真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「ハマス」のあゆみと日本の主権

2023年11月14日 | 国際・政治

 現在日本では、岸田政権の支持率低下について、いろいろな議論があります。朝日新聞は社説で
結局のところ、首相の判断の起点が、国民ではなく、総裁再選という自身の権力維持にあると見透かされていることが、政権発足以来最低水準に落ち込んだ支持率が、なかなか反転しない根本にあるのではないか”
と指摘していました。岸田政権が国民のための政治をやっていないという意味で、その指摘は正しいと思います。
 でも、なぜそんな自民党の政権が、戦後長く続いているのか、ということを考えるべきと思います。踏み込んでいく必要があると思います。

 自民党政権では、岸田政権に限らず、呆れるような理由で、次々に閣僚や政務三役など、要職にある人物が辞任に追い込まれてきたと思います。
 また、防衛予算の大幅な増額をはじめとした、国民生活に直結する重要な問題が、首相判断で独裁的に決定されたり、国会の議論抜きで閣議決定されてきており、とても民主国家といえる状況にはないと思います。
 そして、日本人の大部分が勤勉で、まじめに働いているのに、どんどん貧困化が進み、アメリカとの1人当たりGDPの水準の比較でも、差がどんどん広がり、大差が生じていることに、目をつぶってっている政治家やメディアは、主権を放棄して、アメリカに仕える「下僕」になり下がっているように思います。
 なぜなら、日本の富がどんどんアメリカに吸い取られ、また、アメリカの戦略に沿って、日本の政策や予算が決定されていくシステムを受け入れていると思うからです。
 それは、防衛予算の大増額が、岸田首相から防衛大臣や財務大臣に指示されたことにはっきり現れていたと思います。国会の議論や防衛省からの要求で、大増額が決まったのではないのです。バイデン大統領も認めているように、大統領との話し合いで決まったのです。
 また、さまざまな問題が指摘されているコロナワクチンの購入に、日本はいったいどれほどのお金を費やしたのでしょうか。

 さらに、下記のような差別も、いろいろなところでくり返されてきたと思います。
 主権国家としてあり得ないことだと思います。

 最近、ヤフーニュースが、
「猛毒の泡消火剤」PFASを浴びた「米軍基地で働く消防隊員たち」が怒りの告発!「なぜ日本人だけ検査を受けられないのか」《防衛省の驚きの回答》
 と題する記事を掲載しました。

 在日米軍は、PFASを含む泡消火剤については
「16年以降、訓練では使用していない」とし、'23年6月までに、横田基地と嘉手納基地をのぞくすべての基地で交換を完了した”
 と発表しているようですが、問題は
ただ、いま使っていないからといって、安心はできない。PFASは分解されにくく蓄積されやすいため、なかなか消えないからだ。「永遠の化学物質」と呼ばれる。
 ということにあるといいます。
 そして、冒頭の消防隊員は、
”PFASの危険性が指摘されるようになって以降は『1滴でもこぼすな』と厳しく言われるようになりましたが、かつてはいい加減でした。泡消火剤を交換したりする作業は、私たち日本人が素手で行っていましたから
 と語り、多くの消防隊員が、泡消火剤まみれになって働いていたことがある、と証言しているのです。
 この数年、PFASによるとみられる環境汚染が報道され、体への影響が心配になって血液検査を求めているということです。PFASは腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎などのリスクを高めるとされるだけに、血液中にPFASがどれくらい蓄積しているかを現時点で調べておきたいというのです。

 だから、基地従業員でつくる「全駐留軍労働組合」(全駐労)は、防衛省との団体交渉で、日本人消防隊員の血液検査を求めたということです。
 でも、防衛省で基地を担当する地方協力局の労務管理課が、
消防庁や航空自衛隊にも確認したところ、消防隊員が定められた手順・規則に従って機材などを扱えば、消火剤等が体内に取り込まれることはないと理解している。また米軍でも、安全対策を考慮した手順・規則に則って活動することになっている、と説明を受けている
 と答え、応じなかったといいます。
 しかし、”その説明は実情とかけ離れたものだ”、と現場の消防隊員は具体的に証言しているのです。
 そして、 ”いったい、どれほどのPFASを体内に取り込んだのか。想像もつかないからこそ調べてほしい”と求めたというのです。

