駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医療費の不思議

2010年01月18日 | 医療
 日本の医療制度はかなりほころびが出て来たが、誰もが医療保険に加入出来る点ではなかなか優れものであった。いくつかの問題点があるが、裏返しの問題にちょっと触れてみたい。それは誰が診ても同じという均一料金体系のことだ。実はなどと云わなくても、医師の能力に個人差があるのは明白で、均一料金なのは個人能力の測定が困難なのと均一料金を望む医師の存在で差別化が実施されていないだけだ。
 外科医の能力は手術で比較的短期に結果が出るのでまあわかりやすい。内科医にも勿論能力の差はあるのだが、これは意外にわかりにくい。というのは自然治癒する病気が大部分であるのと、慢性疾患では治療の差が分かるのが数年後でしかも統計処理が必要といった難しさがあるからなのだ。
 私は少ない(必要最小限)費用で十分な診療を行っていると自負しているが、これにはなんの見返りもない。勿論、多くの患者さんが受診して下さり、経済的に十分報われているので、ことさらなにかを望むというわけではないが、保険者には理解して欲しいと思う。
 細かいことはともかく、明らかに経験知識技量に優れた医師の診察料が駆け出しと同じというのは何とも理解できない。
 知っている人は知っているのだが、外科手術には本当に名人が居るのだ。もし、手術料を市場に出せば、駆け出しの何十倍にもなるだろう。
 均一料金の背景には評価と手続きが難しいことと優れた医師が利潤を第一としていないことがある。簡単な解決法はないが、こうした事実と便宜優先という社会の仕組みを理解しておいて欲しいものだ。情報公開と電子システムでこの便宜優先の壁を打ち破ることは可能だと思う。差別化を望まない医師は一般人が冷静公平に声を上げればそれに従わざるをえまい。
 既に端緒が開かれていると理解しているが、道は遠いのだろうか。
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4 コメント

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医療費の不思議 (柳居子)
2010-01-20 14:11:47
医療費に付いては、フリーアクセス 出来高払いが問題の根源かと思います。
患者が賢くなる事が医療制度の再構築には不可欠 『念のためレントゲンを撮っておきましょう』とか『症状にあわせて薬が増えています』
医者の懇切丁寧と見る人が大部分 念のためというのを止めるだけでも大変な節約 売上減少 

医療は不確実性の最たる分野かと思います。
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まさにその通りで (arz2bee)
2010-01-20 21:12:00
 あまりに鋭いご指摘に医療関係のお仕事ではと思ってしまいます。まさにそこが日本の医療制度改革の本丸です。
 安定した高血圧や糖尿病それに風邪等で総合病院に罹る必要はないのです。
 医療保険を使って人間ドックまがいのことをされてはとても保険は持ちません。リスクを見極めて不要不急は省くのが専門家の仕事と思います。
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お時間が許せばご披見ください。 (柳居子)
2010-01-21 11:26:26
医療関係とは全く関係のない身ですが、如何いう訳か、拙ブログには、医療に関係のある記事が50件ほど載っています。

何人かいる友人の医師には、常々健康な人と付き合うように言ってます。


新型インフルエンザ 作られた非常事態
http://plaza.rakuten.co.jp/camphorac/diary/201001160000/
心臓血管外科医
http://plaza.rakuten.co.jp/camphorac/diary/200912220000/
病院建築競争
http://plaza.rakuten.co.jp/camphorac/diary/200911020000/
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幅広い人脈 (arz2bee)
2010-01-21 17:49:05
 幅広い人脈から非専門分野にも色々通じておられるわけですね。
 京都の人は流行に流されないようで、身についた歴史の智慧なのでしょうか。
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