孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州経済  国内外をまとめられるか難しい局面のギリシャ 「欧州の手本」ポルトガル、目標達成は困難

2012-08-30 23:23:07 | 欧州情勢

(24日、ドイツ・メルケル首相とギリシャ・サマラス首相 “flickr”より By fotostelefonorojo http://www.flickr.com/photos/45757401@N08/7853144132/

【「息継ぎの時間が必要だ」】
債務危機に陥っているギリシャのサマラス首相は8月24日にドイツのメルケル首相とベルリンで、更に翌25日はフランスのオランド大統領とパリ・エリゼ宮で会談し、ギリシャが欧州連合(EU)などに約束した財政再建目標の達成時期を2014年から2年先送りし2016年とすることを提案しています。
ギリシャはEUからの追加支援を受けられないと、資金が枯渇し、財政破綻します。

ドイツ・メルケル首相は期限延長案には明言を避け、「約束を順守することが重要だ。ギリシャにはユーロ圏にとどまってほしい」と述べ、緊縮策の達成に向けて自助努力を続けるよう促しています。
“最大支援国のドイツでは「底の抜けたたるにカネを注ぎ込むようなもの」(ショイブレ財務相)と警戒感が強く、世論調査でも約7割が期限延長に反対している”【8月24日 毎日】というドイツ国内事情もあります。

****信頼の赤字、取り払う」 ギリシャ首相、独首相と会談****
ドイツのメルケル首相とギリシャのサマラス首相は24日、ギリシャに対する欧州連合(EU)などの支援継続をめぐり、ベルリンで会談した。会談後の記者会見で、サマラス首相は支援条件の財政緊縮策の緩和の必要性を主張。メルケル首相は支援継続や緊縮緩和の可否の判断は時期尚早としながらも、サマラス政権の取り組みを評価した。

両首脳の会談は6月のサマラス首相就任後初めて。サマラス首相は財政赤字だけでなく「信頼の赤字も取り払う」と緊縮路線継続の決意を表明。ギリシャの財政状況を監視するEUなどの代表団が9月にまとめる報告については、「新政権が成果を出すことを示すだろう」と自信を示した。
サマラス首相はまた、メルケル首相と「経済成長の優先度」についても協議したと説明。緊縮策などで経済が疲弊する中、「息継ぎの時間が必要だ」として、緊縮策の緩和の必要性を強調した。

これに対し、メルケル首相はギリシャのユーロ圏残留を求めたが、緊縮策緩和の是非には言及せず、EUなどの代表団による報告をまずは待つべきだとの立場を堅持した。ただ、「新政権が問題解決のため、あらゆることをすると深く確信している」と、サマラス首相の決意を評価。新政権が始めた取り組みについても「納得している」とした。

ギリシャは支援継続の条件である追加緊縮策をまとめ切れず、次回支援が受けられるかはまだ決まっていない。支援がなければ、資金が枯渇し、再びユーロ離脱の懸念が強まる恐れがある。同時に緊縮策への国民の不満が高まる中、早期の景気回復のため、財政再建目標の達成時期を2014年から16年に先送りすることを模索している。(後略)【8月25日 産経】
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事前にメルケル独首相と会談して対応を協議していたフランス・オランド大統領のギリシャへの反応も基本的には同じです。
オランド大統領はサマラス首相との会談後、記者団に「ギリシャはユーロ圏にとどまらなければならない」と改めて表明しながらも、「(構造改革の)計画の信用性を証明しなければならない」と注文をつけています。

ただ、ギリシャが求める財政再建期限先送りに関しては、ドイツ・メルケル首相よりは柔軟な感触も伝えられています。

****緊縮策緩和に柔軟姿勢 仏大統領、ギリシャ首相と会談****
フランスのオランド大統領は25日、ギリシャのサマラス首相とパリで会談した。大統領は会談後、欧州連合(EU)などの支援条件である緊縮策の実行を求める一方、「国民が耐えられるやり方でなければならない」とも語り、ギリシャが求める緊縮策緩和に柔軟な姿勢を示唆した。

オランド大統領はギリシャへの対応について、EUなどが同国の財政状況に関して9月にまとめる報告を待つ考えを表明。
ただ、状況確認後は、「欧州はなすべきことをなさねばならない」と語り、すみやかに必要な判断を下すため、10月のEU首脳会議で協議する考えを示した。財政緊縮策の緩和を念頭にした発言とみられる。(後略)【8月26日 産経】
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ギリシャのサマラス首相は独仏などEUの同意を取り付けられるか・・・という問題と同時に、国内的に財政緊縮策を実行できるか・・・という問題もあります。ギリシャ国内には、先の2回の総選挙で示されたように、緊縮策への強い不満があります。
連立与党内の取りまとめにも苦労しているようです。

****緊縮策の最終調整が難航=低所得者負担で一致せず―ギリシャ****
ギリシャのサマラス首相は29日、欧州連合(EU)などと合意した緊縮財政策の具体策をめぐり、政権に協力する左派2党の党首と会談した。だが低所得者の年金削減などで調整が難航、最終決定に至らなかった。同国への支援を判断するEUなどの財政監視団との協議を来月に控え、首相はぎりぎりの調整を続ける。

ギリシャからの報道によると、ストゥルナラス財務相は会合後、「細かい技術的な問題」が残っているとしながらも、緊縮策の大枠は政治合意に達したと語った。
しかし、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首は、緊縮策の詰めの協議を続けると指摘。民主左派のクベリス党首は「低所得者がこれ以上負担を負うべきではない」とし、最終合意はできていないとの認識を示した。【8月30日 時事】 
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国民の理解を得ることを更に難しくしそうな政治家の不祥事も発覚しています。

****ギリシャ議会で「身内雇用」続々…禁止法策定へ****
ギリシャ議会で、議員の身内が職員に採用されるケースが次々に発覚し、財政危機による失業増に苦しむ国民の猛反発に遭っている。
サマラス首相は23日、法務省に対し、議会の「身内雇用」を禁じる法案を来週中に策定するよう指示した。

同国では8月上旬、与党・新民主主義党(ND)議員の娘が議会職員に採用されていたことが報道で判明。この議員は、5月議会選後に再選挙が決まり、1日だけ招集された暫定議会で議長に就いた権限を使い、自身の娘を雇っていた。その後も、野党「独立ギリシャ人」のカメノス党首や、別のND議員の親類が、それぞれ職員に採用されていたことが発覚した。

同国の失業率は約23%、若年層では約55%に達し、財政再建のため公務員数削減も求められている。【8月26日 読売】
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【「改革はいつでも短期的に経済の縮小をもたらすが、将来的にはより良い足場を築く」】
一方、財政再建に関し、緊縮政策に取り組み支援を受けたときの約束をきちんと果たしたとして“欧州の手本”とも評されているのがポルトガルです。

****緊縮財政を乗り切る欧州の手本ポルトガル****
欧州債務危機の救済劇の結果は国によってさまざまだ。ギリシャは度重なる支援を受けながら、緊縮条件は拒否している。
スペインは、失業率24%の国が緊縮財政で繁栄を取り戻せるかどうかの試金石になるだろう。

そして忘れられがちなのがポルトガル。地中海諸国より小さく大ニュースも少ない欧州辺境の国。それが緊縮政策に取り組み支援を受けたときの約束をきちんと果たした。
昨年5月、巨額の財政赤字と市場の不信に直面したポルトガルは、EUとIMFから総額780債ユーロの金融支援を受けることで合意した。

以降、ポルトガル政府は公務員の給与を削減し、高額年金受給者の手当を減らし、所得からガソリンまであらゆる 税を増税した。
効果はあった。対GDP比の財政赤字は09年の10.2%から11年の4.2%に激減した。今年1~6月期の財政赤字は41億ユーロで、金融支援の条件をはるかに下回った。

副作用も強かった。
今年のGDPは年マイナス3%の勢いで収縮し、6月の失業率は15・4%に上昇した。
それでもポルトガルが何とか持っているのは、暴動やEUなどへの反発がないおかげだ。スベインより単一民族に近く、ギリシャのように先鋭的な政治対立がないのも幸いだった。

そして何より、外国の資本を引き付け、国外市場に輸出をする能力があった。ポルトガルは再び大航海時代に突入したかのようだ。最大の貿易相手国のスベインが不況に苦しむ間、急成長中の旧植民地、アンゴラやブラジルなどに工業製品や農産物を輸出している。今年6月の輸出は前年同月より9.2%増加。13年には貿易黒字も夢ではない。

サービス産業は逆に、先進国の経済不振のおかげで潤っている。バカンス客はヨーロッパ人もアメリカ人もポルトガルを目指してやって来る。南東部の町エボラの修道院を改築した高級ホテルでも、一泊たったの250ドルと安いからだ。

ポルトガルの努力は、格付け会社も認めている。だが、最も重要な債券市場はまだ認めていない。財政を立て直せば、国債の利回りは下がってポルトガルも自力で利払いができるようになるはずだった。しかし、10年物国債の利回りは今も10%を上回ったまま。その理不尽さはまるで、公正に戦って勝ったのに、審判に負けを言い渡されたオリンピック選手のようだ。【8月29日号 Newsweek日本版】
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“最も重要な債券市場はまだ認めていない”とはありますが、市場もポルトガルの財政改革を評価しているようです。

****ポルトガル国債の保証コスト低下、投資家が財政改革を評価****
ポルトガル国債に対する投資家の信頼感が、この1年余りで最も高い水準に達している。同国経済は緊縮措置の下で苦しんでいるものの、市場は政府の財政改革を評価している。

15日のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、ポルトガル国債の保証コストが746ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に低下。1月は1515bp、5月は1237bpだった。CDSスプレッドの年初来の低下幅は、世界の国債でポルトガルが最も大きく、この1カ月ではアイルランドに次いで縮小している。

経済縮小や失業者増にもかかわらず、支出削減や増税で財政は軌道に戻るとの楽観的な見方が広がる中、市場が織り込むポルトガルのデフォルト(債務不履行)率は73%から48%に低下した。同国政府は780億ユーロ(約7兆6000億円)規模の救済支援の条件を履行し、債券市場に来年復帰することを目指している。

アライアンス・バーンスタインの欧州債券担当ディレクター、アリフ・フセイン氏(ロンドン在勤)は「ポルトガルは欧州プログラムの成功例だ」と述べた上で、「極端に間違った方向に進まない限り、改革はいつでも短期的に経済の縮小をもたらすが、将来的にはより良い足場を築く」と語った。同社の運用資産は4070億ドル(約32兆2000億円)で、ポルトガル債も保有している。【8月16日 ブルームバーグ】
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ポルトガルのコエリョ首相は7月11日、施政方針演説において、財政再建に引き続き取り組む決意を語っています。

****ポルトガル、財政再建で引き続き欧州諸国の模範に=コエリョ首相****
ポルトガルのコエリョ首相は11日、緊縮財政履行には大きなリスクが伴うものの、同国は財政再建で引き続き、他の欧州諸国の模範とならなければならないと表明した。

首相は施政方針演説で「何よりも、われわれには、自国の問題が他国によって解決されるべきだとは考えられない。努力と関与を通じて、引き続き欧州諸国の模範となる必要がある。責任を果たし、難局を乗り越えられると言明できる」と述べた。

中道右派政権が進める緊縮財政により、過去1年間に金融状況は改善されたとし、依然として「前例のない危機」が続くなか、この路線を変更することはできないと語った。
政府として、今年と来年の赤字目標達成に向け、全ての措置を講じる方針を確認。憲法裁判所の判断により実施が阻まれた公務員の給与カットについて、代替策を模索する意向を示した。【7月12日 ロイター】
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もっとも、ポルトガルの改革が順調という訳ではなく、緊縮策による経済縮小で税収が落ち込み、財政赤字削減目標達成が困難となる事態も起きています。

****1─7月のポルトガル公的部門赤字は前年比39%減、税収減で財政目標達成困難に****
ポルトガル財務省が23日発表した1─7月の中核公的部門財政赤字は前年同期比39%減の39億8000万ユーロとなった。一方で、税収入が減少し、2012年の財政赤字削減目標の達成が難しくなった。

1―7月の税収は3.5%減の177億8000万ユーロ。歳入全体は、銀行の年金基金の国庫への移管が寄与し11.4%増の231億7000万ユーロとなった。

財務省報道官は「税収の不足分全てを埋めることは望めないが、一部は歳出削減によって相殺される。現行の計画を進め、年末までに赤字を対国内総生産(GDP)比4.5%とすることは難しくなっている」と述べた。
ポルトガルには来週、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の調査団が訪れ財政改革の進ちょくを調査する。【8月24日 ロイター】
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緊縮策→経済縮小→税収減少→財政赤字という悪循環におちいると、国民生活は疲弊し、改革も続けられなくなります。財政再建のための努力と、ギリシャ・サマラス首相の言う“息継ぎの時間”や、オランド仏大統領が大統領選挙選で主張した成長戦略とのバランスが難しい判断です。
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コロンビア  左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」との和平に向けた予備交渉開始

2012-08-29 23:24:10 | ラテンアメリカ

(コカイン生産・輸送の重要地域で警備に立つFARC兵士 2012年7月 “flickr”より By thevsky http://www.flickr.com/photos/82141350@N06/7553146984/

大きな転換点
南米コロンビアの左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」については、2008年3月にウリベ前大統領がエクアドル領内への越境攻撃を行いFARC幹部を殺害した事件で、エクアドルやチャベス大統領のベネズエラと関係が悪化したことや、2008年7月に約6年間拘束されていたイングリッド・ベタンクール元大統領候補などが救出された事件などで、このブログでもしばしば取り上げたことがあります。

FARCは、一時はコロンビア南部を中心に国土の3分の1を実効支配する強大な勢力を誇っていましたが、親米右派で、父親をFARCに殺害されているウリベ前大統領がアメリカの支援を得て断行した掃討作戦によって組織は弱体化し、ベネズエラ国境地帯やコロンビア南西部のジャングル地帯に追い込まれています。

