駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医師国家試験今昔

2008年07月18日 | 医者
 現在の医師国家試験はかなり難しく、合格率が85-90%である。なぜか学校別の合格率も発表される。偏差値の高い学校の方が合格率が高い傾向はあるが、例外も多く、入試とは別種の難しさのようである。90%近い合格率は高いようにも思えるが、6年みっちり?勉強して、最近は受験指導をする学校も多い状況でのものだから、なんとも言い難い。
 我々の時代は落ちるのが難しいくらいで、国家試験そのものをさほど意識しなかったと記憶する。今は無くなったが口頭試問があった。これが傑作で、試験官は受験生をいびっても落とそうという気持ちはなく、焦って間違えても誘導尋問で正解を教え、その場で教えてやろうとゆう姿勢だった。
 嘘のような本当の話。試験官はたぶんどこかの脳外科の教授ではなかったかと思う。60年配で貫禄があり、ちょっと気難しそうだった。自転車で転んで頭を打ったという中年のおばさんが担ぎ込まれた。頭蓋底骨折を疑ったらどうすると聞かれた。髄液の漏れはないかなどの診察法や所見を言い、頭蓋底の写真の撮り方(特別な名前がある)をてきぱきと答えた。ふーんと聞いていた試験官は、「じゃあ、骨折していたら骨折線が写真でわかるか?」。正解を知らなかったが「はい、わかると思います」。と答えた。「そのとおり」。とは言わずなんだか違うような顔をしていたのであわてて「いえ、わかりません」。と答えたら、初めて口が裂けるほどニヤリと笑い、「君ね、わかる時もわからない時もあるんだよ」。と言われて試験はお仕舞い。もちろん?試験は合格だったが、あの爺、冷や汗をかかせやがってと、今も忘れない。
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