Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ザクリエイター/創造者」

2023年11月04日 23時40分04秒 | 映画(2023)
大悪党は誰だ?


おもしろいと思った。もともと近未来モノは好きである。世界の描写にひとクセあるとなお良い。

本作では冒頭で、過去の記録映像の形で舞台設定が紹介される。

AI技術の発展は人間の生活を豊かにするものと信じてきたが、AIはロサンゼルスに核爆弾を落とした。それ以来、米国はAIを徹底的に排除しなければならないと180度方向転換し、いまだAIとの共存を続けるアジア地方と激しいつばぜり合いを続けていた。

ロボットと言われていたころから必ずあったディストピア設定であり、意外性はないが分かりやすい。更にAIという要素を除けば、世界の分断自体は、意外性どころか現在進行形の構図と何ら変わりないことが分かる。

主人公のジョシュアは、かつて米軍所属時にAI開発の中心となっている集落に潜入し、地域社会とすべてのAIを束ねるニアマタと呼ばれる指導者を捜索し抹殺する特殊任務を担っていた。

しかし彼は当地の女性・マヤと本気の恋に落ちてしまう。そのマヤは米軍の突然の攻撃に遭い絶命し、ジョシュアは任務を完遂できずに帰国。以降、米軍はジョシュアの記憶からニアマタにたどり着く道を探っている。

本作の最大の特徴は、米国映画なのに米国がものすごい悪役に位置付けられているところである。社会派作品なら分かるが、どちらかと言えば娯楽寄りの映画でこの設定はかなり潔い。

何より上記の米軍の攻撃というのが悪役そのもの。まるで宇宙人が地球を侵略しに来たかのような巨大飛空艇(ノマド)からミサイルを照射し、集落ごと一気に焼き払うのである。

米国は、AIの技術開発が暴走したことにより人間に攻撃を加えてきたと言うが、渡辺謙演じるAIのハルンは「核爆発は人間がコマンド入力をミスしたことによるものだ」と主張する。

実際に画面に登場するAIたちは決して好戦的なわけではなく、自分たちの存在を脅かす対象に最小限の防衛をしているに過ぎず、この時点で勧善懲悪が完成する。

当然ニアマタは善の心を持っており、彼女が心血を注いで作り上げた最新のAIは、世界の争いを止めることができる能力を持つ子供の姿をしたAIであった。

「私たちはただ自由が欲しいだけ」というAIを執拗に駆逐しようとする米国。ここまではっきり見せられるとどうしようもないが、翻ってみると、似たような話が現実にもあるけど、そちらはそう単純じゃないよねってところがまた興味深い。

映画の中で「AIは機械なんだぞ、なぜ感情移入する?」という場面が冒頭と終わりの方に二度登場する。確か冒頭はジョシュアが言う方で、二度めはジョシュアが言われる方だった気がするが、観ている側も明らかにストーリーにつられてAIに肩入れしていることに改めて気づく。

映画は分かりやすく作られているからこれで正解なのだろうけれど、現実社会で簡単に答えを決めてしまって良いのだろうか。世の中だいたいのことは、イチかゼロで決められるものではないはず。

世の中、もう少し譲り合いや謙虚な心を持てないものかとつくづく思う。ただ、米国は米国で問題だけど、対抗グループがまた放っておいたら際限なく増長しそうだから困ったものなわけで。

本作でのAI開発側の中心が「ニューアジア」とされていたのは、製作側の趣味もあったのかもしれないが妙味があった。一見貧しそうな農村に先端技術が溶け込んでいる世界って、意外と将来ありそうな気がした。

ただわが国は、この手の問題で米国と異なる側に付くことはないだろう。クレジットに一切出てこなかったが、やはり米国の対抗馬となるのはあの国に違いない。そしてそのニアマタがどんな意図をもってAIの開発をするかといえば・・・。

(90点)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「テイラー・スウィフト: TH... | トップ | 「人生に詰んだ元アイドルは... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(2023)」カテゴリの最新記事