脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

米沢市「なごみの部屋」の実践報告4-認知症カフェ(なごみCafe)

2016年12月10日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

「なごみの部屋」研究会の報告が続きます。ここで使っている画像も、発表の前に私が目を通したパワーポイント原稿からのものです。(パソコンからだとパワーポイントから読み込んだ画像がきちんと見えますが、iPadからだと見えないものが混じります。訂正できないのです。ごめんなさい)
最後の発表は認知症カフェ「なごみCafe」の活動報告です。


「認知症カフェ」という言葉は、最近になって目や耳にしますが、そもそも何なのでしょうか?

厚労省のホームページから調べてみました。
「認知症カフェ」で検索すると「認知症高齢者の現状(平成22年)」が出てきました。その1ページにありました。

「 認知症カフェとは、認知症の本人、その家族、専門職、地域住民な ど誰もが参加でき、和やかに集うカフェ。
○1~2回/月程度の頻度で開催(2時間程度/回)
○通所介護施設や公民館の空き時間を活用
○活動内容は、特別なプログラムは用意されていなく、利用者が主 体的に活動。
○効果 ・認知症の人 → 自ら活動し、楽しめる場所 ・家族 → わかり合える人と出会う場所 ・専門職 → 人としてふれあえる場所(認知症の人の体調 の把握が可能) ・地域住民 → つながりの再構築の場所(住民同士としての 交流の場や、認知症に対する理解を深める」
道路のタイル。米沢の味。Apple

認知症カフェ実施状況
平成25年度より始まった施策で、、平成26年度は「41都道府県280市町村にて、655カフェが運営されている。設置主体としては、地域包括支援センター、介護サービス施設・事業所が多く見られた」ということがわかりました。

平成28年度予算案の概要
54ページのものですが7ページ「第3の矢 『安心につながる社会保障』(介護離職ゼロ)」の「働く環境改善・家族支援」の中にありました。
「認知症カフェの設置や、ボランティアによる認知症の人の居宅訪問などを推進」予算は57億円。
道路のタイル。米沢の味。Beef

今回、先行した三つの発表を見ると明らかなように、「認知症」と言っても重症度が考慮されないと目的もそこでの活動も全く違うものになってきます。ボケてしまって重度にまで至った場合は、なかなか「カフェでくつろぐ」状態は難しい。とすると介護している家族のための場のほうが近いかもしれません。もちろんそれも必要です。

もう一つは、よく誤解されている「側頭葉性健忘(このブログのカテゴリーの中からお読みください)」の人たちが楽しめる場ということもあるでしょうね。
早期認知症かどうかの相談もできるという目的もあるのですが、本当の早期発見はエイジングライフ研究所が提言している二段階方式を使わなければちょっと無理です。
道路のタイル。米沢の味。Carp
 

というような情報を踏まえたうえで、聞いてください。
なごみの部屋から「今度、認知症カフェを始めました。もちろん、『お達者サロン』のように元気な方を中心に、本当の予防や改善のお手伝いをしたいのです。何か助言は?」という質問がありました。
「他とは違う、カフェをやるのですね」
一線を画している!

「お達者サロン」は「生き生きとした脳を維持し、改善まで図る」を目的にしていますから、脳機能検査は必須ということが参加者の皆さんに納得されています。

「認知症カフェ」では検査をすることはちょっと難しい。
折衷案として「立方体透視図模写」をしてもらうことにしました。「立方体透視図を見ながら描く」というこの検査は、実は前頭葉なしでは不可能な「平面に描かれた図形を立体視する」「ふた方向に見える図形を一つの方向に抑制する」機能のチェックに使われるものです。

そのことによって「脳機能」に目を向けてもらえるだろうということが一番の目的、その検査を継続することで改善の様子も探れるかもしれないし、改善しないときの働きかけの工夫にもつながるかもしれないという二番目の目的ももって、受付時に描いてもらうことにしたのです。
今回の発表はそのまとめです。
最初に描けなかった方が描けるようになった具体例数例を抽出して、日付を入れてスライドで表示しました。
 

