脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

右脳と左脳は得意分野が違う-その1

2016年06月05日 | 右脳の働き

最近、自己表現の方法について考えさせられることが続きました。(リンクはFBのアドレスです)
発端は5月一か月間、伊豆高原で開催されたアートフェスティバル。今年は友人のY子さんが初参加したので何度か彼女のギャラリーに足を運びました。鎌倉在住の大島智さんのビーチコーミング(砂浜に打ち上げられた漂着物の収集)された貝殻やガラス片を使った作品展でした。(素敵な編み物作品とコラボ)
作品は写実的でまた自立しています。もちろん貝殻以外は一つも使用していないし、そのままの形を生かして制作されています。

大島さんとお話しする機会がありました。
「どうやってこの作品たちは生まれるのですか?」
「よく聞かれるので、考えてみたんですけど…まず頭の中にイメージができているんですね。そのイメージは自然に沸くときもあるけど、沸かすために図鑑を見たりすることもあります。結構がんばって集中的に見たりもしますし…
そうしておくと、貝殻を手にした時に、『これはあの部分!』とひらめくというか…」

ビーチコーミングの収集物は、たまたま手にすることができた、まったく偶然のたまものですから、そこから発想をしていくよりも、すでに自分が持っていたイメージにマッチングさせたほうが、作品になりやすいということをいろいろに言葉を選びながら説明してくださいました。
とても説明しにくそうに話される大島さんに「ウーン、納得できたような気がします」とあいまいに答えてしまっている私。

子供の勉強科目で言うと、図工、音楽、体育などということになりますが、右脳が主に担っていることをテーマに話し始めると、なかなか思ったことが伝わらないというもどかしさを感じることは当たり前なのです。
右脳は、一言でいえばアナログ情報を受け持っています。言葉では表現しにくい色や形や音楽。その先には言語化しにくいけれども、今まさに感じている感情などの情報担当です。
イメージ作りは右脳が担当しています。それを説明するときには、どうしても左脳の言葉の力を借りなければいけません。そこは情報処理が右脳優位な人ほど苦手な分野になりがちです。
イメージに沿って制作したものを、説明するのではなく見てもらうときは、制作者は「私の意図した伝えたいものはその作品に込めてありますから、みてください」という言葉さえ不要で、「どうぞ」と提示するだけでいいのです。右脳から右脳へのバトンタッチで、左脳は介在していません。
受け手の右脳の能力に応じてわかってもらえます。もしかしたら、それは制作者の意図したこととずれたものであるかもしれません。それでも、作品がみる人の心に(右脳)届いたことにはなりますね。

子供の教科で言えば、国語、算数、理科、社会などは正答はひとつですから、このようなデジタルな情報は評価が簡単です。正しいかどうか、何点かどうか、客観的に簡単に評価できます。
いっぽう、図工、音楽など、アナログ情報を対象にする領域は、評価がとても難しいものです。「どう感じているか」は左脳経由で言葉を使って表現してもらうしか、外からはわかりませんから。そうすると言語能力が高く表現力がある子どもの方が、高評価につながってしまいます。
または、「どう感じているか」は脇に置いておいて「作者について」とか「構図や彩色の工夫は」とか、ことばや知識で答えられる質問に変えて評価しようとします。その時、右脳がこの作品のアナログ情報をどうとらえたかは、彼方へ行ってしまうことになるでしょう。

アナログ情報を担当する右脳と、デジタル情報を担当する左脳という二極で、お話を簡単に進めてきました。
もちろん、私たちには前頭葉があります。毎度おなじみですね。
情報をどうとらえて、アナログ情報処理が得意な右脳経由の情報を重視するか、デジタル情報処理が得意な左脳経由の情報を重視するか、決定するのは前頭葉です。
その時どのような決定を下すのかまで含めて、どのような人生を生きてきたかが、「十人十色」と言われる前頭葉の「色」を決めるのです。
絵画や音楽を楽しめるかどうか、どんな人生を送ることができるか、子どもの時からの日々の積み重ねですねえ…


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