大勢の市民が避難できずに取り残されているとの国際社会からの警告にもかかわらず、スリランカ軍が反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil Eelam、LTTE)」への掃討作戦を続行する中、LTTEの主要幹部2人が投降した。

投降したのは、LTTEの主要な対外窓口を務め「Daya Master」の呼び名で知られたVelayudam Dayanidi広報担当と、LTTEの政治部門トップ、S.P.タミルセルバン(S. P. Thamilselvan)氏。

また、スリランカ軍によると、LTTEが今もなお支配を続ける地域から、市民10万人以上が避難した。また、国防省は、スリランカ軍は避難できずにいる市民らを攻撃しておらず、「救助活動を行っている」と語った。スリランカ軍は、LTTEが「人間の盾」として市民らを人質に取り、避難する市民らを銃撃していると主張している。
軍によると、避難する市民の中にLTTEメンバー3000人がいたという。

赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross、ICRC)のピエール・クレーヘンベール(Pierre Kraehenbuehl)事業局長によると、LTTEの支配地域には、まだ数万人の市民が取り残されている可能性がある。また、避難民のための救助施設が足りなくなっているという。
国連(UN)によると、避難が始まる前、LTTEの支配地域には市民15万人が取り残されていた。【4月22日 AFP】
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インド  総選挙始まる 台風の目「大衆社会党」の選挙戦 投票から阻害される「第3の性」ヒジュラ

2009-04-21 21:00:25 | 国際情勢

(インド・バラナシ 投票日前日 混乱防止のため街頭に立つ兵士
“flickr”より By  Al Jazeera English
http://www.flickr.com/photos/aljazeeraenglish/3445548108/)

【ダリッドの女王】
「世界最大の民主制選挙」と言われるインド下院の総選挙が始まっています。

****投票に1か月、インド総選挙始まる*****
インド下院議会(定数545)選挙の第1回投票が16日、始まった。
「世界最大の民主制選挙」の有権者は7億人を超え、投票は5回に分けて実施、1か月を要して5月13日に終了する。選挙結果の発表は5月16日。

世論調査では、各政党が単独過半数を確保することは難しいとみられ、また与党連合が崩れ、政権交代の可能性も示唆されている。与党連合内の2大政党、国民会議派とインド人民党(BJP)のどちらも単独で絶対安定多数を確保することはできないと予測されている。
また、すでに選挙絡みの暴力事件が発生しており、東部のジャルカンド州で極左武装組織インド共産党毛沢東主義派のグループが、投票所の監視にあたっていた兵士6人を殺害した。

545議席のうち約半数は、各州の地方政党などが占める見込みだが、最終結果を受けて大政党らが連立に動き出してからの駆け引きが注目される。しかし急激な景気後退と、内外の安全保障に関する懸念が高まる中で、統一政策のない連立政権が誕生すれば政権運営の見通しは暗い。
次期首相に就任する可能性が高いのは、現職のマンモハン・シン首相(国民会議派、76)と、これに対抗するBJPの重鎮L.K.アドバニ(81)氏で両者ともに高齢だ。
2大政党の連立以外に実現性のある選択肢としては、「第3戦線」と呼ばれる左派勢力と地方政党の緩やかな連合体が挙がっている。また現在交渉中だが、「最低位カーストの女王」を自認するマヤワティ・クマリ氏と第3戦線がさらに連携する可能性も出ている。マヤワティ氏はインド初の「不可触民出身首相」を目指すと公言している。(後略)【4月16日 AFP】
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ばらまき公約の乱発、殺人などの多数の犯罪者が議員となっているインド国会の実情、および、ウッタル・プラデシュ州の地域政党である大衆社会党(BSP)の女性党首で、「最下位カースト・ダリット(「抑圧されし者」を意味する)の女王」と称されるマヤワティ氏が台風の目になる可能性があることについては、3月26日ブログ「インド 「世界最大の民主主義国」の総選挙  ばらまき選挙、犯罪者議員、「ダリットの女王」」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090326)でも取り上げたところです。

****インド総選挙、殺人罪で拘束のマフィア対エリート博士*****
今月13日午後9時すぎ。停電で真っ暗な貧民街の広場は、異様な熱気に包まれていた。「ムクタル・アンサリ候補を当選させれば、停電はなくなる。停電の責任を取らない電力会社の担当者は、すぐに絞首刑だ」。弁士が声を張り上げて過激な主張をすると、千人近い聴衆が「アンサリ万歳」と叫び始めた。
4人の有力候補が争うバラナシ選挙区は「マフィアのボスと博士の戦い」と呼ばれた。地元マフィアの顔役と、2大政党が擁立するエリートの対決を例えたものだ。