ウリベ前大統領を継いだサントス大統領も、ベネズエラ・エクアドルとの関係を修復しながら、FARC掃討は継続し、10年9月にはFARC軍事部門司令官のホルヘ・ブリセーニョ・スアレスを、11年11月にはアルフォンソ・カノ最高司令官を殺害しています。

追い詰められたFARCは、政府との和平交渉を求める方針に転じ、身代金目的や収監された仲間の釈放の取引材料にするために繰り返し行っていた誘拐を止めることも発表しています。

なお、コロンビアは世界最悪の誘拐多発国で、誘拐した組織側との交渉にあたる誘拐ビジネスも盛んな国でしたが、FARCの衰退もあって相当に改善してきてはいるようです。
“コロンビア警察によれば、00年に3572件を記録した誘拐事件は11年に305件まで激少した。このうち208件は身代金目的の誘拐だった”【4月3日 毎日】
1年に3572件ということは、1日10件ということですから想像を絶する数字です。

****ゲリラ「もう誘拐しません」 コロンビア政府と和平交渉****
コロンビアの左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」は26日、今後、民間人を誘拐しないと発表した。10年以上拘束している警官や軍人ら10人も、近く解放するという。コロンビア政府は和平交渉の条件として誘拐などをやめるよう求めており、歩み寄りをみせた形だ。

AP通信や地元メディアによると、FARCの公式ホームページで発表した。ブラジル政府が人質の解放の際に、輸送面などで援助を申し出ていることに対して謝意を示した。

FARCは身代金目的や収監された仲間の釈放の取引材料にするために誘拐を繰り返し、現在も民間人の人質が数百人いるとみられている。2001年には日本の矢崎総業の現地法人副社長が誘拐され、2年9カ月後に遺体で発見された。10年にはコロンビア在住の日本人男性も誘拐され、その後解放されている。【2月27日 朝日】
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こうしたFARC側の姿勢もあって、サントス大統領はFARCとの和平に向けた予備交渉に入ったことを発表しています。

****コロンビア政府、左翼ゲリラと和平予備交渉入り****
ロイター通信などによると、南米コロンビアのサントス大統領は27日のテレビ演説で、同国最大の左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」との和平に向けた予備交渉に入ったことを明らかにした。

大統領は、交渉開始の時期など詳細には触れなかったが、交渉が順調に進めば約半世紀に及ぶ抗争に終止符が打たれる可能性もある。隣国ベネズエラのテレビ局は同日、本格交渉が10月にも北欧ノルウェーで始まり、キューバで継続されるとの見通しを伝えた。

FARCは1964年に結成され、麻薬取引や誘拐よる身代金などを資金源に反政府闘争を展開してきた。コロンビア政府は2002年以降、米国の支援も受けて掃討作戦を大幅に強化し、FARCの構成員は最盛時の約2万人から9000人程度まで減少したとされる。【8月28日 読売】
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もっとも、衰退したとはいっても、FARCの活動がなくなった訳ではなく、コロンビアの現地ニュースを翻訳紹介しているブログ「音の谷ラテンアメリカニュース」(taro氏)では、“FARCへの入隊を断った報復として2人の先住民少年がFARCによって殺害された”(8月24日 http://blog.livedoor.jp/otonotani/archives/7407723.html)とか、“FARCが送電線鉄塔8基を爆破・倒壊させたため、トゥマコ市では16日間に渡り停電となった”(8月26日 http://blog.livedoor.jp/otonotani/archives/7411543.html)などの記事が紹介されています。

対麻薬密売組織でも成果
コロンビアはメデジン・カルテルなどの麻薬密売組織が横行していたことでも有名ですが、組織幹部の逮捕という点では大きな成果を見せています。
今も麻薬戦争に苦しむメキシコなどからすれば、コロンビアは輝かしい成功例でもあります。
しかし、貧困の問題が解決されない限り、麻薬密売自体は姿を変えて続くであろうとも言われています。

****麻薬密売組織のリーダーを逮捕、コロンビア****
コロンビアの麻薬密輸組織「オフィシナ・デ・エンビガド」のリーダー、エリクソン・バルガス容疑者が8日、同国北東部の都市メデジンで逮捕された。麻薬の密輸や殺人の共謀などの容疑が持たれている。

コロンビアの国防相によるとバルガス容疑者は近年の同国における最大級の犯罪者の1人で、この10年間に同国で起きた多くの殺人事件に関与したという。警察当局は、近年バルガス容疑者は欧米に麻薬を密輸する中でメキシコの麻薬密売組織セタスとの関わりを深めてきたとしている。

コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領は、バルガス容疑者の逮捕はオフィシナ・デ・エンビガドに大きな打撃を与えたと述べるとともに、同容疑者を米国に引き渡すことを明らかにした。

バルガス容疑者は前のリーダーが2011年11月にベネズエラで逮捕されたことを受けてオフィシナ・デ・エンビガドのリーダーになっていた。前のリーダーは2011年12月に米国に引き渡された。【8月9日 AFP】
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ミャンマー  制裁緩和で勢いづく経済開発 急増する外国企業進出 民主化との調和が必要

2012-08-28 23:22:59 | ミャンマー

(大量の札束を配送するヤンゴンの銀行の様子 “flickr”より By -AX- http://www.flickr.com/photos/axelrd/7766600884/in/photostream/
ミャンマーでは今年度から管理フロート制が導入されることになり、二重為替制度や闇為替市場がなくなるそうです。
10年前のミャンマー旅行では、入国時に200ドルをFEC(外貨兌換券)に強制的に両替させられたり(5年前の旅行ではもうなくなっていました)、ドアの覗き窓からチェックされてから入れてもらえるといった、怪しげな両替所で「大丈夫だろうか?」と不安を抱えながら両替したり・・・といった思い出もあります。)

【「アジアにおける次代の星になり得る」】
ミャンマーは、テイン・セイン大統領のもとで民主化に着手し、これまでの経済制裁の緩和によって急速な経済成長が期待されています。
順調に進めばアジア最貧国の現状を脱して、中所得国への移行もそう遠くないとか。

****ミャンマー:30年までに中所得国に移行…ADB報告書****
アジア開発銀行(ADB)は20日、東南アジア諸国連合(ASEAN)の最貧国であるミャンマーの経済改革が順調に推移すれば、2030年までに1人当たり国内総生産(GDP)が2000ドル(約16万円)以上の中所得国に移行するとの報告書を発表した。

ミャンマーは天然資源に恵まれ、中国やインドに隣接するなど地理的優位性を持つことから、ADBは「成長可能性は高く、アジアにおける次代の星になり得る」としている。
ミャンマーでは、欧米諸国の経済制裁などによる投資冷え込みが経済成長を阻害してきたが、民主化進展を受けた制裁緩和で外国企業の進出が急増している。〖8月20日 毎日〗
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そんなに順調に進むだろうか?・・・という疑問も感じましたが、最近の外国企業の進出はただならぬ勢いがあるようです。
“天然資源に恵まれ、中国やインドに隣接するなど地理的優位性を持つ”ことの他、圧倒的に低い賃金水準が進出企業にとっては魅力となっています。
一般労働者の月額基本給は、中国が536ドル、マレーシア・フィリピン・タイが300ドル前後、インドネシアが200ドル程度、ラオス・ベトナム・カンボジアが100ドル前後、これに対しミャンマーは68ドルだそうです。【8月28日 朝日より】
話がそれますが、中国の賃金水準上昇も注目すべきところです。

【「いまミャンマーは、えり好みできる立場にある」】
ミャンマー(旧ビルマ)とは以前から政治的・経済的に深い繋がりを持っていた日本ですが、2003年5月に民主化運動指導者スー・チーさんが拘束されて以降の状況を受けて、緊急性が高く人道的な案件を除き、新規ODAの実施を見合わせていました。
欧米の経済制裁や日本のODA抑制の結果、ミャンマー軍政は中国への依存を強めることにもなりました。

しかし、最近の民主化進展を受けて、欧米諸国の経済制裁緩和に先駆ける形で今年4月、テイン・セイン大統領来日の際に、過去の債権3000億円を放棄したうえで、25年ぶりにミャンマーへの円借款を本格的に再開することで合意しています。

ただ、“台頭する新・新興国の新星、ミャンマーには資金がなだれ込んでいる”という状況で、日本の支援・日本企業の進出も厳しい競争にさらされているようです。

****ミャンマー開発、難題抱える日本 アジア最後の未開拓地****
軍事独裁に区切りをつけ、民主化と開国に踏み出したミャンマーに、アジア有数の工業団地を造るプロジェクトが動き出した。官民一体で支援に乗り出した日本に、難題を突き付けるミャンマー政府。台頭する中国や韓国との競争が影を落としていた。

■「日本だけで無理なら中韓にも」
最大都市ヤンゴン市街から車で約1時間のティラワ地区。見渡す限り草地と水田が続く一帯を総面積2400ヘクタール、東京ドーム500個分という巨大工業団地に一変させる話が浮上したのは昨年10月だった。
ミャンマーを訪問していた元郵政相の渡辺秀央氏(現・日本ミャンマー協会会長)に、20年来の付き合いのテインセイン大統領が「日本が開発しませんか」と持ちかけた。渡辺氏は1980年代後半の官房副長官時代からミャンマーとの交流を続けていた。

日本政府はアクセルを踏んだ。電気や上下水道が整った経済特別区をつくれば、海外からの投資が増えて雇用が伸び、国民が民主化を強く支持するようになる。それは「日本企業の競争力強化のため」(経済産業省の村崎勉・戦略輸出交渉官)でもあった。日本は少子高齢化で国内市場は先細り。ならば、約6200万人の人口を抱え、労賃も割安なミャンマーを生産拠点にして東南アジアの成長力を取り込んでもらおうというわけだ。

4月には、円借款による債権約3千億円を放棄して新たな円借款を出す大盤振る舞いを決めた。開発を資金面からバックアップする狙いだ。両国の政府や企業で合弁会社をつくり、実際の工事は日本勢が手がけるという方向性も固まった。

ところが現地では「想定外」の事態が起きていた。日本側は過去の工業団地の開発経験から20年はかかるとみていた。ミャンマー側は違った。有力閣僚が「2015年までに全部整地され、工場が立ち並んでいてほしい」と繰り返していた。15年には総選挙が予定され、政権与党はアウンサンスーチー氏率いる野党との対決を迫られる。「日本だけで無理なら四つに分けて中国や韓国にもまかせる」との分割論が消えては浮かんでいた。

中国とインドに挟まれ、地政学的にも重要な「アジア最後の未開拓地」に、どの国も食い込みたがっていた。なかでもティラワ開発のプランを先にミャンマー政府に持ち込んだ中国や、29年ぶりの大統領のミャンマー訪問をテコに関係強化を図ろうとしていた韓国は強い関心を示していた。
前代未聞の「大突貫開発」の旗を降ろそうとしないミャンマー。日本では「開発の主導権をとれないなら円借款は出さない」(経産省幹部)とのいらだちが広がった。

■埋没恐れて巻き返し
地域でのパワーバランスの変化も日本をせき立てた。日本にとって東南アジア外交は「十八番」だった。1960年代以降、政府の途上国援助(ODA)をつぎ込み、政治面での協力関係も深めてきた。
90年代末から変化が起きた。デフレに苦しむ日本を横目に、中国は高成長を続けて地域各国との貿易が急増。「微笑外交」を展開し、地域での存在感が飛躍的に高まった。韓国は韓流ブームを追い風に文化面でも影響力を強めた。

そこに飛び込んできたのが「ミャンマー開国」だった。日本は、欧米の経済制裁とは距離を置いた付き合いをしてきた。「親日国のミャンマーが羽ばたこうとしているときに大きな役割を果たせないなら、日本は東南アジア外交で隅っこに追いやられる」(外務省幹部)。ミャンマー支援の柱、ティラワは日本外交の正念場でもあった。 (中略)

攻防は翌26日にようやく落ち着く。仙谷由人・民主党政調会長代行も加わった午前10時からのテインセイン大統領との会談で、大統領はあっさりと「他国からも話があるが、すべて日本にまかせる。15年までに400ヘクタールを優先的に開発してほしい」。前日のティンナインテイン氏の会談から急転直下の「満額回答」に、日本の出席者は高揚感に包まれたという。
ミャンマー政府高官は「最初から日本にすべてまかせたら、議会や国際社会から『なぜ日本にだけ?』と問われる」と釈明する。

翌27日、日本政府は関係省庁によるティラワ開発の作業チームを創設。事業には民間のほか国際協力機構や国際協力銀行なども加わる。官民挙げての国家プロジェクトがようやくスタート台に立った。
ただ、火種はくすぶる。日本政府関係者は「開発があまり進まなかったら分割論が再燃してもおかしくない」と指摘する。「いまミャンマーは、えり好みできる立場にある」(日本の大手商社幹部)

■資金、西から東へ
日米欧の先進国は低成長にもがき、欧州危機の震源地ギリシャからはマネーや人が逃げ出している。一方、台頭する新・新興国の新星、ミャンマーには資金がなだれ込んでいる。西から東へ、世界経済の重心は加速度的に移っている。

ヤンゴン北郊のミンガラドン工業団地。3年前まで閑古鳥が鳴いていたが、民主化の動きとともに台湾や韓国の企業が相次いで入り、今春までに全41区画が売り切れた。東南アジアの周辺国もミャンマーでの事業拡大を表明。米国のゼネラル・エレクトリック(GE)なども名乗りを上げている。日本勢は欧米の制裁に配慮して投資を控え、圧倒的に出遅れていたが、続々と進出準備に入った。

電力や道路などインフラは貧弱で、総選挙の結果次第では政治が不安定になる可能性もある。それでも、銀行業や建設業を手がける中国系実業家、サージ・パン氏は「だれもが予想できないスピードで改革が進んでいる。90年代に改革開放路線を推進した当時の中国に似ている」と言う。(後略) 【8月28日 朝日】
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求められる、民主化と調和した海外支援・海外企業進出
1989年~2012年3月に認可された外国投資累積額に占める割合で見ると、中国が34.27%で1位、次いでタイの23.51%、香港の15.5%となっています。これに対し日本は0.53%と1%未満。この数字は韓国の7.23%はもちろん、イギリス6.78%、フランス1.15%より少ない数字となっています。
経済制裁を行っていた英仏より少ないというのは、よくわかりません。

