駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

「シャーデンフロイデ」を読む

2018年02月11日 | 

 

 中野信子さんの「シャーデンフロイデ」を読んでみた。ネットや週刊誌に溢れる他人の不幸は蜜の味の匿名投稿や記事にうんざりしているので、何か理解が深まるものがあるかと手にした。

 中野さんはテレビで何度か拝見しているが女性的な美しい人で、柔らかく脳の働きから見た人間の行動にコメントされる。彼女がどの程度現役の科学者で科学的かはわからないところもあるが、こうして一般向けの本を出しテレビに登場することでご自身も視野を広げられ、脳科学的な視点から社会に意味のある発信をする場を見付けられたと観測する。

 書いてあったことは読み物的で流し読みになってしまったが、驚くようなことは少なく再確認というかそうだろうなという内容だった。唯、そこに科学的として、ホルモン的な知見が加えられていた。どうも科学的と言われながらそこまで敷衍できるだろうかと疑問に感じる所もあった。科学論文ではストーリーになるほどの知見を出すことは無理で、中野さんは総説的な立ち位置からわかりやすく、時にはご自身の見解を交えて書かれているようだ。人間は、特に日本人は、組織を作り協力して生き延びてきたので、組織の中で只乗りをしたり組織の秩序を乱す人物を排斥する遺伝的脳的構造が生じ、それがいじめや叩きに繋がっているということのようだが、だからやむを得ない?とか匿名性でそれが助長されるという部分は、それでいいのだろうかと読んだ。それでいいのだろうかと言う感覚がいじめの種になりそうだが、私自身はいいかげんでさほど厳しい部類には入らないように自己判断した。

 人間(生物)は生き延びやすいように淘汰され現在の色々な資質を身につけているという考えが基調にあるけれども、脳が思考から生み出した価値観や様々なイデオロギーも遺伝的或いはホルモン的な産物だろうかと聞いてみたくなる。この辺りには、色々な見解があるようだが、中野さんはどう考えておられるのだろう。

 マスコミに出る脳科学者と言えば先行する茂木健一郎を思い浮かべるが、わかりやすく話す怖さ難しさもある。視聴者読者のまっとうな科学的視野を広げる活動をお願いしたい。

コメント (2)
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