AND SO ON

世界の片隅から、愛をささやいてみたり @goo

読了『ディック・ブルーナ』

2024年07月08日 | 本と雑誌

『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』 森本俊司著/文春文庫


「ミッフィー(英語名)」「うさこちゃん(日本語名)」でおなじみ
グラフィック・デザイナーであり絵本作家であるディック・ブルーナさんの評伝。
文庫本ですがカラー特別装丁本ということで、絵本同様のかわいらしさ。
最初のページのブルーナさんの近影が、またイメージ通りで素敵。
内容も、生前にオランダでインタビューを重ねた方が書いているので、
とても詳しく、また愛情たっぷりで、読んでいてとても気持ちがよかったです。
ブルーナさんの生涯はもちろん、オランダのこともいろいろと知ることができます。
ユトレヒトやアムステルダムに行ってみたくなりました。
うさこちゃん、オランダ語では「ナインチェ」なんですね。

シンプルな線と色に込められた豊かな感性と繊細な表現。
世界中の子どもたちにうさこちゃんが愛される理由。
愛情深く、友情に厚く、それでいて信念が揺るがないブルーナさん。
どれもしみじみと読むことができました。

「ピーナッツ」のチャールズ・M・シュルツさんと
大西洋をはさんで親交があったことも知れて、なぜか嬉しい気持ちです。


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『サスペンス作家が殺人を邪魔するには』読了

2024年06月11日 | 本と雑誌

『サスペンス作家が殺人を邪魔するには』 エル・コシマノ著/創元推理文庫


  ネットで元夫の殺害依頼を見つけたサスペンス作家のフィン。
  相棒のヴェロと一緒に、元夫の殺害を阻止しようと奮闘するが、
  事態は思わぬ方向に。  


*あまりほめていないので(すみません)、
 ファンの方は画像の下を見ない方がいいかもしれません。




      2018.09.25 撮影(滝ノ上公園/夕張市)


前作と同じく、妹からプレゼントされた本。
相変わらず評価が難しい作品です。
手放しで「面白かった」とは言いにくい。
なぜなら、私がフィンのことをあまり好きになれないから。

そもそも冒頭の金魚の扱いからして
「えっ、娘が大切にしていたペットなのに?!」
と拒否反応が出てしまったのですが、
もし丁寧に埋葬していたら、その後の行動と整合性がとれなくなるので、
あれはあれで一貫性があったのか、と中盤あたりで思い直しました(^^;

一方、なぜ親権を争っている元夫の殺害を止めようとするのかと言えば、
週末に元夫と過ごす子どもたちが、襲撃に巻き込まれる恐れがあるから、
という至極まっとうな理由だったのには、納得してしまったんですよね。

これに加えて「元夫の殺害を依頼した人物」の意外性と説得力。

そういう「現実的でどっしりしている部分」と
「ご都合主義的でふわふわしている部分」のバランスが
ちょっと不思議な作品だなあと思います。
文字で読むより娯楽映画にした方がしっくりくるかもしれません。


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『サスペンス作家が人をうまく殺すには』読了

2024年04月21日 | 本と雑誌
『サスペンス作家が人をうまく殺すには』 エル・コシマノ著/創元推理文庫


  2人の子どもの親権を元夫と争っているフィンはサスペンス作家。
  レストランで担当者と打合せ中、その物騒な会話を耳にした隣席
  の女性に、本物の殺しを依頼されてしまう。


*あまりほめていないので(すみません)、
 ファンの方は画像の下を見ない方がいいかもしれません。




        2015.07.06 撮影(EGG/釧路市)


去年のクリスマスに妹からプレゼントされた本。
冒頭は、何となくパーネル・ホールの『探偵になりたい』を思い出しますが
圧倒的に人の良いあちらのスタンリーに比べると
こちらのフィンレイは言動に突っ込みどころが満載で、
中盤あたりまであまり好感が持てませんでした。
元シッターの女性が相棒になったあたりからだいぶ落ち着いてきましたが。
この相棒のヴェロが有能で、有能なあまり事態を余計ややこしくするという(^^;