いずれにしても、殆んどゼロからの再スタートといったところです。
ミャンマーでは電力が絶対的に不足しており、停電が恒常化しています。5年ほど前にマンダレーを旅行したときは、通電時間帯より停電時間帯の方が長い状況でした。こうした電力や道路などのインフラ整備が今後の急務となっています。
また、軍部独裁や中国のなりふり構わない進出などのもとで広まった腐敗・汚職や縁故主義などの是正も、経済成長には不可欠です。日本などの経済援助・外国企業進出が一部特権階層を利する形となっては、ミャンマー民主化の阻害要因ともなります。

ミャンマー民主化については、全出版物の事前検閲廃止が報じられています。
“これまでは検閲があるため、日刊紙は国営3紙のみで、民間の新聞・雑誌は週刊や月刊に限られてきたが、今後は民間による日刊紙発行に道を開くことになる”【8月20日 朝日】
しかし、情報省による事後のチェックはるとのことで、完全な「報道の自由」が確保されたわけではないそうです。

****ミャンマー、全出版物の事前検閲廃止 「新報道法案」焦点に****
ミャンマー情報省は20日、全出版物の事前検閲を廃止した。政府はメディアの活動を厳しく規制し禁錮刑などの罰則を規定した、1962年の印刷・出版登録法に代わる「新報道法案」を準備中で、今後の焦点は法案の内容に移る。

政府はこれまで段階的に、芸術やスポーツ、ビジネスなど5分野、約200の定期刊行物の事前検閲を廃止してきた。これに加え今回、20日付で政治、宗教分野の86週刊紙、55の月刊誌についても廃止した。

軍事政権時代から厳しい言論統制国家として知られるミャンマーで、事前検閲が廃止されたことは画期的だといえる。だが、新聞などは刊行物を事後に、情報省の報道検閲登録局(PSRD)に提出し、チェックを受けることが義務づけられている。

従って、検閲そのものがなくなり、完全な「報道の自由」が確保されたわけではない。7月には週刊紙2紙が、テイン・セイン政権の閣僚交代の見通しを報じ、発禁処分を受けてもいる。
新報道法案は印刷・出版登録法を事実上、改訂した内容で、メディアの権利、義務、倫理、罰則などが規定されているという。【8月21日 産経】
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また、改革路線に弾みをつける方向での内閣改造も行われています。

****ミャンマー政権が初の本格改造 経済改革へ弾み狙う****
ミャンマーのテインセイン大統領は27日夜、内閣の一部改造を発表した。政権が最重要課題として取り組む経済改革や少数民族との和解を担当する4大臣を大統領府付の大臣とした。大統領直轄にすることで改革に弾みをつける狙いがあるとみられる。

昨年3月の民政移管後に発足したテインセイン政権にとって、初の本格的な改造。大統領府相に新たに就任するのは、フラトゥン財務、ソーテイン工業、ティンナインテイン国家計画経済開発の各大臣。少数民族との政府交渉団を率いるアウンミン鉄道相も大統領府相になった。

守旧派の代表格とされるチョーサン情報相は協同組合相に横滑りした。事実上の更迭との見方が出ている。後任には軍政当時、軟禁下にあった民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏との政府窓口だったアウンジー労働相がつく。【8月28日 朝日】
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民主化・改革への動きが順風満帆という訳でもなく、8月19日ブログ「ミャンマー イスラム教徒ロヒンギャ族問題で強まる海外からの圧力」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120819)でも取り上げたように、ロヒンギャ族問題の他、少数民族との和平協議がこのところ停滞しているという問題もあるようです。
また、海外企業進出による経済開発が地元住民の権利を脅かすという問題もあります。
日本などの海外支援・企業進出が、ミャンマー民主化を促進する方向で進むように注視する必要があります。


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パレスチナ  難航する統一政府樹立 「アラブの春」後のイスラム主義台頭で存在感を強めるハマス

2012-08-27 22:58:58 | パレスチナ

(ファタハを率いるパレスチナ自治政府のアッバス議長(左)とハマスの政治部門最高指導者メシャール氏(右)
中央はカタールのハマド・ビン・ハリファ・サーニ首長 
今年2月6日、カタールのドーハで、暫定的な統一政府の首相をアッバス議長が務めること、暫定政府は閣僚に「独立したテクノクラート」を起用し、「ハマスが支配するガザ地区の再建と、議長選と評議会選の実施を促す」ことなどで合意しました。 “flickr”より By AJstream http://www.flickr.com/photos/61221198@N05/6886902335/)

【「パレスチナの代表は一つだ」】
イランの首都テヘランで26日、「非同盟諸国会議」が始まりました。
今回の会議には、これまで親米路線をとりイランとは距離を置いていたエジプトからモルシ大統領が参加、イラン・イスラム革命(1979年)直後の国交断絶以来、エジプト大統領としては初めてイランを訪問となります。
また、国連の潘基文事務総長もアメリカ・イスラエルの反対を押し切って参加します。

****テヘランで非同盟会議開幕 イラン、孤立脱却狙う****
イランの首都テヘランで26日、「非同盟諸国会議」が始まった。31日までの期間中に108カ国の代表が参加する。核開発をめぐって欧米から経済制裁を受けるイランは、非同盟諸国を味方につけることで国際的な孤立からの脱却を狙う。

非同盟諸国会議は、米ソ冷戦下で東西どちらの陣営にも属さない国々が結集して組織された。イラン政府によると120カ国が加盟、27カ国・組織がオブザーバー参加している。

イランのサレヒ外相は開幕演説で、「イランの核開発は平和目的だ。非同盟諸国は制裁を押しつける国々に立ち向かうべきだ」と述べ、支持を呼びかけた。27日までの高官会議、28、29日の外相会議を経て、30、31日に首脳会議がある。【8月27日 朝日】
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事前の情報では、パレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスのハニヤ首相も参加するとのことで注目されていましたが、パレスチナ自治政府のアッバス議長の強い反対があって、結局不参加となったようです。

****ハマス首相、国際会議不参加に イラン「招待してない****
今月末にイランの首都テヘランで開かれる非同盟諸国会議の首脳会議に、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのハニヤ首相が出席するかどうかについて、イラン外務省報道官は26日、「ハニヤ氏は招待されていない」と述べた。

ハマスは25日、ハニヤ氏がイランのアフマディネジャド大統領からの公式な招待を受け、会議に参加すると発表。一方、すでに出席を表明していたパレスチナ自治政府のアッバス議長側は、「パレスチナの代表は一つだ」と反発し、ハニヤ氏が出席する場合は参加しないと警告した。結局、ハマスは26日、ハニヤ氏の会議への不参加を発表した。

ハマスはガザを武力制圧後、独自の政府を設置。国際社会はアッバス氏をパレスチナの代表者とみなしているが、イランはイスラエルと敵対する立場から、ハマスの対イスラエル闘争を支援している。【8月27日 朝日】
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“イランはイスラエルと敵対する立場から、ハマスの対イスラエル闘争を支援している”とありますが、ハマスとイランの関係は「アラブの春」以降、変わってきているとも言われています。

“2011年に始まったアラブの春では、当初ハマースはリビアの反カダフィ蜂起を支持する一方、シリアでの反体制デモには沈黙を保っていた。しかし騒乱が長期化、拡大するにつれてハマース内部でもシーア派であるシリア、イランを忌避する傾向を強め、2012年1月にはダマスカスに滞在しバッシャール・アサド体制に近いマシャァルが退任を表明、ヨルダンに退去。
翌2月にはガザ地区行政府を握るハニヤがシリア反体制派の支持を明言しダマスカスとの決別が明らかとなった。シリアの同盟国であり、ハマースの一方の支援者であるイランはこのハマスの背信に批判的な態度を示したが、ハマースは却ってイスラエルの対イラン攻撃に反対しない旨を発表し、両者の関係もまた断絶した事を明らかにしている”【ウィキペディア】

統一政府樹立への道筋は不透明
占領地での入植活動を継続するイスラエルとパレスチナの和平交渉はこのところ進展が見られません。パレスチナ自治政府は国連への正式加盟を求めて国際社会に訴えましたが、反対するアメリカの壁は厚いのが実情です。
6月には、アッバス議長から「対話の用意がある」との意思表示がなされていますが、具体の動きはないようです。

****パレスチナ議長「対話用意ある」 イスラエルに条件示す****
パレスチナ自治政府のアッバス議長は8日、「パレスチナ囚人の釈放と自治政府警察の武器更新に応じるなら、対話する用意がある」と述べ、イスラエルのネタニヤフ首相との会談に応じるための条件を示した。訪問先のパリで記者団に語った。

議長周辺によると、ネタニヤフ氏は先月、アッバス氏に送った書簡の中で直接対話を打診。アッバス氏は「そのための意思表示がほしい」と述べ、1994年以前にイスラエルの刑務所に収監されたパレスチナ人約120人の釈放と、警察の銃の更新を認めるよう求めたという。

パレスチナは、イスラエルが占領地ヨルダン川西岸での入植活動凍結と、1967年の第3次中東戦争前の境界に基づく国境画定を受け入れなければ、交渉は再開できないとの立場。だが、交渉中断から1年半が過ぎてもイスラエルが入植活動を停止する兆しはなく、事態の打開に向けて譲歩を迫られた形だ。

アッバス氏は「対話は、交渉をするという意味ではない」と強調したが、「ボールはネタニヤフ氏にある」とも述べ、イスラエルの対応を待つ考えを示した。【6月10日 朝日】
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アッバス議長にとって足かせとなっているのが、ガザ地区を実効支配するハマスとの統一が図れておらず、パレスチナ側が分裂状態にあることです。
2011年5月に、ファタハとハマスの間で統一政府樹立の合意はなされていますが、未だ実現していません。

****ファタハとハマス、敵対関係の終了を宣言****
2011年05月05日 10:04 発信地:カイロ/エジプト
パレスチナ解放機構(PLO)の主流派でヨルダン川西岸を統治するファタハと、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは4日、暫定的な統一政府の樹立などを内容とする合意文書に調印し、交渉を仲介したエジプトの首都カイロで式典に臨んだ。

式典でファタハを支持基盤とするマフムード・アッバス議長とハマス政治部門の最高指導者ハレド・メシャール氏は、2007年から続く双方の敵対関係を終わらせると宣言。アッバス議長は「(パレスチナ)分断の暗黒時代は永遠に閉じられた」と述べた。

メシャール氏は「ハマスは和解のためのいかなる犠牲もいとわない。ハマスが戦う相手はイスラエルだけだ」と発言。1967年の境界線の内側にエルサレムを首都とするパレスチナ国家を築くことがハマスの目標であるとあらためて主張し、「1インチたりとも譲歩しない。パレスチナ難民の帰還権も諦めない」と強調した。

一方で、訪英中のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、双方の歩み寄りに警戒感をあらわにしている。デービッド・キャメロン英首相との会談を前にネタニヤフ首相は、「ファタハがハマスと和解した今日という日は、テロリズムが大きな勝利を収めた日と言えよう」と語った。ネタニヤフ首相は5日にはパリで、ニコラ・サルコジ仏大統領と会談する。

ガザ市では4日、1000人以上が道路を埋め尽くし、旗を振ったり車のクラクションを鳴らしたりして和解を祝った。ヨルダン川西岸でもこれより小規模ながら各地で和解を喜ぶデモ行進が行われた。

統一政府は無党派で構成され、樹立後1年以内に議長・評議会(議会)選挙を実施する。各勢力の治安部隊を統合するための「高等治安評議会」も設立される。【2011年5月5日  AFP】
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11年5月の合意後、暫定内閣の人事などを巡って何度も頓挫しており、統一政府づくりは難航していますが、今年5月には、評議会(国会)選に向けたガザ地区での有権者登録手続き開始が承認された・・・との報道がありました。

****ハマス、ガザで有権者登録手続き承認****
フランス通信(AFP)によると、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは28日、パレスチナ自治政府の次期議長選と評議会(国会)選に向け、選管当局によるガザ地区内での有権者登録手続き開始を承認した。

自治政府主流派のファタハとハマスが今月20日、半年以内の両選挙実施や選挙管理内閣の樹立で合意したことを受けての措置。ただ、両選挙はもともと、今月実施される予定だったもので、手続きが合意通りに進むかは不透明だ。【5月29日 産経】
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地元の報道では、ファタハとハマスが6月上旬にも選挙管理に当たる暫定内閣も発足させ、年内の選挙の実施を目指す・・・とのことでしたが、暫定内閣が出来たとの報道は目にしていません。

親米アラブ政権に拒否されていたハマスは、いまや各政権党から「盟友」として扱われる時代になった
一方、「アラブの春」を受けて、各地でムスリム同胞団などのイスラム主義政党が実権を握る動きのなかで、ムスリム同胞団を母体とする急進派ハマスの存在感が大きくなってきています。

****同胞団、中東の主役 アラブ世界でハマス支持広がる****
■米・イスラエルとの緊張も
「パレスチナとエジプトの関係は新時代に入った」
パレスチナのイスラム組織ハマスのメシャール政治局長は、7月中旬、エジプトのムルシ大統領と会談した後、そう語った。大統領はエジプト最大のイスラム組織「ムスリム同胞団」出身で、ハマスは「同胞団パレスチナ支部」を名乗る。

ハマスへのアラブ世界の対応の変化は、直前にチュニスで開かれた「ナハダ」党大会で如実に現れた。
ナハダも同胞団の流れをくみ、革命後の選挙で議会第1党になった。新体制で初の党大会の初日。会場から突然、「パレスチナの解放を」と声が上がった。前方のスクリーンにメシャール氏の姿が映し出されると、1万人を超える参加者が一斉に立ち上がった。