次の回で描ける人、数か月後になって描けるようになった人など、目に見えるまとめ方ですから参加者の方々も、びっくりしていました。

描けない本人がびっくりすることもしばしばです。

形が整ってくる人もいます。

もともと「認知症カフェ」でこのような検討をすることは想定外のこと。
ただ、なごみの部屋が開設する「なごみCafe」だったら、「脳機能を生き生きさせて、認知症にさせない、本当の意味で軽い認知症を改善させる」ためという目的意識があって当然でしょう。そのために一番無理なく抵抗も感じにくい前頭葉検査としての「立方体透視図模写」を実施したという経緯です。単なる報告にとどまった点はありますが、「なごみCafe」でこういうことが起きているということは納得してもらえたようでした。
発表者が特に強調し、会場からも声が上がったのがこのケースでした。高齢でも脳機能は改善するのです。
 



 


 


 


米沢市「なごみの部屋」の実践報告3-認知症対応型通所介護事業所「ぷちハウスなごみ」

2016年12月10日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践

「なごみの部屋」研究会の報告が続きます。ここで使っている画像も、発表の前に私が目を通したパワーポイント原稿からのものです。(パソコンからだとパワーポイントから読み込んだ画像がきちんと見えますが、iPadからだと見えないものが混じります。訂正できないのです。ごめんなさい)
3番目の発表は「認知症対応型通所介護事業所」からの発表でした。
 
この「認知症対応型通所介護事業所」を利用する人たちの脳機能レベルの内訳です。中ボケレベル(MMS23~15)の方が28%、大ボケレベル(MMS14以下)の方が50%、MMS測定不可が22%・・・
MMS測定不可ということは、単語や短い文章の復唱もできないし、物の名前も言えません。もちろん時や所の見当識は皆目わからない状態です。

「デイサービスセンターコスモス」の方々の脳機能レベルと比べると、「ぷちハウスなごみ」の28%の人たちが中ボケレベルなのでその層だけが多少は重なるかもしれません。今回発表したケースでいえば、MMS23点以下の2名は、失語症のためにMMSテスト点数の低下があったわけですから、生活レベルでいえば中ボケではありません。つまり「ディサービスセンターコスモス」利用者の方々と 被ることがない程、「ぷちハウスなごみ」を利用する人たちは脳機能の低下が進んでしまっているということです。

発表者のS木さんは、穏やかに噛んで含めるような説明をしてくれましたが、日々担当者はどんなに大変かと、気が遠くなる思いでした。

この下のスライドからは、大変さと苦悩までも伝わってきます。

働きかけのレベルが、「デイサービスセンターコスモス」とは全く違いますね。もちろん「お達者サロン」とは比べるべくもありません。それでも多少の改善はありそうです。脳機能がよくなったというよりは、本能により近いところで安全が認識された程度だと思います。どれほどの努力が注ぎ込まれたか考えるだけでも、もったいない!もっと早くから対応していれば…と歯噛みする思いに駆られます。
 
改善の傾向はあるのですが。半端じゃないほどの努力が注がれても、この程度しか改善できません。この努力をもっと前の段階で使うべきでしょう。
これだけ重度になっても、MMSをやる意味はあります。「残っている機能は何か」を知ることができるからです。

ここに掲げられた目標はその通、り正しいです。でも、MMSが測定できなくなってなお「その人らしさ」はあるのでしょうか?
もう一つの問題は介護者のストレスをどのように解消するかということも避けては通れないでしょうし、
 
厳しく解説を加えましたが、介護されている方たちの苦労を思うと胸が詰まります。さいごにS木さんが「先の発表のように、はっきりとした改善の報告ができたらと思います。努力はこれからも継続していきますが、すっきりと改善することは難しいと思います」と言われたとき、不覚にも涙が出そうでした。
認知症は前へ前へと、人生をさかのぼっていけば、必ず正常に社会人として生活していた時代があるのです。「お達者サロン」の皆さんのようにその時から予防しなくては。万一脳機能の低下が加速されても(行きつくところは大ボケです)、早めに見つけて生活改善すれば、脳機能は元気を取り戻すことが可能です。


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