脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

「チコちゃんに叱られる」にエイジングライフ研究所のグラフ登場

2018年11月08日 | エイジングライフ研究所から

「チコちゃんに叱られる」というNHKの番組をご存知ですか?
先週放送の「チコちゃんに叱られる」に私たちが大切にしている基礎的な資料が登場しました。

このグラフは前頭葉機能が、20代にピークを迎え後は直線的に低下していくということを意味しています。
肺活量、免疫力、骨塩量などの身体機能、種々の運動能力が、ピークがどこにあるにしろ若いころにピークを迎え、その後は加齢とともに緩やかに低下していくことは、まさに皆さんの実感だと思います。見た目、肌や髪の毛など容姿も同様ですね。
脳機能だけが、いつまでも成長を続けていくということはないのです。
前頭葉機能の説明は、その働きが複雑なだけに説明しにくいのですが、人間だけにしかない特有の働きなのです。「脳の司令塔」とか「その人らしさの源」とか「脳の最高次機能」というような表現ではどうでしょうか?
主な前頭葉の働きを具体的にあげてみましょう。

この前頭葉機能に着目することが、エイジングライフ研究所の主張する認知症の早期発見には不可欠なことです。
脳機能から見ると、人が生きるということは、三頭立ての馬車に例えるとわかりやすいかもしれません。デジタル情報担当の左脳、アナログ情報を担当する右脳、そして体を動かすことに特化している運動領域。これらは大脳表面2ミリしかない大脳皮質が担当しています。
脳機能から言えば脳の深部中心にある脳幹(呼吸や消化や体温調節など、生きていく時のもっとも基本的な働きを担っています)やそれを取り囲む形の辺縁系(本能に相当する機能です)に比べるとはるかに高次な機能です。
この左脳や右脳の働きを認知機能といいますが、ここですらほとんど人間だけにあるといってもいいほどの高次機能なのです。脳の場所から(脳の)後半領域とも言います。
が、下図を見てもわかるように、どんなに立派な馬を用意しても(どんなに立派な後半領域を持っていても)、御者がいなくては、馬車は目的地に到達することはできません。その御者の働きをするのが前頭葉です。

最初のグラフは、前頭葉機能のうちの「意欲、注意集中力、分配力」にターゲットを当てた検査成績の結果ですが、これらの機能は前頭葉機能の中でもベースとなる働きです。状況を判断して自分の行動を決めていくときには必ず発揮される機能なのです。
縄文のビーナス(長野県諏訪市尖石縄文考古館)

さて、「チコちゃんに叱られる」に話は戻ります。
テーマは「なぜ中高年男性はおやじギャグを言う?」
そしてその答えは「脳のブレーキがきかなくなっているから」
その解説に、上記のグラフが使われました(当然、事前に使用許可のお願いがありました)

番組でどのように解説されたのか、紹介をしておきましょう。
「側頭連合野に年齢とともにより多くの語彙がたまっていく(それでも50代がピーク)。
若い時にはおやじギャグの語彙を思いついても、前頭葉の抑制がかかるために口にすることはない。
中高年になると、語彙の数がさらに増加している場合でも、低下が始まっている場合でも、前頭葉機能(抑制力)が低下してきているのですぐに口に出てしまう。」
ドラマ仕立てのシーンあり、脳のイラストや、神経伝達の様子の動画、そしてグラフなどを駆使して解説されていたために、説得力のある番組に仕上がっていました。おもしろく拝見しました。

50代をピークとする「おやじギャグを生み出す側頭連合野の発達」(番組表現)のグラフはハーバード大学からの出典。
20代をピークに低下を続ける「感情をコントロールする前頭葉の働き」(番組表現)のグラフはエイジングライフ研究所からの出典。
このように「前頭葉機能」が注目されることは、ちょっとうれしい出来事でした。
実はこのグラフ、以前NHKBSプレミアム「偉人たちの健康診断」でも使われ、「チコちゃんに叱られる」でも近々また使われるのですよ。




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