ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

AIの将来像をどうみるか

2019-06-13 15:23:20 | 経済

ここ数年、ディープラーニングが確立してからAIの事業化は着実に進行しており、様々な人が「AIで社会はどう変わる」に関して書いているが、私にとっては今一つピッタリした将来像が出ていないと思うのでここで書いてみたい。

・AIはもはやハイプではない
GartnerのハイプサイクルによるとAIはまだハイプサイクルの上のほうに位置づけられているが、私は既に実用段階に入っており、これから幻滅期に入ることは無いと考えている。もちろん導入に失敗する企業も多数出るだろうが、成功する企業も多数出るので、導入は加速していくと思う。その根拠はDeep Learningによって学習できる内容が格段に広がったからである。

・AIによって雇用が減る職種は大部分だがなくなる職種はごくわずか
2014年、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が発表した論文が「AIによって約半分の職業が無くなる」と大きな話題となっているが、この論文は「雇用が大幅に奪われる」と言っており、奪われやすい職種を特定しているが、私は「職業が無くなる」とは言っていないと理解している。非常に多くの職種でAIにより業務効率があがる、つまり少ない人数でこなせるようになるので雇用が減るだろうがゼロになることは稀だろうと思う。過去にもバスの車掌や電話交換手などは無くなったが、このように消える職業は稀だと思う。逆にAIによって雇用削減の影響を受けない職種もまれだと思う。

・「単純作業はAIで置き換えられ、創造的作業はAIで置き換えられない」というのは違う
良く言われるのは単純作業は無くなるが、創造的業務は大丈夫、という話であるが、これはAIではなく機械化の影響だと私は考えている。例えばチラシをポストに入れて歩くような作業は、AIの影響はを受けることは殆ど無いと思う。チラシそのものが無くなってしまうということはあるかと思うが。
創造的作業はAIの影響を受けないというのも違うと思っている。例えば研究職は創造的職種と見られているが、全ての研究者がいつもアイデアを考えているわけではない。データを整理して傾向を読み取ろうとする作業などはかなりに割合を占めており、こういった点でAIは大いに役に立つ。結果として一人の優秀な研究者がより多くの成果を出せることになり、優秀ではない研究者は職を失う可能性がある。こういった傾向は弁護士、公認会計士、といった業種でも大いにあると思われる。

・どういう職種が大きな影響を受けるかは供給側の立場で見ると分かりやすい
Deep Learningは非常に広い分野で応用可能で、その基本アルゴリズムは分野が変わっても変わらない。具体的な手法は異なるのだが、AIの専門企業などは幅広い分野を狙うことができる。このような場合、どの分野を狙うかと言えば当然事業化しやすい分野を狙う。企業化の際にまず考えるのはメリットが明確になることである。そしてメリットはコンピュータで社員の作業量を削減することである。頭脳作業であれば現在はかなり難しいと思われる作業でも、AIで大幅に作業量を軽減することができる。逆に物理的作業は機械が必要なので人とのコスト競争になる。私は一見複雑で難しいと思われており、職員の給与も高い頭脳作業が最初のターゲットになると考えている。例えば弁護士である。法廷で実際に弁論を戦わすのをコンピュータで置き換えるのは相当期間考えられないが、弁論内容を考えて過去の事例を引くなどはコンピュータ化できる。結果として優秀な弁護士が今の2倍、3倍の裁判を扱うことができるようになり、弁護士の数はかなり減るだろう。

・AIで置き換えられない頭脳作業は扱う情報の幅が広いもの
AIは作業の複雑さに対する対応力では既に人間を超えている。AIができないのはどこまでの情報を与えれば十分かの判断が難しいような分野である。政治的判断などがその最たるものだろう。私は今から20年後くらいには異なる分野のデータを連携させて、より複雑な作業をできるようなAIが実用化されていくだろうと思っている。そのさらに先にシンギュラリティがあるのだろうが、その世界は2045年ではまだ来ないと思っている。


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2 コメント

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「大量データ」と「特徴抽出」から見ると分かりやすいと思いました… (UCS-301)
2019-06-13 19:51:24
影響を受ける分野についてですが、弁護士に加えて医者が考えられると思います。理由は(ウィトラ様の挙げられた)弁護士と同じです。ただし弁護士と異なるのは、(日本では)弁護士の数が過剰なのに比べて医者は大幅に不足していますので、現状では医者を知識量でサポートするツールになるかと考えます。

置き換えられない分野として政治を挙げられていますが、(政治の一部として)経済分野はデータ量がものを言いますので、ある程度応用可能かと思いました。逆に中国共産党政権下のような政治体制では、むしろ利用できるのではないでしょうか。
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ビッグデータの活用とAI (世田谷の一隅)
2019-06-19 13:17:31
AIを論じるには、まずはデータの収集です。これは今まで、計測ができないとか、膨大過ぎて手に余るようなデータの収集も現実的には可能になると思います。インターネットを通じて流通も可能です。

その次に、そのデータの相関関係が、うまくとらえられるかどうか、更に次のステップとして因果関係を解析できるかどうかです。

経済分野でも、人々の感情分野、更には医学・物理の様に今までは計測できないと思われてきたような対象も、センサの開発により、様々な情報・データの収集が可能になりつつあります。(私が少し関係している領域で行くと精密面では体内の細かな細胞単位の組織、マクロ面では地球内部の地層構造等も、非破壊検査の技術進歩により、飛躍的に解明が進んでいます)。

処理技術の進歩も指数関数的です。そして、相関付けと因果関係の分析まで進められれば、私たちの生活に大きな影響が出てきます。

今の技術の範囲でしか活用できない人(サービス提供側として)は、どうしても取り残されるかもしれません。それでも新しい情報やデータが得られれば、それを活用する新しい分野の仕事やサービスが増えるので、世の中の流れに沿って(又は先取りできれば)、それなりの便利さは享受できると思います。

寧ろ、新しい流れに乗れない人を、社会的にどのように救済し、その他の分野で活用するかは、政治的に考えなければなりません。この意味で、中国の様に、一部の独裁的な(専制的な)体制側の人間だけが利するような国家の方が、この分野では先に進みやすいと感じています(怖い事ですが)。
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