goo

「美の求道者・安宅英一の眼-安宅コレクション」

2007-09-24 | ア-トな話し
安宅産業が崩壊して30年経つそうだ。ついこの間のような気がする。
安宅コレクションは住友銀行を中心とする住友グループ21社によって大阪市に寄贈され、その時に作られた東洋陶磁美術館は開館25周年を迎えた。
実は、一度も行った事がなかった。
東洋陶磁という馴染みのない世界でもあったからである。
今回、国宝・油滴天目茶碗も展示されるということなので出かけた。
天目茶碗の中で、曜変天目茶碗の国宝は日本にわずか3個しか残っていない。こちらは以前に藤田美術館で出会った。ここ
油滴天目茶碗の方は、国宝としていくつか存在する。


ちょっと小ぶりの茶碗である、関白秀次、西本願寺、京都三井家、若狭酒井家などに伝わってきたものらしい。これは栞にしたものだが、メタルフレームと相性も良く、写真としても良い。
もう一つの国宝は、飛青磁花生である。



コレクションは1000点あまりあるそうだが、今回展示されているのを見るだけでもかなりの数である。
中でも、青磁の美しさは格別、日本人には、この優しい色合いがなんとも言えない。

今回秀逸のコーナーは、「安宅コレクションに夏を盛る」でした。
いくら名作とはいえ、料理を盛ってこその器です。
家庭画報の特集で、安宅コレクションの何点かに、実際に料理を盛ろうという企画。料理の担当は、大阪なら当然という「船場吉兆」
主として写真展示ですが、いやはやお見事です。
安宅英一さんも使ったことがないかもですね。



goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

私はフェルメール

2007-09-24 | ア-トな話し
フランク.ウイン原作の「私はフェルメール」を読んだ。
原著名 I WAS VERMEER。小林頼子・池田みゆき【訳】

タイトルの絵は、フェルメールの真作発見ではありません。贋作者で、この本の主役、ハン・ファン・メーヘレンHan van Meegeren(1889-1947)の作品、「楽譜を読む女」です。
いやはやお見事です。これが売りに出されていたら、真作になってたでしょうね。幸いにも、これは売る前だったので被害者は居ません。
フェルメールの「青衣の女」を元に描いたと言われています。

彼の贋作は「模写」ではなく「フェルメール風に描く」にある。あたかも、本人が描いたかも知れないと思わせるところにある。
見た目だけでなく、キャンパス、絵の具も、その時代の物を使用、X線写真や化学分析にも十分対応出来るすごさ。20世紀最大の贋作者と言われる所以です。

ファン・メーヘレンの最高傑作と言われるのが「エマオの食事」

フェルメール作品として買われたものです。これは公に展示もされた。


これもフェルメール作品として買われた、「最後の晩餐」

この2つの絵は本物フェルメールと違って、何やら空間が少ない、ちょっと窮屈を感じますが、当時は、フェルメール作とされていた。

そして、結果的に致命傷になったのが、この作品。「姦通の女」


1945年、ナチス・ドイツの司令官、ヘルマン・ゲーリングの妻の居城からこのフェルメールの作品が押収された。
その購入ルートの捜査線上に、ハン・ファン・メーヘレンが浮かび上がった。

オランダの至宝フェルメール作品を敵国ナチスに売り渡した反逆罪である。それはすなわち死刑を意味する。

罪を免れるためには、フェルメールの作品ではない、自分が描いたのだと言わねばならない。「私は、偽造者です。」(I am a forger)と。しかし、それを言ってしまえば、フェルメール作品として通っている彼の数多くの絵が紙屑同然になってしまう。

結局白状する道を選ぶが、誰も信じてくれない、本物だと鑑定した人にとっては信じたくない話だ。
そこで裁判で絵を描くことになった、それがこの作品。「寺院で教えを授ける幼いキリスト」


お見事。フェルメールというよりも、カラヴァッジョ風ですね。

結局、彼に、その能力ありと判定され、詐欺罪により、禁固1年の罪になったが、異議申し立て期間中に急死。極度の衰弱状態だった。
もし自白しなかったら、今なお、彼の作品が多くの美術館でフェルメール作品として、あるいはデ.ホーホの作品として人々に感動を与えているかも知れない。
全作品自白したのかな?

あまりにも完璧な偽造者の人生とその技術、偽造を見つけ出す専門家たちとの攻防、そして今なお偽造が野放し状態の美術界を暴露する渾身のノンフィクションである。

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )