学会誌や医学雑誌に目を通すと新知見が幾つか目に入ってくる。もうよく分かっているつもりの分野でも、そういうことがあるのかとか成る程といった学びがある。新しいことが見つかれば、それに伴って未知のことが増えるという側面もあるし、日常気が付かない誰も注意してくれない分野は本を読んだり講演を聴いたりして初めて気が付くわけだ。
何万人もの患者さんを診てきたから、トラブルに対する対応や要注意人物を見分ける能力は身に付いていると思っていたが、最近読んだ心因性の愁訴を解説した本で指摘されている、言わない方が良いことしない方が良いこと、には知らなかったことが数多くある。指摘してくれる人がいないので、自分ではきちんとやっているつもりになっていたのだ。
鬱の人を励まさない方が良いというのは知っていたが、他にも心因性と言われる愁訴に対する対応では、幾つか避けるべき言動があるのを知った。まあ、そうした適切な対応を患者を甘やかしていると感じたり、不適切な対応で受診されなくなれば、その方が楽という感想を持つ医師も居るだろう。
数十年前、社会現象にまでなった甘えの構造も関係している分野だと思うが、甘えの構造の咀嚼深化は不十分なまま忘れ去られている?ように感じる。残念ながら、一般内科は精神科と連携がさほど良くなく、相互理解が不十分なせいもあるかもしれない。
鬱を患う人も髪の毛は伸びてきます。『随分伸びていますね、何度か散髪に行こうと家を出られたが、目的果たせずやっと今日来られたのですね』と言うと『そうです 其の通りです。』『お顔の色が余り優れませんが 散髪をして大丈夫ですか?』と、再度体調確認をする 『今日は大丈夫です』という言質をとってから仕事に掛かるようにしています。途中 髪を刈り終えたら 今日は此の位にしておきましょうかと、顔そり・洗髪省略を勧めます。『大丈夫此の侭進めて下さいという事になります。
控えて喋るとか、励まさないというのは鬱の処方の鉄則と思いますが。患者(お客様)の考えている事とか 体調を 具体的に此方から指摘して、貴方のお体の事は、判っていますよというアナウンスが 相手に大変安心感を与える様です。
相手に大丈夫かと尋ね 大丈夫の言質を取って仕事に取り掛かれたら成功
『貴方に 髪の毛切って貰い 髭を剃って貰うと 心が落ち着いて爽快になると言われたりすると、仕事冥利に尽きます。