何が驚いたって上野樹里の演技だ。
放送が始まって1ヶ月、ワンクールのドラマを
どれくらいのスパンで撮影するのか私は知らないし、
放送の順序どおりに収録しているとも限らないが
これだけの短期間でこれだけ成長してくるとは。若さって素晴らしい。
第1回のダイジェストしか見ていないHikkiが
いきなりこの第5回を見たらさぞやビックリすることだろう。
全12回の5回目ということで、
見るからに中弛みの一時間だったのだが、
彼女の演技のお陰で画面から目が離せなかった。
軸となったのは、ルカがミチルに対してソウスケから離れろと
助言するのが、純粋にミチルの安全を願ってのことなのか、
それともルカのソウスケに対する嫉妬なのか、
その二つの気持ちの間の葛藤に自分が気付き始める点だったのだが、
前半30分、それらしい台詞も展開も演出も何一つなかったのに
上野が自らの演技のみでその葛藤が徐々に高まっていくのを
巧みに表現していたのが圧巻。おかげで
「これじゃまるでアンタの彼のやってることと変わんないよね」
の一言の説得力の凄いこと凄いこと。(さりげなかったわりに)
それを殺さず手堅く纏めた編集も評価すべきかもしれないが、
第1回の時点ではこのレベルに到達するだなんて
期待すらしていなかった。勿論大きく予想外。
(余談だが、この葛藤に悩み始める中で
意図的に“性同一性障害”というキーワードを明示してきた所は
今後の展開の中で吉と出るか凶と出るかはわからない。
ミチルへの感情とソウスケへの嫉妬に“障害”まで絡んでくると
よほど強靭な脚本を書かないと焦点がバラついてしまう恐れがある。
それがこのドラマのテーマだと言ってしまえばそれまでなのだが
ひとつひとつ順番に処理していくか、混沌の中で一挙に
片づけていくか、結構な賭けだと思う。
もっと行儀のいいドラマだと思っていただけに、面白くなるかもしれない。)
更にもっと驚いたのは、
今回のラストシーンで明示されたように、
ミチルはルカの強さに羨望を抱いているのだが、
その強さの源になっているのがルカのミチルへの想いである、という図式を
上野が本能レベルで演技に反映させ始めていることだ。
ミチルへの想いは今のルカのアイデンティティとまでいえる部分なだけに、
いわばルカの感情の最もナイーヴで内面的な部分はミチルの存在と同化・融合しているといえるのだが、
その部分の演技・表情を、上野は「長澤まさみを理解すること」で体得し始めている。
上野本人はその点に自覚が及んでいない為今後その美点を昇華できるかは
全く未知数だが、上野の年齢で己の演技を向上させるだけでなく
共演者の人格にまで踏み込んでそれを吸収してしまおうとするエネルギーは素晴らしい。
上野樹里、殆ど職人気質とすらいえる名女優ぶりであった。
で、そこまで深く入り込まれている方の長澤まさみだが、もちろん何もいうことはない。
是非そのまんまで全12回走りぬいてほしい。画面に映っていればそれだけでいい。
上野と正反対の意味で素晴らしい女優・・・というか、アイドルだな。何歳になっても。
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