 全駐労は、防衛省との団交で、米兵との二重基準についても詰め寄ったといいます。
三沢基地では、PFASによる健康への不安を抱いた消防隊員が基地内の診療所で血液検査を求めたが、「日本人は受けられない」と断られた。嘉手納基地の消防隊員は「同じように泡消火剤を扱っていた米軍人は軍病院で血液検査を受けている。なぜ私たちは受けられないのか」と漏らした。”
 とあります。
 こうした声に、防衛省は
 ”米軍の血液検査はデータ収集・サンプリングのためのもので、健康上の問題を特定したりするためのものではない。また、受けるかどうかは任意だとの説明を米側から受けている

 と説明したといいます。
 そして、結局、防衛省は'22年12月、血液検査は時期尚早との意向を伝えたというのですが、ほんとうは、それが事実に反する言い訳だったことが、後に判明します。下記のようにあります。

 ”しかし、その5ヵ月前、727日付で出された米国防総省マニュアルを読むと、消防隊員である兵士への血液検査は、アメリカの国防政策の方針を定めた国防権限法('20)に基づいて行われる、と記されている。

 PFASの中でも代表的なPFOSPFOAPFHxSなど6種類について定期検診の一環として調べ、健康への影響の評価は定まっていないとしながらも、「PFASファクト・シート」とともに結果は本人に伝えられる。なお、血液検査を受けないことも選べるが、その場合は署名した書類の提出が求められる。

 だから、全駐労の紺谷智弘・中央執行委員長
同じ作業をしていて日本人だけ血液検査が受けられないというのは納得できない。引き続き防衛省に働きかけていきたい
 と話したというのですが、この防衛省の担当者は、日本の自民党政権と同じように、完全にアメリカの方針に基づいて働いていると言えるように思います。主権国家の公務員とはいえないと思うのです。
  またヤフーニュースは、米軍基地などで発生したPFASが、水道水の水源を汚染していることも取り上げ、
『「女労働者7人の2人の子供に奇形」「6つの大きな疾患に関連」…東京・多摩地区で検出された《有機フッ素化合物・PFAS》の「ヤバすぎる実態」と「汚染の真相」【日本全国《PFAS》汚染マップ】』では、PFASの危険性と、検出された場所について詳報している。”
 とつけ加えています。

  アメリカに仕える「下僕」になり下がった自民党政権だから、先日、上川外相がわざわざイスラエルまで行って、”ハマスの攻撃はテロ”などと語り、戦争犯罪が指摘されているのに、”イスラエル国民との連帯”の意を伝えたのだと思います。アメリカの”お使い外交”を象徴しているように思います。

 ハマスは、インティファーダが始まったとき、ムスリム同胞団闘争組織として設立されたのであり、「ハマス」はイスラエルの不当な支配に抵抗する組織としてスタートしたのです。ハマスは、不当な支配を逃れて「自由」を手にするために命がけで独立を目指している組織である、という側面を見落としてはならないと思います。
 法を犯すような逸脱行為があったとしても、執拗にイスラエルに抵抗するハマスの思いは、受け止める必要があると思います。
 だから、「1日4時間の戦闘休止」などでなく、「即時停戦」を求めるべきだと思います。

 また、イスラエルの主張する「ハマス壊滅」などありえないと思います。それは「パレスチナ人皆殺し」という主張と変わらないように思います。現に、イスラエルの人たちの中に、そういう主張をする人がいるといいます。恐ろしいことです。だから、「即時停戦」しかないと思います。何度もくり返してきた悲劇を、再びくり返すようなことをしてはならないと思うのです。
 