いろいろご都合主義だなあと思うところはあるものの、
伏線を全部回収したのはお見事。
ライトに読めるユーモア・サスペンスです。

・・・と思ったら、まさかのクリフハンガーで終わってしまったので、
これは2作目も読まざるを得ませんv
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『だからダスティンは死んだ』追加の感想(ややネタバレ)

2023年10月11日 | 本と雑誌
『だからダスティンは死んだ』について、もう少しだけ。


*少しネタバレになるかもしれないので、
 未読の方は画像の下を見ない方がいいと思います。




     Photo from JUSTSYSTEM


 
・スワンソンの作品は、警察が無能ではないのが好印象。
 事務的な対応も多いけれど、呆れるようなことはしでかさず、
 今回の刑事さんたちも結構いい対応をしていると思います。
 事件(というか目撃者)が規格外過ぎただけ。

『SF作法覚え書き』でベン・ボーヴァが書いたように
 今回の犯人は自分を悪ではなく制裁を科す仕置人的なものだと
 思っているわけです。私利私欲ではないの。
 でも、一方で、殺人衝動をそういう条件付けで制御しているとも
 自覚しています。つまり、恐ろしく利己的なの。
 そこら辺が「わかりやすい(まったく理解できないけど)」という
 感想になってくるんですね。(心理描写のうまさだなと思うのですが)

・そんな犯人ですが、心の底では自分のことを理解してほしい、
 ありのままの自分を見てほしいとも思っているのが、ねえ。
 その気持ちはわかると思っちゃうわけですよ。怖いですね(^^;

 
 
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『だからダスティンは死んだ』読了

2023年10月09日 | 本と雑誌

『だからダスティンは死んだ』 ピーター・スワンソン著/創元推理文庫


  新しく知り合った隣人は、殺人犯なのではないか。
  とある出来事からそう確信した版画家のヘンリエッタは、
  隣家の監視を始めるが。


【ご注意!】
 上記のリンク先は東京創元社なので大丈夫ですが、
 ネット上では、ネタばれが散見されます。




                         2010.11. 撮影


冒頭の何気ないブロック・パーティの場面が、
読了後にはとても遠い昔の出来事に思えるのですが、
これはちょうど今頃の季節、秋の始まりから終わりまでの
およそ2ヶ月間の物語です。
美しいボストンの秋と対照的な、恐るべき物語。

さすがに4作目ともなると(邦訳は5作目だそうですが)
スワンソンによく訓練されているので、
名前が出てくる人すべてを疑ってかかっちゃって、とても疲れます。
この3連休で一気読みしたせいもありますが。

何がすごいって「隣人は殺人犯かも」という始まりだったら
フツウその真相が判明するまで物語の半分はかかると思うのに
2章でもう判明しちゃうんですよ。早い。
今までに比べると描写が(『ケイト』のように)偏執的ではなく
バランスがいいので、そういう意味では読みやすいです。
登場人物の心理描写もわかりやすいし(理解はできないんですが)。

そして今回も猫ちゃんが出てくるのですが、
「飼っている猫がメインクーン」というだけで、
彼らの家が大きいことが感じられて興味深いです。

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『アリスが語らないことは』読了

2023年08月25日 | 本と雑誌
『アリスが語らないことは』 ピーター・スワンソン著/創元推理文庫


  卒業式を数日後に控えた大学生のハリーは、
  書店を営んでいた父親の事故死を知らされる。
  急ぎ実家に戻ると、傷心の美しい継母アリスが待っていた。
  

【ご注意!】
 上記のリンク先は東京創元社なので大丈夫ですが、
 ネット上では、ネタばれが散見されます。




                    2011.12.11 撮影

『そしてミランダを殺す』『ケイトが恐れるすべて』の作者による第3作。
極めて相変わらずです!(ほめています)

登場人物のほぼ全員が人を殺す気満々だった『ミランダ』や
登場人物のほぼ全員がどこかおかしい『ケイト』に比べれば、
本作の登場人物は割とフツウの人が多いので、ちょっと安心です。途中までは。