メシャール氏のチュニジア訪問は初めて。親米のベンアリ前政権は、米国が「テロ組織」に指定するハマスとの関係はなかった。
党大会に招かれた外国代表には、エジプト・自由公正党▽モロッコ・公正発展党▽アルジェリア・平和社会運動▽クウェート・イスラム憲法運動▽イエメン・イスラム改革党――。アラブ世界のムスリム同胞団系組織が顔をそろえた。

メシャール氏は演説で訴えた。「アラブ世界は『アラブの春』で団結を回復する好機を得た。パレスチナ解放への道につながる」
メシャール氏はチュニスの後、モロッコに向かい、昨年11月の総選挙で第1党になり、連立政権を主導する同胞団系の公正発展党の総会にも出席した。その後にエジプトに向かった。

親米アラブ政権に拒否されていたハマスは、いまや各政権党から「盟友」として扱われる時代になった。
米国が主導する中東和平の前提は、イスラエルとパレスチナの2国共存である。パレスチナ自治政府のアッバス議長も支持し、ヨルダン川西岸とガザ、東エルサレムからの撤退を求める。これに対し、ハマスの主張はイスラエルを含む全パレスチナの解放だ。

ただし、ムルシ大統領はパレスチナ問題で慎重な姿勢をとっている。大統領はメシャール氏に先だってまずアッバス議長と会談した。7月下旬にはクリントン米国務長官を迎え、中東和平での協力を約束した。

ただし、自由公正党のハッダード外交問題顧問は「イスラエルが占領地から撤退し、パレスチナが長期の停戦に入ることを支持する」と語った。
イスラエルの撤退と引き換えに「和平」ではなく「長期停戦」というのは元々はハマスの主張だ。「2国共存」の和平案について質問すると、「それはパレスチナ民衆が選択することだ」とハッダード顧問は回答を避けた。この主張はより穏健とされるのナハダのラーシド・ガンヌーシ氏も同様だった。

エジプトの同胞団もナハダもイスラエルの封鎖の下にあるガザに使節を送って支援している。中東和平では今後、アラブ世界の同胞団系の組織がハマス支持で歩調を合わせる可能性が強い。イスラエルや米国との間で緊張が生まれることは避けられない状況だ。【8月22日 朝日】
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アッバス議長主導のパレスチナ統一政府樹立は、更にハードルが高くなってきています。
ただ、パレスチナにおいてハマスの存在感が大きくなると、アメリカ・イスラエルの反発も強まり、和平交渉は更に難しくなる・・・という現実があります。


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レバノン  シリア内戦の飛び火で、宗派間対立激化

2012-08-26 21:17:46 | 中東情勢

(3月16日 レバノン・トリポリで、アサド政権を支援するイランとイスラエル国旗を燃やす反シリア住民 “flickr”より By FreedomHouse2 http://www.flickr.com/photos/syriafreedom2/6867344326/

1日の死者数としては最悪
シリアでは、これまでにも増して激しい戦闘が続いています。
日本人ジャーナリスト山本美香さんが殺害されたように、外国報道が厳しく制約されているため状況は判然としませんが、国連停戦監視団が19日に任務を終了して撤退して以降、政府軍は主戦場となっている大都市のダマスカス及びアレッポにおいて軍用ヘリ・戦闘機・戦車などを投入した攻勢を強めているようです。
“政府軍は戦闘機や戦車を投入するなど攻勢を強めており、小火器で対抗する反体制武装組織は厳しい戦いを強いられているもようだ”【8月24日 時事】
有効性が疑問視された国連停戦監視団ですが、それなりの抑止力はあったということでしょうか。

****過去最悪370人死亡=政府軍、各地で攻勢―シリア****
在英人権団体「シリア人権監視団」は26日、政府軍が反体制派弾圧を強化しているシリアでの25日の死者数が約370人に達したことを明らかにした。昨年3月に反体制派弾圧が始まって以降、1日の死者数としては最悪。このうち首都ダマスカス近郊ダラヤでは、200人以上が死亡したとの情報がある。

反体制組織「地域調整委員会」は、25日の死者が440人に上ったと主張。国連停戦監視団の任務が19日に終了し、撤退して以降、政府軍は軍事ヘリコプターや戦車を反体制派掃討作戦で多用するなど情勢が一段と悪化している。

ダマスカスの南西郊外に位置するダラヤは、反体制派の中心を構成するイスラム教スンニ派住民の町。遺体の多くは民家の中で見つかり、政府軍の掃討作戦の際、至近距離から射殺される「処刑」のような形で殺害されたもようだ。国営シリア・アラブ通信は「軍部隊はダラヤからテロリストを掃討した」と報じた。政府側は反体制派をテロリストと位置付けている。【8月26日 時事】
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北部アレッポ郊外では、24日、政権軍がイスラム教の金曜礼拝に市民が集まったモスクを空爆、数十人が死亡したと報じられています。

【“モザイク国家”レバノン
こうしたシリアの混乱は隣国レバノンに飛び火して、レバノン国内での宗派間の衝突も激しくなっています。
もともとレバノンは、キリスト教(10宗派以上)、イスラム教(5宗派)の宗派が各地に分散し、“モザイク国家”とも呼ばれる複雑な状況にあります。
しかも多くの宗派が民兵組織を持っており、75年からは、各民兵組織とパレスチナ解放機構(PLO)が入り乱れて争う内戦が17年間に及んでいます。

また、隣国シリア及びイスラエルが混乱するレバノンに侵攻、90年から約15年間はシリアの実効支配下にありました。2005年のシリア軍撤退後も、“親シリア”“反シリア”というシリアとの距離感が、各宗派入り乱れるレバノン政治情勢において最大の対立軸ともなっています。

現在のミカティ政権は、シリア・アサド政権がイランとともに長年支援してきた親シリアのシーア派組織ヒズボラが後ろ盾となっています。ミカティ首相自身は必ずしもシリアの傀儡でないような行動もこれまで示してはいますが、それでも組閣にはスンニ派などの反対で5カ月を要しています。

こうした各宗派に複雑に分断されたモザイク状態、更にはシリアの極めて強い影響・・・ということで、「シリアで起きる全てはレバノンに影響を与える」(スンニ派指導者)、「必ずレバノンでももめるはず。自衛の準備は進めている」(アラウィ派指導者)といった言葉のように、シリア情勢とは不可分・連動の関係にあります。

更に、シリアからレバノンへは多数の避難民が流入、24日の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によれば、その数は5万1000人とされています。(なお、近隣諸国へ逃れたシリア住民の総数は20万人超)

また、レバノン北部は反体制派住民が多いシリア西部ホムスに近く、「反体制派への物資供給拠点」になっていると言われていますが、一方で、アサド政権に近いシーア派ヒズボラがアサド政権擁護のためにシリア国内で活動しているとも言われています。

【各勢力は「さまざまな形でシリアと関係を持っており、同国情勢と無関係ではいられない」】
こうしたレバノンの事情から、シリア内戦が長期化すれば混乱がレバノンへ飛び火することは、以前から回避困難な事態とも見られていました。すでに今年2月時点で、アラウィ派の民兵とスンニ派民兵とが交戦も報じられています。

****シリア危機、隣国に波及 レバノン不安定化の懸念****
親・反アサドの両派、対立鮮明化
シリアで続くバッシャール・アサド政権と反体制派との戦闘をめぐり、レバノンでは各政治勢力に親アサド派と反アサド派との色分けが徐々に鮮明化し、対立が深まる恐れが強まっている。北部ではすでに散発的な衝突が発生。多様な宗教・宗派で成り立つ同国の勢力バランスが崩れ、情勢が不安定化する懸念もある。

「シリアが民主国家になることは、レバノンにとっても喜ぶべきことだ」
レバノンのハリリ前首相は14日、自身が党首を務めるイスラム教スンニ派中心の政党「未来潮流」の会合に寄せたビデオメッセージでこう述べ、シリアの在外反体制派組織「シリア国民評議会(SNC)」と連携していく考えを表明した。

一方、シリアとの関係が深いシーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は7日の声明で「アサド政権は改革を約束しているのに反体制派が拒絶している」と反体制派を強く非難した。

昨年3月にシリアで反政府デモが発生して以来、自国の不安定化を恐れるレバノンのミカティ首相は、アラブ連盟などによるアサド政権への圧力強化には慎重姿勢を示しつつも、同政権に極度には肩入れしない立場を取ってきた。同首相の後ろ盾であるヒズボラをはじめとする国内の各政治勢力も、表向きは同様だ。

だが、国連によると、シリアからレバノンにはこれまでに6千人を超す避難民が流入。また同国北部は、反体制派住民が多いシリア西部ホムスに近く、最近は「反体制派への物資供給拠点」(反体制派活動家)になっているという。
レバノンの軍事評論家エリアス・ハンナ氏は、同国北部の各勢力は「さまざまな形でシリアと関係を持っており、同国情勢と無関係ではいられない」と指摘、「親アサド」か「反アサド」かで立場を鮮明にせざるを得なくなり、さらに緊張が高まると予想する。

今月10、11日には、北部の主要都市トリポリの市街地で、アサド大統領らシリア支配層に出身者が多い、シーア派の一派とされるアラウィ派の民兵と、スンニ派民兵とが交戦、少なくとも2人が死亡した。事件を受け、レバノン政府はトリポリ周辺に国軍を展開し、治安維持に努めている。しかし、同国では多くの政治勢力が民兵組織を抱えており、専門家からは「各勢力間の均衡が崩れれば、国軍では対立を抑えきれなくなるだろう」との指摘も出ている。【2月18日 産経】
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【「レバノンをますますシリアの内戦に引きずり込もうとする動きがある」】
イスラム・キリスト教各宗派が絡み合う“モザイク国家”にあって、シリア・アサド政権と宗派を同じくするイスラム教アラウィ派は人口(約400万人)の2~3%に過ぎず、政治、経済、文化的に影響力の強いシリア・アサド政権が重要な後ろ盾となってきました。

そうした事情があって、レバノン北部トリポリでは、アサド政権を支持するアラウィ派とシリア反体制派を支持するイスラム教スンニ派とが衝突を繰り返しいます。“両者は30年以上前のレバノン内戦時から対立する因縁の関係”【7月29日 毎日】とも言われています。
その対立はエスカレートしているようです。

****シリア情勢、レバノンへ飛び火 宗派間対立で死者も****
シリアで激しい戦闘を展開しているバッシャール・アサド政権軍と反体制派との対立が、隣国レバノンに波及している。
地中海に面するレバノン第2の都市トリポリでは今週に入り、アサド政権を支持するイスラム教少数派アラウィ派と反体制側を支持するスンニ派の勢力の衝突が続き、24日には新たにスンニ派の聖職者1人を含む3人が死亡した。

治安当局関係者によると、20日からの両者の衝突ではこれまでに計14人が死亡。また100人を超える負傷者が出ており、その大半は狙撃手による襲撃されたものだという。

衝突が起きているのはトリポリ市内東部のシリア通りで、アラウィ派地区ジャバル・モフセンとスンニ派のBab al-Tebbaneh地区の境界となっている。20日の衝突以降、レバノン軍が出動して両者を隔てているが、24日早朝にスンニ派の聖職者ハリド・バラデイ師(28)が狙撃手に殺害されたことから衝突が激化。携行式ロケット弾や銃撃の応酬がみられた。

一連の衝突の前までには誘拐が増えており、ただでさえ不安定なレバノン情勢はさらに揺らいでいる。自動車修理工場を経営しているという地元男性は、「僕たちはシリアで起きていることと何も関係ない。平和に暮らしたいのに。僕たちは生きていくのにやっとなのに、民兵たちは給料をもらっている。彼らはどんな理由でも、自分たちの利益のために戦うんだ」と語った。

トリポリ出身のナジブ・ミカティ(Najib Mikati)首相は22日、「指導者たちが協力し、レバノンを危険から守らなければならない時だというのに、レバノンをますますシリアの内戦に引きずり込もうとする動きがある」と懸念を表明した。【8月25日 AFP】
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アラウィ派の民兵とスンニ派民兵の衝突の他、親アサド政権派と反体制派が互いに敵対勢力を拉致し、人質に取る事件も相次いでいます。

****シリア内戦:隣国レバノンでも「人質合戦****
・・・・レバノンでは、シリア国内で身内を拉致された親アサド政権の有力部族が15日、レバノンにいた離反兵士団体「自由シリア軍」メンバーら20人以上を拉致。反体制派を積極支援するサウジアラビアやカタールなど湾岸4カ国は15日、レバノン滞在中の自国民に即時退去を呼びかけるなど、周辺の中東諸国にも余波が広がっている。

ロイター通信などによると、15日の拉致事件を起こしたのはレバノン東部出身で、アサド政権を支持するイスラム教シーア派の有力部族。人質の大半はシリア人だが、トルコ人も1人含まれているという。
この部族に属する男性がシリアの首都ダマスカスで反体制派に捕らえられ、14日公開された映像で「(アサド政権が後ろ盾となるレバノンのシーア派民兵組織)ヒズボラの戦闘員1500人の一員として8月初めにシリア入りした」と語った。ヒズボラや部族は男性の戦闘への関与を否定している。

一方、反体制派は5月以降、シリア国内でシーア派のレバノン人11人やイラン人48人を相次いで拘束し、アサド政権崩壊まで「人質作戦」を継続する姿勢を鮮明にしている。

こうした事態を受け、サウジ、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェートはレバノンに滞在する自国民に対し、即時退去を促している。
レバノンは湾岸諸国の富裕層の避暑地として人気が高く、いずれもシリア反体制活動の主導勢力と同じイスラム教スンニ派。とりわけ反体制派支援の急先鋒(せんぽう)であるサウジやカタールは、拉致の矛先が自国民に向けられる事態を警戒している。
今後も「人質合戦」が過熱すれば、中東諸国を巻き込んだ宗派間対立がさらに拡大する可能性もある。【8月16日 毎日】
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【「指導者たちが協力し、レバノンを危険から守らなければならない時」】
親アサド政権のシーア派ヒズボラを後ろ盾とするミカティ政権ですが、レバノン国内への飛び火を抑えるため、親アサドに偏らないように慎重姿勢をとっているとも報じられています。

