駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

沈黙の臓器がある日突然

2018年02月02日 | 診療

 東京では雪と報じられているが、今朝の雨はさほど冷たくなかった。北国ではこれから何度も厳しい寒さがあるのだろうが、比較的暖かい太平洋側では2月の声を聞くとどこか微かに春を感じる。

 沈黙の臓器と目にして、症状が出にくく手遅れになりやすい膵臓癌などから膵臓のことかなと思われた方も多いだろう。一般に内科医の間で沈黙の臓器といえば肝臓のことを言う。肝臓は余力があり、障害がかなり進行しないと検査値の異常や自覚症状が出ない。勿論、肝臓が悪いと疑がって掛かれば特殊な検査をして症状が出る前に異常を見付けることが出来ることもあるのだが、ルーティーンではそうした検査をしない。比較的、保険診療でやりやすい検査の中では血小板数が、一番の手がかりになると思う。ASTやALTは正常値が高めに設定されており、肝臓の専門家はAST、ALTとも30を越えているのは一寸怪しい、本当に健康な肝臓は25以下だよねという人が多い。

 肝硬変というのは直ぐ死んだりはしないけれど殆ど不治の病で、症状が出た頃には後何年ですと言われてしまう。酒飲みというか酒飲める人達の中には、アルコール性肝障害があっても殆ど数値に異常の出ない人達が居る。それでも秘かに肝障害は進行しており、二、三十年間毎日たくさん飲んでいると、ある日突然沈黙の臓器がちょっと過ぎましたと音を上げることになる。

 勿論、人生色々、私の俺の好きにやらせてくれというのはあるかも知れないが、やはり程々、物言わぬ頑張り屋にあまり負担を掛けないように賢く飲んで頂きたい。私の診るところ、やはり飲んでいるのではなく酒に飲まれている人が還暦を過ぎて付けを払わせられる羽目になる。男だけではなく女にも結構アルコールに祟られる人が居る。男よりも少ないアルコール量でやられてしまう。

 そんな患者さんを数名、専門医と一緒にフォロウしている。一人を除いて完全にアルコールを止めることが出来、前途有望(肝臓で死ななくて済みそう?)である。

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