真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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ゼレンスキーネオナチ政権のホワイトウォッシュ問題

2024年05月03日 | 国際・政治

 私は、またか、と思ったのですが、朝日新聞は、”「純化」するロシア番外編”という枠で、”祖国は「ファシズム」に落ちた オルロフ氏”と題する長文の記事を掲載しました。オルロフ氏 は、ノーベル平和賞を受賞したロシアの人権団体メモリアル元幹部で、今年2月に軍の信用失墜の罪で禁錮2年半の有罪判決を受ける前に、朝日新聞のインタビューに応じたということです。

 そのいくつかをとりあげたいと思いますが、その前に、朝日新聞は、ノーベル賞の権威を利用して、読者に反露的な意識を持たせようとしているようなので、ノーベル平和賞について、確認しておきたいと思います。 

 ノーベル賞は世界的に権威のある賞だと思いますが、ノーベル「平和賞」に関しては、問題があると思います。多様な考え方が存在する政治的な問題に関する評価は、そんなに簡単にできるものではないと思うからです。

 現に日本の佐藤栄作元首相は、非核三原則やアジアの平和への貢献を理由としてノーベル平和賞を日本人で初めて受賞しましたが、佐藤首相の密使としてキッシンジャー大統領補佐官と沖縄返還に関して水面下で交渉した若泉敬京都産業大教授(当時)が書き留めた事実は、驚くべきものでした。 

 1972年に返還することが決まった6911月の日米首脳会談で、アメリカが、返還後の沖縄に、緊急時には核兵器を持ち込むという密約の詳細な締結経緯が明らかになったからです。重大な事実を伏せて、アメリカと密約を交わした佐藤栄作首相が、ノーベル平和賞に値するのでしょうか。

 また、イスラエルのラビン首相(当時)は、オスロ合意に調印し、ヨルダンとの平和条約にも調印した功績により、アラファト議長や、ペレス外務大臣と共にノーベル平和賞を受賞しています。でも、ガザのパレスチナ人は、受け入れることができなかったと思います。彼は、1980年代、国防相として、先頭に立ってパレスチナ民衆のインティファーダを弾圧した人です。当時彼は、「石を投げる者の手足を切れ」などと強硬な弾圧を指令したといわれているのです。そして、調印したオスロ合意も、その後進展せず、事実上形骸化してしまっています。それなのに、ノーベル平和賞受賞に値するのでしょうか。ノーベル平和賞という政治的な問題の評価は、公平な判断が難しく、また、時間が経過しないと正しい評価ができない側面もあると思います。さらに言えば、さまざまな価値観や思想、各国の歩んできた歴史や政治戦略などを踏まえ、ノーベル平和賞の受賞者を選定することは難しく、強国の影響を受けざるを得ないのではないかと思います。

 でも、朝日新聞は、ノーベル平和賞を受賞した人だから、読者は疑うことなく、言葉どおり受け止めるだろうと考えて、こうした記事を掲載しているように思います。以前、ノーベル文学賞を受賞した作家、スベトラーナ・アレクシェービッチ氏の文章も目にしましたし、世界的に著名な人のロシア敵視の記事も、これまで何度か目にしています。すべてを否定するつもりはありませんが、私は、読者を欺瞞する側面があることを見逃すことができません。

 そのノーベル平和賞受賞者、オルロフ氏のインタビューのやりとりは、下記のようなものでした。私は、質問内容も問題だと思いますが、オルロフ氏の答えが、すでに西側諸国で共有されている反ロ思想の言い換えだと思いました。極論すれば、アメリカと手を結んで、政権転覆を意図する人の、一方的な内容だと思ったのです。 

── ロシアではウクライナ侵攻について、実質的に議論が禁じられています。

 ファシズムでは必ず反対意見の弾圧が起こる。(反逆罪で禁固25年となった反政権派活動家の)カラルムザ氏は批判以外は何もしていない。(反政権派指導者で、216日に獄死した)ナワリヌイ氏も完全に合法的に反政権派を組織した。(ソ連の独裁者)スターリンの時代に近づいている。

 でも、ナワリヌイ氏が完全に合法的に反政権派を組織したかどうかは疑問だと思います。ウクライナの政権転覆にも、アメリカは深く関わっていたので、ナワリヌイ氏が、アメリカの支援を受けて反政権派を組織しいた疑いは拭えないのではないかと思うのです。

