無意識日記
宇多田光 word:i_
 



前回からの続きでのっけからこう書くのも話の腰折りなのだが、ヒカルがインディーズに、というのはかなり可能性が低い。というのも、普通に考えればたとえEMIをドロップしようが少なくとも日本では他のメジャーレーベルから引く手数多だろうからだ。それでもインディーズにこだわる理由があるとすれば、個々のレコード会社というより業界全体に不満を抱いた時だろうか。シンプルに「もっとCDを安く売りたい」とかの理由があれば、或いはインディーズという作戦もある。その発想は、どちらかといえば「ファンの為」な感じだろうか。

だがヒカルは、身近な人々を大切にする。もう人生の半分を共に歩んできた人達と今更袂を分かつなんてあるだろうか。しかも、在籍中に他社(ユニバーサル傘下アイランド)との仕事をする事を快諾してくれた環境なのだ。いやSCu1は"取引"の結果かもしれないけどね。それでも、やはり寛大だったと言わざるを得ない。

ここでは海外は考えない。ファンベースもないのにわざわざインディーズでやる意味があるか否か。ツアーへの支援を取りつけるだけでも大変だ。契約してくれるというのなら喜んで契約しておこう。

で、だ。恩義や友情のある現行のスタッフとの関係を考えれば、可能性として幾らか考慮に値するのは三宅さんのレーベルへの移籍であろうか。勿論EMIJAPANは全力で阻止しようとするだろうが、もし国内でのEMIJという会社がたちゆかなくなっていったら、、、ビートルズとかで稼ぐ、というより新人の邦楽アーティストを賄いきれなくなってきたら、という事態。まぁ日本国内のレーベルの精算だな。いや、その前にEMI World Wide自体が…


と、いう風にどうしても景気のいい話にならない。やっぱり現状の打開策はないのかな…


光は、いち音楽リスナーとして、今どんな購買行動をしているのだろう。それが、今後の売り方のヒントになるハズだ。光が、まず自分ならコレコレをこういう風に買うよ、というのが見えてきたら、そう買えるように売る。とても単純な図式である。しかし、元々邦楽のCDって殆ど買ってないんだったなコヤツは…。まぁ、洋楽日本盤の帯が煩わしくてすぐ捨ててしまうという話だったからねぇ、、、いや何の話で〆るんだ今夜は。

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昨日当欄でヒカルのアジア圏でのCDが「日本への逆輸入禁止」をされていると述べたが、これは一定期間の話で、4年なり何なりを経過すれば日本に輸入しても問題はない。記述不足でしたのでここでお詫びして追記させてうただきますん。(←見事に反省の色ゼロ)

日本というのはかなり特殊な市場だ。独自のカラーや慣習を持ちつつ、その規模がかなり大きい。ビッグ・ガラパゴスと呼ぶに相応しい。また、その規模の大きさに比して地方の特色が相対的に薄い。同じアメリカ国内でも例えばニューヨークとテキサスではまるで別の国かと思う程に音楽の質が違っている。本当に"全"米で売れているものは数える程しかないのではないか。21世紀になって幾らか事情は変わっているかもしれないが。

対して日本では音楽は基本的に全国区である。メジャーレーベルとは即ち全国への配給網を持つ会社という事になる。全米でもそれはそうなのだが、日本の場合宣伝戦略の中でテレビや雑誌や新聞という媒体を使うが、これらもまた全国区なのだ。狭い国土、しかも山だらけの地形に一億の人間が住んでいる為、電波も配給も"全国区"が成り立ち易い。その為情報発信が中央集権的になりがちである。90年代は「渋谷で今日売れたものが明日日本中で売れる」なんて言い方もしたものだが、強ち冗談とまでは言えなかったのだ。

狭い国土で大きな市場規模、更に情報発信の中央集権化を最も象徴するのがヒカルのDistanceアルバムの初週売上記録だろう。300万枚。日本歴代最高記録のみならず、世界歴代最高記録である。市場規模と中央集権情報発信の掛け合わせが、極東の小国に世界記録を齎した。もう2度とこういう事がなさそうだが。

この構造が、日本の音楽市場のグローバル化を阻んでいると言ってもいい。最大の障壁は毎度言っているように言語障壁だが、情報の中央性も見逃せない。レコード会社の宣伝戦略は、小国とはいえ全国展開でなければならない。そして、そこまでである。そこから更に海外へ、とは殆どならない。この特殊な市場の特殊なサイズに合った宣伝戦略を維持する為に、レコード会社はかなりのコストを強いられていると言っていい。なかなかそこから脱却するのは難しいのだ。


となれば、ヒカルが安価に自身の作品を提供する為にインディーズからリリースするって手はないの?と思う所だ。実際、書籍の点と線は出版社を通さない事実上インディーズの出版物だった。同じ事を音楽に関しても、というのは寧ろ自然な流れなのではないだろうか…という話からまた次回。

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