『探偵になりたい』 パーネル・ホール著 田村義進訳/ハヤカワ・ミステリ文庫
またしても再読です。
こちらも
以前話題にしましたが、今読んでもやっぱり面白い。
控えめな探偵スタンリー・ヘイスティングズの冒険譚です。
依頼されたわけでもなく、報酬が出るわけでもない
危険な「仕事」に、自分で決めたこととはいえ、
やめようかどうしようか悩みながらも邁進していくお話。
スタンリーの一人称ですから、彼の思考の過程がわかるわけですが、
その口調のユーモラスで軽妙なこと。
そもそも、なぜこの冒険を始めたかということを突き詰めて考えない。
そこを「動機が弱い」と評する向きもありますが、スタンリー本人も
よくわかっていないというか、突き詰めたらやる理由がないから
やめちゃいそうなネガティブさがありますよね(笑)
資金がないことを口実にあきらめようとした途端、
マスター・カードの融資限度額引き上げの通知が来たくだりは
思わず爆笑してしまいました(やめる理由がなくなった!)。
ただ、私は別の巻と勘違いしていたらしいのですが、
スタンリーが周到に計画したつもりの作戦が、実は穴だらけ、
という部分、警察につっこまれる場面があったと思っていたのです。
でも、第1巻のこの作品では、つっこみを入れるのはスタンリー自身で、
おおむねすべてうまくいきます。
報酬はゼロだけど、スタンリーは大いなる自信と誇りを得て、
少し世界が変わって終わるのです。
それにしても、舞台が80年代アメリカなので、
最近入り浸っていたベーカー街界隈とはいろいろな意味で別世界(笑)
『探偵はBARにいる2』ほどではないですが、PG-12ですね。
こんなに面白くはあるけれど、中学生が読んでいたら
「まだ早い」と取り上げたくなるかも、です(苦笑)