NHKミステリースペシャル『満願』
2014年に、史上初めてミステリーレビューで3冠に輝いた
米澤穂信の短編集『満願』から3編をドラマ化したミステリースペシャル。
原作は未読のまま、この週末に録画を一気に拝見しました。
どれもほの暗い感じが独特で、大変惹き込まれました!
第1夜『万灯』は、東南アジアを舞台とした商社マンの話。
第2夜『夜警』は、交番勤務の警察官の殉職を巡る顛末。
第3夜『満願』は、殺人事件を起こした女性と弁護士の話。
3話とも、少し時代背景が曖昧なのですが、
(第3夜は「平成20年」とされているものの雰囲気が昭和後期)、
(第2夜はスマートフォンが出てくるけど、留守電でも成立する)、
逆に言うと、時代にとらわれない普遍的な話でもあったように思います。
大なり小なり人間の欲望が引き起こす事件を描いていて、
ごく少数の、事件の真相に近づいた者にしても、
それを暴いたところでどうなるものでもない、と思わせるところに、
痛快さとは正反対の、不条理なやりきれなさが印象強く残りました。
第1夜の西島秀俊さんは、ノーブルな感じからどんどん崩れていくところが
何とも言えず説得力がありました。この話が一番怖かったなあ。
自分の行動を、いろいろな方向から正当化するじゃないですか。
いや待て、もうちょっと悩め、引き返せ、と思いながら見ていました。
だいたい、本人は思い至っていないけど、このままだとパンデミック起きますよね?
第2夜の安田顕さんは、『マンホール』以来(じゃないかな)の制服警官役。
安田さんも素晴らしかったけど、自殺してしまった刑事さんとか、
殉職した警官やそのお兄さんとか、みんなとても存在感がありました。
小さな「物証」と「状況証拠」の積み上げで真相にたどり着くので、
一番ミステリーらしい感じでしたが、全然痛快じゃない辺りが何とも。
第3夜の高良健吾さんは、十数年の歳月を自然に醸し出していてよかった。
学生時代の、夜食のおにぎりに不機嫌にかぶりつくところが印象的。
市川実日子さんの、とらえどころのない雰囲気も素晴らしいと思いました。
あの女将さんの役は、色気がありすぎても生活感が出すぎてもダメだと思うんですよ。
かといって凛としすぎていても違う気がするし、市川さんでよかった、としか。
(あと、余計なことですが『シン・ゴジラ』だなあ、とも思っていました・苦笑)
原作ファンの人からも好評だったようですし、
こういうミニシリーズをまたお願いしたいです。