 下記は、『「和平合意」とパレスチナ イスラエルとの共存は可能か』土井敏邦(朝日戦勝537)の「Ⅳ 闘争の論理」から、「ハマスの歩み」を抜萃しました。
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                     Ⅳ 闘争の論理

                      ハマスの歩み

 ハマスとは何か
 「イスラム抵抗運動」というアラビア語の頭文字を取った「ハマス」という組織は、インティファーダが発生した直後の1987年12月、「ムスリム同胞団の闘争部隊」として登場した。ガザ地区で出された12月9日付の最初の声明の中で、ハマスは自らをこう説明している。
一、ハマスはムスリム同胞団の闘争部隊である。
二、シオニストの敵に対して、暴力にはいっそうの暴力で対抗することを示威する。
三、イスラムこそがパレスチナ問題の実際的な解決策である。
四、空虚な平和的解決や国際会議を追い求めて、エネルギーと時間を無駄にすることを拒絶する。
五、敵との闘争は、パレスチナ人民の目標達成までの、信仰・存在・声明(生命?)の闘争である。
六、当面のいくつかの目標──被拘置者の釈放、彼らに対する虐殺の停止、入植の拒絶、国外追放または移動禁止の政策の拒絶 占領と市民に対する暴虐の拒絶、悪徳と堕落を(イスラエルが)広めることを拒絶。不当な重税の拒絶」(小杉泰「現在パレスチナにおけるイスラム運動」『現代の中東』NO17、アジア経済研究所)
 また、88年8月に出された「ハマス憲章」は、ハマスの目標を「虚偽を失墜させ、真理を優越せしめ、郷土を回復し、モスクの上からイスラム国家の樹立を宣言する呼びかけをなさしめ、人びとと物事のすべてを正しい位置に戻すこと」(九条)とし、さらに「パレスチナの地の一部でも放棄することは、宗教の放棄の一部である。またハマスの愛国主義はその信仰の一部をなす」(13条)として、ハマスが現在のイスラエルを含むパレスチナ全土の解放をめざすことを明言している(小杉・前掲)。

 ムスリム同胞団
 ハマスの母体である。「ムスリム同胞団」(以下、「同胞団」)とは、1928年にイスラムの大衆運動としてエジプトで誕生した組織である。40年代にはエジプト国内最大の政治集団となったが、ナセル政権時代に大弾圧を受け壊滅状態となった。復活をとげたのは、67年の第三次中東戦争でのエジプトの大敗、さらに70年のナセル大統領の死以降である。
 かつてエジプト統治下にあったガザ地区でも45年にこの同胞団の支部が誕生した。だが、イスラエルによる占領後、同胞団は住民の支持を広げることができなかった。社会のイスラム化を最優先させ、宗教教育や福祉活動を主な活動とした同胞団は、共産主義勢力をも含む世俗的なPLOとも敵対した。  
 一方イスラエル側もPLOの勢力を切り崩す手段として、同胞団のモスクや宗教学校への資金援助などによって、同胞団の活動を積極的に支援してきた。86年には、当時ガザ地区軍政府長官であったイスラエル軍のセゲブ将軍が「我われはモスクを通してイスラム組織に資金援助をしてきた。それはPLOを支持する左派勢力に対抗する勢力を作り出すためである」と発言している(ヒシャーム・アハマド『ハマス』、参照)。このような動きが「同胞団はイスラエルを利している」という批判を呼ぶことになった。80年代半ばの調査によれば、同胞団への住民の支持率は10%程度に過ぎなかったといわれる。

