旨いものと言ってもうまくない話。女房が留守なので、夕食を帰り道一人で食べた。昼飯がカレーだったので鮨を食べるかと珍しく独りで某老舗に入った。代が変わったらしく若いのが独り付け台の向こうで所在なげにしていた。お客は誰も居ない。テーブルに座って一人前を食べるのも寂しい感じがしたので、カウンターに座り上鮨を一人前頼んだ。並みでもよかったのだが、、お客が誰も居ないし付け台の前に腰掛けたので上と口から出た。母親とおぼしき年齢の女性が飲み物はと聞くので「お茶」。と答えた。
大将注文に「はい」と応え、握りはじめたはよいが一向に付け台に鮨が載らない。どういうわけかと見ていると八貫の握りと鉄火巻きの盛り合わせを一人前の寿司桶に入れている。はいどうぞと付け台の上に出された桶から食べたのだが、あんまり美味しくない。先代の方が旨かった。
鮨屋もいろいろだと思うが、喩えお決まりの一人前の注文でも握った端から出してくれ、最後にこれで一人前ですとさりげなく言ってくれる店もある。当然そうした店の方が旨いし繁盛している。
どうもネタの鮮度ももう一つに見えた、弱り目に祟り目、回転寿司に押され、代替わりも厳しい風に晒されているのではと余計な感想を持った。尤も繁華街なので、鮨を食べるより飲んで話をしたり宴会に利用する客が居てやっていけるのかもしれない。これから鮨屋鰻屋には厳しい時代がくる。喩えお決まりの一人前でも目の前に座った客には一つづつ出した方が鮨は美味しく感じられ客も気分がよい。仕事は細部で決まるとご忠告申し上げたいところだ。