真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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ハマスのテロ組織指定とハマス殲滅という言い訳

2024年05月15日 | 国際・政治

 イスラエルの人道に反するガザ地区の攻撃によって、イスラエルを支えるアメリカを中心とする西側諸国の欺瞞性が露わになってきているように思います。バイデン政権のイスラエル非難の言説が、悪質な芝居であることは、現実の対応を見れば、誰にでも分かることではないか、と私は思います。

 特別軍事作戦に踏み切り、ウクライナに侵攻したロシアには、すぐに、軍事的にはもちろん、その他あらゆる分野・領域で大変な圧力をかけ、制裁にも踏み切りました。でも、イスラエルに対しては、言葉だけの非難です。その言葉にふさわしい現実的な対応がほとんどなされていないと思います。弾薬輸出を一時保留し、軍事支援を差し止めるということも、実際は極めて限定的で、あまり意味のない状況だと言われています。

 また、先日、国連総会でパレスチナの国連加盟を支持する決議案が採択されましたが、143か国が賛成したのに対し、アメリカは、イスラエルなどとともに、反対したといいます。
 パレスチナの国連への加盟には、安保理の勧告決議が必要で、パレスチナの加盟をめぐっては先月、安保理でアメリカが拒否権を行使したことから、現時点で実現する見通しは立っていないということです。だからアメリカは、言葉でイスラエルを非難しつつ、現実的にはイスラエルを支えていると言えると思います。
 アラブ諸国を代表して演説したUAE=アラブ首長国連邦の国連大使は、ガザ地区での情勢が緊迫する中、パレスチナの国連加盟を通じて「2国家解決」への道筋をつけるべきだと訴えたということですが、決議に反対したアメリカの国連次席大使は、できるわけがないのに、あくまでも当事者どうしの直接交渉によって事態の打開を目指すべきだと強調したということです。欺瞞的だと思います。

 また、見逃してはならないことは、アメリカをはじめ、カナダ、欧州連合、イスラエル、日本、オーストラリア、イギリスが、イスラエルと敵対するハマスを「テロ組織」として指定していることです。
 でも、ハマスは2006年のパレスチナ立法評議会選挙で過半数の議席を獲得し、内閣を発足させている組織です。わけの分からない組織ではないのです。この時、イスラエルやアメリカが、危機感を表明したということですが、民主主義を否定するような、その植民地支配的な姿勢こそが問題だと思います。

 それは、ブラジルや中国、エジプト、イラン、ノルウェー、カタール、ロシア、シリア、トルコなどが、ハマスをテロ組織とは見なしていないことでもわりますし、ハマスに対するテロ組織としての非難決議は、2018年12月の国連総会では採択されなかったことにも示されていると思います。逆に、パレスチナ人に対するイスラエルの過剰な武力行使に対する非難決議案には、アメリカが拒否権を行使しているのです。
 だから、現在の国際社会は、アメリカに敵対する組織が、テロ組織と指定され、アメリカに敵対する指導者が、独裁者と呼ばれる状況にあるということだと思います。「テロ組織」指定に法的な根拠などないのです。

  さらに、4月22日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のスタッフがイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃に関与したとの疑惑を巡り、UNRWAの中立性を評価する外部グループが公表した報告書も、重大な事実を明らかにしたと思います。イスラエル側から「相当な数のUNRWA職員がテロリストグループのメンバーだ」との主張を裏付ける証拠は提供されていないというのです。(同グループは今年2月に活動を開始し、フランスのコロナ前外相が率いているといいます)。
 にもかかわらず、虚偽の疑いのあるイスラエルの指摘を受けて、UNRWAへの資金拠出を停止した国があり、今なお、停止を続けている国があることも忘れてはならないと思います。

 関連して、米共和党の重鎮といわれるグラム上院議員の広島と長崎への原爆投下正当化の発言も見逃すことができません。
 グラム上院議員は、NBCテレビの番組で、イスラエルへの弾薬輸送を一部停止したバイデン大統領を批判し、「われわれが広島、長崎に原爆を投下して戦争を終わらせたように、イスラエルもユダヤ人国家として生き残るために必要なことは何でもすべきだ」と主張したというのです。
 グラム氏は、原爆投下を「正しい決断だった」と強調、司会者から米軍が戦後、民間人犠牲者を最小限に抑えるために(精密誘導兵器などの)技術開発を進めたことを指摘されると、「くだらない」と切り捨てたといいます。
 加えて、パレスチナの国連加盟を支持する決議案採択で、イスラエルの国連大使が、テロ組織に国家の権利を与えようとしているなどと非難し、小型のシュレッダーで国連憲章が書かれた紙を細断したという行為などに、アメリカやイスラエルという国の「ならず者」的な体質があらわれていると思います。

 国連決議に公然と拒否の姿勢を見せ、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)さえも敵視するイスラエルに、日本が連帯を表明したまま取り消すことなく放置し、国際社会で、ハマスをテロ組織としているアメリカに追随しているようでは、停戦は望めませんし、イスラエルの犯罪に加担していることになると思います。

