脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

長期間追跡した脳機能テスト(小布施町と豊科町)

2011年03月07日 | 二段階方式って?

毎年恒例の小布施町「脳リフレッシュ教室交流会」へ行ってきました。
直前に小布施町のI保健師さんから活動のまとめが届きましたから、目を通してみました。
素晴らしい結果ですから、お知らせします。
小布施町では「ボケのない町」を目指して、「脳のリフレッシュ教室」という名称で「ボケ予防教室」を平成 14年から開始しました。各行政区に一つづつという目標を立てて、最初に始めた地区が山王島 (左グラフ)翌年開始したのが北部(右グラフ)でした。その古参地区の結果です。
教室開始時に脳いきいき度チェックを実施してありますので、その結果と、直近の脳いきいき度チェックの結果を比較したものです。

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感動的ではないですか!
7年も8年もたっているのに、脳機能は改善している人が8割もいる!
維持するだけでも十分喜ばしいことといえるのに。

実際に小布施町に伺って、顔なじみの皆さんにお会いするたびに
「表情もいいし、お変わりなくお元気だなあ」とは感じていました。
でも、実際にこのようなデータを見せていただけると、単なる「感想」がゆるぎない「確信」に替わります。このことが、「認知症予防教室には脳機能テストが必須」ということにつながるのです。

高齢者が、何かやる時、何かというのは趣味でもボランティアでも散歩でも家事でも何でもいいのですが、「究極のところ、ボケ予防!」と思っていることがほとんどです。そう思いながら「こんなことでホントにボケは予防できるのだろうか?」という疑問からも逃れられない・・・
その時にこのようなデータで「あなたの脳の働きは、こういう状態です。8年前より若々しくなっています。ついてはどのような生活をされましたか?脳をいきいきと使うその生活が、この若さを生み出しているのですよ。これからもその生活を続けていくように頑張りましょうね」と言われたら、自信を持って毎日が送れると思いませんか。

小布施町での去年一年間の全教室の平均です。Photo

改善群が減って、維持群が増えています。
このことはどのように解釈すればいいのでしょうか?
一番簡単な解釈は
「教室に参加したことで、生き方や生活ぶりが大きく変化して、その結果脳の使い方が大きく代わり前頭葉が活発に動くようになった。その人たちは当然改善群となる。
1年間だけでは、生活のやり方が大きく変わり得ない人がいる。その人たちが維持群となる。
教室には参加しても、よりシビアな生活上の変化や心配事が勃発して、その条件に負けてしまって、脳を生き生きと使わない生活が続けば脳機能は低下してしまい、低下群になる」さてこれでいいのでしょうか?

続けて、長野県豊科町のデータをお見せしましょう。たまたまこのデータも相前後して手元に届きました。
豊科町は「脳の健康教室(ボケ予防教室)」を平成9年から開始しました。日本でも、最初期に始まった教室です。各行政区に一つづつを合言葉に保健センターががんばりました。半年指導しては自主活動で継続するというシステムです。
平成17年に合併、安曇野市となりました。その合併の直前に活動のまとめということで、教室開始時と終了時に脳機能テストが実施できた人313人のデータです。(3年から8年間の経過観察群。グラフのラベルは間違い)Photo_2                                         

対象人数が、小布施町に比べて約10倍です。
改善群の割合が減って、やや維持群が多いですが、低下群は小布施町に比べて半分しかいません。
3年間しか教室を実施していないところも混じっていますから、このデータは小布施町から導き出された、
「1年間より長期間教室を行ったところの方が脳機能がよくなる」という結論と見事に一致しています。
さらに喜ばしいことに、次のようなまとめも見せてくれています。Photo_5 Photo_6                         

 

 

 

 

 

 
見にくいグラフですが、横軸が教室の継続期間です。
長期間になるほど、改善群の割合が多くなり(左グラフの青い部分、グレイの部分が維持、黄色の部分が低下)、長期間になるほど脳機能そのものの成績が上昇する(右グラフ、白が開始時で赤が終了時の成績)

この情報は高齢社会日本にとって素晴らしい情報でしょう!
認知症の問題は生き方の問題です。
高齢者がイキイキと楽しく生きる道に進むように、保健師さんたちは自信を持って生活指導をしてください。