脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

Webを使ったコミュニケーション

2023年05月08日 | エイジングライフ研究所から
スマフォをためらっている友人たち(高齢者(笑))がいます。
「今更ねぇ~」
「結局、難しくて使いこなせなかったって聞くし」
「怖いことが起きたらいけない。法外な請求が来るとか」
「何かに巻き込まれたらいやだし。ほらフィッシングとか」
「もともと、電話でいいというのが信念だから」とまで言う人もいます。
5月に入った庭の花。小鳥の餌のひまわりの種から咲きました。

私はFBにも参加しブログも書いています。メールもラインも検索も使っていますし、Chat GPTにも挑戦してみました。
最近ちょっと違う効能を感じたことを報告しましょう。
長男がかかわっている会社が、沖縄県で興味深い事業を展開しています。
世界最先端Wi-Fiセンシング技術を使って、つまりマイクやカメラを使用せずに一人暮らしの高齢者をみまもるというものです。具体的には手のひらサイズのセンサーを室内に設置するだけで活動や睡眠を検知し、その結果を離れて住んでいる子供世代は24時間365日共有することができるというものです。
フランソアジュランビル

この「やさしいみまもり」というキャッチフレーズをもつ実証事業は、平成3年度の3市から平成4年度には沖縄県内12市町村まで広がっています。沖縄県全体の65歳以上一人暮らし世帯の60%を超えるところまで広がっているそうです。
このパンフレットがわかりやすいのですが、いつものようにここにアドレスを貼り付けたら読んでいただけるかどうか、やや不安。私の知識はこの程度です(笑)
アヤメ(でいいのか?)

この試みは、究極的なことを考えると孤独死を防ぎうるという目的があると思います。
けれどもそれを目的にしていないことは、パンフレットを見ればよく伝わってきます。自助、共助、公助の言葉がたびたび出てきます。
自助のイメージは、睡眠の質の低下に気づいた家族が受診を進め病気の発見につながるという感じでしょうか。
共助はこの活動を通して地域コミュニケーションの増加を図り、地域のつながりの再構築化をめざす。沖縄にある「結」の精神を取り戻すという言い方もできると思います。
公助は、これらの積み重ねで限りある公費をより有効に使おうとする考えです。
アルベルティーナ

モニター参加された方の感想に興味深いものがありました。
高齢者からは「みまもられていて安心」とか「自分の生活を振り返ることができる(全然動かなかったなど)」の感想が聞かれたそうです。離れて住む子供は「状況がわかって安心」ということは当然ながら「見守っている実感がある」さらに興味深いことに「コミュニケーションのきっかけになる」「連絡が増えた」という感想がみられたということです。
アンジェラ

「コミュニケーションや連絡が増える」状況は、間違いなく高齢者の脳を元気づけます。もちろん生のコミュニケーションの方が表情の読み取りや動作からの印象など脳が活性化される領域は広いのですが、お互いに気持ちはあってもほとんど連絡もなく過ごしている状況と比べると雲泥の差。
日頃の出来事を聞いたり、評価したり、励ましたり、無音な状態とは比べようもなくかかわることができます。「みまもり」の先には「かかわり」が待っていたということですね。
これは大きな自助努力です。この「かかわり」は認知症予防になりうるからです。「家族によるかかわり」から「地域によるかかわり」に発展させて行けたら、その可能性はさらに広がります。
ヒマラヤンポールムスク

私的な報告をつけたします。Webを使ってコミュニケーションを楽しんでいる具体的な報告です。
たまたま長男の趣味が生け花で、池坊を長くやっています。
月一度のお稽古日には長男や友人の皆さんの作品がFBにあげられて、ちょっとした小作品展。花材だけでなく池坊の精神のようなものも気づかされることがあって楽しみにしているのです。
生け花と無関係ではないと思いますが、長男はよく目についた植物(主に花)の投稿をします。
特に身近な野の花だと「私も探してみよう」とワクワク感いっぱい。うまく見つけられたらとても満足して、珍しいお花の時はメールで報告します。一言二言の会話で特別長く言葉を交わすわけではありませんが、このようなコミュニケーションのあり方はなかなか味があるものだと満足しています。(上の2枚がFBの写真、下一枚は私が撮りました)
ホウチャクソウ

キケマン

シャガ

ちょっと考えてみてください。
長男が写真を撮ってFBにあげることは簡単なことです。
ところが私がWebを使えないなら当然それを見ることができない。もし私に見せようと思ったらプリントアウトして、封筒に入れてあて名を書き切手を貼って郵送しなくてはダメ。現役で仕事している息子にそのような手間をかけさせることは忍びないから私の方から遠慮するでしょう。
花を通じたコミュニケーションのせっかくのチャンスを、みすみす逃してしまうのです。
セリバヒエンソウ

キランソウ

沖縄のみまもり事業はWi-Fiを使った新世代の事業で、高齢者はみまもられている状態といえるのですが、このWebの世界で高齢者が受け身になる必要はありません。今報告した長男のFBの花の写真は、とうぜん私宛ではないのに、その情報を勝手に受け取り散歩の目的にしたり、目にした植物がFB上のものと同一か検索してみたり、並べて眺めて満足したり、時には「伊豆にもありました!」と報告したり…私が勝手にWebの世界の情報を使って遊んでいるということですね。
たまたま、いま長男はアメリカ出張中で、いつものように風景、乗り物、食べ物などたくさん写真がFBにあげられます。もちろんアメリカの植物も。見たこともないものもあり、名前は聞いたことがあるものもあり(ハックルベリー。検索したら『ハックルベリーフィンの冒険』が出てきて懐かしさに浸りました)、ほとんど日本のと同じかと思われるものもあり(フウロソウやトクサ)。私の興味と一致してくれているとはいえ、ちょっとした海外旅行みたいです。
ハックルベリー

Webに関しては使いたいことが使えるだけでいいのですから、高齢だからという理由でせっかくの便利な世界に足を踏み入れないでいるのは惜しいと思います。

by 高槻絹子


ピンクパンサー

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