 このところアメリカの大学で、イスラエルへの抗議活動が広がり、コロンビア大学その他23州の30校で、1500人以上が逮捕されたと、先日、CNNが伝えました。だから、バイデン大統領は、世界で「反ユダヤ主義」が急拡大していると指摘し、「反ユダヤ主義やヘイトスピーチ、暴力の脅しに居場所はない」と戒めたというのですが、まったく的外れだと思います。この戒めは、バイデン大統領による、イスラエルの犯罪行為に対するホワイトウォッシュだろうと思います。なぜなら、学生たちは、ガザ地区におけるイスラエル軍によるジェノサイドに抗議し、イスラエル軍が使う武器や弾薬を製造する企業への投資に反対しているのであって、反ユダヤ主義とは関係がないのです。ユダヤ人を地上から一掃するために、差別や憎悪を煽っているのではないことははっきりしていると思います。イスラエル軍が、ジェノサイドをやめ、停戦にむけて動けば、大学生の運動は終息するのだと思います。

 世界史の窓(https://www.y-history.net)の「インティファーダ」には、下記のようにあります。
インティファーダとは 「一斉蜂起」を意味するアラビア語。インティファーダは1982年にPLOがイスラエルに押さえ込まれて、アラファトがチュニスに移った後に、ガザ地区のパレスチナ民衆の中から自然発生的に始まった。パレスチナ人は大人も子供も女性も石を投げたりタイヤを燃やしたりしてイスラエル軍に立ち向かい、最初の一年で2万人が逮捕され、3百人が死亡した。このような従来と違った民衆運動にイスラエル当局も当惑したが、その背景には「ハマス」や「ジハード」と称するイスラーム原理主義運動の活動家がいた。
 インティファーダのきっかけ ガザ地区最大の難民キャンプ、ジャバリヤで1987年12月6日、ユダヤ人入植者がパレスチナ人の「イスラム戦線」に刺殺された。2日後、イスラエルのトラックが道路をそれてパレスチナ人労働者の車に衝突し、4人が死亡した。事故は入植者の親族による報復だとのうわさが広がり、争議の後、キャンプを包囲するイスラエル軍に「ジハード(聖戦)!」の叫びともに投石が始まった。インティファーダはPLOとイスラーム主義組織の合同指令の下でヨルダン川西岸にも拡大し、大規模な住民蜂起に発展した。
 その「インティファーダ」と呼ばれるパレスチナ民衆の一斉蜂起がきっかけで、パレスチナ解放を目指すイスラーム組織「ハマス」が創設されたという事実は見逃されてはならないと思います。
 だから、ハマスは、バイデン大統領がいうような、「ユダヤ人を地上から一掃しようとする古くからの欲望」による組織などではなく、イスラエルの圧政に抵抗する組織なのです。バイデン大統領の主張は、明らかに歴史の歪曲だと思います。また、バイデン大統領が、「(イスラエルが)独立したユダヤ国家として存在する権利は鉄壁だ。たとえわれわれと意見が異なる場合でも」と語り、イスラエルへの連帯は揺らがないことを確認したというのも、法や道義・道徳を無視した問題の多い主張だと思います。

 もう一つ、どうしても確認しておきたいことは、イスラエルがガザを攻撃するにあたって、「ハマス殲滅」を掲げていますが、実際は、それが「パレスチナ人殲滅」であるということです。ガザ地区を攻撃するイスラエル軍は、ハマスとガザ地区のパレスチナ人を区別してはいないと思います。また、区別できるものでもないと思います。またそれは、リクードの政治家や、イスラエルの元諜報機関トップのアミ・アヤロン氏が指摘していることで明らかだと思います。アミ・アヤロン氏は、朝日新聞のインタビューで、「今、イスラエル人のほとんどは、ガザでの戦争がハマスに対するものであり、パレスチナ人に対するものではないということを、理解していません。パレスチナ人みんなをハマスだと信じているからです。政治指導者も国民も、その『敵』を軍事的標的とみている。これは大きな悲劇です」と語っているのです。
 私たちは、イスラエルの政治家の言うことではなく、現実を見て判断するべきだと思います。イスラエルの政治家の言う「ハマス殲滅」は、自らの攻撃を正当化する見え透いた言い訳で、ほんとうは「パレスチナ人殲滅」を意図していることは明らかだと思います。それは毎日毎日、多くの女性や子どもが殺されている現実がはっきり示していると思います。イスラエルのリクードの政治家を中心とする一部のユダヤ人は、パレスチナ人との混在のない、ユダヤ人だけのイスラエルを実現しようとしているのだと思います。パレスチナ人の土地や家を奪い、畑を奪い、抵抗するパレスチナ人を殺して、悪の限りを尽くしてきたともいえるユダヤ人は、パレスチナ人が混在していると安心できないのだろうと思います。

 だから、アメリカが、強引にハマスを「テロ組織」に指定し、イスラエルがそのテロ組織「ハマス殲滅」を掲げて、実際は「パレスチナ人殲滅」追い出しを意図している構図をしっかり踏まえる必要があると思います。
 また、バイデン大統領のように、イスラエルのジェノサイドに抗議する大学生の運動に「反ユダヤ主義」のレッテルをはることも、許されない誤魔化しだと思います。


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