「福岡・北九州 新春の旅」覚え書き(その9)九博篇<上>のつづきです。
えっさほいさと坂を登ると、九州国立博物館(九博)の全貌が目に飛び込んできました。
デカイです。高いです。格というか権威を感じさせる雰囲気の東京・京都・奈良の国立博物館とはまるで雰囲気が違います。
モダンで奇抜な外観ですけれど、ガラスに周りの山々が写って山並みがつながって見えるし、曲線が自然に仲良くしているようで、これは21世紀の国立博物館としてアリだと思いました。
とくに、かなり近づかないと、建物自体があることすら判らないというのがまた、アリです。
中は当然ながら天井が高くて、空港のターミナルビルの風情。
木材をたくさん使っているところとか、障子のような壁が日本的でこれまたよろし
特別展は2階、平常展は3階で開催されていて、エスカレーターで昇っていきます。
特別展は「京都 妙心寺 禅の至宝と九州・琉球」。
特別展の入口には、ポスターにも使われている狩野山楽「龍虎図屏風」から虎の大アップ。寅年の今年の幕開けにふさわしいですねぇ。
ところが、「妙心寺展」の顔ともいうべき「龍虎図屏風」が展示されていなかったのですよ。
この「妙心寺展」は1月1日~2月28日の2ヶ月にわたる会期を6期に区切って、その間、5回も展示替えが行われるのだとか。
目録に載った作品を全部観ようと思えば、6回も出かけなければなりません。
私のように、旅行のついでに来た観客にとっては、おみくじのようなものです。
特定の作品を観るためには、出品目録(上の写真がPDFにリンクしています)をチェックしてからお出かけくださいね。
私の場合は、「龍虎図屏風」も白隠慧鶴の「達磨図」も観ることができず、残念でした
さすがに、「妙心寺展の顔」の「虎」がいないことには苦情が寄せられているらしく、館内には「『龍虎図屏風』の展示期間に再来場される際、入場券の半券を見せると、前売料金(一般:1300円⇒1100円)で入場できる」といった内容のことが掲示されていました。
でもこのことは九博のHPには書かれていませんねぇ。
もし違っていても私は責任を負いかねますので、直接九博にお問い合わせくださいませ。
でも、その代わり、1月1~17日のみ展示される如拙の「瓢鮎図(ひょうねんず)」を観ることができたのはLuckyでした。
今回の展覧会は「禅」を全面に押し出した展示になっていまして、「瓢鮎図」のテーマになっている「つるつるした瓢箪(ひょうたん)で、ぬるぬるしたナマズを捕まえることができるか」とか、1月11日の「『福岡・北九州 新春の旅』から無事に帰還!」でも紹介したプチ禅カードに出てきた「片手で拍手をするとどんな音がする?」といった禅問答の「問い(公案)」について、気の利いた回答を来場者から募集していました。
私も考えてはみましたが、まともな答えはでてきません…。
やはり、悟りにはほど遠い、煩悩に満ちた人間なんですな、私は…。
ところで、この「片手で拍手をするとどんな音がする?」の公案、何かの本(翻訳本)のエピグラフで読んだ気がしますが、何の本だったのか、さっぱり思い出せません。
もしかすると、「拍手した時の音は右手が鳴った音か、左手が鳴った音か?」だったかもしれません。
ご存じの方がいらっしゃいましたら、どうか教えてくださいまし どうも気になって、奥歯にニラかエノキダケが挟まったような気分なのですよ。
「妙心寺展」で気に入った作品を書いておきましょう。
まず、妙心寺の鐘と太宰府・観世音寺の鐘のペア。
この二つの鐘は、飛鳥時代(7世紀末~8世紀初) に、共に北部九州の同じ工房で鋳造されたものと考えられているそうです。
確かにそっくりです。日頃は京都と太宰府に別れて暮らしている先輩・後輩(きょうだい?)のせっかくの再会なのですから、聴き比べしたいものだ と思ったところ、さすがは現代の国立博物館です。イベントが企画されていました。
鳴鍾会と題して、先週の土日(1月16-17日)の11:00~と13:00~の計4回、二つの鐘をそれぞれのお寺のお坊さんが衝いて、聴き比べる催しが開催されたようです。
予告の貼り紙を見て、このイベントに参加できる人がうらやましかった…
もう一点、心を吸い込まれたのは、熊本県八代市の玉泉寺が所蔵する白衣観音(びゃくえかんのん)像でした。
目録によれば、中国の明代の作品で、作者は「石叟」という方らしいのですが、詳しいことが判りません。
それにしても、これは仏像の範疇を超えている気がします。というか、信仰の対象になる像とは考えにくいのです。この片膝を立てた観音様に向かって拝むよりも、きれいだよねぇ~と鑑賞する方が正しい立ち向かい方(?)のような気がします。
もうひとつ。これは「作品」ではなく、展示の仕方に感心した話です。
1月11日の「『福岡・北九州 新春の旅』から無事に帰還!」に、円形のチラシの写真を載せましたが、あれは妙心寺法堂(はっとう)の天井絵「雲龍図」。さすがに、現役のお堂から天井を剥がして持ってくるわけにもいかず、代わって、布に実物大(だと思う)で「雲龍図」を印刷し、それを展示室の上部に掲げていたのです。
真下から布を見上げれば、実際に妙心寺法堂に行けばこんなのがこんな角度で見られるのか…、と模擬体験できる見事なアイデアだったと思います。
ということで、「妙心寺展」はお終いです。前記の「公案」への答えを見つけられないもどかしさを感じつつ、3階の平常展の会場に向かいました。
つづき:2010/01/24 「福岡・北九州 新春の旅」覚え書き(その11)九博篇<下>