“昨年3月にシリアで反政府デモが発生して以来、自国の不安定化を恐れるレバノンのミカティ首相は、アラブ連盟などによるアサド政権への圧力強化には慎重姿勢を示しつつも、同政権に極度には肩入れしない立場を取ってきた。同首相の後ろ盾であるヒズボラをはじめとする国内の各政治勢力も、表向きは同様だ”【2月18日 産経】

“レバノンのミカティ政権は、アサド政権がイランとともに長年支援してきたシーア派組織ヒズボラが後ろ盾だが、アサド政権に弾圧されるスンニ派難民を受け入れ、シリア反体制派の国内での活動も事実上黙認している。反体制派は、サウジアラビアや米国にも近いハリリ前首相(暗殺された元首相の息子)が支援しており、敵対すればレバノン国内でも騒乱が燃え広がる可能性があるからだ”【3月13日 毎日】

ただ今後、シリア情勢の展開を受けて、国軍よりも高い戦闘力を有するシーア派ヒズボラが親アサドの姿勢を明確に示して活動を始めると、レバノンも内戦状態に陥ります。
ヒズボラが動けば、敵対するイスラエルにも緊張が高まります。スンニ派のサウジアラビア・カタールなど湾岸諸国も同様です。

ミカティ政権には、シリア情勢に引きずられない慎重姿勢が求められています。
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不思議なアメリカ  「オバマ大統領再選なら南北戦争再発」発言 エンパイアステートビル前の銃撃戦

2012-08-25 21:49:31 | アメリカ

(24日、容疑者と警官との銃撃戦が行われた事件現場のNYエンパイアステートビル “flickr”より By multimediaimpre http://www.flickr.com/photos/79137904@N07/7851535524/

【“legitimate rape”】
アメリカで根強いキリスト教右派の価値観を代表するエイキン下院議員の「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こす(ため妊娠しない)」という発言については、8月22日ブログ“アメリカ  大統領選挙に影響しそうな、共和党議員の「まっとうなレイプなら妊娠せず」発言”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120822)で取り上げたばかりです。

****まともなレイプ」発言にパニクる共和党*****
・・・・・問題の発言をしたのは、あらゆる中絶を「例外なく」禁じるべきだと主張している保守派のトッド・エイキン下院議員(共和党、ミズーリ州選出)。8月19日に行われたKTVIテレビのインタビューで、レイプで妊娠した場合でさえ中絶を認めない理由について質問されると、女性の生殖器系には望まぬ妊娠を防ぐ機能があり、レイプされて妊娠するケースは「非常にまれ」だとほのめかした。

「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こす(ため妊娠しない)。その仕組みがうまく機能しなかった場合には、懲罰が必要だ。だがその場合でも、罰せられるべきはレイプ犯であって胎児ではない」(後略)【8月22日 Newsweek】
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“legitimate rape”(もとまな、本当の、正真正銘の、まっとうなレイプ)という言葉には、レイプ被害者を含めた「例外のない」中絶禁止を求めるエイキン下院議員らの、“妊娠中絶を求めているレイプ被害者は、本当にレイプされたのか? 最後まで抵抗したのか? 結局受け入れたのでは?”といった、レイプ被害女性への不信感が潜んでいるようにも思われます。

【「彼は米国の主権を国連に譲り渡そうとし、最悪の場合は市民の抵抗で内戦が起きる」】
一方、恐らく共和党支持の保守派から、また奇妙と言うかユニークな発言が飛び出して話題となっています。
オバマ大統領が再選されると内戦状態になり、オバマ大統領は鎮圧のため国連部隊のアメリカ侵攻を求める・・・という奇想天外な発言です。

****オバマ大統領再選なら南北戦争再発」?米テキサス州判事が発言****
米テキサス州の判事が、11月の米大統領選でバラク・オバマ大統領が再選されれば、再び南北戦争が起こると「脅す」発言をした。

保安官増員のため増税に賛成するテキサス州ラボック郡のトム・ヘッド判事は、米フォックスニュース系列の地元番組とのインタビューで21日、再選された場合オバマ氏は「米国の主権を国連に譲り渡そうとしている」と批判。もしそうなった場合にはテキサス州民は我慢しないだろうとして、次のように述べた。

「最悪のケースを考えている。市民の抵抗や暴動、内戦までもだ。少々の暴動やデモのことを言っているのではない。レキシントンやコンコードで彼(オバマ氏)を排除するために武器を取る、ということだ」

ラボック郡の危機管理担当責任者でもあるヘッド検事は続けて、「そうしたら、国民がそのように心を決めたら、何が起こるだろう。オバマ氏は国連軍を差し向けるだろう。ラボック郡は国連軍を歓迎しない。私は彼らの戦車の前に立ち『ここからは入れさせない』と宣言するだろう」と語った。
「保安官にも聞いてみた。私を支持するかどうか、とね。もちろん支持すると答えてくれたよ。私が求めているのは新人の束ではない。研さんを積み、高い能力をもち、経験豊富なベテランの保安官だ」

ヘッド氏は地元紙に22日、自分の発言は文脈から切り離されて紹介されてしまったもので、内戦は可能性のある「最悪のシナリオ」として例に挙げただけだと弁明した。【8月25日 AFP】
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アメリカにおいて郡の判事という職がどの程度の影響力を持つものか知りませんが、殆んど病的な妄想の世界です。
まあ、奇人変人はどこの世界にもいるものですが、こうした保守派勢力を相手にしなければならないオバマ大統領も大変でしょう。

負傷者の幾人かは警官の撃った流れ弾に当たった可能性
ところで、アメリカ・ニューヨークのエンパイアステートビル前で発砲事件があったことが報じられています。
“銃社会アメリカ”ですから、多少の発砲事件は珍しくも何ともありませんが、あの(キンコングでも有名な)エンパイアステートビル前でハリウッド映画さながらに多数の市民を巻き込んでの銃撃戦・・・ということで話題になっています。

****NYエンパイアステートビル前で発砲、11人死傷****
米ニューヨーク中心部のエンパイアステートビル前で24日朝、発砲事件が発生し、容疑者の男を含む2人が死亡、9人が負傷した。容疑者は解雇された婦人アクセサリー・デザイナーで、元同僚を射殺した後、駆け付けた警察との間で短い銃撃戦になり射殺された。
米連邦捜査局(FBI)は即座に、テロの可能性を否定した。

負傷者はいずれも軽症だが、人気の観光名所でラッシュ時に起きた事件だけにもっと死者が出てもおかしくない危険な状況だったと、記者会見したニューヨーク市警のレイモンド・ケリー本部長は述べている。
ケリー本部長によると、男は婦人服ブランド「ヘイザン・インポート」の元従業員、ジェフリー・ジョンソン容疑者(58)。婦人用アクセサリーのデザイナーとして6年勤務していたが1年前に人員整理で解雇され、そのことを恨んでいたという。

ジョンソン容疑者は朝9時(日本時間同日午後10時)ごろ、ちょうどエンパイアステートビル周辺の路上が通勤客や観光客で混雑していた際、元同僚の男性に近付き口論となった。やがてジョンソン容疑者が45口径の拳銃を取り出し、至近から元同僚の頭を3発撃ったという。米メディアによると、相手はヘイザン・インポートの販売を担当副社長(41)だという。

マイケル・ブルームバーグニューヨーク市長は会見で、ジョンソン容疑者は拳銃をしまって逃走しようとしたが通報を受けた警官2人に制止され、銃を向けたため警官が応戦したと説明した。このとき容疑者が発砲したかどうかは不明で、負傷した通行人のうち幾人かは警官の撃った流れ弾に当たった可能性があるという。

エンパイアステートビルは、自由の女神像やブルックリン橋と並ぶニューヨークの主要観光スポット。米国では7月、コロラド州の映画館で男が銃を乱射。8月にはウィスコンシン州のシーク教寺院でも乱射事件があり、いずれも死傷者を出している。【8月25日 AFP】
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この事件の注目すべき点は、“このとき容疑者が発砲したかどうかは不明で、負傷した通行人のうち幾人かは警官の撃った流れ弾に当たった可能性があるという”というところです。

“当局はジョンソン容疑者が警察官に対して発砲したかどうかをまだ最終確認中だが、付近にあった防犯カメラの映像には同容疑者が銃を向けている姿が鮮明に記録されているという。また、当局によると巻き込まれて負傷した9人の通行人は警察官の発砲した銃弾に当たった可能性が高いという。”【8月25日 ウォール・ストリート・ジャーナル】

今朝のTVニュース(ABC)でも、キャスター(ダイアン・ソイヤー)は“負傷者の全員が警官の発砲によるかも”とし、記者との間で、“警官は、こうした状況でも発砲するように教育されているのですか?”“ええ”“大勢の市民がいてもですか?”“はい”といったやり取りがあったように記憶しています。

日本のTV・映画では、市民のいる街中での発砲を刑事が躊躇する・・・といったシーンがよく見られますが、“銃社会アメリカ”でそんなことをしていたら命がいくつあっても足りません。危ないと思ったら撃つまでです。

また、こうした発砲事件が起きても、銃規制強化の動きは見られない・・・というのもアメリカ社会の実情です。
むしろ、発砲事件が起きると、自分の身を守るために市民が銃を買い求める・・・ということのようです。
今後は、まっとうなアメリカ市民は、犯罪者だけでなく警官の発砲にも銃で立ち向かう必要があるようです。

そのうち、ニューヨクの街中で容疑者を追う警官が銃を構えると、周囲の大勢の市民も一斉に銃を取り出し、弾丸があたりに飛び交う大銃撃戦が展開される・・・といった、コントで観たような世界が現実のものになるのかも。
外部の人間からは、銃依存はアメリカ社会の病的な側面にも思えるのですが。
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エジプト  今後の動向が注目されるモルシ政権の独自路線

2012-08-24 23:06:28 | 北アフリカ

(1973年10月 第4次中東戦争 スエズ運河を渡河するイスラエル軍戦車 
“flickr”より By Israel Defense Forces  http://www.flickr.com/photos/idfonline/6208234518/

シナイ半島は1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領。第4次中東戦争ではゴラン高原の対シリア戦と並んで、シナイ半島での対エジプト戦が主戦場となりました。エジプト軍は周到な準備をもってイスラエル軍を奇襲し、スエズ運河を渡ってシナイ半島に侵攻、イスラエル軍に甚大な被害を与えました。しかし、態勢を立て直したイスラエル軍が反撃に出て、シナイ半島を制して逆にスエズ運河を渡河しカイロに迫りました。

この第4次中東戦争でエジプト空軍を指揮して緒戦でイスラエル軍に大打撃を与えたのがムバラク前大統領で、国民的英雄となり、後の大統領への道を歩むことになります。
戦後、キャンプ・デービッド合意及び翌年の平和条約を受けて、シナイ半島はエジプトに返還されますが、エジプト軍の兵力配備は制約されています。

イスラエルを国家承認する平和条約はアラブ世界の猛反対を受けましたが、当時のサダト大統領が断行。しかし、これを批判する者に暗殺されます。国内的にも“反米・反イスラエル”の強い世論がありますが、エジプトは平和条約締結でシナイ半島を手にするほか、アメリカからの巨額の支援を受けることになります。
なお、シナイ半島はイスラエルだけでなく、ハマスが実効支配するパレスチナ・ガザ地区とも接しています。

【「アラブの盟主」】
軍部との対立が注目されていたエジプトのモルシ大統領が今月12日、軍トップであるタンタウィ軍最高評議会議長・国防相を更迭し、軍最高評議会が大統領権限の一部や立法権を掌握するとした暫定憲法修正を無効とする一連の決定を行い、権力掌握に動きだしたことは、8月15日ブログ「エジプト モルシ大統領、タンタウィ軍最高評議会議長を更迭 軍とも合意のうえ、権限掌握へ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120815)でも取り上げたところです。

その後もモルシ大統領は、外交・軍事で独自の動きを見せています。
外交面では、非同盟諸国首脳会議への出席のため、アメリカ・イスラエルの宿敵とも言えるイランを訪問することが発表され、対米追随を脱し“「アラブの盟主」の復権を狙う”とも評されています。

****エジプト:イランに接近…大統領、断交後初訪問へ****
エジプトのモルシ大統領が、30日にイランで始まる非同盟諸国首脳会議に出席することが固まった。79年のイラン・イスラム革命直後に両国が断交して以来、初の首脳訪問。
米国偏重だったムバラク前政権の外交を修正し、「アラブの盟主」の復権を狙う。核開発問題やシリア情勢で孤立するイランもエジプトとの関係修復で米欧に対抗したい思惑もあり、両国の「正常化」に向けた利害は合致している。

 ◇「アラブの盟主」復権狙う
中国外務省の発表によると、モルシ大統領は28〜30日に中国を公式訪問。そのままイランに向かう日程。同首脳会議を主催するイランが招待していた。イランのアフマディネジャド大統領との会談も予想される。
モルシ氏は22日にはカイロで国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事と初会談し、経済再建への支援を要請。今後は訪中を経て9月23日には訪米し、オバマ大統領と会談する方向で、外交活動を活発化させる。
イラン訪問はこうした積極外交の一環。

エジプトとイランの外交関係は、エジプトがイスラム革命で追放されたパーレビ国王を受け入れ、79年、イスラエルと平和条約を締結したことで険悪化し、断交した。
ムバラク前政権下のエジプトは親米・親イスラエル路線を推進し、イランとの関係は一向に改善しなかった。また、過度の「米国追従」はアラブ社会の反発も招き、エジプトの中東での地位は低下。昨年2月の前政権崩壊を受け「バランスの取れた外交関係」(エジプト外務省)を構築する路線に軌道修正している。

