ウィトラのつぶやき

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中国の華為技術の成功の仕組み

2014-06-10 10:55:04 | 経済

中国経済は踊り場に来ていると私は先日のインドのことを書いたときに書いたし、多くの経済評論家もそう書いている。中国は地方都市の権限が強く多くの都市で過剰投資をしたために鬼城と呼ばれる高層ビル群で入居者がまばらのところがたくさんある。これらは待っていれば売れるものではなく、一旦清算せざるを得ないだろう。そのために誰かが損失を被ることになり、損切りをせざるを得ない。これに中国の給与水準が上がって世界の工場と言われた生産拠点が逃げ出しているために、ここしばらくは中国経済は減速せざるを得ないだろう。しかし、日本政府に比べて中国政府はかなりうまい対応をしているように見える。日本だと倒産して自殺者が出たりするとマスコミが大騒ぎして政府がその対応に追われるということがあるのだが中国では政府がマスコミを制御できるという点が大きいと思う。

それで中国経済はこれまでのインドのように停滞していくかというと私はもっと楽観的である。中国人の給与水準が上がったといっても、東南アジアよりは高いかもしれないが、日本よりはまだまだ安い。そして中国の技術水準は確実に日本に追いつきつつある。その代表が華為技術である。華為技術は通信機器の製造メーカであり、NECや富士通と競合する企業である。しかし、技術水準は既に日本企業を確実に上回っており、世界でもトップレベルである。現在、世界のトップはスウェーデンのエリクソンであるが、技術力でも世界2位に位置づけられるといえる。フランスとアメリカ連合のアルカテル・ルーセントやフィンランドとドイツ連合のノキア・シーメンスよりも技術力が上だと思う。あらゆる業界を見ている英国Economist誌も、中国で技術力のある会社というと真っ先に華為技術を上げる。

私は、大分前になるのだが、華為技術と結構付き合いがあった。その時の印象から華為技術の強さを分析すると以下の2点になる。

1.意思決定に夾雑物が無い

 華為技術内部でどのようにして意思決定がなされているのかは分からない。しかし結果として出てくる意思決定はすっきりした感じであるという印象を持っている。リスクがあっても「やってみよう」というような意思決定を逡巡せずできる。その代わりうまくいかないときの方針転換も早い、という印象である。日本の会社だとよく内容を理解していない偉い人が「あれはどうか、これはどうか」と細かいところをつついて確実にもうかるストーリーができないと動かない傾向があるのと大分違う感じがする。創業者の任総裁がそういう人物であることは知っているが、それだけではなく権限が下に降りて、下のほうでもそういったすっきりした判断をしている感じがする。

2.従業員が良く働く

 華為技術には、スペインのシエスタのような昼寝の習慣がある。以前、打ち合わせで華為技術のオフィスを訪問したときに、昼食に出て戻ってきたら、会議室に大勢の技術者が寝袋を持ち込んで昼寝をしていて驚いたことがある。昼寝をして夜遅くまで働くのだろう、と思ったものである。実際、華為技術の開発は非常に速い。この従業員のやる気を引き出しているのが従業員持ち株制度である。華為技術は株式会社ではあるが、株式を公開しておらず株主は全て従業員である。そして持ち株に対する配当は非常に高く、ほぼ利益の全額を配当として分配するそうである。華為技術の利益は巨額であり、外部の投資家に配当が流れることは無いのでこの配当の額も非常に多いという。社内で昇進すればこの株を多く持つことができ、収入が大きく伸びる。会社の利益が上がると自分の収入も上がるので従業員が皆「自分の会社だ」と思ってよく働くそうである。

この株は従業員全員が持てるわけではなく、管理職にならないと持てないらしい。最近は日本人でも華為技術に努めている人が増えているが、外国人は給料は高くてもごく一部の例外を除いて株主にはなれないらしい。管理職にとっては給料を上げるよりも会社に利益が上がるほうが良いので経費の無駄遣いも管理職全員が抑えるという意識になるのだろう。


この華為技術のやり方は資本主義の中で成功するために一つの本質的な方式のように思う。そして日本の風土に合った方式のように思う。日本でも、このような株式公開をしないで従業員株主で回している会社はあるが、大手企業には存在しない。株式公開したほうが資金調達が楽なので会社を大きくするときに株式公開するのが普通なのだが、株式公開しないで従業員の意欲で会社を大きくして一流企業にまでなる会社が日本にも出てこないかな、と思う。



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