アンサリ氏はマフィアの1人。殺人などの罪状で起訴され拘束中。それでも「彼は庶民に薬をくれる」「娘の結婚資金を出してくれた」と支持者は感謝の言葉を口にする。
警察・司法が末端では公正と言い切れないインドでは、マフィアが庶民のトラブルを解決することが珍しくない。同候補を擁立したのは、カースト最底辺のダリット(不可触民)を支持基盤にする、ウッタルプラデシュ州が地盤の大衆社会党(BSP)のマヤワティ党首だ。同党は、2大政党の貧困対策の不備を批判し、「第3勢力」の中心として台風の目になりつつある。【4月18日 朝日】
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上記はバラナシでの大衆社会党(BSP)の戦いぶりを伝える記事ですが、3月26日ブログでも取り上げたように、犯罪者が多いインド国会のことですから、マフィアを担ぎ出しているのは別にマヤワティ氏のBSPだけのことではないでしょう。
BSPのアンサリ氏の集会にはイスラム教徒が目立つとか。
カースト最底辺のダリット(不可触民)だけでなく、カースト外のイスラム勢力をも取り込めば、BSPは大きな力を示せるかもしれません。

【「第3の性」ヒジュラ】
そんなインド選挙に関して興味深く思ったのが、もうひつとのカースト外の人達を報じた下記の記事です。

****総選挙のインド、投票を避ける「第3の性」*****
16日から総選挙の投票が始まったインドで、男性でも女性でもない「第3の性」に属するヒジュラと呼ばれる人びとが重大な問題に直面している。
インドには、男性から女性への性転換手術を受けるなどしたヒジュラが約100万人いると言われている。インドの選挙では投票箱が男女別に別れているため、性別を明確にしたくないヒジュラの人びとの多くが投票を棄権しているのだ。
女性として投票に臨むヒジュラもいるが、多くは男女別の明確化を拒否し、身分証明書の性別欄に「第3の性」を設ける運動を進めている。(中略)
偏見と闘いながら「第3の性」の確立に向けた活動を続けてきた結果、ヒジュラへたちはいくつかの成果を手にした。その一つが、旅券や公式書類のいくつかについて、性別欄に男性でも女性でもない「E」の項が設けられたことだ。
しかし、保守的な傾向が比較的強いインドで、ヒジュラ専用の投票箱が設けられるまでの道のりは遠い。(後略)【4月20日 AFP】
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ヒジュラについては、以前読んだインド旅行記などで、その存在を聞いたことがあります。
異性装を扱う「ようこのとりかえばや物語」(http://inuiyouko.web.fc2.com/folk.html)というサイトから、ヒジュラに関する説明を抜粋します。

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ヒジュラとは、ウルドゥー語で「半陰陽、両性具有者」を意味します。つまり、ヒジュラは女性器と男性器を併せ持った存在とされており、カースト制度から外れた特異な存在です。もともとは、子供の誕生や婚礼の祝いの場によばれ、歌や踊りで祝福するシャーマン的な芸能者であったといいます。
ヒジュラは先天的な半陰陽者であると自らは主張しますが、実際にはヒジュラとしての自覚を持った者が去勢してなるケースがほとんどです。
ヒジュラは決して自分たちのことを女性であるとは主張しません。周りの社会が彼らを女だとはみなしていないだけでなく、彼ら自身も自分たちを女だとは認識していないということです。女性のように生活することは彼らにとって去勢と同様に、生まれ持った男性という性を放棄するための象徴的な行為であって、女性そのものになろうとしているわけではないのです。つまり、彼らは男性というジェンダーから女性というジェンダーに移行するのではなく、あくまでも“ヒジュラという第3のジェンダー”に移行するのです。
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なお上記サイトによると、ヒジュラには、半陰陽、不能者、去勢した者、その他一切の性的に不完全である“チブラ”、女装してはいるが、去勢していない“アクワ”、男装のままで女性のように振舞う“クルクルムンディ”の3種類がいるそうです。

インドだけでなく、タイなどでも、いわゆるオカマ達はよく目にします。
何かこうしたものは“オカマ文化”的な共通の土壌があるのでしょうか?

【ネール王朝とLTTEのテロ計画】
なにやら深遠なテーマのようにも思えますが、そちら方面の見識もないので話をインド選挙に戻すと、与党「インド国民会議派」内では、故ラジブ・ガンジー首相の妻ソニア総裁(62)の長男、ラフル幹事長(38)の首相就任を期待する声が高まっているそうです。
会議派はすでにシン首相(76)の続投方針を決めていますが、低迷する党勢の打開策としてラフル氏への「世代交代論」は根強く、選挙で伸び悩めば執行部の若返りが一気に進む可能性があるとか。【4月20日 毎日】

“ネール王朝”待望論ですが、スリランカの反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」がソニア・ガンジー総裁と長男ラフル氏などの家族を標的とするテロを計画しているとして、内務省が全国の警察に警戒を指示したとの報道もありました。【4月9日 読売】

LTTEは、1991年にガンジー総裁の夫ラジブ・ガンジー元首相を爆弾テロで殺害していますが、スリランカで最終段階に追い詰められているLTTEにその余裕があるでしょうか?
あるいは、追い詰められているからこそ暴発することもあるのでしょうか?

とにかく、インド総選挙の結果発表が待たれます。

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