 なぜなら、ナワリヌイ氏の妻ユリヤ氏は、ナワリヌイ氏の死後まもなく(およそ一週間後)、アメリカのバイデン大統領と面会しています。そして、バイデン大統領は面会した際、「“遺志”は実現する」と強調したことが報道されていたからです。

── ウクライナ政権を「ネオナチ」とするプーチン氏の持論の背景は。

 ロシアには「偉大な帝国」の神話があり、ウクライナはロシアの一部で、ロシアが生まれた母なる都市がキーウだ。帝国に戻したい理由を説明するには、悪のイメージが強いナチスの存在は(政権にとって)「素晴らしい神話」になる。

 こうした「偉大な帝国」の神話に関する内容も、ウクライナ戦争の解説に当った大学教授やジャーナリストなどから、くり返し聞きました。でも、こうした主張を、クライナ政府とネオナチの現状に関するホワイトウォッシュであると指摘している人や組織があることは、まったく触れられることがありませんでした。

 日本でも、在日ロシア大使館が、”日本の公安調査庁がウクライナの国家組織「アゾフ大隊」をネオナチ組織と認めている”とSNSで発信し、それが拡散したことがあったといいます。だから、公安調査庁は、ホームページで公開している「国際テロリズム要覧2021」から「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」というような記載を削除するということがあったのです。

 その「アゾフ大隊」が、2014年以降のドンバスに対する爆撃や 侵攻するロシア軍に対する抵抗で存在感を示したというのは、多くの人が認めていることだと思います。だから、クライナ政府とネオナチのホワイトウォッシュ問題の指摘は無視されてはならないと思います。

 Wikipediaには、”侵攻後の「ウクライナ政府に関する警告」”と題して、下記のような記述があります。

米国でのユダヤ系最大紙「フォーワード」では、調査報道で知られるベリングキャットのスタッフでライターのマイケル・コルボーンが2018年時点で以下の発言をしている。

ウクライナの極右(ネオナチ)はたいした問題ではないと数えきれないくらいに言われてきました。

「すべてクレムリン(ロシア政府)のプロパガンダですよ。その話をすることは、プーチンをアシストすることです。他の国にも極右の問題があるじゃないですか。なぜウクライナだけをとりあげるのですか?」

私はそう言われてきました。

しかしウクライナには極右の問題があり、それはクレムリンのプロパガンダではありません。”

  2022224日からのロシアのウクライナ侵攻後、ロヒンギャ問題やQアノン問題などを追うルポライターの清義明は、報道機関によるウクライナ政府とネオナチの現状に関するホワイトウォッシュ問題を寄稿し、「この論考がプーチンの侵略戦争を支持したり、正当化する目的で書かれていないことを明記しておく。」とした上で以下と記述した。

ウクライナの極右(ネオナチ)の問題が、単にロシアのプロパガンダとみなされてしまっている。

しかし、これが他の国の極右やネオナチの事情とかなり違ったクリティカルな状況だということは、強調しておくべき話なのだ。

 これを先に概略として記しておくと、次のようになる。

・ウクライナでは極右・ネオナチと呼ばれる勢力が政権や行政や司法に関与していること。

・その極右勢力が軍事化したのみならず、国軍勢力の中核におり、「世界で唯一ネオナチの民兵が正式に軍隊になった」国であること。

・その様々なセクトが一般人への軍事訓練などを続けながら勢力をウクライナの政治から文化まで拡大しつつあったこと。

・彼らは民主主義的な価値観を肯定しておらず、さらに政権のコントロールを必ずしも受け入れておらず、将来的に民主主義への敵対勢力となる可能性があること。

・世界の極右やネオナチのハブ的存在になっており、ISのように世界的にネットワークを広げて、コントロール不能になることすら考えられること。

・またウクライナの過去のナチス協力をめぐる「歴史修正主義」がウクライナを席巻しており、すでにイスラエルをはじめ、関係する国々から強く批判されていたこと。

 もちろん、今はそれを「部屋に象がいる」と、見て見ぬふりをしておくべき時なのかもしれない。このウクライナ戦争がどのような結果になるかは今はわからないからだ。

 だが、ウクライナが、欧米の国々のように単にネオナチ思想をもつものが軍隊にいるとか、極右政党が議会に勢力を確保しているというようなレベルではなく、黄色信号を超えた危険水域に達していることを今のうち理解しておくのは悪いことではないはずだ。