しかし、イランとの急接近は、核開発問題でイランの封じ込めを図る米国やサウジアラビアが反発するとみられる。政権基盤が依然、不安定なモルシ大統領がイランとの関係改善でどこまで踏み込めるのか微妙な情勢だ。
イランは前政権崩壊直後から関係改善を模索。外務省幹部を繰り返し派遣し、6月にはアフマディネジャド大統領がイスラム系のモルシ大統領誕生を「友人かつ兄弟である国の大統領就任を祝福する」と歓迎した。

イランは、最大の同盟国シリアが内戦で不安定化し、友好国だったトルコともシリア情勢を巡る確執が先鋭化して地域での孤立を深めている。エジプトは対イスラエル戦略上も重要で、国交回復を実現してエジプトを自国側に引き寄せたい狙いもあるとみられる。「モルシ氏来訪」で地域での求心力回復をアピールしたい考えだ。【8月23日 毎日】
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なお、30日にイランで始まる非同盟諸国首脳会議については、国連の潘基文事務総長も、イランによる政治利用を懸念するアメリカなどの反対論を押し切る形で参加を表明しています。

シナイ半島に戦車部隊
中東地域において「アラブの盟主」と認められるためには、軍事的にイスラエルと対抗しうると目されることが必要条件ともなります。
エジプトがイスラエルとの平和条約(79年締結)を今後どのようにするのか・・・・継続するのか、破棄するのかは、ムバラク政権崩壊以来、世界が大きな関心を寄せている問題でもあります。

平和条約でエジプト軍の軍事展開が制約されていたシナイ半島では、イスラム過激派が活動を強め、8月の政変のきっかけともなったエジプト軍の国境警備兵ら16名が殺害されるという事件が起きています。
政変でトップが交代したエジプト軍は、イスラム過激派掃討のためとして、イスラエルの了解なしにシナイ半島に戦車部隊を投入するなどの兵力増強を図っています。

イスラム過激派掃討自体はイスラエルも望むところですが、戦車部隊投入となると別問題になります。
イスラエルのネタニヤフ首相はエジプトに対し撤退を求めていますが、エジプト側は“自国の治安維持上の必要によるもので、イスラエル等の許可を得る筋合いではない”と突っぱねたそうです。

****シナイ半島情勢*****
シナイ半島については、イスラエルがエジプトが一方的に(1979年平和条約に従いイスラエルの同意を得ずに)戦車等を送り込んだことに対して、ネタニアフ首相がその撤去を求めていましたが、22日付のal arabiya net はエジプトがこの要求を拒否したとして、エジプト治安筋がシナイ半島のエジプト軍は、過激派の掃討作戦に従事しており、エジプトとしては自国の治安維持上の必要により、シナイ半島に部隊を展開しており、イスラエル等の許可を得る筋合いではないと語ったと報じています。

他方、23日付のy net news は、エジプト中東通信(政府系)の報じるところとして、シナイ半島には1600名に近い過激派が隠れており、エジプト軍はそのうち120名のテロリストを追い求めて、作戦を展開していると伝えています。

記事の要点は以上の通りですが、要するにシナイ半島からのイスラム過激派の掃討はイスラエル、エジプト双方の共通の利益になるが、他方シナイ半島へのエジプト軍および重火器の配備に関して、イスラエルの同意を得るか否かという問題はムルシー政権にとって機微な問題で、今後ともシナイ半島情勢は両国関係にとって難しい問題を提起するものと思われます。【野口雅昭氏 8月23日 中東の窓】http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/********************

この事態にアメリカも懸念を表明しており、エジプト側に“配慮”を要請しています。

****米国:エジプトに配慮要請…イスラエル国境の兵力増強****
クリントン米国務長官は22日、エジプトのアムル外相との電話協議で、同国東部シナイ半島でのエジプト軍の兵力増強に対するイスラエルの懸念に配慮するよう要請した。米国務省のヌーランド報道官が23日の記者会見で明らかにした。イスラエル国内では、イスラム過激派掃討を理由にシナイ半島での兵力を増強するエジプトへの警戒心が高まっており、オバマ政権はエジプト軍の動向に強い関心を寄せている。

昨年の民主化要求運動「アラブの春」でエジプトのムバラク政権が崩壊した後、シナイ半島には「権力の空白」に乗じて過激派が集結。パレスチナ自治区ガザ地区との境界付近では5日、武装集団がエジプト軍兵士16人を殺害後にイスラエル領内への侵入を試み、イスラエル軍に阻止された。

事件を受け、エジプト軍はシナイ半島での兵力増強に着手し、イスラエルとの国境付近に戦車部隊の投入を開始した。だが、エジプト・イスラエル平和条約(79年締結)は、シナイ半島でのエジプトの兵力展開に制限を設けており、イスラエル国境付近での兵力展開は軽武装の警察部隊に限定されている。
このためイスラエル側は、過激派掃討を歓迎する一方、戦車部隊の投入は条約違反に当たると指摘し、エジプト軍の動向に警戒心を強めている。

ヌーランド報道官は会見で「我々は安全保障のための強固な作戦に関心を抱いている」と、エジプト軍による掃討作戦の行方を注視する考えを強調した。その上で「同時に我々は、近隣国との良好な意思疎通にも関心を抱いている」と述べ、イスラエルとの意思疎通を十分に図るようエジプトのモルシ政権をけん制した。

エジプト軍の動向に対する米国とイスラエルの警戒心の背景には、エジプトのモルシ大統領の支持基盤である穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団が、これまでに何度もイスラエルとの平和条約の見直しに言及してきた経緯もある。【8月24日 毎日】
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モルシ大統領の支持基盤である“穏健派イスラム原理主義組織”と評されるムスリム同胞団がパレスチナの過激派ハマスを生んだ母体組織であることは周知のところで、ハマスは「同胞団パレスチナ支部」を名乗っています。
モルシ大統領は当選後の演説で「あらゆる国際条約を守る」と述べ、イスラエルとの平和条約を維持する考えを示していますが、今後の成り行き次第では・・・とも思えます。

現実志向
もっとも、ムスリム同胞団が急速な“反米・反イスラエル”の方向を見せているという訳ではなく、かなり抑制的に現実志向で動いているとも報じられています。

“現実志向は外交にも表れる。米国の懸念は、親米政権が倒れた後に、アラブ民衆の間で「反米・反イスラエル」感情が噴き出すことだろう。意外かもしれないが、同胞団は、民意の暴走を抑える立場である。
昨夏に若者たちがカイロのイスラエル大使館を包囲した時、同胞団はメンバーのデモ参加を禁じた。米国が今夏、ムルシ大統領の誕生で、素早く外交的に対応した理由が、そこにある。”【8月23日 朝日】

また、タンタウィ軍最高評議会議長に代わって国防相に就いたシシ氏は米陸軍大学校の修士課程で学んだ親米派だそうです。

****エジプトを変える静かな革命****
軍の腐敗を突破口に親米派のシシを新国防相に据えたモルシの狙い

エジプトで静かな「革命」が起きた。モルシ大統領がタンタウィ国防相を解任し、元軍情報部トップのシシ(57)を後継に据えたのだ。
20年以上も国防相を務めた76歳のタンタウィは、昨年2月のムバラク政権崩壊以来、軍最高評議会議長に就任し、エジプト政界で大きな影響力を持つ人物とみられてきた。

そのタンタウィから国防相をシシに交代させた今回の出来事は、モルシにとって1つの勝利と言えそうだ。モルシの出身母体はイスラム組織のムスリム同胞団。一部の評論家によると、シシは軍に送り込まれたイスラム教徒のスパイだという。

この説の真偽はともかく、より明らかなのはシシとアメリカのつながりだ。
シシは軍情報部のトップを務めていた際、軍司令部にとって「軍人の忠誠心を維持する上で重要な人物」だったと、米海軍大学院のロバート・スプリングボーグは言う。シシは、不満を抱える軍人の多くから支持を得られることを確信していた。

タンタウィはエジプトがソ連と緊密な関係を結んでいた60年代にソ連軍の下で訓練を受けた。その後、アメリカがエジプト軍に資金を提供するようになったが、タンタウィとその部下たちはアメリカに親近感を持つ軍人
に疑いのまなざしを向けた。

若い将校の多くはアメリカ軍のプロ意識に「感化されていた」とスプリングボーグは言う。「だがまじめなエジプト人将校、とりわけアメリカで高い評価を得た者は冷遇された」
シシは05~06年、米陸軍大学校の修士課程で学んだ。エジプト軍歩兵部隊の指揮経験もある。何より披は、軍の資金で幹部が私腹を肥やし、軍の活動が非効率化している、との軍人たちの怒りを熟知している。

今月初め、エジプトとパレスチナ自治区ガザの境界付近にある検問所を武装集団が襲撃し、国境警傷兵ら16人を殺害。エジプト軍に屈辱を与えた。
モルシとシシはこの機会を見逃さなかった。直後にモルシは情報機関の幹部らを更迭。1週間後には、タンタウィの解任とシシの任命を発表した。

米政府は安堵した。パネッタ国防長官は、シシは「米軍とエジプト軍の関係の重要性を理解している」と語った。
注目すべきなのは「(前任者との)年齢の差ではなく、考え方の違いだ」というのがスプリングボーグの見方だ。【8月29日号 Newsweek日本版】
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エジプト軍が財政的にアメリカからの支援に依存していることは周知のところですが、そうした財政的現実、あるいはアメリカで学んだ経験より、“アラブの大義”“アラブの盟主”が優先することもあり得ることです。
特に“シシは軍に送り込まれたイスラム教徒のスパイ”ということであれば・・・

恐らく、同じイスラム主義を基盤として政権を掌握し、現実路線をとりながらも独自色発揮で国際的存在感を強めているトルコ・エルドアン政権あたりがひとつのモデルとなるのではないでしょうか。
いずれにしても、独自路線を模索するエジプトの今後が注目されます。

モルシ政権の今後については、ムスリム同胞団への権力集中を警戒する世俗主義勢力との力関係も影響します。
今日24日(金曜日)にカイロで、世俗主義者、左派、リベラルなどの反ムスリム同胞団勢力と同胞団やイスラム主義勢力の双方が“百万人集会”を計画しているそうです。
双方の動員力(ムスリム同胞団側に相当の分がありそうですが)が、ひとつの目安にもなると思われます。
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インド  アッサム州の地元少数民族とイスラム教徒の衝突で高まる緊張

2012-08-23 22:53:18 | 南アジア(インド)

(アッサム州コクラジハル 学校を使った避難民キャンプに避難したボド族の人々 イスラム教徒住民の避難民キャンプもあるようです。 “flickr”より By TwoCircles.net http://www.flickr.com/photos/94592664@N00/7763953450/in/photostream/

【「こんなことが起きるなんて思ってもみなかった」】
世界中に民族対立・宗教対立が溢れていますが、インドでもそうした衝突が起き、政府は対応に苦慮しています。
インドと言えば、インド洋に着き出たひし形の国土が思い浮かびますが、北東部にバングラデシュ・ブータン、ミャンマー・中国に囲まれた地域が突出しています。
この北東部地域のアッサム州で、少数民族ボド族とイスラム教徒住民の衝突が7月から起きています。

〈ボド族〉
“インド北東部のモンゴロイド系先住民族の一つでヒンドゥー教徒が多数を占める。アッサム州を中心に居住し、人口は2001年の調査で州全体の5%の135万人。州西部のボドランド自治地域では多数派で全体の人口の3~4割とされる。アーリア系のアッサム人や同州で人口の約3割を占めるイスラム教徒住民と土地などをめぐり対立してきた”【8月22日 朝日】

****インドで民族・宗教対立緊迫 84人死亡 避難民も****
■殺害事件が発端、焼き打ちや銃乱射も
インドでイスラム教徒と北東部の少数民族との緊張が高まっている。発端は北東部アッサム州で7月に始まった少数民族ボド族とイスラム教徒住民の衝突。21日までに84人が死亡し、68人が負傷。一時は約48万人が避難民となった。暴力行為は国内各地に飛び火し、政府は対応に追われている。

緑豊かな水田や森林が広がる同州西部コクラジハル近郊。のんびり歩く牛やヤギをよけながら車で走ると突然、黒こげになった民家が出現した。村の中に入ると焼かれた家々が無残な姿をさらす。女性や子どもは避難民キャンプに逃れたため閑散とし、数人の男たちが難を逃れた家で寝泊まりをしていた。

ボド族が住むバムンガオン村。村人によると、7月24日、隣村のイスラム教徒の男らがやってきて、竹やりで家々を破壊、灯油をかけて火を付けて回った。
隣村とは互いの祭りの際に行き来するなど交流があった。ラハラム・ワリさん(32)は4年前に貯金をはたいて建てた家の焼け跡を前に、「こんなことが起きるなんて思ってもみなかった」と肩を落とした。

一方、イスラム教徒の村々もボド族の襲撃を受けた。家族5人で避難民キャンプに逃れたディル・ムハマド・マンドルさん(40)の村では7月22日、ボド族の男らがやってきて銃を乱射、4人がけがを負ったという。「私たちは共存を願っているのに」と憤った。

州政府によると、衝突の発端は7月6日にコクラジハル近郊の村でイスラム教徒の男性2人が殺害された事件。ボド族とは無関係な過激派の犯行だったがイスラム教徒の間ではボド族の仕業と思われた。さらに7月19日にイスラム教徒2人が撃たれ負傷、翌日にボド族の4人が殺され、一気に火が付いた。

この地域にはボド族やイスラム教徒、アッサム人などが混在。多数派はボド族だが、全体の3、4割とされ、これまでも土地などをめぐり民族同士が対立、衝突を繰り返してきた。
ボド族側は衝突の背景に国境を接するバングラデシュからのイスラム教徒不法移民の大量流入があると主張する。女性組織のリーダー、アンジャリ・デイマリさん(48)は「不法移民は北のブータン国境近くまで入り込んでいる。対策を強化すべきだ」と訴える。

