これは私の連れ合いですと紹介しても、まあそれはそれはとか初めましてと言われるだけで、面と向かってはそれ以上のコメントはあるまい。まあ夫婦というのはそうしたものだろう。
若い日の恋愛なんぞ麻疹のようなものといわれる方もおられるようだが、果たして平凡な人間にはそうしたことがなければ結婚するのは難しい気がする。40年前はまだまだお見合いが結構あり、うろうろしておればそんな話も回ってきたかもしれないが、何十万何百万の中から一人を選ぶのは、麻疹に感染して熱に憑かれた踏ん切りといったものがなければ至難の業だ。
これは理屈ではないので、振り返って良かった悪かったということではないなと懐かしい街を歩いて考えた。運命というものは受け入れるものだというのが絶対者の教えだと思う。摂理は理不尽で過酷熾烈としても、あーだーこーだという不平不満は人間の錯覚として退けられるのだろう。
肖像画は向き合うと鬱陶しいこともあるのだが、モジリアーニは別でほぼ例外なく近しく感じ、飽きることなく時々鑑賞している。描かれた人物の存在感に親しみを感じるのだ。