駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医学の進歩と理解

2008年06月23日 | 医療
 週末から東京に出て、教育講演を聞いてきた。これは臨床医が常に新しい知識を取り入れて診療できるように、内科学会が会員向けに企画しているもので年に三種類計七回あるものの一つだ。認定医や専門医の資格更新の点数がもらえるためか毎回二千人以上の参加がある。いくつか新しい知見があったし、知識の確認もできた。
 マスコミの報道と現実とではかなり乖離があると推定される内容がいくつかあった。遺伝子治療などは、遺伝子という言葉が生物万能の鍵のように思われているせいか、随分いろいろなことができるように思われている節があるが、現実には応用範囲はまだ限られており、思わぬ(ある程度予想された)副作用も出ている。正常な遺伝子を病的細胞に運ぶのにベクターといわれる運び屋を使うことが多いのだが、これが悪さをすることがあるという。なんだか人間の社会に似ている。
 骨髄移植の現状なども、一般の人の理解は少し違うんだろうなと思って聞いた。骨髄移植の成績は病気の種類によりある程度異なるが、それでも抗癌剤の治療と雲泥の差があるほど優れているわけではない。それに同種骨髄移植(他人の骨髄を移植)にはドナーが必要になる。血縁者に適当な人が居ない場合、登録していただいている方の中からコーディネーターを介した選定作業が必要になる。迅速や特別はない。
 最近はNHKの教育テレビでかなりきちんとした医学番組を放送しているし、インターネットを使えば、ほとんど専門家と遜色ない情報を得ることも出来る。確かに以前よりは病気の理解が進んでいると感ずるが、個別の場合の適応や評価は素人には難しく、いざという時は掛かり付け医の説明が求められる。出番には活躍できるように、町医者も常に最新の知識を仕入れ、説明する技術を磨かねばなるまい。
 
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