保健師さん経由で、側頭葉性健忘の方の家族のことばが送られてきました。
ちょっとまとめておきましょう。右欄カテゴリーの「側頭葉性健忘」も参考に。
ロマンティック街道ローテンブルクの看板
70歳を超えたお母さんが、側頭葉性健忘。
付添いの娘さんと二人での相談だったそうです。娘さんの年齢は書かれていませんでしたが、40代でしょうか。
まず最初の驚きは、前頭葉測定のためのかなひろいテスト。
なんとお母さんの方が正答数が多かったそうです。
お母さんはテキパキ型。娘さんはジックリ型という本来の前頭葉の色合いが違いますから、どちらが優れていると単純には言えません。
ただ、この相談にいらっしゃった70歳代の方の前頭葉は何十歳も若いレベルを保ってテキパキと回転していることは間違いがないでしょう。
そしてこの前頭葉が活発に働いていることこそが側頭葉性健忘の特徴です。
ご本人は、表情豊かで笑顔も多くみられ、薄く口紅も引いてあったし何よりおしゃれだったそうです。
シャツが珍しいものだったので
保健師「今日の服装はどなたが?」
本人「もちろん私が。いつでも出かけるときの洋服は私が選びます!」
娘「それだけでなく、私のことも世話してくれます。今日も、『一番下のボタンは外したほうがラフな感じで、麻のシャツの感じを生かすわよ』っていうんですよ。言われたとおりにしたら、『ほらっ、こちらのほうがずっとすてきになった』こういうことはよくあります。
もともと、とてもおしゃれではありましたが、そういうところはまったく変わっていません」
保「前頭葉を元気なままに維持させるためには、本人が喜ぶところへの外出も効果的ですよ」
娘「そうですか。
先日、季節ですからバラ園にいっしょに行きました。
まあその感動ぶりといったら!私より何倍も感動している感じで、連れて行きがいがあります。
お花は好きですねえ」
保「花でも景色でも感動できるということが、前頭葉が元気な証拠で、新しい記憶がいくら入らないとしても、認知症ではありません。認知症は記憶障害が出てくるときには、もう前頭葉機能は大きく低下しているものです」と解説を重ねたそうです。
娘「景色といったら、ちょっと前にこんなこともありました。
車で出かけていたのですが、お天気が崩れて霧だか靄だかが湧き上がってきたんです。
私は『運転しにくいなあ』と思っただけだったのですが、母はまるで詩をそらんじるようにその景色のことを表現しました。
今ちょっと言えませんが・・・」
保「ものを創作するのも前頭葉の働き。芸術的なことも、工夫や機転を利かせることも、みんな前頭葉の働きです」
娘「ラジオを聞いていて、俳句の紹介があったのですが『なぜさくらんぼ?』って母に聞いたら『さくらんぼが二粒一緒に生っているように二人一緒に生きてきたという意味でしょ!』
言われたら『なるほど』って思ったんですけど、こういうのも回転が速いという証拠ですね」
娘さんが話している間中、お母さんは「イヤイヤ、そんなこと・・・」と恥ずかしそうに聞いていたそうです。
小ボケのレベルになると、前頭葉の現状認識力が低下しているので、場違いに唐突に話し始めたり、大きなあくびをしたりするのですが、それにひきかえ、なんと大人の社会人としての振る舞いができること!
側頭葉性健忘のもう一つ特徴があります。
それは動作が機敏だということです。手先の器用さも失われませんし、何かやるときにも丁寧な仕事ぶりが見られます。
もちろん、入室の様子、テスト中の動作、この方もその例外ではなかったそうです。
でも直前のことが覚えられません(ごくたまには覚えられることもありますが、ほとんど無理なことが多いです)。これが側頭葉性健忘なのです。