 闘争の開始
 しかし、この同胞団もインティファーダが始まると、その闘争組織として「ハマス」を設立した。パレスチナ問題という政治課題と取り組むためには、より一般的なイスラム復興を目指す同胞団とは違う独自の組織が必要とされたためである。
 しかしイスラエル側は、インティファーダの初期の段階では、まだハマスの実態や目的がつかめず、外国から占領地内のPLOへの資金の流入を阻止することに全力をあげる一方、ハマスへの資金の流れをあえて遮断しようとはしなかった。つまりイスラエル当局は間接的にハマスを助けていたのである(アハマド・前掲、参照)
 ハマスはその憲章の中で、「敵がイスラム教徒の土地を占領すれば、あらゆるイスラム教徒にとってジハード(聖戦)は義務」(15条)であり、また「イスラム抵抗運動の視点からは、ナショナリズムは宗教信仰の一部」であり、「ジハードこそがこのナショナリズムの最高の発揚である」(12条)と、民衆に「ジハード」を強く呼びかけている。ただハマスの言うこの「ジハード」は、単なる武装闘争だけを意味するのではなく、学者や教育者、ジャーナリストなどを動員して、教育を変革し、西洋の思想的な攻撃の影響を払拭することや、イスラム教徒に「パレスチナ問題は宗教問題である」との認識を植え付けることなどを含めた「イスラムのために敵と戦うための行為すべて」を意味していると解釈される(小杉・前掲、参照)。

 豊富な資金源
 イスラム抵抗運動の豊富な資金源はどこなのか──ハマス指導者ザハール教授にこの質問をぶつけると、「我われにはザカート(喜捨)と呼ばれるイスラムの資金がある。イスラム教徒は収入の2.5%をイスラム運動体に寄付します。外国政府など公的な組織からではなく、個人からの援助です。集められたこの金が貧しい人びとに配られるのです」という説明が返ってきた。しかし外国から莫大な援助資金援助を受けていることは、既に周知の事実である。
 サウジアラビアがかつてPLOに援助していた資金が湾岸戦争後、ハマスに回されているといわれる。サウジはハマスの母体であるムスリム同胞団に以前から援助を与え続けてきた。その既成ルートがサウジのハマス援助を容易にしている。
 イランとハマスの関係についても、さまざまな情報が飛び交っている。エジプトの未確認情報によれば、イランは国内で3000人のハマス活動家を軍事訓練する一方、3000万ドルの資金援助を与え、テヘランにハマスの事務所を開くことを承認したといわれる。
 またハマスはヨルダンの政府から援助を受けている。ハマスがガザ地区や西岸におけるヨルダンの影響力の維持に貢献していること、またヨルダン国内において無視できない政治勢力であるムスリム同胞団との良い関係を維持するためにハマス援助が有効だという判断がある。ヨルダンは何百万ディナー(1ディナーは、1.6ドル)という金額を毎年占領地のイスラムのワクフ(宗教寄進財)の財団やザカート委員会に援助を続けている。
 さらにスーダンもハマス支援に熱心で。自国内でのハマス活動家の訓練を認め、首都ハルツームのムスリム同胞団からハマスへの資金援助も認可している。
 このようなアラブ諸国のハマス支援の背景には、アラブ各国の指導者の指示どうりに動かないPLOの勢力を弱めるためにハマスの力を借りたいという計算があるという見方もある(アハマド・前掲書、参照)。


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2 コメント

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Unknown (yoshi)
2023-11-18 14:49:21
私もハマス壊滅などありえないと思います。即時停戦を求めます。
プロパガンダでしょうね (syasya61)
2023-11-18 22:15:26
yoshi様

 ハマスのメンバーが、外部から入り込んだテロリストで、パレスチナ人と区別ができるのであれば別ですが、イスラエルの不当で不法な支配に抵抗するパレスチナ人であることを踏まえれば、壊滅させることはできないと思います。今回イスラエルはまさに”10倍返し”とも言える殺戮をしていますが,親兄弟や知人・友人を殺されたパレスチナ人は、ハマスの後を継いでハマスのメンバーとして、戦いを続けるだろうと思います。終わることはないと思
います。

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