だが、イスラム教徒側はこれを否定。イスラム教徒学生組織のアブドゥル・ラヒム・アフマドさん(29)は「避難民は皆インド人。ボド族は地域での人口割合を上げようと他民族を迫害している」と非難する。

バングラデシュ周辺ではミャンマー西部でもイスラム教徒のロヒンギャ族と彼らをバングラデシュ人移民と見なす他の民族の間で衝突が起きている。

■政府は全国への広がり懸念
インド政府は地域に軍隊を展開するが、殺人などの暴力行為は続いている。7月下旬にボド族とイスラム教徒双方の計約48万人が都市部の公共施設などに逃れ、いまだに約26万人が避難生活を続ける。

政府がこの問題に神経をとがらせるのは、多民族・多宗教国家のインドで対応を誤れば暴力が全国に拡大するおそれがあるからだ。実際、衝突の長期化で対立拡大の兆しが出ている。
西部ムンバイでは今月11日、抗議デモのイスラム教徒が暴徒化し、2人が死亡。近郊のプネではボド族に顔が似た北東部出身の学生らが相次いで襲われる事件が起きた。15日以降、北東部出身者が襲撃されるとのうわさが広まり、南部バンガロールなど各地から約5万人が列車などで北東部に逃げ帰るなど、一地域の抗争が国内全体に拡大しつつある。【8月22日 朝日】
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【「国内全土で安全に暮らせるよう全力を尽くす」】
記事最後にある衝突の全国への拡大の兆しについては、下記のようにも報じられています。

****インド:北東部出身の3万人が大都市脱出 襲撃のデマで*****
インド北東部アッサム州出身の学生や出稼ぎ労働者が先週以降、滞在先の西部ムンバイや南部バンガロールなどの大都市から集団で脱出する騒ぎが起こっている。

アッサム州では、隣国のバングラデシュから移住したイスラム教徒と、元から住んでいた非イスラム住民との間の民族対立が起こっており、「都市部のイスラム教徒が北東部出身者に報復を仕掛ける」とのデマが広がったためだ。

これに対し、インド内務省は18日、「デマは、パキスタンから発せられた携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)が原因」と指摘した。パキスタン側は疑惑を否定しており、両国間の新たな問題となりかねない情勢だ。

インド北東部出身の住民は、日本人に似た東洋系の顔をしているのが特徴。ほかのインド人と容易に見分けがつき、大都市でしばしば差別の対象となってきた。
インドのシン首相は17日の議会で、北東部出身者を「私たちの友、子供たち、国民」と呼び、「国内全土で安全に暮らせるよう全力を尽くす」と約束した。当局は同日、デマの広がりを防ぐため、大量の宛先のSMSの使用を禁ずる措置を講じた。【8月20日 毎日】
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バングラデシュから流入したと地元で言われるイスラム教徒と地元住民の衝突といえば、お隣ミャンマーでのロヒンギャ族の問題もあります。

ただ、“バングラデシュから流入した”とは言っても昨日今日の話ではなく、すでに数十年この地で生活しているようです。
また、ボド族は州全体では少数民族であり、“アッサム州からの分離や主権獲得”といった高度の自治権をかねてより要求しているようです。

****インド:アッサム州で民族間衝突――その背景にあるもの ****
インドのアッサム州で、地元部族であるボド族とイスラム系住民による衝突が発生。少なくとも32人が死亡し、さらに多くのけが人が出ているという。きっかけは2012年7月20日金曜日の夜、ボド族が大半を占めるコクラジャール地区で若者4人が何者かに殺害されたことだった。

その報復として、武装したボド族がイラスラム系住民の村を襲撃し火を放った。ボド族は、先の殺害がイスラム教住民によるものだとしている。報道によると、国内の治安部隊が暴徒に向けて銃器を使用し、そのため多くの死者が出たという。

衝突が発生して以来、チランを始め、ドゥブリー、ボンガイガオン、ウダルグリ、ショーニトプルといった地区から逃れてきた村民が避難キャンプに押し寄せ、その数は約7万人に昇っている。コクラジャール地区とチラン地区では、ボド族の村もイスラム系住民の村も襲撃や焼き討ちにあっており、そうした村の数は少なくとも60に達している。

アッサム州では、抗議者らが線路を占拠し列車に投石したため、列車21本が運行を中止。乗客約2万人が列車内に足止めされる事態となった。

ボド族はアッサム州の人口の5%を占めており、対するイスラム系住民は33%を占めている。ボド族は政治的独立を求めており、その範囲は自治権にとどまらず、アッサム州からの分離や主権獲得とった内容にまで及んでいる。

アッサム州の人口は2033万人で、ボド族やミシン族、ラブハ族、ソノワル族、ラルン族(ティワ族)、デオリ族、テンガル族(メチ族)といった部族がその15.64%を占めている。同州には憲法第6附則のもと自治評議会が3つ設置されているが、さらに複数の部族が同じ憲法第6附則(訳注:少数民族の地域的な自治規定について定めたもの)のもと自らの自治評議会の設立を求めている。

野党であるインド人民党は、今回の衝突の原因は「不法移民」の存在であるとし、これを地域間の衝突(訳注:ボド族地区と不法移民居住地区の間の衝突)と位置付けた。
しかしアッサム州警察トップは、こうした衝突は地域間というよりはむしろ民族的な衝突であると述べている。同トップによると、今回の衝突はボド族と非少数民族との間で発生したもので、こうした非少数民族は主にイスラム系で40~60年前から代々この地域に居住しているという。【Global Vices 原文 Rezwan • 翻訳 Kazuko Ohchi 翻訳掲載 2012/08/10 http://jp.globalvoicesonline.org/2012/08/10/15510/
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こうした民族対立・宗教対立が痛ましいのは、決して両者が共存できない訳ではなく、確かにこれまでも事件は起きているようですが、多くの住民が衝突が起きるまでは普通に隣接して暮らしていることです。
それが何かのきっかけで互いに殺し合う関係に堕ちてしまう・・・というのは、やりきれないものを感じます。
ひとの心に奥に潜む、差別・攻撃の相手を求める部分が、生活の苦しみを背景に“あいつらのせいで・・・”と噴き出すのでしょうか。ことさらに対立を扇動する者たちの所業でしょうか。

“政府がこの問題に神経をとがらせるのは、多民族・多宗教国家のインドで対応を誤れば暴力が全国に拡大するおそれがあるからだ。”というのは、非常に懸念されるところです。
もとよりインドにはヒンズー教徒とイスラム教徒の建国以来の対立・不信があります。
民族・宗教間の対立が社会全体に拡散してインド社会の根底にあるヒンズー教徒とイスラム教徒の対立に火がつくと、想像することすら恐ろしい建国時の混乱のような悲惨な状況が生まれます。
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アメリカ  大統領選挙に影響しそうな、共和党議員の「まっとうなレイプなら妊娠せず」発言

2012-08-22 23:13:25 | アメリカ

(昨年、強姦などによる妊娠中絶費用の政府補助金削減法案を提出したエイキン下院議員(左)とライアン共和党副大統領候補(中央) “flickr”より By FiredUpMissouri http://www.flickr.com/photos/firedupmissouri/5598026852/

【“legitimate rape”】
アメリカでは11月の大統領選挙及び上下両院選挙に向けた民主・共和党の取組が本格化していますが、下院から上院への鞍替え出馬している共和党のエイキン下院議員(65)の「女性はレイプされた場合なら妊娠することはない」などとの発言が波紋を広げています。

****レイプなら妊娠せず」=共和党議員の暴言に集中砲火―米****
「女性はレイプされた場合なら妊娠することはない」などと語り、人工中絶の全面禁止を主張した米共和党の男性議員が、11月に大統領選などを控えた米国内で集中砲火を浴びている。
オバマ大統領は「不愉快な発言だ」と非難。女性有権者の反発を恐れるロムニー前マサチューセッツ州知事ら共和党側は、火の粉を払うのに懸命だ。

発言の主はミネソタ州(ミズーリ州の誤り:筆者注)選出のトッド・エイキン下院議員(65)。現在6期目で、大統領選と同時に行われる上院選にくら替え出馬する予定。
エイキン氏は19日放映の地元テレビのインタビューに「医者から聞いた話では、『本物のレイプ』だった場合、女性の身体は妊娠を防ぐようにできている」と発言。暴行された結果、女性が望まない妊娠をすることはないので、中絶を全面的に禁じても問題はないとの認識を示した。【8月21日 時事】 
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非科学的なのは言うまでもないですが、“legitimate rape”・・・・“本物のレイプ”“正真正銘のレイプ”“まっとうなレイプ”・・・メディアによって日本語訳は異なりますが、一体何を意味しているのでしょうか?
オバマ氏は20日、「強姦は強姦だ。分類するなど理解できない」と記者会見で断じていますが、当然でしょう。

ロムニー陣営「強姦の場合の中絶には反対しない」】
この発言に慌てているのは共和党のロムニー候補(前マサチューセッツ州知事)です。
ただでさえ女性票でオバマ大統領に水をあけられているのに、今回発言は更に女性の支持を失いかねません。

“キリスト教右派の価値観に基づき、保守派の一部はいかなる中絶も認めないと主張、米ギャラップ社の今年の全米調査でその割合は20%に上る。共和党の副大統領候補に内定のライアン氏もその一人で、強姦などによる妊娠中絶費用の政府補助金削減法案をエイキン氏らと昨年提出した。
それだけに、エイキン氏の発言がライアン氏らと結びつくと大統領選に影響しかねない。共和党大統領候補に内定のロムニー氏は女性支持率がかねて低く、ABCとワシントン・ポスト紙の5月の世論調査では41%と、オバマ氏の52%より低い。ロムニー氏はライアン氏と「強姦の場合の中絶には反対しない」と声明を出すに至り、共和党議員らはエイキン氏の立候補辞退を求めた。”【8月22日 朝日】

エイキン氏、ロムニー候補・共和党内部からの出馬辞退要請を拒否
ロムニー候補・共和党内部からは出馬辞退を求める強い要請がなされましたが、エイキン氏本人はこれを拒否して出馬することになっています。

****レイプは妊娠しない」発言の議員、上院選出馬辞退せず ロムニー氏は撤退を要求****
「まっとうなレイプ」の場合には女性が妊娠することはほとんどないと発言し、猛烈な批判を浴びている米共和党のトッド・エイキン下院議員(ミズーリ州)が21日、上院議員選挙出馬を断念しないと表明したことを受け、共和党大統領候補のミット・ロムニー氏がエイキン氏に出馬辞退を要求した。

エイキン氏は19日、「まっとうなレイプ」に対しては女性の体が生物学的な反応を示すために妊娠することがほとんどないと発言し、米政界に激震を起こした。
大統領選でバラク・オバマ大統領と戦うロムニー氏は、同じ共和党員のこの失言で、これまでの選挙戦でつかんだ女性票を失う危険性があり、そのことを危ぐした共和党の指導者らは即座に結束を固め、エイキン氏に上院選の出馬辞退を事実上命じた。

ロムニー氏は、「トッド・エイキン氏の発言は攻撃的であり正しくもない。エイキン氏は、国益にとって何が最善であるかを真剣に検討するべきだ」と簡潔な声明を発表した。
「本日、エイキン氏のミズーリ州の同僚(元上院議員4人)が、エイキン氏に出馬辞退を要請した。私は、エイキン氏がこの助言に従い、上院選から撤退するべきだと思う」(ミット・ロムニー氏)

だが、断固とした中絶反対派であるエイキン氏は謝罪こそしたものの出馬辞退は拒否。21日夜、エイキン氏が上院選から撤退することが可能な期限は過ぎ、エイキン氏は上院選に残った。

■「ここに大義がある」
共和党のマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事が番組ホストを務めるラジオに出演したエイキン氏は、「ここには大義があると私は信じている」と述べ、「市民から多くの支持の声」を受けていると付け加えた。
「まだ生まれていない子どもを守り、いのちに対する深い敬意を払うことは、われわれ人間にとって重要なことであり、逃げ出して良いようなものではない」(トッド・エイキン氏)

フロリダ州タンパで来週開かれる共和党大会は、ゴールデンタイムに放送される。米国のお茶の間に自己紹介をする機会となるため、ロムニー氏と副大統領候補のポール・ライアン氏は党大会へと向けて勢いをつけようと論戦に繰り出していたが、エイキン氏の失言で政策議論は姿を消した。【8月22日 AFP】
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キリスト教右派の価値観を信奉するエイキン氏の信念は固く、「失言だった」と謝罪する一方で、共和党内部からの批判は「過剰反応だ」として、レイプ被害者の中絶反対の姿勢も変えていません。
ロムニー・共和党側にとっては痛手です。州の規定で、今後は本人の意思だけでは出馬辞退はできない仕組みのようです。

****米共和党:失言の下院議員、上院選くら替え出馬断念せず****
・・・・共和党の大統領候補に内定しているミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は同日、「ミズーリの人たちが退くよう求めており、エイキン氏はそれを受け入れ選挙戦から撤退すべきだ」と出馬を断念するよう初めて求めたが、エイキン氏はこの要求を公然と無視した。

同州の規定によると、党予備選を勝ち抜いたエイキン氏が自主的に出馬を辞退できるのは同日夕まで。これ以降に候補者を差し替えるためには、裁判所の判断が必要とされ、簡単にはできない仕組みとなっている。

エイキン氏の発言に対する反発の声は広がっており、女性票獲得への影響はミズーリ上院選にとどまらず、大統領選やほかの連邦議会選挙に出かねない情勢だ。米メディアもこの問題発言を大きく取り上げており、大統領選の報道がかすんでいるほどだ。

