駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

千三つに学ぶ

2008年01月25日 | 診療
 せんみつはあんみつと違い食べられない。口から出任せ、お調子者の話には千に三つしか本当のことが含まれていないという揶揄。この千回に三回というのはなかなか味のある物言いで、いろいろな分野で有益な指標となるように思う。慣れた仕事の中に千回に三回くらい、見落としてはいけない危険な事象が混じっている。
 冬になると風邪が流行る。ピーク時には次から次と患者さんがやって来て、手早く診察しないと追いつかない。ところがこの中に300例に一例くらい風邪のようで風邪でない重い疾患が紛れ込んでいる。「昨日から熱が出ました」、「今朝から頭が痛い」。また風邪かと思って予断に囚われすぎると、あとで冷や汗をかくことになる。今では苦い経験があるので、ちょっと変だなと思えば手を止めて慎重に診察し検査をする。
 医者になって3,4年、天狗になりがちな時期には、先輩のアドバイスを馬耳東風と受け取り、あとで自らの不手際に肝を冷やすことが時にあるものだ。そうした自らの苦い経験ほど身に付くものはない。だからといって、医療では若い時の多少の失策は許されるとは言いづらい。まして取り返しのつかないミスには言い訳が許されない。
 しかしながら、技術を身につけるのには一定のプロセスが必要であり、生まれながらの名人がいないのも事実だ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 情報の有効活用は必須アミノ酸 | トップ | 病気診断の微分積分的感覚 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

診療」カテゴリの最新記事