 同年314日、米紙ワシントン・ポストは「プーチンを支援する目的ではない」とした上で以下とした。

 世界の過激派を追跡する諜報機関SITEでは、ウクライナ戦争に関連して、白人民族主義者やネオナチによるオンライン活動の急増に気づいています。

 ここ数週間でアゾフ連隊に参加する意思を表明した何百人もの人物の中には、ネオナチとして知られる人物が複数人含まれています。

 たとえば、アゾフの募集チャットグループのアメリカ人メンバーである「MD」は、同胞をウクライナの大隊に参加させようと何度も試みていました。

 「行きたいアメリカ人はいる?向こうへ行くグループを募集できるんだ」と彼は語っていました。

 私たちは、「MD」がTelegram上の最もサディスティックな極右過激派チャットのメンバーでもあり、そこで彼は米国にネオナチ民兵を設立することを提案していることを突き止めました。

 

 こうした指摘を完全に無視するオルロフ氏や、オルロフ氏の主張をノーベル平和賞受賞者として持ちあげて掲載する朝日新聞は、意図的に客観的事実に目をつぶっていると思います。

 また、朝日新聞に限らず、西側諸国のマスメディアが、ロシアの特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)後、ゼレンスキー大統領を持ち上げ、ウクライナアゾフ大隊の”「ホワイトウォッシュ」一色”なのは、戦後世界を影響下においてきたアメリカが、急速にその覇権と利益を失いつつあり、ヨーロッパ諸国に影響力を拡大しつつあったロシアを孤立化させ、弱体化しなければならない状況に追い詰められて、ゼレンスキー政権の「ホワイトウォッシング」に目をつぶらざるを得ないかったからだ、と私は思います。 

── ロシアは政権が決めた価値観に「純化」しつつあるように見えます。

 全体主義では、国家は一つの価値観を押しつけ生活全般に侵入する。ロシアの新しい全体主義を、私は21世紀のファシズムと呼ぶ。

 この指摘は、ロシアだけに当てはまるものではないと思います。政治的な側面では、日本もすっかりアメリカの世界戦略に基づく考え方に純化されつつあると思います。ウクライナ戦争に関する報道は、ほとんど同じで、ロシアを支持したり、アメリカやウクライナを批判したりするメディアはありませんでした。あらゆる組織や団体から、ロシア人を排除することに反対するメディアもなかったと思います。 

 先日、朝日新聞は、「学長にモノ言わせぬ国では」と題する教育社説担当の増谷文生氏の文章を掲載しました。下記はその一部です。

国立大が法人化されて20年がたった。学長たちは、この間の国の大学政策をどのように評価しているのか。確認してみようと、国立大の学長86人を対象にアンケートを実施した。

 調査を通じて、改めて実感したことがある。それは、国立大の学長の多くが、国にモノ申すことを過剰なまでに恐れるようになったことだ”とありました。

 さらに、

コメントを記事で使いたいと連絡すると、多くの学長が匿名を希望した。ある旧帝大の学長は、「個人的に答えただけ」として、匿名でもコメントの活用を承諾してくれなかった。別の有力大学の学長はコメントどころか、「学生教育」や「地域貢献・地域連携」の進み具合を尋ねる質問にどう答えたかも含め、37問全回答について匿名を希望した。

 国から独立した法人のトップが、国に堂々と意見を言えない。これが実態だ。”

  先だっては、国に政策提言を行う特別機関「日本学術会議」が、新会員として内閣府に推薦した法律・歴史学者ら6人の任命について、菅首相が拒否する問題もありました。政権の政策や価値観に反する考え方の人間は排除し、自民党政権の考えや価値観を押し付ける日本が、”全体主義では、国家は一つの価値観を押しつけ生活全般に侵入する。ロシアの新しい全体主義を、私は21世紀のファシズムと呼ぶ。”などと批判できるのでしょうか。現実をしっかり見つめてほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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