大統領選とともに11月に実施される上院選も民主、共和両党の接戦となる見通し。なかでもミズーリは共和党が民主党の議席を奪う可能性が高いとみられてきたが、エイキン氏が続投した場合、民主党現職で女性のマカスキル上院議員が優勢に転じる可能性が高い。【8月22日 毎日】
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大統領選挙のカギを握るのは、若い女性の浮動票
8月4日ブログ「アメリカ 大統領選挙を決める“有権者の4%、91万人”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120804)でも取り上げたように、アメリカの大統領選挙は原則として州ごとに勝った方が選挙人を総取りする方式であること、コアな民主・共和党支持層は今後その態度を変える可能性が殆んどないことから、実質的には、接戦となっている東海岸のバージニア州とフロリダ州、中西部のオハイオ州とアイオワ州、南西部のニューメキシコ州とコロラド州の6州の勝敗が大統領選挙の行方を決めると言われています。
しかも、これらの州の勝敗を決めるのは、未だ支持を明らかにしていない全部で91万人程度の有権者であるとも言われています。

この大統領選挙を決める残り僅かな“浮動票”のプロフィールは“世論調査の専門家によれば彼らの大半が女性で、しかも比較的若い。年長の有権者ほど自分のやり方や考えにこだわるが、若者は何事についても説得を受け入れやすい。浮動票層の多くは高卒で、かなりの数のヒスパニック(中南米系)が含まれる。”【7月25日号 Newsweek日本版】とのことです。
“大半が女性で、しかも比較的若い”ということになると、今回のエイキン氏の発言は影響しそうです。

【「ティーパーティー」の要求を丸のみする共和党
個人的には、キリスト教右派の保守的価値観には違和感を感じる部分が多々あります。
“オバマ・ケア”批判で大きな影響力を発揮した保守系草の根運動「ティーパーティー」の勢力とも大きく重なる層です。
ティーパーティーの動員力に依存する共和党は、今月下旬の党全国大会で採択する政策綱領に、「小さな政府」を求める「ティーパーティー」の要求を大幅に取りいれました。

****米大統領選:共和政策綱領「茶会」要求盛る 増税策を回避****
11月の米大統領選に向け、共和党が今月下旬の党全国大会で採択する政策綱領に、「小さな政府」を求める保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会運動)」の要求が大幅に反映されることが分かった。
増税策をとらず、温室効果ガスの排出量取引を拒否するなどの茶会側の要求のほとんどを党側が受け入れたためだ。共和党は「茶会色」を前面に打ち出すことで保守派の支持固めを優先する方針だ。

党綱領委員会と全米の茶会運動指導者12人が協議し、20日に合意した。政策綱領は大統領選で共和党が勝利した場合の「政権公約」となる。
協議関係者によると、茶会側は、連邦準備制度理事会(FRB)の監査制度導入や環境保護局(EPA)の規制抑制など12項目を提示。党側は、教育省の廃止、税率を一律にする「フラット税制」導入は「早期の実現は困難」などとして見送ったが、残る10項目を綱領原案に盛り込むことに同意した。

党側が茶会側の要求をほぼ受け入れた背景には、党の副大統領候補に財政保守派の論客で茶会が支持するポール・ライアン下院議員が内定したことがある。協議に参加した茶会運動指導者には、激戦州の中西部オハイオ州、南部フロリダ州からの代表も含まれている。党大統領内定候補のロムニー前マサチューセッツ州知事陣営は激戦州を制するため、動員力がある茶会の地方組織をフル稼働させたい狙いがあるとみられる。

ロムニー氏は20日、北東部ニューハンプシャー州マンチェスターの集会で、「FRBの監査をすべき時期にきているのではないか」と問われ、「答えはイエスだ」と即答、FRBに批判的な茶会に同調する姿勢を示した。茶会側やライアン下院議員は、FRBが行っている金融緩和政策を「効果が明確でない上、ドルの価値を損なう」として強く批判してきた。【8月22日 毎日】
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こうした共和党の姿勢は、民主党サイドから見れば“滑稽”なものにも見えます。

****おバカで結構」米共和党綱領の呆れた中身****
・・・・まずは愛すべきテキサス州から見てみよう。ここはアメリカで最も共和党が勢力を誇る州だ。
選挙で選ばれる州当局のポストに就いている人は、1人残らず共和党員。州下院の定員150人中、101人が共和党議員だ。
テキサス州の共和党勢は「大きな政府」による締め付けを毛嫌いしている。就学前教育の義務化にも、予防接種の義務化にも反対。「義務化」と言えば反対──いわば反「政府」勢力だ。

経済政策のお手本は1932年の綱領
別の言い方をすれば、彼らの主張は「おバカで結構」。
実際、彼らは考えること自体に反対しているのだ。「私たちは高次の思考力、批判的思考、それに類似したプログラムを教えることに反対する」──彼らは綱領でこううたっている。無知が至福なら、テキサス州の共和党の政治家は世界で最も幸せな人たちだ。

テキサス州の共和党勢力は社会保障制度も要らないし、国連も要らないと考えている。もちろん、彼らに言わせればオバマ大統領だって要らない。
しかし、耳を傾けるべき項目もないわけではない。彼らは、人体に個人認証用のICチップを埋め込むことは許されるべきではないと主張する。

テキサス州政界の共和党員たちは経済問題に関して、連邦レベルの共和党綱領を長々と引用している。それも1932年の綱領だ。彼らはフーバー大統領の政策を懐かしがっているのだ。
彼らは最低賃金制の撤廃やFRB(米連邦準備理事会)の廃止、金本位制の復活を目標に掲げている。来年には、ドルを廃止して物々交換に戻るべきだと言いだしてもおかしくない。

「天地創造は事実」と学校で教えるべき
テキサス州だけが例外でないことを示すために、「進歩的」なミネソタ州の人々にも目を向けてみよう。
ミネソタ州の共和党綱領もFRBの廃止をうたっている。だが特筆すべき点は、芸術活動と公営ラジオに対する資金援助の打ち切りを要求していることだ。

彼らは憲法を強く支持している。そして生命は受胎の瞬間に始まり、中絶に関しては女性を妊娠させた男性にも女性と同等の発言権を認めるよう、憲法を改定すべきだと綱領で主張している。女性をレイプした男にも同様の発言権を認めるべきだとは、さすがに書いていないが。

さらに彼らは、神による天地創造は事実だと学校で教え、性教育に関しては禁欲主義のみを取り上げるべきだと主張。テキサス州同様、米軍の同性愛者の受け入れを再び禁止するよう要求している。

共和党の綱領はスティーブン・キングの小説と同じくらい面白い。ただしキングは共和党の政治家と違って、ファンタジーを立法化しようとは考えていないが。【ポール・ベガラ(政治コンサルタント) 8月20日 Newsweek】
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コメント

「ウィキリークス」代表のアサンジ容疑者 ロンドンのエクアドル大使館バルコニーからスピーチ

2012-08-21 23:34:20 | 欧州情勢

(19日 ロンドンのエクアドル大使館バルコニーからスピーチするアサンジ容疑者 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/7815738740/)

【「アサンジュ代表の訴追は政治的で、公正な裁判を受けるとの保証もない」】
匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイトである「ウィキリークス」は、2010年4月に米軍によるイラクでの民間人殺傷動画を、10月にはアメリカのアフガニスタン関連機密資料を、11月には同じくアメリカのイラク戦争関連機密資料を、更にアメリカの外交公電を公開したことで、世界の注目を集めました。
リークされたアメリカは違法な情報流失で国益が損なわれたとして怒っています。

創始者のアサンジ氏は、2010年8月、講演で訪れたスウェーデンで女性2人の家に滞在し、性的暴行などを行った疑いでスウェーデンから国際指名手配され、2010年12月にイギリスで逮捕されました。
しかし、保釈中の12年6月、エクアドルへの亡命を求めてイギリスのエクアドル大使館に逃げ込み、そまま現在もエクアドル大使館に保護されています。

エクアドルは16日、アサンジ容疑者の亡命を認めていますが、イギリス側は同氏の逮捕を求めて、大使館周囲に警官を配備しています。

****ウィキリークス代表の亡命認める エクアドル政府****
内部告発サイト「ウィキリークス」代表で、南米エクアドルへの亡命を求めて英国のエクアドル大使館に滞在中のジュリアン・アサンジュ容疑者(41)についてエクアドルのパティニョ外相は16日、亡命を認めることを発表した。
だが英国側は大使館を出れば逮捕する方針を表明しており、亡命が実現するかどうかは不明だ。

同外相は記者会見で、「アサンジュ代表の訴追は政治的で、公正な裁判を受けるとの保証もない」と亡命を認めた理由を説明した。【8月16日 朝日】
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アサンジ容疑者のエクアドル大使館での生活は“コンピューターで仕事をこなし、ルームランナーで運動し、電子レンジで調理をしながら忙しくしている”とのことで、まずまずの快適さのようです。

****ルームランナーや電子レンジ、アサンジ容疑者の大使館内での生活ぶり****
内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ容疑者(41)は、ロンドンのエクアドル大使館の中で、コンピューターで仕事をこなし、ルームランナーで運動し、電子レンジで調理をしながら忙しくしているようだ。友人たちが語った。

1年以上にわたって自宅軟禁下のアサンジ容疑者を自宅に住ませた元陸軍士官のボーガン・スミス氏は、大使館内の設備は必要最低限だが十分に快適な環境だと語る。
「監房よりはもちろんいいさ」とスミス氏はAFPに語った。「というのも、1番の理由はコンピューターとインターネットを使えるからだ。仕事ができる、ということが彼の最大の関心事だからね」(後略)【8月21日 AFP】
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人権侵害の問題国エクアドルが亡命を認める皮肉
アサンジ容疑者は19日、エクアドル大使館のバルコニーから数百人の支持者を前にスピーチを行い、ウィキリークスに対する「魔女狩り」をやめるよう呼びかけています。
同氏は、スェーデンからアメリカへ送られることを強く警戒してると言われています。

エクアドルは人権団体アムネスティから“先住民族のリーダーなどの人権擁護活動家たちが、でっちあげの嫌疑で起訴された。治安部隊による人権侵害は解決されないままであった。貧困層の女性たちが文化的に適切で良質な保健サービスを受けられない状態が続いていた”【アムネスティ日本のホームページより】と評されている国で、「表現の自由、報道の自由」を求めるアサンジ容疑者の亡命先がどうしてエクアドルなのか?・・・という疑問もあります。

****アサンジ亡命を認めたエクアドルの魂胆****
・・・・・エクアドル政府はこのほど発表した3788語にわたる公式声明にて、アサンジがアメリカ政府による「政治的迫害」に直面しており、死刑になる可能性もあるとしている。

さらに、キューバのグアンタナモ米軍基地で国際テロ組織アルカイダのメンバーとされる容疑者たちが法的に「グレー」な状態に置かれていることを引き合いに出し、アサンジがアメリカに引き渡されれば人権侵害を受けかねないと主張する。
「もしアメリカへの送還が現実になれば、アサンジ氏は公正な裁判を受けられず、終身刑か死刑を言い渡されるだろう」と、この公式声明には記されている。

しかし、エクアドルのラファエル・コレア大統領の批判派は、この主張に偽善のにおいをかぎとるだろう。
人権擁護団体はこれまで、コレア政権が国内メディアによる政権批判を抑圧していると非難してきた。彼らに言わせれば、報道の自由においてエクアドルは南北アメリカ諸国でキューバに次いで劣悪な状態にあるという。
そのエクアドル政府がアサンジの「表現の自由、報道の自由と人権のための戦い」を称えるとは、彼らにとってはとんだお笑い草だろう。

報道の自由の擁護者に変身
「政権批判を行った日刊紙『エル・ウニベルソ』の論説者エミリオ・パラシオを亡命に追い込み、報道の自由のために活動するジャーナリストグループ『ファンダメディオス』代表のシーザー・リコルテのことを国営メディアを使って中傷する――そんな政権がアサンジの亡命を認めるとは、何とも皮肉なことだ」と、ニューヨークに本部を置くジャーナリスト保護委員会のカルロス・ローリア代表はブログで訴えた。

皮肉な点は他にもある。エクアドル政府は公式声明の中で、複数の法的前例や、世界人権宣言など16の条約・協定を並べたて、自国はそれらに基づいて「国際的な責務」を果たす必要があると主張している。
その中には、1948年の米州人権宣言と1969年の米州人権条約も含まれている。この2つは南北アメリカにおける人権擁護活動の柱とも言えるものだが、実のところコレアはこれらをアメリカの「帝国主義」の象徴として、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領らとともに猛攻撃してきた。

声明に込められたコレアの真の狙いは何なのか。時代遅れの法律を用いて政権批判を封じていると外国メディアに叩かれてきたコレアが、名誉挽回を目論んでいるとの見方もある。ファンダメディオスの代表リコルテによれば、「コレアはこの一件で、われこそが報道の自由の擁護者だと名乗りをあげるつもりだ」。【8月20日 Newsweek】
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アサンジ容疑者を支持しているのはエクアドルだけではありません。
2010年12月10日ブログ「ウィキリークス批判・創設者逮捕に対し、知る権利・表現の自由・報道の自由からの批判・反論も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101210)でも取り上げたように、公開された外交公電で「マフィア国家」と評されたロシアの「群れのボス犬」プーチン首相(当時)も、「アサンジ氏は、なぜ投獄されなければならなかったのか。これが民主主義か。まさに『自分のことを棚に上げて他人を批判する』行為だ」【12月10日 AFP】と、アサンジ容疑者の逮捕を「非民主的」だと強く非難しています。

もちろんロシアの「表現の自由、報道の自由」も、プーチン・教会批判を行った女性パンクバンド「プッシー・ライオット」に対する実刑判決を持ち出すまでもなく、非常にお寒い状況です。
普段、その自由の制約・人権侵害をアメリカから批判されていたエクアドルやロシアとしては、アメリカの二重基準的身勝手さをアピールしたい・・・といったところでしょう。

ウィキリークスによる機密文書公開については、判断に悩むところです。
外交公電のようなものが公開されては、水面下の本音での交渉を必要とする外交交渉が破綻する危険があります。
その一方で、「手が届かないと思われた民主主義を白日の下にさらした」(ブラジル・ルラ前大統領)という評価もあります。
「知る権利と安全保障確保や公的秩序との複雑なバランスの問題を提起した」(ピレイ国連人権高等弁務官)と言えます。
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