Wilhelm-Wilhelm Mk2

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「呪いのデュマ倶楽部」

2005-04-17 | Weblog
監督ポランスキー=主演ジョニーデップのコンビで撮られた映画「ナインスゲート」の原作です。非常に読み応えがありました。こういった「知的遊戯小説」は私の好みの一つなのですが、作者の下調べと知識量が半端でなく、引き合いに出される引用文献の数が多いほど燃えてきます。生きているうちに知らなきゃいけないことはまだまだ多いなと思わされるのです。本書の内容は前述した「三銃士」の初稿を巡るミステリーと、映画の主題でもあった悪魔を呼び出せると言う稀覯書を巡るミステリーが絡みあっていく話です。中世における悪魔学(学問的な)についての蘊蓄の披露が膨大なのですが(興味深い)、いわゆるファンタジーな場面は一つもなく、おどろおどろしいオカルトを期待している人には肩すかしだと思います。私は逆にそこが気に入ったのですが。あと、三銃士の人物配置をきちんと知らないと、登場人物同士の会話内容について行くのは難しいかな。本書には、主人公を助ける「悪魔(サタン)」自身と思われる美女が登場するのですが、彼女の発言が非常に興味深いです。(彼女は普通の人間で魔法とか使ったりしません。鼻血をだしたりします。)

「君はだれなんだ?」「悪魔」と彼女はいった。「恋する悪魔よ。」
「勇気にだって代償が必要なの。神様に立ち向かうにはうんと勇気がいると思わない?」
「(彼=サタン)に従ったものの多くは、服従か自由か、創造主か人間かの選択の時だって理解しなかったの。」
「何百日も何百晩もなんの慈悲も望みも無く戦ったわ」「それが私のプライドの唯一の源よ、最後まで戦うことがね。ついに私は、戦いを終え、冷たい孤独な永遠のような寂しい荒涼として中を歩いている自分にきづいたの。」

これらは、ミルトンの「失楽園」の影響だと思いますね。天上界での「政争」に破れた天使。天国も人間界と一緒ってことですね。

この話は「本」もまた主人公の一人なわけですが、私は西欧の書物文化には非常に興味があります。革張りの表紙、厳選された紙、フォントの選択と配置、版画、挿絵。世には愛書家とかビブリオマニアといわれる古書蒐集家がいますが、気持ちはわかりますね。

2 コメント

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すごいですね (hiro)
2005-04-17 22:38:42
wilhelmさんの知的守備範囲はすごいですね。私も、わりと中世、ルネサンス期のヨーロッパの歴史の裏話みたいなのは結構好きですよ。小説仕立てだと、恋愛が微妙なスパイスになっている感じのが好きですね。今年はフランス料理をやっていることですし、フランスに関して少し掘り下げてみたいと思っています。
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歴史を知るってのは (wilhelm)
2005-04-19 12:55:40
重要ですよね。最近、この年?になってよく思います。芸術・文学にしても歴史背景を知らないと楽しむものも楽しめないし、食事もそうでうよね。知らないことを「知る」ということは、人間の特権だし、人生で一番の楽しみなんじゃないかと思う今日頃ごろです。
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