あと、相変わらず出てくる食べ物がおいしそうです。
チキン・コルドン・ブルーのキャセロールとか
モンテ・クリスト・サンドウィッチなど、初耳の料理も多いですが、
調べてみたらどれもおいしそうでした。フムスとかも。

そして、個人的に一番ショックだったのは、
舞台となる海辺の町、メイン州ケルウィックが「架空の町」だったことです。
あんなに詳細に描いていたのに! (解説読むまで知らなかった)



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『世界の家の窓から』読了

2023年08月04日 | 本と雑誌
『世界の家の窓から』 主婦の友社編

副題は「77か国201人の人生ストーリー」。
ベルギーのデュリオさんが立ち上げたサイト「VIEW FROM MY WINDOW」を
まとめた英語版書籍をベースに、日本で独自に編集したもの、ということです。

2020年から22年にかけて、世界中がロックダウンを行う中、
「自宅の窓からの風景を写した写真1枚に、
 状況を説明するコメントを添えて投稿して、世界中の人々と共有する」
というシンプルな趣旨を掲げて開かれたサイト。
そこに世界100か国以上から312万人を超える人々が参加しているとのことです。

私は、この日本版が出版されて、その記念フォーラム?にデュリオさんが来日した、
というNHKのニュースを見てこの本を知りました。
本に掲載されているこいのぼりの写真を示して
「これを撮ったのが私です」と自己紹介した日本人女性に
デュリオさんが大喜びしていた様子が印象的でした。
早速書店に探しに行ったところ、
表紙の「窓からのぞくヤギ」(スウェーデン)がかわいらしくて、中身も見ずに即購入。
それからゆっくりじっくり読んでいました。
最後のページは「朝焼けを眺めるレトリバーの後ろ姿」(アメリカ)。
そのヤギからレトリバーまでの間に、世界中の眺めや暮らしや人生が詰まっていました。

個人的に好きなのは、「道いっぱいに走る自転車レースの選手たち」(イタリア)の
次の写真が「道いっぱいに歩く羊の群れ」(イタリア)だった並びの妙。
とは言え、どの写真も、都会の路地も砂埃舞う荒地も花であふれる庭も、心に残りました。
私が見たことのない風景の中でも、人々は、私と同じように暮らしている、と感じました。

2020年に始まったパンデミックは、多くの混乱と分断を生みましたし、
私たちの社会が危ういバランスの上に建っていたことを実感させました。
その一方で、世界中が同じ状況にある連帯感もあったなと、今となっては思うのです。
もちろん恐ろしい苦労や悲しみが、今も続いていることを忘れてはならないのですが。

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おばさんの読む『チェンソーマン』(おまけその2)*少し修正

2022年10月10日 | 本と雑誌
いよいよアニメの放映も間近になった『チェンソーマン』。
第12巻も購入しましたよ(電子書籍で)。
各話の合間にアイキャッチ的に出てくるポチタがかわいかったので
「連載読んでるからいいや」としなくて正解でした。

前回に続き、おまけで書きたくなったことですが。

・第2部最新話、ユウコにすっかり度肝を抜かれてしまいましたが、
 冒頭のアサの提案(学校に悪魔を呼ぶ)もかなり悪魔的発想じゃないですか?
 全校生徒が全滅するような『学校怪談』的な展開になったらどうするんだ。
・正義の悪魔が暗躍しすぎてますが、戦争の悪魔とグルだったらどうしよう。

・第2部は高校が舞台なのでみんなだいたい制服姿ですが、
 第1部でも公安の面々がブラックスーツにブラックタイだったのが好みでした。
 女性陣も男性陣も(人間も悪魔も)同じ服装で、ストイックな感じがいいです。
 セクシーな服でなくても女性陣が魅力的なのはうれしい。

・アニメの予告で、デンジ君が例のセリフをとても真剣に叫んでいるので
 私は爆笑してしまったのですが、この場面の前後を原作で読むと
 1話からずっと、彼の気持ちなんて誰も(マキマさんも)考えてくれなかったのに、
 初めて「デンジの気持ちがわかった」と言ったのがパワーだったんですよね。
 言われたデンジも自分の経験からパワーの気持ちを考えて、理解しようとして、
 そして、助けに行く。
・という一連の流れを踏んでいるから、デンジ君が率直な欲望を戦う理由に挙げても
 あんまり嫌な感じがしないんですよ。照れ隠しに見えるというか。
 (しかも相手の許可がなければ手を出さないし)
 (うそつきのパワーがこの時の約束は守るのも、この流れのためかと)
 この流れがアニメでも省略されないといいなあ。
 (省略されるなら筋肉の悪魔あたりじゃないかと思うのですが)
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『蛇を踏む』読了

2022年08月14日 | 本と雑誌
『蛇を踏む』 川上弘美著/文藝春秋社

同じ作者の『センセイの鞄』が好きだったので、ずいぶん前に購入した本。
ハードカバーです。帯に「芥川賞受賞」とあります。

私は、芥川賞を受賞した作品を(たぶん)読んだことがなかったので、
なるほど文学を芸術に高めるとこうなるのか、と思いました。
さっぱりわけがわからないけど、何が起こっているかはわかる。
踏まれた蛇が女に化身して晩ご飯を作って待っていてくれるんだけど、
煮物は食べられても刺身には箸がつけられない、とか、
なんか「そうでしょうね」という感じがしたりします。

表題作で受賞作の「蛇を踏む」より「消える」や「夜惜記」の方が
わけのわからなさでは上で、特に「消える」は土俗的なようで
舞台は巨大団地だったりするので、なかなかに怖かったです。
一方、なんとなく『宝石の国』を思い出したりもして、
つまり理詰めで理解しようとするのはナンセンスなのだろう、
と思ったりしたのでした。
一応ネットのレビューをちょっと読みましたが、
たいていの人が私と同様キツネにつままれていたので、安心しました。
一番面白かったのが当時の芥川賞選考委員の選評
今まで興味なかったけど、こんな風にすべての選評がまとめられているんですね。
しかもこれ、非公式サイトなんですよ。すごいなあ。
いまは川上弘美さんが選考委員に入ってらっしゃるのも、ここで気づきました。
時の巡りを感じました。
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おばさんの読む『チェンソーマン』(おまけ)

2022年08月10日 | 本と雑誌
原作は第2部が始まりましたし、アニメの概要も明らかになりましたし
いろいろと盛り上がってきた『チェンソーマン』。

第1部は、完結してから一気に読んだので(その前に予防線は張りまくったし)
こんな風に毎週おっかなびっくり読むというのは、なかなか新鮮です。

さて、第1部に関しておまけで書きたくなったことですが。

前回「お墓参りから銃の悪魔の再襲来までの時間経過」について
 書きましたが、ほかの方の感想で「季節がめちゃくちゃな世界」と
 いうのを読んで、なるほどそういう読み方もあるか、と思いました。
 (悪魔が日常的に襲来してくる世界で季節だけ規則正しいとかおかしいわけで)
 お盆から9月12日までだったら、時間経過としてはちょうどいいですよね。
 お盆に雪が降ってますけど。
 
・全巻読む前、各巻の1話目だけ(無料だから)読んでいた時期に、
 好きだったのが10巻の1話目(第80話)でした。
 マキマさんの犬たちへの声のかけ方とか、犬の名前がスイーツなところとか、
 お茶の種類を列挙して「どれがいい?」と聞くところとかが特に。
 あの回でマキマさんがより好きになったくらいの勢いだったんですよ。
 …まさかその直前と直後にあの所業だったとは。
 連載で読んでいた人はこの回をどんな気持ちで読んでいたんでしょう。

・最近、仕事絡みで読んだ本に「マズローの欲求5段階仮説」が出てきて、
 これデンジくんじゃん! デンジくん第1部を通して、低次から高次へ
 欲求が駆け上がっているじゃん! と思いました。
 作者が直感的に描いたのか、研究して描いたのかはわかりませんが、
 なんかすごいなあ、と(仕事そっちのけで)感心してしまいました。

現在ほかに読んでいるマンガは『SPY×FAMILY』です。
懐かしさと新しさが混在していて楽しい作品だと思います。
こちらは6巻で止まっているので、夏休み中に追いつきたいです。


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