駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

春の都を歩く

2009年04月19日 | 
 春風のせいか四月は出かけることが多い。先週に続き今週も子供の時から続けている趣味の集まりで一泊の小旅行を楽しんだ。
 例によって朝6時に起き6時半頃からホテル周辺の散歩に出かけた。
 皇居の周辺の高層ビルや広い道路が行き交うスケールの大きい大都会の雰囲気とは正反対に、家が建て込む路地には庶民の生活が息づいていた。生活といっても、乱雑で疲労感が漂うわけではなく、質素だがお客さんを迎える心得のある町並みで、どういうわけか思索に向いているらしく歩きながらあれこれ考えていた。
 朝から多少内省的にいささか後悔もある人生だったと振り返る。この数年、足腰と記憶力の衰えをちょいと自覚するが、幸いまだ好奇心と味覚は健在のようだ。これからもあれこれ頑張ろうという結論に達してホテルに戻る。
 百年に一度の不況は、自分になぞらえるのは妙かも知れんが、戦後の日本人が成熟する良い機会のような気がする。
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不思議な家

2009年02月13日 | 
 今日は初めての患家に往診に行った。いつもゼンリンの地図で場所を確かめ、コピーを持参する。比較的新しい街区でまだいくつか空き地がある。目指す家は直ぐ見つかった。真四角の箱のような新築の大きな二階家で、巨大なサイコロが角地に置いてあるようだ。
 表札が違うが、確かお嬢さんと住んで居ると言っていたからとチャイムを鳴らすと二十台の女性が出てきて、ああそれは横と指を指すので、90度横に回るとそこにも玄関があり患者名の表札が掲げてある。七十台の小柄なおばあさんが「狭いところですが」と中へ招じ入れてくれた。狭いだって、変なことを言うなあと中に入ると確かに2DKの構造で、奥に寝たきりとなったご主人が寝ている。2DKといっても妙な配置で右側に台所トイレ風呂があり左側に二部屋が縦に並ぶ振り分けになっている。あれ、先程のお嬢さんが居る。どこかで隣と繋がっているらしい。
 診察を終わり外で待っていると看護婦がなかなか出てこない。今度来るときの日程などを相談しているのかなと思ったら、「先生、このおうち三世帯住宅なんですって」。と言う。どうも余計な?話もしてきたらしい。「あちら側にも玄関があるんですよ」。成る程、サイコロのような空間をどうやって三つに割っているのだろう。あの老夫婦は下半分、つまり四分の一の空間をL字型に貰っている様子だ。アッシャー家では困るがエッシャー家も目が回りそうだなと、それこそ余計な感想が浮かんだ。
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東京メトロ

2009年01月14日 | 
 久しぶりに日比谷線に乗った。40年前と変わらない懐かしい銀色の車体だ。ゆったりした座席に腰掛けゴーっという走行音に包まれると、音はしているのに静かに移動してゆく感じがする。丸ノ内線や銀座線も変わっていない。今では東京メトロの路線も増え、しかもいろんな郊外私鉄と結びつき周辺まで伸びている。どの路線も清潔で明るく、待つほどのこともなく次から次と電車が滑り込んでくる。30km程度の周辺ならほとんどどこからも山手線内まで2,30分で来れ、あとは一、二回の簡単な?乗り換えで都心であればどこへでも行ける。しかも出口が直接デパートや繁華街に結びついており誠に便利だ。地下鉄は東京をメトロポリスの名に負うものにしている。
 ニューヨーク、パリ、ロンドンでも地下鉄に乗ったが、東京メトロは優るとも劣らない、いや優っている(安全で明るく清潔でゆったりしている)。
 20年くらい前だったか、一時首都移転計画があり、かなりの調査費用が投じられたと思うが、あれは何だったんだろう、バブルで政治も浮かれたか。あちこちにつぎはぎや不細工な構造もあるが、四百年の昔から人々が首都として作り上げてきた息吹が残るメトロポリス東京、でかい図体なのにきめ細かく、味わいのある街を包含している。大阪名古屋には悪いが、何かと出かける時はほとんどいつも東京だ。そして、メトロを利用するのも楽しみの一つだ。
 追伸:東京の魅力を押し上げているものに、メトロとは直接関係ないが、甲信越東北からの人の流入があると思う。
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大阪の街で

2008年11月03日 | 
 昨日は元職員の結婚式に呼ばれ大阪に行ってきた。どうも最近流行の実績先行型の様子であったが、親御さんが眼を赤く腫らした顔を綻ばせ、これからもどうぞ宜しくと頭を下げられれば、自然心から末永い幸を願う気持ちになる。一人息子に嫁ぐことは大変なことと思う。でも彼女は芯がしっかりして心優しいから、きっと上手く行くだろう。
 時間が少しあったので大阪城を見た。何度見ても石垣の偉容に打たれる。何でこの城が落城するのか、とても理解できない。詳しい歴史をつまびらかにしないが、城でなく人が敗れたのは間違いないと思う。
 石垣を巡る道で行き交う人々は全くの普段着で庶民そのもの、大阪なのだ。
 13ゲーム差がひっくり返るのは巨人の偉業ではない、阪神の異常だ。何百年の時を超えて落城と逆転の二つを結びつけ大阪の問題などと言えば、橋下知事や府民の罵声が飛んでくるかな。もう既に大阪府政では罵声と怒号が飛び交っていると聞く。しかも一方は教師だと言うからあきれてしまう。
 ノックを知事に選び、メインストリートで二列三列の違反駐車が常態。よけいなお世話と怒鳴られそうだが、深いところで繋がっているような気がした。
 阪神デパ地下、イカ焼きをご存じか。こんな不思議に旨い物を考え出す知恵や振り込め詐欺に騙されない知恵があんのやから、どないかなると思うんやけど。
 通りすがりの浅薄な感想かな。
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丸の内の変貌

2008年08月27日 | 
 年に数回上京する。仕事がらみのことが多いので、さほど歩き回る時間はないが、東京駅周辺はよく見て回る。この5,6年で、ちょっと時間がある時、出歩くのは八重洲から丸の内側に変わった。オアゾ丸善から新丸ビル、丸ビル、東京フォーラムまで地下街があり。地上へ出て足を伸ばせば有楽町まで近代的なビルと瀟洒な店が続く。
 先日の会合には外国からの参加者もあり、何人かと少し話をした。妻が東京の印象を聞くとカルフォルニアからのご夫婦は異口同音に「ビューティフル」。と言う。20年前ならちょっと違和感があっただろうが、今はそうかもしれないと首肯できる。
 富士山は美しいがそれは遠景。山肌は決して美しいとは言えない。市街地の美しさは富士山とは違い、眺めてよりも歩き回って感じ取られるもののようだ。おそらくビューティフルの印象に清潔感の占める割合が大きいのではと思う。イーストリバーに映るニューヨークの街並みや凱旋門へ続くシャンゼリゼ通りは見渡せば美しいけれど、歩き回れば清潔な東京がビューティフルなのかもしれない。
 例えば、確かに丸の内の清潔で整った近代的な街並みは美しい。しかるに21世紀に皇居が垣間見える紛れもない東京に出現したこの和のかけらもない街並みに、果たして我々が遠い昔から受け継いできた感性が生きているのだろうか。と妙なことを思った。
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