『駆込み女と駆出し男』原田眞人監督作品(15年)
『清須会議』以来の「映画館で観る」大泉さんの映画です。
前回、『龍三と七人の子分たち』のときも
似たようなこと書いていましたが(笑)
Photo by NOION
これはですね、映画館で観た方がいい映画です。
とにかく東慶寺周辺の映像が大変美しい!
じょごが駆け込んでからの2年間を描いているので、
季節の移り変わりも色鮮やかで、とても美しいのです。
ほかにも、冒頭の江戸の街並みとか、堀切屋の中とか、
柏屋の中から藍染め(?)ののれんを通して外を見る画とか、
ああきっと江戸時代ってこんな感じだったんだ、という風情がいっぱい。
とにかく眼福でした。
江戸の風情と言えば、頻繁に出てくる江戸言葉や川柳、小唄(?)などは
ほとんど意味がわからず、聞き流してしまいましたが、
言葉のリズムや歌声が心地よく感じられました。
テンポのよいセリフと共に、むしろ聞き流すくらいでちょうどいい。
でも、これらを理解できる素養が欲しいとも思いました。
主人公の信次郎は、確かに大泉さんにぴったりの役でした。
早口でまくし立てるからというだけではなくて、
愛嬌があって木訥さもあって、どこか哀愁もあって、
という俳優さんは、ちょっと他に思いつかないのです。
あと、なんでしょう、多少ひどい目にあっても
笑って観ていられる、というところとか(すみません)。
「はっきりわかるNGをそのまま使われた」というシーン、
もちろんはっきりわかりましたが、
セリフを噛んだ直後の表情が実にチャーミングで、
これはそのまま使うわ、という感じでした。
というか、NGだって言わなきゃわからなかったのに~(笑)
じょごの戸田恵梨香さんも素敵でした。
彼女が一生懸命薬草園を作っている場面が一番ぐっときました。
徒な満島ひかりさんも、気っぷのいいキムラ緑子さんも、
貫禄の樹木希林さんももちろんいいのですが、
私は、法秀尼役の陽月華さんが、特に気に入りました。
女優さんとしては初めて拝見したような気がしますが、
凛としていながらかわいらしさもあって、
実に「理想の上司」という感じでした。
そして、通奏低音のように流れている
「曲亭馬琴の『八犬伝』が大団円を迎えた」という話は、
山田風太郎の『八犬伝』を読んでいてよかったなー、と思いました。
ですから、時代劇に精通していない人でも楽しめますが、
精通している人はより楽しめる作品なのではないかと思います。
私自身、もっと江戸時代についてわかっていたらなあ、と思いました。