Wilhelm-Wilhelm Mk2

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十文字

2013-09-23 | Weblog
へうげもの最新刊から覚書。この漫画は細かな史実や逸話をうまく組み合わせており、たいへん勉強になる。
大井戸茶碗「十文字」:小ぶりにするために、織部があえて大振りの名物を割って継いだという井戸茶碗。
・大河内久綱:まったく知らない幕臣の登場。調べてみたら松平伊豆守の父だった。知恵伊豆も驚くほどの生真面目な勘定奉行だったらしい。作中でもそのように描かれている。
・猪熊事件:乱交好きな公卿の猪熊教利とその一味がおこした朝廷の醜聞事件。激怒した天皇が全員に死刑を申し渡すが、幕府が裁定を覆し、主犯の猪熊こそ打ち首だが、その他の公卿は遠島処分となった。公家に対する幕府の介入を招いた事件で公家諸法度制定につながる。朝廷側の死刑裁定を幕府が緩めたという点が面白い。
・硫黄島:猪熊事件の何名かはこの島に流されたが、この「硫黄島」はアメリカとの激戦地だった「いおうとう」ではなく、鹿児島県の島「いおうじま」。
・織田左門:織田有楽斎の嫡男。徳川に反旗を志すリーゼントの傾奇者で描かれており、駿府城の放火をチンピラに指示している。史実では上記の猪熊事件に関わり浪人となるらしい。このあたりのエピソードも含め、終幕の大阪の陣へ向けて「傾奇者・左門」がフォーカスされていくのだろう。史実によると大阪の陣では父の有楽斎とともに大阪方に加わるが、夏の陣前に父と共に城を退去し(自分が総大将になれなかったためとか。傾いてるね)、余生は有楽流の風流人として過ごした。
・淀君:大阪城落城のとき、実はまだ45歳だった。結構若い。
・お江の方:淀君の妹で徳川秀忠の正室。信長の姪にあたる。徳川家光の生母である。徳川将軍の歴史で正室が将軍生母なのはお江の方だけらしい。つまり家光には織田直系の血が入ることになる。が、家光を育てた乳母は明智の血筋の春日局。お江は次男の忠長を寵愛したらしいが、忠長は秀忠死去後に家光一派に誅殺される。お江も秀忠および息子達が上洛時に急死するが死因は不明。近年の発掘調査では当時には珍しく火葬であったとのこと。春日局派(明智派)による誅殺で死因を隠すためか?との陰謀論あり。このあたりの織田vs明智裏抗争も想像すると楽しい。豊臣殲滅劇の真相は織田直系の血をひく淀君や秀頼を滅することにあったのではないかと勘繰る。

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