ウィトラのつぶやき

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5G移動通信の報道に見るハイプカーブの動き

2019-04-13 18:17:22 | 経済

日本政府が5G移動通信の免許をオペレータ各社に与えたと大々的に報じられている。このニュース自体は大きなことなので報道が大きくてもよいのだが、中身でいまだに「従来の10-100倍の伝送速度」などと言っているので、「いったん広まったハイプはなかなか収まらないものだ」と改めて感じる。

そもそも、「従来の10-100倍の伝送速度」は「できればよいな」という希望であって、現実の技術者で需要があるとも、実際に実現しようとも思っている人はほとんどいないはずである。それが電波免許を出す政府が世界各国集まる場で『「従来の10-100倍の伝送速度を実現」したら電波を割り当てる』と決めたので、技術者が集まって「こうすればできる」という答えを示したのが現在の5G である。理論的にできることを示せばよいので非現実的な実現方法でも構わない。実際のところ現在の5Gの方式は「10倍の周波数を割り当ててくれたら速度は10倍にできる」という当たり前のことに多少色を付けた程度である。

現実にはユーザから見ると新しい周波数帯が割り当てられたので混雑がない、ということ以外は殆どわからない程度の進歩になるだろうと思う。私はだから「5Gには意味がない」などというつもりはなく、電波を移動通信に割り当てるのは大いに意味のあることだと思っているが、それは「伝送速度を10-100倍にするためではない」ということを言いたいだけである。技術的にも意味はあるのだがそれは専門家でないとわからないような細かい意味である。

今回の割り当てでドコモとKDDIは3-4GHz帯にそれぞれ200MHzを貰い、ソフトバンクと楽天は100MHzを貰った。これは通信オペレータにとって大変大きなことである。今まではデモサービスを見せるなど大変な働きかけをして、割り当てられる周波数はせいぜい40MHzという程度だったので、一気に大量の周波数を貰ったことになる。このほかに28GHz帯に各社100MHzずつもらっているが、この周波数帯は使いにくいので価値は3-4GHz帯の1/10以下だろう。

2020年から各社サービスを始めると言っているが、実質的なサービス内容は4Gサービスになると私は思っている。政府に約束したので10%程度は5Gに割り当てる、あたりが現実的なところだろう。この周波数帯を使うとユーザは「速い」と感じる。しかしそれは技術が違うからではなく、新しい周波数帯で混雑していないだけの理由である。

今、5Gはハイプカーブの頂点に近いあたりにいると思う。今年の1月から3月にかけて世界的な展示会で様々な5Gの展示が行われ、そこで「これは大事」と感じられるような4Gとの違いを示すようなものはなかった。それでメディアはトーンダウンするかと思っていたのだが今のところトーンダウンの兆候は見られず、いまだに頂点付近に留まっている印象である。一度作ってしまったイメージはなかなか変わらないものだ、と改めて思う。このまま「期待外れ」という論調は出ずに5Gは立ち上がるのか、来年の今頃は「期待外れ」ということになるのかは分からないが、実態は「4Gに新しい周波数が割り当てられた」のと変わらないことになるのは間違いないと思う。


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