駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

生徒の内科健診を終えて

2012年05月17日 | 診療

    

 中学校の校医をしている。担当校は生徒数が徐々に増えているという最近珍しい学区で八百名と一人で診る限界を超えてきている。

 参ったなあと思っても、「お忙しいところ申し訳ありません」。と保健の先生に頭を下げられると、「いいえ」。と答えてしまう。

 一度に二百七十人も次から次と聴診していると耳が痛くなり、正直ウンザリしてくるのだが、気を紛らす面白い発見もある。

 もう二十年以上のご奉公で感謝状も戴いているのだが、二十年前よりも更に体格の良くなったのに驚く、これで中学生という女子が多数、男子にも既に大人顔負けの体格のが結構居る。この体格の発達速度は、どうも心と頭脳の発達を追い越している。誰もが通り過ぎなければならない思春期とはいえ、何とも不安定で本人達も戸惑っているに違いない。

 校医の診察を受けるのには多少の羞恥や緊張があると思う。女性の保健教師が付き添っていても特に女子にはそうした反応が強いようだ。それは顔つきや動悸という形で感じ取ることが出来る。勿論、男子にも緊張して心悸亢進を認める者が居る。しかし中に男子にも女子にも全く動ぜず、平気の平左で心音もゆったり平常心と思えるのが混じっている。特に女子の中には平然とこの爺さんの面を見詰める強者も居る(良い感じではない)。こうした緊張しない気質は多分持って生まれたもので、社会の中である役割を担っていく一群の人達なのだろうと思う。

 まあ、そうして個性と特性に気付きながら健診を終えたわけだが、総じてやや幼なくひ弱い感じは受けるものの素直さは保たれており、心と頭脳が上手く追いてつけば将来を託せる若者になってゆく素質はあると感じた。どうなるかは彼等よりもむしろ大人である我々の側に委ねられているのだろう。

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